説明

凍結乾燥トマトの製造方法

【課題】トマトの凍結乾燥品であって、食感的には歯ごたえがあり、かつ、湯戻し後のゼリー状物質4の欠落がなく、加えて、トマトを縦に切断した場合のトマト切断面の内部からのゼリー状物質4の噴き出しが防止された凍結乾燥トマトの製造方法を提供する。
【解決手段】トマトを洗浄後、トマトを芯部1を含む中心部において2分割、3分割又は4分割に縦に切断し、切断後のトマト切断面の隔壁部2に穴7を穿設し、穿設後のトマトを糖浸漬し、凍結乾燥する工程で構成される。本工程により製造される凍結乾燥トマトは、食感に優れ、ゼリー状物質4の噴き出しもなく、即席食品等の加工食品に幅広く利用できる凍結乾燥トマトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席食品等の加工食品、特に即席麺又は即席スープの具材等に使用される凍結乾燥トマトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥法は、食品中の氷の昇華によって乾燥が進むため、乾燥による形態の変化がなく、乾燥中に極端な成分変化が起こらず、色・味・栄養成分等を保持したままで乾燥できるというメリットがある。また、多孔質に仕上がるため、復元性が高いという利点を有している。従来まで、このような凍結乾燥法を用いた種々の野菜の製造方法が開示されている。
【0003】
しかし、野菜の中で、特にトマトに関してはブランチング等の前処理の段階で破損することもあり、また、凍結乾燥後の状態では多くの空隙を有しており、乾燥後の組織が軽い衝撃等で破損して目的とする形状を維持することが困難であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−271946号公報 また、本発明者らの実験でもトマトを凍結乾燥処理する場合、切断後のトマトをそのまま凍結乾燥したものでは、食感的には歯ごたえがないものとなり、かつ、湯戻し後にゼリー状物質が漏出し、欠落することが多かった。
【0005】
加えて、トマトをその中心部において2分割等の縦に切断したものをそのまま凍結乾燥処理すると、その凍結乾燥時にトマトの切断面の内部から子室部内のゼリー状物質が噴き出したような状態となるものが見られた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者はトマトの凍結乾燥品であって、食感的には歯ごたえがあり、かつ、湯戻し後のゼリー状物質の欠落を防止し、加えて、トマトを縦に切断した場合のトマト切断面の内部からのゼリー状物質の噴き出しを防止する凍結乾燥トマトの製造方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記の各問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、まず、凍結乾燥後の食感改良については、トマトの切断方法としてトマトを中心部において縦方向に分割することが効果的であるという知見を得た。また、分割数としては、2分割、3分割又は4分割が好適であることを見出した。
【0008】
また、次にこれを比較的濃厚な糖液に浸漬することで食感改良とゼリー状物質の欠落防止を実現できるという知見を得た。
【0009】
さらに、トマトを縦に切断した場合の凍結乾燥時におけるトマト切断面の内部からのゼリー状物質の噴き出しに対しては、種々の実験から凍結乾燥前の縦に切断したトマト切断面の状態が大きく影響していることが判明した。
【0010】
すなわち、トマトは横に切断すると図1又は図2に示すように、その内部は隔壁部(2)によって複数の子室部に分かれていることが観察される。例えば、大玉トマトや中玉トマトでは図1に示すように5〜8個の複数の子室部(3)に分かれ、ミニトマトでは図2に示すように通常2個の子室部(3)に分かれている。他方、これらのトマトを芯部の上部から縦に切断して2分割すると、図3、図4、図5のような断面が見られる。このうち、図3は縦の切断面における芯部(1)の左右切断面のいずれもが子室部(3)で切断されゼリー状物質が露出しているもの、図4は芯部(1)を境にした縦の切断面の左右いずれか一方において隔壁部(2)の切断が重なり、子室部内のゼリー状物質(4)が隠れているもの、図5は縦の切断面の芯部(1)左右が隔壁部(2)の切断と重なり、縦の切断面全面でゼリー状物質(4)が隠れているものである。
【0011】
通常、多数のトマトをその中心部のおいて2分割等の縦に切断処理をする場合においては、図3に示すものの他、図4や図5に示す断面を有する分割トマトが生じる。
【0012】
そして、図4や図5の如く縦の切断面の芯部(1)の左右で少なくとも一方に隔壁部(2)を有している場合には、その分割トマトを凍結乾燥したときに、隔壁面(2)の内部からゼリー状物質が噴き出したような状態が生じることが見出した。そこで、この噴き出しを防止するために切断面の隔壁部(2)に穴を穿設すること、これによりゼリー状物質(4)が収容された子室部(3)を外部に開放させることで凍結乾燥時のゼリー状物質の噴き出しを抑えるができるという知見を得た。
【0013】
以上の知見より、本発明は完成されたものであり、凍結乾燥トマトの製造方法であって、以下の工程、すなわち;
凍結乾燥トマトの製造方法であって、以下の工程、すなわち;
A)トマトを洗浄する工程、
B)前記洗浄後のトマトを中心部において2分割、3分割又は4分割に縦に切断する工程、
C)前記切断後のトマトの切断面の隔壁部に穴を穿設する工程、
D)前記穿設後のトマトを糖浸漬する工程、
E)前記糖浸漬後のトマトを凍結乾燥する工程、
の各工程で構成されることを特徴とする凍結乾燥トマトの製造方法、
である。
【0014】
本発明にあるようにトマトの切断面の隔壁部(2)に穴(7)を穿設することで、凍結乾燥時のトマト切断面の隔壁部の内部からのゼリー状物質が噴き出しを防ぐことができる。また、後の糖浸漬過程において穿設した穴(7)を通じて糖液をトマトの子室部(3)の内部に効率的に浸透させることができ、これによって湯戻し後のゼリー状物質の欠落を防止し、更に、歯ごたえのある食感の復元効果を大きくすることができる。
【0015】
また、トマトにブランチング処理する工程を加える場合、高温の熱湯中で処理するとトマトの皮が剥がれ、その後の加工処理作業が困難になる。諸条件の検討の結果、縦に切断前のトマトを65℃〜85℃の温熱水中で10〜60秒間保持する条件を採用することによって、トマトの皮の剥がれを防止するとの知見を得た。
すなわち、本発明は、段落番号0013に記載の、A〜E工程で構成される凍結乾燥トマトの製造方法において更に、
前記A工程後であって、B工程前において
洗浄後のトマトを65℃〜85℃の温熱水中で10〜60秒間保持する工程、
を付加的に有する凍結乾燥トマトの製造方法、
である。
【0016】
さらに、また、凍結乾燥トマトの復元後の食感を改良するに際し、子室部に充満していたゼリー状物質をいかに歩留り良く、大量に維持して凍結乾燥させ、これを良好に復元させるかが、トマトらしさを再現するために重要であった。原料トマトの分割は、後のトマトの加工工程において、このゼリー状物質を漏出させる問題点を有している。この問題点を解消するためには、糖浸漬後であって、凍結乾燥前に、ゼラチン液を付着させると、熱湯での復元後にゼリー状物質の欠落を一層防止することができるという知見を得た。
すなわち、本発明は、段落番号0013に記載の凍結乾燥トマトの製造方法、又は段落番号0015に記載の凍結乾燥トマトの製造方法において、更に
前記D工程後であって、E工程前において
糖浸漬トマトにゼラチン液を付着する工程、
を付加的に有する凍結乾燥トマトの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のよる凍結乾燥トマトの製造方法によれば、食感的には歯ごたえがあり、かつ、湯戻し後のゼリー状物質の欠落を防止すること、加えて、凍結乾燥時における内部からのゼリー状物質が噴き出しを防止することができる。さらに、ブランチング工程を加える場合には、ゼリー状物質が漏出し、その欠落や皮の剥がれを防止することができる。本方法により製造された凍結乾燥トマトは、食感、形態とも優れており、即席食品等に広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るトマトの製造方法を詳細に説明する。
1.トマトを洗浄する工程
本発明は原料としてトマトを使用するが、原料のトマトとしては、「桃太郎」(品種名)等の大玉トマト、「ファンゴッホ」(品種名)等の中玉トマト、また、プチトマト・ミニトマト等のいずれのサイズのトマトについても使用できる。特に、凍結乾燥後の保形性の観点から、ミニトマト又はプチトマトが好ましい。
【0019】
トマトに付着した異物等を除去するために洗浄を行う。トマトの洗浄方法については、種々の常法を用いることができるが、トマトのがく片除去前後いずれかで、水で洗浄すること等により行う。バッチ式で水槽等に入れての洗浄や、あるいは機械による連続的な洗浄をすることもできる。
【0020】
また、洗浄する際には、次亜塩素酸ソーダ等の殺菌剤によって殺菌を行う工程を追加することもできる。次亜塩素酸ソーダの濃度は種々の濃度を選択することができるが、100〜500ppm程度のものを用いて、原料トマトの全部が浸漬する程度に保持して殺菌することができる。次亜塩素酸ソーダ等の殺菌剤による殺菌工程を行う場合には、その後さらに水で洗浄してから、後の工程の移行する。
【0021】
2.ブランチングする工程
上述の水洗の後、原料トマトをブランチングする工程を加えてもよい。ブランチングは変色等の防止や表面の菌の殺菌又は酵素を失活するために行う。本発明においてブランチングする場合においては、トマトを切断せずに、65℃〜85℃の湯中で10〜60秒間保持する。トマトを切断して温熱水でブランチングすると、ゼリー状物質が漏出し欠落するおそれがあるため、この段階では原料トマトは切断しないものを使用する。また、トマトを高温のお湯で長時間ブランチングすると大玉トマトでは皮が剥がれ、ミニトマトでは、皮に亀裂が入る等の場合がある。これらの現象は後の加工処理作業を困難にし、製品の品質や歩留りを悪化させる。そこで、高温長時間のブランチング処理は不適となる。本発明では、大腸菌等の死滅温度を考慮すると65℃〜85℃程度の温熱水で10〜60秒程度行うことにより、前記不都合を解消することができる。
【0022】
さらに、作業の迅速性と温熱水の温度調整等を考慮すると、75℃〜80℃で、20秒〜35秒程度が好ましい。本ブランチング工程は、蒸気によるブランチングを採用することも可能である。
【0023】
3.トマトを縦に切断する工程
次に、トマトを切断し分割する。分割する場合、横に切断する方法と縦に切断する方法があるが、本発明においては、トマト中心部付近において芯部を切断面に含む形で縦に切断し2分割、3分割又は4分割する。また、本発明における「縦に切断」とは完全に垂直に切断する場合の他、垂直よりもやや斜めに傾く場合も含む。
【0024】
尚、トマトを分割するには、包丁、カッター、スライサー等の常用の野菜切断道具・機械類を用いることができる。
【0025】
4.トマトの切断面の隔壁部に穴を開ける工程
次に、縦に切断後の切断面の隔壁部(2)に穴(7)を穿設する工程を行う。縦に切断後のトマトの切断面については、ミニトマトの2分割の場合には、図3のように縦の切断面における芯部(1)の左右切断面のいずれもが子室部(3)で切断されゼリー状物質(4)が露出しているものの他、図4に示すように芯部(1)を境にした縦の切断面の左右いずれか一方において隔壁部(2)の切断が重なり、ゼリー状物質(4)が隠れている場合、又は、図5に示すように、縦の切断面の芯部(1)左右が隔壁部(2)の切断と重なり、縦の切断面全面でゼリー状物質(4)が隠れている場合がある。
【0026】
図4又は図5のような場合には凍結乾燥時にトマト内部からゼリー状物質(4)の噴き出しが起こること、そして、これにより製品としての凍結乾燥トマトに重大な品質上の支障が生じる。
【0027】
縦の切断面で隔壁部(2)によって覆われている場合にゼリー状物質(4)の噴き出しが起こる理由については明らかでないが、トマトのゼリー状物質(4)は糖度が高い場合があり、このため、凍結乾燥工程の凍結工程において凝固点降下により内部が完全に凍結がされることがなく、真空乾燥に移行した場合に内部の液体部分より気化が起こり発泡し、切断面の隔壁部を壊してゼリー状物質が噴き出すものと推測される。
【0028】
尚、切断面の隔壁部に穴(7)を穿設する場合においては、まず、子室部が2個に分かれているミニトマトの場合には、図4や図5の隔壁部(2)にのみに穴(7)を開ければよく、図3のようにゼリー状物質(4)が露出している場合には穴を設ける必要がない。
【0029】
しかし、実際の製造工程においては、隔壁部(2)の有無を判別し、加工作業を区分する煩雑さや工程の複雑化等を簡略化及び簡便化するために、この判別を省略し、製造時には、すべての切断後のトマトに対して、その切断面の芯部を境とした左右両面に一律に穴を設けるようにすればよい。尚、3分割又は4分割の場合にも同様に切断面の隔壁部に穴を穿設する。
【0030】
次に、図1に示すように子室部が5〜8個に分かれている大玉トマトや中玉トマトの場合においては、切断面にゼリー部が露出している場合であっても、外部からは目視されないが、内部に更に閉鎖された子室部が存在している場合がある。このため切断面がゼリー部であるか隔壁部であるかどうかを問わず、芯部を境にした縦方向の左右いずれの切断面に対しても、一律に穴を穿設することが必要になる。尚、この場合、例えば図6に示す様に穿設の向きを調整することで、トマト内部のすべての隔壁部に穴を設けることができる。
【0031】
切断面に穴を開ける場合には芯部を境とする左右両面にそれぞれ一箇所以上の穴を穿設すればよい。穿設には常用される種々の方法を用いることができるが、例えば、針、くし等を用いることができる。尚、使用する針、くしの直径としては原料の切断後のトマトの隔壁部(2)の面積に対応させて数ヶ所分散して穿設できる程度の径にして適宜の径のものを使用することができるが、直径が1〜5mm程度のものが好ましい。また、穴を開ける際には、ゼリー状物質に到達する程度の突き刺しで可能であるが、外果皮まで貫通してもよい。
【0032】
この穿設処理によって、トマト内部のゼリー状物質の凍結を促すとともに、ゼリー状物質中の水分その他の液体部分の気化を円滑に進行させ、外部への気体の流出経路が確保されるものと考えられる。
【0033】
尚、本発明において切断面に隔壁部(2)を有する場合とは、必ずしも切断面の全面が完全に隔壁部(2)に覆われている場合のみでなく、一部にゼリー部が露出している場合であっても、ほぼ全面が隔壁部に覆われていれば、このような状態も含むものとする。
【0034】
5.穿設後のトマトを糖浸漬する工程
次に、穿設後のトマトの糖浸漬を行う。糖浸漬は糖液に穿設後の分割トマトを浸漬することにより行う。糖類は公知の種々のものを使用することができ、例えば、砂糖、還元水あめ等、更に具体的には、例えば、グルコース、ソルビトール、キシロース等の単糖類や、フラクトース、マルトース、ラクトース等の二糖類、その他、三糖類や四糖類、多糖類も使用することができ、更にまた、それらの混合物も使用することもできる。
【0035】
さらに、これらの糖類に食塩、あるいは、グリシン、アラニン、グルタミン酸、グルタミン酸ソーダ等のアミノ酸又はその塩類を添加してもよい。
【0036】
糖類は水溶液とし、その濃度としては、段落番号0034記載の追加する食塩等を含めて、概ね20重量%〜80重量%の溶液が可能である。尚、20重量%以下では、食感においてやや劣ることになる。また、80重量%以上の糖溶液を調製することは困難であり、また、味への影響が強くなり過ぎるので不適である。さらに、作業性等を考えると30重量%〜70重量%のものが好ましい。尚、糖以外の食塩、アミノ酸等の添加量は糖液全体重量に対して0〜30重量%程度とすることが好ましい。
【0037】
穿設後のトマトに対する糖浸漬の浸漬時間としては、種々の時間を選択することができるが、作業性等考慮すると、10分〜60分程度が好ましい。
【0038】
6.ゼラチン液を付着させる工程
上述の糖浸漬の後、ゼラチン液を付着させる工程を加えてもよい。本工程を加えることで、凍結乾燥トマトを湯戻し復元した際に、当該トマトからゼリー状物質が欠落することを一層防止することができ、更に熱湯での復元後のトマトにおけるゼリー状物質の存在感を強化できる。付着させるゼラチン液の濃度としては、0.2重量%〜10.0重量%程度まで、幅広く用いることができるが、特に0.5重量%〜5.0重量%程度が好ましい。
【0039】
糖浸漬後のトマトをゼラチン液に付着する方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができるが、例えば、ゼラチン液の槽を設けておき、これに浸漬する方法、スプレー等で吹きつけによるゼラチン付着させる方法等が可能である。
【0040】
具体的な付着量としては、浸漬の場合は、短時間で良く、例えば、1〜2秒程度以上であればよい。また、ゼラチンを付着させる場合には、トマト全面でなくとも、ゼリー状物質露出部や穴が穿設された隔壁部の切断面に付着させれば最低限の効果が得られる。
【0041】
7.トマトを凍結乾燥する工程
上記の処理後、常法により凍結乾燥を行う。凍結乾燥の条件としては、通常の条件に従うが、原料トマトを凍結させ、その後、0.8Torr以下の真空度で、最終棚温度50℃〜70℃として、概ね14時間〜24時間程度乾燥を行う。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
<実施例1> トマトのブランチング温度・時間の比較
ミニトマト(キャロル種)約4.3kg(約300個)を水で洗浄した後、次亜塩素酸ソーダ500ppmの溶液に5分間浸漬した。次に再度、水で洗浄した後、約0.7kg(約50個)ごとに分けて、各種温度の温湯に20秒間ブランチングした。この場合の各温度におけるトマトの外果皮の割れ、あるいは、剥がれ等を検討した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に記載のように、90℃、20秒程度以上の温湯によるブランチングで、外果皮の割れが発生した。次に、温度85℃で、ブランチング時間を変えて、比較した。
【0046】
【表2】

【0047】
表2に記載のように、85℃でのブランチングでは、60秒以上行うと、外果皮の割れが生じ始めた。
【0048】
<実施例2> 糖浸漬、ゼラチン付着及び切断面への穴あけの効果
ミニトマト(キャロル種)約3.6kg(約250個)を水で洗浄した後、次亜塩素酸ソーダ500ppmの溶液に5分間浸漬した。次に再度、水で洗浄した後、温度80℃のお湯に20秒間浸漬した。その後、トマトのがく片を除去し、包丁によって芯部上部(がく片側)より垂直に包丁を入れ2分割した。2分割後のトマトを以下の表3に示すの5試験区分に分けて、各試験区分に対応する処理を行った。尚、1試験区分:約3.5kg(100個(分割後のトマトの個数))とした。尚、各試験区については、切断面が隔壁部となっているトマトが均等に含まれるように調整して行った。
【0049】
【表3】

【0050】
糖浸漬を行う工程については、2分割後のトマトを食塩10重量%、グルコース10重量%、還元水あめ:MU−45(上野製薬社製)50重量%からなる糖液に10分間浸漬することによって行った。
【0051】
次に、ゼラチン浸漬する工程については、糖浸漬を行った後、凍結乾燥前において2重量%のゼラチン溶液に15秒間浸漬することによって行った。
【0052】
さらに、切断面への穴あけ工程については、2分割後のトマトの切断面(芯部を隔てて左右切断面の両面)を切断面が隔壁部となっているもの以外も含めて、一律に直径2.5mmの串によって、トマトの外果皮まで貫通する程度に穴を開けることによって行った。
【0053】
尚、凍結乾燥は凍結乾燥機(共和真空技術株式会社製、型式RO―100MB)によって、0.1Torrの真空下で、棚温度60度で、16時間、凍結乾燥を行った。
【0054】
食感、ゼリー状物質の欠落、切断面のゼリー状物質の噴き出しについての評価を以下に示す。評価は、熟練のパネラー5人によって行った。
【0055】
まず食感については、凍結乾燥後のトマトのうち、隔壁部からゼリー状物質が噴き出ししなかったものを10個採取し、容器に収納し300mlの熱湯を注いで、3分後に喫食した。もっとも優れたものを“5”とし、最も劣っていたものを“1”とした。
【0056】
次に、湯戻し後のゼリー状物質の欠落については、熱湯を注いだ後、箸で保持した際、ゼリー状物質の欠落が起きるかどうかで判断した。この際、ゼリー状物質の欠落が最も起こらなかったものを“5”とし、ゼリー状物質の欠落が最も起こったものを“1”とした。
【0057】
隔壁部のゼリー状物質の噴き出しについては、凍結乾燥処理後の全個数中においてゼリー状物質の噴き出したものの100分率で評価した。
【0058】
結果を表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
表4に示すように食感については、糖浸漬を行うことで、良好に改善された。また、穴あけを行うことで、一層食感が向上した。
【0061】
湯戻し後のゼリー状物質の欠落については、糖浸漬のみでも改善はされたが、これにゼラチン液を付着させることで一層防止できた。
【0062】
隔壁部のゼリー状物質の噴き出しについては、穴を穿設することで非常に効果的に噴き出しを防止することができた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の方法を用いることで、トマトの加工食品である凍結乾燥トマトを良好な食感を維持しつつ、その形態を損なうことなく提供することができる。これによって、これまで以上にトマトが即席食品等の加工食品に有用に利用がされることが見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】大玉又は中玉トマトの横断面の正面図
【図2】ミニトマトの横断面の正面図
【図3】ミニトマトの縦の切断面(両面ともゼリー状物質が露出したもの)の正面図
【図4】ミニトマトの縦の切断面(一面が隔壁部で切断されたもの)の正面図
【図5】ミニトマトの縦の切断面(両面とも隔壁部で切断されたもの)の正面図
【図6】大玉又は中玉トマトの横断面と穿設方向の正面図ミニトマトの横断面図
【符号の説明】
【0065】
1 芯部
2 隔壁部
3 子室部
4 ゼリー状物質
5 種子
6 外果皮
7 穿設(穴)
8 穿設方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥トマトの製造方法であって、以下の工程、すなわち;
A)トマトを洗浄する工程、
B)前記洗浄後のトマトを中心部において2分割、3分割又は4分割に縦に切断する工程、
C)前記切断後のトマトの切断面の隔壁部に穴を穿設する工程、
D)前記穿設後のトマトを糖浸漬する工程、
E)前記糖浸漬後のトマトを凍結乾燥する工程、
の各工程で構成されることを特徴とする凍結乾燥トマトの製造方法。
【請求項2】
前記A工程後であって、B工程前において
洗浄後のトマトを65℃〜85℃の温熱水中で10〜60秒間保持する工程、
を有する請求項1に記載の凍結乾燥トマトの製造方法。
【請求項3】
前記D工程後であって、E工程前において
糖浸漬トマトにゼラチン液を付着する工程、
を有する請求項1又は2に記載の凍結乾燥トマトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−99572(P2008−99572A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283037(P2006−283037)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000226976)日清食品株式会社 (127)
【Fターム(参考)】