説明

出力装置、出力システムおよびプログラム

【課題】データを出力する旨の指示を出力装置に送る端末に、その出力装置が既に記憶している他の指示による出力の量を示す情報を提示させる。
【解決手段】出力装置2は、データを出力する旨の指示を端末から受け取り、データの出力順に対応付けて記憶手段に記憶させ、最先の出力順に対応付けて記憶された指示により出力対象となるデータを、端末1に対して要求する。出力装置2は、指示を受け取ったときに出力順がその指示よりも先である他の指示情報が既に記憶されている場合に、他の指示による出力の量を示す情報を生成し、この情報を端末1に送信する。出力装置2は、要求に応じて端末1から送られたデータを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力装置、出力システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基地局を介さずに装置間で情報を遣り取りする、アドホック方式などと呼ばれる方式の無線通信が注目されている。アドホック方式の無線通信を応用した技術として、例えば、特許文献1には、トラフィック量の多いサービスをアドホックネットワークで管理することにより、無線トラフィックの集中によりインフラストラクチャモードで使用するチャネルの無線帯域のみスループットが低下してしまうことを回避する無線ネットワークシステムが開示されている。また、特許文献2には、各無線ネットワーク機器同士が一対一で接続されるアドホックモードでの接続において、直接通信を行える不特定多数の機器の中から本当に通信が必要な機器からの通信にのみ反応して低電力状態から通常状態に復帰する無線ネットワークプリンタが開示されている。また、特許文献3には、電波状況が悪化したときに最適なプロトコルに切り替えることで、スループットの低下を防ぐ無線印刷システムが開示されている。また、特許文献4には、アドホックモードを必要な時のみ稼動させることができる情報処理装置が開示されている。また、特許文献5には、無線通信機能を備えた複数の端末装置を有する無線通信ネットワークシステムであって、端末装置が他の端末装置との間の無線通信の電波強度を測定して記憶し、いずれかの端末装置への接続要求が発生した場合、ユーザに提供する他の端末装置の選択表示画面に、記憶している電波強度の測定値をキーとして、他の端末装置の識別情報を昇順または降順に並び替えた選択表示要素を表示させる無線通信ネットワークシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80024号公報
【特許文献2】特開2006−159759号公報
【特許文献3】特開2006−69008号公報
【特許文献4】特開2007−288722号公報
【特許文献5】特開2008−228271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、データを出力させる旨の指示を出力装置に送った端末に、その出力装置がそのデータよりも先に出力する他のデータの量を提示させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の請求項1に係る出力装置は、データを出力する旨の指示を端末から受け取る受取手段と、前記受取手段が受け取った前記指示を、前記データの出力順に対応付けて記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、前記記憶手段により最先の出力順に対応付けて記憶された指示により出力対象となるデータを、当該指示の送信元である端末に対して要求する要求手段と、前記要求手段による要求に応じて前記端末から送られたデータを出力する出力手段と、前記受取手段が指示を受け取ったときに前記出力順が当該指示よりも先である他の指示が既に前記記憶手段により記憶されている場合に、当該他の指示による出力の量を示す情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記情報を、前記指示の送信元である端末に対して送信する送信手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る出力装置は、請求項1に記載の態様において、前記受取手段は、前記端末から送られた前記指示が他の端末に中継される無線通信により受け取られた場合に、当該指示とともに当該他の端末の識別情報を受け取り、前記送信手段は、前記指示の送信元である端末に対して、前記受取手段により当該指示とともに受け取られた識別情報を送信することを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る出力装置は、請求項1または2に記載の態様において、前記送信手段により前記情報を送信された端末から、当該端末が既に送った指示を削除する旨の命令を受け付ける受付手段を備え、前記記憶制御手段は、前記受付手段が受け付けた命令に示された指示を前記記憶手段から削除することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る出力装置は、請求項1から3のいずれかに記載の態様において、前記記憶制御手段は、前記送信手段が前記情報を送信した端末から予め決められた期間内に応答がない場合に、当該端末により送られた前記指示を前記記憶手段から削除することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る出力装置は、請求項2に記載の態様において、前記記憶制御手段は、前記受取手段により前記指示とともに受け取られた識別情報を、当該指示に対応付けて前記記憶手段に記憶させ、前記送信手段は、前記記憶手段により前記他の指示に対応付けて記憶された識別情報を、前記端末に対して送信することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6に係る出力装置は、請求項1から5のいずれかに記載の態様において、前記出力手段は、前記端末から送られた前記データに応じた画像を記録媒体上に形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7に係る出力システムは、端末と、請求項1から6のいずれかに記載の出力装置とを備え、前記端末は、前記指示を前記出力装置に送る手段と、前記要求に応じて前記出力装置に前記データを送る手段と、送信された前記情報の内容を提示する提示手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項8に係る出力システムは、請求項7に記載の態様において、前記出力装置を複数備え、前記端末の前記提示手段は、前記情報を送信した前記出力装置毎に当該情報の内容を提示することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項9に係るプログラムは、記憶手段を備えるコンピュータを、データを出力する旨の指示を端末から受け取る受取手段と、前記受取手段が受け取った前記指示を、前記データの出力順に対応付けて前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、前記記憶手段により最先の出力順に対応付けて記憶された指示により出力対象となるデータを、当該指示の送信元である端末に対して要求する要求手段と、前記要求手段による要求に応じて前記端末から送られたデータを出力する出力手段と、前記受取手段が指示を受け取ったときに前記出力順が当該指示よりも先である他の指示が既に前記記憶手段により記憶されている場合に、当該他の指示による出力の量を示す情報を生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記情報を、前記指示の送信元である端末に対して送信する送信手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の出力装置によれば、データを出力させる旨の指示を出力装置に送った端末に、その出力装置がそのデータよりも先に出力する他のデータの量を提示させることができる。
請求項2に記載の出力装置によれば、指示を送った無線通信の通信経路の安定性を、その指示を中継した端末の識別情報に基づいて、ユーザに判断させることができる。
請求項3に記載の出力装置によれば、指示を削除する旨の命令を端末から受け付けることができる。
請求項4に記載の出力装置によれば、端末から予め決められた期間内に応答がないことをもって、指示を削除することができる。
請求項5に記載の出力装置によれば、端末から送られた指示よりも出力順が先である他の指示を出力装置が記憶している場合に、これを中継した端末をその指示を送った端末に提示させることができる。
請求項6に記載の出力装置によれば、端末から送られた指示が示すデータに応じた画像を記録媒体上に形成させることができる。
請求項7に記載の出力システムによれば、データを出力させる旨の指示を出力装置に送った端末に、その出力装置がそのデータよりも先に出力する他のデータの量を提示させることができる。
請求項8に記載の出力システムによれば、データを出力させる旨の指示を複数の出力装置に送った端末に、その各出力装置がそのデータよりも先に出力する他のデータの量を出力装置毎に提示させることができる。
請求項9に記載のプログラムによれば、データを出力させる旨の指示を出力装置に送った端末に、その出力装置がそのデータよりも先に出力する他のデータの量を提示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る出力システムの全体構成を示す図である。
【図2】端末の構成を示す図である。
【図3】出力装置の構成を示す図である。
【図4】指示情報リストの一例を示す図である。
【図5】出力システムの機能的構成を示す図である。
【図6】出力システムの予約動作を示すフロー図である。
【図7】算出情報を表示した表示部の表示画面の一例を示す図である。
【図8】出力システムの実行動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.実施形態
1−1.出力システムの全体構成
図1は、本実施形態に係る出力システム9の全体構成を示す図である。出力システム9は、複数の端末1(1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h)と出力装置2とを備える。端末1は、携帯電話機やノートパソコン、PDA(Personal Digital Assistant)などの無線通信機能を備えた端末である。出力装置2は、端末1から供給されるデータに応じた画像を用紙などの記録媒体上に形成する画像形成装置である。
【0017】
図1に示すように、各端末1は、基地局を介さない端末1同士で情報を遣り取りする、いわゆるアドホックモード(方式)の無線通信機能を有する。例えば、各端末1は、受け取ったパケットをどこに送るべきかを記述した経路表を記憶しており、経路が構築される毎に、その経路表を更新する。ここで、端末1aが出力装置2に対してデータを出力する旨の指示をした場合、この指示を示す指示情報を含んだパケットが端末1aの周囲に向けて送信される。すなわち、このパケットは、端末1aによりブロードキャストされる。端末1aの通信圏内にあって、このパケットを受け取った端末1b,1d,1eは、それぞれパケット内に記述されている宛先として出力装置2を特定し、自身にそれぞれ記憶されている経路表を参照して、そのパケットの送り先を決める。具体的には、端末1b,1d,1eは、出力装置2に対応付けられた端末1がその経路表に記述されている場合には、その端末1に向けてパケットを送信し、記述されていない場合には、そのパケットをブロードキャストする。このように、複数の端末1を中継させてパケットを出力装置2へ送ると、出力装置2は、複数の経路から1つを選択して、受け取ったパケットに対する応答を含んだ応答パケットを、選択した経路により端末1aへ送る。例えば、出力装置2は、中継した端末1の数が最も少ない経路を選択したり、最も速くパケットを到達させた経路を選択したりする。応答パケットが端末1aへ送られるのに応じて、その経路上の端末1が記憶している経路表が更新される。
【0018】
1−2.端末の構成
図2は、端末1の構成を示す図である。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備え、CPUが、ROMに記憶されているブートローダや記憶部12に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)をRAMに読み出して実行することにより、端末1の各部を制御する。記憶部12は、ハードディスクドライブなどの大容量の記憶手段であり、制御部11により利用されるプログラムを記憶する。通信部13は、他の端末1や出力装置2との間でアドホック通信をするインターフェースであり、例えばIEEE802.11に準拠した無線通信回路などである。
【0019】
操作部14は、各種の指示を入力するための操作ボタンやタッチパネルなどを備えており、ユーザによる操作を受け付けてその操作内容に応じた信号を制御部11に供給する。表示部15は、制御部11の制御の下、操作を促す対話型ウィンドウなどを表示する。表示部15は、例えば、液晶を用いた表示素子などにより構成される。
【0020】
1−3.出力装置の構成
図3は、出力装置2の構成を示す図である。制御部21は、CPU、ROM、RAMなどを備え、出力装置2の各部を制御する。記憶部22は、ハードディスクドライブやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの大容量の記憶手段であり、制御部21のCPUに読み込まれるプログラムを記憶する。また、記憶部22は、出力装置2が端末1から受け取った指示情報をその順位と共に記述する指示情報リスト221を有する。
【0021】
図4は、指示情報リスト221の一例を示す図である。指示情報リスト221は、指示情報について定められた順位を示す「順位」と、その指示情報を出力装置2に送った端末1の識別情報を示す「指示端末ID」と、その指示情報で指示されるデータの情報量を示す「データ量」とをそれぞれ記述するフィールドを含む。ここで「順位」とは、データを出力する順番を示す値であり、1を最小とする自然数で表される。この順位が小さいほどその指示情報に示されるデータが出力される順番が先であり、順位が1である指示情報のデータはこれらの指示情報のうち最初に出力される。例えば、「順位」が「1」の指示情報に対応付けられた「指示端末ID」は「M1G」であり、これに対応付けられた「データ量」は「156,000」である。なお、データ量を表す単位は例えば「byte」などである。
【0022】
図3に戻る。通信部23は、端末1との間でアドホック通信をするインターフェースである。画像形成部25は、端末1から供給されたデータに応じて用紙などの記録媒体に画像を形成する。具体的には、画像形成部25は、露光装置、感光体、現像装置、転写装置、および搬送装置を備え、露光装置が上述したデータに応じたレーザー光を感光体に照射して静電潜像を形成し、現像装置が感光体表面にトナーを供給して静電潜像を現像する。そして、転写装置が、感光体上に形成されたトナー像を、搬送装置によって搬送された用紙等の記録媒体に転写する。
【0023】
1−4.機能的構成
図5は、出力システム9の機能的構成を示す図である。図5において、端末1の通信部13と、出力装置2の通信部23とを省略する。また図5において、端末1と出力装置2との間で無線通信を中継する他の端末1を省略する。端末1の制御部11は、受付手段111、供給手段112、および提示手段113として機能する。また、出力装置2の制御部21は、受取手段211、記憶制御手段212、要求手段213、出力手段214、生成手段215、および送信手段216として機能する。
【0024】
受付手段111は、操作部14を操作したユーザによる指示を受け付けて、出力装置2の受取手段211にその指示を示す指示情報を送る。つまり受付手段111は、指示を出力装置に送る手段の一例である。供給手段112は、出力装置2の要求手段213の要求に応じて、出力装置2にデータを供給する。つまり供給手段112は、要求に応じて出力装置にデータを送る手段の一例である。提示手段113は、出力装置2の送信手段216により送信された情報の内容を提示する。つまり提示手段113は、送信された情報の内容を提示する提示手段の一例である。
【0025】
受取手段211は、データを出力する旨の指示を受け付ける端末1から、無線通信によりその指示を示す指示情報を受け取る。すなわち、受取手段211は、データを出力する旨の指示を端末から受け取る受取手段の一例である。記憶制御手段212は、受取手段211が受け取った指示情報の順位を決定し、その順位に対応付けて指示情報を記憶部22の指示情報リスト221(図3参照)に記憶させる。すなわち、記憶制御手段212は、受取手段が受け取った指示を、データの出力順に対応付けて記憶手段に記憶させる記憶制御手段の一例である。
【0026】
要求手段213は、指示情報リスト221により記憶された順位が1である指示情報が示すデータを、その指示情報を送った端末1に対して無線通信により要求する。すなわち、要求手段213は、記憶手段により最先の出力順に対応付けて記憶された指示により出力対象となるデータを、当該指示の送信元である端末に対して要求する要求手段の一例である。
【0027】
出力手段214は、要求手段213による要求に応じて端末1から無線通信により送られたデータを出力する。すなわち、出力手段214は、要求手段による要求に応じて端末から送られたデータを出力する出力手段の一例である。なお、ここでデータの出力は画像形成部25によって、そのデータに応じた画像を用紙などの記録媒体上に形成することで行われるので、この出力手段214は、端末から送られたデータに応じた画像を記録媒体上に形成する出力手段の一例である。記憶制御手段212は、出力手段214がデータを出力した後で、そのデータに対応する指示情報を指示情報リスト221から削除する。
【0028】
生成手段215は、受取手段211が指示情報を受け取ったときに、受け取ったその指示情報よりも順位が上位である他の指示情報が指示情報リスト221により記憶されている場合には、その他の指示情報の数、またはその他の指示情報が示すデータの出力が完了するまでの時間を算出し、これらを表す情報を生成する。この“他の指示情報の数”や“他の指示情報が示すデータの出力が完了するまでの時間”は、他の指示により出力対象となるデータの量(他の指示による出力の量)を示す情報である。すなわち、生成手段215は、受取手段が指示を受け取ったときに出力順がその指示よりも先である他の指示が既に記憶手段により記憶されている場合に、当該他の指示による出力の量を示す情報を生成する生成手段の一例である。送信手段216は、生成手段215により生成された情報を、その指示情報を送った端末1に対して無線通信により送信する。すなわち、送信手段216は、生成手段により生成された情報を、指示の送信元である端末に対して送信する送信手段の一例である。
【0029】
1−5.予約動作
次に、出力システム9の動作について説明する。出力システム9の動作は、データを出力する旨の指示を示す指示情報を受け取って記憶する予約動作と、実際に指示情報が示すデータを端末1に要求し、その供給を受けて出力する実行動作とに大別される。以下、予約動作について説明する。
【0030】
図6は、出力システム9の予約動作を示すフロー図である。端末1は、ユーザによる指示を示す指示情報を出力装置2へ送る(ステップS101)。出力装置2は、端末1から送られた指示情報を受け取り、この指示情報の順位を決定する。出力装置2が決定する指示情報の順位は、例えば、その受け取った順であってもよい。また、指示情報にその指示がどの程度優先されるべきかを表した優先度が記述されている場合、出力装置2は、その優先度に応じて、その指示情報の順位を決めてもよい。出力装置2は、決定した順位に対応付けて受け取った指示情報を記憶部22の指示情報リスト221に追加する(ステップS102)。
【0031】
出力装置2は、指示情報リスト221に記憶されている指示情報の数(以下、指示情報数ともいう)を算出し、各指示情報のデータ量に基づいて、それぞれのデータが全て出力されるまで待たなければならない時間(以下、待機時間という)を算出する(ステップS103)。この待機時間は、単純にデータ量に予め決められた係数を乗じることで算出されてもよいし、データ量と時間との相関関係を示す関数に基づいて算出されてもよい。
【0032】
なお、出力装置2は、指示情報リスト221に記憶されている全ての指示情報の数を算出してもよいが、ステップS101で受け取った指示情報よりも順位が先の指示情報の数を算出してもよい。また、出力装置2は、指示情報リスト221に記憶されている全ての指示情報の各データが出力されるまで待たなければならない時間を算出してもよいが、ステップS101で受け取った指示情報よりも順位が先の指示情報に限って、その各データが出力されるまで待たなければならない時間を算出してもよい。例えば、受け取った指示情報の優先度に応じて、出力装置2がその指示情報の順位を決める場合には、指示情報を受け取った時点で既に指示情報リスト221に記憶されている他の指示情報よりも、その指示情報の順位が先になることがある。この場合、送った指示に応じてデータが出力されるまでの時間は、そのデータよりも先に出力されるデータの量で決まるものであり、そのデータよりも後に出力されるデータの量では決まらないからである。
出力装置2は、算出した指示情報数と待機時間とを含んだ算出情報を端末1に送信する(ステップS104)。端末1は、送信された算出情報を、表示部15の表示画面に表示する(ステップS105)。
【0033】
図7は、算出情報を表示した表示部15の表示画面の一例を示す図である。この表示画面は、ユーザが指示端末ID「M1A」の端末1aを使ってデータを出力する旨の指示を示す指示情報を、識別情報が「P2」の出力装置2へ送ったときに、その端末1aの表示部15に表示される画面である。図7に示すように、表示画面には、『プリンタ「P2」の混雑情報』という文字列が表示され、その文字列の下に、指示情報毎の順位、指示端末IDおよびその指示が示すデータについての待機時間を記述した表が表示される。この表の最下行には、ユーザが端末1aを使って送った指示情報が示されている。この指示情報の「順位」が「7」であるので、ユーザは上述した指示情報数が「7」から1を引いた6であることがわかる。また、この表の下には「待機時間合計」という文字列に並んで、順位が「7」よりも小さい指示情報のデータについての待機時間を合計した時間が表示される。ユーザは、この「待機時間合計」という文字列に並べられた「20分」という文字列を、上述した待機時間を示すものとして認識し、自身が指示をしたデータが出力されるまでに20分間、待たなければならないことを知る。
【0034】
上述した表の下には、『出力の指示をキャンセルしますか?』というメッセージを表した文字列が表示され、そのメッセージの下には、『はい』という文字列が記述されたボタンと、『いいえ』という文字列が記述されたボタンとが表示される。ユーザが、操作部14であるタッチパネルを操作して、図7に示した『いいえ』という文字列が記述されたボタンに相当する領域を押すと、端末1は、図7に示した表示を表示画面から削除する。
【0035】
図6に戻る。ユーザが、操作部14であるタッチパネルを操作して、図7に示した『はい』という文字列が記述されたボタンに相当する領域を押すと、端末1は、以前に出力装置2に送った指示情報を削除する旨の命令である削除命令を出力装置2に送る(ステップS106)。削除命令を端末1から受け取った出力装置2は、この削除命令に示す指示情報を指示情報リスト221から削除する(ステップS107)。すなわち、出力装置2の制御部21および通信部23は、送信手段により情報を送信された端末から、その端末が既に送った指示を削除する旨の命令を受け付ける受付手段の一例として機能する。また、出力装置2の制御部21は、受付手段が受け付けた命令に示された指示を記憶手段から削除する記憶制御手段の一例として機能する。
【0036】
1−6.実行動作
図8は、出力システム9の実行動作を示すフロー図である。出力装置2は、削除命令を受けたり、出力が完了したりすることに伴って、指示情報リスト221の内容が変更されると、指示情報リスト221の順位が「1」である(つまり、データの出力順が最先の)指示情報を特定する(ステップS201)。そして、特定した指示情報を送った端末1に対し、その指示情報が示すデータを要求する(ステップS202)。この要求を受けた端末1は、この要求に応じてデータを出力装置2に供給する(ステップS203)。データの供給を受けた出力装置2は、供給されたデータに基づいて記録媒体上に画像を形成する(ステップS204)。画像の形成が完了した後、出力装置2は、画像の形成に用いたデータを削除するとともに、そのデータを示した指示情報を指示情報リスト221から削除する(ステップS205)。
【0037】
以上の動作により、出力装置2は、或る端末1から新しい指示情報を受け取った時点で、既に他の指示情報を受け取っており、かつ、その指示情報が示すデータの出力が完了していない場合に、その新しい指示情報を送った端末1に対してデータを要求する前に、その端末1が待たなければならない時間や他の指示情報の数を算出し、算出されたこの算出情報を端末1に送信する。端末1は、送信された算出情報に基づいて、出力装置2が既に受け取っている他の指示情報数や、その指示が示すデータの出力が完了するまでの待機時間をユーザに提示する。つまり、端末1は、出力装置2へ送った指示情報の内容でデータが出力されるのを待つか否かを、ユーザが決めるための参考となる情報として、指示情報数や待機時間を提示する。また、出力装置2は、記憶部22により最先の出力順に対応付けて記憶された指示により出力対象となるデータを、その指示の送信元である端末1に対して要求するので、端末1は出力装置2が対応できないために捨てられるパケットを送信する必要がない。
【0038】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
2−1.上述した実施形態において、出力装置2は、端末1から送られた指示情報を受け取っていたが、その指示情報を送った端末1以外の端末1(以下、他の端末1という)に中継されて、その指示情報が受け取られた場合に、その指示情報とともに、その指示情報を中継した他の端末1を識別する識別情報を受け取ってもよい。この場合、出力装置2は、上述の指示情報を送った端末1に算出情報を送信する際に、その算出情報とともに、上述した他の端末1の識別情報を送信してもよい。この変形例において、受取手段211は、端末から送られた指示が他の端末に中継される無線通信により受け取られた場合に、当該指示とともに当該他の端末の識別情報を受け取る受取手段の一例である。また、送信手段216は、指示の送信元である端末に対して、受取手段によりその指示とともに受け取られた識別情報を送信する送信手段の一例である。
【0039】
送信された識別情報は、ユーザの操作する端末1と、ユーザがデータを出力させようとしている出力装置2との間でアドホック通信を中継する他の端末1を識別するものである。そのため、この識別情報によって、ユーザはどの端末1によって自身の指示情報が中継されたかを知ることとなる。各端末1が提供するアドホック通信の中継機能についてユーザが予め認識している場合には、自身の指示情報を中継する端末1を特定することが、そのアドホック通信の安定性を判断するための材料となる。例えば、出力装置2から端末1へ、算出情報とともに、他の端末1の識別情報が送信された場合、端末1の表示部15によって、その識別情報が表示される。ユーザは、この識別情報が示す他の端末1が、5秒後に外出する同僚の所有するPDAであることを知った場合、この他の端末1を用いた通信経路が不安定であると判断して、以前に出力装置2に送った指示情報をキャンセルするように操作部14を操作する。一方、この識別情報が示す他の端末1が、終日、外出しない同僚の所有するノートパソコンであることを知った場合には、ユーザは、その端末1を用いた通信経路は安定であると判断して、出力装置2に送った指示情報に基づくデータの出力を待つ。
【0040】
なお、出力装置2が指示情報とともに受け取った、上述の他の端末1を識別する識別情報は、出力装置2の記憶部22に記憶されている指示情報リスト221に、指示情報毎に記述されてもよい。この場合、出力装置2は、算出情報を上述の指示情報を送った端末1に送信する際に、指示情報リスト221においてその指示情報に対応付けて記述された識別情報を、算出情報とともに送信すればよい。この変形例において、出力装置2の制御部21は、受取手段により指示とともに受け取られた識別情報を、その指示に対応付けて記憶手段に記憶させる記憶制御手段の一例として機能する。また、出力装置2の制御部21および通信部23は、記憶手段により他の指示に対応付けて記憶された識別情報を、端末に対して送信する送信手段の一例として機能する。
【0041】
また、端末1がGPS(Global Positioning System)などの測位部により自身の位置を測定する場合には、出力装置2は、他の端末1を識別する識別情報とともに、その各測位部によってそれぞれ測定された位置の情報を受け取ってもよい。端末1が加速度センサや角速度センサなどを有していて、これらセンサが、端末1の動きを検出し運動信号を出力する場合も、出力装置2は、他の端末1を識別する識別情報とともに、これらセンサによってそれぞれ出力された運動信号を受け取ってもよい。この場合、端末1は、出力装置2から識別情報とともに、上述の位置の情報や運動信号を受け取り、これらを提示する。ユーザは、この提示に基づいて、自身の指示を中継する端末1によるアドホック通信がどの程度安定しているかを判断する。
【0042】
2−2.上述した実施形態において、端末1は、以前に出力装置2に送った指示情報を削除する旨の命令である削除命令を受け付けていたが、削除命令を受け付けなくてもよい。この場合、例えば、出力装置2から算出情報を受け取ったときに、端末1は、ユーザに指示の確定を促す画面を表示部15により表示してもよい。ユーザが、予め決められた期間内に指示の確定を示す操作をしなかった場合には、出力装置2は、以前に端末1から送られた指示情報を指示情報リスト221から削除すればよい。この変形例において、出力装置2の制御部21は、送信手段が情報を送信した端末から予め決められた期間内に応答がない場合に、その端末により送られた指示を記憶手段から削除する記憶制御手段の一例として機能する。
【0043】
2−3.上述した実施形態において、出力装置2は、端末1から供給されるデータに応じた画像を用紙などの記録媒体上に形成する画像形成装置であったが、データを出力する態様は画像形成に限られない。例えば、データの出力態様は、そのデータが動画などを表すデータである場合に、スクリーンや液晶画面などに映像を表示する態様であってもよい。また、データが音楽などを表すデータである場合に、そのデータの出力態様は、そのデータによって表される音声や楽音を再生する態様であってもよい。
【0044】
2−4.上述した実施形態において、出力システム9は、複数の端末1と1つの出力装置2とを備えていたが、複数の端末1と複数の出力装置2とを備えていてもよい。この場合、端末1は、複数の出力装置2を指定して、そのいずれかにデータを出力する旨の指示を示す指示情報を、それぞれの出力装置2に向けて送ってもよい。また、端末1は、複数の出力装置2から送信された算出情報に基づいて、各出力装置2が既に受け取っている他の指示情報数や、その指示が示すデータの出力が完了するまでの待機時間を、その出力装置2毎にユーザに提示してもよい。端末1は、これらをユーザに提示することにより、データを出力させる出力装置2をユーザに選択させればよい。この変形例において端末1の提示手段113は、情報を送信した出力装置毎にその情報の内容を提示する提示手段の一例である。これにより、ユーザは指定した複数の出力装置2のうち、どれが最も指示情報数が少ないか、または、どれが最も待機時間が短くて済むかを知るため、これを参考として、複数の出力装置2のうち、データを出力させる出力装置2を選択する。
【0045】
2−5.端末1の制御部11、および出力装置2の制御部21によって実行される各プログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。なお、上記の制御部11または制御部21によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサなどが用いられる。
【符号の説明】
【0046】
1(1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h)…端末、11…制御部、111…受付手段、112…供給手段、113…提示手段、12…記憶部、13…通信部、14…操作部、15…表示部、2…出力装置、21…制御部、211…受取手段、212…記憶制御手段、213…要求手段、214…出力手段、215…生成手段、216…送信手段、22…記憶部、221…指示情報リスト、23…通信部、25…画像形成部、9…出力システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを出力する旨の指示を端末から受け取る受取手段と、
前記受取手段が受け取った前記指示を、前記データの出力順に対応付けて記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記記憶手段により最先の出力順に対応付けて記憶された指示により出力対象となるデータを、当該指示の送信元である端末に対して要求する要求手段と、
前記要求手段による要求に応じて前記端末から送られたデータを出力する出力手段と、
前記受取手段が指示を受け取ったときに前記出力順が当該指示よりも先である他の指示が既に前記記憶手段により記憶されている場合に、当該他の指示による出力の量を示す情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記情報を、前記指示の送信元である端末に対して送信する送信手段と
を備えることを特徴とする出力装置。
【請求項2】
前記受取手段は、前記端末から送られた前記指示が他の端末に中継される無線通信により受け取られた場合に、当該指示とともに当該他の端末の識別情報を受け取り、
前記送信手段は、前記指示の送信元である端末に対して、前記受取手段により当該指示とともに受け取られた識別情報を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の出力装置。
【請求項3】
前記送信手段により前記情報を送信された端末から、当該端末が既に送った指示を削除する旨の命令を受け付ける受付手段
を備え、
前記記憶制御手段は、前記受付手段が受け付けた命令に示された指示を前記記憶手段から削除する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の出力装置。
【請求項4】
前記記憶制御手段は、前記送信手段が前記情報を送信した端末から予め決められた期間内に応答がない場合に、当該端末により送られた前記指示を前記記憶手段から削除する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の出力装置。
【請求項5】
前記記憶制御手段は、前記受取手段により前記指示とともに受け取られた識別情報を、当該指示に対応付けて前記記憶手段に記憶させ、
前記送信手段は、前記記憶手段により前記他の指示に対応付けて記憶された識別情報を、前記端末に対して送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の出力装置。
【請求項6】
前記出力手段は、前記端末から送られた前記データに応じた画像を記録媒体上に形成する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の出力装置。
【請求項7】
端末と、
請求項1から6のいずれかに記載の出力装置と
を備え、
前記端末は、
前記指示を前記出力装置に送る手段と、
前記要求に応じて前記出力装置に前記データを送る手段と、
送信された前記情報の内容を提示する提示手段と
を有する
ことを特徴とする出力システム。
【請求項8】
前記出力装置を複数備え、
前記端末の前記提示手段は、前記情報を送信した前記出力装置毎に当該情報の内容を提示する
ことを特徴とする請求項7に記載の出力システム。
【請求項9】
記憶手段を備えるコンピュータを、
データを出力する旨の指示を端末から受け取る受取手段と、
前記受取手段が受け取った前記指示を、前記データの出力順に対応付けて前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記記憶手段により最先の出力順に対応付けて記憶された指示により出力対象となるデータを、当該指示の送信元である端末に対して要求する要求手段と、
前記要求手段による要求に応じて前記端末から送られたデータを出力する出力手段と、
前記受取手段が指示を受け取ったときに前記出力順が当該指示よりも先である他の指示が既に前記記憶手段により記憶されている場合に、当該他の指示による出力の量を示す情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記情報を、前記指示の送信元である端末に対して送信する送信手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−203648(P2012−203648A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67667(P2011−67667)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】