説明

凹凸不織布の製造方法

【課題】起伏が大きい凹凸形状を有し、溝部と畝部と間に大きな繊維密度勾配を有する凹凸不織布を効率的に製造することができる凹凸不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の凹凸不織布の製造方法は、片面に畝部2及び溝部3を有し、該溝部3の底部に開孔31を有する凹凸不織布1を製造する方法であり、熱伸長繊維を含む繊維ウエブからなるか又は該繊維ウエブを含む積層体からなる原反10に、該原反10の前記繊維ウエブからなる一面10a側から他面10b側に向かって突起42を押し込み該原反10に開孔31を形成することにより、該原反10の前記一面10a側に、該開孔31が連なる複数の溝部3を形成し、これと同時もしくはこの後に、該溝部3を有する中間体1Aを熱処理することで、該中間体1Aにおける前記繊維ウエブ中の熱伸長繊維を伸長させ、隣り合う前記溝部間を隆起させて畝部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝溝構造を有し溝部に開孔を有する凹凸不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン、失禁パット、パンティライナー等の、身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品の表面シートとして、不織布の肌側に向けられる面を凹凸を形成することにより、着用者の肌と不繊布の接触を少なくして蒸れやかぶれを防止する技術が知られている。
凹凸を有する不織布の製造方法としては、例えば、不織布に加熱したピンを貫通させることで、該不織布に立体的な開孔を形成し、該不織布における立体的な開孔を形成した部分が凹部、それ以外の部分が相対的に凸部となっている立体開孔不織布を製造することが知られている(特許文献1参照)。
また、主に気体からなる流体を繊維集合体吹き付けることによって、繊維をより分け、該繊維集合体に溝部と凸状部とを形成する技術が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
また、本出願人は、加熱によってその長さが延びる熱伸長性繊維を含む繊維ウエブにエンボス加工を施した後、該熱伸長性繊維を伸長させて凹凸不織布を得る技術を提案した(特許文献3参照)。特許文献3には、小円形のエンボス部や線状のエンボス部を、該エンボス部に囲まれた多数の領域が生じるように形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−80445号公報
【特許文献2】特開2008−25083号公報
【特許文献3】特開2005−350836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、起伏が大きい凹凸形状を有し、畝部と溝部との間に大きな繊維密度の勾配を有する凹凸不織布を効率的に製造することができる凹凸不織布の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、片面に畝部及び溝部を有し、該溝部の底部に開孔を有する凹凸不織布を製造する方法であって、熱伸長繊維を含む繊維ウエブ又は該繊維ウエブを含む積層体からなる原反に、該原反の前記繊維ウエブからなる一面側から他面側に向かって、複数のピン状の突起を押し込み該原反に開孔を形成することにより、該原反の前記一面側に、該開孔が連なる複数の溝部を形成し、これと同時もしくはこの後に、該溝部を有する中間体を熱処理することで、該中間体における前記繊維ウエブ中の熱伸長繊維を伸長させ、隣り合う前記溝部間を隆起させて畝部を形成する、凹凸不織布の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の凹凸不織布の製造方法によれば、起伏が大きい凹凸形状を有し、溝部、特に開孔の周辺部と畝部との間に大きな繊維密度勾配を有する凹凸不織布を効率的に製造することができる。
得られた凹凸不織布を、吸収性物品の表面シートとして用いた場合には、肌との接触面積が小さいことにより肌に与える負担を軽減でき、また、表面から内部への液の吸い込み性に優れるといった効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明で製造される凹凸不織布の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施態様の概略を示す模式図である。
【図3】開孔装置の一対のロール間に原反を通して、開孔を有する溝部を形成する様子を示す斜視図である。
【図4】図3に示す開孔装置の第1ロールの一部を示す拡大斜視図である。
【図5】ピン状の突起の好ましい一形態を示す斜視図である。
【図6】凹凸不織布の原反の断面形状の変化を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施態様に用いる一対のロールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明で製造される凹凸不織布について説明する。
図1は、本発明の一実施態様で製造される凹凸不織布を示す図である。
図1に示す凹凸不織布1は、その片面1aに、畝部2及び溝部3を有する起伏に富んだ凹凸形状を有し、その他面1bは、ほぼ平坦な面となっている。
畝部2は、凹凸不織布1の平面方向における一方向(X方向)に延びて形成されており、該一方向に直交する方向(Y方向)に多列に形成されている。溝部3は、畝部2,2間に、両畝部2と平行に延びて形成されている。畝部2と溝部3は、前記一方向に直交する方向(Y方向)に交互に形成されている。畝部2は、上方に向かって凸の円弧状の断面形状を有している。
【0010】
溝部3の底部には、凹凸不織布1を貫通する開孔31が、該溝部3に沿って複数形成されている。開孔31の内周面においては、不織布1の構成繊維どうしが熱融着している。溝部3の底部は、開孔31の周辺部が最も低く、開孔31と開孔31との間の中央部付近が最も高くなっている。
溝部3内の開孔31の配置ピッチP31(図1参照)は、0.5〜2.0mm、特に0.7〜1.5mmであることが、開孔31の形成時に、開孔31と開孔31との間の表面を第2面1b側に引き下げ、複数の開孔31に亘って連続して延びる溝部3を形成する点から好ましい。また、Y方向における溝部3のピッチP3(図1参照)は、溝部3間に高さの高い畝部2を形成させる観点や畝部2が肌等に接触する面積を小さくする観点等から、1.0〜20.0mm、特に1.4〜4.0mmであることが好ましい。
【0011】
凹凸不織布1は、前記片面1a側を形成する上層11と前記他面1b側を形成する下層12とを有する2層構造を有している。開孔31の周縁部ないし内周面においては、上層11及び/又は下層12の構成繊維が熱融着しており、それによって、上層11と下層12との間が接合されている。
【0012】
凹凸不織布1は、構成繊維として、熱伸長性繊維を含んでいる。熱伸長性繊維は、熱融着性繊維であることが好ましい。
熱伸長性繊維としての熱融着性繊維は、熱融着成分と該熱融着成分より融点の高い高融点成分よりなる複合繊維であることが好ましく、より好ましくは、熱融着成分を鞘、高融点成分を芯とする芯鞘型複合繊維が用いられる。熱融着成分及び高融点成分は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱融着成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリペンテン−1、又はこれらのランダム若しくはブロック共重合体等が挙げられる。高融点成分としては、例えば、ポリエチレンテレフテレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン−6やナイロン−66などのポリアミド等が挙げられる。
熱融着成分と高融点成分の好ましい組み合わせとしては、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンとポリプロピレン、低融点のポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンとポリブチレンテレフタレート等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。芯鞘型複合繊維は、同芯タイプの他、偏芯タイプのもの、更には繊維の周方向の一部に芯成分が露出しているもの等であっても良い。
【0013】
熱融着性繊維は、起伏が大きい嵩高な凹凸不織布を製造する観点から、熱伸長性複合繊維であることが好ましい。熱伸長性複合繊維は、加熱によってその長さが伸びる繊維であり、温度が90℃以上、好ましくは、110℃〜130℃で伸張する繊維である。熱伸長性複合繊維は、凹凸不織布の製造時、特に開孔31及び溝部3の形成後に熱伸長させることにより、起伏の大きい凹凸形状を生じさせることができる。従って、伸長性繊維は、凹凸不織布の完成後においては、その多くが伸長した状態となっており、その状態から更に伸長される繊維という意味ではない。
【0014】
熱伸長性複合繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びたり、あるいは捲縮加工が施された繊維であって捲縮が解除されて見かけの長さが伸びる繊維が挙げられる。
熱伸長性複合繊維としては、熱融着成分の軟化点より10℃高く、さらに融点より10℃低い温度での伸張率が5〜40、特に10〜30%であることが、起伏の大きい凹凸形状を形成させる点から好ましい。熱伸長性複合繊維の好ましい例は、特開2005−350836号公報の段落〔0024〕〜〔0040〕に記載されている。
【0015】
熱伸長性の熱融着性繊維、特に熱伸長性複合繊維の配合割合は、凹凸不織布の構成繊維中、40〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。これらの複合繊維の以外に配合する繊維としては、熱可塑性樹脂からなる繊維(非複合繊維)等が挙げられる。また、多層構造の凹凸不織布を形成する場合、起伏の大きい第1面1aを形成する層(上層11)中の熱伸長性複合繊維の配合割合を上記の範囲とすることも好ましい。
【0016】
次に、本発明の凹凸不織布の製造方法の一実施態様を、上述した凹凸不織布1を製造する場合を例に、図2〜図6を参照しながら説明する。
【0017】
先ず、図2に示すように、所定のウエブ形成手段(図示せず)を用いて下層12の原反となる繊維ウエブ又は不織布12Aを作製する。繊維ウエブ又は不織布12Aには、熱伸長性複合繊維や他の熱伸長性繊維を含ませないか、又は熱伸長性複合繊維や他の熱伸長性繊維を上層より低い割合で含ませることが好ましい。下層12とする繊維ウエブの形成手段としては、例えば(a)カード機を用いて短繊維を開繊するカード法、(b)溶融紡糸された連続フィラメントを直接エアサッカーで牽引してネット上に堆積させる方法(スパンボンド法)、(c)短繊維を空気流に搬送させてネット上に堆積させる方法(エアレイ法)などの公知の方法を用いることができる。下層12とする不織布の製法としては、上記(a)〜(c)の方法によって製造した繊維ウエブを、エアスルー法、スパンレース法、ヒートロール法等の公知の不織布化方法によって不織布化する方法等が挙げられる。これら以外の各種製法による不織布を用いることもできる。
【0018】
また、下層12用の繊維ウエブ又は不織布12Aとは別に、所定のウエブ形成手段(図示せず)を用いて、上層11の原反となる繊維ウエブ11Aを作製する。繊維ウエブ11Aは、熱伸長性複合繊維や他の熱伸長性繊維を含むものであるか、又は熱伸長性複合繊維や他の熱伸長性繊維からなる。繊維ウエブ11Aを形成するウエブ形成手段としては、例えば(a)カード機を用いて短繊維を開繊するカード法、(b)溶融紡糸された連続フィラメントを直接エアサッカーで牽引してネット上に堆積させる方法(スパンボンド法)、(c)短繊維を空気流に搬送させてネット上に堆積させる方法(エアレイ法)などの公知の方法を用いることができる。繊維ウエブ11A,12Aは、構成繊維どうしが結合していない不織布化していないものである。
【0019】
そして、下層12用の繊維ウエブ又は不織布12Aと上層11用の繊維ウエブ11Aとを重ね、両者を重ねた帯状原反(積層体)10を、一対のロール(開孔付与ロール)41,42を備えた開孔装置4に導入する。開孔装置4は、周面に開孔形成用のピン状の突起42を備えた第1ロール(ピンロール)41と、第1ロール41と対向して配置された第2ロール43(受けロール)とを備えている。第1ロール41には、開孔形成用のピン状の突起42が、ロール周方向に直列した突起列が、軸長方向に多列に形成されるように設けられている。第1ロール41に形成する突起列の本数は、例えば3本から100本等とすることができる。突起列と突起列との間には、図4に示すように、突起42が形成されていない所定幅の領域46が形成されており、該領域46に吸引孔47が形成されている。吸引孔47は、ロール41の周方向に直列した状態に形成されており、ロールの全周に亘って所定のピッチで形成されている。
吸引孔47は、図示しない通気路を介して外部の吸引手段に連通している。吸引孔47と外部の吸引手段とを繋ぐ通気路や吸引手段の構成は、特に制限されず、ロールの周面に吸引孔を設ける従来の技術と同様とすることができる。
【0020】
ピン状の突起42でウエブの溝部に開孔31を形成しつつ、突起42,42間で吸引することにより、畝部の前段階の山高部2Aがスムーズに形成される。山高部2Aは、溝部間に溝部に沿って形成されるが、最終的に得られる凹凸不織布の畝部3に比して隆起の程度が小さい。
突起42は、円錐台状、円柱状又は円錐状であることが好ましく。ここでいう「円」には、真円、楕円、長円、五角形以上の多角形等の円に近いものも含まれるが、真円又はこれに近い、断面略円形であることが好ましい。また、図5に示すように、円柱42aの上に一回り小さな円錐42bを有するピン(ピン状の突起)を用いると、ピンの段差にある平坦部42cで、繊維ウエブの開孔近傍繊維を圧縮保持できるため、開孔近傍の繊維間固定が良好となり、次の熱処理工程での熱伸長性繊維の伸長による疎で柔軟な畝部が形成されやすい。
【0021】
第2ロール43は、図3及び図6(b)に示すように、その周面に、帯状原反10が当接した状態で、該帯状原反10に突起42が押し込まれる。図3及び図6(b)に示す第2ロール43においては、突起42を帯状原反10に押し込む際に、該突起42に対向する周面(突起対向面)が平坦な面となっている。
第1ロール41と第2ロール43との間に導入された帯状原反10は、突起42によって、その一面10a側が、他面10b側に向かって押し込まれるが、突起42に対向する突起対向面44が平坦であることによって、該他面10b側は、平坦な形状を維持する。
そのため、開孔31の周囲の繊維は平面的に積層された繊維ウエブから厚み方向へと繊維の配向が変えられるため、熱伸長性繊維を伸長させた際に、山高部2Aを大きく隆起させることができ、また、溝部3、特に開孔31の周辺部と畝部2との間に、大きな繊維密度勾配を設けることができる。これにより、一面1aに起伏が大きい凹凸形状を有する一方、他面1bは比較的平坦であり、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、肌との接触面積を小さくでき、また、表面から内部への液の吸い込み性及び吸収体への液の移行性等に優れた凹凸不織布を得ることができる。
【0022】
なお、第1ロール41の周面や突起42は、金属等の硬質材からなることが好ましいが、第2ロール43の平坦な周面は、金属等の硬質材の他、ブラシロールのブラシやコットンロールのように突起42の形状に応じて変形、あるいは、突起42が押しつけられたときに凹むような材料からなることも好ましい。これらは、実質平坦で弾性的な表面の一例である。
【0023】
図7に、第2ロール43の別形態が示されている。図7に示す第2ロール43’は、突起42を帯状原反に押し込む際に、突起42に対向する周面(突起対向面)44における、個々の突起42に対向する位置に、個々の突起42の先端部に対応する形状の凹部45を有している。凹部45は、ロール43’の周方向に間欠的に形成されている。ロール43’の帯状原反が接触する面における、凹部45以外の部分は、ロール43’の回転中心線からの距離が等しい一つの面を形成している。
なお、凹部45は、突起42の先端部が、その底面に突き当たるものであることが、繊維ウエブの第2ロール側の平面性と開孔31周辺の繊維の配向性の点、及び開孔31の成形性の点から好ましい。また、凹部45は、突起42の先端部の外周面と、凹部45の内周面との間に、直径で0.5〜1mm程度のクリアランスが生じるように突起42と組み合わされることが、凹部45と突起42の当り精度及び加工処理温度の適応性を高める点から好ましい。
突起42に対向する位置に凹部45を有する突起対向面で、帯状原反10を支持した状態で突起42を押し込んだ場合も、突起対向面が平坦な面である場合と同様の効果が得られる。
ロール43’の周面(突起対向面)44に、突起42に対応する形状の凹部45を形成する場合の凹部45や第2ロールは、金属等の硬質材から形成することが好ましい。
【0024】
第1ロール41及び第2ロール43は、所定温度に加熱可能になっている。
開孔31の形成は、ウエブ12A及び/又はウエブ11A中の成分が軟化又は溶融し、開孔の周囲で、構成繊維同士が接合する温度で行う。第1ロール41、特に突起42の加熱温度は、熱伸長性複合繊維における低融点成分の融点以上で且つ高融点成分の融点未満の温度で行われることが好ましい。また熱伸長性繊維の伸長開始温度未満の温度で行われることが好ましい。
【0025】
第1ロール41と第2ロール43との間に導入された帯状原反10に、上述したように、その一面10a側から他面10b側に向かって突起42が押し込まれる。その突起42によって、帯状原反10の構成繊維がより分けられ、図6(c)に示すように、開孔31が形成されると共に、加熱された突起42に接触した、開孔31の周囲に存在する繊維が軟化又は溶融する。また、突起42が、第1ロール41の周方向に比較的小さいピッチで形成されているため、帯状原反10の流れ方向に隣り合う2つの開孔31間も、一面10a側が他面10b側に向かって凹んだ状態となる。
【0026】
これによって、図3に示すような溝付中間不織布1Aが得られる。溝付中間不織布1Aは、突起42に押圧された側の面に、畝部2の前段階の山高部2Aと溝部3が形成されており、且つ該溝部3の底部に、周囲の繊維同士が熱融着した開孔31が溝部3に沿って間欠的に形成されている。
【0027】
そして、この溝付中間不織布1Aが、図2に示すように、熱風吹き付け装置5に搬送される。熱風吹き付け装置5においては溝付中間不織布1Aに熱風が吹き付けられる。熱風吹き付け装置5による熱風の吹き付けは、山高部2A及び溝部3を有する面側から行うことが好ましく、通気性を有する支持体(ネット等)に載せた溝付中間不織布1Aに対して、山高部2A及び溝部3を有する面側から他面側に向かってエアスルー方式で熱風を貫通させることがより好ましい。
【0028】
熱風の吹き付けは、溝付中間不織布1A中の熱伸長性繊維が加熱によって伸長する温度で行われる。また、溝付中間不織布1Aにおける熱伸長性複合繊維どうしの交点や熱伸長性複合繊維と他の熱融着性繊維との交点、あるいは他の熱融着性繊維どうしの交点が熱融着する温度で行われることが好ましい。尤も、斯かる温度は熱伸長性複合繊維の高融点成分の融点未満の温度で行うことが好ましい。
【0029】
このような熱風の吹き付け加工によって、上層11に含まれる熱伸長性複合繊維が、開孔31及びその周囲の熱融着部以外の部分において伸長する。
溝付中間不織布1Aにおいては、突起42による押圧及び加熱によって、周囲に熱融着部を有する開孔31を有する溝部3が形成され、溝部3と山高部2Aの境界部付近の繊維が、一方の面側から他方の面側に向かって角度をなして起立した状態となっているため、その状態で、熱伸長性複合繊維を伸長させることにより、突起42に押圧された側の面に、起伏が大きい凹凸形状が形成され、畝部2と溝部3との間に、大きな繊維密度の差や繊維間空間の大きさの差を設けることができる。これにより、起伏が大きい凹凸形状を有し、吸収性物品の表面シートとして用いたときに、肌との接触面積を小さくでき、また、表面から内部への液の吸い込み性に優れた凹凸不織布を得ることができる。更に、突起42の周囲に位置していた繊維が、
【0030】
上述した実施態様においては、上層11及び下層12を有する2層構造の凹凸不織布を製造したが、2層構造の凹凸不織布を製造する場合、下層12用の原反には、繊維ウエブではなく不織布を用いることも好ましい。不織布は、構成繊維間が結合していない繊維ウエブに比較して変形し難い(変形自由度が低い)。繊維ウエブを、変形自由度の低い不織布等に重ねた状態で、繊維ウエブ側から突起42を押し込んで開孔31を形成し、その後、熱伸長性繊維を伸長させることで、山高部2Aを一層効率よく隆起させることができ、かさ高性や液の吸い込み性、片面の平坦性等を一層向上させることができる。
変形自由度が低い部材としては、不織布に代えて、繊維ウエブであるが伸長性が低くされるものとして、例えば、上層より繊維径が小さな繊維ウエブや下層繊維ウエブの厚みを薄くする加工をおこなったもの、メルトブロー法による樹脂繊維の吹き付けにより下層を形成したもの等を用いることもできる。これらを用いた場合も不織布を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0031】
本発明の凹凸不織布は、多様な用途に用いることができるが、特に、吸収性物品の表面シートとして用いることが好ましい。
吸収性物品は、主として尿や経血等の排泄体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収性物品は、一般に、着用時に着用者の肌に当接する肌当接面及びそれとは反対側(通常、ショーツ等の衣類側)に向けられる非肌当接面を有し、表面シートは、肌当接面側に配され、裏面シートは、非肌当接面側に配される。本発明における凹凸不織布は、凹凸を有する面、特に凹凸の起伏の大きい面側(上記実施形態では上層11側)が、着用者の肌側に向くように用いることが好ましい。
【0032】
吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0033】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、凹凸不織布の製造に、単層構造の繊維ウエブのみを用いて単層構造の凹凸不織布を製造することもできる。例えば、上述した実施形態における、上層用の繊維ウエブ11Aのみを、開孔装置4及び熱風吹き付け装置5に順次導入して、単層構造の凹凸不織布1を製造することもできる。これらの場合についても、特に説明しない点は、上記の実施形態と同様とすることができる。
【0034】
また、開孔31を有する溝部3を、凹凸不織布の製造時における機械方向(MD,原反10等の流れ方向に同じ)と平行に形成するのに代えて、該機械方向に直交する方向(CD,原反10等の流れ方向の直交方向に同じ)と平行に形成しても良いし、機械方向(MD,原反10等の流れ方向に同じ)に対して所定の角度(例えば5°,30°,45°等)をなして延びるように形成しても良い。また、所定の間隔に形成した多数本の溝部と、該溝部とは角度を変えて所定の間隔で形成した他の多数本の溝部とが、所定の角度をなして交差するように形成することもできる。
また、開孔が連なる複数の溝部の形成と、繊維ウエブの熱処理による熱伸長性繊維の伸張及びそれによる畝部の形成とを同時に行っても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 凹凸不織布
1A 溝付中間不織布(中間体)
11 上層
11A 上層用の繊維ウエブ
12 下層
12A 下層用の繊維ウエブ又は不織布
2A 山高部
2 畝部
3 溝部
31 開孔
4 開孔装置
41 第1ロール(ピンロール)
42 開孔形成用の突起
43,43’ 第2ロール(受けロール)
45 突起に対応する凹部
47 吸引孔
5 熱風吹き付け装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に畝部及び溝部を有し、該溝部の底部に開孔を有する凹凸不織布を製造する方法であって、
熱伸長繊維を含む繊維ウエブ又は該繊維ウエブを含む積層体からなる原反に、該原反の前記繊維ウエブからなる一面側から他面側に向かって、複数のピン状の突起を押し込み該原反に開孔を形成することにより、該原反の前記一面側に、該開孔が連なる複数の溝部を形成し、これと同時もしくはこの後に、該溝部を有する中間体を熱処理することで、該中間体における前記繊維ウエブ中の熱伸長繊維を伸長させ、隣り合う前記溝部間を隆起させて畝部を形成する、凹凸不織布の製造方法。
【請求項2】
前記ピン状の突起は円錐状の突起であり、該突起はロールの表面の幅方向に規則的に配列され、該幅方向に配列された突起と突起の間のロール表面に、前記畝部よりも隆起の程度が小さい山高部を形成する吸引孔が形成されており、前記突起及び前記吸引孔がそれぞれロールの周方向に沿って複数形成されたピンロールと、該ピンロールを受ける実質平坦で弾性的な表面を有する受けロールからなる一対の開孔付与ロールを用いて、前記原反に前記溝部を形成する、請求項1記載の凹凸不織布の製造方法。
【請求項3】
前記凹凸不織布が、前記片面側を形成する上層と、該上層と積層された下層とを有しており、前記上層の原反に繊維ウエブを用いる一方、前記下層用の原反に、上層用の繊維ウエブより変形自由度の少ない部材を用い、これらに一体的に前記開孔を形成する、請求項1又は2記載の凹凸不織布の製造方法。
【請求項4】
前記変形自由度の少ない部材が、不織布である請求項3記載の凹凸不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−132623(P2011−132623A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291516(P2009−291516)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】