説明

凹凸加工用突板シートの製造方法及び凹凸化粧板の製造方法

【課題】表面の突板3がWPC処理された凹凸化粧板12を生産性良く製造するための方法、及び凹凸化粧板12に用いられる凹凸加工用突板シート8の製造方法を提供する。
【解決手段】表面吸着性を有する剛性台板1の表面1aに熱可塑性樹脂板2を載置し、この樹脂板2上に接着剤を塗布した後、その上に含水率0〜15%でかつ厚さ0.25〜0.75mmの突板3を載置し、それらを冷圧養生により積層一体化する。突板3をショットブラストにより浮造り加工し、その突板3に可撓性樹脂の含浸処理を行った後、剛性台板1を熱可塑性樹脂板2から剥離除去して凹凸加工用突板シート8とする。この突板シート8を、表面に凹凸部からなる成形面19を備えた真空プレス機16により熱可塑性樹脂板2と突板3とが同調した凹凸形状になるように熱圧成形して基材10に貼着一体化し、凹凸化粧板12とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸加工されるための凹凸加工用突板シートを製造する方法、及びその突板シートにより凹凸化粧板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の突板シートとして、特許文献1や特許文献2に示されるように、突板の裏面側に不織布を積層して貼着一体化したものが知られている。そして、特許文献2では、突板シートの裏面に接着剤を塗布し、この裏面に接着剤が塗布された突板シートを、立体形状を有する基材に真空成形により貼り付ける突板シート貼り框材の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−301896号公報
【特許文献2】特開2000−43195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この提案のものの突板シートにWPC(Wood Plastic Combination:樹脂含浸)処理を施すのは難しく、表面性の劣る突板シートしか得ることができなかった。WPC処理とは、突板の細胞中に樹脂を含浸させ、突板の強度や耐汚染性、化粧性等を向上させる技術である。
【0005】
また、これを解決する手段として、予めWPC処理を施した突板の裏面に不織布を貼るという方法も考えられるが、薄厚のWPC処理突板を製造するのが困難なだけでなく、当該WPC突板にさらに不織布を貼るという2重の手間がかかり、生産性が極めて悪くなるのは避けられない。
【0006】
一方、突板にショットブラスト加工を行おうとしても、裏面に繊維系樹脂シート(不織布)が使用されているので、ショットの粒子が繊維系樹脂シートに入り込んで接着不良を起こしたり、繊維系樹脂シートがクッションとなってショットブラスト加工が不十分になったりするという問題がある。また、このショットブラスト加工後に上記WPC処理をする場合には、裏面の不織布に回り込んだ樹脂がムラとなり、意匠外観に劣るWPC突板しか得ることができない。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的は、表面の突板がWPC処理された凹凸化粧板を生産性良く製造するための凹凸化粧板の製造方法、及び凹凸化粧板に用いられる凹凸加工用突板シートを生産性良く製造するための製造方法を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、表面吸着性を有する剛性台板の表面に熱可塑性樹脂板を介して突板を接着し、その状態で、突板のショットブラスト加工及びWPC処理を行った後に、剛性台板を除去するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明の凹凸加工用突板シートの製造方法では、表面吸着性を有する剛性台板の表面に熱可塑性樹脂板を載置し、この熱可塑性樹脂板上に接着剤を塗布した後、該接着剤上に含水率が0〜15%でかつ厚さが0.25〜0.75mmの突板を載置して、これら剛性台板、熱可塑性樹脂板及び突板を冷圧養生により積層一体化する。次いで、上記突板をショットブラストにより浮造り加工し、さらに、この突板に可撓性樹脂の含浸処理を行った後に、上記剛性台板を熱可塑性樹脂板から剥離除去することを特徴とする。
【0010】
この請求項1の発明では、剛性台板の吸着性を有する表面に熱可塑性樹脂板が載置され、この熱可塑性樹脂板上に接着剤が塗布された後、その接着剤上に突板が載置され、これら剛性台板、熱可塑性樹脂板及び突板は冷圧養生により積層一体化される。次いで、その表面の突板がショットブラストにより浮造り加工され、続いて突板に可撓性樹脂の含浸処理が行われる。しかる後、剛性台板が熱可塑性樹脂板から剥離除去され、残りの熱可塑性樹脂板と、浮造り加工されかつ可撓性樹脂が含浸された突板とからなる凹凸加工用突板シートが得られる。このことで、強度や耐汚染性、化粧性に優れた凹凸加工用突板シートを容易に生産性良く製造することができる。
【0011】
請求項2の発明の凹凸加工用突板シートの製造方法では、表面吸着性を有する剛性台板の表面に熱可塑性樹脂板を載置し、この熱可塑性樹脂板上に接着剤を塗布した後、該接着剤上に含水率が0〜15%でかつ厚さが0.25〜0.75mmの突板を載置して、上記剛性台板、熱可塑性樹脂板及び突板を冷圧養生により積層一体化する。次いで、上記突板をショットブラストにより浮造り加工し、さらに、この突板に可撓性樹脂の含浸処理を行い、上記突板表面に可撓性樹脂により突板表面を平滑にする樹脂充填処理を行った後に、上記剛性台板を熱可塑性樹脂板から剥離除去することを特徴とする。
【0012】
この請求項2の発明では、請求項1の発明と同様に、剛性台板の吸着性を有する表面に熱可塑性樹脂板が載置され、この熱可塑性樹脂板上に接着剤が塗布された後、接着剤上に突板が載置され、これら剛性台板、熱可塑性樹脂板及び突板は冷圧養生により積層一体化され、次いで、その表面の突板がショットブラストにより浮造り加工され、続いて突板に可撓性樹脂の含浸処理が行われる。引き続いて、突板表面に可撓性樹脂により樹脂充填処理が行われ、浮造りで形成された表面凹部に可撓性樹脂が充填されて突板表面が平滑にされ、塗装される。その後、剛性台板が熱可塑性樹脂板から剥離除去され、残りの熱可塑性樹脂板と、浮造り加工されかつ可撓性樹脂が含浸され表面が樹脂充填により平滑となった突板とからなる凹凸加工用突板シートが得られる。この発明でも、強度や耐汚染性、化粧性に優れた凹凸加工用突板シートを容易に生産性良く製造することができる。
【0013】
請求項3の発明では、上記請求項1又は2の発明の凹凸加工用突板シートの製造方法において、剛性台板を熱可塑性樹脂板から剛性台板と熱可塑性樹脂板との吸着面が30〜80℃になるように加熱しながら剥離することを特徴とする。
【0014】
この請求項3の発明では、剛性台板を熱可塑性樹脂板から容易に剥離させることができる。
【0015】
請求項4の発明の凹凸化粧板の製造方法では、上記請求項1又は2の発明の凹凸加工用突板シートの製造方法により製造された凹凸加工用突板シートを、凹凸部からなる成形面を備えた真空プレス機により熱可塑性樹脂板と突板とが同調した凹凸形状になるように熱圧成形した後、基材に貼着一体化することを特徴とする。
【0016】
この請求項4の発明では、上記凹凸加工用突板シートが、真空プレス機における成形面としての凹凸部表面に真空吸着されて熱圧成形されることにより、その凹凸加工用突板シートの熱可塑性樹脂板と突板とが真空プレス機の凹凸部表面に沿って互いに同調した凹凸形状に形成される。この凹凸形状を有する突板シートは基材に貼着一体化されて凹凸化粧板が得られる。このことで、凹凸化粧板を容易に生産性良く製造することができる。
【0017】
請求項5の発明の凹凸化粧板の製造方法では、上記請求項1又は2の発明の凹凸加工用突板シートの製造方法により製造された凹凸加工用突板シートを、表面に凹凸部を有する基材に対し、接着剤を介して、凹凸加工用突板シートが基材表面の凹凸部に沿うように、真空プレスにより熱圧して貼着一体化することを特徴とする。
【0018】
この請求項5の発明では、上記凹凸加工用突板シートが真空プレスにより基材表面の凹凸部に接着剤を介して該凹凸部に沿うように熱圧されて貼着され、その突板シートと基材とにより凹凸化粧板が得られる。このことで、凹凸化粧板を容易に生産性良く製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1の発明の凹凸加工用突板シートの製造方法によると、剛性台板の吸着性表面に熱可塑性樹脂板を載置し、この熱可塑性樹脂板上に接着剤を介して突板を載置して積層一体化し、突板をショットブラストにより浮造り加工して、この突板に可撓性樹脂の含浸処理を行った後に、剛性台板を熱可塑性樹脂板から剥離除去することにより、強度や耐汚染性、化粧性に優れた凹凸加工用突板シートを容易に生産性良く製造することができる。
【0020】
請求項2の発明の凹凸加工用突板の製造方法シートによると、剛性台板の吸着性表面に熱可塑性樹脂板を載置し、この熱可塑性樹脂板上に接着剤を介して突板を載置して積層一体化し、突板をショットブラストにより浮造り加工して、この突板に可撓性樹脂の含浸処理を行い、突板表面に可撓性樹脂により突板表面を平滑にする樹脂充填処理を行った後に、剛性台板を熱可塑性樹脂板から剥離除去することにより、表面が樹脂充填により平滑で、強度や耐汚染性、化粧性に優れた凹凸加工用突板シートを容易に生産性良く製造することができる。
【0021】
請求項3の発明によると、上記剛性台板を熱可塑性樹脂板から両者の吸着面が30〜80℃になるように加熱しながら剥離することにより、剛性台板の熱可塑性樹脂板からの剥離を容易化することができる。
【0022】
請求項4の発明の凹凸化粧板の製造方法によると、上記製造された凹凸加工用突板シートを、凹凸部からなる成形面を備えた真空プレス機により熱可塑性樹脂板と突板とが同調した凹凸形状になるように熱圧成形した後、基材に貼着一体化して化粧板を得ることにより、凹凸化粧板を容易に生産性良く製造することができる。
【0023】
請求項5の発明の凹凸化粧板の製造方法によると、上記製造された凹凸加工用突板シートを、表面に凹凸部を有する基材に対し、接着剤を介して、突板シートが基材表面の凹凸部に沿うように、真空プレスにより熱圧して貼着一体化することにより、凹凸化粧板を容易に生産性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る凹凸加工用突板シートの製造方法の工程を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る凹凸化粧板の製造方法において真空熱圧成形工程の第1の方法により凹凸化粧板を製造する工程を示す図である。
【図3】図3は、真空熱圧成形工程の第2の方法により凹凸化粧板を製造する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
図1〜図3は本発明の実施形態に係る凹凸化粧板の製造方法を示す。この製造方法は樹脂板載置工程、突板接着工程、冷圧養生工程、浮造り加工工程、樹脂含浸処理(WPC処理)工程、照射硬化工程、剥離工程及び真空熱圧成形工程を有する。また、必要に応じ、照射硬化工程の後で剥離工程の前に塗装工程(樹脂充填処理工程)が設定される。
【0027】
[樹脂板載置工程]
図1(a)及び図1(b)に示すように、最初の樹脂板載置工程では、表面1aが表面吸着性を有する剛性台板1の該表面1aに熱可塑性樹脂板2を載置する。
【0028】
(剛性台板)
表面吸着性を有する剛性台板1とは、表面が平滑な台板の表面に、吸着性を有する樹脂層が形成されたものである。表面吸着性とは、樹脂板載置工程で表面に載置される熱可塑性樹脂板2が剥離工程よりも前の各工程において剥がれない程度の強度であり、かつ剥離工程において表面の凹凸加工用突板シート8を破壊することなく剥離できる程度の強度の吸着性を有していればよく、アクリル樹脂が好適に用いられる。台板上に直接アクリル樹脂層を形成してもよく、PET樹脂やPP樹脂、PVC樹脂等の樹脂シート上にアクリル樹脂層を形成した吸着シートを、接着剤層を介して表面平滑な台板上に積層一体化してもよい。
【0029】
表面平滑な台板としては、剛性を有する板状体が好適に用いられ、木質繊維板(例えばMDFやハードボード等)や合板等の木質板(好適には厚さ5mm〜20mm程度)、樹脂板(好適には厚さ2mm〜20mm程度)、鋼板(好適には厚さ1〜6mm程度)のものが使用される。
【0030】
(熱可塑性樹脂板)
上記熱可塑性樹脂板2とは、後述する真空熱圧成形工程で使用する真空プレス機16による加熱温度(例えば130℃〜200℃程度)で可撓性を発現し、かつ分解しない程度の耐熱性を有する樹脂板を意味する。例えば、アクリル樹脂板、ABS樹脂板、PVC樹脂板等が好適に用いられる。その他、PP樹脂やPET樹脂等も用いることは可能であるが、これらの樹脂は表面に汎用的な接着剤を使用することができない。そのため、このような汎用的な接着剤を適用する場合には、例えば表面のコロナ放電処理やプラズマ処理等の特殊な表面処理をしておくことが必要となる。
【0031】
また、上記樹脂板に代えて、紙にアクリル樹脂やフェノール樹脂を含浸させたアクリル樹脂シート等を用いることもできる。この場合、フェノール樹脂含浸紙について、フェノール樹脂自体は、熱硬化性樹脂であるが、いわゆるファーストステージ状態のフェノール樹脂含浸紙が用いられ、真空プレス機16による加熱温度(例えば130℃〜200℃程度)で可撓性を発現し、冷却後に完全硬化させることができるため、問題はない。
【0032】
[突板接着工程]
この突板接着工程(2)では、図1(c)に示すように、上記熱可塑性樹脂板2上に接着剤を塗布した後、その接着剤上に含水率が0〜15%でかつ厚さが0.25〜0.75mmの突板3を載置する。
【0033】
(接着剤)
熱可塑性樹脂板2と突板3の接着剤としては、可撓性を有し、かつ真空プレス時の熱(例えば130℃〜200℃程度)に対して耐熱性を有する接着剤であれば、どのようなものでも使用できる。例えば酢ビ系樹脂接着剤、ビニル樹脂系接着剤、ウレタン変性ビニル樹脂系接着剤、シリコン系樹脂接着剤等の接着剤等が好適に用いられる。より好適には、耐水性及び耐熱性に優れるウレタン変性ビニル樹脂系接着剤又はシリコン系樹脂接着剤が用いられる。
【0034】
このとき、塗布量は適宜選択できるが、例えば40〜100g/m、50〜75g/mが好ましい。少な過ぎると真空プレスによる変形に耐えられず、一方、多過ぎるとその後のショットブラスト加工がムラになってしまうだけでなく、WPC処理もムラになってしまうため、好適な意匠外観及び性能を有するWPC突板が得られない。
【0035】
(突板)
突板3は、含水率0〜15%かつ0.25〜0.75mmの天然木突板であれば、針葉樹、広葉樹を含め、どのような樹種でも用いることができる。天然木突板の断面は、早材部と晩材部とが交互にあって木目を構成している。早材部は、春から秋までの時期に成長する春目部とも呼ばれる部分であり、成長が速いため、組織が粗で柔らかい部分である。晩材部は、秋から春までの時期に成長する秋目部とも呼ばれる部分であり、成長が遅いため、組織は緻密で硬い部分である。
【0036】
突板3の含水率は0〜15%が好ましい。これは、含水率が15%よりも高いと、熱圧プレス機16による熱圧時に破裂するためである。
【0037】
また、突板3の厚さは0.25〜0.75mmが好ましい。これは、0.25mmよりも薄すぎると、木質感が無くなり、0.75mmよりも厚すぎると、成形時にクラックが発生しやすくなるためである。
【0038】
[冷圧養生工程]
この冷圧養生工程では、上記剛性台板1、熱可塑性樹脂板2及び突板3を冷圧養生により積層一体化する。例えば、0.1〜1.0N/cm、好適には0.3〜0.7N/cm程度の圧力がよい。
【0039】
[浮造り加工工程]
この浮造り加工工程では、図1(d)に示すように、上記突板3をショットブラストにより浮造り加工する。すなわち、ブラスト処理は、微細な粒子である硬質のブラスト用研磨材5を突板3表面に衝突させて、早材部を晩材部よりも深く研削して凹部を形成するとともに、早材部及び晩材部に微細な傷を付ける手法である。
【0040】
優れた意匠性の化粧板を得るためには、凹部の深さは、0.2mm以上でかつ0.3mm以下程度が好ましい。しかし、天然木突板には、均一な凹部を形成することが困難である。したがって、凹部の深さを0.1mm以上0.4mm以下の範囲で形成し、平均的な深さが、0.2mm以上0.3mm以下となるようにする。
【0041】
凹部が0.5mm以上の深さに形成されると、その分だけ樹脂が必要であるにも拘わらす、凹部の深さが0.4mm以下である場合と化粧板の外観に変わりがない。従って、凹部の深さは、0.1mm以上0.4mm以下であることが好ましい。
【0042】
凹部の深さを0.1mm以上でかつ0.4mm以下とするため、突板3の厚さは、0.25〜0.75mmが好ましい。
【0043】
ブラスト用研磨材5としては、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ケイ素質等の無機質粒子、アルミナ質等の金属粒子、胡桃や桃の種を細かく砕いた硬質有機粒子、或いはドライアイスを細かく粉砕したドライアイス粒子等が用いられる。
【0044】
このとき、ブラスト用研磨材5の粒径は、90μm以上でかつ150μm以下となるようにふるい法により調整されたものであることが好ましい。これにより、ブラスト処理によって突板3表面に凹部を形成することができるとともに、後述する可撓性樹脂が浸透していき易い傷の大きさとすることができる。
【0045】
ふるい法では、3段〜5段程度でふるい分けを行う。1段目のふるいの目開きの径を約180μm、2段目のふるいの目開きの径を約150μm、最終段のふるい目の目開きの径を約90μmに設定する。このことで、90μm以上でかつ150μm以下の粒径のブラスト用研磨材5が全体の約70%以上含まれるように調整されている。これ以外には、研磨材5が扁平形状や鋭角な形状であるものや、ふるいきれなかった、粒径が90μm以下の研磨材5が含まれている。
【0046】
このように調整されたブラスト用研磨材5を上記突板3の表面に衝突させる。ブラスト用研磨材5は、ノズル6から自然落下させてもよいし、圧力を加えて、ノズル6から噴射させてもよい。ノズル6は、突板3の表面上方の任意の位置に複数本配置し、突板3の表面全体にブラスト処理が施されるようにする。
【0047】
[樹脂含浸処理工程]
図1(e)に示すように、この樹脂含浸処理工程では、上記浮造りされた突板3の表面に可撓性樹脂を塗布して、その可撓性樹脂の突板3への含浸処理を行う。この可撓製樹脂は、硬化しても可撓性を有するもので、活性エネルギー線硬化特性と湿気硬化特性とを兼ね備えている。このため、活性エネルギー線硬化特性のみを有する樹脂と比べると、活性エネルギー線の照射により瞬時に樹脂を硬化させることができる。
【0048】
可撓性樹脂は、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーやポリマーを単独、またはこれらを複数混合させたものに、反応性モノマーを加えたものを主成分とする。さらに、樹脂は、主成分に対して、ポリイソシアネートを1質量%以上でかつ15質量%以下添加されてなる。
【0049】
樹脂に用いるオリゴマー、ポリマー及び反応性モノマーは、活性エネルギー線硬化特性を有する樹脂として一般的に用いられるものでよい。樹脂に用いる反応性モノマーの例として以下のものが挙げられる。
【0050】
単官能モノマーの例としては、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレート、2−ヒドロキシルプロピルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、イソボロニルアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート等が挙げられる。
【0051】
2官能モノマーの例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、ポリプロピレンジアクリレート、ポリプロピレンジメタアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタアクリレート等が挙げられる。
【0052】
3官能モノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート等が挙げられる。
【0053】
4官能以上のモノマーの例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0054】
また、樹脂には、イソシアネート系化合物が添加されることが好ましい。このイソシアネート系化合物は、空気中の湿気を吸収し、樹脂の湿気硬化に寄与する。このため、樹脂の突板3への密着性をより向上させることができる。
【0055】
イソシアネート系化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のイソシアネートモノマー、並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体等のポリイソシアネート誘導体、並びにこれらイソシアネートモノマーまたはポリイソシアネート誘導体のブロック体等が挙げられる。さらには、イソシアネート系化合物は、無黄変型又は難黄変型のものを用いることが好ましい。これらのイソシアネート系化合物を単独で、またはこれらを複数混合して用いる。
【0056】
樹脂には、さらに、一般的に用いられる錫化合物や、亜鉛化合物、アミン化合物等の触媒を添加してもよい。
【0057】
そして、上記の可撓製樹脂をブラスト処理された突板3の表面全体に塗布する。樹脂は、スポンジロールコーターやナチュラルリバースコーター、フローコーター等を使用して塗布する。このように、ブラスト処理を施して微細な傷を付け、含浸性を高くした突板3の表面全体に可撓性樹脂を塗布するので、突板3の内部にまで樹脂を浸透させることができ、表面硬度に優れ、強度の高い化粧板を得ることができる。
【0058】
また、早材部だけでなく、晩材部も含めた表面全体にブラスト処理が施されているので、表面全体に満遍なく可撓性樹脂が含浸し、含浸ムラを抑制することができる。
【0059】
また、突板3の表面にシーラー層を形成せずに、直接可撓性樹脂を塗布している。このため、シーラー材を塗布し、乾燥させる等の手間と時間とが不要であるので、生産性を向上させることができるだけでなく、長期の使用による層間剥離をおこし難い。
【0060】
可撓性樹脂は、低粘度でかつ含浸性の高い樹脂であることが好ましい。具体的には、可撓性樹脂は、突板3の表面に塗布されたとき、その粘度が100Pa・s以下であることが好ましい。このように、樹脂を低粘度のものとすることで、含浸性をより高めることができる。尚、可撓性樹脂は、上述したモノマーにより希釈したり加熱したりすることで、上記の粘度となるように調整する。また、例えば、予め突板3の表面の温度が40°〜50°となるように突板3を加熱し、この表面の温度よりも10°〜20°低い温度にした可撓性樹脂を塗布することで、この樹脂の含浸性をより向上させることができる。
【0061】
[照射硬化工程]
次に、可撓性樹脂を硬化又は半硬化させるために、突板3の表面側から活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線には紫外線又は電子線が用いられる。
【0062】
活性エネルギー線が紫外線である場合、可撓性樹脂に、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、一般的に用いられるラジカル反応型のアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジル系、ベンゾイン系等のカルボニル化合物、テトラアルキルチウラムモノサルファイド、チオキサンソン等のイオウ化合物を単独、またはこれらを複数混合して用いてもよい。しかし、可撓性樹脂の硬化を促進するためには、上記一般的な光重合開始剤よりも紫外線に対して反応性に優れたものが好ましい。
【0063】
具体的には、光重合開始剤として、可撓性樹脂は、ビスアシルフォスフィンオキサイドを0.1質量%以上1.5質量%以下含むものか、モノアシルフォスフィンオキサイドを0.5質量%以上5.0質量%以下含むものであることが好ましい。ビスアシルフォスフィンオキサイド又はモノアシルフォスフィンオキサイドは、紫外線の波長領域が350nm〜400nm近辺である長波長に吸収極大がある。従って、紫外線を発光する光源として、350nm以上400nm以下の長波長領域に発光スペクトルを持つ発光方式を用いることにより、可撓性樹脂をより効果的に硬化させることができる。具体的には、放電灯方式のメタルハライドランプ、無電極方式のDバルブ、Vバルブ、Qバルブ、Mバルブ、パルスUV方式等を使用する。
【0064】
また、活性エネルギー線が紫外線である場合、可撓性樹脂には、増感剤や、光安定剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤等の助剤を添加してもよい。また、可撓性樹脂に染料、顔料等を加えて着色を行ってもよい。
【0065】
[塗装工程(樹脂充填処理工程)]
化粧板の表面を平滑にする場合、上記樹脂含浸処理工程を経て凹凸や傷が形成された突板3に、可撓性樹脂を塗布して表面を平滑にする樹脂充填処理を行う。
【0066】
この充填処理に用いられる可撓性樹脂は、上記樹脂含浸処理工程で突板3に含浸される可撓性樹脂と同じものである。
【0067】
この工程では、上記可撓性樹脂を突板3の表面に塗布する。この樹脂は、含浸樹脂と同様に、スポンジロールコーター、ゴムロールコーター、リバースコーター等を使用して塗布する。このとき、少なくとも、早材部の凹部内に樹脂が充填されるようにする。
【0068】
充填樹脂は、含浸樹脂と同様に、活性エネルギー線硬化特性と湿気硬化特性とを兼ね備えているので、凹部の深い部分に活性エネルギー線が届き難い場合でも、湿気硬化することで密着不良を抑制することができる。
【0069】
充填樹脂は、染料や顔料により着色したものでもよい。透明感を維持するためには、染料が適しており、透明感を保ちながらもより隠蔽性を上げるためには、顔料が適している。これらの染料又は顔料は、充填樹脂に対して0.1質量%以上でかつ1.0質量%以下添加される。
【0070】
この突板3の凹部に充填された可撓性樹脂を硬化又は半硬化させるために、突板3の表面側から活性エネルギー線を再び照射する。この場合も活性エネルギー線には、紫外線又は電子線が用いられる。
【0071】
この実施形態に係る化粧板の製造方法においては、意匠性を向上させるために、凹部は0.1mm〜0.4mmの深さに形成される。凹部の深さが0.3mm〜0.4mm程度の部分では、活性エネルギー線硬化特性のみを有する樹脂を充填した場合、活性エネルギー線が凹部の底部にある樹脂まで届き難く、樹脂が十分に硬化しないため、密着不良を起こしてしまう場合がある。しかし、本発明においては、含浸される(及び充填される)可撓性樹脂は、活性エネルギー線硬化特性と湿気硬化特性とを兼ね備えているため、活性エネルギー線が十分でなくても、照射工程後の経時の湿気硬化により、凹部の底部にある含浸樹脂及び充填樹脂の硬化が促進される。
【0072】
活性エネルギー線が紫外線である場合、充填樹脂にも、上述した光重合開始剤を添加することが好ましい。また、充填樹脂にも、増感剤や、光安定剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤等の助剤を添加してもよい。
【0073】
[剥離工程]
剥離工程では、図1(f)に示すように、上記剛性台板1を熱可塑性樹脂板2及び突板3の積層体に対し、該熱可塑性樹脂板2から剥離除去する。このことで、図1(g)に示すように、熱可塑性樹脂板2及び突板3の積層体からなる凹凸加工用突板シート8が得られる。
【0074】
その際、好ましくは、剛性台板1と熱可塑性樹脂板2との吸着面が35〜70℃になるよう加熱しながら剥離する。具体的には、突板3の表面又は剛性台板1裏面から遠赤外線ランプや加熱ロール、熱風等により加熱すればよい。このように加熱しながら剥離することで、上記剛性台板1表面の樹脂層が軟化するので、剛性台板1を熱可塑性樹脂板2から容易に剥離させることができる。
【0075】
以上の樹脂板載置工程から剥離工程までが凹凸加工用突板シート8の製造方法である。このようにして製造された平板状の凹凸加工用突板シート8は、その突板3がショットブラストにより浮造り加工され、続いてその突板3に可撓性樹脂が含浸処理されているので、強度や耐汚染性、化粧性に優れたものとなる。すなわち、この実施形態では、強度や耐汚染性、化粧性に優れた凹凸加工用突板シート8を容易に生産性良く製造できることとなる。
【0076】
[真空熱圧成形工程]
そして、真空熱圧成形工程では、図2又は図3に示すように、上記平板状の凹凸加工用突板シート8を真空プレス機16により熱圧成形することにより、凹凸化粧板12を製造する。この場合、2つの方法がある。
【0077】
第1の方法では、図2に示すように、凹凸加工用突板シート8を単独で熱可塑性樹脂板2と突板3とが同調した凹凸形状になるように熱圧成形し、その成形された凹凸加工用突板シート8を、同様の凹凸形状の表面を有する基材10に積層一体化することにより、凹凸化粧板12を製造する。
【0078】
上記真空プレス機16は、例えば上型17及び下型18を備え、下型18の上面においてその中間部を除く周縁部は平坦面であるが、中間部には、凹凸加工用突板シート8を成形するための凹凸部からなる成形面19が形成されている。そして、この成形面19(下型18の上面)には、下型18を貫通する吸引通路20の端部が開口している。また、図示しないが、上型17の内部等には加熱用のヒータが設けられている。
【0079】
一方、上型17の下面の中間部を除く周縁部は平坦面であり、中間部は凹陥状に形成されている。この上型17の下面には中間部ないし周縁部に亘りシリコンゴムシート21が配置され、このシリコンゴムシート21上側の空間において、上型17下面の中間部に相当する部分は大気に開放されている。
【0080】
そして、このような真空プレス機16に対し、図2(a)に示すように、その下型18上面の成形面19上に上記凹凸加工用突板シート8を載置する。そして、図2(b)に示すように、上型17を下降させ、上型17下面の周縁部と下型18上面の周縁部との間でシリコンゴムシート21の周縁部を気密状に挟持して、そのシリコンゴムシート21下側の空間に凹凸加工用突板シート8を収容し、その状態で、ヒータで凹凸加工用突板シート8を加熱しながら、吸引通路20を介してシリコンゴムシート21下側の空間内を吸引して負圧にすることで、シリコンゴムシート21を変形させて、その変形圧力により凹凸加工用突板シート8を下型18上面の成形面19(凹凸部)に押し付け、その凹凸加工用突板シート8を下型18の成形面19に沿った凹凸形状に熱圧成形する。このことで、その凹凸加工用突板シート8における熱可塑性樹脂板2と突板3とを同調した凹凸形状に変形させる。
【0081】
こうして凹凸形状に成形された凹凸加工用突板シート8を、図2(c)に示すように、同様の凹凸形状の表面を有する基材10の表面に接着剤を介して接着し積層一体化する。また、接着剤を使わずに、凹凸加工用突板シート8の裏面に熱可塑性樹脂を流し込み一体化しながら成形を行うインジェクション成形を行うことも出来る。このことにより、凹凸化粧板12が得られる。
【0082】
一方、第2の方法では、図3に示すように、上記凹凸加工用突板シート8を真空プレス機16における下型18の成形面19(凹凸部)により凹凸形状に成形するのではなく、基材10に直接押し付けて成形しかつ接着して一体化する。
【0083】
すなわち、この方法に用いられる真空プレス機16は、その下型18の上面に凹凸部からなる成形面19がない。そして、この下型18の上面には、凹凸加工用突板シート8及び基材10を積層した状態で収容する収容部22が凹陥形成されている。尚、収容部22は上型17の下面に凹陥形成してもよく、或いは下型18の上面及び上型17の下面の双方に凹陥形成することもできる。
【0084】
このような真空プレス機16を用い、図3(a)に示すように、その下型18の収容部22内に基材10をセットし、その表面に接着剤を塗布した後、上記凹凸加工用突板シート8を積層する。上記基材10は、予めその表面に凹凸加工用突板シート8を成形するための凹凸部11が形成されている。
【0085】
そして、図3(b)に示すように、上型17を下降させて、上型17の下面及び下型18の上面の各周縁部間でシリコンゴムシート21の周縁部を気密状に挟持して、そのシリコンゴムシート21下側の空間に凹凸加工用突板シート8及び基材10を収容し、その状態で、凹凸加工用突板シート8を加熱しながら、吸引通路20を介してシリコンゴムシート21下側の空間内を吸引して負圧にすることで、シリコンゴムシート21を変形させて、その変形圧力により凹凸加工用突板シート8を基材10表面の凹凸部11に押し付け、その凹凸加工用突板シート8を基材10表面の凹凸部11に沿った形状に熱圧成形するとともに、上記接着剤を介して凹凸加工用突板シート8を基材10に貼着一体化する。このことで、図3(c)に示すように、基材10表面の凹凸部11に沿うように凹凸加工用突板シート8が積層一体化された凹凸化粧板12が得られる。
【0086】
これら2つの方法の真空成形工程での熱圧成形温度としては、130〜200℃程度が好ましい。この温度は、プレス機表面の設定温度であり、成形される凹凸加工用突板シート8の表面温度はこの数値に近く、凹凸加工用突板シート8がこの温度以上にならない温度であり、必ずしも凹凸加工用突板シート8の内部温度を指すものではない。
【0087】
こうして製造された凹凸化粧板12は、凹凸加工用突板シート8表面の突板3がショットブラストにより浮造り加工され、続いて可撓性樹脂が含浸処理されているので、強度や耐汚染性、化粧性に優れている。よって、強度や耐汚染性、化粧性に優れた凹凸化粧板12を容易に生産性良く製造することができる。
【実施例】
【0088】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0089】
(実施例1)
表面の平滑な台板(合板、MDF等)上へ、KR−M99/ハードナーF=100/2(光洋産業(株)の商品名)を8〜10g/尺塗布し、表面にミクロンオーダーの穴の開いた吸着シート(PET/アクリル樹脂、光洋産業(株)製)を0.3MPaで20分冷圧プレスし、接着した。
【0090】
その後、アクリル含浸紙(熱可塑性樹脂板)をロールプレスで吸着させ、BA20(接着剤、中央理化工業(株)の商品名)を5g/尺塗布した後、乾燥ないし気乾単板(突板)を配置して、0.5MPaで30分冷庄プレスを行い接着した。この結果、接着・吸着作用で、突板と剛性のある台板とが一体となった。
【0091】
これを接着剤の硬化・養生時間を十分に取った後(堆積養生3〜7日)、突板に対しショットブラスト加工を行い、木材の軟質部分を削り取った。その後、エンボスロールにて樹脂含浸を行い、塗装を行った(WPC処理)。その後、吸着シートから、突板とアクリル含浸紙の一体となった突板シートを剥離させることができた(熱を与えることで、剥離し易くなった)。この際、上記含浸する樹脂の硬さを変えることで、柔軟な突板シートも硬質な突板シートも作製することができ、樹脂の厚みにより、浮造りを残したものも埋めたものも作製できた(用途によって使い分けることができる)。
【0092】
(実施例2)
表面の平滑な台板(合板、MDF等)上へ、KR−M99/ハードナーF=100/2(光洋産業(株)の商品名)を8〜10g/尺塗布し、表面にミクロンオーダーの穴の開いた吸着シート(PET/アクリル樹脂、光洋産業(株)製)を0.3MPaで20分冷圧プレスし、接着した。
【0093】
その後、1mmのABS樹脂(熱可塑性樹脂板)をロールプレスで吸着させ、BA20(中央理化工業(株)の商品名)を5g/尺塗布し、乾燥ないし気乾単板(突板)を配置した後、0.5MPaで30分冷圧プレスを行い接着した。この結果、接着・吸着作用で、突板と剛性のある台板とが一体となった。
【0094】
これを接着剤の硬化・養生時間を十分に取った後(堆積養生3〜7日)、突板に対しショットブラスト加工を行い、木材の軟質部分を削り取った。その後、エンボスロールにて樹脂含浸を行い、塗装を行った(WPC処理)。その後、吸着シートから、突板とABS樹脂の一体となった突板シートを剥離させることができた(熱を与えることで、剥離し易くなった)。その後、突板シートに対し真空成形加工(突板シートを表面が150〜200℃となるように加熱し、型に沿って真空で引き、型の成形形状を突板シートに転写する)を行い、立体成形物を作製した。
【0095】
(比較例)
表面の平滑な台板(合板、MDF等)上へ、KR−M99/ハードナーF=100/2(光洋産業(株)の商品名)を8〜10g/尺塗布し、表面にミクロンオーダーの穴の開いた吸着シート(PET/アクリル樹脂、光洋産業(株)製)を0.3MPaで20分冷圧プレスし、接着した。
【0096】
その後、1mmのABS樹脂をロールプレスで吸着させ、BA20(中央理化工業(株)の商品名)を5g/尺塗布し、乾燥ないし気乾単板を配置した後、5Kgf/cmで30分冷圧プレスを行い接着した。この結果、接着・吸着作用で、突板と剛性のある台板とが一体となった。
【0097】
これを接着剤の硬化・養生時間を十分に取った後(堆積養生3〜7日)、塗装を行った。その後、吸着シートから、突板とABS樹脂との一体となった突板シートを剥離させることができた。その後、真空成形加工(表面を150〜200℃で加熱し、型に沿って真空で引き形を転写する)を行ったが、表面の突板部分が延びないため、多数のクラックが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、強度や耐汚染性、化粧性に優れた凹凸加工用突板シート及びそれを用いた凹凸化粧板を容易に生産性良く製造できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0099】
1 剛性台板
2 熱可塑性樹脂板
3 突板
8 凹凸加工用突板シート
10 基材
11 凹凸部
12 凹凸化粧板
16 真空プレス機
19 成形面(凹凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面吸着性を有する剛性台板の表面に熱可塑性樹脂板を載置し、
上記熱可塑性樹脂板上に接着剤を塗布した後、該接着剤上に含水率が0〜15%でかつ厚さが0.25〜0.75mmの突板を載置して、上記剛性台板、熱可塑性樹脂板及び突板を冷圧養生により積層一体化し、
上記突板をショットブラストにより浮造り加工し、
さらに、この突板に可撓性樹脂の含浸処理を行った後に、
上記剛性台板を熱可塑性樹脂板から剥離除去することを特徴とする凹凸加工用突板シートの製造方法。
【請求項2】
表面吸着性を有する剛性台板の表面に熱可塑性樹脂板を載置し、
上記熱可塑性樹脂板上に接着剤を塗布した後、該接着剤上に含水率が0〜15%でかつ厚さが0.25〜0.75mmの突板を載置して、上記剛性台板、熱可塑性樹脂板及び突板を冷圧養生により積層一体化し、
上記突板をショットブラストにより浮造り加工し、
さらに、この突板に可撓性樹脂の含浸処理を行い、
上記突板表面に可撓性樹脂により突板表面を平滑にする樹脂充填処理を行った後に、
上記剛性台板を熱可塑性樹脂板から剥離除去することを特徴とする凹凸加工用突板シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
剛性台板を熱可塑性樹脂板から剛性台板と熱可塑性樹脂板との吸着面が30〜80℃になるように加熱しながら剥離することを特徴とする凹凸加工用突板シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2の凹凸加工用突板シートの製造方法により製造された凹凸加工用突板シートを、凹凸部からなる成形面を備えた真空プレス機により熱可塑性樹脂板と突板とが同調した凹凸形状になるように熱圧成形した後、基材に貼着一体化することを特徴とする凹凸化粧板の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2の凹凸加工用突板シートの製造方法により製造された凹凸加工用突板シートを、表面に凹凸部を有する基材に対し、接着剤を介して、凹凸加工用突板シートが基材表面の凹凸部に沿うように、真空プレスにより熱圧して貼着一体化することを特徴とする凹凸化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−245637(P2012−245637A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116904(P2011−116904)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】