説明

分散剤、その製造方法、及び該分散剤を含んでなる顔料組成物

【課題】低使用量で分散性、流動性、保存安定性に優れ、塗膜の耐性に優れる顔料分散体を得るための分散剤を提供すること。オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキ、インキジェットインキ、塗料、及び着色樹脂組成物等に適する、非集合性、流動性に優れた分散性や安定性を付与できる、分散剤を提供すること。
【解決手段】片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)の一級及び/又は二級アミノ基とを反応してなる、アミノ基を有する重合体(C)の一級及び/又は二級アミノ基と、2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D)のイソシアネート基とを反応してなる、アミン価が5〜100mgKOH/gであることを特徴とする分散剤により解決。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤に関し、更に詳しくは、塗料及び着色樹脂組成物等の分野に適する、非集合性、流動性、保存安定性に優れた顔料分散体を製造することのできる分散剤、その製造方法、及び該分散剤を含んでなる顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、インキ等を製造する場合、顔料を安定に高濃度で分散することが難しく、製造工程や製品そのものに対して種々の問題を引き起こすことが知られている。例えば、微細な粒子からなる顔料を含む分散体は往々にして高粘度を示し、製品の分散機からの取り出しや輸送が困難となるばかりでなく、高粘度化が顕著な場合は保存中にゲル化を起こし、使用困難となることさえある。更に展色物の表面に関しては光沢の低下、レベリング不良等の状態不良を生じる。又、異種の顔料を混合して使用する場合、凝集による色別れや、沈降等の現象により展色物に色むらや著しい着色力の低下が現れることがある。
【0003】
そこで一般的には、分散状態を良好に保つために分散剤が利用されている。分散剤は、顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2個の機能の部位のバランスで分散剤の性能は決まる。分散剤は、被分散物である顔料の表面状態に合わせ、種々のものが使用されているが、酸性に偏った表面を有する顔料には塩基性の分散剤が使用されるのが一般的である。この場合、塩基性の官能基が顔料の吸着部位となる。塩基性の官能基としてアミノ基を有する分散剤は、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6等に記載されている。
【0004】
しかし、特許文献1、特許文献2、特許文献3では、分散能力は持ち合わせるが、側鎖が限定され、使用できる溶剤やバインダー樹脂が限定されていたり、塗膜の耐性が悪い場合があった。又、特許文献4、特許文献5、特許文献6では、ある程度の分散能力は持ち合わせるが、低粘度で安定な分散体をつくるには使用量を多くする必要があった。しかし、使用量を多くすることは、インキ、塗料等への展開を考える上で、塗膜の耐性が落ちる場合がある等好ましいものではなかった。
【特許文献1】特開平9−169821号公報
【特許文献2】特開平9−194585号公報
【特許文献3】特開2004−089787号公報
【特許文献4】特開平1−236930号公報
【特許文献5】特開平3−103478号公報
【特許文献6】特開2004−344795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低使用量で分散性、流動性、保存安定性に優れ、塗膜の耐性に優れる顔料分散体を得るための分散剤の提供を目的とする。更に本発明は、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキ、インキジェットインキ、塗料、及び着色樹脂組成物等に適する、非集合性、流動性に優れた分散性や安定性を付与できる、分散剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)の一級及び/又は二級アミノ基とを反応してなる、アミノ基を有する重合体(C)の一級及び/又は二級アミノ基と、2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D)のイソシアネート基とを反応してなる、アミン価が5〜100mgKOH/gであることを特徴とする分散剤により解決される。
【0007】
又、本発明は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)が、ビニル重合体を含むことを特徴とする前記分散剤に関する。
【0008】
又、本発明は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)が、ポリエステルを含むことを特徴とする前記分散剤に関する。
【0009】
又、本発明は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の重量平均分子量が、500〜30,000であることを特徴とする前記分散剤に関する。
【0010】
又、本発明は、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)が、2個の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であることを特徴とする前記分散剤に関する。
【0011】
又、本発明は、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)が、両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物であることを特徴とする前記分散剤に関する。
【0012】
又、本発明は、2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D)が、ジイソシアネートであることを特徴とする前記分散剤に関する。
【0013】
重量平均分子量が、1,000〜100,000であることを特徴とする前記分散剤に関する。
【0014】
更に、本発明は、
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)を製造する第一の工程と、
前記片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応する、アミノ基を有する重合体(C)を製造する第二の工程と、並びに、
アミノ基を有する重合体(C)の一級及び/又は二級アミノ基と、少なくとも2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D)のイソシアネート基と、を反応する第三の工程と、
を含む分散剤の製造方法に関する。
【0015】
更に、本発明は、前記分散剤と、顔料とを含んでなる顔料組成物に関する。
【0016】
更に、本発明は、酸性官能基を有する色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の酸性官能基を有する誘導体を含んでなる前記顔料組成物に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の分散剤を使用することにより、従来得られなかった分散性、流動性、保存安定性を有する顔料組成物を提供できた。更に、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキ、インキジェットインキ、塗料、及び着色樹脂組成物等に適する、非集合性、流動性に優れた分散性や安定性を持ち、高い貯蔵安定性及び高い経時安定性を有する顔料分散体を提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
一般に、顔料分散剤は、顔料に吸着する部位と、分散媒である溶剤に親和性の高い部位との構造を持ち合わせ、この2つの部位のバランスで分散剤の性能が決まる。つまり、分散性を発現させるためには、分散剤の顔料に吸着する性能と、分散媒である溶剤への親和性がともに非常に重要である。
【0019】
本発明は、顔料担体(バインダー樹脂等)及び分散媒(有機溶剤等)を限定することなく、酸性に偏った表面を有する顔料を分散し、流動性及び保存安定性に優れた顔料分散体を製造し得る従来にない分散剤の提供を目的としている。
【0020】
本発明の分散剤は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を含むポリアミン(B)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応する、アミノ基を有する重合体(C)の一級及び/又は二級アミノ基と、2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D)のイソシアネート基と、を反応させることによって合成される。
【0021】
すなわち、重合体(A)由来の溶媒親和性部位と、ポリアミン(C)の一級及び/又は二級アミノ基と、ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基と、を反応するアミノ基及びウレア結合部位を含む顔料吸着性部位と、を有する構造となっている。前記アミノ基及びウレア結合部位を有する顔料吸着部位が酸性に偏った顔料表面に対する顔料吸着性に優れ、分散安定化をはかることが可能である。
【0022】
本発明の分散剤の各構成要素について説明する。
【0023】
なお、本願では、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を表すものとする。
【0024】
《片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)》
本発明における重合体(A)の重量平均分子量は500〜30,000が好ましく、これによって、立体反発効果に優れ、高い分散性、流動性、及び保存安定性を得ることが可能である。重合体(A)の重量平均分子量はさらに好ましくは2,000から20,000であり、最も好ましくは5,000から10,000である。500未満では、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため、好ましくない場合がある。また、30,000を超える場合は、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。
【0025】
本発明における重合体(A)は、ポリエステル、又はビニル重合体であることが好ましい。これらは溶剤への親和性が良好であり、また、分子量を調整することが容易である。また、片末端領域の(メタ)アクリロイル基は、一級及び/又は二級アミノ基との反応制御の観点から、比較的低温で反応が進むアクリロイル基が好ましい。
【0026】
<ポリエステル(A1)>
ポリエステル(A1)は、公知の方法で製造することができ、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールを開始剤としてラクトン及び/又はラクチドを開環重合することで容易に得ることができる。
【0027】
[(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール]
開環重合の開始剤として使用する(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコールとしては、特に限定はなく、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリレート、及び2‐ヒドロキシ‐3‐(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる、ヒドロキシル基の反応性の観点から、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
【0028】
[ラクトンオ及びラクチド]
ラクトンとしては、特に限定はなく、具体的にはβ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトン等が挙げられるが、開環重合性の観点から、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、及びアルキル置換されたε−カプロラクトンからなる群から選ばれる1種類以上を使用するのが好ましい。
【0029】
本発明の製造方法において、ラクトンは、前記例示に限定されることなく用いることができ、また単独で用いても、2種類以上を併用して用いても構わない。
【0030】
ラクチドとしては、下記一般式(1)で示されるものが好ましい(グリコリドを含む)。
一般式(1):
【0031】
【化1】

〔一般式(1)中、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜20のアルキル基であり、
3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分枝の炭素原子数1〜9の低級アルキル基である。〕
【0032】
本発明の製造方法において、特に好適なラクチドは、ラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)及びグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)である。
【0033】
前記ラクトン及びラクチドは、単独で用いても、2種以上併用しても構わない。ラクトンとラクチドとでは、溶媒親和性の観点から、ラクトンを用いるのが好ましい。
【0034】
開始剤1モルに対するラクトン及び/又はラクチドの重合モル数は、3〜60モルの範囲が好ましく、更には10〜40モルが好ましく、最も好ましくは15〜30モルである。3モル未満では、分子量が小さくなり、溶媒親和性部位として、十分機能しない。60モルを超えると、分子量が大きくなりすぎて、顔料の分散剤として使用した時に、顔料分散体の粘度が高くなり、問題を生ずる。
【0035】
[開環重合触媒]
開環重合触媒としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、
テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨード、テトラブチルアンモニウムヨード、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、及びベンジルトリメチルアンモニウムヨード等の四級アンモニウム塩;
テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨード、テトラブチルホスホニウムヨード、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨード、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、及びテトラフェニルホスホニウムヨード等の四級ホスホニウム塩;
トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;、
酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、及び安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩;
ナトリウムアルコラート、及びカリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラート;
トリエチルアミン、及びトリフェニルアミン等の三級アミン類;
ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシド、及びジオクチル錫オキシド等の有機錫化合物;
アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等の有機アルミニウム化合物;
テトラ−n−ブチルチタネート、前記ダイマー、テトライソブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、及びジイソプロポキシ・ビス(トリエタノールアミネート)チタン等の有機チタネート化合物;並びに、
塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。
【0036】
開環重合触媒の使用量は、ラクトン及び/又はラクチド100重量%に対して、0.1ppm〜3000ppm、好ましくは1ppm〜1000ppmである。触媒量が3000ppmを超えると、樹脂の着色が激しくなる場合がある。逆に、触媒の使用量が0.1ppm未満ではラクトン及び/又はラクチドの開環重合速度が極めて遅くなるので好ましくない場合がある。
【0037】
[合成条件]
ラクトン及び/又はラクチドの開環重合温度は、100℃〜220℃、好ましくは、110℃〜210℃の範囲で行う。反応温度が100℃未満では反応速度がきわめて遅い場合があり、220℃を超えるとラクトン及び/又はラクチドの付加反応以外の副反応、たとえばラクトン付加体のラクトンモノマーへの解重合、環状のラクトンダイマーやトリマーの生成等が起こりやすい場合がある。
【0038】
[ラジカル重合禁止剤]
(メタ)アクリロイル基を有する化合物を重合する際には、ラジカル重合禁止剤を添加し、乾燥空気流下で反応を行うことが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、公知のものを制限なく使用することができるが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、及びフェノチアジン等が好ましい。これらを単独もしくは併用で、(メタ)アクリロイル基を有するアルコール100重量%に対して、0.01重量%〜6重量%、好ましくは、0.05重量%〜1.0重量%の範囲で用いる。
【0039】
ポリエステル(A1)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルに、ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。
【0040】
[ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)]
ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0041】
又、ポリエステル(A1)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールを開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にヒドロキシル基を有するポリエステルに、二塩基酸無水物基を一個有する化合物を反応させて得られた、片末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、更に、エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシ基が開環して得られたヒドロキシル基と反応しうる基及び前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。この場合、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(A1)が得られる。
【0042】
[(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコール]
(メタ)アクリロイル基を有さないモノアルコールとしては、水酸基を一個有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
【0043】
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、イソノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−ミリスチルアルコール、セチルアルコール、1−ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、ベヘニルアルコール、及びオレイルアルコールなどの脂肪族モノアルコール;
ベンジルアルコール、フェノキシエチルアルコール、及びパラクミルフェノキシエチルアルコール等の芳香環含有モノアルコール;並びに、
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、及びテトラジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
【0044】
[二塩基酸無水物基を一個有する化合物]
二塩基酸無水物基を一個有する化合物は、二塩基酸無水物基を一個有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
【0045】
例えば、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキセン1−2−ジカルボン酸無水物、ジシクロ[2,2,2]−オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、アントラセン−1,2−ジカルボン酸無水物、及びアントラセン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。又、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、複素環、芳香環、及びハロゲン等の置換基を有する前記ニ塩基酸無水物も挙げられる。
【0046】
[エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物]
エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、グリシジルアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、3,2−グリシドキシエチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシブチルアクリレート、及び4,5−エポキシペンチルアクリレート等が挙げられる。
【0047】
又、ポリエステル(A1)は、(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸を開始剤としてラクトンを開環重合して得られた片末端にカルボキシル基を有するポリエステルに、更に、前記エポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させ、更に、エポキシ基が開環して得られたヒドロキシル基と反応しうる、ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させることでも得ることができる。この場合、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(A1)が得られる。
【0048】
[(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸]
(メタ)アクリロイル基を有さないモノカルボン酸は、(メタ)アクリロイル基を有しない、カルボキシル基を有する化合物であればいかなる化合物でも構わない。
【0049】
例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸等が挙げられる。
【0050】
<ビニル重合体(A2)>
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有するビニル重合体(A2)は、片末端領域に1個又は2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体に、ヒドロキシル基と反応しうる基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a3)を反応させることで得ることができる。
【0051】
片末端領域に1個又は2個のヒドロキシル基を有するビニル重合体(A2)(以下、ビニル重合体(A2)と略記する場合がある。)は、分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)の存在下に、エチレン性不飽和単量体(a1)をラジカル重合することで得ることができる。分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)のチオール基が連鎖移動剤として働き、S原子を介してビニル重合体(A2)が合成されるので、その分子量は、エチレン性不飽和単量体(a1)に対する前記化合物(s)の使用量によってビニル重合体(A2)の分子量を上記範囲に調整することが容易であり、その結果、溶剤への親和性も好適に調整することができる。
【0052】
[分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)]
分子内に1個又は2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s)としては、例えば、
1−メルカプトエタノール、及び2−メルカプトエタノール等の分子内に1個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s1);並びに、
1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)が挙げられる。
【0053】
本発明では、分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)であることが好ましく、さらに好ましくは3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)である。
【0054】
分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基を有する化合物(s2)を用いることによって、最終的に得られる分散剤が、複数のアミノ基を有する顔料吸着部位と、複数の溶媒親和性部位と、を有する理想的な構造となる。
【0055】
[エチレン性不飽和単量体(a1)]
エチレン性不飽和単量体(a1)としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル (メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート類;
アクリル酸、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、及びクロトン酸等の不飽和カルボン酸類;
前記カルボン酸のカプロラクトン付加物(付加モル数1〜5)類;
2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート類;
スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、及び(メタ)アクリル酸アリル等のビニル類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、
(メタ)アクリルアミド、及びN−ビニルホルムアミド等のアミノ基を有しないアミド類;並びに、
アミノ基を有しないアクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
【0056】
本発明においては、上記に例示したエチレン性不飽和単量体(a1)の中でも、下記一般式(2)で表わされるエチレン性不飽和単量体(a2)を使用することが好ましい。下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体(a2)の使用量は、エチレン性不飽和単量体(a1)全体に対して20重量%〜100重量%が好ましく、20〜70重量%がより好ましい。一般式(2)で表わされる単量体を用いると、溶媒親和性が良くなり、顔料分散性が良好になる。20重量%未満では、溶媒親和性を向上させる効果が不十分である。
一般式(2):
【0057】
【化2】

〔一般式(2)中、R5は、炭素原子数1〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である。〕
【0058】
[化合物(s)の使用量]
前記化合物(s)を連鎖移動剤として、目的とするビニル重合体(a)の分子量にあわせて、エチレン性不飽和単量体と、任意に重合開始剤とを混合して加熱することでビニル重合体(a)を得ることができる。化合物(s)は、エチレン性不飽和単量体(a1)100重量部に対して、0。8〜30重量部を用い、塊状重合または溶液重合を行うのが好ましく、より好ましくは1.5〜15重量部、さらに好ましくは2〜9重量部、特に好ましくは5〜9重量部である。1重量部未満では、分子量が大きくなり、分散体の粘度が高くなり好ましくない場合がある。30重量部を超えると、分子量が小さくなり、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため、好ましくない場合がある。
【0059】
反応温度は40〜150℃、好ましくは50〜110℃である。40℃未満では、十分に重合が進行せず、150℃を超えると、高分子量化が進む等、分子量のコントロールが困難になる。
【0060】
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合の際、エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、任意に0.001〜5重量部の重合開始剤を使用することができる。
【0061】
重合開始剤としては、例えば、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、及び2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ系化合物および有機過酸化物;並びに、
過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、及びジアセチルパーオキシド等の有機過酸化物な等が挙げられ、これらの重合開始剤は、単独で、もしくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
[ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物]
ヒドロキシル基と反応しうる基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0063】
[重合溶剤]
ポリエステル(A1)及びビニル重合体(A2)は、無溶剤、又は、必要に応じて溶剤を使用して合成することができる。
【0064】
溶液重合の場合には、重合溶媒として、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びN−メチルピロリドン等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いても良い。重合反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま次の工程の溶剤として使用したり、製品の一部として使用することもできる。
【0065】
《ポリアミン(B)》
本発明のポリアミン(B)は1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であり、一級及び/又は二級アミンが片末端領域に(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基に付加反応し、アミノ基を有する重合体(C)を生成する。さらに、アミノ基を有する重合体(C)の一級及び/又は二級アミンの内、一部又は全部をポリイソシアネート(D)のイソシアネート基と反応させてウレア基を生成する。すなわち、本発明の分散剤は片末端領域に存在するアミノ基及びウレア結合が顔料吸着部位になる。このようなポリアミン(B)としてジアミン(b1)が挙げられる。また、ポリアミン(B)が、両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物である場合には、酸性顔料に対しての吸着性が上がるため、特に好ましい。
【0066】
2個の一級アミノ基を有するジアミン(b1)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
エチレンジアミン、プロピレンジアミン[別名:1,2−ジアミノプロパン又は1,2−プロパンジアミン]、トリメチレンジアミン[別名:1,3−ジアミノプロパン又は1,3−プロパンジアミン]、テトラメチレンジアミン[別名:1,4−ジアミノブタン]、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、ペンタメチレンジアミン[別名:1,5−ジアミノペンタン]、ヘキサメチレンジアミン[別名:1,6−ジアミノヘキサン]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及びトリレンジアミン等の脂肪族ジアミン;
イソホロンジアミン、及びジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ジアミン;並びに、
フェニレンジアミン、及びキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0067】
又、2個の二級アミノ基を有するジアミン(b1)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
【0068】
又、一級及び二級アミノ基を有するジアミン(b1)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N−メチルエチレンジアミン[別名:メチルアミノエチルアミン]、N−エチルエチレンジアミン[別名:エチルアミノエチルアミン]、N−メチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−メチル−1,3−ジアミノプロパン又はメチルアミノプロピルアミン]、N,2−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン[別名:イソプロピルアミノエチルアミン]、N−イソプロピル−1,3−ジアミノプロパン[別名:N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン又はイソプロピルアミノプロピルアミン]、及びN−ラウリル−1,3−プロパンジアミン[別名:N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパン又はラウリルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
【0069】
又、一級及び三級アミノ基を有するジアミン(b1)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
N,N−ジメチルエチレンジアミン[別名:ジメチルアミノエチルアミン]、N,N−ジエチルエチレンジアミン[別名:ジエチルアミノエチルアミン]、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン[別名:N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン又はジメチルアミノプロピルアミン]等挙げることができる。
【0070】
両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有するポリアミン(b2)としては、公知のものを使用することができ、具体的には、
メチルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン〕、ラウリルイミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)ラウリルアミン〕、イミノビスプロピルアミン〔別名N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン〕、N,N‘−ビスアミノプロピル−1,3−プロピレンジアミン、及びN,N‘−ビスアミノプロピル−1,4−ブチレンジアミン等を挙げることができ、
2個の一級アミノ基と1個の三級アミノ基を有するメチルイミノビスプロピルアミン、及びラウリルイミノビスプロピルアミンは、ジイソシアネートとの反応制御がし易く好ましい。
【0071】
2個の一級アミノ基と1個の二級アミノ基を有するイミノビスプロピルアミンは、顔料への吸着性が良く好ましい。
【0072】
又本発明のポリアミン(B)としては、2個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(b3)も使用することができる。
【0073】
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体(b3)としては、一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、ビニルアミンやアリルアミンの単独重合体(いわゆるポリビニルアミンやポリアリルアミン)、あるいはそれらと他のエチレン性不飽和単量体との共重合体、及び、エチレンイミンの開環重合体や塩化エチレンとエチレンジアミンとの重縮合体やオキサゾリドン−2の開環重合体(いわゆるポリエチレンイミン)から選ばれることが好ましい。重合体中における一級及び/又は二級アミノ基の含有率としては、重合体を基準として、単量体単位で10〜100重量%が好ましく、20〜100重量%がより好ましい。含有率が10重量%以上であれば、顔料の凝集を防ぎ、粘度の上昇を抑えることに効果的である。
【0074】
一級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体や二級アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマール酸等の不飽和カルボン酸;
スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、インデン、及びビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル;
グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル;
(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル(メタ)アクリルアミド;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の置換アルキル(メタ)アクリルアミド;
1,3−ブタジエン、及びイソプレン等のジエン化合物;
片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコール等の重合性オリゴマー(マクロモノマー);並びに
シアン化ビニル等を挙げることができる。
【0075】
一級及び/又は二級アミノ基を有する重合体の、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)としては、300〜75,000であることが好ましく、300〜20,000であることがより好ましく、500〜5,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量が300〜75,000であれば、顔料の凝集を防ぐことにより、顔料分散体の粘度上昇を抑えることに効果的である。
【0076】
《モノアミン》
本発明の分散剤を構成するアミン化合物としては、ポリアミン(B)の他に、さらにモノアミンも使用することができる。モノアミンとしては、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基を1個有するモノアミン化合物であり、モノアミンは、重合体(A)とポリアミン(B)の反応において高分子量化しすぎるのを抑えるため、反応停止剤として使用される。モノアミンは、分子内に第一級アミノ基又は第二級アミノ基以外の他の極性官能基を有しても良い。このような極性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シアノ基、ニトロキシル基等が挙げられる。
【0077】
モノアミンとしては、従来公知のものが使用でき、具体的には、
アミノメタン、アミノエタン、1−アミノプロパン、2−アミノプロパン、1−アミノブタン、2−アミノブタン、1−アミノペンタン、2−アミノペンタン、3−アミノペンタン、イソアミルアミン、N−エチルイソアミルアミン、1−アミノヘキサン、1−アミノヘプタン、2−アミノヘプタン、2−オクチルアミン、1−アミノノナン、1−アミノデカン、1−アミノドデカン、1−アミノトリデカン、1−アミノヘキサデカン、ステアリルアミン、アミノシクロプロパン、アミノシクロブタン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノシクロドデカン、1−アミノ−2−エチルヘキサン、1−アミノ−2−メチルプロパン、2−アミノ−2−メチルプロパン、3−アミノ−1−プロペン、3−アミノメチルヘプタン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−イソブトキシプロピルアミン、2−エチルヘキシロキシプロピルアミン、3−デシロキシプロピルアミン、3−ラウリロキシプロピルアミン、3−ミリスチロキシプロピルアミン、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジsec−ブチルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリニックアシッド、イソニペコチックアシッド、メチルイソニペコテート、エチルイソニペコテート、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンブチリックアシッド塩酸塩、4−ピペリジノール、ピロリジン、3−アミノピロリジン、3−ピロリジノール、インドリン、アニリン、N−ブチルアニリン、o−アミノトルエン、m−アミノトルエン、p−アミノトルエン、o−ベンジルアニリン、p−ベンジルアニリン、1−アニリノナフタレン、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、5−アミノイソキノリン、o−アミノジフェニル、4−アミノジフェニルエーテル、β−アミノエチルベンゼン、2−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、3−ベンジルアミノプロピオニックアシッドエチルエーテル、4−ベンジルピペリジン、α−フェニルエチルアミン、フェネシルアミン、p−メトキシフェネシルアミン、フルフリルアミン、p−アミノアゾベンゼン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、アリルアミン、及びジフェニルアミン等が挙げられる。
【0078】
《アミノ基を有する重合体(C)》
アミノ基を有する重合体(C)は、下記一般式(3)に示すように、ポリアミン(B)の一級又は二級のアミノ基が、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基に対して、付加反応することによって得られる。この反応は、一般にMichael付加反応と呼ばれている。重合体(A)及びポリアミン(B)の配合を調整することにより、イソシアネート基と反応しうる一級又は二級のアミノ基を有する構造にすることができる。
一般式(3):
【0079】
【化3】

〔一般式(3)中、X1は、重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y1は、ポリアミン(B)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R7は、水素原子、又はアルキル基である。〕
【0080】
例えば、下記一般式(4)のように、片末端領域に1個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の分子1個に対し、一級アミノ基を2個有するジアミン(B)の分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基1個と二級アミノ基1個とを有する重合体(C)の分子1個が得られる。
一般式(4):
【0081】
【化4】

〔一般式(4)中、X1は、重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基である。〕
【0082】
又、例えば、下記一般式(5)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の分子1個に対し、一級アミノ基1個と二級アミノ基1個を有するジアミン(B)の分子2個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基4個を有する重合体(C)の分子1個が得られる。
一般式(5):
【0083】
【化5】

〔一般式(5)中、X2は、重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B)の内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R8は、アルキル基である。〕
【0084】
更に、例えば、下記一般式(6)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の分子n個に対し、一級アミノ基2個を有するジアミン(B)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基2個と二級アミノ基2n個とを有する重合体(C)の分子1個が得られる。(nは、正の整数である。)
一般式(6):
【0085】
【化6】

〔一般式(6)中、X2は、重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、nは、正の整数である。〕
【0086】
又、例えば、下記一般式(7)のように、片末端領域に2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の分子n個に対し、二級アミノ基2個を有するジアミン(B)の分子(n+1)個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基2個と三級アミノ基2n個とを有する重合体(C)の分子1個が得られる。(nは、正の整数である。)
一般式(7):
【0087】
【化7】

〔一般式(7)中、X2は、重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、ポリアミン(B)の内、二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、R8は、アルキル基であり、nは、正の整数である。〕
【0088】
理論上としたのは、上記4例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応するとした場合であり、実際は、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もあるので、一部、予想とは異なる構造の重合体(C)が得られる場合もあるが、上記付加反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の重合体(C)が得られ、その後の反応や、最終的な分散剤としての機能に問題はない。
【0089】
〈合成条件〉
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)と、からアミノ基を有する重合体(C)を得るためのMichael付加反応は、1)全量仕込みで反応する方法、2)ポリアミン(B)及び必要に応じて溶剤からなる溶液をフラスコに仕込み、重合体(A)溶液を滴下する方法に大別される。安定した反応になる方で合成を行うが、反応に問題がなければ、反応制御(分子設計制御)が容易な2)の方法が好ましい。
【0090】
本発明のマイケル反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する重合体(C)を得ることは難しい。
【0091】
又、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)の配合比は、特に限定されず、用途と要求性能により任意に選択される。反応の終点は、滴定に因るアミン%測定により判断する。
【0092】
《アミノ基及びウレア結合を有する分散剤》
本発明の分散剤は、アミノ基及びウレア結合を有する分散剤であり、アミノ基を有する重合体(C)の一級又は二級のアミノ基と、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D)のイソシアネート基を反応して得られる。アミノ基を有する重合体(C)の一級又は二級のアミノ基は、反応させるポリイソシアネートの量を調整することにより、一部又は全部がウレア結合を形成し、残りは分散剤中にアミノ基として存在する。
【0093】
また、アミノ基を有する重合体(C)は一級又は二級のアミノ基以外にも三級アミノ基を有している場合は、三級アミノ基はイソシアネート基と反応せずそのまま顔料吸着基として分散剤中に残る。
【0094】
例えば、下記一般式(8)のように、一級アミノ基1個と二級アミノ基2個を有する重合体(C)の分子2個に対し、ジイソシアネートの分子1個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、二級アミノ基4個とウレア結合2個とを有する分散剤が得られる。下記一般式(8)中のW1及びW2が、ポリアミン(B)及び/又は重合体(C)由来の三級アミノ基を有する場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。
一般式(8):
【0095】
【化8】


〔一般式(8)中、X1は、重合体(C)の前駆体である重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、W1、及びW2は、重合体(C)の前駆体であるポリアミン(B)内、一級及び二級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D)の内、イソシアネート基を除いた部分である。〕
【0096】
又、例えば、下記一般式(9)のように、二級アミノ基1個を有する重合体(C)の分子2個に対し、ジイソシアネート(D)の分子1個を反応させた場合、理論上、二級アミノ基が、イソシアネート基と反応してウレア結合を形成し、ウレア結合を有する分散剤が得られる。下記一般式(8)中のW3が、ポリアミン(B)及び/又は重合体(C)由来の三級アミノ基を有する場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。前記分散剤は、活性水素を有するアミノ基は有しない。
一般式(9):
【0097】
【化9】

〔一般式(9)中、X1は、重合体(C)の前駆体である重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、W3は、重合体(C)の前駆体であるポリアミン(B)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D)の内、イソシアネート基を除いた部分である。〕
【0098】
更に、例えば、下記一般式(10)のように、前記一般式(6)の生成物である、一級アミノ基2個と二級アミノ基2n個とを有する重合体(C)の分子(m+1)個に対し、ジイソシアネート(D)の分子m個を反応させた場合、理論上、一級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、一級アミノ基2個と二級アミノ基(2nm+2n)個とウレア結合2m個とを有する分散剤が得られる。下記一般式(10)中のY2が、ポリアミン(B)及び/又は重合体(C)由来の三級アミノ基を有する場合、前記分散剤は、三級アミノ基も有する。(n及びmは、正の整数である。)
一般式(10):
【0099】
【化10】



〔一般式(10)中、X2は、重合体(C)の前駆体である重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y2は、重合体(C)の前駆体であるポリアミン(B)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、W4は、重合体(C)の内、アミノ基を有する部位を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D)の内、イソシアネート基を除いた部分であり、n及びmは、正の整数である。〕
【0100】
又、例えば、下記一般式(11)のように、一級アミノ基1個を有するポリアミン(B)の分子2個と(メタ)アクリロイル基2個を有する重合体(A)の分子1個とを反応して得られる、重合体(A)由来の部分から見て両末端領域に、二級アミノ基を1個ずつ、合わせて2個を有する重合体(C)の分子(m+1)個に対し、ジイソシアネート(D)の分子m個を反応させた場合、理論上、前記二級級アミノ基とイソシアネート基とが反応してウレア結合を形成し、ポリウレア鎖から見てり両末端領域に、二級アミノ基を1個ずつ、合わせて2個有する分散剤が得られる。(mは、正の整数である。)
一般式(11):
【0101】
【化11】


〔一般式(11)中、X2は、重合体(C)の前駆体である重合体(A)の内、(メタ)アクリロイルオキシ基を除いた部分であり、Y3は、ポリアミン(B)の内、一級アミノ基を除いた部分であり、W5は、重合体(C)の内、アミノ基を有する部位を除いた部分であり、R6は、水素原子、又はメチル基であり、Z1は、ポリイソシアネート(D)の内、イソシアネート基を除いた部分であり、mは、正の整数である。〕
【0102】
理論上としたのは、上記4例は、一級アミノ基が、二級アミノ基より反応性が高いため、必ず優先的に反応するとした場合であり、実際は、反応条件等により、一級アミノ基が残っていても、先に二級アミノ基が反応する場合もあるので、一部、予想とは異なる構造の分散剤が得られる場合もあるが、上記反応は、ほぼ量論的に反応が進行するので、大部分が目的とする構造の重合体(C)が得られ、分散剤としての機能に問題はない。
【0103】
以上のように、アミノ基を有する重合体(C)とポリイソシアネート(D)との反応比を変えることによって、分散剤の分子量やアミノ基(一級、二級、及び/又は三級)並びにウレア結合の量を調整することができる。
【0104】
《ポリイソシアネート(D)》
本発明に用いられるポリイソシアネート(D)としては、従来公知のものを使用することができるが、分散体の低粘度効果から、ジイソシアネートであることが好ましく、例えば、芳香族系ジイソシアネート(d1)、脂肪族系ジイソシアネート(d2)、芳香族−脂肪族系ジイソシアネート(d3)、脂環族系ジイソシアネート(d4)、これらジイソシアネートのニ量体(ウレトジオン)、これらジイソシアネートの三量体(イソシアヌレート)とモノアルコールとの反応物、及びこれらジイソシアネートとジオールとの反応物(両末端イソシアネートのウレタンプレポリマー)等が挙げられる。
【0105】
芳香族系ジイソシアネート(d1)としては、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、ジアニシジンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、及び1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン等を挙げることができる。
【0106】
脂肪族系ジイソシアネート(d2)としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0107】
芳香脂−肪族族系ジイソシアネート(d3)としては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0108】
脂環族系ジイソシアネート(d4)としては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、及びメチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0109】
以上、列挙したジイソシアネート(D)は、必ずしもこれらに限定されるものではなく、2種類以上を併用して使用することもできる。
【0110】
本発明に用いられるジイソシアネート(D)としては、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート、IPDI)が難黄変性であるために好ましい。
【0111】
又、分散剤の分子量を上げる目的で、1分子内に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネ−ト(d5)を使用しても良く、芳香族系ポリイソシアネ−ト、脂肪族系ポリイソシアネ−ト、芳香族−脂肪族系ポリイソシアネ−ト、及び脂環族系ポリイソシアネ−ト等を挙げることができる。
【0112】
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネートとして、具体的には、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート体、及び上記ジイソシアネートのビウレット体等のジイソシアネートの三量体、上記ジイソシアネートのポリオールアダクト体、二種以上の上記ジイソシアネートの共重合体、芳香族系トリイソシアネート、並びに、ポリメリック型の芳香族系イソシアネートオリゴマー等が挙げられる。
【0113】
1分子に3個以上イソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、例えば、
トリレンジイソシアネート(以下、TDI略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記する場合がある。)のイソシアヌレート体、HDIのビウレット体、HDIのトリメチロールプロパン(以下、TMPと略記する場合がある。)アダクト体、TDIのTMPアダクト体、及びTDI/HDIコポリマー等のジイソシアネート変性物;
2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、及び4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等の芳香族系トリイソシアネート;並びに、
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(別名MDIオリゴマー)等のポリメリック型芳香族系イソシアネートオリゴマー)等が挙げられる。
【0114】
〈合成条件〉
アミノ基を有する重合体(C)とポリイソシアネート(D)との反応は、1)全量仕込みで反応する場合と、2)重合体(C)溶液をフラスコに仕込み、ポリイソシアネート(D)を滴下する方法に大別されるが、反応を精密にする場合は2)が好ましい。本発明のウレア化反応の温度は、70℃以下が好ましい。更に好ましくは60℃以下である。60℃でも反応速度は大きく、制御できない場合は、50℃以下が更に好ましい。70℃より高くなると反応速度の制御が困難であり、所定の分子量と構造を有する分散剤を得ることは難しい。
【0115】
また、アミノ基を有する重合体(C)に対するポリイソシアネート(D)の配合比は、重合体(C)の活性水素を有するアミノ基(一級及び二級アミノ基)当量を〔C〕、ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基当量を〔D〕とすると、〔D〕/〔C〕は0.25〜1.00で、イソシアネート基の全てを活性水素を有するアミノ基と反応させるとことが好ましく、最終合成物である分散剤の設計(顔料吸着部位と溶剤親和性部位のバランス)の観点から、0.35〜0.9がより好ましく、最終合成物である分散剤を使った顔料分散体の分散安定性の観点から、0.5〜0.8が最も好ましい。
【0116】
前記配合当量比が0.25より小さいと、最終製品である分散剤中のウレア結合の量が少なくなり、分散性が悪くなる場合がある。又、配合当量比が1.00より大きいと、反応活性が高いイソシアネート基が残り、水等と反応し、高分子量化して粘度が高くなることがあり、好ましくない。又、前記配合当量が、1.00であると、例えば、活性水素を有するアミノ基を2個有するポリアミン(C)とイソシアネート基を2個有するジイソシアネート(D)との反応では、理論上、分子量が無限大となるため、分子量制御の観点で、好ましくない。
【0117】
更に、三級アミノ基、及びウレア結合に加えて一級及び/又は二級アミノ基(活性水素を有するアミノ基)が、分散剤骨格中に存在すると、顔料に対する吸着性が向上し、溶剤親和性部位とのバランスも良くなり、顔料分散性及びその経時安定性も良くなる。
【0118】
又、活性水素を有するアミノ基が多く残り過ぎると、顔料吸着必要量を超えてしましまい、例えば、レジストインキを調整する場合に添加する多官能モノマーのアクリロイル基と反応する等の問題を生じる。
【0119】
従って、適度に、活性水素を有するアミノ基が残るように配合することが、好ましい。即ち、前記のように、配合当量比が、0.35〜0.9、好ましくは0.5〜0.8の時、三級アミノ基、ウレア結合、活性水素を有するアミノ基、及び溶剤親和部位のバランスが良くなり、優れた顔料分散安定性を示す。
【0120】
本発明の分散剤は、片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)を製造する第一の工程と、
前記片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基と、1以上の一級及び/又は二級アミノ基を含むポリアミン(B)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応する、アミノ基を有する重合体(C)を製造する第二の工程と、並びに、
アミノ基を有する重合体(C)の一級及び/又は二級アミノ基と、少なくとも2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D)のイソシアネート基と、を反応させる第三の工程と、
を含む製造法により製造することができる。
【0121】
各工程の合成方法及び条件等は前述のとおりである。
【0122】
本発明の分散剤の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜50,000、特に好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が1,000未満であれば、顔料組成物の安定性が低下する場合があり、100,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、顔料組成物の増粘が起きる場合がある。又、得られた分散剤のアミン価は、5〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは10〜70mgKOH/g、さらに好ましくは20〜50mgKOH/gである。アミン価が5mgKOH/g未満であれば顔料と吸着する官能基が不足し、顔料分散に寄与することが困難になる場合があり、100mgKOH/gを超えると、顔料同士の凝集が起こり、粘度低下効果の不足や塗膜外観に不具合を生じさせる場合がある。
【0123】
《顔料組成物》
〈顔料〉
本発明の分散剤と顔料とを混合し、分散することにより、顔料組成物を得ることができる。
【0124】
本発明で使用する顔料は、特に制限されないが、例えば、
溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ハロゲン化フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ジアンスラキノニル顔料、アンスラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ピランスロン顔料、及びジケトピロロピロール顔料等があり、
更に具体的な例をカラーインデックスのジェネリックネームで示すと、
ピグメントブラック7、ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、及びピグメントブルー64等の青色顔料;
ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、ピグメントグリーン58等の緑色顔料;
ピグメントレッド9、ピグメントレッド48、ピグメントレッド49、ピグメントレッド52、ピグメントレッド53、ピグメントレッド57、ピグメントレッド97、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド144、ピグメントレッド146、ピグメントレッド149、ピグメントレッド166、ピグメントレッド168、ピグメントレッド177、ピグメントレッド178、ピグメントレッド179、ピグメントレッド180、ピグメントレッド185、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントレッド215、ピグメントレッド216、ピグメントレッド217、ピグメントレッド220、ピグメントレッド221、ピグメントレッド223、ピグメントレッド224、ピグメントレッド226、ピグメントレッド227、ピグメントレッド228、ピグメントレッド238、ピグメントレッド240、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、及びピグメントレッド255等の赤色顔料;
ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23、ピグメントバイオレット29、ピグメントバイオレット30、ピグメントバイオレット37、ピグメントバイオレット40、及びピグメントバイオレット50等の紫色顔料;
ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー20、ピグメントイエロー24、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー86、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー94、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー117、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー125、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー137、ピグメント、イエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー147、ピグメントイエロー148、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー153、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー166、ピグメントイエロー168、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185、及びピグメントイエロー213等の黄色顔料;
ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ37、ピグメントオレンジ38、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ51、ピグメントオレンジ55、ピグメントオレンジ59、ピグメントオレンジ61、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、及びピグメントオレンジ74等の橙色顔料;並びに
ピグメントブラウン23、ピグメントブラウン25、及びピグメントブラウン26等の茶色顔料が挙げられる。
【0125】
又、カーボンブラックについては中性、酸性、及び塩基性等のあらゆるカーボンブラックを使用することができる。
【0126】
本発明の顔料組成物中の顔料濃度は、顔料の重量と分散剤の重量とを合計した重量を基準として、1〜80重量%が好ましく、2〜50重量%がより好ましい。1重量%より少ないと着色力が無く、80重量%より多いとインキの保存安定性が悪化する。
【0127】
〈酸性官能基を有する誘導体〉
本発明の顔料組成物には、更に、酸性官能基を有する色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の酸性官能基を有する誘導体(以下、酸性官能基を有する誘導体と略記する場合がある。)を使用することができる。
【0128】
本発明で使用する酸性置換基を有する誘導体について説明する。本発明で使用する酸性置換基を有する誘導体は、下記一般式(12)、下記一般式(13)、及び下記一般式(14)で表される誘導体の群から選ばれる少なくとも一種類以上の誘導体を使用することができる。酸性置換基を有する誘導体は、下記一般式(12)で表される電荷を有さない誘導体、並びに下記一般式(13)及び(14)で表される電荷を有する誘導体に分けられる。
【0129】
一般式(12):
P−Z2
(一般式(12)中、Pは、有機色素残基、置換基を有していても良い複素環残基、又は
置換基を有していても良い芳香族残基であり、Z2は、スルホン酸基又はカルボキシル基である。)
【0130】
一般式(13):
(P−Z2)[N+(R9,R11,R12,R13)]
(一般式(13)中、Pは、有機色素残基、置換基を有していても良い複素環残基、又は
置換基を有していても良い芳香族残基であり、R9は、炭素数5〜20のアルキル基であり、R10,R11,及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であり、Z2は、SO3-又はCOO-である。)
【0131】
一般式(14):
(P−Z2)M+
(一般式(14)中、Pは、有機色素残基、置換基を有していても良い複素環残基、又は
置換基を有していても良い芳香族残基であり、Mは、ナトリウム又はカリウム原子であり、Z2は、SO3-又はCOO-である。)
【0132】
一般式(12)〜(14)のPで表される有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、及び金属錯体系色素等が挙げられる。
【0133】
又、一般式(12)〜(14)のPで表される複素環残基及び芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、及びアクリドン等が挙げられる。これらの複素環残基及び芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、及びブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、及びジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、及びフッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、及びハロゲン等で置換されていてもよい)、並びに、フェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、及びハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
【0134】
一般式(12)〜(14)中のPで表される有機色素残基の化学構造は、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキ、インキジェットインキ、塗料、及び着色樹脂組成物に使用する顔料の化学構造と、必ずしも一致しなければいけないものではないが、最終的に製造されるインキ等の色相を考慮すれば、黄色系顔料の分散に使用する際には黄色系の顔料誘導体、赤系顔料の分散に使用する際には赤系の顔料誘導体、又は青系顔料の分散に使用する際には青系の顔料誘導体のように、分散する顔料の色相に近いもの、もしくは無色のものを使用した方が色相的に優れた顔料分散体を製造することができる。
【0135】
〈有機溶剤〉
本発明の顔料組成物は、更に、有機溶剤に分散して使用することができる。
【0136】
本発明に使用する有機溶剤は、オフセットインキ、グラビアインキ、カラーフィルター用レジストインキ、インキジェットインキ、塗料、及び着色樹脂組成物等に使用される有機溶剤が広く利用できる。補足するならば、本発明の分散剤が溶解、もしくは均一に懸濁する有機溶剤であれば特に制限をうけるものではない。
【0137】
具体的な有機溶剤の例としては、
メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、及びn−ブチルアルコール等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、ジエチルケトン、エチル−n−プロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチル−n−ブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、乳酸メチル、乳酸プロピル、及び乳酸ブチル等のエステル類;
γ−ブチロラクトン、及びε−カプロラクトン等のラクトン類;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコール等のグリコール類;
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類;
n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ノナン、イソノナン、ドデカン、及びイソドデカン等の飽和炭化水素類;
1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテン等の不飽和炭化水素類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、及びデカリン等の環状飽和炭化水素類;
シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、及びシクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類;
N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、及び2−ピロリドン等の(N−アルキル)ピロリドン類;
N−メチル−2−オキサゾリジノン等のN−アルキルオキサゾリジノン類;並びに、
ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。
【0138】
これらの有機溶剤は単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても良いが、最終用途で使用する溶剤であることが好ましい。
【0139】
本発明における顔料組成物は、分散剤を有機溶剤中に溶解、あるいは懸濁させた後、この液中に顔料、及び必要に応じて酸性官能基を有する誘導体を投入し、ハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌混合した後、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型サンドミルといったビーズミルやロールミル、メディアレス分散機等の種々の分散機を用いて分散して製造することができる。又、酸性官能基を有する誘導体は、顔料の製造時に添加することにより予め顔料を表面処理するための、処理剤として使用してもよい。
【0140】
《顔料分散体》
本発明の顔料組成物は、種々の印刷インキやインクジェットインキとして使用し、展色する際の定着性を付与させるためにワニスを添加し、顔料分散体として使用することができる。
【0141】
〈ワニス〉
ワニスとして使用できる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び光硬化性樹脂が使用できる。
【0142】
熱可塑性樹脂としては、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩酢ビ樹脂、エチレン酢ビ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、及びブチラール樹脂等を挙げることができる。
【0143】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、及び尿素樹脂等を挙げることができる。
【0144】
光硬化性樹脂(感光性樹脂)としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、及びエポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、及びスチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂を用いることができる。又、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものを用いることもできる。
【0145】
本発明の顔料組成物を用いて調整される顔料分散体はその使用する用途によって可塑剤、表面調整剤、紫外線防止剤、光安定化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、粘度調整剤、ワックス、界面活性剤、及びレベリング剤等の種々の添加剤を使用することができる。
【0146】
本発明の顔料組成物を用いて調整される顔料分散体は、前記ワニスとして、光重合性樹脂(感光性樹脂)ワニスを使用したり、さらに、重合性モノマー及び/又はオリゴマーを含有させることにより、紫外線や電子線で硬化させる放射線硬化型インキとしても使用することができる。
【0147】
又、本発明の顔料組成物を用いて調整される顔料分散体は、前記ワニスとして、熱硬化性樹脂ワニスを使用したり、さらに、熱反応性化合物(熱架橋剤)を含有させることにより、熱硬化型インキとしても使用することもできる。
【0148】
本発明の顔料組成物を用いて顔料分散体を調整する際に使用されるワニスに含まれる溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が用いられるが特にこれらに限定されるものではない。
【0149】
本発明の顔料組成物を用いて調整される顔料分散体は、特に、インクジェットインキ、及びカラーフィルタ用レジストインキに好適に使用される。従って、インクジェットインキ、及びカラーフィルタインキで使用されている溶剤を用いて、分散剤、顔料組成物、顔料分散体、ワニスを製造することが好ましい。これらの溶剤としては、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。臭気が少なく、溶解性に優れたジエチレングリコールジアセテートを使用するのが最も好ましい。
【実施例】
【0150】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」は「重量部」を表し、「%」は「重量%」を表す。
【0151】
又、「酸性誘導体」は、「酸性官能基を有する色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の酸性官能基を有する誘導体」である。
【0152】
又、重合平均分子量(Mw)は、装置としてHLC−8320GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラムとして SUPER−AW3000を使用し、溶離液として30mM トリエチルアミン及び10mM LiBrのN,N−ジメチルホルムアミドを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0153】
又、アミン価はASTM D 2074の方法に準拠し、測定した全アミン価(mgKOH/g)である。
【0154】
(製造例1)<片末端にアクリロイル基を有するポリエステル(a−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、4−ヒドロキシブチルアクリレート20.8部とε−カプロラクトン379部、触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1部を仕込み、乾燥空気流下で120℃で4時間加熱、撹拌し固形分測定により95%が反応したことを確認し反応を終了し、メトキシプロピルアセテート171部を加えて希釈し、更に、固形分70重量%に調整して、重量平均分子量6500の、片末端に1つのアクリロイル基を有するポリエステル(a−1)の固形分70重量%溶液を得た。
【0155】
(製造例2〜5)<片末端にアクリロイル基を有するポリエステル(a−2)〜(a−5)の合成>
表1に記載した原料と仕込み量を用いた以外は、製造例1と同じ方法で片末端に1つのアクリロイル基を有するポリエステル(a−2)〜(a−5)の固形分70重量%溶液を得た。
【0156】
【表1】

【0157】
表1中の略称は以下に示す通りである。
1)開始剤:開環重合開始剤:(メタ)アクリロイル基を有するモノアルコール
2)触媒:開環重合触媒
3)重合禁止剤:ラジカル重合禁止剤
4)重合体(A1):1個又は2個のアクリロイル基を有するポリエステル(A1)
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
PGMAc:メトキシプロピルアセテート
【0158】
(製造例6)<片末端にアクリロイル基を有するビニル重合体(a−6)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート400部とブチルアクリレート100部、メトキシプロピルアセテート100部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール27.5部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認し、メトキシプロピルアセテート427部を加えて希釈したのち、乾燥空気流下でアクリロイルオキシエチルイソシアネート32.6部、DBTDL 1部、メチルハイドロキノン0.3部を加え、さらに2時間加熱攪拌し、更に、固形分50重量%に調整して、重量平均分子量4500の、片末端に2つのアクリロイル基を有するビニル重合体(a−6)の固形分50重量%溶液を得た。
【0159】
(製造例7〜11)<片末端にアクリロイル基を有するビニル重合体(a−7)〜(a−11)の合成>
表2に記載した原料と仕込み量を用いた以外は、製造例1と同じ方法で片末端に2つのアクリロイル基を有するビニル重合体(a−7)〜(a−11)を得た。
【0160】
【表2】

【0161】
表2中の略称は以下に示す通りである。
1)化合物(s2):分子内に2個のヒドロキシル基と1個のチオール基とを有する化合物(s2)
2)重合開始剤:ラジカル重合開始剤
3)重合溶剤:仕込み100重量部+希釈溶剤
4)化合物(a3):ヒドロキシル基と反応しうる基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物(a3)
5)触媒:ヒドロキシル基と化合物(a3)の反応触媒
6)重合禁止剤:ラジカル重合禁止剤
7)重合体(A2):1個又は2個のアクリロイル基を有するビニル重合体(A2)
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
EA:エチルアクリレート
AIBN:2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル
PGMAc:メトキシプロピルアセテート
AOI:2‐アクリロイルオキシエチルイソシアネート
DBTDL:ジブチルスズジラウレート
【0162】
(実施例1)<分散剤(G−1)の合成>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン18.9部と、PGMAc248部を仕込み、50℃に加熱して重合体(aー1)の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応した後、イソホロンジイソシアネート16.0部、メトキシプロピルアセテート112部の混合液を30分かけて滴下し、更に2時間反応し、メトキシプロプルアセテートを加えて、固形分30重量%に調整して、重量平均分子量13000、アミン価36mgKOH/gの分散剤(G−1)の固形分30重量%溶液を得た。
【0163】
(実施例2〜12)<分散剤(G−1)〜(G−12)の合成>
表3及び表4に記載した原料と仕込み量を用いた以外は、実施例1と同じ方法で分散剤(G−1)〜(G−12)を得た。
【0164】
【表3】

【0165】
【表4】

【0166】
表3、4中の略称は以下に示す通りである。
IBPA:イミノビスプロピルアミン
MIBPA:メチルイミノビスプロピルアミン
IPDA:イソホロンジアミン
DMAEA:N,N‐ジメチルアミノエチルアミン
PGMAc:メトキシプロピルアセテート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
TDI:2,4‐トリレンジイソシアナート
TDIトリマー:1,3,5‐トリス(3‐イソシアナト‐4‐メチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン
【0167】
<比較分散剤(H−1)>
アジスパーPB821(味の素ファインケム社製、酸価17、アミン価8〜11)30部を、メトキシプロピルアセテート70部に溶解して、比較分散剤(H−I)の固形分30重量%溶液を得た。
【0168】
<比較分散剤(H−2)の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン18.9部と、メトキシプロピルアセテート805.5部を仕込み、50℃に加熱して重合体(aー1)の固形分70重量%溶液571部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応し、重量平均分子量7500、アミン価58の比較分散剤(H−2)の固形分30重量%溶液を得た。
【0169】
<比較分散剤(H−3)の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、イミノビスプロピルアミン12.4部と、メトキシプロピルアセテート362.2部を仕込み、50℃に加熱して重合体(aー7)の固形分50重量%溶液500部を30分かけて滴下し、さらに1時間反応し、重量平均分子量7000、アミン価60の比較分散剤(H−3)の固形分30重量%溶液を得た。
【0170】
(実施例13)<顔料組成物の調整>
顔料としてピグメントブルー 15:3 19g、実施例1で得られた分散剤(G−1)の固形分30重量%溶液26.7g(固形分8g)、酸性誘導体(1)2g、ジエチレングリコールジエチルエーテル52.3g、及びガラスビーズ(直径0.8mm)60gを140mLのマヨネーズ瓶に仕込み、F&FM社製スキャンデックスSO400(以下スキャンデックスと呼ぶ)に設置して3時間分散した。この分散液からガラスビーズを取り除き分散体を得、この分散体を24時間25℃で放置後、下記評価を行った。
【0171】
(初期粘度、粘度安定性)
直径60mm、角度0度59分のコーンプレートを用いたコーンプレート型粘度計で、1rad/秒の回転速度で25℃での粘度を測定し、初期粘度とした。粘度安定性は、この分散体を40℃のオーブンで1週間保存したものを上記と同様の方法で粘度を測定したものを経時粘度とし、(経時粘度÷初期粘度)で表される粘度の変化率が±10%以内なら○、±10%を越えたら×とした。
【0172】
(耐アルコール性)
ペーストをバーコーター#3でガラス基板上に塗工し、70℃で20分間乾燥した後、エタノール50%水溶液を含ませた脱脂綿で基板上を10往復こすり、塗膜の表面状態を目視で確認して変化なしなら○、一部剥がれが生じていれば△、ガラス基板が見えるほど剥がれていれば×とした。
【0173】
(実施例14〜24)<顔料組成物の調整>
実施例13と同様の方法で、上記実施例2〜12で得られた分散剤(G−2)〜(G−12)を用いて、表5に示す顔料組成物組成比(重量比)になるように顔料組成物を調整し、それぞれ顔料組成物を得た。実施例13と同様の方法で評価し、結果を表5に示す。
【0174】
(比較例1〜3)<顔料組成物の調整>
実施例13と同様の方法で、上記比較分散剤(H−1)〜(H−3)を用いて、表5に示す顔料組成物組成比(重量比)になるように顔料組成物を調整し、それぞれ比較顔料組成物を得た。実施例13と同様の方法で評価し、結果を表5に示す。
【0175】
【表5】

【0176】
表5中の顔料及び誘導体は以下に示す通りである。
・ピグメントグリーン 58:
計算式:F=B−A
(式中、Fは、顔料の表面余剰官能性量(μmol/g)であり、Bは顔料の表面塩基量(μmol/g)であり、Aは、顔料の表面酸量(μmol/g)である)
から計算されるF値(顔料の表面余剰官能性量)が、−536μmol/gの、表面が酸性に偏った顔料;
・ピグメントイエロー 150:同様に計算されたF値が−130である表面が酸性に偏った顔料
・酸性誘導体(1): (P−Z2)[N+(R9,R10,R11,R12)](ただし、P:銅フタロシアニン、Z2:−SO3-、R9:プロピル基、R10:エチル基、R11:エチル基、R12:H)
・酸性誘導体(2): (P−Z2)[N+(R9,R10,R11,R12)](ただし、P:キナクリドン、Z2:−SO3-、R9:プロピル基、R10:ブチル基、R11:ブチル基、R12:H)
【0177】
表5中の略称(溶剤)は以下に示す通りである。
DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
PGMAc:メトキシプロピルアセテート
【0178】
以上の結果から明らかなように、本発明の分散剤を使用した実施例13〜24の顔料組成物は、低い初期粘度で、且つ良好な粘度安定性を示している。さらに、耐アルコール性も良好である。これに対し、比較例2、3は粘度安定性が悪く、耐アルコール性も劣る。又、比較例1では耐アルコール性が悪いという結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)の一級及び/又は二級アミノ基とを反応してなる、アミノ基を有する重合体(C)の一級及び/又は二級アミノ基と、2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D)のイソシアネート基とを反応してなる、アミン価が5〜100mgKOH/gであることを特徴とする分散剤。
【請求項2】
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)が、ビニル重合体を含むことを特徴とする請求項1記載の分散剤。
【請求項3】
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)が、ポリエステルを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の分散剤。
【請求項4】
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の重量平均分子量が、500〜30,000であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の分散剤。
【請求項5】
1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)が、2個の一級及び/又は二級アミノ基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の分散剤。
【請求項6】
1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)が、両末端に2個の一級及び/又は二級アミノ基を有し、さらに、両末端以外に二級及び/又は三級アミノ基を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の分散剤。
【請求項7】
2個以上のイソシアネート基を含むポリイソシアネート(D)が、ジイソシアネートであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の分散剤。
【請求項8】
重量平均分子量が、1,000〜100,000であることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の分散剤。
【請求項9】
片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)を製造する第一の工程と、
前記片末端領域に1個又は2個の(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の(メタ)アクリロイル基と、1個以上の一級及び/又は二級アミノ基を有するポリアミン(B)の一級及び/又は二級アミノ基と、を反応する、アミノ基を有する重合体(C)を製造する第二の工程と、並びに、
アミノ基を有する重合体(C)の一級及び/又は二級アミノ基と、少なくとも2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(D)のイソシアネート基と、を反応する第三の工程と、
を含む分散剤の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか記載の分散剤と、顔料とを含んでなる顔料組成物。
【請求項11】
更に、酸性官能基を有する色素誘導体、酸性官能基を有するアントラキノン誘導体、酸性官能基を有するアクリドン誘導体、及び酸性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群から選ばれる1種類以上の酸性官能基を有する誘導体を含んでなる請求項10記載の顔料組成物。

【公開番号】特開2010−29807(P2010−29807A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195901(P2008−195901)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】