分光特性測定装置およびその校正方法ならびに分光特性測定システム
【課題】出荷前の校正がより正確に行われた分光特性測定装置を提供する。
【解決手段】分光特性測定装置100は、測定試料24に照明光を照射する照明部21と、照明光を照射された測定試料24からの放射光を波長に応じて分散させる分光部32と、分光部32により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部33と、照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された、受光素子の合成中心波長を記憶している記憶部43とを備えている。
【解決手段】分光特性測定装置100は、測定試料24に照明光を照射する照明部21と、照明光を照射された測定試料24からの放射光を波長に応じて分散させる分光部32と、分光部32により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部33と、照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された、受光素子の合成中心波長を記憶している記憶部43とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料の分光特性を測定する分光測色計などの分光特性測定装置およびその校正方法に関する。また、本発明は、分光測色計などを用いた分光特性測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、分光測色計等の分光特性測定器は一般に、400nm〜700nmあるいはこれより少し広い測定波長域に亘って、10nmまたは20nmの比較的広い半値幅および波長ピッチで分光測定を行う。分光特性測定器は、具体的には、光を波長ごとに分散させる分光部と、照射された光の強度に応じた電気信号を出力する、配列された複数の受光素子を有する受光部とを備えて構成される。そして、分光部により分散された波長ごとの光は、各受光素子に入射し、それらの光強度に応じた電気信号が各受光素子から出力される。
【0003】
ここで、分光特性測定器は、分光部や受光素子等の各部品の性能のばらつきなどにより、製造段階において性能に誤差が生じてしまう。また、各部品の配置の仕方や組立誤差なども誤差の要因となり、同じ試料を測定しても、最終的に求められる測定値にばらつきが生じる。そこで、分光特性測定器においては、通常、出荷前に製品ごとに校正がなされる。
【0004】
分光特性測定器の校正とは、例えば、各受光素子の受光感度等を求めて分光特性測定器に記憶させること等により行われる。測定の際は、これら記憶されている値を用いて、測定値を補間等することで、正確な値を求める。例えば、出荷時の校正の際に、各受光素子の中心波長を求めておき、その値を分光特性測定器に記憶させる。そして、測定時に、測定により得た値と、前記記憶された中心波長とに基づいて演算することで、正確な分光反射特性を得ることができる。ここで、校正における、各受光素子の中心波長の求め方について説明する。具体的には、半値幅の十分に小さい単色光を任意の波長において出力可能な照射型分光器を用いる。照射型分光器により、波長の異なる単色光を、分光特性測定器に順次入射させ、各受光素子から出力される電気信号をプロットする。これにより、各受光素子の中心波長を求めることができる。なお、中心波長は、受光素子における受光感度特性の、例えば、重心またはピークとすればよい。
【0005】
例えば、特許文献1では、校正において中心波長を求め、この中心波長を基準とする範囲における受光感度の積分値を記憶しておき、測定により得られた測定値と記憶された値とを用いて演算し、測定値の精度改善を行っている。また、特許文献2では、校正において受光素子の中心波長(例えば、ピーク波長)を求め予め記憶しておき、測定により得られた測定値を前記中心波長に基づいて補間することで、測定値の精度改善を行っている。
【特許文献1】特開昭62−289736号公報
【特許文献2】特開昭62−284226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分光特性測定装置において、従来は、照明光としてキセノンランプやタングステンランプなどが用いられてきたが、近年では、その代わりに白色LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等が用いられるようになってきている。しかし、キセノンランプやタングステンランプの波長に対する分光強度分布が比較的平坦であるのに対して、白色LEDの波長に対する分光強度分布は急峻である。ここで、分光強度分布が平坦であるとは、受光素子列の隣接する波長間において光の強度の変化が少ないことをいう。また、分光強度分布が急峻であるとは、受光素子列の隣接する波長間における光の強度が大きく変化することをいう。より具体的には、図9および図10を用いて説明する。図9はタングステンランプの波長に対する分光強度分布を示すグラフである。また、図10は白色LEDの波長に対する分光強度分布を示すグラフである。図9および図10において、横軸は波長であり縦軸は相対強度である。図9に示すように、タングステンランプは波長が大きくなるにつれて、相対強度も大きくなっている。しかし、急激に増加している箇所はなく、略単調増加であり、分光強度分布は平坦であるといえる。また、白色LEDの分光強度分布は、図10に示す例では、図9に示した波長帯域と同様であるにもかかわらずピークを2つ有している。つまり、所定の波長帯域に光強度の複数のピークを有し、図9と比べて、波長に対して、光強度が急激に増加および急激に減少している箇所がある。このように、図10に示した白色LEDの分光強度分布は、急峻であるといえる。
【0007】
ここで、分光特性測定装置においては、測定試料に照射された照明光の反射光を分散させ、測定する。したがって、測定された値には、照明光の特性も反映される。しかし、従来のようにタングステンランプを照明光とした場合は、分光特性測定装置における受光部の各受光素子における受光感度とは、受光素子の性能に起因するものだけを考慮していればよかった。しかし、照明光に、上述のように、白色LED等のような、波長に対する分光強度分布が急峻なものを用いる場合には、受光感度に照明光の影響が強く出ることとなる。そこで、受光感度に対する照明光の影響について説明する。
【0008】
分光特性測定装置における受光感度について図11〜図14を用いて説明する。図11は照明光をタングステンランプとした場合における受光素子の受光感度について説明する第1のグラフであって、図11(A)は受光素子の受光感度および照明光の光強度を示すグラフであり、図11(B)は受光素子の合成感度を示すグラフである。また、図12は照明光を白色LEDとした場合における受光素子の受光感度について説明する第1のグラフであって、図12(A)は受光素子の受光感度および照明光の光強度を示すグラフであり、図12(B)は受光素子の合成感度を示すグラフである。また、図13は照明光をタングステンランプとした場合における受光感度について説明する第2のグラフであって、図13(A)は各受光素子の受光感度を示すグラフであり、図13(B)は重み付け後の受光感度を示すグラフである。また、図14は照明光を白色LEDとした場合における受光感度について説明する第2のグラフであって、図14(A)は受光素子の受光感度を示すグラフであり、図14(B)は重み付け後の受光感度を示すグラフである。なお、図11〜図14において、横軸は波長であり、縦軸は受光素子の相対感度または照明光の相対強度である。また、図11、図12における、受光素子No.1〜No.3は、それぞれ隣接する3つの受光素子を示しており、これらの受光素子No.1〜No.3の順に並んで配列されている。
【0009】
照明光をタングステンランプとした場合は、図11(A)に示すように、各受光素子における受光感度および照明光の分光強度分布が得られる。図11(A)に示すように、照明光の分光強度分布は平坦である。また、図11(A)で示している各受光素子の感度は、照明光の影響を受けていない状態での値である。実際の測定においては、照明光の影響も加わることから、その場合の合成感度は、図11(B)に示すような値となる。この合成感度は、具体的には、各受光素子における受光感度と照明光の光強度とを乗じることで求められる。図11(A)および図11(B)を比べることでわかるように、両者において、各受光素子No.1〜No.3における中心波長は略一定である。
【0010】
また、照明光を白色LEDとした場合は、図12(A)に示すように、各受光素子における受光感度および照明光の分光強度分布が得られる。図12(A)に示すように、照明光の分光強度分布は急峻であり、タングステンランプに比べてその傾きが大きい。また、図12(A)で示している各受光素子の感度は、図11(A)と同様に、照明光の影響を受けていない状態での値である。照明光の影響も加えた場合の合成感度は、図12(B)に示すような値となる。図12(A)および図12(B)を比べることでわかるように、両者において、各受光素子No.1〜No.3における中心波長の位置がずれている。具体的には、照明光の光強度が波長の増加とともに急激に増加する場合は、合成感度による中心波長は、受光素子の性能のみにより算出された中心波長に比べて増加している。
【0011】
このように、照明光としてタングステンランプを用いる場合には、影響がほとんどなかったが、白色LED等のように、波長に対する分光強度分布は急峻な照明光を用いる場合には、照明光の影響を受けていない状態での中心波長を記憶しておき、その値を用いて測定値を補間等しても、正確な測定値を求めることは困難である。
【0012】
また、例えば、受光素子の受光感度に、その受光素子に隣接する複数の受光素子における受光感度それぞれに重み付けを施し加算することで、受光素子の受光感度の精度を向上させ、S/N比を向上させる方法がある。そのような場合に、タングステンランプを照明光とした場合には、まず、中央受光素子(受光素子No.2)とそれに隣接する受光素子(受光素子No.1および3)の受光感度は、図13(A)に示すように求められる。なお、図13(A)に示す各受光素子の合成感度は、図11(B)の各受光素子の合成感度に対応する。図13(A)に示すように、隣接する受光素子である受光素子No.1および3の合成感度はほとんど変わらないので、重み付けのための重み係数は、左右対称とすればよい。そして、これら受光素子No.1〜No.3の合成感度を用いて、重み付け演算することで、図13(B)に示す合成感度を求めることができる。図13(A)および図13(B)を比べることでわかるように、図13(B)に示す合成中心波長と、図13(A)に示す受光素子No.2の合成中心波長とはほぼ同一であり、ほとんどずれが生じていない。なお、合成中心波長とは、合成感度をもとに算出した受光素子の中心波長をいう。次に、白色LEDを照明光とした場合について説明する。白色LEDを照明光とした場合には、まず、中央受光素子(受光素子No.2)とそれに隣接する受光素子(受光素子No.1および3)の合成感度は図14(A)に示すように求められる。なお、図14(A)に示す各受光素子の合成感度は、図12(B)の各受光素子の合成感度に対応する。これらの合成感度に応じて、適当な重み係数を用いて重み付け演算することで、図14(B)に示す合成感度を求めることができる。図14(A)および図14(B)を比べることでわかるように、図14(B)に示す合成中心波長は、図14(A)に示す受光素子No.2の中心波長よりも大きい値となり、ずれが生じている。
【0013】
このように、タングステンランプの代わりに、白色LEDを照明光として用いることで、照明光の影響を受けていない状態での受光素子の受光感度のみに基づいて、中心波長等を求めて測定の際にそれを用いて測定値を補間しても、実際の分光特性測定においては、上述のように照明光の影響も出ることから正確な測定値を得ることはできない。
【0014】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、出荷前の校正がより正確に行われた分光特性測定装置、分光特性測定装置をより正確に校正する方法およびより正確な分光特性を測定できる分光特性測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様に係る分光特性測定装置は、測定試料に照明光を照射する照明部と、前記照明光を照射された前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させる分光部と、前記分光部により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部と、前記照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された、前記受光素子の合成中心波長を記憶する記憶部とを備えている。
【0016】
これにより、照明光の波長に対する分光強度分布が急峻であっても、実際の測定時における受光素子の中心波長(合成中心波長)を予め記憶部に記憶しているため、測定の際に、測定値と記憶されている中心波長とに基づいて演算することにより、より正確な分光特性を測定することができる。
【0017】
また、上述の分光特性測定装置において、前記合成中心波長は、前記受光素子に対する前記照明光の光強度および当該受光素子の受光感度に基づいて算出された、受光素子の合成感度により算出されることが好ましい。
【0018】
これにより、記憶部に予め記憶される中心波長は、実際の測定時における受光素子の中心波長である。したがって、より正確な分光特性を測定することができる。
【0019】
また、上述の分光特性測定装置において、前記受光素子の合成感度は、さらに当該受光素子の周辺に配置された受光素子の前記合成感度を考慮して算出されていることが好ましい。
【0020】
これにより、受光素子から出力された電気信号を、例えば、重み付け加算演算により処理するため、S/N(signal to noise ratio)比が向上し、かつ、中心波長は実際の測定時における受光素子の実質的な中心波長となるので、より正確な分光特性を測定することができる。
【0021】
また、上述の分光特性測定装置において、前記記憶部は、前記照明光の分光強度分布を考慮せずに、前記受光素子の受光感度に基づいて予め算出された、前記受光素子の受光系中心波長と、光源色を測定する際に、測定値を算出するための基準となる、レベル校正係数とをさらに記憶していることが好ましい。
【0022】
これにより、分光特性測定装置を、物体色測定だけでなく、光源色測定用にも使用することができる。
【0023】
また、上述の分光特性測定装置において、前記照明部は白色発光ダイオードであることが好ましい。
【0024】
これにより、照明光の長寿命化、小型化、軽量化等を実現できる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る分光特性測定装置の校正方法は、測定試料に照明光を照射し、前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させ、分散された光を複数の受光素子で受光し、電気信号に変換して出力する分光特性測定装置の校正方法であって、前記受光素子の受光感度を取得する工程と、前記受光素子に対する前記照明光の光強度を取得する工程と、前記取得した、前記受光感度および前記照明光の光強度に基づいて、前記受光素子の合成感度を算出する工程と、前記合成感度より前記受光素子の合成中心波長を算出する工程と、前記合成中心波長を前記分光特性測定装置に記憶させる工程とを備えている。
【0026】
これにより、照明光の波長に対する分光強度分布が急峻であっても、測定の際にその影響を受けずに、より正確な分光特性を測定できるように校正することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る分光特性測定システムは、測定試料に照明光を照射する照明部と、前記照明光を照射された前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させる分光部と、前記分光部により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部と、前記複数の受光素子の出力と、前記照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された前記受光素子の合成中心波長とを用いて、前記測定試料の分光特性を算出する演算装置とを備えている。なお、演算装置とは、例えばパーソナルコンピュータ等である。
【0028】
このように、分光特性測定システムは、受光部と、分光部と、照明部とを有する分光特性測定装置と、演算装置とを備えている。それにより、照明光の波長に対する分光強度分布が急峻であっても、実際の測定時における受光素子の中心波長(合成中心波長)と、測定値とを用いて分光特性を算出するので、より正確な分光特性を測定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、出荷前の校正がより正確に行われた分光特性測定装置および分光特性測定装置をより正確に校正する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0031】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る分光特性測定システムについて説明する。まず、実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成について説明する。図1は実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成を説明するための図である。図2は実施の形態1に係る分光特性測定装置の測定部の構成を示す側面図である。図2は図1に示された測定部2の側面図を示すものであり、測定部2は、図1に示されていないが、紫色LED27を備え、紫色LED27は発光回路1に接続されている。また、図3は実施の形態1に係る分光特性測定装置の測定部において、白色LEDよりも下側の構成を示す上面図である。
【0032】
図1に示すように、実施の形態1に係る分光特性測定システムSは、分光特性測定装置100と演算装置であるパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)6とを備えて構成される。分光特性測定装置100は、発光回路1と、測定部2と、分光測定部3と、制御部4と、測定トリガ5とを備えて構成され、例えば、測定試料24の色を分析する分光測色計等である。また、パソコン6は分光特性測定装置100において、測定した値を演算、表示等する。
【0033】
発光回路1は、測定部2に備えられた照明部である白色LED21および紫色LED27を点灯させるための回路であり、例えば、電子回路部品により構成されている。
【0034】
測定部2は、照明部である白色LED21と、白色LED21の上部に配置された反射ミラー22と、トロイダルミラー23と、測定試料24と、レンズ25と、オプティカルファイバ26と、紫色LED27とを備えて構成されている。
【0035】
白色LED21は照明部であり、測定試料24を照らす白色光を出射する。反射ミラー22は白色LED21から出射された白色光をリング状に反射して、トロイダルミラー23へと導く。トロイダルミラー23は、横方向と縦方向の曲率が異なる非球面反射鏡であり、球面鏡と比べて、点光源からの光を試料面全体に、均一に照射できるという効果を奏する。さらに、紫外から赤外までの幅広い波長域に対応できる。トロイダルミラー23は、反射ミラー22からのリング状である白色光および一方向からの紫色LED27から出射された紫色光を反射させて、測定試料24にこれらの光を導き照射する。紫色LED27は、白色LED21からの照明光を補うために設けられている。すなわち、白色LED21から出射される白色光は、短波長(420nm程度)のエネルギーが比較的低い。そこで、紫色LED27から出射される短波長のエネルギーを有する、例えば主波長が410nmである紫色光により照明光を補うこととしている。測定試料24は測定対象物である。トロイダルミラー23において反射した白色光および紫色光は測定試料24に照射され、測定試料24にて反射される。レンズ25は測定試料24の上方に位置し、測定試料24からの反射光を集束させてオプティカルファイバ26に結合させる。オプティカルファイバ26は測定試料24からの光(反射光)を分光測定部3に導く。
【0036】
分光測定部3は、入射スリット31と、分光部である回折格子32と、複数の受光素子が同一直線状に並ぶように配置された、受光部である受光ラインセンサ33とを備えている。入射スリット31は、オプティカルファイバ26により導かれた測定試料24からの光を分光測定部3内に入射させる。回折格子32は、入射スリット31を介することで、帯状の光束とされた測定試料24からの光を波長ごとに分光させる。具体的には、回折格子32に入射された光は、波長ごとに異なる反射方向に反射される。したがって、所定の方向に沿って異なる波長の光が並んで反射される。なお、実施の形態1では、回折格子32は反射型としているが、例えば透過型回折格子としてもよい。受光ラインセンサ33は複数の受光素子が並んで配列されていて、その配列方向は、回折格子32により分散する方向と同一である。このような構成であることから、回折格子32で分光された、それぞれ異なる波長の光が各受光素子に入射される。これら光が入射することで、受光素子はその光に応じた電気信号を出力する。例えば、128個の受光素子を配列し、それぞれの測定ピッチは4nmとすればよい。なお、出力された電気信号は制御部4へ送られる。
【0037】
制御部4は、各種電子部品や集積回路部品、CPU(Central Processing Unit)等からなり、分光特性測定装置100の各部の動作制御を行う測定制御部41と、分光測定部3からの電気信号をもとに、各種演算を行う演算処理部42とを備え、さらに、分光特性測定装置100の演算処理や制御処理等のプログラムや出荷時に予め求めた校正データ等を記憶するROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリや、データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)等を備える記憶部43とを備えて構成される。
【0038】
測定トリガ5は、分光特性の測定開始の指示を行うためのスイッチである。
【0039】
パソコン6は、分光特性測定装置100の外部機器であり、例えばUSB等のインターフェースを介して分光特性測定装置100と接続されている。パソコン6は、演算を行うためのCPUや、ROM、EEPROM、RAM、フラッシュメモリ等の記憶部を有する。さらに、図示はしていないが、測定結果をモニタするための、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機エレクトロルミネッセンス表示装置やCRT(Cathode-Ray Tube)表示装置等の表示装置も有している。また、パソコン6はCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)やメモリーカード等の補助記録媒体を装着あるいは脱着可能であり、これら補助記録媒体からのデータの読み出しや、補助記録媒体へのデータの書き込みが可能である。それにより、パソコン6の演算において用いるデータを記録した補助記録媒体をパソコン6に装着して演算に必要なデータを読み出したり、パソコン6が算出したデータを補助記録媒体により保存しておくこと等が可能である。そして、パソコン6は、測定値の演算、測定結果の表示等、分光特性測定装置100の補助的な働きをする。
【0040】
次に、実施の形態1に係る分光特性測定装置100の出荷時における校正方法について図4を用いて説明する。図4は実施の形態1に係る分光特性測定装置の校正方法を示すフローチャートである。まず、従来と同様に、照明光の影響を受けない場合の受光部33における各受光素子の受光感度を取得する(S101)。具体的には、半値幅の十分に小さい単色光を出力可能な照射型分光器等により、分光測定部3に各波長成分の単色光を順次出力させる。各単色光は回折格子32にて波長ごとに異なる角度で反射され、並んで配列された受光ラインセンサ33の各受光素子に照射される。光が照射された受光素子は、電気信号を出力する。この受光ラインセンサ33からの電気信号をプロットすることで、各受光素子の受光感度を取得することができる。
【0041】
次に、照明光の分光強度分布を取得する(S102)。具体的には、分光放射輝度計等を用いて、白色LED21および紫色LED27から出射される照明光を測定することで、照明光の波長に対する分光強度分布を取得することができる。
【0042】
次に、これら受光素子の受光感度と照明光の分光強度分布とを基に、これらの特性を含む合成感度を算出する(S103)。ここで、fn(λ)はn番目の受光素子における合成感度であり、In(λ)はn番目の受光素子に入射される照明光の光強度であり、Dn(λ)はn番目の受光素子における受光感度であるとすると、fn(λ)は以下の式1により求められる。なお、受光ラインセンサ33が128個の受光素子を備えている場合は、nは1〜128の整数である。
【0043】
fn(λ)=In(λ)×Dn(λ) ・・・(1)
具体的には、照明光の光強度と受光素子の受光感度を乗じることで、この分光特性測定装置100の各受光素子における合成感度を求めることができる。このようにして、算出した合成感度を用いて、各受光素子における中心波長(合成中心波長)を算出する(S104)。受光素子ごとの受光感度特性における重心を中心波長とすればよい。そこで、重心である中心波長をλgとし、波長をλとし、この波長λにおける合成感度をS(λ)とすると、中心波長は、以下の式2で表すことができる。
【0044】
【数1】
【0045】
なお、各受光素子の中心波長は、分光特性測定装置100を調整するための装置により算出すればよい。分光特性測定装置100を調整するための装置は、例えばパソコン等とすればよい。
【0046】
このようにして、算出された各受光素子の中心波長は校正データの1つとして記憶部43に記憶される(S105)。なお、中心波長の算出は演算処理部42でなされればよい。
【0047】
さらに、キャリブレーション用のデータである白色校正板データを記憶部43に記憶させる(S106)。なお、白色校正板データは、それぞれの装置に固有のデータではなく、それぞれの白色校正板に固有のデータである。
【0048】
また、算出された中心波長や白色校正板のデータは、パソコン6を介して補助記録媒体に記憶されてもよい。すなわち、分光特性測定装置100と、合成中心波長データを記憶した補助記録媒体との組み合わせで測定するシステムを構成するようにしてもよい。
【0049】
以上の工程で、出荷前の分光特性測定装置100の校正が終了する。本実施の形態1に係る分光特性測定装置100は、上述のように、記憶部43に校正データを記憶している。校正データとしては、照明光の波長に対する分光強度分布に基づいて算出された、各受光素子における合成中心波長および白色校正板データである。
【0050】
次に、この分光特性測定装置100を用いて、測定試料24の分光特性を測定する方法について図5を用いて説明する。図5は実施の形態1に係る分光特性測定システムを用いた測定方法を示すフローチャートである。まず、測定前の校正を行う。図1に示した、実施の形態1に係る分光特性測定システムSにおいて、白色校正板を測定試料24として設置する。測定トリガ5を操作することで、測定が開始される。まず、オフセット補正を行うため、照明光は照射せずに測定を行う。つまり、白色校正板によるオフセット測光が行われる(S201)。具体的には、測定トリガ5からの測定開始の信号が入力されると、測定動作を行うよう、制御部4の測定制御部41は各部品を制御する。照明光が照射されない状態であるため、測定試料24から反射される光もない。つまり、反射率が0の状態の測定値が測定される。この際に出力された電気信号は制御部4に入力され、いったん記憶部43に記憶される。
【0051】
次に、照明光を照射した状態での、白色校正板の測光を行う(S202)。具体的には、測定制御部41は、発光回路1に、白色LED21および紫色LED27から、白色光および紫色光を出射させる。白色光は白色LED21の上方に設置された反射ミラー22に入射して反射し、トロイダルミラー23に入射する。紫色光は、直接トロイダルミラー23に入射する。そして、それらはトロイダルミラー23で反射し、白色校正板である測定試料24に照射される。測定試料24に白色光および紫色光が照射されることにより、測定試料24でそれらが反射して、その反射光がレンズ25で集束され、オプティカルファイバ26に結合される。反射光はオプティカルファイバ26中を伝播して、分光測定器3の入射スリット31を介して回折格子32に入射する。回折格子32において、前記反射光は分散され、すなわち波長ごとに異なる反射角度で反射され、受光ラインセンサ33に入射される。それにより、各受光素子に光が入力され、電気信号として出力される。出力された電気信号は制御部4に入力され、パソコン6に送られる。
【0052】
これら、白色校正板による測定値は、分光特性測定における基準とされる。パソコン6はステップS202において測定したデータと、ステップS201において測定したデータとの差を演算することでオフセット補正演算を行う(S203)。これにより算出された白色校正カウント値はパソコン6に記憶される。
【0053】
ステップS201〜S203によって、実施の形態1に係る分光特性測定システムSの測定前の校正が完了する。次に、実際の測定試料24の測定を開始する。まず、照明光を照射せずに、上記ステップS201と同様に、オフセット測光を行う(S204)。そして、測光により、受光ラインセンサ33の各受光素子から電気信号が出力され、出力された電気信号は制御部4に入力され、パソコン6に送られて記憶される。
【0054】
次に、ステップS202と同様に、照明光を照射した状態での、測定試料24の測光を行う(S205)。そして、測光により、受光ラインセンサ33の各受光素子から電気信号が出力され、出力された電気信号は制御部4に入力され、パソコン6に送られて記憶される。
【0055】
これら、ステップS204およびステップS205において測定されたデータをもとに、パソコン6は測定試料24のオフセット補正演算を行う(S206)。具体的には、ステップS203と同様に、ステップS205において測定したデータと、ステップS204において測定したデータとの差を演算することで、各受光素子の測光カウント値を求める。パソコン6はさらに、このようにして求めた、測定試料24における測光カウント値と、ステップS203で求めた白色校正カウント値との比率(測光カウント比率)を演算により求める(S207)。なお、このようにして得られた、各受光素子における測光カウント値は、その各受光素子に対応する中心波長における値である。すなわち、校正データである合成感度により算出された各受光素子に対応する中心波長(合成中心波長)における値である。そこで、任意の波長における測光カウント値に換算するため、3次補間を行う(S208)。パソコン6は、このようにして、求めた任意の波長における測光カウント値および白色校正カウント値等から、各波長の反射率を求める(S209)。測定試料24の反射率をRef(λ)とし、測定試料24の測光カウント値をCs(λ)とし、白色校正板カウント値をCc(λ)とし、出荷時に記憶部43に記憶された校正データであり、白色校正板の真の値である白色校正板データをW(λ)とすると、測定試料24の反射率Ref(λ)は、以下に示す式3で表すことができる。
Ref(λ)=(Cs(λ)/Cc(λ))・W(λ) ・・・(3)
このようにして、得られた各波長における反射率をもとにパソコン6は色彩演算を行う(S210)。さらに、パソコン6は得られた反射率および色彩演算の結果を表示する(S211)。
【0056】
上述の実施の形態1に係る分光特性測定システムSを用いて、実際に測定し、従来の分光特性測定システムと比較した。図6は実施の形態1の分光特性測定装置と、照明光として白色LEDを用いた従来の分光特性測定装置との性能評価を示すグラフである。図6においては、反射率が既知である測定試料24を、それぞれの分光特性測定装置を用いて測定し、その測定結果と既知の反射率との差を示している。図6中、一点鎖線で示した反射率は、照明光である白色LEDから出射された白色光の波長ごとの反射率Ref、すなわち光強度を表している。また、破線は、照明光として白色LEDを用いた従来の分光特性測定装置で求めた反射率と既知の反射率との差ΔRefを示している。また、実線は、実施の形態1の分光特性測定装置で求めた反射率と既知の反射率との差ΔRefを示している。図6に示されているように、白色LEDの波長の変化に対して、反射率の変化が顕著な箇所、具体的には波長が約500nm以下においては、破線で示した従来例は、0パーセントから外れた値となっているが、実線で示した実施の形態1は、全波長域において、略0パーセントである。このように、白色LEDを照明光として用いた場合でも、実施の形態1に係る分光特性測定装置においては、高精度を維持している。
【0057】
なお、分光特性測定装置100においては、1つの受光素子の合成感度だけでなく、例えばその受光素子に隣接する受光素子の合成感度を重み付け演算することで、受光素子の合成感度を算出してもよい。それにより、S/N(signal to noise ratio)比の向上等の効果を奏する。なお、重み付け演算に用いる合成感度は隣接する受光素子によるものだけでなく、それ以外の受光素子の合成感度でもよい。また、例えば、隣接する受光素子の合成感度を用いて重み付け演算する場合は、隣接する受光素子の合成感度には0.25を乗じ、中央受光素子の合成感度には0.5を乗じたものを加算する等すればよい。このように、重み付け演算を用いて、分光特性を測定する分光特性測定装置100の場合は、図4で示した校正方法においては、ステップS103において、合成感度を算出した後に、重み付け演算を行い算出された合成感度をもとに、ステップS104において中心波長を算出すればよい。具体的には、以下に示す式4を用いて、重み付け演算後の合成感度を求めればよい。ここで、n番目の受光素子における重み付け演算後の合成感度をTn(λ)とし、n番目の受光素子における合成感度をfn(λ)とし、各合成感度に乗じるウェイトを、W1およびW2とする。なお、W1は両隣の受光素子の合成感度に乗じるウェイトであり、W2は中央受光素子の合成感度に乗じるウェイトである。
【0058】
Tn(λ)=W1fn−1(λ)+W2fn(λ)+W1fn+1(λ)・・・(4)
このようにして、求めた合成感度Tn(λ)を用いて中心波長を求めればよい。
【0059】
また、このように、重み付け演算による合成感度をもとに求めた中心波長を記憶部43に記憶した分光特性測定装置100を用いて分光特性を測定する方法について説明する。図5で説明した測定方法において、ステップS203で白色校正カウント値を求めた後に、さらにパソコン6はこの白色校正カウント値に重み付け演算を施す。ここで、n番目の受光素子における重み付け演算後の白色校正カウント値であるCtnは、以下に示した式5により求めることができる。なお、Cnはn番目の受光素子におけるカウント値である。
【0060】
Ctn=W1Cn−1+W2Cn+W1Cn+1 ・・・(5)
このようにして求めた重み付け演算後の白色校正カウント値であるCtnはパソコン6に記憶される。
【0061】
また、ステップS206で行うオフセット補正演算により求めた各受光素子の測光カウント値においても、パソコン6は白色校正カウント値と同様に、重み付け演算を施す。そして、ステップS207において、重み付け演算後の各受光素子の測光カウント値と、重み付け演算後の白色校正カウント値との比率を演算により求めることで、測光カウント比率を求めればよい。
【0062】
このように、実施の形態1に係る分光特性測定システムにおいては、重み付け演算を用いて、より高精度の測定を行うことができる。
【0063】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る分光特性測定装置を含む分光特性測定システムについて説明する。なお、実施の形態2に係る分光特性測定システムの構成は、実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成と同一であるため、説明を省略する。また、実施の形態2に係る分光特性測定システムの説明において、各部材には実施の形態1と同一の符号を用い、説明には図1〜図3を用いる。実施の形態2に係る分光特性測定装置100は、発光していない物体だけでなく、光源等の発光している物体についても、その分光特性を測定できる点が、実施の形態1とは異なる。
【0064】
まず、実施の形態2に係る分光特性測定装置100の出荷時の校正方法について図7を用いて説明する。図7は実施の形態2に係る分光特性測定装置の校正方法を示すフローチャートである。まず、照明光の影響を受けない場合の受光部33における各受光素子の受光感度を取得する(S301)。具体的には、半値幅の十分に小さい単色光を出力可能な照射型分光器等により、分光測定部3に各波長成分の単色光を順次出力させる。各単色光は回折格子32にて波長ごとに異なる角度で反射され、並んで配列された受光ラインセンサ33の各受光素子に照射される。光が照射された受光素子は、電気信号を出力する。この受光ラインセンサ33からの電気信号をプロットすることで、各受光素子の受光感度を取得することができる。次に、取得した受光感度を用いて、各受光素子における中心波長を算出する(S302)。なお、このように、照明光の影響を考慮せずに、受光素子の受光感度にもとづいて算出された中心波長を受光系中心波長という。そして、この各受光素子の受光系中心波長は校正データの1つとして記憶部43に記憶される(S303)。次に、レベル校正係数の算出を行う(S304)。具体的には、分光放射輝度が既知であるレベル校正用の光源を測定試料24として、照明光を照射せずに分光測定を行い、受光ラインセンサ33からの電気信号をプロットする。このデータをもとに、既知である輝度と出力される電気信号との相関関係を示すレベル校正係数を演算処理部42により算出し、校正データの1つとして記憶部43に記憶させる(S305)。つまり、レベル校正係数は、測定値を算出するための基準となる。次に、照明光の波長に対する分光強度分布を取得する(S306)。具体的には、分光放射輝度計等を用いて、白色LED21および紫色LED27から出射される照明光を測定することで、照明光の波長に対する分光強度分布を取得することができる。
【0065】
次に、ステップS301で取得した各受光素子の受光感度と、ステップS306で取得した照明光の分光強度分布とをもとに、合成感度を算出する(S307)。なお、合成感度は、上記式1を用いて算出すればよい。具体的には、照明光の光強度と受光素子の受光感度を乗じることで算出される。このようにして、算出した合成感度を用いて、合成感度による各受光素子の中心波長(合成中心波長)を算出する(S308)。なお、中心波長は、受光素子ごとの受光感度特性における重心とすればよい。具体的には、上記式2を用いて算出すればよい。このようにして、算出された合成感度による合成中心波長は校正データの1つとして記憶部43に記憶される(S309)。
【0066】
さらに、キャリブレーション用のデータである白色校正板データを記憶部43に記憶させる(S310)。なお、白色校正板データは既存のものであり、それぞれの装置に固有のデータではなく、それぞれの白色校正板に固有のデータである。
【0067】
以上の工程で、出荷前の分光特性測定装置100の校正が終了する。本実施の形態2に係る分光特性測定装置100は、上述のように、記憶部43に校正データを記憶している。校正データとしては、ステップS302に、おいて算出した各受光素子における受光系中心波長、ステップS308において算出した照明光の分光強度分布を考慮して求めた、合成感度による各受光素子の合成中心波長、レベル校正係数および白色校正板データである。
【0068】
次に、この分光特性測定装置100を用いて、測定試料24の分光特性を測定する方法について図8を用いて説明する。図8は実施の形態2に係る分光特性測定装置を用いた測定方法を示すフローチャートである。上述のように、実施の形態2に係る分光特性測定装置100は、発光していない物体だけでなく、光源等の発光している物体についても、その分光特性を測定できる。まず、測定試料24として、非発光の物体を選択した場合と、発光する物体を選択した場合では、操作方法が異なる。その操作方法(測定モード)を選択する(S401)。非発光の物体を選択した場合は、実施の形態1において説明した図5のフローチャートの手順に沿って測定すればよいので、ここでは説明を省略する。なお、図5においては、ステップS208で行う3次補間に用いる合成感度による各受光素子に対応する中心波長として、校正データであるステップS308において算出した合成感度による各受光素子の合成中心波長を用いればよい。また、ステップS209において各波長の反射率を求める際に用いるW(λ)としては、校正データである白色校正板データを用いればよい。具体的には、パソコン6は、これらの計算の際に記憶部43から、これら校正データを読み出せばよい。
【0069】
また、ステップS401において光源等の発光する物体を選択した場合は、まず、測定試料24は設置せずに、測定部2にキャップを取り付けて外部から光が入らないようにした状態で、照明光は照射せずに測定するオフセット測光を行う(S402)。なお、測定試料24として、光源等の発光する物体を用いた場合は、測定において照明光を照射する必要はない。この測定により、受光ラインセンサ33から出力された電気信号は制御部4に入力され、パソコン6に送られて記憶される。次に、キャップを取りはずし、発光する物体である測定試料24を設置し、照明光は照射せずに測光する(S403)。そして、測光により得られたデータは、パソコン6に送られて記憶される。
【0070】
これら、ステップS402およびステップS403において測定されたデータをもとに、パソコン6は測定試料24のオフセット補正演算を行う(S404)。具体的には、ステップS403において測定したデータと、ステップS402において測定したデータとの差を演算することで、各受光素子の測光カウント値を求める。次に、レベル補正演算を行う(S406)。具体的には、各受光素子の中心波長における分光放射輝度を算出する。ここで、測定試料24の分光放射輝度をRad(λ)とし、測定試料24の測光カウント値をCs(λ)とし、測定試料24のレベル校正係数をLcal(λ)とすると、分光放射輝度をRad(λ)は、以下に示す式6で表すことができる。
【0071】
Rad(λ)=Cs(λ)・Lcal(λ) ・・・(6)
なお、式6の演算をするためには、校正データであるレベル校正係数が必要である。そこで、パソコン6は記憶部43からレベル校正係数を取得しておく。
【0072】
このようにして得られた、各受光素子における分光放射輝度は、ステップS302において算出した、その各受光素子に対応する受光系中心波長における値である。そこで、任意の波長における分光放射輝度に換算するため、3次補間を行う(S406)。パソコン6は、このようにして、求めた任意の波長における分光放射輝度から、色彩演算を行う(S407)。さらに、パソコン6は得られた分光放射輝度および色彩演算の結果を表示する(S408)。
【0073】
このように、実施の形態2に係る分光特性測定システムは、非発光の物体または発光する物体を測定試料24とすることができる。すなわち、光源色測定用および反射物体色測定用のいずれにおいても使用できる。また、白色LEDを照明光として用いているにもかかわらず、高精度を維持できる。また、白色LEDを照明光として用いていることから、照明光の長寿命化、小型化、軽量化等を実現できる。
【0074】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る分光特性測定装置を含む分光特性測定システムについて説明する。実施の形態3に係る分光特性測定システムは、校正データの1つである、合成感度による各受光素子の中心波長(合成中心波長)が分光特性測定装置ではなく、パソコンにより読み出し可能な補助記録媒体に記憶されていて、パソコンは補助記録媒体および分光特性測定装置の記憶部から校正データを読み出し、さらに測定データも用いて色彩演算等を行う。
【0075】
なお、実施の形態3に係る分光特性測定システムの構成は、実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成と同一であるため、説明を省略する。また、実施の形態3に係る分光特性測定システムの説明において、各部材には実施の形態1と同一の符号を用い、説明には図1〜図3を用いる。実施の形態3に係る分光特性測定システムSのパソコン6は、例えば、分光特性測定装置100とUSB等のインターフェースを介して接続されている。そして、パソコン6は、演算を行うためのCPUや、ROM、EEPROM、RAM、フラッシュメモリ等の記憶部を有する。さらに、パソコン6はCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)やメモリーカード等の補助記録媒体を装着あるいは脱着可能であり、これら補助記録媒体からのデータの読み出しや、補助記録媒体へのデータの書き込みが可能である。それにより、パソコン6における演算に用いるデータが記憶された補助記録媒体をパソコン6に装着して演算に必要なデータを読み出したり、パソコン6が算出したデータを補助記録媒体により保存しておくこと等が可能である。なお、実施の形態3に係る分光特性測定システムは、実施の形態2と同様に、発光していない物体だけでなく、光源等の発光している物体についても、その分光特性を測定できる。
【0076】
このような、実施の形態3に係る分光特性測定システムSにおける分光特性測定装置100の出荷時の校正方法は、図7のフローチャートに示されている。したがって、実施の形態2に係る分光特性測定装置の校正方法と同様に行えばよい。ただし、図7のステップS309において、実施の形態2においては、算出された合成感度による合成中心波長は記憶部43に記憶されるが、実施の形態3においては、算出された合成感度による合成中心波長は、記憶部43ではなくパソコン6により読み出しが可能である補助記録媒体に記憶される(S309)。これにより、合成感度による合成中心波長が記憶された補助記録媒体と分光特性測定装置とがセットで取り扱われる。
【0077】
実施の形態3に係る分光特性測定システムSにおいては、分光特性測定装置100と、色彩演算等の演算動作のプログラムがインストールされたパソコン6とが接続されて構成される。そして、このパソコン6には前記分光特性測定装置とセットである補助記録媒体が装着され、パソコン6はこの補助記録媒体に記憶されたデータを読み出して、測定データおよび分光特性測定装置に記憶された他の校正データも用いて色彩演算を行う。具体的には、実施の形態3に係る分光特性測定システムSにおける分光特性測定方法は、実施の形態2に係る分光特性測定方法と同様であるため、図8および図5のフローチャートの手順に沿って行えばよい。ただし、パソコン6による演算に用いられる、校正データの1つである合成感度による各受光素子の合成中心波長は、記憶部43ではなく補助記録媒体から読み出される。なお、パソコン6に色彩演算等の演算動作のプログラムをインストールする際に、合成感度による各受光素子の合成中心波長もパソコン6の記憶部に保存されることとしてもよい。その場合は、補助記録媒体を用いることなく、分光特性測定装置100がパソコン6に接続され、測定が開始されることでデータ等がパソコン6に送信されてきた場合に、パソコン6は、前記記憶部に保存されている合成感度による各受光素子の合成中心波長を用いて色彩演算を行うこととすればよい。
【0078】
以上、本実施の形態について説明したが、上述の校正方法および測定方法に限定されることはなく、照明光の波長に対する分光強度分布を取得し、その分光強度分布をもとに算出した合成中心波長を用いた校正方法または測定方法を行うのであれば、上記校正方法または測定方法以外の方法を用いてもよい。
【0079】
例えば、特開2005−69784号公報には、UV(Ultraviolet)−LED(紫外線LED)を波長補正検出用光源として備えた分光特性測定システムが開示されている。また、特表平10−508984号公報には、温度補正を行う分光特性測定システムが開示されている。このような、分光特性測定システムにおいても、照明光の波長に対する分光強度分布をもとに算出した中心波長を用いて、校正および測定を行うことで、照明光に白色LED等を用いても、高精度の測定を実現できる。
【0080】
また、照明部としては、図10の特性を示す白色LEDに限定されるわけではない。例えば、白色光を出射するLEDとしては、3種類のタイプがある。つまり、青色LEDチップの光を蛍光体材料に当てて黄色の光を出力し、青色と黄色の混色で白色光を作り出すもの、近紫外LEDチップが出す光を複数の蛍光体材料に当てて混色して白色光を作り出すもの、赤色、緑色、青色の各LEDを同時に光らせて混色して白色光を作り出ものがあるが、これらすべてにおいて、本実施の形態の照明部として用いることが可能であり、これらを用いた場合であっても、高精度の測定を実現できる。
【0081】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成を説明するための図である。
【図2】実施の形態1に係る分光特性測定装置の測定部の構成を示す側面図である。
【図3】実施の形態1に係る分光特性測定装置の測定部において、白色LEDよりも下側の構成を示す上面図である。
【図4】実施の形態1に係る分光特性測定装置の校正方法を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1に係る分光特性測定システムを用いた測定方法を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1の分光特性測定装置と白色LEDを用いた従来の分光特性測定装置との性能評価を示すグラフである。
【図7】実施の形態2に係る分光特性測定装置の校正方法を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る分光特性測定装置を用いた測定方法を示すフローチャートである。
【図9】タングステンランプの波長強度分布を示すグラフである。
【図10】白色LEDの波長強度分布を示すグラフである。
【図11】照明光をタングステンランプとした場合における受光素子の受光感度について説明する第1のグラフであって、図11(A)は受光素子の受光感度および照明光の光強度を示すグラフであり、図11(B)は受光素子の合成感度を示すグラフである。
【図12】照明光を白色LEDとした場合における受光素子の受光感度について説明する第1のグラフであって、図12(A)は受光素子の受光感度および照明光の光強度を示すグラフであり、図12(B)は受光素子の合成感度を示すグラフである。
【図13】照明光をタングステンランプとした場合における受光感度について説明する第2のグラフであって、図13(A)は各受光素子の受光感度を示すグラフであり、図13(B)は重み付け後の受光感度を示すグラフである。
【図14】照明光を白色LEDとした場合における受光感度について説明する第2のグラフであって、図14(A)は受光素子の受光感度を示すグラフであり、図14(B)は重み付け後の受光感度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0083】
1 発光回路
2 測定部
3 分光測定部
4 制御部
5 測定トリガ
6 パソコン
21 白色LED
22 反射ミラー
23 トロイダルミラー
24 測定試料
25 レンズ
26 オプティカルファイバ
27 紫色LED
31 入射スリット
32 回折格子
33 受光ラインセンサ
41 測定制御部
42 演算処理部
43 記憶部
100 分光特性測定装置
S 分光特性測定システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料の分光特性を測定する分光測色計などの分光特性測定装置およびその校正方法に関する。また、本発明は、分光測色計などを用いた分光特性測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、分光測色計等の分光特性測定器は一般に、400nm〜700nmあるいはこれより少し広い測定波長域に亘って、10nmまたは20nmの比較的広い半値幅および波長ピッチで分光測定を行う。分光特性測定器は、具体的には、光を波長ごとに分散させる分光部と、照射された光の強度に応じた電気信号を出力する、配列された複数の受光素子を有する受光部とを備えて構成される。そして、分光部により分散された波長ごとの光は、各受光素子に入射し、それらの光強度に応じた電気信号が各受光素子から出力される。
【0003】
ここで、分光特性測定器は、分光部や受光素子等の各部品の性能のばらつきなどにより、製造段階において性能に誤差が生じてしまう。また、各部品の配置の仕方や組立誤差なども誤差の要因となり、同じ試料を測定しても、最終的に求められる測定値にばらつきが生じる。そこで、分光特性測定器においては、通常、出荷前に製品ごとに校正がなされる。
【0004】
分光特性測定器の校正とは、例えば、各受光素子の受光感度等を求めて分光特性測定器に記憶させること等により行われる。測定の際は、これら記憶されている値を用いて、測定値を補間等することで、正確な値を求める。例えば、出荷時の校正の際に、各受光素子の中心波長を求めておき、その値を分光特性測定器に記憶させる。そして、測定時に、測定により得た値と、前記記憶された中心波長とに基づいて演算することで、正確な分光反射特性を得ることができる。ここで、校正における、各受光素子の中心波長の求め方について説明する。具体的には、半値幅の十分に小さい単色光を任意の波長において出力可能な照射型分光器を用いる。照射型分光器により、波長の異なる単色光を、分光特性測定器に順次入射させ、各受光素子から出力される電気信号をプロットする。これにより、各受光素子の中心波長を求めることができる。なお、中心波長は、受光素子における受光感度特性の、例えば、重心またはピークとすればよい。
【0005】
例えば、特許文献1では、校正において中心波長を求め、この中心波長を基準とする範囲における受光感度の積分値を記憶しておき、測定により得られた測定値と記憶された値とを用いて演算し、測定値の精度改善を行っている。また、特許文献2では、校正において受光素子の中心波長(例えば、ピーク波長)を求め予め記憶しておき、測定により得られた測定値を前記中心波長に基づいて補間することで、測定値の精度改善を行っている。
【特許文献1】特開昭62−289736号公報
【特許文献2】特開昭62−284226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分光特性測定装置において、従来は、照明光としてキセノンランプやタングステンランプなどが用いられてきたが、近年では、その代わりに白色LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等が用いられるようになってきている。しかし、キセノンランプやタングステンランプの波長に対する分光強度分布が比較的平坦であるのに対して、白色LEDの波長に対する分光強度分布は急峻である。ここで、分光強度分布が平坦であるとは、受光素子列の隣接する波長間において光の強度の変化が少ないことをいう。また、分光強度分布が急峻であるとは、受光素子列の隣接する波長間における光の強度が大きく変化することをいう。より具体的には、図9および図10を用いて説明する。図9はタングステンランプの波長に対する分光強度分布を示すグラフである。また、図10は白色LEDの波長に対する分光強度分布を示すグラフである。図9および図10において、横軸は波長であり縦軸は相対強度である。図9に示すように、タングステンランプは波長が大きくなるにつれて、相対強度も大きくなっている。しかし、急激に増加している箇所はなく、略単調増加であり、分光強度分布は平坦であるといえる。また、白色LEDの分光強度分布は、図10に示す例では、図9に示した波長帯域と同様であるにもかかわらずピークを2つ有している。つまり、所定の波長帯域に光強度の複数のピークを有し、図9と比べて、波長に対して、光強度が急激に増加および急激に減少している箇所がある。このように、図10に示した白色LEDの分光強度分布は、急峻であるといえる。
【0007】
ここで、分光特性測定装置においては、測定試料に照射された照明光の反射光を分散させ、測定する。したがって、測定された値には、照明光の特性も反映される。しかし、従来のようにタングステンランプを照明光とした場合は、分光特性測定装置における受光部の各受光素子における受光感度とは、受光素子の性能に起因するものだけを考慮していればよかった。しかし、照明光に、上述のように、白色LED等のような、波長に対する分光強度分布が急峻なものを用いる場合には、受光感度に照明光の影響が強く出ることとなる。そこで、受光感度に対する照明光の影響について説明する。
【0008】
分光特性測定装置における受光感度について図11〜図14を用いて説明する。図11は照明光をタングステンランプとした場合における受光素子の受光感度について説明する第1のグラフであって、図11(A)は受光素子の受光感度および照明光の光強度を示すグラフであり、図11(B)は受光素子の合成感度を示すグラフである。また、図12は照明光を白色LEDとした場合における受光素子の受光感度について説明する第1のグラフであって、図12(A)は受光素子の受光感度および照明光の光強度を示すグラフであり、図12(B)は受光素子の合成感度を示すグラフである。また、図13は照明光をタングステンランプとした場合における受光感度について説明する第2のグラフであって、図13(A)は各受光素子の受光感度を示すグラフであり、図13(B)は重み付け後の受光感度を示すグラフである。また、図14は照明光を白色LEDとした場合における受光感度について説明する第2のグラフであって、図14(A)は受光素子の受光感度を示すグラフであり、図14(B)は重み付け後の受光感度を示すグラフである。なお、図11〜図14において、横軸は波長であり、縦軸は受光素子の相対感度または照明光の相対強度である。また、図11、図12における、受光素子No.1〜No.3は、それぞれ隣接する3つの受光素子を示しており、これらの受光素子No.1〜No.3の順に並んで配列されている。
【0009】
照明光をタングステンランプとした場合は、図11(A)に示すように、各受光素子における受光感度および照明光の分光強度分布が得られる。図11(A)に示すように、照明光の分光強度分布は平坦である。また、図11(A)で示している各受光素子の感度は、照明光の影響を受けていない状態での値である。実際の測定においては、照明光の影響も加わることから、その場合の合成感度は、図11(B)に示すような値となる。この合成感度は、具体的には、各受光素子における受光感度と照明光の光強度とを乗じることで求められる。図11(A)および図11(B)を比べることでわかるように、両者において、各受光素子No.1〜No.3における中心波長は略一定である。
【0010】
また、照明光を白色LEDとした場合は、図12(A)に示すように、各受光素子における受光感度および照明光の分光強度分布が得られる。図12(A)に示すように、照明光の分光強度分布は急峻であり、タングステンランプに比べてその傾きが大きい。また、図12(A)で示している各受光素子の感度は、図11(A)と同様に、照明光の影響を受けていない状態での値である。照明光の影響も加えた場合の合成感度は、図12(B)に示すような値となる。図12(A)および図12(B)を比べることでわかるように、両者において、各受光素子No.1〜No.3における中心波長の位置がずれている。具体的には、照明光の光強度が波長の増加とともに急激に増加する場合は、合成感度による中心波長は、受光素子の性能のみにより算出された中心波長に比べて増加している。
【0011】
このように、照明光としてタングステンランプを用いる場合には、影響がほとんどなかったが、白色LED等のように、波長に対する分光強度分布は急峻な照明光を用いる場合には、照明光の影響を受けていない状態での中心波長を記憶しておき、その値を用いて測定値を補間等しても、正確な測定値を求めることは困難である。
【0012】
また、例えば、受光素子の受光感度に、その受光素子に隣接する複数の受光素子における受光感度それぞれに重み付けを施し加算することで、受光素子の受光感度の精度を向上させ、S/N比を向上させる方法がある。そのような場合に、タングステンランプを照明光とした場合には、まず、中央受光素子(受光素子No.2)とそれに隣接する受光素子(受光素子No.1および3)の受光感度は、図13(A)に示すように求められる。なお、図13(A)に示す各受光素子の合成感度は、図11(B)の各受光素子の合成感度に対応する。図13(A)に示すように、隣接する受光素子である受光素子No.1および3の合成感度はほとんど変わらないので、重み付けのための重み係数は、左右対称とすればよい。そして、これら受光素子No.1〜No.3の合成感度を用いて、重み付け演算することで、図13(B)に示す合成感度を求めることができる。図13(A)および図13(B)を比べることでわかるように、図13(B)に示す合成中心波長と、図13(A)に示す受光素子No.2の合成中心波長とはほぼ同一であり、ほとんどずれが生じていない。なお、合成中心波長とは、合成感度をもとに算出した受光素子の中心波長をいう。次に、白色LEDを照明光とした場合について説明する。白色LEDを照明光とした場合には、まず、中央受光素子(受光素子No.2)とそれに隣接する受光素子(受光素子No.1および3)の合成感度は図14(A)に示すように求められる。なお、図14(A)に示す各受光素子の合成感度は、図12(B)の各受光素子の合成感度に対応する。これらの合成感度に応じて、適当な重み係数を用いて重み付け演算することで、図14(B)に示す合成感度を求めることができる。図14(A)および図14(B)を比べることでわかるように、図14(B)に示す合成中心波長は、図14(A)に示す受光素子No.2の中心波長よりも大きい値となり、ずれが生じている。
【0013】
このように、タングステンランプの代わりに、白色LEDを照明光として用いることで、照明光の影響を受けていない状態での受光素子の受光感度のみに基づいて、中心波長等を求めて測定の際にそれを用いて測定値を補間しても、実際の分光特性測定においては、上述のように照明光の影響も出ることから正確な測定値を得ることはできない。
【0014】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、出荷前の校正がより正確に行われた分光特性測定装置、分光特性測定装置をより正確に校正する方法およびより正確な分光特性を測定できる分光特性測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様に係る分光特性測定装置は、測定試料に照明光を照射する照明部と、前記照明光を照射された前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させる分光部と、前記分光部により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部と、前記照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された、前記受光素子の合成中心波長を記憶する記憶部とを備えている。
【0016】
これにより、照明光の波長に対する分光強度分布が急峻であっても、実際の測定時における受光素子の中心波長(合成中心波長)を予め記憶部に記憶しているため、測定の際に、測定値と記憶されている中心波長とに基づいて演算することにより、より正確な分光特性を測定することができる。
【0017】
また、上述の分光特性測定装置において、前記合成中心波長は、前記受光素子に対する前記照明光の光強度および当該受光素子の受光感度に基づいて算出された、受光素子の合成感度により算出されることが好ましい。
【0018】
これにより、記憶部に予め記憶される中心波長は、実際の測定時における受光素子の中心波長である。したがって、より正確な分光特性を測定することができる。
【0019】
また、上述の分光特性測定装置において、前記受光素子の合成感度は、さらに当該受光素子の周辺に配置された受光素子の前記合成感度を考慮して算出されていることが好ましい。
【0020】
これにより、受光素子から出力された電気信号を、例えば、重み付け加算演算により処理するため、S/N(signal to noise ratio)比が向上し、かつ、中心波長は実際の測定時における受光素子の実質的な中心波長となるので、より正確な分光特性を測定することができる。
【0021】
また、上述の分光特性測定装置において、前記記憶部は、前記照明光の分光強度分布を考慮せずに、前記受光素子の受光感度に基づいて予め算出された、前記受光素子の受光系中心波長と、光源色を測定する際に、測定値を算出するための基準となる、レベル校正係数とをさらに記憶していることが好ましい。
【0022】
これにより、分光特性測定装置を、物体色測定だけでなく、光源色測定用にも使用することができる。
【0023】
また、上述の分光特性測定装置において、前記照明部は白色発光ダイオードであることが好ましい。
【0024】
これにより、照明光の長寿命化、小型化、軽量化等を実現できる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る分光特性測定装置の校正方法は、測定試料に照明光を照射し、前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させ、分散された光を複数の受光素子で受光し、電気信号に変換して出力する分光特性測定装置の校正方法であって、前記受光素子の受光感度を取得する工程と、前記受光素子に対する前記照明光の光強度を取得する工程と、前記取得した、前記受光感度および前記照明光の光強度に基づいて、前記受光素子の合成感度を算出する工程と、前記合成感度より前記受光素子の合成中心波長を算出する工程と、前記合成中心波長を前記分光特性測定装置に記憶させる工程とを備えている。
【0026】
これにより、照明光の波長に対する分光強度分布が急峻であっても、測定の際にその影響を受けずに、より正確な分光特性を測定できるように校正することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る分光特性測定システムは、測定試料に照明光を照射する照明部と、前記照明光を照射された前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させる分光部と、前記分光部により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部と、前記複数の受光素子の出力と、前記照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された前記受光素子の合成中心波長とを用いて、前記測定試料の分光特性を算出する演算装置とを備えている。なお、演算装置とは、例えばパーソナルコンピュータ等である。
【0028】
このように、分光特性測定システムは、受光部と、分光部と、照明部とを有する分光特性測定装置と、演算装置とを備えている。それにより、照明光の波長に対する分光強度分布が急峻であっても、実際の測定時における受光素子の中心波長(合成中心波長)と、測定値とを用いて分光特性を算出するので、より正確な分光特性を測定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、出荷前の校正がより正確に行われた分光特性測定装置および分光特性測定装置をより正確に校正する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0031】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る分光特性測定システムについて説明する。まず、実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成について説明する。図1は実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成を説明するための図である。図2は実施の形態1に係る分光特性測定装置の測定部の構成を示す側面図である。図2は図1に示された測定部2の側面図を示すものであり、測定部2は、図1に示されていないが、紫色LED27を備え、紫色LED27は発光回路1に接続されている。また、図3は実施の形態1に係る分光特性測定装置の測定部において、白色LEDよりも下側の構成を示す上面図である。
【0032】
図1に示すように、実施の形態1に係る分光特性測定システムSは、分光特性測定装置100と演算装置であるパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)6とを備えて構成される。分光特性測定装置100は、発光回路1と、測定部2と、分光測定部3と、制御部4と、測定トリガ5とを備えて構成され、例えば、測定試料24の色を分析する分光測色計等である。また、パソコン6は分光特性測定装置100において、測定した値を演算、表示等する。
【0033】
発光回路1は、測定部2に備えられた照明部である白色LED21および紫色LED27を点灯させるための回路であり、例えば、電子回路部品により構成されている。
【0034】
測定部2は、照明部である白色LED21と、白色LED21の上部に配置された反射ミラー22と、トロイダルミラー23と、測定試料24と、レンズ25と、オプティカルファイバ26と、紫色LED27とを備えて構成されている。
【0035】
白色LED21は照明部であり、測定試料24を照らす白色光を出射する。反射ミラー22は白色LED21から出射された白色光をリング状に反射して、トロイダルミラー23へと導く。トロイダルミラー23は、横方向と縦方向の曲率が異なる非球面反射鏡であり、球面鏡と比べて、点光源からの光を試料面全体に、均一に照射できるという効果を奏する。さらに、紫外から赤外までの幅広い波長域に対応できる。トロイダルミラー23は、反射ミラー22からのリング状である白色光および一方向からの紫色LED27から出射された紫色光を反射させて、測定試料24にこれらの光を導き照射する。紫色LED27は、白色LED21からの照明光を補うために設けられている。すなわち、白色LED21から出射される白色光は、短波長(420nm程度)のエネルギーが比較的低い。そこで、紫色LED27から出射される短波長のエネルギーを有する、例えば主波長が410nmである紫色光により照明光を補うこととしている。測定試料24は測定対象物である。トロイダルミラー23において反射した白色光および紫色光は測定試料24に照射され、測定試料24にて反射される。レンズ25は測定試料24の上方に位置し、測定試料24からの反射光を集束させてオプティカルファイバ26に結合させる。オプティカルファイバ26は測定試料24からの光(反射光)を分光測定部3に導く。
【0036】
分光測定部3は、入射スリット31と、分光部である回折格子32と、複数の受光素子が同一直線状に並ぶように配置された、受光部である受光ラインセンサ33とを備えている。入射スリット31は、オプティカルファイバ26により導かれた測定試料24からの光を分光測定部3内に入射させる。回折格子32は、入射スリット31を介することで、帯状の光束とされた測定試料24からの光を波長ごとに分光させる。具体的には、回折格子32に入射された光は、波長ごとに異なる反射方向に反射される。したがって、所定の方向に沿って異なる波長の光が並んで反射される。なお、実施の形態1では、回折格子32は反射型としているが、例えば透過型回折格子としてもよい。受光ラインセンサ33は複数の受光素子が並んで配列されていて、その配列方向は、回折格子32により分散する方向と同一である。このような構成であることから、回折格子32で分光された、それぞれ異なる波長の光が各受光素子に入射される。これら光が入射することで、受光素子はその光に応じた電気信号を出力する。例えば、128個の受光素子を配列し、それぞれの測定ピッチは4nmとすればよい。なお、出力された電気信号は制御部4へ送られる。
【0037】
制御部4は、各種電子部品や集積回路部品、CPU(Central Processing Unit)等からなり、分光特性測定装置100の各部の動作制御を行う測定制御部41と、分光測定部3からの電気信号をもとに、各種演算を行う演算処理部42とを備え、さらに、分光特性測定装置100の演算処理や制御処理等のプログラムや出荷時に予め求めた校正データ等を記憶するROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリや、データを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)等を備える記憶部43とを備えて構成される。
【0038】
測定トリガ5は、分光特性の測定開始の指示を行うためのスイッチである。
【0039】
パソコン6は、分光特性測定装置100の外部機器であり、例えばUSB等のインターフェースを介して分光特性測定装置100と接続されている。パソコン6は、演算を行うためのCPUや、ROM、EEPROM、RAM、フラッシュメモリ等の記憶部を有する。さらに、図示はしていないが、測定結果をモニタするための、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機エレクトロルミネッセンス表示装置やCRT(Cathode-Ray Tube)表示装置等の表示装置も有している。また、パソコン6はCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)やメモリーカード等の補助記録媒体を装着あるいは脱着可能であり、これら補助記録媒体からのデータの読み出しや、補助記録媒体へのデータの書き込みが可能である。それにより、パソコン6の演算において用いるデータを記録した補助記録媒体をパソコン6に装着して演算に必要なデータを読み出したり、パソコン6が算出したデータを補助記録媒体により保存しておくこと等が可能である。そして、パソコン6は、測定値の演算、測定結果の表示等、分光特性測定装置100の補助的な働きをする。
【0040】
次に、実施の形態1に係る分光特性測定装置100の出荷時における校正方法について図4を用いて説明する。図4は実施の形態1に係る分光特性測定装置の校正方法を示すフローチャートである。まず、従来と同様に、照明光の影響を受けない場合の受光部33における各受光素子の受光感度を取得する(S101)。具体的には、半値幅の十分に小さい単色光を出力可能な照射型分光器等により、分光測定部3に各波長成分の単色光を順次出力させる。各単色光は回折格子32にて波長ごとに異なる角度で反射され、並んで配列された受光ラインセンサ33の各受光素子に照射される。光が照射された受光素子は、電気信号を出力する。この受光ラインセンサ33からの電気信号をプロットすることで、各受光素子の受光感度を取得することができる。
【0041】
次に、照明光の分光強度分布を取得する(S102)。具体的には、分光放射輝度計等を用いて、白色LED21および紫色LED27から出射される照明光を測定することで、照明光の波長に対する分光強度分布を取得することができる。
【0042】
次に、これら受光素子の受光感度と照明光の分光強度分布とを基に、これらの特性を含む合成感度を算出する(S103)。ここで、fn(λ)はn番目の受光素子における合成感度であり、In(λ)はn番目の受光素子に入射される照明光の光強度であり、Dn(λ)はn番目の受光素子における受光感度であるとすると、fn(λ)は以下の式1により求められる。なお、受光ラインセンサ33が128個の受光素子を備えている場合は、nは1〜128の整数である。
【0043】
fn(λ)=In(λ)×Dn(λ) ・・・(1)
具体的には、照明光の光強度と受光素子の受光感度を乗じることで、この分光特性測定装置100の各受光素子における合成感度を求めることができる。このようにして、算出した合成感度を用いて、各受光素子における中心波長(合成中心波長)を算出する(S104)。受光素子ごとの受光感度特性における重心を中心波長とすればよい。そこで、重心である中心波長をλgとし、波長をλとし、この波長λにおける合成感度をS(λ)とすると、中心波長は、以下の式2で表すことができる。
【0044】
【数1】
【0045】
なお、各受光素子の中心波長は、分光特性測定装置100を調整するための装置により算出すればよい。分光特性測定装置100を調整するための装置は、例えばパソコン等とすればよい。
【0046】
このようにして、算出された各受光素子の中心波長は校正データの1つとして記憶部43に記憶される(S105)。なお、中心波長の算出は演算処理部42でなされればよい。
【0047】
さらに、キャリブレーション用のデータである白色校正板データを記憶部43に記憶させる(S106)。なお、白色校正板データは、それぞれの装置に固有のデータではなく、それぞれの白色校正板に固有のデータである。
【0048】
また、算出された中心波長や白色校正板のデータは、パソコン6を介して補助記録媒体に記憶されてもよい。すなわち、分光特性測定装置100と、合成中心波長データを記憶した補助記録媒体との組み合わせで測定するシステムを構成するようにしてもよい。
【0049】
以上の工程で、出荷前の分光特性測定装置100の校正が終了する。本実施の形態1に係る分光特性測定装置100は、上述のように、記憶部43に校正データを記憶している。校正データとしては、照明光の波長に対する分光強度分布に基づいて算出された、各受光素子における合成中心波長および白色校正板データである。
【0050】
次に、この分光特性測定装置100を用いて、測定試料24の分光特性を測定する方法について図5を用いて説明する。図5は実施の形態1に係る分光特性測定システムを用いた測定方法を示すフローチャートである。まず、測定前の校正を行う。図1に示した、実施の形態1に係る分光特性測定システムSにおいて、白色校正板を測定試料24として設置する。測定トリガ5を操作することで、測定が開始される。まず、オフセット補正を行うため、照明光は照射せずに測定を行う。つまり、白色校正板によるオフセット測光が行われる(S201)。具体的には、測定トリガ5からの測定開始の信号が入力されると、測定動作を行うよう、制御部4の測定制御部41は各部品を制御する。照明光が照射されない状態であるため、測定試料24から反射される光もない。つまり、反射率が0の状態の測定値が測定される。この際に出力された電気信号は制御部4に入力され、いったん記憶部43に記憶される。
【0051】
次に、照明光を照射した状態での、白色校正板の測光を行う(S202)。具体的には、測定制御部41は、発光回路1に、白色LED21および紫色LED27から、白色光および紫色光を出射させる。白色光は白色LED21の上方に設置された反射ミラー22に入射して反射し、トロイダルミラー23に入射する。紫色光は、直接トロイダルミラー23に入射する。そして、それらはトロイダルミラー23で反射し、白色校正板である測定試料24に照射される。測定試料24に白色光および紫色光が照射されることにより、測定試料24でそれらが反射して、その反射光がレンズ25で集束され、オプティカルファイバ26に結合される。反射光はオプティカルファイバ26中を伝播して、分光測定器3の入射スリット31を介して回折格子32に入射する。回折格子32において、前記反射光は分散され、すなわち波長ごとに異なる反射角度で反射され、受光ラインセンサ33に入射される。それにより、各受光素子に光が入力され、電気信号として出力される。出力された電気信号は制御部4に入力され、パソコン6に送られる。
【0052】
これら、白色校正板による測定値は、分光特性測定における基準とされる。パソコン6はステップS202において測定したデータと、ステップS201において測定したデータとの差を演算することでオフセット補正演算を行う(S203)。これにより算出された白色校正カウント値はパソコン6に記憶される。
【0053】
ステップS201〜S203によって、実施の形態1に係る分光特性測定システムSの測定前の校正が完了する。次に、実際の測定試料24の測定を開始する。まず、照明光を照射せずに、上記ステップS201と同様に、オフセット測光を行う(S204)。そして、測光により、受光ラインセンサ33の各受光素子から電気信号が出力され、出力された電気信号は制御部4に入力され、パソコン6に送られて記憶される。
【0054】
次に、ステップS202と同様に、照明光を照射した状態での、測定試料24の測光を行う(S205)。そして、測光により、受光ラインセンサ33の各受光素子から電気信号が出力され、出力された電気信号は制御部4に入力され、パソコン6に送られて記憶される。
【0055】
これら、ステップS204およびステップS205において測定されたデータをもとに、パソコン6は測定試料24のオフセット補正演算を行う(S206)。具体的には、ステップS203と同様に、ステップS205において測定したデータと、ステップS204において測定したデータとの差を演算することで、各受光素子の測光カウント値を求める。パソコン6はさらに、このようにして求めた、測定試料24における測光カウント値と、ステップS203で求めた白色校正カウント値との比率(測光カウント比率)を演算により求める(S207)。なお、このようにして得られた、各受光素子における測光カウント値は、その各受光素子に対応する中心波長における値である。すなわち、校正データである合成感度により算出された各受光素子に対応する中心波長(合成中心波長)における値である。そこで、任意の波長における測光カウント値に換算するため、3次補間を行う(S208)。パソコン6は、このようにして、求めた任意の波長における測光カウント値および白色校正カウント値等から、各波長の反射率を求める(S209)。測定試料24の反射率をRef(λ)とし、測定試料24の測光カウント値をCs(λ)とし、白色校正板カウント値をCc(λ)とし、出荷時に記憶部43に記憶された校正データであり、白色校正板の真の値である白色校正板データをW(λ)とすると、測定試料24の反射率Ref(λ)は、以下に示す式3で表すことができる。
Ref(λ)=(Cs(λ)/Cc(λ))・W(λ) ・・・(3)
このようにして、得られた各波長における反射率をもとにパソコン6は色彩演算を行う(S210)。さらに、パソコン6は得られた反射率および色彩演算の結果を表示する(S211)。
【0056】
上述の実施の形態1に係る分光特性測定システムSを用いて、実際に測定し、従来の分光特性測定システムと比較した。図6は実施の形態1の分光特性測定装置と、照明光として白色LEDを用いた従来の分光特性測定装置との性能評価を示すグラフである。図6においては、反射率が既知である測定試料24を、それぞれの分光特性測定装置を用いて測定し、その測定結果と既知の反射率との差を示している。図6中、一点鎖線で示した反射率は、照明光である白色LEDから出射された白色光の波長ごとの反射率Ref、すなわち光強度を表している。また、破線は、照明光として白色LEDを用いた従来の分光特性測定装置で求めた反射率と既知の反射率との差ΔRefを示している。また、実線は、実施の形態1の分光特性測定装置で求めた反射率と既知の反射率との差ΔRefを示している。図6に示されているように、白色LEDの波長の変化に対して、反射率の変化が顕著な箇所、具体的には波長が約500nm以下においては、破線で示した従来例は、0パーセントから外れた値となっているが、実線で示した実施の形態1は、全波長域において、略0パーセントである。このように、白色LEDを照明光として用いた場合でも、実施の形態1に係る分光特性測定装置においては、高精度を維持している。
【0057】
なお、分光特性測定装置100においては、1つの受光素子の合成感度だけでなく、例えばその受光素子に隣接する受光素子の合成感度を重み付け演算することで、受光素子の合成感度を算出してもよい。それにより、S/N(signal to noise ratio)比の向上等の効果を奏する。なお、重み付け演算に用いる合成感度は隣接する受光素子によるものだけでなく、それ以外の受光素子の合成感度でもよい。また、例えば、隣接する受光素子の合成感度を用いて重み付け演算する場合は、隣接する受光素子の合成感度には0.25を乗じ、中央受光素子の合成感度には0.5を乗じたものを加算する等すればよい。このように、重み付け演算を用いて、分光特性を測定する分光特性測定装置100の場合は、図4で示した校正方法においては、ステップS103において、合成感度を算出した後に、重み付け演算を行い算出された合成感度をもとに、ステップS104において中心波長を算出すればよい。具体的には、以下に示す式4を用いて、重み付け演算後の合成感度を求めればよい。ここで、n番目の受光素子における重み付け演算後の合成感度をTn(λ)とし、n番目の受光素子における合成感度をfn(λ)とし、各合成感度に乗じるウェイトを、W1およびW2とする。なお、W1は両隣の受光素子の合成感度に乗じるウェイトであり、W2は中央受光素子の合成感度に乗じるウェイトである。
【0058】
Tn(λ)=W1fn−1(λ)+W2fn(λ)+W1fn+1(λ)・・・(4)
このようにして、求めた合成感度Tn(λ)を用いて中心波長を求めればよい。
【0059】
また、このように、重み付け演算による合成感度をもとに求めた中心波長を記憶部43に記憶した分光特性測定装置100を用いて分光特性を測定する方法について説明する。図5で説明した測定方法において、ステップS203で白色校正カウント値を求めた後に、さらにパソコン6はこの白色校正カウント値に重み付け演算を施す。ここで、n番目の受光素子における重み付け演算後の白色校正カウント値であるCtnは、以下に示した式5により求めることができる。なお、Cnはn番目の受光素子におけるカウント値である。
【0060】
Ctn=W1Cn−1+W2Cn+W1Cn+1 ・・・(5)
このようにして求めた重み付け演算後の白色校正カウント値であるCtnはパソコン6に記憶される。
【0061】
また、ステップS206で行うオフセット補正演算により求めた各受光素子の測光カウント値においても、パソコン6は白色校正カウント値と同様に、重み付け演算を施す。そして、ステップS207において、重み付け演算後の各受光素子の測光カウント値と、重み付け演算後の白色校正カウント値との比率を演算により求めることで、測光カウント比率を求めればよい。
【0062】
このように、実施の形態1に係る分光特性測定システムにおいては、重み付け演算を用いて、より高精度の測定を行うことができる。
【0063】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る分光特性測定装置を含む分光特性測定システムについて説明する。なお、実施の形態2に係る分光特性測定システムの構成は、実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成と同一であるため、説明を省略する。また、実施の形態2に係る分光特性測定システムの説明において、各部材には実施の形態1と同一の符号を用い、説明には図1〜図3を用いる。実施の形態2に係る分光特性測定装置100は、発光していない物体だけでなく、光源等の発光している物体についても、その分光特性を測定できる点が、実施の形態1とは異なる。
【0064】
まず、実施の形態2に係る分光特性測定装置100の出荷時の校正方法について図7を用いて説明する。図7は実施の形態2に係る分光特性測定装置の校正方法を示すフローチャートである。まず、照明光の影響を受けない場合の受光部33における各受光素子の受光感度を取得する(S301)。具体的には、半値幅の十分に小さい単色光を出力可能な照射型分光器等により、分光測定部3に各波長成分の単色光を順次出力させる。各単色光は回折格子32にて波長ごとに異なる角度で反射され、並んで配列された受光ラインセンサ33の各受光素子に照射される。光が照射された受光素子は、電気信号を出力する。この受光ラインセンサ33からの電気信号をプロットすることで、各受光素子の受光感度を取得することができる。次に、取得した受光感度を用いて、各受光素子における中心波長を算出する(S302)。なお、このように、照明光の影響を考慮せずに、受光素子の受光感度にもとづいて算出された中心波長を受光系中心波長という。そして、この各受光素子の受光系中心波長は校正データの1つとして記憶部43に記憶される(S303)。次に、レベル校正係数の算出を行う(S304)。具体的には、分光放射輝度が既知であるレベル校正用の光源を測定試料24として、照明光を照射せずに分光測定を行い、受光ラインセンサ33からの電気信号をプロットする。このデータをもとに、既知である輝度と出力される電気信号との相関関係を示すレベル校正係数を演算処理部42により算出し、校正データの1つとして記憶部43に記憶させる(S305)。つまり、レベル校正係数は、測定値を算出するための基準となる。次に、照明光の波長に対する分光強度分布を取得する(S306)。具体的には、分光放射輝度計等を用いて、白色LED21および紫色LED27から出射される照明光を測定することで、照明光の波長に対する分光強度分布を取得することができる。
【0065】
次に、ステップS301で取得した各受光素子の受光感度と、ステップS306で取得した照明光の分光強度分布とをもとに、合成感度を算出する(S307)。なお、合成感度は、上記式1を用いて算出すればよい。具体的には、照明光の光強度と受光素子の受光感度を乗じることで算出される。このようにして、算出した合成感度を用いて、合成感度による各受光素子の中心波長(合成中心波長)を算出する(S308)。なお、中心波長は、受光素子ごとの受光感度特性における重心とすればよい。具体的には、上記式2を用いて算出すればよい。このようにして、算出された合成感度による合成中心波長は校正データの1つとして記憶部43に記憶される(S309)。
【0066】
さらに、キャリブレーション用のデータである白色校正板データを記憶部43に記憶させる(S310)。なお、白色校正板データは既存のものであり、それぞれの装置に固有のデータではなく、それぞれの白色校正板に固有のデータである。
【0067】
以上の工程で、出荷前の分光特性測定装置100の校正が終了する。本実施の形態2に係る分光特性測定装置100は、上述のように、記憶部43に校正データを記憶している。校正データとしては、ステップS302に、おいて算出した各受光素子における受光系中心波長、ステップS308において算出した照明光の分光強度分布を考慮して求めた、合成感度による各受光素子の合成中心波長、レベル校正係数および白色校正板データである。
【0068】
次に、この分光特性測定装置100を用いて、測定試料24の分光特性を測定する方法について図8を用いて説明する。図8は実施の形態2に係る分光特性測定装置を用いた測定方法を示すフローチャートである。上述のように、実施の形態2に係る分光特性測定装置100は、発光していない物体だけでなく、光源等の発光している物体についても、その分光特性を測定できる。まず、測定試料24として、非発光の物体を選択した場合と、発光する物体を選択した場合では、操作方法が異なる。その操作方法(測定モード)を選択する(S401)。非発光の物体を選択した場合は、実施の形態1において説明した図5のフローチャートの手順に沿って測定すればよいので、ここでは説明を省略する。なお、図5においては、ステップS208で行う3次補間に用いる合成感度による各受光素子に対応する中心波長として、校正データであるステップS308において算出した合成感度による各受光素子の合成中心波長を用いればよい。また、ステップS209において各波長の反射率を求める際に用いるW(λ)としては、校正データである白色校正板データを用いればよい。具体的には、パソコン6は、これらの計算の際に記憶部43から、これら校正データを読み出せばよい。
【0069】
また、ステップS401において光源等の発光する物体を選択した場合は、まず、測定試料24は設置せずに、測定部2にキャップを取り付けて外部から光が入らないようにした状態で、照明光は照射せずに測定するオフセット測光を行う(S402)。なお、測定試料24として、光源等の発光する物体を用いた場合は、測定において照明光を照射する必要はない。この測定により、受光ラインセンサ33から出力された電気信号は制御部4に入力され、パソコン6に送られて記憶される。次に、キャップを取りはずし、発光する物体である測定試料24を設置し、照明光は照射せずに測光する(S403)。そして、測光により得られたデータは、パソコン6に送られて記憶される。
【0070】
これら、ステップS402およびステップS403において測定されたデータをもとに、パソコン6は測定試料24のオフセット補正演算を行う(S404)。具体的には、ステップS403において測定したデータと、ステップS402において測定したデータとの差を演算することで、各受光素子の測光カウント値を求める。次に、レベル補正演算を行う(S406)。具体的には、各受光素子の中心波長における分光放射輝度を算出する。ここで、測定試料24の分光放射輝度をRad(λ)とし、測定試料24の測光カウント値をCs(λ)とし、測定試料24のレベル校正係数をLcal(λ)とすると、分光放射輝度をRad(λ)は、以下に示す式6で表すことができる。
【0071】
Rad(λ)=Cs(λ)・Lcal(λ) ・・・(6)
なお、式6の演算をするためには、校正データであるレベル校正係数が必要である。そこで、パソコン6は記憶部43からレベル校正係数を取得しておく。
【0072】
このようにして得られた、各受光素子における分光放射輝度は、ステップS302において算出した、その各受光素子に対応する受光系中心波長における値である。そこで、任意の波長における分光放射輝度に換算するため、3次補間を行う(S406)。パソコン6は、このようにして、求めた任意の波長における分光放射輝度から、色彩演算を行う(S407)。さらに、パソコン6は得られた分光放射輝度および色彩演算の結果を表示する(S408)。
【0073】
このように、実施の形態2に係る分光特性測定システムは、非発光の物体または発光する物体を測定試料24とすることができる。すなわち、光源色測定用および反射物体色測定用のいずれにおいても使用できる。また、白色LEDを照明光として用いているにもかかわらず、高精度を維持できる。また、白色LEDを照明光として用いていることから、照明光の長寿命化、小型化、軽量化等を実現できる。
【0074】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る分光特性測定装置を含む分光特性測定システムについて説明する。実施の形態3に係る分光特性測定システムは、校正データの1つである、合成感度による各受光素子の中心波長(合成中心波長)が分光特性測定装置ではなく、パソコンにより読み出し可能な補助記録媒体に記憶されていて、パソコンは補助記録媒体および分光特性測定装置の記憶部から校正データを読み出し、さらに測定データも用いて色彩演算等を行う。
【0075】
なお、実施の形態3に係る分光特性測定システムの構成は、実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成と同一であるため、説明を省略する。また、実施の形態3に係る分光特性測定システムの説明において、各部材には実施の形態1と同一の符号を用い、説明には図1〜図3を用いる。実施の形態3に係る分光特性測定システムSのパソコン6は、例えば、分光特性測定装置100とUSB等のインターフェースを介して接続されている。そして、パソコン6は、演算を行うためのCPUや、ROM、EEPROM、RAM、フラッシュメモリ等の記憶部を有する。さらに、パソコン6はCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)やメモリーカード等の補助記録媒体を装着あるいは脱着可能であり、これら補助記録媒体からのデータの読み出しや、補助記録媒体へのデータの書き込みが可能である。それにより、パソコン6における演算に用いるデータが記憶された補助記録媒体をパソコン6に装着して演算に必要なデータを読み出したり、パソコン6が算出したデータを補助記録媒体により保存しておくこと等が可能である。なお、実施の形態3に係る分光特性測定システムは、実施の形態2と同様に、発光していない物体だけでなく、光源等の発光している物体についても、その分光特性を測定できる。
【0076】
このような、実施の形態3に係る分光特性測定システムSにおける分光特性測定装置100の出荷時の校正方法は、図7のフローチャートに示されている。したがって、実施の形態2に係る分光特性測定装置の校正方法と同様に行えばよい。ただし、図7のステップS309において、実施の形態2においては、算出された合成感度による合成中心波長は記憶部43に記憶されるが、実施の形態3においては、算出された合成感度による合成中心波長は、記憶部43ではなくパソコン6により読み出しが可能である補助記録媒体に記憶される(S309)。これにより、合成感度による合成中心波長が記憶された補助記録媒体と分光特性測定装置とがセットで取り扱われる。
【0077】
実施の形態3に係る分光特性測定システムSにおいては、分光特性測定装置100と、色彩演算等の演算動作のプログラムがインストールされたパソコン6とが接続されて構成される。そして、このパソコン6には前記分光特性測定装置とセットである補助記録媒体が装着され、パソコン6はこの補助記録媒体に記憶されたデータを読み出して、測定データおよび分光特性測定装置に記憶された他の校正データも用いて色彩演算を行う。具体的には、実施の形態3に係る分光特性測定システムSにおける分光特性測定方法は、実施の形態2に係る分光特性測定方法と同様であるため、図8および図5のフローチャートの手順に沿って行えばよい。ただし、パソコン6による演算に用いられる、校正データの1つである合成感度による各受光素子の合成中心波長は、記憶部43ではなく補助記録媒体から読み出される。なお、パソコン6に色彩演算等の演算動作のプログラムをインストールする際に、合成感度による各受光素子の合成中心波長もパソコン6の記憶部に保存されることとしてもよい。その場合は、補助記録媒体を用いることなく、分光特性測定装置100がパソコン6に接続され、測定が開始されることでデータ等がパソコン6に送信されてきた場合に、パソコン6は、前記記憶部に保存されている合成感度による各受光素子の合成中心波長を用いて色彩演算を行うこととすればよい。
【0078】
以上、本実施の形態について説明したが、上述の校正方法および測定方法に限定されることはなく、照明光の波長に対する分光強度分布を取得し、その分光強度分布をもとに算出した合成中心波長を用いた校正方法または測定方法を行うのであれば、上記校正方法または測定方法以外の方法を用いてもよい。
【0079】
例えば、特開2005−69784号公報には、UV(Ultraviolet)−LED(紫外線LED)を波長補正検出用光源として備えた分光特性測定システムが開示されている。また、特表平10−508984号公報には、温度補正を行う分光特性測定システムが開示されている。このような、分光特性測定システムにおいても、照明光の波長に対する分光強度分布をもとに算出した中心波長を用いて、校正および測定を行うことで、照明光に白色LED等を用いても、高精度の測定を実現できる。
【0080】
また、照明部としては、図10の特性を示す白色LEDに限定されるわけではない。例えば、白色光を出射するLEDとしては、3種類のタイプがある。つまり、青色LEDチップの光を蛍光体材料に当てて黄色の光を出力し、青色と黄色の混色で白色光を作り出すもの、近紫外LEDチップが出す光を複数の蛍光体材料に当てて混色して白色光を作り出すもの、赤色、緑色、青色の各LEDを同時に光らせて混色して白色光を作り出ものがあるが、これらすべてにおいて、本実施の形態の照明部として用いることが可能であり、これらを用いた場合であっても、高精度の測定を実現できる。
【0081】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態1に係る分光特性測定システムの構成を説明するための図である。
【図2】実施の形態1に係る分光特性測定装置の測定部の構成を示す側面図である。
【図3】実施の形態1に係る分光特性測定装置の測定部において、白色LEDよりも下側の構成を示す上面図である。
【図4】実施の形態1に係る分光特性測定装置の校正方法を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1に係る分光特性測定システムを用いた測定方法を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1の分光特性測定装置と白色LEDを用いた従来の分光特性測定装置との性能評価を示すグラフである。
【図7】実施の形態2に係る分光特性測定装置の校正方法を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る分光特性測定装置を用いた測定方法を示すフローチャートである。
【図9】タングステンランプの波長強度分布を示すグラフである。
【図10】白色LEDの波長強度分布を示すグラフである。
【図11】照明光をタングステンランプとした場合における受光素子の受光感度について説明する第1のグラフであって、図11(A)は受光素子の受光感度および照明光の光強度を示すグラフであり、図11(B)は受光素子の合成感度を示すグラフである。
【図12】照明光を白色LEDとした場合における受光素子の受光感度について説明する第1のグラフであって、図12(A)は受光素子の受光感度および照明光の光強度を示すグラフであり、図12(B)は受光素子の合成感度を示すグラフである。
【図13】照明光をタングステンランプとした場合における受光感度について説明する第2のグラフであって、図13(A)は各受光素子の受光感度を示すグラフであり、図13(B)は重み付け後の受光感度を示すグラフである。
【図14】照明光を白色LEDとした場合における受光感度について説明する第2のグラフであって、図14(A)は受光素子の受光感度を示すグラフであり、図14(B)は重み付け後の受光感度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0083】
1 発光回路
2 測定部
3 分光測定部
4 制御部
5 測定トリガ
6 パソコン
21 白色LED
22 反射ミラー
23 トロイダルミラー
24 測定試料
25 レンズ
26 オプティカルファイバ
27 紫色LED
31 入射スリット
32 回折格子
33 受光ラインセンサ
41 測定制御部
42 演算処理部
43 記憶部
100 分光特性測定装置
S 分光特性測定システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料に照明光を照射する照明部と、
前記照明光を照射された前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させる分光部と、
前記分光部により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部と、
前記照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された、前記受光素子の合成中心波長を記憶する記憶部とを備えた分光特性測定装置。
【請求項2】
前記合成中心波長は、前記受光素子に対する前記照明光の光強度および当該受光素子の受光感度に基づいて算出された、受光素子の合成感度により算出される請求項1に記載の分光特性測定装置。
【請求項3】
前記受光素子の合成感度は、さらに当該受光素子の周辺に配置された受光素子の前記合成感度を考慮して算出されている請求項2に記載の分光特性測定装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記照明光の分光強度分布を考慮せずに、前記受光素子の受光感度に基づいて予め算出された、前記受光素子の受光系中心波長と、
光源色を測定する際に、測定値を算出するための基準となる、レベル校正係数とをさらに記憶している請求項1に記載の分光特性測定装置。
【請求項5】
前記照明部は白色発光ダイオードである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の分光特性測定装置。
【請求項6】
測定試料に照明光を照射し、前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させ、分散された光を複数の受光素子で受光し、電気信号に変換して出力する分光特性測定装置の校正方法であって、
前記受光素子の受光感度を取得する工程と、
前記受光素子に対する前記照明光の光強度を取得する工程と、
前記取得した、前記受光感度および前記照明光の光強度に基づいて、前記受光素子の合成感度を算出する工程と、
前記合成感度より前記受光素子の合成中心波長を算出する工程と、
前記合成中心波長を前記分光特性測定装置に記憶させる工程とを備えた分光特性測定装置の校正方法。
【請求項7】
測定試料に照明光を照射する照明部と、
前記照明光を照射された前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させる分光部と、
前記分光部により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部と、
前記複数の受光素子の出力と、前記照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された前記受光素子の合成中心波長とを用いて、前記測定試料の分光特性を算出する演算装置とを備えた分光特性測定システム。
【請求項1】
測定試料に照明光を照射する照明部と、
前記照明光を照射された前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させる分光部と、
前記分光部により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部と、
前記照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された、前記受光素子の合成中心波長を記憶する記憶部とを備えた分光特性測定装置。
【請求項2】
前記合成中心波長は、前記受光素子に対する前記照明光の光強度および当該受光素子の受光感度に基づいて算出された、受光素子の合成感度により算出される請求項1に記載の分光特性測定装置。
【請求項3】
前記受光素子の合成感度は、さらに当該受光素子の周辺に配置された受光素子の前記合成感度を考慮して算出されている請求項2に記載の分光特性測定装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記照明光の分光強度分布を考慮せずに、前記受光素子の受光感度に基づいて予め算出された、前記受光素子の受光系中心波長と、
光源色を測定する際に、測定値を算出するための基準となる、レベル校正係数とをさらに記憶している請求項1に記載の分光特性測定装置。
【請求項5】
前記照明部は白色発光ダイオードである、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の分光特性測定装置。
【請求項6】
測定試料に照明光を照射し、前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させ、分散された光を複数の受光素子で受光し、電気信号に変換して出力する分光特性測定装置の校正方法であって、
前記受光素子の受光感度を取得する工程と、
前記受光素子に対する前記照明光の光強度を取得する工程と、
前記取得した、前記受光感度および前記照明光の光強度に基づいて、前記受光素子の合成感度を算出する工程と、
前記合成感度より前記受光素子の合成中心波長を算出する工程と、
前記合成中心波長を前記分光特性測定装置に記憶させる工程とを備えた分光特性測定装置の校正方法。
【請求項7】
測定試料に照明光を照射する照明部と、
前記照明光を照射された前記測定試料からの放射光を波長ごとに分散させる分光部と、
前記分光部により分散された光を波長ごとに受光し、電気信号に変換して出力する複数の受光素子を有する受光部と、
前記複数の受光素子の出力と、前記照明光の分光強度分布に基づいて予め算出された前記受光素子の合成中心波長とを用いて、前記測定試料の分光特性を算出する演算装置とを備えた分光特性測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−60525(P2010−60525A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229015(P2008−229015)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
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