説明

分散型スケジューラ機能を有する無線通信システム

【課題】個々の分散ノードが自律的にスケジュールを実行することができる無線通信システムを低コストに提供すること。
【解決手段】アドホック無線ネットワークを自動的に構築する無線通信ユニット、外部機器との接続用ポート、時計、および近未来のスケジュールを記憶するメモリ領域を有し、その時計に基づき保持されたスケジュールを自律的に実行する分散ノードと、アドホック無線ネットワーク管理手段、ネットワークポート、複数の分散ノードから受信した外部機器関連データを記憶する第1メモリ領域、および複数の分散ノードのスケジュールを記憶する第2メモリ領域を有する管理ノードと、を備えるシステムであって、各分散ノードが、スケジュール実行後の所定のタイミングに近未来のスケジュールを管理ノードから取得することを特徴とする無線通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型スケジューラ機能を有する無線通信システムに関し、より具体的には、例えば、数十ないし数百台以上のノードコンピュータ(以下、分散ノードとする)がアドホック無線ネットワークを自動的に構築し、自律的にスケジュールを実行することができる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントや化学プラント等においては、各機器の制御を達成するために、多様な場所に配置される多数のフィールド機器、例えば、弁やスイッチなどの制御部品、温度センサ、圧力センサおよび流量センサのようなセンサを有している。各フィールド機器を連携動作させるためには、スケジュール化された動作モード変更を行うことができる制御システムが必要となる。
プラント制御システムでは、フィールド機器をフィールドバスに接続し、これらのフィールド機器がフィールドバスを介して互いにデータ通信を行うように構成されることが知られている。フィールドバスを用いた制御システムでは、制御の中心になる少数のコンピュータと、大きいシステムでは数千、数万の小規模なフィールド機器で構成される。このような制御システムでは、例えば動作モードの変更を行うため、一定周期で通信を繰り返す定周期通信が行われる。そのため、フィールドバスシステムをTCP/IPネットワークを用いて構成した場合には、ネットワークの負荷が問題となる。
【0003】
特許文献1には、TCP/IPを用い、マルチキャスト通信を使用した定周期通信を効率的に行うことができるネットワークシステムであって、設定された条件を満たすパケットを受信すると送信を開始する複数の自律ノードと、前記自律ノードに送信開始条件を設定するスケジュール設定装置と、を備えるネットワークシステムが提案されている。
【0004】
ところで、多数の分散ノード相互間をZigBee(登録商標。以下省略)などの通信規格に基づいて無線で接続し、いわゆるマルチホップ通信を行うことのできるアドホック無線ネットワークは、無線LANのようなアクセスポイント等のインフラを用意しなくても無線通信ネットワークを簡単に構築できるといった利点を有している。例えば、計測点が数百点を越える多点計測においては、フィールド機器をアドホックに無線で接続することの要望は高い。そこで、発明者は、ZigBee無線ネットワークを用いて構築したオンデマンド・モニタリングシステム技術を提案した(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−105604号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】中西美一:「ユビキタスデータ収集・蓄積・分析システムパッケージの開発」,四国電力.四国総合研究所 研究期報No.89,pp43-54(2007.12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ZigBee規格のようなアドホック無線等で連係されたネットワーク上に、多数の分散ノードを配置する構成のシステムにおいて、個々の分散ノードの振る舞いを時間精度良くスケジュール管理することは簡単ではないが、この機能がないと、この種のシステムの用途は非常に限定的なものとなってしまう。
個々の分散ノードに、予め動作スケジュールを組み込んでおく方法では、システム全体の振る舞いを変えたい場合に全ての分散ノードのスケジュールデータを更新する必要があり現実的ではない。また、個々の分散ノードにはコスト面の制約から長期間のスケジュールを保持するだけのメモリを搭載できない場合も多い。特に多点計測においては、分散ノードのコストをできる限り抑える必要があるため、ハードウェア資源の制約は大きい。
【0008】
ここで、ネットワーク全体のスケジュールを保持した1つのノードコンピュータ(以下、管理ノードとする)から、個々の分散ノードへ無線ネットワークを介して、リアルタイムに動作指令を行う方法が考えられる。しかし、無線ネットワークは有線ネットワークに比べて不安定で、通信時間の揺らぎも発生しやすく、特に複数の分散ノードに同時に動作指令を出す必要がある場合に個々の分散ノードへの指令伝達に大きな時間ゆらぎが発生してしまうという問題がある。また、アドホック無線ネットワークの利用形態の1つに、牧場に放牧された肉牛の体温管理をオンラインで行う場合のように、設置場所を固定した分散ノード群により無線通信経路を確保した上で、通信可能エリア内を、分散ノード(この場合は肉牛に携帯させる体温計測ノード)をそれからの第一中継局を最寄の固定分散ノードへ順次切り替えながら移動させる形態があるが、この利用形態では、第一中継局の切り替えが発生する都度、数秒〜数十秒の通信断絶が発生し、この間移動分散ノードは管理ノードからの動作指令を受信することができないため、管理ノードからリアルタイムに動作指令を行う方法は利用できないという問題がある。また、この方法の避けがたい欠点として、管理ノードは個々の分散ノードへの動作指示タイミングを検出するために、システム全体のスケジュールデータを常にスキャンする必要があるため、分散ノードの数に比例して、そのためのデータ処理負荷が増大し、管理ノードに必要なデータ処理性能の決定が難しいことがある。
【0009】
また、アドホック無線ネットワークを利用したシステムでは、個々の分散ノードへの電源供給が難しい場合が多く、電池電源での長時間動作が可能であることが必要となる場合が多い。電池電源での長時間動作は、一般に各分散ノードを必要な時のみ消費電力の大きな活動状態とし、それ以外の時は殆ど電力を消費しない休止状態とすることで実現されるが、例えばこれをスケジュール機能を持たないセンサノード群に適用した場合、各センサノードは必要な計測間隔がスケジュール的に変化する場合でも、常に最短の時間間隔で活動状態と休止状態を繰り返す必要があり、結果的に消費電力の低減が難しくなるといった課題がある。
【0010】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、個々の分散ノードが自律的にスケジュールを実行することができる無線通信システムを低コストに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、CPUのメインメモリとキャッシュメモリの関係を模したメカニズムで、1つの管理ノードにはネットワーク全体のスケジュールデータを保持し、個々の分散ノードが必要に応じて、近未来のスケジュールを管理ノードからネットワークを介して取得することを特徴とする、ネットワーク分散型のスケジュール管理機能を提供するものである。
本発明は以下の技術手段から構成される。
【0012】
第1の発明は、アドホック無線ネットワークを自動的に構築する無線通信ユニット、外部機器との接続用ポート、時計、および近未来のスケジュールを記憶するメモリ領域を有し、その時計に基づき保持されたスケジュールを自律的に実行する分散ノードと、アドホック無線ネットワーク管理手段、ネットワークポート、複数の分散ノードから受信した外部機器関連データを記憶する第1メモリ領域、および複数の分散ノードのスケジュールを記憶する第2メモリ領域を有する管理ノードと、を備えるシステムであって、各分散ノードが、スケジュール実行後の所定のタイミングに近未来のスケジュールを管理ノードから取得することを特徴とする無線通信システムである。
第2の発明は、第1の発明において、上記の管理ノードが、全ての分散ノードのスケジュールを読み込み、第2メモリ領域に分散ノード毎のスケジュールに分割して記憶する手段を有することを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、上記の管理ノードが、第2メモリ領域に記憶されたスケジュールが更新された際に、ブロードキャストメッセージにより各分散ノードの保持するスケジュールを更新する手段を有することを特徴とする。
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明において、上記の分散ノードが、マイクロコントローラに内蔵されたメモリにスケジュールを記憶することを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、上記の分散ノードが、外部機器との接続用ポートを介してセンサからの計測データを収集できることを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、上記の分散ノードが、消費電力を低減する節電モードを有し、内蔵電池により長期連続駆動が可能であることを特徴とする。
第7の発明は、第1ないし6のいずれかの発明において、上記の分散ノードが、1または複数の移動体に設置されることを特徴とする。
第8の発明は、第1ないし7のいずれかの発明において、数十台以上の分散ノードを接続することができる。
第9の発明は、第1ないし8のいずれかの発明に係る無線通信システムで用いられる分散ノードである。
第10の発明は、第1ないし8のいずれかの発明に係る無線通信システムで用いられる管理ノードである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、個々の分散ノードが自律的にスケジュールを実行することができる無線通信システムを低コストに提供することが可能となる。すなわち、分散ノードの動作スケジュール管理が可能となることで、各種センサからのデータ収集頻度を適切に調整し、データの収集と管理のコストを低減することが可能となる。
また、各分散ノードの消費電力を低減し、電池交換の間隔を延長することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るシステム全体構成図である。
【図2】本発明の管理ノード(NC)およびデータセンタに係るソフトウェア、データ等を図示したシステム全体構成図である。
【図3】本発明の分散ノード(NICE)のブロック図である。
【図4】本発明の管理ノード(NC)のブロック図である。
【図5】本発明のシステムの分散スケジューラメカニズムを説明するための図面である。
【図6】本発明の分散ノードにおけるスケジュール処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態を、オンデマンド・モニタリングシステム技術(ATOMS)(非特許文献1参照)の改良例で説明する。
本実施形態のシステムは、フィールドネットワークとしてZigBee無線通信ネットワークを、データベースとしてネイティブ型のXMLデータベースを使用することを特徴とする、オンデマンド型(必要な時に即座に配備でき、極めて柔軟な運用が可能である)のモニタリングシステム技術を用い、(a)ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE、通常1つのアドホック無線ネットワーク上に複数配置、本発明の分散ノードに相当)、(b)ネットワークコンピュータ(NC、通常1つのアドホック無線ネットワーク上に1つ配置、本発明の管理ノードに相当)、(c)データセンタ、(d)ユーザインターフェースの4つのグループで構成されている(図1および図2参照)。
【0016】
(a)図3に示すネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)は、多様な信号入出力機能およびZigBee無線ネットワーク連係機能を備えた、高性能、小型、低コスト、低消費電力の計測制御用コンピュータで、システムの全体構成上、本発明における分散ノードと位置付けられる。ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)はセンサ等を接続することで、独立した計測・制御ノードとして機能するが、既存の設備等にネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)を取り付けることにより、それらの設備等をオンライン化することもできる。本実施の形態に係るネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)は、部品コストと消費電力の低減を目的として、その主要部品であるマイクロコンピュータに内臓された数KバイトのRAMのみで動作するように設計されている。なお、用途に応じてRS232C、CAN、1-Wire(登録商標)等の有線通信ポートを設けてもよく、また部品コストと消費電力の問題が無い場合にはmicroSD等の外部記憶装置を設ける仕様としてもよい。ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)の計時機構であるリアルタイムクロック(RTC)は±30秒/月程度の計時誤差を発生するが、ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)ではRTCを定期的にアドホック無線ネットワーク経由でネットワークコンピュータ(NC)に搭載されているシステム全体の基準となるRTCに同期させることで、システム運用上問題となる計時誤差の発生を防いでいる(本実施の形態では、システム全体として1秒以内の誤差となるよう運用されている)。
【0017】
(b)図4に示すネットワークコンピュータ(NC)は、ZigBee無線ネットワークに連係された全てのネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)の運用を管理すると共に、ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)群から必要なデータを収集しデータセンタへ送信する機能を備えており、システムの全体構成上、本発明における管理ノードと位置付けられる。ネットワークコンピュータ(NC)ではコストならびに消費電力の制約が少ないため、搭載されたマイクロコンピュータはネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)のそれに比べて遥かに高性能で、また、ネットワークコンピュータ(NC)には数十MバイトのRAMと数Gバイトの外部記憶装置(SDメモリ)が搭載されている。ネットワークコンピュータ(NC)にはシステム全体の基準となるRTCが搭載されている。このRTCは定期的にGPS等の正確な時刻に同期するように設定されており、システム運用上問題となる計時誤差は発生しない。従って、ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)およびネットワークコンピュータ(NC)に搭載されている全てのRTCの計時誤差は常にシステム運用上問題のない範囲に管理されていることとなり、このことは本発明が有効に機能する前提となっている。本実施の形態に係るネットワークコンピュータ(NC)は、Java(登録商標)実行環境を搭載し、用途に応じて予め用意された複数のXMLテンプレートに基づきJavaスレッドを生成し、XMLテンプレート毎にXMLデータ構造を生成する手段を有している。
【0018】
(c)データセンタでは、ネットワークコンピュータ(NC)から受信したデータをXMLデータベースへ格納すると共に、ユーザインターフェースに対し、XML技術をベースとした強力なデータ分析サービスを提供する。
【0019】
(d)ユーザインターフェースとして、携帯電話、インターネットブラウザ、および、PCベースの専用データ分析ソフトを利用できる。この内、インターネットブラウザおよび携帯電話は直接ネットワークコンピュータ(NC)へアクセスし、最新の計測データを参照したり、異常通報メールを受信することができる。また、データセンタのXMLデータベースと連動して動作するPCベースの専用データ分析ソフトを使用し、XQuery(XMLデータの検索・抽出言語)ベースの強力な探索的データ分析を行うことができる。
【0020】
本システムにおける分散スケジューラのメカニズムは次のとおりである(図5および図6参照)。
(1)ユーザはシステム全体のスケジュールを記述したXMLファイルを作成し、ネットワークコンピュータ(NC)のSDメモリに保存する。各XMLファイルには1日分のスケジュールが記述されている。ここで、スケジュールデータの記述をネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)毎にしなかった理由は、この方が人に優しく、間違いが起こり難いという人的側面の配慮による。
本実施の形態に係るスケジュールのタイプは、日間(1ファイル)、週間(7ファイル)、月間(31ファイル)、年間(366ファイル)から選択可能となっている。本実施の形態において選択できるのはいずれか1つであり、組み合わせはできない仕様とした。「日間」以外を選択した場合には、毎日1:00に翌日分のスケジュールデータがSDメモリに保存したXMLファイルからネットワークコンピュータ(NC)のRAMへロードされる。
【0021】
(2)スケジュールデータは、ネットワークコンピュータ(NC)のRAMへ読み込まれた時点で、ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)毎のスケジュールデータに分割して保持される。
【0022】
(3)各ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)は起動時に最も直近のスケジュールおよびその次のスケジュールをアドホック無線ネットワークを経由してネットワークコンピュータ(NC)から取得するようにプログラムされており、その後は、保持されたスケジュールを実行する都度、その次のスケジュールデータをアドホック無線ネットワークを経由してネットワークコンピュータ(NC)から取得する。従って、各ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)は、常に、実行中+近未来のスケジュール2つを保持することとなる。ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)が保持すべき近未来のスケジュールデータは1つで必要十分であるが、本例では余裕を見て2つとしている。
【0023】
(4)ネットワークコンピュータ(NC)は、FTPサーバ機能を搭載しており、SDメモリへのスケジュールデータの保存・更新はLAN経由で行えるようになっている。ネットワークコンピュータ(NC)のスケジュールデータを更新した場合は、ネットワークコンピュータ(NC)から全てのネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)へブロードキャストメッセージにより、現在保持している近未来のスケジュールを廃棄し、起動時と同じ初期化シーケンスを実行するよう指示する仕様となっている。そのため、スケジュールの変更は即座に全てのネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)へ反映され、ネットワークコンピュータ(NC)のスケジュールデータ更新後に、各ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)に保持されている古いスケジュールが実行されることはない。
【0024】
(5)1つのスケジュールデータは、「シーケンス番号」+「実行時刻」+「メッセージ」で構成されている。また、メッセージはキーとデータ本体で構成されており、その利用方法はアプリケーション依存となっている。メッセージには、センサの計測方法の変更指示、何らかの外部機器の制御指示、あるいは、表示デバイスへ表示する文字列、等が含まれる。
【0025】
(6)このメカニズムを利用して、センサ計測のタイミングを変更したり、外部機器を制御したり、LCDにメッセージを表示したりできる。
【0026】
本発明の具体的な適用事例を、既設工場のセキュリティシステムの構築を例として説明する。
既設の工場に新たにセキュリティシステムを導入するには、例えば、(a)全ての入退室門への侵入検知センサノードの設置、(b)立ち入り制限区域への入退域監視ノードの設置、を実施した上で、それらの分散ノードの動作モードを時刻、曜日、祝祭日の状況等に応じて、時間精度良く変化させる必要がある。また、(b)の立ち入り制限区域は作業状況によっても定期的に変化するため、より柔軟なスケジュール管理が必要である。(a)+(b)は工場の規模に応じて、数十〜数千箇所になると予想され、それぞれの分散ノードに独立して動作スケジュールを保持し、必要に応じて保守することは膨大な労力を要するため現実的ではない。また、管理ノードから無線通信により逐次動作モードを指示する方式では、一時的な電波通信障害等によりセキュリティ上重要な部分を管理する分散ノードの動作モード変更に遅延あるいは誤動作が発生する可能性があり、セキュリティシステムとしての機能を満足しない。
本発明では、全ての分散ノードの動作モードスケジュールを、管理ノードの外部記憶装置に保存しておくだけで、それぞれの分散ノードへ、近未来の動作モードスケジュールが逐次配送されるため、システム全体の動作スケジュール管理を効率的、かつ、時間精度良く実施することができる。
この例に示すように、本分散スケジューラメカニズムの導入により、ネットワーク分散型セルコンピュータ(NICE)、ネットワークコンピュータ、データセンタ、およびユーザインターフェースから構成されるシステムをモニタリング用途だけでなく、スケジュール管理機能を必要とするセキュリティシステム等へ利用できるようになった。また、このシステムでは、管理ノード側は、分散ノードからの要求を待っていればよいため、動物や車両等の移動体にも分散ノードを設置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
従来、アドホック無線ネットワーク技術は、分散ノードの動作スケジュール管理を必要としない単純なモニタリング用途への適用を目的に利用される場合が多かったが、本発明によれば、モニタリング用途に限っても、分散ノードの動作スケジュール管理が可能となることで、各種センサからのデータ収集頻度を適切に調整し、データの収集と管理のコストを低減することが可能となる。
また、本発明によれば、各分散ノードの消費電力を低減し、電池交換の間隔を延長するという大きな経済的効果が期待できる。すなわち、本発明は、各分散ノードがスケジュール機能を搭載しているので、活動状態と休止状態の間隔を適切に変更することができ、電池寿命を最大限に延長することが可能となる。ここで、管理ノード側からの無線通信によりスケジュール変更を行う構成においては、分散ノードが休止中は管理ノードからの無線通信を受信できないため、スケジュール変更に不具合が生じるが、本発明では、分散ノード側から近未来のスケジュールデータを取得するため、省電力化のため分散ノードを休止状態とする利用形態においても問題なくスケジュール変更を行うことが可能である。
また、入退出門の電磁ロック制御のように、分散ノードから外部装置の制御を行う場合には、分散ノードの動作スケジュール管理機能は更に重要となる。多数の分散ノードの動作モードを時間精度良くスケジュール管理できれば、ホームオートメーションシステム、ビル管理システム、あるいは、工場等の機器類の自動運転システムをアドホック無線ネットワーク技術をベースに構築できるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アドホック無線ネットワークを自動的に構築する無線通信ユニット、外部機器との接続用ポート、時計、および近未来のスケジュールを記憶するメモリ領域を有し、その時計に基づき保持されたスケジュールを自律的に実行する分散ノードと、
アドホック無線ネットワーク管理手段、ネットワークポート、複数の分散ノードから受信した外部機器関連データを記憶する第1メモリ領域、および複数の分散ノードのスケジュールを記憶する第2メモリ領域を有する管理ノードと、
を備えるシステムであって、
各分散ノードが、スケジュール実行後の所定のタイミングに近未来のスケジュールを管理ノードから取得することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
上記の管理ノードが、全ての分散ノードのスケジュールを読み込み、第2メモリ領域に分散ノード毎のスケジュールに分割して記憶する手段を有することを特徴とする請求項1の無線通信システム。
【請求項3】
上記の管理ノードが、第2メモリ領域に記憶されたスケジュールが更新された際に、ブロードキャストメッセージにより各分散ノードの保持するスケジュールを更新する手段を有することを特徴とする請求項1または2の無線通信システム。
【請求項4】
上記の分散ノードが、マイクロコントローラに内蔵されたメモリにスケジュールを記憶することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの無線通信システム。
【請求項5】
上記の分散ノードが、外部機器との接続用ポートを介してセンサからの計測データを収集できることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの無線通信システム。
【請求項6】
上記の分散ノードが、消費電力を低減する節電モードを有し、内蔵電池により長期連続駆動が可能であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの無線通信システム。
【請求項7】
上記の分散ノードが、1または複数の移動体に設置されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの無線通信システム。
【請求項8】
数十台以上の分散ノードを接続することができる請求項1ないし7のいずれかの無線通信システム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかの無線通信システムで用いられる分散ノード。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかの無線通信システムで用いられる管理ノード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−80437(P2012−80437A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225393(P2010−225393)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】