説明

処理設備、掘削土砂の処理方法、シールド機、トンネルの構築方法及びその構築方法により構築されたトンネル

【課題】安定した品質の裏込材や流動化処理土を供給可能で、かつ、それらの圧送距離が短くてすむ掘削土砂の処理設備を提供する。
【解決手段】処理設備1は、シールド機6の掘削により生じる掘削土砂を解泥して裏込用泥水及び流動化用泥水を作製する解泥設備2と、裏込用泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材を作製する裏込設備3と、流動化用泥水と固化材とを混合して埋戻しに利用するための流動化処理土を作製する流動化設備4とから構成されている。処理設備1は、シールド機6の後方に配置される第一架台5a、第二架台5bに積載され、シールド機6の掘削により構築されるトンネル7内に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機の掘進により生じる掘削土砂の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド機の掘進により生じる掘削土砂は産業廃棄物として処分しなければならないので処理費用がかかる。そこで、この掘削土砂を裏込材や埋戻材として利用する技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、掘削土砂に水、固化材等を添加して裏込材を作製し、この裏込材をセグメントと地山との間のテールボイドに充填する方法が開示されている。この方法では、まず、地上で掘削土砂に水及び固化材を添加して比重、マーシュファンネル粘性、フロー値をそれぞれ1.05〜1.3、18〜26秒、8〜15秒に調整して長距離の圧送が可能な裏込材を作製し、次に、この裏込材をポンプでトンネル内の注入口に圧送して、注入口で急結材と混合してテールボイドに充填する。
【0004】
また、特許文献2には、掘削土砂に水及び固化材等を混合して埋戻材である流動化処理土を作製し、この流動化処理土をインバート部に打設する方法が開示されている。この方法では、まず、トンネル内に設けられた撹拌装置に搬送された掘削土砂に水及び固化材等を添加して流動化処理土を作製し、次に、この流動化処理土をポンプでインバート部に圧送して、打設する。
【特許文献1】特開2001−49994号公報
【特許文献2】特開2005−139840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の方法では、注入口から離れている地上で裏込材を作製するので、地上から注入口までの長距離を圧送可能となるように裏込材の比重及び粘性が限定されてしまうという問題点があった。
さらに、圧送距離が長いので配管距離が長くなり、配管の設置作業の手間がかかるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の方法では、掘削土砂の性質は地質の変化にともなって変化しているにもかかわらず、掘削土砂の比重調整や粒径調整をおこなわずに水及び固化材等を添加して流動化処理土を作製し、この流動化処理土をインバート部に打設するので、インバート部の品質にばらつきが生じるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、安定した品質の裏込材や流動化処理土を供給可能で、かつ、それらの圧送距離が短くてすむ掘削土砂の処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の処理設備は、シールド機の掘進により生じる掘削土砂を処理するための処理設備であって、前記掘削土砂を解泥して所定の比重の泥水を作製する解泥設備と、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材を作製する裏込設備とを前記シールド機の掘進により構築されるトンネル内に備えることを特徴とする(第1の発明)。
本発明による処理設備によれば、解泥設備を備えているので、所定の比重の泥水を作製することが可能となる。また、裏込設備を備えているので、その泥水と固化材とを混合して裏込材を作製することが可能となる。
そして、解泥設備及び裏込設備は、トンネル内に設けられているので、解泥設備から裏込設備までの泥水の搬送距離、及び裏込設備から裏込材を注入するための注入口までの裏込材の圧送距離が短くてすむ。さらに、裏込材の圧送距離が短くてすむので、圧送距離が長い場合に比べて裏込材の比重及び粘性の範囲を広くすることができる。したがって、これまでよりも多くの量の掘削土砂をリサイクルすることが可能となる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記トンネル内に、前記泥水と前記固化材とを混合して流動化処理土を作製する流動化設備を更に備えることを特徴とする。
本発明による処理設備によれば、流動化設備を更に備えているので、解泥設備で作製された泥水と固化材とを混合して埋戻材の流動化処理土を作製することが可能となる。
そして、流動化設備は、トンネル内に設けられているので、流動化設備から流動化処理土を打設する位置までの圧送距離が短くてすむ。さらに、流動化処理土の圧送距離が短くてすむので、圧送距離が長い場合よりも流動化処理土の比重及び粘性の範囲を広くすることが可能となる。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記シールド機の移動に追随して移動可能であることを特徴とする。
本発明による処理設備によれば、シールド機の掘進にともなって移動するので、シールド機本体とそれらの設備との取り合い位置関係が変化しない。したがって、切羽から解泥設備までの距離、解泥設備から裏込設備までの距離、解泥設備から流動化設備までの距離、裏込設備から注入口までの距離、流動化設備から流動化処理土の打設位置までの距離は、常に一定なので、シールド機の移動にともなう泥水用、裏込材用、流動化処理土用の配管の段取換作業等の手間を省くことが可能となる。
【0011】
第4の発明は、第3の発明において、前記トンネル内に構築された覆工体の内周面を滑って移動することを特徴とする。
本発明による処理設備によれば、トンネル内に設置された覆工体の内周面を滑って移動するので、従来、実施していたレールの敷設作業を省くことが可能となる。また、レールからの脱線が無くなり、安全に移動することが可能となる。
【0012】
第5の発明は、第2の発明において、前記裏込設備、前記流動化設備は、切羽に向かって左右に振り分けて配置されていることを特徴とする。
本発明による処理設備によれば、例えば、トンネル内の切羽に向かって左側に裏込設備を、右側に流動化設備を配置するので、裏込材や流動化処理土を効率良く作製することが可能となる。無論、トンネル内の切羽に向かって右側に裏込設備を、左側に流動化設備を配置しても同様の効果が得られる。
【0013】
第6の発明の掘削土砂の処理方法は、シールド機の掘進により生じる掘削土砂の処理方法において、前記シールド機の掘進により構築されるトンネル内で、前記掘削土砂を解泥して所定の比重の泥水を作製し、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材を作製することを特徴とする。
本発明による掘削土砂の処理方法によれば、シールド機の掘進により生じる掘削土砂を裏込材として利用するので、地上に排出する掘削土砂を少なくすることができる。
【0014】
第7の発明は、第6の発明において、前記トンネル内で、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して流動化処理土を作製することを特徴とする。
本発明による掘削土砂の処理方法によれば、シールド機の掘進により生じる掘削土砂を流動化処理土として利用するので、地上に排出する掘削土砂を少なくすることができる。
【0015】
第8の発明は、第7の発明において、前記裏込材を作製する裏込設備、前記流動化処理土を作製する流動化設備を設け、該裏込設備、該流動化設備を切羽に向かって左右に振り分けて配置することを特徴とする。
本発明による掘削土砂の処理方法によれば、例えば、トンネル内の切羽に向かって左側に裏込設備を、右側に流動化設備を配置するので、裏込材や流動化処理土を効率良く作製することが可能となる。無論、トンネル内の切羽に向かって右側に裏込設備を、左側に流動化設備を配置しても同様の効果が得られる。
【0016】
第9の発明のシールド機は、地山にトンネルを掘削するためのシールド機であって、前記シールド機の掘進により生じる掘削土砂を解泥して所定の比重の泥水を作製する解泥設備と前記泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材を作製する裏込設備とから構成される処理設備を備えることを特徴とする。
本発明によるシールド機によれば、解泥設備を備えているので、所定の比重の泥水を作製することが可能となる。また、裏込設備を備えているので、その泥水と固化材とを混合して裏込材を作製することが可能となる。
そして、処理設備は、トンネル内に設けられているので、解泥設備から裏込設備までの泥水の搬送距離、及び裏込設備から裏込材を注入するための注入口までの裏込材の圧送距離が短くてすむ。さらに、裏込材の圧送距離が短くてすむので、圧送距離が長い場合に比べて裏込材の比重及び粘性の範囲を広くすることが可能となる。
【0017】
第10の発明は、第9の発明において、前記処理設備は、前記泥水と前記固化材とを混合して流動化処理土を作製する流動化設備を更に備えることを特徴とする。
本発明によるシールド機によれば、流動化設備を更に備えているので、解泥設備で作製された泥水と固化材とを混合して埋戻材の流動化処理土を作製することが可能となる。
そして、流動化設備は、トンネル内に設けられているので、流動化設備から流動化処理土を打設する位置までの圧送距離が短くてすむ。さらに、流動化処理土の圧送距離が短くてすむので、圧送距離が長い場合よりも流動化処理土の比重及び粘性の範囲を広くすることが可能となる。
【0018】
第11の発明は、第9又は10の発明において、前記処理設備は、前記シールド機の移動に追随して移動可能であることを特徴とする。
本発明によるシールド機によれば、処理設備は、シールド機の掘進にともなって移動するので、シールド機本体とそれらの設備との取り合い関係が変化しない。したがって、切羽から解泥設備までの距離、解泥設備から裏込設備までの距離、解泥設備から流動化設備までの距離、裏込設備から注入口までの距離、流動化設備から流動化処理土の打設位置までの距離は、常に一定なので、シールド機の移動にともなう泥水用、裏込材用、流動化処理土用の配管の段取換作業等の手間を省くことが可能となる。
【0019】
第12の発明は、第11の発明において、前記処理設備は、前記トンネル内に構築された覆工体の内周面を滑って移動することを特徴とする。
本発明によるシールド機によれば、処理設備は、トンネル内に設置された覆工体の内周面を滑って移動するので、従来実施していたレールの敷設作業を省くことが可能となる。また、レールからの脱線が無くなり、安全に移動することが可能となる。
【0020】
第13の発明は、第10の発明において、前記裏込設備、前記流動化設備は、切羽に向かって左右に振り分けて配置されていることを特徴とする。
本発明によるシールド機によれば、例えば、トンネル内の切羽に向かって左側に裏込設備を、右側に流動化設備を配置するので、裏込材や流動化処理土を効率良く作製することが可能となる。無論、トンネル内の切羽に向かって右側に裏込設備を、左側に流動化設備を配置しても同様の効果が得られる。
【0021】
第14の発明のトンネルの構築方法は、トンネルの構築方法において、シールド機により掘削されたトンネル内で、前記掘進により生じる掘削土砂を解泥して所定の比重の泥水を作製し、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材として用いることを特徴とする。
【0022】
第15の発明は、第14の発明において、前記トンネル内で、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して流動化処理土として用いることを特徴とする。
【0023】
第16の発明のトンネルは、第14又は15の発明のトンネルの構築方法にて構築されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の処理設備を用いることにより、安定した品質の流動化処理土を供給可能で、かつ、その流動化処理土の圧送距離が短くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るシールド機の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る処理設備1の側面図である。図1に示すように、処理設備1は、シールド機6の掘削により生じる掘削土砂を解泥して裏込用泥水及び流動化用泥水を作製する解泥設備2と、裏込用泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材を作製する裏込設備3と、流動化用泥水と固化材とを混合して埋戻しに利用するための流動化処理土を作製する流動化設備4とから構成されている。
【0026】
処理設備1は、シールド機6の後方に配置される第一架台5a、第二架台5bに積載され、シールド機6の掘削により構築されるトンネル7内に設けられている。具体的には、解泥設備2は第一架台5aに、裏込設備3及び流動化設備4は第二架台5bにそれぞれ積載されている
シールド機6の後端部と第一架台5aの切羽側端部、及び第一架台5aの坑口側端部と第二架台5bの切羽側端部はそれぞれ連結手段8a、8bで連結されており、第一架台5a及び第二架台5bはシールド機6の掘進に追随して移動可能である。
第一架台5a、第二架台5bは、トンネル内に構築された覆工体10の内周面を滑って移動するための移動手段9をそれぞれ備えている。
【0027】
移動手段9は、両架台5a、5bの重量を支持するための支持部9aと、覆工体10の内周面に沿って滑動するための滑動部9bとから構成される。滑動部9bの材質は、本実施形態では、摩擦抵抗が小さく、かつ、摩耗が少ないテフロン(登録商標)を用いた。ただし、テフロンに限定されるものではなく、摩擦抵抗が小さく、かつ、摩耗が少ない材料であれば他の材料を用いてもよい。
【0028】
図2は、解泥設備2を拡大して示す側面図であり、図3及び図4は、それぞれ図2のA−A矢視図、B−B矢視図である。図2〜図4に示すように、解泥設備2は、土塊状の掘削土砂を破砕する解砕機20と、破砕された掘削土砂に水を加えて一次溶解泥水を作製する一次解泥機21と、一次溶解泥水内に含まれる未溶解固形分を除去する第一の振動ふるい23と、第一の振動ふるい23を通過した一次溶解泥水の比重を調整して裏込用泥水を作製する裏込用調整槽24と、第一の振動ふるい23を通過しない未溶解固形分に水を加えて二次溶解泥水を作製する二次解泥機26と、二次溶解泥水に含まれる未溶解固形分を除去する第二の振動ふるい28と、第二の振動ふるい28を通過した二次溶解泥水の比重を調整して流動化用泥水を作製する流動化用調整槽25と、破砕された掘削土砂、未溶解固形分のそれぞれに加える水を貯留する第一の水タンク22、第二の水タンク27とを備えている。
【0029】
解砕機20は、土塊状の掘削土砂を所定の外径よりも小さくなるように破砕する。
一次解泥機21は、第一の水タンク22から供給される水と解砕機20で破砕された掘削土砂とを混合し、掘削土砂を溶解して一次溶解泥水を作製する。
第一の振動ふるい23は、一次溶解泥水のうち、所定の粒径よりも大きい未溶解固形分を除去する。
裏込用調整槽24は、第一の振動ふるい23を通過した一次溶解泥水の比重を所定の値になるように調整して裏込用泥水を作製するとともに、この裏込用泥水を貯留する。
【0030】
二次解泥機26は、第一の振動ふるい23で除去された未溶解固形分と水とを混合し、未溶解固形分を溶解して二次溶解泥水を作製する。
第二の振動ふるい28は、二次溶解泥水のうち、所定の粒径よりも大きい未溶解固形分を除去する。
流動化用調整槽25は、第二の振動ふるい28を通過した二次溶解泥水の比重を所定の値になるように調整して流動化用泥水を作製するとともに、この流動化用泥水を貯留する。
【0031】
また、図3及び図4に示すように、第一架台5aの切羽に向かって左側(以下、単に「左側」あるいは「右側」というときは、切羽に向かって左側あるいは右側であることを意味するものとする。)に、主に裏込用泥水を作製するための装置類、すなわち、解砕機20、第一の水タンク22、一次解泥機21、第一の振動ふるい23、裏込用調整槽24を配置した。また、第一架台5aの右側に、主に流動化用泥水を作製するための装置類、すなわち、第二の水タンク27、二次解泥機26、第二の振動ふるい28、流動化用調整槽25を配置した。
【0032】
主に裏込用泥水を作製するための装置類を左側にまとめて配置し、主に流動化用泥水を作製するための装置類を右側にまとめて配置することにより、掘削土砂や一次溶解泥水や二次溶解泥水を送給するための各配管を短くできるので、解泥設備2をトンネル7内の狭いスペースに構築することが可能となる。
【0033】
なお、本実施形態においては、第一架台5aの左側に裏込用泥水を作製するための装置類を、右側に流動化用泥水を作製するための装置類を配置する場合について説明したが、左右を逆にしてもよい。
【0034】
図5は、本実施形態における解泥設備2を用いた解泥の手順を示す図である。図5に示すように、シールド機6の掘進により生じた様々な大きさの土塊状の掘削土砂はベルトコンベア11にて後方に運搬されて、所定の量だけ解砕機20に投入され(図中右上)、残りの掘削土砂はトンネルの外に搬出される。
【0035】
解砕機20に投入された土塊状の掘削土砂は、例えば、外径が50mm以下になるように破砕される。破砕された掘削土砂は、解砕機20の下側に設けられた一次解泥機21に送給される。
【0036】
なお、本実施形態においては、解砕機20で破砕する土塊状の掘削土砂の外径を50mm以下としたが、これに限定されるものではなく、設計等により決定された値を適用する。
【0037】
一次解泥機21に送給された掘削土砂は、第一の水タンク22から供給された水と混合され、溶解して一次溶解泥水となる。一次溶解泥水は、ポンプP1で第一の振動ふるい23に送給される。
【0038】
第一の振動ふるい23に送給された一次溶解泥水のうち、粒径が0.85mm以下の泥水はふるいを通過し、第一の振動ふるい23の下側に設けられた裏込用調整槽24に送給される。一方、粒径が0.85mmよりも大きい未溶解固形分は、ふるいを通過できずに除去される。この除去された未溶解固形分は二次解泥機26に送給され、水と混合される
なお、本実施形態においては、第一の振動ふるい23を通過する一次溶解泥水の粒径を0.85mmとしたが、これに限定されるものではなく、設計等により決定された値を適用する。
【0039】
裏込用調整槽24に送給された一次溶解泥水は、比重が、例えば、1.35となるように第一の水タンク22から供給された水と混合して調整されて、裏込用泥水となる。裏込用泥水は、裏込用調整槽24に貯蔵され、裏込材を注入する際(後述する)に裏込設備3に送給される。
【0040】
二次解泥機26に送給された未溶解固形分は、第二の水タンク27から供給された水と混合され、溶解して二次溶解泥水となる。二次溶解泥水は、ポンプP2で第二の振動ふるい28に送給される。
【0041】
第二の振動ふるい28に送給された二次溶解泥水のうち、粒径が2.00mm以下の泥水はふるいを通過し、第二の振動ふるい28の下側に設けられた流動化用調整槽25に送給される。一方、粒径が2.00mmよりも大きい未溶解固形分は、ふるいを通過できずに除去される。この除去された未溶解固形分は、再び二次解泥機26に送給される。
【0042】
なお、本実施形態においては、第二の振動ふるい28を通過する二次溶解泥水の粒径を2.00mmとしたが、これに限定されるものではなく、設計等により決定された値を適用する。
【0043】
流動化用調整槽25に送給された二次溶解泥水は、比重が、例えば、1.50になるように第二の水タンク27から供給された水と混合して調整されて、流動化用泥水となる。流動化用泥水は、流動化用調整槽25に貯蔵され、インバート等を打設する際(後述する)に流動化設備4に送給される。
【0044】
裏込用調整槽24と流動化用調整槽25とは泥水を送給可能な連結管29a、29bで連結されている。具体的には、裏込用調整槽24から流動化用調整槽25に裏込用泥水を送給するための連結管29aと、流動化用調整槽25から裏込用調整槽24に流動化用泥水を送給するための連結管29bとが設けられている。裏込用泥水の比重が1.35よりも小さい場合には、比重が1.50の流動化用泥水をポンプP3で裏込用調整槽24に適量供給することにより裏込用泥水の比重を容易に1.35にすることができる。また、流動化用泥水の比重が1.50よりも大きい場合には、比重が1.35の裏込用泥水をポンプP4で流動化用調整槽25に適量供給することにより流動化用泥水の比重を容易に1.50にすることができる。
【0045】
図6は、本実施形態に係る裏込設備3及び流動化設備4を拡大して示す側面図であり、図7及び図8は、それぞれ図6のC−C矢視図、D−D矢視図である。図6〜図8に示すように、裏込設備3は、固化材を貯蔵するための裏込用固化材サイロ30と、安定材を貯留するための裏込用安定材タンク31と、水を貯留するための第三の水タンク32と、固化材と安定材と水と裏込用泥水とを混練するための裏込用ミキサー33と、混練して作製された裏込材を注入口に供給するための裏込用注入ポンプ34と、急結材を貯留するための急結材タンク35と、急結材を注入口に供給するための急結材注入ポンプ36とを備えている。
【0046】
裏込材を注入する際は、解泥設備2で作製された裏込用泥水がポンプP5(図5参照)で裏込用ミキサー33に送給される。そして、この裏込用ミキサー33にて裏込用泥水と固化材と安定材と水とが混練されて裏込材が作製され、裏込用注入ポンプ34で注入口(図示しない)に送給される。注入口に送給された裏込材は、注入口付近で急結材と混合され、テールボイド(図示しない)に注入される。
【0047】
流動化設備4は、セメント等の固化材を貯蔵するための流動化用固化材サイロ40と、安定材を貯留するための流動化用安定材タンク41と、第三の水タンク32と、固化材と安定材と水と流動化用泥水とを混練するための流動化用ミキサー43と、混練して作製された流動化処理土を打設口に供給するための流動化用注入ポンプ44と、急結材タンク35と、急結材注入ポンプ36とを備えている。ここで、第三の水タンク32、急結材タンク35、急結材注入ポンプ36は、裏込設備3と共有して使用される。
【0048】
流動化処理土をインバート部に打設する際は、解泥設備2で作製された流動化用泥水がポンプP6(図5参照)で流動化用ミキサー43に送給される。そして、この流動化用ミキサー43にて流動化用泥水と固化材と安定材と水とが混練されて流動化処理土が作製され、流動化用注入ポンプ44で打設口(図示しない)に送給される。打設口に送給された流動化処理土は、打設口付近で急結材と混合され、インバート部に打設される。
【0049】
本実施形態においては、流動化設備4の第三の水タンク32、急結材タンク35及び急結材注入ポンプ36を裏込設備3と共用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、裏込設備3と流動化設備4とがこれらの装置をそれぞれ備えてもよい。
【0050】
また、解泥設備2の場合と同様に、図7及び図8に示すように、第二架台5bの左側に、裏込設備3を構成する装置類、すなわち、裏込用固化材サイロ30、裏込用安定材タンク31、裏込用ミキサー33、裏込用注入ポンプ34、急結材タンク35、急結材注入ポンプ36を配置した。また、第二架台5bの右側には、流動化設備4を構成する装置類、すなわち、流動化用固化材サイロ40、流動化用安定材タンク41、第三の水タンク32、流動化用ミキサー43、流動化用注入ポンプ44を配置した。
【0051】
主に裏込設備3を構成する装置類を左側にまとめて配置し、主に流動化設備4を構成する装置類を右側にまとめて配置することにより、解泥設備2の場合と同様に、裏込用泥水や流動化用泥水や固化材等を送給するための各配管を短くできるので、裏込設備3及び流動化設備4をトンネル7内の狭いスペースに構築することが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態においては、第二架台5bの左側に裏込設備3を構成する装置類を、右側に流動化設備4を構成する装置類を配置する場合について説明したが、左右を逆にしてもよい。
【0053】
以上説明した処理設備1によれば、解泥設備2を備えているので、比重の異なる裏込用泥水、流動化用泥水を作製することが可能となる。
【0054】
また、処理設備1は、裏込設備3を備えているので、裏込用泥水と固化材とを混合して裏込材を作製することが可能となる。
さらに、処理設備1は、流動化設備4を備えているので、流動化用泥水と固化材とを混合して流動化処理土を作製することが可能となる。
【0055】
そして、解泥設備2、裏込設備3及び流動化設備4は、トンネル7内に設けられており、解泥設備2から裏込設備3までの泥水の圧送距離、裏込設備3から裏込材を注入するための注入口までの裏込材の圧送距離、及び流動化設備4から流動化処理土を打設する位置までの圧送距離が短いので、裏込材及び流動化処理土の比重及び粘性の範囲を広くすることができる。したがって、これまでよりも多くの量の掘削土砂をリサイクルすることが可能となる。
【0056】
また、処理設備1は、シールド機6の掘進にともなって移動するので、シールド機6本体との取り合い位置関係が変化しない。したがって、切羽から解泥設備2までの距離、解泥設備2から裏込設備3までの距離、解泥設備2から流動化設備4までの距離、裏込設備3から注入口までの距離、流動化設備4から流動化処理土の打設位置までの距離は、常に一定なので、シールド機6の移動にともなう泥水、裏込材、流動化処理土の配管の段取換作業等の手間を省くことが可能となる。
【0057】
そして、処理設備1は、トンネル7内に設置された覆工体10の内周面を滑って移動するので、従来、実施していたレールの敷設作業を省くことができるとともに、レールからの脱線が無くなり、安全に移動することが可能となる。
【0058】
また、処理設備1をトンネル7内に設けることにより、シールド機6の掘進により生じる掘削土砂を裏込材や流動化処理土として利用するので、地上に排出する掘削土砂を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る処理設備の側面図である。
【図2】解泥設備を拡大して示す側面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】図2のB−B矢視図である。
【図5】本実施形態における解泥設備を用いた解泥の手順を示す図である。
【図6】本実施形態に係る裏込設備及び流動化設備を拡大して示す側面図である。
【図7】図6のC−C矢視図である。
【図8】図6のD−D矢視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 処理設備
2 解泥設備
3 裏込設備
4 流動化設備
5a 第一架台
5b 第二架台
6 シールド機
7 トンネル
8a、8b 連結手段
9 移動手段
9a 支持部
9b 滑動部
10 覆工体
11 ベルトコンベア
20 解砕機
21 一次解泥機
22 第一の水タンク
23 第一の振動ふるい
24 裏込用調整槽
25 流動化用調整槽
26 二次解泥機
27 第二の水タンク
28 第二の振動ふるい
29a、29b 連結管
30 裏込用固化材サイロ
31 裏込用安定材タンク
32 第三の水タンク
33 裏込用ミキサー
34 裏込用注入ポンプ
35 急結材タンク
36 急結材注入ポンプ
40 流動化用固化材サイロ
41 流動化用安定材タンク
43 流動化用ミキサー
44 流動化用注入ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機の掘進により生じる掘削土砂を処理するための処理設備であって、
前記掘削土砂を解泥して所定の比重の泥水を作製する解泥設備と、
前記泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材を作製する裏込設備とを前記シールド機の掘進により構築されるトンネル内に備えることを特徴とする処理設備。
【請求項2】
前記トンネル内に、前記泥水と前記固化材とを混合して流動化処理土を作製する流動化設備を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の処理設備。
【請求項3】
前記シールド機の移動に追随して移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の処理設備。
【請求項4】
前記トンネル内に構築された覆工体の内周面を滑って移動することを特徴とする請求項3に記載の処理設備。
【請求項5】
前記裏込設備、前記流動化設備は、切羽に向かって左右に振り分けて配置されていることを特徴とする請求項2に記載の処理設備。
【請求項6】
シールド機の掘進により生じる掘削土砂の処理方法において、
前記シールド機の掘進により構築されるトンネル内で、前記掘削土砂を解泥して所定の比重の泥水を作製し、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材を作製することを特徴とする掘削土砂の処理方法。
【請求項7】
前記トンネル内で、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して流動化処理土を作製することを特徴とする請求項6に記載の掘削土砂の処理方法。
【請求項8】
前記裏込材を作製する裏込設備、前記流動化処理土を作製する流動化設備を設け、該裏込設備、該流動化設備を切羽に向かって左右に振り分けて配置することを特徴とする請求項7に記載の掘削土砂の処理方法。
【請求項9】
地山にトンネルを掘削するためのシールド機であって、
前記シールド機の掘進により生じる掘削土砂を解泥して所定の比重の泥水を作製する解泥設備と前記泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材を作製する裏込設備とから構成される処理設備を備えることを特徴とするシールド機。
【請求項10】
前記処理設備は、前記泥水と前記固化材とを混合して流動化処理土を作製する流動化設備を更に備えることを特徴とする請求項9に記載のシールド機。
【請求項11】
前記処理設備は、前記シールド機の移動に追随して移動可能であることを特徴とする請求項9又は10に記載のシールド機。
【請求項12】
前記処理設備は、前記トンネル内に構築された覆工体の内周面を滑って移動することを特徴とする請求項11に記載のシールド機。
【請求項13】
前記裏込設備、前記流動化設備は、切羽に向かって左右に振り分けて配置されていることを特徴とする請求項10に記載のシールド機。
【請求項14】
トンネルの構築方法において、
シールド機により掘削されたトンネル内で、前記掘進により生じる掘削土砂を解泥して所定の比重の泥水を作製し、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して裏込材として用いることを特徴とするトンネルの構築方法。
【請求項15】
前記トンネル内で、前記泥水とセメント等の固化材とを混合して流動化処理土として用いることを特徴とする請求項14に記載のトンネルの構築方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載のトンネルの構築方法にて構築されたことを特徴とするトンネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−1989(P2009−1989A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161793(P2007−161793)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(591022232)株式会社三央 (2)
【Fターム(参考)】