説明

凹凸ハードコートフイルムとその製造方法、並びにそれを使用して得る装飾体

【課題】表面に凹凸を有する凹凸ハードコートフイルムにおいて、ハードコート層表面のハードコート性、耐擦傷性、フイルム自体の耐カール性に優れている凹凸ハードコートフイルムを提供することと、プラスチックフイルムとハードコート層との密着力が強く、使用する賦形材の選択に多様性がある、表面に凹凸を有する凹凸ハードコートフイルムの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の凹凸ハードコートフイルムは、プラスチックフイルムの少なくとも片面に、紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層されたハードコートフイルムであって、紫外線硬化型樹脂にシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートを使用する事と、紫外線硬化型樹脂を硬化させる際、紫外線をプラスチックフイルム側から照射することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸を有する凹凸ハードコートフイルムにおいて、ハードコート層表面のハードコート性、耐擦傷性に優れ、ハードコートフイルム自体の耐カール性にも優れ、さらにプラスチックフイルムとハードコート層との密着力も強い、表面に凹凸を有する凹凸ハードコートフイルムとその製造方法、並びにそれを使用して得る装飾体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高級感や他の製品との差別化を図る為に、オーディオ製品、その他家電製品をはじめパソコン、携帯電話などの筐体や部品等の各種成型品、紙器パッケージ、シールラベル等の表面にヘアライン柄、マット柄その他独自の凹凸が形成されているものが多く見受けられる。
【0003】
各種成型品、紙器パッケージ、シールラベル等の表面に凹凸を形成する方法としては、直接ヘアライン加工、マット加工等を行い凹凸を形成する方法、予め凹凸を形成したプラスチックフイルム等を各種成型品、紙器パッケージ、シールラベル等の被貼着物の表面に貼着させて凹凸を形成する方法がとられている。
【0004】
また、特許文献1には、基材となるプラスチックフイルムにウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、又はポリエステルアクリレートの何れか若しくは複数からなる光硬化性樹脂を塗布して光硬化性層を積層する積層工程、予め表面に略凹凸加工がなされているスタンパーフイルムの凹凸加工面を前記光硬化性層表面に貼着し積層体を得る工程、前記スタンパーフイルム側から光を照射してなる照射工程を順に実行しその後、前記積層体から前記スタンパーフイルムを剥離してなる剥離工程を備えている積層体の製造方法が記載されており、得られる積層体の光硬化性層表面には凹凸が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4022241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の製造方法で製造した光硬化性層表面に凹凸が形成されている積層体は、光硬化性樹脂にウレタンアクリレート等を使用している為、該積層体には以下のような欠点があった。
【0007】
・ 前記光硬化性層表面がハードコート性、耐擦傷性に劣っている為、光硬化性層表面に容易にキズがつき凹凸が容易に欠損し意匠性を損なう欠点があった。
【0008】
[2]光硬化性層を積層した積層体自体がカールし耐カール性に劣っている為、該積層体に金属蒸着加工、印刷、接着剤塗布等の後加工を行う場合に、積層体自体が取り扱いづらく後加工性が悪い欠点があった。
【0009】
具体的には積層体に接着剤からなる接着層を積層し被貼着物に貼着する場合に、積層体自体がカールし、該積層体を被貼着物の目的の場所に貼着しにくいだけでなく、該積層体に後加工を行う場合に、積層体自体がカールし加工中に折れシワが発生しやすくなり後加工中の不良品が多く発生し生産性が悪くなる欠点があった。
【0010】
さらに、光硬化性樹脂を硬化させる場合に、スタンパーフイルム側から紫外線等の光を照射する為、必然的にスタンパーフイルムは紫外線等の光を透過するものでなくてはならなくなってしまい、スタンパーフイルムに光を透過しない生地、各種成型品、金属等を使用する事ができず、スタンパーフイルムを選定する場合に、制限が加わってしまい多様性に欠ける欠点があった。
【0011】
本発明は、上記すべての欠点を除去したものであり、ハードコート層表面がハードコート性、耐擦傷性に優れ、ハードコートフイルム自体の耐カール性にも優れ、さらにプラスチックフイルムとハードコート層との密着力も強い、凹凸ハードコートフイルムとその製造方法、並びにそれを使用して得る装飾体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]本発明は、プラスチックフイルムの少なくとも片面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層されたハードコートフイルムであって、以下(1)(2)の条件を満たしていることを特徴とする凹凸ハードコートフイルムである。
(1)前記紫外線硬化型樹脂がシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートである
(2)前記ハードコート層表面が凹凸である
【0013】
[2]本発明は、[1]記載の凹凸ハードコートフイルムであって、前記ハードコート層上に、カバー材が積層されていることを特徴とするカバー材付凹凸ハードコートフイルムである。
【0014】
[3]本発明は、賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法であって、
(A−1工程)プラスチックフイルムの少なくとも片面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を積層する工程、
(B−1工程)前記ハードコート層上に、少なくとも片面に凹凸模様を有する賦形材を凹凸模様面が前記ハードコート層に接するように積層する工程、
(C工程)紫外線を照射し前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、前記ハードコート層表面に前記賦形材の凹凸模様を転写させ凹凸を形成する工程、
の各工程を(A−1工程)(B−1工程)(C工程)の順に行い、なおかつ前記紫外線硬化型樹脂がシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートであることを特徴とする賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法である。
【0015】
[4]本発明は、賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法であって、
(A−2工程)少なくとも片面に凹凸模様を有する賦形材の凹凸模様面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を形成する工程、
(B−2工程)前記ハードコート層上に、プラスチックフイルムを積層する工程、
(C工程)紫外線を照射し前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、前記ハードコート層表面に前記賦形材の凹凸模様を転写させ凹凸を形成する工程、
の各工程を(A−2工程)(B−2工程)(C工程)の順に行い、なおかつ前記紫外線硬化型樹脂がシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートであることを特徴とする賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法である。
【0016】
[5]本発明は、前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる際、プラスチックフイルム側から紫外線を照射することを特徴とする[3]または[4]記載の賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法である。
【0017】
[6]本発明は[3]〜[5]のいずれかに記載の賦形材付ハードコートフイルムの製造方法に、(D工程)前記賦形材を取り除く工程を、更に備えてなることを特徴とする凹凸ハードコートフイルムの製造方法である。
【0018】
[7]本発明は、[3]〜[5]のいずれかに記載の製造方法により製造された、賦形材付凹凸ハードコートフイルムである。
【0019】
[8]本発明は、[6]記載の製造方法により製造された、凹凸ハードコートフイルムである。
【0020】
[9]本発明は、被貼着物の表面に[1]記載の凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が貼着されていることを特徴とする装飾体である。
【0021】
[10]本発明は、被貼着物の表面に[2]記載のカバー材付凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が貼着されていることを特徴とする装飾体である。
【0022】
[11]本名発明は、被貼着物の表面に[7]記載の賦形材付凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が貼着されていることを特徴とする装飾体である。
【0023】
[12]本発明は、被貼着物の表面に[8]記載の凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が貼着されていることを特徴とする装飾体である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の凹凸ハードコートフイルムは、プラスチックフイルムの少なくとも片面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層されたもので、紫外線硬化型樹脂にシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートを使用していることで、
(1)ハードコート層表面のハードコート性、耐擦傷性が優れており、ハードコート層表面に容易にキズがつかず凹凸の欠損がなく意匠性を損なうことがない。
【0025】
具体的には、本発明の凹凸ハードコートフイルムのハードコート性、耐擦傷性はそれぞれハードコート性試験、耐擦傷性試験(共に後に詳述する実施例で説明)で評価した場合に、ハードコート層表面に全くキズが付かなければよい。
ただし、ハードコート性試験、耐擦傷性試験で評価した場合に、ハードコート層表面にわずかにキズが付く程度であれば実用上問題なく、本発明の凹凸ハードコートフイルムの上記ハードコート性、耐擦傷性は実用上問題ないレベルである。
【0026】
(2)凹凸ハードコートフイルム自体の耐カール性にも優れており、本発明の凹凸ハードコートフイルムに金属蒸着加工、接着剤塗布、印刷等の後加工を行う場合に、取り扱いやすく加工中に折れシワの発生も抑えられ、生産性を落とすことが少なく後加工性が良いものであるとともに、本発明の凹凸ハードコートフイルムを各種成型品、紙器パッケージ、シールラベル等の被貼着物の表面に、接着剤からなる接着剤層や両面テープ等(以下、接着剤層等)を介して貼着する場合にも貼着しやすく作業性が良いものである。
【0027】
具体的には、本発明の凹凸ハードコートフイルムの耐カール性は、耐カール性試験(後に詳述する実施例で説明)で評価した場合に、反りの高さが1mm以下であれば実用上問題なく、本発明の凹凸ハードコートフイルムはカールする事なくほぼ平坦な状態を維持しており実用上問題ないレベルである。
【0028】
また、紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合に、紫外線をプラスチックフイルム側から照射すれば、プラスチックフイルムとハードコート層との密着力はより強くなる。
【0029】
さらに、紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合に、紫外線をプラスチックフイルム側から照射すれば、本発明で使用するカバー材や賦形材は必ずしも紫外線を透過する素材である必要は無く、透明なプラスチックフイルム等の紫外線を透過する素材以外に、生地、各種成型品、金属等の紫外線を透過しない素材を積層して、カバー材付凹凸ハードコートフイルム、賦形材付凹凸ハードコートフイルムとする事も可能であるから、カバー材や賦形材を選択する場合に、その選択に多様性がある。
【0030】
本発明の凹凸ハードコートフイルムが前記効果のすべてを得る為には、本発明の製造方法を用いることが最適である。
【0031】
また、本発明の凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が被貼着物の表面に貼着されている本発明の装飾体は、本発明の凹凸ハードコートフイルムが有している前記効果のすべてを保持している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の凹凸ハードコートフイルムに使用するプラスチックフイルムは、特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリカーボネーフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリアミドフイルム等の各種プラスチックフイルムが使用できる。
【0033】
プラスチックフイルムは、無延伸、一軸延伸、二軸延伸の何れでもよく、また、帯電防止剤、着色剤、熱安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
また、本発明の凹凸ハードコートフイルムを各種成型品、紙器パッケージ、シールラベル等の被貼着物の表面に、接着剤層等を介して貼着した場合に、被貼着物の表面に予め付与されている色あいや印刷柄等の意匠性を保ったまま凹凸を形成させるだけでなく、後に詳述するが、プラスチックフイルムとハードコート層との密着力を強くする為には、紫外線の照射をプラスチックフイルム側から行うことが望ましいことから、プラスチックフイルムは紫外線を透過する透明であることが好ましい。
【0035】
プラスチックフイルムの厚さは特に限定されないが、可塑性、熱的安定性等から38 〜250μmであるのが好ましい。プラスチックフイルムの厚さが38μmより薄いとハードコート層を積層する場合や凹凸ハードコートフイルムを取り扱う場合に、カールするだけでなく、折れシワが発生しやすくなる為、凹凸ハードコートフイルム自体を取り扱いづらくなる為好ましくない。また、プラスチックフイルムの厚さが250μmより厚いと紫外線がプラスチックフイルムに吸収・拡散されるなどされ、紫外線硬化型樹脂の硬化に必要な紫外線の照射量が得られず、紫外線硬化型樹脂の硬化が不十分となり、凹凸ハードコートフイルムとした場合に、プラスチックフイルムとハードコート層との密着力が弱くなる為好ましくない。
【0036】
本発明の凹凸ハードコートフイルムに使用する紫外線硬化型樹脂は、紫外線を照射した場合に、硬化する樹脂であり、シリカハイブリッド型ウレタンアクリレートを使用することで、本発明の凹凸ハードコートフイルムのハードコート層表面がハードコート性、耐擦傷性に優れ、さらに凹凸ハードコートフイルム自体が耐カール性にも優れたものになる為好ましい。
また、紫外線硬化型樹脂の分子量は特に制限は無いが、分子量20000以上のシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートを使用する事で、本発明の凹凸ハードコートフイルムのハードコート層表面がハードコート性、耐擦傷性により優れ、さらに凹凸ハードコートフイルム自体が耐カール性にも、より優れたものになる為好ましい。
【0037】
プラスチックフイルムの表面にハードコート層を積層する方法はグラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法により紫外線硬化型樹脂をコーティングすることでハードコート層を積層できる。
【0038】
紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層の厚さは2〜20μmであることが好ましい。
ハードコート層の厚さが2μmより薄いと、所望のハードコート性、耐擦傷性を得ることができず、20μmより厚いとプラスチックフイルムがハードコート層の応力によりカールするだけでなく、一般的に紫外線硬化型樹脂は粘度が高いものが多く、その為紫外線硬化型樹脂を均一の厚さにコーティングする事が困難となりハードコート層に厚薄ができてしまい外観不具合となってしまう為好ましくない。
【0039】
プラスチックフイルムとハードコート層との密着力をより強くする為に、プラスチックフイルムの表面に易接着コート、アンカーコート加工、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0040】
本発明のカバー付凹凸ハードコートフイルムに使用するカバー材は、ハードコート層表面を覆うことのできるものであり、本発明の凹凸ハードコートフイルムに後加工を施す場合に、ハードコート層表面が汚染されることの防止、ハードコート表面への異物等の付着による外観不具合の防止、ハードコート層表面の損傷防止等ハードコート層を保護する目的で使用できるものであれば十分である。
【0041】
具体的には、前記目的が達成できるものであれば前記カバー材は、素材・材質・形状等に制限なく使用でき、例えばプラスチックフイルム、紙、生地、不織布、金属等使用できる。さらに、形状が長尺の場合は、ロール状にしておけば、取り扱いやすく好ましい。
なお、後に詳述する賦形材もハードコート層表面に凹凸模様を転写する目的で使用する以外に、本発明の凹凸ハードコートフイルムのカバー材としても使用できる。
【0042】
本発明の凹凸ハードコートフイルムの使用態様は、凹凸ハードコートフイルム単体での使用、もしくはオーディオ製品、その他家電製品をはじめパソコン、携帯電話等の筐体やその部品へ高級感や他の製品との差別化をはかる為、被貼着物の表面に、接着剤層等を介して貼着して使用するものである為、前記カバー材は最終的には取り除いて使用する事になる。
【0043】
また、上記カバー材のハードコート層と接する面には、予めシリコンコート、フッ素コート、ワックスコート、メラミンコート等の処理により、離型性を有する層を積層しておいても構わない。
【0044】
本発明の凹凸ハードコートフイルムのハードコート層表面に凹凸を形成する方法としてハードコート層表面に凹凸を形成することができれば特に限定しないが、本発明の製造方法のように紫外線硬化型樹脂が完全に硬化する前に、少なくとも片面に凹凸模様を有する賦形材の凹凸模様面と紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層表面を接するように積層した後、紫外線を照射することで紫外線硬化型樹脂を硬化させ、該賦形材の凹凸模様をハードコート層表面に転写することでハードコート層表面に凹凸を形成する方法が凹凸の多様性があり、その上作業性も良いことから好ましい。
【0045】
上記方法以外にもハードコート層表面に凹凸を形成する方法を以下に例示するが、これらの方法は一例であって他の方法であってもハードコート層表面に凹凸を形成することができればその方法に制限はない。
(1)サンドペーパー、やすり等をハードコート層表面に直接擦りつけて硬化した紫外線硬化型樹脂を削り取り凹凸を形成する方法。
(2)砂や小石等の硬い粒子をハードコート層表面にぶつけてハードコート層にキズをつけることでハードコート層表面に凹凸を形成する方法。
(3)ハードコート層表面を酸、アルカリ等の薬品で腐食させ凹凸を形成する方法。
(4)予め表面に凹凸を施してあるいわゆるエンボスロールを圧接させることによりハードコート層表面に凹凸を形成する方法。
また、(1)〜(4)を単体または複数組み合わせて行っても構わない。
【0046】
本発明の凹凸ハードコートフイルムの前記効果のすべてを得る為に最適な、本発明の製造方法を以下で説明する。
【0047】
プラスチックフイルムの少なくとも片面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を形成する工程(A−1工程)、前記ハードコート層上に、少なくとも片面に凹凸模様を有する賦形材を凹凸模様面が前記ハードコート層に接するように積層する工程(B−1工程)、紫外線を照射し前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、前記ハードコート層表面に前記賦形材の凹凸模様を転写させ凹凸を形成する工程(C工程)、の各工程を(A−1工程)(B−1工程)(C工程)の順に行うことで本発明の賦形材付凹凸ハードコートフイルムを製造する事ができる。
【0048】
また、少なくとも片面に凹凸模様を有する賦形材の凹凸模様面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を形成する工程(A−2工程)、前記ハードコート層上に、プラスチックフイルムを積層する工程(B−2工程)、紫外線を照射し前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、前記ハードコート層表面に前記賦形材の凹凸模様を転写させ凹凸を形成する工程(C工程)、の各工程を(A−2工程)(B−2工程)(C工程)の順に行うことでも本発明の賦形材付凹凸ハードコートフイルムを製造する事ができる。
【0049】
前記(B−1工程)でハードコート層上に賦形材を積層する方法と前記(B−2工程)でハードコート層上にプラスチックフイルムを積層する方法はラミネート方式で行うことが好ましいが、他の方法で行っても構わない。
【0050】
前記賦形材付凹凸ハードコートフイルムから賦形材を取り除く工程(D工程)を更に行うことで本発明の凹凸ハードコートフイルムを製造する事ができる。
【0051】
本発明の凹凸ハードコートフイルムの製造方法において、紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合に、紫外線の照射は、プラスチックフイルムとハードコート層との密着力をより強くする為に、プラスチックフイルム側から照射する方が好ましい。
【0052】
具体的には、紫外線を賦形材側から照射した凹凸ハードコートフイルムと、プラスチックフイルム側から照射した凹凸ハードコートフイルムをそれぞれプラスチックフイルムとハードコート層との密着力を密着力試験(後に詳述する実施例で説明)で測定し密着力を比較するとプラスチックフイルム側から照射したものの方がプラスチックフイルムとハードコート層との密着力はより強かった。
【0053】
このように、紫外線を照射する方向の違いによりプラスチックフイルムとハードコート層との密着力に違いがでるのは、紫外線を賦形材側から照射した場合に、紫外線が賦形材、ハードコート層を透過する際に、賦形材、ハードコート層に微量ながら吸収、遮断、拡散されるなどされ、紫外線硬化型樹脂の硬化に必要な紫外線の照射量が得られず、紫外線硬化型樹脂の硬化が不十分となる為、プラスチックフイルムとハードコート層との密着力が弱くなる。それに対して、紫外線をプラスチックフイルム側から照射すると紫外線がプラスチックフイルムに吸収、遮断、拡散されることが少なく紫外線硬化型樹脂の硬化を阻害することが少なくなる為、紫外線硬化型樹脂が十分に硬化するだけの紫外線の照射量を得ることができ、プラスチックフイルムとハードコート層との密着力が強くなると考えられる。
【0054】
紫外線を賦形材側から照射する場合であっても、紫外線の照射量を多くする事や照射時間を長くする事で紫外線硬化型樹脂の硬化に必要な紫外線の照射量を得ることができ、十分な密着力を得ることは可能であるが、紫外線の照射時間を長くするとその分作業時間が長くなり作業性が悪くなることからプラスチックフイルム側から照射する方が好ましい。
【0055】
本発明の凹凸ハードコートフイルムの製造方法で使用する賦形材は、少なくとも片面に凹凸模様を有していればよく、素材、材質、形状等に制限なく使用でき、例えば、プラスチックフイルム、ガラス、紙、布地、不織布、金属等が使用できる。さらに、形状が長尺の場合は、ロール状にしておけば、取り扱いやすく好ましい。
また、前述の通り、プラスチックフイルムとハードコート層との密着力を強くする為には紫外線をプラスチックフイルム側から照射する事が好ましいことから賦形材は必ずしも紫外線を透過するものである必要が無く、賦形材を選択する場合に、その選定に多様性がある。
【0056】
前記賦形材は、ハードコート層表面に賦形材の凹凸模様を転写する目的で使用する以外に、前記カバー材としても使用できる。
【0057】
賦形材表面に凹凸模様を形成する方法としては、以下に例示するが、これらの方法は一例であって他の方法であっても賦形材表面に凹凸模様を形成することができればその方法に制限はない。
(1)サンドペーパー、やすり等を直接擦りつけて表面を削り取り凹凸模様を形成する方法。
(2)砂や小石等の硬い粒子を表面にぶつけてキズをつけることで表面に凹凸模様を形成する方法。
(3)表面を酸、アルカリ等の薬品で腐食させ凹凸模様を形成する方法。
(4)予め表面に凹凸を施してあるいわゆるエンボスロールを圧接させることにより表面に凹凸模様を形成する方法。
(5)表面に樹脂等を公知の方法で印刷した樹脂層を積層し、凹凸模様を形成する方法。
(1)〜(5)を単体または複数組み合わせて行っても構わない。
【0058】
例えば(1)と(5)の組み合わせ例として、プラスチックフイルムの表面にサンドペーパーでヘアライン状(線状)にキズをつけてヘアライン凹凸模様を形成したヘアラインフイルムのヘアライン凹凸模様が形成されている面に、ヘアライン凹凸模様を埋めて消失させる厚さで部分的に水性インキやメラミン樹脂等を印刷して樹脂層を積層し、部分ヘアラインフイルムを得ることができる。
【0059】
なお、水性インキを印刷した樹脂層を積層し凹凸模様を形成した賦形材を使用する場合には、該賦形材を取り除く工程(D工程)を行った後も水性インキがハードコート層表面に転移して、ハードコート層表面に積層された状態となっている為、水性インキを水洗し取り除く工程(E工程)を追加する必要がある。
【0060】
賦形材に不織布や織物、編物等を使用する場合には、これらはもともと表面に凹凸模様を有しておりそのまま賦形材として使用できる。
【0061】
また、前記賦形材のハードコート層と接する面には、予めシリコンコート、フッ素コート、ワックスコート、メラミンコート等の処理により、離型性を有する層を積層しておいても構わない。
【0062】
賦形材の大きさは、賦形材を適宜所望の形状にカットして使用でき、ハードコート表面に部分的に積層しても構わず、ハードコート層をすべて覆う事ができる大きさにカットして使用しても構わない。
賦形材を所望の形状にカットして使用し、ハードコート層表面の一部に部分的に積層した場合は、賦形材が積層された部分にのみ賦形材の凹凸模様が転写されて、ハードコート層表面に部分的に凹凸が形成された本発明の部分凹凸ハードコートフイルムを得ることができる。
また、賦形材をハードコート層のすべて覆う事ができる大きさで使用し、ハードコート層表面に積層した場合は、ハードコート層表面全体に賦形材の凹凸模様が転写されて、ハードコート層表面全体に凹凸が形成された本発明の凹凸ハードコートフイルムを得ることができる。
【0063】
本発明の凹凸ハードコートフイルムの製造方法で使用するプラスチックフイルム、紫外線硬化型樹脂はそれぞれ前述したものをそのまま使用できる。
【0064】
本発明の凹凸ハードコートフイルムの片面あるいは両面に、金属蒸着加工や印刷等の後加工を行い金属薄膜層や印刷層等を積層し、所望の意匠性を付与しても構わず、金属薄膜層や印刷層等を積層した金属薄膜層付凹凸ハードコートフイルム、印刷層付凹凸ハードコートフイルム等も本発明の凹凸ハードコートフイルムに含まれる。
【0065】
本発明の凹凸ハードコートフイルムを貼着した本発明の装飾体は、高級感や他の製品との差別化を図る目的等で、凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面を各種成型品、金属、ガラス、陶器、紙器パッケージ、シールラベル等の被貼着物の表面に、接着剤層等を介して貼着したものである。
また、本発明のカバー材付凹凸ハードコートフイルム、賦形材付凹凸ハードコートフイルムを使用して、被貼着物の表面に、接着剤層等を介して貼着し本発明のカバー材付装飾体、賦形材付装飾体を得ることができる。このようにする事によって、最終的に使用する場合に前記カバー材や賦形材を取り除いて使用する事になるが、本発明の装飾体を取り扱う時や輸送を行う時等に、ハードコート層表面が汚染されることの防止、ハードコート表面への異物等の付着による外観不具合の防止、ハードコート層表面の損傷防止等、本発明の装飾体を使用する直前までハードコート層を保護することができる。
なお、接着剤層等の厚さは、所望の密着力により適宜決定すればよく、接着剤層等は本発明の凹凸ハードコートフイルム、被貼着物の表面のどちらに積層しても構わない。
【0066】
貼着する本発明の凹凸ハードコートフイルムは、適宜所望の形状にカットして被貼着物の表面の一部に、接着剤層等を介して貼着してもよく、被貼着物の表面をすべて覆う事ができる大きさにカットして被貼着物の表面の全面に、接着剤層等を介して貼着してもよい。
本発明の凹凸ハードコートフイルムを所望の形状にカットして使用し、被貼着物の表面に、接着剤層等を介して貼着した場合は、被貼着物の表面に予め付与されている色あいや印刷柄等の意匠性を保ったまま、本発明の凹凸ハードコートフイルムを貼着した部分にのみ凹凸が形成された本発明の装飾体を得ることができる。
また、本発明の凹凸ハードコートフイルムを被貼着物の表面をすべて覆う事ができる大きさで使用し、被貼着物の表面に、接着剤層等を介して貼着した場合は、被貼着物の表面に予め付与されている色あいや印刷柄等の意匠性を保ったまま、被貼着物の表面全体に凹凸が形成された本発明の装飾体を得ることができる。
【0067】
以上の通り、表面に凹凸を有する凹凸ハードコートフイルムにおいて、ハードコート層にシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートを紫外線硬化型樹脂として使用する事で、ハードコート層表面のハードコート性、耐擦傷性が優れ、凹凸ハードコートフイルム自体の耐カール性にも優れた本発明の凹凸ハードコートフイルムを得ることができる。
さらに、分子量20000以上のシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートを紫外線硬化型樹脂として使用すれば万全である。
【0068】
また、本発明の凹凸ハードコートフイルムを製造する場合に、紫外線をプラスチックフイルム側から照射する事でプラスチックフイルムとハードコート層との密着力が強い本発明の凹凸ハードコートフイルムを得ることができ、使用する賦形材の選択にも多様性がある。
【実施例】
【0069】
[賦形材の作成]
(賦形材1)
厚さ25μm、長さ4000mのポリエチレンテレフタレートフイルムの片方の表面にサンドペーパーでフイルムの長さ方向にヘアライン状(線状)にキズをつけてヘアライン凹凸模様を形成したヘアラインフイルム(賦形材1)を得た。
【0070】
(賦形材2)
前記賦形材1で得たヘアラインフイルムのヘアライン凹凸模様が形成されている面に、ヘアライン凹凸模様を埋めて消失させる厚さで図形状にメラミン樹脂を印刷して樹脂層を積層し、部分的にヘアライン凹凸模様を有する部分ヘアラインフイルム(賦形材2)を得た。
【0071】
(賦形材3)
前記賦形材1で得たヘアラインフイルムのヘアライン凹凸模様が形成されている面に、ヘアライン凹凸模様を埋めて消失させる厚さで図形状に水性インキを印刷して樹脂層を積層し、部分的にヘアライン凹凸模様を有する部分ヘアラインフイルム(賦形材3)を得た。
【0072】
[凹凸ハードコートフイルムの作成]
[実施例1]
以下(A−1工程)(B−1工程)(C工程)(D工程)を順に行い、ハードコート層表面の全面にヘアライン状の凹凸を有する本発明の凹凸ハードコートフイルムを得た。
(A−1工程)予め表面に易接着コートが施してある厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフイルムの易接着コート面に紫外線硬化型樹脂として分子量20000のシリカハイブリッド型ウレタンアクリレート(アイカ工業社製:高成型プレキュアUVハードコート剤、品番Z910−3L)をダイコート法でコーティングし厚さ5μmのハードコート層を積層した。
(B−1工程))前記ハードコート層上に賦形材1のヘアラインフイルムのヘアライン凹凸模様が形成されている面を前記ハードコート層表面に接するようにラミネート法で積層した。
(C工程)207mJ/cmの紫外線をプラスチックフイルム側から2秒間照射し紫外線硬化型樹脂を硬化させ、賦形材1のヘアライン凹凸模様をハードコート層表面に転写させヘアライン状の凹凸を形成した。
(D工程)賦形材1を取り除いた。
【0073】
[実施例2]
実施例1(A−1工程)で使用した分子量20000のシリカハイブリッド型ウレタンアクリレート代えて、分子量15000のシリカハイブリッド型ウレタンアクリレート(アイカ工業社製:高成型プレキュアUVハードコート剤、品番Z606−61)使用したこと以外は実施例1と同様にして、ハードコート層表面の全面にヘアライン状の凹凸を形成した本発明の凹凸ハードコートフイルムを得た。
【0074】
[実施例3]
実施例1(B−1工程)で使用した賦形材1のヘアラインフイルムに代えて、賦形材2の部分ヘアラインフイルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして、ハードコート層表面に部分的にヘアライン状の凹凸を形成した本発明の部分凹凸ハードコートフイルムを得た。
【0075】
[実施例4]
実施例1(B−1工程)で使用した賦形材1のヘアラインフイルムに代えて、賦形材3の部分ヘアラインフイルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして、部分凹凸ハードコートフイルムを得た後、水性インキを水洗し取り除く工程(E工程)を更に行い、ハードコート層表面に部分的にヘアライン状の凹凸を形成した本発明の部分凹凸ハードコートフイルムを得た。
【0076】
[比較例1]
実施例1(A−1工程)で使用した分子量20000のシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートに代えて、ウレタンアクリレート(日本化薬社製:紫外線硬化型ハードコート剤、品番KAYANOVA FOP1700)を使用したことと、(C工程)の紫外線硬化型樹脂を硬化させ、賦形材1のヘアライン凹凸模様をハードコート層表面に転写させる工程において、紫外線をヘアラインフイルム(賦形材1)側から照射したこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコート層表面の全面にヘアライン状の凹凸を形成した比較例1の凹凸ハードコートフイルムを得た。(特許文献1記載の積層体と同等品)
【0077】
[比較例2]
実施例1の(C工程)紫外線硬化型樹脂を硬化させ、賦形材1のヘアライン凹凸模様をハードコート層表面に転写させヘアライン状の凹凸を形成する工程において、紫外線をヘアラインフイルム(賦形材1)側から照射したこと以外は、実施例1と同様にして、ハードコート層表面の全面にヘアライン状の凹凸を形成した比較例2の凹凸ハードコートフイルムを得た。
【0078】
[装飾体の作成]
[実施例5]
実施例1で得た本発明の凹凸ハードコートフイルムのヘアライン状の凹凸が形成されていない面に、接着剤をコーティングして厚さ25μmの接着剤層を積層して、接着剤層が積層されている凹凸ハードコートフイルムを得た後、予め模様が印刷されているシールラベルの印刷されている面に、該凹凸ハードコートフイルムをシールラベルと同じ大きさにカットし、接着剤層を介してシールラベルに貼着して本発明の装飾体である凹凸ハードコートフイルムが貼着されているシールラベルを得た。
【0079】
[実施例6]
実施例3で得た本発明の部分凹凸ハードコートフイルムのヘアライン状の凹凸が形成されていない面に、接着剤をコーティングして厚さ25μmの接着剤層を積層して、接着剤層が積層されている部分凹凸ハードコートフイルムを得た後、予め模様が印刷されているシールラベルの印刷されている面に、該部分凹凸ハードコートフイルムを所望の形状にカットし、接着剤層を介してシールラベルに貼着して本発明の装飾体である部分凹凸ハードコートフイルムが貼着されているシールラベルを得た
【0080】
[実施例7]
実施例4で得た本発明の部分凹凸ハードコートフイルムのヘアライン状の凹凸が形成されていない面に、接着剤をコーティングして厚さ25μmの接着剤層を積層して、接着剤層が積層されている部分凹凸ハードコートフイルムを得た後、パソコン部品の表面に、該部分凹凸ハードコートフイルムをパソコン部品と同じ大きさにカットし、接着剤層を介してパソコン部品に貼着して本発明の装飾体である部分凹凸ハードコートフイルムが貼着されているパソコン部品を得た。
【0081】
[実施例8]
実施例1で得た本発明の凹凸ハードコートフイルムのヘアライン状の凹凸が形成されていない面に、黒色の印刷インキを使用して、スクリーン印刷で図形状に厚さ8μmの印刷層を積層した印刷層付凹凸ハードコートフイルムを得た後、携帯電話部品の表面に、該印刷層付凹凸ハードコートフイルムを携帯電話部品と同じ大きさにカットし、厚さ50μmの両面テープを介して該印刷層と携帯電話部品の表面とが接するように携帯電話部品に貼着して本発明の装飾体である印刷層付凹凸ハードコートフイルムが貼着されている携帯電話部品を得た。
【0082】
[ハードコート性試験]
(試験試料)
実施例1〜4で得た本発明の凹凸ハードコートフイルム、及び部分凹凸ハードコートフイルム、並びに比較例1で得た凹凸ハードコートフイルムを5cm×15cmの長方形(ヘアライン方向は短辺に平行)にカットしたものをそれぞれ5枚作成し試験試料とした。
(測定方法)
試験試料をそれぞれハードコート層表面のヘアライン状の凹凸のヘアライン方向と直角方向にJIS K 5400−5−4法(鉛筆引っかき試験方法)に準拠して試験を実施し、鉛筆硬度Hでキズが付くか否かを確認してハードコート性を比較し、試験試料5枚すべてにキズが付いていないものを◎、試験試料1〜2枚にキズが付いたものを○、試験試料3枚以上にキズが付いたものを×とした。(実施例3および実施例4はヘアライン状の凹凸部を測定した。)
(試験結果)
表1に示す。
【0083】
[耐擦傷性試験]
(試験試料)
実施例1〜4で得た本発明の凹凸ハードコートフイルム、及び部分凹凸ハードコートフイルム、並びに比較例1で得た凹凸ハードコートフイルムを3cm×20cmの長方形(ヘアライン方向は短辺に平行)にカットしたものをそれぞれ1枚作成し試験試料とした。
(測定方法)
試験試料をそれぞれのハードコート層表面を固定端子に装着させたスチールウール(#0000)に800gの荷重を掛けてハードコート層表面のヘアライン状の凹凸のヘアライン方向と直角方向に20cmの長さで20往復させた後、ハードコート層表面の状態を確認して耐擦傷性を目視にて比較し、ハードコート層表面に全くキズが見られなかったものを◎、わずかにキズが見られたものを○、キズが多数見られハードコートフイルムの外観が白くなったものを×とした。(実施例3および実施例4はヘアライン状の凹凸部を測定した。)
(試験結果)
表1に示す。
【0084】
[耐カール性試験]
(試験試料)
実施例1〜4で得た本発明の凹凸ハードコートフイルム、及び部分凹凸ハードコートフイルム、並びに比較例1で得た凹凸ハードコートフイルムを5cm×5cmの正方形にカットしたものをそれぞれ1枚作成し試験試料とした。
(測定方法)
試験試料をそれぞれハードコート層を上にして80℃のオーブンの中に24時間放置した後、平らで水平な測定台の上にハードコート層を上にして静かに置き、試験試料の四隅を測定台からの高さ(反りの高さ)を測定して耐カール性を比較し、試験試料の四隅すべての反りの高さが1mm以下のものを○、四隅のいずれかが反りの高さが1mm以上であったものを×とした。
(試験結果)
表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1で示したとおり、実施例1〜4で得た本発明の凹凸ハードコートフイルム、及び部分凹凸ハードコートフイルムはそれぞれハードコート層表面のハードコート性試験、及び耐擦傷性試験の結果は、実施例1、実施例3、実施例4で得た本発明の凹凸ハードコートフイルム、及び部分凹凸ハードコートフイルムは、ハードコート性試験、及び耐擦傷性試験の両方で、ハードコート層表面にキズや凹凸の欠損が全くなく、ハードコート性、耐擦傷性優れていた。
また、実施例2で得た本発明の凹凸ハードコートフイルムは、ハードコート性試験で試験試料5枚のうち1枚にキズが付き、耐擦傷性試験でも、わずかにキズが確認できたが、ハードコート層表面のキズは意匠性を損なうものではなく実用上問題ないレベルであった。
前記結果に対して、比較例1で得た凹凸ハードコートフイルムはハードコート性試験で試験試料5枚のうち3枚にキズがつき、耐擦傷性試験でもハードコート層表面にキズが多数見られ、そのことにより外観も白く、さらにハードコート層表面の凹凸にも欠損も見られ著しく意匠性を損なっておりハードコート性、耐擦傷性に劣っていた。
【0087】
また、耐カール性においても、実施例1〜4で得た本発明の凹凸ハードコートフイルム、及び部分凹凸ハードコートフイルムはそれぞれ、耐カール性試験の結果が試験試料の四隅すべての反りの高さが1mm以下であり、凹凸ハードコートフイルム自体がカールする事なくほぼ平坦な状態を維持して耐カール性に優れていたのに対して、比較例1で得た凹凸ハードコートフイルムは、耐カール性試験の結果が試験試料の四隅のすべてで反りの高さが5mmであり凹凸ハードコートフイルム自体がカールし耐カール性に劣っていた。
【0088】
[密着力試験]
(試験試料)
実施例1〜4、及び比較例2で得た凹凸ハードコートフイルム、及び部分凹凸ハードコートフイルムを10cm×10cmの正方形にカットしたものをそれぞれ1枚作成し試験試料とした。
(測定内容)
試験試料をJIS K 5600−5−6法(付着性―クロスカット法・100マス)に準拠して、それぞれポリエチレンテレフタレートフイルムとハードコート層との密着力を測定し、ハードコート層の剥がれが全くないものを○、10マス以上ハードコート層の剥がれがあるものを×とした。(実施例3および実施例4はヘアライン状の凹凸部を測定した。)
(試験結果)
表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
表2で示したとおり、実施例1〜4で得た本発明の凹凸ハードコートフイルム、及び部分凹凸ハードコートフイルムは密着力試験の結果、ハードコート層の剥がれが全くなくポリエチレンテレフタレートフイルムとハードコート層との密着力が強かったのに対して、比較例2で得た凹凸ハードコートフイルムは密着力試験の結果、100マス中30マスのハードコート層の剥がれがありポリエチレンテレフタレートフイルムとハードコート層との密着力は弱かった。
【0091】
実施例5で得た、本発明の装飾体である凹凸ハードコートフイルムが貼着されているシールラベルは、実施例1で得た本発明の凹凸ハードコートフイルムが有している本発明の効果のすべてを保持しており、さらに本発明の凹凸ハードコートフイルムを貼着する前のシールラベルと比較して、シールラベルに予め印刷されていた模様に加えて全面に本発明の凹凸ヘアラインフイルムのヘアライン状の凹凸が形成され高級感があり十分に差別化できるものであった。
【0092】
実施例6で得た、本発明の装飾体である部分凹凸ハードコートフイルムが貼着されているシールラベルは、実施例3で得た本発明の部分凹凸ハードコートフイルムが有している本発明の効果のすべてを保持しており、さらに本発明の部分凹凸ハードコートフイルムを貼着する前のシールラベルと比較して、シールラベルに予め印刷されていた模様に加えて所望の形状に本発明の部分凹凸ヘアラインフイルムのヘアライン状の凹凸が形成され高級感があり十分に差別化できるものであった。
【0093】
実施例7で得た、本発明の装飾体である部分凹凸ハードコートフイルムが貼着されているパソコン部品は、実施例4で得た本発明の部分凹凸ハードコートフイルムが有している効果のすべてを保持しており、さらに本発明の部分凹凸ハードコートフイルムを貼着する前のパソコン部品と比較して、パソコン部品が有していた色あいに加えて本発明の部分凹凸ヘアラインフイルムのヘアライン状の凹凸が形成され高級感があり十分に差別化できるものであった。
【0094】
実施例8で得た、本発明の装飾体である印刷層付凹凸ハードコートフイルムが貼着されている携帯電話部品は、実施例1で得た本発明の凹凸ハードコートフイルムが有している効果のすべてを保持しており、さらに本発明の印刷層付凹凸ハードコートフイルムを貼着する前の携帯電話部品と比較して、携帯電話部品全面に本発明の凹凸ヘアラインフイルムのヘアライン状の凹凸が形成され、さらに図形状の印刷層によって高級感があり十分に差別化できるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフイルムの少なくとも片面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層が積層されたハードコートフイルムであって、以下(1)(2)の条件を満たしていることを特徴とする凹凸ハードコートフイルム。
(1)前記紫外線硬化型樹脂がシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートである
(2)前記ハードコート層の表面が凹凸である
【請求項2】
請求項1記載の凹凸ハードコートフイルムであって、前記ハードコート層上に、カバー材が積層されていることを特徴とするカバー材付凹凸ハードコートフイルム。
【請求項3】
賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法であって、
(A−1工程)プラスチックフイルムの少なくとも片面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を積層する工程、
(B−1工程)前記ハードコート層上に、少なくとも片面に凹凸模様を有する賦形材を凹凸模様面が前記ハードコート層に接するように積層する工程、
(C工程)紫外線を照射し前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、前記ハードコート層表面に前記賦形材の凹凸模様を転写させ凹凸を形成する工程、
の各工程を(A−1工程)(B−1工程)(C工程)の順に行い、なおかつ前記紫外線硬化型樹脂がシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートであることを特徴とする賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法。
【請求項4】
賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法であって、
(A−2工程)少なくとも片面に凹凸模様を有する賦形材の凹凸模様面に紫外線硬化型樹脂からなるハードコート層を形成する工程、
(B−2工程)前記ハードコート層上に、プラスチックフイルムを積層する工程、
(C工程)紫外線を照射し前記紫外線硬化型樹脂を硬化させ、前記ハードコート層表面に前記賦形材の凹凸模様を転写させ凹凸を形成する工程、
の各工程を(A−2工程)(B−2工程)(C工程)の順に行い、なおかつ前記紫外線硬化型樹脂がシリカハイブリッド型ウレタンアクリレートであることを特徴とする賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法。
【請求項5】
前記紫外線硬化型樹脂を硬化させる際、プラスチックフイルム側から紫外線を照射することを特徴とする請求項3または請求項4記載の賦形材付凹凸ハードコートフイルムの製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の賦形材付ハードコートフイルムの製造方法に、(D工程)前記賦形材を取り除く工程を、更に備えてなることを特徴とする凹凸ハードコートフイルムの製造方法。
【請求項7】
請求項3〜5のいずれかに記載の製造方法により製造された、賦形材付凹凸ハードコートフイルム
【請求項8】
請求項6記載の製造方法により製造された、凹凸ハードコートフイルム
【請求項9】
被貼着物の表面に請求項1記載の凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が貼着されていることを特徴とする装飾体
【請求項10】
被貼着物の表面に請求項2記載のカバー材付凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が貼着されていることを特徴とする装飾体
【請求項11】
被貼着物の表面に請求項7記載の賦形材付凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が貼着されていることを特徴とする装飾体
【請求項12】
被貼着物の表面に請求項8記載の凹凸ハードコートフイルムの凹凸が形成されていない面が貼着されていることを特徴とする装飾体

【公開番号】特開2012−131087(P2012−131087A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284020(P2010−284020)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000156042)株式会社麗光 (33)
【Fターム(参考)】