説明

出力回路

【課題】 出力信号の波形ひずみを低減する出力回路を提供する。
【解決手段】 増幅アンプA2およびソースフォロアS1に対して共通の電源配線1を介して電源VDD1を供給し、増幅アンプA1に対して電源配線1とは別の電源配線2を介して電源VDD2を供給する。増幅アンプA2およびソースフォロアS1への電源供給と、増幅アンプA1への電源供給が独立して行うことにより、増幅アンプA2およびソースフォロアS1により変調電流Imが発生したとしても、この変調電流に起因する電圧変動ΔVの影響は増幅アンプA1には及ばないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号を増幅して出力する出力回路に関し、特に半導体集積回路に設けられる出力回路に関するものである。具体的には、固体撮像素子における信号電荷を増幅して出力する出力回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体撮像装置における信号電荷を増幅して出力する出力回路として従来図4のような出力回路が用いられている。出力回路10は、入射光をフォトダイオードで光電変換して、光電変換した電気信号(入力信号)を増幅して出力するものである。出力回路10は増幅アンプA11と外部回路を駆動するためのソースフォロアS11で構成されている。増幅アンプA11とソースフォロアS11への電源供給は共通した電源配線を介して電源VDD1が供給されることにより行なわれている。
【0003】
出力回路10では、入射光に応じた入力信号が出力回路で増幅される際に入力信号に起因した変調電流Imが発生する。この変調電流Imは抵抗Rvの電源配線を流れることにより電源電圧がΔV=Im×Rvだけ変動する。この電源電圧の変動が増幅アンプA11の特性変動を招き、その結果、出力信号を変動させて出力波形ひずみが生じてしまう。
【0004】
この波形ひずみを改善するための出力回路が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されている出力回路の構成を図5に示す。出力回路11は、ソースフォロアS11と増幅アンプA11とで電源供給を独立に行なうものである。変調電流はソースフォロアが主要因で発生するため、増幅アンプA11とソースフォロアS11に接続される電源配線を分離することで、ソースフォロアS11の変調電流に起因する電源電圧の変動を増幅アンプA11に伝えないようにして波形ひずみを低減するものである。
【0005】
【特許文献1】特許第3106436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、実際の回路ではソースフォロアの前段として2段の増幅アンプで構成する場合がある。そこで、発明者は、増幅アンプが複数段ある場合は、前述の図5の応用から図6に示すような構成にするのがよいと考えた。
【0007】
ところが、実験してみると意外に波形ひずみが大きいことを知見した。この波形ひずみのレベルでは、固体撮像素子のCCD出力回路としては不適当であることを認知した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の出力回路は、入力信号を受け第1の電源配線から電源が供給される第1の増幅器と、前記第1の増幅器の出力信号をさらに増幅し且つ前記第1の電源配線とは異なる第2の電源配線から電源が供給される第2の増幅器とを備える。
【0009】
すなわち、第2の増幅器で発生した変調電流による電源電圧の変動は、第1の増幅器と第2の増幅器とで電源を分離しているので、第1の増幅器に供給されている電源には影響を及ぼさない。つまり、変調電流による出力変動が第1および第2の増幅器で増幅することがない。かくして、出力回路の出力信号の波形ひずみを低減することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の出力回路によれば、電源電圧の変動による出力信号の波形ひずみを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施例の出力回路1を示した図である。A1およびA2は増幅アンプ、S1はソースフォロアであり、従来例と同様の機能を有している。ここで、増幅アンプA1およびA2には例えばNMOSインバータからなる反転増幅器を用いることができる。増幅アンプA1は入力信号INを受けて反転増幅する。増幅アンプA1によって増幅された信号は増幅アンプA2に入力されさらに反転増幅され、ソースフォロアS1を介して出力信号OUTとして出力される。なお、固体撮像素子の出力回路の場合、この出力信号OUTはエミッタフォロアで受けられることが多い。
【0013】
ここで、複数の増幅アンプ間の電源電圧変動の影響を避けるためには、個々の増幅アンプおよびソースフォロアに対する電源供給をそれぞれ独立に行なえばよい。しかしながら、半導体集積回路内に設けられる出力回路である場合、レイアウトの制約を受けることがあり、独立した電源配線は2つしか設けられない場合がある。
【0014】
そこで、発明者は、図6のように、増幅アンプA11およびA21がソースフォロアS11の変調電流に起因する電源電圧の変動を受けないようにするために、増幅アンプA11およびA21への電源供給と、ソースフォロアS11に対する電源供給を独立に行なうことを考えた。しかしながら、増幅アンプによって生じる変調電流はソースフォロアに比べて小さいものであるが全く生じないわけではない。また、反転増幅器の出力電圧は電源電圧変動に対して敏感である。したがって、増幅アンプA21によって生じた変調電流が小さかったとしても、その変調電流に起因する電源電圧変動が共通の電源配線に接続されている増幅アンプA11の出力信号を変動させ、その変動した出力信号がさらに増幅アンプA21で増幅されることにより、出力回路10の出力信号の波形のひずみがより大きくなってしまうと考えた。
【0015】
そこで、上述の考察をふまえて、発明者がいろいろ実験した結果、増幅アンプA2およびソースフォロアS1には共通の電源配線1を介して電源VDD1を供給し、増幅アンプA1には電源配線1とは別の電源配線2を介して電源VDD2を供給するのが良いという結論を得た。つまり、増幅アンプA1へ電源VDD2を供給するための電源配線2を、増幅アンプA2およびソースフォロアS1へ電源VDD1を供給するための電源配線1から電気的に分離した。このように、増幅アンプA2およびソースフォロアS1への電源供給と、増幅アンプA1への電源供給を独立して行ない、増幅アンプA2およびソースフォロアS1により変調電流Imが発生したとしても、この変調電流に起因する電圧変動ΔVの影響は増幅アンプA1には及ばないようにした。これで、増幅アンプA2が電源電圧変動による出力変動した信号をさらに増幅することはない。
【0016】
なお、変調電流ImはソースフォロアS1が主要因で発生するが、ソースフォロアS1の後段に接続されているエミッタフォロアは電流駆動であるためソースフォロアS1による変調電流Imは比較的小さくなる。したがって、ソースフォロアS1によって変調電流が発生しても、増幅アンプA2に対するこの変調電流に起因する電源電圧変動の影響は小さい。また、ソースフォロアS1の出力は電源電圧が変化してもほとんど変化しない。
【0017】
したがって、増幅アンプA2とソースフォロアS1へ共通した電源配線1を介して電源が供給されていたとしても、増幅アンプA1と増幅アンプA2へ供給するための電源配線を電気的に分離することにより、効果的に出力波形ひずみを低減することができる。
【0018】
図2は、本発明の第2実施例の出力回路2の構成を示したものである。出力回路2は、図1に示す第1実施例と同様に、増幅アンプA1およびA2、ソースフォロアS1を有する。なお、図1と同一の構成要素は同一の参照番号で示し、その説明を省略する。
【0019】
出力回路2は、図1とは異なり、増幅アンプA1の後段にソースフォロアS2が接続されている。ソースフォロアS2は増幅アンプA2の電圧動作点を調整するために設けられている。このソースフォロアS2と増幅アンプA1には共通の電源配線2を介して電源VDD2が供給されており、増幅アンプA2とソースフォロアS1への電源供給と、増幅アンプA1とソースフォロアS2への電源供給はそれぞれ独立に行なわれている。
【0020】
増幅アンプA1とソースフォロアS2は共通の電源配線2を介して電源が供給されているが、ソースフォロアS2に接続される増幅アンプA2はNMOSインバータからなる反転増幅器であり電流駆動であることを考慮すると、ソースフォロアS2による変調電流は比較的小さいものとなる。したがって、ソースフォロアS2によって変調電流が発生したとしても、増幅アンプA1に対するこの変調電流に起因する電源電圧変動の影響は小さい。
【0021】
したがって、このような構成により、増幅アンプA1およびA2との間の電源電圧変動の影響を抑え、出力信号OUTの波形ひずみを低減することができる。
【0022】
図3は、本発明の第3実施例の出力回路3を示した図である。
【0023】
出力回路3は、受光部上に青色、緑色、赤色などのカラーフィルタが形成されたカラーCCD固体撮像素子に適用した例である。図3に示すように、各色に応じた入力信号IN(青)、IN(緑)、IN(赤)に対してそれぞれの出力回路部31,32および33が設けられている。これら出力回路の構成は実質同一であるので、出力回路31について説明する。
【0024】
出力回路31は、入力信号IN(青)を入力し、該入力信号IN(青)を増幅アンプA1BおよびA2Bで増幅し、ソースフォロアS1を介して出力信号OUT(青)として出力する。ここで、それぞれの出力回路部31〜33に含まれる初段の増幅アンプA1B、A1G、A1Rは共通の電源配線2を介して電源VDD2が供給されており、それ以外の増幅アンプA2B、A2G、A2RおよびソースフォロアS1B、S1GおよびS1Rは、電源配線2とは別の共通の電源配線1を介して電源VDD1が供給されている。
【0025】
このような構成により、各色に対応した出力回路部においてもそれぞれの出力信号の波形のひずみを低減することができる。
【0026】
以上説明したように、複数の増幅アンプを有する出力回路において、増幅アンプA1およびA2への電源供給をそれぞれ独立に行なうことにより、出力信号の波形ひずみを低減することができる。また、上記実施例ではGND線はすべて共通であるが、GND線についても電源配線と同様に電気的に分離すれば、より出力信号の波形ひずみは低減される。
また、固体撮像素子の出力回路を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施例の出力回路の構成を示した図である。
【図2】本発明の第2実施例の出力回路の構成を示した図である。
【図3】本発明の第3実施例の出力回路の構成を示した図である。
【図4】従来の出力回路の構成を示した図である。
【図5】従来の出力回路のほかの構成を示した図である。
【図6】従来の出力回路のさらに他の構成を示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1,2,3,10,11,12 出力回路
A1,A2,A11,A21 増幅アンプ
S1,S2,S11,S21 ソースフォロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を受け第1の電源配線から電源が供給される第1の増幅器と、前記第1の増幅器で増幅された信号をさらに増幅し前記第1の電源配線とは異なる第2の電源配線から電源が供給される第2の増幅器とを備える出力回路。
【請求項2】
前記第2の増幅器で増幅された信号が入力され且つ前記第2の電源配線から電源が供給される第1のソースフォロア回路をさらに備える請求項1記載の出力回路。
【請求項3】
前記第1の増幅器で増幅された信号が入力され且つ前記第1の電源配線から電源が供給される第2のソースフォロア回路をさらに備える請求項1または2記載の出力回路。
【請求項4】
前記第1および第2の増幅器は反転増幅器であることを特徴とする請求項1、2または3記載の出力回路。
【請求項5】
第1の入力信号を受ける第1の増幅器と、前記第1の増幅器で増幅された信号をさらに増幅する第2の増幅器と、
第2の入力信号を受ける第3の増幅器と、前記第3の増幅器で増幅された信号をさらに増幅する第4の増幅器と、
第3の入力信号を受ける第5の増幅器と、前記第5の増幅器で増幅された信号をさらに増幅する第6の増幅器とを備え、
前記第1、第3及び第5の増幅器はそれぞれ第1の電源配線から電源が供給され、前記第2、第4及び第6の増幅器は前記第1の電源配線とは異なる第2の電源配線から電源が供給されることを特徴とする出力回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−311062(P2006−311062A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129498(P2005−129498)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】