説明

分離マトリックスの製造方法

本発明は、不溶性分離マトリックスの製造方法に関するもので、多糖類ゲルの塩処理後に多糖類ポリマーを架橋することを含む。一実施形態では、この製法は、ゲル化性未変性多糖類の水溶液を調製し、この多糖類溶液の温度をゲル化点未満の温度まで下げ、得られた多糖類に1種以上の塩を加えて塩処理し、塩処理した多糖類を架橋することを含んでいる。多糖類は、例えば、粒子、メンブラン又はモノリスに製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子のような目標分子の分離及び精製に関するものであり、特にクロマトグラフィーマトリックス並びにその新規製造方法に関する。本発明は、かかるマトリックスの液体クロマトグラフィーにおける使用並びに該マトリックスを含むクロマトグラフィーカラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジー分野での近年の進歩に伴って、タンパク質のような生体物質及び生化学物質を回収、精製及び分離するための迅速で一段と精密な技術が必要とされている。クロマトグラフィーはこの分野で常用される精製技術である。クロマトグラフィーでは、2つの互いに非混和性の相を接触させる。具体的には、目標分子を移動相に導入して、移動相を固定相と接触させる。すると、目標分子は、移動相によって系内を運ばれる際に固定相と移動相の間で一連の相互作用を受ける。相互作用には、試料中の成分の物理的・化学的性質の差が利用される。液体クロマトグラフィーでは、液状試料を適宜適当な緩衝液と組合わせて移動相を構成し、これを、分離マトリックスとして知られる固定相と接触させる。通常、マトリックスは担体を含んでおり、担体にはリガンド(目標と相互作用し得る基)が結合している。
【0003】
分離マトリックスは、一般に、シリカのような無機材料又は合成若しくは天然ポリマーのような有機材料からなる担体をベースとする。スチレンとジビニルベンゼンからなるもののような合成ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)及び逆相クロマトグラフィー(RPC)のようにある程度の疎水性を示す担体に用いられることが多い。さらに、合成ポリマーは、剛性及び耐圧性に優れ、流動特性に優れた担体を容易に製造できるので、天然ポリマーよりも有利なことがある。
【0004】
天然ポリマーは通常はアガロースのような多糖類であり、何十年もの間分離マトリックスの担体として用いられてきた。水酸基が存在するため天然ポリマーの表面は通常は親水性であり、基本的にタンパク質との非特異的相互作用を生じない。天然ポリマーのもう一つの利点は、ヒト体内用の医薬又は診断用分子の精製において特に重要であるが、それらが無毒であることである。アガロースは高温で水に溶解させることができ、次いである温度(ゲル化点)に冷却すると多孔質ゲルを形成する。ゲルは加熱するとある温度(融点)で再び溶解するが、その温度は通常はゲル化温度よりもはるかに高い。ゲル化では、多糖類ポリマーのヘリックス−ヘリックス凝集が起こり、物理的架橋と呼ばれることもある。
【0005】
上述の通り、天然ポリマーは合成ポリマーよりも剛性及び耐圧性が低いため、かかる特性を向上させるための様々な方法が開発されている。例えば、多糖類の濃度を変化させることによって、担体の多孔度を高めれば、クロマトグラフィーの際の目標分子の物質移動を向上させるとともに、目標分子と相互作用する面積を増大させることができる。考慮すべきもう一つの基本パラメーターは、例えば粒子状分離マトリックスの充填ベッドにおける担体の流動特性である。ベッドに移動相を流す際、背圧は主に粒子間の隙間の流路によって制御される。低い流速では、粒子は非圧縮性とみなせるので、背圧は流速と共に直線的に増加し、その傾きは粒径に依存する。流速を高めると、静水圧下で粒子が変形し始め、隙間の流路径が減少して背圧が急激に増大する。マトリックスの剛性に応じて、ある流速でベッドが崩壊し、背圧が限りなく増加する。
【0006】
アガロースの剛性及び流動特性を向上させる最も一般的な方法は、アガロースを架橋することである。かかる架橋は利用できる水酸基間で起こり、エピクロロヒドリンなどを用いる公知の方法で得ることができる。
【0007】
米国特許第4973683号(Lindgren)は、多孔質多糖類ゲルの架橋に関するものであり、具体的には、多孔質多糖類ゲルの非特異的相互作用を最小限に抑制しながら剛性を高める方法に関する。この方法では、アガロースゲルと、ハロゲン基又はエポキシド基のような反応性基と二重結合とを含む「単官能性」と記載された試薬を用意する。上記試薬をその反応性基を介してゲルに結合し、次いでエポキシド又はハロヒドリンで二重結合を活性化してアガロースの水酸基と反応させ、架橋を形成する。
【0008】
米国特許第5135650号(Hjerten他)は、高圧縮性のアガロースビーズのようなクロマトグラフィー固定相粒子に関するものであり、この粒子はHPLCに十分な剛性を有し、溶質が入り込めない程度の非多孔質であると記載されている。具体的には、Hjertenのビーズは多孔質アガロースビーズを出発材料とし、これを有機溶媒と接触させて多孔度を崩壊させ、しかる後、崩壊した細孔内のビーズ表面を架橋して細孔を崩壊した状態に固定することによって製造される。ビーズは、別法として、細孔表面にグラフトする重合性材料で細孔を満たし、グラフト重合を行うことによって製造される。この米国特許に開示された発明の一つの利点として、同じ固定相が高圧でも有効で、しかも低圧でも使用できることが挙げられている。しかし、溶媒、特にこの米国特許で用いられているような溶媒の使用は、健康及び安全面の理由から避けるのが普通である。
【0009】
米国特許第6602990号(Berg)は、多孔質架橋多糖類ゲルの製造方法に関するもので、多糖類の溶液に二官能性架橋剤を添加して、その活性部位を介して多糖類の水酸基に結合させる。次いで溶液から多糖類ゲルを形成した後、架橋剤の不活性部位を活性化して、ゲルの架橋を行う。このように、架橋剤を多糖類ゲルに添加する前述の方法とは対照的に、架橋剤は多糖類溶液に導入される。二官能性架橋剤は、一つの活性部位(つまりハライド及びエポキシドのように多糖類の水酸基と反応し得る基)と一つの不活性部位(つまりアリル基のように、活性部位が反応する条件下では反応しない基)とを含む。このように、二官能性架橋剤は、米国特許第4973683号(Lindgren)で用いられる「単官能性試薬」に相当する。得られたゲルからなる粒子は、高い流速及び背圧に耐える能力が向上している。米国特許第6602990号の方法の短所は、架橋剤の活性化に臭素が必要とされることである。
【0010】
米国特許第5998606号(Grandics)は、マトリックスの架橋と官能化を同時に行うクロマトグラフィー媒体の合成方法に関する。具体的には、高分子炭水化物マトリックスの表面に付与した二重結合を金属触媒存在下で活性化して、マトリックスを架橋し、ハロヒドリン、カルボキシル基又はスルホネート基で官能化する。二重結合は、活性化試薬との接触によってマトリックス表面に形成され、活性化試薬はハロゲン原子又はエポキシドと二重結合とを含む。このように、米国特許第5998606号の活性化試薬は、米国特許第4973683号の単官能性試薬及び米国特許第6602990号の二官能性架橋剤に相当する。
【0011】
Qi et al, “Preparation of Two Types of Immobilized Metal−Chelated Complex Affinity Membrane Chromatography Media”, Journal of Functional Polymers, Vol. 13, March 2000には、セルロース濾紙をマトリックスとして使用し、アルカリ処理、エポキシ化活性化、イミノ二酢酸二ナトリウムとのカップリング及びCu2+の固定化を行ってマクロ多孔質セルロースアフィニティメンブランを製造する方法が記載されている。さらに、アガロースを活性化後のメンブランに共有で架橋して、サンドイッチ状構造のメンブランを製造している。
【0012】
米国特許出願公開第2005/0220982号(Moya他)は、多糖類構造、例えばビーズ、ゲルフィルム、多孔質基材上の多孔質コーティングのような多糖類構造の製造方法に関するものであり、多糖類と1種以上のゲル化阻害剤と水のような溶媒とを含む室温ゲル化阻害溶液を用意し、すべての成分が溶解するまで混合物を加熱し、液体混合物を略室温に冷却して溶液に三次元構造を生じさせ、この構造をゲル化剤に添加して多糖類ゲルを形成する。ゲル化阻害剤は、例えば亜鉛、リチウム又はナトリウム塩を主成分とするものである。多糖類のコーティングは、多糖類層自体の内部で拡散流を生じるのに十分な厚さを有すると記載されている。この方法の利点として、通常は室温よりもかなり高い温度でゲル化する多糖類ポリマーを用いて、上記構造が室温でしかもポリマーのゲル化を制御しつつ形成されることが挙げられている。表面のコーティングは、細孔を多糖類で実質的に閉塞せずに達成できるとも記載されている。しかし、かかる室温での作業には、アガロース溶液の細心の制御が必要とされ、そのためプロセス全体が時間のかかるものとなってしまう。
【特許文献1】米国特許第4973683号明細書
【特許文献2】米国特許第5135650号明細書
【特許文献3】米国特許第6602990号明細書
【特許文献4】米国特許第5998606号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0220982号明細書
【非特許文献1】Qi et al, "Preparation of Two Types of Immobilized Metal-Chelated Complex Affinity Membrane Chromatography Media", Journal of Functional Polymers, Vol. 13, March 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、架橋多糖類分離マトリックの製造に利用できる技術は多数存在するが、用途毎にマトリックスに対する要件が異なるので、当技術分野では代替法に対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様では、大量処理に適した流動特性を示す多糖類分離マトリックスの製造方法を提供する。これは、特許請求の範囲に記載の通り分離マトリックスを製造することによって達成できる。
【0015】
本発明の別の特定の態様では、凝集を起こさずに架橋させることができる粒子状多糖類分離マトリックスの製造方法を提供する。これは、特許請求の範囲に記載の通り分離マトリックスを製造することによって達成でき、マトリックスは従来よりも高い温度で架橋させることができる。
【0016】
本発明の別の態様では、細孔構造を崩壊させずに剛性を向上させた多孔質分離マトリックスを製造する方法を提供する。これは、特許請求の範囲に記載の分離マトリックスの製造方法を用いて、マトリックスの孔径を目標分子が細孔内に入り込めるような孔径とすることによって達成できる。本発明のこの態様は、タンパク質のような比較的小型の目標分子を高流速で精製及び/又は単離する際に有利である。
【0017】
本発明のその他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0018】
定義
「粒子状」分離マトリックスという用語は、本明細書では、粒子、例えば実質的に球状の粒子又はそれほど規則的な形状をもたない粒子からなる分離マトリックスを意味する。
【0019】
本明細書では「ゲル化温度」ともいう「ゲル化点」という用語は、溶液のポリマーが物理的相互作用によって固形ゲルを形成する温度を意味する。
【0020】
「ゲル化性」という用語は、本明細書では、物理的ゲルを形成することができることをいう。
【0021】
「未変性」多糖類という用語は、未変性の多糖類、つまり、置換も誘導化もされていない多糖類をいう。
【0022】
分離「マトリックス」という用語は、本明細書では、多孔質又は非多孔質固体担体にリガンドを結合させた材料をいう。クロマトグラフィーの分野では、分離マトリックスは樹脂又は媒体とも呼ばれる。
【0023】
「リガンド」という用語は、本明細書では、通常の意味、つまり、目標化合物と相互作用することができる化学物質をいい、例えばイオン交換プロセスにおいて反対荷電の目標化合物と相互作用できる荷電基などをいう。
【0024】
avは、(V−V)/(V−V)として定義されるゲル濾過(サイズ排除クロマトグラフィー)パラメーターである。式中、Vは被験分子のピーク溶出体積であり、Vはカラムの排除体積であり、Vは全ベッド体積である。Kavは、特定の被験分子に接近し得る固定相体積分率の指標である。
【0025】
av DXは、デキストラン分子に対するKavである。実施例では、分子量110kD、500kD及び1000kDのデキストランを使用した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、多糖類ゲルの塩処理後に多糖類ポリマーを架橋することによって、粒子、モノリス又はメンブランのような不溶性分離マトリックスを製造する方法に関する。この方法は、多糖類の溶液から、好ましくは溶液の温度を下げることによって、多糖類ゲルを調製する前段階を含んでいてもよい。ゲルは、メンブラン担体のコーティングとしても、多糖類の粒子としても、或いは異なる材料からなる粒子上のコーティングとしても調製できる。ゲルは好適には多孔質である。
【0027】
したがって、本発明の第一の態様は、
(a)ゲル化した未変性多糖類からなる粒子の水性懸濁液を用意し、
(b)1種以上の塩を加えて上記懸濁粒子を塩処理し、
(c)塩処理した粒子を架橋する
ことを含んでなる分離マトリックスの製造方法に関する。
【0028】
多糖類は、ゲルを好ましくは温度変化によって形成し得る多糖類であれば任意のものを用いることができ、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、デノプン、キトサン、コンニャク、カードラン、カラギーナン、ペクチン、ジェラン及びアルギン酸塩からなる群から選択し得る。当業者には明らかであろうが、かかるゲル化多糖類粒子は好適には1種類の多糖類からなるが、本発明は、2種以上の多糖類の混合物を含む粒子も包含する。本発明の方法の好適な実施形態では、多糖類はアガロースである。特定の方法では、粒子のコア又は担体を、上述の多糖類でコーティングする。担体については、以下でメンブラン担体について説明する際に説明する。
【0029】
以上から明らかであろうが、本発明では、工程(a)で生成する多糖類粒子は、未変性多糖類(つまり、ポリマーの誘導体化や架橋のような変性も置換もされていない多糖類)からなる。そこで、本発明では、未変性多糖類に塩を加える。
【0030】
好ましい実施形態では、多糖類粒子は、実質的に球状の粒子(ビーズ)である。クロマトグラフィーの分野では、粒径は一般に積算体積分布のメジアン粒径として与えられる。本発明の方法では、ビーズの平均粒径を10〜300μm、好ましくは30〜200μm、さらに好ましくは45〜165μm、例えば約45μmとすることができる。
【0031】
かかる多糖類ビーズは、逆懸濁ゲル化法(S.Hjerten: Biochim Biophys Acta 79(2),393−398(1964)のような常法で当業者が容易に製造し得る。例えば、アガロースの製造に際しては、水性溶媒(例えば水)その他の慣用溶媒に、アガロースをその融点を超える温度で溶解又は分散させることによってアガロースの液滴を得る。次に、溶解したアガロースをトルエン又はヘプタンのような慣用有機溶媒と撹拌下で乳化した後、温度をアガロースのゲル化点未満の温度(好適には室温)まで下げる。本発明の方法では、こうして製造したビーズを好適にはエタノール又は水で洗浄して痕跡量の溶媒を除去し、水又は適当な水性溶液に懸濁する。したがって、好適な実施形態では、粒子を洗浄してから架橋工程を実施する。
【0032】
当業者には明らかであろうが、多糖類粒子の水性懸濁液の製造方法には、乳化以外の方法もある。したがって、別の実施形態では、例えば米国特許第6248268号(FMC Corporation)に開示されているように、水性溶媒中の熱ゲル化性多糖類からなる組成物を周囲の空気中にスプレーして、霧化組成物を空気中でゲル化させることによって多糖類粒子を得る。なお、上記米国特許の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0033】
別の実施形態では、多糖類粒子は、例えば、単に多糖類の大きな塊を調製して適当な平均粒径に粉砕することによって得られるような不規則な形状をしている。さらに別の実施形態では、多糖類粒子は、楕円又は繊維状の粒子のように細長い。
【0034】
本発明の方法の工程(b)で添加される塩は、所定の温度及び塩濃度で所望の剛性が得られる塩であればどんなものでよいが、好ましくはホフマイスター系列の上位に位置する2種のイオンからなる。
【0035】
一実施形態では、工程(b)で添加される塩の陰イオンは硫酸塩又はリン酸塩、好ましくは硫酸塩である。別の実施形態では、塩の陽イオンはMg、Li、Na、K及びNHからなる群から選択される。好適な実施形態では、塩の陽イオンはMg及びNaからなる群から選択される。したがって、工程(b)で添加される塩は、例えば、MgSO又はNaSOである。好適な実施形態では、塩は、MgSOである。
【0036】
工程(b)で添加される塩は、水溶液又は固体として添加できる。一実施形態では、工程(b)での塩の添加量は、懸濁液の最終塩濃度が0.5〜1.3Mとなるのに十分な量である。特定の実施形態では、懸濁液の塩濃度を1.0M以下、例えば0.5〜1.0M、好ましくは0.5〜0.8又は0.8〜1.0Mとする。別の実施形態では、懸濁液の塩濃度を1.0M以上、例えば1.0〜1.3M、好ましくは1.0〜1.2M、例えば約1.1M又は1.2〜1.3Mとする。
【0037】
塩を加えた懸濁液は、好ましくは撹拌しながら、多糖類の特性を本発明者らが観察したような優れた流動特性及び優れた剛性に変化させるのに十分な時間高温に保持する。塩処理の時間は、当業者が容易に決定することができ、例えば、1時間以内、例えば20〜40分、好ましくは約30分とすることができる。塩処理の温度は、94〜98℃の範囲内の温度に保てばよく、温度はマトリックスに所望される特性に応じて調整できる。一実施形態では、温度を94〜96℃、例えば94〜95℃、又は95〜96℃、例えば約94℃、約95℃又は約96℃とする。別の実施形態では、温度を96〜98℃、例えば96〜97℃、又は97〜98℃、例えば約97℃又は約98℃とする。
【0038】
好適な実施形態では、本発明の方法は、好ましくは、NaSO又はMgSOのような硫酸塩を約96℃の温度で加える塩処理工程を含む。さらに好適な実施形態では、本発明の方法は、NaSO又はMgSOを懸濁液中の塩濃度が約1.0Mとなるまで約96〜97℃の温度で加える塩処理工程を含む。
【0039】
以上から明らかであろうが、多糖類粒子は塩を加えた後の工程で架橋する。好適な実施形態では、工程(c)の架橋工程は、架橋剤の添加を含む。架橋剤は、エピクロロヒドリン、ジビニルスルホン、ジエポキシド、ジイソシアネートのような、多糖類を重合させることが知られている適当なモノマー又は二官能性試薬とすることができる。多糖類の架橋は当技術分野で周知であり、例えば、上述の米国特許第4973683号及び米国特許第6602990号を参照されたい。本発明の方法の利点の一つは、慣用技術よりも高い温度での架橋によって剛性の高い多糖類粒子を製造できることであり、ひいては凝集物の生成を低減又は解消できる。特定の理論に束縛されるものではないが、この特徴は、架橋前の塩の添加と関連していると推量できる。
【0040】
一実施形態では、本発明の方法は、架橋多糖類マトリックスの水酸基にクロマトグラフィーリガンドを結合させる次工程も含む。クロマトグラフィーリガンドの不溶性マトリックスへの結合は、不溶性マトリックスの官能化又は誘導化としても知られており、荷電又は荷電性基を結合させてイオン交換用マトリックスを製造したり、生物的親和性を示す基を結合させてアフィニティマトリックスを製造したり、キレート基を結合させて固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)用マトリックスを製造したり、或いは疎水基を結合させて疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)用マトリックスを製造したりすることができる。また、マルチモーダルリガンドとして知られる基、すなわち、疎水基だけでなくイオン交換基も含む基のように2以上の基を含む基を、本発明にしたがって製造したマトリックスに結合させることもできる。特定の実施形態では、官能基は、第四アンモニウム(Q)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、ジエチルアミノプロピル、スルホプロピル(SP)及びカルボキシメチル(CM)基からなる群から選択されるイオン交換リガンドである。官能基を分離マトリックスのような不溶性担体に結合させる方法は当業者に周知であり、置換基のアリル化の前処理工程を含んでいてもよく、慣用の試薬及び条件を用いればよい。(例えば、Immobilized Affinity Ligand Techniques, Hermanson et al, Greg T. Hermanson, A. Krishna Mallia and Paul K. Smith, Academic Press, INC, 1992参照)。特定の実施形態では、官能化の前に、架橋分離マトリックスにエクステンダ(フレキシブルアーム、テンタクル又はフラフともいう)を設けておく。周知のエクステンダとしては、デキストランがある。例えば、米国特許第6537793号を参照されたい。この文献には、多糖類マトリックスへのエクステンダの添加についての詳細が記載されている。
【0041】
本発明は、本発明にしたがって処理した架橋分離マトリックスの滅菌も包含する。別の実施形態では、この方法は、容器に分離マトリックスを充填又は単に供給し、次いで容器をその内容物と共に滅菌することに関する。そこで、この方法の特定の実施形態は、架橋した分離マトリックスをクロマトグラフィーカラムに充填してから、滅菌することを含む。滅菌は、オートクレーブ滅菌のような熱及び/又は蒸気処理、放射線、マイクロ波、高圧、化学試薬その他の周知の滅菌法で実施し得る。
【0042】
本発明の別の態様は、上述の通り製造した架橋分離マトリックスである。好適な一実施形態では、本発明の多糖類分離マトリックスは実質的に球状の多孔質粒子からなる。一実施形態では、粒子は、分子量110kDaのデキストランに対して約0.4以上、好ましくは0.5超のKav値を示す。好適な実施形態では、粒子にはクロマトグラフィーリガンドが設けられている。この実施形態では、細孔は分離すべき目標分子が入り込める十分な大きさを有しており、粒子の結合能が向する。また、上述の製造方法では、大量処理に十分な剛性をもつマトリックスが得られる。この実施形態は、使用態様に関して以下で例示する目標分子のいずれにも有用であるが、タンパク質のように比較的小さい目標分子で特に有利である。
【0043】
以上、粒子の形態の分離マトリックスについて説明してきたが、本発明の方法は、他の形態の分離マトリックスの製造にも等しく有用であることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の分離マトリックスは、モノリス、フィルター又はメンブラン、チップ、表面、キャピラリー、ファイバーのような他の慣用形態に製造することもできる。
【0044】
好適な実施形態では、本発明の分離マトリックスの製造方法は、
(i)ゲル化性未変性多糖類の水溶液を用意し、
(ii)多糖類溶液の温度を、そのゲル化温度未満の温度まで下げ、
(iii)工程(ii)で得られた多糖類に、1種以上の塩を加えて塩処理を行い、
(vi)塩処理した多糖類を架橋させる
ことを含む分離マトリックスの製造方法である。
【0045】
一実施形態では、多糖類は未変性多糖類(つまり、ポリマーの誘導体化や架橋のような変性も置換もされていない多糖類)である。好適な実施形態では、溶液の濃度が0.5M〜1.3Mとなるまで塩を加える。多糖類、塩の性状、温度、塩濃度など、第一の態様について説明した内容はいずれも、上述の他の形態の分離マトリックスの製造方法にも適用できる。
【0046】
上述のように、多糖類は粒子に製造することができる。また、一実施形態では、分離マトリックスはメンブラン又はフィルターである。本発明の剛性マトリックスを得る上述の詳細以外にも、メンブランの製造は周知であり、当業者が容易に実施できる。
【0047】
別の実施形態では、分離マトリックスはモノリスである。この実施形態では、モノリス製品が所望の空隙率となるようにポロゲンを加えるのが好ましい。適当なポロゲンは、当技術分野で周知であり、例えばポリエチレングリコールなどが挙げられる。モノリスの製造に関する他の詳細も当技術分野で周知である。
【0048】
本発明の別の態様は、上述の分離マトリックスを含むクロマトグラフィーカラムである。カラムは、生体適合性プラスチック(例えばポリプロピレン)、ガラス又はステンレスのような任意の慣用材料から製造できる。また、カラムは、実験室規模又は大量精製に適したサイズのものでよい。特定の実施形態では、本発明に係るカラムは、ルアーアダプタ、チューブコネクタ、ドームナットを備える。
【0049】
好適な一実施形態では、上記工程(i)は、多孔質メンブラン担体を用意して、かかる担体を多糖類溶液と接触させることも含む。接触は、例えば、メンブラン担体を高温の多糖類溶液に浸漬することによって行うことができ、この場合、多糖類に浸したメンブランは、好ましくは工程(ii)での冷却前に取り出しておく。メンブラン担体は、多糖類溶液と適合性の任意の材料から製造することができ、好適には実質的に親水性である。しがたって、一実施形態では、メンブラン担体は、親水性ポリマー、例えば、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、デノプン、キトサン、コンニャク、カードラン、カラギーナン、ペクチン、ジェラン、アルギン酸塩及びこれらの2種以上の高分子の混合物からなる群から選択されるポリマーから製造する。本発明の方法の好適な実施形態では、メンブラン担体はセルロースから製造される。最も好適な実施形態では、セルロースメンブラン担体をアガロース溶液と接触させて、セルロース−アガロースハイブリッドメンブランを製造する。別の実施形態では、メンブラン担体は、表面の化学的変性などによって実質的に親水性の表面を示すように処理しておいた合成ポリマー又はセラミック材料から製造される。したがって、一実施形態では、メンブラン担体は親水性表面を呈する。
【0050】
本発明の方法で使用するメンブラン担体は市販のメンブランでもよい。或いは、メンブラン担体は当技術分野で周知の以下の方法で製造してもよい。メンブラン担体の平均孔径は、所期の用途によって左右されるが、0.1〜10μm、例えば0.2〜5μmとすることができる。特定の実施形態では、メンブランはカートリッジとして提供される。別の実施形態では、メンブランは積層メンブランである。特定の実施形態では、本発明のメンブランはロールとして提供される。当業者には明らかであろうが、メンブラン担体のサイズ及び形状も用途に応じて決まる。
【0051】
塩処理工程(iii)は、好適には、所望の流動特性をもつ最終製品を得るのに適した時間、担体を塩の温水溶液に浸漬することによって実施される。一実施形態では、塩処理の時間は0.5〜4時間、例えば1〜3時間、例えば1又は2時間である。簡単な試験を用いて、特定のメンブラン担体と多糖類との組合せに最適の時間を求めることは当業者が容易になし得ることである。以下の実験の項から明らかであろうが、本発明者らは、多糖類で被覆したメンブラン担体を本発明にしたがって塩処理すると、被覆工程でいったん実質的に低減したメンブラン担体の細孔を再形成できるという予想外の知見を得た。
【0052】
塩処理メンブランの多糖類コーティングを次いで当技術分野で周知の方法で架橋させる。一実施形態では、メンブランの製造方法は、次いで、多糖類コーティングの水酸基にクロマトグラフィーリガンドを結合させる工程を含む。リガンドの結合による官能化は、上述の通り実施できる。特定の実施形態では、架橋と官能化は実質的に同時に起こる。
【0053】
本発明の別の態様は、多孔質メンブラン担体を製造し、かかる担体をゲル化性多糖類の水溶液に接触させることによって製造したメンブランに関するものであり、流動特性の向上した多糖類コーティングは、米国特許第6602990号(Berg)又はスウェーデン特許第0402322−2号(Berg他)に記載の方法で得られる。これらの方法はいずれも、多糖類ポリマーのアリル化その他の誘導化のような多糖類の変性を行ってから多糖類をゲル化するもので、架橋後に得られるコーティングの剛性が向上する。メンブラン担体は例えばセルロースその他の親水性材料でよく、コーティング用多糖類は好適にはアガロースである。
【0054】
好適な一実施形態では、本発明の方法は、得られた架橋分離マトリックスを滅菌することを含む。滅菌は、上述の通り実施できる。特定の実施形態では、本発明のメンブランは、ディスポーザル製品としても知られる使い捨て用に製造される。使い捨ては、安全上又は健康上の理由から処理の制限される汚染物質のような汚染物質の吸着にメンブランを使用する場合などに有益である。使い捨ては、製薬産業のように純度が最優先される場合にも有益である。使い捨て製品のその他の利点としては、清浄化確認の必要がないことである。
【0055】
別の実施形態では、分離マトリックスはモノリスである。この実施形態では、所望の空隙率の製品が得られるようにポロゲンを添加するのが好適である。適当なポロゲンとしては、当技術分野で周知のもの、例えばポリエチレングリコールが挙げられる。モノリスの製造に関する詳細は当技術分野で周知である。
【0056】
最後に、本発明は、上述の通り製造した分離マトリックスの、実質的にあらゆる種類の目標分子への使用に関する。そこで、本発明の使用の一実施形態では、液体から生体分子又は有機分子を単離、精製及び/又は除去する。したがって、この態様は、上述の液体クロマトグラフィー法であって、目標分子をマトリックスに吸着し、適宜、一般に勾配溶出として知られる目標の選択的脱着工程を行う方法である。必要に応じて、吸着と溶出の間に、1回以上の洗浄工程を実施する。また、本発明の用途は目標分子の遅延を目的とし、この場合、他の成分に比して、目標をカラム上で選択的に遅延させる。この場合、溶出工程は不要である。
【0057】
一実施形態では、本発明のカラムは実質的に球状の多孔質粒子を含む。クロマトグラフィーカラムを本発明の分離マトリックスで充填してHPLCに使用してもよい。或いは、膨張床(expanded bed)としても知られている流動床モードで使用できるように本発明の分離マトリックスをカラムに単に仕込んでもよい。さらに別の代替法として、本発明の分離マトリックスをカラム内で重合させてモノリスとしてもよい。本発明の好適な実施形態では、本発明の分離マトリックスを含むカラムは使い捨て用に滅菌される。かかる使い捨て又はディスポーザルカラムは、滅菌が問題とされる製薬産業や場合によっては診断の分野で特に有益である。
【0058】
本発明は、上述の分離マトリックスを含むクロマトグラフィーカラムと、1種以上の緩衝液と、目標分子の精製に関する使用説明書とを、別々の区画に備えたキットも包含する。
【0059】
最後に、本発明は、上述の通り製造した分離マトリックスを任意の種類の目標分子に使用することに関する。そこで、本発明の使用の一実施形態では、液体から生体分子又は有機分子を単離、精製及び/又は除去する。したがって、この態様は、上述の液体クロマトグラフィーの方法であって、目標分子をマトリックスに吸着し、適宜、一般に勾配溶出として知られる目標の選択的脱着工程を行う方法である。必要に応じて、吸着と溶出の間に、1回以上の洗浄工程を実施する。また、本発明の用途は目標分子の遅延を目的とし、この場合、他の成分に比して、目標をカラム上で選択的に遅延させる。この場合、溶出工程は不要である。
【0060】
本発明の使用の一実施形態では、110kDデキストランに対して約0.4以上のKavを示す実質的に球状粒子からなるマトリックスに、約300cm/時間以上、例えば、400cm/時間以上、好ましくは500cm/時間以上、さらに好ましくは700cm/時間以上の液体流速を適用する。
【0061】
以上から明らかなように、目標分子はどのような生体分子でもよく、例えばペプチド、タンパク質、例えば受容体及びモノクローナル又はポリクローナル抗体、核酸、例えばDNA、RNA及びオリゴヌクレオチド、例えばプラスミド、ウイルス及び原核又は真核細胞、或いは有機分子、例えば薬剤候補の有機分子などが挙げられる。一実施形態では、薬剤候補の有機分子を個別化医療に利用することができる。本発明にしたがって製造した分離マトリックスは、夾雑目標分子からの機能性食品の精製及び/又は飲料の精製のような食品・飲料産業で有用な目標分子の分離にも有用である。食品産業での周知の目標分子としては、各種乳タンパク質のようなホエー製品が挙げられる。
【0062】
本発明の最後の態様は、本発明にしたがって製造した分離マトリックスの、培地中での接着細胞の増殖用担体としての使用である。かかる細胞としては、例えば、胚性幹細胞又は成体幹細胞が挙げられる。マトリックスのその他の用途としては、生体触媒を生産するための酵素の固定化が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は例示を目的としたものにすぎず、特許請求の範囲で規定される本発明を限定するものではない。本明細書で引用する文献の開示内容はすべて援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0064】
材料及び方法
粒子の特性
プロトタイプのKd評価に使用したデキストランは、以下の通りである。
【0065】
原料デキストラン 5mg/ml
M=196300 10mg/ml
M=12360 10mg/ml
M=66700 10mg/ml
M=43500 10mg/ml
M=4440 10mg/ml
M=1080 10mg/ml。
【0066】
デキストランは、0.25M NaCl溶液で希釈した原料デキストランを除いて、いずれも0.2M NaCl溶液で希釈した。
【0067】
有効性試験
有効性試験は、AKTA(商標)explorer(ID 494)(GE Healthcare社(スウェーデン国ウプサラ))を用いて、1%アセトン溶液の注入によって実施した。この試験では、カラム充填の質についての値が得られる。合格とされる非対象性は0.75〜1.25、段数は>1000Nmである。
【0068】
選択性
の評価は、オートサンプラーを装備したAKTA(商標)explorer(ID 494)を用いて実施した。(株)島津製作所製の屈折率検出器(RID−10A)をAKTA(商標)に接続してデキストラン試料を検出した。以下の条件を用いた。
【0069】
流速:0.2ml/min
移動相:0.2M NaCl
インジェクションループ:100μl。
【0070】
評価
当技術分野で周知の方法でデキストランピークを求めた。K値を、有効細孔表面の指標として、以下の通り計算した。
【0071】
=(V−V)/(V−V−ゲルマトリックス)=(V−V)/(V−V
=溶出デキストランの保持体積(ml)
=空隙体積(未変性デキストラン保持体積)(ml)
Vc=計算カラム体積(ベッド高さ(cm)×カラム表面積(cm))(ml)
Vt=合計液体体積(NaCl保持体積)(ml)。
【0072】
実施例1多糖類粒子の一般的合成
塩処理: 約1.5gの非架橋Sepharose(商標)HP(Amersham Biosciences社(スウェーデン国ウプサラ))を、10ベッド体積の脱イオン水で洗浄し、ゲル粒子の75%水性懸濁液を得た。次いで、以下の各プロトタイプの塩を懸濁液に加えた。反応混合物を撹拌しながら各プロトタイプについて以下に示す温度まで30分間加熱した後、氷浴中で30℃未満に冷却した。次に、ガラス濾過器上でゲルを10ベッド体積の水で洗浄して、懸濁液中の塩を除去した。
【0073】
架橋: エピクロロヒドリンを架橋剤として使用し、Porathの方法(Gel product for separationと題する1982年公開の欧州特許出願第81850244号)に準拠して、記載された量の4倍量のエピクロロヒドリン及びNaOHを用いて架橋を行った。
【0074】
官能基の導入: 陰イオン交換体を得るために、第四アンモニウム基(Q基)を周知の方法で架橋粒子に結合させた。結合後、0.1M AgNOでのCl滴定を行って、官能性Q基の量を測定した。
【0075】
カラムの充填: 上述の通り製造した粒子を、脱イオン水を充填液として用いてHR5/20カラム(GE Healthcare社(スウェーデン国ウプサラ)製)に充填した。まずカラムに流速306cm/時間で約15分間充填を行い、次いで流速764cm/時間で約15分間充填した。カラムの充填は、25μlの0.4%アセトンを流速76cm/時間で注入した後、ピークの非対称性を測定することによって試験した。この試験では、ピークの非対称性が0.8〜1.8のカラムを合格とした。
【0076】
実施例2〜4粒子のプロトタイプ
市販のSepharoseマトリックスを出発材料として使用し、塩の種類、処理回数及び処理時間を変えて、複数のプロトタイプを上述の通り製造した。結果を以下の表に示す。
【0077】
実施例5〜6粒子の比較例
上記の実施例2〜4で出発材料として用いた2種類のSepharose(商標)マトリックスについて、塩処理工程を行わずに、2つの比較例を実施した。
【0078】
結果
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

実施例7〜10メンブランの塩処理
実施例7アガロース溶液中でのメンブランの含浸−メンブランA
0.3gのアガロースを、30mLの水(95℃)に3時間00分間溶解することによって、1%アガロース溶液を調製した。再生セルロースメンブラン(Sartorius社製、0.45μm、製品番号3S18406−047N)を、上記アガロース溶液(95℃)に1時間00分間浸漬した。次に、メンブランをアガロース溶液から引き上げ、メンブラン構造内でアガロースがゲル化できるように室温まで放冷した。
【0082】
実施例8塩溶液中でのメンブランの処理−メンブランB
実施例7に記載の通り製造したハイブリッドメンブランAを、硫酸アンモニウム((NHSO)(1M溶液)(50mL)中に96℃で1時間00分間浸漬した後、溶液から引き上げて放冷した。メンブランを、水で十分に洗浄した。
【0083】
実施例9メンブラン流速の測定
上述の通り製造・処理したメンブランを、直径15mmの漏斗に装着し、0.7バールの真空に引いた。水50mLを漏斗に注ぎ、ストップウォッチを始動させた。水の全量がメンブランを通過するまでの時間を記録した。測定は3回行った。
【0084】
流速(mL/min/cm)を計算した。
【0085】
実施例10メンブラン流速の測定結果
【0086】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類ゲルの塩処理後に多糖類ポリマーを架橋することを含んでなる、不溶性分離マトリックスの製造方法。
【請求項2】
(a)ゲル化した未変性多糖類からなる粒子の水性懸濁液を用意し、
(b)1種以上の塩を加えて上記懸濁粒子を塩処理し、
(c)塩処理した粒子を架橋する
ことを含んでなる分離マトリックスの製造方法。
【請求項3】
前記多糖類がアガロースである、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
懸濁液の塩濃度が0.5〜1.3Mとなるまで塩を加える、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(b)で加える塩の陰イオンが硫酸塩である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
塩の陽イオンがMg、Na、K、Li、Cuからなる群から選択される、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
塩の陽イオンがMg及びNaからなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
塩がMgSOである、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
塩処理時の温度が94〜98℃である、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
塩処理時の温度が約96℃である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
工程(a)の多糖類粒子が有機溶媒中での乳化によって調製したものである、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
粒子を乳化後に洗浄する、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程(c)の架橋工程が架橋剤を添加することを含む、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
ゲル化した多糖類の水酸基にクロマトグラフィーリガンドを結合させる工程をさらに含む、請求項1乃至請求項のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の方法で製造した架橋多糖類分離マトリックス。
【請求項16】
有効細孔容積が110kDデキストランに対する0.5以上のKav値に対応する、請求項15記載のマトリックス。
【請求項17】
請求項15又は請求項16記載の分離マトリックスを含むクロマトグラフィーカラム。
【請求項18】
(i)ゲル化性未変性多糖類の水溶液を用意し、
(ii)多糖類溶液の温度を、そのゲル化温度よりも低い温度まで下げ、
(iii)工程(ii)で得られた多糖類に、1種以上の塩を加えて塩処理を行い、
(vi)塩処理した多糖類を架橋させる
ことを含んでなる、分離マトリックスの製造方法。
【請求項19】
塩濃度が0.5〜1.3Mとなるまで塩を加える、請求項18記載の方法。
【請求項20】
請求項18又は請求項19記載の方法で製造した架橋多糖類分離マトリックス。
【請求項21】
当該マトリックスがメンブラン又はモノリスである、請求項19記載のマトリックス。
【請求項22】
(i)多孔質メンブラン担体を用意して、ゲル化性多糖類の水溶液と接触させ、
(ii)多糖類溶液の温度をそのゲル化温度よりも低い温度まで下げ、
(iii)1種以上の塩を加えて塩処理を行い、
(vi)塩処理した多糖類を架橋させる
ことを含んでなる、分離マトリックスの製造方法。
【請求項23】
前記メンブラン担体が親水性表面を有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記メンブラン担体がセルロースからなる、請求項22又は請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記多糖類が未変性多糖類である、請求項22乃至請求項24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
溶液中の塩濃度が0.5〜1.3Mとなるまで塩を加える、請求項22乃至請求項25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
塩処理時の温度が94〜98℃である、請求項22乃至請求項26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
ゲル化多糖類コーティングの水酸基にクロマトグラフィーリガンドを結合させる工程をさらに含む、請求項22乃至請求項27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
得られた架橋分離マトリックスを滅菌することを含む、請求項22乃至請求項28のいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
液体から生体分子又は有機分子を精製、単離及び/又は除去するための、請求項15、請求項16、請求項20及び請求項21のいずれか1項記載の分離マトリックスの使用。
【請求項31】
分離マトリックスに加えられる移動相の流速が300cm/h以上である、請求項30記載の使用。

【公表番号】特表2008−544847(P2008−544847A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519222(P2008−519222)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000790
【国際公開番号】WO2007/004947
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】