説明

冷間圧延における潤滑供給方法および潤滑供給装置

【課題】エマルション潤滑による潤滑能力を補うべくエアーアトマイズ法によって潤滑油原液を噴射供給する際に、潤滑油原液をしっかりと圧延ロールや圧延材に定着させること。
【解決手段】エマルション潤滑設備を用いて潤滑供給を行い、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する方式の冷間圧延における潤滑供給方法であって、潤滑油原液を追加供給する際には、エアーアトマイズ用の2流体噴霧ノズルに、0.05MPa以上の圧力でエアーもしくは不燃性ガスを供給するとともに、40℃における動粘度が10〜300cStの潤滑油を原液のまま圧送することで、前記エアーもしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液を前記ノズルから圧延材と圧延ロールのいずれか一方または双方に噴射供給することを特徴とする冷間圧延における潤滑供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷間圧延における潤滑供給方法および潤滑供給装置に関し、特に既存のエマルション潤滑設備を活用しながら、多様な圧延材の潤滑条件に対応することができる冷間圧延における潤滑供給方法および潤滑供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板材の冷間圧延においては、水と潤滑油の混合液であるエマルションをノズルから噴射供給するエマルション潤滑が使用されて久しい。
その一方で、鋼種の多様化や生産性の効率化に伴い、多様な材質・寸法の圧延材、あるいは同種であっても部位毎に圧延条件の異なる圧延材を、同一の圧延機・圧延機列を用いて冷間圧延することが必要になっている。
圧延材の材質・寸法、あるいは圧延速度・圧下率等の圧延条件が変われば、適正な潤滑状態を維持するための潤滑条件、例えば、エマルションの濃度や供給量、あるいは供給範囲についても変化する。
したがって、冷間圧延における潤滑供給においては、圧延材の材質・寸法や圧延速度・圧下率等の圧延条件に応じて、迅速に潤滑条件を制御することが求められている。
【0003】
特許文献1に開示されている潤滑供給方法は、上記課題を解決する一例である。この方法においては、開閉バルブを備えるタンクを複数設置し、各々のタンクにはそれぞれ濃度が異なるエマルション、例えば、1%(低濃度用)、3%(中濃度用)、5%(高濃度用)のエマルションを貯蔵する。そして、前記バルブを開閉することによって、所望する濃度のエマルションを選択的に供給する。
この方法は、所望する濃度の数に応じたタンクを設置しなければならないので、タンクの設置スペースが限られている場合には適用が難しい。また、複数のタンクを設置する必要があるため、設備コストが上昇する。しかし、圧延中にエマルション濃度を圧延条件等の変化に応じてその都度調整する必要がないので、迅速にエマルション濃度、すなわち、潤滑条件を制御することができる。
【0004】
ところで、近年、潤滑油を原液のままノズルに圧送して、不燃性ガス源から供給されるエアー(空気)もしくは不燃性ガスとともに、粒状化または霧状化した潤滑油原液をノズルから噴射供給するエアーアトマイズ法が注目されている。
エアーアトマイズ法は、潤滑油を原液のまま供給するので、少量の供給量であっても十分な潤滑効果が得られる。したがって、特許文献1に例示されるエマルション潤滑と比較すると、潤滑油の供給量削減によるコスト削減効果を期待できる。
同じく、エアーアトマイズ法は、潤滑油を原液のまま供給するので、プレートアウトを確保するための油膜形成時間、すなわち、潤滑油を供給してからそれがロールバイトに到達するまでの時間を考慮する必要がない。したがって、特許文献1に例示されるエマルション潤滑よりも迅速かつ容易に潤滑条件を制御することができる。
【0005】
しかしながら、潤滑油の供給量削減によるコスト削減、あるいは迅速かつ容易な潤滑条件の制御が期待できるとはいえども、既存のエマルション潤滑設備のすべてをエアーアトマイズ用の潤滑設備に置き換えるのは非現実的である。設備を置換するためには多くの投資を必要とする。そして、エマルション潤滑は永年使用されていることから極めて安定した操業が可能であるのに対し、エアーアトマイズ法はそれと比較して実績が浅いので、操業安定性の観点からはリスクが大きい。
【0006】
このようなことから近年においては、実績のある既存のエマルション潤滑設備を活用することで安定した操業、すなわちエマルション潤滑を行い、操業の途中において圧延材や圧延速度等に変動が生じるなど所定の要因によって潤滑不足に陥ることが予想される場合には、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給することによって、エマルション潤滑設備の潤滑供給能力を速やかにバックアップする方式の潤滑供給方法が検討されている。
すなわち、既存のエマルション潤滑設備の潤滑供給能力で足りる場合にはエマルション潤滑のみを行い、不足が生じる場合にはエマルション潤滑とエアーアトマイズ法による潤滑の双方を行う潤滑供給方法が検討されている。
例えば、特許文献2には、高強度鋼板等の難圧延材対策として、スポット的にエアーアトマイズ法を使用する潤滑供給方法が開示されている(特許文献2の段落[0013]を参照)。
【0007】
ところで、上記方式のようなエマルション潤滑とエアーアトマイズ法による潤滑とを併用する潤滑供給方法においても、当然ながら潤滑油の供給効率が高い方が望ましい。とりわけエアーアトマイズ法の特徴の一つは少量の供給量であっても十分な潤滑効果を得られることであるから、エマルション潤滑と併用する場合についても、この特徴を最大限に発揮することが望まれる。
【0008】
これについて特許文献2では、エアーアトマイズ法による潤滑油の供給効率を決定付けるのは、霧化した潤滑油原液の周囲への飛散量であるとして、主ノズルから霧状(ミスト状)の潤滑油原液を噴射すると同時に、主ノズルの外側に設けられた副ノズルから圧縮気体を噴射するようにしている。そして、このように噴射すれば、副ノズルからの副流が気体壁となるため、潤滑油原液の周囲への飛散が効果的に抑制され、潤滑油原液を効率よくストリップやロールバイトに供給できるとしている(特許文献2の段落[0008]、図2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−4916号公報
【特許文献2】特開2008−213023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
たしかに、ノズルから噴射供給した潤滑油原液が圧延ロールや圧延材に付着せずに、それらの周囲に飛散してしまうと、潤滑油の供給効率は低下する。
しかしながら、潤滑油の潤滑効果は、圧延ロールや圧延材に潤滑油が定着することによって潤滑効果を発揮するところ、潤滑油の潤滑効果ないし潤滑油の供給効率は、必ずしも周囲への飛散量のみによって評価できるものではない。
【0011】
例えば、たとえ潤滑油原液の周囲への飛散量を抑制して、より多くの潤滑油原液を圧延ロールや圧延材に噴射供給することができたとしても、必ずしも期待していたような潤滑効果を得られない場合がある。特に、エマルション潤滑による潤滑能力を補うべくエアーアトマイズ法によって潤滑油原液を追加供給する際には、所望する潤滑効果を得られない場合が多い。
【0012】
本発明の解決すべき課題は、エマルション潤滑による潤滑能力を補うべくエアーアトマイズ法によって潤滑油原液を噴射供給する際に、潤滑油原液をしっかりと圧延ロールや圧延材に定着させることにある。
そして、これによりエアーアトマイズ法本来の特徴の一つである少量の供給量であっても十分な潤滑効果を確実に発揮させること、同じく、エアーアトマイズ法本来の特徴の一つである迅速かつ容易な潤滑制御を十分に発揮させることにある。
ひいては、多様な材質・サイズの圧延材あるいは同種であっても部位毎に圧延条件の異なる圧延材を、同一の圧延機・圧延機列を用いて冷間圧延する場合であっても、適正な潤滑状態を維持することができる潤滑供給方法および潤滑供給装置を提供することにある。
そして、操業の途中において圧下率や圧延速度等に変更が生じる場合であっても、これらの圧延条件の変動に応じて迅速に潤滑条件を制御することができ、これにより適正な潤滑状態を維持することができる潤滑供給方法および潤滑供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を解決すべく、潤滑油原液の周囲への飛散量を抑制し、より多くの潤滑油原液を圧延ロールや圧延材に噴射したとしても、必ずしも期待していたような潤滑効果を得られない原因について種々の理論的検討および実験的検討を重ねた結果、以下の技術的知見を得た。
【0014】
(A)エマルション潤滑による潤滑能力を補うべくエアーアトマイズ法によって潤滑油原液を噴射供給する際には、圧延ロールや圧延材の表面はエマルションの膜で覆われている。そして、この膜が障壁となってノズルから噴射供給された潤滑液原液の膜内への侵入を拒み、圧延ロール表面や圧延材表面への潤滑液原液の定着を阻害すること。
したがって、たとえ潤滑油原液の周囲への飛散量を抑制し、より多くの潤滑油原液を圧延ロールや圧延材に噴射供給しても、噴射供給した潤滑油原液のすべてがエマルションの膜を突き破って圧延ロール表面や圧延材表面に定着するとは限らないので、期待していたような潤滑効果が得られないこと。
【0015】
(B)これを解決するには、すなわちエマルションの膜を突き破って圧延ロール表面や圧延材表面に潤滑液原液を定着させるには、0.05MPa以上の圧力で噴射されるエアーもしくは不燃性ガスとともに、粒状化または霧状化させた潤滑油原液を噴射供給する必要があること。
換言すると、0.05MPa以上の圧力で噴射されるエアーもしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液をノズルから噴射供給するようにすれば、噴射供給された潤滑油原液は、エマルション潤滑によって圧延ロール表面や圧延材表面に形成されているエマルションの膜を突き破って当該膜下まで侵入し、圧延ロール表面や圧延材表面に強固に定着すること。
【0016】
上記の知見に基づき、本発明者は、圧延ロールや圧延材の表面がエマルションの膜に覆われていても、ノズルから噴射供給した潤滑油原液がこの膜を突き破ってしっかりと圧延ロール表面や圧延材表面に定着し、これによりエアーアトマイズ法本来の特徴の一つである少量の供給量であっても十分な潤滑効果を確実に発揮することができる潤滑供給方法及びその装置に想到した。その要旨とするところは以下のとおりである。
【0017】
(1)エマルション潤滑設備を用いて潤滑供給を行い、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する方式の冷間圧延における潤滑供給方法であって、
潤滑油原液を追加供給する際には、エアーアトマイズ用の2流体噴霧ノズルに、0.05MPa以上の圧力でエアーもしくは不燃性ガスを供給するとともに、40℃における動粘度が10〜300cStの潤滑油を原液のまま圧送することで、前記エアーもしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液を前記ノズルから圧延材と圧延ロールのいずれか一方または双方に噴射供給することを特徴とする冷間圧延における潤滑供給方法。
(2)エマルション潤滑設備を用いて潤滑供給を行い、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する方式の冷間圧延における潤滑供給装置であって、
複数の2流体噴霧ノズルと、
各ノズルに40℃における動粘度が10〜300cStの潤滑油を圧送する定量送出機能付き潤滑油供給手段と、
各ノズルに供給されるエアーもしくは不燃性ガスの圧力を0.05MPa以上に設定する圧力調整機能付き不燃性ガス源を備え、
潤滑油原液を追加供給する際には、前記ノズルに0.05MPa以上の圧力でエアーもしくは不燃性ガスを供給するとともに前記潤滑油を原液のまま圧送し、これにより前記エアーもしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液を前記ノズルから圧延材と圧延ロールのいずれか一方または双方に噴射供給することを特徴とする冷間圧延における潤滑供給装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る潤滑供給方法および潤滑供給装置は、既存のエマルション潤滑設備を活用することによって安定した操業を行う。そして、操業の途中において鋼種変更や圧延速度変更など圧延条件に変動が生じて、これにより潤滑不足に陥ることが予想される場合や付加的に潤滑油量を調整する場合には、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する。
しかして、本発明に係る潤滑供給方法および潤滑供給装置は、エアーアトマイズ法による潤滑油原液を追加供給する際には、0.05MPa以上の圧力で噴射されるエアーもしくは不燃性ガスとともに、粒状化または霧状化させた潤滑油原液を、圧延材と圧延ロールのいずれか一方または双方に噴射供給するものである。
エマルション潤滑によって圧延ロール表面や圧延材表面がエマルションの膜で覆われていても、ノズルから噴射供給した潤滑油原液は、噴射の勢いによってエマルションの膜を突き破って膜下の圧延ロール表面や圧延材表面に到達する。このために、潤滑液原液を圧延ロール表面や圧延材表面に確実に定着させることができる。したがって、エアーアトマイズ法本来の潤滑効果を確実に発揮させることができる。
すなわち、本発明によれば、潤滑油原液の追加供給時には、従来技術では成し得なかったエアーアトマイズ法本来の潤滑効果を確実に発揮することができるとともに、潤滑不足の生じない定常時には、既存のエマルション潤滑設備を用いた安定した操業を行うことができる。
したがって、多様な材質・サイズの圧延材あるいは同種であっても部位毎に圧延条件の異なる圧延材を、同一の圧延機・圧延機列を用いて圧延する場合であっても、適正な潤滑状態を維持することができる。
さらには、操業の途中において圧下率や圧延速度等に変更が生じる場合であっても、これらの種々の圧延条件の変動に応じて迅速に潤滑条件を制御することができ、これにより適正な潤滑状態を維持することができる。
潤滑油原液の追加供給時にエアーアトマイズ法本来の潤滑効果を確実に発揮することができることから、供給油量が少量でも十分な潤滑効果が期待でき、潤滑油のコスト削減に繋がることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を模式的に示す模式図である。
【図2】本発明の別の形態を示す模式図である。
【図3】エアーアトマイズ用の潤滑設備を示す模式図である。
【図4】内部混合型の2流体噴霧ノズルの断面図である。
【図5】外部混合型の2流体噴霧ノズルの断面図である。
【図6】エアーもしくは不燃性ガスの供給圧力(噴射圧力)と圧延時の摩擦係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜6を参照して、本発明を詳細に説明する。
図1はノズルから圧延ロールに潤滑油原液を噴射供給する本発明の実施形態を模式的に示す模式図である。本発明は、金属板材の冷間圧延工程において使用され、既存のエマルション潤滑設備を活用することによって安定した操業を行う。そして、操業の途中において潤滑不足に陥ることが予想される場合や付加的に潤滑油量を調整する場合には、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する。
【0021】
すなわち、本発明では、エマルション潤滑設備の潤滑能力で足りる定常時には、水と潤滑油の混合液であるエマルションを、圧延機入側に設けたエマルション供給ノズルから噴射供給するエマルション潤滑のみを行う。
一方、圧延材や圧延速度等に変動が生じるなど所定の要因によって潤滑不足に陥ることが予想される場合や付加的に潤滑油量を調整する場合には、図1に示すようにエマルション潤滑と2流体噴霧ノズル5a、5bを用いたエアーアトマイズ法による潤滑の双方を行う。
【0022】
エマルション潤滑設備としては、特に限定されるものではなく、例えば、図1に示す形態のエマルション潤滑設備を用いることができる。なお、前段スタンドにおけるエマルション潤滑設備の図示を省略している。
当該図に示す冷間圧延機は6段圧延機であり、この形態においては、エマルション供給ノズル6a、6bを圧延材4の上下に配置し、圧延材4と作業ロール1a、1bにエマルションを供給している。また、エマルション供給ノズル7a、7bを圧延材4の上下に配置し、作業ロール1a、1bと中間ロール2a、2bにエマルションを供給している。また、エマルション供給ノズル8a、8bを圧延材4の上下に配置し、中間ロール2a、2bと補強ロール3a、3bにエマルションを供給している。
そして、この形態においては、エマルション貯蔵タンク11に貯蔵されているエマルションがエマルション供給ポンプ10により各々のエマルション供給ノズルに送られる。
【0023】
なお、当該図に示す冷間圧延機は6段圧延機であるが、これに限定されるものではなく、作業ロール1a、1bと補強ロール3a、3bからなる4段圧延機であってもよい。また、当該図はスタンド数を省略した図であり、スタンド数3以上の冷間タンデム圧延機について適用することができる。
【0024】
エマルション供給ノズル6a、6b、7a、7b、8a、8bは、それぞれが板幅方向に複数個配置されている。その板幅方向の配置間隔については等間隔であってもよいし、異なる間隔であってもよい。また、複数のエマルション供給ノズルを板幅方向に並べた潤滑ヘッダーの形態として使用してもよい。
【0025】
エマルション供給ノズルとエマルション供給ポンプ10との間には、エマルションの供給をON/OFFするための弁機構であるエマルション供給スイッチ9を設置してもよい。これにより、エマルション供給制御手段12による制御により適切なタイミングでエマルションの供給をON/OFFすることができる。なお、エマルション供給制御手段12としては、コンピュータ(電子計算機)を用いることができる。
【0026】
エマルションの供給については、エマルション供給ノズルから噴射供給したエマルションを回収して、これを循環利用するリサーキュレーション潤滑を行うのがコスト面から望ましい。図1に示すように圧延機に供給されたエマルションは、エマルション回収タンク13で回収され、劣化した浮上油が除去された後、フィルター14で鉄粉や不純物などが除去された後、エマルション貯蔵タンク11に戻され、再び圧延機に供給される。
【0027】
リサーキュレーション潤滑を行う場合のエマルションの供給量としては、1500〜20000リットル/min/スタンド程度である。また、エマルションの濃度は0.1〜5%程度、エマルションの温度は50〜60℃程度である。
また、エマルション用の潤滑油としては、鉱油系潤滑油、エステル系潤滑油、さらにそれらに種々の添加剤が加えられた潤滑油、有機系以外にもコロイド状の非油系潤滑油等を用いることができる。
【0028】
図2はノズルから圧延材に潤滑油原液を噴射供給する本発明の別の実施形態を模式的に示す模式図である。図1はリサーキュレーション潤滑の場合を示していたが、図2のようなダイレクト潤滑に適用することもできる。ダイレクト潤滑とは、通常薄物(ブリキ系)の圧延に用いられる潤滑方法であり、比較的高濃度のエマルションを圧延材に供給し、エマルションを回収しない潤滑方法である。ダイレクト潤滑では圧延材にエマルションを供給するのが一般的であり、転相時間を稼ぐことで油水分離が促進され潤滑効果が高くなる。アトマイズ法では転相時間が必要なく、水膜は0.05MPaの圧力で突き破ることができるので、図2ではエマルション供給ノズル16a、16bとスタンドの間にエアーアトマイズ用の供給ノズルを設置している。エマルション供給ノズルとエアーアトマイズ用の供給ノズルの順番は逆でもよい。
【0029】
潤滑性が重視される薄物については図2に示すダイレクト潤滑が望ましい。エマルションは圧延材に供給され、ロール冷却は別途冷却水を供給することによって行われる。ダイレクト潤滑ではリサーキュレーション潤滑に比べて若干高濃度のエマルションを使用することが多い。
【0030】
次に、エアーアトマイズ用の潤滑設備について説明する。
図3はエアーアトマイズ用の潤滑設備を示す模式図である。当該図に示すように本発明においては、潤滑油貯蔵タンク24に貯蔵されている潤滑油を原液のまま、定量送出機能のついた潤滑油供給ポンプ23により2流体噴霧ノズル5a、5bに圧送する。
そして、不燃性ガス源27から供給されるエアー(空気)もしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液を前記ノズルから圧延材4と圧延ロールのいずれか一方または双方に噴射供給する。
【0031】
2流体噴霧ノズル5a、5bと潤滑油供給ポンプ23との間には、潤滑油原液の供給をON/OFFするための弁機構である潤滑油供給スイッチ22を設置してもよい。これにより、潤滑油供給制御手段25による制御により適切なタイミングで潤滑油原液の供給をON/OFFすることができる。なお、潤滑油供給制御手段25としては、コンピュータ(電子計算機)を用いることができる。
【0032】
本発明においては、内部混合型の2流体噴霧ノズルと外部混合型の2流体噴霧ノズルのいずれか一方または双方を用いることができる。
図4に内部混合型の2流体噴霧ノズル5a、5bの断面図を示す。内部混合型の2流体噴霧ノズル33は、当該図に示すようにノズル内部にエアーもしくは不燃性ガス31と潤滑油32とを混合するためのチャンバー(混合室)38が備えられているノズルである。したがって、ノズルの噴射口の形状を変えることが容易であり、比較的フラットノズルとして使用されることが多い。フラットノズルは1個のノズルで潤滑油の噴射幅が広くとれるので、薄板鋼帯用圧延ロールへの潤滑油供給には、このようなノズルが適していることが多い。
【0033】
図5に外部混合型の2流体噴霧ノズル5a、5bの断面図を示す。外部混合型の2流体噴霧ノズル34は、当該図に示すようにチャンバーが備えられていないノズルであり、ノズルの噴射口の形状が円形のものが多い。したがって、一様に噴霧することに適しており、ラウンドノズルとして使用されることが多い。
【0034】
2流体噴霧ノズル5a、5bは、それぞれが板幅方向に複数個配置されている。その板幅方向の配置間隔については等間隔であってもよいし、異なる間隔であってもよい。また、複数の2流体噴霧ノズルを板幅方向に並べた潤滑ヘッダーの形態として使用してもよい。
【0035】
潤滑油供給ポンプ23は、ノズルの数と同数設置してもよいし、あるいは、1台のポンプを用いてすべてのノズルに潤滑油を供給するようにしてもよい。
また、それぞれのノズル毎に個別に潤滑油の供給量を事前に設定、ないしは事前に設定した潤滑油の供給量を圧延中にノズル毎に個別調整できるようにするのが望ましい。
潤滑油供給ポンプ23としては、定量送出機構が備わっていれば、どのような形式のポンプでもよく、例えば、精密ギヤポンプ、トロコイドポンプ、揺動型ポンプ、プランジャーポンプ等を用いることができる。ここでいう定量送出機能とは、潤滑油の供給量の設定精度が設定値の20%以下の変動に抑えられるもので、応答性は1秒間で毎分0.1cc以上の速さで供給量を変更できる機能をもつものである。
なお、潤滑油供給ポンプ23としては、ポンプを2台以上並列に接続・設置して、見かけ上1台のポンプとして機能させるような構成でもよい。こうすることで、潤滑油供給量の設定範囲を広くすることが容易になる。複数のポンプを並列に設置した場合の定量送出機能については、並列に設置された各ポンプが、前記定量送出機能をもっていればよい。
【0036】
各ノズル一斉に潤滑油の供給量を任意の値に設定および/または調整するには、各ポンプの定量送出機能を調整する電気装置を同時に連動して動くようにする方法と、遊星型多ポートギヤポンプのように、1台のポンプでありながらその中に複数のポンプ機構を備えたポンプを用いる方法がある。後者の場合は、ポンプのなかに備えられたポンプ機構の数が潤滑油供給ポンプ23の数に相当する。例えば、6ポート遊星型ギヤポンプであれば、潤滑油供給ポンプ23が6台備わっている装置と見なし、1台のポンプではあるが、6台の潤滑油供給ポンプ23とみなされる。
【0037】
潤滑油の供給量をノズル毎に個別に事前に設定する、あるいは事前に設定した潤滑油の供給量を圧延中にノズル毎に個別に調整するには、各ポンプの定量送出機能を調整する電気装置を個別に操作すればよい。その操作には、コンピューター(電子計算機)による制御システムを利用して、圧延速度、圧延荷重、張力、材料の存在を検知する信号等の変化に応じて潤滑油の供給量を圧延中に変化させたり、手動である特定のノズルの潤滑油供給量を調整したりすればよい。どのような調整方法ないしは設定方法にも対応できるのが本発明の特徴であり、調整方法や設定方法は圧延機で生産している鋼材の材質や圧延条件によって異なるので、使用環境に適した方法で操作すればよい。
【0038】
本発明では、40℃における動粘度が10〜300cStの潤滑油を原液のまま使用する。10cSt未満では粘度が低すぎて効果が得られず、300cStを超えると潤滑過多になりスリップする危険性が出てくる。
使用する潤滑油としては、例えば、鉱油系潤滑油、エステル系潤滑油、さらにそれらに種々の添加剤が加えられた潤滑油、有機系以外にもコロイド状の非油系潤滑油等を用いることができる。
【0039】
エアーもしくは不燃性ガスは、図3に示すように、不燃性ガス源27から配管を分岐させて2流体噴霧ノズル5a、5bに供給される。
2流体噴霧ノズル5a、5bと不燃性ガス源27との間には、エアーもしくは不燃性ガスのノズルへの供給をON/OFFするための弁機構であるガススイッチ26を設置してもよい。これにより必要に応じて各ノズルへのエアーもしくは不燃性ガスの供給をON/OFFすることができる。
【0040】
図3では、ガススイッチ26が不燃性ガス源27の直後に設置され、ガススイッチ26と2流体噴霧ノズルとの間でノズルの本数分だけ配管を分岐し、各ノズルにエアーもしくは不燃性ガスを供給するようにしている。
しかし、これに限定されず、エアーもしくは不燃性ガスの供給をノズル毎に個別にON/OFFしたい場合には、ガススイッチ26と不燃性ガス源27の間で配管をノズル個数分に分岐し、ノズルの個数分のガススイッチ26を、分岐した後の配管に設置すればよい。
【0041】
不燃性ガスとしては、工業的に良く使用されている窒素を用いるのがコスト的に好ましいが、不燃性であれば何でもよく、アルゴンでもヘリウムでもよい。
不燃性ガス源27は、各ノズルに供給されるエアーもしくは不燃性ガスの圧力を調整する機能を備えており、適切な噴射圧力に調整することができる。
なお、図3は各ノズルに対して同じ圧力のエアーもしくは不燃性ガスを供給するものであるが、各ノズル毎に個別に噴射圧力を変えたい場合は、前記のガス分岐後に圧力調整装置を組み入れて、設定/調整するような構成にすることができる。
【0042】
本発明においては、以上説明したような既存のエマルション潤滑設備を活用することによって安定した操業を行う。そして、操業の途中において鋼種変更や圧延速度変更など圧延条件に変動が生じて、これにより潤滑不足に陥ることが予想される場合や付加的に潤滑油量を調整する場合には、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する。
しかしながら、エマルション潤滑による潤滑能力を補うべくエアーアトマイズ法によって潤滑油原液を噴射供給する際には、圧延ロールや圧延材の表面はエマルションの膜で覆われている。そして、この膜が障壁となって2流体噴霧ノズル5a、5bから噴射供給された潤滑液原液の膜内への侵入を拒み、圧延ロール表面や圧延材表面への潤滑液原液の定着が阻害される。
【0043】
そこで、本発明では、0.05MPa以上の圧力で噴射されるエアーもしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液を2流体噴霧ノズル5a、5bから噴射供給する。このようにすれば、噴射供給された潤滑油原液は、エマルション潤滑によって圧延ロール表面や圧延材表面に形成されているエマルションの膜を突き破って当該膜下まで侵入し、圧延ロール表面や圧延材表面に強固に定着する。
【0044】
図6はエアーもしくは不燃性ガスの供給圧力(噴射圧力)と圧延時の摩擦係数との関係を示すグラフである。横軸は、エアーもしくは不燃性ガスの供給圧力(噴射圧力)である。
そして、縦軸は、エマルション潤滑とセミダイレクトによる潤滑の双方を実施したときの摩擦係数を基準としたときの摩擦係数低減比である。すなわち、
摩擦係数低減比 = (エマルション潤滑とエアーアトマイズによる潤滑の双方を実施したときの摩擦係数)/(エマルション潤滑とセミダイレクトによる潤滑の双方を実施したときの摩擦係数)
である。
なお、上記グラフにおけるセミダイレクトの条件は、エマルション供給量が20リットル/min/スタンド、エマルション濃度が10〜15%、エマルション温度が50〜60℃である。
【0045】
当該図より、エアーもしくは不燃性ガスの供給圧力(噴射圧力)が低い場合には、摩擦係数の低減効果が小さいが、0.05MPa以上になると摩擦係数の低減効果が大きく発現することを確認することができる。これは、エアーもしくは不燃性ガスの供給圧力(噴射圧力)を0.05MPa以上にすると、噴射供給された潤滑油原液が圧延ロール表面や圧延材表面に形成されているエマルションの膜を突き破って当該膜下まで侵入し、圧延ロール表面や圧延材表面に強固に定着して、これにより摩擦係数が低減したものと推測する。
なお、潤滑油原液の供給量を上記条件の2倍、5倍にしても、効果が発現する圧力自体は0.05MPa付近で変化しない。ただし、0.05MPaでの摩擦係数低減比は供給量が多い方が大きい。
【0046】
上記知見から、本発明では、0.05MPa以上の圧力で噴射されるエアーもしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液を2流体噴霧ノズル5a、5bから噴射供給する。
このためには、エアーアトマイズ用の2流体噴霧ノズルに、0.05MPa以上の圧力でエアーもしくは不燃性ガスを供給(圧送)する。上記のように不燃性ガス源27は、各ノズルに供給されるエアーもしくは不燃性ガスの圧力を調整する機能を備えていることから、0.05MPa以上の噴射圧力に調整することができる。
なお、エアーもしくは不燃性ガスの供給圧力は通常1MPa以下程度で使用する。圧力が高すぎると飛散してしまう潤滑油も増加するし、騒音や高圧のために取り扱いが難しくなるなどの問題が生じるからである。
【0047】
内部混合型の2流体噴霧ノズルを使用する場合、ノズル内の混合チャンバー内には、潤滑油とエアーもしくは不燃性ガスとが共存する。したがって、ノズルから潤滑油を噴射するためのエアーもしくは不燃性ガスの圧力に比べて、潤滑油をノズルに圧送するときの圧力がそれよりも低いと、ノズル内の混合チャンバーに潤滑油を安定して供給することが困難となる。また、場合によっては、潤滑油配管をエアーもしくは不燃性ガスが逆流することも発生し得る。したがって、内部混合型の2流体噴霧ノズルを使用する場合には、エアーもしくは不燃性ガスの供給圧力よりも大きな圧力で潤滑油原液をノズルに圧送する。このときの潤滑油原液の供給量としては、1〜10cc/mとするのが望ましい。供給量が少ないと摩擦係数低減に対して効果が小さくなり、供給量が多いと潤滑過多によりスリップが生じてしまうため、内部混合型を用いた潤滑油原液の供給圧力としては上記範囲が望ましい。
【0048】
外部混合型の2流体噴霧ノズルは、内部混合型と異なり、ノズル内に潤滑油とエアーもしくは不燃性ガスを混合するためのチャンバーが無く、ノズルの噴射口のすぐ外側で潤滑油噴射流とエアーもしくは不燃性ガスの噴射流とを衝突させて粒状もしくは霧状にして、噴射対象物に噴射供給する。したがって、外部混合型の2流体噴霧ノズル内には、潤滑油の流路とエアーもしくは不燃性ガスの流路が独立して存在するので、潤滑油とエアーもしくは不燃性ガスのノズルへの供給時の圧力などの条件が互いに影響を及ぼしあうことは殆ど無い。したがって、外部混合型の2流体噴霧ノズルを使用する場合には、潤滑油供給ポンプ23を用いて少なくとも0.01MPa以上の圧力で潤滑油を圧送すればよい。このときの潤滑油原液の供給量としては、1〜10cc/mとするのが望ましい。供給量の効果については内部混合型と同様である。
【0049】
本発明では、操業の途中において鋼種変更や圧延速度変更など圧延条件に変動が生じて、これにより潤滑不足に陥ることが予想される場合や付加的に潤滑油量を調整する場合には、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する。
潤滑不足の予想については、圧延材の鋼種や寸法等の圧延開始前に事前に与えられる情報に基づいて予測することができる。
また、出側板速度とロール速度の比である先進率を演算し、これが予め定めた所定の閾値を超えたことを以って、圧延中における潤滑不足を検知することもできる。
あるいは、圧延荷重、先進率、速度、変形抵抗等からなる摩擦係数モデルを用いて圧延中における摩擦係数を演算し、これが予め定めた所定の閾値を超えたことを以って、圧延中における潤滑不足を検知することもできる。
もしくは、圧延荷重を測定し、これが予め定めた所定の閾値を超えたことを以って、圧延中における潤滑不足を検知することもできる。
本発明では、これらの潤滑不足の予想・検知情報に基づいてエアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給するが、潤滑不足の予想・検知情報に基づく追加供給するか否かの判定手段ならびに追加供給のための制御を行う制御手段としては、コンピュータ(電子計算機)を用いることができる。なお、当該制御手段による制御には、潤滑油供給スイッチ22のON/OFF制御、潤滑油供給ポンプ23が備える定量送出機能(定量送出機構を調整する電気装置を含む)の設定・調整、ガススイッチ26のON/OFF制御、不燃性ガス源27が備える圧力調整機能(噴射圧力の個別制御のための圧力調整装置を含む)の設定・調整が含まれる。
【0050】
圧延材4としては、鋼のほかにチタン、アルミニウム、マグネシウム、銅などの金属およびこれら各金属の合金であってもよい。
【0051】
以上のように、本発明では、圧延ロール表面や圧延材表面がエマルションの膜で覆われていても、ノズルから噴射供給した潤滑油原液は、噴射の勢いによってエマルションの膜を突き破って膜下の圧延ロール表面や圧延材表面に到達する。このために、潤滑液原液を圧延ロール表面や圧延材表面に確実に定着させることができる。したがって、エアーアトマイズ法本来の潤滑効果を確実に発揮させることができる。
すなわち、本発明によれば、潤滑油原液の追加供給時には、従来技術では成し得なかったエアーアトマイズ法本来の潤滑効果を確実に発揮することができるとともに、潤滑不足の生じない定常時には、既存のエマルション潤滑設備を用いた安定した操業を行うことができる。
したがって、多様な材質・サイズの圧延材あるいは同種であっても部位毎に圧延条件の異なる圧延材を、同一の圧延機・圧延機列を用いて圧延する場合であっても、適正な潤滑状態を維持することができる。
さらには、操業の途中において圧下率や圧延速度等に変更が生じる場合であっても、これらの種々の圧延条件の変動に応じて迅速に潤滑条件を制御することができ、これにより適正な潤滑状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0052】
1a、1b 作業ロール
2a、2b 中間ロール
3a、3b 補強ロール
4 圧延材
5a、5b 2流体噴霧ノズル(エアーアトマイズ用)
6a、6b エマルション供給ノズル
7a、7b エマルション供給ノズル
8a、8b エマルション供給ノズル
9 エマルション供給スイッチ
10 エマルション供給ポンプ
11 エマルション貯蔵タンク
12 エマルション供給制御手段
13 エマルション回収タンク
14 フィルター
16a、16b エマルション供給ノズル
22 潤滑油供給スイッチ(エアーアトマイズ用)
23 潤滑油供給ポンプ(エアーアトマイズ用)
24 潤滑油貯蔵タンク(エアーアトマイズ用)
25 潤滑油供給制御手段(エアーアトマイズ用)
26 ガススイッチ
27 不燃性ガス源
31 エアーもしくは不燃性ガス
32 圧送される潤滑油
33 内部混合型の2流体噴霧ノズル
34 外部混合型の2流体噴霧ノズル
38 混合室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルション潤滑設備を用いて潤滑供給を行い、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する方式の冷間圧延における潤滑供給方法であって、
潤滑油原液を追加供給する際には、エアーアトマイズ用の2流体噴霧ノズルに、0.05MPa以上の圧力でエアーもしくは不燃性ガスを供給するとともに、40℃における動粘度が10〜300cStの潤滑油を原液のまま圧送することで、前記エアーもしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液を前記ノズルから圧延材と圧延ロールのいずれか一方または双方に噴射供給することを特徴とする冷間圧延における潤滑供給方法。

【請求項2】
エマルション潤滑設備を用いて潤滑供給を行い、エアーアトマイズ法を用いて潤滑油原液を追加供給する方式の冷間圧延における潤滑供給装置であって、
複数の2流体噴霧ノズルと、
各ノズルに40℃における動粘度が10〜300cStの潤滑油を圧送する定量送出機能付き潤滑油供給手段と、
各ノズルに供給されるエアーもしくは不燃性ガスの圧力を0.05MPa以上に設定する圧力調整機能付き不燃性ガス源を備え、
潤滑油原液を追加供給する際には、前記ノズルに0.05MPa以上の圧力でエアーもしくは不燃性ガスを供給するとともに前記潤滑油を原液のまま圧送し、これにより前記エアーもしくは不燃性ガスとともに粒状化または霧状化させた潤滑油原液を前記ノズルから圧延材と圧延ロールのいずれか一方または双方に噴射供給することを特徴とする冷間圧延における潤滑供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−30278(P2012−30278A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174193(P2010−174193)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】