説明

分割形イメージングファイバ装置

【課題】複数本のファイバへの光入射や光検出を1台の装置でオンオフ制御することにより、装置規模を大きくすることなく多数の生体患部を簡易な操作で同時に、また時系列的に観察することができる分割形イメージングファイバ装置を提供する。
【解決手段】分岐IFの開口部に入射した光は、先端部の光学系に到達する。光学系から射出した光が観察ターゲットに当たることにより発せられる光は光学系を経由して元の開口部に戻る。末端部3から出射した光は、第1対物レンズ5によって平行光になり、ダイクロイックミラー6で反射され、結像レンズ10を経由して撮像素子11に入射することによりモニタに表示される。液晶シャッタ4で、特定の分岐IFへの光を通過させ、他の分岐IFへの光を遮断する制御を行うことにより特定の分岐IFのみに対し観察を行うことができ、同時に多数の分岐IFに光を通過させて観察することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織などに穿たれた複数の導入孔にそれぞれイメージングファイバを挿通し、各イメージングファイバ端面に設けたオンオフ機構でレーザ光等を入射したり、遮断したりすることにより各イメージングファイバ先端の患部などを観察するための分割形イメージングファイバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の患部に達する導入孔などを形成し、この部分にイメージングファイバを挿通し、イメージングファイバ先端より光を患部に照射し、患部からの反射光を受光し、顕微鏡やモニタなどで観察するシステムが実用に供されている。
多数の患部が存在する場合は、複数本のイメージングファイバそれぞれに対し個別に光を入射させ観察する装置を対応づけている。
かかる場合、各イメージングファイバを構成する内視鏡装置は個別に用意する必要があるため、装置の規模が大きくなるとともに煩雑な操作となり、効率的ではない。また、複数個所ある観察対象である患部に対し処置などを施しその経過や因果関係などを調べる場合に、各イメージングファイバから得られる観察像を時系列的な変化で捕らえることは不便である。
【0003】
複数本のファイバを1つに束ねて各ファイバ先端で得られた画像をモニタに表示する装置として特許文献1が公開されている。
これは画像伝送装置でありイメージガイドを複数本(4本)のイメージガイドに分岐させて受像側で1本に束ねてテレビカメラの受像部に繋ぎ、モニタ画面5の上に田の字型をなすように映像表示するものである。複数本のイメージガイドに入射した光をモニタ画面に映し出すもので、観察対象に各ファイバからそれぞれ光を照射してその反射光を受光するものではない。そのため光源を導入する装置部分やイメージガイドの束ねた部分で各ファイバに光を入出射するためのオンオフ機構を持たず、また、生体用の各患部観察用のファイバとして用いることはできない。
【特許文献1】特開昭59−223079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は生体内へ複数本のファイバ(内視鏡)を挿入する場合を主に想定するもので、 その目的は複数本のファイバへの光入射や光検出を1台の装置でオンオフ制御することにより、装置規模を大きくすることなく多数の生体患部を簡易な操作で同時に、また時系列的に観察することができる分割形イメージングファイバ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、先端より観察対象に光を照明してその反射光を受光するタイプの生体の観察に用いるイメージングファイバ装置であって、1本のイメージングファイバを複数の分岐イメージングファイバに分岐させ、前記複数の分岐イメージングファイバの先端にそれぞれ光学系を取り付け、観察対象に光を照明するように構成するとともに前記各分岐イメージングファイバの端面の形状を多角形状に形成し、光源装置と、前記光源装置からの光を前記複数の分岐イメージングファイバの端面全体に照射するように集光させる対物レンズ系と、前記複数の分岐イメージングファイバの端面全体を覆う光路遮断機構とを備え、前記光遮断機構により前記分岐イメージングファイバの端面対応にそれぞれ独立して遮断制御を行うように構成したことを特徴とする。
本発明の請求項2は、請求項1記載の発明において前記光路遮断機構は液晶シャッタで構成したことを特徴とする。
本発明の請求項3は、請求項1または2記載の発明において前記多角形は6角形であることを特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項1,2または3記載の発明において前記分岐イメージングファイバは数千〜数万本のファイバ素線で構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、多数本のイメージングファイバであっても簡易構造で済むため、小形化が可能で高速での光切替えが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明による分割形イメージングファイバ装置の実施の形態を示す概略図で、液晶シャッタの例を示す図である。
1a〜1nは1本のイメージングファイバを例えば7区画程度に別けて構成された分岐イメージングファイバ(以下「分岐IF」という)であり、先端部2a〜2nはそれぞれ観察ターゲットに対し光を照射し、その反射光を取り入れるための光学系が取り付けられている。分岐IF1a〜1nの末端部3は一体になっており、それぞれの分岐IF1a〜1nは光取り込みのための開口部を備えている。分岐IF1a〜1nは多数の光ファイバ素線を束ねて構成されており、一定の弾力性(軟性)を有し、所定の曲率以下にならないようにして曲げることが可能である。
【0008】
レーザ光源9から送出されるレーザ光は、液晶シャッタ4を通過して凹レンズ8により発散しコリメータレンズ7に入射する。コリメータレンズ7では発散光は平行光になりダイクロイックミラーを通過し、末端部3のすべての分岐IF1a〜1nの開口部に入射する照射面になるように第1対物レンズ5で収束させられる。液晶シャッタ4と末端部3とは光学的共役位置関係になるように設定される。
開口部に入射した光は、多数の光ファイバ素線を経由して先端部の光学系に到達する。光学系から射出した光が観察ターゲットに当たることにより発生する光(例えば蛍光)は光学系を経由して元の開口部に戻る。
【0009】
末端部3から出射した光は、第1対物レンズ5によって平行光になり、ダイクロイックミラー6で反射され、結像レンズ10を経由して撮像素子(CCD)11に入射し、撮像素子で電気信号に変換され、変換された電気信号は撮像素子制御部へと導かれる。
液晶シャッタ4を、特定の分岐IFへの光を通過させ、他の分岐IFへの光を遮断するように開閉することにより特定の分岐IFのみに対し光を当てて観察を行うことができる。同時に多数の分岐IFをオン制御して多数の分岐IFを観察することも可能である。
【0010】
図2は、イメージングファイバ端面の形状を説明するための図である。
実際のファイバ総素線数は数万本程度しかない(限界がある)ので、分岐IFの本数をあまり多くできない。自然なイメージ形成に要するための各分岐IFにおける最低素線数は6000本程度である。したがって最大で7〜8区画が限度となる。さらに、分岐IF1本あたりの光量は区画数で単純に割った量となり、区画数が増えると光量が落ちてしまうので、レーザ光源9は強い光が必要となる。
【0011】
ファイバ素線(直径数ミクロン)を束ねた形は正六角形にするのが、各分岐IFの間の面積ロスがなく効率的である。末端部3全体にレンズ集光した光を入射させる。先端部のサイズは直径数ミリ程度であり、図3に示すようにフォーカスのためのミニレンズが装着されている。
【0012】
図3はイメージングファイバ先端部の光学系の構成を示す図である。
素線を束ねた分岐IF16はカバー2に収容されており、その先端にレンズ18が配置されている。カバー2はその先端に透明部17が取り付けられ密閉されている。分岐IF16の先端から出射した光はレンズ18で収束され透明部17を透過して観察ターゲット19に照射される。生体に蛍光を発する液剤が注入されており、観察ターゲット19に所定波長の光が当たると、蛍光が放射される。蛍光はレンズ18で収束されて分岐IF16に入射し観察用光学系に戻る。
【0013】
図4Aは、液晶シャッタの構成例を説明するための図である。
この実施の形態は、7つの分岐IFの6角形の開口部にそれぞれ対応して液晶面をオンオフするものである。
ファイバ装置制御部26は、各分岐IFの開口部に対応する液晶面をオンオフ制御すべき信号を出力し、該制御信号により液晶駆動回路27が液晶の各面をオンオフ駆動する。
この例では中央の分岐IF1gの開口部と右上の分岐IF1aの開口部に光を供給するため25gと25aの液晶面のみをオンし、他はオフ制御している。
液晶面25gと25aを通過した光は、レンズ,ダイクロイックミラーを介して末端部3の分岐IF1gと1aの開口部に達する。
【0014】
図4Bは、光の分割供給をDMDで制御する例を説明するための図である。
各分岐IFへの光の入射オンオフ制御を、DMD(ディジタルマイクロミラー)装置で行うものである。
凹レンズ8の背後の、末端部3との共役位置にDMD30を配置し、凹レンズ8の光軸に対し90度回転させた方向にレーザ光源9を配置してある。
図4B(a)はレーザ光源9を出射した光がDMDのオン制御により、凹レンズ8に反射されている状態が示されている。このとき、反射するDMDの領域は、光を入射すべき分岐IFの開口部に対応する領域である。したがって、同時にすべて分岐IFに光を供給することも可能であり、また所定の分岐IFのみに対して光を供給することも可能である。図4B(b)は、すべての分岐IFの開口部に光が供給されておらず、DMD30がオフ状態であることを示している。
【0015】
図4Cは、光の分割供給をPDPで制御する例を説明するための図である。PDP(プラズマ式)を光源として用いるものである。
凹レンズ8の背後の、末端部3との共役位置にPDP31を配置し、PDP31の各微小発光部を信号により制御して光を発光するものである。多数の微小発光部で構成される各発光領域はそれぞれ光を入射すべき分岐IFの各開口部に対応する。図4C(a)は各発光領域をすべてオン状態にした場合で、すべての分岐IFの開口部に光が照射されている状態を示している。所定の発行領域のみをオンにして任意の分岐IFの開口部に光を供給することも可能である。図4C(b)はすべてのPDP31の微小発光部をオフ状態にしているため、光は送られていない。
【0016】
図5は、本発明による分割形イメージングファイバ装置の使用状態を説明するための図である。
分割形マルチイメージングファイバ装置20は末端部3を収容しており、第1対物レンズ5,ダイクロイックミラー6,コリメータレンズ7,凹レンズ8,液晶シャッタ4,結像レンズ10,撮像素子11などを内蔵している。撮像素子11の出力は、制御回路20a内の撮像素子制御部に接続されている。また、レーザ光源9とは光導波路で接続され、レーザ光が液晶シャッタ4に導かれるようになっている。さらにモニタ21に接続されている。
操作部24はボタンスイッチやスライドスイッチなどから構成され、該操作部24の操作信号は制御回路20aに送られる。制御回路20aは分割形マルチイメージングファイバ装置20全体を制御する回路で、ファイバ装置制御部26,液晶駆動回路27を含んでおり、操作信号に基づきモニタ21およびレーザ光源9をオン,オフ制御したり、モニタ21の画像表示範囲を制御する。また、光を供給すべき分岐IFの指定信号に基づき、指定された分岐IFの開口部に光を通すように液晶シャッタを制御する。
【0017】
モニタ21には、指定した分岐IFの数に対応してターゲットの像を分割表示することができ、さらに1つひとつをフル画面で時分割で表示することもできる。したがって、1台の分割形マルチイメージングファイバ装置20で多点計測が可能となる。
この例は生体22の複数箇所(6箇所)に孔を開け分岐IFを挿入した状態を示しており、第1〜第nの観察ターゲット23a〜23nに光を照射し、各観察ターゲットからの光を撮像素子に受光し画像処理し、モニタ21の画面を6分割して各分岐IFの観察ターゲットの画像を同時観察するものである。
【0018】
図5の実施の形態は、1台の装置で生体の複数箇所を観察する例を示しているが、1箇所の観察ターゲットに対し、異なる角度から観察することも可能である。
以上の光遮蔽装置は液晶シャッタ,DMD,PDPの例について説明したが、この他にLEDアレイのような多チャンネル光源を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
生体内への複数本の内視鏡を挿入して多数ターゲットの観察を1台で行える分割マルチイメージングファイバ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による分割形イメージングファイバ装置の実施の形態を示す概略図で、液晶シャッタの例を示す図である。
【図2】イメージングファイバ端面の形状を説明するための図である。
【図3】イメージングファイバ先端部の光学系の構成を示す図である。
【図4A】液晶シャッタの構成例を説明するための図である。
【図4B】光の分割供給をDMDで制御する例を説明するための図である。
【図4C】光の分割供給をPDPで制御する例を説明するための図である。
【図5】本発明による分割形イメージングファイバ装置の使用状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0021】
1a〜1n 分岐イメージングファイバ(分岐IF)
2a〜2n,15 イメージングファイバ先端
3 末端部
4 液晶シャッタ
5 第1対物レンズ
6 ダイクロイックミラー
7 コリメータレンズ
8 凹レンズ
9 レーザ光源
10 凸レンズ(結像レンズ)
11 撮像素子(CCD)
12 光路
14 IFクラッド
16 分岐IF
17 透明部
18 レンズ
19 観察ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端より観察対象に光を照明してその反射光を受光するタイプの、生体の観察に用いるイメージングファイバ装置であって、
1本のイメージングファイバを複数の分岐イメージングファイバに分岐させ、
前記複数の分岐イメージングファイバの先端にそれぞれ光学系を取り付け、観察対象に光を照明するように構成するとともに前記各分岐イメージングファイバの端面の形状を多角形状に形成し、
光源装置と、
前記光源装置からの光を前記複数の分岐イメージングファイバの端面全体に照射するように集光させる対物レンズ系と、
前記複数の分岐イメージングファイバの端面全体を覆う光路遮断機構とを備え、
前記光遮断機構により前記分岐イメージングファイバの端面対応にそれぞれ独立して遮断制御を行うように構成したことを特徴とする分割形イメージングファイバ装置。
【請求項2】
前記光路遮断機構は液晶シャッタで構成したことを特徴とする請求項1記載の分割形イメージングファイバ装置。
【請求項3】
前記多角形は6角形であることを特徴とする請求項1または2記載の分割形イメージングファイバ装置。
【請求項4】
前記分岐イメージングファイバは数千〜数万本のファイバ素線で構成されたことを特徴とする請求項1,2または3記載の分割形イメージングファイバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−135752(P2007−135752A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331533(P2005−331533)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(504300181)国立大学法人浜松医科大学 (96)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】