刃型
【課題】簡単な構成の刃型により、被加工シート部材にノッチとなる打ち抜き加工と切り込み加工とを同一工程により形成することができる刃型を提供する。
【解決手段】オス刃型20とメス刃型25とが協働して、被加工シート部材に開封用のノッチを形成するための加工を行なう刃型であって、オス刃型20は、被加工シート部材を打ち抜くパンチ23と、パンチ23の外側に突出するように設けられた切刃24とを備え、パンチ23で打ち抜かれた前記被加工シート部材の開口縁に連続して、切刃24により切り込みを形成する。
【解決手段】オス刃型20とメス刃型25とが協働して、被加工シート部材に開封用のノッチを形成するための加工を行なう刃型であって、オス刃型20は、被加工シート部材を打ち抜くパンチ23と、パンチ23の外側に突出するように設けられた切刃24とを備え、パンチ23で打ち抜かれた前記被加工シート部材の開口縁に連続して、切刃24により切り込みを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラスチックシート(フィルム)等の被加工シート部材に、ノッチ用の打ち抜き加工と切り込み加工とを同一工程で行うことができる刃型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙シートやプラスチックシートからなる袋の縁部に、引き裂き用のノッチを加工することは周知である。かかるノッチは、見やすく且つ確実に引き裂いて開封することができるものが望ましい。
【0003】
そこで、従来では、見やすい形状のV形ノッチと、容易に引き裂くことができるI形ノッチとを連設したY形ノッチが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3067283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の袋の縁部に形成されたY形ノッチは、V形ノッチとI形ノッチとを連設する構成であるため、V形ノッチとI形ノッチとを確実に所定の位置に設ける必要がある。例えば、V形ノッチとI形ノッチとが離れたり、互いの位置がズレて形成された場合には、V形ノッチからI形ノッチにわたって連続して引き裂くことが困難となるおそれがある。
【0006】
また、V形ノッチ形成用の専用の刃型と、I形ノッチ形成用の専用の刃型とをそれぞれ準備しておいて、V形ノッチ形成加工とI形ノッチ形成加工とを別工程で行なうことも考えられる。しかしながら、V形ノッチ形成加工とI形ノッチ形成加工とを別工程で行なう場合には、工程が増加する問題だけでなく、V形ノッチとI形ノッチとの位置合わせが困難であった。
【0007】
本発明は、簡単な構成の刃型により、被加工シート部材にノッチとなる打ち抜き加工と切り込み加工とを同一工程により形成することができる刃型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、オス刃型とメス刃型とが協働して、被加工シート部材に開封用のノッチを形成するための加工を行なう刃型であって、前記オス刃型は、前記被加工シート部材を打ち抜くパンチと、該パンチから外側に突出するように設けられ且つ前記パンチで打ち抜かれた前記被加工シート部材の開口縁に連続して切り込みを形成する切刃とを備えたことにある。ここで、切り込みとは、切刃が、被加工シート部材を貫通するフルカットと、被加工シート部材を途中まで切り込むハーフカットとを含む概念である。
【0009】
前記本発明は、パンチにより見やすい部分を形成し、切刃により引き裂き易い切り込みを形成することが可能となり、確実にノッチを形成することができる。
【0010】
また、切刃をパンチから外側を突出する構成であるため、簡単な構造となる利点がある。
【0011】
前記刃型において、前記メス刃型の表面には、前記切刃の刃先が入り込む逃がし凹部が設けられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、構成が簡単となるとともに、オス刃型のパンチによる打ち抜き加工と、切刃による切り込み加工とを同一工程で行なえるため、被加工シート部材へのノッチ形成工程を減少でき、それぞれの加工を行なう場合に比し、スペースの減少を図ることができる。しかも、打ち抜き加工により形成されたノッチと、切り込み加工により形成されたノッチとの位置合わせが確実になり、ノッチ加工精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の刃型を示す斜視図である。
【図2】同刃型を装着したプレス成形装置の要部を示し、ピンがダイに対して上死点位置にある図5のA−A線断面図である。
【図3】同刃型を装着したプレス成形装置の要部を示し、ピンがダイに対して下死点位置にある図5のA−A線断面図である。
【図4】同刃型の要部を示す斜視図である。
【図5】(a)は同刃型の要部を示す断面平面図、(b)はダイの平面図である。
【図6】同刃型で被加工シート部材を加工する直前状態の一部断面を含む正面図である。
【図7】同刃型で被加工シート部材を加工した状態を示し、(a)は一部断面を含む正面図、(b)は一部断面を含む側面図である。
【図8】被加工シート部材を示し、(a)は加工前の平面図、(b)は加工後の平面図図である。
【図9】ノッチを加工した袋の平面図である。
【図10】ノッチを加工した袋の要部を示す平面図である。
【図11】ピンの他の実施形態の要部を示す正面図である。
【図12】ピンの他の実施形態の要部を示し、(a)は正面図、(b)は断面を示す平面図である。
【図13】(a)〜(n)は、刃型の形状の要部断面をそれぞれ示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図9に本発明の一実施形態を示す。
【0015】
図2〜図5は、プレス成形装置1の要部をそれぞれ示す。かかるプレス成形装置1は、本発明に係る刃型2が装着されており、かかる刃型2により、被加工シート部材Sに対して打ち抜き加工と切り込み加工とを行うものである。
【0016】
プレス成形装置1は、下方の架台11と、この架台11の上方に支柱(図示省略)を介して平行に設けられた支持フレーム13とを備えている。支持フレーム13には上下に貫通する孔15が形成されており、この孔15に筒状のブシュ16が上下方向に内嵌固定されている。
【0017】
ブシュ16には、ピンホルダ3が上下に摺動自在に挿入されている。ピンホルダ3は、周知のエアシリンダ等の駆動手段(図示省略)により昇降自在に構成されている。また、ピンホルダ3の下部には、下面に開口する円形のピン収容部30がピンホルダ3の中心に設けられている。
【0018】
ピンホルダ3の一側面には、図2および図5(a)に示すように、平面31が形成されている。また、支持フレーム13には、前記平面31に当接する板状の回り止め部材33が、ボルト34で固定されている。この回り止め部材33に対して、昇降動作するピンホルダ3の平面31が上下方向に摺動するとともに、ピンホルダ3の回転が規制されている。
【0019】
刃型2は、図1に示すように、支持フレーム13側に装着されるオス刃型(ピン)20と、架台11側に装着されるメス刃型(ダイ)25とから構成されている。
【0020】
ピン20は、前記ピン収容部30に下方から嵌合されるピン本体22と、打ち抜き刃としてのパンチ23と、平板状の切刃24とからなる。
【0021】
ピン本体22は、円柱体からなり、その周面には、位置決め突起22aが径外方向に突設されている。また、ピンホルダ3には、下面が開口する逆U字状の切欠38が上下方向で且つピンホルダ3の中途部まで形成されている。そして、前記位置決め突起22aが切欠38に挿入され、その結果、ピンホルダ3に対してピン20の相対回転方向の位置決めがなされている。また、ピン20は、ボルト20aにより、ピンホルダ3に固定されている。
【0022】
ピン本体22の他端である下面には、パンチ23が下方に突出されている。このパンチ23は、ピン本体22と同軸心状に設けられ、図6に示すように、パンチ23の直径D2は、ピン本体22の直径D1よりも小さく設定されている。また、パンチ23は下端に打抜刃23aを有している。
【0023】
ピン本体22下部からパンチ23上部にわたって、薄板状の切り込みからなる開口部27が、ピン本体22直径方向に貫通して設けられている。この開口部27には、平板状の切刃24がピン本体22直径方向に挿入されているとともに、この切刃24は、ピン本体22に螺合されたねじ37により、ピン本体22およびパンチ23にわたって固定されている。
【0024】
切刃24の水平方向の長さLは、ピン本体22の直径D1以下で且つパンチ23の直径D2よりも大きく設定されている。従って、平面視において、切刃24は、パンチ23に対してパンチ23直径方向の両側(外側)に突出した部分を有しており、この突出する部分が、下端に刃先を有する切刃部24aとなっている。また、パンチ23は切刃部24aの刃先よりも下方に突出しており、パンチ23の打抜刃23aは、切刃部24aの刃先よりも下方に位置している。
【0025】
前記ダイ25は、平面視において矩形状または円形状等の任意の形状を呈している。なお、本実施の形態では、平面視矩形状のダイ25を例示する。このダイ25に設けられた天壁25cの中央には、前記パンチ23を受け入れる円形の貫通孔26が形成されている。ダイ25の上面には、切刃24の刃先が入り込む逃がし溝25dが形成されているとともに、ダイ25の内部には、ダイ25下面に開口する凹部25eが形成されている。ダイ25には、上下に貫通するボルト挿通孔28が形成されており、ダイ25は、このボルト挿通孔28に挿通されたボルト29により、架台11上面の所定位置に固定されている。
【0026】
ダイ25を架台11上面の所定位置に固定するに際しては、ピンホルダ3を下降させると、ピンホルダ3とともにピンホルダ3に固定されたピン20も下降するため、ピン20のパンチ23の打抜刃23aが、架台11上面に載置されているが固定されていないダイ25の貫通孔26に嵌合する。その状態において、ダイ25をボルト29により締結固定することにより、架台11上面の所定位置に固定することができる。なお、ピン20はダイ25の位置合わせ後に、上昇しておく。
【0027】
図2に示すように、前記ピンホルダ3の上面に固定される取付部材50には、下死点調整手段が設けられている。本実施形態では、下死点調整手段として、取付部材50の周壁下面に、下方に向けて螺合された一対(複数)のボルト51を例示する。このボルト51の先端は、ピンホルダ3が下降した際に、支持フレーム13の上面に当接するようになっている。
【0028】
従って、ボルト51の先端がこの支持フレーム13の上面に当接することにより、下降位置が設定される。なお、この下降位置調整(下死点調整)は、ボルト51を回動操作することにより出退させて行なうことができる。
【0029】
また、支持フレーム13には、被加工シート部材Sが浮き上がるのを防止するストリッパ(図示省略)が適宜設けられている。
【0030】
次に、以上の構成からなるプレス成形装置1を使用する場合について説明する。
【0031】
かかるプレス成形装置1により、加工される被加工シート部材Sとしては、図8(a)に示すように、長尺状のプラスチックフィルム袋が採用される。かかるプラスチックフィルム袋Sは、2層に重ね合わされたプラスチックフィルム5からなり、プラスチックフィルム5同士は、所定の部分がヒートシール(熱溶着)されている。具体的には、プラスチックフィルム5の長手方向の両端縁5a、5aと、この両端縁5a、5aに連続するように等間隔おいて設けられた幅方向の分割部分5bとが、ヒートシールされている。なお、図8(a)において、ヒートシ−ルされた部分をハッチングで示している。
【0032】
このように、菓子や薬等の充填物が適宜充填された袋領域5cを形成するように、両層のプラスチックフィルム5同士の両端縁5a、5aおよび分割部分5bがヒートシールされている。
【0033】
かかる被加工シート部材Sを、ダイ25上に載置するように、図示省略の移送手段により、間欠的に移送する。なお、切刃24は、この被加工シート部材Sの移送方向(図8(a)に示す矢印方向と同方向を向いている。被加工シート部材Sは、分割部分5bが刃型2による所定加工位置に到達したときに停止する。具体的には、上死点位置にあるピン20と、ダイ25との間に分割部分5bが到達したときに、被加工シート部材Sは所定時間停止する。
【0034】
次に、駆動手段がピンホルダ3を下降させる。このピンホルダ3とともにピン20も下降する。ピン20のパンチ23の打抜刃23aが、ダイ25の貫通孔26を通過することにより(パンチ23とダイ25との協働により)、被加工シート部材Sの分割部分5bを下方に打ち抜くこととなる。打ち抜かれたカス片S1は、ダイ25から下方へ取り除かれる(図7(a)および(b)参照)。
【0035】
一方、切刃24は、被加工シート部材Sの打ち抜かれた円形の開口(打抜孔)5dから直径方向に連続する切り込み5eを形成する。切刃24は、切刃部24aの刃先が、ダイ25の逃がし凹部25dに入り込むため、被加工シート部材Sを通過して、切り込み5eを確実に形成することができる。この結果、被加工シート部材Sには、円形の打抜孔5dと、この打抜孔5dから直径方向に延設された切り込み5eとが、ピン20が下降動作する同一工程で形成される。
【0036】
かかる加工が終了すると、ピンホルダ3が上昇する。このピンホルダ3とともにピン20も上昇し、ピン20が上死点位置に復帰する。
【0037】
さらに、被加工シート部材Sが間欠送りされると、前記同様にピン20が昇降動作し、各分割部分5bに、打抜孔5dと切り込み5eとが順次形成される(図8(b)参照)。
【0038】
次に、被加工シート部材Sの分割部分5bの中央Cが、順次カットされ、袋55が形成される(図9参照)。この結果、袋55は、分割部分5bの打抜孔5dの中心でカットされるため、見やすい半円状の切り欠き5fと、この切り欠き5fから連続する線状の引き裂きやすい切り込み5eとからノッチ56が形成される。
【0039】
以上のように、本発明の実施形態の刃型2は、ピン20のピン本体22およびパンチ23に交差させて切刃24を設けている構成であるので、構造が簡単となる。しかも、パンチ23による打ち抜き加工と、切刃24による切り込み加工とを同一工程で行なえるため、被加工シート部材Sへのノッチ形成工程を減少でき、それぞれの加工を行なう場合に比し、スペースの減少を図ることができる。
【0040】
さらに、この刃型2を使用することにより、切り欠き5fと切り込み5eとからなるノッチ56を、袋55の縁部に形成することができる。しかも、刃型2は、パンチ23で打ち抜いた開口5d縁に連続して切り込み5eを確実に形成することができ、打ち抜き加工により形成されたノッチと、切り込み加工により形成されたノッチとの位置合わせが確実になり、ノッチ加工精度を向上することが可能となる。
【0041】
本実施の形態は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、被加工シート部材Sにおける切り込み5eは、切刃24が被加工シート部材Sを貫通するフルカット以外に、上層のプラスチックフィルム5のみを切り込むハーフカットでもよい。すなわち、パンチ23で被加工シート部材Sを打ち抜くとともに、切刃24にて下層のプラスチックフィルム5を残して上層のプラスチックフィルム5のみを切断してもよい。かかる場合には、ダイ25に逃がし凹部25dを必ずしも設ける必要はない。
【0042】
また、図8(b)および図9に仮想線で示すように、ノッチ56を形成する位置も任意に設定可能である。例えば、被加工シート部材Sの長手方向の両端縁5a、5aに、ノッチ56を形成する場合には、刃型2を下降させた際に、かかるノッチ56を直接に形成することも可能である。
【0043】
また、本実施の形態におけるノッチ56の形状パターンは、特に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、切り欠き5fの形状はV形であってもよい。かかる場合には、パンチ23の断面形状を菱形に形成する。このように、パンチ23の形状を任意に設置することにより、容易に任意のノッチ56の形状パターンを設定することができる。
【0044】
図11および図12に、ピン20の他の実施形態を示す。図11に示すピン20は、切刃24が、フルカット用の切刃部24aと、ハーフカット用の切刃部24bとを備えたものである。ハーフカット用の切刃部24bの刃元(上端)から刃先までの寸法は、フルカット用の切刃部24aの刃元から刃先までの寸法に比し、被加工シート部材Sの厚さに応じて若干短く設定されている。
【0045】
図12(a)および(b)に示すピン20は、切刃24の切刃部24aを、不連続(ミシン目)に形成したものである。かかる切刃24は、切り込み5eをミシン目に形成することができる。
【0046】
図13に、切刃24の他の実施形態を例示する。(a)および(b)は、真円のパンチ23を例示する。(c)および(d)は、亀甲のパンチ23を例示する。(e)および(f)は、菱形のパンチ23を例示する。(g)〜(i)は、三角形状のパンチ23を例示する。(j)〜(l)は、楕円形のパンチ23を例示する。(m)および(n)は、一方が楕円形で、他方が三角形に形成されたパンチ23を例示する。
【0047】
また、刃型2は単数に限らず、複数個の刃型2を併設することにより、ノッチ56の個数も任意に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 プレス成形装置
2 刃型
3 ピンホルダ
5e 切り込み
5f 切り欠き
20 ピン(オス刃型)
22 ピン本体
22a 位置決め突起
23 パンチ
23a 打抜刃
24 切刃
24a 切刃部
25 ダイ(メス刃型)
25d 逃がし凹部
55 袋
56 ノッチ
S 被加工シート部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラスチックシート(フィルム)等の被加工シート部材に、ノッチ用の打ち抜き加工と切り込み加工とを同一工程で行うことができる刃型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙シートやプラスチックシートからなる袋の縁部に、引き裂き用のノッチを加工することは周知である。かかるノッチは、見やすく且つ確実に引き裂いて開封することができるものが望ましい。
【0003】
そこで、従来では、見やすい形状のV形ノッチと、容易に引き裂くことができるI形ノッチとを連設したY形ノッチが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3067283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の袋の縁部に形成されたY形ノッチは、V形ノッチとI形ノッチとを連設する構成であるため、V形ノッチとI形ノッチとを確実に所定の位置に設ける必要がある。例えば、V形ノッチとI形ノッチとが離れたり、互いの位置がズレて形成された場合には、V形ノッチからI形ノッチにわたって連続して引き裂くことが困難となるおそれがある。
【0006】
また、V形ノッチ形成用の専用の刃型と、I形ノッチ形成用の専用の刃型とをそれぞれ準備しておいて、V形ノッチ形成加工とI形ノッチ形成加工とを別工程で行なうことも考えられる。しかしながら、V形ノッチ形成加工とI形ノッチ形成加工とを別工程で行なう場合には、工程が増加する問題だけでなく、V形ノッチとI形ノッチとの位置合わせが困難であった。
【0007】
本発明は、簡単な構成の刃型により、被加工シート部材にノッチとなる打ち抜き加工と切り込み加工とを同一工程により形成することができる刃型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、オス刃型とメス刃型とが協働して、被加工シート部材に開封用のノッチを形成するための加工を行なう刃型であって、前記オス刃型は、前記被加工シート部材を打ち抜くパンチと、該パンチから外側に突出するように設けられ且つ前記パンチで打ち抜かれた前記被加工シート部材の開口縁に連続して切り込みを形成する切刃とを備えたことにある。ここで、切り込みとは、切刃が、被加工シート部材を貫通するフルカットと、被加工シート部材を途中まで切り込むハーフカットとを含む概念である。
【0009】
前記本発明は、パンチにより見やすい部分を形成し、切刃により引き裂き易い切り込みを形成することが可能となり、確実にノッチを形成することができる。
【0010】
また、切刃をパンチから外側を突出する構成であるため、簡単な構造となる利点がある。
【0011】
前記刃型において、前記メス刃型の表面には、前記切刃の刃先が入り込む逃がし凹部が設けられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、構成が簡単となるとともに、オス刃型のパンチによる打ち抜き加工と、切刃による切り込み加工とを同一工程で行なえるため、被加工シート部材へのノッチ形成工程を減少でき、それぞれの加工を行なう場合に比し、スペースの減少を図ることができる。しかも、打ち抜き加工により形成されたノッチと、切り込み加工により形成されたノッチとの位置合わせが確実になり、ノッチ加工精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の刃型を示す斜視図である。
【図2】同刃型を装着したプレス成形装置の要部を示し、ピンがダイに対して上死点位置にある図5のA−A線断面図である。
【図3】同刃型を装着したプレス成形装置の要部を示し、ピンがダイに対して下死点位置にある図5のA−A線断面図である。
【図4】同刃型の要部を示す斜視図である。
【図5】(a)は同刃型の要部を示す断面平面図、(b)はダイの平面図である。
【図6】同刃型で被加工シート部材を加工する直前状態の一部断面を含む正面図である。
【図7】同刃型で被加工シート部材を加工した状態を示し、(a)は一部断面を含む正面図、(b)は一部断面を含む側面図である。
【図8】被加工シート部材を示し、(a)は加工前の平面図、(b)は加工後の平面図図である。
【図9】ノッチを加工した袋の平面図である。
【図10】ノッチを加工した袋の要部を示す平面図である。
【図11】ピンの他の実施形態の要部を示す正面図である。
【図12】ピンの他の実施形態の要部を示し、(a)は正面図、(b)は断面を示す平面図である。
【図13】(a)〜(n)は、刃型の形状の要部断面をそれぞれ示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図9に本発明の一実施形態を示す。
【0015】
図2〜図5は、プレス成形装置1の要部をそれぞれ示す。かかるプレス成形装置1は、本発明に係る刃型2が装着されており、かかる刃型2により、被加工シート部材Sに対して打ち抜き加工と切り込み加工とを行うものである。
【0016】
プレス成形装置1は、下方の架台11と、この架台11の上方に支柱(図示省略)を介して平行に設けられた支持フレーム13とを備えている。支持フレーム13には上下に貫通する孔15が形成されており、この孔15に筒状のブシュ16が上下方向に内嵌固定されている。
【0017】
ブシュ16には、ピンホルダ3が上下に摺動自在に挿入されている。ピンホルダ3は、周知のエアシリンダ等の駆動手段(図示省略)により昇降自在に構成されている。また、ピンホルダ3の下部には、下面に開口する円形のピン収容部30がピンホルダ3の中心に設けられている。
【0018】
ピンホルダ3の一側面には、図2および図5(a)に示すように、平面31が形成されている。また、支持フレーム13には、前記平面31に当接する板状の回り止め部材33が、ボルト34で固定されている。この回り止め部材33に対して、昇降動作するピンホルダ3の平面31が上下方向に摺動するとともに、ピンホルダ3の回転が規制されている。
【0019】
刃型2は、図1に示すように、支持フレーム13側に装着されるオス刃型(ピン)20と、架台11側に装着されるメス刃型(ダイ)25とから構成されている。
【0020】
ピン20は、前記ピン収容部30に下方から嵌合されるピン本体22と、打ち抜き刃としてのパンチ23と、平板状の切刃24とからなる。
【0021】
ピン本体22は、円柱体からなり、その周面には、位置決め突起22aが径外方向に突設されている。また、ピンホルダ3には、下面が開口する逆U字状の切欠38が上下方向で且つピンホルダ3の中途部まで形成されている。そして、前記位置決め突起22aが切欠38に挿入され、その結果、ピンホルダ3に対してピン20の相対回転方向の位置決めがなされている。また、ピン20は、ボルト20aにより、ピンホルダ3に固定されている。
【0022】
ピン本体22の他端である下面には、パンチ23が下方に突出されている。このパンチ23は、ピン本体22と同軸心状に設けられ、図6に示すように、パンチ23の直径D2は、ピン本体22の直径D1よりも小さく設定されている。また、パンチ23は下端に打抜刃23aを有している。
【0023】
ピン本体22下部からパンチ23上部にわたって、薄板状の切り込みからなる開口部27が、ピン本体22直径方向に貫通して設けられている。この開口部27には、平板状の切刃24がピン本体22直径方向に挿入されているとともに、この切刃24は、ピン本体22に螺合されたねじ37により、ピン本体22およびパンチ23にわたって固定されている。
【0024】
切刃24の水平方向の長さLは、ピン本体22の直径D1以下で且つパンチ23の直径D2よりも大きく設定されている。従って、平面視において、切刃24は、パンチ23に対してパンチ23直径方向の両側(外側)に突出した部分を有しており、この突出する部分が、下端に刃先を有する切刃部24aとなっている。また、パンチ23は切刃部24aの刃先よりも下方に突出しており、パンチ23の打抜刃23aは、切刃部24aの刃先よりも下方に位置している。
【0025】
前記ダイ25は、平面視において矩形状または円形状等の任意の形状を呈している。なお、本実施の形態では、平面視矩形状のダイ25を例示する。このダイ25に設けられた天壁25cの中央には、前記パンチ23を受け入れる円形の貫通孔26が形成されている。ダイ25の上面には、切刃24の刃先が入り込む逃がし溝25dが形成されているとともに、ダイ25の内部には、ダイ25下面に開口する凹部25eが形成されている。ダイ25には、上下に貫通するボルト挿通孔28が形成されており、ダイ25は、このボルト挿通孔28に挿通されたボルト29により、架台11上面の所定位置に固定されている。
【0026】
ダイ25を架台11上面の所定位置に固定するに際しては、ピンホルダ3を下降させると、ピンホルダ3とともにピンホルダ3に固定されたピン20も下降するため、ピン20のパンチ23の打抜刃23aが、架台11上面に載置されているが固定されていないダイ25の貫通孔26に嵌合する。その状態において、ダイ25をボルト29により締結固定することにより、架台11上面の所定位置に固定することができる。なお、ピン20はダイ25の位置合わせ後に、上昇しておく。
【0027】
図2に示すように、前記ピンホルダ3の上面に固定される取付部材50には、下死点調整手段が設けられている。本実施形態では、下死点調整手段として、取付部材50の周壁下面に、下方に向けて螺合された一対(複数)のボルト51を例示する。このボルト51の先端は、ピンホルダ3が下降した際に、支持フレーム13の上面に当接するようになっている。
【0028】
従って、ボルト51の先端がこの支持フレーム13の上面に当接することにより、下降位置が設定される。なお、この下降位置調整(下死点調整)は、ボルト51を回動操作することにより出退させて行なうことができる。
【0029】
また、支持フレーム13には、被加工シート部材Sが浮き上がるのを防止するストリッパ(図示省略)が適宜設けられている。
【0030】
次に、以上の構成からなるプレス成形装置1を使用する場合について説明する。
【0031】
かかるプレス成形装置1により、加工される被加工シート部材Sとしては、図8(a)に示すように、長尺状のプラスチックフィルム袋が採用される。かかるプラスチックフィルム袋Sは、2層に重ね合わされたプラスチックフィルム5からなり、プラスチックフィルム5同士は、所定の部分がヒートシール(熱溶着)されている。具体的には、プラスチックフィルム5の長手方向の両端縁5a、5aと、この両端縁5a、5aに連続するように等間隔おいて設けられた幅方向の分割部分5bとが、ヒートシールされている。なお、図8(a)において、ヒートシ−ルされた部分をハッチングで示している。
【0032】
このように、菓子や薬等の充填物が適宜充填された袋領域5cを形成するように、両層のプラスチックフィルム5同士の両端縁5a、5aおよび分割部分5bがヒートシールされている。
【0033】
かかる被加工シート部材Sを、ダイ25上に載置するように、図示省略の移送手段により、間欠的に移送する。なお、切刃24は、この被加工シート部材Sの移送方向(図8(a)に示す矢印方向と同方向を向いている。被加工シート部材Sは、分割部分5bが刃型2による所定加工位置に到達したときに停止する。具体的には、上死点位置にあるピン20と、ダイ25との間に分割部分5bが到達したときに、被加工シート部材Sは所定時間停止する。
【0034】
次に、駆動手段がピンホルダ3を下降させる。このピンホルダ3とともにピン20も下降する。ピン20のパンチ23の打抜刃23aが、ダイ25の貫通孔26を通過することにより(パンチ23とダイ25との協働により)、被加工シート部材Sの分割部分5bを下方に打ち抜くこととなる。打ち抜かれたカス片S1は、ダイ25から下方へ取り除かれる(図7(a)および(b)参照)。
【0035】
一方、切刃24は、被加工シート部材Sの打ち抜かれた円形の開口(打抜孔)5dから直径方向に連続する切り込み5eを形成する。切刃24は、切刃部24aの刃先が、ダイ25の逃がし凹部25dに入り込むため、被加工シート部材Sを通過して、切り込み5eを確実に形成することができる。この結果、被加工シート部材Sには、円形の打抜孔5dと、この打抜孔5dから直径方向に延設された切り込み5eとが、ピン20が下降動作する同一工程で形成される。
【0036】
かかる加工が終了すると、ピンホルダ3が上昇する。このピンホルダ3とともにピン20も上昇し、ピン20が上死点位置に復帰する。
【0037】
さらに、被加工シート部材Sが間欠送りされると、前記同様にピン20が昇降動作し、各分割部分5bに、打抜孔5dと切り込み5eとが順次形成される(図8(b)参照)。
【0038】
次に、被加工シート部材Sの分割部分5bの中央Cが、順次カットされ、袋55が形成される(図9参照)。この結果、袋55は、分割部分5bの打抜孔5dの中心でカットされるため、見やすい半円状の切り欠き5fと、この切り欠き5fから連続する線状の引き裂きやすい切り込み5eとからノッチ56が形成される。
【0039】
以上のように、本発明の実施形態の刃型2は、ピン20のピン本体22およびパンチ23に交差させて切刃24を設けている構成であるので、構造が簡単となる。しかも、パンチ23による打ち抜き加工と、切刃24による切り込み加工とを同一工程で行なえるため、被加工シート部材Sへのノッチ形成工程を減少でき、それぞれの加工を行なう場合に比し、スペースの減少を図ることができる。
【0040】
さらに、この刃型2を使用することにより、切り欠き5fと切り込み5eとからなるノッチ56を、袋55の縁部に形成することができる。しかも、刃型2は、パンチ23で打ち抜いた開口5d縁に連続して切り込み5eを確実に形成することができ、打ち抜き加工により形成されたノッチと、切り込み加工により形成されたノッチとの位置合わせが確実になり、ノッチ加工精度を向上することが可能となる。
【0041】
本実施の形態は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、被加工シート部材Sにおける切り込み5eは、切刃24が被加工シート部材Sを貫通するフルカット以外に、上層のプラスチックフィルム5のみを切り込むハーフカットでもよい。すなわち、パンチ23で被加工シート部材Sを打ち抜くとともに、切刃24にて下層のプラスチックフィルム5を残して上層のプラスチックフィルム5のみを切断してもよい。かかる場合には、ダイ25に逃がし凹部25dを必ずしも設ける必要はない。
【0042】
また、図8(b)および図9に仮想線で示すように、ノッチ56を形成する位置も任意に設定可能である。例えば、被加工シート部材Sの長手方向の両端縁5a、5aに、ノッチ56を形成する場合には、刃型2を下降させた際に、かかるノッチ56を直接に形成することも可能である。
【0043】
また、本実施の形態におけるノッチ56の形状パターンは、特に限定されるものではない。例えば、図10に示すように、切り欠き5fの形状はV形であってもよい。かかる場合には、パンチ23の断面形状を菱形に形成する。このように、パンチ23の形状を任意に設置することにより、容易に任意のノッチ56の形状パターンを設定することができる。
【0044】
図11および図12に、ピン20の他の実施形態を示す。図11に示すピン20は、切刃24が、フルカット用の切刃部24aと、ハーフカット用の切刃部24bとを備えたものである。ハーフカット用の切刃部24bの刃元(上端)から刃先までの寸法は、フルカット用の切刃部24aの刃元から刃先までの寸法に比し、被加工シート部材Sの厚さに応じて若干短く設定されている。
【0045】
図12(a)および(b)に示すピン20は、切刃24の切刃部24aを、不連続(ミシン目)に形成したものである。かかる切刃24は、切り込み5eをミシン目に形成することができる。
【0046】
図13に、切刃24の他の実施形態を例示する。(a)および(b)は、真円のパンチ23を例示する。(c)および(d)は、亀甲のパンチ23を例示する。(e)および(f)は、菱形のパンチ23を例示する。(g)〜(i)は、三角形状のパンチ23を例示する。(j)〜(l)は、楕円形のパンチ23を例示する。(m)および(n)は、一方が楕円形で、他方が三角形に形成されたパンチ23を例示する。
【0047】
また、刃型2は単数に限らず、複数個の刃型2を併設することにより、ノッチ56の個数も任意に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 プレス成形装置
2 刃型
3 ピンホルダ
5e 切り込み
5f 切り欠き
20 ピン(オス刃型)
22 ピン本体
22a 位置決め突起
23 パンチ
23a 打抜刃
24 切刃
24a 切刃部
25 ダイ(メス刃型)
25d 逃がし凹部
55 袋
56 ノッチ
S 被加工シート部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オス刃型とメス刃型とが協働して、被加工シート部材に開封用のノッチを形成するための加工を行なう刃型であって、
前記オス刃型は、前記被加工シート部材を打ち抜くパンチと、該パンチから外側に突出するように設けられ且つ前記パンチで打ち抜かれた前記被加工シート部材の開口縁に連続して切り込みを形成する切刃とを備えたことを特徴とする刃型。
【請求項2】
前記請求項1に記載の刃型において、前記メス刃型の表面には、前記切刃の刃先が入り込む逃がし凹部が設けられたことを特徴とする刃型。
【請求項1】
オス刃型とメス刃型とが協働して、被加工シート部材に開封用のノッチを形成するための加工を行なう刃型であって、
前記オス刃型は、前記被加工シート部材を打ち抜くパンチと、該パンチから外側に突出するように設けられ且つ前記パンチで打ち抜かれた前記被加工シート部材の開口縁に連続して切り込みを形成する切刃とを備えたことを特徴とする刃型。
【請求項2】
前記請求項1に記載の刃型において、前記メス刃型の表面には、前記切刃の刃先が入り込む逃がし凹部が設けられたことを特徴とする刃型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−59829(P2013−59829A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200417(P2011−200417)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(391002568)株式会社塚谷刃物製作所 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(391002568)株式会社塚谷刃物製作所 (14)
【Fターム(参考)】
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