説明

分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルム

【課題】 良好な開封性を有するとともに、成形性、印刷性がよく、生産コストが低い分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムを提供する。
【解決手段】 表層、中間層及びシール層をこの順に積層した分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムであって、表層は、少なくとも1層の共重合ポリエステル系樹脂層より構成され、中間層は、ポリスチレン樹脂(PS)層と、少なくとも1層の接着層とエチレン含有率29〜47モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(EVOH)層とにより構成され、シール層は、少なくとも1層のポリエチレン系樹脂(PE)層より構成され、かつPS層が主構成層をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分配パッケージの蓋材に関する。本発明における「分配パッケージ」とは、例えば図2に示すように軟質フィルムを深絞りして、連通する左右2室に成形した底材1に、例えばジャム、ケチャップ、ソース、練り辛子等の様な粘ちょう、かつ流動性を有する食品等を収容し、本発明の蓋材2で上記底材1の開口を密閉して得られるパッケージ200である。本発明の蓋材2には、パッケージ200の外側へ突出する凸部3を設けるとともに、凸部3の長手方向と直交するように蓋材2の表面部にハーフカット4が入れられている。パッケージ200の蓋材2を底材1の方向に曲げると、凸部3に曲げ応力が集中して凸部3がハーフカット4に沿って裂け、蓋材2が開口する。さらに蓋材2の左右を密着するように押し込むことにより、蓋材2による押圧力で底材1内部に収容されている流動性を有する食品等が上記開口から吐出される。したがって、分配パッケージ200によれば、蓋材2を折り曲げてそのまま押しつぶすという簡単な操作により、パッケージ200内部の収容物を、手を汚さずに、かつ使用者が所望する方向へと押出すことができる。かかるパッケージの基本構成は特許文献1に開示されている。
【背景技術】
【0002】
従来、分配パッケージの蓋材には、プラスチックシートとして塩化ビニル(以下において「PVC」という。)を使用し、PVCシートと共押出複合フィルムとをドライラミネート法などの方法により貼り合せて形成した積層体が好適に使用されていた(特許文献2参照)。かかる積層体の層構成の一例を以下に示す。
(表印刷)PVCシート//共押出複合フィルム(EVOH層/Ny層/PE層/シール層)
【0003】
上記層構成において、「シール層」とは分配パッケージの蓋材において、底材との接合面を構成する層をいう。また「シート」は、共押出複合フィルムとは別途作成されたシート状部材を意味する。また、上記層構成における表記「//」は、その前後に記載されている層がドライラミネート法により接合されていることを、「/」はその前後に記載されている層が共押出法により接合されていることを示している。以下においても同様の表記を使用する。また、「EVOH」はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂を、「Ny」はポリアミド樹脂を意味する。
【0004】
このNy層は、共押出複合フィルムを20〜100μmに製膜する上で、メルトテンションを保つためには必要不可欠なものである。その一方で、Ny層は強靭であるため、層構成の一部に使用すると開封性に悪影響を与える可能性がある。しかし、上記層構成においては、PVCが容易に割れる特性(以下において「易割れ性」という。)に優れるため、パッケージの開封性には問題がなかった。
【0005】
一方、近年の環境問題から、塩化ビニルは廃棄焼却の際に有害とされている塩素系ガスが発生する可能性があるため、特に食品業界から塩化ビニルが敬遠され、代替の材料が求められている。この様な塩化ビニルを使用しない層構成として、例えば、
延伸基材(裏印刷)//PSシート//共押出複合フィルム(EVOH層/Ny層/接着層/シール層)
の構成があった(特許文献3参照)。ここに「PS」は、ポリスチレン樹脂を意味するものである。この構成は、延伸基材に印刷をして、PSシートとドライラミネートし、更に酸素バリア、シール性を持たせる目的で、共押出複合フィルムをドライラミネートしたものである。
【特許文献1】特開昭59−103866号公報
【特許文献2】特開昭64−37370号公報
【特許文献3】特開平3−256862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塩化ビニルを使用する従来品の
(表印刷)PVCシート//共押出複合フィルム(EVOH層/Ny層/PE/シール層)
の構成では、共押出複合フィルムにNy層が含まれていても、PVCシートが割れ易く、易割れ性を有することにより、共押出フィルム側にPVCシートからの応力が直に伝播し、切れ裂いてしまうことで開封性には問題がなかった。しかし、通常PVCシートに表印刷を施しているため、堅い食品(例えば乾麺)と本パッケージを同梱し運搬する場合、摩擦により、印刷が欠落する問題があった。さらに、印刷ピッチが安定せず、包装機でのトラブルが頻発していた。
【0007】
また、塩化ビニルを使用しない層構成品の場合、PVCシートに代えて比較的割れ性の良いPSシートを使用した層構成でも、複合フィルム内にNy層が存在すると、パッケージを指で曲げて開封する場合、PSシートは割れるが、接着されている複合フィルムは、伸ばされるだけで開封されない場合があった。そこで、印刷ピッチを安定させるためと、印刷原反保管ができる利便性や衛生性の観点から、延伸基材(例えば延伸Ny(ONy)、延伸PET(OPET))へ裏印刷を施し、PSシートへドライラミネートすることで、上記問題は解決されていたが、延伸基材の成形性があまり良好でなく、また、ラミネート回数が2回あるためコストが高いものになるという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、良好な開封性を有するとともに、成形性、印刷性がよく、生産コストが低い分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題点を解消できる分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムを見出したものであり、前記の目的は以下の手段によって達成される。なお、以下に説明する本発明において、「表層」とは、分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムにおいて、底材と接合されている側とは反対側の面を有する層をいう。「シール層」とは分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムにおいて、底材との接合面を構成する層をいう。また「中間層」とは、上記表層とシール層とに挟まれた層をいう。さらに「主構成層」とは、分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムにおいて層厚が最も大きい層をいう。
【0010】
本発明の第一の態様は、表層、中間層及びシール層をこの順に積層した分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムであって、表層は少なくとも1層の共重合ポリエステル系樹脂層より構成され、中間層はポリスチレン樹脂(以下において「PS」という。)層と、少なくとも1層の接着層とエチレン含有率29〜47モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(以下において「EVOH」という。)層とにより構成され、シール層は、少なくとも1層のポリエチレン系樹脂(以下において「PE」という。)層より構成され、かつPS層が主構成層をなしていることを特徴する複合フィルムである。
【0011】
本発明によれば、良好な開封性を有するとともに、成形性、印刷性がよく、生産コストが低い分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムを提供することができる。また、EVOHのエチレン含有率を上記範囲に保つことで、分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。また、一回の共押出工程で複合フィルムを一気に作製することができるので、低い生産コストで分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムを提供することが可能である。
【0012】
上記第一の態様において、中間層が表層側からPS層、接着層、EVOH層の順に積層されていることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、表層側からPS層にカットを入れても、その下側に配置されているEVOH層にはカットが及ばないので酸素バリア性を損なうことがない。
【0014】
また、上記態様において、EVOH層、PE層、PS層、及び共重合ポリエステル系樹脂層の厚み比が1〜7.5:1.5〜70:25〜350:2.5〜35であることが好ましい。
【0015】
このように構成した場合、分配パッケージの蓋材として良好な、酸素バリア性、強度、開封性、各層間の接着性を得ることができるとともに、加工を容易なものとすることができる。
【0016】
また、上記態様(変形例を含む。)において、各層がシール層側からPE層、接着第一層、EVOH層、接着第二層、PS層、接着第三層、共重合ポリエステル系樹脂層の順に積層されていることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、本発明では層厚が最も大きいPS層(主構成層)に接着層を介して隣接してEVOH層を配することになるので、両者の接着強度を所定の範囲に保って、良好な開封時の挙動を得ることが容易となる。また、表層側に共重合ポリエステル系樹脂層が配されているので、良好な印刷適性、印刷安定性を得ることができる。
【0018】
上記変形例において、EVOH層、接着第一層、接着第二層、及び接着第三層の厚み比が1〜7.5:2.5〜15:2.5〜15:2.5〜25であることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、PE層、EVOH層、PS層、及び共重合ポリエステル系樹脂層の各層間の接着強度を良好な範囲に保つことができる。
【0020】
上記諸態様(変形例を含む。)において、各層の合計厚みが75〜1035μmであることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、分配パッケージの蓋材としての良好な開封性や複合フィルムの成形性を損なうことなく、適度なフィルムのコシ、及び触感を持たせて、分配パッケージとしての商品価値を保持することができる。
【0022】
また、上記態様(各変形例を含む。)において、PE層が同種又は異種の成分からなるPE第一層及びPE第二層により構成されていることが好ましい。
【0023】
このようにPE層を二層構造にすることにより、良好なシール性を保持しつつ、PS層の割れとともに開封性に必要とされる膜切れ性を良好にすることができる。
【0024】
また、上記態様(各変形例を含む。)において、PEが低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0025】
かかる構成をとることによって、LDPEとHDPEとの配合比率を自由にコントロールして、パッケージを開封する際の蓋材に生じる割れ性や、EVOHとの接着強度を調節することができる。また、両者の配合によって、LDPEによりメルトテンションを高めて製膜性の安定化を図りつつ、HDPEによる開封時において容易に割れる特性(以下において「易割れ性」という。)に優れる蓋材を得ることが可能になる。
【0026】
また、上記態様(各変形例を含む。)において、PSが一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)ブタジエン系化合物の配合品の単体、又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0027】
このようにすれば、配合比率を適切にコントロールすることによって、分配パッケージを開封する際の蓋材に生じる割れ性を自由に設定することができる。
【0028】
また、上記態様(各変形例を含む。)において、PS層とEVOH層との接着強度が3.9〜15N/15mmであることが好ましい。
【0029】
PS層とEVOH層との接着強度を上記範囲にすることによって、パッケージ内に収容した流動性食品を分配する際に、PS層が割れて続いてEVOH層からシール層が、伸ばされ中央部から裂けて徐々に開封口が開いてゆくため、良好な開封の挙動となり、内容物である流動物質を目標に向けて狙い通りに吐出することを可能にする。
【0030】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様にかかるいずれかの共押出複合フィルムにより形成された分配パッケージの蓋材である。
【0031】
この態様にかかる蓋材によれば、上記第一の態様にかかる共押し出し複合フィルムの特性を備えた分配パッケージを提供することが可能である。
【0032】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様にかかる蓋材を使用した分配パッケージである。
【0033】
この態様にかかる分配パッケージによれば、上記第二の態様にかかる蓋材の特性を備えた分配パッケージを提供することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、良好な開封性を有するとともに、成形性、印刷性がよく、生産コストが低い分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムを提供することができる。本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は、本発明の一実施形態にかかる分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムの断面を示す図である。図示の分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルム100は、表層10、中間層11、及びシール層12をこの順に積層した共押出複合フィルムである。表層10は、共重合ポリエステル系樹脂層13により形成されている。中間層11には、表層側から、接着第三層14、ポリスチレン樹脂(PS)層15、接着第二層16、エチレン含有率29〜47モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(EVOH)層17、及び接着第一層18がこの順に積層されている。さらにシール層12として、表層側からポリエチレン系樹脂(PE)第二層19及びPE第一層20を備えている。かかる層構成の分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルム100は、PS層15が最も厚みのある層(主構成層)をなしていることを特徴するものである。本実施形態では、シール層12はPE第二層19とPE第一層20の二層構造となっている。
【0036】
(PE層)
本発明の分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムにおいては、少なくとも1層のPE層を有することが必須であるが、上記実施形態のごとく、PE第一層とPE第二層の複層構造とすることが好ましい。かかる二層構造のPE層19、20には、LDPE、HDPE、あるいはLDPEとHDPEをブレンドしたものを使用することが好ましい。ブレンド比率を決定するにあたって、層厚に配慮しつつ、以下の考慮を行うと良い。すなわち、シール層12の最外層を形成するPE第一層20は、シール性および適度な開封性を確保すべくLDPEの配合比を高くすることが好ましい。一方、中間層11側のPE第二層19は、主構成層たるPS層15の割れに伴って、層(膜)の「切れ」の伝播が良好に行われる必要があり、かかる要請からHDPEを配合することも好ましい。LDPEとHDPEの配合比は、質量比で40〜80:60〜20、好ましくは50〜80:50〜20、さらに好ましくは60〜80:40〜20とすることが望ましい。このような配置をとることによって、LDPEとHDPEとの配合比率を自由にコントロールして、パッケージを開封する際の蓋材に生じる割れ性や、EVOHとの接着強度を調節することができる。また、両者の配合によって、LDPEによりメルトテンションを高めて製膜性の安定化を図るとともに、HDPEによる開封時において容易に割れる特性(以下において「易割れ性」という。)に優れる蓋材を得ることが可能になる。
【0037】
LDPEは、密度が0.92以上のものが好ましく、HDPEは、密度0.95以上のものが好適に使用される。密度を高くすることにより、PE層により良好な裂け性を付与することができる。シール層12のPE第二層19の厚みは、2〜70μmであることが好ましい。さらに好ましくは3〜20μm、特に好ましくは、5〜10μmである。シール層12のPE第二層19の厚みを上記範囲に保つことによって、開封時のPE層の切れを良好に保つことが可能となる。また、シール層12を構成するPE第一層20の厚みは、2〜70μmであることが好ましい。さらに好ましくは3〜20μm、特に好ましくは、5〜10μmである。このように各PE層の厚みを規定することによって、開封時の切れを良好に保ちつつ、同時に良好なシール性も保持することが可能となる。
【0038】
(EVOH層)
本発明の一実施形態にかかる分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルム100におけるEVOH層17は、酸素バリア層としての機能を有している。本発明において、EVOHはエチレン含有量29〜47モル%であることが必須である。好ましくはEVOHのエチレン含有量は、32〜44モル%である。EVOHのケン化度は、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上のものが望ましい。EVOHのエチレン含有量、ケン化度を上記範囲に保つことにより、分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。また、EVOH層17の厚みは2〜15μmであることが好ましく、さらに好ましい範囲は3〜12μmであり、特に好ましくは5〜10μmである。EVOH層17の厚みが薄すぎると良好な酸素バリア性を保つことが困難になる。一方、EVOH層17の厚みが厚すぎるとフィルムの共押出性が悪化し、フィルム強度を保持する上で不利になる。
【0039】
(接着層)
本発明において、接着第一層〜第三層14、16、18を構成する樹脂はPE第二層19とEVOH層17、EVOH層17とPS層15、及びPS層15と共重合ポリエステル系樹脂層13とを必要な強度に接着することができれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。かかる不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等が挙げられる。またこれら不飽和カルボン酸のエステルや無水物も用いることができる。更に誘導体としてアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。例えば、三井化学(株)製、商品名アドマーが市販されており、これを使用するのが好ましい。この中でも共重合ポリエステル系樹脂層13、及びEVOH層17とPS層15との接着の場合、ポリオレフィンベースのものが有用である。また、EVOH層17とPE第二層19との接着の場合、直鎖状低密度ポリエチレン(以下において「LLDPE」という。)タイプのものが好適に使用される。
【0040】
PE第二層19とEVOH層17との間、及び、EVOH層17とPS層15との間に配置された接着第一層18、接着第二層16の厚みは、5〜30μmとすることが好ましい。さらに好ましくは8〜20μm、特に好ましくは10〜15μmである。接着層18、16の厚みを上記範囲にすることにより、EVOH層17とPS層15との間の接着強度を良好な範囲に保つことができる。また、PS層15と共重合ポリエステル系樹脂層13との間にある接着第三層14の厚みは、5〜50μmとすることが好ましく、さらに好ましくは8〜30μmであり、特に好ましくは10〜20μmである。接着第三層14の厚みが薄すぎると、PS層15と共重合ポリエステル系樹脂層13との間の接着強度を良好な範囲に保つことができない。逆に接着第三層14の厚みが厚すぎると、経済性の観点で不利となる。
【0041】
(PS層)
本発明の分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムを構成するPS層15を構成するポリスチレン樹脂として、一般用ポリスチレン(以下において「GPPS」という。)、耐衝撃性ポリスチレン(以下において「HIPS」という。)、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー(ブタジエン系化合物)の配合品の単体あるいは、それらのブレンドを挙げることができる。GPPSは、ゴム成分を含まず、きわめて割れやすい。一方、HIPSは、ゴム成分がブレンドされているので、割れにくい性質を持っている。したがって、GPPSとHIPSとのブレンド比を適切にコントロールすることによって、パッケージを開封する際の蓋材に生じる割れ性を調節することができる。
【0042】
GPPSは、曲げ弾性率が3,200〜3,300MPa、シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)が1.5〜3.0KJ/mでの範囲を有する、耐熱グレードが好適に使用される。一方、HIPSは、曲げ弾性率が2,100〜2,500MPa、シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)は、13〜16KJ/mで高衝撃グレードが好適に使用される。スチレン・ブタジエンブロックコポリマーは、旭化成(株)製のアサフレックスやタフプレン、アサプレンなどがある。これらのメルトフローレイトは、5g/10min[200℃ 5Kg]以上が好ましい。メルトフローレイトを上記範囲にすることにより、良好な共押出性を確保することが容易となる。ここに、「メルトフローレイト(メルトフローインデックス):溶液流れ速度」とは、溶液状態にあるポリマーの流動性を示す尺度の一つであり、「溶液指数」ともいう。押出式プラストメーターで、一定圧力、一定温度の下に、規定の寸法をもつノズル(オリフィス)から流出する量を測定し、g/10minの単位で表わす。一般に、メルトフローレイトの数値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好であるが、引張り強さ、耐ストレスクラッキング性が低下する。具体的測定法については、ISO 1133「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトフローレイトの測定」を参照されたい。
【0043】
PS層15の厚みは50〜700μmとすることが好ましく、さらに好ましくは200〜500μmであり、特に好ましくは250〜350μmである。PS層15の厚みが薄すぎると、分配パッケージの蓋材として使用した際に良好な開封性を得ることが困難となる。一方、PS層15の厚みが厚すぎると、容易に開封することが困難となり、分配パッケージとしての商品価値が低下する。
【0044】
(共重合ポリエステル系樹脂層)
本発明の一実施形態にかかる分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルム100において、共重合ポリエステル系樹脂層13は最外層側に配置されている。かかる構成をとることによって、共重合ポリエステル系樹脂の良好な印刷適性、印刷安定性を活用することが可能となる。なお、本発明の一実施形態において、共重合ポリエステル系樹脂層13は1層として記載されているが、同種又は異種の成分からなる2以上の層で形成することもできる。
【0045】
共重合ポリエステル系樹脂層13で用いられる共重合ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分100モル%中に1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が5モル%以上含まれるポリエステル樹脂であり、非晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。共重合ポリエステル樹脂は、非晶化度を高める観点から1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を10モル%以上、好ましくは12モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上含むことが望ましい。一方、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分が多すぎると、フィルムの衝撃強度が低下してしまうため、上限は50モル%とすることが好ましく、47モル%以下とすることがより好ましく、45モル%以下とすることがさらに好ましい。
【0046】
分配パッケージの耐熱性、印刷特性などを考慮すれば、共重合ポリエステル樹脂を構成するユニット100モル%中にエチレンテレフタレートユニットが50モル%以上、好ましくは55モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上となるように選択することが望ましい。したがって、多価カルボン酸成分100モル%中にテレフタル酸成分(テレフタル酸またはそのエステルから形成される成分)を50モル%以上、多価アルコール成分100モル%中にエチレングリコール成分を50〜95モル%、好ましくは55〜90モル%、さらに好ましくは60〜88モル%含有させることが望ましい。
【0047】
上記多価アルコール成分を形成するための多価アルコール類としては、上述した1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールの他に、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどのアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノール化合物またはその誘導体のアルキレンオキサイド付加物なども併用できる。
【0048】
また、多価カルボン酸成分を形成するための多価カルボン酸類としては、上述のテレフタル酸およびそのエステルの他に、芳香族ジカルボン酸、それらのエステル形成誘導体、脂肪族ジカルボン酸などが利用可能である。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられる。またこれらの芳香族ジカルボン酸やテレフタル酸のエステル誘導体としてはジアルキルエステル、ジアリールエステルなどの誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸、コハク酸などや、通常ダイマー酸と称される脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。さらに、p−オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの多価カルボン酸を、必要に応じて併用してもよい。
【0049】
この他、多価アルコール類、多価カルボン酸類ではないが、ε−カプロラクトンに代表されるラクトン類も一部使用してもよい。ラクトン類は、開環して両端にエステル結合を有するユニットとなるものであり、1つのラクトン類由来のユニットが、カルボン酸成分であり、かつ、アルコール成分であると考えることができる。よって、ラクトン類を用いる場合、1,4−シクロヘキサンジメタノール成分量や、他の多価アルコール成分の量は、フィルムの全多価アルコール成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%として計算する。また、各多価カルボン酸成分の量を計算する際も、フィルムの全多価カルボン酸成分量に、ラクトン類由来のユニット量を加えた量を100モル%とする。例えば、ジオール成分が1,4−シクロヘキサンジメチルアルコール及びエチレングリコールからなり、ジカルボン酸酸成分がテレフタル酸からなるポリエチレンテレフタレート樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂(PETG)として好適に使用できる。
【0050】
共重合ポリエステル系樹脂層13の厚みは、5〜70μmとすることが好ましく、さらに好ましくは8〜50μmであり、特に好ましくは10〜40μmである。共重合ポリエステル系樹脂層13の厚みが薄すぎると、分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルム100の表面強度が低下して、共重合ポリエステル系樹脂層13とともに印刷層がフィルムから脱落してしまう。一方、共重合ポリエステル系樹脂層13の厚みが厚すぎる場合には、PS層15に入れるカットの調整が難しくなりがちとなる。
【0051】
(フィルム合計厚み)
かくして、表層10、中間層11、及びシール層12を構成する各層の合計厚みは、およそ75〜1035μmとなることが好ましく、さらに好ましくは240〜670μmであり、特に好ましくは300〜470μmである。フィルムの合計厚みが薄すぎると、フィルムの触感が弱くなり、分配パッケージとしての商品価値が低下する。一方、フィルムの合計厚みが厚すぎると、経済上不利となり、またフィルムの触感が硬くなって、この場合にも分配パッケージとしての商品価値が低下する。
【0052】
(開封性)
開封性について影響をおよぼす因子として、
(1)PS層15の割れ性
(2)PS層15とEVOH層17の層間接着強度
(3)PE第二層19、PE第一層20の裂け性、厚み
の3因子が挙げられる。PS層15は、厚み方向に対して平行に、割れる方向に一直線に切れ目(ハーフカット)を入れ、割れの伝播を良好にすることができる。
【0053】
(1)PS層15の割れ性はPSのブレンド比により変化する。GPPS比を大きくするほうが割れやすく、逆にHIPS比を大きくすると、割れづらくなる。このブレンド比により割れ性を調節できる。
【0054】
(2)PS層15とEVOH層17との層間接着強度は強いほど好適で、蓋材を折り曲げて割り開封させる場合、層間(接着層16)が剥離を起こすと、共押出複合フィルム100の主構成層であるPS層15以外の層が延伸されて、うまく切れずに、開封しないトラブルが発生する。つまり、主構成層たるPS層15は割れるが、一方それ以外の部分の共押出複合フィルムは、切れずに延伸されるだけで開封しない現象である。接着強度を3.9〜15N/15mm幅にコントロールすることが開封性に好適である。そこで、EVOH層17を主構成層たるPS層15と接着第二層16を介して配した場合、接着強度を3.9〜15N/15mm幅に保持することが可能で、この接着強度の場合、PS層15が割れて続いてその余の共押出複合フィルムが、延伸されながら、伸ばされ中央部から徐々に開封口が開いてゆく。このため、良好な開封の挙動となり、内容物である流動物質を目標に向けて狙い通りに吐出することを可能にする。しかして、PS層15とEVOH層17との層間接着強度は、3.9〜15N/15mm幅にコントロールすることが好適である。より好ましくは6〜12N/15mm幅である。層間接着強度は、15mm幅の共押出複合フィルムを常温で引張試験機により200mm/分の引張速度で剥離したときの最大荷重を測定することにより求めることができる。適正値より低いと剥離(デラミ)を起こし、PS層15は割れるが、EVOH層17からシール層12が裂けずに開封せず、内容物が吐出しない。また、適正値より高くなると、PS層15の割れ方向に追従した形で、開封してしまい、内容物が飛び出す際、開封口が定まらず、標的とは異なった方向へ飛んでしまう現象が起きてしまう。
【0055】
(3)PE第二層19、PE第一層20の裂け性については、LDPE、若しくは、HDPE、又は、LDPEとHDPEとをブレンドしたものなどで裂け性を調節できる。密度の高いPEの方が、より裂け性が良い。(2)に記載した内容物である流動物質を目標に向けて狙い通りに飛ばす目的から、伸びと裂け性とを上記ブレンドにより調節する必要がある。
【0056】
(印刷性)
印刷に関して、従来は、表印刷あるいは印刷基材へ印刷し、ドライラミネートすることが行われていた。ここで印刷基材とは、非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、延伸PS(OPS)などが挙げられる。これらのうちで、成形が可能でピッチ安定性があるものであれば特に限定されない。
【0057】
また、表印刷で発生していた、内容物との摩擦による印刷のカスレや印刷ピッチ安定性の問題は、印刷基材に裏印刷し、PS層側へドライラミネートすることで解決されたが、ラミネート回数が増え、コスト高になっていた。そこで、本発明において、印刷適性、印刷安定性の良い樹脂である共重合ポリエステル系樹脂を印刷面に配している。さらには、必要に応じて、印刷面の上からもう1層印刷クリア色ベタ塗りを行うことで、印刷膜の安定性を向上させ、印刷層滑落などが低減され、衛生性を保つことが可能となる。
【0058】
これらにより、本発明の一実施形態である、
PE第一層20/PE第二層19/接着第一層18/EVOH層17/接着第二層16/PS層15/接着第三層14/共重合ポリエステル系樹脂層13
からなる層構成を有する分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルム100によれば、共重合ポリエステル系樹脂層13の印刷適性と、必要に応じてクリア印刷を1色ベタ塗りすることによって、印刷層が安定化して衛生性の向上を図ることができる。また、GPPSとHIPSとを適切にブレンドして構成したPS層15の易割れ性と、EVOH層17からシール層12までの易裂け性、並びに開封口の照準性により、分配パッケージのスムーズな開封性が得られることになる。さらに、HDPEを配合したPE第二層19もEVOHとともに良好な引き裂け性を有し、かつLDPEを基本とするPE第一層20は良好なシール性を示すことができる。さらにまた、各層間に適切な材料、厚みで構成した接着層14、16、18を配することにより、各層の接着強度を適切に設定し、これによっても良好な開封性に寄与することが可能となる。
【0059】
(パッケージ)
本発明の分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムが使用される分野は主に食品の容器包装用蓋材である。底材に使用されるフィルムは、無延伸共押出フィルムが一般的で、構成としては、
Ny層/EVOH層/シール層
が挙げられる。この底材は一般的なものでは、約10mm程度の深さに成形し、その中に、マヨネーズやケチャップ、マスタード、ジャムなどを入れてシールすることで、分配容器ができる。また、蓋材の中央部には、パッケージの外部に向かって凸に成形されている部位があり、その箇所が開封口にあたる。蓋材を加熱・成形し、開封部にあたる容器外側へ向けて凸部を形成する。この凸部の形状は、容器蓋材を折り曲げた際、曲げ応力が開封部に集中し、開封部が切り裂け、内容物が飛び出ることを目的としている。他の凸部の形状として例えば、四角錐状、半円状(ドーム型)、立方体などが挙げられる。しかし応力を集中さえすることができれば、凸部の形状はそれに限定されない。成形には、凸形状をシャープに出す目的で、オスメス成形することが好適である。
【0060】
さらに、曲げ応力を集中させる為、以下の形態が有効である。
(1)成形された凸形状の中央部に、カット刃で蓋材の総厚みに対し、10〜50%程度の深さで切り目を蓋材が折れる方向と同方向に連続で入れる。
(2)成形凸部の頂点部のみに、切り目を2〜10mm程度に点線状に入れる。などがある。
【0061】
一方、底材には、無延伸共押出複合フィルムを使用することが好適である。構成として、
Ny層/EVOH層/PE層
が酸素バリア性、深絞り適性、プレヒーターの下加熱熱板(接触加熱)のトラレ性の面から有効である。内容物である粘ちょう体を充填する為、深絞り成形を施すが、工程として、フィルム加熱(熱板への接触加熱)の後に、圧空・真空成形の方式が一般的である。加熱温度は、85〜110℃が好適である。成形された底材へは、粘ちょう体が充填され、成形された蓋材と合わされ、ヒートシールされる。このシールは、蓋底材のシール面界面で剥がれることなく、完全シールされる。パッケージのサイズは、タテ20〜100mm×ヨコ20〜100mm×深さ3〜40mm程度である。開封方法は、パッケージの両端を片手で持ち、蓋材中央部より、底材が内側にくる様な方向でパッケージを潰すようにすると、蓋材の凸部が裂け、内容物が吐出する。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
<製膜>
実施例1〜2および比較例1〜2のフィルムを共押出法または共押出法とドライラミネート法の組み合わせで製膜を行い、評価をした。
【0063】
(実施例1)
全層共押出による下記層構成のフィルムを得て、実施例1とした。表層である共重合ポリエステル系樹脂層に印刷を施した。
(印刷)共重合ポリエステル系樹脂/接着層/HIPS(80質量%)+GPPS(20質量%)/接着層/EVOH/接着層/LDPE/LDPE
【0064】
(実施例2)
実施例1とはPS層およびPE第二層の配合比率が異なる下記実施例2のフィルムを得た。
(印刷)共重合ポリエステル系樹脂/接着層/HIPS(50質量%)+GPPS(50質量%)/接着層/EVOH/接着層/LDPE(50質量%)+HDPE(50質量%)/LDPE
【0065】
(比較例1)
印刷PVCシートに下記層構成を有する共押出複合シートをドライラミネートして、比較例1にかかるフィルムを得た。
(印刷)PVC//EVOH/Ny/接着層/LDPE/LDPE
【0066】
(比較例2)
16μm厚みの成形PETの一面側に印刷を施し、他面側を別途用意しておいたPSシートにドライラミネートした。さらにこのPSシートの他面側に下記層構成を有する共押出複合フィルムをドライラミネートして、比較例2にかかるフィルムを得た。
成形PET(印刷)//PSシート//EVOH/Ny/接着層/LDPE
【0067】
上記各実施例、比較例にかかるフィルムの層構成、及び各層の厚みを表1にまとめて示す。
【0068】
【表1】

【0069】
なお、上記各実施例、比較例の各層において使用した材料のメーカー及び製品名を表2にまとめて示す。
【0070】
【表2】

【0071】
<パッケージ製造条件>
【0072】
底材として下記層構成を有する共押出複合フィルムを下記成形条件のもと成形した。各層の層厚は、Ny:50μm、EVOH:10μm、LLDPE:90μmとした。
(層構成)
底材:Ny/EVOH/LLDPE(シール層)
(成形条件)
底材成形加熱温度:150℃、底材成形加熱時間: 3秒
蓋材成形加熱温度:160℃、蓋材成形加熱時間: 2秒
蓋・底材シール温度:160℃、蓋・底材シール時間:2秒
内容物:水15cc/パック
【0073】
<性能評価試験方法及び評価基準>
以下に記載する5種類の性能評価試験を行い、所定の評価基準に基づいて分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムの評価を行った。
【0074】
(1)プラスチックシートとの層間接着強度:
15mm幅のフィルムを常温で引張試験機により200mm/分の引張速度で剥離したときの最大荷重を測定した。
6〜15N/15mm幅 :優
3.9〜6N/15mm幅 :良
3.9N/15mm幅以下 :不良
【0075】
(2)共押出フィルム膜切れ性:
パッケージを開封させ、共押出複合フィルム部の切れ方を目視で観察した。
開封口の膜残り・糸引き全くなし。 :5
開封口の膜残り・糸引きほとんどなし。 :4
開封口の膜残り・糸引き僅かに認められる。:3
開封口の膜残り・糸引き認められる。 :2
開封口の膜残り・糸引き顕著にあり。 :1
【0076】
(3)プラスチックシートの割れ性:
パッケージを開封させ、主構成層の直線割れ性を評価した。
粘ることなく直線的にスムーズに割れる。 :5
直線的にスムーズに割れる。 :4
粘って割れづらいが直線的に割れる。 :3
直線的に割れない。 :2
粘って割れづらく割れても直線的でない。 :1
【0077】
(4)開封性(内容物の吐出形態):
合計50個のパッケージを開封させ、内容物が吐出する方向を観察した。
全量照準通りに吐出する。 :5
90%以上が照準通りに吐出する。 :4
50%以上が照準通りに吐出する。 :3
照準通りに吐出するものが半数以下である。:2
全てが狙いと異なる方向へ吐出する。 :1
【0078】
(5)印刷層のカスレ性:
乾麺上にパック品の印刷層面側(蓋材側)を接して置き、100mm幅で水平方向左右に50回振った時の印刷層のカスレ状態を観察した。
全くカスレなし。 :5
ごく僅かにカスレあり。 :4
カスレあるが目立たない。 :3
カスレあり。 :2
目立つカスレあり。 :1
【0079】
<評価結果>
上記評価試験結果を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例1は、主構成層としてのPS層を構成する材料として、HIPS(80質量%)と、GPPS(20質量%)とのブレンド品を使用し、シール層のPE第二層を構成する材料としてLDPE単品を使用した。これに対し、実施例2では、PS層を構成する材料として、HIPS(50質量%)と、GPPS(50質量%)とのブレンド品を使用し、シール層のPE第二層を構成する材料としてLDPE(50質量%)とHDPE(50質量%)のブレンド品を使用した。すなわち実施例2では実施例1に比較して、PS層における耐衝撃性PS(HIPS)の割合を減らすとともに、シール層におけるPE第二層の高密度PE(HDPE)の割合を増やしている。この結果、「層間膜切れ性」、及び「割れ性」に僅かな差が認められた。しかしこれらは、本発明の規定する範囲内のものであり、実用上問題なく使用可能なものである。
【0082】
一方、比較例1は、従来型の含塩素樹脂(PVC)を使用するものであるが、層間膜切れ性、開封性、及び印刷層のカスレ評価の点で大きく劣るものであった。PVC層と共押出複合フィルムとの間はドライラミネートによる接合が行われて入るものの、中間層にNyを使用し、印刷面に共重合ポリエステル系樹脂を使用していないことがこれらの理由になっているものと思われる。
【0083】
また、比較例2は、従来型の非塩素系樹脂(PET)を使用するものである。ドライラミネート層を2層有しており、生産性の点で劣るものである。また、層間膜切れ性、開封性の点でも大きく劣る結果を示した。
【0084】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムの層構成を示す断面図である。
【図2】分配パッケージの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
1 底材
2 蓋材
3 凸部
4 ハーフカット
10 表層
11 中間層
12 シール層
13 共重合ポリエステル系樹脂層
14 接着第三層
15 PS層
16 接着第二層
17 EVOH層
18 接着第一層
19 PE第二層
20 PE第一層
100 分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルム
200 分配パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、中間層及びシール層をこの順に積層した分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムであって、
前記表層は、少なくとも1層の共重合ポリエステル系樹脂層より構成され、
前記中間層は、ポリスチレン樹脂(PS)層と、少なくとも1層の接着層とエチレン含有率29〜47モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂(EVOH)層とにより構成され、
前記シール層は、少なくとも1層のポリエチレン系樹脂(PE)層より構成され、
かつ前記PS層が主構成層をなしていることを特徴する複合フィルム。
【請求項2】
前記中間層が、前記表層側からPS層、接着層、EVOH層の順に積層されている請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記EVOH層、PE層、PS層、及び共重合ポリエステル系樹脂層の厚み比が1〜7.5:1.5〜70:25〜350:2.5〜35である請求項1又は2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記各層が、シール層側からPE層、接着第一層、EVOH層、接着第二層、PS層、接着第三層、共重合ポリエステル系樹脂層の順に積層されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記EVOH層、接着第一層、接着第二層、及び接着第三層の厚み比が1〜7.5:2.5〜15:2.5〜15:2.5〜25である請求項4に記載の複合フィルム。
【請求項6】
各層の合計厚みが75〜1035μmである請求項1〜5のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記PE層が、同種又は異種の成分からなるPE第一層及びPE第二層より構成されている請求項1〜6のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記PEが、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、又はこれらの混合物である請求項1〜7のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記PSが、一般用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)ブタジエン系化合物の配合品の単体、又はこれらの混合物である請求項1〜8のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記PS層とEVOH層との接着強度が3.9〜15N/15mmである請求項1〜9のいずれかに記載の複合フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の分配パッケージの蓋材用共押出複合フィルムにより形成された分配パッケージの蓋材。
【請求項12】
請求項11に記載の蓋材を使用した分配パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−35449(P2006−35449A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214371(P2004−214371)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】