説明

処理剤を塗布装置に供給する方法

本発明は、塗布着色剤又は表面糊剤を紙又は板ウェブに直接又は間接に塗布するために用いられる塗布装置(40)に処理剤を供給するための方法に関し、当該方法では、塗布装置に供給される処理剤の一部は、バイパスライン(24)を介して、処理剤供給システムに戻され、塗布装置に供給される処理剤の他の一部は、塗布装置(40)内の塗布室に回され、該塗布室から、塗布室に供給された実質的に全ての処理剤が移動ウェブ又は転写面に塗布される。当該方法は、塗布装置(40)への処理剤のフロー(Q)を測定するステップと、測定されたフロー(Q)及び所定の設定値(Q)に基づいて、処理剤の供給を制御するステップとを含み、設定値は、移動ウェブ又は転写面に塗布されるべき処理剤の所望の分量に従って選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理剤を、塗布着色剤又は表面糊剤を紙又は板ウェブに直接又は間接に塗布するために用いられる塗布装置に、供給する方法に関する。本方法では、塗布装置に供給される処理剤の一部は、バイパスラインを介して、処理剤供給システムに戻され、塗布装置に供給される処理剤の一部は、塗布装置内の塗布室に回され、その塗布室から、塗布室に供給された実質的に全ての処理剤は、移動ウェブ又は転写面に塗布される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、本質的に戻り循環を有さない密室式塗布装置に関する。戻り循環は、塗布室を供給システムに閉じ込める封止素子を介した、塗布室に供給された余分な処理剤の戻りフローを意味する。例えば、塗膜転写塗布機において、従来、戻り循環は、塗布室に供給される処理剤の容量の約80%に達した。戻り循環は多くの現実的な問題を引き起こす。これらの問題を解決するために、処理剤が塗布ロールに塗布される塗膜の形態で放出され得るだけであるような塗布装置が開発され、そこにおいて、塗布室は実質的に閉鎖されている。密閉式循環塗布装置は、例えば、OptiSizer(TM)塗膜転写塗布機、及び、幾つかのカーテン塗布機を含む。密閉式循環塗布装置において、機械循環、即ち、処理剤供給システムは、塗布室からの可能な漏れに対応する追加的な分量を備えて、塗布されるべき処理剤の分量を塗布室に供給することのみが目的であるよう制御される。加えて、塗布装置はバイパス循環を含むことが多く、バイパス循環は、処理剤を塗布室に供給する分配パイプ内における均一な圧力及び十分なフローを保証するために働く。バイパス循環によって、ウェブの横方向における供給分布(プロファイル)を最適化し、且つ、塗布室の端部辺りの低過ぎる流速を防止することが可能である。
【0003】
塗布システムが小さな循環容量で動作するとき、処理剤の供給制御は一層重要になる。多過ぎる処理剤の供給は漏れを増大する。もし少な過ぎる分量の処理剤が供給されるならば、むらのある塗布分布のリスクがある。
【0004】
フィンランド国特許第104577号は、実質的に戻り循環なしに動作する塗布装置に処理剤を供給するための構成を開示している。この構成では、バイパスフローが塗布室と関連する供給室に配置され、供給室の内部圧力が測定され、且つ、供給室の内部圧力のための所望設定値が得られるよう、処理剤の供給圧力が調整される。実際の消費に対応する供給調整は、塗布室に至るノズルに亘る圧力損失、即ち、実際には、ノズルの前に作用する圧力の測定に基づく。塗料分量を調整するために圧力制御を用いることは困難である。圧力とフローとの間の関係は直線的ではなく、多くの他の要因によっても影響されるので、特定の圧力は異なる動作条件において異なる塗料分量を与える。供給の圧力制御は外乱の影響を受け易く、その影響は自動的或いは使用者によって補償されなければならない。
【0005】
塗膜転写塗布機では、供給される処理剤の分量を調整するための2つの主要な方法がある。分量の変更が望まれるとき、塗布ロッドの装填圧力が調整され得るか、或いは、ロッドが異なる直径及び/又は異なる溝を有するロッドと交換され得る。特に、溝付きロッドが関係するとき、ロッドの装填を調整することによって、微調整のみが得られる。更なる欠点は、装填圧力の増大がロッドの溝及びロールの塗膜の双方を効果的に摩耗することである。塗布ロッドの溝容積に基づく容積測定が塗布において用いられると、ロールに塗布される処理剤の分量を変えることが望ましい場合にはいつでも、ロッドは交換されなければならない。これは、特にマルチグレードの機械に関して、面倒である。
【0006】
従来、塗布装置のバイパス循環は機械タンクに戻された。もしバイパス循環が一定でないならば、実際の処理剤供給を決定するのは困難である。特に、多層塗布のために、カーテン塗布機が用いられるとき、これは問題を引き起こす。そこでは、単層の供給容量を制御することが極めて困難だからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、処理剤の供給及び供給容量の測定に関する問題に対する、費用効率が良く、且つ、簡単な解決を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従った方法は、請求項1に提示されたものによって特徴付けられている。
【0009】
本発明は、供給ラインから測定される処理剤のフロー、及び、所望の供給設定値に基づいて、塗布装置への処理剤の供給を制御することに基づく。所望値は所望の処理剤分量をウェブ又は転写面に提供するよう選択される。この種のフロー制御は、処理剤の容量を測定し、且つ、供給を管理することを容易にする。フロー制御を用いて、例えば、塗膜転写塗布機において、塗布ロッドの溝を変更することなく、さらに、塗布ロッドの装填が好ましくは可能な限り小さく一定に維持されるよう、最終製品に回される処理剤の分量を調節することが可能である。
【0010】
制御を遂行するために、使用者は、彼が最終製品において有することを欲する処理剤の分量を選択する。乾燥固形剤含有量、機械の幅、及び、動作速度が知られているならば、これに基づいて必要な処理剤の供給率が計算される。例えば、1.2であり得る適切な係数によって必要とされる処理剤の分量を増大することによって、バイパス循環及び漏れは考慮される。
【0011】
所望の供給値が増大されると、より大きな分量の処理剤が塗布室に供給され、塗布室内の圧力は増大し、より多くの処理剤が塗布ロッドの溝を通じて塗布ロールの表面に圧搾される。相応して、所望の供給値の減少は、より薄い処理剤の塗膜をもたらす。
【0012】
本発明の好適実施態様において、塗布装置のバイパスフローは機械タンクに回されないが、その代わり、供給フロー測定地点と塗布装置との間に位置する地点で、供給ラインに直接回される。よって、塗布装置への処理剤の供給は、バイパス循環の容量と無関係である。機械循環の供給ポンプは、塗布室からウェブ又はロールに移送される分量と同一の分量で、処理剤を塗布装置にポンプするだけである。この構成のお陰で、塗布装置の全幅に亘る均一な圧力を補償することを欲する場合、特に小さな供給容量を用いるときには、バイパス循環部を増大することが可能であり、その上、分配パイプから塗布室に通じるノズル導管が目詰まりしない。バイパスポンプの容量を調節することによって、これが総供給容量に対する影響を有することなく、供給分布を制御し得る。
【0013】
本発明は添付の図面を参照して実施例を用いて記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、塗膜転写塗布機に関連する処理剤塗布装置40を示す横断面図である。塗布装置40は、塗布ロール20の曲面に対して配置された塗布室19を含む。処理剤は分配パイプ17を介して塗布装置40に供給され、そこから、処理剤はノズル導管18を介して塗布室19に回される。分配パイプに回される供給フローの一部は、分配パイプの反対端を通じて、バイパスフローとして放出される。ロール20の移動方向において見られたとき、塗布室19は、封止ロッド21によって入口側で制限され、且つ、塗布ロッド22によって出口側で制約されている。それらの各々は初期位置で回転するよう配置されており、それを介して、前記ロッド21,22はロール20の表面に対して装填されている。封止ロッド21及び塗布ロッド22の装填は、処理剤が、塗布ロッド22の溝を通じて、塗布ロール20の表面に従う塗膜として、塗布室19から放出され得るだけであるよう制御される。封止ロッド21は、空気が塗布室19に進入するのを防止し、且つ、処理剤が塗布室19から塗布ロール20の上流方向に放出されるのを防止するために働く。塗布室19の両側端は封止され、過剰圧力が塗布室19内で保持され得ることを意味する。
【0015】
図2は、塗膜転送塗布機の機械循環を示している。処理剤はパイプライン11に沿って機械タンク10に回され、そこから、処理剤は供給ポンプ13によって清浄装置15にポンプされ、不純物及び/又は空気がそこで処理剤から除去される。清浄装置15の後、処理剤は供給ライン16に沿って塗布装置40に回される。塗布装置40に回された処理剤の大部分は塗布室19を通じて分配パイプから塗布ロール20に回され、小部分のみがバイパスライン24に沿って機械タンク10に戻る。通常、バイパスライン24は調整弁(図示せず)を備え、バイパスフローの大きさを所望に維持する。塗布室からの戻り循環がないので、処理剤は、所望の厚さの処理剤塗膜を塗布ロール20上に形成するために必要な分量で、塗布室に供給される必要があるだけである。
【0016】
供給ライン16における処理剤のフローは、測定地点14に位置するフローセンサによって監視される。フロー測定から受信される信号Qは、供給ポンプ13の動作を制御する制御回路30に回される。制御回路30は、実際の供給フローQを所望の所定値Qと比較し、それに基づいて、供給ポンプ13の速度を制御するために用いられる制御信号Zを生成する。代替的に、制御回路は、供給ライン16内の制御弁(図示せず)を抑制するために、或いは、供給フローを何らかの他の方法で制御するために用いられ得る。
【0017】
塗布装置40は、それ自体既知の方法で、分配パイプ内又は塗布室内の圧力Pを測定する圧力センサを備え得る。通常の状況において、圧力測定は供給を制御するために用いられない。
【0018】
処理剤の供給がフロー測定Q及び供給のための所望値Qに基づいて制御されるとき、所望設定値Qを単に変更することによって、処理剤の容量を変更することが可能である。よって、溝付き塗布ロッド22の使用範囲はより広くなる。何故ならば、それを用いて、異なる分量の処理剤が塗布され得るからである。また、塗布ロッド22の装填は一定に維持されることが可能であり、よって、塗布ロール20の摩耗が低減され得る。これらの変更は塗布ロッド22及び塗布ロール20の耐用年数を増大し、より継続的で且つ中断のない塗布装置40の動作を可能にする。
【0019】
図3は、本発明の方法を提供した他の配置を示している。図2並びに図3の供給システムは、塗膜転写塗布及びカーテン塗布の双方において用いられ得ることが留意されるべきである。カーテン塗布において、処理剤はウェブ上方に位置するカーテン塗布ビームに回され、そこから、処理剤は、均一なカーテンとして、処理されるウェブ上に落下することが許容される。供給は、図2の例のように、フロー測定Q及び所望供給値Qに基づいて制御される。
【0020】
図3の供給システムは、バイパスポンプ43を備えるバイパスライン42を含み、ポンプの速度を調節することによって、バイパス循環の容積率を制御することが可能である。バイパスフローは機械タンク10に回されないが、その代わり、フロー測定地点14の後に位置する地点で、塗布装置40に至る供給ライン16に回される。よって、バイパス循環は自由に制御される。何故ならば、バイパス循環のフローループ42は、塗布装置40に供給されるべき処理剤を案内する制御回路30に決して影響を及ぼさないからである。この構成のお陰で、例えば、塗布装置40の全長に亘る均一な圧力及び塗布装置40の均一な供給分布を補償するためにより小さな処理剤供給を用いるときに、より大きなバイパス循環を用いることが可能である。例えば、多層塗布のためにカーテン塗布ビームを用いるとき、これは有利な構成であり、その場合、単一の処理剤層に供給されるべき処理剤の分量は極めて少量であり得る。
【0021】
本発明に従った供給制御システムは、例えば、マルチグレード機械で有利であり、そこでは、所望供給値Qを単に変更することによって、処理剤供給はグレード変更と関連して変更され得る。所望値Qを計算するとき、供給される処理剤の分量に影響を与える要因は考慮に入れられ、そのような要因は、塗布装置の速度、ウェブ幅、及び、処理剤の特性(乾燥固形剤含有量、粘度等)を含む。
【0022】
図3に示されるバイパス循環の新規な結合方法は、本発明に従った供給システムにおいて用いられるのに適しているのみならず、そのようなものとして既知の他の供給制御方法に関連して用いられるのにも適している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】塗膜転写塗布機に関連する処理剤塗布装置を示す横断面図である。
【図2】塗膜転写塗布機の機械循環を示す概略図である。
【図3】代替的なバイパスフロー結合を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布装置に供給される処理剤の一部が、バイパスラインを介して、処理剤供給システムに戻され、前記塗布装置に供給される前記処理剤の一部が、前記塗布装置内の塗布室に回され、該塗布室から、前記塗布室に供給された実質的に全ての前記処理剤が移動ウェブ又は転写面に塗布される、塗布着色剤又は表面糊剤を紙又は板ウェブに直接又は間接に塗布するために用いられる塗布装置に処理剤を供給するための方法であって、
前記塗布装置への前記処理剤のフローを測定するステップと、
測定されたフロー及び所定の設定値に基づいて、前記処理剤の供給を制御するステップとを含み、
前記設定値は、前記移動ウェブ又は前記転写面に塗布されるべき前記処理剤の所望の分量に従って選択される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記バイパスフローを、供給フロー測定地点の前に位置する地点で、前記処理剤供給素ステムに戻すステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイパスフローを、前記供給フロー測定地点と前記塗布装置との間に位置する地点で、処理剤供給ラインに戻すステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
供給ポンプの速度を変更することによって、前記処理剤の前記供給を制御するステップを含む、ことを特徴とする上記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記供給ライン内のフローを抑制することによって、前記処理剤の前記供給を制御するステップを含む、ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
塗膜転写塗布機の塗布ビームが前記塗布装置として用いられ、前記塗布ビームでは、溝付き塗布ロッドが測定素子として用いられる、ことを特徴とする上記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記塗布装置としてカーテン塗布ビームが用いられる、ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−519692(P2006−519692A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505617(P2006−505617)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000120
【国際公開番号】WO2004/079093
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(501249157)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (33)
【Fターム(参考)】