説明

分光器

【課題】 本発明の目的は、波長分解能とともに空間分解能も高い分光器を提供することにある。
【解決手段】 入射スリット12と、入射スリットを通った光を平行光とするコリメータレンズ光学系14と、平行光を受けて波長に応じて異なる角度へ光を出力する反射型回折格子16と、回折格子からの出力光を集光する集光レンズ光学系14と、集光レンズ光学系で集光された光を検出する二次元受光面を有する二次元受光手段16とを備える。コリメータレンズ光学系の光軸と前記集光レンズ光学系の光軸との成す角2γを鋭角に、集光レンズ光学系と回折格子と距離が、コリメータレンズ光学系と回折格子との距離よりも近くなるように配置され、回折格子の反射面の中央部の法線ベクトルが、コリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸とがなす角の二等分線に対し、コリメータレンズ光学系の配置側に向くよう設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリクロメータ型の分光器、特にその空間分解能の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
分光器は紫外領域から可視光領域の光を広く分光しようとするために、集光光学系としてミラーが使われている。しかしながら、従来型のミラー光学系の分光器には、(1)受光面の中心と周辺とでの結像性が異なり、周辺の性能が悪い、(2)開口比が悪い、などの欠点があった。また、レンズは紫外領域の測定ができなくなるという理由で使われないことが多く、一般にはミラーを改良してより高い空間分解能を得ようとする努力が行われ、トロイダル鏡などが開発されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−42846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、光ファイバをポリクロメータの入射スリットに一列に並べ、各光ファイバからの光をそれぞれ回折格子によって分散させ、二次元検出器の受光面上に結像させることで、多数の点のスペクトルを同時に測定するといったことが行われている。しかしながら、上記のように従来の分光器では空間分解能が低く、スリット方向の像の広がりのため、各光ファイバからの光の像が重なってしまうという問題点があった。また、トロイダル鏡などを用いて上記の非点収差を修正する分光器でも製造にコストがかかり、また性能的にも満足のいくものではなかった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、波長分解能とともに空間分解能も高い分光器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、集光光学系として従来一般に使用されているミラー光学系でなく、レンズ光学系を使用し、その光学配置を検討することによって、高い空間分解能を得ることに成功した。
つまり、本発明の分光器は、入射スリットと、該入射スリットを通った光を平行光とするコリメータレンズ光学系と、該平行光を受けて、波長に応じて異なる角度へ光を出力する回折格子と、該回折格子からの出力光を集光する集光レンズ光学系と、該集光レンズ光学系で集光された光を検出する二次元受光面を有する二次元受光手段と、を備え、前記コリメータレンズ光学系の光軸と前記集光レンズ光学系の光軸との成す角2γが鋭角となるよう配置され、前記集光レンズ光学系は、前記回折格子との距離が、前記コリメータレンズ光学系と回折格子との距離よりも近くなるように配置され、前記回折格子は、反射型の回折格子であって、該反射面の中央部の法線ベクトルが、前記コリメータレンズ光学系の光軸と前記集光レンズ光学系の光軸とがなす角の二等分線に対し、コリメータレンズ光学系の配置側に向くよう設定されることを特徴とする。そして、入射スリットを通った光を前記回折格子により分散させ、前記二次元受光手段の受光面上にスリットの分散光像を結像させることでスリット方向に沿った各点のスペクトルを測定する。
【0005】
ただし、ここで集光レンズ光学系と回折格子との距離とは、集光レンズ光学系を構成するレンズのうち回折格子に最も距離が近いものの入射側の光学面と集光レンズ光学系の光軸とが交わる点と、集光レンズ光学系の光軸と回折格子の反射面とが交わる点との距離のこととして定義する。同様にコリメータレンズ光学系と回折格子との距離とは、コリメータレンズ光学系を構成するレンズのうち回折格子に最も距離が近いものの出射側の光学面とコリメータレンズ光学系の光軸とが交わる点と、コリメータレンズ光学系の光軸と回折格子の反射面とが交わる点との距離のこととして定義する。
さらに、集光レンズ光学系の光軸とコリメータレンズ光学系の光軸とのなす角とは、コリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸との交点を始点として集光レンズ光学系へと向う光軸からなる半直線と、前記交点を始点としてコリメータレンズ光学系へと向う光軸からなる半直線とのなす劣角として定義する。
【0006】
同様に法線ベクトルと、前記二等分線(前記コリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸とが成す角を二等分する半直線)とがなす角とは、前記交点(コリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸との交点)を法線ベクトルの始点とし、該法線ベクトルの終点側へ向う半直線を考え、該半直線と、前記交点(コリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸との交点)を始点とした前記二等分線とがなす角として定義する。そして、上記法線ベクトルの方向とは、該法線ベクトルの始点を前記交点(コリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸との交点)に固定したときに、該法線べクトルの終点の位置によって定義する。また、法線ベクトルが前記二等分線に対して、コリメータレンズ光学系の配置側へ向う方向とは、前記二等分線を延長して直線とし、該直線(を含み前記スリット方向に平行な平面)によって区切られた2つの領域のうちコリメータレンズ光学系が配置された領域に、前記法線ベクトルの終点があることをいう。
【0007】
上記の分光器において、前記コリメータレンズ光学系の光軸と前記集光レンズ光学系の光軸との成す角2γが20°≦2γ≦40°となるよう配置し、さらに前記二等分線と前記回折格子の法線ベクトルとのなす角θが5°≦θ≦45°の範囲となるよう設定されることが好適である。
上記の分光器において、前記二等分線と前記回折格子の法線ベクトルとのなす角θが、θ>γとなるよう設定されることが好適である。
上記の分光器において、前記入射スリットに沿って一列に配置された複数の光ファイバを備え、各光ファイバからの光を前記入射スリットから入射させて前記回折格子により分散させ、前記二次元受光手段の受光面上に各光ファイバからの分散光像を結像させ、各光ファイバごとに独立してスペクトルを測定することが好適である。
【0008】
上記の分光器において、前記複数の光ファイバとして、光ファイババンドルを用い、該光ファイババンドルの出射側端部では前記入射スリットに沿って複数の光ファイバ出射側端部が一列に配置され、入射側端部では二次元状に光ファイバ入射側端部が配置され、測定対象面からの光を前記光ファイババンドルの入射側端面で受けることにより前記測定対象面のマッピング測定を行うことが好適である。
上記の分光器において、前記スリット方向に整列される複数の光ファイバは、隣接する各光ファイバのコア間の最短距離が、0.025mm〜0.1mmとなるように配置されることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、集光光学系およびコリメータ光学系をレンズにて構成し、さらにコリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸との成す角2γを鋭角とし、集光レンズ光学系と回折格子との距離を、コリメータレンズ光学系と回折格子との距離よりも近くなるように配置し、回折格子は、反射型の回折格子であって、該反射面の中央部の法線ベクトルが、コリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸とがなす角の二等分線に対し、コリメータレンズ光学系の配置側に向くよう設定されているため、高い空間分解能および波長分解能を有する分光器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる分光器10の概略構成図である。分光器10は、入射スリット12と、コリメータレンズ光学系14と、反射型の平面回折格子16と、集光レンズ光学系18と、二次元受光手段20とを備える。入射スリット12から入射した光は、コリメータレンズ光学系14により平行光とされる。回折格子16ではこの平行光を受け、波長に応じて異なる角度へ光を出力する。回折格子16からの出力光は集光レンズ光学系18により集光され、二次元受光手段20の二次元受光面上に結像する。二次元受光手段20はCCD検出器などの二次元検出器で構成されており、受光面上で入射スリットに対応する方向に対して垂直な方向が回折格子16による分散方向となる。よって、スリット方向に沿った各点のスペクトルが同時に測定できる(図4参照)。また、二次元受光手段20での検出信号は、コンピュータ等で構成されるデータ処理手段28に送られ、適切な信号処理、データの記憶などが行われる。
また、図1ではコリメータレンズ光学系14、集光レンズ光学系18は一つのレンズとして示されているが、実際は複数のレンズを組み合わせて収差を補償した光学系で構成されている(図2参照)。このため、従来のミラー系で構成した分光器と異なり、スリット方向に沿った像の広がりが抑えられる。
【0011】
次に主な光学部材の配置関係について、図2を参照して説明する。本実施形態では集光レンズ光学系18をコリメータレンズ光学系14よりも回折格子16に近づけて設置しており、非対称な光学配置としている。つまり、集光レンズ光学系18を、コリメータレンズ光学系14からの平行光を遮らない程度に、ぎりぎりまで回折格子16に近づけて配置している。このように集光レンズ光学系18を配置することで、回折格子16からの出力光の光束を効率よく集光することができる。つまり、測定する波長範囲の分散光を全て拾い、また集光レンズ光学系18の真中を通る光と、端を通る光とに対して、二次元受光手段20での受光効率ができるだけ等しくなるように構成されている。このため、良好なスペクトル分解能を得ることができる。
【0012】
ただし、ここで集光レンズ光学系18と回折格子16との距離とは、集光レンズ光学系18を構成するレンズのうち回折格子16に最も距離が近いものの入射側の光学面と集光レンズ光学系の光軸とが交わる点Cと、集光レンズ光学系18の光軸と回折格子16の反射面とが交わる点Bとの距離のこととして定義する。同様にコリメータレンズ光学系14と回折格子16との距離とは、コリメータレンズ光学系16を構成するレンズのうち回折格子と最も距離が近いものの出射側の光学面とコリメータレンズ光学系14の光軸とが交わる点Aと、コリメータレンズ光学系14の光軸と回折格子16の反射面とが交わる点B点との距離のこととして定義する。
また、コリメータレンズ光学系14の光軸と、集光レンズ光学系18の光軸とがなす角2γをできるだけ小さくとる(少なくとも鋭角になるようにとる)ことで、収差を抑えるよう構成されている。収差が抑えられることにより、波長分解能とともに、スリット方向の空間分解能も向上する。
【0013】
回折格子16は、回折格子ホルダ22(図1参照)によって保持されており、回折格子16の反射面の向きを変更可能に構成されている。この回折格子16の反射面中央部の法線ベクトル(ベクトルの方向は反射面から外側へ向う向きとする)が、コリメータレンズ光学系14の光軸と集光レンズ光学系18の光軸とがなす角の二等分線(図2中の破線)に対し、コリメータレンズ光学系14の配置側(光が入射してくる方向側)に向くよう設定する。こうすることで、回折格子16からの出力光束の幅を、狭くすることができる。そのため、集光レンズ光学系18は測定する波長範囲の光を、回折格子からの出力角度によらず略一定の効率で集光することができる。つまり、集光レンズ光学系18の真中を通る光と、端を通る光とに対して、二次元受光手段20での受光効率ができるだけ等しくなるように構成されているため、良好な波長分解能を達成することができる。また、上記の二等分線と回折格子16の法線ベクトルとのなす角θが、θ>γとなる(つまり、法線ベクトルの向きが、コリメータレンズ光学系の光軸に対し、集光レンズ光学系の配置側の逆側を向く)ように設定することがさらに好適である。こうすることで、二次元検出器の受光面全体にわたり、より明瞭に結像像を得ることができる。
【0014】
具体的には、コリメータレンズ光学系の光軸と集光レンズ光学系の光軸とがなす角2γは、好適には20°〜40°、さらに好適には20°〜30°であることが望ましい。さらに、回折格子16の反射面の法線ベクトルと、前記二等分線(集光レンズ光学系18の光軸とコリメータレンズ光学系14の光軸とがなす角の二等分線)とがなす角θは、好適には5°≦θ≦45°、さらに好適には15°≦θ≦35°に設定されることが望ましい。
【0015】
本明細書では、集光レンズ光学系18の光軸とコリメータレンズ光学系14の光軸とのなす角とは、コリメータレンズ光学系14の光軸と集光レンズ光学系18の光軸との交点Bを始点として集光レンズ光学系18へと向う光軸からなる半直線と、交点Bを始点としてコリメータレンズ光学系14へと向う光軸からなる半直線とのなす劣角として定義されている。同様に法線ベクトルと、図2中の破線で示した二等分線(コリメータレンズ光学系14の光軸と集光レンズ光学系18の光軸とが成す角を二等分する半直線)とがなす角とは、交点Bを法線ベクトルの始点とし、該法線ベクトルの終点側へ向う半直線を考え、該半直線と、交点Bを始点とした前記二等分線とがなす角として定義する。また、法線ベクトルの方向とは、該法線ベクトルの始点を交点Bに固定したときに、該法線べクトルの終点の位置によって定義する。例えば、法線ベクトルが前記二等分線に対してコリメータレンズ光学系14の配置側へ向う方向とは、前記二等分線を延長して直線とし、該直線を含みスリット方向(紙面に垂直な方向)に平行な平面によって区切られた2つの領域のうちコリメータレンズ光学系14が配置された領域に、前記法線ベクトルの終点があることをいう。また、上記の角度は図中反時計周りに測る。
【0016】
以上のようにコリメータ光学系、集光光学系をレンズを用いて構成することにより、良好に非点収差、コマ収差、球面収差等を取り除くことができスリット方向に沿った高い空間分解能を得ることができる。また上記のように光学配置をした結果、スリット方向の空間分解能のみならず、波長分解能も高くすることができた。具体的には、本実施形態の分光器によって、焦点距離40cmにおいてF値2.8を達成することができた。これは同程度の焦点距離をもつ従来の分光器に比べ、4倍程明るいことになる。
【0017】
以上が本実施形態の概略構成であり、以下により好適な実施形態について説明する。
図1に示した実施形態の分光器10はさらに入射スリット12へ光を導光する複数の光ファイバ26を保持する光ファイバホルダ24を備えている。図3に示すように、光ファイバホルダ24によって、複数の光ファイバ26−1〜26−nの出射側端面が、入射スリット12の前段にスリット12に沿って一列に配置されるよう保持されている。ここで、図3(a)が入射スリット側(出射側端面)から見た図、同図(b)が入射スリットの側面側から見た図である。
【0018】
各光ファイバ26−1〜26−nは、図3(b)のP−1〜P−nで示された測定点からの光を入射側端面に入射させ、それらの光を入射スリット12へ導く。そして、図1に示したように、入射スリット12を通過した光は、コリメータレンズ光学系14、回折格子16、集光レンズ光学系18を経て、二次元受光手段20の受光面に結像する。図4に示すように、二次元受光手段20の受光面の一方向は、回折格子16による光の分散方向に対応し、もう一方は光ファイバ26−1〜26−nの整列方向(スリット方向)に対応している。つまり、各光ファイバ26−1〜26−nからの光を独立して回折格子16で分散させ、二次元受光手段の受光面上に各光ファイバの分散光像として結像させることで、光ファイバ26−1〜26−nごとに独立してスペクトル測定を行う。このように分散方向と直角な方向には、各ファイバからの分散光像が並ぶため、これらを一度に検出することで、多数の点(図3のP−1〜P−n)での同時スペクトル測定を行うことができる。
【0019】
本実施形態の分光器によれば、クラッド径がφ0.25mm、コア径がφ0.2mmの光ファイバを100本、スリット(スリットの長さ:30mm)に沿って並べても、各光ファイバ間のクロストークが起こらず、100個のスペクトルを同時に測定することができた。このように、導光路であるコア間の最短距離(図3(a)のY)が0.025mm〜0.1mm(言い換えると、隣接する光ファイバのコアの中心間の距離Xがr+r’+0.025mm〜r+r’+0.1mm、ここで2r、2r’はそれぞれ隣接するコアの直径)となるよう配置することが好適である。このように、コア間を近接させた場合にも、各光ファイバ間のクロストークなしに、各光ファイバからの光のスペクトルの同時測定を行うことができる。
【0020】
実際に、上記の実施形態の分光器(焦点距離:100mm)に対して、Hgランプからの光を測定光として試験を行った。図5〜7がその結果である。光ファイバは、コア径φ0.2mm、クラッド径φ0.25mmのもの10本(ただし、そのうちの一本には光を通していない)を隣接させて用いた。つまり、隣接するコア間の距離は約0.05mmである。図5は、Hgランプの435.84nm線の測定を行ったときの、CCD検出器(受光面1024×1024ピクセル、1ピクセルのサイズ13μm×13μm)で検出した画像データである。また、図6は、Hgランプの435.84nm線のスペクトル(ただし、スリット幅を10μmとした)である。また、図7は546.07nm、576.96nm、579.07nm線の測定を行ったときの、CCD検出器(受光面1024×256ピクセル、1ピクセルのサイズ26μm×26μm)にて検出した画像データである。これらのデータから明らかなように、隣接する光ファイバから出射された光が混じることなく受光面上に結像されていることが分かる。また、波長分解能に関しても良好な結果が得られていることが分かる。
【0021】
スリットの長さ、検出器の受光面の大きさには限度があるため、このように高い密度で光ファイバを整列できることは、多数の点からの光のスペクトルの同時測定を行うために必須である。従来の分光器の場合、コア間の距離を上記のように近接させると光ファイバ間のクロストークが起こってしまい、本実施形態の分光器の半分以下しか実際の導光路として用いることができなかった。しかしながら、本実施形態の分光器によれば各コア間を近接してもクロストークが起こらないため、同じ大きさの分光器で比較して従来のものより多くの光ファイバを用いることができ、より多くの点に対して同時にスペクトル測定を行うことができる。
また、光ファイバを用いた構成では可視光領域の測定を行うことを目的としている。そのため、レンズを使用することで紫外光を除去することができ、その結果、測定波長領域以外の迷光をカットすることができるという利点もある。
【0022】
さらに、図8、9に、上記の装置構成を用いて、大型ヘリカル装置のプラズマを計測対象として測定を行ったときの測定結果を示す。ここでは、100本の光ファイバを25個のグループに分けて25の測定点での同時スペクトル測定を行い、また各グループの4本の光ファイバはそれぞれ異なる透過軸θ(0°、90°、45°、135°)に配置された偏光子を通して同一地点からの測定光を受光するように構成した。また、分光器は焦点距離が40cm、F値が2.8であり、二次元検出器として1340×1300ピクセルのCCD検出器を使用した。図8は、CCD検出器による結像画像データの一部を示しており、図9は、得られた多数の測定点のスペクトルデータのうちの一部を示している。このように、多数のスペクトル同時測定において良好な結果を得ることができた。
【0023】
次に図1に示した分光器で測定対象面のマッピング測定を行う場合の実施形態について説明する。
図10に示すように、入射スリット12に光を導光する光ファイバとして、複数の光ファイバ32−1〜32−nを束ねた光ファイババンドル30を用いている。ただし、入射スリット12前段に設置される出射側端面は、スリット上に一列に配置された形で光ファイバが束ねられており、測定対象面側に設置される入射側端面は二次元状に束ねられている。そして、各光ファイバ32−1〜32−nは、そられに対応する測定対象面の各点からの光を入射側端面で受けて、それぞれ入射スリット12にまで導光している。
【0024】
各光ファイバ32−1〜32−nの出射側端面から入射スリット20に出射された光は、上記同様それぞれ回折格子によってスペクトル分解されて二次元受光手段によってスペクトル測定がなされる。つまり、各光ファイバ32−1〜32−nからの光は、それぞれ図10に示した測定対象面のA−1〜A−n位置からの光に対応しており、これらの位置からの光を同時にスペクトル測定することになる。データ処理手段において測定対象面での測定位置情報(各光ファイバに対応)と、その点でのスペクトルデータとを対応して記憶することでマッピング測定を行うことができる。
本実施形態の分光器によれば、従来の分光器に比べ、スリット方向に沿った空間分解能が高いため、測定対象面の各点からの光が混じることなく測定できる。その結果、高い分解能でのマッピング測定を達成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかる分光器の概略構成図
【図2】図1の実施形態にかかる分光器の光学配置の説明図
【図3】複数の光ファイバの設置の説明図
【図4】受光面上に結像した光ファイバからの光像の説明図
【図5】本発明の実施形態にかかる分光器の試験測定のデータ(CCD画像)
【図6】本発明の実施形態にかかる分光器の試験測定のデータ(スペクトルデータ)
【図7】本発明の実施形態にかかる分光器の試験測定のデータ(CCD画像)
【図8】本発明の実施形態にかかる分光器を用いた測定結果(CCD画像)を示す図
【図9】本発明の実施形態にかかる分光器を用いた測定結果(スペクトルデータ)を示す図
【図10】光ファイババンドルを用いたマッピング測定の説明図
【符号の説明】
【0026】
10 分光器
12 入射スリット
14 コリメータレンズ光学系
16 回折格子
18 集光レンズ光学系
20 二次元受光手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射スリットと、該入射スリットを通った光を平行光とするコリメータレンズ光学系と、該平行光を受けて、波長に応じて異なる角度へ光を出力する回折格子と、該回折格子からの出力光を集光する集光レンズ光学系と、該集光レンズ光学系で集光された光を検出する二次元受光面を有する二次元受光手段と、を備え、
前記コリメータレンズ光学系の光軸と前記集光レンズ光学系の光軸との成す角2γが鋭角となるよう配置され、
前記集光レンズ光学系は、前記回折格子との距離が、前記コリメータレンズ光学系と回折格子との距離よりも近くなるように配置され、
前記回折格子は、反射型の回折格子であって、該反射面の中央部の法線ベクトルが、前記コリメータレンズ光学系の光軸と前記集光レンズ光学系の光軸とがなす角の二等分線に対し、コリメータレンズ光学系の配置側に向くよう設定され、
入射スリットを通った光を前記回折格子により分散させ、前記二次元受光手段の受光面上にスリットの分散光像を結像させることでスリット方向に沿った各点のスペクトルを測定することを特徴とする分光器。
【請求項2】
請求項1記載の分光器において、
前記コリメータレンズ光学系の光軸と前記集光レンズ光学系の光軸との成す角2γが20°≦2γ≦40°となるよう配置し、さらに前記二等分線と前記回折格子の法線ベクトルとのなす角θが5°≦θ≦45°の範囲となるよう設定されることを特徴とする分光器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分光器において、
前記二等分線と前記回折格子の法線ベクトルとのなす角θが、θ>γとなるよう設定されることを特徴とする分光器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の分光器において、
前記入射スリットに沿って一列に配置された複数の光ファイバを備え、各光ファイバからの光を前記入射スリットから入射させて前記回折格子により分散させ、前記二次元受光手段の受光面上に各光ファイバからの分散光像を結像させ、各光ファイバごとに独立してスペクトルを測定することを特徴とする分光器。
【請求項5】
請求項4に記載の分光器において、
前記複数の光ファイバとして、光ファイババンドルを用い、該光ファイババンドルの出射側端部では前記入射スリットに沿って複数の光ファイバ出射側端部が一列に配置され、入射側端部では二次元状に光ファイバ入射側端部が配置され、測定対象面からの光を前記光ファイババンドルの入射側端面で受けることにより前記測定対象面のマッピング測定を行うことを特徴とする分光器。
【請求項6】
請求項4または5のいずれかに記載の分光器において、
前記スリット方向に整列される複数の光ファイバは、隣接する各光ファイバのコア間の最短距離が、0.025mm〜0.1mmとなるように配置されたことを特徴とする分光器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−162509(P2006−162509A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356640(P2004−356640)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【出願人】(501194123)分光計器株式会社 (6)
【Fターム(参考)】