説明

分枝マルトデキストリンとその製造方法

【課題】低いカロリー値を有する、低う食原性の、且つ腸内ミクロフローラの質を改善する能力を有する分枝マルトデキストリンの提供。
【解決手段】22%から35%の間の、好ましくは27%と34%の間のグルコシド結合1→6、20%以下の還元糖の含量、5以下の多分子指数及び最大で4500g/モルに等しい数平均分子量Mnを有する分枝マルトデキストリン。前記分枝マルトデキストリンは、a)脱水した酸性化デンプンが、5%以下の水分を有するように調製され、b)脱水された酸性化デンプンが薄層連続型の反応器において、120℃と300℃の間の温度で、10秒を超えない時間処理され、c)得られた分枝した誘導デンプン生産物が採集され、精製され、d)その分枝した誘導デンプン生産物が、分枝マルトデキストリンを得るための方法で、その数平均分子量に基づいて分子分画される、各工程を含む製造方法で製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、グルコシド結合1→6のレベル、還元糖の含量、及び平均分子質量に関して特有の性質を有する、水素添加した又は水素添加しない分枝マルトデキストリン(branched maltodextrins)である。
【0002】
本発明はまた、上記分枝マルトデキストリンの製造方法にも関する。それはまた、ヒトによって又は動物によって消化されることを意図した製品において使用され得る組成物、そのような分枝マルトデキストリンと少なくとも1のポリオールとを含む非う食原性(acariogenic)組成物にも適用する。
【背景技術】
【0003】
本発明の認識において、分枝マルトデキストリンは、グルコシド結合1→6の含量が標準マルトデキストリンよりも大きいマルトデキストリンの意味である。
【0004】
標準マルトデキストリン(standard maltodextrins)は、グルコースと、4から5%のみのグルコシド結合1→6と共に1→4で本質的に結合したグルコースポリマーの精製された及び濃縮された、非常に変動した分子量の、水に完全に溶解し且つ低い還元力を持つ混合物として定義される。
【0005】
これらの標準マルトデキストリンは、穀物の又は塊茎デンプンの酸又は酵素的加水分解により通常製造される。標準マルトデキストリンの分類は、デキストロース当量又はD.E.の概念によって通常表される、その還元力の測定に主として基づいている。この特有な点に付いて、マルトデキストリンの定義は、D.E.値が20を越えてはならないことが、Monograph Specifications of the FoodChemical Codex statesにおいて報告された。
【0006】
そのようなD.E.の測定は、しかしながら、標準マルトデキストリンの分子分散を正確に表すためには不十分である。実際は、全般にランダムな、デンプンの酸加水分解、又は僅かにより定められたそれの酵素的加水分解は、D.E.測定単独では正確に定義できない、且つ重合度(D.P.)の低い度合の短分子と、同じく高いD.P.を持つ非常に長い分子を含むグルコースとグルコースポリマーの混合物を提供する。
【0007】
D.E.測定値は実際、標準マルトデキストリンを構成するグルコースとグルコースポリマーの混合物の平均D.P.の、かくしてそれの数平均分子量(Mn)の近接した概念を与えるのみである。標準マルトデキストリンの分子量の分散の特徴を完全にするため、別なパラメーター、重量平均分子量(Mp)のそれを測定することが重要である。
【0008】
実際には、MnとMp値は計算されないが、しかし異なる技術によって計測される。例えば、グルコースポリマーに適応した測定法が、周知の分子量のプルランによって校正されたクロマトグラフィーカラムでのゲル透過クロマトグラフィーをベースとして用いられる。
【0009】
Mp/Mn比は、多分子性(polymolecularity)の指数(I.P.)と称され、ポリマー混合物の分子量の分散を全般的に特徴付けすることが可能となる。一般的なルールとして、標準マルトデキストリンの分子量における分散は、5と10の間のI.P.値に至る。
【0010】
適用において、標準マルトデキストリンは、各種の工業分野、特に食品工業において用いられる。
【0011】
しかしながら、それの分子の低い割合、それの低いD.P.を持つ化合物の高い含量、及びそれに起因すると考えられる前生物的作用(prebiotic effect)が無いという事実は、標準マルトデキストリンが、低カロリー値を持つ、低う食原性(low cariogenicity)を持つポリグルコシル化化合物(polyglucosylated compounds)を有する必要がある、又は腸内フローラの質を改善するための適用において使用できないことを意味する。
【0012】
「低カロリー値を持つポリグルコシル化化合物」は、ヒト又は動物生体によってほんの僅かに同化されるのみであり、又は小腸の酵素的活性にほんのわずかに感受性があるのみで、標準ポリグルコシル化化合物のカロリー値を提供しない、ポリグルコシル化化合物を意味する。
【0013】
「低う食原性を持つポリグルコシル化化合物」は、ショ糖、グルコース、果糖又は標準ポリグルコシル化化合物のような通常の糖よりも、口腔の細菌によってより劣った酸性化を示す化合物を意味する。う食原性効果は実際、口腔において、糖を代謝して酸を生産する細菌の存在による。口のpH低下は、歯のエナメルのヒドロキシアパタイトの溶解と窩洞の生成に至る。
【0014】
「腸内フローラの質の改善」は、ビフィドジェニック(bifidogenic)、ブチロジェニック(butyrogenic)、ラクチックフローラ、のようなヒト又は動物の健康に有益である微生物の大腸における発育を促進することを意味する。このケースにおいて、健康に有益である微生物の集団のそのようなコレクションの発展を改善するため、前生物的作用と言われるであろう。
【非特許文献1】HAKOMORI, S., 1964, J. Biol. Chem., 55, 205
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のことから、低カロリー値を有する、低う食原性の、且つ腸内ミクロフローラの質を改善する能力を有する、同じくそれの利用特性についてマルトデキストリンの有する必要性は満足されていないことが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本出願人は、広範な研究によって、新規のタイプの生産物、即ち特異的な分枝マルトデキストリンを工夫し且つ開発することによって予め考慮された非妥協的な、これらの目的の全てを調和させる価値あるものを得た。
【0017】
本発明に従う分枝マルトデキストリンは、22%から35%の間の、好ましくは27%と34%の間のグルコシド結合1→6、20%以下の還元糖の含量、5以下の多分子指数及び最大で4500g/モルに等しい数平均分子量Mnをそれが示すという事実によって特徴付けられる。
【0018】
実際、Mnは、一般には250と4500g/モルの間とされる。
【0019】
22と35%の間のグルコシド結合1→6の含量は、消化不可能な特性を本発明に従う分枝マルトデキストリンに与え、その結果、小腸のレベルでそれの同化を防ぐことによって、それのカロリー値を減じることになる。D.P.1のような低D.P.を持つ分枝の低い含量はまた、生体により直接同化可能な遊離グルコースの量が大きく減じられ、標準マルトデキストリンよりも低いカロリー値を有する本発明に従う分枝マルトデキストリンを与える。小腸における消化不可能な及び大腸において発酵した分画によって表した部分の評価に基づいた分枝マルトデキストリンのカロリー値の測定は、2kcal/gとして見なされる。本発明に従う分枝マルトデキストリンは、2.5kcal/g以下と推定したカロリー値を有する。
【0020】
グルコシド結合1→6の高い含量は、口腔の微生物によるその同化を減じることによって、本発明に従う分枝マルトデキストリンのう食原性力を低下する結果となる。
【0021】
このグルコシド結合1→6の高いレベルはまた、完全に特異的な前生物的特性をこれら分枝マルトデキストリンに与える。実際、それは、ブチロジェニック、ラクチック又はプロピオニックバクテリアのような、ヒト及び動物の盲腸の及び結腸の細菌がこれら高度分枝した化合物を代謝することが明らかとなっている。
【0022】
一方、本発明に従う分枝マルトデキストリンは、望ましくない細菌の損失の原因となるビフィドジェン(bifidogen)タイプの細菌の発育を改善する。分枝マルトデキストリンの前生物的効果の測定は、本出願人によって完成された以下のプロトコルによって動物において実施される。
【0023】
一群の動物、好ましくは実験動物(RJ Aura stockのゴールデンハムスター)を、試験すべき製品の15重量/容量%を含む溶液で給餌する。別のコントロール群は、標準の食餌を与える。その試験は、その動物を屠殺し且つその盲腸が取り出される間での14日にわたり実施される。相当する腸内ミクロフローラの発育を表す、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び乳酸の含量を、遠心分離後の盲腸の内容物の調製物の上清について測定する。本発明に従う高分子量を持つ水素添加した分枝マルトデキストリンの同化の後に実施した分析は、例えば、腸内ミクロフローラの顕著な発育を示している。
【0024】
本発明に従う分枝マルトデキストリンは、更に、相対的に高い残りのグルコシド結合1→4と標準マルトデキストリンと同じ基本的機能を保持するためのその可能性を作る低い還元力を有する。グルコシド結合1→4のこの含量は、本発明に従う22と35%の間のグルコシド結合1→6の含量と組合せて記載されていないまでも、本出願人の知識では含量は42と50%の間とすることができる。優先的な手法において、本発明に従う分枝マルトデキストリンは1.2と2.3の間、特に1.3と2の間のグルコシド結合1→4/1→6の比率で存在する。1.3と1.8の間の比率で表される分枝マルトデキストリンが以下に例示される。それは、特に食品製造において、製薬又は獣医学的製品において、テクスチャー化剤(texturizing agents)、増粘剤及び/又はゲル化剤、充填剤又は被包化剤(encapsulating agents)の役割を演じることができる。
【0025】
最後に、5以下の値で維持されているI.P.を有する本発明に従う分枝マルトデキストリンは、そのMn値が4500g/モルに達し得ることから、分子量の低い分散を持った、同時に申し分のない分子量の範囲を提供するグルコースポリマーの集団として定義することが可能となる。I.P.のこの値は、特に1.5と3の間、例えば1.8と2.9の間とすることができる。
【0026】
本発明に従う生産物の第1のファミリーは、多くても5%に等しい還元糖の含量と、2000と4500g/モルの間のMnを好ましくは提供する、高い分子量を持った分枝マルトデキストリンにより構成される。
【0027】
このファミリーにおいて、2%以下である還元糖の含量及び3000と4500g/モルの間のMnを有する高分子量を持つ分枝マルトデキストリンにより構成された第1のサブファミリーを区別することができる。
【0028】
第2のサブファミリーは、2%と5%の間の還元糖含量と2000と3000g/モルの間のMnを有する高分子量を持つ分枝マルトデキストリンによって構成される。
【0029】
本発明に従う生産物の第2のファミリーは、5と20%の間の還元糖の含量と、2000g/モル以下のMnを好ましくは有する、低分子量を持つ分枝マルトデキストリンにより構成される。
【0030】
この第2のファミリーにおいて、5%以上と8%の間の還元糖の含量と、500と1500g/モルの間のMnを有する低分子量を持つ分枝マルトデキストリンによって構成された第1のサブファミリーを区別することができる。
【0031】
第2のサブファミリーは、8%以上と15%の間の還元糖の含量と、500g/モル以下のMnを有する低分子量を持った分枝マルトデキストリンによって構成される。
【0032】
本発明はまた、以前に提供されたそれらのような、水素添加された形態の分枝マルトデキストリンに関する。水素添加した分枝マルトデキストリンは、良好な熱安定性、及び還元糖の存在がそれ故に回避されることが要求される適用のために特に意図される。
【0033】
本発明はまた、本発明に従うマルトデキストリンと、少なくとも1のポリオールを含むことを特徴とする非う食原性組成物(acariogenic composition)にも関する。上記ポリオールは、好ましくは、トレイトール、エリトリトール、キシリトール、アラビトール、リビトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ラクチトール、水素添加イソマルチトール、グリセリン及び水素添加デンプン加水分解物を含む群から選択される。
【0034】
本発明の有効な実施態様に従い、その非う食原性組成物は、30から70重量%の間の分枝マルトデキストリンと、30と70重量%の間のマルチトールを含み、該組成物は、ガム及び他の製菓の製造において特有の適用を有する。
【0035】
それの物理-化学的及び生理学的特性から、本発明に従う分枝マルトデキストリンは、ヒト及び動物によって消化されることを意図した非う食原性組成物の製造において特別な幾つかの及び直接的な重要性を有する。
【0036】
表現「ヒト及び動物によって消化されることを意図した非う食原性組成物」は、糖菓(confectionery)、練り粉菓子(pastry products)、アイスクリーム、咀嚼されるペースト(pastes to be chewed)、チューイングガム、飲料、ジャム、スープ、牛乳ベースの調製品、ヨーグルト、ケーキ、調製済動物飼料のような各種の食料品、例えばエリキシル剤、咳止めシロップ、錠剤又はピル、口腔衛生溶液、練り歯磨き及びゲルのような、製薬の、獣医学の、ダイエット用の(dietetic)又は衛生製品のような、消化及び経口投与を意図した組成物又は製品を意味する。
【0037】
本発明に従う分枝マルトデキストリンを製造するため、以下の:
a)脱水した酸性化デンプンが、5%以下の、好ましくは4%以下の水分を有するように調製され、
b)脱水された酸性化デンプンが薄層連続型の反応器において、120℃と300℃の間の、好ましくは150と200℃の間の温度で処理され、
c)得られた分枝した誘導デンプン生産物が採集され、精製され且つ好ましくは濃縮され、
d)その分枝した誘導デンプン生産物が、分枝マルトデキストリンを得るための方法で、その数平均分子量に基づいて分子分画される、からなる、連続した工程が実施される。
【0038】
本発明に従う方法の第1の工程は、5%以下の、好ましくは4%以下の水分を有する脱水した酸性化デンプンを調製することを含む。
【0039】
デンプンの植物学上の起源は重要ではない。かくしてデンプンは、コムギ、トウモロコシ、ジャガイモ、コメ又はキャッサバから得ることができる。しかしながら、コムギデンプンを使用することが、以下の実施例におけるように好適である。
【0040】
デンプンを酸性化するために用いる酸は、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸とクエン酸から構成される群から選択され得る。しかしながら、クエン酸は、望ましくないエステル結合、これらは苦味の原因となる、を生成するという事実、及び硫酸の取り扱いは安全性の問題を引き起こすという面に鑑みて、本発明の状況の範囲内では塩酸、リン酸又は硝酸を使用することが好適である。本発明に従う製造方法において用いられる酸の量は、5から100meqH+/kg乾物デンプンの間、好ましくは10から50meqH+/kg乾物デンプンの間である。デンプン中の酸の分散は可能な限り均一とすることが重要である。
【0041】
異なる技術が、乾物又は液相においてバッチ式又は連続式の酸性化ようなデンプンの酸性化のために適用することができる。酸性化デンプンが連続型変性法(押出し)で用いることを意図するとしてもやはり、可能な限り連続的とされる製法を達成し、かくして非生産的な操作(装荷、荷下ろし、取り出し)を制限するために、酸性化の連続的手段を使用することが本発明の状況において好適である。
【0042】
一度酸性化を実行したそのデンプンは、分子間の連続する分枝化(branching)又は枝状化(ramifying)を助けるために5%以下の水分に乾燥させる。この乾燥工程の間、それは望ましくない還元糖の増加を避けるために加水分解反応をも制限するためにも有利である。
【0043】
本出願人は、この工程の間に、分の、更に秒のオーダーの貯留時間において、得ようとした水分に達することを可能にする連続型の乾燥技術を用いる必要性があり、かくしてデンプンの加水分解反応を制限することができるという事実を強調することができた。
【0044】
本発明に従う方法の第2の工程は、120と300℃の間の、好ましくは150と200℃の温度で薄層連続型の反応器で酸性化し且つ脱水したデンプンを処理することを含む。連続した薄層型の反応器によって、本出願人は、主としてグルコシド結合のレベルで、該生産物の構造の顕著な転換を得ると同時に、可能な限り少数の分解生成物を生じるために、非常に短時間の間に非常な高温を該生産物に加えることを可能にする何れかのタイプの反応器を意味する。ターボドライヤータイプの反応器(例えば、VOMM社によって市販される)又はブレンダータイプの(例えばSociety BUSSによって市販される)が、この定義に一致する。
【0045】
有利には、薄層連続型のこの反応器は、150℃と200℃の間の温度で維持された反応ゾーンにより構成される。加熱は、対流、誘導または輻射によって供給することができる。多分、この加熱ゾーンは搬送ゾーンに先行する又は後とすることができる。
【0046】
薄層連続型のこの反応器において、脱水した酸性化デンプンのための貯留時間は、温度と、酸性化工程の間に使用した酸の量の関数とされる。これらの条件において及び一般的に10秒程度を越えない、非常に短い時間においての高温での処理は、非常に部分的な加水分解と、とりわけ富化されたグリコシドの結合1→6を持つ分枝化反応を生じるデンプンから誘導した化合物を得ることに至る。
【0047】
本発明に従う方法の第3の工程は、かくして得られた分枝した誘導デンプン生産物を採集し、精製し且つ好ましくは濃縮することを含む。その分枝した誘導デンプン生産物は、それが反応器から離れるように採集され、そして通常の精製工程が、タンパク質、脂質の種類の、着色物質の不純物を除去するために実施される。この精製は、当業者が自ら周知であるいずれかの方法、例えば濾過によって、炭による処理によって、樹脂による漂白又は脱ミネラル化によって又は限外濾過によって実施される。その濾過は、真空下での回転濾過によって、真空下、及び加圧下での濾過によって加圧下での2度実行される。
【0048】
漂白は、非官能化ROHM and HAAS(XAD 16型)樹脂、及びカチオン性Purolite樹脂(C 145型)、及びアニオン性Purolite樹脂(A 860型)での通常の順に従って実践できる。濾過し且つ漂白した、分枝した誘導デンプン生産物は、それ自身周知のいずれかの技術、例えばエバポレーションによって濃縮できる。
【0049】
分枝した誘導デンプン生産物は、分子分画にかけ、必要に応じて触媒的な水素添加を受けさせる。これら2つの工程の順は逆にすることもできる。この分子分画の工程は、例えば、クロマトグラフィー分離、膜分離又は溶媒による選択沈澱を含むことができる。
【0050】
この分子分画は、減じられたカロリー値、低う食原性又は前生物的特性のために、与えられた適用に適応させることができる特性を示す分枝マルトデキストリンの分画を採集することを意図する。
【0051】
かくして、本出願人によりなされた研究では、ガムの製造のために、2000と4000g/モルの間のMnを示す分枝マルトデキストリンの分画が非常に良好な結果を与えることを示すことができている。
【0052】
一般的なルールとして、分子分画は、濾過され、そして脱ミネラル化され、20と70%の間、好ましくは25と60%の間の実際上の乾物含量に濃縮されている分枝した誘導デンプン生産物において実施される。
【0053】
クロマトグラフィールートによってこの分子分画を行う場合、クロマトグラフィーフラクションの工程は、好ましくはカルシウムとマグネシウムの、しかしより好ましくはナトリウム又はカリウムのような、アルカリ及びアルカリ土類イオンによって荷電した、マクロポーラス型の強カチオン性樹脂によって、断続的又は連続的(流動床を模した)のいずれか一方で、それ自身周知の手法において実施される。
【0054】
好ましい実施態様に従い、そのクロマトグラフィー分画は、本出願人が所有する米国特許第4,422,881号中に記載した方法と装置を用いて実施される。分枝マルトデキストリンは、250−300μmの粒子サイズを持ったカリウム型の形の、強カチオンマクロポーラス型のポリスチレン/ジビニルベンゼン樹脂(又はDVB)に分枝した誘導デンプン生産物を通過させることによって効果的に得られた。カリウム形の強カチオンマクロポーラスポリスチレン樹脂は、5%DVBを持つPurolite C 141又は8%DVBを持つPurolite C 145、又は12%DVBを持つPurolite C 150からなる群から優先的に選択される。
【0055】
一般に、そのクロマトグラフィーは、80℃のオーダーの温度に保たれ、且つほぼ50%乾物含量の値で得られた分枝した誘導デンプン生産物のシロップを供給する4から10のトレーによって実施される。
【0056】
クロマトグラフィー分画を実施するためのパラメーターの選択は、当業者に理解可能である。これらパラメーターの選択は、分枝マルトデキストリンを含む分画が、本発明に従うMnと結合1→6の含量を有するような手法においてなされる。
【0057】
もし純度が必要とされるならば、本発明に従う分枝マルトデキストリンは、該方法のこの工程で、グルコースを除去する補充の工程にかけることができる。このグルコースを除去するための補充の処理は、分枝マルトデキストリンの遊離残留グルコースの制限された含量が企図した適用のためにはまだ望ましくないと認められるならば、着手することができる。この補充の処理は、例えば、低カロリー値が分枝マルトデキストリンのために探し求められる場合において、低分子量を持つマルトデキストリンのケースに用いられるであろう。
【0058】
この補充の処理は、それ自身周知の何れかの手段によって、例えばアニオン交換器による脱酸性化の工程に続きグルコースの形質転換によって実施される。この補充の工程は、酵素的酸化によって、又は細菌による酸化によってグルコースの生物学的形質転換によって、又は樹脂又は膜におけるグルコースの分離によって実施される。それはまた、グルコースを、該方法の後工程における濃縮により除去されるアルコールに転換する酵母によって実行することもできる。
【0059】
本発明に従う方法の変形において、分枝マルトデキストリンは、触媒的水素添加の工程にかけられる。これら分枝マルトデキストリンの触媒的水素添加は、当該分野のルールに従い実行される。
【0060】
分枝マルトデキストリンのそれぞれの分析パラメーターが次いで測定される。とりわけ、分析される生成物の乾物重量に対するグルコース重量で表した、還元糖の含量がベルトランド法によって測定される。MnとMw値は、固定相の孔へのそれの浸透又は非浸透の理由で、それのサイズに基づいて溶解物の分枝の選択保持に基づく立体排除クロマトグラフィー(steric exclusion chromatography)によって測定される。グルコシド結合1→2、1→3、1→4及び1→6は、HAKOMORI, S., 1964, J. Biol. Chem., 55, 205中に記載された通常のメチル化技術を用いることによって測定される。
【0061】
本発明の他の特徴と効果は、以下の実施例を熟読することでより明確となるであろう。それらは、しかしながら、非制限的な説明のためにのみここに与えられる。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
コムギデンプンを、19.6meqH+/kg乾物に基づいて塩酸によって酸性化し、次いで4%の残留水分にまで乾燥した。この第1の材料は、次いで180℃の温度で保持されたPR46型のBUSS混練器に、5秒間の貯留時間で20kg/hの流速で導入した。その反応は、15℃で冷水を噴射することによって急速に停止した。
【0063】
濾過、吸着樹脂での及びカチオンとアニオン樹脂での漂白化による精製後、かくて得られた分枝した誘導デンプン生産物を、50%の乾物量に戻した。
【0064】
得られた生産物は、250−350μmの粒子サイズを持つ、75℃で維持した6200リットルトレー中に設けた、カリウム形のPurolite C 145強カチオンマクロポーラス樹脂でのクロマトグラフィーにかけた。
【0065】
分枝した誘導デンプン生産物のシロップと溶離水の供給速度は、第1及び第3のトレーのそれぞれのレベルで、60L/hと400L/hで固定した。第2のトレーと第4のトレーの流出速度は、高い分子量を持つ又は低い分子量を持つ分枝マルトデキストリンが得られるかどうかに影響を及ぼす。
【0066】
第2のトレーの流出速度は、化合物Aを得るために280L/hで、及び化合物Bを得るために320L/hで固定した。第4のトレーの流出速度は、化合物Cのために180L/hで固定した。
【0067】
クロマトグラフィー後の分析結果を以下の表1中に一緒に記載した。比較のために、従来技術の標準マルトデキストリンの一定の分析パラメーターもまた一緒に掲載し、そのMnは特定の分枝マルトデキストリンと同等である(化合物DとE)。
【表1】

【0068】
[実施例2]
本発明に従う分枝マルトデキストリンの製造の第1の工程は、実施例1で記載したそれと同じである。
【0069】
低分子量の分画の分離は、140L/hで固定した流出速度を持つ第4のトレーのレベルで実施した。370g/モルのMnを持つ分画が、30%で収量を固定したクロマトグラフィーのパラメーターの調節によって得られた。ここでの収量は、クロマトグラフィー系に導入した乾物に対して高分子量のこの分画から抽出した乾物の割合を意味する。
【0070】
還元糖の高い含量(20%以上の)は、以下の条件においてグルコースオキシダーゼによってグルコースを除去する工程を含む、グルコース除去工程の装置に影響を及ぼしている:35℃に加熱した、pH6.0、20%乾物に調整した溶液に、0.5%/乾物としたNovozym 771(NOVO グルコースオキシダーゼ)を溶液1リットル当たり1mlの割合で加えた;750回/分で撹拌し且つ1.2vvmのばっ気を維持し、最初に13%乾物グルコースを含む溶液が5時間後に10%乾物以下の滴定値となった;得られた本発明に従う分枝マルトデキストリンFの分析結果を表2中に示す。
【表2】

【0071】
[実施例3]
50重量%マルチトールと、実施例1の生産物Bに一致する本発明に従う分枝マルトデキストリン50重量%の混合物Mから、ガムを作製した。
【0072】
そのガムの成分を以下の表3中に示す。
【表3】

【0073】
得られたガムの特徴を以下の表4に示す。
【表4】

【0074】
本発明に従う混合物Mによって得られたガムは、それが以下の特徴を示すことから、十分に有効であった:
− これらのガムを高湿度雰囲気中に配した場合、非常に低い水分回復性(特に3.5より低い水活性(activity in water)を持つ)として示される、低い吸湿性、
− アラビアゴムの、より少ない量を使用することを可能にする、口中のテクスチャー、及びINSTRON硬さ(25と35の間)であることから、かなりの財政上の救済となる。
【0075】
本発明に従う分枝マルトデキストリンの及び組成物の使用が、製菓、特にガムの製造に特に適合することが上記試験から明らかになった。
【0076】
本出願人の知るところでは、水の回復とINSTRON硬さについての上述した2つの特徴を同時に有している分枝マルトデキストリンをベースとするガムは、記載されてはいない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
22%から35%の間のグルコシド結合1→6、20%以下の還元糖の含量、5以下の多分子指数及び最大で4500g/モルに等しい数平均分子量Mnを有する分枝マルトデキストリン。
【請求項2】
前記分枝マルトデキストリンが、グルコシド結合1→3をさらに含む、請求項1に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項3】
前記分枝マルトデキストリンがグルコシド結合1→4及び1→6を含み、グルコシド結合1→4/1→6の比率が1.2〜2.3である、請求項1又は2に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項4】
前記分枝マルトデキストリンがグルコシド結合1→4及び1→6を含み、グルコシド結合1→4/1→6の比率が1.3〜1.8である、請求項1又は2に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項5】
27%から34%のグリコシド結合1→6を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項6】
2%以下の還元糖含量及び3000と4500g/モルの間のMnを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項7】
2%と5%の間の還元糖含量及び2000と3000g/モルの間のMnを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項8】
5%以上で且つ最大でも8%に等しい還元糖の含量、及び500と1500g/モルの間のMnを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項9】
8%以上で且つ最大でも15%に等しい還元糖の含量、及び500g/モル以下のMnを有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項10】
水素添加された請求項1〜9のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリン。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリンと、少なくとも1のポリオールを含む非う食原性組成物。
【請求項12】
30と70重量%の間の請求項1〜10のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリンと、70と30重量%の間のマルチトールを含む請求項11に記載の非う食原性組成物。
【請求項13】
a)脱水した酸性化デンプンが、5%以下の水分を有するように調製され、
b)脱水された酸性化デンプンが薄層連続型の反応器において、120℃と300℃の間の温度で、10秒を超えない時間処理され、
c)得られた分枝した誘導デンプン生産物が採集され、精製され、
d)その分枝した誘導デンプン生産物が、分枝マルトデキストリンを得るための方法で、その数平均分子量に基づいて分子分画される、各工程を含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の分枝マルトデキストリンの製造方法。
【請求項14】
前記ステップb)において、前記温度が150℃と200℃の間である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステップa)において、脱水した酸性化デンプンが、4%以下の水分を有するように調製される、請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ステップc)において、得られた分枝した誘導デンプン生産物が濃縮される、請求項13〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
得られた分枝マルトデキストリンを触媒的水素添加することを含む請求項13〜16のいずれか一項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−69364(P2008−69364A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275771(P2007−275771)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【分割の表示】特願平11−345503の分割
【原出願日】平成11年12月3日(1999.12.3)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】