説明

処理装置の異常判定システム及びその異常判定方法

【課題】異常判定の精度を向上することができる処理装置の異常判定システム及びその異常判定方法を提供すること。
【解決手段】被処理体を処理する処理装置に設置されるセンサによって出力される信号から、時間と共に変動する時系列データ41を収集するデータ収集部22と、データ収集部が収集した時系列データから、有用な時系列データであるモデルデータ43のみを選択するデータ選択部23と、データ選択部が選択したモデルデータから、時間と共に変動する上下変動閾値データ45を算出する閾値設定部25と、データ収集部が収集した監視対象の時系列データを、上下変動閾値データと比較することにより、異常の発生を判定する判定部26と、を具備する。データ選択部のモデルデータの選択は、例えば処理装置によって被処理体を処理した後に、処理装置による被処理体の処理を評価する検査装置37の評価結果に基づいて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理装置の異常判定システム及びその異常判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウエハ等の製造ラインにおいては、半導体ウエハやLCD基板等の被処理基板の表面に、レジストのパターンを形成するために、フォトリソグラフィ技術が用いられている。このフォトリソグラフィ技術は、被処理基板の表面にレジスト液を塗布するレジスト塗布工程と、形成されたレジスト膜にパターンを露光する露光処理工程と、露光処理後の基板に現像液を供給する現像処理工程などの一連の処理が順次行われ、被処理基板の表面に所定のレジストパターンを形成することができる。これらの工程は、被処理基板を処理する各種処理ユニットや被処理基板を搬送する搬送ユニットなどを搭載したレジスト塗布・現像処理装置で行われている。
【0003】
ところで、レジスト塗布・現像処理装置では、複数の被処理基板が連続的に搬送されて処理されるため、例えばレジスト塗布・現像処理装置を構成する1つの処理ユニットに異常が発生した場合には、その異常を早期に発見する必要がある。また、異常な処理がなされた被処理基板にその後の処理を行うと処理液等の無駄が生じる。このような場合、異常の発生を判定する装置の一つとして、各種処理ユニットにセンサを設置し、センサからデータを収集するデータ収集部と、このデータ収集部で収集したデータから有用なデータを取出すデータ取出部と、このデータ取出部で取出した有用なデータから異常データを抽出する異常データ抽出部と、この異常データ抽出部が抽出した異常データと不良情報との関連付けをする異常判定部と、を有するモニタリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このモニタリング装置の異常データ抽出部は、データ取出部で取出した有用なデータから異常データを抽出する際、予め設定されている上限と下限の固定閾値を用いて異常データの抽出を行う。そして、異常判定部は、異常データ抽出部で異常と判断したデータの変動を、異常と判断した変動が後の検査工程で得られる不良情報と関連があるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−243678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のモニタリング装置においては、異常データ抽出部がデータから異常データを抽出する際に、上限と下限の固定閾値で異常の抽出及び判定を行う。このため、上限と下限の固定閾値範囲内であっても処理に異常が生じる事態、例えば処理のタイミングに異常が発生しても異常の抽出及び判定を行うことはできず、異常判定の精度が低いという問題がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、異常判定の精度を向上することができる処理装置の異常判定システム及びその異常判定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明の処理装置の異常判定システムは、被処理体を処理する処理装置に設置されるセンサによって出力される信号から、時間と共に変動する時系列データを収集するデータ収集部と、 上記データ収集部が収集した時系列データから、有用な時系列データであるモデルデータのみを選択するデータ選択部と、 上記データ選択部が選択した上記モデルデータから、時間と共に変動する変動閾値データを算出する閾値設定部と、 上記データ収集部が収集した監視対象の時系列データを、上記変動閾値データと比較することにより、異常の発生を判定する判定部と、を具備することを特徴とする(請求項1)。
【0009】
この場合、上記データ収集部は、上記処理装置の処理単位毎の時系列データを収集する方が好ましい(請求項2)。ここで、処理単位とは、複数の処理装置の各処理装置が行う処理工程と、一の処理装置における処理工程を含む意味である。
【0010】
また、上記被処理体は、上記処理装置を構成する複数の処理部により複数の処理がなされ、上記データ収集部は、上記処理部に設置されるセンサによって出力される信号から、上記処理部の処理単位毎の時系列データを収集してもよい(請求項3)。
【0011】
この発明において、上記閾値設定部は、上記処理単位における少なくとも一部の時系列区間の変動閾値データを算出することができる(請求項4)。
【0012】
この場合、上記データ選択部は、複数のモデルデータを選択し、その複数のモデルデータから平均データを算出する平均データ算出部を更に備え、上記閾値設定部は、上記平均データから、上記変動閾値データを算出する方が好ましく(請求項5)、更には、上記閾値設定部は、上限及び下限の変動閾値データを算出する方が好ましい(請求項6)。
【0013】
また、上記閾値設定部は、上記変動閾値データの許容範囲を、少なくとも一部の時系列区間で変更可能に設定されている方が好ましい(請求項7)。
【0014】
ここで、変動閾値データの許容範囲とは、判定部が監視対象の時系列データを変動閾値データと比較した場合、異常と判定しない範囲である。
【0015】
この発明において、上記上限の変動閾値データは、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数を乗じた値を加えて算出され、上記下限の変動閾値データは、上記平均データ値に、上記標準偏差に上記係数を乗じた値を減じて算出される方が好ましい(請求項8)。
【0016】
また、この発明において、上記上限の変動閾値データは、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数を乗じた値を加え、更に上記平均データ値に補正値を乗じた値を加えて算出され、上記下限の変動閾値データは、上記平均データ値に、上記標準偏差に上記係数を乗じた値を減じ、更に上記平均データ値に補正値を乗じた値を減じて算出される方が好ましい(請求項9)。
【0017】
この発明において、上記データ選択部は、上記処理装置によって上記被処理体を処理した後に、上記処理装置による上記被処理体の処理を評価する検査装置の評価結果に基づいて上記モデルデータを選択してもよい(請求項10)。
【0018】
この発明の異常判定方法は、被処理体を処理する処理装置に設置されるセンサによって出力される信号から、時間と共に変動する時系列データを収集するデータ収集ステップと、 上記データ収集ステップによって収集された時系列データから、有用な時系列データであるモデルデータのみを選択するデータ選択ステップと、 上記データ選択ステップによって選択された上記モデルデータから、時間と共に変動する変動閾値データを算出する閾値設定ステップと、 上記データ収集ステップにて収集した監視対象の時系列データを、上記変動閾値データと比較することにより、異常の発生を判定する判定ステップと、を具備することを特徴とする(請求項11)。
【0019】
この場合、上記データ収集ステップは、上記処理装置の処理単位毎の時系列データを収集する方が好ましい(請求項12)。ここで、処理単位とは、複数の処理装置の各処理装置が行う処理工程と、一の処理装置における処理工程を含む意味である。
【0020】
また、上記被処理体は、上記処理装置を構成する複数の処理部により複数の処理がなされ、上記データ収集ステップは、上記処理部に設置されるセンサによって出力される信号から、上記処理部の処理単位毎の時系列データを収集してもよい(請求項13)。
【0021】
この発明において、上記閾値設定ステップは、上記処理単位における少なくとも一部の時系列区間の変動閾値データを算出することができる(請求項14)。
【0022】
この場合、上記データ選択ステップは、複数のモデルデータを選択し、その複数のモデルデータから平均データを算出する平均データ算出ステップを更に備え、上記閾値設定ステップは、上記平均データから、上記変動閾値データを算出する方が好ましく(請求項15)、更には、上記閾値設定ステップは、上限及び下限の変動閾値データを算出する方が好ましい(請求項16)。
【0023】
また、上記閾値設定ステップは、上記変動閾値データの許容範囲を、少なくとも一部の時系列区間で変更可能に設定されている方が好ましい(請求項17)。
【0024】
ここで、変動閾値データの許容範囲とは、判定ステップが監視対象の時系列データを変動閾値データと比較した場合、異常と判定しない範囲である。
【0025】
この発明において、上記上限の変動閾値データは、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数を乗じた値を加えて算出され、上記下限の変動閾値データは、上記平均データ値に、上記標準偏差に上記係数を乗じた値を減じて算出される方が好ましい(請求項18)。
【0026】
また、この発明において、上記上限の変動閾値データは、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数を乗じた値を加え、更に上記平均データ値に補正値を乗じた値を加えて算出され、上記下限の変動閾値データは、上記平均データ値に、上記標準偏差に上記係数を乗じた値を減じ、更に上記平均データ値に補正値を乗じた値を減じて算出される方が好ましい(請求項19)。
【0027】
この発明において、上記データ選択ステップは、上記処理装置によって上記被処理体を処理した後に、上記処理装置による上記被処理体の処理を評価する検査装置の評価結果に基づいて上記モデルデータを選択してもよい(請求項20)。
【発明の効果】
【0028】
この発明の異常判定システム及び異常判定方法によれば、処理装置に設置されるセンサによって出力される信号から取得される時系列データから、有用な時系列データであるモデルデータのみを選択し、そのモデルデータから変動閾値データを算出し、監視対象の時系列データをその変動閾値データと比較して異常の発生を判定することにより、時系列データの変動や変動タイミングに異常が発生したことを判定することができるため、異常判定の精度を向上することができる。
【0029】
また、変動閾値データは、直近に取得された時系列データに基づいて算出することができるため、例えば新しいレシピによる処理であっても、即時に最適な変動閾値データを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明に係る異常判定システムを適用したレジスト塗布・現像処理装置を示す概略斜視図である。
【図2】上記レジスト塗布・現像処理装置を示す概略平面図である。
【図3】この発明に係る異常判定システムの論理的な構成を示すブロック図である。
【図4】この発明に係る異常判定システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】この発明に係る異常判定方法の手順を示すフローチャートである。
【図6】この発明における時系列データの一例を示すグラフ(a)、複数のモデルデータの一例を示すグラフ(b)である。
【図7】この発明における平均データの一例を示すグラフ(a)、上限及び下限の変動閾値データの一例を示すグラフ(b)である。
【図8】上下変動閾値データと監視対象の時系列データとの比較の一例を示すグラフである。
【図9】上記レジスト塗布・現像処理装置を構成する加熱ユニットと異常判定システムの概略構成を示す断面図である。
【図10】上記加熱ユニットにおける上下変動閾値データと時系列データとの比較の一例を示すグラフである。
【図11】上記レジスト塗布・現像処理装置を構成する処理液供給部と異常判定システムの構成を示す概略断面図である。
【図12】上記処理液供給部における上下変動閾値データと時系列データとの比較の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、この発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る異常判定システム(方法)を、被処理体であるウエハWのレジスト塗布・現像処理装置に適用した場合について説明する。
【0032】
レジスト塗布・現像処理装置は、図1及び図2に示すように、ウエハWが収納されたカセットCBを搬入出するためのキャリアブロック1と、このキャリアブロック1のカセットCB内から取り出されたウエハWをレジスト塗布・現像処理する処理ブロック2と、この処理ブロック2にインターフェイスブロック3を介して連設される露光ブロック4とで主に構成されている。
【0033】
キャリアブロック1は、1ロット例えば25枚のウエハWを密閉収納するカセットCBを複数個載置可能な載置部5を備えたカセットステーション6と、このカセットステーション6との間に配置される壁面に設けられる開閉部7と、この開閉部7を介してカセットCBからウエハWを取り出すための受渡し手段A1とが設けられている。
【0034】
上記処理ブロック2には、手前側から順に加熱・冷却系のユニットを多段化した棚ユニットU1,U2,U3と、後述する塗布・現像ユニットを含む各処理ユニット間のウエハWの受け渡しを行う主搬送機構A2,A3が交互に配列して設けられている。すなわち、棚ユニットU1,U2,U3及び主搬送機構A2,A3はキャリアブロック1側から見て前後一列に配列されると共に、各々の接続部位には図示しないウエハ搬送用の開口部が形成されており、ウエハWは処理ブロック2内を一端側の棚ユニットU1から他端側の棚ユニットU3まで自由に移動できるようになっている。また主搬送機構A2,A3は、キャリアブロック1から見て前後方向に配置される棚ユニットU1,U2,U3側の一面部と、後述する例えば右側の液処理ユニットU4,U5側の一面部と、左側の一面をなす背面部とで構成される区画壁8により囲まれる空間内に置かれている。なお、図中、符号12,13は各ユニットで用いられる処理液の温度調節装置や温湿度調節用のダクト等を備えた温湿度調節ユニットである。
【0035】
液処理ユニットU4,U5は、例えば図1に示すように、塗布液(レジスト液)や現像液といった薬液供給用のスペースをなす収納部14の上に、塗布ユニットCOT、現像装置を備えた現像ユニットDEV及び反射防止膜形成ユニットBARC等を複数段例えば5段に積層した構成とされている。また、上述の棚ユニットU1,U2,U3は、液処理ユニットU4,U5にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための各種ユニットを複数段例えば10段に積層した構成とされており、ウエハWを加熱(ベーク)する加熱ユニット、ウエハWを冷却する冷却ユニット、ウエハWの処理状態を評価する検査装置37等を具備している。
【0036】
処理ブロック2における棚ユニットU3の奥側には、インターフェイスブロック3を介して露光ブロック4が接続されている。このインターフェイスブロック3は、処理ブロック2と露光ブロック4との間に前後に設けられ、夫々例えば筐体で囲まれた搬送室15及び搬送室16により構成されている。搬送室15の中央部には、X軸、Y軸及び鉛直(Z軸)方向に自在に移動することができると共に、アームを鉛直軸回りに回転することができる搬送機構A4が設けられ、この搬送機構A4は受け渡しユニット(TRS)17,高精度温調ユニット(図示せず),周辺露光ユニット19及びバッファカセット(図示せず)及び上記処理ブロック2に備えられた棚ユニットU3にアクセスし、これらの各ユニットとウエハWの受け渡しを行うことができるように構成されている。
【0037】
上記のように構成されるレジスト塗布・現像処理装置におけるウエハの流れについて一例を示すと、まず、外部からウエハWの収納されたカセットCBがキャリアブロック1の載置部5に載置されると、開閉部7と共にカセットCBの蓋体が外されて受渡し手段A1によりウエハWが取り出される。そして、ウエハWは棚ユニットU1の一段をなす受け渡しユニット(図示せず)を介して主搬送機構A2へと受け渡され、棚ユニットU1〜U3内の一の棚にて、塗布処理の前処理として例えば反射防止膜形成処理、冷却処理が行われた後、塗布ユニットCOTにてレジスト液が塗布される。次いでウエハWは棚ユニットU1〜U3の一の棚をなす加熱ユニットで加熱(ベーク処理)され、更に冷却された後棚ユニットU3の受け渡しユニットを経由してインターフェイスブロック3へと搬入される。インターフェイスブロック3へと搬入されたウエハWは搬送機構A4により搬送室15内の周辺露光ユニット19に搬入され周辺露光処理を受ける。周辺露光処理を受けたウエハWは搬送機構A4により高精度温調ユニットに搬送され、この高精度温調ユニット内においてウエハW表面の温度は露光ブロック4内の温度に対応した設定温度に高精度に温調される。搬送機構A4はこの温調されたウエハWを、受け渡しユニット17を介して搬送機構A5に受け渡し、ウエハWは搬送室16に搬送される。搬送されたウエハWは、搬送機構A5により露光ブロック4へ搬送され、露光が行われる。露光後、ウエハWは逆の経路で主搬送機構A2まで搬送され、現像ユニットDEVにて現像処理され、現像液によって不要レジストが除去される。ウエハWは棚ユニットU1〜U3の一の棚をなす加熱ユニットで加熱(ポストベーク処理)し、次いで冷却ユニットで冷却された後、検査装置37でその表面の処理の状態を評価されてから、キャリアブロック1の載置台上の元のカセットCBへと戻される。
【0038】
次に、この発明に係る異常判定システム20について説明する。異常判定システム20は、レジスト塗布・現像処理装置において、異常が発生しているか否かを判定する。図2,図3及び図4に示すように、異常判定システム20は、送受信部36を介して、レジスト塗布・現像処理装置を構成する複数の処理部(処理ユニット)にそれぞれ設置されるセンサ30と配線により接続されている。センサ30は、時間と共に変動する時系列データ41となる信号を異常判定システム20に出力するもので、例えば圧力センサ、温度センサ、流量センサ、液面センサ、位置センサ、トルクセンサ、速度センサ等のセンサ30が設置される。なお、一の処理部には同一若しくは異なる複数のセンサ30が設置されていてもよい。
【0039】
また、図3及び図4に示すように、異常判定システム20は、送受信部36により、検査装置37の図示しない出力部からの信号を受信する。検査装置37は、ウエハW上のマクロ欠陥を検出し処理の状態を評価するものであって、上述したレジスト塗布・現像処理装置によるウエハWのプロセス処理が終了し、カセットCBへと戻される前にウエハWの処理の状態が正常か異常かの評価を行うことができる。ウエハWの処理の状態が正常か異常かの評価結果は、異常判定システム20に出力される。
【0040】
図3に示すように、異常判定システム20の論理的な構成は、データ収集部22、データ選択部23、平均データ算出部24、閾値設定部25、判定部26、表示処理部27、表示装置28、データ保持部29等から構成される。データ保持部29には、時系列データ41、モデルデータ43、平均データ44、上下変動閾値データ45、係数データ46及び補正値データ47が記憶されている。
【0041】
データ収集部22は、処理部にそれぞれ設置されるセンサ30によって出力される信号から、時間と共に変動する時系列データ41を収集し、データ保持部29に時系列データ41として記憶する。時系列データ41としては、例えば、時間と共に変動する圧力、温度、流量、液面レベル、位置、トルク、速度等である。
【0042】
データ選択部23は、データ収集部22が収集した時系列データ41から、有用な時系列データ41であるモデルデータ43のみを選択し、データ保持部29にモデルデータ43として記憶する。この際、データ選択部23は複数のモデルデータ43を選択することができる。なお、データ選択部23は、レジスト塗布・現像処理装置によってウエハWを処理した後に、レジスト塗布・現像処理装置によるウエハの処理を評価する検査装置37の評価結果に基づいてモデルデータ43を選択することができる。すなわち、検査装置37により、処理の状態が異常であると評価されたウエハWの時系列データ41は、モデルデータ43として選択されない。
【0043】
この場合、検査装置37は、例えばロット毎の処理の状態の評価を行い、処理の状態が異常であると評価されたウエハWが含まれないロットを正常ロットとして評価し、処理の状態が異常であると評価されたウエハWが含まれるロットを異常ロットとして評価してもよい。そして、データ選択部23は、正常ロットとして評価されたロットの時系列データ41全てをモデルデータ43として選択してもよい。
【0044】
このように、データ選択部23は、レジスト塗布・現像処理装置によってウエハWを処理した後に、レジスト塗布・現像処理装置によるウエハWの処理を評価する検査装置37の評価結果に基づいてモデルデータ43を選択することにより、既に当該レジスト塗布・現像処理装置で正常に処理されたウエハWの時系列データ41を用いるため、新しいレシピに即時に対応することができると共に、装置間の個体差により発生する数値の変動の影響を考慮しなくてもよい。
【0045】
平均データ算出部24は、複数のモデルデータ43から平均データ44を算出し、データ保持部29に平均データ44として記憶する。
【0046】
閾値設定部25は、平均データ算出部24が算出した平均データ44と予め入力された係数データ46及び補正値データ47から、時間と共に変動する上下変動閾値データ45を算出する。ここで、上下変動閾値データ45とは、上限及び下限の変動閾値データのことである。上下変動閾値データ45の算出方法については後述する。
【0047】
判定部26は、データ収集部22が収集した監視対象の時系列データ41を、上下変動閾値データ45と比較し、監視対象の時系列データ41がその閾値範囲外となった場合、異常が発生した旨の判定をする。この場合、監視対象の時系列データ41とは、例えば上下変動閾値データ45を算出するための時系列データ41を収集した後の時系列データ41であり、例えば1つのロットについて時系列データ41を収集した後、次のロットのウエハWの処理において収集された時系列データ41のことをいう。
【0048】
表示処理部27は、例えば、処理部毎の異常判定結果を表示装置28に表示する。また、表示処理部27は、グラフ化した時系列データ41、上下変動閾値データ45等を合わせて表示させてもよい。異常と判断された場合は、表示装置28にアラームメッセージを点滅させたり、アラーム警報を鳴らしてもよい。
【0049】
図4に示すように、異常判定システム20の概略構成は、制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、記憶媒体34、操作部35、表示装置28及び送受信部36から構成される。制御部31、主記憶部32、外部記憶部33、操作部35、表示装置28及び送受信部36はいずれも内部バス38を介して制御部31に接続されている。
【0050】
制御部31は、例えば、CPU等のマイクロプロセッサから構成され、外部記憶部33に記憶されているプログラムや処理条件データ等のレシピに従って、データ収集部22、データ選択部23、平均データ算出部24、閾値設定部25、判定部26及び表示処理部27の処理を実行する。データ収集部22、データ選択部23、平均データ算出部24、閾値設定部25、判定部26及び表示処理部27は、制御部31とその上で実行されるプログラムで実現される。
【0051】
主記憶部32はRAM等から構成され、制御部31の作業領域として用いられる。データ保持部29は、主記憶部32の一部に記憶領域の構造体として記憶保持される。
【0052】
外部記憶部33は、ハードディスク、フラッシュメモリ等から構成され、上記の処理を制御部31に行わせるためのプログラムや処理条件データ等のレシピを予め記憶し、また、制御部31の指示に従って、このプログラムのデータを制御部31に供給し、制御部31から供給されたデータを記憶する。
【0053】
記憶媒体34は、コンピュータ上で動作するプログラムが格納され、コンピュータが読取可能な記憶媒体である。上記の処理を制御部31に行わせるためのプログラムや処理条件データ等のレシピは、記憶媒体34に格納されており、そのプログラム等を外部記憶部33にインストールすることによって予め記憶することができる。記憶媒体34として、DVD、CD−ROM、フレキシブルディスク等を使用することができる。
【0054】
操作部35は、作業者が異常判定システム20に指令を与えるために、キーボード及びマウスなどのデバイス等と、それらを内部バス38に接続するインターフェースを備える。操作部35を介して、上記レシピの選択、異常判定の開始等の指令が入力され、制御部31に供給される。その他、作業者は、例えば係数データ46、補正値データ47等を操作部14から入力して設定・変更することができる。
【0055】
表示装置28は、CRTまたはLCD等のディスプレイから構成され、制御部31の命令によって、グラフ化された時系列データ41、異常判定結果等を表示する。また、表示装置28は制御部31からの命令によって、アラーム警報を鳴らすスピーカ等の出力デバイスを備えてもよい。
【0056】
送受信部36は、各処理部に設置されるセンサ30に接続される配線及び、検査装置37の図示しない出力部に接続される配線を接続可能なインターフェース機能を備える。制御部31は、送受信部36を介して、各センサ30から時系列データ41を入力する。時系列データは、図示しない他のサーバ等に格納されている場合がある。その場合、制御部31は送受信部36を介して、サーバ等から時系列データ41を受信する。
【0057】
次に、閾値設定部25による上下変動閾値データ45の算出方法について説明する。閾値設定部25による上下変動閾値データ45の算出方法は、以下の式(1)で表現することができる。
M=N±k×σ±N×H……(1)
ここで各記号は、
M:上下変動閾値データ値
N:時系列毎の平均データ値
k:係数
σ:その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差
H:補正値 である。
【0058】
係数k及び補正値Hは、作業者が操作部35を通じて設定することができる任意の数値であって、係数k及び補正値Hの数値を変更することにより、上下変動閾値データ45の許容範囲を少なくとも一部の時系列区間で変更可能に設定することができる。ここで、上下変動閾値データ45の許容範囲とは、判定部26が監視対象の時系列データ41を上下変動閾値データ45と比較した場合、異常と判定しない範囲である。
【0059】
例えば処理単位における一部の時系列区間の上下変動閾値データ45の許容範囲を広く設定したい場合は、係数kを大きな数値に設定すればよい。一方、上下変動閾値データ45は、係数kを複数のモデルデータ値の標準偏差σに乗じた値を加え、又は、減じて算出するため、複数のモデルデータ値のばらつきが小さく標準偏差σが小さいと、上下変動閾値データ45の許容範囲が非常に狭くなる問題が生じる。このような場合、上限の変動閾値データ45は、時系列毎の平均データ値Nに、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差σに係数kを乗じた値を加え、更に平均データ値Nに補正値Hを乗じた値を加えて算出し、下限の変動閾値データ45は、時系列毎の平均データ値Nに、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差σに係数kを乗じた値を減じ、更に平均データ値Nに補正値Hを乗じた値を減じて算出すれば、上下変動閾値データ45の許容範囲を適正にすることができる。
【0060】
次に、異常判定システム20による異常判定方法について、図5,図6,図7及び図8を参照して説明する。図5は、異常判定方法の手順を示すフローチャートであって、矢印の方向にステップが進行する。まず、レジスト塗布・現像処理装置の一の処理部に設置されるセンサ30によって出力される信号から、時間と共に変動する時系列データ41を収集する(ステップS1)。この場合、図6(a)に示すように、ステップS1には、上記信号から、処理単位毎の時系列データ41を収集(分割)する工程を含む。ここで、処理単位には、例えば各処理装置にウエハWが搬入されてから、搬出されるまでの1サイクル、あるいは、処理液の供給停止から次の供給停止までの1サイクルが含まれる。
【0061】
次いで、ステップS1によって収集された複数の時系列データ41から、有用な時系列データ41である複数のモデルデータ43を選択する(ステップS2)。モデルデータ43の選択においては、検査装置37で異常と判定されたウエハWの時系列データ41はモデルデータ43として選択されない。例えば、図6(a),(b)に示すように、2処理目に行われた処理の時系列データ41は、検査装置37によりウエハWの処理の状態が異常であると評価されているため、モデルデータ43として選択されない。
【0062】
次いで、選択された複数のモデルデータ43から平均データ44及び標準偏差を算出する(ステップS3)。図7(a)は、算出された平均データ44をグラフ化したものである。
【0063】
次いで、上下変動閾値データ45を上記の式(1)で算出する(ステップS4)。この場合、図7(b)に示すように、上下変動閾値データ45の任意の時系列時点tnにおける値Sは、上記(1)の式から式(2)により表すことができる。
S=A±k×σ±A×H……(2)
ここで各記号は、
S:上下変動閾値データ45の時系列時点tnにおける値(図7(b)参照。図中、上限の変動閾値データ値をSa、下限の変動閾値データ値をSbで表す。)
A:平均データ44の時系列時点tnにおける値(図7(a)参照)
k:係数
σ:複数のモデルデータ43の時系列時点tnにおける値(a1,a2…ax)の標準偏差(図6(b)参照)
H:補正値 である。
【0064】
図7(b)は、算出された上下変動閾値データ45をグラフ化したものである。なお、図7(b)中、点線は平均データ44を、実線は上下変動閾値データ45を表している。
【0065】
次いで、監視対象の時系列データ41を、ステップS4で算出された上下変動閾値データ45と比較することにより、異常の発生を判定する(ステップS5)。図8は、監視対象の時系列データ41と上下変動閾値データ45との比較をグラフ化したものである。なお、図8中、実線は監視対象の時系列データ41を、点線は上下変動閾値データ45を表している。
【0066】
ステップS5において、時系列データ41が、上下変動閾値データ45の範囲内であると判断された場合、正常である旨の判定がなされる(ステップS6)。図8に示すように、2処理目及びX処理目に処理されたウエハWは正常な処理がなされた旨の判定がなされる。一方、時系列データ41が、上下変動閾値データ45の範囲外であると判断された場合、異常である旨の判定がなされる(ステップS7)。図8に示すように、1処理目及び3処理目に処理されたウエハWは異常な処理がなされた旨の判定がなされる。異常な処理がなされた旨の判定の結果、表示装置28にエラーメッセージを点滅させたり、アラーム警報を鳴らす(ステップS8)。
【0067】
このように、上下変動閾値データ45は、取得された時系列データ41に基づいて算出することができるため、例えば新しいレシピによる処理であっても、即時に最適な上下変動閾値データ45を算出することができる。また、直近に取得された時系列データ41により、最新の上下変動閾値データ45を算出してアップデートすることができる。具体的なアップデートとして、例えば直近に取得された時系列データ41を、上下変動閾値データ45を算出したモデルデータ43に加えて、増加された母集団から平均データ44が算出され平均データ44の正確性を向上することができるため、的確かつ最新の上下変動閾値データ45を算出することができる。
【0068】
本実施形態における異常判定システム及び異常判定方法によれば、処理装置(処理部)に設置されるセンサ30によって出力される信号から取得される時系列データ41から、有用な時系列データ41であるモデルデータ43のみを選択し、そのモデルデータ43から上下変動閾値データ45を算出し、監視対象の時系列データ41をその上下変動閾値データ45と比較して異常の発生を判定することにより、時系列データ41の変動や変動タイミングに異常が発生したことを判定することができるため、異常判定の精度を向上することができる。
【0069】
また、上下変動閾値データ45は、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数kを乗じた値を加え、又は、減じて算出することにより、上下変動閾値データ45の的確性を向上させることができるため、異常判定の精度を更に向上することができる。
【0070】
更に、上下変動閾値データ45の算出に際し、平均データ値に補正値Hを乗じた値を加え、又は、減じて算出することにより、上下変動閾値データ45の的確性を更に向上させることができるため、異常判定の精度を更に向上することができる。
【0071】
また、処理装置によってウエハWを処理した後に、検査装置37においてウエハWの処理状態を評価し、その評価結果に基づいてモデルデータ43を選択することにより、正常な処理が行われたウエハWのモデルデータ43のみを用いて上下変動閾値データ45を算出することができるため、異常判定の精度を更に向上することができる。
【0072】
なお、上記異常判定方法においては、全ての時系列区間(T1,T2,T3,T4)に上下変動閾値データ45を算出して設定したが、少なくとも一部の時系列区間例えばT2,T3のみに上下変動閾値データ45を算出してもよい。図7(a)に示す平均データ44によれば、センサ30の検出対象は1の処理単位において、一定の値で推移しながら時系列区間T1を過ぎ、T2に入ると大きな傾きで値が上昇し、その後、T3の終了まで小さな傾きで数値が下降し、最後にT4では一定の値で推移する傾向がある。この場合、一部の時系列区間例えばT2,T3のみに上下変動閾値データ45を算出して設定し、監視対象の時系列データ41の時系列区間T2,T3と比較する。このように構成しても、時系列データ41が大きく変動する時系列区間T2,T3を監視可能であって、時系列データ41の変動や変動タイミングに異常が発生したことを判定することができるため、異常判定の精度を向上することができる。
【0073】
さらに、上記の時系列区間T1,T2,T3,T4毎に異なる係数k及び補正値Hを設定してもよい。
【0074】
次に、レジスト塗布・現像処理装置を構成する複数の処理部の一つである熱処理装置70について上述した異常判定システム20を適用した場合について説明する。この熱処理装置70は、例えば棚ユニットU2に配置される加熱ユニット内に配置されており、塗布ユニットCOTにてレジスト液が塗布されたウエハWを加熱(ベーク処理)する。
【0075】
熱処理装置70は、図9に示すように、表面に塗布膜であるレジスト膜が形成されたウエハWを載置し加熱する熱板71と、熱板71の外周及び下部側を包囲する支持台72と、上方開口部を覆う蓋体73と、蓋体73を開閉する昇降機構73aと、熱板71の下方に配設された昇降駆動機構76によって昇降する支持ピン76aと、を主に備えている。
【0076】
熱板71には、温度制御器74からの出力制御により所定温度に設定される温度ヒータ75が埋設されている。また、熱板71には、この熱板71の温度を検出する温度検出手段である温度センサ30aが取り付けられている。この温度センサ30aによって検出された熱板71の温度の検出信号は、温度制御器74に伝達されると共に、異常判定システム20に伝達される。
【0077】
ここでウエハWの加熱処理時における熱板71の温度変動について図10の実線で表した熱処理装置70の時系列データ41を用いて説明する。まずウエハWが搬入される前では熱板71は温度制御器74から所定温度例えば100℃を保持するように制御をされている。一方、ウエハWは例えばレジスト塗布・現像処理装置が設置されたクリーンルームの温度例えば23℃程度となっている。そして、ウエハWが熱処理装置70に搬入されてウエハWが熱板71に載置されると、ウエハWに熱が吸収されて熱板71の温度が低下する一方、ウエハWの温度は上昇する。一方、温度制御器74は加熱制御に切り換えられ、温度ヒータ75に電力が供給されて加熱が行われる。そのため熱板71の温度は下げ止まりを向かえて上昇カーブを描き始め、目標温度で温度である100℃を越えてオーバーシュートする。その後、温度ヒータ75への供給電力がゼロに設定され、そのため熱板71の温度は降下し始める。熱板71が載置されてから所定時間を経過すると、温度センサ30aの検出値が所定温度例えば100℃を保持するように制御されている。
【0078】
図10における点線は上下変動閾値データ45を表したものである。図10に示された上下変動閾値データ45は、4ロット例えば100枚のウエハWすなわち100個の時系列データ41から算出されたものである。係数k及び補正値Hは、各時系列区間P1,P2,P3毎に設定してもよい。
【0079】
次に、レジスト塗布・現像処理装置を構成する複数の処理部の一つである処理液供給部50について上述した異常判定システム20を適用した場合について説明する。この処理液供給部50は、例えば反射防止膜形成処理、冷却処理が行われたウエハWに対して、レジスト液を塗布する。
【0080】
処理液供給部50は、図11に示すように、液処理ユニットU4の収納部14に載置され、レジスト液が貯留されたレジスト容器51と、このレジスト容器51を加圧管路53aを介して加圧してリザーバタンク52に向けてレジスト液を圧送させる加圧源53と、リザーバタンク52からフィルタ61を介してレジスト液を吸引すると共に、処理液供給管路55aを介してノズル55に向け吐出するダイアフラム式ポンプ54と、ポンプ54を加圧管路56aを介して加圧するための加圧源56と、ポンプ54を減圧管路57aを介して減圧するための減圧源57と、処理液供給管路55aに介設される開閉バルブ59a及びサックバックバルブ59bと、加圧管路56aに介設されポンプ内の圧力を調整する電空レギュレータEVと、減圧管路57aに介設され気体の流れを制限する可変オリフィス58と、ノズル55からレジスト液が吐出されるウエハWを水平に保持し、塗布ユニットCOT内に配置されるスピンチャック60と、で主に構成されている。
【0081】
加圧管路53aには、加圧源53とレジスト容器51の間に圧力センサ30bが設けられ、加圧管路56aには、加圧源56と電空レギュレータEVの間に圧力センサ30cが設けられ、減圧管路57aには、ポンプ54と可変オリフィス58の間に圧力センサ30dが設けられている。また、処理液供給管路55aには、ポンプ54と開閉バルブ59aの間に流量センサ30eが設けられている。これらのセンサ30b,30c,30d,30eによって検出された圧力もしくは流量の検出信号は、異常判定システム20に伝達される。すなわち、処理液供給部50では、4つのセンサ30b,30c,30d,30eによって異常の発生を監視している。
【0082】
図12は、上記4つのセンサ30b,30c,30d,30eのうち、処理液供給管路55aに設けられた流量センサ30eから収集された時系列データ41を用いて算出された、上下限変動閾値データ45を示すグラフである。なお、図12中、点線は上下変動閾値データ45を、実線は処理液供給部50の時系列データ41を表している。図12に示された上下変動閾値データ45は、4ロット例えば100枚のウエハWすなわち100個の時系列データ41から算出されたものである。係数k及び補正値Hは、各時系列区間D1,D2,D3,D4,D5毎に設定してもよい。
【0083】
以上の実施形態では、レジスト塗布・現像処理装置を構成する処理部である熱処理装置70及び処理液供給部50について異常判定システム20を適用した場合について説明したが、レジスト塗布・現像処理装置を構成する他の処理部や機構についても、異常判定システム20により異常の発生を判定することができる。例えば、ウエハWを各処理部に搬送する搬送機構についても本発明を適用することができる。
【0084】
図2に示すように、搬送機構A4は、搬送室15の中央部に設けられ、X軸、Y軸及び鉛直(Z軸)方向に自在に移動することができると共に、アームを鉛直軸回りに回転することができ、受け渡しユニット(TRS)17,高精度温調ユニット(図示せず),周辺露光ユニット19及びバッファカセット(図示せず)及び上記処理ブロック2に備えられた棚ユニットU3にアクセスし、これらの各ユニットとウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0085】
搬送機構A4には、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれの位置を検出する位置センサ(図示せず)およびアームの回転角度θを検出する位置センサ(図示せず)と、搬送機構A4の速度を検出する速度センサ(図示せず)、搬送機構A4を動かすトルクを検出するトルクセンサ(図示せず)等が設けられている。それらのセンサから検出された位置、速度及びトルクの検出信号は異常判定システム20に伝達され、時間と共に変動する時系列データ41として取得することができる。その時系列データ41から、上下変動閾値データ45を算出し、異常処理の発生を判定することができる。
【0086】
以上、この発明の実施の形態の一例について説明したが、この発明はこの形態に限らず種々の態様を採りうるものである。例えば、上述した検査装置37は、塗布・現像処理装置内に組み込まれていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、塗布・現像処理装置とは独立した装置としてウエハWの検査を行うように構成してもよい。また、上記実施形態では、データ選択部23によるモデルデータ43の選択は、通常の処理を受けたウエハWについて検査装置37によって評価した結果に基づいて行ったが、例えば、検査ウエハを塗布・現像処理装置に流して処理状態が正常な時系列データ41のみをモデルデータ43として選択してもよく、また、他の塗布・現像処理装置において収集されたモデルデータ43に基づいて上下変動閾値データ45を算出してもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、この発明に係る異常判定システムを塗布・現像処理装置に設置されるセンサである温度センサ,圧力センサ等に適用する場合について説明したが、例えば、電力センサ,電磁波センサ,振動センサ等の他のセンサにも適用することが可能である。
【0088】
また、上記実施形態では、この発明に係る異常判定システムを半導体ウエハの塗布・現像処理装置に適用する場合について説明したが、半導体ウエハ以外の被処理体、例えば、FPD基板等の塗布・現像処理装置にも適用することが可能である。また、この発明に係る異常判定システムは、複数の処理を行う塗布・現像処理装置のみならず、1の処理のみを行う処理装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
W ウエハ(被処理体)
T1〜T4,P1〜P3,D1〜D5 時系列区間
20 異常判定システム
22 データ収集部
23 データ選択部
24 平均データ算出部
25 閾値設定部
26 判定部
30 センサ
30a 温度センサ
30b,30c,30d 圧力センサ
30e 流量センサ
37 検査装置
41 時系列データ
42 評価データ
43 モデルデータ
44 平均データ
45 上下変動閾値データ
46 係数データ(係数)
47 補正値データ(補正値)
50 処理液供給部(処理部)
70 熱処理装置(処理部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を処理する処理装置に設置されるセンサによって出力される信号から、時間と共に変動する時系列データを収集するデータ収集部と、
上記データ収集部が収集した時系列データから、有用な時系列データであるモデルデータのみを選択するデータ選択部と、
上記データ選択部が選択した上記モデルデータから、時間と共に変動する変動閾値データを算出する閾値設定部と、
上記データ収集部が収集した監視対象の時系列データを、上記変動閾値データと比較することにより、異常の発生を判定する判定部と、
を具備することを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項2】
請求項1記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記データ収集部は、上記処理装置の処理単位毎の時系列データを収集する、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項3】
請求項1記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記被処理体は、上記処理装置を構成する複数の処理部により複数の処理がなされ、上記データ収集部は、上記処理部に設置されるセンサによって出力される信号から、上記処理部の処理単位毎の時系列データを収集する、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記閾値設定部は、上記処理単位における少なくとも一部の時系列区間の変動閾値データを算出する、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記データ選択部は、複数のモデルデータを選択し、その複数のモデルデータから平均データを算出する平均データ算出部を更に備え、上記閾値設定部は、上記平均データから、上記変動閾値データを算出する、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記閾値設定部は、上限及び下限の変動閾値データを算出する、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記閾値設定部は、上記変動閾値データの許容範囲を、少なくとも一部の時系列区間で変更可能に設定されている、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項8】
請求項6又は7記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記上限の変動閾値データは、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数を乗じた値を加えて算出され、上記下限の変動閾値データは、上記平均データ値に、上記標準偏差に上記係数を乗じた値を減じて算出される、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項9】
請求項6又は7記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記上限の変動閾値データは、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数を乗じた値を加え、更に上記平均データ値に補正値を乗じた値を加えて算出され、上記下限の変動閾値データは、上記平均データ値に、上記標準偏差に上記係数を乗じた値を減じ、更に上記平均データ値に補正値を乗じた値を減じて算出される、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の処理装置の異常判定システムにおいて、
上記データ選択部は、上記処理装置によって上記被処理体を処理した後に、上記処理装置による上記被処理体の処理を評価する検査装置の評価結果に基づいて上記モデルデータを選択する、ことを特徴とする処理装置の異常判定システム。
【請求項11】
被処理体を処理する処理装置に設置されるセンサによって出力される信号から、時間と共に変動する時系列データを収集するデータ収集ステップと、
上記データ収集ステップによって収集された時系列データから、有用な時系列データであるモデルデータのみを選択するデータ選択ステップと、
上記データ選択ステップによって選択された上記モデルデータから、時間と共に変動する変動閾値データを算出する閾値設定ステップと、
上記データ収集ステップにて収集した監視対象の時系列データを、上記変動閾値データと比較することにより、異常の発生を判定する判定ステップと、
を具備することを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項12】
請求項11記載の処理装置の異常判定方法において、
上記データ収集ステップは、上記処理装置の処理単位毎の時系列データを収集する、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項13】
請求項12記載の処理装置の異常判定方法において、
上記被処理体は、上記処理装置を構成する複数の処理部により複数の処理がなされ、上記データ収集ステップは、上記処理部に設置されるセンサによって出力される信号から、上記処理部の処理単位毎の時系列データを収集する、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の処理装置の異常判定方法において、
上記閾値設定ステップは、上記処理単位における少なくとも一部の時系列区間の変動閾値データを算出する、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項15】
請求項11ないし14のいずれかに記載の処理装置の異常判定方法において、
上記データ選択ステップは、複数のモデルデータを選択し、その複数のモデルデータから平均データを算出する平均データ算出ステップを更に備え、上記閾値設定ステップは、上記平均データから、上記変動閾値データを算出する、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項16】
請求項11ないし15のいずれかに記載の処理装置の異常判定方法において、
上記閾値設定ステップは、上限及び下限の変動閾値データを算出する、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項17】
請求項11ないし16のいずれかに記載の処理装置の異常判定方法において、
上記閾値設定ステップは、上記変動閾値データの許容範囲を、少なくとも一部の時系列区間で変更可能に設定されている、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項18】
請求項16又は17記載の処理装置の異常判定方法において、
上記上限の変動閾値データは、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数を乗じた値を加えて算出され、上記下限の変動閾値データは、上記平均データ値に、上記標準偏差に上記係数を乗じた値を減じて算出される、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項19】
請求項16又は17記載の処理装置の異常判定方法において、
上記上限の変動閾値データは、時系列毎の平均データ値に、その時系列時点における複数のモデルデータ値の標準偏差に係数を乗じた値を加え、更に上記平均データ値に補正値を乗じた値を加えて算出され、上記下限の変動閾値データは、上記平均データ値に、上記標準偏差に上記係数を乗じた値を減じ、更に上記平均データ値に補正値を乗じた値を減じて算出される、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。
【請求項20】
請求項11ないし19のいずれかに記載の処理装置の異常判定方法において、
上記データ選択ステップは、上記処理装置によって上記被処理体を処理した後に、上記処理装置による上記被処理体の処理を評価する検査装置の評価結果に基づいて上記モデルデータを選択する、ことを特徴とする処理装置の異常判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−151216(P2012−151216A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7712(P2011−7712)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】