説明

分光検出装置

【課題】この発明は、1つの検出部を用いて異なる波長帯域の光を選択的に検出でき、装置コストを低減でき、装置を小型化できる分光検出装置を提供することを課題とする。
【解決手段】郵便物Pに貼り付けられた料額印を検出する検出装置1は、搬送路2に対向した先端面を有する筐体1aを有する。筐体1a内には、光源11が設けられ、照射窓12を介して搬送路2を搬送される郵便物Pに励起光が照射され、その発光が検出窓13を介して検出センサ15に入力される。検出センサ15の手前には、特定波長帯域の光の強度を選択的に低下させる分光フィルタ14が設けられ、判別部20で光の強度をしきい値と比較して料額印を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検出対象物に励起光を照射してその発光を検出する分光検出装置に係り、特に、郵便物の料額印に励起光を照射してその発光を検出し、料額印を判別する分光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分光検出装置として、郵便物に貼り付けられた切手などの料額印に励起光を照射してその発光を赤色系の光と緑色系の光に分光し、それぞれの光を対応する受光器でそれぞれ受光して処理する切手検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この切手検知装置では、例えば、赤色系の切手を検知して速達郵便物を判別している。
【0003】
しかし、この種の切手検知装置では、分光した2系統の光をそれぞれ伝達する複数の光学部材、およびそれぞれの光を処理する処理回路を必要とし、その分、装置が高価になるとともに、装置構成が大型化する問題がある。
【特許文献1】特開平2−6885号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、1つの検出部を用いて異なる波長帯域の光を選択的に検出でき、装置コストを低減でき、装置を小型化できる分光検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の分光検出装置は、検出対象物を有する媒体を搬送する搬送路と、この搬送路を介して搬送される媒体の上記検出対象物に励起光を照射する光源と、上記検出対象物からの発光を検出する単一の検出部と、上記搬送路と検出部との間に設けられ、透過する特定波長帯域の光の強度を選択的に低下させるフィルタと、このフィルタを介して上記検出部で検出した光の強度に基づいて当該検出対象物を判別する判別部と、を有する。
【0006】
上記発明によると、特定波長帯域の光の強度を選択的に低下させるフィルタを介して単一の検出部で検出対象物からの発光を検出し、検出した光の強度に基づいて検出対象物を判別するようにした。このため、例えば、分光した2系統の光をそれぞれ伝達する光学部材、および2系統の光をそれぞれ処理する処理回路が不要となり、装置構成を簡略化でき、装置コストを低減でき、装置を小型化できる。
【発明の効果】
【0007】
この発明の分光検出装置は、上記のような構成および作用を有しているので、1つの検出部を用いて異なる波長帯域の光を選択的に検出でき、装置コストを低減でき、装置を小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1には、この発明の実施の形態に係る分光検出装置1(以下、単に検出装置1と称する)を備えた郵便物処理装置10(以下、単に処理装置10と称する)の概略図を示してある。また、図2には、検出装置1の概略図を示してある。
【0009】
検出装置1は、処理対象となる郵便物P(媒体)に貼り付けられた切手などの料額印を検出する。処理装置10は、検出装置1で検出した料額印に消印を押印するとともに郵便物Pの方向を取り揃えて集積する。特に、本実施の形態の検出装置1を備えた処理装置10は、発光する料額印、すなわち燐光発光切手やプレ印刷された燐光バーを検出し、その発光色を検出して速達郵便物と普通郵便物に区分する。
【0010】
すなわち、普通郵便物に貼り付けられる料額印には、緑色の分光帯域を有する可視光を発光する特性を有する燐光成分が含まれており、速達郵便物に貼り付けられる料額印には、赤色の分光帯域を有する可視光を発光する特性を有する燐光成分が含まれている。このため、料額印から緑色の発光を検出した郵便物を普通郵便物と判別でき、赤色の発光を検出した郵便物を速達郵便物と判別できる。
【0011】
図1に示すように、処理装置10は、処理対象となる郵便物Pを矢印T方向に搬送する搬送路2を有し、この搬送路2の両側に図2に示す検出装置1をそれぞれ有する。各検出装置1は、搬送路2を介して搬送される郵便物Pの表側に付与された料額印および裏側に付与された料額印をそれぞれ検出する。なお、搬送路2を挟んで設けられた2つの検出装置1は同じ構造を有するため、ここでは一方の検出装置1についてのみ説明する。
【0012】
搬送方向Tに沿って検出装置1の下流側の搬送路2の途中には、正転/反転部3が設けられている。正転/反転部3は、検出装置1で検出した料額印の位置に応じて郵便物Pを選択的に表裏反転させ、搬送方向を横切る方向(幅方向)の搬送路2の一側(下端側)に料額印が揃うように全ての郵便物Pの搬送姿勢を揃える。
【0013】
正転/反転部3より搬送方向下流側には、正転/反転部3で搬送路2の幅方向一側に揃えられた料額印に消印を押印する消印部4が設けられている。また、消印部4の下流側で搬送路2の終端には、区分集積部5が設けられている。区分集積部5は、検出装置1で検出した料額印の種類、すなわち料金によって、普通郵便物と速達郵便物を区分して集積する。また、区分集積部5は、郵便物Pの形状や種類によって郵便物Pを区分する複数の集積部を有する。
【0014】
図2に示すように、検出装置1は、搬送路2に近接対向した先端面を有する筐体1aを有する。筐体1a内には、搬送路2を介して図中矢印T方向に搬送される郵便物Pの図示しない料額印に励起光を照射するための光源11が設けられている。光源11からの励起光は、励起光の照射位置で搬送路2に対向して筐体1aの先端面に面一に設けられた例えばガラス板からなる照射窓12を介して、搬送路2を搬送される郵便物Pの料額印に照射される。
【0015】
また、筐体1aが搬送路2に対向した先端面には、励起光の照射により郵便物Pから励起発光された光(本実施の形態では燐光)を筐体1a内に配置された分光フィルタ14(フィルタ)を介して検出センサ15(検出部)に導くための例えばガラス板からなる検出窓13が設けられている。本実施の形態では、検出対象物としての料額印が燐光成分を含むため、料額印に励起光を照射した後、その照射位置から検出位置まで郵便物が搬送され、この検出位置で燐光成分が発光する残光を検出することになる。このため、残光を導く検出窓13は、郵便物Pの搬送方向に沿って照射窓12の下流側に離間した位置に設けられている。
【0016】
また、光源11の周囲には、遮光部材としてのケース11aが設けられている。ケース11aは、光源11からの励起光が料額印からの発光に干渉しないよう、励起光を遮光する位置に設けられている。これにより、検出窓13を介して検出される料額印からの発光を高いS/N比で検出できる。
【0017】
また、搬送路2を挟んで筐体1aの先端面に対向する位置には、郵便物Pを照射窓12および検出窓13に押し付けつつ郵便物Pを搬送する方向に回転するスポンジローラ16(弾性ローラ)が設けられている。スポンジローラ16は、照射窓12と検出窓13との間に配置され、検出窓13の搬送方向と直交する幅方向に沿った検出領域長を少なくとも超える軸方向長さを有する。つまり、照射窓12と検出窓13の間で検出領域を超える長さのスポンジローラ16を筐体1aの先端面に押し付けるように配置することで、照射窓12から搬送路2を介して検出窓に回り込む励起光を遮光できる。
【0018】
また、検出窓13と検出センサ15との間に設けられた分光フィルタ14は、例えば、図3に太線で示すような光の透過特性Aを有し、特定波長帯域の光の強度を選択的に低下させる機能を有する。本実施の形態では、検出対象物としての料額印が緑色の燐光を発光する普通郵便物、および赤色の燐光を発光する速達郵便物を取り扱うため、これら2種類の郵便物を判別可能なように、一方の波長帯域、例えば、波長が比較的長い分光帯域の赤色光の強度を選択的に低下させる特性を有する分光フィルタ14を取り付けた。
【0019】
すなわち、この分光フィルタ14は、検出対象物の発光波長帯域に応じて交換可能となっており、検出対象物に合った特性を有するものが取り付けられる。例えば、図3に示す特性Aを有するフィルタの代わりに、図4に太線で示すように緑色光の強度を選択的に低下させる透過特性Bを有する分光フィルタ14を取り付けることでも、普通郵便物と速達郵便物を判別することができる。
【0020】
具体的には、判別部20は、検出センサ15を介して検出した料額印からの発光の強度を予め用意したしきい値と比較して料額印の種類を判別し、当該郵便物が普通郵便物であるか速達郵便物であるかを判別する。このとき、例えば、分光フィルタ14として図3に示す透過特性Aを有するフィルタを用いた場合、緑色の光を発光する料額印を貼り付けた普通郵便物が搬送路2を介して搬送されると、検出センサ15を介して検出される光の強度は低下されることがなく普通切手を判別するためのしきい値を超えるため、当該郵便物が普通郵便物であることが判別できる。逆に、赤色の光を発光する料額印を貼り付けた速達郵便物が搬送路2を介して搬送されると、検出センサ15を介して検出される光の強度が低下されて普通切手を判別するためのしきい値を下回るため、当該郵便物が速達郵便物であることが判別できる。
【0021】
なお、上述した説明では、分光フィルタ14を透過する前の普通切手からの緑色の光の発光強度と速達切手からの赤色の光の発光強度が略同じであるものと想定したが、両者の光強度が異なる場合であっても、上述した特性を有する分光フィルタ14を設けることで、より確実な判別基準を与えることができる。また、上述した普通切手を判別するための光強度のしきい値は、分光フィルタ14を用いたときに緑色光の発光強度と赤色光の発光強度を確実に判別可能な値に設定する必要がある。
【0022】
以上のように、本実施の形態によると、特定波長帯域の光の強度を選択的に低下させる分光フィルタ14を検出センサ15の手前に配置するだけで、単一の検出センサ15を用いて2種類の料額印を容易に判別でき、装置構成を簡略化でき、装置コストを低減でき、装置を小型化できる。
【0023】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0024】
例えば、上述した実施の形態では、2種類の料額印を判別する場合について説明したが、これに限らず、本願発明を実施することで3種類以上の異なる発光色を有する料額印を判別することもできる。この場合、例えば、図5に示すような光の透過特性を有する分光フィルタを検出センサ15の手前に配置すれば良い。
【0025】
また、上述した実施の形態では、特定波長帯域の光の強度を低下させる分光フィルタ14を透過した光を検出して検出対象物に固有のしきい値と比較することで検査対象物を判別する場合について説明したが、この判別基準に加え、検査対象物の画像情報を判別部20で取得し、料額印の判別に用いても良い。この場合、料額印に含まれる燐光物質は料額印の周縁部に沿って枠状に多く含まれているため、この枠状の領域からの燐光を検出するようにすれば良い。
【0026】
また、上述した実施の形態では、検査対象物に燐光物質が含まれる場合の検出方法について説明したが、これに限らず、検出対象物に蛍光物質が含まれる場合であっても本願発明を適用して検査対象物を検出できる。この場合、例えば、図6に示すように励起光の照射窓と蛍光の検出窓を1枚のガラス板30により形成し、励起光の照射によって励起発光される蛍光を同時に検出する構造を採用すればよい。
【0027】
さらに、上述した実施の形態では、検出センサ15の手前にだけ分光フィルタ14を設けたが、励起光を検出対象物に照射する照射窓12に光学フィルタを取り付けても良い。この場合、検出対象物の励起に有効な波長帯域の光だけを透過させる光学フィルタを取り付けることで、励起効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態に係る郵便物処理装置を示す概略図。
【図2】図1の処理装置に組み込まれた分光検出装置を示す概略図。
【図3】図2の検出装置に取り付ける分光フィルタの透過特性を示す線図。
【図4】分光フィルタの他の実施例の透過特性を示す線図。
【図5】透過する光の強度を3段階に低下させる特性を有する分光フィルタの例を示す線図。
【図6】蛍光物質を含む検出対象物を処理する検出装置の例を示す概略図。
【符号の説明】
【0029】
1…分光検出装置、2…搬送路、3…正転/反転部、4…消印部、5…区分集積部、10…郵便物処理装置、11…光源、12…照射窓、13…検出窓、14…分光フィルタ、15…検出センサ、16…スポンジローラ、20…判別部、21…、22…、23…、24…、25…、26…、27…、28…、29…、30…。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物を有する媒体を搬送する搬送路と、
この搬送路を介して搬送される媒体の上記検出対象物に励起光を照射する光源と、
上記検出対象物からの発光を検出する単一の検出部と、
上記搬送路と検出部との間に設けられ、透過する特定波長帯域の光の強度を選択的に低下させるフィルタと、
このフィルタを介して上記検出部で検出した光の強度に基づいて当該検出対象物を判別する判別部と、
を有することを特徴とする分光検出装置。
【請求項2】
上記検出対象物は、上記励起光の照射により固有の波長帯域の蛍光を発光する物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の分光検出装置。
【請求項3】
上記検出対象物は、上記励起光の照射により固有の波長帯域の燐光を発光する物質を含み、
上記検出部における上記発光の検出位置が上記光源からの励起光の照射位置より媒体の搬送方向下流側にあることを特徴とする請求項1に記載の分光検出装置。
【請求項4】
上記搬送路に対向して上記照射位置に設けられた照射窓と、
この照射窓より媒体の搬送方向下流側で、上記搬送路に対向して上記検出位置に設けられた検出窓と、
上記光源からの励起光が上記発光に干渉しないように遮光する遮光部材と、
をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の分光検出装置。
【請求項5】
上記照射窓と検出窓の間で且つ上記搬送路を挟んで上記照射窓および検出窓の反対側に設けられ、上記搬送路を介して搬送される媒体を上記照射窓および検出窓に押し付けつつ上記搬送方向に回転する弾性ローラをさらに有することを特徴とする請求項4に記載の分光検出装置。
【請求項6】
上記フィルタは、検出対象物の種類に応じて交換可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の分光検出装置。
【請求項7】
上記判別部は、上記検出部で検出した光強度を検出対象物に固有のしきい値と比較して検出対象物を判別することを特徴とする請求項1に記載の分光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−209851(P2007−209851A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29912(P2006−29912)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】