説明

分割三次元オブジェクトデータ抽出装置、要素画像生成装置、分割三次元オブジェクトデータ抽出プログラム、および要素画像生成プログラム

【課題】三次元オブジェクトデータから、フレーム画像の部分領域に対応する部分要素画像群を生成するために必要な部分データを抽出する。
【解決手段】要素画像生成装置2の分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値を示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、要素レンズ群の範囲と、分割画像領域と要素レンズ群との焦点距離とによって定まる空間分割領域に含まれる頂点を有するポリゴンを抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割三次元オブジェクトデータ抽出装置、要素画像生成装置、分割三次元オブジェクトデータ抽出プログラム、および要素画像生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インテグラル・フォトグラフィ方式の立体画像表示装置は、画像表示部の前面に設けられたレンズアレイを通して立体画像を表示するものである。具体的には、この立体画像表示装置は、レンズアレイの要素レンズ群に対応する要素画像群を表示する。
このインテグラル・フォトグラフィ方式による立体画像表示技術において、三次元モデルのデータである三次元オブジェクトデータから要素画像群を生成する技術が知られている。要素画像群に含まれる各要素画像は、例えば、画素ごとに光線の方向を求め、画素値を計算して生成されるものである。よって、要素画像群の生成には膨大な演算処理が必要であり、1台のコンピュータ装置が三次元オブジェクトデータから要素画像群を生成するのにかかる時間は多大である。
【0003】
従来、三次元オブジェクトデータから要素画像群を生成する処理を複数のコンピュータ装置に分散処理させることによって、要素画像群の生成にかかる時間を短縮する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この分散処理の一手順を次に示す。まず、マスタコンピュータ装置が、フレーム画像の領域を複数の領域に分割して複数のコンピュータ装置にそれぞれ割り当る。次に、各コンピュータ装置が、各領域の要素画像群を生成してその要素画像群をマスタコンピュータ装置に供給する。次に、マスタコンピュータ装置が、取得した複数の要素画像群を結合してフレーム画像の要素画像群を生成する。この分散処理では、各コンピュータ装置は、三次元オブジェクトデータの全てのデータを用いて、フレーム画像の部分領域に対応する要素画像群を生成していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nobuyuki Sakai, Nobuhiko Hata, Hongen Liao and Takeyoshi Dohi, “High performance computing for parallel rendering in surgical autostereoscopic display and navigation”, CARS 2003, ICS Volume 1256, pp. 403-407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の分散処理の方式では、要素画像群の生成処理に関する負荷が依然として大きく、さらなる時間の短縮が望まれていた。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、三次元オブジェクトデータから要素画像群を生成する処理について、さらなる高速化をはかることのできる、分割三次元オブジェクトデータ抽出装置、要素画像生成装置、分割三次元オブジェクトデータ抽出プログラム、および要素画像生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である分割三次元オブジェクトデータ抽出装置は、ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値を示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、前記要素レンズ群の範囲と、前記分割画像領域と前記要素レンズ群との距離とによって定まる空間分割領域に含まれる前記頂点を有する前記ポリゴンを抽出する分割三次元オブジェクトデータ抽出部、を備えることを特徴とする。
このように構成したことにより、画像領域が分割された分割画像領域から所定範囲の要素レンズ群を通して像を実現可能な空間分割領域を規定し、その空間分割領域に含まれる頂点を有するポリゴンを三次元オブジェクトデータから抽出するようにした。これにより、本発明の一態様である分割三次元オブジェクトデータ抽出装置は、要素画像生成装置が分割要素画像群を生成するのに必要な部分データ(リソース)を、三次元オブジェクトデータから抽出することができる。
[2]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である分割三次元オブジェクトデータ抽出装置は、前記画像領域を複数の分割画像領域に分割し、これら複数の分割画像領域それぞれの範囲を前記分割三次元オブジェクトデータ抽出部に供給する画像領域分割部をさらに備えることを特徴とする。
[3]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である要素画像生成装置は、ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値および色データを示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、前記要素レンズ群の範囲と、前記分割画像領域と前記要素レンズ群との距離とによって定まる空間分割領域に含まれる前記頂点を有する前記ポリゴンおよび色データを抽出する分割三次元オブジェクトデータ抽出部と、前記分割三次元オブジェクトデータ抽出部が抽出した前記ポリゴンおよび色データに基づいて前記分割画像領域に対応する要素画像群を生成する分割要素画像群生成部と、を備えることを特徴とする。
[4]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である分割三次元オブジェクトデータ抽出プログラムは、コンピュータを、ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値を示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、前記要素レンズ群の範囲と、前記分割画像領域と前記要素レンズ群との距離とによって定まる空間分割領域に含まれる前記頂点を有する前記ポリゴンを抽出する分割三次元オブジェクトデータ抽出部、として機能させる。
[5]上記の課題を解決するため、本発明の一態様である要素画像生成プログラムは、コンピュータを、ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値および色データを示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、前記要素レンズ群の範囲と、前記分割画像領域と前記要素レンズ群との距離とによって定まる空間分割領域に含まれる前記頂点を有する前記ポリゴンおよび色データを抽出する分割三次元オブジェクトデータ抽出部と、前記分割三次元オブジェクトデータ抽出部が抽出した前記ポリゴンおよび色データに基づいて前記分割画像領域に対応する要素画像群を生成する分割要素画像群生成部と、として機能させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、三次元オブジェクトデータから要素画像群を生成する処理について、さらなる高速化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態における、分散処理システムの概略のシステム構成図である。
【図2】同実施形態において、立体画像表示装置が備える表示出力部の概略の構成を示す図である。
【図3】同実施形態において、サーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態において、要素画像生成装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】人物のオブジェクトの三次元形状をポリゴンにより表した図である。
【図6】三次元オブジェクトデータのデータ構成を示す図である。
【図7】レンズアレイを通して表示部を見た場合の、フレーム画像の画像領域を模式的に表した図である。
【図8】xy平面とyz平面とzx平面とにおける空間分割領域断面示す三面図である。
【図9】分割画像領域属性によって定まる空間分割領域のyz平面における断面図である。
【図10】分割画像領域属性によって定まる空間分割領域のxz平面における断面図である。
【図11】第1実施形態において、分散処理システムにおけるサーバ装置および要素画像生成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】同実施形態において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部が実行する分割三次元オブジェクトデータ抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態における、分散処理システムの概略のシステム構成図である。
【図14】同実施形態において、サーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図15】同実施形態において、要素画像生成装置の機能構成を示すブロック図である。
【図16】同実施形態において、分散処理システムにおけるサーバ装置および要素画像生成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】正方格子型配列のレンズアレイを備える立体画像表示装置の表示出力部の概略の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
本発明の第1実施形態である分割三次元オブジェクトデータ抽出装置と要素画像生成装置とが適用された分散処理システムについて説明する。図1は、本実施形態における分散処理システムの概略のシステム構成図である。同図に示すように、分散処理システム10は、ネットワーク3を介して、サーバ装置1と7台の要素画像生成装置2(要素画像生成装置2−1〜2−7)とをそれぞれ接続した構成を有している。
この分散処理システム10は、インテグラル・フォトグラフィ方式による立体画像表示装置(不図示)に表示させる要素画像群を、三次元オブジェクトデータから生成するシステムである。
【0010】
サーバ装置1は、三次元オブジェクトデータを記憶する装置であり、例えばコンピュータ装置である。また、サーバ装置1は、立体画像表示装置に表示させるフレーム画像の画像領域を分割し、要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれに対して分割画像領域を通知する。また、サーバ装置1は、要素画像生成装置2−1〜2−7からそれぞれ取得した分割要素画像群を結合して立体画像表示装置の1フレーム画像分の要素画像群を生成し記憶する。
【0011】
要素画像生成装置2は、分割要素画像群を生成する装置であり、例えばコンピュータ装置である。要素画像生成装置2は、サーバ装置1から三次元オブジェクトデータを取得する。また、要素画像生成装置2は、サーバ装置1から通知された分割画像領域に対応する空間分割領域を計算し、その空間分割領域に含まれる三次元オブジェクトデータの部分データを分割三次元オブジェクトデータとして抽出する。また、要素画像生成装置2は、分割三次元オブジェクトデータに基づいて分割要素画像群を生成し、その分割要素画像群をサーバ装置1に供給する。
【0012】
ネットワーク3は、少なくともサーバ装置1と要素画像生成装置2と間の通信を行う電気通信回線である。この電気通信回線は、無線回線もしくは有線回線またはこれらの回線の組み合わせである。ネットワーク3は、例えば、インターネットまたはLAN(Local Area Network)である。
【0013】
次に、立体画像表示装置について説明する。図2は、立体画像表示装置が備える表示出力部の概略の構成を示す図である。同図(a)は、表示出力部が要素画像群を表示することにより、立体像を観察できる様子を模式的に示した図である。なお、同図(a)は、側面図である。また、同図(b)は、表示出力部に含まれるレンズアレイの表示面側から見た模式的な正面図である。
【0014】
図2(a)に示すように、表示出力部は、表示部21とレンズアレイ22とを備える。表示部21は、分散処理システム10が生成した要素画像群を表示する表示パネルであり、例えば、液晶表示パネルやプラズマ・ディスプレイ・パネルである。レンズアレイ22は、同図(b)に示すように、複数の要素レンズを、各要素レンズの光軸が平行となるように平面上に配列して構成または一体的に形成したものである。各要素レンズは凸レンズであり、その焦点距離や光透過率等の光学的特性は全ての要素レンズにおいて同一である。同図(b)における要素レンズの配列は俵積型配列である。隣接する2個の要素レンズにおける各要素レンズの中心点間の距離をピッチとすると、レンズアレイ22においては、水平方向の要素レンズのピッチRは、要素レンズの直径に等しく、垂直方向の要素レンズのピッチRは、ピッチRの(√3)/2倍である。ただし、ピッチRおよびピッチRは、表示部21の画素ピッチの非整数倍である。
【0015】
なお、本実施形態において、レンズアレイ22や要素画像群を図示する場合は、分かりやすくするために図を簡略化し、要素レンズや要素画像の個数を少なくしている。
【0016】
表示部21に表示されるフレーム画像である要素画像群は、図2(a)に示すように、複数の要素画像EIの集合(群)である。1個の要素画像EIは、1個の要素レンズにより空間中に拡大投影される。よって、要素画像群は、要素画像EIが同図(b)のように俵積型状に配列された画像である。したがって、レンズアレイ22は、同図(a)に示すように、表示部21の前面側に、要素レンズの焦点距離F分の距離をおくとともに、各要素レンズが各要素画像EIを捉えることができる位置に設けられる。
このようにして設けられた立体画像表示装置が要素画像群を表示すると、同図(a)に示すように、所定の位置において立体像SIを視覚的に得ることができる。
【0017】
次に、サーバ装置1の機能構成について説明する。図3は、サーバ装置1の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、サーバ装置1は、三次元オブジェクトデータ記憶部101と、三次元オブジェクトデータ供給部102と、立体画像表示装置パラメータ記憶部103と、画像領域分割部104と、分割画像領域属性供給部105と、分割要素画像群取得部106と、分割要素画像群結合部107と、要素画像群記憶部108とを備える。
【0018】
三次元オブジェクトデータ記憶部101は、三次元オブジェクトデータを記憶する。この三次元オブジェクトデータのデータ構成については後述する。三次元オブジェクトデータ供給部102は、三次元オブジェクトデータ記憶部101から三次元オブジェクトデータを読み出して、その三次元オブジェクトデータを要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれに供給する。
【0019】
立体画像表示装置パラメータ記憶部103は、図2に示した立体画像表示装置の表示出力部に関するパラメータを記憶する。具体的には、パラメータは、要素レンズの焦点距離Fと、レンズアレイ22における水平方向の要素レンズのピッチRと、垂直方向の要素レンズのピッチRと、表示部21の水平方向および垂直方向それぞれの画素数と、表示部21の画素ピッチとを含むデータである。立体画像表示装置パラメータ記憶部103は、このパラメータを予め記憶する。
【0020】
画像領域分割部104は、立体画像表示装置パラメータ記憶部103からパラメータを読み込み、そのパラメータと分散処理させる要素画像生成装置2の台数の値とに基づいて、フレーム画像の領域を、要素画像の領域に対応させて当該台数分の分割画像領域に分割する。分散処理させる要素画像生成装置2の台数の値は、画像領域分割部104に予め記憶されるかまたは外部から入力されるものであり、本実施形態においては、要素画像生成装置2−1〜2−7の台数である“7”である。そして、画像領域分割部104は、分散処理させる要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれに対応させて、分割画像領域の分割画像領域属性を生成する。分割画像領域属性は、フレーム画像の領域における分割画像領域の範囲とその分割画像領域に対応する要素レンズ群の範囲とを示すデータと、分割画像領域と要素レンズ群との距離である要素レンズの焦点距離を含むパラメータとを有するデータである。この分割画像領域属性および分割画像領域については、その詳細を後述する。
分割画像領域属性供給部105は、分散処理させる要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれに対して、分割画像領域属性を供給する。
【0021】
分割要素画像群取得部106は、分散処理させた要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれから分割要素画像群を取得する。分割要素画像群は、画像領域分割部104が分割した分割画像領域に対応して生成された要素画像群であり、1フレーム画像分の要素画像群の部分領域である。
分割要素画像群結合部107は、分割要素画像群106から1フレーム画像分の分割要素画像群を取得して結合しフレーム画像全体における要素画像群を生成する。要素画像群記憶部108は、分割要素画像群結合部107が生成した要素画像群を記憶する。
【0022】
サーバ装置1において、三次元オブジェクトデータ記憶部101と立体画像表示装置パラメータ記憶部103と要素画像群記憶部108とは、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等のデータ記憶装置で構成される。また、データ記憶装置は、サーバ装置1に着脱可能なフレキシブルディスクや光ディスク等のディスク媒体、または半導体記録媒体であってもよい。
【0023】
次に、要素画像生成装置2の機能構成について説明する。図4は、要素画像生成装置2の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、要素画像生成装置2は、三次元オブジェクトデータ取得部201と、三次元オブジェクトデータ記憶部202と、分割画像領域属性取得部203と、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205と、分割要素画像群生成部206と、分割要素画像群供給部207とを備える。
【0024】
三次元オブジェクトデータ取得部201は、サーバ装置1から供給される三次元オブジェクトデータを取得する。三次元オブジェクトデータ記憶部202は、三次元オブジェクトデータ取得部201が取得した三次元オブジェクトデータを記憶する。分割画像領域属性取得部203は、サーバ装置1から供給される分割画像領域属性を取得する。
【0025】
分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、三次元オブジェクトデータ記憶部202に記憶された三次元オブジェクトデータと、分割画像領域属性取得部203が取得した分割画像領域属性によって規定される空間分割領域とに基づいて、三次元オブジェクトデータから、空間分割領域に含まれる分割三次元オブジェクトデータを抽出する。なお、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、不図示の記憶部を備えている。
【0026】
分割要素画像群生成部206は、パラメータと分割三次元オブジェクトデータとに基づいて、分割画像領域に対応する分割要素画像群を生成する。分割要素画像群供給部207は、分割要素画像群生成部206が生成した分割要素画像群をサーバ装置1に供給する。
【0027】
次に、三次元オブジェクトデータについて説明する。三次元オブジェクトデータは、オブジェクトの三次元形状の情報と色の情報とを含むデータである。オブジェクトの三次元形状は、オブジェクトの輪郭に離散的に存在する点に基づき、これらの点を頂点とする多角形のポリゴンの組み合わせにより表される。本実施形態においては、ポリゴンは三角形であるが、三角以上の角数の多角形でもよい。また、オブジェクトの色は、ポリゴンの各頂点に対応付けられた色データに基づき決定されるポリゴンの色により表される。図5は、人物のオブジェクトの三次元形状をポリゴンにより表した図である。なお、同図においては、ポリゴンの色を省略している。
【0028】
図6は、三次元オブジェクトデータのデータ構成を示す図である。同図に示すように、三次元オブジェクトデータは、頂点属性データとポリゴンデータとを含む。
頂点属性データは、三次元オブジェクトの形状を表す複数の点それぞれの属性情報である。これらの点は、三次元オブジェクトの輪郭に離散的に存在する頂点であり、例えば、レンジセンサによって計測された三次元物体の形状の頂点や、コンピュータによって生成されたコンピュータグラフィックスの頂点である。頂点属性データは、点ごとに、頂点インデックスと座標値と色データとを関係付けたレコードを含む。頂点インデックスは、点の識別情報である。座標値は点の三次元位置を示す三次元直交座標系上の座標値であり、各軸における座標値は例えば浮動小数点形式で表される数値データである。色データは、点の色を示すデータであり、サンプリングした点における色情報である。
【0029】
ポリゴンデータは、三次元オブジェクトの形状を表す複数の点を含む複数のポリゴンを示すデータである。各ポリゴンは、3個の頂点によって特定される。ポリゴンデータは、ポリゴンごとの、ポリゴンインデックスと頂点インデックスセットとを関係付けたレコードを含む。ポリゴンインデックスは、ポリゴンの識別情報である。頂点インデックスセットは、ポリゴンを特定する3個の点それぞれの頂点インデックスである。
つまり、三次元オブジェクトデータは、ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値および色データを示すデータである。
【0030】
次に、分割画像領域属性および分割画像領域について説明する。図7は、レンズアレイ22を通して表示部21を見た場合の、フレーム画像の画像領域を模式的に表した図である。同図において、レンズアレイ22の複数の要素レンズそれぞれは不図示である。同図に示すように、フレーム画像の画像領域は、要素画像EIの領域を多数含んでいる。これら多数の要素画像EIの配列は、図2におけるレンズアレイ22の要素レンズの配列と等しい。すなわち、レンズアレイ22の複数の要素レンズそれぞれをピンホールとしてモデル化すると、各ピンホールの位置は各要素画像EIの中心の位置に対応する。また、隣接する2個の要素画像EIにおける各要素画像EIの中心点間の距離を要素画像ピッチとすると、水平方向の要素画像ピッチは要素レンズのピッチRと等しく、また垂直方向の要素画像ピッチは要素レンズのピッチRと等しい。
【0031】
図7に示すように、サーバ装置1の画像領域分割部104は、水平方向のx軸と垂直方向のy軸とによる直交軸(原点は点O)をレンズアレイ22の平面上に設ける。例えば、同図では、フレーム画像の中心位置に存在する要素画像EIの中心位置に点Oを合わせて直交軸を設けている。なお、点Oの位置は、フレーム画像の画像領域内にあってもよいし画像領域外にあってもよい。
【0032】
画像領域分割部104は、立体画像表示装置パラメータ記憶部103から読み込んだパラメータと要素画像生成装置の台数とに基づいて、フレーム画像の領域を要素画像生成装置の台数分の分割画像領域に分割する。図7は、画像領域分割部104がフレーム画像の領域を3個の分割画像領域71〜73に分割した例を示している。画像領域分割部104は、要素画像の境界において分割画像領域への分割を行なう。この例では、分割画像領域71〜73のそれぞれは、x軸方向に並ぶ3行分の要素画像の領域を含んでいる。言い換えれば、画像領域分離部104は、y座標の値に応じて分割画像領域への分割を行なう。
頂点属性データやポリゴンデータが、頂点のy座標値の順で記憶媒体に記憶されている場合には、上記の例のようにx軸と平行な境界線で分割画像領域への分割を行なうことにより、後述する分割三次元オブジェクトデータ抽出処理を実行する際に、単一の分割画像領域に対応するポリゴンデータや頂点属性データが、記憶媒体内の特定のセグメントに集中して存在することとなる。したがって、分割三次元オブジェクトデータ抽出処理において効率的にデータアクセスすることが可能となり、処理がより一層高速化される。
【0033】
これと同様に、画像領域分割部104が、y軸と平行な境界線で、フレーム画像から分割画像領域への分割を行うようにすることも好ましい。頂点属性データやポリゴンデータが、頂点のx座標値の順で記憶媒体に記憶されている場合には、上記と同様の理由により、分割三次元オブジェクトデータ抽出処理において効率的にデータアクセスすることが可能となり、処理がより高速化される。
言い換えれば、画像領域分割部104が、表示部21の水平方向または垂直方向への分割を行なうようにすることが好ましい。
さらに言い換えれば、画像領域分割部104が、頂点属性データやポリゴンデータの記憶媒体内での並び順に応じて、フレーム画像の分割画像領域への分割を行なうようにすることが好ましい。
【0034】
画像領域分割部104は、レンズアレイ22における要素レンズの位置と要素レンズに対応する要素画像EIの位置とを、x軸方向およびy軸方向における二次元の並び番号で特定する。つまり、図7に示すように、要素レンズおよび要素画像EIは、xy直交座標系における整数座標値(i,j)によってインデックスが割り振られる。
【0035】
画像領域分割部104は、分割画像領域を特定する情報である分割画像領域属性を、分散処理させる要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれに対応させて生成する。つまり、画像領域分割部104は、分散処理させる要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれに対応させて、分割画像領域に含まれる要素レンズおよび要素画像EIの二次元の並び番号を選択し、その二次元の並び番号と立体画像表示装置パラメータ記憶部103から読み出したパラメータとを含めた分割画像領域属性を生成する。
例えば、図7に示した分割画像領域72についての二次元の並び番号は、(−6,−1),(−5,−1),・・・,(5,1)、(6,1)と、(−6,0),(−5,0),・・・,(6,0)、(7,0)と、(−6,1),(−5,1),・・・,(5,1)、(6,1)とである。画像領域分割部104は、分割画像領域72に含まれる全ての二次元の並び番号を分割画像領域属性に含めるようにしてもよいし、分割画像領域72の座標値の対角2点の座標値である(−6,−1)および(7,1)のみを分割画像領域72の座標値の代表として分割画像領域属性に含めるようにしてもよい。
【0036】
次に、空間分割領域について説明する。図8は、xy平面とyz平面とzx平面とにおける空間分割領域断面示す三面図である。同図に示すx軸、y軸、z軸は、直交座標軸である。また、同図におけるx軸およびy軸は、図7におけるx軸およびy軸と同一の軸である。空間分割領域は、分割画像領域に対応する空間領域である。この空間分割領域は、第1の空間領域と第2の空間領域からなり、第1の空間領域は、表示部21のフレーム画像の分割画像領域に分割要素画像群を表示させた場合に、その分割画像領域に対応するレンズアレイ22の要素レンズ群によって像を再現可能な領域である。また、第2の空間領域は、xy平面に対して前記第1の空間領域と面対称な空間領域である。
【0037】
図8(a)は、空間分割領域のxy平面における断面図である。この図において、分割画像領域81は、表示部21の表示面の一部である。また要素画像EIは、分割画像領域81に含まれる。そして、断面82xyは、分割画像領域81(同図においてハッチングした要素画像EI)に対応する全ての要素レンズの中心点を含む最小の長方形である。
同図(b)は、空間分割領域のyz平面における断面図である。断面82yzは、y軸を中心としてz軸の正方向に第1の空間領域の断面82yz1を有するとともに、z軸の負方向に第2の空間領域の断面82yz2を有する。z軸の正方向と負方向とにそれぞれ進むにつれて、各断面のy軸方向の幅は比例的に広くなる。
同図(c)は、空間分割領域のxz平面における断面図である。断面82xzは、x軸を中心としてz軸の正方向に第1の空間領域の断面82xz1を有するとともに、z軸の負方向に第2の空間領域の断面82xz2を有する。z軸の正方向と負方向とにそれぞれ進むにつれて、各断面のx軸方向の幅は比例的に広くなる。
【0038】
図9は、分割画像領域属性によって定まる空間分割領域のyz平面における断面図である。なお、同図に示す空間分割領域は、図8に示した空間分割領域と異なるものであるため、異なる符号を付している。また、図9の説明においては、要素レンズをピンホールにモデル化して説明する。同図に示す空間分割領域は、x軸に平行な4枚の平面a,b,c,dで仕切られる空間である。つまり、その空間分割領域のyz平面における断面91yzは、同図における平面aより下で且つ平面bより上の領域と、平面cより下で且つ平面dより上の領域とを合わせたものである。同図において、分割画像領域に対応するピンホールのうち、y軸上負方向の端にあるピンホール92のy座標値はR・mであり、y軸上正方向の端にあるピンホール93のy座標値はR・mである。
また、ピンホール92に対応する要素画像を表示部21に表示させてピンホール92を通して投影させたときの、ピンホール92から要素画像に向かう角度をθとすると、この角度θは、平面aと平面cとが交わるときにyz平面上でなす角度である。同様に、ピンホール93に対応する要素画像を表示部21に表示させてピンホール93を通して投影させたときの、ピンホール93から要素画像に向かう角度もθであり、この角度θは、平面bと平面dとが交わるときにyz平面上でなす角度である。
【0039】
表示部21の表示面と各要素レンズの中心点を含む面との距離は要素レンズの焦点距離に等しいため、角度θ/2は下記の式(1)のように表される。ここで、Rは、要素レンズであるピンホールのy軸方向のピッチであり、Fは要素レンズと表示部21との間隔、すなわち要素レンズの焦点距離である。
【0040】
【数1】

【0041】
なお、上記の平面a,b,c,dは、それぞれ、下記の式(2)から式(5)までにより表される。
【0042】
【数2】

【0043】
【数3】

【0044】
【数4】

【0045】
【数5】

【0046】
図10は、分割画像領域属性によって定まる空間分割領域のxz平面における断面図である。なお、同図の説明においても、要素レンズをピンホールにモデルして説明する。同図に示す空間分割領域は、y軸に平行な4枚の平面e,f,g,hで仕切られる空間である。つまり、その空間分割領域のxz平面における断面101xzは、同図における平面eより下で且つ平面fより上の領域と、平面gより下で且つ平面hより上の領域とを合わせたものである。同図において、分割画像領域に対応するピンホールのうち、x軸上負方向の端にあるピンホール102のx座標値はR・nであり、x軸上正方向の端にあるピンホール103のx座標値はR・nである。
また、ピンホール102に対応する要素画像を表示部21に表示させてピンホール102を通して投影させたときの、ピンホール102から要素画像に向かう角度をφとすると、この角度φは、平面fと平面hとが交わるときにxz平面上でなす角度である。同様に、ピンホール103に対応する要素画像を表示部21に表示させてピンホール103を通して投影させたときの、ピンホール103から要素画像に向かう角度もφであり、この角度φは、平面eと平面gとが交わるときにxz平面上でなす角度である。
【0047】
表示部21の表示面と各要素レンズの中心点を含む面との距離は要素レンズの焦点距離に等しいため、角度φ/2は下記の式(6)のように表される。ここで、Rは、要素レンズであるピンホールのx軸方向のピッチであり、Fは要素レンズと表示部21との間隔、すなわち要素レンズの焦点距離である。
【0048】
【数6】

【0049】
なお、上記の平面e,f,g,hは、それぞれ、下記の式(7)から式(10)までにより表される。
【0050】
【数7】

【0051】
【数8】

【0052】
【数9】

【0053】
【数10】

【0054】
次に、第1実施形態における分散処理システム10の動作について説明する。図11は、分散処理システム10におけるサーバ装置1および要素画像生成装置2の処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートでは、要素画像生成装置2−1〜2−7のうち1台のみを要素画像生成装置2として示している。
まず、同図におけるサーバ装置1の処理手順について説明する。ステップS101において、三次元オブジェクトデータ供給部102は、三次元オブジェクトデータ記憶部101から三次元オブジェクトデータを読み込み、その三次元オブジェクトデータを要素画像生成装置2に供給する。
【0055】
次に、ステップS102において、画像領域分割部104は、立体画像表示装置パラメータ記憶部103からパラメータを読み込むとともに、当該画像領域分割部104が記憶している要素画像生成装置2の台数の値“7”を読み出す。次に、画像領域分割部104は、パラメータと分散処理させる要素画像生成装置2の台数の値とに基づいて、フレーム画像の領域を要素画像の領域に対応させて当該台数分の分割画像領域に分割する。そして、画像領域分割部104は、前述したように、分散処理させる要素画像生成装置2に対応させて、分割画像領域に含まれる要素レンズおよび要素画像の二次元の並び番号を選択し、その二次元の並び番号とパラメータとを含めた分割画像領域属性を生成する。
【0056】
次に、ステップS103において、分割画像領域属性供給部105は、分割画像領域属性を各要素画像生成装置2に供給する。
ステップS104において、要素画像群取得部106は、分散処理させた要素画像生成装置2から供給される分割要素画像群を取得する。
次に、ステップS105において、分割要素画像群結合部107は、分割要素画像群のデータを結合してフレーム画像全体における要素画像群を生成し、この要素画像群を要素画像群記憶部108に記憶する。
【0057】
次に、図11における要素画像生成装置2の処理手順について説明する。ステップS111において、三次元オブジェクトデータ取得部201は、サーバ装置1から供給された三次元オブジェクトデータを取得し、この三次元オブジェクトデータを三次元オブジェクトデータ記憶部202に記憶する。
ステップS112において、分割画像領域属性取得部203は、サーバ装置1から供給される分割画像領域属性を取得する。この分割画像領域属性は、レンズアレイ22に含まれる要素レンズの焦点距離Fと、レンズアレイ22における水平方向の要素レンズのピッチRと、垂直方向の要素レンズのピッチRと、分割画像領域に対応する要素レンズおよび要素画像EIの二次元の並び番号とを含む。
次に、ステップS113において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、三次元オブジェクトデータ記憶部202から三次元オブジェクトデータを読み込み、その三次元オブジェクトデータと、分割画像領域属性取得部203から供給された分割画像領域属性によって規定される空間分割領域計算部204が計算した空間分割領域とに基づいて、分割三次元オブジェクトデータ抽出処理を実行し、分割三次元オブジェクトデータを抽出する。この分割三次元オブジェクトデータ抽出処理については後述する。
【0058】
次に、ステップS114において、分割要素画像群生成部206は、パラメータと分割三次元オブジェクトデータが示すポリゴンとに基づいて、分割画像領域に対応する分割要素画像群を生成する。具体的には、例えば、分割要素画像群生成部206は、公知の光線追跡法によって分割要素画像群を生成する。また、分割要素画像群生成部206は、例えば、分割画像領域に対応する分割要素画像群の画素ごとに、この画素位置から要素画像に対応する要素レンズのピンホール位置に対する単位ベクトルを生成し、この単位ベクトルと要素レンズの焦点距離とに基づいて仮想カメラの位置および撮影方向を算出する。そして、分割要素画像群生成部206は、仮想カメラの位置および撮影方向を基準として三次元オブジェクトを投影変換することによって仮想撮影画像を生成し、この仮想撮影画像の中心画素の画素値を、仮想カメラの位置および撮影方向におけるピンホール位置に対応する画素の画素値とする。この分割要素画像群の生成処理の詳細は、特開2009−175866号公報に開示されている。
次に、ステップS115において、分割要素画像群供給部207は、分割要素画像群生成部206が生成した分割要素画像群をサーバ装置1に供給する。
【0059】
次に、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205が実行する分割三次元オブジェクトデータ抽出処理について説明する。図12は、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205が実行する分割三次元オブジェクトデータ抽出処理の手順を示すフローチャートである。分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、分割画像領域属性取得部203から分割画像領域属性の供給を受け、三次元オブジェクトデータ記憶部202から三次元オブジェクトデータを読み込むと同図のフローチャートの処理を開始する。
【0060】
まず、ステップS121において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、三次元オブジェクトデータの頂点属性データから1個のレコードを取り込む。
次に、ステップS122において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、レコードに含まれる座標値が空間分割領域内にあるか否かを判定する。つまり、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、座標値を(p,p,p)としたときに、式(2)から(5)までと式(7)から(10)までとを用いて規定される空間分割領域内に座標値(p,p,p)が含まれるか否かを判定する。
【0061】
具体的には、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、あらかじめ、x=p,z=pとして式(2)によりyを計算し、x=p,z=pとして式(3)によりyを計算し、x=p,z=pとして式(4)によりyを計算し、x=p,z=pとして式(5)によりyを計算し、y=p,z=pとして式(7)によりxを計算し、
y=p,z=pとして式(8)によりxを計算し、y=p,z=pとして式(9)によりxを計算し、y=p,z=pとして式(10)によりxを計算する。そして、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、第1の判定条件である、(p<0) ∩ (p≧y) ∩ (p≦y) ∩ (p≦x) ∩ (p≧x)と、第2の判定条件である、(p≧0) ∩ (p≧y) ∩ (p≦y) ∩ (p≦x) ∩ (p≧x)とのうちいずれかの判定条件を満たすか否かを判定する。
【0062】
次に、ステップS123において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、座標値が空間分割領域内にあると判定した場合(S123:YES)はステップS124の処理に移り、座標値が空間分割領域内にないと判定した場合(S123:NO)はステップS125の処理に移る。
ステップS124において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、レコードの頂点インデックスを分割三次元オブジェクトデータ抽出部205の記憶部に記憶する。
ステップS125において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、頂点属性データに判定処理を行っていない他のレコードがあるか否かを判定し、他のレコードがあると判定した場合(S125:YES)はステップS121の処理に戻り、他のレコードがないと判定した場合(S125:NO)はステップS126の処理に移る。
【0063】
ステップS126において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、記憶部に記憶された頂点インデックスと、三次元オブジェクトデータのポリゴンデータとに基づいて、空間分割領域に属するポリゴンのポリゴンインデックスを抽出する。具体的には、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、ポリゴンデータのレコードごとに、頂点インデックスセットの3個の頂点インデックスが記憶部に記憶された頂点インデックスに含まれるか否かを判定し、3個の頂点インデックスのうちいずれか1個でも含まれるものがあると判定した場合は、そのレコードを抽出する。すなわち、本実施形態では、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、ポリゴンの3個の頂点のうちいずれか1個の頂点が空間分割領域に含まれる場合に、当該ポリゴンがその空間分割領域に属すると判定する。
【0064】
次に、ステップS127において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、ステップS126の処理において得られたすべてのポリゴンに含まれる頂点の集合を、重複しないように抽出し、そしてそれらのすべての頂点に対応するレコードを頂点属性データから抽出する。そして、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205は、ステップS126の処理において抽出したポリゴンデータのレコードの集合と、当該ステップS127の処理において抽出した頂点属性データのレコードの集合とを求めて本フローチャートの処理を終了する。
【0065】
よって、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205が実行する分割三次元オブジェクトデータ抽出処理により、ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値および色データを示す三次元オブジェクトデータから、分割画像領域の範囲とこの分割画像領域に対応する要素レンズ群の範囲と要素レンズの焦点距離とによって定まる空間分割領域に含まれる頂点を有するポリゴンおよび色データを抽出することができる。
【0066】
本実施形態では、要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれは、サーバ装置1から供給される分割画像領域属性に基づいて空間分割領域を規定し、分割要素画像群を生成するために必要な分割三次元オブジェクトデータを三次元オブジェクトデータから取得するようにした。よって、本実施形態によれば、要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれは、必要最小限の負荷で分割要素画像群を生成することができる。よって、要素画像生成装置2−1〜2−7それぞれは、分割要素画像群の生成処理を高速に行うことができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2実施形態である分割三次元オブジェクトデータ抽出装置と要素画像生成装置とが適用された分散処理システムについて説明する。本実施形態の説明において、上述の第1実施形態と同一の構成については、その構成と同一の構成名とするとともに同一の符号を付し、その説明を省略する。
図13は、本実施形態における分散処理システムの概略のシステム構成図である。同図に示すように、分散処理システム10aは、ネットワーク3を介してサーバ装置1aと7台の要素画像生成装置2a(要素画像生成装置2a−1〜2a−7)とをそれぞれ接続した構成を有している。
【0068】
サーバ装置1aは、三次元オブジェクトデータを記憶する装置であり、例えばコンピュータ装置である。また、サーバ装置1aは、インテグラル・フォトグラフィ方式による立体画像表示装置(不図示)に表示させるフレーム画像の画像領域を分割する。そして、サーバ装置1aは、分割した各分割画像領域に対応する空間分割領域を計算し、各空間分割領域に対応させて三次元オブジェクトデータを分割する。そして、サーバ装置1aは、分割して得た各分割三次元オブジェクトデータを要素画像生成装置2a−1〜2a−7それぞれに供給する。また、サーバ装置1aは、要素画像生成装置2a−1〜2a−7それぞれから取得した分割要素画像群を結合し、立体画像表示装置の1フレーム画像分の要素画像群を生成して記憶する。
【0069】
要素画像生成装置2aは、分割要素画像群を生成する装置であり、例えばコンピュータ装置である。要素画像生成装置2aは、サーバ装置1aから分割三次元オブジェクトデータを取得する。また、要素画像生成装置2aは、取得した分割三次元オブジェクトデータに基づいて分割要素画像群を生成し、その分割要素画像群をサーバ装置1aに供給する。
【0070】
本実施形態における立体画像表示装置は、第1実施形態における立体画像表示装置と同一である。
【0071】
次に、サーバ装置1aの機能構成について説明する。図14は、サーバ装置1aの機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、サーバ装置1aは、三次元オブジェクトデータ記憶部101と、立体画像表示装置パラメータ記憶部103と、画像領域分割部104と、分割要素画像群取得部106と、分割要素画像群結合部107と、要素画像群記憶部108と、分割三次元オブジェクトデータ抽出部110と、分割三次元オブジェクトデータ供給部111とを備える。
【0072】
分割三次元オブジェクトデータ抽出部110は、三次元オブジェクトデータ記憶部101に記憶された三次元オブジェクトデータと、画像領域分割部104が生成した分割画像領域属性によって規定される各空間分割領域とに基づいて、三次元オブジェクトデータを分割して複数の分割三次元オブジェクトデータを抽出する。なお、分割三次元オブジェクトデータ抽出部110は、不図示の記憶部を備えている。
分割三次元オブジェクトデータ供給部111は、分割三次元オブジェクトデータ抽出部110が抽出した各分割三次元オブジェクトデータをパラメータとともに要素画像生成装置2a−1〜2a−7それぞれに供給する。
【0073】
次に、要素画像生成装置2aの機能構成について説明する。図15は、要素画像生成装置2aの機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、要素画像生成装置2aは、分割三次元オブジェクトデータ取得部208と、分割要素画像群生成部206と、分割要素画像群供給部207とを備える。
分割三次元オブジェクトデータ取得部208は、サーバ装置1aから供給されるパラメータと分割三次元オブジェクトデータとを取得する。
【0074】
次に、第2実施形態における分散処理システム10aの動作について説明する。図16は、分散処理システム10aにおけるサーバ装置1aおよび要素画像生成装置2aの処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートでは、要素画像生成装置2a−1〜2a−7のうち1台のみを要素画像生成装置2aとして示している。
まず、同図におけるサーバ装置1aの処理手順について説明する。ステップS201において、画像領域分割部104は、立体画像表示装置パラメータ記憶部103からパラメータを読み込むとともに、当該画像領域分割部104が記憶している要素画像生成装置2aの台数の値“7”を読み出す。次に、画像領域分割部104は、パラメータと分散処理させる要素画像生成装置2aの台数の値とに基づいて、フレーム画像の領域を要素画像の領域に対応させて当該台数分の分割画像領域に分割する。そして、画像領域分割部104は、前述したように、分散処理させる要素画像生成装置2aに対応させて、分割画像領域に含まれる要素レンズおよび要素画像の二次元の並び番号選択し、その二次元の並び番号とパラメータとを含めた分割画像領域属性を生成して分割三次元オブジェクトデータ抽出110に供給する。
【0075】
次に、ステップS202において、分割三次元オブジェクトデータ抽出部110は、三次元オブジェクトデータ記憶部101から三次元オブジェクトデータを読み込み、その三次元オブジェクトデータと画像領域分割部104から供給された分割画像領域属性によって規定される空間分割領域とに基づいて、分割三次元オブジェクトデータ抽出処理を実行し、分割三次元オブジェクトデータを抽出する。この分割三次元オブジェクトデータ抽出処理は、第1実施形態における処理と同一である。
次に、ステップS203において、分割三次元オブジェクトデータ供給部111は、分割三次元オブジェクトデータを各要素画像生成装置2aに供給する。
ステップS204において、要素画像群取得部106は、分散処理させた要素画像生成装置2aから供給される分割要素画像群を取得する。
次に、ステップS205において、分割要素画像群結合部107は、分割要素画像群のデータを結合してフレーム画像全体における要素画像群を生成し、この要素画像群を要素画像群記憶部108に記憶する。
【0076】
次に、図16における要素画像生成装置2aの処理手順について説明する。ステップS211において、分割三次元オブジェクトデータ取得部208は、サーバ装置1aから供給されたパラメータと分割三次元オブジェクトデータとを取得する。
次に、ステップS212において、分割要素画像群生成部206は、パラメータと分割三次元オブジェクトデータとに基づいて、分割画像領域に対応する分割要素画像群を生成する。具体的には、第1実施形態と同様である。
次に、ステップS213において、分割要素画像群供給部207は、分割要素画像群生成部206が生成した分割要素画像群をサーバ装置1aに供給する。
【0077】
本実施形態では、サーバ装置1aは、フレーム画像の領域を要素画像生成装置2a−1〜2a−7の台数分の分割画像領域に分割して各空間分割領域を規定し、分割要素画像群を生成するために必要な部分データ(分割三次元オブジェクトデータ)に三次元オブジェクトデータを分割するようにした。そして、本実施形態では、サーバ装置1aは、各分割三次元オブジェクトデータを要素画像生成装置2a−1〜2a−7それぞれに供給するようにした。よって、本実施形態によれば、要素画像生成装置2a−1〜2a−7それぞれは、必要最小限の負荷で分割要素画像群を生成することができる。よって、要素画像生成装置2a−1〜2a−7それぞれは、分割要素画像群の生成処理を高速に行うことができる。
【0078】
なお、上述した第1実施形態および第2実施形態においては、レンズアレイ22の要素レンズの配列が俵積型配列である例について説明した。これ以外にも、本発明の実施形態は、レンズアレイの要素レンズの配列が正方格子型配列である場合にも適用できる。図17は、正方格子型配列のレンズアレイを備える立体画像表示装置の表示出力部の概略の構成を示す図である。同図(a)は、表示出力部が要素画像群を表示することにより、立体像を観察できる様子を模式的に示した側面図である。また、同図(b)は、表示出力部に含まれるレンズアレイの表示面側から見た模式的な正面図である。
同図(b)に示すように、レンズアレイ22aの要素レンズの配列は正方格子型配列である。レンズアレイ22aにおいては、水平方向の要素レンズのピッチRと垂直方向の要素レンズのピッチRとのそれぞれは、要素レンズの直径に等しい。ただし、ピッチRおよびピッチRは、表示部21の画素ピッチの非整数倍である。
【0079】
また、第1実施形態では、サーバ装置1が三次元オブジェクトデータ記憶部101および三次元オブジェクトデータ供給部102を備えていたが、これら三次元オブジェクトデータ記憶部101および三次元オブジェクトデータ供給部102は、いずれか1台の要素画像生成装置2、またはネットワーク3に接続されるサーバ装置に備えられるものであってもよい。
さらには、三次元オブジェクトデータ記憶部101と三次元オブジェクトデータ供給部102とが各別の装置に備えられていてもよい。例えば、サーバ装置1が三次元オブジェクトデータ記憶部101を備えるとともに要素画像生成装置2−1が三次元オブジェクトデータ供給部102を備え、要素画像生成装置2−1の三次元オブジェクトデータ供給部102がサーバ装置1の三次元オブジェクトデータ記憶部101から三次元オブジェクトデータを読み出して、要素画像生成装置2−1〜2−7に配信するようにしてもよい。
【0080】
また、要素画像生成装置2は、三次元オブジェクトデータ記憶部202を備えない構成としてもよい。つまり、三次元オブジェクトデータ取得部201が、取得した三次元オブジェクトデータを分割三次元オブジェクトデータ抽出部205に供給し、分割三次元オブジェクトデータ抽出部205が、リアルタイムに分割三次元オブジェクトデータを抽出するように要素画像生成装置を構成してもよい。
【0081】
また、第1実施形態および第2実施形態においては、要素画像生成装置2,2aの台数がそれぞれ7台である例について説明したが、要素画像生成装置2,2aそれぞれの台数はそれに限定されるものではない。例えば、要素画像生成装置2,2aそれぞれの台数は、立体画像表示装置の表示部21の解像度やレンズアレイ22の要素レンズ群の規模(個数)等に応じて決められるものであってよい。
【0082】
また、上述した実施形態である分割三次元オブジェクトデータ抽出装置の少なくとも一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その機能を実現するための分割三次元オブジェクトデータ抽出プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された分割三次元オブジェクトデータ抽出プログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0083】
また、同様にして、上述した実施形態である要素画像生成装置の少なくとも一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その機能を実現するための要素画像生成プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された要素画像生成プログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0084】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1,1a サーバ装置
2,2−1〜2−7,2a,2a−1〜2a−7 要素画像生成装置
3 ネットワーク
10,10a 分散処理システム
101,202 三次元オブジェクトデータ記憶部
102 三次元オブジェクトデータ供給部
103 立体画像表示装置パラメータ記憶部
104 画像領域分割部
105 分割画像領域属性供給部
106 分割要素画像群取得部
107 分割要素画像群結合部
108 要素画像群記憶部
111 分割三次元オブジェクトデータ供給部
201 三次元オブジェクトデータ取得部
203 分割画像領域属性取得部
110,205 分割三次元オブジェクトデータ抽出部
206 分割要素画像群生成部
207 分割要素画像群供給部
208 分割三次元オブジェクトデータ取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値を示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、前記要素レンズ群の範囲と、前記分割画像領域と前記要素レンズ群との距離とによって定まる空間分割領域に含まれる前記頂点を有する前記ポリゴンを抽出する分割三次元オブジェクトデータ抽出部、
を備えることを特徴とする分割三次元オブジェクトデータ抽出装置。
【請求項2】
前記画像領域を複数の分割画像領域に分割し、これら複数の分割画像領域それぞれの範囲を前記分割三次元オブジェクトデータ抽出部に供給する画像領域分割部
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の分割三次元オブジェクトデータ抽出装置。
【請求項3】
ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値および色データを示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、前記要素レンズ群の範囲と、前記分割画像領域と前記要素レンズ群との距離とによって定まる空間分割領域に含まれる前記頂点を有する前記ポリゴンおよび色データを抽出する分割三次元オブジェクトデータ抽出部と、
前記分割三次元オブジェクトデータ抽出部が抽出した前記ポリゴンおよび色データに基づいて前記分割画像領域に対応する要素画像群を生成する分割要素画像群生成部と、
を備えることを特徴とする要素画像生成装置。
【請求項4】
コンピュータを、
ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値を示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、前記要素レンズ群の範囲と、前記分割画像領域と前記要素レンズ群との距離とによって定まる空間分割領域に含まれる前記頂点を有する前記ポリゴンを抽出する分割三次元オブジェクトデータ抽出部、
として機能させるための分割三次元オブジェクトデータ抽出プログラム。
【請求項5】
コンピュータを、
ポリゴンに含まれる複数の頂点それぞれの三次元座標値および色データを示す三次元オブジェクトデータから、レンズアレイに含まれる所定範囲の要素レンズ群に対応して画像領域を分割してなる分割画像領域の範囲と、前記要素レンズ群の範囲と、前記分割画像領域と前記要素レンズ群との距離とによって定まる空間分割領域に含まれる前記頂点を有する前記ポリゴンおよび色データを抽出する分割三次元オブジェクトデータ抽出部と、
前記分割三次元オブジェクトデータ抽出部が抽出した前記ポリゴンおよび色データに基づいて前記分割画像領域に対応する要素画像群を生成する分割要素画像群生成部と、
として機能させるための要素画像生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−191645(P2011−191645A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59320(P2010−59320)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人情報通信研究機構、「革新的な三次元映像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】