説明

分散性色材とその製造方法、それを用いた水性インク、インクタンク、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録画像

【課題】本質的に水に不溶である色材を用い、十分に分散安定性が高い分散色材及びその簡便な製造方法を提供することである。更に、その分散性色材を用い、インク中で安定に分散させるだけでなく、得られる印字物が、優れた画像品位(画像濃度)と優れた耐擦過性、耐マーカー性とを両立したものとなる水性インクジェット記録用インクを提供すること。
【解決手段】色材と該色材よりも小さい荷電性樹脂擬似微粒子が固着又は融着している分散性色材であって、該色材そのものが表面電荷を有することを特徴とする分散性色材、及びこれを用いたインクジェット用インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性色材とその製造方法に関し、又、これを用いた水性インクジェット記録用インク、インクタンク、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録画像に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式は、種々の作動原理よりノズルからインクの微小液滴を飛翔させて被記録媒体(紙等)に到達させ、画像や文字等を記録する方法であり、高速、低騒音、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が高い、現像及び定着操作が不要等の特徴があり、様々な用途において急速に普及している。更に、近年はフルカラーの多色インクジェット記録方式技術が発達し、従来の製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較しても遜色のない多色画像を形成することも可能となっており、作成部数が少ない場合には、通常の多色印刷や印画よりも安価に印刷物が得られることから、フルカラー画像記録分野まで広く応用されつつある。
【0003】
そして、更なる記録の高速化、高精細化、フルカラー化等の記録特性向上の要求に伴って、インクジェット記録装置及び記録方法の改良が行われてきている。インクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録用インクに要求される性能としては、(1)紙上で、滲みや、かぶりのない、高解像度、高濃度で均一な画像が得られること、(2)ノズル先端でのインクの乾燥による目詰まりが発生せず、常に吐出応答性、吐出安定性が良好であること、(3)紙上においてインクの定着性がよいこと、(4)画像の堅牢性がよいこと、(5)長期保存安定性がよいこと、等が挙げられる。特に、近年における印字速度の高速化に伴って、コピー用紙等の普通紙に印字しても、インクの乾燥及び定着が速く、且つ高画質な印字が得られるインクが要求されている。
【0004】
かかる要求に対して、インクジェット記録用インクの色材として、画像の耐水性、耐候性に優れた、水に不溶な色材である顔料を用いたインクの検討が精力的に進められており、大判プリンター等の分野に以前から導入されている。更に、近年における傾向としてはオフィスやパーソナル用途のプリンターに対してより優れたインクジェット画像を得るために、顔料を用いたインクの検討が進められている。このような用途においては被記録媒体としては普通紙の利用が中心であり、又、光沢紙等の特殊紙との両立を鑑みながら、画像の定着性、耐擦過性、文字の品位、画像濃度、耐水性等、幾つかの特性の向上が従来以上に求められている。
【0005】
このような、水に不溶な色材、特に顔料を水性インクジェット記録用インクとして用いるためには、水中に色材を安定に分散させることが先ず必要となる。一般的には、水に不溶な色材を水性インクジェット記録用インクとして用いる場合、界面活性剤若しくは高分子分散剤(分散樹脂とも呼ぶ)を用いて分散安定化される。
【0006】
例えば、特許文献1では、分散樹脂により分散安定化された色材を用いたインクジェット記録用インクが開示されている。この場合、分散樹脂自体が水への親和性が高く、即ち、水への溶解性が大きいため、色材表面から脱離しやすく長期的に十分な安定性が保てないという問題があった。又、特に普通紙上にインクが着弾した際には、親水性の高い分散樹脂が浸透剤としての働きを示し、色材とともに浸透してしまい、その結果、十分な画像濃度を得られないという問題が生じた。又、分散樹脂のような水に可溶な高分子成分を含むインクジェット記録用インクを用いた場合、インクジェット記録装置のノズル周囲やノズル内部でのインクのこびりつきが生じることがあった。そのために吐出されたインク滴の大きさや方向が一定に保たれず、その結果、画像の乱れが発生し、高精細な画像を得る場合には問題を生じることがあった。更に、普通紙及び光沢紙上での画像の耐擦過性を向上するために、水に可溶な分散樹脂の量を増やした場合、インクの粘度が増大し、インクジェット記録装置からのインクの吐出安定性を保つことが極めて難しくなるという問題が生じることがあった。
【0007】
又、特許文献2では、界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩で顔料を分散したインクジェット記録用インクが開示されている。ここで、界面活性剤を用いて色材を分散した際は、色材に強く吸着した界面活性剤が浸透剤としても同時に作用する場合がある。よって、記録紙上に着弾した際に色材が紙面表面から深く浸透してしまい、高い印字濃度が得られにくいという問題が生じた。又、界面活性剤を用いて分散させた色材は、紙面で結着する作用を示す樹脂等の成分がないため、画像の耐擦過性、耐マーカー性が十分に得られないという問題が生じることがあった。
【0008】
更に、分散樹脂や界面活性剤を含まずに色材を安定に分散する方法として、水不溶性色材の表面を化学的に修飾する手法が挙げられる。例えば、特許文献3では、カーボンブラックの表面に親水基を直接若しくは他の原子団を介して結合させた自己分散型カーボンブラックを色材として用いた水性顔料インクが開示されている。このような表面化学修飾型顔料は、自己分散型顔料と呼ばれ、水溶性樹脂等を必要としないために良好なインクジェット吐出安定性を示すが、本発明者らの検討によれば、樹脂を含まないために色材の記録紙への接着力が弱く、形成画像の耐擦過性、耐マーカー性を改善する必要があった。
【0009】
又、上記の分散手法とは別に、特許文献4に有機溶剤に着色剤を分散した後、転相乳化を行って自己分散樹脂で着色剤を内包し、次いで水分散、溶剤除去する方法が開示されている。これは所謂マイクロカプセル型顔料であり、この場合も、十分な分散安定性を得るためには被覆している樹脂の親水性を高める必要がある。しかし、親水性を高めることにより分散性が高まる反面、被覆した樹脂が顔料表面から脱離することがあり、そのためにインクの粘度が高くなり、吐出安定性と分散安定性との兼ね合いが難しいことが本発明者らの検討により明らかになっている。
【0010】
着色剤を樹脂で内包する方法としては他に、非特許文献1、特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8のような水系析出重合を用いる手法が検討されている。前記非特許文献1及び特許文献5では、水系析出重合による顔料のカプセル化或いは顔料と樹脂との複合化について述べられているが、ここでは、いずれも色材の粒径が大きく、水系インクジェット記録用に用いるには分散安定性が不十分であった。
【0011】
又、特許文献6及び特許文献7には、いずれも反応性界面活性剤にて色材を予め分散しておくことによりインクジェット記録用途に適した分散粒径とし、更に、反応性界面活性剤と他の単量体とを重合して樹脂を析出し、色材表面を被覆又は修飾する方法が開示されている。更に、特許文献8では、特別な条件を満たした界面活性剤にて色材を分散し、続いて水系析出重合を行う手法が開示されている。これらの方法において、得られる樹脂を修飾した色材は、本質的には界面活性剤や水溶性の高分子分散剤がインク中に存在することによって分散安定化されるものであり、前述したとおり、インクジェット記録装置に適した吐出安定性と、記録画像の印字品質、特に印字濃度の点において十分な品質とを両立することが極めて難しいという問題があった。
【0012】
以上のように、不溶性色材、特に、各種顔料表面を、樹脂や界面活性剤によって分散処理する方法、化学修飾する方法、マイクロカプセル化する方法等が提案されているが、それぞれの方法において、画像濃度、吐出安定性、耐擦過性、耐マーカー性、分散安定性等、いずれかの解決すべき課題を残している。特に、普通紙記録における画像濃度の確保と耐擦過性、更には、吐出安定性との両立において改良の余地があった。
【0013】
更に、特許文献9には着色剤として顔料表面に水分散性付与基を導入した顔料と、顔料表面を水分散性ポリマーで包含した顔料を両方含むインクが開示されている。この方法により普通紙に対する発色性の向上と専用紙による耐擦性の向上を狙ったものであるが、それぞれの特徴を持つ顔料をインク中に混合するだけのものであり、インクが着弾した後、それぞれの顔料がもつそれぞれの不十分な特性を補いあうには満足なものとは言えない。そのため、この、2つの特徴をもつ顔料を併用する方法においても発色性、耐擦性ともに、いまだ十分とは言えず、改良の余地があった。
【0014】
又、特許文献10及び特許文献11にはカーボンブラック等の不溶性色材を有機高分子類で被覆してなるマイクロカプセル顔料の色材と被覆樹脂との関係を調整した顔料を用いるインクが開示されている。ここでは具体的には顔料の含有率、樹脂の被覆率を調整することにより、色濃度、高精細度、演色性、透明性、発色性の向上させている。しかし、これらの方法においては、主に、従来の転相乳化によるマイクロカプセル化が用いられており、色材表面を被覆する樹脂が均一でないことが特徴であった。
【0015】
【特許文献1】特開平10−120955号公報
【特許文献2】特開2001−81372公報
【特許文献3】特開平10−195360号公報
【特許文献4】特開平8−183920号公報
【特許文献5】特開平5−222109号公報
【特許文献6】特開平7−10911号公報
【特許文献7】特開平9−100303号公報
【特許文献8】特開2003−34770公報
【特許文献9】国際公開第02/066564号パンフレット
【特許文献10】特開平9−152342号公報
【特許文献11】特開2001−152060公報
【非特許文献1】色材、68〔9〕、1995、p.535−541
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、上述の方法を用いて種々の検討を行った。その結果、本質的に水に不溶である色材をインク中に安定に分散させることと、優れた画像品位(特に普通紙記録における)と優れた耐擦過性、耐マーカー性を達成した印字物を得ることの両立は、解決すべき課題であると認識した。
【0017】
又、本発明者らによれば、上記の問題は、特に普通紙記録においては、水不溶性色材を加工、修飾する際に、樹脂等の材料特性・及びその量、加工・修飾方法には適切な選択・方法が必要であり、従来の方法ではいずれも何らかの弊害、若しくは性能が不十分であることが確認できた。
【0018】
更に、本発明者らはこれらの問題を解決する上で、水不溶性色材に樹脂を付着固定する方法が適切であり、且つ、付着固定された樹脂の付着固定状態、形状、更には水不溶性色材の表面特性に至るまで改良することが必要不可欠であるという結論に至った。ここで、上述した従来の方法では色材表面を付着固定する樹脂の状態を均一にすることが難しく、又、付着固定形状、配置状態をコントロールすることは容易でない。更に、色材表面を付着固定する樹脂の特徴と水不溶性色材の表面の特徴を生かした加工をすることは困難であった。
【0019】
従って、本発明の目的は、本質的に水に不溶である色材を用い、十分に分散安定性が高い分散性色材及びその簡便な製造方法を提供することである。更に、その分散性色材を用い、インク中で安定に分散させるだけでなく、得られる印字物が、優れた画像品位(画像濃度)と優れた耐擦過性、耐マーカー性とを両立したものとなる水性インクジェット記録用インクを提供することにある。又、更に、本発明の別の目的は、前記インクを用いたインクタンク、インクジェット用記録装置、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録画像を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記の課題を解決する手段として、界面活性剤や高分子分散剤を必要とせずに高い分散安定性を保ち、且つ、不溶性色材の被覆形状及び色材自体の表面特性を加味した新規な分散性色材を得た。
【0021】
即ち、本発明は、色材と該色材よりも小さい荷電性樹脂擬似微粒子が固着又は融着している分散性色材であって、該色材そのものが表面電荷を有することを特徴とする分散性色材である。
【0022】
又、本発明は、表面に少なくとも1種の極性基が直接若しくは他の原子団を介して結合して分散されている水不溶性色材の分散水溶液中にて、水性ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーを水系析出重合せしめ、前記水不溶性色材表面に固着又は融着する荷電性樹脂擬似微粒子を形成することを特徴とする分散性色材の製造方法である。
【0023】
又、本発明は、上記分散性色材を含んでなることを特徴とする水性インクである。
【0024】
又、本発明は、上記水性インクを含んでなることを特徴とするインクタンクである。
【0025】
又、本発明は、上記水性インクを搭載してなることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0026】
又、本発明は、上記水性インクを用いて、インクジェット記録装置により画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0027】
又、本発明は、上記水性インクを用いて、インクジェット記録装置により形成されたことを特徴とするインクジェット記録画像である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、色材に樹脂を付着固定する方法により、即ち、付着固定された樹脂の付着固定状態、形状、更には色材の表面特性に至るまで改良することによって、付着固定した樹脂の配置状態をコントロールするにより、色材表面に付着固定する樹脂の特徴と水不溶性色材の表面の特徴を生かした加工が可能になった。よって、本質的に水に不溶である色材を用い、十分に分散安定性が高い分散性色材及びその簡便な製造方法を提供することができた。更に、その分散性色材を用い、インク中で安定に分散させるだけでなく、得られる印字物が、優れた画像品位と優れた耐擦過性とを両立したものとなるインクジェット記録に適する水性インク、水溶性インクを用いたインクタンク、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録画像を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、発明を実施するための最良の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。本発明で用いる「分散性色材」の意味するところは、本質的に分散のために界面活性剤や高分子分散剤を添加することなく、水又は水性媒体中に分散可能である、即ち、自己分散性を有する色材である。
【0030】
(1)色材への荷電性樹脂擬似微粒子の固着又は融着とその形態、作用効果
本発明の第1の特徴は、色材そのものが安定に分散できる表面電荷を有する水不溶性色材に、荷電性樹脂擬似微粒子が固着又は融着している点にある。図1に、本発明を特徴づける、模式図を示した。ここで、図1(a)は、水不溶性色材1に、荷電性樹脂擬似微粒子2が固着している状態を模式的に示し、図1(b)の3は表面に固着した荷電性樹脂擬似微粒子2−2の一部が融着している状態を示した部分である。又、図1(c)は扁平状荷電性樹脂擬似微粒子2−3が融着している状態を模式的に示している。
【0031】
本発明においては樹脂が水不溶性色材の表面に付着固定する際に、上記のような荷電性樹脂擬似微粒子が、その形状をある程度維持しながら固着する場合と、荷電樹脂擬似粒子の樹脂集合体が扁平状の形状で融着した状態にあることに大きな特徴がある。この結果、種々の作用効果が得られる。
【0032】
先ず、色材が荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着することで、色材の表面に荷電性樹脂擬似微粒子による電荷が付与され、水又は水性インク媒体へ分散可能な分散性色材を得る。又、同時に該分散性色材は、表面に固着している樹脂成分の存在によって記録媒体への優れた接着性を有する。このとき、樹脂成分の単純な物理吸着ではなく、本発明の分散性色材の特徴である、荷電性樹脂擬似微粒子の固着又は融着状態とすると、荷電性樹脂擬似微粒子が色材表面から脱離することがないため、本発明の分散性色材は長期保存安定性にも優れている。
【0033】
ここで、本発明における荷電性樹脂擬似微粒子とは、樹脂成分が強く凝集状態にある樹脂集合体であり、好ましくはその内部に物理的架橋を多く形成しており、該樹脂集合体は微粒子形態或いはそれに近い微小凝集体、更には扁平状の樹脂集合体として安定な形態を有しているものである。この荷電性樹脂擬似微粒子についての詳細は後述する。
【0034】
本発明における固着又は融着状態は、色材表面と荷電性樹脂擬似微粒子との強い相互作用によるものであり、次のような状態で達成されていると考えられる。図4に、荷電性樹脂擬似微粒子の色材との界面を拡大した模式図を示した。先ず色材との界面において、荷電性樹脂擬似微粒子は様々なモノマーユニット組成で構成されるポリマーが絡み合って形成されている。このとき、ポリマーは局所的にさまざまな構造をとっており、その表面エネルギー状態には分布が生じている。色材の、化学構造及び表面構造から生じる表面エネルギーと、ポリマーの化学構造及び表面構造から生じる表面エネルギーとが、局所的によく一致する点において、2つの界面は強固に結合することとなる。更に、一つの荷電性樹脂擬似微粒子が色材と接する界面において、図4の10に示されるような表面エネルギーが局所的に一致する点は複数あり、この複数個所の強固な相互作用によって本発明の固着又は融着状態は成り立っていると予想される。尚、本発明においては、図1(c)のような、荷電性擬似微粒子の表面積の例えば25%以上、好ましくは35%以上が色材と接するような状態を便宜上「融着」と称し、荷電性擬似微粒子と色材とが界面で溶け合っている必要はない。
【0035】
特に、前記荷電性樹脂擬似微粒子の内部は構成するポリマー間に強い相互作用が働いており、場合によっては構成するポリマーは互いに絡まりあって物理架橋を形成しているため、前記荷電性樹脂擬似微粒子が多くの親水性基を有する場合にあっても、固着又は融着した前記荷電性樹脂擬似微粒子が色材から脱離したり、前記荷電性樹脂擬似微粒子から親水性基を有する樹脂成分が溶出し続けたりすることがない。
【0036】
又、本発明の分散性色材が荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着することによるメリットとして、その形態によって分散性色材の比表面積が増大し、その多くの部分に荷電性樹脂擬似微粒子が表面に有する電荷を分布させることができる点が挙げられる。前記分散性色材が高い比表面積を有することによって、前記荷電性樹脂擬似微粒子の有する電荷を極めて高い効率で分散性色材の表面電荷とすることができる。即ち、本発明の分散性色材の形態は、より多くの表面電荷をより効率的に分散性色材の表面に配する形態であり、従来の方法による特開平8−183920号公報に代表されるような色材を樹脂で被覆する形態に比して、樹脂成分の実質酸価又はアミン価がより小さい場合においても高い分散安定性を付与できる。
【0037】
色材を有機顔料とした本発明の分散性色材の場合においても、前述したように色材と固着又は融着した状態において荷電性樹脂擬似微粒子の複数の相互作用点がランダムに分布しているために、前記荷電性樹脂擬似微粒子は顔料結晶中のいくつかの顔料分子にまたがって固着する(図5参照)。従って、図6(a)及び(b)で説明した、局所的に顔料分子が親水化されることによる「顔料剥離」は、本発明において起こることはない。好ましくは、有機顔料を色材として用いる場合においては、前記荷電性樹脂擬似微粒子の大きさを、顔料粒子よりは小さく、且つ顔料分子よりは大きい範囲に制御することによって、顔料の結晶構造を壊さずに、高い分散性を付与した有機顔料の分散性色材を得ることができる。
【0038】
本発明において、色材が荷電性樹脂擬似微粒子を「固着」又は「融着」している状態は、簡易的には次のような三段階の分離を伴う手法で確認することができる。先ず、第一の分離にて確認する色材と、インク又は水分散体中に含まれるその他の水溶性成分(水溶性樹脂成分も含む)とを分離し、次に第二の分離にて、第一の分離における沈殿物中に含まれる色材と水不溶性樹脂成分とを分離する。更に第三の分離にて、弱く吸着されている樹脂成分と、荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着している分散性色材とを分離し、第三の分離の上澄みに含まれる樹脂成分の定量及び第二の分離の沈殿物と第三の分離の沈殿物との比較を行うことによって色材と荷電性樹脂擬似微粒子との固着又は融着を確認する。
【0039】
具体的には、例えば、次のような条件で確認できる。色材が分散しているインク又は水分散体20gをとり、全固形分質量が約10%程度となるように調整し、遠心分離装置にて、12,000回転、60分の条件で第一の分離を行う。分離したうちの、色材を含んでいる下層の沈降物を、該沈降物のほぼ3倍量の純水に再分散し、続いて、80,000回転、90分の条件にて第二の分離を行う。色材を含んでいる下層の沈降物を3倍量の純水に再分散したものを、再び80,000回転、90分の条件にて第三の分離を行い、色材を含んでいる下層の沈降物を3倍量の純水に再分散する。第二の分離における沈降物と、第三の分離における沈降物をそれぞれ固形分で0.5g程度となるようにとり、30℃、18時間にて減圧乾燥させたものを、走査型電子顕微鏡にて5万倍で観察する。観察された分散性色材が、その表面に微粒子様物質又はそれに準ずる微小集合体を複数付着している様子が確認され、且つ第二の分離と第三の分離からのそれぞれの沈降物が同様の形態を有していれば、この色材は樹脂擬似微粒子を固着又は融着していると判断される。更に、第三の分離における上層の上澄み分を上から静かに体積で半分程度となるようにとり、60℃、8時間にて乾燥させた前後の質量変化から固形分率質量を算出し、1%未満であれば、分散性色材から樹脂擬似微粒子の脱離がなく、分散性色材は樹脂擬似微粒子を固着又は融着していると判断できる。
【0040】
上記した分離条件は好ましい例であり、その他のどのような分離方法又は分離条件にあっても、上述した第一の分離及び第二、第三の分離の目的を達する手法であれば、本発明の分散性色材の判定方法として適用することができる。即ち、第一の分離においては、インク及び水分散体中に含まれる色材及びそれに吸着している樹脂成分がある場合、その樹脂成分と、水溶性成分とを分離することが目的であり、第二の分離において色材及び色材に固着又は融着している樹脂成分と、色材に吸着しているその他の樹脂成分とを分離することが目的である。更に、第三の分離は、色材に固着又は融着している樹脂成分が脱離しないことを確認することが目的である。もちろん、第一、第二及び第三の分離におけるそれぞれの目的を達する分離手法であれば、その他、公知或いは新しく開発されるどのような分離手法でもよく、その手順も三段階より多くても、又、少なくても適用できる。
【0041】
本発明の第2の特徴は、分散性色材が、前記水不溶性色材1が、荷電性樹脂擬似微粒子2、3を固着、又は扁平状の荷電性樹脂擬似微粒子を融着した状態で、「単独で分散」してなる点にある。
【0042】
前述したように、本発明の分散性色材は、本質的には他の界面活性剤や高分子分散剤等の助けがなくとも、安定に水及び水性インク中に分散できる、自己分散性色材である。この定義及び判定方法については後に詳細に述べる。従って、本発明の分散性色材は、長期的に脱離する可能性がある高分子分散剤やその他の樹脂成分、或いは界面活性剤成分を色材の分散安定化を目的として添加する必要がない。その結果、本発明の分散性色材を水性インクとして用いた場合には、分散性色材以外の成分に関する設計の自由度が大きくなり、例えば、普通紙のようなインクの浸透性が高い記録媒体上においても充分に高い印字濃度を得られる水性インクとすることも可能である。
【0043】
本発明の分散性色材の自己分散性について、例えば、次のように確認される。色材が分散しているインク又は水分散体を純水で10倍に希釈し、分画分子量50,000の限外ろ過フィルターを用いて元の濃度になるまで濃縮する。この濃縮液を遠心分離装置にて80,000回転、90分の条件で分離し、沈降物を取り出して純水に再分散させる。このとき、沈降物が良好に再分散し得るものが、自己分散性を有すると判断される。良好に再分散しているかどうかは、目で見て均一に分散していること、1〜2時間静置している間に目立った沈降物が発生しないか、あっても軽く震蕩すれば元に戻ること、動的光散乱法にて分散粒径を測定した際に、平均粒径が操作前の粒径の2倍以内であること等から総合的に判断できる。
【0044】
前述したように、本発明の分散性色材は、色材が荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着することによって高い比表面積を有する形態をとり、その広大な表面に多くの電荷を有することで、優れた保存安定性を実現する。従って、荷電性樹脂擬似微粒子は、色材に対して多数、且つ点在して固着又は融着していることにより更に好ましい結果が得られる。特に、固着又は融着している荷電性樹脂擬似微粒子間に一定の距離があり、好ましくは均一に分布し、更に好ましくは色材の表面が露出していることが望ましい。
【0045】
このような形態は本発明の分散性色材を透過型電子顕微鏡或いは走査型電子顕微鏡で観察することにより確認される。色材表面に固着している荷電性樹脂擬似微粒子が、一定の距離をおいて複数固着しているか、或いは固着している荷電性樹脂擬似微粒子間に、色材表面が露出している状態が観察できる。尚、荷電性樹脂擬似微粒子は、時に部分的に近接し、場合によっては固着と融着しているものが存在する場合も観察され得るが、全体として荷電性樹脂擬似微粒子間に距離があり、色材表面が露出している部分があり、なおかつこれらの状態が分布している場合には、荷電性樹脂擬似微粒子が色材に対して点在して固着又は融着していると見なされることは、当業者には明白である。
【0046】
本発明の分散性色材が極性基を有することによる表面官能基密度は、質量平均において250μmol/g以上1,000μmol/g未満が好ましく、290μmol/g以上900μmol/g未満が更に好ましい。この範囲より小さな表面官能基密度を有する場合、分散性色材を長期保存した際に、分散安定性が充分に維持できない場合がある。又、この範囲よりかなり大きな表面官能基密度を有する場合には、分散安定性は充分に高くなるものの、本発明の分散性色材を水性インクとして記録媒体に付与した際、記録媒体上で色材が浸透しやすくなり、高い印字濃度を確保することが難しくなる場合がある。一方、色材としてカーボンブラックを用いる場合においては、カーボンブラックの比重が高いために、長期にわたって分散安定性を充分に維持するには更に高い表面官能基密度を必要とする一方、特に記録媒体上での黒濃度は高いものが好まれることから、好ましくは350μmol/g以上800μmol/g未満に設定される。
【0047】
特に分散性色材の表面電荷がアニオン性である場合には、本発明における表面官能基密度は、例えば、次のように求められる。前記分散性色材又は水性インクに大過剰量のHCl水溶液を加え、遠心分離装置にて20,000rpm、1時間の条件で沈降させる。沈降物を回収し、純水に再分散させた後、乾燥法にて固形分率を測定する。再分散させた沈降物を秤量し、既知量の炭酸水素ナトリウムを加えて撹拌した分散液を、更に遠心分離装置にて80,000rpm、2時間の条件にて沈降させる。上澄みを秤量し、0.1規定HClにて中和滴定より求めた中和量から、炭酸水素ナトリウムの既知量を差し引くことで、分散性色材1g当たりのmol数として求められる。極性基としてカチオン性基を有する場合には、同様の手法にて、HClの代わりにNaOHを、炭酸水素ナトリウムの代わりに塩化アンモニウムを用いて求めることができる。
【0048】
(2)水不溶性色材そのものが有する表面電荷
次に、本発明の第3の特徴は、前記水不溶性色材そのものが表面電荷を有する点にある。「表面電荷を有する」とは、即ち、樹脂微粒子が固着して分散している水分散体において、水不溶性色材そのものが、「他の界面活性剤や高分子分散剤の助けがなくとも安定に水及び水性インク中に安定に分散することができる」状態であること、つまり、色材自体が自己分散性を有することを示すことになる。
【0049】
本発明においては、荷電性擬似微粒子だけではなく、水不溶性色材そのものが表面電荷をもつことにより、本発明の第1の特徴である荷電性樹脂擬似微粒子の固着又は融着による被覆の効果を発現させながら、記録される記録媒体である紙表面との親和性、反発性をコントロールすることができる。これによって、普通紙記録において、従来の方法でマイクロカプセル化した色材の課題であった、紙に浸透、拡散しやすくなる結果、画像濃度が得られにくかった点について改善できることが本発明者らの検討の結果、確認された。
【0050】
本発明における水不溶性色材そのものの表面電荷は、インク中の水不溶性色材に固着又は融着している荷電性樹脂擬似微粒子を脱離及び/又は溶解した後、前記水不溶性色材を水に分散して測定される電荷である。これは、界面活性剤や高分子樹脂等の分散剤が吸着して示しているものとは異なる。即ち、分散させる成分が、有機溶剤等で容易に脱離及び/又は溶解しない状態で水不溶性色材表面に存在することを示し、水不溶性色材そのものの表面に極性基が結合していることを特徴とする。
【0051】
具体的には、本発明の水不溶性色材は表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合して分散処理されたものであり、例えば、上記親水性基としては−COOM1、−SO3M1及び−PO3H(M1)2(式中のM1は水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)等のアニオン性基が挙げられる。
【0052】
又、上記したような種々の親水性基は、水不溶性色材の表面に直接結合させてもよい。或いは他の原子団を、顔料粒子表面と該親水性基との間に介在させ、親水性基を顔料粒子の表面に間接的に結合させてもよい。この場合、上記したような親水性基が他の原子団を介して顔料粒子表面に結合しているものが好ましい。
【0053】
ここで他の原子団の具体例としては、例えば、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、置換若しくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基及びナフチレン基の置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基等)が挙げられる。又、他の原子団と親水性基の組み合わせの具体例としては、例えば、−C24−COOM1、−Ph−SO3M1、−Ph−COOM1等(但し、Phはフェニル基を表す)が挙げられる。上記のアニオン性基のうちでも特に−COOM1、−SO3M1基を有する色材は、インクを構成する水性媒体中おいて分散性が良好であるので好ましい。
【0054】
ここで、上述したような水不溶性色材の表面に親水性基が直接若しくは他の原子団を介して結合している水不溶性色材は、水不溶性色材に固着又は融着している荷電性樹脂擬似微粒子を脱離及び/又は溶解した後であっても、この水不溶性色材を水に分散が可能な特徴をもっている。具体的には、以下のようにして、色材そのものが表面電荷を有していたか否かが確認できる。
【0055】
本発明の分散性色材やインクを遠心分離装置にて12,000回転、60分間の条件で遠心分離する。分離後、分散性色材を含んでいる下層の沈殿物を取り出し、これをトルエンやアセトン等の樹脂に対する溶解性の高い有機溶剤に投入する。その結果、固着又は融着している荷電性樹脂擬似微粒子は溶解し、水不溶性色材から脱離して、水不溶性色材そのものが有機溶剤中に存在することになる。これを遠心分離装置において80,000回転させ、水不溶性色材を沈殿、分離させる。得られた色材を洗浄後、純水中に再分散させる。
【0056】
本発明の分散性色材のように、コアとなる水不溶性色材自体が表面電荷を有する場合、取り出した水不溶性色材は上記の方法によって再分散し、表面電荷の測定が可能である。一方、界面活性剤や高分子樹脂等の分散剤を吸着して得た場合、更には従来のマイクロカプセル化によって得られた水分散体やインクにおいては、有機溶媒に投入した時点で吸着していた成分が溶解し、水不溶性色材から脱離するために、純水中に再分散されず、本発明における水不溶性色材そのものの表面電荷を測定することはできない。
【0057】
この時、水不溶性色材が再分散されるためには当然のことながら微粒子化されていることが好ましく、この状態で表面電荷を有していることになる。表面電荷を有しているということは、即ち、正又は負に帯電していることになる。尚、水中に分散している状態においては、この水不溶性色材は、その周囲にイオン固定相と呼ばれる反対極性のイオンに囲まれている。更に、その外側には、イオン固定相と逆極性や同極性のイオンが拡散的に混在し、イオンの雲のようなエリアを形成している。これは拡散二重層と呼ばれており、全体としては中性となっている。
【0058】
本発明の水不溶性色材そのものを水中に再分散させ、その水分散液の左右に+−の電圧を加えると、水不溶性色材はイオン固定相と拡散二重層の一部(すべり面の内側)と共に反対極性の電極に引きつけられて移動する。ここで、すべり面を含む微粒子、即ち、不溶性色材の内側の電位をゼータ電位と呼び、水不溶性色材が表面電荷を有する、即ち、分散可能ならば、幾つかの方法でこのゼータ電位は測定可能である。一方、このゼータ電位がゼロに近づくと微粒子は凝集してしまい、本発明のものとは異なる。
【0059】
本発明においてはこの水不溶性色材の有する表面電荷は上述したゼータ電位を測定することにより確認され、顕微鏡電気泳動測定法によってその値は測定される。ここでは、水不溶性色材を水に分散し、電圧をかけたときに電気泳動が始まり、即ち、微粒子である水不溶性色材の移動しやすさが顕微鏡にて確認され、その移動距離から移動速度を測定するものである。このとき、この微粒子の移動のし易さが測定液の比誘電率と粘度に関係し、又、移動している微粒子と液との境界部における電位差に関係している。この時、測定されるゼータ電位はsmoluchowskiの式により、
ζ=4πη/ε×U×300×300×1000 (1)
Uは電気泳動易動度=v/V/L (2)
となり
ζ=ゼータ電位(単位mV)
η=液体の粘性(poise)
v=微粒子の速度(cm/sec)
V=電圧(volt)
ε=溶液の比誘電率
L=電極間距離(cm)
である。
【0060】
本発明においては、水不溶性色材を純水に再分散した後、純水にて適当な濃度に希釈した後、一定の電場を印加した場合の色材の移動速度を顕微鏡で観察しながら、その観察したものの移動速度を画像処理法にて測定した値とする。
【0061】
本発明において、水不溶性色材そのものが有する表面電荷として測定されるゼータ電位は、マイナスの値としては−100mV以上−15mV以下、プラスの値としては10mV以上70mV以下であることが好ましい。マイナスの値としてはこの値より大きい場合には不溶性色材そのものが安定に分散できるだけの表面電荷を有していないことになる。一方、プラスの値としてはこの値より小さい場合には同様に不溶性色材そのものが安定に分散できるだけの表面電荷を有していないことになる。又、上記範囲に入っていることにより、即ち、水不溶性色材の表面電荷がこの範囲に入ることにより、後述する表面電荷と紙表面のサイズ剤等との作用に有利に働く。一方、ゼータ電位が−100mVより小さいか又は70mVよりも大きい場合には、表面電価と紙表面のサイズ剤の作用が不十分の場合があり耐水性をアップすることが不十分となることがある。
【0062】
(3)荷電性樹脂擬似微粒子の固着又は融着と水不溶性色材そのものの表面電荷による相互作用
本発明において上述したように水不溶性色材に荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着させて分散させることにより、分散安定性の向上、樹脂微粒子の樹脂成分の紙への結着力による耐擦過性の向上が可能になる。又、樹脂微粒子形状によるインク溶媒の毛細管現が生じることにより得られる溶媒の吸収、定着性の向上が実現できる。更には、それらの特性を損なわずに、水不溶性色材そのものが表面電荷を有しているために、普通紙記録において、その表面電荷が紙の表面に処理されているサイズ剤等と作用し、更には、水不溶性色材そのものの紙への浸透、拡散を抑制し、画像濃度の向上が実現できることが明らかになった。
【0063】
又、本発明において、前記水不溶性色材に、前記荷電性樹脂擬似微粒子が点在して固着又は融着していることが望ましい。特に、極性基を有する荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着することが好ましく、固着している樹脂微粒子間に一定の距離があり、これにより、好ましくは水不溶性色材の表面が一部露出していることが望ましい。即ち、本発明においては、荷電性樹脂擬似微粒子が点在して固着又は融着することによって、水不溶性色材の表面が荷電性樹脂擬似微粒子によって全ては覆われない。そのため、水不溶性色材そのものが有する極性基が現れている部分があり、上述した表面電荷の作用を、より顕著に発現することが可能になる。
【0064】
つまり、荷電性樹脂擬似微粒子が点在して固着するため、上述した、水不溶性色材同士間の毛細管現象によりインク溶媒の速やかに吸収される段階を経て、ここで生じる固液分離が速やかに行われることが、水不溶性色材そのものの表面電荷の作用を、より発現し易くする。これは、水不溶性色材の表面電荷が紙表面のサイズ剤等に作用すると同時に固液分離が速やかに起こり、色材自身の分散破壊が速やかに行われるため、不溶性色材の紙繊維内への沈み込みが減少するからと推測される。即ち、普通紙記録における、画像濃度のコントロールや文字の滲みの低減がより優位にできる。
【0065】
更に、定着性においても、荷電性樹脂擬似微粒子の固着又は融着形状の効果を発揮しながら紙表面にとどまりやすく、固液分離によって紙繊維への吸収が促進される溶媒と、水不溶性色材との分離を促すため、定着性がより向上することが本発明者らの検討で明らかになった。又、固着又は融着した荷電性樹脂擬似微粒子の結着力が定着後に発揮されて、優れた耐擦過性が得られることが明らかになった。このように、従来の顔料インクでは画像濃度と定着性、耐擦過性の発現が相反してしまい、その両立が困難であったが、本発明では可能となった。これは、固着又は融着している荷電性樹脂擬似微粒子と不溶性色材そのものの表面状態が有する機能を分離し、それぞれの機能から得られる効果を双方で補助する相乗効果によりその両立が可能となったと本発明者らは認識している。
【0066】
(4)分散性色材及びインクにおける従来の製造方法との相違点
本発明の分散性色材の製造方法における特徴は、表面に少なくとも1種の極性基が直接若しくは他の原子団を介して結合された水不溶性色材を、水中に分散した状態で、次に、水性ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーを水系析出重合する工程を用いる、これにより、この重合して得られた荷電性樹脂擬似微粒子を水不溶性色材表面に固着又は融着させるものである。
【0067】
本発明においては、先ず、表面に少なくとも1種の極性基が、直接若しくは他の原子団を介して結合された水不溶性色材を水中に良分散した状態に保つ。次いで、この水分散液の中で、相溶性の高い水性ラジカル重合開始剤を用い、ラジカル重合性モノマーを水系析出させながら重合させる。この析出重合された粒子は親水性モノマーと疎水性モノマーから構成された重合体であり、水分散している水不溶性色材の疎水表面に順次析出固着又は融着していく。この固着又は融着は、従来の高分子樹脂等の分散剤による「吸着」とは異なり、「強固な固着」である。又、本発明においては従来の転相乳化マイクロカプセル化のように一旦、溶剤分散した系で製造されるものとは異なる。即ち、色材を樹脂溶剤溶液中に分散した後に、更に塩基を混合溶解し、中和して自己分散性樹脂とし、その後、滴下等で水を必須成分とする水性媒体を混合して乳化させる、所謂、転相乳化する方法を経て得られる従来の水分散体は、本発明によって得られるものとは大きく異なる。
【0068】
本発明においては、水中で、表面に少なくとも1種の極性基が直接若しくは他の原子団を介して結合された水不溶性色材を良分散した状態に保ち、樹脂を析出重合させるため、荷電性樹脂擬似微粒子が微粒子状又は扁平状に水不溶性色材表面に固着又は融着形成される。このように、本発明においては水中で全ての工程を行うことにより、水不溶性色材の周囲を樹脂で被覆する際に、微粒子状、扁平状になるので比表面積が高い形状で形成被覆することができる。又、樹脂の被覆を点在して行うことができる。即ち、本発明は、上述したような方法で樹脂微粒子を順次形成するために、水不溶性色材の表面を部分的に残して固着形成被覆することが可能であり、形成状態もある程度均一性をもって得ることができる。
【0069】
一方、従来の転相乳化法を用いる場合には、表面に少なくとも1種の極性基が直接若しくは他の原子団を介して結合された水不溶性色材を、例えば、一旦、乾燥し、樹脂溶剤溶液中に分散する必要がある。この際に、従来法では微粒子状に樹脂が固着・融着形成できず、又、点在して固着・融着形成できない。即ち、その被覆形状から、水不溶性色材のそのものの表面電荷をもつ部分を、ある程度均一点在させることが困難になる。よって得られた水分散物の表面状態、電荷状態は本発明とは異なったものとなる。
【0070】
(5)本発明における分散性色材の構成材料と製造方法の詳細な説明
(水不溶性色材)
本発明のインクジェット記録用インクの必須成分である水不溶性色材について説明する。本発明で用いられる水不溶性色材としては、疎水性染料、無機顔料、有機顔料、金属コロイド、着色樹脂粒子等、水に不溶な色材で、色材そのものが表面電荷をもつことが可能であり、且つ、本発明における荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着して水中にて安定に分散できるものであれば、どのようなものでも用いることができる。好ましくは、分散粒径が0.01μm以上0.5μm以下(10nm以上500nm以下)の範囲、特に好ましくは0.03μm以上0.3μm以下(30nm以上300nm以下)の範囲となる色材を使用する。この範囲に分散された色材を用いた本発明の分散性色材は、高い着色力と高い耐候性を有する分散性色材となる。尚、かかる分散粒径は、動的光錯乱法によって測定された粒径のキュムラント平均値とする。
【0071】
本発明において色材として有効に用いることのできる無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカ等が挙げられる。
【0072】
本発明において有効に用いることのできる有機顔料としては、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリン系、イソインドリノン系等の各種顔料が挙げられる。
【0073】
その他、本発明で用いることのできる有機性の水不溶性色材としては、例えば、アゾ系、アントラキノン系、インジゴ系、フタロシアニン系、カルボニル系、キノンイミン系、メチン系、キノリン系、ニトロ系等の疎水性染料が挙げられる。これらの中でも分散染料が特に好ましい。
【0074】
(水不溶性色材の表面電荷処理)
本発明においては上述したような水不溶性色材を用い、そのものが表面電荷をもつように処理する。即ち、水不溶性色材の表面に直接若しくは他の原子団を介して結合させる。ここで、水不溶性色材表面に結合された原子団は極性基が好ましく、極性基としてはアニオン性基又はカチオン性基のいずれかが適宜選択される。
【0075】
アニオン性基としては、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32、−SO2NH2、−SO2NHCOR(但し、式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わし、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換若しくは無置換のフェニル基又は置換若しくは無置換のナフチル基を表わす)等が挙げられる。ここでフェニル基及びナフチル基の置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。本発明においては、これらの中で、特に、−COOM、−SO3Mが水不溶性色材表面に結合するのに好適である。
【0076】
又、上記親水性基中の「M」は、アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、有機アンモニウムとしては、モノ乃至トリメチルアンモニウム、モノ乃至トリエチルアンモニウム、モノ乃至トリメタノールアンモニウムが挙げられる。
【0077】
これらのアニオン性の表面電荷を有する水不溶性色材を得る方法としては、例えば、色材表面に−COONaを導入する方法として、色材を次亜塩素酸ナトリウムで酸化処理する方法が挙げられるが、勿論、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0078】
特に、カーボンブラックは一般的には疎水性表面を有しており、特に、ファーネス法により製造されるカーボンブラックは、顔料表面にカルボキシル基や水酸基等の親水性基は殆どなく、その表面は疎水性である。このようなカーボンブラックの表面を親水製にするためには、酸化処理によりヒドロキシル基や水産基を付与せしめることが好ましい。一方、同じカーボンブラックであっても、比較的酸素が存在する環境下で生産されるデグッサ社等のガスブラックは、表面に親水基を有しており、これらを用いてもよい。このようなガスブラックとしてはデグッサ社FW1、FW2及びFW200等を挙げることができる。
【0079】
このようなカーボンブラック表面の酸化の度合いは、カーボンブラックの揮発分(%)として評価されている。通常、カーボンブラックを真空状態下に、1,000℃程度まで加熱を行うと、表面に存在する官能基の種類に応じたガスが発生し、該ガスの総量、或いはガス種を分析することにより、表面官能基の種類と量を知ることができる。又、加熱重量減少量の総和が高い程、親水基を大量に有するカーボンであることが分かる。
【0080】
本発明における加熱重量減少量としては2質量%以上20質量%以下が好ましい。上記範囲より少ない場合には、色材表面の親水性が低いため十分な分散安定性が得られない場合がある。又、上記範囲より多い場合には十分な画像濃度やブリード等の品位が得られない場合がある。
【0081】
カーボンブラックの表面の酸化度合いを高めることのできる方法としては、湿式酸化法が挙げられる。該方法は、水相にカーボンブラックを含浸せしめ、ペルオキソ2酸或いはペルオキソ2酸塩等の酸化剤を添加して、60〜90℃程度で反応せしめ、表面酸化を行う方法である。このようなカーボンブラックに対する湿式酸化は、より具体的には、特開2003−183539公報に記載される方法等により実施できる。又、湿式酸化の別の方法としては特開2003−96372公報に記載されるように次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸類を用いて酸化する方法もある。この時、酸化するカーボンとしてはガスブラックや酸性ブラック等の比較的親水性のカーボンを用いた場合の方がより均一な酸化が可能となる。
【0082】
カチオン性基としては、例えば、第4級アンモニウム基が好ましく、より好ましくは、下記に挙げる第4級アンモニウム基が挙げられ、本発明においては、これらのいずれかを色材表面に結合するのが好適である。
【0083】

【0084】
上記したようなカチオン基が結合された水不溶性色材を製造する方法としては、例えば、下記に示す構造のN−エチルピリジル基を結合させる方法として、例えば、色材を3−アミノ−N−エチルピリジニウムブロマイドで処理する方法が挙げられるが、勿論、本発明はこれに限定されない。
【0085】
又、本発明においては、上記に挙げたような極性基が、他の原子団を介して顔料の表面に結合されていてもよい。他の原子団としては、例えば、炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基が挙げられる。上記した親水性基が他の原子団を介して色材の表面に結合する場合の具体例としては、例えば、−C24COOM、−PhSO3M、−C510NH3+等が挙げられるが、勿論、本発明はこれらに限定されない。
【0086】
色材表面に極性基を導入する方法として、例えば、色材にp−アミノベンゼンスルホン酸をジアゾ化し色材に反応させる方法が挙げられるが、もちろん本発明はこれらに限定されるわけではない。上記のようなジアゾ化による親水性官能基導入においては、副反応を抑えるために色材が第1級アミンを持たないことが望ましい。
【0087】
(荷電性樹脂擬似微粒子)
本発明の分散性色材のもう一つの構成成分である荷電性樹脂擬似微粒子は、水に対し実質的に不溶であり、固着又は融着する対象である色材よりは小さく、十分に重合度の高い樹脂成分が集合してなる微小体と定義され、その形態として固着しているものは擬似的に球体に近く、融着しているものは擬似的に扁平な球状である。又、複数の荷電性樹脂擬似微粒子の大きさが一定範囲内で揃っている微小体である。好ましくは荷電性樹脂擬似微粒子を構成する樹脂成分は、互いに物理的に又は化学的に架橋されていることが望ましい。荷電性樹脂擬似微粒子を構成する樹脂成分が互いに架橋されているかどうかについては、例えば、以下のような手法にて確かめられる。前記荷電性樹脂擬似微粒子を構成する樹脂成分を予め公知の分析方法にて推定し、同じ化学構造となる(又は同じモノマーユニット組成となる)直鎖型ポリマーを溶液重合にて合成し、そのポリマーに対して良溶媒である有機溶媒に前記荷電性樹脂擬似微粒子及びポリマーをそれぞれ浸漬させてその溶解性を比較したとき、前記荷電性樹脂擬似微粒子の溶解性がポリマーの溶解性より低い場合に、前記荷電性樹脂擬似微粒子の内部が架橋されていると確かめられる。
【0088】
又、別の好ましい様態としては、前記荷電性樹脂擬似微粒子の水中での分散粒径が、例えば、動的光散乱法にて測定可能な場合においては、好ましくはその分散粒径の平均値が10nm以上200nm以下の範囲にあることが望ましい。更に、分散性色材の長期保存安定性の観点から、分散粒径の多分散度指数が0.2未満に抑えられることが更に好ましい。分散粒径の平均値が200nmより大きい場合又は多分散度指数が0.2より大きい場合には、色材を微細に分散安定化するという本来の目的が充分達成されない場合がある。又、分散粒径の平均値が10nmより小さい場合には、荷電性樹脂擬似微粒子としての形態を充分に維持できず、樹脂が水に溶解しやすくなるために、本発明のメリットが得られない場合がある。一方、10nm以上200nm以下の範囲にて、更にその粒径が色材粒子そのものよりも小さいことによって、本発明の、荷電性樹脂擬似微粒子の固着による色材の分散安定化が効果的に発現される。上記の好ましい様態は、前記荷電性樹脂擬似微粒子の分散粒径が測定不可能な場合においても同様であり、その場合は、例えば、電子顕微鏡観察における前記荷電性樹脂擬似微粒子の平均径が、上記した好ましい範囲か又はそれに準ずる範囲と考えられる。
【0089】
又、色材が有機顔料である場合においては、上記の範囲に加えて、前述したように荷電性樹脂擬似微粒子が顔料の1次粒子よりは小さく、且つ顔料分子より大きい範囲とすることによって、構造的に極めて安定で且つ高い分散性を有する分散性色材を得られるので望ましい。
【0090】
本発明において水不溶性色材に固着又は融着している荷電性樹脂擬似微粒子における荷電性とは、水系媒体中においてそのもの自身が何らかのかたちでイオン化した官能基を保持しており、望ましくはその荷電性によって自己分散可能である状態をいう。従って、荷電性樹脂擬似微粒子であるかどうかについては、公知且つ任意の手法にて前記荷電性樹脂擬似微粒子の表面ゼータ電位を測定する、後述するような手法にて電位差滴定を行い官能基密度として算出する、前記荷電性樹脂擬似微粒子の水系分散体中に電解質を添加して分散安定性の電解質濃度依存性を確かめる、又は前記荷電性樹脂擬似微粒子の化学構造分析を公知の手法にて行いイオン性官能基の有無を調べる、のいずれかの方法にて達成される。
【0091】
又、好ましい実施形態として、この荷電性樹脂擬似微粒子は、極性基を持つことによって得られる。荷電性樹脂擬似微粒子が極性基を有していることにより、高い自己分散安定性が得られる。極性基としてはアニオン性基又はカチオン性基が望ましい。又、荷電性樹脂擬似微粒子が有している極性基と水不溶性色材そのものに化学結合している極性基が同極性であることが望ましい。これによって、水不溶性色材が安定に分散している状態で荷電性樹脂擬似微粒子が反発することなく強固に固着している。又、荷電性樹脂擬似微粒子が固着又は融着した水分散体は安定して存在できる。
【0092】
ここで、前記荷電性樹脂擬似微粒子を構成する樹脂成分は、一般的に用いられるあらゆる天然又は合成高分子、或いは本発明のために新規に開発された高分子等、いかなる樹脂成分であっても制限なく使用できる。使用できる樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、多糖類、ポリペプチド類等が挙げられる。特に、一般的に使用でき、樹脂微粒子の機能設計を簡便に行える観点から、アクリル樹脂やスチレン/アクリル樹脂が類される、ラジカル重合性不飽和結合を有するモノマー成分の重合体或いは共重合体が好ましく使用できる。
【0093】
本発明ではラジカル重合性不飽和結合を有するモノマー(以降、ラジカル重合性モノマー或いは単にモノマーとして表記する)が好ましく用いられる。例えば、以下のようなものが挙げられる。疎水性モノマーと分類される、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル等の如き(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等の如きスチレン系モノマー;イタコン酸ベンジル等の如きイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチル等の如きマレイン酸エステル;フマール酸ジメチル等の如きフマール酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。尚、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸とアクリル酸を意味する。
【0094】
又、以下のような親水性モノマーとして分類されるものも好ましく用いられる。例えば、アニオン性基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸等の如きカルボキシル基を有するモノマー及びこれらの塩、スチレンスルホン酸、スルホン酸−2−プロピルアクリルアミド、アクリル酸−2−スルホン酸エチル、メタクリル酸−2−スルホン酸エチル、ブチルアクリルアミドスルホン酸等の如きスルホン酸基を有するモノマーとこれらの塩、メタクリル酸−2−ホスホン酸エチル、アクリル酸−2−ホスホン酸エチル等の如きホスホン酸基を有するモノマー等が挙げられる。これらの中でも特に、アクリル酸及びメタクリル酸を使用することが好ましい。
【0095】
又、カチオン性基を有するモノマーとしてはアクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル等の如き第1級アミノ基を有するモノマー、アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル等の如き第2級アミノ基を有するモノマー、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸ジエチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノプロピル等の如き第3級アミノ基を有するモノマー、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩等の如き第4級アンモニウム基を有するモノマー、各種ビニルイミダゾール類等が挙げられる。
【0096】
又、ノニオン性の親水性モノマーとしては、具体的には、例えば、構造内にラジカル重合性の不飽和結合と強い親水性を示すヒドロキシル基を同時に有するモノマー類がこれに当てはまる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシルプロピル等がこれに分類される。この他、公知又は新規の各種オリゴマー、マクロモノマー等についても制限なく使用できる。
【0097】
特に、前記荷電性樹脂擬似微粒子として、上述したうち、少なくとも1種類の疎水性モノマーと、少なくとも1種類の親水性モノマーとを含むモノマー成分の共重合体からなる構成とすることは、更に好適な印字特性を有する水性インクジェット記録用インクを得る点で好ましい。即ち、樹脂微粒子を作製する際に、例えば、使用する重合開始剤の種類や濃度、構成するモノマーの種類や共重合比率等の多くの制御因子によって、色材表面に固着する樹脂微粒子の種々の特性等を、適宜に制御することが可能であるが、このとき少なくとも1種類の疎水性モノマーを用いて構成することで水不溶性色材への良好な固着性と熱安定性を、少なくとも1種類の親水性モノマーを用いて構成することで良好な形態制御と分散安定性を、それぞれ付与できる。従って、これらのモノマーを同時に用いることで、常に良好に色材に固着し、且つ良好な分散安定性を有する樹脂微粒子とすることができる。上記の条件を満たした上で更に、樹脂微粒子を構成するモノマー種や共重合比率を適宜選択することにより、本発明の水不溶性色材及び/又は該色材に固着されている樹脂微粒子にさらなる機能性を付与できる。
【0098】
又、前記疎水性モノマーとして、α位にメチル基を有し且つラジカル重合性不飽和二重結合を有するモノマーを少なくとも含有することも、好ましい形態である。α位にメチル基を有するラジカル重合性モノマーを用いた樹脂微粒子を固着することにより、特に、熱エネルギーによりインクを吐出させるサーマルインクジェット方式において、水不溶性色材を含む水性インクジェット記録用インクの吐出性が極めて良好になる。この理由は明らかでないが、α位にメチル基を有するラジカル重合性モノマーを用いた樹脂は、高温にて解重合を起こすことから、インクに熱エネルギーが加わったときにα位にメチル基を有するモノマー成分から構成された樹脂が解重合を起こし、吐出口内へのこびりつきが起こりにくくなるため、吐出性が向上すると考えられる。
【0099】
更に、扁平状の荷電性樹脂擬似微粒子を融着する場合には、上述した、少なくとも1種類の疎水性モノマーと、少なくとも1種類のノニオン性親水性モノマーと、少なくとも1種類のアニオン性若しくはカチオン性親水性モノマーを含むモノマー成分の共重合体からなることは望ましい態様である。このとき、少なくとも1種類の疎水性モノマーを用いて構成することで色材への良好な融着性と熱安定性を、少なくとも1種類のノニオン性親水性モノマーを用いて構成することで荷電性樹脂擬似微粒子に扁平な球状の形状と分散安定性を、少なくとも1種類のアニオン性若しくはカチオン性親水性モノマーを用いて構成することで、良好な分散安定性をそれぞれ付与できる。
【0100】
又、前記疎水性モノマーとして、アクリル酸アルキルエステル化合物及びメタアクリル酸アルキルエステル化合物(以降、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物のように表記する)を少なくとも含有することも、好ましい形態である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物は、水不溶性色材のもつ疎水性表面への良好な接着性を有すると同時に、前記親水性モノマー成分との共重合性に優れ、前記樹脂微粒子の表面性質の均一性、及び水不溶性色材への均一な固着・融着性という観点から、好ましい結果を与える。
【0101】
更に、上述した好ましい疎水性モノマー類のうち、メタクリル酸ベンジル又はメタクリル酸メチルから選ばれる少なくとも1種を含むことは、特に好ましい。上述した好ましい理由に加え、上記2種のモノマーは、前記樹脂微粒子に好ましい耐熱性と透明性を付与し、この樹脂微粒子を固着した水不溶性色材を含む水性インクジェット記録用インクは、発色性の優れたインクとなる。
【0102】
又、扁平状の荷電性樹脂擬似微粒子を融着する場合には前記ノニオン性親水性モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の構造内にラジカル重合性の不飽和結合と強い親水性を示すヒドロキシ基を同時に有するモノマー類、更に、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレン(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド基を含むモノマー類、この他、公知又は新規の各種オリゴマー、マクロモノマー等についても制限なく使用できる。特に、前記アルキレンオキサイド基含有モノマーは、前記疎水性モノマー成分と共重合性に優れ、前記荷電性樹脂擬似微粒子の表面性の均一性、及び色材への融着性という観点から好ましい結果を与える。
【0103】
又、前記疎水性モノマーや親水性モノマーといった荷電性樹脂擬似微粒子を構成するモノマー種や共重合比率を適宜選択することにより、本発明の水不溶性色材及び/又は該色材に固着又は融着されている荷電性樹脂擬似微粒子の性質を制御することができるが、色材に前記荷電性樹脂擬似微粒子を固着する場合には荷電性樹脂擬似微粒子に含まれる共重合体成分のガラス転移温度が−40℃以上60℃以下となるように制御することも好ましい形態である。又、扁平状の融着を形成する際には、共重合体成分のガラス転移温度が−100℃以上0℃以下となるように制御することも好ましい形態である。ガラス転移温度をこの範囲にすることで、本発明の固着又は融着している荷電性樹脂擬似微粒子は所望の形状を得ることができ、且つ、色材とより強固に融着することができる。
【0104】
このような前記荷電性樹脂擬似微粒子を得るには、上述した好ましく用いられるモノマー群のうち、そのモノマーから得られるホモポリマーのガラス転移温度が低いことが知られているものを選択して用いる。例えば、アクリル酸−n−ブチルとアクリル酸をモノマーとして適切な比率で用いることも好ましい実施形態である。又、メタクリル酸エチルとメタクリル酸をモノマーとして適切な比率で用いることも別の好ましい実施形態である。特に、扁平状の融着を形成する際には上述した好ましく用いられるモノマー群のうち、そのモノマーから得られるホモポリマーのガラス転移温度が低いことが知られているものを選択して用いる。例えば、疎水性モノマーとしては下記(1)で示されるものが挙げられる。
CH2=CR−COOCn(2n+1) (1)
(上記(1)において、Rは、H又はCH3を表し、3≦n≦10である。)
【0105】
具体的には、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、メタクリル酸−3,3−ジメチル−2−ブチル、メタクリル酸−1,1−ジエチルプロピル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸−1−メチルブチル等である。又、親水性モノマーとしては上述したアルキレンオキサイド基を含むモノマー類等が挙げられる。
【0106】
荷電性樹脂擬似微粒子のガラス転移温度は、一般的に用いられる示差走査熱分析にて測定することができる。例えば、本発明においては、METTLER社製のDSC822eを用いて測定した値を使用する。ガラス転移温度が上記のような共重合体成分を含んで構成される前記樹脂微粒子を固着又は融着してなる水不溶性色材は、荷電性樹脂擬似微粒子に付与される高い造膜性によって、記録紙上で隣り合った色材と造膜し、強固な着色膜を形成し得る。従って、普通紙記録における印字物に高い耐擦過性を付与するだけでなく、耐擦過性に極めて不利な光沢媒体上においても耐擦過性の優れた印字物とすることができる。
【0107】
更に、前記水不溶性色材として顔料を用いる場合において、顔料と前記荷電性樹脂擬似微粒子との割合(樹脂質量/顔料質量、B/Pと表す)を、0.1〜4.0の範囲となるようにすることも、印字物の耐擦過性を高める上で望ましい実施形態である。B/P比を0.1以上とすることで、色材同士、及び色材と記録媒体間との接着性を高めることで印字物に優れた耐擦過性を付与し得る。特に、上述したようなガラス転移温度となる共重合体成分を含んで構成される前記荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着してなる水不溶性色材を用いた場合には、その造膜性をより効果的に発現することができ、光沢紙における耐擦過性を高める結果となる。B/Pが4.0より著しく大きい場合には、全体として粘性の高いインクとなり、インクジェット記録用インクとしての吐出安定性を損なう場合がある。又、色材に対して樹脂量が極端に多いために、記録媒体上で色材の発色性を妨げ、印字物の印字濃度が充分に得られない場合がある。B/Pを上述した0.1〜4.0の範囲に制御し、更に、色材の有する表面電荷との相互関係によって、優れた耐擦過性と吐出安定性を両立した水性インクジェット記録用インクとすることができる。ここでいう樹脂質量とは、本発明の水性インクジェット記録用インク中に含まれる前記樹脂微粒子の全量のことであるが、その他に明らかに色材表面に強く吸着している樹脂成分についても含まれる場合がある。但し、色材と容易に分離可能な水溶性樹脂成分については含まれないものとする。
【0108】
上述したB/Pは、一般的には示差熱質量測定法によって求めることができるが、本発明ではMETTLER社製のTGA/SDTA851にて測定、算出した値とする。本発明においては、本発明の水性インクジェット記録用インクを80,000回転、2時間の条件にて遠心分離した沈降物を乾燥、秤量し、窒素雰囲気、或いは大気中において昇温を行ったときの色材及び樹脂成分のそれぞれの分解温度前後での質量変化を求め、B/Pを算出した。
【0109】
前記荷電性樹脂擬似微粒子を、少なくとも1種類の疎水性モノマーと、少なくとも1種類の親水性モノマーとを含むモノマー成分の共重合体からなる構成において、親水性モノマーとしてアニオン性モノマーを少なくとも含む構成も、好ましい形態である。特に、アニオン性モノマーを含む構成とすることで、前記荷電性樹脂擬似微粒子により多くのアニオン性基を導入することができ、色材の表面官能基密度を前述したような好ましい値へ制御する手法としても有効である。又、前記アニオン性モノマーを含む構成とすることで、特に高pH領域から中pH領域で高い分散安定性を示す分散性色材を得ることができる。
【0110】
前記アニオン性モノマーとしては、水中でアニオン性を示す官能基を有するモノマーであれば特に限定されないが、他のモノマー成分との共重合性、汎用性、アニオン性の強さ等の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、p−スチレンスルホン酸及びこれらの塩が特に好ましく用いられる。
【0111】
更に、前記の構成において、親水性モノマーとしてカチオン性モノマーを少なくとも含む構成は、特に中pH領域から低pH領域で高い分散安定性を示す分散性色材を得ることができる好ましい形態である。前記カチオン性モノマーとしては、水中でカチオン性を示す官能基を有するモノマーであれば特に限定されないが、前述したラジカル重合性モノマーのうち、カチオン性基を有するモノマーとして挙げられたものが好ましく用いられる。
【0112】
(荷電性樹脂擬似微粒子の合成、及び水不溶性色材への固着又は融着)
前記荷電性樹脂擬似微粒子の合成方法、及び、前記水不溶性色材への固着又は融着方法は、その手順及び方法は、公知である前記自己分散性樹脂微粒子の一般的な合成方法や自己分散性樹脂微粒子と色材の複合化方法によって実施され得る。
【0113】
しかしながら、本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の特徴である、表面電荷を有する色材と該色材より小さい荷電性樹脂擬似微粒子とを有する分散性色材であって、前記色材と前記荷電性樹脂擬似微粒子とが固着又は融着していることを特徴とする分散性色材の簡便な製造方法を発明するに至った。以降、本発明で好ましく実施される、本発明の分散性色材の製造方法について述べる。
【0114】
本発明者らの検討によって、上述したような特性を有する荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着した状態で、且つ単独で分散している前記水不溶性色材を、下記の条件で水系析出重合法を適用することによって、極めて簡便に製造できることが明らかとなった。即ち、先ず、上述した製造方法にて、表面電荷をそのものの表面に有する水不溶性色材が水中に分散している水分散体を得る。次いで、この水分散体中にて、水性ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーを水系析出重合する工程によって、荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着する製造方法である。この工程を経ることにより、水不溶性色材には、前記水系析出重合過程にて合成された荷電性樹脂擬似微粒子を、均一且つ点在した状態で強力に固着しており、単独での分散安定性に優れている。前記水系析出重合過程において、前記荷電性樹脂擬似微粒子の特性を、これまで述べたような好ましい形態に簡便に制御することができ、その際にも本発明の特徴である水不溶性色材との固着・融着状態が良好に達成される。以降、上記製造方法における好ましい実施形態を詳しく述べる。
【0115】
(水不溶性色材の分散)
先ず、前述したような本発明に好ましく用いられる、そのものの表面に電荷を有する色材を水中に分散した水分散体とする。この水分散体の作成方法については上述したような表面電荷をもつように処理する。即ち、水不溶性色材の表面に直接若しくは他の原子団を介して結合させ、安定に図2(b)に示したように水分散させる。
【0116】
水不溶性色材を上述した処理により水分散液とする過程において、色材は、好ましくは分散粒径の平均値が0.01μm以上0.5μm以下(10nm以上500nm以下)の範囲、特に好ましくは0.03μm以上0.3μm以下(30nm以上300nm以下)の範囲に分散する。この過程での分散粒径が、得られる分散性色材の分散粒径に大きく反映し、前述した着色力や画像の耐候性の観点、及び分散安定性の観点から、上記の範囲が好ましい。
【0117】
又、本発明で使用する水不溶性色材の分散粒径分布は、なるべく単分散であることが好ましい。一般的には、荷電性樹脂擬似微粒子が固着又は融着して得られる分散性色材の粒径分布は、図2(b)に示した重合工程よりも前の、分散水溶液の粒径分布よりも狭くなる傾向にあるが、基本的には前記分散水溶液の粒径分布に依存する。又、色材と荷電性樹脂擬似微粒子とのヘテロ凝集による固着を確実に誘起するためにも、色材の粒径分布を狭くすることは重要である。本発明者らの検討によれば、色材の多分散度指数が0.25以下の範囲にあるものを使用したときに、得られる分散性色材の分散安定性が優れたものとなる。
【0118】
ここで、分散状態にある色材の粒径は各種測定方式で異なり、特に、有機顔料は球形粒子である場合は極めて少ないが、本発明においては大塚電子工業社製ELS−8000にて動的光散乱法を原理として測定し、キュムラント解析することによって求められた平均粒径と多分散度指数を用いる。
【0119】
(ラジカル重合開始剤)
本発明で使用するラジカル重合開始剤としては、一般的な水溶性のラジカル重合開始剤であれば、どのようなものでも使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、過硫酸塩等が挙げられる。或いは水溶性ラジカル重合開始剤と還元剤の組み合わせによるレドックス開始剤であってもよい。具体的には、前記に列挙した、色材、モノマー等の特性を考慮して、最適な組み合わせとなるように設計して使用する。望ましくは、得ようとする荷電性樹脂擬似微粒子が固着又は融着した水不溶性色材の表面特性と同荷電の重合開始剤残基を与える重合開始剤を選択する。即ち、例えば、アニオン性基を有する前記水不溶性色材を得る場合には、開始剤残基が中性又はアニオン性となるものを選択することで、表面電荷をより効率的に得ることができる。同様に、カチオン性基を有する前記水不溶性色材を得る場合には、開始剤残基が中性又はカチオン性となるものを選択するのが好ましい。
【0120】
(ラジカル重合性モノマー)
本発明の製造方法で用いられるラジカル重合性モノマーは、前記水系析出重合を経て前記荷電性樹脂擬似微粒子を構成する成分である。ここで、ラジカル重合性モノマーは、得られる性能の荷電性樹脂擬似微粒子の特性、及び、水不溶性色材の表面に荷電性樹脂擬似微粒子を固着して得られる水分散体の特性によって適宜選択すればよい。本発明の製造方法においても、従来から公知であるラジカル重合性モノマー、又は本発明のために新規に開発されたラジカル重合性モノマーのいかなるものでも使用できる。具体的には、前述したようなラジカル重合性不飽和結合を有する種々のモノマーが挙げられる。
【0121】
(水系析出重合)
続いて、本発明の特徴である荷電性樹脂擬似微粒子を合成し、前記水不溶性色材に固着させる工程である、水系析出重合の好ましい実施形態について述べる。図2は、上記製造方法の工程フローを模式的に記載した工程図である。先ず、図2(a)に示したように、水溶液中に分散剤3を用いて水不溶性色材を分散した水分散体を調製する。次に、図2(a)で用意した分散体を撹拌しながら昇温して、この中に、モノマー成分4を、例えば、水性ラジカル重合開始剤水溶液5と共に添加する(図2(b)参照)。添加された水性ラジカル重合開始剤は、昇温することにより解裂してラジカルを発生し、水分散体に添加されたモノマー成分のうち、その微量が水相に溶解した疎水性モノマーと水相中の水溶性モノマーとの反応に寄与する。前記反応が進行すると、モノマー成分の重合反応によって生成したオリゴマーは水に不溶となり、水相より析出するが、このとき析出したオリゴマーは十分な分散安定性を有していないため、合一して自己分散性樹脂微粒子を形成する(図2(c)参照)。図3は、モノマー4が重合し、分散性色材を生成するまでの過程を記載した模式図である。前記したようなモノマー4の反応が進行すると、モノマー成分の重合反応によって生成したオリゴマー7は水に不溶となり、水相より析出する(図中の8)が、このとき析出したオリゴマーは十分な分散安定性を有していないため、合一してスルホン酸基を有する荷電性樹脂擬似微粒子2を形成する。荷電性樹脂擬似微粒子2は更に、分散水溶液中の色材1の有する疎水性表面を核としてヘテロ凝集を起こし、色材表面と荷電性樹脂擬似微粒子2を構成する樹脂成分が疎水性相互作用によって強く吸着する。このとき、荷電性樹脂擬似微粒子2の内部では重合反応が進行し続けており、色材1との吸着点を増やしながら、よりエネルギー的に安定する形態へ変化する。同時に、荷電性樹脂擬似微粒子内部は高度に物理架橋が形成されるため、色材1と最も安定に吸着する形態を固定して固着状態となる。一方、色材1は複数の荷電性樹脂擬似微粒子2が固着していくことによって安定化されて、平衡状態にあった分散剤3は色材表面から脱離する(図2(d)及び図3参照)。
【0122】
この自己分散性樹脂微粒子は更に、水溶液中に分散している水不溶性色材を核としてヘテロ凝集することにより安定化される。従って、色材の分散単位一つに対し、複数の荷電性樹脂擬似微粒子6が水不溶性色材表面に固着又は融着した形態として、本発明に使用される水不溶性色材が得られる。更に、重合に伴う析出と色材への固着又は融着が同時に進行する本工程においては、自己分散性樹脂微粒子が十分な分散安定性を有しない段階で凝集することになるため、荷電性樹脂擬似微粒子と色材との間には強い分子間力及び疎水性相互作用が働き、更に荷電性樹脂擬似微粒子は、色材の表面形状に対してより安定な形に吸着して、強固に色材に固着又は融着する。以上のような過程により、前記した構成の水不溶性色材が、容易に形成される(図2(d)参照)。
【0123】
重合反応条件は、使用する重合開始剤、モノマー等の性質によっても異なるが、例えば、反応温度は100℃以下とし、好ましくは40〜80℃の範囲である。又、反応時間は、1時間以上、好ましくは6時間〜30時間である。反応中の撹拌速度は、50〜500rpm、好ましくは150〜400rpmとするのが望ましい。又、用いる重合開始剤、モノマー、水不溶性色材の性質等によっては、荷電性樹脂擬似微粒子の保護コロイド物質を予め重合系内に微量入れてもよい。これにより、荷電性樹脂擬似微粒子の粒径を小径化に調整できる場合がある。この保護コロイド物質としては、例えば、水溶性高分子樹脂が挙げられる。本発明の分散性色材の製造方法においては、色材そのものが安定に分散できる表面電荷を有するので、本質的には界面活性剤や高分子分散剤等を必要とせずに上述した工程を行うことができるが、水性ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーを水系析出重合せしめる過程の前又はその途中にて、上記したような水溶性高分子樹脂を重合系内に添加すると、固着される荷電性樹脂擬似微粒子の大きさがより小さく、均一となるとともに、樹脂質量/顔料質量、B/P比をより高くできる観点で好ましい結果を与えることが明らかとなった。この際、添加量としては製造する水分散体の0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましい。
【0124】
特に、充分な水溶性を示し、色材微粒子表面及び重合工程で加えられるラジカル重合性モノマー、特に疎水性モノマーの油滴界面への吸着サイトとなる、疎水部分を有している高分子分散剤が好ましく用いられる。更に望ましくは、その後の重合工程で用いる疎水性モノマーのうちの少なくとも1種類が、分散剤を構成するユニットとして存在しているようにすることが、その後の重合工程において荷電性樹脂擬似微粒子の色材への固着を誘起し易い観点から好ましい。本発明で使用できる高分子分散剤及び水溶性高分子の製造方法は、特に限定されず、例えば、荷電性樹脂擬似微粒子を構成する樹脂成分を構成するモノマーとして上記したうち、イオン性基を有するモノマーと、他の重合し得るモノマーとを、非反応性溶媒中で、触媒の存在下又は不存在下で反応させることにより製造できる。
【0125】
特に、イオン性基を有するモノマーと、スチレンモノマーとを必須成分として重合させることによって得られるスチレン/アクリル系高分子化合物、又はイオン性基を有するモノマーと、炭素原子の個数が5以上の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを必須成分として重合させることによって得られるイオン性基含有アクリル系高分子化合物から選ばれる分散剤を用いると良好な結果となることが明らかとなっている。この際、得られる分散性色材が特にアニオン性基を有することを目的とする場合にはアニオン性の分散剤を、一方、得られる分散性色材が特にカチオン性基を有することを目的とする場合には、カチオン性基を有するか、或いはノニオン性の分散剤を、それぞれ選択することが望ましい。
【0126】
上述した水系析出重合の過程で、荷電性樹脂擬似微粒子の色材への固着を促進することと、重合過程での色材の分散安定性を保持することを両立する観点から、アニオン性高分子分散剤を用いる場合には酸価100以上250以下のもの、カチオン性高分子分散剤を用いる場合にはアミン価150以上300以下のもの、をそれぞれ用いることも望ましい形態である。酸価及びアミン価がこの範囲より小さい場合には、水系析出重合の際に、疎水性モノマーと分散剤との親和性が高くなりすぎるために荷電性樹脂擬似微粒子が色材に固着するよりも分散剤と強く吸着して色材への固着が起こりにくくなる場合がある。又、酸価及びアミン価がこの範囲より大きい場合には、色材周囲での分散剤の排除体積効果及び静電反発力が強くなり過ぎるために、色材への荷電性樹脂擬似微粒子の固着が阻害される場合がある。アニオン性分散剤を用いる場合には、色材への樹脂微粒子の固着を阻害しない観点から、アニオン性基としてはカルボキシル基を有する分散剤を選択することが好ましい。
【0127】
前述した工程において、特に少なくとも1種類の疎水性モノマーと、少なくとも1種類の親水性モノマーを含むモノマー成分を重合させて荷電性樹脂擬似微粒子を得る際には、好ましくは前記モノマー成分を、水性ラジカル重合開始剤を含んだ水不溶性色材の水分散体中に滴下することが望ましい。疎水性モノマーと親水性モノマーのように性質の異なるモノマーの混合物から、所望の自己分散性樹脂微粒子を均一に得るためには、前記性質の異なるモノマーの共重合比率を常に一定に保つことが望ましい。前記モノマーの混合物を一定時間内に重合反応で消費されるモノマー量に比して過剰に重合系内に添加した場合、特定のモノマー種のみが先行して重合し、残りのモノマーは先行で重合したモノマーが消費されてから重合する傾向があり、この場合生成する荷電性樹脂擬似微粒子の性質に大きな不均一が生じる。こうして生成した荷電性樹脂擬似微粒子のうち、特に親水性モノマー成分の含有量の大きいものは、水不溶性色材の表面に固着できない場合がある。更に親水性モノマー成分の含有量の大きい樹脂成分に至っては、その高い親水性によって析出できず、荷電性樹脂擬似微粒子を形成できずに水溶性樹脂成分として系内に残存してしまう場合がある。一方、前記モノマー成分を、水性ラジカル重合開始剤を含んだ水不溶性色材の水分散体中に滴下することによって、疎水性モノマーと親水性モノマーとの共重合比率が常に一定に保たれ、所望の共重合比率で構成される荷電性樹脂擬似微粒子を均一に得ることができる。
【0128】
又、親水性モノマーとして、特に、アクリル酸、メタクリル酸等のアニオン性モノマーを重合系内に添加する際に、極性基を結合して表面に電荷をもった水不溶性色材の特性によっては部分的に不安定化し、凝集を引き起こす場合もある。これを防ぐために、アニオン性モノマーを予め中和し、ナトリウム塩やカリウム塩の状態で添加することも好適な実施形態である。
【0129】
上述した工程にて得た、本発明の荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着した水不溶性色材を用いてインクジェット記録用インクを調製する際には、上記の工程に加えて、水不溶性色材表面に固着しなかった樹脂微粒子や、反応しなかったモノマー、不純物等を取り除くために、更に精製処理を行ってもよい。この際に使用する精製するための方法としては、通常一般的に用いられている精製方法から最適なものを選択して用いればよい。例えば、遠心分離法や、限外ろ過法を用いて精製する方法が好ましい実施形態として挙げられる。
【0130】
上述した工程を経れば、多くの制御因子をコントロールすることによって、水不溶性色材の表面に所望の共重合体からなる樹脂微粒子を形成できる。特に高い分散安定性を目的としてアニオン性モノマーを使用する場合には、本発明の工程を経た水不溶性色材は、上記の工程で用いるアニオン性モノマーが比較的少ない量であっても、高い分散安定性を付与することができる。この結果、耐水性を損なうことなく、水不溶性色材の分散安定性を高くすることが可能となる。この理由は明らかでないが、本発明者らの検討によれば、水中で発生したラジカルにより重合が開始され、オリゴマーが析出して荷電性樹脂擬似微粒子を形成する際に、アニオン性モノマー由来成分の多い部分が優先的に水相側、即ち荷電性樹脂擬似微粒子の表面付近に配向する。この状態は、前記荷電性樹脂擬似微粒子が水不溶性色材に固着又は融着した後にも維持され、構造的に大きな比表面積を有する本発明の水不溶性色材の表面は、更にアニオン性モノマー成分由来のアニオン性基が多く存在し、結果として、前記荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着した水不溶性色材はより少ないアニオン性モノマー成分で安定化されると予想される。
【0131】
(6)インク及びインクセット
本発明の水性インクは、以上説明した分散性色材を含むことを特徴とする。前記色材が顔料である場合には、一般的には顔料含有量がインクに対して0.1質量%以上20質量%以下、好ましくは0.3質量%以上15質量%以下とする。
【0132】
次に、上記で本発明におけるインクを構成する水性分散物以外の成分とインクセットについて説明する。本発明で使用する水性液媒体としては、水を主成分とすることが好ましく、又、インク中の水の含有量はインク全質量に対して、10〜95質量%、好ましくは25〜93質量%、より好ましくは40〜90質量%の範囲とすることが望ましい。本発明で使用する水としては、イオン交換水が好ましく用いられる。
【0133】
又、本発明のインクにおいては、水性液媒体として、水を単独で用いてもよいが、水に水溶性有機溶剤を併用させることによって、本発明の効果をより顕著にすることもできる。本発明で使用できる水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1−5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、へキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類;チオジグリコール;ビスヒドロキシエチルスルホン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、ブチル)エーテル等の低級アルキルグリコールエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル等の低級ジアルキルグリコールエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
【0134】
これらの水溶性有機溶剤のインク中における含有量は、一般的には、インクの全質量に対して合計して50質量%以下、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲とすることが望ましい。これらの溶剤の中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ピロリドン、グリセリン、ポリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等を用いることが好ましい。
【0135】
本発明のインク中には上記成分の他、必要に応じて、インクに所望の性能を与えるための、界面活性剤、消泡剤、表面張力調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、酸化防止剤、蒸発促進剤、防錆剤、防カビ剤及びキレート化剤等の添加剤を配合してもよい。界面活性剤としては表面張力の調整や、吐出性を改善するために、ノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物等が好ましい。HLBは10以上、特に12以上、更には15以上のものが好ましい。これら界面活性剤の使用量は、吐出持続性の効果を十分に得るために、インク全質量に対し0.3質量%以上、特に0.5質量%以上、更には0.8質量%以上であることが好ましく、又、多すぎるとインクの粘度が高くなりすぎるため、インク全質量に対し3質量%以下、特に2.5質量%以下、更には2.0質量%以下であることが好ましい。
【0136】
更に、色材に固着又は融着している荷電性樹脂擬似微粒子(A)と、インク中に分散して存在する自己分散性樹脂微粒子(B)とが存在してもよい。荷電性樹脂擬似微粒子(A)を構成するモノマー成分と、自己分散性樹脂微粒子(B)を構成するモノマー成分とが、1種以上の共通のモノマー成分を含んでなることにより、前記荷電性樹脂擬似微粒子(A)を固着した分散性色材と、前記自己分散性樹脂微粒子(B)との親和性が大きくなり、接着力が増大するため、特に光沢媒体上での印字物の耐擦過性が向上する効果が得られる。
【0137】
又、本発明のインクの粘度は、25℃において0.7〜12mPa・sの範囲内にあることが好ましい。インクの粘度が上記範囲内であると、インクジェット記録において正常な吐出が可能であり、又、その粘度抵抗により記録媒体への浸透が早く、定着性の面からも問題がなく、好ましい。又、本発明に用いられるインクの表面張力は、25℃において20〜60mN/mの範囲に調整されることが好ましい。表面張力が20mN/m以上のとき、インクジェット記録において液滴が吐出した後、メニスカスを引き戻そうとする力が強いか、或いは逆にメニスカスが突出した際に、引き戻す力が比較的強いため、泡を抱き込んだり、オリフィス部が濡れてヨレの原因となるといった問題が起こらない。上記のようなインクとすることにより、本発明で提案されるインクは、普通紙対応型インクジェット記録に用いられるインクとして、特に、得られる画像の耐水性、インクの保存性に優れ、且つ記録濃度、定着性、印字品位及び、固着特性の性能に優れたインクの提供が可能になる。
【0138】
以上のようにして構成される本発明の水性インクは、スタンプやペンのインクとしても用いることができるが、インクジェット記録で用いられる際に、特に効果的である。インクジェット記録方法としては、インクに力学的エネルギーを作用させて液滴を吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出するインクジェット記録方法があり、それらのインクジェット記録方法に本発明の記録用インクは特に好適である。
【0139】
本発明のインクセットにおいて、ブラック用、カラー用(イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、ブルー、グリーン、オレンジ、バイオレッド等の種々の可能な色を含む)インクを有するインクセットにおいて、少なくとも1種のインクが本発明のインクであることを特徴とする。即ち、用いるインクの組み合わせが全て本発明のインクであるインクセットや、1つのインク(例えば、ブラックインク)を本発明のインクとし、他のインクに染料を色材として用いたインク等にするインクセットも含まれる。これらのインクの選択、組み合わせは適宜可能であり、使用する目的等によって選択可能である。
【0140】
(7)記録画像、画像記録方法及び記録装置
(記録画像)
本発明のインクジェット記録画像は、本発明の水性インクを用いて、後述するようなインクジェット記録装置にて記録媒体上に形成される。本発明における記録媒体はインクジェット記録可能等のような媒体でも制限なく用いることができる。
【0141】
(画像記録方法及び記録装置)
本発明の分散性色材、及び水性インクは、インクジェット吐出方式のヘッドに用いられ、又、そのインクが収納されているインクタンクとしても、或いは、その充填用のインクとしても有効である。特に、本発明は、インクジェット記録方式の中でもバブルジェット方式の記録ヘッド、記録装置において、優れた効果をもたらすものである。
【0142】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、インクが保持されているシートや液路に対応して配置された電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対一対応し、インク内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介してインクを吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4,463,359号明細書、同第4,345,262号明細書に記載されているようなものが適している。尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4,313,124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に優れた記録を行うことができる。
【0143】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4,558,333号明細書、米国特許第4,459,600号明細書を用いた構成にも本発明は有効である。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通すると吐出孔を電気熱変換体の吐出部とする構成(特開昭59−123670号公報等)に対しても、本発明は有効である。
【0144】
更に、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによって、その長さを満たす構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよいが、本発明は、上述した効果を一層有効に発揮することができる。
【0145】
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、或いは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。又、本発明は、適用される記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャピング手段、クリーニング手段、加圧或いは吸引手段、電気熱変換体或いはこれとは別の加熱素子或いはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードである。
【実施例】
【0146】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、文中「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
[実施例1〜実施例4]
実施例及び比較例に水不溶性色材として用いた色材1〜色材4は、以下の通りである。これらの色材1〜色材4を用いて、実施例1〜4の本発明の分散性色材及び水性インクジェット用インクを製造した。
色材1:C.I.ピグメントブラック(キャボット社製・Cabojet300:自己分散顔料/カルボン酸基)
色材2:C.I.ピグメントブルー15:3(キャボット社製・Cabojet253:自己分散顔料/スルホン酸基)
色材3:C.I.ピグメントレッド122(キャボット社製・Cabojet266:自己分散顔料/スルホン酸基)
色材4:C.I.ピグメントイエロー74(キャボット社製・Cabojet273:自己分散顔料/スルホン酸基)
【0147】
(実施例1)
実施例1にかかる記録用インク1を下記の要領で作製した。先ず、ブラックインク作製のため、色材1を固形分換算で10部になるように水を添加して調整し、顔料分散液1を得た。得られた顔料分散液1は、平均分散粒径97nmで安定に分散されており、多分散度指数は0.18であった。次に、前記顔料分散液1を100部として、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の3つの液を夫々滴下装置に充填し滴下して加え、5時間重合を行った。3つの液は、(1)メタクリル酸メチル5.5部、(2)アクリル酸0.5部と水酸化カリウム0.12部と水20部、(3)過硫酸カリウム0.05部及び水20部、からなる。得られた分散液を水にて10倍に希釈し、5,000rpmにて10分間遠心分離を行って凝集成分を除去した。
【0148】
この時、色材1について下記の方法でカーボンブラックの表面酸素量を測定した。カーボンブラックの表面酸素の量は、下記の加熱減量法にて測定した。該手法では、真空下950℃にてカーボンブラックを10分程度加熱し、その際に生じる重量減少から表面酸素量を推定する。即ち、上記条件下の加熱で発生するガスは一酸化炭素や二酸化炭素であり、これらのガスは、カーボン表面に存在するカルボキシル基、水酸基、キノン等に起因するため、該加熱の際に生じる加熱減量が大きいほど表面酸素量が多いと言える。測定の結果、加熱減量は10%であった。
【0149】
その後、更に12,500rpm、2時間の条件で遠心分離することにより、沈降物である分散性色材1を得た。該分散性色材1を水に分散し、80,000回転、90分間の遠心分離を行って沈降物を水に再分散させたものを乾燥させ、走査型電子顕微鏡JSM−6700(日本電子ハイテック(株)製)にて5万倍にて観察したところ、該分散性色材1は樹脂擬似微粒子がカーボンブラックの表面に固着している状態が観察された。更に、この分散液を80,000回転、90分の条件にて遠心分離を行った上澄みの質量固形分が1%以内となることを確認し、該分散性色材1が色材よりも小さい荷電性擬似微粒子を色材に固着していることを確かめた。尚、本実施例に記載されるこれ以降の色材についても同様の手法にて形態を確認している。
【0150】
又、同様の方法で作製した上記分散性色材を別に準備し、遠心分離装置にて12,000回転、60分間の条件で分離し、分離後、色材を含んでいる下層の沈殿物を取り出し、これをトルエンに投入し、溶解した。次に、これを遠心分離装置において80,000回転させ、水不溶性色材を沈殿、分離させた。更に、この色材を洗浄後、純水中に再分散させたところ、沈殿物が生じることなく分散した。尚、本実施例に記載されるこれ以降の色材についても同様の手法にて色材自体が表面電荷を有してそれ自体が分散可能であるかを確認している。又、下記の評価に示す方法でゼータ電位を測定した。以上の結果は表1に示した。
【0151】
得られた分散性色材1が、インク中に4%濃度になるように、下記成分を混合し、更に、ポアサイズが2.5ミクロンのメンブレンフィルターにて加圧濾過し、本実施例の記録用インク1とした。尚、インクの全量が100部となるように水で調整した。以降のインクにおいても同様である。
・グリセリン 7部
・ジエチレングリコール 5部
・トリメチロールプロパン 7部
・アセチレノールEH(商品名:川研ファインケミカ
ル社製) 0.2部
・イオン交換水 残部
【0152】
(実施例2)
実施例2にかかる記録用インク2を下記の要領で作製した。先ず、シアンインク作製のため、色材2を固形分換算で10部になるように水を添加して調整し、顔料分散液2を得た。得られた顔料分散液2は、平均分散粒径123nmで安定に分散されており、多分散度指数は0.20であった。次に実施例1と同様にして分散性色材2を得た。得られた分散性色材における荷電性擬似微粒子の色材への固着の観察確認、色材自体の分散性の確認は実施例1と同様に行った。
【0153】
(実施例3)
実施例3にかかる記録用インク3を下記の要領で作製した。先ず、マゼンタインク作製のため、色材3を固形分換算で10部になるように水を添加して調整し、顔料分散液3を得た。得られた顔料分散液3は、平均分散粒径127nmで安定に分散されており、多分散度指数は0.22であった。次に実施例1と同様にして分散性色材3を得た。得られた分散性色材における荷電性擬似微粒子の色材への固着の観察確認、色材自体の分散性の確認は実施例1と同様に行った。
【0154】
(実施例4)
実施例4にかかる記録用インク4を下記の要領で作製した。先ず、イエローインク作製のため、色材2を固形分換算で10部になるように水を添加して調整し、顔料分散液4を得た。得られた顔料分散液4は、平均分散粒径115nmで安定に分散されており、多分散度指数は0.17であった。次に実施例1と同様にして分散性色材4を得た。得られた分散性色材における荷電性擬似微粒子の色材への固着の観察確認、色材自体の分散性の確認は実施例1と同様に行った。
【0155】
[実施例5〜実施例10]
実施例1の色材を用い、モノマー混合液の種類、配合、製造条件を変える等して分散性色材及びインクを作製した。
【0156】
(実施例5)
実施例1で調製したと同様の顔料分散液1を100部用い、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の3つの液を夫々滴下装置に充填し、滴下して加え8時間重合を行った。該3つの液は、(1)スチレン5.7部、(2)アクリル酸0.3部と水酸化カリウム0.07部と水20部、(3)過硫酸カリウム0.05部及び水20部、からなる。重合後、実施例1と同様の方法で遠心分離にて精製を行い、分散性色材5を得た。更に、得られた分散性色材5が4%濃度になるように、実施例1と同様にして、本実施例の記録用インク5を調製した。
【0157】
(実施例6)
実施例1で調製したと同様の顔料分散液1を100部用い、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の3つの液を夫々滴下装置に充填し、滴下して加え、6時間重合を行った。該3つの液は、(1)メタクリル酸メチル5.7部、(2)アクリル酸0.3部と水酸化カリウム0.07部と水20部、(3)過硫酸カリウム0.05部及び水20部、からなる。上記のようにして5時間かけて重合した後、実施例1と同様の方法で遠心分離にて精製を行って、分散性色材6を得た。
【0158】
更に、上記において、顔料分散液1の代わりに実施例1で用いたスチレン−アクリル酸系樹脂分散剤と等量の水酸化カリウムとの2%水溶液を100部として、同様に重合を行い、実施例1と同様に20,000回転、1時間の条件にて遠心分離にて精製を行って、樹脂微粒子B1を得た。得られた分散性色材6が4%濃度に、樹脂微粒子B1が1.2%濃度にそれぞれなるように、実施例1に同様に調合し、本実施例の記録用インク6を調製した。
【0159】
(実施例7)
実施例1で調製したと同様の顔料分散液1を100部用い、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の3つの液を夫々滴下装置に充填し、滴下して加え、6時間重合を行った。該3つの液は、(1)メタクリル酸ベンジル4.5部とアクリル酸ブチル1.2部、(2)アクリル酸0.3部と水酸化カリウム0.07部と水20部、(3)過硫酸カリウム0.05部及び水20部、からなる。重合後、実施例1と同様の方法で遠心分離にて精製を行って、分散性色材7を得た。
【0160】
更に、上記において、実施例6と同様の置き換えを行って重合、遠心分離による精製を行って、樹脂微粒子B2を得た。実施例1と同様の方法で観察を行ったところ、該分散性色材7にあっても、樹脂擬似微粒子がカーボンブラックの表面に固着している様子が観察されたが、実施例1の場合と比べて、融着した部分が多いものであることが確認できた。得られた分散性色材7が4%濃度に、樹脂微粒子B2が1.2%濃度にそれぞれなるように、実施例1に同様に調合し、本実施例の記録用インク7を調製した。
【0161】
(実施例8)
実施例1で調製したと同様の顔料分散液1を100部用い、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の3つの液を夫々滴下装置に充填し、滴下して加え、5時間重合を行った。該3つの液は、(1)メタクリル酸メチル17.2部、(2)p−スチレンスルホン酸ナトリウム0.8部と水20部、(3)過硫酸カリウム0.05部及び水20部、からなる。上記のようにして7時間かけて重合した後、実施例1と同様の方法で遠心分離にて精製を行い、分散性色材8を得た。得られた分散性色材8が、4%濃度になるように、実施例1と同様にして、本実施例の記録用インク8を調製した。
【0162】
(実施例9)
実施例1で調製したと同様の顔料分散液1を100部用い、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の3つの液を夫々滴下装置に充填し、滴下して加え、5時間重合を行った。該3つの液は、(1)アクリル酸ブチル4.0部とメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(分子量約1,100、新中村化学(株)製、商品名M230G)1.5部、(2)アクリル酸0.5部と水酸化カリウム0.35部と水20部、(3)過硫酸カリウム0.05部及び水20部、からなる。上記のようにして5時間かけて重合した後、実施例1と同様の方法で遠心分離にて精製を行い、分散性色材9を得た。実施例1と同様の方法で観察を行ったところ、該分散性色材9おいては、樹脂擬似微粒子がカーボンブラックの表面にカーボンブラックよりも小さい扁平な球状の荷電性樹脂擬似微粒子が融着している状態が確認できた。得られた分散性色材9が、4%濃度になるように、実施例1と同様にして、本実施例の記録用インク9を調製した。
【0163】
(実施例10)
実施例1で調製したと同様の顔料分散液1を100部用い、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の3つの液を夫々滴下装置に充填し、滴下して加え、8時間重合を行った。該3つの液は、(1)メタクリル酸ベンジル3.0部とメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(分子量約500、新中村化学(株)製、商品名M230G)2.5部、(2)アクリル酸0.5部と水酸化カリウム0.35部と水20部、(3)過硫酸カリウム0.05部及び水20部、からなる。重合後、実施例1と同様の方法で遠心分離にて精製を行い、分散性色材10を得た。更に、得られた分散性色材10が4%濃度になるように、実施例1と同様にして、本実施例の記録用インク10を調製した。
【0164】
(比較例1)
比較例1にかかる記録用インクを下記の要領で作製した。即ち、従来の自己分散顔料を用いたインクを作製した。実施例1で用いた顔料分散液と同じものを用い、該顔料分散液を重合処理等をすることなく、この顔料分散液を用いて顔料濃度が4%になるようにして、実施例1と同様の方法で、本比較例の記録用インクを調製した。
【0165】
(比較例2)
比較例2にかかる記録用インクを下記の要領で作製した。即ち、従来の高分子樹脂分散材で分散した顔料を用いて作製した。先ず、カーボンブラック(米国Cabot社製Black Pearls 880)10部、グリセリン6部、スチレン−アクリル酸系樹脂分散剤10部、水74部からなる組成の混合液を、金田理化工業社製のサンドミルにて1,500rpm、5時間分散し、顔料分散液12を得た。このとき、カーボンブラックの表面酸素量を下記の加熱減量法にて測定した。該手法では、真空下950℃にてカーボンブラックを10分程度加熱し、その際に生じる重量減少から表面酸素量を推定する。即ち、上記条件下の加熱で発生するガスは一酸化炭素や二酸化炭素であり、これらのガスは、カーボン表面に存在するカルボキシル基、水酸基、キノン等に起因するため、該加熱の際に生じる加熱減量が大きいほど表面酸素量が多いと言える。測定の結果、1.5%の加熱減量であった。サンドミルで分散する際、0.6mm径のジルコニアビーズを使用し、ポット内の充填率は70%とした。ここで、スチレン−アクリル酸系樹脂分散剤には、共重合比70:30、Mw=8,000、酸価170のものを使用した。かかるスチレン−アクリル酸系樹脂分散剤は、予め、水及び、上記の酸価と当量の水酸化カリウムを加えて80℃にて撹拌し、水溶液としたものを使用した。得られた顔料分散液は、平均分散粒径98nmで安定に分散されており、多分散度指数は0.16であった。次に、この顔料分散液を用いて顔料濃度が4%になるようにして、実施例1と同様の方法で、本比較例の記録用インクを調製した。
【0166】
(比較例3)
比較例3にかかる記録用インクを下記の要領、即ち、従来の転相乳化法によるマイクロカプセル法で作製した。先ず、n−ブチルメタクリレート175部、n−ブチルアクリレート10.5部、β−ヒドロキシエチルメタクリレート37.5部、メタクリル酸26.8部及びt−ブチルパーオキシオクトエート20部からなる混合液を作製し、更に、メチルエチルケトン250部に窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃に加熱し、上記混合液を2時間かけて滴下し、更に温度を維持したまま15時間反応させて樹脂溶液を作製した。次いで、この樹脂溶液を11.6部、ジエタノールアミン1.6部及びカーボンブラック(米国Cabot社製Black Pearls 880)30部を加え、総量150部とし平均粒径0.5mmのジルコニアビーズ500gを加え、ペイントシェーカーで4時間混練した。最後にジルコニアビーズを濾別して樹脂と顔料からなる分散液を得た。
【0167】
次に、更に純水を加えて、2倍に希釈し撹拌しながら、1規定の塩酸を加えていき、色材に樹脂が被覆するまで滴下した。尚、この時のpHは3〜5であった。次いで、吸引ろ過し、塩を水洗して含水ケーキを得た。pHが8.5〜9.5となるようにジエタノールアミン10%水溶液を加えた。更に1時間撹拌した後に色材濃度が10%となるように顔料分散液を調整した。得られた顔料分散液は、平均分散粒径98nmで安定に分散されており、多分散度指数は0.16であった。次に、この顔料分散液を用いて、顔料濃度が4%になるように、実施例1と同様の方法で、本比較例の記録用インク13を調製した。
【0168】
(比較例4)
比較例4にかかる記録用インクを下記の要領、即ち、従来の自己分散顔料と従来の転相乳化法によるマイクロカプセル法で作製した顔料の混合インクを作製した。比較例1で作製した顔料分散液と比較例3で作製した顔料分散液を用いて、これらの顔料濃度が、それぞれ2%濃度になるように、即ち、合計の顔料濃度が4%になるようにして、実施例1と同様の方法で、本比較例の記録用インクを調製した。
【0169】
(比較例5)
比較例5にかかる記録用インクを下記の要領、即ち、従来の自己分散顔料に従来の転相乳化法によるマイクロカプセル法で被覆処理を施して作製した顔料のインクを作製した。先ず、実施例1の顔料分散液1を90℃オーブンで乾燥させ粉体とした。次に、n−ブチルメタクリレート175部、n−ブチルアクリレート10.5部、β−ヒドロキシエチルメタクリレート37.5部、メタクリル酸26.8部及びt−ブチルパーオキシオクトエート20部からなる混合液を作製し、更に、メチルエチルケトン250部に窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃に加熱し、上記混合液を2時間かけて滴下し、更に温度を維持したまま15時間反応させて樹脂溶液を作製した。次いで、この樹脂溶液を11.6部、ジエタノールアミン1.6部、及び乾燥させて得られたカーボンブラック顔料30部を加え、総量150部とし平均粒径0.5mmのジルコニアビーズ500gを加え、ペイントシェーカーで4時間混練した。最後にジルコニアビーズを濾別して樹脂と顔料からなる分散液を得た。
【0170】
次に、更に純水を加えて、2倍に希釈し撹拌しながら、1規定の塩酸を加えていき、色材に樹脂が被覆するまで滴下した。尚、この時のpHは3〜5であった。次いで、吸引ろ過し、塩を水洗して含水ケーキを得た。pHが8.5〜9.5となるようにジエタノールアミン10%水溶液を加えた。更に1時間撹拌した後に色材濃度が10%となるように顔料分散液を調整した。得られた顔料分散液は、平均分散粒径98nmで安定に分散されており、多分散度指数は0.16であった。次に、この顔料分散液を用いて、顔料濃度が4%になるようにして、実施例1と同様の方法で、本比較例の記録用インクを調製した。
【0171】
[評価]
(分散性色材の特性)
実施例1〜10及び比較例1〜5で得た各分散性色材或いは顔料分散液を構成する色材(以下、分散性色材という)について、それぞれ下記に説明した方法で観察、及び各種の物性を測定し、得られた結果を表1〜表3に示した。
【0172】
<観察結果・点在性>
各分散性色材を水に分散して乾燥させ、走査型電子顕微鏡JSM−6700(日本電子ハイテック(株)製)にて5万倍にて観察し、樹脂微粒子が固着又は融着している様子が確認できたものを○、できなかったものを×として評価した。又、観察時、樹脂微粒子が点在していることが確認できたものを○、局在していたり、不均一に融着している様子がみられたものを×として点在性を評価した。更に固着、融着の状態を確認した。
【0173】
<分散安定性>
各分散性色材の5%水分散液を純水で10倍に希釈し、分画分子量50,000の限外ろ過フィルターを用いて元の濃度になるまで濃縮し、濃縮液を遠心分離装置にて12,000回転、2時間の条件で分離した。分離された沈降物を取り出して純水に再分散させ、目で見て均一に分散していること、及び後述する動的光散乱法にて測定した平均粒径が操作前の粒径の2倍以内であることを確認し、条件を満たしたものを○、条件を満たさなかったものを×として単独分散性を評価した。
【0174】
<色材表面の電荷の有無確認、ゼータ電位の測定>
各分散性色材を水に分散し、遠心分離装置にて12,000回転、60分間の条件で分離し、分離後、色材を含んでいる下層の沈殿物を取り出し、これをトルエンに投入し、溶解した。次に、これを遠心分離装置において80,000回転させ、水不溶性色材を沈殿、分離させた。更に、この色材を洗浄後、純水中に再分散させて沈殿物の有無を確認した。沈殿物がないものは○、あるものは×とし、沈殿物がないものは各分散性色材を10万倍程度に純水で希釈し、マイクロテック・ニチオン社製ZEECOMにて、セルの静止面におけるζ電位の値を粒子100個分測定し、その平均値を各色材のζ電位とした。更に、100個測定したそれぞれの値の標準偏差を求めた。
【0175】
<平均分散粒径>
各分散性色材を、大塚電子(株)製、ELS−8000を用いて動的光散乱法にて測定し、キュムラント平均値を平均粒径とした。
【0176】
<ガラス転移温度:Tg(℃)>
各分散性色材に固着している樹脂微粒子のガラス転移温度は、分散性色材を乾燥させたものを試料とし、メトラー・トレド社製DSC822eにて測定した。
【0177】
<表面官能基密度>
各分散性色材の表面官能基密度を次のように求めた。色材の水分散液に大過剰量のHCl水溶液を加え、遠心分離装置にて20,000rpm、1時間の条件で沈降したものを純水に再分散させ、固形分率を求めて沈降物を秤量し、既知量の炭酸水素ナトリウムを加えて撹拌した分散液を、更に遠心分離装置にて80,000rpm、2時間の条件にて沈降させた。上澄みを秤量し、0.1規定HClにて中和滴定より求めた中和量から、炭酸水素ナトリウムの既知量及び純水を測定したブランク値を差し引き、表面官能基密度を算出した。極性基としてカチオン性基を有することが明らかな場合には、同様の手法にて、HClの代わりにNaOHを、炭酸水素ナトリウムの代わりに塩化アンモニウムを用いて求めた。
【0178】
(記録用インクの評価方法及び評価結果)
上述した方法で得た各記録用インクを用い、インクジェット記録装置にて記録媒体への印字を行って、得られた画像について評価した。使用したインクジェット記録装置としてはキヤノン(株)製インクジェットプリンタBJS700を用いて画像を形成した。この時、ブラックインクはBCI−3eBkのタンクに注入し、シアン、マゼンタ、イエローはそれぞれの色のタンクに注入しセットした。そして、上記条件で印字した印字物の光学濃度(OD)、耐擦過性、耐マーカー性、吐出安定性を以下のようにして評価し、更に、インクそのものの長期保存安定性を確認し、その結果を表4〜6に示した。
【0179】
<光学濃度(OD)>
各記録用インクを用いてキヤノンPPC用紙にBkテキストを印字後、1日経過した印字物の光学濃度(OD)を測定した。印字物のODが1.4以上である場合をA、ODが0.8以上1.4未満である場合をB、ODが0.8未満である場合をCと、それぞれ評価した。但し、実施例2、3、4についてはBkテキストの代わりにそれぞれシアン、マゼンタ、イエローのテキストを印字し、それぞれの色における光学濃度を測定し、ODが1.0以上である場合をAとして評価した。
【0180】
<耐擦過性>
印字物の耐擦過性は、印字部分を40g/cm2の重さをかけたシルボン紙で5回擦り、印字部分の乱れを目視で観察し、下記の基準で評価した。
A:擦れによる印字の乱れや白色部の汚れがない。
B:擦れによる印字の乱れや白色部の汚れが殆どなく、気にならない。
C:擦れにより印字が大きく乱れ、白色部に汚れがみられる。
【0181】
<耐マーカー性>
印字物の耐マーカー性は、印字部分を蛍光黄色マーカーペン(ゼブラ・オプテクス)にて一回なぞり、印字部分の乱れを目視で観察し、下記の基準で評価した。
A:なぞった部分に印字の乱れがない。
B:なぞった部分に印字の乱れが少なく、ペン先が殆ど汚れていない。
C:なぞった部分の印字の乱れが大きく、ペン先に色がつく。
【0182】

【0183】

【0184】

【0185】

【0186】

【0187】

【0188】
表に示した通り、いずれの実施例においても観察結果は良好であり、分散安定性の良好な色材が得られることが確認された。又、いずれの記録用インクにおいても、優れた印字性能を示した。
【0189】
[実施例11〜実施例12]
実施例1の色材を用い、モノマー混合液の種類、配合を変えずに製造条件を変えて分散性色材を作製した。
【0190】
(実施例11)
実施例1で調製したと同様の顔料分散液1を100部用い、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の混合液を徐々に滴下して加え8時間重合を行った。該混合液は、メタクリル酸メチル5.5部、アクリル酸0.5部、水酸化カリウム0.12部、過硫酸カリウム0.05部、スチレン−アクリル酸系樹脂分散剤(共重合比70:30、Mw=8,000、酸価170)0.2部及び水20部からなる。本実施例で用いたスチレン−アクリル酸系樹脂分散剤は、予め、水及び、上記の酸価と当量の水酸化カリウムを加えて80℃にて撹拌し、20%水溶液としたものを使用した。得られた分散液を水にて10倍に希釈し、5,000rpmにて10分間遠心分離を行って凝集成分を除去した。その後、更に12,500rpm、2時間の条件で遠心分離することにより、沈降物である分散性色材11を得た。得られた分散性色材11が、4%濃度になるようにして、実施例1と同様の方法で、本実施例の記録用インク11を調製した。
【0191】
(実施例12)
実施例1で調製したと同様の顔料分散液1を100部用い、窒素雰囲気下、70℃に加熱した状態で、モーターで撹拌しながら下記の混合液を徐々に滴下して加え8時間重合を行った。該混合液は、メタクリル酸メチル5.5部、アクリル酸0.5部、水酸化カリウム0.12部、過硫酸カリウム0.05部、スチレン−アクリル酸系樹脂分散剤(共重合比25:75、Mw=6,000、酸価420)0.2部及び水20部からなる。本実施例で用いたスチレン−アクリル酸系樹脂分散剤は、予め、水及び、上記の酸価と当量の水酸化カリウムを加えて80℃にて撹拌し、20%水溶液としたものを使用した。得られた分散液を水にて10倍に希釈し、5,000rpmにて10分間遠心分離を行って凝集成分を除去した。その後、更に12,500rpm、2時間の条件で遠心分離することにより、沈降物である分散性色材12を得た。得られた分散性色材12が、4%濃度になるようにして、実施例1と同様の方法で、本実施例の記録用インク12を調製した。
【0192】
[評価]
(分散性色材の樹脂質量/顔料質量比)
実施例1、11及び12で得た各分散性色材について、樹脂質量/顔料質量の比(B/P)を測定した。80,000回転、2時間の条件にて遠心分離した沈降物を乾燥、秤量し、METTLER社製のTGA/SDTA851を用いて大気中において昇温を行ったときの、顔料及び樹脂成分のそれぞれの分解温度前後での質量変化を求め、B/Pを算出した。
【0193】
(記録用インクの評価方法及び評価結果)
実施例1〜10、比較例1〜5にて行ったのと同様に印字を行い、耐擦過性の評価を行った。結果を表7に示した。いずれも良好な耐擦過性を示したが、その中でも特にB/P比の大きい実施例11は特に優れた耐擦過性を示すことが目視にて確認された。
【0194】

【0195】
(実施例13)
実施例1と異なる極性の表面電荷を有する色材5を用いて記録用インク16を以下の要領で作製した。先ず、30gの水にH3+64+(CH3)3Cl-・I-が3.08g溶けた溶液中に、硝酸銀1.69gを撹拌しながら加える。発生した沈殿物をろ過により除去し、ろ液を、水70gに比表面積が230m2/gでDBPAが70ml/100gのカーボンブラック10gが分散している懸濁液に撹拌しながら加える。次に、2.25gの濃硝酸を加え、それから水10gに0.83gの亜硝酸ナトリウムが溶けた溶液を加える。すると、下記に示す構造を有するN2+64+(CH3)3基を有するジアゾニウム塩がカーボンブラックと反応して、窒素ガスが発生する。窒素ガスの泡が止まったら、その分散液を120℃のオーブンで乾燥する。この結果、カーボンブラックの表面にC64+(CH33基が付いた生成物が得られた。この得られたカーボンブラック粉末を水に再分散させ、顔料濃度15%の自己分散型カーボンブラック分散体を得た。得られたカーボンブラックのカウンターイオンをイオン交換樹脂で酢酸の共役塩基に変換し、カーボンブラック分散体(色材5)を得た、次いでこれを固形分換算で10部になるように水を添加して調整し、顔料分散液16を得た。得られた顔料分散液16は、平均粒径105nmで安定に分散されており、多分散度指数は0.19であった。
【0196】
次に、前記顔料分散液16を100部として、窒素雰囲気下55℃に加熱し、モーターで撹拌しながら、下記の組成の混合液を序々に滴下して加え、7時間重合を行った。該混合液は、メタクリル酸ベンジル4.2部、アクリル酸ジメチルアミノエチル1.8部、過硫酸カリウム0.3部及び過硫酸カリウムと等モルのチオ硫酸ナトリウムと水20部からなる。重合後、得られた分散液を水にて10倍に希釈し、5,000rpmにて10分間遠心分離を行って凝集成分を除去して分散性色材16を得た。
【0197】
得られた分散性色材の荷電性擬似微粒子を固着の観察確認、色材自体の分散性の確認は実施例1と同様に行った。更に、実施例1と同様にしてインクを作製した。次いで、実施例1と同様の方法で観察、及び各種の物性を測定し、得られた結果を表8に示した。更に、実施例1と同様にして記録用インクを用いて印字を行い、同様に評価し、結果を表9に示した。
【0198】

【0199】

【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明によれば、水不溶性色材に樹脂付着固定する方法により、即ち、付着固定された樹脂の付着固定状態、形状、更には水不溶性色材の表面特性に至るまで改良することによって、付着固定配置状態をコントロールするにより、色材表面に付着固定する樹脂の特徴と水不溶性色材の表面の特徴を生かした加工が可能になった。よって、本質的に水に不溶である色材を用い、十分に分散安定性が高い分散性色材及びその簡便な製造方法を提供することが可能になった。更に、その分散性色材を用い、インク中で安定に分散させるだけでなく、得られる印字物が、優れた画像品位(画像濃度)と優れた耐擦過性、耐マーカー性とを両立したものとなる水性インクジェット記録用インクを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】本発明による、荷電性樹脂擬似微粒子を固着又は融着している分散性色材の基本的構造を示す模式図である。
【図2】本発明の製造方法における代表的な工程の模式図である。
【図3】本発明の製造方法における荷電性樹脂擬似微粒子の精製と色材への固着又は融着の過程を示す模式図である。
【図4】本発明の荷電性樹脂擬似微粒子を、色材と固着又は融着する界面側から拡大した模式図である。
【図5】本発明の荷電性樹脂擬似微粒子と色材が固着又は融着している界面を拡大した模式図である。
【図6】従来の有機顔料に親水性基を直接修飾した際の、顔料剥離現象の模式図である。
【符号の説明】
【0202】
1:色材
2−1:荷電性樹脂擬似微粒子
2−2:一部融着した荷電性樹脂擬似微粒子
2−3:融着した扁平状荷電性樹脂擬似微粒子
3:分散剤
4:モノマー
5:重合開始剤水溶液
6:分散性色材
7:モノマーが重合して形成されたオリゴマー
8:オリゴマーが水に不溶化した析出物
9−1:荷電性樹脂擬似微粒子中の親水性モノマーユニット部分
9−2:荷電性樹脂擬似微粒子中の疎水性モノマーユニット部分
10:色材との結合部位
11:荷電性樹脂擬似微粒子の色材との界面部分
12:色材に直接修飾された親水性基

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と該色材よりも小さい荷電性樹脂擬似微粒子が固着又は融着している分散性色材であって、該色材そのものが表面電荷を有することを特徴とする分散性色材。
【請求項2】
前記色材に対して、前記荷電性樹脂擬似微粒子が複数点在し、且つ固着している請求項1に記載の分散性色材。
【請求項3】
前記色材に対して、扁平状荷電性樹脂擬似微粒子が点在して融着している請求項1に記載の分散性色材。
【請求項4】
前記色材そのものの表面電荷が、純水中における表面ゼータ電位で測定され、その平均値が−100mV以上−15mV以下であり、その分布が標準偏差にて50未満である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分散性色材。
【請求項5】
前記色材そのものの表面電荷が、純水中における表面ゼータ電位で測定され、その平均値が+10mV以上+70mV以下であり、その分布が標準偏差にて50未満である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の分散性色材。
【請求項6】
前記色材そのものの表面に、極性基が結合している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分散性色材。
【請求項7】
前記色材そのものの表面に結合している極性基が、アニオン性基又はカチオン性基である請求項6に記載の分散性色材。
【請求項8】
前記色材そのものの表面に、前記荷電性擬似微粒子と同極性の極性基が化学結合している請求項1乃至7のいずれか1項に記載の分散性色材。
【請求項9】
前記分散性色材の表面官能基密度が、250μmol/g以上1,000μmol/g未満である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の分散性色材。
【請求項10】
前記色材の加熱減量が2質量%以上20質量%以下である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の分散性色材。
【請求項11】
前記荷電性擬似微粒子が、少なくとも1種類の疎水性モノマーと、少なくとも1種類の親水性モノマーとを含むモノマー成分の共重合体を含んでなる請求項1乃至10のいずれか1項に記載の分散性色材。
【請求項12】
表面に少なくとも1種の極性基が直接若しくは他の原子団を介して結合して分散されている水不溶性色材の分散水溶液中にて、水性ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーを水系析出重合せしめ、前記水不溶性色材表面に固着又は融着する荷電性樹脂擬似微粒子を形成することを特徴とする分散性色材の製造方法。
【請求項13】
前記ラジカル重合性モノマーが、少なくとも1種類の疎水性モノマーと、少なくとも1種類の親水性モノマーとを含む請求項12に記載の分散性色材の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の分散性色材の製造方法において、水性ラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合性モノマーを水系析出重合せしめる過程の前又はその途中にて、水溶性高分子を重合系内に添加することを特徴とする分散性色材の製造方法。
【請求項15】
前記水溶性高分子が、酸価が100以上250以下の高分子分散剤若しくはアミン価が150以上300以下の高分子分散剤を少なくとも含んでなる請求項14に記載の分散性色材の製造方法。
【請求項16】
請求項12乃至15のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする分散性色材。
【請求項17】
請求項1乃至11、及び16のいずれか1項に記載の分散性色材を含んでなることを特徴とする水性インク。
【請求項18】
前記分散性色材を構成している色材が顔料であり、前記顔料とインク中に含まれる全樹脂成分との割合(樹脂質量/顔料質量=B/P)が、0.1以上4.0以下の範囲である請求項16又は17に記載の水性インク。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の水性インクを含んでなることを特徴とするインクタンク。
【請求項20】
請求項16又は18に記載の水性インクを搭載してなることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項21】
請求項16又は18に記載の水性インクを用いて、インクジェット記録装置により画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項22】
請求項16又は18に記載の水性インクを用いて、インクジェット記録装置により形成されたことを特徴とするインクジェット記録画像。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−37087(P2006−37087A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182743(P2005−182743)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】