説明

分波器

【課題】アンテナ端子側から受信フィルタを経由して受信フィルタの出力側へ漏洩する送信信号を低減できる分波器を提供する。
【解決手段】分波器1は、送信フィルタ5と、入力側から出力側へ直列に接続された複数の直列共振子15Aを含む受信フィルタ9と、送信フィルタ5の出力側及び受信フィルタ9の入力側に接続されるアンテナ端子7と、一端が送信フィルタ5の入力側に接続され、他端が受信フィルタ9の複数の直列共振子15Aのうち任意の2つの間に接続され、一端から他端へ流れる信号の位相を調整する調整回路13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置等に利用される分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
送信経路と受信経路とのアイソレーションを向上させるように構成されたデュプレクサ(分波器)が知られている。例えば、特許文献1のデュプレクサは、基本的な構成として、送信端子に入力された送信信号をフィルタリングしてアンテナ端子へ出力する送信フィルタと、アンテナ端子から入力された受信信号をフィルタリングして受信端子へ出力する受信フィルタとを有している。
【0003】
そして、特許文献1のデュプレクサでは、受信フィルタは、入力された不平衡信号を平衡信号に変換して2つの受信端子へ出力する平衡−不平衡変換機能を有するものとされている。また、特許文献1の分波器は、送信端子から2つの受信端子へ電力を流すとともに、その電力の2つの受信端子間における位相差を無くすように、電力の位相を調整する静電結合部を有している。
【0004】
特許文献1では、上記のような構成によって、バランの同相除去の原理を利用し、その結果、送信端子から受信端子へ空間を介して流れる電流の影響を低減することができる(アイソレーションを向上できる)としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−160203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
分波器においては、送信端子からアンテナ端子へ向かって送信フィルタを通過した送信信号が、アンテナ端子側から受信フィルタをも通過して受信フィルタの出力側(受信端子)へ漏洩してしまうおそれがある。この場合、漏洩した送信信号が受信信号にノイズとして混入してしまい、通信性能の低下を招く。特許文献1の技術では、このような漏洩信号が受信信号に及ぼす影響を除去することはできない。
【0007】
本発明の目的は、アンテナ端子側から受信フィルタを経由して受信フィルタの出力側へ漏洩する送信信号を低減できる分波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る分波器は、送信フィルタと、共振子若しくはフィルタからなる複数のフィルタ要素を含み、当該複数のフィルタ要素の少なくとも一部が入力側から出力側へ直列に接続されている受信フィルタと、前記送信フィルタの出力側及び前記受信フィルタの入力側に接続されたアンテナ端子と、一端が前記送信フィルタの入力側に接続され、他端が直列に接続された前記複数のフィルタ要素のうち任意の2つの間に接続され、前記一端から前記他端へ流れる信号の位相を調整する調整回路と、を備える。
【0009】
好適には、前記受信フィルタは、前記複数のフィルタ素子として1以上の並列共振子および複数の直列共振子を含むラダー型受信フィルタであり、前記調整回路の前記他端は、前記複数の直列共振子のうち任意の2つの間に接続されている。
【0010】
好適には、前記受信フィルタは、前記複数のフィルタ素子として、多重モード型フィルタと、前記多重モード型フィルタの入力側若しくは出力側に直列に接続された補助共振子と、を含み、前記調整回路の前記他端は、前記多重モード型フィルタと前記補助共振子との間に接続されている。
【0011】
好適には、前記調整回路が前記他端へ流す信号と、前記任意の2つのフィルタ要素のうち前記アンテナ端子側のフィルタ要素が出力側へ流す信号との位相差は、160°超200°未満である。
【0012】
好適には、前記位相差は、170°以上190°以下である。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、受信フィルタを通過して受信フィルタの出力側へ漏洩する送信信号を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る分波器の利用例の要部を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る分波器の構成を示す回路図。
【図3】図2の分波器が含む共振子の例を示す模式的な平面図。
【図4】図3(a)〜図3(c)は図2の分波器の調整回路の例を示す回路図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る分波器の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る分波器1の利用例(通信モジュール101)の要部を示すブロック図である。通信モジュール101は、電波を利用した無線通信を行うものである。分波器1は、通信モジュール101において送信周波数の信号と受信周波数の信号とを分波するデュプレクサとして利用されている。
【0016】
通信モジュール101において、送信すべき情報を含む情報信号TISは、変調器103により変調され、ミキサ105により周波数が引き上げられ(搬送波周波数の高周波信号とされ)、バンドパスフィルタ107により送信用の通過帯域以外の不要成分が除去され、増幅器109により増幅されて分波器1に入力される。そして、分波器1は、入力された信号から送信用の通過帯域以外の不要成分を除去してアンテナ111に出力する。アンテナ111は、入力された電気信号を無線信号TRS(電波)に変換して送信する。
【0017】
また、通信モジュール101において、アンテナ111により受信された無線信号RRS(電波)は、アンテナ111により電気信号に変換されて分波器1に入力される。分波器1は、入力された信号から受信用の通過帯域以外の不要成分を除去して増幅器113に出力する。出力された信号は、増幅器113により増幅され、バンドパスフィルタ115により受信用の通過帯域以外の不要成分が除去され、ミキサ117により周波数が引き下げられ、復調器119により復調され、受信すべき情報を含む情報信号RISとして出力される。
【0018】
なお、情報信号TIS、RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号若しくはデジタル化された音声信号である。無線信号TRS、RRSの通過帯域は、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)等の各種の規格に従ったものでよい。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調若しくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、適宜なものとされてよく、例えば、ダイレクトコンバージョン方式若しくはダブルスーパーヘテロダイン方式である。また、図1は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
【0019】
図2は、分波器1の構成を示す回路図である。
【0020】
分波器1は、増幅器109からの送信用の信号が入力される送信端子3と、送信端子3に入力された信号から送信用の通過帯域以外の不要成分を除去して出力する送信フィルタ5と、送信フィルタ5からの信号が入力されるアンテナ端子7とを有している。アンテナ端子7は、アンテナ111に接続される。
【0021】
また、分波器1は、アンテナ111からアンテナ端子7を介して入力された信号から受信用の通過帯域以外の不要成分を除去して出力する受信フィルタ9と、受信フィルタ9からの信号が入力される受信端子11とを有している。受信端子11は、増幅器113に接続される。
【0022】
さらに、分波器1は、送信端子3に入力され、送信フィルタ5から出力された信号が、受信フィルタ9を通過して受信端子11へ漏洩してしまうことを抑制するために、調整回路13を有している。
【0023】
送信フィルタ5は、例えば、ラダー型フィルタにより構成されている。すなわち、送信フィルタ5は、その入力側と出力側との間において直列に接続された1以上(本実施形態では3)の直列共振子15Aと、その直列のラインと基準電位部との間に設けられた1以上(本実施形態では2)の並列共振子15Bとを有している(以下、単に「共振子15」といい、これらを区別しないことがある。)。なお、アンテナ端子7から受信フィルタ9に入力される受信信号の受信フィルタ9における信号強度が低下してしまわないように、並列共振子15Bは、少なくとも一つの直列共振子15Aよりも送信端子3側に接続されていることが好ましい。
【0024】
受信フィルタ9は、例えば、送信フィルタ5と同様に、ラダー型フィルタにより構成されている。ただし、本実施形態においては、受信フィルタ9は、直列共振子15Aを複数有していることが必要である。なお、送信フィルタ5からアンテナ端子7へ出力される送信信号のアンテナ端子7における信号強度が低下してしまわないように、並列共振子15Bは、少なくとも一つの直列共振子15Aよりも受信端子11側に接続されていることが好ましい。
【0025】
調整回路13は、一端(送信側ライン17)が送信フィルタ5の入力側(送信フィルタ5と送信端子3との間)に接続され、他端(受信側ライン19)が受信フィルタ9の任意の2つの直列共振子15Aの間(接続点Pt1)に接続されている。そして、調整回路13は、送信端子3に入力された信号の位相を調整して受信フィルタ9に流す。
【0026】
従って、送信端子3から出力され、調整回路13を経由した信号によって、送信端子3から出力され、送信フィルタ5及び受信フィルタ9を経由して受信端子11へ漏洩する信号の少なくとも一部を打ち消し、漏洩信号が受信信号に及ぼす影響を低減することができる。
【0027】
調整回路13は、最も好ましくは、アンテナ端子7側から受信フィルタ9の1以上の直列共振子15Aを経由して接続点Pt1に流れる漏洩信号(送信信号)に対して位相差αが180°の(逆位相の)信号を接続点Pt1へ流す。この場合、漏洩信号が概ね完全に除去されることが期待される。
【0028】
ただし、調整回路13の誤差等を考慮すると、位相差αは、170°以上190°以下であってもよい。
【0029】
また、漏洩信号を正弦波(sinθ)として考え、調整回路13からの信号を漏洩信号に対して位相差αの正弦波(sin(θ+α))として考えると、160°<α<200°において、両信号の和(sinθ+sin(θ+α))の振幅は0.35未満であり、漏洩信号は振幅が半分未満に低減されることになる。従って、調整回路は、接続点Pt1に流れる漏洩信号に対して位相が160°超200°未満で異なる信号を接続点Pt1へ流すことが好ましい。
【0030】
なお、送信端子3に入力された送信信号は、送信フィルタ5及び受信フィルタ9の一部を経由する過程において位相がずれていく。その結果、接続点Pt1へ流れる漏洩信号(送信信号)の位相は、送信端子3に入力された送信信号(入力された直後の送信信号)の位相とは異なるものとなる。
【0031】
従って、例えば、漏洩信号に、位相差が180°である調整回路13の出力をぶつけたい時、調整回路13の出力を、単に、送信フィルタ5の入力側に入力された信号から180°ずらした位相にするのでなく、送信フィルタ5を通ったことによって、ずれた位相分を考慮しなければならない。
【0032】
例えば、漏洩信号が、送信フィルタ5の入力側に入力された信号と比較して90°ずれた場合には、調整回路13の出力は、送信フィルタ5の入力側に入力された信号と比較して−90°ずれたものとしなければならない。これにより、漏洩信号と、調整回路13の出力とは、位相差が180°となる。
【0033】
図3は、共振子15の構成を示す模式的な平面図である。
【0034】
共振子15は、例えば、1ポートSAW共振子により構成されており、特に図示しないが、圧電基板21上に形成された1つのIDT(Interdigital Transducer)23と、IDT23に対してSAWの伝搬方向の両側に配置された反射器25とを有している。IDT23は、互いに交差する(噛み合う)ように配置された1対の櫛歯状電極27を有し、一方は入力側のラインに接続され、他方は出力側のラインに接続される。
【0035】
なお、図2では、送信フィルタ5の、送信端子3に最も近い直列共振子15Aにおいて23及び25の符号を付して示すように、IDT23及び反射器25を記号化して示している。
【0036】
図4(a)〜図4(c)は、調整回路13の例を示す回路図である。
【0037】
図4(a)の例では、調整回路13は、送信側ライン17及び受信側ライン19の間に直列に設けられたキャパシタ31(キャパシタンス:C)により構成されている。また、送信側ライン17及び受信側ライン19は、インダクタ(インダクタンス:L)若しくは抵抗(抵抗値:R)として機能し得る。
【0038】
従って、調整回路13を流れる電流の調整回路13に印加される電圧(角速度:ω)に対する位相差をβとすると、tanβ=(ωL−1/ωC)/Rである。そして、キャパシタンスCを適宜な値とすることにより、接続点Pt1に出力される信号の位相を調整することができる。
【0039】
ただし、一般には、インダクタンスL及び抵抗値Rは比較的小さく、図4(a)の例は、90°程度の位相差βでの位相の調整に利用されることになる。そして、キャパシタンスCを適宜な大きさとすることによりインピーダンスを調整し、ひいては、調整回路13から出力される信号の大きさを、漏洩信号を過不足なく打ち消すことができる大きさとすることができる。
【0040】
図4(b)の例では、調整回路13は、図4(a)の構成に加えて、キャパシタ31に対して直列に接続されたインダクタ33を含んで構成されている。従って、図4(a)の例と同様の原理により、キャパシタンスC及び/又はインダクタンスLを適宜な値とすることにより、位相を調整することができる。図4(b)の例は、キャパシタンスCだけでなく、インダクタンスLも設定できることから、図4(a)の例よりも幅広い範囲で位相を調整することができる。なお、図4(b)のインダクタ33は、配線パターンによる伝送線路にて形成されるものであってもよい。
【0041】
図4(c)の例では、調整回路13は、図4(b)の構成に加えて、送信側ライン17から受信側ライン19への直列なラインと基準電位部との間に設けられた抵抗35を含んで構成されている。図4(c)の例では、抵抗35の抵抗値Rを適宜に設定することにより、接続点Pt1に流れる信号の大きさを容易に調整することができる。
【0042】
なお、分波器1において、送信フィルタ5及び受信フィルタ9は、例えば、一の圧電基板21上に共に形成される。さらには、送信端子3、アンテナ端子7、受信端子11及びこれらを接続する配線も、送信フィルタ5及び受信フィルタ9と共に圧電基板21上に形成されてよい。
【0043】
調整回路13は、上記のような圧電基板21を含む部品とは別部品として構成され、適宜な回路基板を介して送信フィルタ5及び受信フィルタ9等と接続されてもよいし、送信フィルタ5及び受信フィルタ9等が形成される圧電基板21にキャパシタ31等を構成する電極が形成されることにより構成され、圧電基板21上の配線を介して送信フィルタ5及び受信フィルタ9等と接続されてもよい。
【0044】
以上のとおり、本実施形態では、分波器1は、送信フィルタ5と、入力側から出力側へ直列に接続された複数の直列共振子15Aを含む受信フィルタ9と、送信フィルタ5の出力側及び受信フィルタ9の入力側に接続されるアンテナ端子7と、一端が送信フィルタ5の入力側に接続され、他端が受信フィルタ9の複数の直列共振子15Aのうち任意の2つの間に接続され、一端から他端へ流れる信号の位相を調整する調整回路13とを有する。
【0045】
従って、上述のように、調整回路13を経由した信号によって受信フィルタ9を通過しようとする漏洩信号を打ち消し、漏洩信号の影響を低減することができる。
【0046】
ここで、調整回路13の信号が受信フィルタ9の出力側(受信端子11)に流される場合においては、漏洩信号は受信フィルタ9によって減衰されていることから、当該信号を除去するための調整回路13からの信号は微小な大きさにおいて調整されなければならず、その結果、調整が困難になる。例えば、図4(a)の例において、キャパシタンスCは、微小な大きさにおいて調整されなければならず、キャパシタ31の製造には高い精度が要求される。
【0047】
しかし、本実施形態においては、調整回路13の信号は、受信フィルタ9の出力側ではなく、受信フィルタ9の中途に流される。すなわち、漏洩信号に対して受信フィルタ9のフィルタ機能が完全に作用する前に、調整回路13からの信号によって漏洩信号を打ち消す。従って、調整回路13の製造条件を緩和しつつ、漏洩信号の影響を好適に低減することができる。
【0048】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る分波器201を示す回路図である。分波器201は、第1の実施形態の分波器1と同様に、通信モジュール等において利用されるものである。
【0049】
なお、分波器201において、第1の実施形態の分波器1と同様の構成については、第1の実施形態と同様の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
第2の実施形態は、受信フィルタ209の構成が第1の実施形態と相違し、また、受信端子11が2つ設けられている点が第1の実施形態と相違する。他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0051】
受信フィルタ209は、多重モード型フィルタ215と、その入力側に直列に接続された補助共振子15Cとを有している。なお、本実施形態において、多重モードは、2重モードを含むものとする。
【0052】
多重モード型フィルタ215は、例えば、縦結合型のものであり、SAWの伝搬方向において配列された複数(本実施形態では3つ)のIDT23と、その両側に配置された反射器25とを有している。
【0053】
また、多重モード型フィルタ215は、例えば、入力された不平衡信号を平衡信号に変換して出力する不平衡入力−平衡出力型のものである。なお、不平衡信号は、基準電位(0Vに限定されない)に対する電位を信号レベルとする信号であり、平衡信号は、2つの信号からなり、2つの信号の電位差を信号レベルとする信号である。具体的には、2つの受信端子11には、位相が180°相違し、振幅が互いに同一の信号が出力される。
【0054】
補助共振子15Cは、第1の実施形態の共振子15と同様に、例えば、1ポートSAW共振子により構成され、多重モード型フィルタ215の帯域外に減衰極を形成するように共振周波数及び反共振周波数が設定されている。
【0055】
調整回路13は、一端が送信フィルタ5の入力側に接続され、他端が補助共振子15Cと多重モード型フィルタ215との間に接続されている。そして、第1の実施形態と同様に、一端から他端へ流れる信号の位相を調整する。
【0056】
従って、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が奏される。すなわち、調整回路13を経由した信号によって受信フィルタ209を通過しようとする漏洩信号を打ち消し、漏洩信号の影響を低減することができ、また、そのための調整回路13の製造条件は緩和される。
【0057】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0058】
分波器は、無線通信に利用されるものに限定されず、例えば、電線若しくは光伝送路を介した有線通信に利用されるものであってもよい。また、分波器は、1つの送信フィルタ及び1つの受信フィルタに加えて、他の送信用若しくは受信用のフィルタを有するものであってもよい。
【0059】
送信フィルタ及び受信フィルタは、弾性波を利用するものに限定されず、例えば、キャパシタ、インダクタ及び抵抗から構成された直列共振回路若しくは二重共振回路であってもよい。
【0060】
また、弾性波を利用するフィルタは、SAWフィルタに限定されず、例えば、圧電薄膜共振器(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)若しくは弾性境界波フィルタ(ただし、広義のSAWフィルタに含まれる。)であってもよい。
【0061】
また、SAWフィルタは、共振子型のものに限定されず、例えば、トランスバーサル型のものであってもよい。共振子型のSAWフィルタは、ラダー型及び多重モード型のものに限定されず、例えば、ラチス型のものであってもよい。多重モード型のSAWフィルタは、縦結合型に限定されず、共振子がSAWの伝搬方向に直交する方向に配列された形の横結合型であってもよい。SAW共振子は、1ポート共振子に限定されず、例えば、2ポート共振子であってもよい。
【0062】
なお、ラダー型フィルタは、弾性波を利用する共振子以外の共振子によっても構成可能であり、また、多重モード型フィルタは、弾性境界波を利用するIDTによっても構成可能である。
【0063】
受信フィルタにおける、入力側から出力側へ直列に接続され、その間に調整回路が接続される2つのフィルタ要素は、共振子−共振子(第1の実施形態)、共振子−フィルタ(第2の実施形態)の組み合わせに限定されない。例えば、2つのフィルタ要素は、多重モード型フィルタ及びその出力側に設けられた共振子(フィルタ−共振子)であってもよいし、2段縦続接続(カスケード接続)された2つの多重モード型フィルタ(フィルタ−フィルタ)であってもよい。
【0064】
また、受信フィルタにおける、入力側から出力側へ直列に接続され、その間に調整回路が接続される2つのフィルタ要素を接続するラインは、1本に限定されず、2本以上であってもよい。例えば、上述した2段縦続接続された2つの多重モード型フィルタは、2本のラインによって互いに接続されていてよい。なお、2本のラインは、互いに同一の信号が流れるものであってもよいし、互いに異なる信号(平衡信号)が流れるものであってもよい。
【0065】
このような複数のラインがある場合において、調整回路は、複数のラインのうち、一部のみに接続されていてもよいし、全てに接続されていてもよい。例えば、調整回路の出力側は、2つに分岐して、互いに同一の信号が流れる2本のラインに接続されてもよい。また、例えば、調整回路の出力側は、2つに分岐して、その一方を流れる信号は他方を流れる信号に対して位相が180°変換され、平衡信号が流れる2本のラインに接続されてもよい。
【0066】
調整回路は、図4に例示した構成以外にも、適宜に構成されてよい。例えば、上述のように、信号は、SAW共振子を通過する際にも位相がずれていくから、SAW共振子を含んで調整回路を構成してもよい。
【0067】
また、調整回路は、位相を調整するだけでなく、送信フィルタの入力側から受信フィルタの中途へ流す信号をフィルタリングする機能を有していてもよい。例えば、調整回路は、送信フィルタの通過帯域外における信号を減衰させる機能を有していてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…分波器、5…送信フィルタ、7…アンテナ端子、9…受信フィルタ、15A…直列共振子(フィルタ要素)、13…調整回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信フィルタと、
共振子若しくはフィルタからなる複数のフィルタ要素を含み、当該複数のフィルタ要素の少なくとも一部が入力側から出力側へ直列に接続されている受信フィルタと、
前記送信フィルタの出力側及び前記受信フィルタの入力側に接続されたアンテナ端子と、
一端が前記送信フィルタの入力側に接続され、他端が直列に接続された前記複数のフィルタ要素のうち任意の2つの間に接続され、前記一端から前記他端へ流れる信号の位相を調整する調整回路と、
を備えた分波器。
【請求項2】
前記受信フィルタは、前記複数のフィルタ素子として1以上の並列共振子および複数の直列共振子を含むラダー型受信フィルタであり、
前記調整回路の前記他端は、前記複数の直列共振子のうち任意の2つの間に接続されている
請求項1に記載の分波器。
【請求項3】
前記受信フィルタは、前記複数のフィルタ素子として、
多重モード型フィルタと、
前記多重モード型フィルタの入力側若しくは出力側に直列に接続された補助共振子と、
を含み、
前記調整回路の前記他端は、前記多重モード型フィルタと前記補助共振子との間に接続されている
請求項1に記載の分波器。
【請求項4】
前記調整回路が前記他端へ流す信号と、前記任意の2つのフィルタ要素のうち前記アンテナ端子側のフィルタ要素が出力側へ流す信号との位相差は、160°超200°未満である
請求項1〜3のいずれか1項に記載の分波器。
【請求項5】
前記位相差は、170°以上190°以下である
請求項4に記載の分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−115626(P2013−115626A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260303(P2011−260303)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】