説明

分注装置

【課題】チップの検査とバーコードの読取りの2つの機能を備えた上で、装置の小型化と低コスト化を実現する。
【解決手段】液体を吸引・排出する機能を有する複数のピへット1が搭載され、X、Y及びZの各一方向に移動可能な分注ヘッド2を備えた分注装置において、前記分注ヘッド2に搭載されているピヘット1の先端に装着されたチップ6を検査する機能と、液体を貯留して所定位置に載置された容器7に記録されているバーコード10を読み取る機能とを併有する撮像手段9を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置、特に分注容器の判別と、分注液体の量等の検知を有効に行なうことができる分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分注装置は、図9にその概要を示すように複数のピぺット1を搭載している分注ヘッド2が、X駆動フレーム(X駆動手段)3によりX方向に、該X駆動フレーム3と一体でY駆動フレーム(Y駆動手段)4によりY方向に、それぞれ進退動可能であると共に、明示しないZ駆動手段によりZ方向に進退動可能になっている。従って、この分注ヘッド2はステージ5の上方の空間を縦横に移動可能になっている。
【0003】
又、上記分注ヘッド2に搭載されている各ピペット1は、それぞれ先端にチップ6が装着され、該チップ6内に検体等の液体を吸引したり、吸引した液体を排出したりする機能を有している。このチップ6は透明若しくは半透明の素材で形成され、液体を吸引したときには内部に蓄えられた液体の有無やその量を外側から確認することができるようになっている。
【0004】
一方、前記ステージ5の上には、複数の微小容器が形成されている、いわゆるマイクロプレートと呼ばれる吸引元容器7と排出先容器8とが、それぞれ所定位置に載置されている。そして、前記分注ヘッド2を、前記X駆動フレーム3及びY駆動フレーム4により吸引元容器7の上方に移動させて位置決めした後、該分注ヘッド2をZ駆動手段により下降させて微小容器内に貯留されている液体を吸引した後、上昇させて排出先容器8に移動させて排出することにより、液体を容器間で移動させるの分注動作が可能になっている。
【0005】
この分注動作は確実に実行する必要があることから、前記分注ヘッド2にはチップ6自体の有無や、チップ6内に吸引された液体の有無等を検査するための検査用のCCDカメラ(撮像手段)9が備えられている。
【0006】
又、この分注装置には、ステージ5上に供給された吸引元容器7が、目的の液体が貯留されているものであることを分注前に確認することが重要であることから、容器7の側面に予め記録されているバーコード10を読み取るためのバーコードリーダ11が配設され、これを駆動部12によりバーコード10に沿ってY方向に移動させることにより、該バーコード10の読み取り動作が可能になっている。
【0007】
なお、このような用途に使用されるバーコードリーダとしては、例えば特許文献1に開示されている。又、バーコードリーダには、図示したような1次元の動きだけでなく、分注ヘッド2と同様に3次元的な動きをするものもある。
【0008】
【特許文献1】特開2002−352187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の分注装置には、チップの検査と容器に記録されているバーコードの読取りという2つの機能を、それぞれ独立した駆動部を備えた撮像手段と、バーコードリーダとを用いて実現していることから、装置の大型化が避けられない上に、高コスト化を招くという問題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、装置の小型化と低コスト化を図った上で、チップの検査とバーコードの読取りの2つの機能を容易に実現することができる分注装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、液体を吸引・排出する機能を有する複数のピへットが搭載され、X、Y及びZの各一方向に移動可能な分注ヘッドを備えた分注装置において、前記分注ヘッドに搭載されているピヘットの先端に装着されたチップを検査する機能と、液体を貯留して所定位置に載置された容器に記録されているバーコードを読み取る機能とを併有する撮像手段を設置したことにより、前記課題を解決したものである。
【0012】
本発明においては、前記撮像手段が、前記分注ヘッドに設置されているようにしてもよく、又、前記撮像手段を、前記チップを撮像する位置と、前記容器に記載されているバーコードを撮像する位置とに、それぞれ移動させる駆動手段を備えているようにしてもよい。
【0013】
本発明においては、又、前記撮像手段の光軸を、前記容器に記録されているバーコードの方向に変更するミラーが、光軸上と非光軸上との間に移動可能に設置されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、チップを検査する機能を有する撮像手段に、バーコードの読み取り機能を併有させるようにしたことにより、装置の小型化と低コスト化を同時に図ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
なお、以下の説明では、前記図9に示した分注装置と実値的に同一の部分については同一の符号を使用して詳細な説明を省略する。
【0017】
本実施形態では、前記図9からバーコードリーダ11とその駆動部12とを除き、前記CCDカメラ(撮像手段)9に、チップ6を撮像してその有無と共に、吸引された液体量を確認する検査機能の外に、バーコードの読取り機能を追加したものである。
【0018】
具体的には、CCDカメラ9によりバーコードを撮像して入力される画像データを、図示しない制御装置に内臓されている画像処理部において、画像処理することによりバーコードを読み取る機能を、ソフトウェアにより実現している。
【0019】
本実施形態の作用を説明すると、まず分注工程に先立ち、吸引元容器7と吐出(排出)先容器8がステージ5上の所定位置にそれぞれ供給され、載置される。次いで、X駆動フレーム3及びY駆動フレーム4により、分注ヘッド2を容器7が設置された位置まで移動させる。
【0020】
その後、図2に要部を拡大して示すように、分注ヘッド2が有するピペット昇降機構(明示せず)によりピペット1を、CCDカメラ9の前方の光軸上より上昇させて視野範囲から除去すると共に、該分注ヘッド2自体をZ駆動手段により下降させて、該カメラ9の光軸上に容器7に記載されているバーコード10を一致させる。
【0021】
このように、前記分注ヘッド2に搭載されているCCDカメラ9の視野範囲に、吸引元容器7に記録されているバーコード10が入るようにした後、該バーコード10を撮像し、画像処理ソフトによりコードデータを読み取り、適切な容器が適切な位置に載置されているか否かを確認する。
【0022】
続いて、一旦分注ヘッド2、吸引元容器7と干渉しない高さにをZ駆動手段により上昇させた後、X駆動フレーム3及びY駆動フレーム4により該分注ヘッド2を吸引元容器7の上方所定位置まで移動させ、分注ヘッド2内の前記昇降機構によりピペット1を下降させ、チップ6内に吸引元容器7に貯留されている液体を吸引する。
【0023】
その後、図3に示すように昇降機構によりピペット1を撮像高さまで上昇させ、CCDカメラ9によりチップ6内の液体量を確認する。その結果、液体量に問題が無い場合は、更にX駆動フレーム3及びY駆動フレーム4により分注ヘッド2を吐出先容器8が設置されているステージ5上の位置まで移動し、分注ヘッド2内の昇降機構によりピペット1を下降させ、各チップ6内の液体を吐出し、1つの分注動作を終了する。
【0024】
以上詳述した本実施形態によれば、チップ6内の液体量を検知するためのCCDカメラ9により、更に検体や試薬等の液体の容器7に記録されているバーコード10を読み取ることができるようにしたことにより、専用のバーコードリーダやその駆動部が不要となったため、装置の小型化とコストダウンを実現することが可能となった。
【0025】
又、XYZの各方向に移動可能な分注ヘッド2に搭載されたCCDカメラ9に、バーコード読取り機能を追加したことにより、新たな駆動手段を追加することなく、バーコード読取り可能な容器の設置範囲を拡大することが可能となった。
【0026】
図4には、CCDカメラ9自体を昇降動させるZ駆動機構(明示せず)を、分注ヘッド2に追加した第2実施形態の分注装置の要部を示す。
【0027】
このように、CCDカメラ9自体を矢印方向に昇降動可能にする機構を分注ヘッド2に搭載することにより、図4のバーコード10の読取り状態から、図5に示されるチップ6の撮像状態への切り替えや、異なる高さに記録されたバーコードや、隣接する鉛直面(容器側面)に記載されているバーコード等を読取ることが可能となることから、バーコードが記録された容器等の設置範囲を拡大することが可能となる。
【0028】
図6には、第3実施形態の分注装置の要部を示す。この実施形態では、チップ6と、これを撮像する位置に固定されているCCDカメラ9との間の光軸上に、該カメラ9の光軸を吸引元容器7に記録されているバーコード10の方向に変更するミラー13を配置すると共に、該ミラー13を図7に示すように光軸上の位置より上の非光軸上に上昇可能にしている。
【0029】
本実施形態によれば、ミラー13をCCDカメラ9の撮像方向の光軸上と直交する方向の非光軸上の間で移動可能に設置したことにより、図7に示されるチップ6内の液体量の撮像と、図6に示される容器7のバーコード10の撮像との間の切り替えを、ミラー13の高さ位置を変更するだけで容易に行なうことができる。
【0030】
又、ミラー13の傾斜角度を調製することにより、容器7のバーコードの記録高さの違いにも対応可能である。更に、図8に示すように、複数の容器が近接して載置されている場合でも、容器7の側面(鉛直面)に記録されているバーコードを確実に読み取ることが可能となる。従って、読取り可能なバーコードの記録範囲を拡大することが可能となる。
【0031】
なお、前記実施形態では、CCDカメラ9自体が分注ヘッド2に搭載されている場合、又はCCDカメラ9の昇降機構が分注ヘッド2に搭載されている場合について説明したが、これに限定されず、カメラ9を分注ヘッド2とは独立に移動させることが可能な、専用の駆動手段を設置するようにもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る第1実施形態の分注装置の概要を示す概略斜視図
【図2】第1実施形態の要部を示す部分正面図
【図3】第1実施形態の要部を示す他の部分正面図
【図4】本発明に係る第2実施形態の要部を示す部分正面図
【図5】第2実施形態の要部を示す他の部分正面図
【図6】本発明に係る第3実施形態の分注装置要部を示す部分正面図
【図7】第3実施形態の分注装置の要部を示す他の部分正面図
【図8】第3実施形態の効果を示す部分正面図
【図9】従来の分注装置の概要を示す概略斜視図
【符号の説明】
【0033】
1…ピヘット
2…分注ヘッド
3…X駆動フレーム(X駆動手段)
4…Y駆動フレーム(Y駆動手段)
5…ステージ
6…チップ
7…吸引元容器
8…排出先容器
9…CCDカメラ(撮像手段)
10…バーコード
11…バーコードリーダ
12…バーコード駆動部
13…ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸引・排出する機能を有する複数のピへットが搭載され、X、Y及びZの各一方向に移動可能な分注ヘッドを備えた分注装置において、
前記分注ヘッドに搭載されているピヘットの先端に装着されたチップを検査する機能と、液体を貯留して所定位置に載置された容器に記録されているバーコードを読み取る機能とを併有する撮像手段を設置したことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記撮像手段が、前記分注ヘッドに設置されていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記撮像手段を、前記チップを撮像する位置と、前記容器に記録されているバーコードを撮像する位置とに、それぞれ移動させる駆動手段を備えていることを目的とする請求項1又は2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記撮像手段の光軸を、前記容器に記録されているバーコードの方向に変更するミラーが、光軸上と非光軸上との間に移動可能に設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−24537(P2007−24537A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203430(P2005−203430)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】