説明

刃先交換式転削工具

【課題】工具本体の剛性を確保しつつ、クーラントを切れ刃へ高精度に流出してその供給量を確保でき、ヘッド部とシャンク部との接合強度を十分に確保できる。
【解決手段】軸状の工具本体1とその先端に着脱可能に装着される切削インサートとを備えた刃先交換式転削工具であって、工具本体1は、シャンク部11と、シャンク部11の先端に接合され切削インサートが装着されるヘッド部32とを有し、工具本体1には、シャンク部11に位置して中心軸線O1に沿うように延びる第1供給孔21と、ヘッド部32に位置して切削インサートの切れ刃に向けて開口される一対の第2供給孔22と、第1、第2供給孔の間に位置してこれらを連通させる一対の第3供給孔53とが形成され、第3供給孔53は、中心軸線O1に垂直な断面の面積が第2供給孔22の前記面積よりも大きくされ、第3供給孔53の軸線O3は第2供給孔の軸線O2よりも中心軸線O1側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃先交換式転削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の刃先交換式転削工具として、軸状をなす工具本体と、この工具本体の先端に着脱可能に装着される板状の切削インサートと、を備えた構成のものが知られている。例えば、特許文献1に示される刃先交換式ドリルや特許文献2に示される刃先交換式ボールエンドミルにおいては、前記工具本体が、超硬合金製のシャンク部と、該シャンク部の先端側にろう付け接合された鋼鉄製のヘッド部とからなる。このように、工作機械に支持されるシャンク部を高剛性の超硬合金で形成することにより、加工精度を確保することができる。
【0003】
また、特許文献3には、刃先交換式ボールエンドミルの工具本体に形成されて、被削材の切削部位にエアや切削油剤等のクーラントを供給する油穴(供給孔)が記載されている。一般に、前記供給孔は、シャンク部の後端面から切削インサートが装着される先端部へ向けて延びており、前述のように工具本体がシャンク部とヘッド部とからなる場合には、予めそれぞれに設けた供給孔同士をろう付け接合時に連通させるようにしている。
【0004】
このような刃先交換式転削工具の他の例として、図3〜図7に示される刃先交換式ラジアスエンドミル100がある。この刃先交換式ラジアスエンドミル100の工具本体1は、超硬合金からなるシャンク部11と、鋼材からなり該シャンク部11の先端にろう付け接合されるヘッド部12とを有している。ヘッド部12には、径方向に沿ってスリット13が形成されており、このスリット13によりヘッド部12の先端は二つ割りとされて、一対のクランプ片14が形成されている。切削インサート2をスリット13に挿入した状態で、該切削インサート2の貫通孔を通して両クランプ片14、14に掛け渡されたクランプネジ3を締め付けることにより、該切削インサート2は両クランプ片14、14の内面間に狭持されて、工具本体1に装着されている。
【0005】
この刃先交換式ラジアスエンドミル100では、工具本体1のシャンク部11とヘッド部12とに同一内径の丸孔をそれぞれ設け、シャンク部11とヘッド部12とをろう付け接合するとともにこれら丸孔同士を連通させて、クーラント用の供給孔4を形成している。詳しくは、供給孔4は、シャンク部11に位置して該工具本体1の中心軸線O1に沿うように延びる第1供給孔21と、ヘッド部12に位置するとともに中心軸線O1に対して傾斜して延び、切削インサート2の切れ刃2Aに向けて開口される一対の第2供給孔22と、これら第1、第2供給孔同士を連通させる第3供給孔23と、を有している。また、図6(a)に示すように、ヘッド部12には、クランプ片14の中央にクランプネジ3を挿通させるネジ孔14Aが形成されている。
【0006】
第2供給孔22には、ネジ孔14A及びスリット13を避けつつも、切れ刃2Aへ向けてクーラントを高精度に流出させることが要求される。このような要求に応えるため、第2供給孔22は、その軸線O2の延長線上に切れ刃2Aを配置するように形成される。図6(a)のスリット13に垂直な側面視において、第2供給孔22は、ネジ孔14Aを避けつつ切れ刃2Aのコーナー部へ向けて延びるように形成されている。これにより、図7(一対の第2供給孔22のうち一の第2供給孔22の軸線O2を含むとともに中心軸線O1に平行な平面(図6のX−X断面)上に、中心軸線O1を投影して示す図である)において、第2供給孔22の軸線O2と前記平面上に投影された中心軸線(O1)とのなす角度θが、比較的小さく設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−158220号公報
【特許文献2】特開2004−230474号公報
【特許文献3】特開2002−154008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この場合、下記のような課題が生じていた。
すなわち、一対の第2供給孔22、22は、ネジ孔14Aを避けつつ角度θが小さく設定されるので、図6(b)に示されるように、一対の第2供給孔22、22において第3供給孔23に開口する部位同士の軸間距離が大きくなる。これに伴い、図7において、第2供給孔22の後端側部分が第3供給孔23に対して十分に開口されないことがあるとともに、第2、第3供給孔同士が連通する部位における流路の断面積が十分に確保できなくなって、クーラントの供給量が確保できないことがあった。また、第2供給孔22を穿設する加工精度が確保できない場合は、該第2供給孔22の後端側部分が第3供給孔23に連通されない可能性がある。
【0009】
そこで、クーラントの供給量を確保するため、例えば図8に示すように、第1供給孔21の内径に対して第3供給孔23の内径を大きく設定することが考えられる。すなわち、第3供給孔23の内径を大きくすることによって、第2供給孔22の後端側部分が第3供給孔23に対して十分に開口されることから、第2、第3供給孔同士が連通する部位の流路の断面積を確保することができる。しかしながら、この場合、ヘッド部12の径方向の肉厚が減少して、工具本体1の剛性が十分に確保できないこととなる。また、ヘッド部12の後端面12Aの面積が減少して、該後端面12Aとシャンク部11の先端面11Aとの接合面積が十分に確保できなくなり、接合強度が低減してしまう。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、工具本体の剛性を確保しつつも、クーラントを切れ刃へ向けて高精度に流出できるとともにその供給量を確保でき、該工具本体におけるヘッド部とシャンク部との接合強度を十分に確保できる刃先交換式転削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明は、軸状をなす工具本体と、前記工具本体の先端に着脱可能に装着される切削インサートと、を備えた刃先交換式転削工具であって、前記工具本体は、シャンク部と、前記シャンク部の先端に接合され、前記切削インサートが装着されるヘッド部と、を有し、前記工具本体には、前記シャンク部に位置して該工具本体の中心軸線に沿うように延びる第1供給孔と、前記ヘッド部に位置して前記切削インサートの切れ刃に向けて開口される一対の第2供給孔と、前記第1供給孔及び前記第2供給孔の間に位置してこれら第1、第2供給孔同士を連通させる一対の第3供給孔と、が形成され、前記第3供給孔は、前記中心軸線に垂直な断面の面積が、前記第2供給孔の前記面積よりも大きく設定され、前記第3供給孔の軸線は、前記第2供給孔の軸線よりも前記中心軸線側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る刃先交換式転削工具によれば、工具本体には、シャンク部の第1供給孔と、ヘッド部の一対の第2供給孔との間に位置して、これら第1、第2供給孔同士を連通させる一対の第3供給孔が形成されている。第3供給孔は、ヘッド部又は/及びシャンク部に形成されているとともに、これらの接合面に開口されている。工具本体の中心軸線に垂直な断面において、第3供給孔の面積(開口面積)は、第2供給孔の面積よりも大きく設定されている。これにより、第2供給孔は、前記断面の全体が第3供給孔に開口するように形成されることとなり、これら第2供給孔と第3供給孔との連結部位における流路の断面積が十分に確保される。
【0013】
また、第3供給孔の軸線(孔中心を通る軸線)が、第2供給孔の軸線よりも工具本体の中心軸線側に配置されている。これにより、前記中心軸線に沿う第1供給孔と第3供給孔との連結部位における流路の断面積も確保されている。
このように、第2、第3供給孔同士、及び、第1、第3供給孔同士の各連結部位の流路の断面積が十分に確保されているので、第2供給孔の先端開口から切れ刃へ向けて流出するクーラントの供給量が確保される。
【0014】
また、第3供給孔は一対形成されて、第1供給孔と、一対の第2供給孔とを連通させている。すなわち、一対の第3供給孔は、一対の第2供給孔に対応するようにそれぞれ形成されているとともに、これら第3供給孔同士の間には、互いを区画する壁部が形成されることになる。これにより、工具本体において第3供給孔が形成される部位の剛性が十分に確保される。詳しくは、例えば従来のように、1つの第3供給孔を用い、単純に該第3供給孔の内径を増大させて第1供給孔と一対の第2供給孔とを連通させる構成に対比して、本発明の構成によれば、前記断面における第3供給孔の面積が低減される。従って、工具本体の肉厚が確保されるとともに剛性が高められ、被削材の加工精度が確保される。さらに、ヘッド部の後端面とシャンク部の先端面との接合面積が十分に確保されるとともに、これらの接合強度が高められる。
【0015】
また、本発明に係る刃先交換式転削工具において、前記切削インサートは板状をなし、クランプネジが挿通される貫通孔を有し、前記ヘッド部は円柱状をなし、該ヘッド部の先端面に開口するとともに径方向に沿って延びるスリットと、前記スリットに交差するように穿設されて前記クランプネジが挿通されるネジ孔と、を有し、前記切削インサートは、前記スリットの内面間に狭持されて前記ヘッド部の先端面から前記切れ刃を突出させていることとしてもよい。
【0016】
本発明に係る刃先交換式転削工具によれば、ヘッド部の先端面に開口するとともに径方向に沿って延びるスリットにより該ヘッド部の先端は二つ割りされて、例えば一対のクランプ片が形成されている。この場合、前記一対の第2供給孔は、ヘッド部のネジ孔及びスリットを避けつつ、一対のクランプ片に配置されて切れ刃へ向けて開口されることになる。詳しくは、一対の第2供給孔のうち一の第2供給孔の軸線を含み中心軸線に平行な平面上に該中心軸線を投影したヘッド部の断面(例えば図2を参照)において、第2供給孔は、その軸線がヘッド部の先端面から突出する切れ刃へ向けて延びるように形成され、該第2供給孔の軸線と工具本体の中心軸線(投影線)とのなす角度が、比較的小さく設定されることになる。
【0017】
従って、一対の第2供給孔において第3供給孔に開口する部位同士の軸間距離が大きくなるが、前述したように、第3供給孔は一対設けられており、一対の第2供給孔に対応するように形成されているので、第2供給孔は第3供給孔に確実に開口されることとなる。これにより、第2供給孔の先端開口から切れ刃へ向けて流出するクーラントの供給量が安定して確保されるのである。
【0018】
また、本発明に係る刃先交換式転削工具において、前記断面における前記第3供給孔の形状が、円形状とされていることとしてもよい。
【0019】
本発明に係る刃先交換式転削工具によれば、ドリル等により第3供給孔を容易に形成できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る刃先交換式転削工具によれば、工具本体の剛性を確保しつつも、クーラントを切れ刃へ向けて高精度に流出できるとともにその供給量を確保でき、該工具本体におけるヘッド部とシャンク部との接合強度を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る刃先交換式転削工具のヘッド部を示す(a)側面図、及び、(b)背面図である。
【図2】図1のC−C断面を示す図である。
【図3】従来の刃先交換式転削工具を示す側面図である。
【図4】従来の刃先交換式転削工具を示す正面図である。
【図5】従来の刃先交換式転削工具の要部を示す側面図である。
【図6】従来の刃先交換式転削工具のヘッド部を示す(a)側面図、及び、(b)背面図である。
【図7】図6のX−X断面を示す図である。
【図8】従来の刃先交換式転削工具のヘッド部の他の例を示す(a)側面図、及び、(b)背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る刃先交換式転削工具は、軸状をなす工具本体1と、超硬合金等の硬質材料からなり工具本体1の先端に着脱可能に装着される板状の切削インサート2と、を備えた刃先交換式ラジアスエンドミルである。この刃先交換式転削工具の工具本体1は、超硬合金からなる軸状のシャンク部11と、鋼材からなりシャンク部11の先端にろう付けにより接合され、切削インサート2が装着される円柱状のヘッド部32と、を備えている。
【0023】
この刃先交換式転削工具は、前述した刃先交換式ラジアスエンドミル100のシャンク部11及び切削インサート2と同一の部材を用いている。また、図1及び図2は、本実施形態に係る刃先交換式転削工具の要部(ヘッド部32)を示している。以下の説明では、図1(a)において工具本体1の中心軸線O1に沿うヘッド部32側(図の左側)を先端側、シャンク部11側(図の右側)を後端側といい、前述した刃先交換式ラジアスエンドミル100と同一の部材・部位には同一の符号を付して、その説明を省略する。この刃先交換式転削工具は、シャンク部11の後端部が工作機械の主軸に固定支持されて、中心軸線O1回りに回転方向Tに回転させられることにより、被削材の切削加工に用いられる。
【0024】
図1(a)において、ヘッド部32は、中心軸線O1に沿う後端部の外径がシャンク部11の外径と同一に設定されているとともに、最も大径とされている。ヘッド部32の中心軸線O1に沿う先端部は、後端部よりも小径に形成されている。また、これら先端部と後端部の間の中間部は、先端側へ向かうに従い漸次縮径するテーパ面とされている。
【0025】
図1(a)の側面視に示すように、ヘッド部32において中心軸線O1の後端側を向く後端面32Aは、凹V字状に形成されている。また、シャンク部11において中心軸線O1の先端側を向く先端面11Aは、凸V字状に形成されている。そして、これら後端面32Aと先端面11Aとが当接され、ろう付け接合されることにより、ヘッド部32及びシャンク部11が一体とされて工具本体1が形成されている。
【0026】
また、ヘッド部32の先端部には、先端側を向く先端面32Bに開口するとともに径方向に沿って延びるスリット13と、このスリット13に交差(図示の例では直交)する径方向に穿設されクランプネジ3が挿通されるネジ孔14Aと、が形成されている。このスリット13により、ヘッド部32の先端は二つ割りとされて、一対のクランプ片14が形成されている。また、ネジ孔14Aは、ヘッド部32の外周面においてクランプ片14の略中央に開口しているとともに、スリット13を間に挟んで一方側の部位が大径、他方側の部位が小径に形成されている。また、ネジ孔14Aの前記他方側の部位における内面には、雌ネジ加工が施されている。クランプネジ3は、前記一方側の部位から前記他方側の部位へ向けてネジ孔14Aに挿入される。
【0027】
切削インサート2は一対の切れ刃2Aを有しており、該切削インサート2が一対のクランプ片14の間(すなわちスリット13の内面間)に狭持された状態で、切れ刃2Aはヘッド部32の先端面32B及び先端部における外周面から突出して配置される。詳しくは、図3〜図5において、切れ刃2Aは、先端面32Bから先端側に突出するとともに径方向に沿うように延びる底刃と、前記先端部の外周面から突出するとともに後端側へ向かうに従い漸次回転方向Tの後方側へ向けて傾斜する外周刃と、これら底刃及び外周刃を繋ぐ凸曲線状のコーナー刃と、を有している。また、切削インサート2の中央には、該切削インサート2を厚さ方向に貫通するとともに、クランプネジ3が挿通される貫通孔(不図示)が形成されている。
【0028】
また、図1に示すように、工具本体1内には、工作機械の主軸から供給されるエアや切削油剤等のクーラントを切れ刃2Aに向けて流出させる供給孔54が形成されている。供給孔54は、シャンク部11に位置して中心軸線O1に沿うように延びる第1供給孔21と、ヘッド部32に位置して切削インサート2の切れ刃2Aに向けて開口される一対の第2供給孔22と、第1供給孔21及び第2供給孔22の間に位置してこれら第1、第2供給孔同士を連通させる一対の第3供給孔53と、を備える。
【0029】
第1供給孔21は、中心軸線O1方向に沿ってシャンク部11を貫通して形成されており、該シャンク部11の後端面及び先端面11Aに開口している。第1供給孔21は、中心軸線O1に垂直な断面が円形状とされている。
【0030】
第2供給孔22は、その軸線O2が中心軸線O1に対して傾斜して延びており、先端が切れ刃2Aへ向けて開口されている。詳しくは、第2供給孔22の軸線O2は、ネジ孔14A及びスリット13を避けるように、先端側へ向かうに従い漸次径方向外方へ向かって傾斜して延びており、該軸線O2の延長線上には切れ刃2Aのコーナー刃(コーナー部)が位置するように設定されている。第2供給孔22は、軸線O2に垂直な断面が円形状とされている。
また、図2は、一対の第2供給孔22のうち一の第2供給孔22の軸線O2を含む(貫通する)とともに中心軸線O1に平行な平面(図1のC−C断面)上に、中心軸線O1を投影して示すヘッド部32の断面図である。この図2において、第2供給孔22の軸線O2と前記平面上に投影された中心軸線(O1)とのなす角度θは、例えば10°≦θ≦50°の範囲内に設定されている。
【0031】
第3供給孔53は、ヘッド部32の後端部に位置して後端面32Aに開口しているとともに、その軸線O3が中心軸線O1に平行に延びて形成されている。図1(b)に示すように、第3供給孔53は、中心軸線O1に垂直な断面の形状が、円形状とされている。また、ヘッド部32における一対の第3供給孔53同士の間には、これら第3供給孔53同士を区画するように壁部32Cが形成されている。前記断面における壁部32Cの幅(第3供給孔53、53同士の内面間距離)は、例えば0.5mm以上に設定される。
【0032】
そして、第3供給孔53は、前記断面の面積(開口面積)が、第2供給孔22の前記面積よりも大きく設定されている。また、第3供給孔53の軸線O3は、第2供給孔22の軸線O2よりも中心軸線O1側に配置されている。
図1(b)に示す例では、第1供給孔21、一対の第2供給孔22及び一対の第3供給孔53は、互いの軸線O1、O2及びO3が同一直線上に位置するように形成されている。また、図1(b)において、第2供給孔22の内径は、第3供給孔53の内径の略半分とされているとともに、第3供給孔53の軸線O3は第2供給孔22の外周上に位置するように設定されている。また、第1供給孔21の内径は、第3供給孔53の内径よりも大きく設定されており、第3供給孔53の軸線O3は第1供給孔21の外周上よりも径方向内側(中心軸線O1側)に位置している。
【0033】
切削加工時において、シャンク部11を支持する工作機械の主軸からクーラントが第1供給孔21に供給されると、クーラントは該第1供給孔21内を先端側へ向けて流れていき、第3供給孔53、第2供給孔22の順に供給孔54内を通って、第2供給孔22の先端開口から切れ刃2Aへ向けて流出される。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る刃先交換式転削工具によれば、工具本体1には、シャンク部11の第1供給孔21と、ヘッド部32の一対の第2供給孔22との間に位置して、これら第1、第2供給孔同士を連通させる一対の第3供給孔53が形成されている。工具本体1の中心軸線O1に垂直な断面において、第3供給孔53の面積(開口面積)は、第2供給孔22の面積よりも大きく設定されている。これにより、第2供給孔22は、前記断面の全体が第3供給孔53に開口するように形成されることとなり、これら第2供給孔22と第3供給孔53との連結部位における流路の断面積が十分に確保される。
【0035】
また、第3供給孔53の孔中心を通る軸線O3が、第2供給孔22の軸線O2よりも中心軸線O1側に配置されている。これにより、中心軸線O1に沿う第1供給孔21と第3供給孔53との連結部位における流路の断面積も確保されている。
このように、第2、第3供給孔同士、及び、第1、第3供給孔同士の各連結部位の流路の断面積が十分に確保されているので、第2供給孔22の先端開口から切れ刃2Aへ向けて流出するクーラントの供給量が確保される。
【0036】
また、第3供給孔53は一対形成されて、第1供給孔21と、一対の第2供給孔22とを連通させている。詳しくは、一対の第3供給孔53は、一対の第2供給孔22に対応するようにそれぞれ形成されているとともに、これら第3供給孔53、53同士の間には、互いを区画する壁部32Cが形成されている。これにより、工具本体1において第3供給孔53が形成されるヘッド部32の剛性が十分に確保される。
【0037】
詳しくは、例えば、図8に示す従来例の構成では、1つの第3供給孔23を用い、単純に該第3供給孔23の内径を増大させて第1供給孔21と一対の第2供給孔22とを連通させているが、この場合、供給孔4の流路の断面積が確保される一方で、工具本体1を無駄に薄肉に形成してしまうこととなり、該工具本体1の剛性が低減する虞がある。一方、図1に示す本実施形態の構成によれば、供給孔54の流路の断面積を十分に確保しつつも工具本体1の肉厚を確保でき、該工具本体1の剛性が高められるとともに、被削材の加工精度が確保される。さらに、ヘッド部32の後端面32Aとシャンク部11の先端面11Aとの接合面積が十分に確保されるとともに、これらの接合強度が高められる。
【0038】
特に、本実施形態の刃先交換式転削工具においては、スリット13によってヘッド部32の先端が二つ割りされているとともに一対のクランプ片14が形成されており、これらクランプ片14の中央にはネジ孔14Aが穿設されている。このようなヘッド部32において、第2供給孔22がスリット13及びネジ孔14Aを避けつつクランプ片14内を通り切れ刃2Aへ向けて開口され、かつ、その軸線O2の延長線上に該切れ刃2Aを位置させるには、軸線O2が中心軸線O1に対して傾斜する角度θを極力小さく設定する必要がある。
【0039】
従って、一対の第2供給孔22同士は、ヘッド部32の後端部における互いの軸間距離が比較的大きくならざるをえないが、前述したように、第3供給孔53が一対設けられているとともに、一対の第2供給孔22に対応するように形成されているので、第2供給孔22は第3供給孔53に確実に開口されることとなる。これにより、第2、第3供給孔同士の連結部位における流路の断面積が確保されることから、第2供給孔22の先端開口から切れ刃2Aへ向けて流出するクーラントの供給量が安定して確保されるのである。
【0040】
詳しくは、角度θが前述した10°≦θ≦50°の範囲内に設定されている場合には、前述の第3供給孔53の構成により、第2、第3供給孔同士が確実に連通するとともに、工具本体1の剛性が確保されることから好ましい。すなわち、角度θが10°よりも小さく設定された場合、その分、第3供給孔53を大径に形成する必要が生じて、ヘッド部32の剛性が確保できないことがある。或いは、第3供給孔53を小径のまま径方向外方へ配置する必要が生じて、第1供給孔21と第3供給孔53との連結部位における流路の断面積が確保できないことがある。また、角度θが50°を超えて設定された場合、クーラントが切れ刃2A位置よりも径方向外方へ向けて流出して、切削部位に精度よく供給されないことがある。
また、本実施形態の第3供給孔53は、中心軸線O1に垂直な断面が円形状とされているので、ドリル等を用いて容易に形成可能である。
【0041】
また、工具本体1は、ヘッド部32において側面視凹V字状をなす後端面32Aと、シャンク部11において側面視凸V字状をなす先端面11Aとが接合されて形成されている。このような接合面を有する工具本体1は、切削加工時に該工具本体1が受ける周方向の外力に対して機械的強度が高められている。また、単純に平滑面同士を接合するような場合に比べて、ヘッド部32とシャンク部11との接合面積を十分に確保でき、接合強度が高められている。
【0042】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、前述の実施形態では、刃先交換式転削工具として刃先交換式ラジアスエンドミルを用いて説明したが、これに限定されるものではなく、例えばそれ以外の刃先交換式エンドミル(ボールエンドミル、スクエアエンドミル等)や刃先交換式ドリル等であっても構わない。
【0043】
また、刃先交換式転削工具の工具本体1が、超硬合金からなるシャンク部11と、鋼材からなりシャンク部11の先端にろう付けにより接合されたヘッド部32と、からなるとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、シャンク部11が超硬合金以外の鋼材等により形成されていても構わない。この場合、第3供給孔53をヘッド部32に形成する代わりに、シャンク部11の先端面11Aに開口して形成することとしてもよい。また、第3供給孔53をヘッド部32及びシャンク部11にそれぞれ形成しても構わない。
また、ヘッド部32とシャンク部11とが、ろう付けにより接合されているとしたが、これに限定されるものではなく、それ以外の拡散接合等を用いて接合されていても構わない。
【0044】
また、切削インサート2が一対のクランプ片14の間に狭持された状態で、切れ刃2Aがヘッド部32の先端面32B及び先端部における外周面から突出して配置されるとしたが、これに限定されるものではない。ただし、工具本体1に装着した切削インサート2の切れ刃2Aが、少なくとも先端面32Bから突出して配置される場合において、角度θを小さく設定する必要が生じることから、前述した実施形態のような刃先交換式エンドミル等に本発明の構成を用いたときに特に顕著な効果が得られることになる。
【0045】
また、第2供給孔22は、その軸線O2が中心軸線O1に対して傾斜して延びているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、クランプ片14のネジ孔14Aが比較的小径とされるような場合には、一対の第2供給孔22同士の軸間距離を小さく抑えることができるので、第2供給孔22の軸線O2が中心軸線O1に平行となるように延びていても構わない。また、軸線O2と中心軸線O1とのなす角度θは、前述の範囲内に限定されるものではない。
【0046】
また、第3供給孔53は、中心軸線O1に垂直な断面の形状が、円形状とされていることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、それ以外の多角形状や楕円形状等であっても構わない。
【0047】
また、ヘッド部32における壁部32Cの幅は、前述の0.5mm以上に限定されるものではない。ただし、前記幅が0.5mm以上に設定されることにより、第3供給孔53、53同士が壁部32Cを通して互いに連通されることなく、該壁部32Cが確実に形成されることからより好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1 工具本体
2 切削インサート
2A 切れ刃
3 クランプネジ
11 シャンク部
13 スリット
14A ネジ孔
21 第1供給孔
22 第2供給孔
32 ヘッド部
32B 先端面
53 第3供給孔
O1 工具本体の中心軸線
O2 第2供給孔の軸線
O3 第3供給孔の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状をなす工具本体と、前記工具本体の先端に着脱可能に装着される切削インサートと、を備えた刃先交換式転削工具であって、
前記工具本体は、シャンク部と、前記シャンク部の先端に接合され、前記切削インサートが装着されるヘッド部と、を有し、
前記工具本体には、前記シャンク部に位置して該工具本体の中心軸線に沿うように延びる第1供給孔と、前記ヘッド部に位置して前記切削インサートの切れ刃に向けて開口される一対の第2供給孔と、前記第1供給孔及び前記第2供給孔の間に位置してこれら第1、第2供給孔同士を連通させる一対の第3供給孔と、が形成され、
前記第3供給孔は、前記中心軸線に垂直な断面の面積が、前記第2供給孔の前記面積よりも大きく設定され、
前記第3供給孔の軸線は、前記第2供給孔の軸線よりも前記中心軸線側に配置されていることを特徴とする刃先交換式転削工具。
【請求項2】
請求項1に記載の刃先交換式転削工具であって、
前記切削インサートは板状をなし、クランプネジが挿通される貫通孔を有し、
前記ヘッド部は円柱状をなし、該ヘッド部の先端面に開口するとともに径方向に沿って延びるスリットと、前記スリットに交差するように穿設されて前記クランプネジが挿通されるネジ孔と、を有し、
前記切削インサートは、前記スリットの内面間に狭持されて前記ヘッド部の先端面から前記切れ刃を突出させていることを特徴とする刃先交換式転削工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の刃先交換式転削工具であって、
前記断面における前記第3供給孔の形状が、円形状とされていることを特徴とする刃先交換式転削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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