説明

出力制御情報を抽出可能な装置、その制御方法およびプログラム

【課題】多機能のMFPにおいて、利用する機能毎に出力制御情報の検出対象領域を異ならせたい。
【解決手段】原稿データから、該原稿データの出力を制御する情報を検出する検出手段と、前記検出された情報に応じて原稿データの出力を制御する制御手段と、を有する、原稿データを出力する装置であって、前記検出手段での検出対象領域を前記原稿データの全面及び特定の領域の何れかに設定する設定手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力制御情報を抽出可能な装置、その制御方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、MFP(Multifunction Peripheral)の普及に伴い、原稿の不正出力問題が増大している。この対策技術として、たとえば、特定の原稿の複写を抑制する技術があり、複写抑制技術としては以下のような方法がある。
【0003】
たとえば、特許文献1には、原稿に対して複写禁止情報を付加しておき、複写機がこの原稿を読み取って複写禁止情報を検出した場合に、原稿の複写を禁止する方法が開示されている。
【0004】
また、複写禁止情報を含む、原稿に埋め込まれるコードの例として、特許文献2で開示しているQRコード(登録商標)がある。この特許文献2に記載のQRコードは、特許文献1で用いられている1次元のバーコードに比べて、汎用的に使用されている。
【0005】
QRコードのような2次元コードは、四辺形のコードであるためコード自体の可視性が高いことから、原稿上の付加する位置に配慮しないと、原稿自体の可読性が下がることになる。そのためこのような2次元コードは原稿上の特定の決まった位置に付加されて利用されることが多い。
【0006】
複写禁止情報のような出力制御情報に基づいて出力を制御可能なMFPにおいて、原稿に付加された2次元コードなどの出力制御情報を検出する際、検出対象の領域が原稿の全面の場合、検出のための画像処理に多くの時間を要してしまうことになる。一方、出力制御情報の付加される位置が予め限定され、特定の領域のみを検出対象とする場合は、検出のための画像処理時間が少なくて済むが、原稿を読取機にセットする際の位置ずれなどによって出力制御情報が検出できないリスクが高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−009963号公報
【特許文献2】特開平10−312447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような状況の中で、たとえばコピー機能を利用する場面では、パフォーマンスを優先して出力制御情報の検出対象領域を特定の領域のみに限定したいという要望がありうる。一方、FAX機能を利用する場面では、外部に情報が漏洩するリスクを回避する観点から出力制御情報の検出精度を優先して、原稿の全面を検出対象領域にしたいという要望もありうる。これらの要望はトレードオフの関係にあって、MFPの利用する機能毎に出力制御情報の検出対象領域を異ならせることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る装置は、原稿データから、該原稿データの出力を制御する情報を検出する検出手段と、前記検出された情報に応じて原稿データの出力を制御する制御手段と、を有する、原稿データを出力する装置であって、前記検出手段での検出対象領域を前記原稿データの全面及び特定の領域の何れかに設定する設定手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、MFPの利用する機能毎に出力制御情報の検出対象領域を異ならせることができる。これにより、MFPにおける出力制御機能の柔軟な運用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るMFPの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】QRコード付きの原稿を作成する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】出力制御情報を設定する画面の一例を示す図である。
【図4】QRコードが合成された原稿データの一例を示す図である。
【図5】実施形態1における、QRコードの検出対象領域を機能別に指定するための設定画面の一例を示す図である。
【図6】領域指定の場合の検出対象領域を示す図である。
【図7】実施形態1における出力制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】モード選択画面の一例を示す図である。
【図9】実施形態2における、QRコードの検出対象領域を動作モード毎に指定するための設定画面の一例を示す図である。
【図10】実施形態2における出力制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】実施形態3における、QRコードの検出対象領域を読取方式毎に指定するための設定画面の一例を示す図である。
【図12】実施形態3における出力制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明することとするが、具体的な実施形態の説明に入る前に、本明細書において使用する用語等について説明する。
【0013】
まず、本明細書において「原稿」とは、印刷物等の紙文書を意味する。そして、「原稿データ」という場合には、原稿をスキャナ等で走査することにより得られる画像データを意味する。そして、原稿には、原稿データの出力を制御するためのコード化された出力制御情報が付加される。ここでの“出力”の内容としては、説明の便宜上、MFPの代表的な機能である以下の4つの機能を指すものとして以降の説明を行うが、本発明が適用可能なMFPにおいて備え得る機能はこれに限られるものではない。
【0014】
コピー機能:原稿を読み取って得られた原稿データを用いて紙等の記録媒体に印刷する機能である。
【0015】
ストレージ保存機能:原稿を読み取って得られた原稿データをHDD等のストレージに格納・保存する機能である。ボックススキャン機能とも呼ばれる。
【0016】
SEND機能:原稿を読み取って得られた原稿データをネットワークを介して他の外部装置に送信する機能である。
【0017】
FAX機能:原稿を読み取って得られた原稿データを電話回線を介してFAX送信する機能である。
【0018】
なお、出力制御情報には、出力の禁止を示す情報である出力禁止情報と、出力の許可を示す情報である出力許可情報の2種類がある。その他にも、たとえば、出力の許可に条件がついた条件付出力許可情報などもあり得る。
【0019】
続いて、コード化された出力制御情報(2次元コード)を有する原稿について説明する。
【0020】
2次元コード付きの原稿を得るには、まず、出力制御情報を符号化して埋め込み情報を得ることが必要である。この符号化の際には、誤り訂正のためのデータも追加されるため、生成された埋め込み情報には出力制御情報自体に存在しない誤り訂正符号の情報が含まれることになる。そして、得られた埋め込み情報を画像化して2次元コードを生成する。最後に、生成した2次元コードを原稿データに合成しこれを印刷することで、2次元コード付きの原稿が得られる。
【0021】
なお、以下に述べる各実施形態では、2次元コードの具体例としてQRコードを用いることとし、原稿1頁に対して1つのQRコードが付加されるものとする。また、QRコードが付加される位置は、原稿の四隅30mm角の領域内に限定されるものとする。
【0022】
続いて、上述のようなQRコード付き原稿からの出力制御情報の抽出について説明する。
【0023】
QRコードの付加された原稿から出力制御情報を抽出するには、まず、原稿台の上或いはADF(Auto Document Feeder)にセットされた原稿を読み取って、原稿データを取得する。そして、得られた原稿データの画像内からQRコードのファインダパターン(QRコードの3隅にある四角い切り出しシンボル)を検出する。ファインダパターンが検出されることにより、原稿データの画像内にQRコードが存在することが分かり、その位置を特定することができる。そして、検出されたQRコードを情報化することにより埋め込み情報が得られる。最後に、得られた埋め込み情報を復号化することで出力制御情報が抽出される。
【0024】
[実施形態1]
図1は、本発明に係るMFP100の構成の一例を示すブロック図である。
101は制御部であり、以下に述べる各部の統括的な制御をおこなう。この制御部101は、不図示のCPUを有している。また、制御部101は、埋め込み情報の復号化なども行う。
【0025】
102は読取部であり、印刷物等の紙文書である原稿を読み取って(スキャン)、原稿データを生成する。
【0026】
103は検出対象領域設定部であり、読取部102で生成された原稿データの画像内のどの領域を対象にQRコードの検出を行うかを設定する。
【0027】
104は情報化部であり、検出対象領域設定部103で設定された領域を対象にQRコードの有無をチェックする。QRコードが検出された場合には、QRコードを情報化する処理を行う。
【0028】
105は操作部であり、MFP100に対するユーザからの操作入力を受け付けるユーザインタフェースである。
【0029】
106はメモリであり、ROMやRAMで構成され、MFP100を制御するためにCPUで実行する各種命令(OSやアプリケーションプログラム)や実行結果等を記憶する。また、原稿データなど各種データの一時的な記憶にも使用される。
【0030】
107はHDDであり、MFP100の印刷設定や使用ログの他、原稿データなど各種データの保存に使用される。
【0031】
108は表示部であり、ユーザに各種情報を表示する。
【0032】
109はプリンタ部であり、原稿データに基づいて、紙などの記録媒体に印字出力する処理を行う。
【0033】
110はエンコード部であり、上述の符号化と画像化を行う。
【0034】
111は画像処理部であり、ハーフトーニングなどの一般的な画像処理のほか、QRコードと原稿データとを合成する処理も行う。
【0035】
112は、ネットワークインタフェースである。LANなどのネットワークを介してMFP100は外部装置と接続される。なお、外部装置としては、たとえば、PC等が考えられる。
【0036】
113はモデムであり、電話回線と接続されている。
【0037】
114は上記各部を接続するバスである。
【0038】
次に、QRコード付きの原稿の作成について説明する。
【0039】
まず、準備段階として、原稿にQRコードを付加したいユーザは、事前にQRコードを付加するための設定をMFP100に対し行う。具体的には、表示部108に表示される不図示の各種設定選択画面の選択肢の中から「QRコードの付加」を選択し、該選択に応答して表示される出力制御情報設定画面において、「複写等を禁止する」または「複写等を許可する」を選択する。図3は出力制御情報設定画面の一例であり、「複写等を禁止する」が選択されている状態を示している。出力制御情報設定画面300において、たとえば「複写等を禁止する」が選択され、OKボタンが押下されると、出力制御情報として出力禁止情報が出力対象の原稿データに付加されることが設定されて該設定内容がHDD107に保存される。同様に、「複写等を許可する」が選択された場合は、出力制御情報として出力許可情報が出力対象の原稿データに付加されることが設定されて該設定内容がHDD107に保存される。なお、このようなQRコードの付加に関する設定は、ネットワークを介して接続されたPCのドライバやユーティリティ上から行うようにしてもよい。
【0040】
図2は、MFP100において、QRコード付きの原稿を作成する処理の流れを示すフローチャートである。
【0041】
ステップ201において、制御部101は、HDD107にアクセスし、上述したQRコードの付加に関する設定がなされているかどうかを判定する。設定がなされていないと判定された場合にはステップ202に進む。設定がなされていると判定された場合にはステップ203に進む。
【0042】
設定がされていなかった場合は、QRコードが付加されない原稿が作成されることになる。すなわち、ステップ202において制御部101から読取部102に原稿の読み取りが指示され、読取部102で原稿がスキャンされて原稿データが生成された後、ステップ207で印刷処理されて、QRコードのない原稿が出来上がる。
【0043】
一方、設定がされていた場合には、ステップ203において制御部101は、前述のQRコード付加設定の内容をHDD107から取得する。そして、取得した設定内容に応じた出力制御情報をエンコード部110に送る。たとえば、ユーザが前述の出力制御情報設定画面において「複写等を禁止する」を選択していた場合には複写禁止情報が、「複写等を許可する」を選択していた場合には複写許可情報が、エンコード部110に送られる。
【0044】
ステップ204において、制御部101は、読取部102に原稿の読み取りを指示する。これを受けて読取部102は、ADF等にセットされた原稿をスキャンして原稿データを生成する。生成された原稿データは、画像処理部111および情報化部104に送られる。
【0045】
ステップ205において、制御部101は、エンコード部110にQRコードの生成を指示する。これを受けてエンコード部110は、ステップ203で受け取った出力制御情報を符号化して埋め込み情報に変換し、さらに埋め込み情報を画像化することでQRコードを生成する。生成されたQRコードは画像処理部111に送られる。
【0046】
ステップ206において、画像処理部111は制御部101の指示を受けて、QRコードと原稿データとを合成して、QRコードが合成された原稿データを生成する。図4は、QRコードが合成された原稿データの一例である。原稿401の左上隅に、QRコード402が付加されている。QRコードが合成された原稿データはメモリ106に送られる。
【0047】
ステップ207において、制御部101は、QRコードが合成された原稿データを出力先、たとえばプリンタ部109に送り、プリンタ部109はQRコードが付加された原稿データを基に印刷処理を行う。
【0048】
このようにして、コード化された出力制御情報であるQRコードが付加された原稿が作成される。
【0049】
なお、ユーザが複数枚からなる原稿(例えば、4枚)をADFにセットし、計3部のQRコード付き原稿の作成を指示した場合、出来上がった3部の原稿(つまり、計12枚の原稿)のすべてに同じQRコードが付加されることとなる。
【0050】
次に、使用される出力機能に応じたQRコード検出対象領域の設定について説明する。
【0051】
図5の(a)は、QRコードの検出対象領域を機能別に指定するための設定画面(検出対象領域設定画面)の一例を示している。
【0052】
ユーザは、操作部104を介して、検出対象領域設定画面501内のチェックボタン502にそれぞれチェックを入れることにより、機能毎にQRコードの検出のための対象領域を設定することができる。
【0053】
この場合において、ユーザが「領域指定」を選択した場合には、さらに「詳細設定」ボタン503が押下可能な状態となる。ユーザが「原稿全面」を選択した場合には、「詳細設定」ボタンは押下不能な状態(マスク表示)のまま、入力された原稿データの画像の全面がQRコードの検出対象の領域となるように設定される。図5の(a)では、“コピー”と“ストレージ保存”について「領域指定」にチェックが入り、“SEND”と“FAX”について「原稿全面」にチェックが入っている。
【0054】
ユーザが「領域指定」を選択し、続いて「詳細設定」ボタン503を押下すると、図5の(b)に示すような領域詳細設定画面511が表示部108に表示される。
【0055】
ユーザは、操作部104を介して、領域詳細設定画面511内のチェックボタン512のいずれかにチェックを入れることにより、検出対象領域の設定方法を指定する。本実施形態では、「原稿四隅」、「原稿四辺」、「領域座標入力」の3種類が検出対象領域の設定方法として指定可能となっている。以下、説明する。
【0056】
「原稿四隅」が指定された場合は、原稿データの画像内の左上隅、左下隅、右上隅、右下隅の計4つの矩形領域が検出対象の領域となる。ユーザが、「原稿四隅」を選択すると、サイズ入力領域513が入力可能な状態となり、検出対象領域となる四隅の矩形領域の幅xのサイズと高さyのサイズ(たとえば、それぞれに値50)を入力する。ここではmm単位での入力を可能としているが、これに限るものではない。図6の(a)は、「原稿四隅」が指定された場合の検出対象領域を示している。サイズ入力領域513で設定されたx及びyの値と図6の(a)におけるx及びyの値は対応している。原稿の大きさには、A4やA3など様々な種類があり得るが、サイズ入力領域513で設定されたxとyの値から、検出対象領域となる原稿の四隅の領域がそれぞれ自動的に設定される。
【0057】
「原稿四辺」が指定された場合は、原稿データの画像内の任意の幅を有する上辺、下辺、左辺、右辺からなる枠状の領域が検出対象の領域となる。ユーザが、「原稿四辺」を選択すると、サイズ入力領域514が入力可能な状態となり、「原稿四隅」の場合と同様、検出対象領域となる各辺の領域の幅xのサイズと高さyのサイズをそれぞれ入力する。ここでもmm単位での入力を可能としているが、これに限るものではない。図6の(b)は、「原稿四辺」が指定された場合の検出対象領域を示している。サイズ入力領域514で設定されたx及びyの値と図6の(b)におけるx及びyの値は対応している。原稿大きさには、A4やA3など様々な種類があり得るが、サイズ入力領域514で設定されたxとyの値から、検出対象領域となる枠状の領域がそれぞれ自動的に設定される。
【0058】
「領域座標入力」が指定された場合は、ユーザが原稿データの画像内に設定した任意の領域が検出対象領域となる。ユーザが、「領域座標入力」を選択すると「領域入力」ボタン515が押下可能な状態となり、これが押下されると図5の(c)に示すような領域座標入力画面521が表示される。領域座標入力画面521では、原稿のサイズ毎に検出対象の領域を設定できるようになっており、ユーザはプルダウンメニュー522によって原稿のサイズを選択する。そして、座標入力領域523に所望の検出対象領域の座標を入力する。座標入力領域523に任意の座標が入力されると、入力された値に応じた矩形領域が座標説明画像524に表示される。ユーザは座標説明画像524によって検出対象領域となる矩形領域を確認し、OKであれば追加ボタン525を押下する。これにより、ユーザが独自に設定した矩形領域が検出対象領域として登録され、その座標値が表示リスト526に表示される。ユーザが独自に設定可能な矩形領域は複数登録することができ、スクロール表示可能な表示リスト526によりそのすべてを確認できる。なお、入力した座標の値は削除ボタン527を押下することで削除される。
【0059】
上述のような方法によって設定された検出対象領域に関する情報は、HDD107に保存される。
【0060】
これにより、パフォーマンスが重視され高速処理が求められる機能(例えば、コピーやストレージ保存)についてはより限定された狭い領域を検出対象領域に設定することで、QRコードを検出するための処理時間を短縮することができる。また、正確性が重視され慎重な処理が求められる機能(例えば、SENDやFAX)については、より広い領域を検出対象領域に設定してQRコードの検出精度を優先させることができる。
【0061】
また、上記の設定にそれぞれデフォルトの値を与え、ユーザが特に指定しない場合にはデフォルトの値が使用されるようにしてもよい。また、特定のユーザ(たとえば、システム管理者)のみが設定値を変更できるようにしたり、或いは一切変更ができないよう複写機に固有の値を予め設定するようにしてもよい。
【0062】
次に、QRコードが付された原稿をコピーする場合等、QRコード付きの原稿を用いてMFP100で各種の出力を実行する場合の制御処理について詳しく説明する。
【0063】
図7は、本実施形態に係るMFP100で実行される出力制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
ステップ701において、制御部101は、ユーザからの出力の開始指示を受け取る。本実施形態における出力開始指示としては、コピー、ストレージ保存、SENDおよびFAXの4種類があり得ることになる。ここでは、出力開始指示としてコピーが指示されたものとする。また、検出対象領域設定情報として、コピー及びストレージ保存については領域指定の「原稿四隅」、「xサイズ:50mm」、「yサイズ:50mm」が予め設定され、SEND及びFAXについては「原稿全面」が予め設定されていたものとする。
【0065】
ステップ702において、制御部101は、受け取った出力開始指示に対応する検出対象領域設定の情報をHDD107から取得する。ここでは、受け取った出力開始指示がコピーであるので、コピーに対応する検出対象領域設定情報として、領域指定の「原稿四隅」、「xサイズ:50mm」、「yサイズ:50mm」の各情報が取得される。仮に、受け取った出力開始指示がSENDであった場合には、「原稿全面」が取得されることになる。
【0066】
ステップ703において、制御部101は、取得した情報を検出対象領域設定部103に送り、検出対象領域設定部103は受け取った情報に従ってQRコードの検出対象領域を設定する。ここでは、原稿の四隅の矩形領域であって、その幅及び高さが50mmの矩形領域が検出対象領域として設定される。
ステップ704において、制御部101は、読取部102に原稿の読み取りを指示し、これを受けて読取部102は原稿をスキャンし、原稿データを生成する。生成された原稿データは、情報化部103に送られる。
【0067】
ステップ705において、情報化部103は、まず、ステップ703で設定された領域を対象としてQRコードの有無のチェック、より具体的にはファインダパターンの検出処理を行う。そして、検出されたQRコードの情報化処理を行い、埋め込み情報を取得する。なお、本ステップにおけるファインダパターンの検出及び検出されたQRコードの情報化の処理は、複数回行うようにしてもよい。たとえば20回行った場合には、埋め込み情報が最大で20個得られる可能性がある。
【0068】
ステップ706において、制御部101は、QRコードの情報化処理によって埋め込み情報が得られたかどうかを判定する。埋め込み情報が得られた場合にはステップ707に進む。埋め込み情報が得られなかった場合には、ステップ710に進み、出力処理(ここではコピー印刷処理)を開始する。
【0069】
ステップ707において、制御部101は、得られた埋め込み情報(複数の埋め込み情報が得られた場合にはそのすべて)を復号化する。
【0070】
ステップ708において、制御部101は、埋め込み情報の複合化が成功したかどうかを判定する。成功した場合には、ステップ709に進む。複合化に失敗(複数の埋め込み情報が得られていた場合にはそのすべての複合化に失敗)した場合には、出力処理(ここではコピー印刷処理)を行うことなく終了する。
【0071】
ステップ709において、制御部101は、複合化された埋め込み情報の中に出力禁止情報が含まれているかどうかを判定する。出力禁止情報が含まれている場合には、出力処理(ここでは、コピー処理)を行うことなく終了する。出力禁止情報が含まれていない場合(或いは出力許可情報が含まれていた場合)には、ステップ710に進む。
【0072】
ステップ710において、制御部101は、ユーザから指示された出力を担う各部に原稿データの出力を指示する。ここではプリンタ部109に対し、原稿データのコピー印刷処理の実行を指示する。これを受けてプリンタ部109は記録媒体(紙)に原稿データを印字して出力する。なお、制御部101からの出力指示によって原稿データは出力を担う各部に送られることになるが、その際の原稿データは必要な画像処理(たとえば、ハーフトーン処理など)が施されたものであることはいうまでもない。
【0073】
ステップ711において、制御部101は、未だ読取部102によってスキャンされていない原稿がADF等に残っているかどうかを判定する。未スキャンの原稿が残っている場合には、ステップ704に戻る。未スキャンの原稿が残っていない場合には、本処理を終了する。
【0074】
このような出力制御処理によって、ユーザが利用する機能毎に、QRコードの検出対象領域を切り替えることが可能となる。そして、機能毎に設定されるQRコードの検出対象領域は任意に変更可能であるから、使用する機能の性質等に応じた柔軟な出力制御の運用が可能となる。
【0075】
[実施形態2]
QRコードが原稿の特定の位置に限定して付加される場合、悪意のあるユーザがQRコードを切り取ったり塗りつぶしたりすることで、QRコードによる出力制御ができなくなるというケースが考えられる。このようなケースを考慮して、QRコードを原稿から検出できなかった場合に当該原稿データの一切の出力を禁止する動作モードを設定可能なMFPも存在する。(以下では、上述のような動作モードを「セキュアモード」と呼び、セキュアモードではない一般的な動作モードを「通常モード」と呼ぶこととする。)
ここでは、MFPの動作モードが、セキュアモードか通常モードかによって検出対象の領域を切り替える態様について、実施形態2として説明する。
【0076】
MFP100をセキュアモードで使用したいユーザは、事前にセキュアモードを有効化するための設定をMFP100に対し行う。具体的には、表示部108に表示される不図示の各種設定選択画面の選択肢の中から「出力制御の動作モードの設定」を選択し、該選択に応答して表示されるモード選択画面800において、「通常モード」のチェックを外し「セキュアモード」にチェックを入れる。図8はモード選択画面の一例であり、「セキュアモード」が選択されている状態を示している。この状態でOKボタンが押下されると、出力制御の動作モードの設定としてセキュアモードが有効化される。
【0077】
さらに、ユーザは、セキュアモード時における機能毎のQRコード検出対象領域を事前に設定しておく。図9は、本実施形態における検出対象領域設定画面の一例を示している。検出対象領域設定画面900内には、実施形態1に係る図5の(a)の検出対象領域設定画面501には存在しない2つのタブ(通常タブ901とセキュアタブ902)が含まれる。これにより、通常モード時とセキュアモード時とで別々に機能毎の検出対象領域を設定できるようになっている。図9の例では、セキュアモード時の検出対象領域が全ての機能において「領域指定」が指定され、詳細設定については図示されていないが「原稿四隅」が選択されている。SENDやFAXについても「領域指定」を指定するのは、セキュアモードの場合はQRコードを検出できなければ出力が禁止されるので、検出対象領域を限定してパフォーマンスの向上を図るためである。その他の点は実施形態1の場合と同じであるので説明を省略する。
【0078】
次に、本実施形態における、QRコード付きの原稿を用いてMFP100で各種の出力を実行する場合の制御処理について詳しく説明する。
【0079】
図10は、本実施形態に係るMFP100で実行される出力制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、実施形態1に係る図7のフローチャートと共通する部分については説明を簡略化ないしは省略し、ここでは差異点を中心に説明することとする。
【0080】
ステップ1001で、ユーザからの出力開始指示を受け取ると、ステップ1002において、制御部101は、予め設定された出力制御の動作モードの情報をHDD107から取得する。ここでは、「セキュアモード」が有効化されるように予め設定され、その情報が取得されたものとする。
【0081】
ステップ1003において、制御部101は、受け取った出力開始指示および取得した動作モードの情報に基づき、検出対象領域設定の情報をHDD107から取得する。
【0082】
ステップ1004で検出対象領域設定部103はQRコードの検出対象領域を設定し、ステップ1005で読取部102が原稿をスキャンして原稿データを生成する。そして、ステップ1006で情報化部104がファインダパターンの検出及び検出されたQRコードの情報化処理を行う。
【0083】
ステップ1007で制御部101が埋め込み情報が得られたかどうかを判定し、埋め込み情報が得られていればステップ1009に進む。埋め込み情報が得られなかった場合は、ステップ1008に進む。
【0084】
ステップ1008において、制御部101は、出力制御の動作モードの設定がセキュアモードか否かを判定する。動作モードの設定がセキュアモードではない(通常モードである)と判定された場合はステップ1012に進み、出力処理を開始する。一方、動作モードの設定がセキュアモードであると判定された場合は、処理を終了する。すなわち、埋め込み情報が得られていないことから悪意のあるユーザによりQRコードが不正に削除等されているおそれがあることから、出力処理を行うことなく本処理を終了する。
【0085】
ステップ1009〜ステップ1013の各処理は、図7のステップ707〜ステップ711と同じであるので説明を省略する。
【0086】
このように、本実施形態のMFP100によれば、出力制御の動作モードに応じて検出対象の領域を切り替えることができ、ユーザによる不正な出力防止にも対応しつつ柔軟な出力制御の運用が可能となる。
【0087】
[実施形態3]
読取部102において原稿をスキャンするための手法としては、載置固定された静止原稿の表面を読取部自体が動いてスキャンする方式と、一定速度で搬送される原稿を固定した読取部でスキャンする方式とがある。
【0088】
前者の方式(以下、「フラットベッド方式」と呼ぶ。)では、ユーザが原稿台上に直接原稿を載置するため、載置した際に大きな傾きや位置ずれがあると、その傾きやずれがそのまま読み取り結果に影響してしまう。たとえば、QRコードの検出対象領域を「原稿四隅」や「原稿四辺」に設定した場合に、ずれが大きいために当該領域内でQRコードを検出できず、結果として出力制御情報を無視してしまうといった事態が起こり得る。
【0089】
一方、後者の方式(以下、「シートフィード方式」と呼ぶ。)では、ADFから一定速度で原稿が移動しながら読み取りが行われるため、ADFに原稿が適切にセットされる限り、読み取り時に大きなずれ(例えばフィーダに対して±1cm以上)は生じにくい。そのため、検出対象領域を「原稿四隅」や「原稿四辺」としても当該領域内からQRコードが確実に検出され、問題なく出力制御情報を抽出することが可能である。
【0090】
そこで、双方の方式によるスキャンニングが可能な読取部102を備えたMFP100において、使用され読み取り方式に応じて検出対象領域を切り替える態様について、実施形態3として説明する。
【0091】
図11は、本実施形態における検出対象領域設定画面の一例を示している。検出対象領域設定画面1100内は、フラットベッド設定エリア1101とシートフィード設定エリア1102とに分かれており、それぞれで機能毎の検出対象領域を設定できるようになっている。設定する内容や方法などその他の点は実施形態1の場合と同じであるので説明を省略する。
【0092】
次に、本実施形態における、QRコード付きの原稿を用いてMFP100で各種の出力を実行する場合の制御処理について詳しく説明する。
【0093】
図12は、本実施形態に係るMFP100で実行される出力制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、実施形態1に係る図7のフローチャートと共通する部分については説明を簡略化ないしは省略し、ここでは差異点を中心に説明することとする。
【0094】
ステップ1201で、ユーザからの出力開始指示を受け取ると、ステップ1202において、制御部101は、ステップ1205における読み取り方式を原稿がどこにセットされたかに応じて決定する。具体的には、不図示の用紙センサによって原稿がどこにセットされたかを検知し、原稿が原稿台に直接載置された場合にはフラットベッド方式、原稿がADFにセットされた場合にはシートフィード方式に決定する。
【0095】
ステップ1203において、制御部101は、受け取った出力開始指示および決定された読み取り方式に基づき、検出対象領域設定の情報をHDD107から取得する。
【0096】
ステップ1204で検出対象領域設定部103がQRコードの検出対象領域を設定すると、ステップ1205で読取部102が決定された読み取り方式で原稿をスキャンして原稿データを生成する。
【0097】
ステップ1206〜ステップ1212の各処理は、図7のステップ705〜ステップ711と同じであるので説明を省略する。
【0098】
このように、本実施形態のMFP100によれば、読取部102の読み取り方式に応じて検出対象の領域を切り替えることができ、より柔軟な出力制御の運用が可能となる。
【0099】
(その他の実施例)
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによっても達成される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿データから、該原稿データの出力を制御する情報を検出する検出手段と、
前記検出された情報に応じて原稿データの出力を制御する制御手段と、
を有する、原稿データを出力する装置であって、
前記検出手段での検出対象領域を前記原稿データの全面及び特定の領域の何れかに設定する設定手段を備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
ユーザの指示を受け付ける操作部をさらに備え、
前記特定の領域は、前記操作部を介してユーザが指定可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、原稿データを複数の形態で出力することが可能であり、
前記設定手段は、前記出力の各形態に応じた検出対象領域を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
ユーザの指示を受け付ける操作部をさらに備え、
前記出力の各形態に応じた検出対象領域は、前記操作部を介してユーザが設定可能である、
ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、原稿データの出力を制御する情報を前記検出手段で検出できなかった場合に前記原稿データを出力する動作モードと、原稿データの出力を制御する情報を前記検出手段で検出できなかった場合に前記原稿データを出力しない動作モードと、を有し、
前記設定手段は、使用される動作モードに応じて検出対象領域を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
原稿台上に載置された原稿を読み取るフラットベッド方式と原稿を移動させて読み取るシートフィード方式の双方の方式で読み取りが可能な読取手段をさらに備え、
前記設定手段は、使用される読み取り方式に応じて検出対象領域を設定する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
原稿データから、該原稿データの出力を制御する情報を検出する検出ステップと、
前記検出された情報に応じて原稿データの出力を制御する制御ステップと、
を含む、原稿データを出力する装置の制御方法であって、
前記検出ステップでの検出対象領域を前記原稿データの全面及び特定の領域の何れかに設定する設定ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−259280(P2011−259280A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132908(P2010−132908)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】