説明

分散相により靭性を高めたポリマー複合材料から作製されたステント

分散相により靭性を高めたポリマー複合材料から作製されたステントを開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[発明の分野]
本発明は、分散ポリマー相により靭性を高めたポリマー複合材料から少なくとも一部分が作製されたステントに関する。
【0002】
[最新技術の説明]
本発明は、体管腔中に埋め込むのに適応した、放射方向に拡張する内部人工器官に関する。「内部人工器官」は、体の内側に配置される人工の器具に相当する。「管腔」は、血管などの管状器官の腔をいう。
【0003】
ステントは、そのような内部人工器官の一例である。ステントは、一般に円筒形状の器具であり、血管、又は、尿路及び胆管といった他の解剖学上の管腔の一部を開いた状態に保つように、時には拡張するように機能する。ステントは、血管におけるアテローム硬化性狭窄の治療で使用されることが多い。「狭窄」は、体の経路又は開口部の直径の狭小化又はくびれをいう。そのような治療においては、ステントは体管を補強し、血管系における血管形成術後の再狭窄を防止する。「再狭窄」は、血管又は心臓弁が外見上は首尾よく治療された後に(バルーン血管形成術、ステント留置術又は弁形成術などにより)、その中で狭窄が再発することをいう。
【0004】
ステントを用いた患部又は病変部の治療は、ステントの送達及び展開の両方を伴う。「送達」は、体管腔を通して、病変部など治療が必要な管中の領域にステントを導入及び輸送することをいう。「展開」は、治療領域にある管腔内でステントを拡張することに相当する。ステントの送達及び展開は、カテーテルの一方の末端周囲にステントを配置することと、カテーテルの末端を皮膚経由で体管腔中に挿入することと、体管腔中のカテーテルを所望の治療部位に進めることと、治療部位でステントを拡張することと、管腔からカテーテルを取り出すこととによって達成される。
【0005】
バルーン拡張型ステントの場合は、カテーテル上に配置されたバルーンの周囲にステントを搭載する。ステントを搭載することは、ステントをバルーン上に圧縮又は圧着することを典型的に伴う。次に、バルーンを膨らませることによって、ステントを拡張する。次いで、バルーンをしぼませて、カテーテルを回収してよい。自己拡張型ステントの場合は、引戻し可能な鞘又はカバーなどの拘束部材を介してステントをカテーテルに固定し得る。ステントが体の所望の部位にあるときに鞘を回収してよく、これによりステントを自己拡張させる。
【0006】
ステントは、いくつかの機械的要件を満足させることができなくてはならない。まず、ステントは、管壁を支持する際にステントにかかる構造的荷重、すなわち放射方向の圧縮力に耐える能力がなくてはならない。したがって、ステントは、放射方向の適切な強度を備えていなくてはならない。ステントが放射方向の圧縮力に抵抗する能力である放射方向の強度は、ステントの円周方向周辺での強度及び剛性によるものである。したがって、放射方向の強度及び剛性は、輪状又は円周方向の強度及び剛性と説明することもできる。
【0007】
ステントは、一旦拡張されたら、心臓の拍動によって生じる繰返し荷重など、ステント上に加わるようになると考えられる多様な力にかかわらず、その耐用年数にわたってその大きさ及び形状を適切に維持しなくてはならない。ここでいう生分解性ステントの耐用年数は、管の反動及び負のリモデリングを防止するために管を支持するのに必要となる時間の長さのことである。例えば、放射方向の力は、ステントを内向きに反動させる原因になりやすい。一般に、反動は最小化することが望ましい。加えて、ステントは、圧着、拡張及び繰返し荷重を許容するための十分な柔軟性を備えていなくてはならない。長軸方向の柔軟性は、蛇行している管路を通ってステントを操作できるようにするために、又、直線状でないこともあれば屈曲部下にあることもある展開部位にステントを適合させることを可能にするために重要である。最後に、ステントは、管の有害反応を一切誘発しないように、生体適合性でなければならない。
【0008】
ステントの構造は、当技術分野で支柱又はバーアームと呼ばれることの多い相互連結する構造要素のパターン又は網状構造を含む足場から典型的に成る。この足場は、円筒形状に巻かれた、材料のワイヤー、チューブ又はシートから形成できる。他の実施形態では、足場は、機械加工により、又は管材からパターンをカットすることにより形成することもできる。足場は、ステントを放射方向に圧縮(圧着が可能なように)及び放射方向に拡張(展開が可能なように)できるように設計される。従来のステントは、パターンの個別の構造要素が互いに対して動き合うことによって、拡張及び収縮できるようになっている。
【0009】
又、薬剤ステントは、金属製又はポリマー製の足場のいずれかの表面を、活性又は生物活性のある作用剤又は薬剤を含むポリマー担体でコーティングすることによって作製し得る。又、ポリマー製の足場は、活性作用剤又は活性薬剤の担体としても機能し得る。
【0010】
さらに、ステントは、生分解性であることが望ましいと考えられる。多くの治療用途では、例えば管開通性の維持及び/又は薬剤送達といった、意図されたステントの機能が達成されるまでの限られた期間中、ステントは体内に存在する必要があると考えられる。したがって、生体吸収性ポリマーなどの生分解性、生体吸収性及び/又は生体侵食性の材料から作製されるステントは、その臨床上の必要性がなくなった後にだけ完全に侵食されるように構成されるべきである。
【0011】
ステントなど、生分解性ポリマー製の埋込み型医療器具に伴う潜在的な問題としては、靭性が不十分なことと、分解速度が遅いこととが挙げられる。
【0012】
[発明の概要]
本発明の多様な実施形態は、生体吸収性ポリマー複合材料から作製された本体を備えるステントであって、このポリマー複合材料が、生理的条件下でガラス質であるマトリックスのポリマー内に分散された高靭性ポリマーを含み、この高靭性ポリマーが生理的条件下で複合材料の破断靭性を高める、ステントを含む。
【0013】
本発明のさらなる実施形態は、生体吸収性ポリマー複合材料から形成された複合材料層を備えるステントであって、このポリマー複合材料が、生理的条件下でガラス質であるマトリックスのポリマー内に分散された高靭性ポリマーを含み、この高靭性ポリマーが生理的条件下で複合材料の破断靭性を高める、ステントを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】ステントの外観を示す図である。
【図1B】図1Aに示したステントの構造要素の切断面を示す図である。
【図2】図1Bに示した切断面の拡大概略図である。
【図3】支柱の軸方向の断面を示す図であり、足場又は本体を覆うコーティングを示してある。
【図4】管腔側のステント本体層を覆う反管腔側の複合材料層を備えた支柱の、例示的な軸方向の断面を示す図である。
【0015】
[発明の詳細な説明]
本発明の多様な実施形態は、分散ポリマー相を含むポリマー−ポリマー複合材料から少なくとも一部分が作製されたステントを含む。分散相は、複合材料の靭性を高める傾向がある。
【0016】
本発明の実施形態は、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、多様な体管腔又は開口部のための他の拡張型管状器具を非限定的に含む、埋込み型医療器具に関する。このような器具は、治療剤の局所送達用に設計できる。薬剤を施した埋込み型医療器具は、治療剤を含有するコーティング材で器具又は基材をコーティングすることにより構成できる。器具の基材が治療剤を含有していてもよい。
【0017】
図1Aは、ステント100の外観を示すものである。いくつかの実施形態では、ステントは、相互連結する構造要素105のパターン又は網状構造を含んでいてもよい。ステント100は、チューブ(図示せず)から形成されていてもよい。構造要素105のパターンは、さまざまなパターンをとることができる。器具の構造パターンは、事実上任意のデザインのものであってよい。本明細書で開示する実施形態は、図1Aに例示するステント又はステントパターンに限定されない。この実施形態は、他のパターン及び他の器具に容易に適用可能である。パターンの構造のバリエーションは、事実上無限である。ステント100などのステントは、レーザーカット又は化学エッチングなどの手法を用いてパターンを形成することにより、チューブから作製してもよい。
【0018】
埋込み型医療器具は、生分解性、生体吸収性、生体安定性のポリマー又はその組合せから、部分的又は完全に作製できる。埋込み型医療器具の作製における使用のためのポリマーは、生体安定性、生体吸収性、生分解性又は生体侵食性であってよい。生体安定性は、生分解性ではないポリマーをいう。生分解性、生体吸収性及び生体侵食性という用語は互換的に使用され、血液などの体液に曝露されると完全に分解及び/又は侵食される能力があり、体が徐々に再吸収、吸収及び/又は排除できるポリマーをいう。ポリマーの分解及び吸収の過程は、例えば、加水分解及び代謝過程によって生じ得る。
【0019】
ステントは、使用中、応力下にあるのが通常である。「使用」には、製造、組立て(例えば、バルーン上にステントを圧着させること)、体管腔を通した治療部位へのステントの送達、治療部位でのステントの展開、及び展開後の治療が含まれる。基礎を成す足場又は基材及びコーティングは両方とも応力下にあり、そのため基材及びコーティングにおいてひずみが生じる。とりわけ、ステントの構造の限局的部分は、屈曲要素の先端領域などでの相当な変形に耐え、ステントの圧着中、拡張中及び拡張後に比較的高い応力及びひずみを受ける。
【0020】
上で論考したように、ステントの本体又は足場にとっては、管腔を支持できるように放射方向の強度及び剛性が高いことが重要である。ガラス質であるか又は体温を超えるTgを有するいくつかの結晶性若しくは半結晶性のポリマーは、その強度及び剛性から、ステント材料としてとりわけ魅力的である。ステントなどの埋込み型医療器具に適していると考えられるこのようなポリマーの中には、潜在的な短所を有するものもある。そのようなポリマーの短所の1つは、その靭性が、とりわけステント用途での使用にとって望ましい靭性より低い可能性があることである。例えば、ポリ(Lラクチド)(PLLA)などのポリマーは、曲がりにくく強度があるが、生理的条件下で脆い傾向がある。生理的条件は、インプラントがヒトの体内で曝露される条件をいう。生理的条件としては、およそ37℃のヒトの体温が挙げられるが、これに限定されない。このようなポリマーは、破損前に塑性変形がほとんど又は全く生じないこうした条件下で脆性破断メカニズムを呈することがある。結果として、このようなポリマーで作製されたステントは、ステントの使用範囲としては、靭性が不十分である可能性がある。
【0021】
上で論考したように、薬剤を施した、ステントなどの埋込み型医療器具は、ステントの表面を薬剤でコーティングすることにより作製できる。例えば、器具は、ステントの基材を覆って配置された、ポリマー担体中に分散された薬剤を含むコーティングを有していてよい。このようなポリマーベースのコーティングは、ステントの使用中の機械的不安定性の影響をとりわけ受けやすいと考えられる。コーティングにとってのこうした機械的不安定性としては、破断、及び、基材からの脱離、例えば剥離を挙げ得る。いくつかのポリマーは、高い変形下では靭性が不十分であるため、このような機械的不安定性の影響を受けやすいと考えられる。したがって、ポリマーベースのコーティングは、靭性が高いことと、ステントの圧着中、展開中及び展開後に生じる変形の範囲でのクラッキングに高い耐性を有することとが重要である。
【0022】
さらに、いくつかの生分解性ポリマーの分解速度は、特定のステント治療にとって望ましい速度より遅い。結果として、そのようなポリマーから作製されたステントの分解時間は、望ましい分解時間より長いことがある。例えば、PLLAなどの半結晶性ポリマーから作製されたステントの分解時間は、約2年から3年の間であることがある。治療状況によっては、例えば1年未満など、分解時間は短いほうが望ましい。
【0023】
脆いポリマーから靭性を高めたポリマー製材料を形成するための一態様は、脆いポリマーと、この脆いポリマーより高い破断靭性を有する別のポリマーとを含む複合材料を作製することによる。靭性を高めたポリマーは、脆いポリマーと混和しないこと、又は、脆いポリマーから分離相を形成することも必要である。例えば、靭性を高めたポリマーは、マトリックスのポリマー内に不連続相領域として分散されてよい。複合材料から作製されている部分にかかる応力により生じるエネルギーを分散相が吸収できるため、複合材料の破断靭性が増す。破断靭性の増加は、分散相と、連続したポリマー相との接着を強めることにより、高めることができる。相の界面間での良好なエネルギー移動を確実にするためには、相同士が十分に結合又は接着していることが重要である。Y.Wangら、Journal of Polymer Science、Part A:Polymer Chemistry、39、2001、2755〜2766ページを参照のこと。
【0024】
本発明の特定の実施形態は、生体吸収性ポリマー複合材料から作製された本体又は足場を有するステントを含む。いくつかの実施形態では、このポリマー複合材料は、マトリックスのポリマー内に分散された高靭性ポリマーを含む。この高靭性ポリマーは、連続したポリマー相である可能性があるマトリックスのポリマー内の分散相であってよい。マトリックスのポリマーは、生理的条件下でガラス質であってよい。一実施形態では、高靭性ポリマーは、ガラス質のマトリックスのポリマーより弾性率が低くてよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、ステント本体は、器具が製造されている材料とは異なる材料のコーティング又は層がまだ一切施されていない外表面を有するステントの足場を指すことがある。コーティングプロセスにより本体を製造する場合は、ステント本体は、異なる材料の任意選択の追加コーティング層を施す前の状態を指すことがある。「外表面」とは、空間的にどの方向を向いているかにかかわらず、体組織又は体液と接触している任意の表面を意味する。ステント本体は、円筒形状に巻いておいたチューブ又はシート中にパターンをレーザーカットすることにより形成されたステントの足場を指すこともある。
【0026】
いくつかの実施形態では、ステントの本体又は足場の大部分、実質的に全て、又は全てを、複合材料から作製できる。本体の実質的に全てとは、本体の90%超、95%超、又は99%超をいうことがある。
【0027】
又、マトリックスのポリマーは、高靭性ポリマーより強度及び剛性が高く、ステントが治療部位で展開される際に体管腔の壁を支持するのに必要な強度の提供を大部分又は完全に担う。そのような実施形態では、高靭性ポリマーは、生理的条件下での複合材料の破断靭性を高める。要するに、高靭性ポリマーは、ステントの使用中における亀裂の形成を抑制又は防止する。いくつかの実施形態では、分散相と、マトリックス又は連続したポリマー相との界面接着は、分散相がステントの使用中における複合材料の破断靭性を高めることができるだけ十分に強い。「使用」には、製造、組立て(例えば、バルーン上にステントを圧着させること)、体管腔を通した治療部位へのステントの送達、及び治療部位でのステントの展開が含まれる。そのような実施形態では、高靭性ポリマーの分散相とマトリックスのポリマーとの間の界面接着が十分強いため、ステントの使用中に界面上に応力が加わると、相同士の界面結合より早く高靭性ポリマーが破損する。そのような他の実施形態では、高靭性ポリマーの分散相とマトリックスのポリマーとの間の界面接着は、高靭性ポリマーの強度より強い。さらに別の実施形態では、高靭性ポリマーの分散相とマトリックスのポリマーとの間の界面接着は、高靭性ポリマーの強度の少なくとも10%である。
【0028】
図1Bは、図1Aに示したステントの支柱105の区分110の切断面を示すものである。図2は、図1Bに示した支柱の区分110の部分140の微視的な概略図を示すものである。部分140は、連続したポリマー相210内に分散された複数の不連続なポリマー相領域200を有する分散相を含む。不連続相領域は、連続したポリマー相のポリマーより靭性が高いポリマーを含む。Lは、不連続相領域200の特徴的寸法である。
【0029】
本発明のさらなる実施形態では、ステントは、マトリックスのポリマー内に分散された高靭性ポリマーを有する生体吸収性複合材料の層を含んでよい。そのような実施形態では、複合材料層は、その層内に薬剤又は活性剤を組み込むことで、治療的なものとすることができる。いくつかの実施形態では、複合材料層は、ステント本体の少なくとも一部の上に、又はそれを覆って形成できる。ステント本体は、ポリマー製、金属製又はその組合せであってよい。高靭性ポリマーは、生理的条件下での複合材料の破断靭性を高め、それにより、ステントからの複合材料層の破断及び脱離が抑制又は防止される。
【0030】
いくつかの実施形態では、複合材料層はコーティング層であり、この層はステントの本体又は足場の上に形成してもよい。ステント本体は、ステントが展開される際の体管腔の機械的支持を大部分又は完全に担う。一実施形態では、ステントの本体又は足場は、ステント本体が体管腔に対して必要な機械的支持を提供できるようにするポリマーで構成できる。一実施形態では、ステントの本体又は足場は、強度の高い、ガラス質のポリマーから成る。
【0031】
上述のように、いくつかの実施形態では、ステントの本体又は足場も複合材料から成る。この実施形態では、ステント本体の複合材料は、複合材料のコーティング層より強度及び剛性が高くてよい。コーティング層は、ステント本体の複合材料より高い重量パーセントの高靭性ポリマーを有してよい。特定の実施形態では、高靭性ポリマーは、ステント本体を覆う層の複合材料の全て又は大部分であってよい。
【0032】
特定の実施形態では、複合材料層は、ステントの本体又は足場の全て又は一部の上にあってよい。図3は、支柱300の軸方向の断面を示すものであり、ステントの足場又は本体310を覆うコーティング305を示してある。コーティング305は、本体310の管腔側表面315、反管腔側表面320及び側壁表面325の上にある。別の実施形態では、複合材料層は、薬剤を備えたポリマーのコーティング層を覆って配置された、トップコート層であってよい。このトップコート層は、薬剤を備えたポリマー層からの薬剤放出を制御するために使用できる。
【0033】
さらなる実施形態では、ステントは、反管腔側の、管腔側の、又は反管腔側及び管腔側の両方の複合材料層を有する構造要素を含んでよい。一実施形態では、ステントは、体管腔の機械的支持を提供する能力があるステント本体のポリマー層を覆う反管腔側の複合材料層を有する。別の実施形態では、ステントは、管腔側の複合材料層及び反管腔側のガラス質のポリマー層を有する。さらに別の実施形態では、ステントは、反管腔側の複合材料層と管腔側の複合材料層との間にステント本体層を備える、管腔側及び反管腔側の複合材料層を有する。ステント本体層は、ガラス質のポリマー又は複合材料の層であってよく、その層は、反管腔側/管腔側の複合材料層とは異なっていてよい。そのような実施形態では、ステント本体のポリマー層は、ステントが展開される際の体管腔に対する機械的支持の提供を大部分又は完全に担う。図4は、ステント本体層410の管腔側表面415を覆う複合材料層405を有する支柱400の例示的な軸方向の断面を示すものである。図5は、管腔側の複合材料層505と反管腔側の複合材料層515との間にステント本体層510を有する支柱500の例示的な軸方向の断面を示すものである。
【0034】
いくつかの実施形態では、複合材料のマトリックスのポリマーは、約30%を超える結晶化度を有する結晶性又は半結晶性のポリマーである。例示的なマトリックスのポリマーとしては、PLLA、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(Lラクチド−co−D,Lラクチド)、ポリ(Lラクチド−co−グリコリド)、ポリ(Lラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(Lラクチド−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(エステルアミド)(PEA)、又はそのコポリマーが挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、高靭性ポリマーは、生理的条件下でゴム状又はエラストマー状の性質を呈する。「エラストマー状」又は「ゴム状」のポリマーは、変形の範囲の全て又は大部分を通じて弾性変形を呈するポリマーをいう。そのようなエラストマー性は、ステントの使用中において、複合材料に高い破断靭性を与える。いくつかの実施形態では、高靭性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、体温未満である。又、高靭性ポリマーは、完全又は実質的に非晶質であってよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、高靭性ポリマーは、ゴム状、生体吸収性又は生分解性、生体適合性のポリマーである。生理的条件下でエラストマー状又はゴム状である例示的な生分解性ポリマーとしては、ポリ(コハク酸ブチレン)(PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)(PHB)、脂肪族のポリ無水物、ポリオルトエステル、及びポリジオキサノン(PDO)が挙げられるが、これらに限定されない。PBSの例示的な市販の実施形態は、東京都の昭和高分子株式会社製のBionolle(登録商標)3000である。他の実施形態では、高靭性ポリマーは、上述のポリマー又は他のゴム状ポリマーのランダムコポリマー又は交互コポリマーであってよい。
【0037】
複合材料中の高靭性ポリマーの重量パーセントを調節して、所望の、又は最適な程度の破断靭性を得ることができる。とりわけ、高靭性ポリマーの重量パーセントを選択して、圧着、展開又はその両方に際してのステント本体若しくはコーティング層中における亀裂を選択された最大限界数にするか、又は亀裂をゼロにすることができる。又、高靭性ポリマーの重量パーセントを選択して、圧着、展開又はその両方に際してコーティング層が全く又は実質的に全く脱離しないようにすることもできる。又、高靭性ポリマーの量は、所望の、又は必要とされる、ステントの放射方向の強度により制限されることがある。いくつかの実施形態では、高靭性ポリマーは、複合材料の少なくとも0.1、1、3、5、10、20、30又は40重量%であってよい。
【0038】
ステントの本体又は足場の例示的な実施形態は、PLLA内に分散されたPBSのブレンドを含む複合材料から作製できる。PBSの重量パーセントは、少なくとも20、40、60、80重量%又は80重量%超であってよい。ステント本体用のコーティングの例示的な実施形態は、PDLA内に分散され、PBSの重量パーセントが少なくとも20、40、60、80重量%又は80重量%超である、PBSのブレンドである。
【0039】
さらに別の実施形態では、高靭性ポリマーは、エラストマー状の単位及びガラス質のポリマー単位を含むランダムコポリマー又は交互コポリマーである。他の実施形態では、高靭性ポリマーは、エラストマー状のブロック及びガラス質のポリマーのブロックを含むブロックコポリマーであってよい。エラストマー状及びガラス質のポリマーの単位又はブロックの相対的な重量パーセントは、弾性率、Tg及びエラストマー性といったポリマーの所望の特性を得るために調節してよい。エラストマー状の単位又はブロックの重量パーセントがポリマー中で増すにつれ、高靭性ポリマーの弾性率が低下し、柔軟性が高まると期待される。又、エラストマー状の単位又はブロックの重量パーセントは、高靭性ポリマーが生理的条件下でエラストマー状であるように、及び/又は高靭性ポリマーのTgが体温未満であるように調節してよい。
【0040】
例示的なエラストマー状の単位としては、コハク酸ブチレン(BS)、カプロラクトン(CL)、トリメチルカーボネート(TMC)、4−ヒドロキシブチレート(HB)及びジオキサノン(DO)が挙げられる。例示的なガラス質のポリマー単位としては、Lラクチド(LLA)及びグリコリド(GA)が挙げられる。高靭性ポリマーとして使用できる例示的なブロックコポリマーとしては、こうしたエラストマー状の単位のブロック及びこうしたガラス質の単位のブロックを挙げることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ランダム、交互又はブロックの、高靭性コポリマーは、マトリックスのポリマーと同じガラス質の単位又はブロックを有していてよい。例えば、マトリックスのポリマーはPLLAであってよく、高靭性ポリマーはP(LLA−co−TMC)であってよい。そのような実施形態では、マトリックスのポリマーへの分散相の接着は、ガラス質のポリマーとマトリックスのポリマーとの相溶性により、強めることができる。いくつかの実施形態では、高靭性ポリマーのブロック又は部分は、マトリックスのポリマー中に相分離できる。そのような相分離は、分散相と連続相との界面接着を強めると考えられる。
【0042】
又、高靭性ポリマーのガラス質及びエラストマー状の単位又はブロックの重量パーセントは、高靭性ポリマーがマトリックスのポリマーと混和しないように調節できる。いくつかの実施形態では、エラストマー状の単位は、高靭性コポリマーの少なくとも0.1、1、3、5、10、20、30、40重量%又は40重量%超であってよい。
【0043】
例示的な実施形態では、ステント本体は、分散された70/30 P(LLA−co−TMC)(LLAが70重量%及びTMCが30重量%)を有するPLLAマトリックスから成っていてよい。ステントの例示的なコーティング又は外層は、分散された70/30 P(DLA−co−TMC)(DLAが70重量%及びTMCが30重量%)を有するポリ(D,Lラクチド)(PDLA)マトリックスであってよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、分散相とマトリックス又は連続したポリマー相との接着は、複合材料中に相溶化剤を含ませることにより高めることができる。一般に、「相溶化剤」は、非混和性のポリマーブレンド又は複合材料の特性を変化させる界面剤をいい、均一なブレンドの形成を容易にし、相同士の界面接着を強化する。相溶化は、非混和性ポリマーブレンド中の界面特性が変化する過程をいい、この過程を経た結果、中間相(相の間の濃度勾配領域)が形成され、形態が安定化する。いくつかの実施形態では、相溶化剤は、マトリックスのポリマーと混和するブロックと、分散相の高靭性ポリマーと混和するブロックとを含むブロックコポリマーであってよい。そのような一実施形態では、相溶化剤は、マトリックスのポリマーのガラス質のブロックと高靭性ポリマーのエラストマー状のブロックとを含んでよい。例示的な実施形態では、マトリックスのポリマーはPLLAであってよく、高靭性ポリマーはPTMCであってよく、又、相溶化剤はPLLA−b−PTMCであってよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、高靭性ポリマーの分解速度は、マトリックスのポリマーより速くてよい。上に示したように、PLLAなどのポリマーの分解速度は、特定のステント治療にとって望ましい分解速度より遅くてよい。遅い分解速度は、少なくとも部分的にはマトリックスのポリマーの結晶性に起因する。高靭性ポリマーの分解速度が速まるということは、結晶化度が低下したか、又は、分散相の非晶質構造の比率(%)が高まったことが少なくとも部分的に原因である可能性がある。非晶質構造を通る流体の拡散速度は、結晶性構造を通る場合より一般に速い。分解速度が速まっている高靭性ポリマーは、分散相及びマトリックスのポリマー相内の透水性及び含水量を増加させる。透水性及び含水量が増加することで、複合材料の分解速度が増す。その結果、ステント本体又はコーティングの分解時間が短縮される。
【0046】
器具が応力下に置かれているときは、構造要素を通って破断が広がり始める際に分散相がエネルギーを吸収する傾向があると考えられる。要するに、連続相を通る亀裂伝播は、その後低減し、阻害され、又はなくなると考えられる。その結果、ポリマー複合材料、ひいてはステント本体又はコーティングの破断靭性が高まる傾向がある。
【0047】
一般に、分散相は、靭性の向上を容易にするために、ポリマーマトリックス全体にわたって均一又は実質的に均一に分散されることが望ましい。分散相が多く分散されるほど、靭性は大きく向上する。又、靭性の向上は、不連続相領域の大きさに関係がある。不連続相の特徴長は、1nmから100nm、100nmから500nm、500nmから1,000nm、又は1,000nm超であってよい。
【0048】
特定の実施形態では、高靭性ポリマーとマトリックスのポリマーとの複合材料は、溶液ブレンド、溶融ブレンド又はその組合せにより形成できる。いくつかの実施形態では、高靭性ポリマー及びマトリックスのポリマーは、押出機などの混合装置中で溶融ブレンドできる。押出機の代表的な例としては、単軸押出機、同方向回転及び異方向回転の噛合せ型二軸押出機、並びに他の捏加型多軸押出機が挙げられるが、これらに限定されない。押出機中での混合は、高靭性ポリマーがマトリックスのポリマー内に均一又は比較的均一に分散するだけ十分なものであってよい。又、混合により、不連続相領域の大きさも低下する可能性がある。
【0049】
上に示したように、ステント本体は、チューブ又はシートから形成できる。いくつかの実施形態では、チューブ又はシートは、押出機又は射出成形を用いて複合材料から形成できる。シートは、巻くか又は接合させてチューブを形成できる。次に、チューブにステントパターンをレーザー機械加工することにより、複合材料チューブからステントの本体又は足場を形成できる。
【0050】
さらなる実施形態では、ステントの本体又は足場を覆う複合材料層は、ステントの本体又は足場をコーティングすることにより形成できる。そのような実施形態では、コーティング層は、コーティング材料をステントの本体に塗布することにより形成してよい。コーティング材料は、溶媒中に溶解されたマトリックスのポリマー及び高靭性ポリマーを含む、ポリマー溶液であってよい。この溶液は、溶液中に分散された薬剤をさらに含んでよい。コーティング材料は、コーティング材料中にステントを浸漬することにより、材料をステント上にスプレーすることにより、又は当技術分野で公知の他の方法により、ステント本体に塗布してよい。次に、例えば蒸発により、溶液中の溶媒を除去して、薬剤を染み込ませたポリマーコーティングをステント表面上に残す。
【0051】
別の実施形態では、反管腔側の、管腔側の、又は、管腔側及び反管腔側の両側の複合材料層を備えたガラス質のポリマー層を有するステントを、複合材料層を備えたチューブから形成してもよい。そのようなチューブは、複合材料ポリマーと、機械的支持を提供する層を形成すると考えられるポリマーとを共押出しすることにより、形成できる。ステントをチューブからカットして、層状のステントを形成できる。押出成形の間に活性剤又は活性薬剤を複合材料層中に含ませることができる。いくつかの実施形態では、ポリマー溶媒溶液は、活性剤又は活性薬剤が分解する温度未満の温度で押し出すことができる。例えば、80℃未満又は100℃未満の温度で共押出しを実施できる。
【0052】
代替的な実施形態では、反管腔側又は管腔側の層は、ステント本体の反管腔側又は管腔側の表面上に選択的にコーティングできる。一実施形態では、ステントの特定の標的部分のみに多様な物質を施す、制御堆積システム(controlled deposition system)を用いることができる。そのようなシステムの代表的な例及びそれを使用する方法は、Castroらに交付された米国特許第6,395,326号明細書に記載されている。或いは、管腔側又は反管腔側の表面は、反管腔側又は管腔側の表面をそれぞれ選択的にコーティングするためのコーティングプロセスの間に被覆できる。
【0053】
一般に、本発明の実施形態で使用し得るポリマーの代表的な例としては、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(D,Lラクチド−co−グリコリド)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L乳酸)、ポリ(Lラクチド)、ポリ(D,L乳酸)、ポリ(Lラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,Lラクチド)、ポリ(Lラクチド−co−D,Lラクチド)、ポリ(Lラクチド−co−カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエチレンアミド、アクリル酸ポリエチレン、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)、コポリ(エーテル−エステル)(例えばPEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸など)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン及びエチレン−α−オレフィンコポリマー、アクリルポリマー及びポリアクリレート以外のアクリルコポリマー、ハロゲン化ビニルのポリマー及びコポリマー(ポリ塩化ビニルなど)、ポリビニルエーテル(ポリビニルメチルエーテルなど)、ハロゲン化ポリビニリデン(ポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物(ポリスチレンなど)、ポリビニルエステル(酢酸ポリビニルなど)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(ナイロン66及びポリカプロラクタムなど)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨントリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル並びにカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明の実施形態での使用に特に好適と考えられるポリマーの追加的な代表例としては、エチレンビニルアルコールコポリマー(一般名のEVOH又は商品名のEVALで一般に知られている)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(例えば、Solvay Solexis PVDF、ニュージャージー州Thorofareから入手可能なSOLEF21508)、ポリフッ化ビニリデン(別名KYNARとして知られ、ATOFINA Chemicals、ペンシルベニア州Philadelphiaから入手可能)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0055】
本発明を目的として、以下の用語及び定義が適用される。
【0056】
「ガラス転移温度」、すなわちTgは、ポリマーの非晶質領域が大気圧下で、脆いガラス状態から、変形可能な、又は延性のある固体の状態に変化する温度である。言い換えれば、Tgは、ポリマーの鎖において部分運動開始が生じる温度に相当する。非晶質又は半結晶性のポリマーが上昇する温度に曝露されると、温度が上がるにつれ、ポリマーの膨張係数及び熱容量が両方とも増し、分子運動が活発化したことを示す。温度が上がるにつれ、試料中の実際のモル体積は一定のままで膨張係数がそのように高くなるということは、系に関する自由体積が増したこと、ひいては分子が運動する自由度が増したことを示している。熱容量の増加は、運動を通じて熱放散が増すことに相当する。所与のポリマーのTgは、加熱速度に依存することがあり、又、ポリマーの熱履歴に影響を受けることもある。さらに、ポリマーの化学構造は、運動性に変化をもたらすことによりガラス転移に大きく影響する。
【0057】
「応力」は、平面内の小さな面積を通して作用する力におけるような、単位面積当りの力をいう。応力は、平面に対する垂直な成分と平行な成分とに分けることができ、それぞれ垂直応力及びせん断応力と呼ばれる。真応力は、力と面積とを同時に測定した場合の応力を表す。引張試験及び圧縮試験に適用される公称応力は、元のゲージ長で割った力である。
【0058】
「強度」は、破断前に材料が耐えると考えられる、軸方向の最大応力をいう。終局強度は、試験中の最大負荷荷重を元の断面積で割ることで算出する。
【0059】
「弾性率」は、材料に加えられた単位面積当りの応力又は力の成分を、加えられた力によって生じた、加えられた力の軸方向のひずみで割った比率と定義し得る。例えば、材料は、引張弾性率及び圧縮弾性率の両方を有する。比較的高い弾性率を有する材料は、曲がりにくい又は硬い傾向がある。逆に、比較的高い靭性を有する材料は、柔軟な傾向がある。材料の弾性率は、材料の分子組成及び分子構造、材料の温度、変形の量、並びにひずみ速度又は変形速度に依存する。例えば、ポリマーは、そのTg未満では、弾性率が高いと脆い傾向がある。ポリマーの温度がそのTg未満からTg超に上昇するにつれ、その弾性率は低下する。
【0060】
「ひずみ」は、一定の応力又は荷重下で材料において生じる伸び又は圧縮の量をいう。
【0061】
「伸び」は、材料における長さの増加と定義することができ、応力下にある際に生じる。伸びは、元の長さの比率(%)として典型的に表される。
【0062】
「靭性」は、破断前に吸収されるエネルギー量、又は同じことであるが、材料を破断させるのに必要な仕事量である。靭性の1つの尺度は、ひずみゼロから破断時点のひずみに至る応力−ひずみ曲線下の面積である。要するに、脆い材料は、比較的低い靭性を有する傾向がある。
【0063】
「溶媒」は、1つ若しくは複数の他の物質を溶解若しくは分散させ、又は、そうした物質(複数も)を少なくとも部分的に溶解若しくは分散させて、選択された温度及び圧力下で分子サイズ若しくはイオンサイズのレベルで均一に分散された溶液を形成する能力を有する物質として定義される。溶媒は、選択された温度及び圧力下、例えば周囲温度及び周囲圧力下で、溶媒1ml中にポリマーを少なくとも0.1mg、より限定すれば1ml中に少なくとも0.5mg溶解させる能力を有するべきである。
【0064】
本発明の特定の実施形態を示し、記載してきたが、本発明から逸脱せずにそのより広範な態様において変更及び改変が成され得ることは、当業者には自明であろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような変更及び改変を全て、本発明の真の精神及び範囲内に属するものとして、その範囲内に包含すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体吸収性ポリマー複合材料から作製された本体を備えるステントであって、前記ポリマー複合材料が、生理的条件下でガラス質であるマトリックスのポリマー内に分散された高靭性ポリマーを含み、前記高靭性ポリマーが生理的条件下で前記複合材料の破断靭性を高める、ステント。
【請求項2】
前記高靭性ポリマーが、前記マトリックスのポリマー内に分散相を形成する、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記高靭性ポリマーが生理的条件下でエラストマー状である、請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記高靭性ポリマーが、エラストマー状の単位とガラス質のポリマー単位とを含むランダムコポリマーである、請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記高靭性ポリマーが、エラストマー状の単位とガラス質のポリマー単位とを含むブロックコポリマーである、請求項1に記載のステント。
【請求項6】
前記高靭性ポリマーの生理的条件下でのTgが37℃未満である、請求項1に記載のステント。
【請求項7】
前記分散された高靭性ポリマーと前記マトリックスのポリマーとの間の界面接着が十分強いため、使用中に前記ステント上に応力が加わると、前記分散された高靭性ポリマーと前記マトリックスのポリマーとの間の界面結合より早く前記高靭性ポリマーが破損する、請求項1に記載のステント。
【請求項8】
前記分散された高靭性ポリマーと前記マトリックスのポリマーとの間の前記界面接着が、前記高靭性ポリマーの強度より強い、請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記エラストマー状の単位が、BS、CL、TMC、HB及びDOから成る群から選択される、請求項4に記載のステント。
【請求項10】
前記ガラス質のポリマー単位が、前記マトリックスのポリマーの単位を含む、請求項4に記載のステント。
【請求項11】
前記高靭性ポリマーが、PBS、PCL、PTMC、PDO、及びそのコポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項12】
前記マトリックスのポリマーが、PLLA、PGA、PEA、及びそのコポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載のステント。
【請求項13】
生体吸収性ポリマー複合材料から形成された複合材料層を備えるステントであって、前記ポリマー複合材料が、生理的条件下でガラス質であるマトリックスのポリマー内に分散された高靭性ポリマーを含み、前記高靭性ポリマーが生理的条件下で前記複合材料の破断靭性を高める、ステント。
【請求項14】
前記高靭性ポリマーが生理的条件下でエラストマー状である、請求項13に記載のステント。
【請求項15】
前記高靭性ポリマーが、エラストマー状の単位とガラス質のポリマー単位とを含むランダムコポリマーである、請求項13に記載のステント。
【請求項16】
前記エラストマー状の単位が、BS、CL、TMC、HB及びDOから成る群から選択される、請求項15に記載のステント。
【請求項17】
前記ガラス質のポリマー単位が、前記マトリックスのポリマーの単位を含む、請求項15に記載のステント。
【請求項18】
前記高靭性ポリマーが、PBS、PCL、PTMC、PDO、及びそのコポリマーから成る群から選択されるポリマーを含む、請求項13に記載のステント。
【請求項19】
前記マトリックスのポリマーが、PLLA、PGA、PDLA、及びそのコポリマーから成る群から選択されるポリマーで構成される、請求項13に記載のステント。
【請求項20】
前記複合材料層が生体吸収性ポリマー製のステント本体の上にある、請求項13に記載のステント。
【請求項21】
前記複合材料層が、ステント本体の上のコーティング層を含む、請求項13に記載のステント。
【請求項22】
前記複合材料層が、ステント本体の上の反管腔側の層を含む、請求項13に記載のステント。
【請求項23】
前記複合材料層が金属製本体の上にある、請求項13に記載のステント。
【請求項24】
前記複合材料層が活性剤を含む、請求項13に記載のステント。
【請求項25】
前記活性剤が、抗炎症剤、抗増殖剤又はその組合せを含む、請求項24に記載のステント。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−543595(P2009−543595A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519521(P2009−519521)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/015858
【国際公開番号】WO2008/008416
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】