分析物モニタシステムおよびその使用方法
【課題】 患者に電気化学センサを挿入するための挿入キットを提供する。
【解決手段】 挿入キットは、一部が前記電気化学センサを挿入する間前記センサを支持するのに適合した鋭く堅い平面構造、または鋭く硬いUまたはV字型構造を有するインサータと、前記電気化学センサおよび前記インサータを受入れるように構成された開口部と、前記インサータおよび電気化学センサを患者の体内に推進する推進機構と、前記センサを前記患者の体内に残したまま前記インサータを前記患者の体内から除去するための引き戻し機構とを有する挿入銃とを備える。
【解決手段】 挿入キットは、一部が前記電気化学センサを挿入する間前記センサを支持するのに適合した鋭く堅い平面構造、または鋭く硬いUまたはV字型構造を有するインサータと、前記電気化学センサおよび前記インサータを受入れるように構成された開口部と、前記インサータおよび電気化学センサを患者の体内に推進する推進機構と、前記センサを前記患者の体内に残したまま前記インサータを前記患者の体内から除去するための引き戻し機構とを有する挿入銃とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、グルコースまたはラクテートといった分析物の生体内モニタ装置および方法に関する。更に詳しくは、分析物レベルに関して患者に情報を提供するために電気化学センサを使用する分析物の生体内モニタ装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の個人において、グルコースまたはラクテートもしくは酸素のような他の分析物のレベルのモニタが健康に非常に重要である。高または低レベルのグルコースまたは他の分析物が有害効果を有する場合がある。グルコースのモニタは、糖尿病患者に特に重要である。というのは、糖尿病患者は、体内のグルコースレベルを下げるためにインシュリンが必要な時期、または体内のグルコースのレベルを上げるためにグルコースがさらに必要である時期を決定しなければならないからである。
【0003】
個人で血糖レベルをモニターするために多くの糖尿病患者によって使用されている従来の技術は、定期的な血液の採取、その血液の試験片への塗布および比色定量、電気化学または光度検出による血糖レベルの測定を含む。この技術では、体内のグルコースレベルの持続的または自動的モニタができず、通常、定期的に手動で行わなければならない。グルコースのレベルの検査での一貫性は、個人によって大きく異なるという問題がある。多くの糖尿病患者は、定期的な検査を不便であると感じ、時にはグルコースレベルの検査を忘れたり、適切な検査をするのに十分な時間がなかったりする。さらに、検査に伴う痛みを避けたい患者もいる。これらの状況の結果、高血糖症または低血糖症が発現する場合がある。個人のグルコースレベルを持続的または自動的にモニターする生体内グルコースセンサにより、個人は自分のグルコースまたは他の分析物レベルのモニタをより簡単に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第09/034,372号明細書
【特許文献2】米国特許第5,593,852号明細書
【特許文献3】米国特許出願第09/034,422号明細書
【特許文献4】米国特許出願第09/034,422号明細書
【特許文献5】米国特許第5,262,035号明細書
【特許文献6】米国特許第5,264,104号明細書
【特許文献7】米国特許第5,264,105号明細書
【特許文献8】米国特許第5,320,725号明細書
【特許文献9】米国特許第5,593,852号明細書
【特許文献10】米国特許第5,665,222号明細書
【特許文献11】米国特許出願第08/540,789号明細書
【特許文献12】国際特許出願第US98/02403号明細書
【特許文献13】米国特許第5,593,852号明細書
【特許文献14】米国特許出願第08/540,789号明細書
【特許文献15】国際特許出願第US98/02403号明細書
【特許文献16】米国特許第5,264,104号明細書
【特許文献17】米国特許第5,356,786号明細書
【特許文献18】米国特許第5,262,035号明細書
【特許文献19】米国特許第5,320,725号明細書
【特許文献20】米国特許第5,665,222号明細書
【特許文献21】米国特許出願第08/540,789号明細書
【特許文献22】国際特許出願第US98/02403号明細書
【特許文献23】米国特許第5,593,852号明細書
【特許文献24】米国特許第5,262,305号明細書
【特許文献25】米国特許第5,356,786号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血液流または間質液中のグルコースなどの分析物の持続的または自動的モニターのための種々の装置が開発されている。これらの装置の多くは、患者の血管または皮下組織に直接埋め込む電気化学センサを用いている。しかし、これらの装置は、再現性をもって低コストで大量生産することが困難である場合が多い。さらに、これらの装置は、通常、大きく、嵩高く、かつ/または柔軟性がなく、多くは、患者が自分の活動を制限しない限り、病院または医院などの制御された医療施設外では効果的な使用が不可能である。
【0006】
装置には、患者の皮膚上または近傍に位置し、センサを適所に保持するため患者に取付けられるセンサガイドを備えているものもある。これらのセンサガイドは一般に嵩高く、自由な動作を許さない。更に、センサガイドまたはセンサは、センサからの信号をアナライザに送るため、他の装置にセンサを接続するためのケーブルやワイヤを備えている。センサガイドのサイズや、ケーブルおよびワイヤの存在は、毎日の使用を目的としたこれら装置の使用上の便利性を妨げている。センサを作動させることができ、患者の動作や活動を実質的に制限することなくアナライザに信号を提供することのできる小型でコンパクトな装置に対する需要が存在する。
【0007】
グルコースなどの分析物のレベルの持続的または自動的生体内モニタ用として広範囲に用いることができるセンサの設計において考慮すべき重要なことは、患者にとっての快適感およびセンサが埋め込まれている期間中に行うことができる活動の範囲である。患者の正常の活動を妨げることなく、グルコースなどの分析物のレベルを持続的にモニターすることができる小さく異物感のない装置が必要とされている。分析物の持続的および/または自動的モニタにより、分析物のレベルが閾値または閾値近傍になると患者に知らせることができる。たとえば、分析物がグルコースの場合、モニタ装置は、現在高血糖症または低血糖症であること、または高血糖症または低血糖症の恐れがあることを患者に知らせるような構造になっているかもしれない。それにより患者は適切な行動をとることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、本発明は、皮下埋込可能なセンサを用いて分析物レベルを生体内において持続的および/または自動的にモニターするための方法および装置に関する。これらの装置の多くは、小さく、使用中異物感のないものであり、広範囲の活動を可能にするものである。一つの実施形態は、皮膚上への配置に適合した筐体を有するセンサ制御装置である。この筐体は、電気化学センサの一部を収納するのにも適合している。センサ制御装置は、センサの二以上のコンタクトパッドに接続するように構成され筐体上に配された二以上の導電コンタクトを備えている。筐体内には送信機が配されており、前記センサを使用して得られたデータを送信するための複数の導電コンタクトに連結されている。センサ制御装置はまた、例えば、皮膚への付着させるための接着剤、取付け装置、レシーバ、処理回路、電源装置(例えば、電池)、警報装置、データ記憶装置、監視回路、および測定回路のような各種の選択自由な構成要素を備えていてもよい。下記に、その他の選択自由な構成要素について説明する。
【0009】
本発明における別の実施の形態は、上述したセンサ制御装置を含むセンサ組立品である。センサ組立品は、少なくとも一つの作用電極と、その作用電極または複数の電極に接続された少なくとも一つのコンタクトパッドとを有するセンサも備えている。センサは、例えば、対向電極、対向/基準電極、基準電極、および温度プローブといった選択自由な構成要素を備えていてもよい。以下、他の構成要素およびセンサの付加機能を説明する。
【0010】
本発明の更なる実施の形態は、上記センサ制御装置を備えた分析物モニタシステムである。分析物モニタシステムは、少なくとも一つの作用電極と、その作用電極または複数の電極に接続された少なくとも一つのコンタクトパッドとを有するセンサも備えている。分析物モニタシステムはまた、センサ制御装置からのデータを受信するレシーバと、レシーバに接続された、分析物レベルの指標を表示するディスプレイとを有する表示装置も備えている。表示装置は、オプションとして、例えば、送信機、アナライザ、データ記憶装置、監視回路、入力装置、電源装置、時計、ランプ、ページャ、電話接続点、コンピュータ接続点、アラームまたは警報装置、ラジオ、および較正装置といった各種構成要素を備えていてもよい。表示装置の更なる構成要素および付加機能は、後で説明する。更に、分析物モニタシステムまたはその構成要素は、オプションとして、薬物または治療プロトコルを決定できるプロセッサおよび/または薬物送達システムを備えていてもよい。
【0011】
本発明の更に別の実施の形態は、電気化学センサを患者に挿入するための挿入キットである。前記挿入キットはインサータを含む。インサータの一部は、電気化学センサの挿入中にセンサを支持するのに適合した鋭く、堅い平面構造を有する。挿入キットは、電気化学センサおよびインサータを受入れるように構成された開口部を有する挿入銃(insertion gun)も備えている。挿入銃は、インサータおよび電気化学センサを患者の体内に推進する推進機構、およびセンサを患者の体内に残したままインサータを除去する引き戻し機構を有する。
【0012】
別の実施の形態は、電気化学センサの使用方法である。取付け装置を患者の皮膚に付着させる。挿入銃を取付け装置の開口部と揃える。電気化学センサを、挿入銃内に配置してから、挿入銃を使用して電気化学センサを患者の皮膚内に挿入する。挿入銃を取り除き、センサ制御装置の筐体を取付け台上に設置する。筐体上に配された複数の導電コンタクトを、電気化学センサ上に配された複数のコンタクトパッドに接続し、センサの使用準備が整う。
【0013】
本発明の一実施形態は、埋込型分析物反応センサにおける故障検出方法である。分析物反応センサは、患者の体内に埋め込まれる。分析物反応センサは、N個の作用電極(但し、Nは二以上の整数)、および一つの一般的な対向電極とを備えている。N個の作用電極の少なくとも一つおよび一般の対向電極で生成された信号が得られ、所定の閾値範囲内で、一般の対向電極からの信号が作用電極の一つからの信号のN倍でない場合、センサは故障していると判断される。
【0014】
更に別の実施形態は、患者に埋め込まれた一以上の作用電極を有する電気化学センサの較正方法である。信号は、各作用電極から生成される。較正が適切であるかどうか判断するために幾つかの条件を検査する。まず、一以上の各作用電極からの信号の差異が、第一の閾値量未満でなければならい。第二に、一以上の各作用電極からの信号が、所定の範囲内になければならない。そして、第三に、一以上の各作用電極からの信号の変化速度は、第二の閾値量未満でなければならない。患者の体液の較正サンプルをアッセイすることにより較正値は求められる。上記条件が満たされている場合、一以上の作用電極からの信号の少なくとも一つにその較正値を当てはめる。
【0015】
更なる実施の形態は、分析物レベルのモニタ方法である。センサを患者の皮膚内に挿入し、センサ制御装置を患者の皮膚に設置する。センサ制御装置の二以上の導電コンタクトをセンサのコンタクトパッドに接続する。そして、センサ制御装置を使用して、センサが生成する信号から分析物レベルに関するデータを収集する。収集されたデータは、表示装置に送信され、分析物レベルが表示装置に表示される。
【0016】
本発明の上記要旨は、本発明の開示されている各実施形態またはすべての実施方法を記載することを意図したものではない。以下の図面および詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示している。
【0017】
付随の図面と関連させて、本発明に係る種々実施形態の下記詳細な説明を考慮することにより完全に本発明を理解することができる。
【0018】
本発明は、種々の変形および別の形態に変更することができるが、本発明の具体例を図面に示し詳細に説明する。しかしながら、言うまでもなく、本発明は、記載されている特定の実施形態に限定されるものではない。それとは反対に、本発明は、添付のクレームに限定されているような本発明の精神および範囲内のすべての変更、均等物および代替物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による皮下植込型分析物センサを使用した皮下分析物モニタの一実施形態のブロック図
【図2】本発明による分析物センサの一実施形態の上面図
【図3A】図2の分析物センサの断面図
【図3B】本発明による分析物センサの別の実施形態の断面図
【図4A】本発明による分析物センサの第三の実施形態の断面図
【図4B】本発明による分析物センサの第4の実施形態の断面図
【図5】図2の分析物センサの先端部の拡大上面図
【図6】本発明による分析物センサの第5の実施形態の断面図
【図7】図6の分析物センサの先端部の拡大上面図
【図8】図6の分析物センサの先端部の拡大底面図
【図9】図2の分析物センサの側面図
【図10】図6の分析物センサの上面図
【図11】図6の分析物センサの底面図
【図12】本発明によるセンサおよび挿入装置の一実施形態の拡大側面図
【図13A】図12の挿入装置の三つの実施形態の断面図
【図13B】図12の挿入装置の三つの実施形態の断面図
【図13C】図12の挿入装置の三つの実施形態の断面図
【図14】本発明による皮膚上センサ制御装置の一実施形態の断面図
【図15】図14の皮膚上センサ制御装置のベースの上面図
【図16】図14の皮膚上センサ制御装置のカバーの底面図
【図17】患者の皮膚上における、図14の皮膚上センサ制御装置の斜視図
【図18A】本発明による皮膚上センサ制御装置の一実施形態のブロック図
【図18B】本発明による皮膚上センサ制御装置の別の実施形態のブロック図
【図19A】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の内面に配された導電コンタクトの四つの実施形態の断面図
【図19B】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の内面に配された導電コンタクトの四つの実施形態の断面図
【図19C】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の内面に配された導電コンタクトの四つの実施形態の断面図
【図19D】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の内面に配された導電コンタクトの四つの実施形態の断面図
【図19E】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の外面に配された導電コンタクトの二つの実施形態の断面図
【図19F】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の外面に配された導電コンタクトの二つの実施形態の断面図
【図20A】本発明による分析物モニタシステムに使用する電流−電圧コンバータの二つの実施形態の概略図
【図20B】本発明による分析物モニタシステムに使用する電流−電圧コンバータの二つの実施形態の概略図
【図21】本発明による分析物モニタシステムに使用する開ループ式変調システムの一実施形態のブロック図
【図22】本発明によるレシーバ/表示装置の一実施形態のブロック図
【図23】レシーバ/表示装置の一実施形態の正面図
【図24】レシーバ/表示装置の第二の実施形態の正面図
【図25】本発明による薬物送達システムの一実施形態のブロック図
【図26】本発明による挿入銃の内部構造の斜視図
【図27A】本発明による皮膚上センサ制御装置の一実施形態の上面図
【図27B】図27Aの皮膚上センサ制御装置の取付け装置の一実施形態の上面図
【図28A】本発明による、挿入装置およびセンサの挿入後の皮膚上センサ制御装置の別の実施形態の上面図
【図28B】図28Aの皮膚上センサ制御装置の取付け装置の一実施形態の上面図
【図28C】図28Aの皮膚上センサ制御装置の電子機器回路(electronics)の少なくとも一部に対する筐体の一実施形態の上面図
【図28D】図28Cの筐体の底面図
【図28E】筐体のカバーを取り除いた状態での、図28Aの皮膚上センサ制御装置の上面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、流体中のグルコースまたはラクテートといった分析物の濃度を生体内で測定するための埋込型センサを使用した分析物モニタシステムに適用できる。前記センサは、例えば、患者の間質液中の分析物を持続的または周期的にモニターするために患者の皮下に埋め込むことができる。これは、患者の血流中のグルコースレベルを推定するために使用できる。他の生体内分析物センサは、本発明により、例えば、静脈、動脈、または流体を含む体内の他の部位への挿入用に作製できる。分析物モニタシステムは、一般に、数日から数週間またはそれ以上の一定期間に渡って分析物レベルをモニターするように構成される。
【0021】
本明細書において使用される用語に対し、下記定義を設ける。
【0022】
「対向電極」とは、作用電極と対を成す電極を意味し、対向電極には、作用電極を流れる電流と符号が逆で大きさの等しい電流が流れる。本発明の脈絡において、「対向電極」という用語は、基準電極としても機能する対向電極(つまり、対向/基準電極)を含むものとする。
【0023】
「電気化学センサ」とは、センサ上の電気化学酸化および還元反応によりサンプル中の分析物の存在を検出および/またはレベルを測定するように構成された装置である。これらの反応は、サンプル中の分析物の量、濃度、またはレベルと相関関係を有する電気信号に変換される。
【0024】
「電解」とは、電極で直接、または一以上の電子移動剤を介した化合物の電気酸化または電気還元のことである。
【0025】
化合物は、基板に捕捉されるかまたは化学接続した場合、表面上に「固定」される。
【0026】
「浸出不可」または「放出不可」化合物、または、「浸出不可能な状態で配された」化合物とは、センサの使用期間(例えば、センサが患者に埋め込まれている期間または、サンプルを測定している期間)作用電極の作用面から実質的に拡散しないように、センサ上に付着させた化合物を定義するものとする。
【0027】
構成要素は、例えば、センサの構成成分に共有接続、イオン接続、または配位結合される場合、および/または可動性を排除するポリマまたはゾル−ゲルマトリックスまたは膜に捕捉される場合、センサ内で「固定」される。
【0028】
「電子移動剤」とは、直接、または他の電子移動剤と協働して、分析物と作用電極との間で電子を運搬する化合物である。電子移動剤の一例は、レドックス媒体である。
【0029】
「作用電極」は、分析物(または、分析物のレベルにそのレベルが左右される第二の化合物)を、電子移動剤の作用で、または作用なしに、電気酸化あるいは電気還元する電極である。
【0030】
「作用面」とは、作用電極における、電子移動剤で被覆されているか、または電子移動剤に接触可能で、分析物含有流体に晒されるように構成されている部分である。
【0031】
「感知層」とは、分析物の電解を容易にする構成成分を含むセンサの構成要素である。感知層は、電子移動剤、および、分析物の反応に触媒作用を及ぼし電極での反応を生じさせる触媒、またはその両方のような構成成分を含んでいてもよい。センサの幾つかの実施形態において、感知層は、作用電極上または近傍に浸出不可能な状態で配されている。
【0032】
「非腐食性」の導電材料としては、炭素および導電性ポリマのような、非金属材料が挙げられる。
【0033】
分析物センサ装置
本発明の分析物モニタシステムは、様々な条件下で利用可能である。センサの詳細な構造、および分析物モニタシステムに使用される他の装置は、分析物モニタシステムの用途および、分析物モニタシステムの作動条件により決定される。分析物モニタシステムの一実施形態は、患者または使用者への埋め込み用に構成されたセンサを含む。例えば、センサは、血中の分析物レベルを直接テストするために動脈系または静脈系に埋め込むこともできる。また、センサは、間質液中の分析物レベルを測定するために間質組織に埋め込むこともできる。このレベルは、血液または他の流体中の分析物レベルと相関関係を有し、および/または分析物レベルに換算することができる。埋め込みの部位およびその深さは、センサの特定の形状、構成要素、および構造に影響を及ぼすことがある。場合によっては、センサの埋め込み深さを制限するため、皮下埋め込みの方が好ましいことがある。センサは、他の流体中の分析物レベルを測定するために、身体の他の部位に埋め込むこともできる。本発明の分析物モニタシステムにおける使用に適したセンサの例は、特許文献1に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0034】
埋込型センサ42と共に使用、特に皮下埋込型センサと共に使用する分析物モニタシステム40の一実施形態を、図1のブロック図の形態で説明する。分析物モニタシステム40は、最低限、一部が患者に埋め込まれる(皮下、静脈、または動脈に埋め込まれる)ように構成されたセンサ42と、センサ制御装置44とを有する。前記センサ42は、一般に患者の皮膚に設置するセンサ制御装置44に接続される。センサ制御装置44は、センサ42を作動させ、例えば、センサ42の電極に電圧を印加したり、センサ42からの信号を収集したりする。センサ制御装置44は、センサ42からの信号を評価したり、および/または、評価するために一以上の選択自由なレシーバ/表示装置46、48に信号を送信することもできる。センサ制御装置44および/またはレシーバ/表示装置46、48は、分析物の現状レベルを表示するか、または伝達することもできる。更に、センサ制御装置44および/またはレシーバ/表示装置46、48は、分析物のレベルが閾値に等しいかまたは閾値に近い場合、例えば、可聴、可視または他の感覚刺激アラームにより患者に知らせることもできる。幾つかの実施形態においては、センサの電極の一つまたは選択自由な温度プローブを介して警報として患者に電気ショックを伝えることができる。例えば、グルコースをモニターする場合、アラームは、低血糖または高血糖グルコースレベルおよび/または切迫低血糖または高血糖に対し患者に警告するために使用することもできる。
【0035】
センサ
センサ42は、図2に示しているように、基板50上に形成された少なくとも一つの作用電極58を有する。センサ42は、少なくとも一つの対向電極60(または対向/基準電極)および/または少なくとも一つの基準電極62(図8参照)も備えていてもよい。対向電極60および/または基準電極62は、基板50上に形成されていても、別個の装置であってもよい。例えば、対向電極および/または基準電極は、同様に患者に埋め込まれる第二の基板上に形成されるか、或いは、埋込型センサの幾つかの実施形態では、作用電極または電極を患者に埋め込み、対向電極および/または基準電極は、患者の皮膚上に配置してもよい。埋め込み可能な作用電極を用いた皮膚上対向および/または基準電極の使用については、特許文献2に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0036】
作用電極または電極58は、基板50上に配された導電トレース52を用いて形成される。温度プローブ66(図8参照)のような,センサ42の他の選択自由な部分と同様に、対向電極60および/または基準電極62も、基板50上に配された導電トレース52を用いて形成できる。これら導電トレース52は、基板50の平滑面上か、または、例えば、型押し、インデンティング、あるいは、基板50に凹部を作ることによって形成される溝54内に形成することができる。
【0037】
感知層64(図3Aおよび3B参照)は、特に、裸電極上で、所望の率および/または所望の特異性で分析物を電解できない場合、分析物の電気化学的検出およびサンプル流体中のそのレベルの測定を容易にするために、しばしば作用電極58の少なくとも一つの近傍またはその上に形成される。感知層64は、分析物と作用電極58間で直接的にまたは間接的に電子を移動させるため、電子移動剤を含んでいてもよい。感知層64はまた、分析物の反応に触媒作用を及ぼすため触媒を含んでいてもよい。感知層の構成要素は、作用電極58の近傍のまたは接触している流体中またはゲル中に存在していてもよい。また、感知層64の構成要素は、作用電極58上または近傍のポリマまたはゾル−ゲルマトリックス中に配されてもよい。感知層64の構成要素は、センサ42内に浸出不可能な状態で配されているのが好ましい。センサ42の構成要素は、センサ42内に固定されているのが更に好ましい。
【0038】
センサ42は、電極58、60、62および感知層64に加えて、以下説明するように、温度プローブ66(図6および図8参照)、物質移動制限層(mass transport limiting layer)74(図9参照)、生体親和性層(biocompatible layer)75(図9参照)、および/または他の任意の構成要素を備えていてもよい。以下説明するように、これらのアイテムのそれぞれが、センサ42の機能を高め、および/または、センサ42からの結果を促進する。
【0039】
基板
基板50は、例えば、ポリマまたはプラスチック材料、およびセラミック材料を含む各種非導電性材料を用いて形成することができる。特殊なセンサ42に適した材料は、少なくともある程度は、センサ42の所望の用途および材料の特性に基づいて決定される。
【0040】
幾つかの実施形態において、基板は柔軟性を有する。例えば、センサ42を、患者への埋め込み用に構成する場合、センサ42の埋め込みおよび/または装着により生じる患者の痛みおよび組織に対するダメージを減少させるため、(硬質センサも埋込型センサに使用できるが)センサ42に、柔軟性を持たせることができる。柔軟な基板50は、しばしば、患者の快適性を高め、広範囲の活動を可能にする。柔軟な基板50に適した材料としては、例えば、非導電性プラスチックまたはポリマ材料や、他の非導電性で、柔軟性を有する変形可能な材料が挙げられる。有用なプラスチックまたはポリマ材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、マイラー(Mylar)(商標)およびポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミドのような熱可塑性物質または、PETG(グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート)などの、これら熱可塑性物質のコポリマが挙げられる。
【0041】
他の実施形態において、センサ42は、例えば、曲げまたは破損に対し、構造的サポートを提供するため、比較的硬質の基板50を用いて作製される。基板50として使用できる硬質材料の例としては、酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素のような、低導電性セラミックが挙げられる。硬質基板を有する埋込型センサ42の利点の一つは、更なる挿入装置を使用することなくセンサ42の埋め込みを助けるようにセンサ42が、鋭い先端部および/または鋭い縁部を有することである。
【0042】
多くのセンサ42およびセンサ用途において、硬質および軟質センサのいずれも適切に機能することは言うまでもない。センサ42の柔軟性は、例えば、基板50の組成および/または厚みを変えることにより、連続体に沿って制御および変化させることもできる。
【0043】
柔軟性に関し考慮すべき事項に加えて、埋込型センサ42は、多くの場合毒性の無い基板50を備えているのが望ましい。基板50は、一以上の政府機関または民間団体によって、生体内用として認可されているのが好ましい。
【0044】
センサ42は、図12に示されているように、埋込型センサ42の挿入を容易にするため、選択自由な機構を備えていてもよい。例えば、センサ42は、挿入を容易にするため、先端部123を尖らせることもできる。更に、センサ42は、センサ42が作動している間、患者の組織内へのセンサ42の固定を助ける掛かり部125を備えていてもよい。しかしながら、掛かり部125は一般に、センサ42を交換するために取り除く際、皮下組織に対し殆ど損傷を与えることがないように十分小さいものである。
【0045】
基板50は、少なくとも幾つかの実施形態においては、センサ42の全長に渡って均一な寸法を有するが、他の実施形態では、図2に示しているように、基板50は、それぞれ異なった幅53、55の遠心端67と近位端65とを有する。これらの実施形態において、基板50の遠心端67は、比較的狭い幅53を有していてもよい。患者体内の皮下組織または他の部分に埋込型センサ42では、基板50の遠心端67の幅53が狭いことにより、センサ42の埋め込みを容易にすることができる。多くの場合、センサ42の幅が狭いほど、センサの埋め込み中および埋め込み後に患者が感じる痛みはより少ない。
【0046】
患者の通常の活動中に分析物を継続的または定期的にモニターするために設計された皮下への埋込型センサ42では、患者に埋め込まれるセンサ42の遠心端67の幅53は、2mm以下、好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。センサ42が幅の異なる領域を持たない場合には、センサ42の全幅は一般に、例えば、2mm、1.5mm、1mm、0.5mm、0.25mmまたはそれ以下であろう。しかしながら、より幅の広いまたは狭いセンサも使用できる。特に、静脈または動脈への挿入用、或いは、患者の動きが制限されている場合、例えば、患者がベッドまたは病院内に拘束されている場合、より幅の広い埋込型センサを使用することもできる。
【0047】
図2に戻って、電極のコンタクトパッド49と制御装置のコンタクトとの間の接続を容易にするため、センサ42の近位端65の幅55は、遠心端67よりも広くてもよい。センサ42のこの先端の幅が広いほど、コンタクトパッド49を大きくすることができる。これにより、制御装置(例えば、図1のセンサ制御装置44)のコンタクトにセンサ42を適切に接続するために必要とされる精密度を低下させることができる。しかしながら、センサ42の最大幅は、患者の簡便性および快適性のため、および/または、分析物モニタの望ましいサイズに適合するように、センサ42が依然小さいものであるよう制約される場合がある。例えば、図1に示しているセンサ42のような、皮下に埋込型センサ42の近位端65の幅55は、0.5mm〜15mm、好ましくは1mm〜10mm、更に好ましくは3mm〜7mmの範囲内である。しかしながら、より幅の広いまたは狭いセンサもこの生体内用途およびその他の生体内用途に使用できる。
【0048】
基板50の厚さは、以下説明するように、基板材料の機械的特性(例えば、材料の強度、引張り応力、および/または柔軟性)、その使用により基板50への応力が発生するセンサ42の所望用途、並びに、基板50に形成されたあらゆる溝または窪みの深さにより決められる。一般に、患者が通常の活動に従事しながら、分析物レベルを持続的または定期的にモニターするための皮下に埋込型センサ42の基板50の厚さは、50〜500μmであり、好ましくは100〜300μmである。しかしながら、特に他のタイプの生体内センサ42においては、より厚い基板50やより薄い基板50を使用することもできる。
【0049】
センサ42の長さは、様々な要因によって、広範囲に渡る値を取ることができる。埋込型センサ42の長さに影響を及ぼす要因としては、患者への埋め込み深さや、柔軟性を有する小型センサ42を上手に操作し、センサ42とセンサ制御装置44とを接続するための患者の能力が挙げられる。図1に示されている分析物モニタ用の皮下に埋込型センサ42の長さは、0.3〜5cmの範囲内であり得るが、より長いまたはより短いセンサも使用できる。センサ42が幅の狭い部分と広い部分とを有する場合、センサ42の幅の狭い部分(例えば、患者の皮下に挿入される部分)の長さは一般に約0.25〜0.2cmである。しかしながら、より長い部分やより短い部分を使用してもよい。この幅の狭い部分の全体、または一部分のみを患者の皮下に埋め込むことができる。他の埋込型センサ42の長さは、少なくともある程度は、センサ42が埋め込まれるまたは挿入される患者の部位によって変化するであろう。
【0050】
導電トレース
作用電極58を構成するために、基板上に少なくとも一つの導電トレース52を形成する。更に、電極(例えば、更なる作用電極、並びに、対向、対向/基準、および/または基準電極)および、温度プローブなどの、他の構成要素としての使用を目的として、基板50上に他の導電トレース52を形成してもよい。必須ではないが、導電トレース52は、図2に示されているように、センサ50の長手方向57に沿ってその距離の殆どに渡って延設されていてもよい。導電トレース52の配置は、分析物モニタシステムの特定の構造(例えば、制御装置のコンタクトの配置、および/またはサンプル室のセンサ42との関係)によって決められる。埋込型センサ、特に皮下に埋込型センサでは、導電トレースは一般に、センサの埋め込まれなければならない量を最小にするためセンサ42の先端近くまで延設されている。
【0051】
導電トレース52は、例えば、フォトリソグラフィ、スクリーン印刷、または他のインパクトまたはノンインパクト印刷技術を含む様々な技術により、基板50上に形成される。導電トレース52は、レーザーを用いて、有機質(例えば、ポリマまたはプラスチック)基板50に、導電トレース52を炭化させることにより形成してもよい。センサ42を形成する方法のいくつかの例は、特許文献3に説明されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0052】
基板50上に導電トレース52を配する別の方法は、図3Aに示しているように、基板50の一以上の表面に凹状溝54を形成することと、引き続き、導電材料56でこれら凹状溝54を充填することとを含む。凹状溝54は、インデンティング、型押し、または別の方法で、基板50の表面に凹部を作ることにより形成できる。基板の表面に溝および電極を形成する方法の例が、特許文献4に見られる。溝の深さは、一般的に、基板50の厚さと関連性を有する。一実施形態において、溝の深さは、約12.5〜75μm(0.5〜3ミル)、好ましくは約25〜50μm(1〜2ミル)の範囲内である。
【0053】
導電トレースは、一般に、炭素(例えば、グラファイト)、導電性ポリマ、金属または合金(例えば、金または金合金)、或いは、金属化合物(例えば、二酸化ルテニウムまたは二酸化チタン)のような導電材料56を用いて形成される。炭素、導電性ポリマ、金属、合金、または金属化合物からなるフィルムの形成は周知となっており、例えば、化学蒸着(CVD)、物理蒸着、スパッタリング、反応スパッタリング、印刷、コーティング、およびペインティングが挙げられる。溝54を充填する導電材料56は、しばしば、導電性インクまたはペーストのような前駆物質を使用して形成される。これらの実施形態において、導電材料56は、コーティング、ペインティング、またはコーティング用ブレードのような塗布器具を使用して材料を塗布するといった方法を用いて基板50上に堆積される。そして、溝54間の過剰導電材料は、例えば、基板表面にそってブレードを動かすことにより除去される。
【0054】
一実施形態において、導電材料56は、導電性インクのような前駆物質の一要素である。これは、例えば、エルコン インコーポレーション(Ercon、Inc.)(ウェアハム、エムエー(Wareham,MA))、メテク インコーポレーション(Metech,Inc.)(エルバーソン、ピーエー(Elverson,PA))、イー.アイ.デュポンドヌムール アンド カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Co.)(ウィルミントン、ディーイー(Wilmington,DE))、エムカ−リメックス プロダクツ(Emca−Remex Products)(モントゴメリーヴィレ、ピーエー(Montgomeryville,PA))、またはエムシーエー サービスィーズ(MCA Services)(メルボルン、グレートブリテン(Melbourn,Great Britain))から入手可能である。導電性インクは、一般に炭素、金属、合金、または金属化合物の粒子と、溶剤または分散剤とを含む半流動体またはペーストとして塗布される。基板50上(例えば、溝54内)に導電性インクを塗布した後、溶剤または分散剤は蒸発し、導電材料56の固体の塊(solid mass)が残る。
【0055】
炭素、金属、合金、または金属化合物の粒子に加えて、導電性インクはまた、結合剤を含有していてもよい。結合剤は、溝54内および/または基板50上に導電材料56を更に結合させるため、選択的に硬化させてもよい。結合剤を硬化することにより、導電材料56の導電性が高まる。しかしながら、これは一般に必要とされない。というのも、導電トレース52内の導電材料56により搬送される電流は、比較的弱い場合がよくあるからである(通常1μA未満であり、100nA未満であることが多い)。一般的な結合剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体、エラストマー、および高度ふっ素化ポリマが挙げられる。エラストマーの例としては、シリコーン、ポリマ性ジエン、およびアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂が挙げられる。ふっ素化ポリマ結合剤の一例は、テフロン(登録商標)(Teflon)(デュポン(DuPont)、ウィルミントン、ディーイー(Wilmington,DE))である。これらの結合剤は、例えば、熱、または紫外線(UV)光を含む光を用いて硬化される。適切な硬化方法は、一般に、使用される特定の結合剤によって決められる。
【0056】
しばしば、導電材料56の液体または半流動体前駆物質(例えば、導電性インク)を溝54内に堆積させると、前駆物質が溝54を埋める。しかしながら、溶剤または分散剤が蒸発すると、導電材料56は継続的に溝54を充填したままの状態であったりなかったりするため、残った導電材料56の体積が減少する場合がある。好ましい導電材料56は、体積が減少するにつれて基板50から剥がれることはなく、むしろ溝54内の高さが低くなる。これらの導電材料56は、一般に、基板によく付着するため、溶剤または分散剤の蒸発中に基板50から剥がれることはない。また、他の適切な導電材料56は、基板50の少なくとも一部に付着し、および/または、導電材料56を基板50に付着させる結合剤のような別の添加剤を含む。溝54内の導電材料56は、浸出不可能であるのが好ましく、基板50上に固定されているのが更に好ましい。幾つかの実施形態において、導電材料56は、溶剤または分散剤の除去により散在する、液体または半流動体前駆物質を複数回塗布することにより形成してもよい。
【0057】
別の実施形態では、溝54はレーザを使用して形成される。レーザは、ポリマまたはプラスチック材料を炭化させる。この工程において形成される炭素が、導電材料56として使用される。レーザにより形成される炭素を補うために、導電性カーボンインクのような、更なる導電材料56を使用してもよい。
【0058】
更なる実施形態において、導電トレース52は、パッド印刷技術により形成される。例えば、導電材料からなるフィルムは、連続したフィルム、または担体フィルムに堆積させたコーティング層のいずれかとして形成される。この導電材料から成るフィルムは、印刷ヘッドと基板50の間に配置される。基板50表面上のパターンは、印刷ヘッドを使用して導電トレース52の所望のパターンに従って作られる。導電材料は、圧力および/または熱により導電材料からなるフィルムから基板50に転写される。この技術は、しばしば、基板50に溝(例えば、印刷ヘッドにより生じる凹部)を作り出す。別の場合には、導電材料は、実質的な凹部を形成することなく、基板50の表面上に堆積される。
【0059】
他の実施の形態では、導電トレース52は、ノンインパクト印刷技法により形成される。そのような技法としては、電子写真および磁力記録が挙げられる。これらの方法においては、導電トレース52の像がドラム上に電気的または磁気的に形成される。像を電気的に形成するために、レーザまたはLEDを使用することができる。像を磁気的に形成するためには、磁気記録ヘッドを使用することができる。そして、トナー物質(例えば、導電性インクのような導電材料)が、ドラムの像に対応する部分に引きつけられる。その後、トナー物質は、ドラムと基板の接触により、基板に塗布される。例えば、基板は、ドラム上を回転させることができる。その後、トナー物質を乾燥させ、および/または、トナー物質中の結合剤を硬化させ、トナー物質を基板に付着させることができる。
【0060】
別のノンインパクト印刷技法としては、基板上に、所望のパターンに導電材料の液滴を射出するものが挙げられる。この技法の例としては、インクジェット印刷およびピエゾジェット印刷が挙げられる。像がプリンタに送られると、プリンタは、パターンに応じて導電材料(例えば、導電性インク)を射出する。プリンタは連続した流れの導電材料を供給するか、または所望のポイントで、個別の量の導電材料を射出してもよい。
【0061】
導電トレースを形成する、更に別のノンインパクト印刷の実施形態は、粒子線写真法である。この方法では、光重合の可能なアクリル樹脂(例えば、クビタル(Cubital)社のゾリマー(Solimer)7501、バッドクロイツナハ(Bad Kreuznach)、ドイツ(Germany))のような可硬化性液体前駆物質を基板50の表面上に堆積させる。そして、導電トレース52のポジまたはネガの像を有するフォトマスクを使用して液体前駆物質を硬化させる。フォトマスクを通して光(例えば、可視または紫外光線)を向け、液体前駆物質を硬化し、フォトマスク上の像に応じて基板上に固体層を形成する。硬化されていない液体前駆物質を除去することにより、固体層中に溝54が残る。その後、導電材料56でこれらの溝54を充填し、導電トレース52を形成することができる。
【0062】
導電トレース52(および、溝54が使用される場合、溝54)は、例えば、25〜250μmの範囲内で、また、上記方法により、例えば、250μm、150μm、100μm、75μm、50μm、25μm、またはそれ以下の幅を含む比較的狭い幅に形成することができる。基板50の同一面上に二つ以上の導電トレース52を有する実施形態において、導電トレース52は、導電トレース52間の電導を防ぐのに十分な距離を置いて離れている。導電トレース間のエッジ−エッジ間距離は、25〜250μmの範囲が好ましく、例えば、150μm、100μm、75μm、50μm、またはそれ以下であってもよい。基板50上の導電トレース52の密度は、約150〜700μmに1トレースの範囲であるのが好ましく、667μm以下に1トレース、333μm以下に1トレース、または、更に167μm以下に1トレースといった低密度であってもよい。
【0063】
作動電極58および対向電極60(別個の基準電極が使用される場合)は、しばしば、炭素のような導電材料56を用いて作製される。適した導電性カーボンインクは、エルコン インコーポレーション(Ercon、Inc.)(ウェアハム、エムエー(Wareham,MA))、メテク インコーポレーション(Metech,Inc.)(エルバーソン、ピーエー(Elverson,PA))、イー.アイ.デュポンドヌムール アンド カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Co.)(ウィルミントン、ディーイー(Wilmington,DE))、エムカ−リメックス プロダクツ(Emca−Remex Products)(モントゴメリーヴィレ、ピーエー(Montgomeryville,PA))、またはエムシーエー サービスィーズ(MCA Services)(メルボルン、グレートブリテン(Melbourn,Great Britain))から入手可能である。一般に、作用電極58の作用面51は、分析物含有流体と接触している(例えば、患者に埋め込まれている)導電トレース52の少なくとも一部である。
【0064】
基準電極62および/または対向/基準電極は、一般に、適切な参照材料、例えば、銀/塩化銀または導電材料に結合された浸出不可レドックス対、例えば炭素が結合したレドックス対といった、導電材料56を用いて形成される。適した銀/塩化銀導電性インクは、エルコン インコーポレーション(Ercon、Inc.)(ウェアハム、エムエー(Wareham,MA))、メテク インコーポレーション(Metech,Inc.)(エルバーソン、ピーエー(Elverson,PA))、イー.アイ.デュポンドヌムール アンド カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Co.)(ウィルミントン、ディーイー(Wilmington,DE))、エムカ−リメックス プロダクツ(Emca−Remex Products)(モントゴメリーヴィレ、ピーエー(Montgomeryville,PA))、またはエムシーエー サービスィーズ(MCA Services)(メルボルン、グレートブリテン(Melbourn,Great Britain))から入手可能である。銀/塩化銀電極は、サンプルまたは体液の構成成分、この場合Cl-を用いた金属電極の反応を伴う、一種の基準電極の例である。
【0065】
基準電極の導電材料に結合するのに適したレドックス対としては、例えば、レドックスポリマ(例えば、多数のレドックス中心(multiple redox centers)を有するポリマ)が挙げられる。基準電極表面は、誤った電位が測定されないように非腐食性であるのが好ましい。好ましい導電材料としては、金やパラジウムといった低腐食性金属が挙げられる。最も好ましいのは、炭素や導電性ポリマといった、非金属導電体を含む非腐食性材料である。レドックスポリマは、導電トレース52の炭素表面のような、基準電極の導電材料に吸着されるかまたは共有結合される。非重合性レドックス対も、同様に炭素または金の表面に結合され得る。
【0066】
電極表面にレドックスポリマを固定するために、様々な方法が使用できる。一方法は、吸着による固定化である。この方法は、比較的高分子量を有するレドックスポリマに対し特に有用である。ポリマの分子量は、例えば、架橋により増加さることができる。
【0067】
レドックスポリマを固定するための別の方法は、電極表面の機能化、そして、レドックスポリマの電極表面上の官能基への化学結合を含み、これはしばしば共有結合である。このタイプの固定化の一例は、ポリ4−ビニルピリジンで始まる。ポリマのピリジン環は、部分的に、[Os(bby)2Cl]+/2+のような可還元/可酸化種と結合してキレートを作る。但し、前記式中bpyは2,2‘−ビピリジンである。ピリジン環の一部は、2−ブロモエチルアミンとの反応により四級化される。そして、ポリマは、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルのようなジエポキシドを用いて架橋される。
【0068】
炭素表面は、例えば、ジアゾニウム塩の電気還元により、レドックス種またはポリマを付着させるため修飾することができる。一説明として、p−アミノ安息香酸のジアゾ化により形成されたジアゾニウム塩の還元により、フェニルカルボン酸官能基を有する炭素表面が修飾される。そして、これらの官能基は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩のような、カルボジイミドにより活性化され得る。その後、活性化された官能基は、上述の四級化されたオスミウム含有レドックスポリマ、または2−アミノエチルフェロセンのようなアミン官能化レドックス対と結合され、レドックス対を形成する。
【0069】
同様に、金もシスタミンのようなアミンにより官能化できる。[Os(bpy)2(ピリジン−4−カルボキシレート)Cl]0/+のようなレドックス対は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩により活性化され、金結合アミンと反応してアミドを形成する反応性O−アシルイソ尿素を形成する。
【0070】
一実施形態においては、電極またはプローブリードとして導電トレース52を使用することに加え、例えば、分析物レベルが閾値を超えた場合に、患者に軽い電気ショックを与えるため、基板50上の二以上の導電トレース52が使用される。このショックは、分析物を適切なレベルに戻すために何らかの行動を起こすようにという患者への警告または警報としての役割を果たすことができる。
【0071】
軽い電気ショックは、別途導電路で接続されてはいない、いずれか二つの導電トレース52間に電位を印可することにより発生させる。例えば、電極58、60、62の内の二つ、または、一つの電極58、60、62と温度プローブ66とを使用して軽いショックを与えることもできる。作用電極58と基準電極62とは、この用途には使用しないほうが好ましい。なぜならば、特定の電極上または近傍の化学構成要素(例えば、作用電極上の感知層または基準電極上のレドックス対)に何らかのダメージを与える可能性があるからである。
【0072】
軽いショックを発生させるために使用する電流は、一般に0.1〜1mAである。患者への弊害を避けるように注意しなければならないが、これより高いかまたは低い電流を使用することもできる。一般に、導電トレース間の電位は、1〜10ボルトである。しかしながら、例えば、導電トレース52の抵抗、導電トレース52間の距離、および所望の電流量によって、より高いまたはより低い電圧を使用することもできる。軽いショックが伝えられると、作用電極58における電位および温度プローブ66全体に渡っての電位を除去して、軽いショックを供給する導電トレース52と作用電極58(および/または、使用されている場合、温度プローブ66)との間の望ましくない電導により生じるそれら構成要素への弊害を防ぐこともできる。
【0073】
コンタクトパッド
一般に、各導電トレース52はコンタクトパッド49を有する。コンタクトパッド49は、制御装置(例えば、図1のセンサ制御装置)の導電コンタクトと接触させられる以外は、トレース52の残りの部分と区別できない、単に導電トレース52の一部であってもよい。しかしながら、より一般的には、コンタクトパッド49は、制御装置のコンタクトとの接続を容易にするため、導電トレース52の他の部分よりも幅の広いトレース52の一部分である。導電トレース52の幅と比べて、コンタクトパッド49を比較的大きくすることにより、小さなコンタクトパッドを用いた場合よりも、コンタクトパッド49と制御装置のコンタクトとの間の精密な位置合わせの必要性における重要性が低下する。
【0074】
コンタクトパッド49は、一般的に、導電トレース52の導電材料56と同様の材料を使用して作製される。しかしながら、これは必須ではない。コンタクトパッド49を形成するために金属、合金、および金属化合物を使用してもよいが、幾つかの実施形態においては、炭素または、導電性ポリマのような他の非金属材料からコンタクトパッド49を作製するのが望ましい。金属または合金コンタクトパッドとは対照的に、コンタクトパッド49が濡れ(wet)環境、含水(moist)環境、または、湿気(humid)環境にある場合、炭素および他の非金属コンタクトパッドは容易に腐食しない。金属および合金は、特に、コンタクトパッド49と制御装置のコンタクトとが異なる金属または合金で作られている場合、これらの条件下で腐食することがある。しかし、制御装置のコンタクトが金属または合金であったとしても、炭素および非金属コンタクトパッド49が著しく腐食することはない。
【0075】
本発明の一実施形態は、コンタクトパッド49を有するセンサ42と導電コンタクトを有する制御装置44とを備えている(図示なし)。センサ42の作動中、コンタクトパッド49と導電コンタクトは、互いに接触している。この実施形態では、コンタクトパッド49、または導電コンタクトのいずれかが非腐食性導電材料を用いて作製されている。このような材料としては、例えば、炭素や導電性ポリマが挙げられる。好ましい非腐食性材料には、グラファイトやガラス質炭素(vitreous carbon)が含まれる。向かい合ったコンタクトパッドまたは導電コンタクトは、炭素、導電性ポリマ、または、金、パラジウム、白金族金属のような金属、或いは、二酸化ルテニウムのような金属化合物を使用して作製される。コンタクトパッドおよび導電コンタクトのこの構成は、一般に、腐食を減らす。センサが3mM、より好ましくは100mMのNaCl溶液中に配置された場合、コンタクトパッドおよび/または導電コンタクトの腐食により生じる信号は、通常の生理学的範囲内の分析物濃度に晒された場合センサが発生させる信号の3%未満であるのが好ましい。少なくとも幾つかの皮下グルコースセンサでは、通常の生理学的範囲内の分析物によって発生する電流は、3〜500nAの範囲にある。
【0076】
温度プローブ66(下記に説明)の二つのプローブリード68、70と同様に、各電極58、60、62も、図10および図11に示されているようにコンタクトパッド49に接続されている。一実施形態(図示なし)では、コンタクトパッド49は、基板50の、コンタクトパッド49が設けられている各電極または温度プローブリードと同一側にある。
【0077】
他の実施形態では、図10および図11に示されているように、少なくとも一方の面の導電トレース52は、基板のバイアを介して、基板50の反対側の表面上のコンタクトパッド49aに接続されている。この構造の利点は、制御装置のコンタクトと電極58、60、62および温度プローブ66の各プローブリード68、70とを、基板50の単一の面で接触させることができることである。
【0078】
更に他の実施形態(図示なし)においては、各導電トレース52に対して、基板50の両面にコンタクトパッドを設けるために、基板を貫通したバイアが使用される。コンタクトパッド49aと導電トレース52とを接続するバイアは、適切な位置に基板50を貫通する孔を開けて、その孔に導電材料56を充填することにより形成することができる。
【0079】
典型的電極構造
以下、多くの典型的な電極構造を説明するが、他の構造も同様に使用できることは言うまでもない。図3Aに示されている一実施形態において、センサ42は、二つの作用電極58a、58bと、基準電極としても機能する一つの対向電極60とを備えている。別の実施形態において、センサは、図3Bに示されているように、一つの作用電極58aと、一つの対向電極60と、一つの基準電極62とを備えている。これらの各実施形態は、基板50の同一面上に全ての電極が形成された状態で図解されている。
【0080】
その代わりとして、電極の一つ以上を、基板50の反対側に形成してもよい。これは、電極が二つの異なった種類の導電材料56(例えば、炭素と銀/塩化銀)を使用して形成される場合、好都合なことがある。そして、少なくとも幾つかの実施形態においては、一種類のみの導電材料56を基板50の各面に塗布するだけでよく、これにより、製造方法の工程数が減り、および/または、その方法における位置合わせの制約が緩和される。例えば、作用電極58が炭素系導電材料56を使用して形成され、基準電極または対向/基準電極が銀/塩化銀導電材料56を使用して形成される場合には、製造を容易にするために、基板50の向き合った面に作用電極と、基準または対向/基準電極とを形成してもよい。
【0081】
別の実施形態においては、図6に示しているように、二つの作用電極58と一つの対向電極60とが基板50の一方の面に形成されており、一つの基準電極62と温度プローブ66とが基板50の反対側に形成されている。図7および図8に、センサ42のこの実施形態の先端部の向かい合った面が示されている。
【0082】
感知層
酸素のような幾つかの分析物は、作用電極58上で直接電気酸化または電気還元される。グルコースや、ラクテートなどの他の分析物は、分析物の電気酸化または電気還元を容易にするため、少なくとも一つの電子移動剤および/または少なくとも一つの触媒の存在を必要とする。触媒は、作用電極58上で直接電気酸化または電気還元される、酸素などのそれら分析物に使用してもよい。これらの分析物に対して、各作用電極58は、作用電極58の作用面上または近傍に形成された感知層64を有する。一般に、感知層64は、作用電極58の小さな部分のみにまたはその近傍、しばしば、センサ42の先端部近傍に形成される。これにより、センサ42を形成するために必要とされる物質量が制限され、また分析物含有流体(例えば、体液、サンプル液、または担体液)との接触に最適な位置に感知層64が配置される。
【0083】
感知層64は、分析物の電解を容易にするように設計された一以上の構成要素を含む。感知層64は、例えば、分析物の反応に触媒作用を及ぼし、作用電極58での反応を生じさせるための触媒、または、分析物と作用電極58間で間接的または直接的に電子を移動させるための電子移動剤、或いはその両方を含んでいてもよい。
【0084】
感知層64は、所望の構成要素(例えば、電子移動剤および/または触媒)の固体組成物として形成してもよい。これらの構成要素は、センサ42から浸出不可能なものであるのが好ましく、センサ42上に固定されているのがより好ましい。例えば、構成要素は作用電極58上に固定されてもよい。その代わりとして、感知層64の構成要素は、作用電極58上に設けられた一以上の膜またはフィルム内または間に固定されるか、或いは、前記構成要素は、ポリマまたはゾル−ゲルマトリックス中に固定されてもよい。固定された感知層の例は、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11および1998年2月11日に出願された「ダイズペルオキシダーゼ電気化学センサ(Soybean Peroxidase Electrochemical Sensor)」と題する特許文献12、代理人書類番号M&G12008.8WOI2に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0085】
幾つかの実施形態において、感知層64の構成要素の内一以上の構成要素は、固体組成物を形成する代わりに、感知層64内の流体中に溶媒和、分散、または懸濁していてもよい。前記流体中に、センサ42を供給しても、センサ42が分析物含有流体から前記流体を吸収してもよい。このタイプの感知層64に溶媒和、分散、または懸濁している構成要素は、感知層から浸出不可能であるのが好ましい。例えば、感知層の周囲に、感知層64の構成要素の浸出を防ぐバリヤ(例えば、電極、基板、膜、および/またはフィルム)を設けることにより浸出不可能な状態にすることができる。そのようなバリヤの一例は、分析物を感知層64内に拡散させ、感知層64の構成要素と接触させるが、感知層64からの感知層構成要素(例えば、電子移動剤および/または触媒)の拡散は減少させるかまたは排除する微細孔膜またはフィルムである。
【0086】
各種の異なった感知層構造が使用できる。一実施形態において、感知層64は、図3Aおよび図3Bに示されているように、作用電極58aの導電材料56上に堆積させる。感知層64は、作用電極58aの導電材料56からはみ出して広がっていてもよい。場合によって、感知層64はまた、グルコースセンサの性能を低下させることなく、対向電極60または基準電極62上に広がっていてもよい。内部に導電材料56が堆積された溝54を利用するそれらのセンサ42では、導電材料56が溝54を満たしていない場合、感知層64の一部が溝54内に形成されていてもよい。
【0087】
作用電極58aと直接接触している感知層64は、分析物の反応を促進するための触媒と同様に、分析物と作用電極間で直接的または間接的に電子を移動させるための電子移動剤を含んでいてもよい。例えば、それぞれグルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、またはラッカーゼのような触媒と、それぞれグルコース、ラクテート、または酸素の電気酸化を促進する電子移動剤とを含む感知層を有するグルコース、ラクテート、または酸素電極を形成することができる。
【0088】
別の実施形態においては、作用電極58a上に感知層64を直接堆積させない。その代わりに、感知層64は、図4Aに示されているように、作用電極58aから間隔をおいて配置され、分離層61により作用電極58aから隔てられる。分離層61は、一般に、一以上の膜またはフィルムを有する。感知層64から作用電極58aを隔てることに加えて、下記で説明するように、分離層61は、物質移動制限層または妨害物質排除層としての役割を果たすこともできる。
【0089】
一般に、作用電極58と直接的には接触していない感知層64は、分析物の反応を促進する触媒を含む。しかしながら、この感知層64は、一般に、作用電極58aから分析物に直接電子を移動させる電子移動剤を含まない。これは、感知層64が作用電極58aから間隔をおいて配置されているからである。このタイプのセンサの一例は、感知層64中に酵素(例えば、それぞれ、グルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼ)を含むグルコースまたはラクテートセンサである。グルコースまたはラクテートは、酵素の存在の下、第二の化合物(例えば、酸素)と反応する。そして、第二の化合物は、電極で電気酸化または電気還元される。電極での信号の変化は、流体中の第二の化合物のレベルの変化を示し、グルコースまたはラクテートレベルの変化に比例し、引いては分析物レベルと相関関係を有する。
【0090】
別の実施形態では、図4Bに示されているように、二つの感知層63、64が使用される。その二つの感知層63、64のそれぞれが、作用電極58a上または作用電極58a近傍に個別に形成されていてもよい。一方の感知層64は一般に、必須ではないが、作用電極58aから間隔をおいて配置さる。例えば、この感知層64は、生成化合物を形成するため、分析物の反応に触媒作用を及ぼす触媒を含んでいてもよい。そして、生成化合物は、作用電極58aと生成化合物との間で電子を移動させるため電子移動剤、および/または、作用電極58aで信号を発生させるよう生成化合物の反応に触媒作用を及ぼすための第二の触媒を含むことのできる第二の感知層63で電解される。
【0091】
例えば、グルコースまたはラクテートセンサは、作用電極から間隔をおいて配置される、酵素、例えば、グルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼを有する第一の感知層64を備えていてもよい。適切な酵素の存在の下、グルコースまたはラクテートの反応により、過酸化水素が生じる。第二の感知層63は、直接作用電極58a上に設けられ、過酸化水素に対する反応で電極において信号を発生させるため、ペルオキシダーゼ酵素と、電子移動剤とを含む。センサが示す過酸化水素のレベルは、グルコースまたはラクテートのレベルと相関関係を有する。同様に機能する別のセンサは、単一感知層を用いて作製することができる。単一感知層中には、ペルオキシダーゼと、グルコースまたは乳酸オキシダーゼの両方が堆積している。このようなセンサの例は、特許文献13、特許文献14、および1998年2月11日に出願された「ダイズペルオキシダーゼ電気化学センサ(Soybean Peroxidase Electrochemical Sensor)」と題する特許文献15、代理人書類番号M&G12008.8WOI2に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0092】
幾つかの実施形態では、作用電極58bの一つ以上が、図3Aおよび図4Aに示されているように、対応する感知層64を備えていないか、または、分析物の電解に必要とされる一以上の構成要素(例えば、電子移動剤または触媒)を含んでいない感知層(図示なし)を有する。この作用電極58bで発生する信号は、一般に、流体中の、妨害物質(interferents)およびイオンのような他の供与源により発生するのであって、分析物に対する反応により発生するのではない(なぜならば、分析物が電気酸化または電気還元されないからである)。よって、この作用電極58bの信号は、バックグラウンド信号に対応する。バックグラウンド信号は、例えば、作用電極58aの信号から、作用電極58bの信号を差し引くことにより、十分に機能的な感知層64に関連した他の作用電極58aから得られる分析物信号から除去することができる。
【0093】
複数の作用電極58aを有するセンサを使用して、これらの作用電極58aで発生する信号または測定値を平均することにより、更に正確な結果を得ることもできる。また、更に正確なデータを得るために、単一作用電極58aまたは複数の作用電極での、複数の読取値を平均してもよい。
【0094】
電子移動剤
図3Aおよび図3Bに示されているように、多くの実施形態において、感知層64は、作用電極58の導電材料56と接触している一以上の電子移動剤を含んでいる。本発明に係る幾つかの実施形態においては、センサ42が患者に埋め込まれている期間、作用電極58からの電子移動剤の浸出は殆どまたは全く生じない。拡散するまたは浸出可能な(つまり、放出可能な)電子移動剤は、しばしば、分析物含有流体中に拡散して、時間の経過とともにセンサの感度を低下させ、電極の有効性を低下させる。更に、埋込型センサ42における、拡散または浸出する電子移動剤は、患者に害をなすこともある。これらの実施形態においては、分析物含有流体に24時間、更に好ましくは、72時間浸漬した後、電子移動剤の好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは、少なくとも95%、最も好ましくは、少なくとも99%がセンサ上に残る。特に、埋込型センサでは、37℃の体液中に24時間、更に好ましくは、72時間浸漬した後、電子移動剤の好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは、少なくとも95%、最も好ましくは、少なくとも99%がセンサ上に残る。
【0095】
本発明に係る幾つかの実施形態においては、浸出を防ぐために、作用電極58上或いは、作用電極58上に配された一以上の膜またはフィルム間または内に電子移動剤を結合させるかまたは別の方法で固定する。電子移動剤は、例えば、ポリマまたはゾル−ゲル固定化技法を用いて作用電極58上に固定することができる。また、電子移動剤は、ポリマーのような別の分子を介して直接的または間接的に作用電極58に化学(例えば、イオン、共有、配位)結合させることもでき、その結果、前記分子が作用電極58に結合される。
【0096】
図3Aおよび図3Bに示されているように、作用電極58a上への感知層64の適用は、作用電極58aの作用面を作成するための一方法である。電子移動剤は、分析物を電気酸化または電気還元するため電子の移動を媒介することにより、分析物を介して、作用電極58と対向電極60との間で電流が流れることを可能にする。電子移動剤の媒介により、電極上での直接的電気化学反応に適していない分析物の電気化学分析が容易になる。
【0097】
一般に、好ましい電子移動剤は、標準カロメル電極(SCE)のレドックス電位より数百ミリボルト高いかまたは低いレドックス電位を有する電気還元可能および電気酸化可能なイオンまたは分子である。電子移動剤が、SCEに対して、約−150mVを超えて還元することはなく、また約+400mVを超えて酸化することのないものであるのが好ましい。
【0098】
電子移動剤は、有機、有機金属、または無機であってもよい。有機レドックス種の例としては、キノンと、酸化された状態で、ナイルブルーやインドフェノールのようなキノイド構造を有する種とがある。幾つかのキノンと、部分的に酸化された幾つかのキンヒドロンは、分析物含有流体中の妨害タンパク質の存在により、前記レドックス種を本発明に係る幾つかのセンサにとって不適当なものにすることのある、システインのチオール基、リシンとアルギニンのアミン基、およびチロシンのフェノール基のようなタンパク質の官能基と反応する。通常、置換キノンおよびキノイド構造を有する分子は、タンパク質に対する反応性が低く、好ましい。好ましい4位置換(tetrasubstituted)キノンは、通常、1、2、3、および4の位置に炭素原子を有する。
【0099】
一般に、本発明における用途に適した電子移動剤は、サンプルの分析期間中の電子移動剤の拡散によるロスを防ぐか、または実質的に減少させる構造または荷電を有する。好ましい電子移動剤としては、結果として作用電極上に固定されるポリマに結合されたレドックス種が挙げられる。レドックス種とポリマ間の結合は、共有、配位、またはイオン結合であってもよい。有用な電子移動剤およびそれらの製造方法は、特許文献16、特許文献17、特許文献18および特許文献19に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。あらゆる有機または有機金属レドックス種がポリマに結合され、電子移動剤として使用されるが、好ましいレドックス種は、遷移金属化合物または錯体である。好ましい遷移金属化合物または錯体としては、オスミウム、ルテニウム、鉄、およびコバルト化合物または錯体が挙げられる。最も好ましいのは、オスミウム化合物および錯体である。下記レドックス種の多くも、一般に、ポリマ成分を用いることなく、電子移動剤の浸出が許容されるセンサの感知層中または担体流体中の電子移動剤として使用してもよいことは言うまでもない。
【0100】
一タイプの放出不可ポリマ性電子移動剤としては、ポリマ組成物中に共有結合したレドックス種が挙げられる。このタイプの媒体(mediator)の一例が、ポリビニルフェロセンである。
【0101】
別タイプの放出不可電子移動剤としては、イオン結合されたレドックス種が挙げられる。一般に、このタイプの媒体は、逆荷電レドックス種に結合した荷電ポリマを含む。このタイプの媒体の例としては、オスミウムまたはルテニウムポリピリジルカチオンのような正荷電レドックス種に結合されたナフィオン(登録商標)(デュポン)などの負荷電ポリマが挙げられる。イオン結合された媒体の別の例は、フェリシアン化物またはフェロシアン化物のような負荷電レドックス種に結合された四級化ポリ4−ビニルピリジン、または、ポリ1−ビニルイミダゾールのような正荷電ポリマである。好ましいイオン結合されたレドックス種は、逆荷電レドックスポリマ内に結合された高荷電レドックス種である。
【0102】
本発明に係る別の実施形態における、適切な放出不可電子移動剤としては、ポリマに配位結合したレドックス種が挙げられる。例えば、媒体は、ポリ1−ビニルイミダゾール、または、ポリ4−ビニルピリジンに対するオスミウムまたはコバルト2,2’− ビピリジル錯体の配位により形成される。
【0103】
好ましい電子移動剤は、一以上のリガンドを有するオスミウム遷移金属錯体であり、前記リガンドのそれぞれが、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、またはそれらの誘導体といった窒素含有複素環を有する。更に、好ましい電子移動剤は、ポリマ中で共有結合した一以上のリガンドを有し、前記リガンドのそれぞれが、ピリジン、イミダゾールまたはそれらの誘導体といった、少なくとも一つの窒素含有複素環を有するものである。これらの好ましい電子移動剤は、錯体が速やかに酸化および還元されるように、相互間および作用電極58間で速やかに電子を交換する。
【0104】
特に有用な電子移動剤の一例は、(a)ピリジンまたはイミダゾール官能基を有するポリマまたはコポリマと、(b)必ずしも同一でない二つのリガンドと複合体を形成したオスミウムカチオンとを含み、前記リガンドのそれぞれが、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、またはそれらの誘導体を含むものである。オスミウムカチオンとの錯形成反応用の2,2’−ビピリジンの好ましい誘導体は、4,4’− ジメトキシ− 2,2’−ビピリジンなどの、モノ−、ジ−、および、ポリアルコキシ−2,2’−ビピリジンおよび4,4’−ジメチル− 2,2’−ビピリジンである。オスミウムカチオンとの錯形成反応用の1,10−フェナントロリンの好ましい誘導体は、4,7’−ジメトキシ−1,10−フェナントロリンなどの、モノ−、ジ−、ポリアルコキシ−1,10−フェナントロリンおよび4,7’−ジメチル−1,10−フェナントロリンである。オスミウムカチオンとの錯形成反応用の好ましいポリマとしては、ポリ1−ビニルイミダゾール(「PVI」と称す)およびポリ4−ビニルピリジン(「PVP」と称す)のポリマおよびコポリマが挙げられる。ポリ1−ビニルイミダゾールの適切なコポリマ置換基としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、および置換または四級化N−ビニルイミダゾールが挙げられる。最も好ましいのは、ポリ1−ビニルイミダゾールのポリマまたはコポリマに対し錯形成反応が生じたオスミウムを有する電子移動剤である。
【0105】
好ましい電子移動剤は、標準カロメル電極(SCE)に対し、−100mV〜約+150mVの範囲内のレドックス電位を有する。電子移動剤の電位は、−100mV〜+150mVの範囲内であるのが好ましく、前記電位は、−50mV〜+50mVの範囲内であるのが更に好ましい。最も好ましい電子移動剤は、オスミウムレドックスセンタ、およびSCEに対し、+50mV〜−150mVの範囲内のレドックス電位を有する。
【0106】
触媒
感知層64は、分析物の反応に触媒作用を及ぼすことのできる触媒を含んでいてもよい。触媒はまた、幾つかの実施形態では、電子移動剤として機能することもできる。適した触媒の一例は、分析物の反応に触媒作用を及ぼす酵素である。例えば、分析物がグルコースである場合、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(例えば、ピロロキノリンキノングルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ))、またはオリゴ糖デヒドロゲナーゼのような触媒が使用できる。分析物がラクテートである場合、乳酸オキシダーゼまたは乳酸デヒドロゲナーゼが使用できる。分析物が酸素である場合、または酸素が分析物の反応に応じて発生するかまたは消費される場合、ラッカーゼが使用できる。
【0107】
触媒が、センサの固体感知層の一部であるか否か、または感知層内の流体中に溶媒和されているか否かにかかわらず、触媒は浸出不可能な状態でセンサ上に配されているのが好ましい。作用電極58からの、および患者の体内への望ましくない触媒の浸出を防ぐため、触媒は、センサ内(例えば、電極上、および/または、膜かフィルム内または間)に固定されているのがより好ましい。これは、例えば、触媒をポリマに付着させること、別の電子移動剤(上述したように、ポリマ性であり得る)で触媒を架橋すること、および/または、触媒よりも小さい孔径の一以上のバリヤ膜またはフィルムを設けることにより達成できる。
【0108】
上述のように、第二の触媒も使用できる。この第二の触媒は、しばしば、分析物の触媒反応により生じた生成化合物の反応に触媒作用を及ぼすのに使用される。第二の触媒は、一般に、電子移動剤と共に作用して、生成化合物を電解し、作用電極で信号を発生させる。また、第二の触媒は、下記に説明するように、妨害物質を除去する反応に触媒作用を及ぼすために、妨害物質排除層中に提供してもよい。
【0109】
本発明の一実施形態は、作用電極58の導電トレース52を形成する導電材料56中に触媒が混合または分散された電気化学センサである。これは、例えば、カーボンインクに酵素のような触媒を混合し、基板50の表面の溝54にその混合物を塗布することにより実現できる。触媒は、作用電極58から浸出できないように、溝53内に固定されるのが好ましい。これは、例えば、カーボンインク内の結合剤を、その結合剤に適した硬化技法を用いて硬化させることにより達成できる。硬化技法としては、例えば、溶剤または分散剤の蒸発、紫外線光への露光、または熱に晒すことが挙げられる。一般に、前記混合物は、触媒を実質的に劣化させない条件下で塗布される。例えば、触媒は、熱過敏性酵素であってもよい。酵素と導電材料の混合物は、好ましくは、連続した時間加熱されることなく、塗布し硬化させるべきである。前記混合物は、蒸発または紫外線硬化技法を用いて、または、触媒が実質的に劣化しないように十分短い時間熱に晒すことにより硬化できる。
【0110】
生体内分析物センサに関して考慮すべき別の事項としては、触媒の耐熱性が挙げられる。多くの酵素は、生体温度での安定性が乏しい。そこで、大量の触媒を使用することおよび/または必要温度(例えば、37℃または正常体温より高い温度)で熱安定性を有する触媒を使用することが必要となり得る。熱安定触媒とは、少なくとも一時間、好ましくは、少なくとも一日、より好ましくは、少なくとも三日間37℃で保持した場合、その活性のロスが5%未満である触媒と定義することができる。熱安定触媒の一例は、ダイズペルオキシダーゼである。この特殊な熱安定触媒は、同一または別個の感知層において、グルコースまたは乳酸オキシダーゼ或いはデヒドロゲナーゼと組み合わせた場合、グルコースまたはラクテートセンサに使用できる。熱安定触媒および電気化学発明におけるそれらの使用に関する更なる説明は、特許文献20、特許文献21、および1998年2月11日に出願された、「ダイズペルオキシダーゼ電気化学センサ(Soybean Peroxidase Electrochemical Sensor)」と題する特許文献22、代理人書類番号M&G12008.8WOI2に見られる。
【0111】
分析物の電解
分析物を電解するため、作用および対向電極58、60に渡って電位(対基準電位)を印可する。印可する電位の最低限の大きさは、しばしば、特定の電子移動剤、分析物(分析物が電極で直接電解される場合)、または第二の化合物(分析物レベルによってレベルが決まる酸素または過酸化水素のような第二の化合物が電極で直接電解される場合)によって決められる。印可する電位は、通常、所望の電気化学反応によって、電極で直接電解される電子移動剤、分析物、または第二の化合物のいずれかのレドックス電位と等しく、或いは、より酸化または還元するものである。作用電極の電位は、一般に、電気化学反応を完了または略完了させられるほど十分に高い。
【0112】
電位の大きさは、場合によっては、尿酸塩、アスコルベート、およびアセトアミノフェノンのような、(分析物に応じて発生する電流によって測定されるため)妨害物質の著しい電気化学反応を防ぐため自由に制限してもよい。これらの妨害物質が、下記のように妨害物質規制バリヤ(interferent−limiting barrier)を設けるか、或いは、バックグラウンド信号が得られる作用電極58b(図3A参照)を備えるといった別の方法で除去されている場合、上記電位の制限は必要なくなる。
【0113】
作用電極58と対向電極60との間に電位が印可されると、電流が流れる。電流は、分析物、または分析物によりそのレベルが影響を受ける第二の化合物の電解の結果得られる。一実施形態では、電気化学反応は、電子移動剤および任意の触媒を介して生じる。多くの分析物Bは、適切な触媒(例えば、酵素)の存在の下、電子移動剤種Aにより生成物Cに酸化(または還元)される。そして、電子移動剤Aは、電極で酸化(または還元)される。電子は、電極によって集められ(または電極から排除され)、その結果生じた電流を測定する。この方法は、反応式(1)および(2)で示される(触媒の存在下での、レドックス媒体Aによる分析物Bの還元に関して同様の式が書ける):
【化1】
【化2】
【0114】
一例として、電気化学センサは、二つの浸出不可フェロシアニドアニオン、二つの水素イオン、およびグルコノラクトンを生成するための、グルコースオキシダーゼの存在下での、グルコース分子の二つの浸出不可フェリシアニドアニオンとの反応に基づくものであってもよい。存在するグルコースの量は、浸出不可フェロシアニドアニオンを浸出不可フェリシアニドアニオンに電気酸化し、電流を測定することにより較正される。
【0115】
別の実施形態では、分析物によりそのレベルが影響を受ける第二の化合物は、作用電極で電解される。場合によって、反応式(3)に示されているように、分析物Dと、この場合酸素のような反応化合物Eである第二の化合物は、触媒の存在の下で反応する。
【化3】
【0116】
その後、反応式(4)に示されているように、反応化合物Eは、作用電極で直接酸化(または還元)される。
【化4】
【0117】
或いは、反応式(5)および(6)に示されているように、反応化合物Eは電子移動剤Hを用いて(場合によっては、触媒の存在の下)間接的に酸化(または還元)され、引き続き電極で還元または酸化される。
【化5】
【化6】
【0118】
いずれの場合も、作用電極の信号によって示されるような、反応化合物の濃度の変化は、分析物の変化に反比例して対応する(つまり、分析物レベルが高くなるにつれ、反応化合物のレベルと電極の信号が低下する)。
【0119】
他の実施例では、関連した第二の化合物は、反応式(3)に示されているように、生成化合物Fである。生成化合物Fは、分析物Dの触媒反応により形成され、電極で直接電解されるか、または電子移動剤と、オプションとして触媒を用いて、間接的に電解される。これらの実施形態では、作用電極での生成化合物Fの直接または間接的電解により発生する信号は、(生成化合物の他の供給源があるのでなければ)分析物レベルに直接対応する。分析物レベルが高くなるにつれて、作用電極の生成化合物および信号のレベルが高くなる。
【0120】
当技術分野の当業者は、同様の結果を実現する多くの異なった反応があることを認識しているであろう。すなわち、分析物のレベルによってレベルの決まる化合物または分析物の電解がある。反応式(1)〜(6)は、そのような反応の非限定例を示す。
【0121】
温度プローブ
センサには、様々な選択自由なアイテムが含まれていてもよい。選択自由な一アイテムが温度プローブ66(図8および図11)である。温度プローブ66は、様々な公知のデザインおよび材料を用いて作製される。典型的な一温度プローブ66は、温度依存特性を有する材料を使用して形成される、温度依存要素72により互いに接続されている二つのプローブリード68、70を用いて形成される。適した温度依存特性の一例は、温度依存要素72の抵抗性である。
【0122】
二つのプローブリード68、70は、一般に、金属、合金、グラファイトなどの半金属、縮退型または高度ドープ処理半導体、またはスモールバンドギャップ半導体を用いて形成される。適切な材料の例としては、金、銀、酸化ルテニウム、窒化チタン、二酸化チタン、インジウムをドープした酸化すず、スズをドープした酸化インジウム、またはグラファイトが挙げられる。温度依存要素72は、一般に、プローブリードと同様の導電材料、或いは、電圧発生装置が温度プローブ66の二つのプローブリード68、70に取り付けられている場合、温度依存信号を提供する、抵抗性のような温度依存特性を有するカーボンインク、炭素繊維、または白金のような別の材料から成る細かいトレース(例えば、プローブリード68、70よりも断面の小さい導電トレース)を使用して作製される。温度依存要素72の温度依存特性は、温度とともに向上または低下し得る。温度依存要素72の特性の温度依存性は、必須事項ではないが、生体温度(約25〜45度)の予想範囲全体に渡って、温度に対し略直線的に示されるのが好ましい。
【0123】
一般に、温度の関数である振幅または他の特性を有する信号(例えば、電流)は、温度プローブ66の二つのプローブリード68、70の両端に電位を供給することにより得られる。温度が変化するにつれて、温度依存要素72の温度依存特性は、信号振幅における相応の変化と共に向上または低下する。温度プローブ66からの信号(例えば、プローブを流れる電流量)は、例えば、温度プローブ信号を測定した後、作用電極58における信号と、測定された温度プローブ信号とを加算するか、または、作用電極58における信号から測定された温度プローブ信号を減算することにより、作用電極58から得られた信号と組合せることができる。このようにして、温度プローブ66は、作用電極58からの出力に対し温度調整をし、作用電極58の温度依存性を相殺することができる。
【0124】
温度プローブの一実施形態は、図8に示されているように、間隔をおいて配置された二つの溝を接続する連絡用溝として形成される温度依存要素72と共に、間隔をおいて配置された二つの溝として形成されるプローブリード68、70を備えている。間隔をおいて配置された二つの溝は、金属、合金、半金属、縮退型半導体、または金属化合物のような導電材料を含む。連絡用溝は、(連絡用溝の断面が間隔をおいて配置された二つの溝より小さい場合)プローブリード68、70と同様の材料を含んでいてもよい。他の実施形態では、連絡用溝内の材料はプローブリード68、70の材料と異なる。
【0125】
この特殊な温度プローブを形成するための典型的な一方法は、間隔をおいて配置される二つの溝を形成した後、そこに金属または合金導電材料を充填することを含む。次に、連絡用溝を形成した後、望ましい材料を充填する。連絡用溝内の材料は、電気的接続を生じさせるため、間隔をおいて配置された二つの溝のそれぞれにおける導電材料と部分的に重なる。
【0126】
温度プローブ66を適切に作動させるには、二つのプローブリード68、70間に形成された導電材により、温度プローブ66の温度依存要素72を短絡させてはならない。更に、体内またはサンプル流体内のイオン種による二つのプローブリード68、70間の伝導を防ぐため、温度依存要素72と、好ましくは、プローブリード68、70の患者に埋め込まれる部分にカバーを設けてもよい。そのカバーは、例えば、イオン伝導を防ぐように、温度依存要素72およびプローブリード68、70上に配される非導電性フィルムであってもよい。適した非導電性フィルムとしては、例えば、カプトン(Kapton)(商標)ポリイミドフィルム(デュポン、ウィルミングトン、ディーイー)が挙げられる。
【0127】
体内またはサンプル流体中のイオン種による伝導を排除または減少させる別の方法は、プローブリード68、70に接続された交流電圧発生装置を使用することである。この方法では、正および負のイオン種は、交流電圧の各半サイクル毎に交互に引き寄せられそして跳ね返される。これにより、温度プローブ66に対し、体内またはサンプル流体中のイオンの正味吸引は生じない。また、温度依存要素72を流れる交流電圧の最大振幅は、作用電極58からの測定値を補正するのに使用してもよい。
【0128】
温度プローブは、電極と同じ基板上に配置することができる。また、温度プローブは、別個の基板上に配置してもよい。更に、温度プローブは、それ自体で、または他の装置と共に使用してもよい。
【0129】
温度プローブの別の実施形態は、溶液(例えば、血液または間質液)の導電率の温度依存性を利用するものである。一般に、電解質の濃度が比較的一定であるとすると、電解質含有液の導電率は、その溶液の温度によって決められる。血液、間質液、および他の体液は、比較的一定レベルの電解質を有する溶液である。よって、センサ42は、周知の間隔を置いて配置された二以上の導電トレース(図示なし)を備えることもできる。これらの導電トレースの一部は、溶液に対して露出し、導電トレースの露出部間の導電率を周知の技術(例えば、一定または周知の電流または電位を印加し、それぞれ得られた電位または電流を測定することにより導電率を測定する)を用いて測定する。
【0130】
導電率における変化は、温度変化と相関関係を有する。この関係は、一次式、二次式、指数関数またはその他の関係式を用いて模式化できる。この関係のパラメータは、一般に、殆どの人々の間で大きく変化することはない。温度プローブの較正は、各種方法により決定することができ、例えば、温度を測定する別個の方法(例えば、温度計、光学または電気温度検出器、或いは上述した温度プローブ66)を用いた各センサ42の較正、または、一センサ42を較正し、その較正を、形状寸法の均一な一バッチのその他全てのセンサに使用するといった方法が挙げられる。
【0131】
生体親和性層
図9に示されているように、任意のフィルム層75は、少なくともセンサ42の患者の皮下に挿入される部分上に形成される。この任意のフィルム層74は、一以上の機能を果たすことができる。フィルム層74は、大きな生体分子の電極への浸透を防ぐ。これは、排除されるべき生体分子よりも孔径の小さいフィルム層74を使用することにより実現される。そのような生体分子は、電極および/または感知層64を汚染することがあり、それによりセンサ42の有効性を低下させ、一定の分析物濃度に対し予想される信号振幅を変化させることがある。作用電極58の汚染により、センサ42の有効寿命が短縮されることもある。生体親和性層74は、タンパク質のセンサ42への付着、凝血塊の形成、およびセンサ42と身体間の他の望ましくない相互作用を防ぐこともできる。
【0132】
例えば、センサは、生体親和性コーティングでその外面を完全にまたは部分的に被覆されていてもよい。好ましい生体親和性コーティングは、分析物含有流体と平衡状態にある場合、少なくとも20重量%流体を含有するヒドロゲルである。適正なヒドロゲルの例は、特許文献23に記載されており、これを参照し本明細書において援用する。適正なヒドロゲルの例としては、ポリエチレンオキシドテトラアクリレートのような架橋ポリエチレンオキシドが挙げられる。
【0133】
妨害物質排除層
センサ42には、妨害物質排除層(図示なし)が含まれていてもよい。妨害物質排除層は、生体親和性層75または物質移動制限層74(後述)に組入れても、別個の層であってもよい。妨害物質とは、直接、または電子移動剤を介して電極で電気還元または電気酸化され疑似信号を発生させる分子または他の種である。一実施形態では、フィルムまたは膜は、作用電極58の周辺領域への一以上の妨害物質の浸透を防ぐ。この種の妨害物質排除層は、分析物質に対するよりも妨害物質の一つ以上に対する透過性がかなり低いのが好ましい。
【0134】
妨害物質排除層は、イオン成分と同じ荷電を有するイオン性妨害物質に対する妨害物質排除層の透過性を低下させるため、ポリマ性マトリックスに組込まれたナフィオン(Nafion)(登録商標)のようなイオン成分を含んでいてもよい。例えば、負荷電化合物または負イオンを形成する化合物を妨害物質排除層に取り入れて、体内またはサンプル流体の負種の透過を減少させてもよい。
【0135】
妨害物質排除層の別の例は、妨害物質を除去する反応に触媒作用を及ぼす触媒を含む。そのような触媒の一例は、ペロキシダーゼである。過酸化水素は、アセトアミノフェン、尿酸塩、およびアスコルベートといった妨害物質と反応する。過酸化水素は、分析物含有流体に添加、または、例えば、それぞれグルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼの存在の下、グルコースまたはラクテートの反応により原位置で生成され得る。妨害物質排除層の例としては、(a)架橋剤としてグルテルアルデヒド(gluteraldehyde)を用いて、(b)NaIO4でペルオキシダーゼ糖酵素のオリゴ糖基を酸化し、ポリアクリルアミドマトリックスのヒドラジド基に形成されたアルデヒドを結合させヒドラゾンを形成することにより架橋されたペルオキシダーゼ酵素が挙げられ、これは、特許文献24および特許文献25に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0136】
物質移動制限層
物質移動制限層74は、作用電極58周辺領域への、分析物、例えば、グルコースまたはラクテートの物質移動率を低下させるため、拡散制限バリヤとして機能するようにセンサに備えられていてもよい。分析物の拡散を制限することにより、作用電極58近傍での分析物の定常状態濃度(体内またはサンプル流体内の分析物濃度に比例する)を低下させることができる。これにより、正確に測定できる分析物濃度の上限が広がり、電流が分析物レベルと共に略直線的に増加する範囲も拡大される。
【0137】
フィルム層74を通る分析物の浸透性が、温度変化によって殆どまたは全く変化しないことにより、温度変化による電流の変化を減少させるかまたは排除するのが好ましい。このため、約25℃〜約40℃まで、また最も重要である、30℃〜40℃までの生体関連温度範囲において、フィルムの孔径もその水和性または膨張性も過度に変化しないことが好ましい。物質移動制限層は、24時間に吸収される流体が5重量%未満であるフィルムを用いて作製されるのが好ましい。これにより、温度プローブのあらゆる必要性を低下させるかまたは排除することが可能である。埋込型センサにおいて、物質移動制限層は、37℃で24時間の間に吸収される流体が5重量%未満であるフィルムを使用して作製されるのが好ましい。
【0138】
フィルム層74に特に有用な材料は、センサがテストする分析物含有流体中で膨張しない膜である。適した膜は、直径3〜20,000nmの孔を有する。明確で均一な孔径と高アスペクト比を有する、直径5〜500nmの孔を備えた膜が好ましい。一実施形態では、孔のアスペクト比が2以上であるのが好ましく、より好ましくは5以上である。
【0139】
明確で均一な孔は、放射性核が放出する加速電子、イオン、または粒子を用いて、ポリマ膜を飛跡エッチングすることにより作製できる。最も好ましいのは、加熱時、孔の方向よりも孔に対して垂直な方向への膨張が少ない異方性で、ポリマ性の飛跡エッチングされた膜である。適したポリマー性膜としては、ポレティクス(Poretics)(リバーモア(Livermore)、シーエー(CA)、カタログ番号19401、0.01μm孔径ポリカーボネート膜)および、コーニンングコスター コーポレーション(Corning Costar Corp.)(ケンブリッジ(Cambridge)、エムエー(MA)、0.015μm孔径のヌークレオポア(Nucleopore)(商標)ブランド膜)のポリカーボネート膜が挙げられる。他のポリオレフィンおよびポリエステルフィルムを使用してもよい。物質移動制限膜の透過性の変化が、膜が皮下組織液中にある場合、30℃〜40℃の範囲内の1℃につき4%以下、好ましくは、3%以下、更に好ましくは2%以下であるのが好ましい。
【0140】
本発明に係る幾つかの実施形態において、物質移動制限層74は、センサ42内への酸素の流れを制限することもできる。これにより、酸素の分圧における変化が、センサの応答に非線形性を生じさせる状況において使用されるセンサ42の安定性を向上させることができる。これらの実施形態において、物質移動制限層74は、前記膜の分析物の移動制限と比較して、酸素の移動を少なくとも40%、好ましくは、少なくとも60%、および更に好ましくは、少なくとも80%制限する。一定のタイプのポリマでは、より高い密度(例えば、結晶性ポリマーに近い密度)を有するフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルの酸素に対する透過性は一般に低く、よって、ポリカーボネート膜よりも好ましい。
【0141】
抗凝固剤
埋込型センサはまた、オプションとして、患者に埋め込まれる基板の部分に施された抗凝固剤を有していてもよい。この抗凝固剤は、特に、センサの挿入後、センサ周囲の血液または他の体液の凝固を減少させるか、または排除することができる。凝血塊は、センサを汚染したり、またはセンサ内に拡散する分析物の量を復元不可能に減少させる場合がある。有用な抗凝固剤の例としては、ヘパリンおよび組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、および、他の公知の抗凝固剤が挙げられる。
【0142】
抗凝固剤は、センサ42の埋め込まれる部分の少なくとも一部に適用できる。抗凝固剤は、例えば、浴、スプレー、ブラッシング、または浸漬により適用できる。抗凝固剤は、センサ42上で乾燥させる。抗凝固剤は、センサの表面上に固定させるか、または、センサ表面から拡散させてもよい。一般に、センサ上に施される抗凝固剤の分量は、凝血を含む医学的症状の治療に一般に使用される量を遥かに下回り、よって、限定された局所的な効果しかもたない。
【0143】
センサの寿命
センサ42は、生体内分析物モニタ、および、特に埋込型分析物モニタの、交換可能な部品となるように設計することもできる。一般に、センサ42は数日間に渡って機能することができる。機能する期間は、少なくとも一日であるのが好ましく、更に好ましくは、少なくとも三日、最も好ましくは、少なくとも一週間である。また、センサ42は、取り除き、新しいセンサと交換することができる。センサ42の寿命は、電極の汚染、或いは、電子移動剤または触媒の浸出により短縮される場合がある。センサ42の耐用年数に関するこれらの制約は、上述したように、生体親和性層75、または浸出不可電子移動剤および触媒をそれぞれ使用することにより克服できる。
【0144】
センサ42の寿命に関する別の主な制約は、触媒の温度安定性である。多くの触媒は、環境温度に非常に敏感で、患者の体温(例えば、人体では約37℃)で品質が低下することのある酵素である。よって、入手可能な限りにおいて、丈夫な酵素を使用すべきである。センサ42は、十分な量の酵素が不活性化され、読取値に容認できない量のエラーが発生する場合、交換すべきである。
【0145】
挿入装置
挿入装置120は、図12に示すように、センサ42を患者の皮下に挿入するために使用することができる。挿入装置120は一般的に、金属または硬質プラスチックのような、構造的硬質材料を使用し形成される。好ましい材料としては、ステンレス鋼やABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)プラスチックが挙げられる。幾つかの実施形態においては、挿入装置120は、患者の皮膚への侵入を容易にするよう先端部121を尖らせおよび/または鋭くする。鋭く薄い挿入装置により、センサ42の挿入に際して患者の感じる痛みが減少する場合もある。他の実施形態において、挿入装置120の先端部121は、他の形状を有し、鈍いまたは平らな形状がある。これらの実施形態は、挿入装置120が皮膚に侵入するのではなく、むしろセンサ42を皮膚に押し入れる際にセンサ42の構造上の支持体としての役割を果たす場合特に有用であり得る。
【0146】
挿入装置120は、図13A、図13Bおよび図13Cに示されているように、様々な断面形状を有していてもよい。図13Aに示されている挿入装置120は、硬質材料から成る平たい平面状の尖ったストリップであり、センサ42に取り付けられるかまたは他の方法で組み合わされ、患者の皮膚内へのセンサ42の挿入を容易にすると共に、挿入中センサ42を構造的に支持する。図13Bおよび13Cの挿入装置120は、センサ42を支持し、挿入中センサ42の屈曲または湾曲量を制限するUまたはV字型用具である。図13Bおよび13Cに示した挿入装置120の断面幅124は、一般に1mm以下であり、好ましくは、700μm以下、更に好ましくは、500μm以下、最も好ましくは、300μm以下である。図13Bおよび13Cに示した挿入装置120の断面高さ126は、一般に約1mm以下であり、好ましくは、約700μm以下、更に好ましくは、約500μm以下である。
【0147】
センサ42自体が、挿入を容易にするための選択自由な特性を備えることもできる。例えば、センサ42は、図12に示されているように、挿入を容易にするため先端部123を尖らせてもよい。更に、センサ42は、患者の皮下組織にセンサ42を保持する役目を果たす掛かり部125を備えていてもよい。掛かり部125は、センサ42の作動中、患者の皮下組織内でのセンサ42の固定を助けることもできる。しかしながら、掛かり部125は一般に、交換を目的としてセンサ42を除去する際、皮下組織に対し殆ど損傷を与えることがないように十分小さいものである。センサ42は、切り欠き部127を備えていてもよく、切り欠き部127は、挿入装置の対応構造(図示なし)と協力して挿入中センサ42に対し圧力をかけるために使用されるが、挿入装置120を取り外す際にははずれる。挿入装置におけるそのような構造体の一例は、挿入装置120の向き合った二つの側面の間で、挿入装置120の適切な高さに位置するロッド(図示なし)である。
【0148】
操作に際し、センサ42は挿入装置120内または隣接して設置され、挿入装置120および/またはセンサ42に対し力を加えセンサ42を患者の皮膚内に送る。一実施形態では、挿入装置120は固定されたまま留まりセンサ42を構造的に支持しながら、センサ42に力を加えセンサを皮膚内に押し込む。或いは、挿入装置120およびオプションとしてセンサ42に力を加え、センサ42および挿入装置120双方の一部を患者の皮膚を通して皮下組織内に押し込む。挿入装置120は、オプションとして、センサ42と患者の組織間の摩擦力により皮下組織にセンサ42が残留している状態で皮膚および皮下組織から引き抜かれる。センサ42が選択自由な掛かり部125を有する場合、この構造により、その掛かり部が組織に係止されるため、間質組織内におけるセンサ42の停留も容易になる。
【0149】
挿入装置120および/またはセンサ42に加えられる力は、手動でまたは機械的に印加してもよい。好ましくは、センサ42は患者の皮膚を通して再現可能に挿入される。一実施形態では、挿入銃を使用してセンサを挿入する。センサ42挿入用の挿入銃200の一例を図26に示す。挿入銃200は、筐体202およびキャリア204を有する。挿入装置120は、一般に、キャリア204上に載置され、センサ42は挿入装置120内に前もって搭載される。キャリア204は、挿入銃200内の、例えば、円錐形状(cocked)または巻線状バネ、圧縮ガスのバースト、または第二の磁石により反撥する電磁石などを用いて、センサ42、オプションとして、挿入装置120を患者の皮膚内に推進する。場合によって、例えば、バネを使用する場合、キャリア204と挿入装置を移動させるか、上向きにする(cocked)か、または別の方法で患者の皮膚に向けるように準備する。
【0150】
挿入銃200は、センサ42を挿入した後、患者の皮膚から挿入装置120を引き出す機構を備えていてもよい。このような機構は、ばね、または電磁石などを使用して挿入装置120を除去することもできる。
【0151】
挿入銃は再利用可能なものであり得る。挿入装置120は、汚染の可能性を避けるために使い捨てできることが多い。また、挿入装置120は殺菌し再利用することもできる。更に、挿入装置120および/またはセンサ42は、センサ42の汚れを防ぐため抗凝固剤で被覆されていてもよい。
【0152】
一実施形態において、センサ42は皮下への埋込みを目的として、患者の間質組織に2〜12mm差込む。好ましくは、センサは3〜9mm、更に好ましくは5〜7mm間質組織に差込む。本発明に係る他の実施形態は、例えば、静脈、動脈、または器官といった、患者の他の部位に埋め込まれるセンサも含まれる。埋め込み深さは、所望の埋め込みターゲットによって変化する。
【0153】
センサ42は体内のどこに挿入してもよいが、多くの場合、皮膚上センサ制御装置44を隠せるように挿入部位を位置付けるのが望ましい。また、多くの場合、挿入部位は、患者の痛みを減少させるため、体の神経終末密度の低い場所であるのが望ましい。センサ42の挿入および皮膚上センサ制御装置44の配置に好ましい部位の例としては、腹部、大腿部、下脚、上腕および肩が挙げられる。
【0154】
挿入角度は、皮膚面から測定される(例えば、センサを皮膚に対して垂直に挿入する場合、90°の挿入角度となる)。挿入角度は、通常、10〜90°の範囲内、一般に、15〜60°の範囲内、しばしば30〜45°の範囲内である。
【0155】
皮膚上センサ制御装置
皮膚上センサ制御装置44は、患者の皮膚上に設置するように構成する。皮膚上センサ制御装置44は、オプションとして、患者にとって快適で、例えば、患者の衣服の下に隠せる形状に形成される。皮膚上センサ制御装置44を隠して設置するには、患者の体の部位では、大腿部、下脚、上腕、肩、または腹部が好都合である。しかしながら、皮膚上センサ制御装置44は、患者の体の他の部分に配置してもよい。皮膚上センサ制御装置44の一実施形態は、図14〜16に示しているように、より隠しやすくするため薄い楕円形状をしている。しかしながら、他の形状およびサイズを用いてもよい。
【0156】
皮膚上センサ制御装置44の特定の外形、並びに高さ、幅、長さ、重量、および体積は変えることもでき、また、以下述べるように、少なくとも部分的には、皮膚上センサ制御装置44に含まれる構成要素および関連機能によって決められる。例えば、幾つかの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の高さは、1.3cm以下、好ましくは、0.7cm以下である。幾つかの実施形態において、皮膚上センサ制御装置44の重量は、90グラム以下、好ましくは45グラム以下、更に好ましくは25グラム以下である。いくつかの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の体積は約15cm3以下、好ましくは、約10cm3以下、更に好ましくは、約5cm3以下、最も好ましくは、約2.5cm3以下である。
【0157】
図14〜16に示しているように、皮膚上センサ制御装置44は筐体45を有する。一般に筐体45は、患者の皮膚上に載置される単一の一体型ユニットとして形成される。筐体45は一般に、皮膚上センサ制御装置44の、後述する電子部品の殆どまたは全てを収納する。通常、皮膚上センサ制御装置44は、他の電子部品または他の装置に対して使用する付加的ケーブルまたはワイヤを含まない。筐体が二以上のパーツから成る場合には、一般に、それらパーツを組合せて単一の一体型ユニットを形成する。
【0158】
図14〜16に示した皮膚上センサ制御装置44の筐体45は、様々な材料を使用して形成することができ、例えば、プラスチックやポリマ材料、特に硬質熱可塑性プラスチックおよびエンジニアリング熱可塑性プラスチックが挙げられる。適した材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABSポリマ、それらのコポリマが挙げられる。皮膚上センサ制御装置44の筐体45は、様々な技術を用いて形成することができ、例えば、射出成形、圧縮成形、鋳込成形、および他の成形方法が挙げられる。皮膚上センサ制御装置44の筐体45に、中空または凹領域を形成してもよい。後述する皮膚上センサ制御装置44の電子部品および/または、バッテリまたは可聴警報用スピーカーといったその他のアイテムを、その中空または凹領域に設置することもできる。
【0159】
幾つかの実施形態において、導電コンタクト80は、筐体45外部に設けられる。他の実施形態では、導電コンタクト80は、例えば、中空または凹領域内といった筐体45内部に設けられる 幾つかの実施形態では、プラスチックまたはポリマ材料を成形するか、またはその他の方法で形成する際に、電子部品および/または他のアイテムは、皮膚上センサ制御装置44の筐体45内に組み込まれる。他の実施形態では、成形された材料の冷却中、または成形された材料を再加熱し柔軟にした後、電子部品および/または他のアイテムは、筐体45内に組み込まれる。また、電子部品および/または他のアイテムは、ネジ、ナットとボルト、くぎ、ステープル、およびリベットなどの締結物、或いは、コンタクト接着剤、感圧接着剤、粘着剤、エポキシ材、および接着樹脂等のような接着剤を用いて筐体45に固定してもよい。電子部品および/または他のアイテムが、筐体45に全く付加されない場合もある。
【0160】
幾つかの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の筐体45は単一ピースである。導電コンタクト80は、センサ42が導電コンタクト80にアクセスできるように導く開口部78が筐体45にある場合、筐体45の外面または内面に形成してもよい。
【0161】
幾つかの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の筐体45は、組み合わせられて筐体45を形成する、少なくとも二つの別個の部分、例えば、図14〜16に示しているようなベース74とカバー76で形成される。筐体45の二以上の部分は、互いに完全に別個のものであってもよいが、筐体45の二つ以上の部分の少なくとも幾つかが、例えば、ヒンジにより共に接合され、皮膚上センサ制御装置44の筐体45を形成するために前記部分を容易に組合せられるようにしてもよい。
【0162】
皮膚上センサ制御装置44の筐体45のこれらの二つ以上の別個の部分は、例えば、噛み合い隆起部、或いは一方の部品に隆起部、他方の部品に相補型の溝といったような相補型の噛み合い構造を有していてもよく、それにより二つ以上の別個の部品を簡単および/またはしっかりと組み合わせることもできる。特に、それらの部品を時によって分解し再度組立てる場合、例えば、バッテリまたはセンサ42を交換する場合、これは役立つ場合がある。しかしながら、二つ以上の部品を組み合わせる上で、他の締結物を使用することもでき、例えば、ネジ、ナットとボルト、くぎ、ステープル、またはリベット等が挙げられる。更に、永続的または一時的な接着剤も使用でき、例えば、コンタクト接着剤、感圧接着剤、粘着剤、エポキシ材、および接着樹脂等が使用できる。
【0163】
一般に、筐体45は少なくとも耐水性のものであり、流体の流れが、例えば、導電コンタクト80といった筐体内の部品と接触するのを防ぐ。筐体が防水性のものであるのが好ましい。一実施形態において、筐体45の二つ以上の部品、例えば、ベース74とカバー76が、流体が皮膚上センサ制御装置44の内部に流入できないように、互いに密に嵌合し、気密、防水または耐水密閉機構を形成する。これは、特に患者が、シャワーを浴びたり、入浴したり、または泳いだりといった活動をする場合、導電コンタクト、バッテリまたは電子部品のような皮膚上センサ制御装置44内のアイテムの腐食電流および/または劣化を防ぐのに有用であり得る。
【0164】
本明細書に使用している耐水性とは、海水面から水深一メートルの水中に浸漬する場合、耐水密封機構または筐体を通して水が浸入しないことを意味する。本明細書に使用している防水とは、海水面から水深10メートル、好ましくは50メートルの水中に浸漬する場合、防水密封機構または筐体を通して水が侵入しないことを意味する。多くの場合、皮膚上センサ制御装置の電子回路機構、電源装置(例えば、バッテリ)、および導電コンタクト、並びに、センサのコンタクトパッドは、耐水、好ましくは、防水環境に収納されているのが望ましい。
【0165】
ベース74およびカバー76のような筐体45の前記部分の他に、製造中または製造後組立て可能な、皮膚上センサ制御装置44の他の個別形成部片があってもよい。個別形成部片の一例は、ベース74またはカバー76の凹部に嵌入する電子部品用カバーである。別の例は、ベース74またはカバー76に備えられたバッテリ用カバーである。皮膚上センサ制御装置44のこれらの個別形成部片は、皮膚上センサ制御装置44のベース74、カバー76、またはその他の部品に対し、例えば、電子部品用カバーのように永続的に固定されていてもよいし、例えば、バッテリ用の取り外し可能なカバーのように取り外し可能に固定されていてもよい。これらの個別形成部片の固定方法としては、ネジ、ナットとボルト、ステープル、くぎ、およびリベット等の締結物、さねはぎ構造体のような摩擦性締結物、並びにコンタクト接着剤、感圧接着剤、粘着剤、エポキシ材、および接着樹脂等の接着剤の使用が挙げられる。
【0166】
皮膚上センサ制御装置44の一実施形態は、装置を作動させるバッテリも含め完全な使い捨て装置である。患者が装置を開けたり、または、取り除いたりする必要のある部分はなく、よって、装置を小型化でき、またその構造を簡単なものにすることができる。オプションとして、皮膚上センサ制御装置44を使用するまで休眠モードにしておきバッテリのパワーを保存する。皮膚上センサ制御装置44は、使用されていることを検出し始動する。使用状態は、多くの機構によって検出される。例えば、電気的コンタクトの抵抗の変化の検出や、取付け装置77(図27Aおよび28A参照)と皮膚上センサ制御装置44を組み合わせることによるスイッチの作動が挙げられる。皮膚上センサ制御装置44は、閾値範囲内でもはや作動しなくなった場合、例えば、バッテリまたはその他の動力源が十分なパワーを発生させない場合、一般に交換される。皮膚上センサ制御装置44のこの実施形態は、筐体45の外面に導電コンタクト80を有する場合が多い。センサ42が患者に埋め込まれると、導電コンタクト80がセンサ42のコンタクトパッド49と接触した状態で、センサ制御装置44がセンサ42上に配置される。
【0167】
皮膚上センサ制御装置44は、一般に、図17に示しているように患者の皮膚75に設置される。皮膚上センサ制御装置44は、様々な技術により設置可能であり、例えば、皮膚75と接触する皮膚上センサ制御装置44の筐体45の少なくとも一部に備えられた接着剤で、直接患者の皮膚75に皮膚上センサ制御装置44を付着させるたり、または、センサ制御装置44の縫合開口部(図示なし)を通して皮膚75に皮膚上センサ制御装置44を縫合したりすることがあげられる。
【0168】
皮膚上センサ制御装置44の筐体45を皮膚75に設置する別の方法としては、取付け装置77を使用することが挙げられる。取付け装置77は、皮膚上センサ制御装置44の一部であることが多い。適した取付け装置77の一例は、両面粘着性ストリップがあり、その一面は患者の皮膚面に付着させ、他方の面は皮膚上センサ制御装置44に付着させる。この実施形態において、取りつけ装置77は、選択自由な開口部79を有していてもよく、開口部79を通してセンサ42を挿入するのに十分な大きさのものである。また、センサは、薄い接着剤を介して皮膚に挿入してもよい。
【0169】
皮膚上センサ制御装置44を患者の皮膚75に直接または取付け装置77を使用して付着させるために、各種接着剤が使用でき、例えば、感圧接着剤(PSA)またはコンタクト接着剤が挙げられる。好ましくは、少なくとも特定のセンサ42が患者に埋め込まれている期間中患者全員または過半数に対し、刺激を与えることのない接着剤が選ばれる。また、取付け装置77の接着剤によって皮膚が刺激される患者が、第二の接着剤または他の皮膚保護配合物で皮膚をカバーし、その後、前記第二の接着剤または他の皮膚保護配合物上に取付け装置77を配置することができるように、第二の接着剤または他の皮膚保護配合物が取付け装置と共に備えられていてもよい。これにより、患者の皮膚への刺激を実質的には防げるはずである。というのも、取付け装置77の接着剤は、皮膚と接触しなくなり、その代わりに、第二の接着剤または他の皮膚保護配合物と接触することになるからである。
【0170】
センサ42を交換する場合、皮膚上センサ制御装置44は、例えば、過度の刺激を防ぐため、患者の皮膚75上の別の位置に移動させてもよい。或いは、皮膚上センサ制御装置44を移動させるべきであると判断されるまで、皮膚上センサ制御装置44は患者の皮膚上の同一場所に留めておいてもよい。
【0171】
皮膚上センサ制御装置44に使用される取付け装置77の別の実施形態を図27Aおよび27Bに示す。皮膚上センサ制御装置44の取付け装置77と筐体45は、例えば、図27Aに示しているように、嵌合した状態で共に装着されている。取付け装置77は、例えば、プラスチックまたはポリマ材料を用いて形成され、そのような材料の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABSポリマ、およびそれらのコポリマが挙げられる。取付け装置77は、様々な技術を用いて形成することが可能であり、例えば、射出成形、圧縮成形、鋳込成形、および他の成形方法が挙げられる。
【0172】
取付け装置77は一般に、患者の皮膚に付着するためその底面に接着剤を備えているか、若しくは、取付け装置77は、例えば、両面粘着テープ等と共に使用される。取付け装置77は一般に、図27Bに示すように、開口部79を有し、それを通してセンサ42が挿入される。取付け装置77はまた、皮膚上センサ制御装置42の導電コンタクトに対し、所定の場所にセンサ42を保持するための支持構造体220を備えていてもよい。取付け装置77はまた、オプションとして、センサ42上の開口部のような構造体(図示なし)に対応する、取付け装置77からの材料の延長部のような位置決め構造体222を備え、例えば、その二つの相補型構造体を位置合わせすることにより、センサ42の正確な位置決めを容易にすることもできる。
【0173】
別の実施形態においては、図28Aに示すように、皮膚上センサ制御装置44の筐体45を保護および/または密封するための選択自由なカバー206と共に皮膚上センサ制御装置44の組み合わされた取付け装置77と筐体45が粘着性貼付剤204上に設けられる。選択自由なカバーは、筐体45および/または取付け装置77に取り付けるための接着剤、または、他の仕組みを備えていてもよい。図28Bに示すように、取付け装置77は一般に、開口部49を有し、その開口部49によりセンサ42を露出させる。開口部49は、オプションとして、挿入装置120または挿入銃200(図26参照)を使用して開口部49を介してセンサ42を挿入できるように構成してもよい。皮膚上センサ制御装置44の筐体45は、図28Cに示すようにベース74とカバー76を有する。図28Dに示すように、筐体45の底面図には、開口部230が示されており、その開口部230を通して導電コンタクト(図示なし)は延び、センサ42のコンタクトパッドと接続される。図28Eに示すように、オプションとして、皮膚上センサ制御装置44内に回路部品の設置用ボード232を設けてもよい。
【0174】
幾つかの実施例において、皮膚上センサ制御装置44および/または取付け装置77の実施形態のいずれかの接着剤は、耐水性または防水性のものであり、皮膚上センサ制御装置44の患者の皮膚75への密着性を維持し、且つ、少なくとも幾つかの実施形態においては、センサ制御装置44内への水の侵入を防ぎ、シャワーを浴びることおよび/または入浴することといった活動を可能にする。耐水性または防水性筐体45と組み合わせて耐水性または防水性接着剤を使用することにより、センサ制御装置44の部品および導電コンタクト80とセンサ42間の接触を、破損または腐食から保護する。水を弾く非刺激性接着剤の一例は、テガダーム(Tegaderm)(3M社、ミネソタ州セントポール)である。
【0175】
一実施形態においては、図14〜16に示すように、皮膚上センサ制御装置44はセンサ口78を備えており、そこを通してセンサ42は患者の皮下組織に入る。センサ42はセンサ口78を通して患者の皮下組織に挿入してもよい。その後、センサ42がセンサ口78をくぐり抜けた状態で、皮膚上センサ制御装置44を患者の皮膚上に配置することもできる。センサ42の筐体45が、例えばベース74とカバー76とを有する場合、患者が、導電コンタクト80との接触のための適切な位置にセンサ42を導けるように、カバー76は取り除かれてもよい。
【0176】
また、導電コンタクト80が筐体45内にある場合、患者はコンタクトパッド49と導電コンタクト80が接触するまでセンサ42を筐体45内へと滑動させてもよい。センサ制御装置44は、一旦コンタクトパッド49が導電コンタクト80と接触した状態でセンサ42が適切に位置付けられると、センサ42の筐体内への更なる滑動を妨ぐ構造になっていてもよい。
【0177】
他の実施形態において、導電コンタクト80は、筐体45の外面にある(例えば、図27A〜27Bおよび28A〜28E参照)。これらの実施形態では、患者はセンサ42のコンタクトパッド49を導電コンタクト80と接触させる。場合によっては、センサ42を適切な位置に導く案内構造体を筐体45に設けてもよい。そのような構造体の一例には、筐体45から延設され、センサ42の形状を有する一組の案内用レールが挙げられる。
【0178】
幾つかの実施形態において、センサ42が挿入装置120(図12参照)を使用して挿入される場合、挿入装置120の先端部または選択自由な挿入銃200(図26参照)を、所望の挿入点で皮膚または取付け装置77に対して位置付ける。いくつかの実施形態では、挿入装置120は、いかなる案内部も使用することなく皮膚上に配置される。他の実施形態において、挿入装置120または挿入銃200は、取付け装置77の案内部(図示なし)または皮膚上センサ制御装置44のその他の部分を利用して配置される。幾つかの実施形態では、取付け装置77のそれら案内部、開口部79および/または皮膚上センサ制御装置44の筐体45のセンサ口78は、挿入装置120の先端部および/または挿入銃200の形状に対し相補形であり、開口部79および/またはセンサ口78に対する挿入装置120および/または挿入銃200の配置方向を制限する形状を有する。そして、開口部79またはセンサ口78の相補形状を、挿入装置120および/または挿入銃200と合わせ、センサを患者の皮下に挿入することができる。
【0179】
幾つかの実施形態において、a)案内部、開口部79またはセンサ口78およびb)挿入装置120または挿入銃200の形状は、その二つの形状が単一方向においてのみ嵌合可能なように構成する。これは、患者に新しいセンサを挿入する際にはいつも同一方向にセンサ42を挿入するように手助けする。このように挿入方向を同一にすることは、確実にセンサ42のコンタクトパッド49を皮膚上センサ制御装置44の適切な導電コンタクト80と正確に揃えるために、幾つかの実施形態において必要とされる場合がある。更に、上述したように、挿入銃を使用することにより、確実にセンサ42が均一で再現可能な深さに挿入されるようにすることもできる。
【0180】
センサ42と皮膚上センサ制御装置44内の電子部品は、図14〜16に示すように、導電コンタクト80を介して接続される。一以上の作用電極58、対向電極60(または対向/基準電極)、選択自由な基準電極62、および選択自由な温度プローブ66は、別個の導電コンタクト80に取り付けられる。図14〜16に示す実施例では、導電コンタクト80は皮膚上センサ制御装置44の内面に設けられている。皮膚上センサ制御装置44の他の実施形態では、導電コンタクトが筐体45の外面に配されている。導電コンタクト80の配置は、センサ42が皮膚上センサ制御装置44内に適切に配置されている場合、センサ42のコンタクトパッド49と接触するようになっている。
【0181】
図14〜16に示す実施例では、皮膚上センサ制御装置44のベース74とカバー76とは、センサ42が皮膚上センサ制御装置44内にあり、ベース74とカバー76とを互いに嵌め込む場合、センサ42が屈曲するように形成されている。このようにして、センサ42のコンタクトパッド49を皮膚上センサ制御装置44の導電コンタクト80と接触させる。皮膚上センサ制御装置44は、オプションとして、センサ42を正確な位置に保持、支持、および/または案内する支持構造体82を備えていてもよい。
【0182】
本発明を限定するものではないが、適切な導電コンタクト80の例を図19A〜19Dに示す。一実施形態において、導電コンタクト80は、図19Aに示すようにピン84等であり、皮膚上センサ制御装置44の部品、例えば、ベース74とカバー76を互いに嵌め込む場合、センサ42のコンタクトパッド49と接触させる。支持体82をセンサ42の下に設け、センサ42のコンタクトパッド49とピン84との適切な接触を高めてもよい。ピンは、一般に、金属若しくは合金、例えば、銅、ステンレス鋼、または銀などの導電材料を用いて作製される。各ピンは、センサ42のコンタクトパッド49と接触するため、皮膚上センサ制御装置44から延びる遠心端を有する。各ピン84はまた、皮膚上センサ制御装置44内の残りの電子部品(例えば、図18Aおよび18Bの電圧発生装置95や測定回路96)に接続されることになるワイヤまたは他の導電ストリップに接続される近位端も有する。また、ピン84は残りの電子部品に直接接続してもよい。
【0183】
別の実施形態において、導電コンタクト80は、図19に示すように、分散した絶縁領域90を備えた一連の導電領域88として形成される。導電領域88は、センサ42のコンタクトパッド49の大きさと同一かまたはそれより大きくし、位置合わせに関する問題を緩和することもできる。しかしながら、絶縁領域90は、導電コンタクト80に対するセンサ42とコンタクトパッド49の予測される位置ずれに基づいて決定されるため、一つの導電領域88が二つのコンタクトパッド49と重なり合わないように充分な幅を有するはずである。導電領域88は、金属、合金、または導電性カーボンといった材料を用いて形成される。絶縁領域90は、例えば、絶縁プラスチックまたはポリマ材を含む周知の絶縁材料を使用して形成してもよい。
【0184】
更なる一実施形態では、図19Cに示すように、センサ42のコンタクトパッド49と、皮膚上センサ制御装置44に埋設されるかまたは他の方法で形成された導電コンタクト80との間に、単一方向性導電性接着剤92を使用してもよい。
【0185】
更に別の実施形態では、図19Dに示すように、導電コンタクト80は、導電部材94であり、皮膚上センサ制御装置44の表面から延設され、導電パッド49に接触する。これらの部材は、様々な異なった形状にすることもできるが、互いに電気的に絶縁されていなければならない。導電部材94は、金属、合金、導電性カーボン、または導電プラスチックおよびポリマを用いて作製できる。
【0186】
上記の典型的な導電コンタクト80はいずれも、図19A〜19Cに示すように皮膚上センサ制御装置44の内部上面、図19Dに示すように皮膚上センサ制御装置44の内部下面、または、特にセンサ42がセンサの両面にコンタクトパッド49を有する場合、皮膚上センサ制御装置44の内部上面および下面の両方から延設されていてもよい。
【0187】
筐体45外面の導電コンタクト80の形状は、図19Eおよび19Fに示すような様々な形状であってもよい。例えば、導電コンタクト80は、筐体45に埋設(図19E)または筐体45から延設(図19F)されていてもよい。
【0188】
導電コンタクト80は、センサ42のコンタクトパッド49との接触により腐食しないであろう材料を使用して作製されるのが好ましい。腐食は、二つの異なった金属を接触させた場合生じることがある。よって、コンタクトパッド49がカーボンを用いて形成される場合には、好ましい導電コンタクト80は金属または合金を含むあらゆる材料で作製することができる。しかしながら、コンタクトパッド49のいずれかが、金属または合金で作られている場合、金属コンタクトパッドとの接続用の好ましい導電コンタクト80は、導電性カーボンまたは導電性ポリマのような非金属導電材料を用いて作製されるか、或いは、導電コンタクト80と導電パッド49を単一方向性導電性接着剤のような非金属材料で分離する。
【0189】
一実施形態では、センサ42と皮膚上センサ制御装置44との間の電気的接触を排除する。動力は、例えば、センサや皮膚上センサ制御装置上に狭い間隔で配置されたアンテナ(例えば、外装コイル(facing coils))(図示なし)を使用して、誘導結合によりセンサに伝達される。センサ制御装置44の電気的特性(例えば、電流)における変化により、アンテナ近辺の磁界を変化させる。その磁界変化が、センサのアンテナ内に電流を誘発する。その結果、センサおよび皮膚上センサ制御装置の近傍には、適度に効率良く動力が伝達されることになる。センサ内の誘発された電流は、ポテンシオスタット、演算増幅器、コンデンサ、集積回路、送信機、およびその他センサ構造体内に形成された電子部品に動力を供給するために使用してもよい。データは、例えば、同一または別個のアンテナを介した誘導結合および/またはセンサの送信機を介した信号の送信を用いて、センサ制御装置に送り返される。誘導結合を利用することにより、センサと皮膚上センサ制御装置との間の電気的接触を排除できる。一般に、このような接触はノイズや故障の原因となっている。更に、センサ制御装置を完全に密閉し、皮膚上センサ制御装置の防水性を高めることも可能である。
【0190】
典型的な皮膚上センサ制御装置44は、下記方法で準備および使用できる。底面に接着剤を備えた取付け装置77を皮膚に適用する。センサ42および挿入装置120を装着した挿入銃200(図26参照)を、取付け装置77に対し位置決めする。挿入銃200と取付け装置77は、オプションとして、一つのポジションでのみその二つが適切に嵌合するように設計することもできる。挿入銃200を作動させ、センサ42の一部と、オプションとして挿入装置120の一部とを、皮膚を介して、例えば、皮下組織に推進する。挿入銃200は、皮膚を介して挿入されたセンサ42の一部を残して挿入装置200を引き出す。そして、皮膚上センサ制御装置44の筐体45を取付け装置77に結合させる。オプションとして、筐体45と取付け装置77とは、一つのポジションでのみその二つが適切に嵌合するように形成される。筐体45と取付け装置77とが嵌合することにより、センサ42のコンタクトパッド49(図2参照)と皮膚上センサ制御装置44の導電コンタクト80とが接触する。オプションとして、この動作により皮膚上センサ制御装置44を始動させる。
【0191】
皮膚上制御装置電子機器回路
皮膚上センサ制御装置(on−skin sensor control unit)44はまた、一般に、センサ42および分析物モニタ装置システム40を作動させる電子部品の少なくとも一部を備えている。皮膚上制御装置44における電子機器回路の一実施形態を図18Aにおいてブロック図として示している。皮膚上センサ制御装置44の電子部品には、一般に、皮膚上制御装置44とセンサ42を作動させるための電源装置95と、センサ42から信号を得てセンサ42を作動させるセンサ回路97と、センサ信号を所望のフォーマットに変換する測定回路96と、最低限、センサ回路97および/または測定回路96から信号を得て、その信号を選択自由な送信機98に提供する処理回路109とが含まれる。幾つかの実施形態において、処理回路109は、センサ42からの信号を部分的または完全に評価し、その結果得られたデータを選択自由な送信機98に伝達し、および/または、分析物レベルが閾値を超える場合、選択自由な警報システム94(図18B参照)を始動させることもできる。処理回路109は、デジタル論理回路機構を有するものが多い。
【0192】
皮膚上センサ制御装置44は、オプションとして、センサ信号または処理回路109からの処理データをレシーバ/表示装置46、48に送信する送信機98、処理回路109からのデータを一時的または永続的に記憶するデータ記憶装置102、温度プローブ66から信号を受信し、温度プローブ66を作動させる温度プローブ回路99、センサにより生成された信号と比較するため基準電圧を提供する基準電圧発生装置101、および/または皮膚上センサ制御装置44内の電子部品の動作をモニターする監視回路103を備えていてもよい。
【0193】
更に、センサ制御装置44は、トランジスタのような半導体デバイスを利用したデジタルおよび/またはアナログ素子を備えていることもよくある。これらの半導体デバイスを作動させるため、皮膚上制御装置44は他の素子を備えていてもよく、例えば、アナログおよびデジタル半導体デバイスに正確にバイアスをかけるバイアス制御発生装置105、クロック信号を提供するオシレータ107、および回路のデジタル素子に対し、論理演算およびタイミング信号を提供するデジタル論理およびタイミング素子109が挙げられる。
【0194】
これら素子の一作動例として、センサ回路97および選択自由な温度プローブ回路99は、センサ42から測定回路96に未処理の信号を提供する。測定回路96は、例えば、電流−電圧コンバータ、電流−周波数コンバータ、および/または2進カウンタ、若しくは、未処理信号の絶対値に比例した信号を生成する他のインディケータを用いてその未処理信号を所望のフォーマットに変換する。これは、例えば、未処理信号を、デジタル論理回路が使用することのできるフォーマットに変換するのに使用してもよい。そして、処理回路109は、オプションとして、データを評価し、コマンドを出し電子機器回路を作動させてもよい。
【0195】
図18Bは、他の典型的な皮膚上制御装置44のブロック図を示しており、例えば、較正データを受信するためのレシーバ99と、例えば、工場設定較正データ、レシーバ99を介して得られた較正データおよび/または、例えば、レシーバ/表示装置46、48または他の外部装置から受信した演算信号を保持するための較正記憶装置100と、患者に警告する警報システム104と、警報システムを切る停止スイッチ111といった選択自由な素子も備えている。
【0196】
分析物モニタシステム40およびセンサ制御装置44の機能は、ソフトウェアルーチン、構成機器、またはそれらを組み合わせたものの何れかを用いて実行することもできる。例えば、集積回路または個別電子部品を含む構成機器は、各種技術を用いて実行することができる。一般に、集積回路を使用することにより、電子機器回路が小型化され、それによって、より小型の皮膚上センサ制御装置44を得ることもできる。
【0197】
皮膚上センサ制御装置44およびセンサ42における電子機器回路は、電源装置95を使用して作動させる。適切な電源装置95の一例は、バッテリであり、例えば、多くの時計、補聴器、および他の小型電子素子に使用されるもののような薄い円形バッテリである。バッテリの寿命は30日以上であるのが好ましく、より好ましくは3ヶ月以上、そして最も好ましくは1年以上である。バッテリは、皮膚上制御装置44内の最も大きな素子の一つであることが多いため、バッテリのサイズは最小限にするのが望ましい場合が多い。例えば、好ましいバッテリの厚さは0.5mm以下であり、好ましくは0.35mm以下、最も好ましくは、0.2mm以下である。複数のバッテリを使用してもよいが、一般に、バッテリは一個のみ使用するのが好ましい。
【0198】
センサ回路97は、センサ制御装置44の導電コンタクト80を介して一以上のセンサ42、42’に接続される。各センサはそれぞれ、最低限、作用電極58、対向電極60(または、対向/基準電極)、および選択自由な基準電極62である。二以上のセンサ42、42’を使用する場合、一般に、各センサは別個の作用電極58を有するが、対向電極60、対向/基準電極、および/または基準電極52は共有することもできる。
【0199】
センサ回路97は、センサ42またはセンサ42、42’から信号を受信し、センサ42またはセンサ42、42’を作動させる。センサ回路97は、電流測定、電量分析、電位差、電解電量測定、および/または他の電気化学技術を使用して、センサ42から信号を得ることもできる。センサ回路97は、ここでは、センサ42からの電流測定信号を得るものとして例示しているが、センサ回路は、他の電気化学技術を用いて信号を得るように適切に構成できることは言うまでもない。電流測定による測定値を得るため、センサ回路97は一般に、センサ42に一定の電位を供給するポテンシオスタットを備えている。他の実施形態では、センサ回路97は、センサ42に一定の電流を供給し、電量分析測定値または電位差測定値を得るために使用できるアンペロスタットを備えている。
【0200】
センサ42からの信号は、一般に、分析物の濃度によって変化する、例えば、電流、電圧または周波数といった少なくとも一つの特性を備えている。例えば、センサ回路97が電流測定法を用いて作動する場合には、信号電流が分析物濃度によって変化する。測定回路96は信号の情報伝達部を一特性から他の特性へと変換する回路機構を備えていてもよい。例えば、測定回路96は、電流−電圧または電流−周波数コンバータを備えていてもよい。この変換の目的は、例えば、より容易に送信され、デジタル回路で判読でき、そして/またはノイズの一因となり難い信号を提供することが挙げられる。
【0201】
標準的電流−電圧コンバータの一例を図20Aに示す。このコンバータにおいて、センサ42からの信号は、演算増幅器130(「オペアンプ」)の入力端子134に供給され、抵抗器138を介して出力端子136に結合される。しかしながら、この特定の電流−電圧コンバータ131は、小型CMOSチップにおける実行が困難であるかもしれない。なぜならば、抵抗器の集積回路での実行が困難であることがよくあるからである。一般に、個別の抵抗器素子が使用される。しかしながら、個別素子を使用することにより、回路機構が必要とする空間が増す。
【0202】
上記の代わりとして、電流−電圧コンバータ141を図20Bに示す。このコンバータは、入力端子144に供給されたセンサ42からの信号と入力端子142に供給された基準電位とを有するオペアンプ140を備えている。コンデンサ145は、入力端子144と出力端子146との間に配置する。更に、スイッチ147a、147b、149aおよび149bが設けられており、クロック(CLK)周波数によって決められた割合でコンデンサに充電および放電させる。作動中、半サイクルの間、スイッチ147aと147bが閉鎖され、スイッチ149aと149bとが開放されることにより、印加電位V1によりコンデンサ145に充電させる。もう一方の半サイクルの間、スイッチ147aと147bが開放され、スイッチ149aと149bとが閉鎖されることにより、コンデンサ145をアースし、部分的にまたは完全に放電させる。コンデンサ145の反応インピーダンスは、抵抗器138(図20A参照)の抵抗値に近似していることから、コンデンサ145を抵抗器に匹敵したものとすることができる。この「抵抗器」の値は、コンデンサ145のキャパシタンスおよびクロック周波数によって決まる。クロック周波数を変化させることにより、コンデンサの反応インピーダンス(「抵抗値」)が変化する。コンデンサ145のインピーダンス(「抵抗」)値は、クロック周波数を変えることにより変化させてもよい。スイッチ、147a、147b、149aおよび149bは、例えば、トランジスタを使用してCMOSチップにおいて実行してもよい。
【0203】
電流−周波数コンバータは、測定回路96に使用してもよい。適切な一電流−周波数コンバータは、センサ42からの信号を用いて、コンデンサを充電することを含む。コンデンサ全体の電位が閾値を上回った場合、コンデンサに放電させる。このように、センサ42からの電流が多くなればなるほど、より迅速に閾値電位に到達する。これにより、センサ42からの電流が増加するにつれて周波数が高くなる、コンデンサの充電および放電に対応した交番特性(alternating characteristic)を有するコンデンサ全体に渡った信号が得られることになる。
【0204】
幾つかの実施形態において、分析物モニタシステム40は、一以上のセンサ42に割り振られた二以上の作用電極58を備えている。これらの作用電極58は、品質管理を目的として使用してもよい。例えば、二以上の作用電極58を使用して取り出された出力信号および/または分析データを比較して、作用電極からの信号が所望の許容レベル内に当てはまるかどうか判断することもできる。出力信号が当てはまらない場合には、患者は一センサまたは複数センサを交換するように警告を受けることもできる。幾つかの実施形態では、二つのセンサ間での不一致が所定の期間持続した場合のみ患者は警告を受ける。二つの信号の比較は、測定毎または規則的な間隔で行ってもよい。代わりに、若しくは、更に、その比較は患者または別の人が行ってもよい。また、両センサからの信号は、データ生成に使用してもよく、或いは、一つの信号を比較後、廃棄してもよい。
【0205】
また、例えば、二つの作用電極58が共通の対向電極60を有し、分析物濃度が電流測定法により測定されるとすると、作用電極が適切に作動している場合、所定の許容レベル内で、対向電極60における電流は各作用電極における電流の二倍でなければならない。さもなければ、上述のように、一センサまたは複数のセンサを交換しなければならない。
【0206】
品質管理を目的として一作用電極のみからの信号を使用する一例としては、単一作用電極を使用して得られた連続した読取値を比較し、それらの差異が閾値レベルを超えているかどうかを判断することが挙げられる。その差異が、一読取値に関して、または、一定期間に渡って、または、一定期間内の所定数の読取値に関して、閾値レベルよりも大きい場合、患者はセンサ42を交換するよう警告を受ける。一般に、連続した読取値および/または閾値は、センサ信号の予測される全可動域が所望のパラメータの範囲内にある(つまり、センサ制御装置44が分析物濃度の実際の変化をセンサの故障とみなさない)ように決定される。
【0207】
センサ制御装置44はまた、オプションとして、温度プローブ回路99を備えていてもよい。温度プローブ回路99は、温度プローブ66全体に定電流(または定電位)を提供する。結果得られた電位(または、電流)は、温度依存性素子72の抵抗力によって変化する。
【0208】
センサ回路97および選択自由な温度プローブ回路からの出力は、センサ回路97および選択自由な温度プローブ回路99から信号を得て、少なくとも幾つかの実施形態において、例えば、デジタル回路が読み取ることのできる形態の出力データを提供する測定回路96に結合される。測定回路96からの信号は、処理回路109に送られ、そして選択自由な送信機98にデータを提供することもできる。処理回路109は、一以上の下記機能を備えていてもよい。1)測定回路96からの信号を送信機98に送信する。2)測定回路96からの信号をデータ記憶回路102に送信する。3)例えば、電流−電圧コンバータ、電流−周波数コンバータ、または電圧−電流コンバータを使用して、(例えば、測定回路96が行わなかった場合)信号の情報伝達特性を一特性から別の特性に変換する。4)較正データおよび/または温度プローブ回路99からの出力を利用してセンサ回路97からの信号を修飾する。5)間質液中の分析物レベルを測定する。6)間質液から得たセンサ信号に基づいて血流中の分析物レベルを決定する。7)分析物のレベル、変化速度、および/または変化速度の加速率が一以上の閾値を上回るかまたは一致するかどうか判断する。8)閾値と一致するか、または、上回った場合、警報を作動させる。9)一連のセンサ信号に基づいて分析物レベルにおける傾向を評価する。10)薬物の適用量を決定する。11)例えば、多数の作用電極58からの読取値を平均または比較する信号により、ノイズおよび/またはエラーを減少させる。
【0209】
処理回路109は、簡単なもので、これら機能の内の一つまたは少数の機能のみ実行するものであってもよいし、若しくは、処理回路109は、より高性能なもので、これら機能の全てまたは殆どを実行するものであってもよい。皮膚上センサ制御装置44のサイズは、処理回路109が実行する機能数の増加、およびそれら機能の複雑化に伴って大きくなる場合がある。これら機能の多くは、皮膚上センサ制御装置44の処理回路109において実行するのではなく、レシーバ/表示装置46、48(図22参照)の別のアナライザ152で実行してもよい。
【0210】
測定回路96および/または処理回路109の一実施形態は、作用電極58と対向電極60との間に流れる電流を出力データとして提供する。測定回路96および/または処理回路109はまた、センサ42の温度を表示する選択自由な温度プローブ66からの信号を出力データとして提供することもできる。温度プローブ66からのこの信号は、温度プローブ66を流れる電流と同様に簡単なものであってもよいし、また、処理回路109は、センサ42の温度との相関関係により、測定回路96から得た信号から温度プローブ66の抵抗力を決定する装置を備えていてもよい。そして、出力データは送信機98に送られ、その後、送信機98はこのデータを少なくとも一つのレシーバ/表示装置46、48に送信することもできる。
【0211】
処理回路109に戻って、幾つかの実施形態において、処理回路109はより高性能であり、分析物濃度、若しくは、電流または電圧値のような分析物濃度に関する測定代替値を測定できる。処理回路109は、作用電極58からの信号または分析データに、温度補正をするための温度プローブの信号を組み込むこともできる。例えば、温度プローブ測定値を基準化し、作用電極58からの信号または分析データに基準化した測定値を加算または減算することが挙げられる。処理回路109はまた、いずれも後で述べるが、外部源から受信したか、或いは、処理回路109に組み込まれている較正データを組み込んで、作用電極58からの信号または分析データを補正してもよい。更に、処理回路109は、間質中の分析物レベルを血中の分析物レベルに変換する補正アルゴリズムを有していてもよい。間質中の分析物レベルの血液中の分析物レベルへの変換については、例えば、シュミトケら(Schmidtke et al.)の「インシュリン注射後のネズミにおける血液および皮下グルコース濃度間の過渡的差異の測定およびモデリング(Measurement and Modeling of the Transient Difference Between Blood and Subcutaneous Glucose Concentrations in the Rat after Injection of Insulin)」Proc. of the Nat'l Acad. of Science, 95, 294〜299(1998)並びに、キンら(Quinn et al.)の「0.3mm電流測定マイクロセンサで測定したネズミにおける皮下組織へのグルコース送達の動力学(Kinetics of Glucose Delivery to Subcutaneous Tissue in Rats Measured with 0.3mm Amperometric Microsensors)」Am. J. Physiol.、 269(Endocrinol. Metab. 32)、 E155〜E161(1995)に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0212】
幾つかの実施形態において、処理回路109からのデータは、分析され、使用者に警告するため警報システム94(図18B参照)に送られる。これらの実施形態の内の少なくとも幾つかにおいては、センサ制御装置が、データ分析や患者への警告を含む、必要とされる機能の全てを実行するため、送信機は使用されない。
【0213】
しかしながら、多くの実施形態においては、処理回路109からのデータ(例えば、電流信号、変換された電圧または周波数信号、若しくは、完全にまたは部分的に分析されたデータ)は、皮膚上センサ制御装置44の送信機98を用いて、一以上のレシーバ/表示装置46、48に送信される。送信機は、筐体45に形成されたワイヤまたは類似の導体のようなアンテナ93を備えている。一般に、掌サイズのベルト装着型レシーバのような小型レシーバ/表示装置46に送信する場合、送信機98は、約2メートル以上、好ましくは、約5メートル以上、更に好ましくは約10メートル以上信号を送信できるように設計される。ベッドサイドレシーバのようなより性能のよいアンテナを備えた装置に送信する場合、その有効範囲は長くなる。後で詳細に説明するように、レシーバ/表示装置46、48の適切な例としては、容易に身に付けられるかまたは持ち運び可能な装置、若しくは、患者が眠っている時、例えば、ナイトテーブルに具合良く配置できる装置が挙げられる。
【0214】
送信機98は、一般に処理回路109の高性能度によって、レシーバ/表示装置46、48に様々な異なった信号を送信することもできる。例えば、処理回路109は、温度または較正値に対し如何なる相関関係も持たない、単に未処理の信号、例えば作用電極58からの電流を提供することもできる。また、処理回路109は、例えば、電流−電圧コンバータ131または141、若しくは、電流−周波数コンバータを使用して得られる変換された信号を提供することもできる。その後、未処理の測定値または変換された信号は、レシーバ/表示装置46、48のアナライザ152(図22参照)で処理され、オプションとして温度および較正補正値を用いて、分析物レベルを決定することもできる。別の実施形態において、処理回路109は、未処理の測定値を、例えば、温度および/または較正情報を用いて補正し、その後送信機98が補正された信号、並びに、オプションとして温度および/または較正情報をレシーバ/表示装置46、48に送信する。更に別の実施形態において、処理回路109は、間質液および/または(間質液レベルに基づいて)血液中の分析物レベルを算出し、その情報を、一以上のレシーバ/表示装置46、48に送信し、オプションとして、未処理データおよび/または較正若しくは温度情報のいずれかも共に送信する。更なる実施形態において、処理回路109は分析物濃度を算出するが、送信機98は、未処理の測定値、変換された信号、および/または補正された信号のみを送信する。
【0215】
皮膚上センサ制御装置44において経験される可能性のある一つの難点は、時間の経過に伴って送信機98の送信周波数が変化することである。この可能性のある難点を克服するため、送信機は、送信機98の周波数を所望の周波数または周波数帯域に戻すことのできる、選択自由な回路機構を備えていてもよい。適切な回路機構の一例を、開ループ変調システム200のブロック図として、図21に示す。開ループ変調システム200は、位相検波器(PD)210、装入ポンプ(CHGPMP)212、ループフィルタ(L.F.)214、電圧制御型オシレータ(VCO)216、およびM回路による除算(÷M)218を備え、位相ロックループ220を形成している。
【0216】
分析物モニタ装置40は、例えば、一以上のレシーバ/表示装置46、48のレシーバと送信機98との間の無線周波数(RF)通信に開ループ変調システム200を使用する。この開ループ変調システム230は、送信機とその付随レシーバとの間に、信頼性の高い無線周波数(RF)結合を提供するように設計される。このシステムは、周波数変調方式(FM)を採用し、従来の位相ロックループ(PLL)220を使用して伝達波中心周波数をロックする。作動中、位相ロックループ220は変調前に開放される。変調中、位相ロックループ220は、送信機の中心周波数がレシーバの帯域幅内である限り開放されたままである。送信機が、中心周波数がレシーバの帯域幅からはみ出そうとしていることを検出すると、レシーバには、中心周波数が捕捉されるまでスタンバイするよう信号が送られる。捕捉後、送信が再開される。中心周波数の捕捉、位相ロックループ220の開放、変調、そして、中心周波数の再捕捉というこのサイクルは、必要なサイクル数だけ繰り返される。
【0217】
ループ制御装置240は、位相ロックループ220のロック状態を検出し、位相ロックループ220を閉鎖および開放させるものである。ループ制御装置240と共に多回路総合計器250は、中心周波数の状態を検出する。変調制御装置230は、変調信号を生成するものである。送信増幅器(transmitt amplifier)260は、適切な送信信号パワーを確保するために設けられている。基準周波数は、非常に安定した信号源(図示なし)がら生成され、Nブロックによる除算(÷N)270によりNで割られる。データおよび制御信号は、データバス280とコントロールバス290を介して開ループ変調システム200に受信される。
【0218】
開ループ変調システム200の動作は、閉鎖状態の位相ロックループ220から始まる。ループ制御装置240がロック状態を検出すると、位相ロックループ220を開放し、変調制御装置230が変調信号の生成を開始する。多回路総合計器250は、プログラムされた間隔で、(Mで割られた)VCO周波数をモニターする。モニター周波数を、多回路総合計器250でプログラムされた閾値と比較する。この閾値は、レシーバの中間周波数段階の3dBカットオフ周波数に対応する。モニターされた周波数が閾値に近づくと、ループ制御装置240は通報を受け、スタンバイコードがレシーバに送信され、位相ロックループ220が閉鎖される。
【0219】
この時点で、レシーバはウェイトモードになっている。送信機のループ制御装置240が、位相ロックループ220を閉鎖する。そして、変調制御装置230が、オフラインされ、多回路総合計器250のモニター値がリセットされ、そして、位相ロックループ220がロックされる。ループ制御装置240がロック状態を検出すると、ループ制御装置240は位相ロックループ220を開放し、変調制御装置230がオンラインされ、スタンバイコードを送信するサイクルが開始される時点である、位相ロックループ220の中心周波数が閾値に接近するまでレシーバへのデータ送信が再び続けられる。÷N270および÷M218ブロックは、送信機の周波数チャネルを設定する。
【0220】
このようにして、開ループ変調システム200は、分析物モニタシステムに対し、高信頼低電力FMデータ送信を提供する。搬送波の中心周波数をレシーバ帯域幅内に保持しながら、開ループ変調システム200は広帯域周波数変調方法を提供する。送信機の中心周波数を引張る寄生コンデンサおよびインダクタの影響は、位相ロックループ220により補正される。更に、多回路総合計器250およびループ制御装置240は、中心周波数のずれを検出する新たな方法を提供する。最後に、開ループ変調システム200は、CMOS処理において容易に実行される。
【0221】
送信機98のデータ送信速度は、センサ回路97が信号を得る速度および/または処理回路109がデータまたは信号を送信機98に供給する速度と同一であってもよい。或いは、送信機98はより遅い速度でデータを送信してもよい。この場合、送信機98は、送信毎に一つより多くのデータポイントを送信できる。或いは、データ送信毎に一つのデータポイントのみが送られ、残りのデータは送信されなくてもよい。一般に、データは少なくとも1時間毎、好ましくは、少なくとも15分毎、更に好ましくは少なくとも5分毎、最も好ましくは少なくとも1分毎にレシーバ/表示装置46、48に送信される。しかしながら、他のデータ送信速度を採用してもよい。幾つかの実施形態において、処理回路109および/または送信機98は、例えば、分析物の低レベルまたは高レベル、或いは、分析物の切迫した低または高レベルといった状態が示された場合、より高速でデータを処理および/または送信するように構成される。これらの実施形態では、加速されたデータ送信速度は、一般に、少なくとも5分毎、好ましくは少なくとも1分毎である。
【0222】
送信機98に加えて、皮膚上センサ制御装置44は選択自由なレシーバ99を備えていてもよい。送信機98は、送信機とレシーバの両方として作動する送受信機である場合もある。レシーバ99は、センサ42用較正データの受信に使用してもよい。較正データは、センサ42からの信号を補正するために処理回路109で使用されてもよい。この較正データは、レシーバ/表示装置46、48または、医師の診療室の制御装置のような他の何らかの源から送信されてもよい。更に、選択自由なレシーバ99は、上述したように、レシーバ/表示装置46からの信号の受信や、送信機98への、例えば周波数または周波数帯域変更の指示、選択自由な警報システム94の始動または停止(後述)、および/または送信機98へのより高速での送信の指示に使用してもよい。
【0223】
較正データは、様々な方法で得られる。例えば、較正データは、レシーバ99を使用して皮膚上センサ制御装置44に入力できる、単なる工場測定較正測定値であったり、或いは、皮膚上センサ制御装置44自体の較正データ記憶装置100に記憶されていてもよい(この場合、レシーバ99を必要としない場合もある)。較正データ記憶装置100は、例えば、読出し可能または読出し可能/書込み可能記憶回路であってもよい。
【0224】
代替もしくは付加的較正データは、医師または他の専門家、若しくは、患者自身が行ったテストに基づいて提供することもできる。例えば、糖尿病患者が市販のテスト用キットを使用して自分自身の血糖濃度を測定することは一般的である。このテスト結果を、適切な入力装置(例えば、キーパッド、光信号レシーバ、またはキーパッドまたはコンピュータへの接続口)が、皮膚上センサ制御装置44に組み込まれている場合には直接的に、また、較正データをレシーバ/表示装置46、48に入力し、その較正データを皮膚上センサ制御装置44に送信することにより間接的に皮膚上センサ制御装置44に入力する。
【0225】
分析物レベルを別個に測定する他の方法も、較正データを得るのに使用してもよい。このタイプの較正データは、工場測定較正値の代わりとして使用するか、または工場測定較正値を補足してもよい。
【0226】
本発明の幾つかの実施形態においては、正確な分析物レベルが報告されていることを確認するために、周期的間隔、例えば、8時間毎、一日一回、または一週間に一回、較正データを必要とする場合がある。較正はまた、新しいセンサ42が埋め込まれる度に、若しくは、センサが閾値最小値または最大値を超えた場合、または、センサ信号の変化速度が閾値を超えた場合必要とされることがある。場合によっては、センサ42の埋め込み後、センサ42が平衡状態に達するように較正する前に一定時間待つ必要がある。幾つかの実施形態では、センサ42を挿入後のみ較正し、他の実施形態では、センサ42の較正を必要としない。
【0227】
皮膚上センサ制御装置44および/またはレシーバ/表示装置46、48は、例えば、較正を行ってから次に較正を行うまでの間の所定の周期的時間間隔に基づいて、または、新しいセンサ42の植込みに際して較正データを必要とすることを示す聴覚または視覚的インディケータを備えていても良い。皮膚上センサ制御装置44および/またはレシーバ/表示装置46、48はまた、所定の周期的時間間隔内、および/または新しいセンサ42を植込んだ後センサ42の較正を行っていないため、分析物モニタ装置40によって報告された、分析物レベルなどの情報が、正確なものでない場合があることを患者に気づかせるための聴覚的または視覚的インディケータを備えていても良い。
【0228】
皮膚上センサ制御装置44の処理回路109および/またはレシーバ/表示装置46、48のアナライザ152は、いつ較正データが必要とされるか、および較正データが許容できるものであるかどうかを決定することができる。皮膚上センサ制御装置44は、以下のような場合、オプションとして、較正をさせないまたは較正点を拒絶するように構成することもできる。例えば、1)温度プローブから読み取る温度が、所定の許容範囲内(例えば、30〜42℃または32〜40℃)でないか、または、急速に変化している(例えば、0.2℃/分、0.5℃/分、または0.7℃/分以上)温度を示す場合、2)二以上の作用電極58が、互いの所定範囲内(例えば10%または20%以内)にない較正されていない信号を供給する場合、3)較正されていない信号の変化速度が、閾値率を超える(例えば、毎分0.25mg/dLまたは毎分0.5mg/dL以上)場合、4)較正されていない信号が、閾値最大値(例えば、5、10、20、または40nA)を超えるか、閾値最小値(例えば、0.05、0.2、0.5または1nA)より低い場合、5)較正された信号が、閾値最大値(例えば、分析物濃度200mg/dL、250mg/dL、または300mg/dLに対応する信号)を超えるか、または閾値最小値(例えば、分析物濃度50mg/dL、65mg/dL、または80mg/dLに対応する信号)より低い場合、および/または6)埋め込み後の経過時間が不十分(例えば、10分以内、20分以内、または30分以内)である場合。
【0229】
処理回路109またはアナライザ152はまた、最新の較正前後のセンサデータを用いて決定した値の差異が閾値量を超えている場合、較正が正しくないこと、または、センサ特性が較正を行った二つの時点間で急激に変化したことを示しており、別の較正点を必要とすることもある。この付加的較正点は、差異の原因を示すこともできる。
【0230】
皮膚上センサ制御装置44は、処理回路109からのデータ(例えば、センサからの測定値または処理データ)を永続的、または、より一般的には一時的に保持するために使用できる選択自由なデータ記憶装置102を備えていてもよい。データ記憶装置102は、処理回路109がデータを使用して、例えば、分析物レベルの上昇または低下速度および/または加速率といった分析物レベルにおける傾向を分析および/または予測できるようにデータを保持することもできる。データ記憶装置102は、同様に、若しくは、その代わりとして、レシーバ/表示装置46、48が範囲内にない期間、データを記憶するのに使用してもよい。データ記憶装置102はまた、データの送信速度がデータの獲得速度よりも遅い場合データを記憶するのに使用することもできる。例えば、データ獲得速度が、10ポイント/分であり、送信が2送信/分である場合には、データポイント処理の所望の速度によって、各送信毎に1〜5ポイントのデータを送信できる。データ記憶装置102は一般に、読出し可能/書込み可能記憶保持装置を備え、一般に、記憶保持装置への書込みおよび/または記憶保持装置からの読出しのためのハードウェアおよび/またはソフトウェアも備えている。
【0231】
皮膚上センサ制御装置44は、処理回路109からのデータに基づいて、分析物の可能性として考えられる有害な状態を患者に警告する、選択自由な警報システム104を備えていてもよい。例えば、グルコースが分析物である場合、皮膚上センサ制御装置44は、低血糖、高血糖、切迫低血糖、および/または切迫高血糖といった状態を患者に警告する警報システム104を備えていてもよい。警報システム104は、処理回路109からのデータが閾値に達するかまたは上回った場合始動する。血糖レベルに対する閾値は、低血糖に関しては、約60、70、または80mg/dL、切迫低血糖に関しては、約70、80、または90mg/dL、切迫高血糖に関しては、約130、150、175、200、225、250または275mg/dL、そして、高血糖に関しては、約150、175、200、225、250、275または300mg/dLといった例が挙げられる。警報システム104用に設計される実際の閾値は、上記血糖レベルと相関関係を有する間質液中グルコース濃度または電極測定値(例えば、電流値または電流測定値の変換により得られた電圧値)に対応したものであってもよい。分析物モニタ装置は、これらの状態、または、何らかのその他の状態に関する閾値レベルを、患者および/または医師がプログラムできるように構成してもよい。
【0232】
データポイントが、特定の状態を示す方向に閾値を超える値を有する場合、閾値を超えていることになる。例えば、グルコースレベル200mg/dLに対し相関関係を有するデータポイントは、患者が高血糖状態になったことを示すため、高血糖に関する閾値180mg/dLを超えていることになる。別の例として、グルコースレベル65mg/dLに対し相関関係を有するデータポイントは、患者がその閾値によって定義されているような低血糖の状態にあることを示すため、低血糖に関する閾値70mg/dLを超えていることになる。しかしながら、グルコースレベル75mg/dLに対し相関関係を有するデータポイントは、選択された閾値によって定義されているような特定の状態を示さないため、低血糖に関する同一閾値を超えないことになる。
【0233】
アラームはまた、センサの読取値がセンサ42の測定範囲を超えた値を示した場合に作動させることもできる。グルコースに関して、生理学的に適切な測定範囲は、一般に、間質液中のグルコースについては、約50〜250mg/dL、好ましくは約40〜300mg/dL、理想的には、30〜400mg/dLである。
【0234】
警報システム104は、同様に、若しくは、代わりとして、分析物レベル上昇または低下の変化速度またはその変化速度の加速率が、閾値速度または加速率に達するか、或いは超えた場合作動させてもよい。例えば、皮下グルコースをモニターする場合、グルコース濃度の変化速度が、高血糖または低血糖状態が起りそうであることを示す閾値を超えた場合に、警報システムを作動させることもできる。
【0235】
選択自由な警報システム104は、単一のデータポイントが特定の閾値と一致するかまたは超えた場合作動するように構成してもよい。また、アラームは、所定の合計時間内の所定数のデータポイントが、閾値と一致するかまたは超えた場合のみ始動させてもよい。更に別の代替例として、アラームは、所定の合計時間内のデータポイントが、閾値と一致するかまたは超える平均値を有する場合のみ始動させてもよい。アラームを始動させる各条件は、異なったアラーム始動条件であってもよい。更に、アラーム始動条件は、現状によって変化させてもよい(例えば、切迫高血糖が表示された場合、データポイント数、または高血糖を判断するためにテストする合計時間を変えてもよい)。
【0236】
警報システム104は、一以上の個別のアラームを備えていてもよい。各アラームはそれぞれ、分析物の一以上の状態を知らせるように、個別に始動させてもよい。それらのアラームは、例えば、聴覚的または視覚的なものであってもよい。他の感覚刺激警報システムを使用してもよく、始動させた場合、加熱したり、冷却したり、振動させたり、或いは、緩い電気ショックを発生させたりする警報システムが挙げられる。幾つかの実施形態では、アラームは、異なった状態を知らせる異なったトーン、音色または音量を有する聴覚的なものである。例えば、高音が高血糖を、低音が低血糖を知らせることもできる。視覚的アラームでは、異なった状態を知らせるために、色、明るさ、または皮膚上センサ制御装置44上の位置における差を利用してもよい。幾つかの実施形態において、聴覚的な警報システムは、アラームが停止するまで、アラームの音量が時間と共に増すように構成される。
【0237】
幾つかの実施形態において、アラームは、所定時間後自動的に停止させることもできる。他の実施形態において、アラームは、アラームを始動させた状態にあることをデータが示さなくなった場合に停止するよう構成してもよい。これらの実施形態において、単一のデータポイントが、もはやその状態にないことを示した場合アラームを停止させるか、或いは、所定数のデータポイントまたは所定時間内に得られたデータポイントの平均が、もはやその状態にないことを示した場合のみ、アラームを停止させることもできる。
【0238】
幾つかの実施形態において、アラームは、自動停止に加えて、または、自動停止の代わりに、患者または別の人により手動で停止させることもできる。これらの実施形態では、スイッチ101が設けられており、作動させた場合アラームを切る。スイッチ101は、例えば、皮膚上センサ制御装置44またはレシーバ/表示装置46、48の作動装置を作動させ有効にスイッチを入れる(または、スイッチの構造によっては、切る)こともできる。場合によって、作動装置を二つ以上の装置44、46、48に設けることもでき、そのうちの何れかが作動しアラームを停止させてもよい。スイッチ101および/または作動装置がレシーバ/表示装置46、48に設けられている場合、信号はレシーバ/表示装置46、48から皮膚上センサ制御装置44のレシーバ98に送信され、アラームを停止させることもできる。
【0239】
様々なスイッチ101が使用でき、例えば、機械的スイッチ、リードスイッチ、ホール効果スイッチ、巨大磁気比率(GMR(Gigantic Magnetic Ratio))スイッチ(GMRスイッチの抵抗値は、磁界に依存する)等がある。有効にスイッチを入れる(または、切る)ために使用される作動装置は、皮膚上センサ制御装置44上に配置され、押しボタンの周囲および筐体内に水が流入できないように構成されるのが好ましい。そのような押しボタンの一例は、筐体にとって不可欠な柔軟性ポリマまたはプラスチックコーティングにより、完全に被覆されている柔軟性導体ストリップである。開位置では、柔軟性導体ストリップは下向きに曲げられ筐体から出っ張っている。患者または別の人が押すと、柔軟性導体ストリップは金属コンタクトに向かって直接押し動かされ、回路が完成しアラームを停止させる。
【0240】
リードまたはGMRスイッチには、下向きに曲げられているか、筐体45およびリードまたはGMRスイッチから出っ張っている柔軟性作動装置の永久磁石または電磁石といった一片の磁気材料が使用される。リードまたはGMRスイッチは、柔軟性作動装置を押し、磁気材料をスイッチに近づけ、スイッチ内の磁界を増強することにより(アラームを停止させるよう)作動させる。
【0241】
本発明の幾つかの実施形態において、分析物モニタ装置40は、皮膚上制御装置44とセンサ42のみを備えている。これらの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の処理回路109が分析物レベルを測定し、分析物レベルが閾値を超えた場合、警報視システム104を始動させることができる。これらの実施形態において、皮膚上制御装置44は、警報システム104を有し、また、レシーバ/表示装置46、48に関連して後で述べるもののような、ディスプレイを備えていてもよい。ディスプレイは、LCDまたはLEDディスプレイであるのが好ましい。皮膚上制御装置44は、例えば、医師の診療室の制御装置に、例えばデータを送信することが望ましいとされるのでなければ、送信機を備えていなくてもよい。
【0242】
皮膚上センサ制御装置44はまた、センサ42から得られた、または、センサ42とともに使用された電圧または電流との比較に使用するための絶対電圧または電流を提供するため基準電圧発生装置101を備えていてもよい。適切な基準電圧発生装置の一例は、例えば、周知のバンドギャップを有する半導体材料を用いたバンドギャップ基準電圧発生装置である。バンドギャップは、半導体材料が作動中に晒されるであろう温度範囲内の温度に対し強いことが好ましい。適切な半導体材料には、ガリウム、シリコン、シリケートが挙げられる。
【0243】
固体電子部品に適切にバイアスをかけるため、バイアス電流発生装置105を設けてもよい。一般に、デジタル回路機構と共に使用されるクロック信号を生成するため、オシレータ107を設けてもよい。
【0244】
皮膚上センサ制御装置44はまた、回路機構、特に、制御装置44内のあらゆるデジタル回路機構をテストし、回路機構が正しく作動しているかどうか判断する監視回路103を備えていてもよい。限定されるものではないが、監視回路動作の例としては、以下の動作が挙げられる。a)監視回路により乱数を生成し、記憶場所にその数を記憶し、監視回路のレジスタにその数を書込み、そして、その数を再生し、同等であるかどうか比較する。b)アナログ回路の出力をチェックし、出力が所定のダイナミックレンジを超えるかどうか判断する。c)予測されるパルス間隔で信号用タイミング回路の出力をチェックする。監視回路の機能の他の例は、当技術分野では周知となっている。監視回路は、エラーを検出した場合、アラームを始動させ、および/または、装置を停止させることもできる。
【0245】
レシーバ/表示装置
一以上のレシーバ/表示装置46、48は、センサ42によって生成されるデータへのアクセスを容易にするため分析物モニタ装置40を備えることもでき、また、幾つかの実施形態においては、皮膚上センサ制御装置44からの信号を処理し、皮下組織中の分析物濃度またはレベルを測定することもできる。小型レシーバ/表示装置46は、患者が携帯することもできる。これらの装置46は、掌サイズとすることもでき、および/または、患者が携帯するベルト上、或いは、かばんまたはハンドバック内に納まるように適合させることもできる。小型レシーバ/表示装置46の一実施形態は、例えば、使用者が医療装置を使用している人であることがわからないように、ポケットベル(pager)の外観を有する。そのようなレシーバ/表示装置は、オプションとして、送信または受信可能、若しくは、送受信可能な呼び出し機能を有することもできる。
【0246】
大型レシーバ/表示装置48を使用することもできる。これらの大型装置48は、棚またはナイトテーブルに載置するよう設計してもよい。大型レシーバ/表示装置48は、両親が、子供が眠っている間モニターするため、若しくは、夜中に患者を起こすために使用することもできる。更に、大型レシーバ/表示装置48は、便利性のため、若しくは、アラームとして作動させるため、ランプ、時計、またはラジオを備えていてもよい。レシーバ/表示装置46、48のうちの、一タイプ、または、両タイプを使用してもよい。
【0247】
レシーバ/表示装置46、48は、図22にブロック形式で示しているように、一般に、皮膚上センサ制御装置44からデータを受信するレシーバ150と、そのデータを評価するアナライザ152と、患者に情報を提供するディスプレイと、ある状態が生じた時患者に警告する警報システム156とを備えている。レシーバ/表示装置46、48はまた、オプションとして、データ記憶装置158、送信機160、および/または入力装置162を備えていてもよい。レシーバ/表示装置46、48はまた、電源装置(例えば、バッテリおよび/または壁のコンセントから電力を受け取ることのできる電源装置)、監視回路、バイアス電流発生装置、およびオシレータなどの他の素子(図示なし)を備えていてもよい。これらの付加的素子は、皮膚上センサ制御装置44に関して上述したものと同様のものである。
【0248】
一実施形態におけるレシーバ/表示装置48は、自宅で患者が使用するためのベッドサイド用装置である。前記ベッドサイド用装置は、レシーバと一以上の選択自由なアイテムとを備えており、そのアイテムとしては、例えば、時計、ランプ、聴覚的アラーム、電話接続、およびラジオが挙げられる。前記ベッドサイド用装置はまた、ディスプレイも備えており、好ましくは、部屋の反対側から読める大きな数字および/または文字を使用したものである。その装置は、コンセントにつなぐことにより動作可能で、且つ、選択自由にバッテリーを予備として備えていてもよい。一般に、ベッドサイド用装置は、小さな掌サイズの装置よりも性能のよいアンテナを備えているため、ベッドサイド用装置の受信距離範囲はより長い。
【0249】
アラームが示された場合、ベッドサイド用装置は、例えば、聴覚的アラーム、ラジオ、ランプを作動させ、および/または、電話を掛け始めることもできる。前記アラームは、例えば、眠ったり、嗜眠状態にあったり、混乱している患者を起こすか、または、刺激する上で、小さな掌サイズの装置のアラームよりも強力なもので有り得る。更に、大きな音のアラームにより、夜中糖尿病の子供をモニターする親に注意を促すこともできる。
【0250】
ベッドサイド用装置は、専用のデータアナライザおよびデータ記憶装置を備えている。データは、皮膚上センサ装置、若しくは、掌サイズまたは小型レシーバ/表示装置など、別のレシーバ/表示装置から伝達されてもよい。このようにして、大きなギャップを生じることなくデータをダウンロードし解析できるように、少なくとも一つの装置が全ての関連データを保有している。
【0251】
オプションとして、ベッドサイド用装置は、小型レシーバ/表示装置を設置することもできるインターフェースまたはクレードルを有する。ベッドサイド用装置は、小型レシーバ/表示装置のデータ記憶および解析能力を利用でき、および/または、この位置で、小型レシーバ/表示装置からデータを受信することもできる。ベッドサイド用装置はまた、小型レシーバ/表示装置のバッテリを充電できるものであってもよい。
【0252】
一般に、レシーバ150は、周知のレシーバおよびアンテナ回路機構を用いて形成され、しばしば、皮膚上センサ制御装置44の送信機98の周波数または周波数帯域に合わせるか、または、合わせることが可能である。一般に、レシーバ150は、送信機98の送信距離よりも長い距離から信号を受信できる。小型レシーバ/表示装置46は、一般に、2メートル以内、好ましくは、5メートル以内、更に好ましくは、10メートル以内、或いは、それ以上離れた皮膚上センサ制御装置44から信号を受信することができる。ベッドサイド用装置のような大型レシーバ/表示装置48は、一般に、5メートル以内、好ましくは、10メートル以内、更に好ましくは、20メートル以内、或いは、それ以上離れた皮膚上センサ制御装置44から信号を受信することができる。
【0253】
一実施形態においては、皮膚上センサ制御装置44から離れていることのあるレシーバ/表示装置46、48が信号を受信できるように、皮膚上センサ制御装置44からの信号を増強するために中継器(図示なし)が使用される。中継器は、一般に、皮膚上センサ制御装置44から独立しているが、場合によって、中継器は、皮膚上センサ制御装置44に設置できるように構成することもできる。一般に、中継器は、皮膚上センサ制御装置44から信号を受信するためのレシーバと、受信信号を送信するための送信機とを備えている。必要なわけではないが、中継器の送信機は、皮膚上センサ制御装置の送信機よりも出力の高いものである場合が多い。中継器は、例えば、子供が身に付けている皮膚上センサ制御装置から、子供の分析物レベルをモニターするため親のベッドルームにあるレシーバ/表示装置に信号を送信することを目的として、子供のベッドルームに使用できる。別の典型的な用途では、患者の皮膚上センサ制御装置をモニターするため、ナースステーションのレシーバ/表示装置と共に病院で使用される。
【0254】
他の皮膚上センサ制御装置を含む、他の装置が存在する場合、送信機98の周波数帯域内でノイズまたは妨害が生じる場合がある。これにより、誤ったデータが生成されることもある。この可能性の考えられる問題を克服するため、送信機98は、レシーバ/表示装置46、48の範囲内に、二以上の皮膚上センサ制御装置44または他の送信源が存在する場合、好ましくは固有の識別コードを使用して、特定の皮膚上センサ制御装置44を識別するコード、および/または、例えば、送信開始を示すコードを送信することもできる。データと共に識別コードを提供することにより、レシーバ/表示装置46、48が、他の送信源からの信号を妨害したり解読したりする可能性を低下させることもでき、また、別の皮膚上センサ制御装置44との「クロストーク」も防げる。識別コードは、センサ制御装置44に記憶された工場設定コードとして提供してもよい。また、識別コードは、センサ制御装置44またはレシーバ/表示装置46、48内の適切な回路でランダムに生成(且つ、センサ制御装置44に送信)してもよいし、若しくは、識別コードは、患者が選択して、センサ制御装置44に接続された送信機または入力装置を介して、センサ制御装置44に送られてもよい。
【0255】
「クロストーク」を排除し、適切な皮膚上センサ制御装置44からの信号を識別するため、他の方法を使用することもできる。幾つかの実施形態において、送信機98は、暗号化技術を使用して、送信機98からのデータストリームを暗号化することもできる。レシーバ/表示装置46、48は、暗号化されたデータ信号を解読するための鍵を有する。そして、レシーバ/表示装置46、48は、信号を解読した後信号を評価することにより、擬似信号または「クロストーク」信号が受信された場合を判断する。例えば、一以上のレシーバ/表示装置46、48のアナライザ152が、電流測定値または分析レベルなどのデータを、予測される測定値(例えば、生理学的に適切な分析物レベルに対応する予測範囲の測定値)と比較する。または、レシーバ/表示装置46、48のアナライザは、解読されたデータ信号の識別コードを検索する。
【0256】
一般に、識別コードまたは暗号化方式と共に使用される、「クロストーク」を排除するための別の方法は、「クロストーク」が存在すると判断すると、送信周波数または周波数帯域を変更する選択自由な機構を皮膚上センサ制御装置44に設けることを含む。送信周波数または周波数帯域を変更するこの機構は、クロストークまたは妨害の可能性を検出した時、レシーバ/表示装置により自動的に、および/または患者により手動で始動させてもよい。自動始動においては、レシーバ/表示装置46、48が皮膚上センサ制御装置44の選択自由なレシーバ99に信号を送信し、皮膚上センサ制御装置44の送信機98に、周波数または周波数帯域を変更するように指示する。
【0257】
周波数または周波数帯域の変更を手動で開始する場合、例えば、レシーバ/表示装置46、48および/または皮膚上センサ制御装置44の作動装置(図示なし)を使用して達成することもでき、患者はそれを操作して、周波数または周波数帯域を変更するように送信機98に指示する。手動で開始される送信周波数または周波数帯域の変更の動作は、レシーバ/表示装置46、48および/または皮膚上センサ制御装置44からの可聴または可視信号により周波数または周波数帯域の変更を開始するように患者を促がすことを含んでいてもよい。
【0258】
レシーバ150の説明に戻ると、レシーバ150が受信したデータは、アナライザ152に送られる。アナライザ152は、皮膚上センサ制御装置44の処理回路109と同様の、様々な機能を備えることができ、以下のものが含まれる。1)センサ42からの信号を、較正データおよび/または温度プローブ66の測定値を用いて修正する。2)間質液中の分析物レベルを測定する。3)間質液中のセンサ測定値に基づき、血流中の分析物レベルを決定する。4)分析物のレベル、変化速度、および/または変化速度における加速率が、一以上の閾値を超えるか、または、一致するかどうか決定する。5)閾値に一致または閾値を超えた場合、警報システム156および/または94を作動させる。6)一連のセンサ信号に基づいて分析物レベルの傾向を評価する。7)薬物の適用量を決定する。そして7)ノイズまたはエラーの原因を減少させる(例えば、信号加算平均または複数の電極からの読取値を比較することによる)。アナライザ152は、簡易なものであってもよく、これらの機能の一つのみまたは少数のみを実行してもよいし、また、アナライザ152は、これら機能の全てまたは殆どを実行してもよい。
【0259】
アナライザ152からの出力は、一般に、ディスプレイ154に提供される。様々なディスプレイ154が使用でき、ディスプレイとしては、陰極線管装置(特に大型装置に対して)、LEDディスプレイ、またはLCDディスプレイが挙げられる。ディスプレイ154は、単色(例えば、白黒)または多色(つまり、一定範囲の色を有する)のものであってもよい。ディスプレイ154は、一定条件下で活性化されるシンボルまたは他のインディケータを有していてもよい(例えば、センサ42から信号によって高血糖のような状態が表示されると、特定のシンボルがディスプレイ上目視可能となる)。ディスプレイ154は、LCDまたはLEDのアルファニューメリック構造体のような、更に複雑な構造体を有していてもよく、その複数の部分が活性化され、文字、数字、またはシンボルが生成される。例えば、ディスプレイ154は、図23に示すように、分析物のレベルを数値で表示する領域164を備えていてもよい。一実施形態において、ディスプレイ154はまた、患者が行動をとるように患者に対しメッセージも提供する。このようなメッセージとしては、例えば、患者が低血糖である場合、「糖類を食べよ」であったり、患者が高血糖である場合、「インシュリンを摂取せよ」といったものが挙げられる。
【0260】
レシーバ/表示装置46、48の一例を図23に示す。この特定のレシーバ/表示装置46、48のディスプレイ154は、センサ42からの信号を使用して、処理回路109および/またはアナライザ152により測定される分析物のレベル、例えば、血糖濃度を表示する部分164を有する。前記ディスプレイは、一定の条件下で始動する各種インディケータ166も有する。例えば、グルコースモニタ装置のインディケータ168は、患者が高血糖である場合、始動させることができる。他のインディケータは、低血糖(170)、切迫高血糖(172)、切迫低血糖(174)、誤作動、エラー状態の場合、または較正サンプルが必要な場合(176)に始動させることができる。幾つかの実施形態では、色分けされたインディケータを使用してもよい。または、血糖濃度を表示する部分164はまた、複合インディケータ180(図24参照)を備えていてもよく、その複数の部分が適切に始動し上記状態のいずれかを表示する。
【0261】
ディスプレイ154は、図24に示すように、ある期間中の分析物レベルのグラフ178を表示できるものであってもよい。場合によって役立つ他のグラフの例としては、時間の経過による分析物レベルの変化速度、またはその変化速度における加速率のグラフが挙げられる。幾つかの実施形態において、レシーバ/表示装置は、患者が見たい特定の表示(例えば、血糖濃度または、濃度対時間のグラフ)を患者が選択できるように構成される。患者は、例えば、選択自由な入力装置162の押しボタンなどを押し動かすことにより、所望の表示モードを選択することもできる。
【0262】
レシーバ/表示装置46、48は、一般に、警報システム156も備えている。警報システム156を構成するための付加機能は、皮膚上センサ制御装置44の警報システム104のものと同様である。例えば、グルコースが分析物である場合、皮膚上センサ制御装置44は、低血糖、高血糖、切迫低血糖、および/または切迫高血糖といった状態を患者に警告する警報システム156を備えていてもよい。警報システム156は、アナライザ152からのデータが閾値に達するかまたは超えた場合始動する。上記血糖レベルと相関関係を有する間質液中グルコース濃度またはセンサ信号(例えば、電流値または変換された電圧値)に対応したものであってもよい。
【0263】
警報システム156は、同様に、若しくは、または、分析物レベルの上昇または低下の速度若しくは加速率が閾値に達するか、または、超えた場合始動させてもよい。例えば、皮下グルコースをモニターする場合、警報システム156は、グルコース濃度の変化速度が、高血糖または低血糖状態が生じる可能性があることを示し得る閾値を超えた場合始動させてもよい。
【0264】
警報システム156は、単一のデータポイントが特定の閾値と一致するか、または超えた場合始動するように構成してもよい。また、アラームは、所定の合計時間内の所定数のデータポイントが、閾値と一致するかまたは超えた場合のみ始動させることもできる。更に別の例として、アラームは、所定の合計時間内のデータポイントが、閾値と一致するかまたは超える平均値を有する場合のみ始動させてもよい。アラームを始動させることのできる条件のそれぞれが、異なったアラーム始動条件であってもよい。更に、アラーム始動条件は、現状によって変化させてもよい(例えば、切迫高血糖が表示された場合、高血糖を判断するためにテストするデータポイント数または合計時間を変えてもよい)。
【0265】
警報システム156は、一以上の個別のアラームを備えていてもよい。各アラームは分析物の一以上の状態を知らせるように別々に始動させることもできる。それらのアラームは、例えば、聴覚的または視覚的なものであってもよい。他の感覚刺激警報システムを使用することもでき、そのようなものとしては、皮膚上センサ制御装置44に、加熱、冷却、振動、或いは、緩い電気ショックを発生させるように指示する警報システム156が挙げられる。幾つかの実施形態において、アラームは、異なった状態を表す異なったトーン、音色または音量を有する聴覚的なものである。例えば、高音が高血糖を、低音が低血糖を表してもよい。視覚的なアラームでは、異なった状態を示すために、色または明るさにおける差を利用してもよい。幾つかの実施形態において、聴覚的な警報システムは、アラームが停止するまで、時間と共にアラームの音量が増すように構成することもできる。
【0266】
幾つかの実施形態において、アラームは、所定時間後自動的に停止させることもできる。他の実施形態では、アラームを始動させた状態にあることをデータが示さなくなった場合に停止するようアラームを構成してもよい。これらの実施形態において、単一のデータポイントが、もはやその状態にないことを示した場合アラームを停止させるか、或いは、所定数のデータポイントまたは所定時間内に得られたデータポイントの平均が、もはやその状態にないことを示した場合のみ、アラームを停止させてもよい。
【0267】
さらに他の実施形態において、アラームは、自動停止に加えて、または、自動停止の代わりに、患者または別の人により手動で停止させることもできる。これらの実施形態では、スイッチが設けられ、作動させるとアラームを切る。スイッチは、例えば、レシーバ/表示装置46、48の押しボタンを押し動かすことにより有効にスイッチを入れる(または、スイッチの構造によっては、切る)こともできる。警報システム156の一構成では、切迫した状態(例えば、切迫低血糖または高血糖)を知らせるアラームを一定時間後自動的に停止させ、現状(例えば、低血糖または高血糖)を知らせるアラームを手動で停止させる。
【0268】
レシーバ/表示装置46、48はまた、多数のオプションとしてアイテムを含んでいてもよい。その一つは、データ記憶装置158である。データ記憶装置158は、アナライザ152が分析物レベルの傾向を決定するよう構成されている場合使用されるようにデータを記憶するのが望ましい。データ記憶装置158は、大型表示装置48のような別のレシーバ/表示装置にダウンロードできるデータを記憶する上でも有用である。また、そのデータは、患者の自宅、医師の診療室などで、分析物レベルの傾向を評価するために、コンピュータまたは他のデータ記憶装置にダウンロードすることもできる。レシーバ/表示装置46、48には、接続口(図示なし)を設けることもでき、その接続口を通して、記憶されたデータを転送してもよいし、または、選択自由な送信機160を用いて、データを転送してもよい。データ記憶装置158は、始動させ、例えば、選択自由な入力装置162を介して、患者により指示されたデータを記憶することもできる。データ記憶装置158は、高血糖または低血糖エピソード、運動、食事等の特定の出来事が生じた際、データを記憶するように構成することもできる。記憶装置158は、特定の出来事のデータと共に出来事標識も記憶できる。出来事標識は、ディスプレイ/レシーバ装置46、48により自動的に、または、患者の入力により生成されてもよい。
【0269】
レシーバ/表示装置46、48はまた、選択自由な送信機160も備えていてもよく、1)較正情報、2)皮膚上センサ制御装置44の送信機98に送信周波数または周波数帯域を変更するように指示する信号、および/または、3)皮膚上センサ制御装置44の警報システム104を始動させるための信号を送信するために使用でき、これらはいずれも上述した。送信機160は、一般に、送信機98、160間のクロストークを避けるため、皮膚上センサ制御装置44の送信機98とは異なった周波数帯域で作動する。皮膚上センサ制御装置44の送信機100に関連して上述したように、擬似信号の受信やクロストークを減少させるため、複数の方法が使用できる。幾つかの実施形態において、送信機160は、信号をセンサ制御装置44に送信するためだけに使用され、1フィート未満、好ましくは6インチ未満の範囲内である。これにより、患者または別の人は、データの送信中、例えば、較正情報の送信中、センサ制御装置44の近くにレシーバ/表示装置46を保持することが必要となる。光送信または有線送信を含む無線周波数(rf)送信以外の方法を使用して送信することもできる。
【0270】
更に、本発明の幾つかの実施形態において、送信機160は、別のレシーバ/表示装置46、48または何らかの他のレシーバにデータを送信するように構成することもできる。例えば、小型レシーバ/表示装置46は、図1に示すように、大型レシーバ/表示装置48にデータを送信することもできる。別の例として、レシーバ/表示装置46、48は、患者の自宅または医師の診療室のコンピュータにデータを送信することもできる。更に、送信機160または別個の送信機は、アラームが始動した場合、および/または、患者が助けを必要としていることを示唆する、一定時間後、始動したアラームが停止していない場合、医師または他の人に注意を促す電話または他の通信装置、若しくは、別の装置に送信させてもよい。幾つかの実施形態において、レシーバ/表示装置は、送信または受信、若しくは、送受信可能な呼び出し機能を有することもでき、および/または、電話線に接続し、患者をモニターしている健康管理者などの別の人にメッセージを送信および/または受信する。
【0271】
レシーバ/表示装置46、48用の別の選択自由な部品は、キーパッドまたはキーボードといった入力装置162である。入力装置162は、数字または英数字入力ができるものであってもよい。入力装置162は、分析物モニタ装置40の機能を始動させ、および/または分析モニタ装置40への入力を可能にする押しボタン、キー等を備えていてもよい。そのような機能としては、データ転送の開始、送信機98の送信周波数または周波数帯域の手動変更、警報システム104、156の停止、較正データの入力、および/または、出来事のデータ例を記憶させるための出来事の表示が挙げられる。
【0272】
入力装置162の別の実施形態は、タッチスクリーンディスプレイである。タッチスクリーンディスプレイは、ディスプレイ154に組み込まれているか、または、別個のディスプレイであってもよい。タッチスクリーンディスプレイは、スクリーンの、所望の機能に対応する「ソフトボタン」により示されている位置に患者が触れると始動する。タッチスクリーンディスプレイは、周知となっている。
【0273】
更に、分析物モニタ装置40は、データの端末への不当な送信、または装置40に対する設定の不当な変更を防ぐため、パスワード保護機能を備えていてもよい。パスワード保護機能が始動する度に、ディスプレイ154は患者に対して、入力装置152を使用してパスワードを入力するように指示することもできる。
【0274】
入力装置162により始動させることのできる別の機能は、停止モードである。停止モードは、レシーバ/表示装置46、48が、データの一部または総べてをもはや表示していないことを示すこともできる。幾つかの実施形態において、停止モードの始動により、警報システム104、156を停止させることさえ可能である。患者に、この特殊な動作を確認するように指示するのが好ましい。停止モードの間、処理回路109および/またはアナライザ152は、データ処理を停止することもあり、また、データ処理は続行するが、それをディスプレイに報告しない場合もあり、また、オプションとして、後で検索できるようにそのデータを記憶することもできる。
【0275】
また、入力装置162が所定期間始動しない場合、休眠モードに入ることもできる。この期間は、患者または別の人による調節が可能である。この休眠モードでは、処理回路109および/またはアナライザ152は、一般に、引き続き測定値および処理データを得るが、ディスプレイは始動しない。休眠モードは、入力装置162を始動するといった行為により停止させることもできる。その後、現状の分析物読取値または他の所望の情報を表示させることができる。
【0276】
一実施形態において、レシーバ/表示装置46は、装置46が、所定の合計時間内に皮膚上センサ制御装置からの伝送を受けなかった場合、可聴または可視アラームを始動させる。そのアラームは、一般に、患者が応答するまで、および/または伝送を受けるまで継続する。これは、例えば、レシーバ/表示装置46が不注意で残されていた場合、患者に思い出させることができる。
【0277】
別の実施形態において、レシーバ/表示装置46、48は、較正装置(図示なし)と一体化されている。例として、レシーバ/表示装置46、48は、例えば、従来の血糖モニタを備えていてもよい。分析物濃度の電気化学検出を利用する別の有用な較正装置は、米国特許出願第08/795,767号明細書に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。他の装置を使用することもでき、例えば、電気化学および比色定量血糖アッセイ、間質液または皮膚液のアッセイ、および/または非観血的光学的アッセイを用いて作動する装置が挙げられる。埋め込まれたセンサーの較正が必要な場合、患者は、一体化された生体外モニタを使用して読取値を生成する。そして、その読取値を、例えば、レシーバ/表示装置46、48の送信機160により、自動的に送信し、センサ42を較正することもできる。
【0278】
薬物投与システムとの一体化
図25は、本発明に係る、センサを基礎とした(sensor based)薬物送達システム250のブロック図を示す。このシステムは、薬物を供給し、一以上のセンサ252からの信号に応答して分析物の高レベルまたは低レベルに対し中和作用する。また、前記システムは、薬物を確実に所望の治療領域内に滞留させるように薬物濃度をモニターする。薬物送達システムは、一以上(好ましくは二以上)の皮下に埋め込まれたセンサ252と、皮膚上センサ制御装置254と、レシーバ/表示装置256と、データ記憶および制御装置モジュール258と、薬物投与システム260とを備えている。場合によって、レシーバ/表示装置256と、データ記憶および制御装置モジュール258と、薬物投与システム260とは、単一装置内に一体化してもよい。センサを基礎とした薬物送達システム250は、一以上のセンサ252からのデータを使用して、データ記憶および制御装置モジュール252のコントロールアルゴリズム/機構に必要な入力情報を提供し、薬物の投与を調節する。一例として、グルコースセンサを使用して、インシュリンの投与を制御および調節することができるであろう。
【0279】
図25において、センサ252は、患者の体内の薬物または分析物のレベルと相関関係を有する信号を生成する。分析物のレベルは、薬物投与システムにより送達された薬物量によって決まる。レシーバ/表示装置256の、または、図25に示すような皮膚上センサ制御装置254のプロセッサ262は、分析物レベル、および、おそらく、分析物レベルの上昇または低下の速度またはその速度の加速率といったその他の情報を決定する。そして、この情報は、非一体型レシーバ/表示装置256、または、図25に示すような皮膚上センサ制御装置254の送信機264を使用して、データ記憶および制御装置モジュール252に送信される。
【0280】
薬物送達システム250が、二以上のセンサ252を備えている場合、データ記憶および制御装置モジュール258は、二以上のセンサ252からのデータを有効であるとして受け取る前に所定のパラメータの範囲内に適合することを確認することもできる。そして、このデータは、オプションとして先に得たデータを用いて、データ記憶および制御装置モジュール258で処理され、薬物投与プロトコルを決定することもできる。薬物投与プロトコルは、薬物投与システム260を用いて実行処理され、この薬物投与システム260は、内部または外部輸液ポンプ、シリンジインジェクタ、経皮吸収送達システム(例えば、皮膚に配置される薬物含有貼付剤)、または吸入装置であってもよい。また、薬物貯蔵および制御装置モジュール258は、患者または別の人がそのプロファイルにより、患者に薬物を提供できるように薬物投与プロトコルを提供することもできる。
【0281】
本発明の一実施形態においてデータ記憶および制御装置モジュール258は、訓練可能なものである。例えば、データ記憶および制御装置モジュール258は、所定の期間、例えば、数週間に渡ってグルコースの読取値を記録してもよい。低血糖または高血糖のエピソードが見つかると、そのような事態に至らせた関連経歴を分析し、今後のエピソードを予測するシステム能力を向上させ得る何らかのパターンを決定する。後のデータを周知のパターンと比較して、低血糖または高血糖を予測し、それに従って薬物を送達することも可能である。別の実施形態において、傾向の分析は、外部システム、または皮膚上センサ制御装置254の処理回路109またはレシーバ/表示装置256のアナライザ152によって行われ、その傾向は、データ記憶および制御装置258に取り入れられる。
【0282】
一実施形態において、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/またはアナライザ152は、今後のエピソードに対する患者の反応を予測するため多数のエピソードからの患者固有データを利用する。予測に使用される多数のエピソードは、一般に、同様のまたは類似の外部若しくは内部刺激に対する反応である。刺激の例としては、低血糖または高血糖の期間(またはグルコース以外の分析物に関する相応の状態)、状態の処置、薬物送達(例えば、グルコースに対するインシュリン)、摂食、運動、絶食、体温変化、体温上昇または低下(例えば、熱)、および、病気、ウイルス、感染などが挙げられる。多数のエピソードを分析することにより、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/またはアナライザ152は、今後の粗削りなエピソードを予測し、例えば、薬物投与プロトコルを提供するか、或いは、この分析に基づいて薬物を投与することができる。入力装置(図示なし)は、患者または別の人が使用して、例えば、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/またはアナライザ152が、今後の分析における使用を目的として、特定のエピソードから生じるとしてデータに標識することができるように、いつ特定のエピソードが発生するかを示すこともできる。
【0283】
更に、薬物送達システム250は、進行中薬物感受性フィードバックを提供できるものであってもよい。例えば、薬物投与システム260による薬物投与中に得たセンサ252からのデータは、薬物に対する個々の患者の反応についてのデータを提供することもでき、そのデータは、現行の薬物投与プロトコルをそれに従って即座に修正するのに使用されるとともに、今後の修正にも使用される。各患者に対して取り出せる所望のデータの例としては、薬物投与に対する反応に関し一定である患者特有の時間(例えば、周知のインシュリンボーラスを投与した場合、グルコース濃度がどれだけ迅速に低下するか)が挙げられる。別の例としては、様々な量の薬物投与に対する患者の反応(例えば、患者の薬物感受性曲線)がある。同様の情報を薬物貯蔵および制御装置モジュールにより記憶し、その後、患者の薬物反応の傾向を判断するために使用することもでき、これは、後続の薬物投与プロトコルを引き出す上で使用することも可能で、それによって、患者の需要に対する薬物投与プロセスを個人化できる。
【0284】
本発明は、上述の具体例に限定されるものとみなされるべきではなく、むしろ、添付のクレームに適切に記載された発明の全態様をカバーするものと理解されるべきである。様々な改良体、同等の方法、また、本発明を適用できる多くの構造は、当明細書を見れば、本発明に関連する技術分野の当業者にとっては既に明白であろう。クレームはそのような改良体および装置をカバーすることを意図したものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、グルコースまたはラクテートといった分析物の生体内モニタ装置および方法に関する。更に詳しくは、分析物レベルに関して患者に情報を提供するために電気化学センサを使用する分析物の生体内モニタ装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の個人において、グルコースまたはラクテートもしくは酸素のような他の分析物のレベルのモニタが健康に非常に重要である。高または低レベルのグルコースまたは他の分析物が有害効果を有する場合がある。グルコースのモニタは、糖尿病患者に特に重要である。というのは、糖尿病患者は、体内のグルコースレベルを下げるためにインシュリンが必要な時期、または体内のグルコースのレベルを上げるためにグルコースがさらに必要である時期を決定しなければならないからである。
【0003】
個人で血糖レベルをモニターするために多くの糖尿病患者によって使用されている従来の技術は、定期的な血液の採取、その血液の試験片への塗布および比色定量、電気化学または光度検出による血糖レベルの測定を含む。この技術では、体内のグルコースレベルの持続的または自動的モニタができず、通常、定期的に手動で行わなければならない。グルコースのレベルの検査での一貫性は、個人によって大きく異なるという問題がある。多くの糖尿病患者は、定期的な検査を不便であると感じ、時にはグルコースレベルの検査を忘れたり、適切な検査をするのに十分な時間がなかったりする。さらに、検査に伴う痛みを避けたい患者もいる。これらの状況の結果、高血糖症または低血糖症が発現する場合がある。個人のグルコースレベルを持続的または自動的にモニターする生体内グルコースセンサにより、個人は自分のグルコースまたは他の分析物レベルのモニタをより簡単に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第09/034,372号明細書
【特許文献2】米国特許第5,593,852号明細書
【特許文献3】米国特許出願第09/034,422号明細書
【特許文献4】米国特許出願第09/034,422号明細書
【特許文献5】米国特許第5,262,035号明細書
【特許文献6】米国特許第5,264,104号明細書
【特許文献7】米国特許第5,264,105号明細書
【特許文献8】米国特許第5,320,725号明細書
【特許文献9】米国特許第5,593,852号明細書
【特許文献10】米国特許第5,665,222号明細書
【特許文献11】米国特許出願第08/540,789号明細書
【特許文献12】国際特許出願第US98/02403号明細書
【特許文献13】米国特許第5,593,852号明細書
【特許文献14】米国特許出願第08/540,789号明細書
【特許文献15】国際特許出願第US98/02403号明細書
【特許文献16】米国特許第5,264,104号明細書
【特許文献17】米国特許第5,356,786号明細書
【特許文献18】米国特許第5,262,035号明細書
【特許文献19】米国特許第5,320,725号明細書
【特許文献20】米国特許第5,665,222号明細書
【特許文献21】米国特許出願第08/540,789号明細書
【特許文献22】国際特許出願第US98/02403号明細書
【特許文献23】米国特許第5,593,852号明細書
【特許文献24】米国特許第5,262,305号明細書
【特許文献25】米国特許第5,356,786号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血液流または間質液中のグルコースなどの分析物の持続的または自動的モニターのための種々の装置が開発されている。これらの装置の多くは、患者の血管または皮下組織に直接埋め込む電気化学センサを用いている。しかし、これらの装置は、再現性をもって低コストで大量生産することが困難である場合が多い。さらに、これらの装置は、通常、大きく、嵩高く、かつ/または柔軟性がなく、多くは、患者が自分の活動を制限しない限り、病院または医院などの制御された医療施設外では効果的な使用が不可能である。
【0006】
装置には、患者の皮膚上または近傍に位置し、センサを適所に保持するため患者に取付けられるセンサガイドを備えているものもある。これらのセンサガイドは一般に嵩高く、自由な動作を許さない。更に、センサガイドまたはセンサは、センサからの信号をアナライザに送るため、他の装置にセンサを接続するためのケーブルやワイヤを備えている。センサガイドのサイズや、ケーブルおよびワイヤの存在は、毎日の使用を目的としたこれら装置の使用上の便利性を妨げている。センサを作動させることができ、患者の動作や活動を実質的に制限することなくアナライザに信号を提供することのできる小型でコンパクトな装置に対する需要が存在する。
【0007】
グルコースなどの分析物のレベルの持続的または自動的生体内モニタ用として広範囲に用いることができるセンサの設計において考慮すべき重要なことは、患者にとっての快適感およびセンサが埋め込まれている期間中に行うことができる活動の範囲である。患者の正常の活動を妨げることなく、グルコースなどの分析物のレベルを持続的にモニターすることができる小さく異物感のない装置が必要とされている。分析物の持続的および/または自動的モニタにより、分析物のレベルが閾値または閾値近傍になると患者に知らせることができる。たとえば、分析物がグルコースの場合、モニタ装置は、現在高血糖症または低血糖症であること、または高血糖症または低血糖症の恐れがあることを患者に知らせるような構造になっているかもしれない。それにより患者は適切な行動をとることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、本発明は、皮下埋込可能なセンサを用いて分析物レベルを生体内において持続的および/または自動的にモニターするための方法および装置に関する。これらの装置の多くは、小さく、使用中異物感のないものであり、広範囲の活動を可能にするものである。一つの実施形態は、皮膚上への配置に適合した筐体を有するセンサ制御装置である。この筐体は、電気化学センサの一部を収納するのにも適合している。センサ制御装置は、センサの二以上のコンタクトパッドに接続するように構成され筐体上に配された二以上の導電コンタクトを備えている。筐体内には送信機が配されており、前記センサを使用して得られたデータを送信するための複数の導電コンタクトに連結されている。センサ制御装置はまた、例えば、皮膚への付着させるための接着剤、取付け装置、レシーバ、処理回路、電源装置(例えば、電池)、警報装置、データ記憶装置、監視回路、および測定回路のような各種の選択自由な構成要素を備えていてもよい。下記に、その他の選択自由な構成要素について説明する。
【0009】
本発明における別の実施の形態は、上述したセンサ制御装置を含むセンサ組立品である。センサ組立品は、少なくとも一つの作用電極と、その作用電極または複数の電極に接続された少なくとも一つのコンタクトパッドとを有するセンサも備えている。センサは、例えば、対向電極、対向/基準電極、基準電極、および温度プローブといった選択自由な構成要素を備えていてもよい。以下、他の構成要素およびセンサの付加機能を説明する。
【0010】
本発明の更なる実施の形態は、上記センサ制御装置を備えた分析物モニタシステムである。分析物モニタシステムは、少なくとも一つの作用電極と、その作用電極または複数の電極に接続された少なくとも一つのコンタクトパッドとを有するセンサも備えている。分析物モニタシステムはまた、センサ制御装置からのデータを受信するレシーバと、レシーバに接続された、分析物レベルの指標を表示するディスプレイとを有する表示装置も備えている。表示装置は、オプションとして、例えば、送信機、アナライザ、データ記憶装置、監視回路、入力装置、電源装置、時計、ランプ、ページャ、電話接続点、コンピュータ接続点、アラームまたは警報装置、ラジオ、および較正装置といった各種構成要素を備えていてもよい。表示装置の更なる構成要素および付加機能は、後で説明する。更に、分析物モニタシステムまたはその構成要素は、オプションとして、薬物または治療プロトコルを決定できるプロセッサおよび/または薬物送達システムを備えていてもよい。
【0011】
本発明の更に別の実施の形態は、電気化学センサを患者に挿入するための挿入キットである。前記挿入キットはインサータを含む。インサータの一部は、電気化学センサの挿入中にセンサを支持するのに適合した鋭く、堅い平面構造を有する。挿入キットは、電気化学センサおよびインサータを受入れるように構成された開口部を有する挿入銃(insertion gun)も備えている。挿入銃は、インサータおよび電気化学センサを患者の体内に推進する推進機構、およびセンサを患者の体内に残したままインサータを除去する引き戻し機構を有する。
【0012】
別の実施の形態は、電気化学センサの使用方法である。取付け装置を患者の皮膚に付着させる。挿入銃を取付け装置の開口部と揃える。電気化学センサを、挿入銃内に配置してから、挿入銃を使用して電気化学センサを患者の皮膚内に挿入する。挿入銃を取り除き、センサ制御装置の筐体を取付け台上に設置する。筐体上に配された複数の導電コンタクトを、電気化学センサ上に配された複数のコンタクトパッドに接続し、センサの使用準備が整う。
【0013】
本発明の一実施形態は、埋込型分析物反応センサにおける故障検出方法である。分析物反応センサは、患者の体内に埋め込まれる。分析物反応センサは、N個の作用電極(但し、Nは二以上の整数)、および一つの一般的な対向電極とを備えている。N個の作用電極の少なくとも一つおよび一般の対向電極で生成された信号が得られ、所定の閾値範囲内で、一般の対向電極からの信号が作用電極の一つからの信号のN倍でない場合、センサは故障していると判断される。
【0014】
更に別の実施形態は、患者に埋め込まれた一以上の作用電極を有する電気化学センサの較正方法である。信号は、各作用電極から生成される。較正が適切であるかどうか判断するために幾つかの条件を検査する。まず、一以上の各作用電極からの信号の差異が、第一の閾値量未満でなければならい。第二に、一以上の各作用電極からの信号が、所定の範囲内になければならない。そして、第三に、一以上の各作用電極からの信号の変化速度は、第二の閾値量未満でなければならない。患者の体液の較正サンプルをアッセイすることにより較正値は求められる。上記条件が満たされている場合、一以上の作用電極からの信号の少なくとも一つにその較正値を当てはめる。
【0015】
更なる実施の形態は、分析物レベルのモニタ方法である。センサを患者の皮膚内に挿入し、センサ制御装置を患者の皮膚に設置する。センサ制御装置の二以上の導電コンタクトをセンサのコンタクトパッドに接続する。そして、センサ制御装置を使用して、センサが生成する信号から分析物レベルに関するデータを収集する。収集されたデータは、表示装置に送信され、分析物レベルが表示装置に表示される。
【0016】
本発明の上記要旨は、本発明の開示されている各実施形態またはすべての実施方法を記載することを意図したものではない。以下の図面および詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示している。
【0017】
付随の図面と関連させて、本発明に係る種々実施形態の下記詳細な説明を考慮することにより完全に本発明を理解することができる。
【0018】
本発明は、種々の変形および別の形態に変更することができるが、本発明の具体例を図面に示し詳細に説明する。しかしながら、言うまでもなく、本発明は、記載されている特定の実施形態に限定されるものではない。それとは反対に、本発明は、添付のクレームに限定されているような本発明の精神および範囲内のすべての変更、均等物および代替物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による皮下植込型分析物センサを使用した皮下分析物モニタの一実施形態のブロック図
【図2】本発明による分析物センサの一実施形態の上面図
【図3A】図2の分析物センサの断面図
【図3B】本発明による分析物センサの別の実施形態の断面図
【図4A】本発明による分析物センサの第三の実施形態の断面図
【図4B】本発明による分析物センサの第4の実施形態の断面図
【図5】図2の分析物センサの先端部の拡大上面図
【図6】本発明による分析物センサの第5の実施形態の断面図
【図7】図6の分析物センサの先端部の拡大上面図
【図8】図6の分析物センサの先端部の拡大底面図
【図9】図2の分析物センサの側面図
【図10】図6の分析物センサの上面図
【図11】図6の分析物センサの底面図
【図12】本発明によるセンサおよび挿入装置の一実施形態の拡大側面図
【図13A】図12の挿入装置の三つの実施形態の断面図
【図13B】図12の挿入装置の三つの実施形態の断面図
【図13C】図12の挿入装置の三つの実施形態の断面図
【図14】本発明による皮膚上センサ制御装置の一実施形態の断面図
【図15】図14の皮膚上センサ制御装置のベースの上面図
【図16】図14の皮膚上センサ制御装置のカバーの底面図
【図17】患者の皮膚上における、図14の皮膚上センサ制御装置の斜視図
【図18A】本発明による皮膚上センサ制御装置の一実施形態のブロック図
【図18B】本発明による皮膚上センサ制御装置の別の実施形態のブロック図
【図19A】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の内面に配された導電コンタクトの四つの実施形態の断面図
【図19B】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の内面に配された導電コンタクトの四つの実施形態の断面図
【図19C】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の内面に配された導電コンタクトの四つの実施形態の断面図
【図19D】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の内面に配された導電コンタクトの四つの実施形態の断面図
【図19E】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の外面に配された導電コンタクトの二つの実施形態の断面図
【図19F】本発明による皮膚上センサ制御装置の筐体の外面に配された導電コンタクトの二つの実施形態の断面図
【図20A】本発明による分析物モニタシステムに使用する電流−電圧コンバータの二つの実施形態の概略図
【図20B】本発明による分析物モニタシステムに使用する電流−電圧コンバータの二つの実施形態の概略図
【図21】本発明による分析物モニタシステムに使用する開ループ式変調システムの一実施形態のブロック図
【図22】本発明によるレシーバ/表示装置の一実施形態のブロック図
【図23】レシーバ/表示装置の一実施形態の正面図
【図24】レシーバ/表示装置の第二の実施形態の正面図
【図25】本発明による薬物送達システムの一実施形態のブロック図
【図26】本発明による挿入銃の内部構造の斜視図
【図27A】本発明による皮膚上センサ制御装置の一実施形態の上面図
【図27B】図27Aの皮膚上センサ制御装置の取付け装置の一実施形態の上面図
【図28A】本発明による、挿入装置およびセンサの挿入後の皮膚上センサ制御装置の別の実施形態の上面図
【図28B】図28Aの皮膚上センサ制御装置の取付け装置の一実施形態の上面図
【図28C】図28Aの皮膚上センサ制御装置の電子機器回路(electronics)の少なくとも一部に対する筐体の一実施形態の上面図
【図28D】図28Cの筐体の底面図
【図28E】筐体のカバーを取り除いた状態での、図28Aの皮膚上センサ制御装置の上面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、流体中のグルコースまたはラクテートといった分析物の濃度を生体内で測定するための埋込型センサを使用した分析物モニタシステムに適用できる。前記センサは、例えば、患者の間質液中の分析物を持続的または周期的にモニターするために患者の皮下に埋め込むことができる。これは、患者の血流中のグルコースレベルを推定するために使用できる。他の生体内分析物センサは、本発明により、例えば、静脈、動脈、または流体を含む体内の他の部位への挿入用に作製できる。分析物モニタシステムは、一般に、数日から数週間またはそれ以上の一定期間に渡って分析物レベルをモニターするように構成される。
【0021】
本明細書において使用される用語に対し、下記定義を設ける。
【0022】
「対向電極」とは、作用電極と対を成す電極を意味し、対向電極には、作用電極を流れる電流と符号が逆で大きさの等しい電流が流れる。本発明の脈絡において、「対向電極」という用語は、基準電極としても機能する対向電極(つまり、対向/基準電極)を含むものとする。
【0023】
「電気化学センサ」とは、センサ上の電気化学酸化および還元反応によりサンプル中の分析物の存在を検出および/またはレベルを測定するように構成された装置である。これらの反応は、サンプル中の分析物の量、濃度、またはレベルと相関関係を有する電気信号に変換される。
【0024】
「電解」とは、電極で直接、または一以上の電子移動剤を介した化合物の電気酸化または電気還元のことである。
【0025】
化合物は、基板に捕捉されるかまたは化学接続した場合、表面上に「固定」される。
【0026】
「浸出不可」または「放出不可」化合物、または、「浸出不可能な状態で配された」化合物とは、センサの使用期間(例えば、センサが患者に埋め込まれている期間または、サンプルを測定している期間)作用電極の作用面から実質的に拡散しないように、センサ上に付着させた化合物を定義するものとする。
【0027】
構成要素は、例えば、センサの構成成分に共有接続、イオン接続、または配位結合される場合、および/または可動性を排除するポリマまたはゾル−ゲルマトリックスまたは膜に捕捉される場合、センサ内で「固定」される。
【0028】
「電子移動剤」とは、直接、または他の電子移動剤と協働して、分析物と作用電極との間で電子を運搬する化合物である。電子移動剤の一例は、レドックス媒体である。
【0029】
「作用電極」は、分析物(または、分析物のレベルにそのレベルが左右される第二の化合物)を、電子移動剤の作用で、または作用なしに、電気酸化あるいは電気還元する電極である。
【0030】
「作用面」とは、作用電極における、電子移動剤で被覆されているか、または電子移動剤に接触可能で、分析物含有流体に晒されるように構成されている部分である。
【0031】
「感知層」とは、分析物の電解を容易にする構成成分を含むセンサの構成要素である。感知層は、電子移動剤、および、分析物の反応に触媒作用を及ぼし電極での反応を生じさせる触媒、またはその両方のような構成成分を含んでいてもよい。センサの幾つかの実施形態において、感知層は、作用電極上または近傍に浸出不可能な状態で配されている。
【0032】
「非腐食性」の導電材料としては、炭素および導電性ポリマのような、非金属材料が挙げられる。
【0033】
分析物センサ装置
本発明の分析物モニタシステムは、様々な条件下で利用可能である。センサの詳細な構造、および分析物モニタシステムに使用される他の装置は、分析物モニタシステムの用途および、分析物モニタシステムの作動条件により決定される。分析物モニタシステムの一実施形態は、患者または使用者への埋め込み用に構成されたセンサを含む。例えば、センサは、血中の分析物レベルを直接テストするために動脈系または静脈系に埋め込むこともできる。また、センサは、間質液中の分析物レベルを測定するために間質組織に埋め込むこともできる。このレベルは、血液または他の流体中の分析物レベルと相関関係を有し、および/または分析物レベルに換算することができる。埋め込みの部位およびその深さは、センサの特定の形状、構成要素、および構造に影響を及ぼすことがある。場合によっては、センサの埋め込み深さを制限するため、皮下埋め込みの方が好ましいことがある。センサは、他の流体中の分析物レベルを測定するために、身体の他の部位に埋め込むこともできる。本発明の分析物モニタシステムにおける使用に適したセンサの例は、特許文献1に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0034】
埋込型センサ42と共に使用、特に皮下埋込型センサと共に使用する分析物モニタシステム40の一実施形態を、図1のブロック図の形態で説明する。分析物モニタシステム40は、最低限、一部が患者に埋め込まれる(皮下、静脈、または動脈に埋め込まれる)ように構成されたセンサ42と、センサ制御装置44とを有する。前記センサ42は、一般に患者の皮膚に設置するセンサ制御装置44に接続される。センサ制御装置44は、センサ42を作動させ、例えば、センサ42の電極に電圧を印加したり、センサ42からの信号を収集したりする。センサ制御装置44は、センサ42からの信号を評価したり、および/または、評価するために一以上の選択自由なレシーバ/表示装置46、48に信号を送信することもできる。センサ制御装置44および/またはレシーバ/表示装置46、48は、分析物の現状レベルを表示するか、または伝達することもできる。更に、センサ制御装置44および/またはレシーバ/表示装置46、48は、分析物のレベルが閾値に等しいかまたは閾値に近い場合、例えば、可聴、可視または他の感覚刺激アラームにより患者に知らせることもできる。幾つかの実施形態においては、センサの電極の一つまたは選択自由な温度プローブを介して警報として患者に電気ショックを伝えることができる。例えば、グルコースをモニターする場合、アラームは、低血糖または高血糖グルコースレベルおよび/または切迫低血糖または高血糖に対し患者に警告するために使用することもできる。
【0035】
センサ
センサ42は、図2に示しているように、基板50上に形成された少なくとも一つの作用電極58を有する。センサ42は、少なくとも一つの対向電極60(または対向/基準電極)および/または少なくとも一つの基準電極62(図8参照)も備えていてもよい。対向電極60および/または基準電極62は、基板50上に形成されていても、別個の装置であってもよい。例えば、対向電極および/または基準電極は、同様に患者に埋め込まれる第二の基板上に形成されるか、或いは、埋込型センサの幾つかの実施形態では、作用電極または電極を患者に埋め込み、対向電極および/または基準電極は、患者の皮膚上に配置してもよい。埋め込み可能な作用電極を用いた皮膚上対向および/または基準電極の使用については、特許文献2に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0036】
作用電極または電極58は、基板50上に配された導電トレース52を用いて形成される。温度プローブ66(図8参照)のような,センサ42の他の選択自由な部分と同様に、対向電極60および/または基準電極62も、基板50上に配された導電トレース52を用いて形成できる。これら導電トレース52は、基板50の平滑面上か、または、例えば、型押し、インデンティング、あるいは、基板50に凹部を作ることによって形成される溝54内に形成することができる。
【0037】
感知層64(図3Aおよび3B参照)は、特に、裸電極上で、所望の率および/または所望の特異性で分析物を電解できない場合、分析物の電気化学的検出およびサンプル流体中のそのレベルの測定を容易にするために、しばしば作用電極58の少なくとも一つの近傍またはその上に形成される。感知層64は、分析物と作用電極58間で直接的にまたは間接的に電子を移動させるため、電子移動剤を含んでいてもよい。感知層64はまた、分析物の反応に触媒作用を及ぼすため触媒を含んでいてもよい。感知層の構成要素は、作用電極58の近傍のまたは接触している流体中またはゲル中に存在していてもよい。また、感知層64の構成要素は、作用電極58上または近傍のポリマまたはゾル−ゲルマトリックス中に配されてもよい。感知層64の構成要素は、センサ42内に浸出不可能な状態で配されているのが好ましい。センサ42の構成要素は、センサ42内に固定されているのが更に好ましい。
【0038】
センサ42は、電極58、60、62および感知層64に加えて、以下説明するように、温度プローブ66(図6および図8参照)、物質移動制限層(mass transport limiting layer)74(図9参照)、生体親和性層(biocompatible layer)75(図9参照)、および/または他の任意の構成要素を備えていてもよい。以下説明するように、これらのアイテムのそれぞれが、センサ42の機能を高め、および/または、センサ42からの結果を促進する。
【0039】
基板
基板50は、例えば、ポリマまたはプラスチック材料、およびセラミック材料を含む各種非導電性材料を用いて形成することができる。特殊なセンサ42に適した材料は、少なくともある程度は、センサ42の所望の用途および材料の特性に基づいて決定される。
【0040】
幾つかの実施形態において、基板は柔軟性を有する。例えば、センサ42を、患者への埋め込み用に構成する場合、センサ42の埋め込みおよび/または装着により生じる患者の痛みおよび組織に対するダメージを減少させるため、(硬質センサも埋込型センサに使用できるが)センサ42に、柔軟性を持たせることができる。柔軟な基板50は、しばしば、患者の快適性を高め、広範囲の活動を可能にする。柔軟な基板50に適した材料としては、例えば、非導電性プラスチックまたはポリマ材料や、他の非導電性で、柔軟性を有する変形可能な材料が挙げられる。有用なプラスチックまたはポリマ材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、マイラー(Mylar)(商標)およびポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミドのような熱可塑性物質または、PETG(グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート)などの、これら熱可塑性物質のコポリマが挙げられる。
【0041】
他の実施形態において、センサ42は、例えば、曲げまたは破損に対し、構造的サポートを提供するため、比較的硬質の基板50を用いて作製される。基板50として使用できる硬質材料の例としては、酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素のような、低導電性セラミックが挙げられる。硬質基板を有する埋込型センサ42の利点の一つは、更なる挿入装置を使用することなくセンサ42の埋め込みを助けるようにセンサ42が、鋭い先端部および/または鋭い縁部を有することである。
【0042】
多くのセンサ42およびセンサ用途において、硬質および軟質センサのいずれも適切に機能することは言うまでもない。センサ42の柔軟性は、例えば、基板50の組成および/または厚みを変えることにより、連続体に沿って制御および変化させることもできる。
【0043】
柔軟性に関し考慮すべき事項に加えて、埋込型センサ42は、多くの場合毒性の無い基板50を備えているのが望ましい。基板50は、一以上の政府機関または民間団体によって、生体内用として認可されているのが好ましい。
【0044】
センサ42は、図12に示されているように、埋込型センサ42の挿入を容易にするため、選択自由な機構を備えていてもよい。例えば、センサ42は、挿入を容易にするため、先端部123を尖らせることもできる。更に、センサ42は、センサ42が作動している間、患者の組織内へのセンサ42の固定を助ける掛かり部125を備えていてもよい。しかしながら、掛かり部125は一般に、センサ42を交換するために取り除く際、皮下組織に対し殆ど損傷を与えることがないように十分小さいものである。
【0045】
基板50は、少なくとも幾つかの実施形態においては、センサ42の全長に渡って均一な寸法を有するが、他の実施形態では、図2に示しているように、基板50は、それぞれ異なった幅53、55の遠心端67と近位端65とを有する。これらの実施形態において、基板50の遠心端67は、比較的狭い幅53を有していてもよい。患者体内の皮下組織または他の部分に埋込型センサ42では、基板50の遠心端67の幅53が狭いことにより、センサ42の埋め込みを容易にすることができる。多くの場合、センサ42の幅が狭いほど、センサの埋め込み中および埋め込み後に患者が感じる痛みはより少ない。
【0046】
患者の通常の活動中に分析物を継続的または定期的にモニターするために設計された皮下への埋込型センサ42では、患者に埋め込まれるセンサ42の遠心端67の幅53は、2mm以下、好ましくは1mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。センサ42が幅の異なる領域を持たない場合には、センサ42の全幅は一般に、例えば、2mm、1.5mm、1mm、0.5mm、0.25mmまたはそれ以下であろう。しかしながら、より幅の広いまたは狭いセンサも使用できる。特に、静脈または動脈への挿入用、或いは、患者の動きが制限されている場合、例えば、患者がベッドまたは病院内に拘束されている場合、より幅の広い埋込型センサを使用することもできる。
【0047】
図2に戻って、電極のコンタクトパッド49と制御装置のコンタクトとの間の接続を容易にするため、センサ42の近位端65の幅55は、遠心端67よりも広くてもよい。センサ42のこの先端の幅が広いほど、コンタクトパッド49を大きくすることができる。これにより、制御装置(例えば、図1のセンサ制御装置44)のコンタクトにセンサ42を適切に接続するために必要とされる精密度を低下させることができる。しかしながら、センサ42の最大幅は、患者の簡便性および快適性のため、および/または、分析物モニタの望ましいサイズに適合するように、センサ42が依然小さいものであるよう制約される場合がある。例えば、図1に示しているセンサ42のような、皮下に埋込型センサ42の近位端65の幅55は、0.5mm〜15mm、好ましくは1mm〜10mm、更に好ましくは3mm〜7mmの範囲内である。しかしながら、より幅の広いまたは狭いセンサもこの生体内用途およびその他の生体内用途に使用できる。
【0048】
基板50の厚さは、以下説明するように、基板材料の機械的特性(例えば、材料の強度、引張り応力、および/または柔軟性)、その使用により基板50への応力が発生するセンサ42の所望用途、並びに、基板50に形成されたあらゆる溝または窪みの深さにより決められる。一般に、患者が通常の活動に従事しながら、分析物レベルを持続的または定期的にモニターするための皮下に埋込型センサ42の基板50の厚さは、50〜500μmであり、好ましくは100〜300μmである。しかしながら、特に他のタイプの生体内センサ42においては、より厚い基板50やより薄い基板50を使用することもできる。
【0049】
センサ42の長さは、様々な要因によって、広範囲に渡る値を取ることができる。埋込型センサ42の長さに影響を及ぼす要因としては、患者への埋め込み深さや、柔軟性を有する小型センサ42を上手に操作し、センサ42とセンサ制御装置44とを接続するための患者の能力が挙げられる。図1に示されている分析物モニタ用の皮下に埋込型センサ42の長さは、0.3〜5cmの範囲内であり得るが、より長いまたはより短いセンサも使用できる。センサ42が幅の狭い部分と広い部分とを有する場合、センサ42の幅の狭い部分(例えば、患者の皮下に挿入される部分)の長さは一般に約0.25〜0.2cmである。しかしながら、より長い部分やより短い部分を使用してもよい。この幅の狭い部分の全体、または一部分のみを患者の皮下に埋め込むことができる。他の埋込型センサ42の長さは、少なくともある程度は、センサ42が埋め込まれるまたは挿入される患者の部位によって変化するであろう。
【0050】
導電トレース
作用電極58を構成するために、基板上に少なくとも一つの導電トレース52を形成する。更に、電極(例えば、更なる作用電極、並びに、対向、対向/基準、および/または基準電極)および、温度プローブなどの、他の構成要素としての使用を目的として、基板50上に他の導電トレース52を形成してもよい。必須ではないが、導電トレース52は、図2に示されているように、センサ50の長手方向57に沿ってその距離の殆どに渡って延設されていてもよい。導電トレース52の配置は、分析物モニタシステムの特定の構造(例えば、制御装置のコンタクトの配置、および/またはサンプル室のセンサ42との関係)によって決められる。埋込型センサ、特に皮下に埋込型センサでは、導電トレースは一般に、センサの埋め込まれなければならない量を最小にするためセンサ42の先端近くまで延設されている。
【0051】
導電トレース52は、例えば、フォトリソグラフィ、スクリーン印刷、または他のインパクトまたはノンインパクト印刷技術を含む様々な技術により、基板50上に形成される。導電トレース52は、レーザーを用いて、有機質(例えば、ポリマまたはプラスチック)基板50に、導電トレース52を炭化させることにより形成してもよい。センサ42を形成する方法のいくつかの例は、特許文献3に説明されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0052】
基板50上に導電トレース52を配する別の方法は、図3Aに示しているように、基板50の一以上の表面に凹状溝54を形成することと、引き続き、導電材料56でこれら凹状溝54を充填することとを含む。凹状溝54は、インデンティング、型押し、または別の方法で、基板50の表面に凹部を作ることにより形成できる。基板の表面に溝および電極を形成する方法の例が、特許文献4に見られる。溝の深さは、一般的に、基板50の厚さと関連性を有する。一実施形態において、溝の深さは、約12.5〜75μm(0.5〜3ミル)、好ましくは約25〜50μm(1〜2ミル)の範囲内である。
【0053】
導電トレースは、一般に、炭素(例えば、グラファイト)、導電性ポリマ、金属または合金(例えば、金または金合金)、或いは、金属化合物(例えば、二酸化ルテニウムまたは二酸化チタン)のような導電材料56を用いて形成される。炭素、導電性ポリマ、金属、合金、または金属化合物からなるフィルムの形成は周知となっており、例えば、化学蒸着(CVD)、物理蒸着、スパッタリング、反応スパッタリング、印刷、コーティング、およびペインティングが挙げられる。溝54を充填する導電材料56は、しばしば、導電性インクまたはペーストのような前駆物質を使用して形成される。これらの実施形態において、導電材料56は、コーティング、ペインティング、またはコーティング用ブレードのような塗布器具を使用して材料を塗布するといった方法を用いて基板50上に堆積される。そして、溝54間の過剰導電材料は、例えば、基板表面にそってブレードを動かすことにより除去される。
【0054】
一実施形態において、導電材料56は、導電性インクのような前駆物質の一要素である。これは、例えば、エルコン インコーポレーション(Ercon、Inc.)(ウェアハム、エムエー(Wareham,MA))、メテク インコーポレーション(Metech,Inc.)(エルバーソン、ピーエー(Elverson,PA))、イー.アイ.デュポンドヌムール アンド カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Co.)(ウィルミントン、ディーイー(Wilmington,DE))、エムカ−リメックス プロダクツ(Emca−Remex Products)(モントゴメリーヴィレ、ピーエー(Montgomeryville,PA))、またはエムシーエー サービスィーズ(MCA Services)(メルボルン、グレートブリテン(Melbourn,Great Britain))から入手可能である。導電性インクは、一般に炭素、金属、合金、または金属化合物の粒子と、溶剤または分散剤とを含む半流動体またはペーストとして塗布される。基板50上(例えば、溝54内)に導電性インクを塗布した後、溶剤または分散剤は蒸発し、導電材料56の固体の塊(solid mass)が残る。
【0055】
炭素、金属、合金、または金属化合物の粒子に加えて、導電性インクはまた、結合剤を含有していてもよい。結合剤は、溝54内および/または基板50上に導電材料56を更に結合させるため、選択的に硬化させてもよい。結合剤を硬化することにより、導電材料56の導電性が高まる。しかしながら、これは一般に必要とされない。というのも、導電トレース52内の導電材料56により搬送される電流は、比較的弱い場合がよくあるからである(通常1μA未満であり、100nA未満であることが多い)。一般的な結合剤としては、例えば、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体、エラストマー、および高度ふっ素化ポリマが挙げられる。エラストマーの例としては、シリコーン、ポリマ性ジエン、およびアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂が挙げられる。ふっ素化ポリマ結合剤の一例は、テフロン(登録商標)(Teflon)(デュポン(DuPont)、ウィルミントン、ディーイー(Wilmington,DE))である。これらの結合剤は、例えば、熱、または紫外線(UV)光を含む光を用いて硬化される。適切な硬化方法は、一般に、使用される特定の結合剤によって決められる。
【0056】
しばしば、導電材料56の液体または半流動体前駆物質(例えば、導電性インク)を溝54内に堆積させると、前駆物質が溝54を埋める。しかしながら、溶剤または分散剤が蒸発すると、導電材料56は継続的に溝54を充填したままの状態であったりなかったりするため、残った導電材料56の体積が減少する場合がある。好ましい導電材料56は、体積が減少するにつれて基板50から剥がれることはなく、むしろ溝54内の高さが低くなる。これらの導電材料56は、一般に、基板によく付着するため、溶剤または分散剤の蒸発中に基板50から剥がれることはない。また、他の適切な導電材料56は、基板50の少なくとも一部に付着し、および/または、導電材料56を基板50に付着させる結合剤のような別の添加剤を含む。溝54内の導電材料56は、浸出不可能であるのが好ましく、基板50上に固定されているのが更に好ましい。幾つかの実施形態において、導電材料56は、溶剤または分散剤の除去により散在する、液体または半流動体前駆物質を複数回塗布することにより形成してもよい。
【0057】
別の実施形態では、溝54はレーザを使用して形成される。レーザは、ポリマまたはプラスチック材料を炭化させる。この工程において形成される炭素が、導電材料56として使用される。レーザにより形成される炭素を補うために、導電性カーボンインクのような、更なる導電材料56を使用してもよい。
【0058】
更なる実施形態において、導電トレース52は、パッド印刷技術により形成される。例えば、導電材料からなるフィルムは、連続したフィルム、または担体フィルムに堆積させたコーティング層のいずれかとして形成される。この導電材料から成るフィルムは、印刷ヘッドと基板50の間に配置される。基板50表面上のパターンは、印刷ヘッドを使用して導電トレース52の所望のパターンに従って作られる。導電材料は、圧力および/または熱により導電材料からなるフィルムから基板50に転写される。この技術は、しばしば、基板50に溝(例えば、印刷ヘッドにより生じる凹部)を作り出す。別の場合には、導電材料は、実質的な凹部を形成することなく、基板50の表面上に堆積される。
【0059】
他の実施の形態では、導電トレース52は、ノンインパクト印刷技法により形成される。そのような技法としては、電子写真および磁力記録が挙げられる。これらの方法においては、導電トレース52の像がドラム上に電気的または磁気的に形成される。像を電気的に形成するために、レーザまたはLEDを使用することができる。像を磁気的に形成するためには、磁気記録ヘッドを使用することができる。そして、トナー物質(例えば、導電性インクのような導電材料)が、ドラムの像に対応する部分に引きつけられる。その後、トナー物質は、ドラムと基板の接触により、基板に塗布される。例えば、基板は、ドラム上を回転させることができる。その後、トナー物質を乾燥させ、および/または、トナー物質中の結合剤を硬化させ、トナー物質を基板に付着させることができる。
【0060】
別のノンインパクト印刷技法としては、基板上に、所望のパターンに導電材料の液滴を射出するものが挙げられる。この技法の例としては、インクジェット印刷およびピエゾジェット印刷が挙げられる。像がプリンタに送られると、プリンタは、パターンに応じて導電材料(例えば、導電性インク)を射出する。プリンタは連続した流れの導電材料を供給するか、または所望のポイントで、個別の量の導電材料を射出してもよい。
【0061】
導電トレースを形成する、更に別のノンインパクト印刷の実施形態は、粒子線写真法である。この方法では、光重合の可能なアクリル樹脂(例えば、クビタル(Cubital)社のゾリマー(Solimer)7501、バッドクロイツナハ(Bad Kreuznach)、ドイツ(Germany))のような可硬化性液体前駆物質を基板50の表面上に堆積させる。そして、導電トレース52のポジまたはネガの像を有するフォトマスクを使用して液体前駆物質を硬化させる。フォトマスクを通して光(例えば、可視または紫外光線)を向け、液体前駆物質を硬化し、フォトマスク上の像に応じて基板上に固体層を形成する。硬化されていない液体前駆物質を除去することにより、固体層中に溝54が残る。その後、導電材料56でこれらの溝54を充填し、導電トレース52を形成することができる。
【0062】
導電トレース52(および、溝54が使用される場合、溝54)は、例えば、25〜250μmの範囲内で、また、上記方法により、例えば、250μm、150μm、100μm、75μm、50μm、25μm、またはそれ以下の幅を含む比較的狭い幅に形成することができる。基板50の同一面上に二つ以上の導電トレース52を有する実施形態において、導電トレース52は、導電トレース52間の電導を防ぐのに十分な距離を置いて離れている。導電トレース間のエッジ−エッジ間距離は、25〜250μmの範囲が好ましく、例えば、150μm、100μm、75μm、50μm、またはそれ以下であってもよい。基板50上の導電トレース52の密度は、約150〜700μmに1トレースの範囲であるのが好ましく、667μm以下に1トレース、333μm以下に1トレース、または、更に167μm以下に1トレースといった低密度であってもよい。
【0063】
作動電極58および対向電極60(別個の基準電極が使用される場合)は、しばしば、炭素のような導電材料56を用いて作製される。適した導電性カーボンインクは、エルコン インコーポレーション(Ercon、Inc.)(ウェアハム、エムエー(Wareham,MA))、メテク インコーポレーション(Metech,Inc.)(エルバーソン、ピーエー(Elverson,PA))、イー.アイ.デュポンドヌムール アンド カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Co.)(ウィルミントン、ディーイー(Wilmington,DE))、エムカ−リメックス プロダクツ(Emca−Remex Products)(モントゴメリーヴィレ、ピーエー(Montgomeryville,PA))、またはエムシーエー サービスィーズ(MCA Services)(メルボルン、グレートブリテン(Melbourn,Great Britain))から入手可能である。一般に、作用電極58の作用面51は、分析物含有流体と接触している(例えば、患者に埋め込まれている)導電トレース52の少なくとも一部である。
【0064】
基準電極62および/または対向/基準電極は、一般に、適切な参照材料、例えば、銀/塩化銀または導電材料に結合された浸出不可レドックス対、例えば炭素が結合したレドックス対といった、導電材料56を用いて形成される。適した銀/塩化銀導電性インクは、エルコン インコーポレーション(Ercon、Inc.)(ウェアハム、エムエー(Wareham,MA))、メテク インコーポレーション(Metech,Inc.)(エルバーソン、ピーエー(Elverson,PA))、イー.アイ.デュポンドヌムール アンド カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Co.)(ウィルミントン、ディーイー(Wilmington,DE))、エムカ−リメックス プロダクツ(Emca−Remex Products)(モントゴメリーヴィレ、ピーエー(Montgomeryville,PA))、またはエムシーエー サービスィーズ(MCA Services)(メルボルン、グレートブリテン(Melbourn,Great Britain))から入手可能である。銀/塩化銀電極は、サンプルまたは体液の構成成分、この場合Cl-を用いた金属電極の反応を伴う、一種の基準電極の例である。
【0065】
基準電極の導電材料に結合するのに適したレドックス対としては、例えば、レドックスポリマ(例えば、多数のレドックス中心(multiple redox centers)を有するポリマ)が挙げられる。基準電極表面は、誤った電位が測定されないように非腐食性であるのが好ましい。好ましい導電材料としては、金やパラジウムといった低腐食性金属が挙げられる。最も好ましいのは、炭素や導電性ポリマといった、非金属導電体を含む非腐食性材料である。レドックスポリマは、導電トレース52の炭素表面のような、基準電極の導電材料に吸着されるかまたは共有結合される。非重合性レドックス対も、同様に炭素または金の表面に結合され得る。
【0066】
電極表面にレドックスポリマを固定するために、様々な方法が使用できる。一方法は、吸着による固定化である。この方法は、比較的高分子量を有するレドックスポリマに対し特に有用である。ポリマの分子量は、例えば、架橋により増加さることができる。
【0067】
レドックスポリマを固定するための別の方法は、電極表面の機能化、そして、レドックスポリマの電極表面上の官能基への化学結合を含み、これはしばしば共有結合である。このタイプの固定化の一例は、ポリ4−ビニルピリジンで始まる。ポリマのピリジン環は、部分的に、[Os(bby)2Cl]+/2+のような可還元/可酸化種と結合してキレートを作る。但し、前記式中bpyは2,2‘−ビピリジンである。ピリジン環の一部は、2−ブロモエチルアミンとの反応により四級化される。そして、ポリマは、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルのようなジエポキシドを用いて架橋される。
【0068】
炭素表面は、例えば、ジアゾニウム塩の電気還元により、レドックス種またはポリマを付着させるため修飾することができる。一説明として、p−アミノ安息香酸のジアゾ化により形成されたジアゾニウム塩の還元により、フェニルカルボン酸官能基を有する炭素表面が修飾される。そして、これらの官能基は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩のような、カルボジイミドにより活性化され得る。その後、活性化された官能基は、上述の四級化されたオスミウム含有レドックスポリマ、または2−アミノエチルフェロセンのようなアミン官能化レドックス対と結合され、レドックス対を形成する。
【0069】
同様に、金もシスタミンのようなアミンにより官能化できる。[Os(bpy)2(ピリジン−4−カルボキシレート)Cl]0/+のようなレドックス対は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩により活性化され、金結合アミンと反応してアミドを形成する反応性O−アシルイソ尿素を形成する。
【0070】
一実施形態においては、電極またはプローブリードとして導電トレース52を使用することに加え、例えば、分析物レベルが閾値を超えた場合に、患者に軽い電気ショックを与えるため、基板50上の二以上の導電トレース52が使用される。このショックは、分析物を適切なレベルに戻すために何らかの行動を起こすようにという患者への警告または警報としての役割を果たすことができる。
【0071】
軽い電気ショックは、別途導電路で接続されてはいない、いずれか二つの導電トレース52間に電位を印可することにより発生させる。例えば、電極58、60、62の内の二つ、または、一つの電極58、60、62と温度プローブ66とを使用して軽いショックを与えることもできる。作用電極58と基準電極62とは、この用途には使用しないほうが好ましい。なぜならば、特定の電極上または近傍の化学構成要素(例えば、作用電極上の感知層または基準電極上のレドックス対)に何らかのダメージを与える可能性があるからである。
【0072】
軽いショックを発生させるために使用する電流は、一般に0.1〜1mAである。患者への弊害を避けるように注意しなければならないが、これより高いかまたは低い電流を使用することもできる。一般に、導電トレース間の電位は、1〜10ボルトである。しかしながら、例えば、導電トレース52の抵抗、導電トレース52間の距離、および所望の電流量によって、より高いまたはより低い電圧を使用することもできる。軽いショックが伝えられると、作用電極58における電位および温度プローブ66全体に渡っての電位を除去して、軽いショックを供給する導電トレース52と作用電極58(および/または、使用されている場合、温度プローブ66)との間の望ましくない電導により生じるそれら構成要素への弊害を防ぐこともできる。
【0073】
コンタクトパッド
一般に、各導電トレース52はコンタクトパッド49を有する。コンタクトパッド49は、制御装置(例えば、図1のセンサ制御装置)の導電コンタクトと接触させられる以外は、トレース52の残りの部分と区別できない、単に導電トレース52の一部であってもよい。しかしながら、より一般的には、コンタクトパッド49は、制御装置のコンタクトとの接続を容易にするため、導電トレース52の他の部分よりも幅の広いトレース52の一部分である。導電トレース52の幅と比べて、コンタクトパッド49を比較的大きくすることにより、小さなコンタクトパッドを用いた場合よりも、コンタクトパッド49と制御装置のコンタクトとの間の精密な位置合わせの必要性における重要性が低下する。
【0074】
コンタクトパッド49は、一般的に、導電トレース52の導電材料56と同様の材料を使用して作製される。しかしながら、これは必須ではない。コンタクトパッド49を形成するために金属、合金、および金属化合物を使用してもよいが、幾つかの実施形態においては、炭素または、導電性ポリマのような他の非金属材料からコンタクトパッド49を作製するのが望ましい。金属または合金コンタクトパッドとは対照的に、コンタクトパッド49が濡れ(wet)環境、含水(moist)環境、または、湿気(humid)環境にある場合、炭素および他の非金属コンタクトパッドは容易に腐食しない。金属および合金は、特に、コンタクトパッド49と制御装置のコンタクトとが異なる金属または合金で作られている場合、これらの条件下で腐食することがある。しかし、制御装置のコンタクトが金属または合金であったとしても、炭素および非金属コンタクトパッド49が著しく腐食することはない。
【0075】
本発明の一実施形態は、コンタクトパッド49を有するセンサ42と導電コンタクトを有する制御装置44とを備えている(図示なし)。センサ42の作動中、コンタクトパッド49と導電コンタクトは、互いに接触している。この実施形態では、コンタクトパッド49、または導電コンタクトのいずれかが非腐食性導電材料を用いて作製されている。このような材料としては、例えば、炭素や導電性ポリマが挙げられる。好ましい非腐食性材料には、グラファイトやガラス質炭素(vitreous carbon)が含まれる。向かい合ったコンタクトパッドまたは導電コンタクトは、炭素、導電性ポリマ、または、金、パラジウム、白金族金属のような金属、或いは、二酸化ルテニウムのような金属化合物を使用して作製される。コンタクトパッドおよび導電コンタクトのこの構成は、一般に、腐食を減らす。センサが3mM、より好ましくは100mMのNaCl溶液中に配置された場合、コンタクトパッドおよび/または導電コンタクトの腐食により生じる信号は、通常の生理学的範囲内の分析物濃度に晒された場合センサが発生させる信号の3%未満であるのが好ましい。少なくとも幾つかの皮下グルコースセンサでは、通常の生理学的範囲内の分析物によって発生する電流は、3〜500nAの範囲にある。
【0076】
温度プローブ66(下記に説明)の二つのプローブリード68、70と同様に、各電極58、60、62も、図10および図11に示されているようにコンタクトパッド49に接続されている。一実施形態(図示なし)では、コンタクトパッド49は、基板50の、コンタクトパッド49が設けられている各電極または温度プローブリードと同一側にある。
【0077】
他の実施形態では、図10および図11に示されているように、少なくとも一方の面の導電トレース52は、基板のバイアを介して、基板50の反対側の表面上のコンタクトパッド49aに接続されている。この構造の利点は、制御装置のコンタクトと電極58、60、62および温度プローブ66の各プローブリード68、70とを、基板50の単一の面で接触させることができることである。
【0078】
更に他の実施形態(図示なし)においては、各導電トレース52に対して、基板50の両面にコンタクトパッドを設けるために、基板を貫通したバイアが使用される。コンタクトパッド49aと導電トレース52とを接続するバイアは、適切な位置に基板50を貫通する孔を開けて、その孔に導電材料56を充填することにより形成することができる。
【0079】
典型的電極構造
以下、多くの典型的な電極構造を説明するが、他の構造も同様に使用できることは言うまでもない。図3Aに示されている一実施形態において、センサ42は、二つの作用電極58a、58bと、基準電極としても機能する一つの対向電極60とを備えている。別の実施形態において、センサは、図3Bに示されているように、一つの作用電極58aと、一つの対向電極60と、一つの基準電極62とを備えている。これらの各実施形態は、基板50の同一面上に全ての電極が形成された状態で図解されている。
【0080】
その代わりとして、電極の一つ以上を、基板50の反対側に形成してもよい。これは、電極が二つの異なった種類の導電材料56(例えば、炭素と銀/塩化銀)を使用して形成される場合、好都合なことがある。そして、少なくとも幾つかの実施形態においては、一種類のみの導電材料56を基板50の各面に塗布するだけでよく、これにより、製造方法の工程数が減り、および/または、その方法における位置合わせの制約が緩和される。例えば、作用電極58が炭素系導電材料56を使用して形成され、基準電極または対向/基準電極が銀/塩化銀導電材料56を使用して形成される場合には、製造を容易にするために、基板50の向き合った面に作用電極と、基準または対向/基準電極とを形成してもよい。
【0081】
別の実施形態においては、図6に示しているように、二つの作用電極58と一つの対向電極60とが基板50の一方の面に形成されており、一つの基準電極62と温度プローブ66とが基板50の反対側に形成されている。図7および図8に、センサ42のこの実施形態の先端部の向かい合った面が示されている。
【0082】
感知層
酸素のような幾つかの分析物は、作用電極58上で直接電気酸化または電気還元される。グルコースや、ラクテートなどの他の分析物は、分析物の電気酸化または電気還元を容易にするため、少なくとも一つの電子移動剤および/または少なくとも一つの触媒の存在を必要とする。触媒は、作用電極58上で直接電気酸化または電気還元される、酸素などのそれら分析物に使用してもよい。これらの分析物に対して、各作用電極58は、作用電極58の作用面上または近傍に形成された感知層64を有する。一般に、感知層64は、作用電極58の小さな部分のみにまたはその近傍、しばしば、センサ42の先端部近傍に形成される。これにより、センサ42を形成するために必要とされる物質量が制限され、また分析物含有流体(例えば、体液、サンプル液、または担体液)との接触に最適な位置に感知層64が配置される。
【0083】
感知層64は、分析物の電解を容易にするように設計された一以上の構成要素を含む。感知層64は、例えば、分析物の反応に触媒作用を及ぼし、作用電極58での反応を生じさせるための触媒、または、分析物と作用電極58間で間接的または直接的に電子を移動させるための電子移動剤、或いはその両方を含んでいてもよい。
【0084】
感知層64は、所望の構成要素(例えば、電子移動剤および/または触媒)の固体組成物として形成してもよい。これらの構成要素は、センサ42から浸出不可能なものであるのが好ましく、センサ42上に固定されているのがより好ましい。例えば、構成要素は作用電極58上に固定されてもよい。その代わりとして、感知層64の構成要素は、作用電極58上に設けられた一以上の膜またはフィルム内または間に固定されるか、或いは、前記構成要素は、ポリマまたはゾル−ゲルマトリックス中に固定されてもよい。固定された感知層の例は、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11および1998年2月11日に出願された「ダイズペルオキシダーゼ電気化学センサ(Soybean Peroxidase Electrochemical Sensor)」と題する特許文献12、代理人書類番号M&G12008.8WOI2に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0085】
幾つかの実施形態において、感知層64の構成要素の内一以上の構成要素は、固体組成物を形成する代わりに、感知層64内の流体中に溶媒和、分散、または懸濁していてもよい。前記流体中に、センサ42を供給しても、センサ42が分析物含有流体から前記流体を吸収してもよい。このタイプの感知層64に溶媒和、分散、または懸濁している構成要素は、感知層から浸出不可能であるのが好ましい。例えば、感知層の周囲に、感知層64の構成要素の浸出を防ぐバリヤ(例えば、電極、基板、膜、および/またはフィルム)を設けることにより浸出不可能な状態にすることができる。そのようなバリヤの一例は、分析物を感知層64内に拡散させ、感知層64の構成要素と接触させるが、感知層64からの感知層構成要素(例えば、電子移動剤および/または触媒)の拡散は減少させるかまたは排除する微細孔膜またはフィルムである。
【0086】
各種の異なった感知層構造が使用できる。一実施形態において、感知層64は、図3Aおよび図3Bに示されているように、作用電極58aの導電材料56上に堆積させる。感知層64は、作用電極58aの導電材料56からはみ出して広がっていてもよい。場合によって、感知層64はまた、グルコースセンサの性能を低下させることなく、対向電極60または基準電極62上に広がっていてもよい。内部に導電材料56が堆積された溝54を利用するそれらのセンサ42では、導電材料56が溝54を満たしていない場合、感知層64の一部が溝54内に形成されていてもよい。
【0087】
作用電極58aと直接接触している感知層64は、分析物の反応を促進するための触媒と同様に、分析物と作用電極間で直接的または間接的に電子を移動させるための電子移動剤を含んでいてもよい。例えば、それぞれグルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、またはラッカーゼのような触媒と、それぞれグルコース、ラクテート、または酸素の電気酸化を促進する電子移動剤とを含む感知層を有するグルコース、ラクテート、または酸素電極を形成することができる。
【0088】
別の実施形態においては、作用電極58a上に感知層64を直接堆積させない。その代わりに、感知層64は、図4Aに示されているように、作用電極58aから間隔をおいて配置され、分離層61により作用電極58aから隔てられる。分離層61は、一般に、一以上の膜またはフィルムを有する。感知層64から作用電極58aを隔てることに加えて、下記で説明するように、分離層61は、物質移動制限層または妨害物質排除層としての役割を果たすこともできる。
【0089】
一般に、作用電極58と直接的には接触していない感知層64は、分析物の反応を促進する触媒を含む。しかしながら、この感知層64は、一般に、作用電極58aから分析物に直接電子を移動させる電子移動剤を含まない。これは、感知層64が作用電極58aから間隔をおいて配置されているからである。このタイプのセンサの一例は、感知層64中に酵素(例えば、それぞれ、グルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼ)を含むグルコースまたはラクテートセンサである。グルコースまたはラクテートは、酵素の存在の下、第二の化合物(例えば、酸素)と反応する。そして、第二の化合物は、電極で電気酸化または電気還元される。電極での信号の変化は、流体中の第二の化合物のレベルの変化を示し、グルコースまたはラクテートレベルの変化に比例し、引いては分析物レベルと相関関係を有する。
【0090】
別の実施形態では、図4Bに示されているように、二つの感知層63、64が使用される。その二つの感知層63、64のそれぞれが、作用電極58a上または作用電極58a近傍に個別に形成されていてもよい。一方の感知層64は一般に、必須ではないが、作用電極58aから間隔をおいて配置さる。例えば、この感知層64は、生成化合物を形成するため、分析物の反応に触媒作用を及ぼす触媒を含んでいてもよい。そして、生成化合物は、作用電極58aと生成化合物との間で電子を移動させるため電子移動剤、および/または、作用電極58aで信号を発生させるよう生成化合物の反応に触媒作用を及ぼすための第二の触媒を含むことのできる第二の感知層63で電解される。
【0091】
例えば、グルコースまたはラクテートセンサは、作用電極から間隔をおいて配置される、酵素、例えば、グルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼを有する第一の感知層64を備えていてもよい。適切な酵素の存在の下、グルコースまたはラクテートの反応により、過酸化水素が生じる。第二の感知層63は、直接作用電極58a上に設けられ、過酸化水素に対する反応で電極において信号を発生させるため、ペルオキシダーゼ酵素と、電子移動剤とを含む。センサが示す過酸化水素のレベルは、グルコースまたはラクテートのレベルと相関関係を有する。同様に機能する別のセンサは、単一感知層を用いて作製することができる。単一感知層中には、ペルオキシダーゼと、グルコースまたは乳酸オキシダーゼの両方が堆積している。このようなセンサの例は、特許文献13、特許文献14、および1998年2月11日に出願された「ダイズペルオキシダーゼ電気化学センサ(Soybean Peroxidase Electrochemical Sensor)」と題する特許文献15、代理人書類番号M&G12008.8WOI2に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0092】
幾つかの実施形態では、作用電極58bの一つ以上が、図3Aおよび図4Aに示されているように、対応する感知層64を備えていないか、または、分析物の電解に必要とされる一以上の構成要素(例えば、電子移動剤または触媒)を含んでいない感知層(図示なし)を有する。この作用電極58bで発生する信号は、一般に、流体中の、妨害物質(interferents)およびイオンのような他の供与源により発生するのであって、分析物に対する反応により発生するのではない(なぜならば、分析物が電気酸化または電気還元されないからである)。よって、この作用電極58bの信号は、バックグラウンド信号に対応する。バックグラウンド信号は、例えば、作用電極58aの信号から、作用電極58bの信号を差し引くことにより、十分に機能的な感知層64に関連した他の作用電極58aから得られる分析物信号から除去することができる。
【0093】
複数の作用電極58aを有するセンサを使用して、これらの作用電極58aで発生する信号または測定値を平均することにより、更に正確な結果を得ることもできる。また、更に正確なデータを得るために、単一作用電極58aまたは複数の作用電極での、複数の読取値を平均してもよい。
【0094】
電子移動剤
図3Aおよび図3Bに示されているように、多くの実施形態において、感知層64は、作用電極58の導電材料56と接触している一以上の電子移動剤を含んでいる。本発明に係る幾つかの実施形態においては、センサ42が患者に埋め込まれている期間、作用電極58からの電子移動剤の浸出は殆どまたは全く生じない。拡散するまたは浸出可能な(つまり、放出可能な)電子移動剤は、しばしば、分析物含有流体中に拡散して、時間の経過とともにセンサの感度を低下させ、電極の有効性を低下させる。更に、埋込型センサ42における、拡散または浸出する電子移動剤は、患者に害をなすこともある。これらの実施形態においては、分析物含有流体に24時間、更に好ましくは、72時間浸漬した後、電子移動剤の好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは、少なくとも95%、最も好ましくは、少なくとも99%がセンサ上に残る。特に、埋込型センサでは、37℃の体液中に24時間、更に好ましくは、72時間浸漬した後、電子移動剤の好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは、少なくとも95%、最も好ましくは、少なくとも99%がセンサ上に残る。
【0095】
本発明に係る幾つかの実施形態においては、浸出を防ぐために、作用電極58上或いは、作用電極58上に配された一以上の膜またはフィルム間または内に電子移動剤を結合させるかまたは別の方法で固定する。電子移動剤は、例えば、ポリマまたはゾル−ゲル固定化技法を用いて作用電極58上に固定することができる。また、電子移動剤は、ポリマーのような別の分子を介して直接的または間接的に作用電極58に化学(例えば、イオン、共有、配位)結合させることもでき、その結果、前記分子が作用電極58に結合される。
【0096】
図3Aおよび図3Bに示されているように、作用電極58a上への感知層64の適用は、作用電極58aの作用面を作成するための一方法である。電子移動剤は、分析物を電気酸化または電気還元するため電子の移動を媒介することにより、分析物を介して、作用電極58と対向電極60との間で電流が流れることを可能にする。電子移動剤の媒介により、電極上での直接的電気化学反応に適していない分析物の電気化学分析が容易になる。
【0097】
一般に、好ましい電子移動剤は、標準カロメル電極(SCE)のレドックス電位より数百ミリボルト高いかまたは低いレドックス電位を有する電気還元可能および電気酸化可能なイオンまたは分子である。電子移動剤が、SCEに対して、約−150mVを超えて還元することはなく、また約+400mVを超えて酸化することのないものであるのが好ましい。
【0098】
電子移動剤は、有機、有機金属、または無機であってもよい。有機レドックス種の例としては、キノンと、酸化された状態で、ナイルブルーやインドフェノールのようなキノイド構造を有する種とがある。幾つかのキノンと、部分的に酸化された幾つかのキンヒドロンは、分析物含有流体中の妨害タンパク質の存在により、前記レドックス種を本発明に係る幾つかのセンサにとって不適当なものにすることのある、システインのチオール基、リシンとアルギニンのアミン基、およびチロシンのフェノール基のようなタンパク質の官能基と反応する。通常、置換キノンおよびキノイド構造を有する分子は、タンパク質に対する反応性が低く、好ましい。好ましい4位置換(tetrasubstituted)キノンは、通常、1、2、3、および4の位置に炭素原子を有する。
【0099】
一般に、本発明における用途に適した電子移動剤は、サンプルの分析期間中の電子移動剤の拡散によるロスを防ぐか、または実質的に減少させる構造または荷電を有する。好ましい電子移動剤としては、結果として作用電極上に固定されるポリマに結合されたレドックス種が挙げられる。レドックス種とポリマ間の結合は、共有、配位、またはイオン結合であってもよい。有用な電子移動剤およびそれらの製造方法は、特許文献16、特許文献17、特許文献18および特許文献19に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。あらゆる有機または有機金属レドックス種がポリマに結合され、電子移動剤として使用されるが、好ましいレドックス種は、遷移金属化合物または錯体である。好ましい遷移金属化合物または錯体としては、オスミウム、ルテニウム、鉄、およびコバルト化合物または錯体が挙げられる。最も好ましいのは、オスミウム化合物および錯体である。下記レドックス種の多くも、一般に、ポリマ成分を用いることなく、電子移動剤の浸出が許容されるセンサの感知層中または担体流体中の電子移動剤として使用してもよいことは言うまでもない。
【0100】
一タイプの放出不可ポリマ性電子移動剤としては、ポリマ組成物中に共有結合したレドックス種が挙げられる。このタイプの媒体(mediator)の一例が、ポリビニルフェロセンである。
【0101】
別タイプの放出不可電子移動剤としては、イオン結合されたレドックス種が挙げられる。一般に、このタイプの媒体は、逆荷電レドックス種に結合した荷電ポリマを含む。このタイプの媒体の例としては、オスミウムまたはルテニウムポリピリジルカチオンのような正荷電レドックス種に結合されたナフィオン(登録商標)(デュポン)などの負荷電ポリマが挙げられる。イオン結合された媒体の別の例は、フェリシアン化物またはフェロシアン化物のような負荷電レドックス種に結合された四級化ポリ4−ビニルピリジン、または、ポリ1−ビニルイミダゾールのような正荷電ポリマである。好ましいイオン結合されたレドックス種は、逆荷電レドックスポリマ内に結合された高荷電レドックス種である。
【0102】
本発明に係る別の実施形態における、適切な放出不可電子移動剤としては、ポリマに配位結合したレドックス種が挙げられる。例えば、媒体は、ポリ1−ビニルイミダゾール、または、ポリ4−ビニルピリジンに対するオスミウムまたはコバルト2,2’− ビピリジル錯体の配位により形成される。
【0103】
好ましい電子移動剤は、一以上のリガンドを有するオスミウム遷移金属錯体であり、前記リガンドのそれぞれが、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、またはそれらの誘導体といった窒素含有複素環を有する。更に、好ましい電子移動剤は、ポリマ中で共有結合した一以上のリガンドを有し、前記リガンドのそれぞれが、ピリジン、イミダゾールまたはそれらの誘導体といった、少なくとも一つの窒素含有複素環を有するものである。これらの好ましい電子移動剤は、錯体が速やかに酸化および還元されるように、相互間および作用電極58間で速やかに電子を交換する。
【0104】
特に有用な電子移動剤の一例は、(a)ピリジンまたはイミダゾール官能基を有するポリマまたはコポリマと、(b)必ずしも同一でない二つのリガンドと複合体を形成したオスミウムカチオンとを含み、前記リガンドのそれぞれが、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、またはそれらの誘導体を含むものである。オスミウムカチオンとの錯形成反応用の2,2’−ビピリジンの好ましい誘導体は、4,4’− ジメトキシ− 2,2’−ビピリジンなどの、モノ−、ジ−、および、ポリアルコキシ−2,2’−ビピリジンおよび4,4’−ジメチル− 2,2’−ビピリジンである。オスミウムカチオンとの錯形成反応用の1,10−フェナントロリンの好ましい誘導体は、4,7’−ジメトキシ−1,10−フェナントロリンなどの、モノ−、ジ−、ポリアルコキシ−1,10−フェナントロリンおよび4,7’−ジメチル−1,10−フェナントロリンである。オスミウムカチオンとの錯形成反応用の好ましいポリマとしては、ポリ1−ビニルイミダゾール(「PVI」と称す)およびポリ4−ビニルピリジン(「PVP」と称す)のポリマおよびコポリマが挙げられる。ポリ1−ビニルイミダゾールの適切なコポリマ置換基としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、および置換または四級化N−ビニルイミダゾールが挙げられる。最も好ましいのは、ポリ1−ビニルイミダゾールのポリマまたはコポリマに対し錯形成反応が生じたオスミウムを有する電子移動剤である。
【0105】
好ましい電子移動剤は、標準カロメル電極(SCE)に対し、−100mV〜約+150mVの範囲内のレドックス電位を有する。電子移動剤の電位は、−100mV〜+150mVの範囲内であるのが好ましく、前記電位は、−50mV〜+50mVの範囲内であるのが更に好ましい。最も好ましい電子移動剤は、オスミウムレドックスセンタ、およびSCEに対し、+50mV〜−150mVの範囲内のレドックス電位を有する。
【0106】
触媒
感知層64は、分析物の反応に触媒作用を及ぼすことのできる触媒を含んでいてもよい。触媒はまた、幾つかの実施形態では、電子移動剤として機能することもできる。適した触媒の一例は、分析物の反応に触媒作用を及ぼす酵素である。例えば、分析物がグルコースである場合、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ(例えば、ピロロキノリンキノングルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ))、またはオリゴ糖デヒドロゲナーゼのような触媒が使用できる。分析物がラクテートである場合、乳酸オキシダーゼまたは乳酸デヒドロゲナーゼが使用できる。分析物が酸素である場合、または酸素が分析物の反応に応じて発生するかまたは消費される場合、ラッカーゼが使用できる。
【0107】
触媒が、センサの固体感知層の一部であるか否か、または感知層内の流体中に溶媒和されているか否かにかかわらず、触媒は浸出不可能な状態でセンサ上に配されているのが好ましい。作用電極58からの、および患者の体内への望ましくない触媒の浸出を防ぐため、触媒は、センサ内(例えば、電極上、および/または、膜かフィルム内または間)に固定されているのがより好ましい。これは、例えば、触媒をポリマに付着させること、別の電子移動剤(上述したように、ポリマ性であり得る)で触媒を架橋すること、および/または、触媒よりも小さい孔径の一以上のバリヤ膜またはフィルムを設けることにより達成できる。
【0108】
上述のように、第二の触媒も使用できる。この第二の触媒は、しばしば、分析物の触媒反応により生じた生成化合物の反応に触媒作用を及ぼすのに使用される。第二の触媒は、一般に、電子移動剤と共に作用して、生成化合物を電解し、作用電極で信号を発生させる。また、第二の触媒は、下記に説明するように、妨害物質を除去する反応に触媒作用を及ぼすために、妨害物質排除層中に提供してもよい。
【0109】
本発明の一実施形態は、作用電極58の導電トレース52を形成する導電材料56中に触媒が混合または分散された電気化学センサである。これは、例えば、カーボンインクに酵素のような触媒を混合し、基板50の表面の溝54にその混合物を塗布することにより実現できる。触媒は、作用電極58から浸出できないように、溝53内に固定されるのが好ましい。これは、例えば、カーボンインク内の結合剤を、その結合剤に適した硬化技法を用いて硬化させることにより達成できる。硬化技法としては、例えば、溶剤または分散剤の蒸発、紫外線光への露光、または熱に晒すことが挙げられる。一般に、前記混合物は、触媒を実質的に劣化させない条件下で塗布される。例えば、触媒は、熱過敏性酵素であってもよい。酵素と導電材料の混合物は、好ましくは、連続した時間加熱されることなく、塗布し硬化させるべきである。前記混合物は、蒸発または紫外線硬化技法を用いて、または、触媒が実質的に劣化しないように十分短い時間熱に晒すことにより硬化できる。
【0110】
生体内分析物センサに関して考慮すべき別の事項としては、触媒の耐熱性が挙げられる。多くの酵素は、生体温度での安定性が乏しい。そこで、大量の触媒を使用することおよび/または必要温度(例えば、37℃または正常体温より高い温度)で熱安定性を有する触媒を使用することが必要となり得る。熱安定触媒とは、少なくとも一時間、好ましくは、少なくとも一日、より好ましくは、少なくとも三日間37℃で保持した場合、その活性のロスが5%未満である触媒と定義することができる。熱安定触媒の一例は、ダイズペルオキシダーゼである。この特殊な熱安定触媒は、同一または別個の感知層において、グルコースまたは乳酸オキシダーゼ或いはデヒドロゲナーゼと組み合わせた場合、グルコースまたはラクテートセンサに使用できる。熱安定触媒および電気化学発明におけるそれらの使用に関する更なる説明は、特許文献20、特許文献21、および1998年2月11日に出願された、「ダイズペルオキシダーゼ電気化学センサ(Soybean Peroxidase Electrochemical Sensor)」と題する特許文献22、代理人書類番号M&G12008.8WOI2に見られる。
【0111】
分析物の電解
分析物を電解するため、作用および対向電極58、60に渡って電位(対基準電位)を印可する。印可する電位の最低限の大きさは、しばしば、特定の電子移動剤、分析物(分析物が電極で直接電解される場合)、または第二の化合物(分析物レベルによってレベルが決まる酸素または過酸化水素のような第二の化合物が電極で直接電解される場合)によって決められる。印可する電位は、通常、所望の電気化学反応によって、電極で直接電解される電子移動剤、分析物、または第二の化合物のいずれかのレドックス電位と等しく、或いは、より酸化または還元するものである。作用電極の電位は、一般に、電気化学反応を完了または略完了させられるほど十分に高い。
【0112】
電位の大きさは、場合によっては、尿酸塩、アスコルベート、およびアセトアミノフェノンのような、(分析物に応じて発生する電流によって測定されるため)妨害物質の著しい電気化学反応を防ぐため自由に制限してもよい。これらの妨害物質が、下記のように妨害物質規制バリヤ(interferent−limiting barrier)を設けるか、或いは、バックグラウンド信号が得られる作用電極58b(図3A参照)を備えるといった別の方法で除去されている場合、上記電位の制限は必要なくなる。
【0113】
作用電極58と対向電極60との間に電位が印可されると、電流が流れる。電流は、分析物、または分析物によりそのレベルが影響を受ける第二の化合物の電解の結果得られる。一実施形態では、電気化学反応は、電子移動剤および任意の触媒を介して生じる。多くの分析物Bは、適切な触媒(例えば、酵素)の存在の下、電子移動剤種Aにより生成物Cに酸化(または還元)される。そして、電子移動剤Aは、電極で酸化(または還元)される。電子は、電極によって集められ(または電極から排除され)、その結果生じた電流を測定する。この方法は、反応式(1)および(2)で示される(触媒の存在下での、レドックス媒体Aによる分析物Bの還元に関して同様の式が書ける):
【化1】
【化2】
【0114】
一例として、電気化学センサは、二つの浸出不可フェロシアニドアニオン、二つの水素イオン、およびグルコノラクトンを生成するための、グルコースオキシダーゼの存在下での、グルコース分子の二つの浸出不可フェリシアニドアニオンとの反応に基づくものであってもよい。存在するグルコースの量は、浸出不可フェロシアニドアニオンを浸出不可フェリシアニドアニオンに電気酸化し、電流を測定することにより較正される。
【0115】
別の実施形態では、分析物によりそのレベルが影響を受ける第二の化合物は、作用電極で電解される。場合によって、反応式(3)に示されているように、分析物Dと、この場合酸素のような反応化合物Eである第二の化合物は、触媒の存在の下で反応する。
【化3】
【0116】
その後、反応式(4)に示されているように、反応化合物Eは、作用電極で直接酸化(または還元)される。
【化4】
【0117】
或いは、反応式(5)および(6)に示されているように、反応化合物Eは電子移動剤Hを用いて(場合によっては、触媒の存在の下)間接的に酸化(または還元)され、引き続き電極で還元または酸化される。
【化5】
【化6】
【0118】
いずれの場合も、作用電極の信号によって示されるような、反応化合物の濃度の変化は、分析物の変化に反比例して対応する(つまり、分析物レベルが高くなるにつれ、反応化合物のレベルと電極の信号が低下する)。
【0119】
他の実施例では、関連した第二の化合物は、反応式(3)に示されているように、生成化合物Fである。生成化合物Fは、分析物Dの触媒反応により形成され、電極で直接電解されるか、または電子移動剤と、オプションとして触媒を用いて、間接的に電解される。これらの実施形態では、作用電極での生成化合物Fの直接または間接的電解により発生する信号は、(生成化合物の他の供給源があるのでなければ)分析物レベルに直接対応する。分析物レベルが高くなるにつれて、作用電極の生成化合物および信号のレベルが高くなる。
【0120】
当技術分野の当業者は、同様の結果を実現する多くの異なった反応があることを認識しているであろう。すなわち、分析物のレベルによってレベルの決まる化合物または分析物の電解がある。反応式(1)〜(6)は、そのような反応の非限定例を示す。
【0121】
温度プローブ
センサには、様々な選択自由なアイテムが含まれていてもよい。選択自由な一アイテムが温度プローブ66(図8および図11)である。温度プローブ66は、様々な公知のデザインおよび材料を用いて作製される。典型的な一温度プローブ66は、温度依存特性を有する材料を使用して形成される、温度依存要素72により互いに接続されている二つのプローブリード68、70を用いて形成される。適した温度依存特性の一例は、温度依存要素72の抵抗性である。
【0122】
二つのプローブリード68、70は、一般に、金属、合金、グラファイトなどの半金属、縮退型または高度ドープ処理半導体、またはスモールバンドギャップ半導体を用いて形成される。適切な材料の例としては、金、銀、酸化ルテニウム、窒化チタン、二酸化チタン、インジウムをドープした酸化すず、スズをドープした酸化インジウム、またはグラファイトが挙げられる。温度依存要素72は、一般に、プローブリードと同様の導電材料、或いは、電圧発生装置が温度プローブ66の二つのプローブリード68、70に取り付けられている場合、温度依存信号を提供する、抵抗性のような温度依存特性を有するカーボンインク、炭素繊維、または白金のような別の材料から成る細かいトレース(例えば、プローブリード68、70よりも断面の小さい導電トレース)を使用して作製される。温度依存要素72の温度依存特性は、温度とともに向上または低下し得る。温度依存要素72の特性の温度依存性は、必須事項ではないが、生体温度(約25〜45度)の予想範囲全体に渡って、温度に対し略直線的に示されるのが好ましい。
【0123】
一般に、温度の関数である振幅または他の特性を有する信号(例えば、電流)は、温度プローブ66の二つのプローブリード68、70の両端に電位を供給することにより得られる。温度が変化するにつれて、温度依存要素72の温度依存特性は、信号振幅における相応の変化と共に向上または低下する。温度プローブ66からの信号(例えば、プローブを流れる電流量)は、例えば、温度プローブ信号を測定した後、作用電極58における信号と、測定された温度プローブ信号とを加算するか、または、作用電極58における信号から測定された温度プローブ信号を減算することにより、作用電極58から得られた信号と組合せることができる。このようにして、温度プローブ66は、作用電極58からの出力に対し温度調整をし、作用電極58の温度依存性を相殺することができる。
【0124】
温度プローブの一実施形態は、図8に示されているように、間隔をおいて配置された二つの溝を接続する連絡用溝として形成される温度依存要素72と共に、間隔をおいて配置された二つの溝として形成されるプローブリード68、70を備えている。間隔をおいて配置された二つの溝は、金属、合金、半金属、縮退型半導体、または金属化合物のような導電材料を含む。連絡用溝は、(連絡用溝の断面が間隔をおいて配置された二つの溝より小さい場合)プローブリード68、70と同様の材料を含んでいてもよい。他の実施形態では、連絡用溝内の材料はプローブリード68、70の材料と異なる。
【0125】
この特殊な温度プローブを形成するための典型的な一方法は、間隔をおいて配置される二つの溝を形成した後、そこに金属または合金導電材料を充填することを含む。次に、連絡用溝を形成した後、望ましい材料を充填する。連絡用溝内の材料は、電気的接続を生じさせるため、間隔をおいて配置された二つの溝のそれぞれにおける導電材料と部分的に重なる。
【0126】
温度プローブ66を適切に作動させるには、二つのプローブリード68、70間に形成された導電材により、温度プローブ66の温度依存要素72を短絡させてはならない。更に、体内またはサンプル流体内のイオン種による二つのプローブリード68、70間の伝導を防ぐため、温度依存要素72と、好ましくは、プローブリード68、70の患者に埋め込まれる部分にカバーを設けてもよい。そのカバーは、例えば、イオン伝導を防ぐように、温度依存要素72およびプローブリード68、70上に配される非導電性フィルムであってもよい。適した非導電性フィルムとしては、例えば、カプトン(Kapton)(商標)ポリイミドフィルム(デュポン、ウィルミングトン、ディーイー)が挙げられる。
【0127】
体内またはサンプル流体中のイオン種による伝導を排除または減少させる別の方法は、プローブリード68、70に接続された交流電圧発生装置を使用することである。この方法では、正および負のイオン種は、交流電圧の各半サイクル毎に交互に引き寄せられそして跳ね返される。これにより、温度プローブ66に対し、体内またはサンプル流体中のイオンの正味吸引は生じない。また、温度依存要素72を流れる交流電圧の最大振幅は、作用電極58からの測定値を補正するのに使用してもよい。
【0128】
温度プローブは、電極と同じ基板上に配置することができる。また、温度プローブは、別個の基板上に配置してもよい。更に、温度プローブは、それ自体で、または他の装置と共に使用してもよい。
【0129】
温度プローブの別の実施形態は、溶液(例えば、血液または間質液)の導電率の温度依存性を利用するものである。一般に、電解質の濃度が比較的一定であるとすると、電解質含有液の導電率は、その溶液の温度によって決められる。血液、間質液、および他の体液は、比較的一定レベルの電解質を有する溶液である。よって、センサ42は、周知の間隔を置いて配置された二以上の導電トレース(図示なし)を備えることもできる。これらの導電トレースの一部は、溶液に対して露出し、導電トレースの露出部間の導電率を周知の技術(例えば、一定または周知の電流または電位を印加し、それぞれ得られた電位または電流を測定することにより導電率を測定する)を用いて測定する。
【0130】
導電率における変化は、温度変化と相関関係を有する。この関係は、一次式、二次式、指数関数またはその他の関係式を用いて模式化できる。この関係のパラメータは、一般に、殆どの人々の間で大きく変化することはない。温度プローブの較正は、各種方法により決定することができ、例えば、温度を測定する別個の方法(例えば、温度計、光学または電気温度検出器、或いは上述した温度プローブ66)を用いた各センサ42の較正、または、一センサ42を較正し、その較正を、形状寸法の均一な一バッチのその他全てのセンサに使用するといった方法が挙げられる。
【0131】
生体親和性層
図9に示されているように、任意のフィルム層75は、少なくともセンサ42の患者の皮下に挿入される部分上に形成される。この任意のフィルム層74は、一以上の機能を果たすことができる。フィルム層74は、大きな生体分子の電極への浸透を防ぐ。これは、排除されるべき生体分子よりも孔径の小さいフィルム層74を使用することにより実現される。そのような生体分子は、電極および/または感知層64を汚染することがあり、それによりセンサ42の有効性を低下させ、一定の分析物濃度に対し予想される信号振幅を変化させることがある。作用電極58の汚染により、センサ42の有効寿命が短縮されることもある。生体親和性層74は、タンパク質のセンサ42への付着、凝血塊の形成、およびセンサ42と身体間の他の望ましくない相互作用を防ぐこともできる。
【0132】
例えば、センサは、生体親和性コーティングでその外面を完全にまたは部分的に被覆されていてもよい。好ましい生体親和性コーティングは、分析物含有流体と平衡状態にある場合、少なくとも20重量%流体を含有するヒドロゲルである。適正なヒドロゲルの例は、特許文献23に記載されており、これを参照し本明細書において援用する。適正なヒドロゲルの例としては、ポリエチレンオキシドテトラアクリレートのような架橋ポリエチレンオキシドが挙げられる。
【0133】
妨害物質排除層
センサ42には、妨害物質排除層(図示なし)が含まれていてもよい。妨害物質排除層は、生体親和性層75または物質移動制限層74(後述)に組入れても、別個の層であってもよい。妨害物質とは、直接、または電子移動剤を介して電極で電気還元または電気酸化され疑似信号を発生させる分子または他の種である。一実施形態では、フィルムまたは膜は、作用電極58の周辺領域への一以上の妨害物質の浸透を防ぐ。この種の妨害物質排除層は、分析物質に対するよりも妨害物質の一つ以上に対する透過性がかなり低いのが好ましい。
【0134】
妨害物質排除層は、イオン成分と同じ荷電を有するイオン性妨害物質に対する妨害物質排除層の透過性を低下させるため、ポリマ性マトリックスに組込まれたナフィオン(Nafion)(登録商標)のようなイオン成分を含んでいてもよい。例えば、負荷電化合物または負イオンを形成する化合物を妨害物質排除層に取り入れて、体内またはサンプル流体の負種の透過を減少させてもよい。
【0135】
妨害物質排除層の別の例は、妨害物質を除去する反応に触媒作用を及ぼす触媒を含む。そのような触媒の一例は、ペロキシダーゼである。過酸化水素は、アセトアミノフェン、尿酸塩、およびアスコルベートといった妨害物質と反応する。過酸化水素は、分析物含有流体に添加、または、例えば、それぞれグルコースオキシダーゼまたは乳酸オキシダーゼの存在の下、グルコースまたはラクテートの反応により原位置で生成され得る。妨害物質排除層の例としては、(a)架橋剤としてグルテルアルデヒド(gluteraldehyde)を用いて、(b)NaIO4でペルオキシダーゼ糖酵素のオリゴ糖基を酸化し、ポリアクリルアミドマトリックスのヒドラジド基に形成されたアルデヒドを結合させヒドラゾンを形成することにより架橋されたペルオキシダーゼ酵素が挙げられ、これは、特許文献24および特許文献25に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0136】
物質移動制限層
物質移動制限層74は、作用電極58周辺領域への、分析物、例えば、グルコースまたはラクテートの物質移動率を低下させるため、拡散制限バリヤとして機能するようにセンサに備えられていてもよい。分析物の拡散を制限することにより、作用電極58近傍での分析物の定常状態濃度(体内またはサンプル流体内の分析物濃度に比例する)を低下させることができる。これにより、正確に測定できる分析物濃度の上限が広がり、電流が分析物レベルと共に略直線的に増加する範囲も拡大される。
【0137】
フィルム層74を通る分析物の浸透性が、温度変化によって殆どまたは全く変化しないことにより、温度変化による電流の変化を減少させるかまたは排除するのが好ましい。このため、約25℃〜約40℃まで、また最も重要である、30℃〜40℃までの生体関連温度範囲において、フィルムの孔径もその水和性または膨張性も過度に変化しないことが好ましい。物質移動制限層は、24時間に吸収される流体が5重量%未満であるフィルムを用いて作製されるのが好ましい。これにより、温度プローブのあらゆる必要性を低下させるかまたは排除することが可能である。埋込型センサにおいて、物質移動制限層は、37℃で24時間の間に吸収される流体が5重量%未満であるフィルムを使用して作製されるのが好ましい。
【0138】
フィルム層74に特に有用な材料は、センサがテストする分析物含有流体中で膨張しない膜である。適した膜は、直径3〜20,000nmの孔を有する。明確で均一な孔径と高アスペクト比を有する、直径5〜500nmの孔を備えた膜が好ましい。一実施形態では、孔のアスペクト比が2以上であるのが好ましく、より好ましくは5以上である。
【0139】
明確で均一な孔は、放射性核が放出する加速電子、イオン、または粒子を用いて、ポリマ膜を飛跡エッチングすることにより作製できる。最も好ましいのは、加熱時、孔の方向よりも孔に対して垂直な方向への膨張が少ない異方性で、ポリマ性の飛跡エッチングされた膜である。適したポリマー性膜としては、ポレティクス(Poretics)(リバーモア(Livermore)、シーエー(CA)、カタログ番号19401、0.01μm孔径ポリカーボネート膜)および、コーニンングコスター コーポレーション(Corning Costar Corp.)(ケンブリッジ(Cambridge)、エムエー(MA)、0.015μm孔径のヌークレオポア(Nucleopore)(商標)ブランド膜)のポリカーボネート膜が挙げられる。他のポリオレフィンおよびポリエステルフィルムを使用してもよい。物質移動制限膜の透過性の変化が、膜が皮下組織液中にある場合、30℃〜40℃の範囲内の1℃につき4%以下、好ましくは、3%以下、更に好ましくは2%以下であるのが好ましい。
【0140】
本発明に係る幾つかの実施形態において、物質移動制限層74は、センサ42内への酸素の流れを制限することもできる。これにより、酸素の分圧における変化が、センサの応答に非線形性を生じさせる状況において使用されるセンサ42の安定性を向上させることができる。これらの実施形態において、物質移動制限層74は、前記膜の分析物の移動制限と比較して、酸素の移動を少なくとも40%、好ましくは、少なくとも60%、および更に好ましくは、少なくとも80%制限する。一定のタイプのポリマでは、より高い密度(例えば、結晶性ポリマーに近い密度)を有するフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルの酸素に対する透過性は一般に低く、よって、ポリカーボネート膜よりも好ましい。
【0141】
抗凝固剤
埋込型センサはまた、オプションとして、患者に埋め込まれる基板の部分に施された抗凝固剤を有していてもよい。この抗凝固剤は、特に、センサの挿入後、センサ周囲の血液または他の体液の凝固を減少させるか、または排除することができる。凝血塊は、センサを汚染したり、またはセンサ内に拡散する分析物の量を復元不可能に減少させる場合がある。有用な抗凝固剤の例としては、ヘパリンおよび組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、および、他の公知の抗凝固剤が挙げられる。
【0142】
抗凝固剤は、センサ42の埋め込まれる部分の少なくとも一部に適用できる。抗凝固剤は、例えば、浴、スプレー、ブラッシング、または浸漬により適用できる。抗凝固剤は、センサ42上で乾燥させる。抗凝固剤は、センサの表面上に固定させるか、または、センサ表面から拡散させてもよい。一般に、センサ上に施される抗凝固剤の分量は、凝血を含む医学的症状の治療に一般に使用される量を遥かに下回り、よって、限定された局所的な効果しかもたない。
【0143】
センサの寿命
センサ42は、生体内分析物モニタ、および、特に埋込型分析物モニタの、交換可能な部品となるように設計することもできる。一般に、センサ42は数日間に渡って機能することができる。機能する期間は、少なくとも一日であるのが好ましく、更に好ましくは、少なくとも三日、最も好ましくは、少なくとも一週間である。また、センサ42は、取り除き、新しいセンサと交換することができる。センサ42の寿命は、電極の汚染、或いは、電子移動剤または触媒の浸出により短縮される場合がある。センサ42の耐用年数に関するこれらの制約は、上述したように、生体親和性層75、または浸出不可電子移動剤および触媒をそれぞれ使用することにより克服できる。
【0144】
センサ42の寿命に関する別の主な制約は、触媒の温度安定性である。多くの触媒は、環境温度に非常に敏感で、患者の体温(例えば、人体では約37℃)で品質が低下することのある酵素である。よって、入手可能な限りにおいて、丈夫な酵素を使用すべきである。センサ42は、十分な量の酵素が不活性化され、読取値に容認できない量のエラーが発生する場合、交換すべきである。
【0145】
挿入装置
挿入装置120は、図12に示すように、センサ42を患者の皮下に挿入するために使用することができる。挿入装置120は一般的に、金属または硬質プラスチックのような、構造的硬質材料を使用し形成される。好ましい材料としては、ステンレス鋼やABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)プラスチックが挙げられる。幾つかの実施形態においては、挿入装置120は、患者の皮膚への侵入を容易にするよう先端部121を尖らせおよび/または鋭くする。鋭く薄い挿入装置により、センサ42の挿入に際して患者の感じる痛みが減少する場合もある。他の実施形態において、挿入装置120の先端部121は、他の形状を有し、鈍いまたは平らな形状がある。これらの実施形態は、挿入装置120が皮膚に侵入するのではなく、むしろセンサ42を皮膚に押し入れる際にセンサ42の構造上の支持体としての役割を果たす場合特に有用であり得る。
【0146】
挿入装置120は、図13A、図13Bおよび図13Cに示されているように、様々な断面形状を有していてもよい。図13Aに示されている挿入装置120は、硬質材料から成る平たい平面状の尖ったストリップであり、センサ42に取り付けられるかまたは他の方法で組み合わされ、患者の皮膚内へのセンサ42の挿入を容易にすると共に、挿入中センサ42を構造的に支持する。図13Bおよび13Cの挿入装置120は、センサ42を支持し、挿入中センサ42の屈曲または湾曲量を制限するUまたはV字型用具である。図13Bおよび13Cに示した挿入装置120の断面幅124は、一般に1mm以下であり、好ましくは、700μm以下、更に好ましくは、500μm以下、最も好ましくは、300μm以下である。図13Bおよび13Cに示した挿入装置120の断面高さ126は、一般に約1mm以下であり、好ましくは、約700μm以下、更に好ましくは、約500μm以下である。
【0147】
センサ42自体が、挿入を容易にするための選択自由な特性を備えることもできる。例えば、センサ42は、図12に示されているように、挿入を容易にするため先端部123を尖らせてもよい。更に、センサ42は、患者の皮下組織にセンサ42を保持する役目を果たす掛かり部125を備えていてもよい。掛かり部125は、センサ42の作動中、患者の皮下組織内でのセンサ42の固定を助けることもできる。しかしながら、掛かり部125は一般に、交換を目的としてセンサ42を除去する際、皮下組織に対し殆ど損傷を与えることがないように十分小さいものである。センサ42は、切り欠き部127を備えていてもよく、切り欠き部127は、挿入装置の対応構造(図示なし)と協力して挿入中センサ42に対し圧力をかけるために使用されるが、挿入装置120を取り外す際にははずれる。挿入装置におけるそのような構造体の一例は、挿入装置120の向き合った二つの側面の間で、挿入装置120の適切な高さに位置するロッド(図示なし)である。
【0148】
操作に際し、センサ42は挿入装置120内または隣接して設置され、挿入装置120および/またはセンサ42に対し力を加えセンサ42を患者の皮膚内に送る。一実施形態では、挿入装置120は固定されたまま留まりセンサ42を構造的に支持しながら、センサ42に力を加えセンサを皮膚内に押し込む。或いは、挿入装置120およびオプションとしてセンサ42に力を加え、センサ42および挿入装置120双方の一部を患者の皮膚を通して皮下組織内に押し込む。挿入装置120は、オプションとして、センサ42と患者の組織間の摩擦力により皮下組織にセンサ42が残留している状態で皮膚および皮下組織から引き抜かれる。センサ42が選択自由な掛かり部125を有する場合、この構造により、その掛かり部が組織に係止されるため、間質組織内におけるセンサ42の停留も容易になる。
【0149】
挿入装置120および/またはセンサ42に加えられる力は、手動でまたは機械的に印加してもよい。好ましくは、センサ42は患者の皮膚を通して再現可能に挿入される。一実施形態では、挿入銃を使用してセンサを挿入する。センサ42挿入用の挿入銃200の一例を図26に示す。挿入銃200は、筐体202およびキャリア204を有する。挿入装置120は、一般に、キャリア204上に載置され、センサ42は挿入装置120内に前もって搭載される。キャリア204は、挿入銃200内の、例えば、円錐形状(cocked)または巻線状バネ、圧縮ガスのバースト、または第二の磁石により反撥する電磁石などを用いて、センサ42、オプションとして、挿入装置120を患者の皮膚内に推進する。場合によって、例えば、バネを使用する場合、キャリア204と挿入装置を移動させるか、上向きにする(cocked)か、または別の方法で患者の皮膚に向けるように準備する。
【0150】
挿入銃200は、センサ42を挿入した後、患者の皮膚から挿入装置120を引き出す機構を備えていてもよい。このような機構は、ばね、または電磁石などを使用して挿入装置120を除去することもできる。
【0151】
挿入銃は再利用可能なものであり得る。挿入装置120は、汚染の可能性を避けるために使い捨てできることが多い。また、挿入装置120は殺菌し再利用することもできる。更に、挿入装置120および/またはセンサ42は、センサ42の汚れを防ぐため抗凝固剤で被覆されていてもよい。
【0152】
一実施形態において、センサ42は皮下への埋込みを目的として、患者の間質組織に2〜12mm差込む。好ましくは、センサは3〜9mm、更に好ましくは5〜7mm間質組織に差込む。本発明に係る他の実施形態は、例えば、静脈、動脈、または器官といった、患者の他の部位に埋め込まれるセンサも含まれる。埋め込み深さは、所望の埋め込みターゲットによって変化する。
【0153】
センサ42は体内のどこに挿入してもよいが、多くの場合、皮膚上センサ制御装置44を隠せるように挿入部位を位置付けるのが望ましい。また、多くの場合、挿入部位は、患者の痛みを減少させるため、体の神経終末密度の低い場所であるのが望ましい。センサ42の挿入および皮膚上センサ制御装置44の配置に好ましい部位の例としては、腹部、大腿部、下脚、上腕および肩が挙げられる。
【0154】
挿入角度は、皮膚面から測定される(例えば、センサを皮膚に対して垂直に挿入する場合、90°の挿入角度となる)。挿入角度は、通常、10〜90°の範囲内、一般に、15〜60°の範囲内、しばしば30〜45°の範囲内である。
【0155】
皮膚上センサ制御装置
皮膚上センサ制御装置44は、患者の皮膚上に設置するように構成する。皮膚上センサ制御装置44は、オプションとして、患者にとって快適で、例えば、患者の衣服の下に隠せる形状に形成される。皮膚上センサ制御装置44を隠して設置するには、患者の体の部位では、大腿部、下脚、上腕、肩、または腹部が好都合である。しかしながら、皮膚上センサ制御装置44は、患者の体の他の部分に配置してもよい。皮膚上センサ制御装置44の一実施形態は、図14〜16に示しているように、より隠しやすくするため薄い楕円形状をしている。しかしながら、他の形状およびサイズを用いてもよい。
【0156】
皮膚上センサ制御装置44の特定の外形、並びに高さ、幅、長さ、重量、および体積は変えることもでき、また、以下述べるように、少なくとも部分的には、皮膚上センサ制御装置44に含まれる構成要素および関連機能によって決められる。例えば、幾つかの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の高さは、1.3cm以下、好ましくは、0.7cm以下である。幾つかの実施形態において、皮膚上センサ制御装置44の重量は、90グラム以下、好ましくは45グラム以下、更に好ましくは25グラム以下である。いくつかの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の体積は約15cm3以下、好ましくは、約10cm3以下、更に好ましくは、約5cm3以下、最も好ましくは、約2.5cm3以下である。
【0157】
図14〜16に示しているように、皮膚上センサ制御装置44は筐体45を有する。一般に筐体45は、患者の皮膚上に載置される単一の一体型ユニットとして形成される。筐体45は一般に、皮膚上センサ制御装置44の、後述する電子部品の殆どまたは全てを収納する。通常、皮膚上センサ制御装置44は、他の電子部品または他の装置に対して使用する付加的ケーブルまたはワイヤを含まない。筐体が二以上のパーツから成る場合には、一般に、それらパーツを組合せて単一の一体型ユニットを形成する。
【0158】
図14〜16に示した皮膚上センサ制御装置44の筐体45は、様々な材料を使用して形成することができ、例えば、プラスチックやポリマ材料、特に硬質熱可塑性プラスチックおよびエンジニアリング熱可塑性プラスチックが挙げられる。適した材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABSポリマ、それらのコポリマが挙げられる。皮膚上センサ制御装置44の筐体45は、様々な技術を用いて形成することができ、例えば、射出成形、圧縮成形、鋳込成形、および他の成形方法が挙げられる。皮膚上センサ制御装置44の筐体45に、中空または凹領域を形成してもよい。後述する皮膚上センサ制御装置44の電子部品および/または、バッテリまたは可聴警報用スピーカーといったその他のアイテムを、その中空または凹領域に設置することもできる。
【0159】
幾つかの実施形態において、導電コンタクト80は、筐体45外部に設けられる。他の実施形態では、導電コンタクト80は、例えば、中空または凹領域内といった筐体45内部に設けられる 幾つかの実施形態では、プラスチックまたはポリマ材料を成形するか、またはその他の方法で形成する際に、電子部品および/または他のアイテムは、皮膚上センサ制御装置44の筐体45内に組み込まれる。他の実施形態では、成形された材料の冷却中、または成形された材料を再加熱し柔軟にした後、電子部品および/または他のアイテムは、筐体45内に組み込まれる。また、電子部品および/または他のアイテムは、ネジ、ナットとボルト、くぎ、ステープル、およびリベットなどの締結物、或いは、コンタクト接着剤、感圧接着剤、粘着剤、エポキシ材、および接着樹脂等のような接着剤を用いて筐体45に固定してもよい。電子部品および/または他のアイテムが、筐体45に全く付加されない場合もある。
【0160】
幾つかの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の筐体45は単一ピースである。導電コンタクト80は、センサ42が導電コンタクト80にアクセスできるように導く開口部78が筐体45にある場合、筐体45の外面または内面に形成してもよい。
【0161】
幾つかの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の筐体45は、組み合わせられて筐体45を形成する、少なくとも二つの別個の部分、例えば、図14〜16に示しているようなベース74とカバー76で形成される。筐体45の二以上の部分は、互いに完全に別個のものであってもよいが、筐体45の二つ以上の部分の少なくとも幾つかが、例えば、ヒンジにより共に接合され、皮膚上センサ制御装置44の筐体45を形成するために前記部分を容易に組合せられるようにしてもよい。
【0162】
皮膚上センサ制御装置44の筐体45のこれらの二つ以上の別個の部分は、例えば、噛み合い隆起部、或いは一方の部品に隆起部、他方の部品に相補型の溝といったような相補型の噛み合い構造を有していてもよく、それにより二つ以上の別個の部品を簡単および/またはしっかりと組み合わせることもできる。特に、それらの部品を時によって分解し再度組立てる場合、例えば、バッテリまたはセンサ42を交換する場合、これは役立つ場合がある。しかしながら、二つ以上の部品を組み合わせる上で、他の締結物を使用することもでき、例えば、ネジ、ナットとボルト、くぎ、ステープル、またはリベット等が挙げられる。更に、永続的または一時的な接着剤も使用でき、例えば、コンタクト接着剤、感圧接着剤、粘着剤、エポキシ材、および接着樹脂等が使用できる。
【0163】
一般に、筐体45は少なくとも耐水性のものであり、流体の流れが、例えば、導電コンタクト80といった筐体内の部品と接触するのを防ぐ。筐体が防水性のものであるのが好ましい。一実施形態において、筐体45の二つ以上の部品、例えば、ベース74とカバー76が、流体が皮膚上センサ制御装置44の内部に流入できないように、互いに密に嵌合し、気密、防水または耐水密閉機構を形成する。これは、特に患者が、シャワーを浴びたり、入浴したり、または泳いだりといった活動をする場合、導電コンタクト、バッテリまたは電子部品のような皮膚上センサ制御装置44内のアイテムの腐食電流および/または劣化を防ぐのに有用であり得る。
【0164】
本明細書に使用している耐水性とは、海水面から水深一メートルの水中に浸漬する場合、耐水密封機構または筐体を通して水が浸入しないことを意味する。本明細書に使用している防水とは、海水面から水深10メートル、好ましくは50メートルの水中に浸漬する場合、防水密封機構または筐体を通して水が侵入しないことを意味する。多くの場合、皮膚上センサ制御装置の電子回路機構、電源装置(例えば、バッテリ)、および導電コンタクト、並びに、センサのコンタクトパッドは、耐水、好ましくは、防水環境に収納されているのが望ましい。
【0165】
ベース74およびカバー76のような筐体45の前記部分の他に、製造中または製造後組立て可能な、皮膚上センサ制御装置44の他の個別形成部片があってもよい。個別形成部片の一例は、ベース74またはカバー76の凹部に嵌入する電子部品用カバーである。別の例は、ベース74またはカバー76に備えられたバッテリ用カバーである。皮膚上センサ制御装置44のこれらの個別形成部片は、皮膚上センサ制御装置44のベース74、カバー76、またはその他の部品に対し、例えば、電子部品用カバーのように永続的に固定されていてもよいし、例えば、バッテリ用の取り外し可能なカバーのように取り外し可能に固定されていてもよい。これらの個別形成部片の固定方法としては、ネジ、ナットとボルト、ステープル、くぎ、およびリベット等の締結物、さねはぎ構造体のような摩擦性締結物、並びにコンタクト接着剤、感圧接着剤、粘着剤、エポキシ材、および接着樹脂等の接着剤の使用が挙げられる。
【0166】
皮膚上センサ制御装置44の一実施形態は、装置を作動させるバッテリも含め完全な使い捨て装置である。患者が装置を開けたり、または、取り除いたりする必要のある部分はなく、よって、装置を小型化でき、またその構造を簡単なものにすることができる。オプションとして、皮膚上センサ制御装置44を使用するまで休眠モードにしておきバッテリのパワーを保存する。皮膚上センサ制御装置44は、使用されていることを検出し始動する。使用状態は、多くの機構によって検出される。例えば、電気的コンタクトの抵抗の変化の検出や、取付け装置77(図27Aおよび28A参照)と皮膚上センサ制御装置44を組み合わせることによるスイッチの作動が挙げられる。皮膚上センサ制御装置44は、閾値範囲内でもはや作動しなくなった場合、例えば、バッテリまたはその他の動力源が十分なパワーを発生させない場合、一般に交換される。皮膚上センサ制御装置44のこの実施形態は、筐体45の外面に導電コンタクト80を有する場合が多い。センサ42が患者に埋め込まれると、導電コンタクト80がセンサ42のコンタクトパッド49と接触した状態で、センサ制御装置44がセンサ42上に配置される。
【0167】
皮膚上センサ制御装置44は、一般に、図17に示しているように患者の皮膚75に設置される。皮膚上センサ制御装置44は、様々な技術により設置可能であり、例えば、皮膚75と接触する皮膚上センサ制御装置44の筐体45の少なくとも一部に備えられた接着剤で、直接患者の皮膚75に皮膚上センサ制御装置44を付着させるたり、または、センサ制御装置44の縫合開口部(図示なし)を通して皮膚75に皮膚上センサ制御装置44を縫合したりすることがあげられる。
【0168】
皮膚上センサ制御装置44の筐体45を皮膚75に設置する別の方法としては、取付け装置77を使用することが挙げられる。取付け装置77は、皮膚上センサ制御装置44の一部であることが多い。適した取付け装置77の一例は、両面粘着性ストリップがあり、その一面は患者の皮膚面に付着させ、他方の面は皮膚上センサ制御装置44に付着させる。この実施形態において、取りつけ装置77は、選択自由な開口部79を有していてもよく、開口部79を通してセンサ42を挿入するのに十分な大きさのものである。また、センサは、薄い接着剤を介して皮膚に挿入してもよい。
【0169】
皮膚上センサ制御装置44を患者の皮膚75に直接または取付け装置77を使用して付着させるために、各種接着剤が使用でき、例えば、感圧接着剤(PSA)またはコンタクト接着剤が挙げられる。好ましくは、少なくとも特定のセンサ42が患者に埋め込まれている期間中患者全員または過半数に対し、刺激を与えることのない接着剤が選ばれる。また、取付け装置77の接着剤によって皮膚が刺激される患者が、第二の接着剤または他の皮膚保護配合物で皮膚をカバーし、その後、前記第二の接着剤または他の皮膚保護配合物上に取付け装置77を配置することができるように、第二の接着剤または他の皮膚保護配合物が取付け装置と共に備えられていてもよい。これにより、患者の皮膚への刺激を実質的には防げるはずである。というのも、取付け装置77の接着剤は、皮膚と接触しなくなり、その代わりに、第二の接着剤または他の皮膚保護配合物と接触することになるからである。
【0170】
センサ42を交換する場合、皮膚上センサ制御装置44は、例えば、過度の刺激を防ぐため、患者の皮膚75上の別の位置に移動させてもよい。或いは、皮膚上センサ制御装置44を移動させるべきであると判断されるまで、皮膚上センサ制御装置44は患者の皮膚上の同一場所に留めておいてもよい。
【0171】
皮膚上センサ制御装置44に使用される取付け装置77の別の実施形態を図27Aおよび27Bに示す。皮膚上センサ制御装置44の取付け装置77と筐体45は、例えば、図27Aに示しているように、嵌合した状態で共に装着されている。取付け装置77は、例えば、プラスチックまたはポリマ材料を用いて形成され、そのような材料の例としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABSポリマ、およびそれらのコポリマが挙げられる。取付け装置77は、様々な技術を用いて形成することが可能であり、例えば、射出成形、圧縮成形、鋳込成形、および他の成形方法が挙げられる。
【0172】
取付け装置77は一般に、患者の皮膚に付着するためその底面に接着剤を備えているか、若しくは、取付け装置77は、例えば、両面粘着テープ等と共に使用される。取付け装置77は一般に、図27Bに示すように、開口部79を有し、それを通してセンサ42が挿入される。取付け装置77はまた、皮膚上センサ制御装置42の導電コンタクトに対し、所定の場所にセンサ42を保持するための支持構造体220を備えていてもよい。取付け装置77はまた、オプションとして、センサ42上の開口部のような構造体(図示なし)に対応する、取付け装置77からの材料の延長部のような位置決め構造体222を備え、例えば、その二つの相補型構造体を位置合わせすることにより、センサ42の正確な位置決めを容易にすることもできる。
【0173】
別の実施形態においては、図28Aに示すように、皮膚上センサ制御装置44の筐体45を保護および/または密封するための選択自由なカバー206と共に皮膚上センサ制御装置44の組み合わされた取付け装置77と筐体45が粘着性貼付剤204上に設けられる。選択自由なカバーは、筐体45および/または取付け装置77に取り付けるための接着剤、または、他の仕組みを備えていてもよい。図28Bに示すように、取付け装置77は一般に、開口部49を有し、その開口部49によりセンサ42を露出させる。開口部49は、オプションとして、挿入装置120または挿入銃200(図26参照)を使用して開口部49を介してセンサ42を挿入できるように構成してもよい。皮膚上センサ制御装置44の筐体45は、図28Cに示すようにベース74とカバー76を有する。図28Dに示すように、筐体45の底面図には、開口部230が示されており、その開口部230を通して導電コンタクト(図示なし)は延び、センサ42のコンタクトパッドと接続される。図28Eに示すように、オプションとして、皮膚上センサ制御装置44内に回路部品の設置用ボード232を設けてもよい。
【0174】
幾つかの実施例において、皮膚上センサ制御装置44および/または取付け装置77の実施形態のいずれかの接着剤は、耐水性または防水性のものであり、皮膚上センサ制御装置44の患者の皮膚75への密着性を維持し、且つ、少なくとも幾つかの実施形態においては、センサ制御装置44内への水の侵入を防ぎ、シャワーを浴びることおよび/または入浴することといった活動を可能にする。耐水性または防水性筐体45と組み合わせて耐水性または防水性接着剤を使用することにより、センサ制御装置44の部品および導電コンタクト80とセンサ42間の接触を、破損または腐食から保護する。水を弾く非刺激性接着剤の一例は、テガダーム(Tegaderm)(3M社、ミネソタ州セントポール)である。
【0175】
一実施形態においては、図14〜16に示すように、皮膚上センサ制御装置44はセンサ口78を備えており、そこを通してセンサ42は患者の皮下組織に入る。センサ42はセンサ口78を通して患者の皮下組織に挿入してもよい。その後、センサ42がセンサ口78をくぐり抜けた状態で、皮膚上センサ制御装置44を患者の皮膚上に配置することもできる。センサ42の筐体45が、例えばベース74とカバー76とを有する場合、患者が、導電コンタクト80との接触のための適切な位置にセンサ42を導けるように、カバー76は取り除かれてもよい。
【0176】
また、導電コンタクト80が筐体45内にある場合、患者はコンタクトパッド49と導電コンタクト80が接触するまでセンサ42を筐体45内へと滑動させてもよい。センサ制御装置44は、一旦コンタクトパッド49が導電コンタクト80と接触した状態でセンサ42が適切に位置付けられると、センサ42の筐体内への更なる滑動を妨ぐ構造になっていてもよい。
【0177】
他の実施形態において、導電コンタクト80は、筐体45の外面にある(例えば、図27A〜27Bおよび28A〜28E参照)。これらの実施形態では、患者はセンサ42のコンタクトパッド49を導電コンタクト80と接触させる。場合によっては、センサ42を適切な位置に導く案内構造体を筐体45に設けてもよい。そのような構造体の一例には、筐体45から延設され、センサ42の形状を有する一組の案内用レールが挙げられる。
【0178】
幾つかの実施形態において、センサ42が挿入装置120(図12参照)を使用して挿入される場合、挿入装置120の先端部または選択自由な挿入銃200(図26参照)を、所望の挿入点で皮膚または取付け装置77に対して位置付ける。いくつかの実施形態では、挿入装置120は、いかなる案内部も使用することなく皮膚上に配置される。他の実施形態において、挿入装置120または挿入銃200は、取付け装置77の案内部(図示なし)または皮膚上センサ制御装置44のその他の部分を利用して配置される。幾つかの実施形態では、取付け装置77のそれら案内部、開口部79および/または皮膚上センサ制御装置44の筐体45のセンサ口78は、挿入装置120の先端部および/または挿入銃200の形状に対し相補形であり、開口部79および/またはセンサ口78に対する挿入装置120および/または挿入銃200の配置方向を制限する形状を有する。そして、開口部79またはセンサ口78の相補形状を、挿入装置120および/または挿入銃200と合わせ、センサを患者の皮下に挿入することができる。
【0179】
幾つかの実施形態において、a)案内部、開口部79またはセンサ口78およびb)挿入装置120または挿入銃200の形状は、その二つの形状が単一方向においてのみ嵌合可能なように構成する。これは、患者に新しいセンサを挿入する際にはいつも同一方向にセンサ42を挿入するように手助けする。このように挿入方向を同一にすることは、確実にセンサ42のコンタクトパッド49を皮膚上センサ制御装置44の適切な導電コンタクト80と正確に揃えるために、幾つかの実施形態において必要とされる場合がある。更に、上述したように、挿入銃を使用することにより、確実にセンサ42が均一で再現可能な深さに挿入されるようにすることもできる。
【0180】
センサ42と皮膚上センサ制御装置44内の電子部品は、図14〜16に示すように、導電コンタクト80を介して接続される。一以上の作用電極58、対向電極60(または対向/基準電極)、選択自由な基準電極62、および選択自由な温度プローブ66は、別個の導電コンタクト80に取り付けられる。図14〜16に示す実施例では、導電コンタクト80は皮膚上センサ制御装置44の内面に設けられている。皮膚上センサ制御装置44の他の実施形態では、導電コンタクトが筐体45の外面に配されている。導電コンタクト80の配置は、センサ42が皮膚上センサ制御装置44内に適切に配置されている場合、センサ42のコンタクトパッド49と接触するようになっている。
【0181】
図14〜16に示す実施例では、皮膚上センサ制御装置44のベース74とカバー76とは、センサ42が皮膚上センサ制御装置44内にあり、ベース74とカバー76とを互いに嵌め込む場合、センサ42が屈曲するように形成されている。このようにして、センサ42のコンタクトパッド49を皮膚上センサ制御装置44の導電コンタクト80と接触させる。皮膚上センサ制御装置44は、オプションとして、センサ42を正確な位置に保持、支持、および/または案内する支持構造体82を備えていてもよい。
【0182】
本発明を限定するものではないが、適切な導電コンタクト80の例を図19A〜19Dに示す。一実施形態において、導電コンタクト80は、図19Aに示すようにピン84等であり、皮膚上センサ制御装置44の部品、例えば、ベース74とカバー76を互いに嵌め込む場合、センサ42のコンタクトパッド49と接触させる。支持体82をセンサ42の下に設け、センサ42のコンタクトパッド49とピン84との適切な接触を高めてもよい。ピンは、一般に、金属若しくは合金、例えば、銅、ステンレス鋼、または銀などの導電材料を用いて作製される。各ピンは、センサ42のコンタクトパッド49と接触するため、皮膚上センサ制御装置44から延びる遠心端を有する。各ピン84はまた、皮膚上センサ制御装置44内の残りの電子部品(例えば、図18Aおよび18Bの電圧発生装置95や測定回路96)に接続されることになるワイヤまたは他の導電ストリップに接続される近位端も有する。また、ピン84は残りの電子部品に直接接続してもよい。
【0183】
別の実施形態において、導電コンタクト80は、図19に示すように、分散した絶縁領域90を備えた一連の導電領域88として形成される。導電領域88は、センサ42のコンタクトパッド49の大きさと同一かまたはそれより大きくし、位置合わせに関する問題を緩和することもできる。しかしながら、絶縁領域90は、導電コンタクト80に対するセンサ42とコンタクトパッド49の予測される位置ずれに基づいて決定されるため、一つの導電領域88が二つのコンタクトパッド49と重なり合わないように充分な幅を有するはずである。導電領域88は、金属、合金、または導電性カーボンといった材料を用いて形成される。絶縁領域90は、例えば、絶縁プラスチックまたはポリマ材を含む周知の絶縁材料を使用して形成してもよい。
【0184】
更なる一実施形態では、図19Cに示すように、センサ42のコンタクトパッド49と、皮膚上センサ制御装置44に埋設されるかまたは他の方法で形成された導電コンタクト80との間に、単一方向性導電性接着剤92を使用してもよい。
【0185】
更に別の実施形態では、図19Dに示すように、導電コンタクト80は、導電部材94であり、皮膚上センサ制御装置44の表面から延設され、導電パッド49に接触する。これらの部材は、様々な異なった形状にすることもできるが、互いに電気的に絶縁されていなければならない。導電部材94は、金属、合金、導電性カーボン、または導電プラスチックおよびポリマを用いて作製できる。
【0186】
上記の典型的な導電コンタクト80はいずれも、図19A〜19Cに示すように皮膚上センサ制御装置44の内部上面、図19Dに示すように皮膚上センサ制御装置44の内部下面、または、特にセンサ42がセンサの両面にコンタクトパッド49を有する場合、皮膚上センサ制御装置44の内部上面および下面の両方から延設されていてもよい。
【0187】
筐体45外面の導電コンタクト80の形状は、図19Eおよび19Fに示すような様々な形状であってもよい。例えば、導電コンタクト80は、筐体45に埋設(図19E)または筐体45から延設(図19F)されていてもよい。
【0188】
導電コンタクト80は、センサ42のコンタクトパッド49との接触により腐食しないであろう材料を使用して作製されるのが好ましい。腐食は、二つの異なった金属を接触させた場合生じることがある。よって、コンタクトパッド49がカーボンを用いて形成される場合には、好ましい導電コンタクト80は金属または合金を含むあらゆる材料で作製することができる。しかしながら、コンタクトパッド49のいずれかが、金属または合金で作られている場合、金属コンタクトパッドとの接続用の好ましい導電コンタクト80は、導電性カーボンまたは導電性ポリマのような非金属導電材料を用いて作製されるか、或いは、導電コンタクト80と導電パッド49を単一方向性導電性接着剤のような非金属材料で分離する。
【0189】
一実施形態では、センサ42と皮膚上センサ制御装置44との間の電気的接触を排除する。動力は、例えば、センサや皮膚上センサ制御装置上に狭い間隔で配置されたアンテナ(例えば、外装コイル(facing coils))(図示なし)を使用して、誘導結合によりセンサに伝達される。センサ制御装置44の電気的特性(例えば、電流)における変化により、アンテナ近辺の磁界を変化させる。その磁界変化が、センサのアンテナ内に電流を誘発する。その結果、センサおよび皮膚上センサ制御装置の近傍には、適度に効率良く動力が伝達されることになる。センサ内の誘発された電流は、ポテンシオスタット、演算増幅器、コンデンサ、集積回路、送信機、およびその他センサ構造体内に形成された電子部品に動力を供給するために使用してもよい。データは、例えば、同一または別個のアンテナを介した誘導結合および/またはセンサの送信機を介した信号の送信を用いて、センサ制御装置に送り返される。誘導結合を利用することにより、センサと皮膚上センサ制御装置との間の電気的接触を排除できる。一般に、このような接触はノイズや故障の原因となっている。更に、センサ制御装置を完全に密閉し、皮膚上センサ制御装置の防水性を高めることも可能である。
【0190】
典型的な皮膚上センサ制御装置44は、下記方法で準備および使用できる。底面に接着剤を備えた取付け装置77を皮膚に適用する。センサ42および挿入装置120を装着した挿入銃200(図26参照)を、取付け装置77に対し位置決めする。挿入銃200と取付け装置77は、オプションとして、一つのポジションでのみその二つが適切に嵌合するように設計することもできる。挿入銃200を作動させ、センサ42の一部と、オプションとして挿入装置120の一部とを、皮膚を介して、例えば、皮下組織に推進する。挿入銃200は、皮膚を介して挿入されたセンサ42の一部を残して挿入装置200を引き出す。そして、皮膚上センサ制御装置44の筐体45を取付け装置77に結合させる。オプションとして、筐体45と取付け装置77とは、一つのポジションでのみその二つが適切に嵌合するように形成される。筐体45と取付け装置77とが嵌合することにより、センサ42のコンタクトパッド49(図2参照)と皮膚上センサ制御装置44の導電コンタクト80とが接触する。オプションとして、この動作により皮膚上センサ制御装置44を始動させる。
【0191】
皮膚上制御装置電子機器回路
皮膚上センサ制御装置(on−skin sensor control unit)44はまた、一般に、センサ42および分析物モニタ装置システム40を作動させる電子部品の少なくとも一部を備えている。皮膚上制御装置44における電子機器回路の一実施形態を図18Aにおいてブロック図として示している。皮膚上センサ制御装置44の電子部品には、一般に、皮膚上制御装置44とセンサ42を作動させるための電源装置95と、センサ42から信号を得てセンサ42を作動させるセンサ回路97と、センサ信号を所望のフォーマットに変換する測定回路96と、最低限、センサ回路97および/または測定回路96から信号を得て、その信号を選択自由な送信機98に提供する処理回路109とが含まれる。幾つかの実施形態において、処理回路109は、センサ42からの信号を部分的または完全に評価し、その結果得られたデータを選択自由な送信機98に伝達し、および/または、分析物レベルが閾値を超える場合、選択自由な警報システム94(図18B参照)を始動させることもできる。処理回路109は、デジタル論理回路機構を有するものが多い。
【0192】
皮膚上センサ制御装置44は、オプションとして、センサ信号または処理回路109からの処理データをレシーバ/表示装置46、48に送信する送信機98、処理回路109からのデータを一時的または永続的に記憶するデータ記憶装置102、温度プローブ66から信号を受信し、温度プローブ66を作動させる温度プローブ回路99、センサにより生成された信号と比較するため基準電圧を提供する基準電圧発生装置101、および/または皮膚上センサ制御装置44内の電子部品の動作をモニターする監視回路103を備えていてもよい。
【0193】
更に、センサ制御装置44は、トランジスタのような半導体デバイスを利用したデジタルおよび/またはアナログ素子を備えていることもよくある。これらの半導体デバイスを作動させるため、皮膚上制御装置44は他の素子を備えていてもよく、例えば、アナログおよびデジタル半導体デバイスに正確にバイアスをかけるバイアス制御発生装置105、クロック信号を提供するオシレータ107、および回路のデジタル素子に対し、論理演算およびタイミング信号を提供するデジタル論理およびタイミング素子109が挙げられる。
【0194】
これら素子の一作動例として、センサ回路97および選択自由な温度プローブ回路99は、センサ42から測定回路96に未処理の信号を提供する。測定回路96は、例えば、電流−電圧コンバータ、電流−周波数コンバータ、および/または2進カウンタ、若しくは、未処理信号の絶対値に比例した信号を生成する他のインディケータを用いてその未処理信号を所望のフォーマットに変換する。これは、例えば、未処理信号を、デジタル論理回路が使用することのできるフォーマットに変換するのに使用してもよい。そして、処理回路109は、オプションとして、データを評価し、コマンドを出し電子機器回路を作動させてもよい。
【0195】
図18Bは、他の典型的な皮膚上制御装置44のブロック図を示しており、例えば、較正データを受信するためのレシーバ99と、例えば、工場設定較正データ、レシーバ99を介して得られた較正データおよび/または、例えば、レシーバ/表示装置46、48または他の外部装置から受信した演算信号を保持するための較正記憶装置100と、患者に警告する警報システム104と、警報システムを切る停止スイッチ111といった選択自由な素子も備えている。
【0196】
分析物モニタシステム40およびセンサ制御装置44の機能は、ソフトウェアルーチン、構成機器、またはそれらを組み合わせたものの何れかを用いて実行することもできる。例えば、集積回路または個別電子部品を含む構成機器は、各種技術を用いて実行することができる。一般に、集積回路を使用することにより、電子機器回路が小型化され、それによって、より小型の皮膚上センサ制御装置44を得ることもできる。
【0197】
皮膚上センサ制御装置44およびセンサ42における電子機器回路は、電源装置95を使用して作動させる。適切な電源装置95の一例は、バッテリであり、例えば、多くの時計、補聴器、および他の小型電子素子に使用されるもののような薄い円形バッテリである。バッテリの寿命は30日以上であるのが好ましく、より好ましくは3ヶ月以上、そして最も好ましくは1年以上である。バッテリは、皮膚上制御装置44内の最も大きな素子の一つであることが多いため、バッテリのサイズは最小限にするのが望ましい場合が多い。例えば、好ましいバッテリの厚さは0.5mm以下であり、好ましくは0.35mm以下、最も好ましくは、0.2mm以下である。複数のバッテリを使用してもよいが、一般に、バッテリは一個のみ使用するのが好ましい。
【0198】
センサ回路97は、センサ制御装置44の導電コンタクト80を介して一以上のセンサ42、42’に接続される。各センサはそれぞれ、最低限、作用電極58、対向電極60(または、対向/基準電極)、および選択自由な基準電極62である。二以上のセンサ42、42’を使用する場合、一般に、各センサは別個の作用電極58を有するが、対向電極60、対向/基準電極、および/または基準電極52は共有することもできる。
【0199】
センサ回路97は、センサ42またはセンサ42、42’から信号を受信し、センサ42またはセンサ42、42’を作動させる。センサ回路97は、電流測定、電量分析、電位差、電解電量測定、および/または他の電気化学技術を使用して、センサ42から信号を得ることもできる。センサ回路97は、ここでは、センサ42からの電流測定信号を得るものとして例示しているが、センサ回路は、他の電気化学技術を用いて信号を得るように適切に構成できることは言うまでもない。電流測定による測定値を得るため、センサ回路97は一般に、センサ42に一定の電位を供給するポテンシオスタットを備えている。他の実施形態では、センサ回路97は、センサ42に一定の電流を供給し、電量分析測定値または電位差測定値を得るために使用できるアンペロスタットを備えている。
【0200】
センサ42からの信号は、一般に、分析物の濃度によって変化する、例えば、電流、電圧または周波数といった少なくとも一つの特性を備えている。例えば、センサ回路97が電流測定法を用いて作動する場合には、信号電流が分析物濃度によって変化する。測定回路96は信号の情報伝達部を一特性から他の特性へと変換する回路機構を備えていてもよい。例えば、測定回路96は、電流−電圧または電流−周波数コンバータを備えていてもよい。この変換の目的は、例えば、より容易に送信され、デジタル回路で判読でき、そして/またはノイズの一因となり難い信号を提供することが挙げられる。
【0201】
標準的電流−電圧コンバータの一例を図20Aに示す。このコンバータにおいて、センサ42からの信号は、演算増幅器130(「オペアンプ」)の入力端子134に供給され、抵抗器138を介して出力端子136に結合される。しかしながら、この特定の電流−電圧コンバータ131は、小型CMOSチップにおける実行が困難であるかもしれない。なぜならば、抵抗器の集積回路での実行が困難であることがよくあるからである。一般に、個別の抵抗器素子が使用される。しかしながら、個別素子を使用することにより、回路機構が必要とする空間が増す。
【0202】
上記の代わりとして、電流−電圧コンバータ141を図20Bに示す。このコンバータは、入力端子144に供給されたセンサ42からの信号と入力端子142に供給された基準電位とを有するオペアンプ140を備えている。コンデンサ145は、入力端子144と出力端子146との間に配置する。更に、スイッチ147a、147b、149aおよび149bが設けられており、クロック(CLK)周波数によって決められた割合でコンデンサに充電および放電させる。作動中、半サイクルの間、スイッチ147aと147bが閉鎖され、スイッチ149aと149bとが開放されることにより、印加電位V1によりコンデンサ145に充電させる。もう一方の半サイクルの間、スイッチ147aと147bが開放され、スイッチ149aと149bとが閉鎖されることにより、コンデンサ145をアースし、部分的にまたは完全に放電させる。コンデンサ145の反応インピーダンスは、抵抗器138(図20A参照)の抵抗値に近似していることから、コンデンサ145を抵抗器に匹敵したものとすることができる。この「抵抗器」の値は、コンデンサ145のキャパシタンスおよびクロック周波数によって決まる。クロック周波数を変化させることにより、コンデンサの反応インピーダンス(「抵抗値」)が変化する。コンデンサ145のインピーダンス(「抵抗」)値は、クロック周波数を変えることにより変化させてもよい。スイッチ、147a、147b、149aおよび149bは、例えば、トランジスタを使用してCMOSチップにおいて実行してもよい。
【0203】
電流−周波数コンバータは、測定回路96に使用してもよい。適切な一電流−周波数コンバータは、センサ42からの信号を用いて、コンデンサを充電することを含む。コンデンサ全体の電位が閾値を上回った場合、コンデンサに放電させる。このように、センサ42からの電流が多くなればなるほど、より迅速に閾値電位に到達する。これにより、センサ42からの電流が増加するにつれて周波数が高くなる、コンデンサの充電および放電に対応した交番特性(alternating characteristic)を有するコンデンサ全体に渡った信号が得られることになる。
【0204】
幾つかの実施形態において、分析物モニタシステム40は、一以上のセンサ42に割り振られた二以上の作用電極58を備えている。これらの作用電極58は、品質管理を目的として使用してもよい。例えば、二以上の作用電極58を使用して取り出された出力信号および/または分析データを比較して、作用電極からの信号が所望の許容レベル内に当てはまるかどうか判断することもできる。出力信号が当てはまらない場合には、患者は一センサまたは複数センサを交換するように警告を受けることもできる。幾つかの実施形態では、二つのセンサ間での不一致が所定の期間持続した場合のみ患者は警告を受ける。二つの信号の比較は、測定毎または規則的な間隔で行ってもよい。代わりに、若しくは、更に、その比較は患者または別の人が行ってもよい。また、両センサからの信号は、データ生成に使用してもよく、或いは、一つの信号を比較後、廃棄してもよい。
【0205】
また、例えば、二つの作用電極58が共通の対向電極60を有し、分析物濃度が電流測定法により測定されるとすると、作用電極が適切に作動している場合、所定の許容レベル内で、対向電極60における電流は各作用電極における電流の二倍でなければならない。さもなければ、上述のように、一センサまたは複数のセンサを交換しなければならない。
【0206】
品質管理を目的として一作用電極のみからの信号を使用する一例としては、単一作用電極を使用して得られた連続した読取値を比較し、それらの差異が閾値レベルを超えているかどうかを判断することが挙げられる。その差異が、一読取値に関して、または、一定期間に渡って、または、一定期間内の所定数の読取値に関して、閾値レベルよりも大きい場合、患者はセンサ42を交換するよう警告を受ける。一般に、連続した読取値および/または閾値は、センサ信号の予測される全可動域が所望のパラメータの範囲内にある(つまり、センサ制御装置44が分析物濃度の実際の変化をセンサの故障とみなさない)ように決定される。
【0207】
センサ制御装置44はまた、オプションとして、温度プローブ回路99を備えていてもよい。温度プローブ回路99は、温度プローブ66全体に定電流(または定電位)を提供する。結果得られた電位(または、電流)は、温度依存性素子72の抵抗力によって変化する。
【0208】
センサ回路97および選択自由な温度プローブ回路からの出力は、センサ回路97および選択自由な温度プローブ回路99から信号を得て、少なくとも幾つかの実施形態において、例えば、デジタル回路が読み取ることのできる形態の出力データを提供する測定回路96に結合される。測定回路96からの信号は、処理回路109に送られ、そして選択自由な送信機98にデータを提供することもできる。処理回路109は、一以上の下記機能を備えていてもよい。1)測定回路96からの信号を送信機98に送信する。2)測定回路96からの信号をデータ記憶回路102に送信する。3)例えば、電流−電圧コンバータ、電流−周波数コンバータ、または電圧−電流コンバータを使用して、(例えば、測定回路96が行わなかった場合)信号の情報伝達特性を一特性から別の特性に変換する。4)較正データおよび/または温度プローブ回路99からの出力を利用してセンサ回路97からの信号を修飾する。5)間質液中の分析物レベルを測定する。6)間質液から得たセンサ信号に基づいて血流中の分析物レベルを決定する。7)分析物のレベル、変化速度、および/または変化速度の加速率が一以上の閾値を上回るかまたは一致するかどうか判断する。8)閾値と一致するか、または、上回った場合、警報を作動させる。9)一連のセンサ信号に基づいて分析物レベルにおける傾向を評価する。10)薬物の適用量を決定する。11)例えば、多数の作用電極58からの読取値を平均または比較する信号により、ノイズおよび/またはエラーを減少させる。
【0209】
処理回路109は、簡単なもので、これら機能の内の一つまたは少数の機能のみ実行するものであってもよいし、若しくは、処理回路109は、より高性能なもので、これら機能の全てまたは殆どを実行するものであってもよい。皮膚上センサ制御装置44のサイズは、処理回路109が実行する機能数の増加、およびそれら機能の複雑化に伴って大きくなる場合がある。これら機能の多くは、皮膚上センサ制御装置44の処理回路109において実行するのではなく、レシーバ/表示装置46、48(図22参照)の別のアナライザ152で実行してもよい。
【0210】
測定回路96および/または処理回路109の一実施形態は、作用電極58と対向電極60との間に流れる電流を出力データとして提供する。測定回路96および/または処理回路109はまた、センサ42の温度を表示する選択自由な温度プローブ66からの信号を出力データとして提供することもできる。温度プローブ66からのこの信号は、温度プローブ66を流れる電流と同様に簡単なものであってもよいし、また、処理回路109は、センサ42の温度との相関関係により、測定回路96から得た信号から温度プローブ66の抵抗力を決定する装置を備えていてもよい。そして、出力データは送信機98に送られ、その後、送信機98はこのデータを少なくとも一つのレシーバ/表示装置46、48に送信することもできる。
【0211】
処理回路109に戻って、幾つかの実施形態において、処理回路109はより高性能であり、分析物濃度、若しくは、電流または電圧値のような分析物濃度に関する測定代替値を測定できる。処理回路109は、作用電極58からの信号または分析データに、温度補正をするための温度プローブの信号を組み込むこともできる。例えば、温度プローブ測定値を基準化し、作用電極58からの信号または分析データに基準化した測定値を加算または減算することが挙げられる。処理回路109はまた、いずれも後で述べるが、外部源から受信したか、或いは、処理回路109に組み込まれている較正データを組み込んで、作用電極58からの信号または分析データを補正してもよい。更に、処理回路109は、間質中の分析物レベルを血中の分析物レベルに変換する補正アルゴリズムを有していてもよい。間質中の分析物レベルの血液中の分析物レベルへの変換については、例えば、シュミトケら(Schmidtke et al.)の「インシュリン注射後のネズミにおける血液および皮下グルコース濃度間の過渡的差異の測定およびモデリング(Measurement and Modeling of the Transient Difference Between Blood and Subcutaneous Glucose Concentrations in the Rat after Injection of Insulin)」Proc. of the Nat'l Acad. of Science, 95, 294〜299(1998)並びに、キンら(Quinn et al.)の「0.3mm電流測定マイクロセンサで測定したネズミにおける皮下組織へのグルコース送達の動力学(Kinetics of Glucose Delivery to Subcutaneous Tissue in Rats Measured with 0.3mm Amperometric Microsensors)」Am. J. Physiol.、 269(Endocrinol. Metab. 32)、 E155〜E161(1995)に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。
【0212】
幾つかの実施形態において、処理回路109からのデータは、分析され、使用者に警告するため警報システム94(図18B参照)に送られる。これらの実施形態の内の少なくとも幾つかにおいては、センサ制御装置が、データ分析や患者への警告を含む、必要とされる機能の全てを実行するため、送信機は使用されない。
【0213】
しかしながら、多くの実施形態においては、処理回路109からのデータ(例えば、電流信号、変換された電圧または周波数信号、若しくは、完全にまたは部分的に分析されたデータ)は、皮膚上センサ制御装置44の送信機98を用いて、一以上のレシーバ/表示装置46、48に送信される。送信機は、筐体45に形成されたワイヤまたは類似の導体のようなアンテナ93を備えている。一般に、掌サイズのベルト装着型レシーバのような小型レシーバ/表示装置46に送信する場合、送信機98は、約2メートル以上、好ましくは、約5メートル以上、更に好ましくは約10メートル以上信号を送信できるように設計される。ベッドサイドレシーバのようなより性能のよいアンテナを備えた装置に送信する場合、その有効範囲は長くなる。後で詳細に説明するように、レシーバ/表示装置46、48の適切な例としては、容易に身に付けられるかまたは持ち運び可能な装置、若しくは、患者が眠っている時、例えば、ナイトテーブルに具合良く配置できる装置が挙げられる。
【0214】
送信機98は、一般に処理回路109の高性能度によって、レシーバ/表示装置46、48に様々な異なった信号を送信することもできる。例えば、処理回路109は、温度または較正値に対し如何なる相関関係も持たない、単に未処理の信号、例えば作用電極58からの電流を提供することもできる。また、処理回路109は、例えば、電流−電圧コンバータ131または141、若しくは、電流−周波数コンバータを使用して得られる変換された信号を提供することもできる。その後、未処理の測定値または変換された信号は、レシーバ/表示装置46、48のアナライザ152(図22参照)で処理され、オプションとして温度および較正補正値を用いて、分析物レベルを決定することもできる。別の実施形態において、処理回路109は、未処理の測定値を、例えば、温度および/または較正情報を用いて補正し、その後送信機98が補正された信号、並びに、オプションとして温度および/または較正情報をレシーバ/表示装置46、48に送信する。更に別の実施形態において、処理回路109は、間質液および/または(間質液レベルに基づいて)血液中の分析物レベルを算出し、その情報を、一以上のレシーバ/表示装置46、48に送信し、オプションとして、未処理データおよび/または較正若しくは温度情報のいずれかも共に送信する。更なる実施形態において、処理回路109は分析物濃度を算出するが、送信機98は、未処理の測定値、変換された信号、および/または補正された信号のみを送信する。
【0215】
皮膚上センサ制御装置44において経験される可能性のある一つの難点は、時間の経過に伴って送信機98の送信周波数が変化することである。この可能性のある難点を克服するため、送信機は、送信機98の周波数を所望の周波数または周波数帯域に戻すことのできる、選択自由な回路機構を備えていてもよい。適切な回路機構の一例を、開ループ変調システム200のブロック図として、図21に示す。開ループ変調システム200は、位相検波器(PD)210、装入ポンプ(CHGPMP)212、ループフィルタ(L.F.)214、電圧制御型オシレータ(VCO)216、およびM回路による除算(÷M)218を備え、位相ロックループ220を形成している。
【0216】
分析物モニタ装置40は、例えば、一以上のレシーバ/表示装置46、48のレシーバと送信機98との間の無線周波数(RF)通信に開ループ変調システム200を使用する。この開ループ変調システム230は、送信機とその付随レシーバとの間に、信頼性の高い無線周波数(RF)結合を提供するように設計される。このシステムは、周波数変調方式(FM)を採用し、従来の位相ロックループ(PLL)220を使用して伝達波中心周波数をロックする。作動中、位相ロックループ220は変調前に開放される。変調中、位相ロックループ220は、送信機の中心周波数がレシーバの帯域幅内である限り開放されたままである。送信機が、中心周波数がレシーバの帯域幅からはみ出そうとしていることを検出すると、レシーバには、中心周波数が捕捉されるまでスタンバイするよう信号が送られる。捕捉後、送信が再開される。中心周波数の捕捉、位相ロックループ220の開放、変調、そして、中心周波数の再捕捉というこのサイクルは、必要なサイクル数だけ繰り返される。
【0217】
ループ制御装置240は、位相ロックループ220のロック状態を検出し、位相ロックループ220を閉鎖および開放させるものである。ループ制御装置240と共に多回路総合計器250は、中心周波数の状態を検出する。変調制御装置230は、変調信号を生成するものである。送信増幅器(transmitt amplifier)260は、適切な送信信号パワーを確保するために設けられている。基準周波数は、非常に安定した信号源(図示なし)がら生成され、Nブロックによる除算(÷N)270によりNで割られる。データおよび制御信号は、データバス280とコントロールバス290を介して開ループ変調システム200に受信される。
【0218】
開ループ変調システム200の動作は、閉鎖状態の位相ロックループ220から始まる。ループ制御装置240がロック状態を検出すると、位相ロックループ220を開放し、変調制御装置230が変調信号の生成を開始する。多回路総合計器250は、プログラムされた間隔で、(Mで割られた)VCO周波数をモニターする。モニター周波数を、多回路総合計器250でプログラムされた閾値と比較する。この閾値は、レシーバの中間周波数段階の3dBカットオフ周波数に対応する。モニターされた周波数が閾値に近づくと、ループ制御装置240は通報を受け、スタンバイコードがレシーバに送信され、位相ロックループ220が閉鎖される。
【0219】
この時点で、レシーバはウェイトモードになっている。送信機のループ制御装置240が、位相ロックループ220を閉鎖する。そして、変調制御装置230が、オフラインされ、多回路総合計器250のモニター値がリセットされ、そして、位相ロックループ220がロックされる。ループ制御装置240がロック状態を検出すると、ループ制御装置240は位相ロックループ220を開放し、変調制御装置230がオンラインされ、スタンバイコードを送信するサイクルが開始される時点である、位相ロックループ220の中心周波数が閾値に接近するまでレシーバへのデータ送信が再び続けられる。÷N270および÷M218ブロックは、送信機の周波数チャネルを設定する。
【0220】
このようにして、開ループ変調システム200は、分析物モニタシステムに対し、高信頼低電力FMデータ送信を提供する。搬送波の中心周波数をレシーバ帯域幅内に保持しながら、開ループ変調システム200は広帯域周波数変調方法を提供する。送信機の中心周波数を引張る寄生コンデンサおよびインダクタの影響は、位相ロックループ220により補正される。更に、多回路総合計器250およびループ制御装置240は、中心周波数のずれを検出する新たな方法を提供する。最後に、開ループ変調システム200は、CMOS処理において容易に実行される。
【0221】
送信機98のデータ送信速度は、センサ回路97が信号を得る速度および/または処理回路109がデータまたは信号を送信機98に供給する速度と同一であってもよい。或いは、送信機98はより遅い速度でデータを送信してもよい。この場合、送信機98は、送信毎に一つより多くのデータポイントを送信できる。或いは、データ送信毎に一つのデータポイントのみが送られ、残りのデータは送信されなくてもよい。一般に、データは少なくとも1時間毎、好ましくは、少なくとも15分毎、更に好ましくは少なくとも5分毎、最も好ましくは少なくとも1分毎にレシーバ/表示装置46、48に送信される。しかしながら、他のデータ送信速度を採用してもよい。幾つかの実施形態において、処理回路109および/または送信機98は、例えば、分析物の低レベルまたは高レベル、或いは、分析物の切迫した低または高レベルといった状態が示された場合、より高速でデータを処理および/または送信するように構成される。これらの実施形態では、加速されたデータ送信速度は、一般に、少なくとも5分毎、好ましくは少なくとも1分毎である。
【0222】
送信機98に加えて、皮膚上センサ制御装置44は選択自由なレシーバ99を備えていてもよい。送信機98は、送信機とレシーバの両方として作動する送受信機である場合もある。レシーバ99は、センサ42用較正データの受信に使用してもよい。較正データは、センサ42からの信号を補正するために処理回路109で使用されてもよい。この較正データは、レシーバ/表示装置46、48または、医師の診療室の制御装置のような他の何らかの源から送信されてもよい。更に、選択自由なレシーバ99は、上述したように、レシーバ/表示装置46からの信号の受信や、送信機98への、例えば周波数または周波数帯域変更の指示、選択自由な警報システム94の始動または停止(後述)、および/または送信機98へのより高速での送信の指示に使用してもよい。
【0223】
較正データは、様々な方法で得られる。例えば、較正データは、レシーバ99を使用して皮膚上センサ制御装置44に入力できる、単なる工場測定較正測定値であったり、或いは、皮膚上センサ制御装置44自体の較正データ記憶装置100に記憶されていてもよい(この場合、レシーバ99を必要としない場合もある)。較正データ記憶装置100は、例えば、読出し可能または読出し可能/書込み可能記憶回路であってもよい。
【0224】
代替もしくは付加的較正データは、医師または他の専門家、若しくは、患者自身が行ったテストに基づいて提供することもできる。例えば、糖尿病患者が市販のテスト用キットを使用して自分自身の血糖濃度を測定することは一般的である。このテスト結果を、適切な入力装置(例えば、キーパッド、光信号レシーバ、またはキーパッドまたはコンピュータへの接続口)が、皮膚上センサ制御装置44に組み込まれている場合には直接的に、また、較正データをレシーバ/表示装置46、48に入力し、その較正データを皮膚上センサ制御装置44に送信することにより間接的に皮膚上センサ制御装置44に入力する。
【0225】
分析物レベルを別個に測定する他の方法も、較正データを得るのに使用してもよい。このタイプの較正データは、工場測定較正値の代わりとして使用するか、または工場測定較正値を補足してもよい。
【0226】
本発明の幾つかの実施形態においては、正確な分析物レベルが報告されていることを確認するために、周期的間隔、例えば、8時間毎、一日一回、または一週間に一回、較正データを必要とする場合がある。較正はまた、新しいセンサ42が埋め込まれる度に、若しくは、センサが閾値最小値または最大値を超えた場合、または、センサ信号の変化速度が閾値を超えた場合必要とされることがある。場合によっては、センサ42の埋め込み後、センサ42が平衡状態に達するように較正する前に一定時間待つ必要がある。幾つかの実施形態では、センサ42を挿入後のみ較正し、他の実施形態では、センサ42の較正を必要としない。
【0227】
皮膚上センサ制御装置44および/またはレシーバ/表示装置46、48は、例えば、較正を行ってから次に較正を行うまでの間の所定の周期的時間間隔に基づいて、または、新しいセンサ42の植込みに際して較正データを必要とすることを示す聴覚または視覚的インディケータを備えていても良い。皮膚上センサ制御装置44および/またはレシーバ/表示装置46、48はまた、所定の周期的時間間隔内、および/または新しいセンサ42を植込んだ後センサ42の較正を行っていないため、分析物モニタ装置40によって報告された、分析物レベルなどの情報が、正確なものでない場合があることを患者に気づかせるための聴覚的または視覚的インディケータを備えていても良い。
【0228】
皮膚上センサ制御装置44の処理回路109および/またはレシーバ/表示装置46、48のアナライザ152は、いつ較正データが必要とされるか、および較正データが許容できるものであるかどうかを決定することができる。皮膚上センサ制御装置44は、以下のような場合、オプションとして、較正をさせないまたは較正点を拒絶するように構成することもできる。例えば、1)温度プローブから読み取る温度が、所定の許容範囲内(例えば、30〜42℃または32〜40℃)でないか、または、急速に変化している(例えば、0.2℃/分、0.5℃/分、または0.7℃/分以上)温度を示す場合、2)二以上の作用電極58が、互いの所定範囲内(例えば10%または20%以内)にない較正されていない信号を供給する場合、3)較正されていない信号の変化速度が、閾値率を超える(例えば、毎分0.25mg/dLまたは毎分0.5mg/dL以上)場合、4)較正されていない信号が、閾値最大値(例えば、5、10、20、または40nA)を超えるか、閾値最小値(例えば、0.05、0.2、0.5または1nA)より低い場合、5)較正された信号が、閾値最大値(例えば、分析物濃度200mg/dL、250mg/dL、または300mg/dLに対応する信号)を超えるか、または閾値最小値(例えば、分析物濃度50mg/dL、65mg/dL、または80mg/dLに対応する信号)より低い場合、および/または6)埋め込み後の経過時間が不十分(例えば、10分以内、20分以内、または30分以内)である場合。
【0229】
処理回路109またはアナライザ152はまた、最新の較正前後のセンサデータを用いて決定した値の差異が閾値量を超えている場合、較正が正しくないこと、または、センサ特性が較正を行った二つの時点間で急激に変化したことを示しており、別の較正点を必要とすることもある。この付加的較正点は、差異の原因を示すこともできる。
【0230】
皮膚上センサ制御装置44は、処理回路109からのデータ(例えば、センサからの測定値または処理データ)を永続的、または、より一般的には一時的に保持するために使用できる選択自由なデータ記憶装置102を備えていてもよい。データ記憶装置102は、処理回路109がデータを使用して、例えば、分析物レベルの上昇または低下速度および/または加速率といった分析物レベルにおける傾向を分析および/または予測できるようにデータを保持することもできる。データ記憶装置102は、同様に、若しくは、その代わりとして、レシーバ/表示装置46、48が範囲内にない期間、データを記憶するのに使用してもよい。データ記憶装置102はまた、データの送信速度がデータの獲得速度よりも遅い場合データを記憶するのに使用することもできる。例えば、データ獲得速度が、10ポイント/分であり、送信が2送信/分である場合には、データポイント処理の所望の速度によって、各送信毎に1〜5ポイントのデータを送信できる。データ記憶装置102は一般に、読出し可能/書込み可能記憶保持装置を備え、一般に、記憶保持装置への書込みおよび/または記憶保持装置からの読出しのためのハードウェアおよび/またはソフトウェアも備えている。
【0231】
皮膚上センサ制御装置44は、処理回路109からのデータに基づいて、分析物の可能性として考えられる有害な状態を患者に警告する、選択自由な警報システム104を備えていてもよい。例えば、グルコースが分析物である場合、皮膚上センサ制御装置44は、低血糖、高血糖、切迫低血糖、および/または切迫高血糖といった状態を患者に警告する警報システム104を備えていてもよい。警報システム104は、処理回路109からのデータが閾値に達するかまたは上回った場合始動する。血糖レベルに対する閾値は、低血糖に関しては、約60、70、または80mg/dL、切迫低血糖に関しては、約70、80、または90mg/dL、切迫高血糖に関しては、約130、150、175、200、225、250または275mg/dL、そして、高血糖に関しては、約150、175、200、225、250、275または300mg/dLといった例が挙げられる。警報システム104用に設計される実際の閾値は、上記血糖レベルと相関関係を有する間質液中グルコース濃度または電極測定値(例えば、電流値または電流測定値の変換により得られた電圧値)に対応したものであってもよい。分析物モニタ装置は、これらの状態、または、何らかのその他の状態に関する閾値レベルを、患者および/または医師がプログラムできるように構成してもよい。
【0232】
データポイントが、特定の状態を示す方向に閾値を超える値を有する場合、閾値を超えていることになる。例えば、グルコースレベル200mg/dLに対し相関関係を有するデータポイントは、患者が高血糖状態になったことを示すため、高血糖に関する閾値180mg/dLを超えていることになる。別の例として、グルコースレベル65mg/dLに対し相関関係を有するデータポイントは、患者がその閾値によって定義されているような低血糖の状態にあることを示すため、低血糖に関する閾値70mg/dLを超えていることになる。しかしながら、グルコースレベル75mg/dLに対し相関関係を有するデータポイントは、選択された閾値によって定義されているような特定の状態を示さないため、低血糖に関する同一閾値を超えないことになる。
【0233】
アラームはまた、センサの読取値がセンサ42の測定範囲を超えた値を示した場合に作動させることもできる。グルコースに関して、生理学的に適切な測定範囲は、一般に、間質液中のグルコースについては、約50〜250mg/dL、好ましくは約40〜300mg/dL、理想的には、30〜400mg/dLである。
【0234】
警報システム104は、同様に、若しくは、代わりとして、分析物レベル上昇または低下の変化速度またはその変化速度の加速率が、閾値速度または加速率に達するか、或いは超えた場合作動させてもよい。例えば、皮下グルコースをモニターする場合、グルコース濃度の変化速度が、高血糖または低血糖状態が起りそうであることを示す閾値を超えた場合に、警報システムを作動させることもできる。
【0235】
選択自由な警報システム104は、単一のデータポイントが特定の閾値と一致するかまたは超えた場合作動するように構成してもよい。また、アラームは、所定の合計時間内の所定数のデータポイントが、閾値と一致するかまたは超えた場合のみ始動させてもよい。更に別の代替例として、アラームは、所定の合計時間内のデータポイントが、閾値と一致するかまたは超える平均値を有する場合のみ始動させてもよい。アラームを始動させる各条件は、異なったアラーム始動条件であってもよい。更に、アラーム始動条件は、現状によって変化させてもよい(例えば、切迫高血糖が表示された場合、データポイント数、または高血糖を判断するためにテストする合計時間を変えてもよい)。
【0236】
警報システム104は、一以上の個別のアラームを備えていてもよい。各アラームはそれぞれ、分析物の一以上の状態を知らせるように、個別に始動させてもよい。それらのアラームは、例えば、聴覚的または視覚的なものであってもよい。他の感覚刺激警報システムを使用してもよく、始動させた場合、加熱したり、冷却したり、振動させたり、或いは、緩い電気ショックを発生させたりする警報システムが挙げられる。幾つかの実施形態では、アラームは、異なった状態を知らせる異なったトーン、音色または音量を有する聴覚的なものである。例えば、高音が高血糖を、低音が低血糖を知らせることもできる。視覚的アラームでは、異なった状態を知らせるために、色、明るさ、または皮膚上センサ制御装置44上の位置における差を利用してもよい。幾つかの実施形態において、聴覚的な警報システムは、アラームが停止するまで、アラームの音量が時間と共に増すように構成される。
【0237】
幾つかの実施形態において、アラームは、所定時間後自動的に停止させることもできる。他の実施形態において、アラームは、アラームを始動させた状態にあることをデータが示さなくなった場合に停止するよう構成してもよい。これらの実施形態において、単一のデータポイントが、もはやその状態にないことを示した場合アラームを停止させるか、或いは、所定数のデータポイントまたは所定時間内に得られたデータポイントの平均が、もはやその状態にないことを示した場合のみ、アラームを停止させることもできる。
【0238】
幾つかの実施形態において、アラームは、自動停止に加えて、または、自動停止の代わりに、患者または別の人により手動で停止させることもできる。これらの実施形態では、スイッチ101が設けられており、作動させた場合アラームを切る。スイッチ101は、例えば、皮膚上センサ制御装置44またはレシーバ/表示装置46、48の作動装置を作動させ有効にスイッチを入れる(または、スイッチの構造によっては、切る)こともできる。場合によって、作動装置を二つ以上の装置44、46、48に設けることもでき、そのうちの何れかが作動しアラームを停止させてもよい。スイッチ101および/または作動装置がレシーバ/表示装置46、48に設けられている場合、信号はレシーバ/表示装置46、48から皮膚上センサ制御装置44のレシーバ98に送信され、アラームを停止させることもできる。
【0239】
様々なスイッチ101が使用でき、例えば、機械的スイッチ、リードスイッチ、ホール効果スイッチ、巨大磁気比率(GMR(Gigantic Magnetic Ratio))スイッチ(GMRスイッチの抵抗値は、磁界に依存する)等がある。有効にスイッチを入れる(または、切る)ために使用される作動装置は、皮膚上センサ制御装置44上に配置され、押しボタンの周囲および筐体内に水が流入できないように構成されるのが好ましい。そのような押しボタンの一例は、筐体にとって不可欠な柔軟性ポリマまたはプラスチックコーティングにより、完全に被覆されている柔軟性導体ストリップである。開位置では、柔軟性導体ストリップは下向きに曲げられ筐体から出っ張っている。患者または別の人が押すと、柔軟性導体ストリップは金属コンタクトに向かって直接押し動かされ、回路が完成しアラームを停止させる。
【0240】
リードまたはGMRスイッチには、下向きに曲げられているか、筐体45およびリードまたはGMRスイッチから出っ張っている柔軟性作動装置の永久磁石または電磁石といった一片の磁気材料が使用される。リードまたはGMRスイッチは、柔軟性作動装置を押し、磁気材料をスイッチに近づけ、スイッチ内の磁界を増強することにより(アラームを停止させるよう)作動させる。
【0241】
本発明の幾つかの実施形態において、分析物モニタ装置40は、皮膚上制御装置44とセンサ42のみを備えている。これらの実施形態では、皮膚上センサ制御装置44の処理回路109が分析物レベルを測定し、分析物レベルが閾値を超えた場合、警報視システム104を始動させることができる。これらの実施形態において、皮膚上制御装置44は、警報システム104を有し、また、レシーバ/表示装置46、48に関連して後で述べるもののような、ディスプレイを備えていてもよい。ディスプレイは、LCDまたはLEDディスプレイであるのが好ましい。皮膚上制御装置44は、例えば、医師の診療室の制御装置に、例えばデータを送信することが望ましいとされるのでなければ、送信機を備えていなくてもよい。
【0242】
皮膚上センサ制御装置44はまた、センサ42から得られた、または、センサ42とともに使用された電圧または電流との比較に使用するための絶対電圧または電流を提供するため基準電圧発生装置101を備えていてもよい。適切な基準電圧発生装置の一例は、例えば、周知のバンドギャップを有する半導体材料を用いたバンドギャップ基準電圧発生装置である。バンドギャップは、半導体材料が作動中に晒されるであろう温度範囲内の温度に対し強いことが好ましい。適切な半導体材料には、ガリウム、シリコン、シリケートが挙げられる。
【0243】
固体電子部品に適切にバイアスをかけるため、バイアス電流発生装置105を設けてもよい。一般に、デジタル回路機構と共に使用されるクロック信号を生成するため、オシレータ107を設けてもよい。
【0244】
皮膚上センサ制御装置44はまた、回路機構、特に、制御装置44内のあらゆるデジタル回路機構をテストし、回路機構が正しく作動しているかどうか判断する監視回路103を備えていてもよい。限定されるものではないが、監視回路動作の例としては、以下の動作が挙げられる。a)監視回路により乱数を生成し、記憶場所にその数を記憶し、監視回路のレジスタにその数を書込み、そして、その数を再生し、同等であるかどうか比較する。b)アナログ回路の出力をチェックし、出力が所定のダイナミックレンジを超えるかどうか判断する。c)予測されるパルス間隔で信号用タイミング回路の出力をチェックする。監視回路の機能の他の例は、当技術分野では周知となっている。監視回路は、エラーを検出した場合、アラームを始動させ、および/または、装置を停止させることもできる。
【0245】
レシーバ/表示装置
一以上のレシーバ/表示装置46、48は、センサ42によって生成されるデータへのアクセスを容易にするため分析物モニタ装置40を備えることもでき、また、幾つかの実施形態においては、皮膚上センサ制御装置44からの信号を処理し、皮下組織中の分析物濃度またはレベルを測定することもできる。小型レシーバ/表示装置46は、患者が携帯することもできる。これらの装置46は、掌サイズとすることもでき、および/または、患者が携帯するベルト上、或いは、かばんまたはハンドバック内に納まるように適合させることもできる。小型レシーバ/表示装置46の一実施形態は、例えば、使用者が医療装置を使用している人であることがわからないように、ポケットベル(pager)の外観を有する。そのようなレシーバ/表示装置は、オプションとして、送信または受信可能、若しくは、送受信可能な呼び出し機能を有することもできる。
【0246】
大型レシーバ/表示装置48を使用することもできる。これらの大型装置48は、棚またはナイトテーブルに載置するよう設計してもよい。大型レシーバ/表示装置48は、両親が、子供が眠っている間モニターするため、若しくは、夜中に患者を起こすために使用することもできる。更に、大型レシーバ/表示装置48は、便利性のため、若しくは、アラームとして作動させるため、ランプ、時計、またはラジオを備えていてもよい。レシーバ/表示装置46、48のうちの、一タイプ、または、両タイプを使用してもよい。
【0247】
レシーバ/表示装置46、48は、図22にブロック形式で示しているように、一般に、皮膚上センサ制御装置44からデータを受信するレシーバ150と、そのデータを評価するアナライザ152と、患者に情報を提供するディスプレイと、ある状態が生じた時患者に警告する警報システム156とを備えている。レシーバ/表示装置46、48はまた、オプションとして、データ記憶装置158、送信機160、および/または入力装置162を備えていてもよい。レシーバ/表示装置46、48はまた、電源装置(例えば、バッテリおよび/または壁のコンセントから電力を受け取ることのできる電源装置)、監視回路、バイアス電流発生装置、およびオシレータなどの他の素子(図示なし)を備えていてもよい。これらの付加的素子は、皮膚上センサ制御装置44に関して上述したものと同様のものである。
【0248】
一実施形態におけるレシーバ/表示装置48は、自宅で患者が使用するためのベッドサイド用装置である。前記ベッドサイド用装置は、レシーバと一以上の選択自由なアイテムとを備えており、そのアイテムとしては、例えば、時計、ランプ、聴覚的アラーム、電話接続、およびラジオが挙げられる。前記ベッドサイド用装置はまた、ディスプレイも備えており、好ましくは、部屋の反対側から読める大きな数字および/または文字を使用したものである。その装置は、コンセントにつなぐことにより動作可能で、且つ、選択自由にバッテリーを予備として備えていてもよい。一般に、ベッドサイド用装置は、小さな掌サイズの装置よりも性能のよいアンテナを備えているため、ベッドサイド用装置の受信距離範囲はより長い。
【0249】
アラームが示された場合、ベッドサイド用装置は、例えば、聴覚的アラーム、ラジオ、ランプを作動させ、および/または、電話を掛け始めることもできる。前記アラームは、例えば、眠ったり、嗜眠状態にあったり、混乱している患者を起こすか、または、刺激する上で、小さな掌サイズの装置のアラームよりも強力なもので有り得る。更に、大きな音のアラームにより、夜中糖尿病の子供をモニターする親に注意を促すこともできる。
【0250】
ベッドサイド用装置は、専用のデータアナライザおよびデータ記憶装置を備えている。データは、皮膚上センサ装置、若しくは、掌サイズまたは小型レシーバ/表示装置など、別のレシーバ/表示装置から伝達されてもよい。このようにして、大きなギャップを生じることなくデータをダウンロードし解析できるように、少なくとも一つの装置が全ての関連データを保有している。
【0251】
オプションとして、ベッドサイド用装置は、小型レシーバ/表示装置を設置することもできるインターフェースまたはクレードルを有する。ベッドサイド用装置は、小型レシーバ/表示装置のデータ記憶および解析能力を利用でき、および/または、この位置で、小型レシーバ/表示装置からデータを受信することもできる。ベッドサイド用装置はまた、小型レシーバ/表示装置のバッテリを充電できるものであってもよい。
【0252】
一般に、レシーバ150は、周知のレシーバおよびアンテナ回路機構を用いて形成され、しばしば、皮膚上センサ制御装置44の送信機98の周波数または周波数帯域に合わせるか、または、合わせることが可能である。一般に、レシーバ150は、送信機98の送信距離よりも長い距離から信号を受信できる。小型レシーバ/表示装置46は、一般に、2メートル以内、好ましくは、5メートル以内、更に好ましくは、10メートル以内、或いは、それ以上離れた皮膚上センサ制御装置44から信号を受信することができる。ベッドサイド用装置のような大型レシーバ/表示装置48は、一般に、5メートル以内、好ましくは、10メートル以内、更に好ましくは、20メートル以内、或いは、それ以上離れた皮膚上センサ制御装置44から信号を受信することができる。
【0253】
一実施形態においては、皮膚上センサ制御装置44から離れていることのあるレシーバ/表示装置46、48が信号を受信できるように、皮膚上センサ制御装置44からの信号を増強するために中継器(図示なし)が使用される。中継器は、一般に、皮膚上センサ制御装置44から独立しているが、場合によって、中継器は、皮膚上センサ制御装置44に設置できるように構成することもできる。一般に、中継器は、皮膚上センサ制御装置44から信号を受信するためのレシーバと、受信信号を送信するための送信機とを備えている。必要なわけではないが、中継器の送信機は、皮膚上センサ制御装置の送信機よりも出力の高いものである場合が多い。中継器は、例えば、子供が身に付けている皮膚上センサ制御装置から、子供の分析物レベルをモニターするため親のベッドルームにあるレシーバ/表示装置に信号を送信することを目的として、子供のベッドルームに使用できる。別の典型的な用途では、患者の皮膚上センサ制御装置をモニターするため、ナースステーションのレシーバ/表示装置と共に病院で使用される。
【0254】
他の皮膚上センサ制御装置を含む、他の装置が存在する場合、送信機98の周波数帯域内でノイズまたは妨害が生じる場合がある。これにより、誤ったデータが生成されることもある。この可能性の考えられる問題を克服するため、送信機98は、レシーバ/表示装置46、48の範囲内に、二以上の皮膚上センサ制御装置44または他の送信源が存在する場合、好ましくは固有の識別コードを使用して、特定の皮膚上センサ制御装置44を識別するコード、および/または、例えば、送信開始を示すコードを送信することもできる。データと共に識別コードを提供することにより、レシーバ/表示装置46、48が、他の送信源からの信号を妨害したり解読したりする可能性を低下させることもでき、また、別の皮膚上センサ制御装置44との「クロストーク」も防げる。識別コードは、センサ制御装置44に記憶された工場設定コードとして提供してもよい。また、識別コードは、センサ制御装置44またはレシーバ/表示装置46、48内の適切な回路でランダムに生成(且つ、センサ制御装置44に送信)してもよいし、若しくは、識別コードは、患者が選択して、センサ制御装置44に接続された送信機または入力装置を介して、センサ制御装置44に送られてもよい。
【0255】
「クロストーク」を排除し、適切な皮膚上センサ制御装置44からの信号を識別するため、他の方法を使用することもできる。幾つかの実施形態において、送信機98は、暗号化技術を使用して、送信機98からのデータストリームを暗号化することもできる。レシーバ/表示装置46、48は、暗号化されたデータ信号を解読するための鍵を有する。そして、レシーバ/表示装置46、48は、信号を解読した後信号を評価することにより、擬似信号または「クロストーク」信号が受信された場合を判断する。例えば、一以上のレシーバ/表示装置46、48のアナライザ152が、電流測定値または分析レベルなどのデータを、予測される測定値(例えば、生理学的に適切な分析物レベルに対応する予測範囲の測定値)と比較する。または、レシーバ/表示装置46、48のアナライザは、解読されたデータ信号の識別コードを検索する。
【0256】
一般に、識別コードまたは暗号化方式と共に使用される、「クロストーク」を排除するための別の方法は、「クロストーク」が存在すると判断すると、送信周波数または周波数帯域を変更する選択自由な機構を皮膚上センサ制御装置44に設けることを含む。送信周波数または周波数帯域を変更するこの機構は、クロストークまたは妨害の可能性を検出した時、レシーバ/表示装置により自動的に、および/または患者により手動で始動させてもよい。自動始動においては、レシーバ/表示装置46、48が皮膚上センサ制御装置44の選択自由なレシーバ99に信号を送信し、皮膚上センサ制御装置44の送信機98に、周波数または周波数帯域を変更するように指示する。
【0257】
周波数または周波数帯域の変更を手動で開始する場合、例えば、レシーバ/表示装置46、48および/または皮膚上センサ制御装置44の作動装置(図示なし)を使用して達成することもでき、患者はそれを操作して、周波数または周波数帯域を変更するように送信機98に指示する。手動で開始される送信周波数または周波数帯域の変更の動作は、レシーバ/表示装置46、48および/または皮膚上センサ制御装置44からの可聴または可視信号により周波数または周波数帯域の変更を開始するように患者を促がすことを含んでいてもよい。
【0258】
レシーバ150の説明に戻ると、レシーバ150が受信したデータは、アナライザ152に送られる。アナライザ152は、皮膚上センサ制御装置44の処理回路109と同様の、様々な機能を備えることができ、以下のものが含まれる。1)センサ42からの信号を、較正データおよび/または温度プローブ66の測定値を用いて修正する。2)間質液中の分析物レベルを測定する。3)間質液中のセンサ測定値に基づき、血流中の分析物レベルを決定する。4)分析物のレベル、変化速度、および/または変化速度における加速率が、一以上の閾値を超えるか、または、一致するかどうか決定する。5)閾値に一致または閾値を超えた場合、警報システム156および/または94を作動させる。6)一連のセンサ信号に基づいて分析物レベルの傾向を評価する。7)薬物の適用量を決定する。そして7)ノイズまたはエラーの原因を減少させる(例えば、信号加算平均または複数の電極からの読取値を比較することによる)。アナライザ152は、簡易なものであってもよく、これらの機能の一つのみまたは少数のみを実行してもよいし、また、アナライザ152は、これら機能の全てまたは殆どを実行してもよい。
【0259】
アナライザ152からの出力は、一般に、ディスプレイ154に提供される。様々なディスプレイ154が使用でき、ディスプレイとしては、陰極線管装置(特に大型装置に対して)、LEDディスプレイ、またはLCDディスプレイが挙げられる。ディスプレイ154は、単色(例えば、白黒)または多色(つまり、一定範囲の色を有する)のものであってもよい。ディスプレイ154は、一定条件下で活性化されるシンボルまたは他のインディケータを有していてもよい(例えば、センサ42から信号によって高血糖のような状態が表示されると、特定のシンボルがディスプレイ上目視可能となる)。ディスプレイ154は、LCDまたはLEDのアルファニューメリック構造体のような、更に複雑な構造体を有していてもよく、その複数の部分が活性化され、文字、数字、またはシンボルが生成される。例えば、ディスプレイ154は、図23に示すように、分析物のレベルを数値で表示する領域164を備えていてもよい。一実施形態において、ディスプレイ154はまた、患者が行動をとるように患者に対しメッセージも提供する。このようなメッセージとしては、例えば、患者が低血糖である場合、「糖類を食べよ」であったり、患者が高血糖である場合、「インシュリンを摂取せよ」といったものが挙げられる。
【0260】
レシーバ/表示装置46、48の一例を図23に示す。この特定のレシーバ/表示装置46、48のディスプレイ154は、センサ42からの信号を使用して、処理回路109および/またはアナライザ152により測定される分析物のレベル、例えば、血糖濃度を表示する部分164を有する。前記ディスプレイは、一定の条件下で始動する各種インディケータ166も有する。例えば、グルコースモニタ装置のインディケータ168は、患者が高血糖である場合、始動させることができる。他のインディケータは、低血糖(170)、切迫高血糖(172)、切迫低血糖(174)、誤作動、エラー状態の場合、または較正サンプルが必要な場合(176)に始動させることができる。幾つかの実施形態では、色分けされたインディケータを使用してもよい。または、血糖濃度を表示する部分164はまた、複合インディケータ180(図24参照)を備えていてもよく、その複数の部分が適切に始動し上記状態のいずれかを表示する。
【0261】
ディスプレイ154は、図24に示すように、ある期間中の分析物レベルのグラフ178を表示できるものであってもよい。場合によって役立つ他のグラフの例としては、時間の経過による分析物レベルの変化速度、またはその変化速度における加速率のグラフが挙げられる。幾つかの実施形態において、レシーバ/表示装置は、患者が見たい特定の表示(例えば、血糖濃度または、濃度対時間のグラフ)を患者が選択できるように構成される。患者は、例えば、選択自由な入力装置162の押しボタンなどを押し動かすことにより、所望の表示モードを選択することもできる。
【0262】
レシーバ/表示装置46、48は、一般に、警報システム156も備えている。警報システム156を構成するための付加機能は、皮膚上センサ制御装置44の警報システム104のものと同様である。例えば、グルコースが分析物である場合、皮膚上センサ制御装置44は、低血糖、高血糖、切迫低血糖、および/または切迫高血糖といった状態を患者に警告する警報システム156を備えていてもよい。警報システム156は、アナライザ152からのデータが閾値に達するかまたは超えた場合始動する。上記血糖レベルと相関関係を有する間質液中グルコース濃度またはセンサ信号(例えば、電流値または変換された電圧値)に対応したものであってもよい。
【0263】
警報システム156は、同様に、若しくは、または、分析物レベルの上昇または低下の速度若しくは加速率が閾値に達するか、または、超えた場合始動させてもよい。例えば、皮下グルコースをモニターする場合、警報システム156は、グルコース濃度の変化速度が、高血糖または低血糖状態が生じる可能性があることを示し得る閾値を超えた場合始動させてもよい。
【0264】
警報システム156は、単一のデータポイントが特定の閾値と一致するか、または超えた場合始動するように構成してもよい。また、アラームは、所定の合計時間内の所定数のデータポイントが、閾値と一致するかまたは超えた場合のみ始動させることもできる。更に別の例として、アラームは、所定の合計時間内のデータポイントが、閾値と一致するかまたは超える平均値を有する場合のみ始動させてもよい。アラームを始動させることのできる条件のそれぞれが、異なったアラーム始動条件であってもよい。更に、アラーム始動条件は、現状によって変化させてもよい(例えば、切迫高血糖が表示された場合、高血糖を判断するためにテストするデータポイント数または合計時間を変えてもよい)。
【0265】
警報システム156は、一以上の個別のアラームを備えていてもよい。各アラームは分析物の一以上の状態を知らせるように別々に始動させることもできる。それらのアラームは、例えば、聴覚的または視覚的なものであってもよい。他の感覚刺激警報システムを使用することもでき、そのようなものとしては、皮膚上センサ制御装置44に、加熱、冷却、振動、或いは、緩い電気ショックを発生させるように指示する警報システム156が挙げられる。幾つかの実施形態において、アラームは、異なった状態を表す異なったトーン、音色または音量を有する聴覚的なものである。例えば、高音が高血糖を、低音が低血糖を表してもよい。視覚的なアラームでは、異なった状態を示すために、色または明るさにおける差を利用してもよい。幾つかの実施形態において、聴覚的な警報システムは、アラームが停止するまで、時間と共にアラームの音量が増すように構成することもできる。
【0266】
幾つかの実施形態において、アラームは、所定時間後自動的に停止させることもできる。他の実施形態では、アラームを始動させた状態にあることをデータが示さなくなった場合に停止するようアラームを構成してもよい。これらの実施形態において、単一のデータポイントが、もはやその状態にないことを示した場合アラームを停止させるか、或いは、所定数のデータポイントまたは所定時間内に得られたデータポイントの平均が、もはやその状態にないことを示した場合のみ、アラームを停止させてもよい。
【0267】
さらに他の実施形態において、アラームは、自動停止に加えて、または、自動停止の代わりに、患者または別の人により手動で停止させることもできる。これらの実施形態では、スイッチが設けられ、作動させるとアラームを切る。スイッチは、例えば、レシーバ/表示装置46、48の押しボタンを押し動かすことにより有効にスイッチを入れる(または、スイッチの構造によっては、切る)こともできる。警報システム156の一構成では、切迫した状態(例えば、切迫低血糖または高血糖)を知らせるアラームを一定時間後自動的に停止させ、現状(例えば、低血糖または高血糖)を知らせるアラームを手動で停止させる。
【0268】
レシーバ/表示装置46、48はまた、多数のオプションとしてアイテムを含んでいてもよい。その一つは、データ記憶装置158である。データ記憶装置158は、アナライザ152が分析物レベルの傾向を決定するよう構成されている場合使用されるようにデータを記憶するのが望ましい。データ記憶装置158は、大型表示装置48のような別のレシーバ/表示装置にダウンロードできるデータを記憶する上でも有用である。また、そのデータは、患者の自宅、医師の診療室などで、分析物レベルの傾向を評価するために、コンピュータまたは他のデータ記憶装置にダウンロードすることもできる。レシーバ/表示装置46、48には、接続口(図示なし)を設けることもでき、その接続口を通して、記憶されたデータを転送してもよいし、または、選択自由な送信機160を用いて、データを転送してもよい。データ記憶装置158は、始動させ、例えば、選択自由な入力装置162を介して、患者により指示されたデータを記憶することもできる。データ記憶装置158は、高血糖または低血糖エピソード、運動、食事等の特定の出来事が生じた際、データを記憶するように構成することもできる。記憶装置158は、特定の出来事のデータと共に出来事標識も記憶できる。出来事標識は、ディスプレイ/レシーバ装置46、48により自動的に、または、患者の入力により生成されてもよい。
【0269】
レシーバ/表示装置46、48はまた、選択自由な送信機160も備えていてもよく、1)較正情報、2)皮膚上センサ制御装置44の送信機98に送信周波数または周波数帯域を変更するように指示する信号、および/または、3)皮膚上センサ制御装置44の警報システム104を始動させるための信号を送信するために使用でき、これらはいずれも上述した。送信機160は、一般に、送信機98、160間のクロストークを避けるため、皮膚上センサ制御装置44の送信機98とは異なった周波数帯域で作動する。皮膚上センサ制御装置44の送信機100に関連して上述したように、擬似信号の受信やクロストークを減少させるため、複数の方法が使用できる。幾つかの実施形態において、送信機160は、信号をセンサ制御装置44に送信するためだけに使用され、1フィート未満、好ましくは6インチ未満の範囲内である。これにより、患者または別の人は、データの送信中、例えば、較正情報の送信中、センサ制御装置44の近くにレシーバ/表示装置46を保持することが必要となる。光送信または有線送信を含む無線周波数(rf)送信以外の方法を使用して送信することもできる。
【0270】
更に、本発明の幾つかの実施形態において、送信機160は、別のレシーバ/表示装置46、48または何らかの他のレシーバにデータを送信するように構成することもできる。例えば、小型レシーバ/表示装置46は、図1に示すように、大型レシーバ/表示装置48にデータを送信することもできる。別の例として、レシーバ/表示装置46、48は、患者の自宅または医師の診療室のコンピュータにデータを送信することもできる。更に、送信機160または別個の送信機は、アラームが始動した場合、および/または、患者が助けを必要としていることを示唆する、一定時間後、始動したアラームが停止していない場合、医師または他の人に注意を促す電話または他の通信装置、若しくは、別の装置に送信させてもよい。幾つかの実施形態において、レシーバ/表示装置は、送信または受信、若しくは、送受信可能な呼び出し機能を有することもでき、および/または、電話線に接続し、患者をモニターしている健康管理者などの別の人にメッセージを送信および/または受信する。
【0271】
レシーバ/表示装置46、48用の別の選択自由な部品は、キーパッドまたはキーボードといった入力装置162である。入力装置162は、数字または英数字入力ができるものであってもよい。入力装置162は、分析物モニタ装置40の機能を始動させ、および/または分析モニタ装置40への入力を可能にする押しボタン、キー等を備えていてもよい。そのような機能としては、データ転送の開始、送信機98の送信周波数または周波数帯域の手動変更、警報システム104、156の停止、較正データの入力、および/または、出来事のデータ例を記憶させるための出来事の表示が挙げられる。
【0272】
入力装置162の別の実施形態は、タッチスクリーンディスプレイである。タッチスクリーンディスプレイは、ディスプレイ154に組み込まれているか、または、別個のディスプレイであってもよい。タッチスクリーンディスプレイは、スクリーンの、所望の機能に対応する「ソフトボタン」により示されている位置に患者が触れると始動する。タッチスクリーンディスプレイは、周知となっている。
【0273】
更に、分析物モニタ装置40は、データの端末への不当な送信、または装置40に対する設定の不当な変更を防ぐため、パスワード保護機能を備えていてもよい。パスワード保護機能が始動する度に、ディスプレイ154は患者に対して、入力装置152を使用してパスワードを入力するように指示することもできる。
【0274】
入力装置162により始動させることのできる別の機能は、停止モードである。停止モードは、レシーバ/表示装置46、48が、データの一部または総べてをもはや表示していないことを示すこともできる。幾つかの実施形態において、停止モードの始動により、警報システム104、156を停止させることさえ可能である。患者に、この特殊な動作を確認するように指示するのが好ましい。停止モードの間、処理回路109および/またはアナライザ152は、データ処理を停止することもあり、また、データ処理は続行するが、それをディスプレイに報告しない場合もあり、また、オプションとして、後で検索できるようにそのデータを記憶することもできる。
【0275】
また、入力装置162が所定期間始動しない場合、休眠モードに入ることもできる。この期間は、患者または別の人による調節が可能である。この休眠モードでは、処理回路109および/またはアナライザ152は、一般に、引き続き測定値および処理データを得るが、ディスプレイは始動しない。休眠モードは、入力装置162を始動するといった行為により停止させることもできる。その後、現状の分析物読取値または他の所望の情報を表示させることができる。
【0276】
一実施形態において、レシーバ/表示装置46は、装置46が、所定の合計時間内に皮膚上センサ制御装置からの伝送を受けなかった場合、可聴または可視アラームを始動させる。そのアラームは、一般に、患者が応答するまで、および/または伝送を受けるまで継続する。これは、例えば、レシーバ/表示装置46が不注意で残されていた場合、患者に思い出させることができる。
【0277】
別の実施形態において、レシーバ/表示装置46、48は、較正装置(図示なし)と一体化されている。例として、レシーバ/表示装置46、48は、例えば、従来の血糖モニタを備えていてもよい。分析物濃度の電気化学検出を利用する別の有用な較正装置は、米国特許出願第08/795,767号明細書に記載されており、それらを参照し本明細書において援用する。他の装置を使用することもでき、例えば、電気化学および比色定量血糖アッセイ、間質液または皮膚液のアッセイ、および/または非観血的光学的アッセイを用いて作動する装置が挙げられる。埋め込まれたセンサーの較正が必要な場合、患者は、一体化された生体外モニタを使用して読取値を生成する。そして、その読取値を、例えば、レシーバ/表示装置46、48の送信機160により、自動的に送信し、センサ42を較正することもできる。
【0278】
薬物投与システムとの一体化
図25は、本発明に係る、センサを基礎とした(sensor based)薬物送達システム250のブロック図を示す。このシステムは、薬物を供給し、一以上のセンサ252からの信号に応答して分析物の高レベルまたは低レベルに対し中和作用する。また、前記システムは、薬物を確実に所望の治療領域内に滞留させるように薬物濃度をモニターする。薬物送達システムは、一以上(好ましくは二以上)の皮下に埋め込まれたセンサ252と、皮膚上センサ制御装置254と、レシーバ/表示装置256と、データ記憶および制御装置モジュール258と、薬物投与システム260とを備えている。場合によって、レシーバ/表示装置256と、データ記憶および制御装置モジュール258と、薬物投与システム260とは、単一装置内に一体化してもよい。センサを基礎とした薬物送達システム250は、一以上のセンサ252からのデータを使用して、データ記憶および制御装置モジュール252のコントロールアルゴリズム/機構に必要な入力情報を提供し、薬物の投与を調節する。一例として、グルコースセンサを使用して、インシュリンの投与を制御および調節することができるであろう。
【0279】
図25において、センサ252は、患者の体内の薬物または分析物のレベルと相関関係を有する信号を生成する。分析物のレベルは、薬物投与システムにより送達された薬物量によって決まる。レシーバ/表示装置256の、または、図25に示すような皮膚上センサ制御装置254のプロセッサ262は、分析物レベル、および、おそらく、分析物レベルの上昇または低下の速度またはその速度の加速率といったその他の情報を決定する。そして、この情報は、非一体型レシーバ/表示装置256、または、図25に示すような皮膚上センサ制御装置254の送信機264を使用して、データ記憶および制御装置モジュール252に送信される。
【0280】
薬物送達システム250が、二以上のセンサ252を備えている場合、データ記憶および制御装置モジュール258は、二以上のセンサ252からのデータを有効であるとして受け取る前に所定のパラメータの範囲内に適合することを確認することもできる。そして、このデータは、オプションとして先に得たデータを用いて、データ記憶および制御装置モジュール258で処理され、薬物投与プロトコルを決定することもできる。薬物投与プロトコルは、薬物投与システム260を用いて実行処理され、この薬物投与システム260は、内部または外部輸液ポンプ、シリンジインジェクタ、経皮吸収送達システム(例えば、皮膚に配置される薬物含有貼付剤)、または吸入装置であってもよい。また、薬物貯蔵および制御装置モジュール258は、患者または別の人がそのプロファイルにより、患者に薬物を提供できるように薬物投与プロトコルを提供することもできる。
【0281】
本発明の一実施形態においてデータ記憶および制御装置モジュール258は、訓練可能なものである。例えば、データ記憶および制御装置モジュール258は、所定の期間、例えば、数週間に渡ってグルコースの読取値を記録してもよい。低血糖または高血糖のエピソードが見つかると、そのような事態に至らせた関連経歴を分析し、今後のエピソードを予測するシステム能力を向上させ得る何らかのパターンを決定する。後のデータを周知のパターンと比較して、低血糖または高血糖を予測し、それに従って薬物を送達することも可能である。別の実施形態において、傾向の分析は、外部システム、または皮膚上センサ制御装置254の処理回路109またはレシーバ/表示装置256のアナライザ152によって行われ、その傾向は、データ記憶および制御装置258に取り入れられる。
【0282】
一実施形態において、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/またはアナライザ152は、今後のエピソードに対する患者の反応を予測するため多数のエピソードからの患者固有データを利用する。予測に使用される多数のエピソードは、一般に、同様のまたは類似の外部若しくは内部刺激に対する反応である。刺激の例としては、低血糖または高血糖の期間(またはグルコース以外の分析物に関する相応の状態)、状態の処置、薬物送達(例えば、グルコースに対するインシュリン)、摂食、運動、絶食、体温変化、体温上昇または低下(例えば、熱)、および、病気、ウイルス、感染などが挙げられる。多数のエピソードを分析することにより、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/またはアナライザ152は、今後の粗削りなエピソードを予測し、例えば、薬物投与プロトコルを提供するか、或いは、この分析に基づいて薬物を投与することができる。入力装置(図示なし)は、患者または別の人が使用して、例えば、データ記憶および制御装置モジュール258、処理回路109、および/またはアナライザ152が、今後の分析における使用を目的として、特定のエピソードから生じるとしてデータに標識することができるように、いつ特定のエピソードが発生するかを示すこともできる。
【0283】
更に、薬物送達システム250は、進行中薬物感受性フィードバックを提供できるものであってもよい。例えば、薬物投与システム260による薬物投与中に得たセンサ252からのデータは、薬物に対する個々の患者の反応についてのデータを提供することもでき、そのデータは、現行の薬物投与プロトコルをそれに従って即座に修正するのに使用されるとともに、今後の修正にも使用される。各患者に対して取り出せる所望のデータの例としては、薬物投与に対する反応に関し一定である患者特有の時間(例えば、周知のインシュリンボーラスを投与した場合、グルコース濃度がどれだけ迅速に低下するか)が挙げられる。別の例としては、様々な量の薬物投与に対する患者の反応(例えば、患者の薬物感受性曲線)がある。同様の情報を薬物貯蔵および制御装置モジュールにより記憶し、その後、患者の薬物反応の傾向を判断するために使用することもでき、これは、後続の薬物投与プロトコルを引き出す上で使用することも可能で、それによって、患者の需要に対する薬物投与プロセスを個人化できる。
【0284】
本発明は、上述の具体例に限定されるものとみなされるべきではなく、むしろ、添付のクレームに適切に記載された発明の全態様をカバーするものと理解されるべきである。様々な改良体、同等の方法、また、本発明を適用できる多くの構造は、当明細書を見れば、本発明に関連する技術分野の当業者にとっては既に明白であろう。クレームはそのような改良体および装置をカバーすることを意図したものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に電気化学センサを挿入するための挿入キットであって、
その一部が、前記電気化学センサを挿入する間前記センサを支持するのに適合した鋭く堅い平面構造、または鋭く硬いUまたはV字型構造を有するインサータと、
前記電気化学センサおよび前記インサータを受入れるように構成された開口部と、前記インサータおよび電気化学センサを患者の体内に推進する推進機構と、前記センサを前記患者の体内に残したまま前記インサータを前記患者の体内から除去するための引き戻し機構とを有する挿入銃とを備えた挿入キット。
【請求項2】
前記挿入銃が更に、前記患者への挿入に先立って、前記インサータおよび電気化学センサを挿入準備ポジション(cocked position)に保持する挿入準備機構(cocking mechanism)と、前記インサータおよび電気化学センサを前記挿入準備ポジションから解放し、前記推進機構に、前記インサータおよび電気化学センサを前記患者の体内に推進させる解放機構とを備えている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項3】
更に、前記インサータおよび挿入銃を使用して患者に挿入する電気化学センサを備えている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項4】
前記電気化学センサが、前記センサが患者の体内に容易に停留するように掛かり部を有する請求項3に記載の挿入キット。
【請求項5】
前記電気化学センサが柔軟性を有する請求項3に記載の挿入キット。
【請求項6】
前記挿入銃およびインサータが、前記電気化学センサを患者の体内の約2〜12mmの深さに挿入するよう構成されている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項7】
前記挿入銃およびインサータが、患者の体表面に対して約15°〜60°の角度で前記電気化学センサを患者の体内に挿入するよう構成されている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項8】
前記インサータの断面幅が、1mm以下である請求項1に記載の挿入キット。
【請求項9】
前記インサータの断面高さが、1mm以下である請求項1に記載の挿入キット。
【請求項10】
前記挿入銃が、センサ制御装置の取付け台と組み合わされるように構成されている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項1】
患者に電気化学センサを挿入するための挿入キットであって、
その一部が、前記電気化学センサを挿入する間前記センサを支持するのに適合した鋭く堅い平面構造、または鋭く硬いUまたはV字型構造を有するインサータと、
前記電気化学センサおよび前記インサータを受入れるように構成された開口部と、前記インサータおよび電気化学センサを患者の体内に推進する推進機構と、前記センサを前記患者の体内に残したまま前記インサータを前記患者の体内から除去するための引き戻し機構とを有する挿入銃とを備えた挿入キット。
【請求項2】
前記挿入銃が更に、前記患者への挿入に先立って、前記インサータおよび電気化学センサを挿入準備ポジション(cocked position)に保持する挿入準備機構(cocking mechanism)と、前記インサータおよび電気化学センサを前記挿入準備ポジションから解放し、前記推進機構に、前記インサータおよび電気化学センサを前記患者の体内に推進させる解放機構とを備えている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項3】
更に、前記インサータおよび挿入銃を使用して患者に挿入する電気化学センサを備えている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項4】
前記電気化学センサが、前記センサが患者の体内に容易に停留するように掛かり部を有する請求項3に記載の挿入キット。
【請求項5】
前記電気化学センサが柔軟性を有する請求項3に記載の挿入キット。
【請求項6】
前記挿入銃およびインサータが、前記電気化学センサを患者の体内の約2〜12mmの深さに挿入するよう構成されている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項7】
前記挿入銃およびインサータが、患者の体表面に対して約15°〜60°の角度で前記電気化学センサを患者の体内に挿入するよう構成されている請求項1に記載の挿入キット。
【請求項8】
前記インサータの断面幅が、1mm以下である請求項1に記載の挿入キット。
【請求項9】
前記インサータの断面高さが、1mm以下である請求項1に記載の挿入キット。
【請求項10】
前記挿入銃が、センサ制御装置の取付け台と組み合わされるように構成されている請求項1に記載の挿入キット。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図19E】
【図19F】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図19E】
【図19F】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【公開番号】特開2010−227601(P2010−227601A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136362(P2010−136362)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【分割の表示】特願2000−546653(P2000−546653)の分割
【原出願日】平成11年1月21日(1999.1.21)
【出願人】(500211047)アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【分割の表示】特願2000−546653(P2000−546653)の分割
【原出願日】平成11年1月21日(1999.1.21)
【出願人】(500211047)アボット ダイアベティス ケア インコーポレイテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT DIABETES CARE INC.
【Fターム(参考)】
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