説明

分離用担体、化合物の分離方法、及びこれを用いたペプチド合成方法

【課題】化学反応は液相にて行うことができ、反応終了後の液相から、特定の化合物を分離することが容易となり、また、分離した化合物が担体に結合したままの状態で、構造解析等による化合物の評価を行うことができ、更には、担体から化合物を容易に分離することができる分離用担体及び化合物の分離方法を提供する。
【解決手段】ベンゼン環上に他の化合物と結合する反応部位を一箇所有し、当該反応部位のオルト位及びパラ位に、それぞれ、特定の炭素数以上の長鎖の基を、酸素原子を介して有する構造の分離用担体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離用担体及び化合物の分離方法に関し、詳しくは、溶液組成及び/又は溶液温度の変化によって、液相状態から固相状態に可逆的に変化して晶析する性質と、溶液組成及び/又は溶液温度の変化によって、特定の相に選択的に抽出及び/又は特定の相に選択的に晶析する性質と、の両者を備えた分離用担体、及び当該分離用担体を用いた化合物の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学プロセスにおいては、液体に溶解した特定成分を固体として分離する方法が広く用いられている。特定成分のみを固体化(結晶化)することにより、反応後の分離・精製が容易となるためである。この方法によれば、例えば、近年の医薬品の開発研究等で用いられている化合物ライブラリー合成等の逐次多段階合成において、各反応終了毎に、必要又は不要な化合物を固体化(結晶化)させることにより、固体化(結晶化)した物質の分離・精製を容易に実施できる。したがって、従来問題となってきた工程の煩雑さを解消することができる。
【0003】
また、液体の相分離に伴って、溶解している特定成分を、特定の相に選択的に溶解(選択的な分配)させることにより、他の成分との分離を実現する方法も用いられている。この方法によれば、固体化(結晶化)を伴うことなく特定成分を分離することができるため、工程の迅速化、簡便化に寄与することができる。
【0004】
このような、溶液に溶解した特定成分の固体化(結晶化)あるいは、液体の特定の相への特定成分の選択的な溶解(選択的な分配)は、化合物の化学的性質、物性、及び溶媒との関係において、一定の条件を満たすことにより実現される。
【0005】
しかしながら、固体化(結晶化)や選択的な溶解(選択的な分配)の条件は、多くの場合、試行錯誤を行い、経験的に探索せねばならない。特に、逐次多段階合成においては、それぞれの段階において合成された化合物に特有な性質に基づいて、それぞれの段階の条件の検討が必要となるため、プロセス開発に多大なコストと時間を要していた。
【0006】
そこで、溶媒組成の変化を敏感に感知して、溶解状態と不溶化(結晶化)状態とが可逆的に変化する、あるいは、液体の相分離に伴って、溶解している特定成分を特定の相に選択的に高濃度に溶解(選択的な分配)させる、リンカーを有する担体分子が提案されている。このような担体分子には、リンカーを介して種々の化合物を結合させることができる。このため、結合された化合物は、担体分子に伴って、溶解状態から不溶化(結晶化)状態、又はその逆に、容易に状態変化することができる。あるいは、担体分子と結合した化合物を、複相に分離した液体の特定の相に、選択的に高濃度に溶解(選択的な分配)させることができる。
【0007】
また、このような担体分子は、逐次化学反応によって結合した化合物の化学構造が変化した場合であっても、ほぼ同一の条件により、溶解状態と不溶化(結晶化)状態を可逆的に繰り返したり、あるいは、複相に分離した液体の特定の相に、選択的に高濃度に溶解(選択的な分配)することができる。
【0008】
このような、溶解状態と不溶化(結晶化)状態とが可逆的に変化する、あるいは、選択的な分配状態を誘導することのできる担体分子を用いれば、有機化学の一般的な液相反応の知見をそのまま利用しつつ、均一な溶液状態から分離対象となる化合物を選択的に分離することができる。すなわち、液相反応の後に、他の可溶性成分を溶液に残したままで、特定の化合物を分離することが可能となった。
【0009】
溶解状態と不溶化状態を可逆的に繰り返すことができる担体としては、例えば、ポリエチレングリコール等の溶媒に可溶な高分子を使用した方法が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「Liquid-phase combinatorial synthesis」 Hyunsoo Han, Mary M. Wolfe, Sydney Brenner, and Kim D. Janda, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 92, pp. 6419-6423, July 1995 Chemistry
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1に記載されたポリエチレングリコール等の高分子を担体とする場合には、高分子が不均一であることに起因して、化合物が担体に結合したままの状態では、構造解析等による化合物の評価が困難であった。また、ポリエチレングリコールは親水性であるため、無水反応を行う上での困難が伴い、取扱が煩雑となる問題があった。
【0012】
ところで、溶解状態と不溶化(結晶化)状態とが可逆的に変化する、あるいは、選択的な分配状態を誘導することのできる担体分子を用いる以外に、別の化合物の分離方法として、固体の担体粒子を用いた各種の固相抽出が知られている。固相抽出法においては、例えば、シリカゲル、ポーラスポリマー、アルミナ、活性炭等の固相担体表面に予め化学結合させたプローブ分子に対し、親和性の高いリガンド分子を特異的に結合することにより、リガンド分子とその他の分子とを区別して、分離を行う。この方法によれば、固相に捕捉された物質と液相に溶解した物質との分離操作が容易であり、また、多検体を短時間に処理することができるとともに、熟練を必要とすることなく再現性の良いデータを得ることが可能であることから、自動装置等により容易に標準化することができる。
【0013】
しかしながら、固体担体粒子を用いる固相抽出法は、リガンド分子と特異的に結合する分子以外も固体表面に非特異的に吸着することがあり、分離の精度が低くなる原因となる。また、固相担体の表面に捕捉された化合物を再放出するために、特定の化学処理、生化学処理、光照射、電気刺激付与等の特殊処理を施さねばならなかった。このため、液相から目的化合物を捕捉することは容易であっても、更に、固相から目的化合物を分離する段階において、複雑な操作を実施せねばならなかった。
【0014】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、化学反応は液相にて行うことができ、反応終了後の液相から、特定の化合物を分離することが容易となり、また、分離した化合物が担体に結合したままの状態で、構造解析等による化合物の評価を行うことができ、更には、担体から化合物を容易に分離することができる分離用担体及び化合物の分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、ベンゼン環上に他の化合物と結合する反応部位を一箇所有し、当該反応部位のオルト位及びパラ位に、それぞれ、特定の炭素数以上の長鎖の基を、酸素原子を介して有する構造の分離用担体とすれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0016】
(1) 他の化合物と結合する反応部位Aを有し、前記反応部位Aは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は、窒素原子のいずれかを介して前記他の化合物と結合することにより、前記他の化合物を分離するものである、下記化学式(1)で示される分離用担体。
【化1】

(式中、
Aは、炭素、酸素、硫黄、及び、窒素原子から選ばれる1以上の原子を有する反応部位であり、
X、Y、及び、Zは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下のアシル基、ベンジル基、及び、フェニル基からなる群より選ばれるいずれかであり、
、Rは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有してもよい炭素数14以上60以下の炭化水素基、又は、置換基を有してもよい炭素数14以上60以下のアシル基のいずれかを1以上含む基である。)
【0017】
(1)の分離用担体によれば、化学反応は液相にて行うことができ、反応終了後の液相に含まれる特定の化合物を、反応部位Aにおいて反応結合させ、液相から他の化合物を選択的に分離することができる。このため、目的の化合物を高い純度で効率よく分離することができる。
【0018】
また、(1)の分離用担体によれば、担体が高分子でなく単一化合物であるので、分離した化合物が担体に結合したままの状態で、構造解析等による化合物の評価を容易に行うことができる。このため、分離操作を実施することなく、化合物の同定等を行うことができるため、研究開発等の場面において、要する時間を短縮し、研究の促進化を実現することができる。
【0019】
更に、(1)の分離用担体によれば、反応部位Aにおいて反応結合された化合物を、担体から容易に分離することができる。このため、従来なされてきた、化学処理、生化学処理、光照射、電気刺激付与等の複雑な操作を行う場合と比較して、短時間に効率よく、目的の化合物を入手することができる。
【0020】
また、(1)の分離用担体は、逐次化学反応によって、反応部位Aに結合した他の化合物の化学構造が変化した場合であっても、ほぼ同一の条件により、溶解状態と不溶化(結晶化)状態を可逆的に繰り返したり、あるいは、複相に分離した液体の特定の相に、選択的に高濃度に溶解(選択的な分配)することができる。このため、それぞれの化合物に特有の性質等に基づいた分離の条件を検討する必要がない。
【0021】
また、(1)の分離用担体は、炭素数14以上60以下の炭化水素基、又は、炭素数14以上60以下のアシル基のいずれかを1以上含むことから、長鎖のアルキル基を含んでいる。このため、(1)の分離用担体は、疎水性を示し、多くの有機溶媒に対して高い濃度で溶解することができる。したがって、(1)の分離用担体は、目的の化合物が溶解している液体の種類を選ぶことなく、幅広く適用することができる。
【0022】
炭化水素基の炭素数は14以上50以下が好ましく、16以上40以下が更に好ましく、18以上30以下が特に好ましい。また、アシル基の炭素数は、14以上50以下が好ましく、16以上40以下が更に好ましく、18以上30以下が特に好ましい。炭素数が上記の範囲にあれば、十分な疎水性を示すことができ、有機溶媒の選択の幅が広い。
【0023】
また、(1)の分離用担体は、化学式(1)に示されるように、ベンゼン環上のX、Y、及び、Zは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下のアシル基、ベンジル基、及び、フェニル基からなる群より選ばれるいずれかとなっている。したがって、無置換の水素のままでも分離用担体としての効果を十分に発揮することができるものであるが、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下のアシル基、ベンジル基、及び、フェニル基を導入することにより、溶媒の種類、反応結合させる化合物の種類等に併せて、要求される特徴を分離用担体に付与することができる。
【0024】
置換基を有してもよい炭化水素基の場合には、炭素数1以上8以下が好ましく、1以上6以下が更に好ましい。また、置換基を有してもよいアシル基の場合には、炭素数2以上8以下が好ましく、2以上6以下が更に好ましい。炭素数が上記の範囲にあれば、多くの有機溶媒に対し良好な溶解性を示す事ができる。
【0025】
(1)の分離用担体は、上記のような様々の効果を有するため、(1)の分離用担体によれば、プロセス開発を容易とするばかりでなく、例えば、化合物ライブラリー合成等による医薬品等の研究開発を促進することが可能となり、ひいては生化学工業や化学工業における技術革新に寄与することができる。
【0026】
(2) 前記分離用担体は、溶解している溶液又は融解している液相の組成及び/又は温度の変化に伴い、液相状態から固相状態に可逆的に変化し、前記他の化合物と結合した状態で、晶析又は凝固するものである(1)記載の分離用担体。
【0027】
(2)の分離用担体は、炭素数14以上60以下の炭化水素基、又は、炭素数14以上60以下のアシル基のいずれかを1以上含むため、長鎖のアルキル基を含んでいる。長鎖のアルキル基は疎水性を示すことから、分離用担体を多くの溶媒に溶解することを可能とする反面、例えば、極性の高い溶媒を加えることによって、容易に晶析させることができる。
【0028】
したがって、(2)の分離用担体によれば、目的の化合物を担体に結合させた後に、溶解している溶液又は融解している液相の組成及び/又は温度を変化させることにより、目的の化合物以外の液相に可溶な成分は液相に残したままで、目的の特定の化合物のみを担体に伴わせて晶析又は凝固することができる。晶析又は凝固した他の化合物を伴った分離用担体は、ろ過等により容易に液相から分離することができるため、切出工程の複雑化を回避することができる。
【0029】
また、(2)の分離用担体は、目的の化合物を担体から分離することなく、化合物が担体に結合した状態で構造解析等を実施することができる。したがって、化合物を担体から分離するための工程を経ることなく、構造解析等による化合物の評価を実施することができ、研究開発等の場面において、要する時間を短縮し、研究開発の促進化を実現することができる。
【0030】
(3) 前記分離用担体は、溶解している溶液の組成及び/又は温度の変化に伴い、前記他の化合物と結合した状態で、特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析されるものである(1)記載の分離用担体。
【0031】
(3)の分離用担体は、目的の化合物を担体に結合させた後に、複相の液相における特定の相に、化合物が結合した状態の担体を、選択的に抽出(液体のまま)及び/又は晶析させるものである。したがって、目的の化合物以外の液相に可溶な成分は、他の液相に残したままで、目的の特定の化合物のみを分離することができるため、切出工程の複雑化を回避することができる。
【0032】
また、(3)の分離用担体において、特定の相に選択的に晶析されるものである場合には、目的の化合物を担体から分離することなく、そのまま構造解析等を実施することができるため、上記(2)と同様の効果を有する。
【0033】
(4) 前記分離用担体は、溶解している溶液又は融解している液相の組成及び/又は温度の変化に伴い、液相状態から固相状態に可逆的に変化するものであり、固相状態で前記他の化合物と結合する(1)記載の分離用担体。
【0034】
(4)の分離用担体は、他の化合物と結合する前に、溶液組成及び/又は溶液温度の変化に伴い、液相状態から固相状態に変化し、その後、固相状態となった分離用担体に他の化合物を結合捕捉させる、いわゆる固相抽出を行うものである。
【0035】
(4)の分離用担体によれば、固相抽出であることから、化合物を結合捕捉した固相担体を、液相から分離する工程が容易であるとともに、その後に、化合物を担体から分離するための工程も簡易に行うことができる。
【0036】
(5) 化合物の分離方法であって、(1)記載の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する溶解工程と、前記分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を結合させる第一結合工程と、前記他の化合物が結合した状態で、前記分離用担体を晶析させる晶析工程、又は、前記他の化合物が結合した状態で、前記分離用担体を特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析させる選択工程と、を含む化合物の分離方法。
【0037】
(5)の化合物の分離方法は、本発明の分離用担体を用いて、目的の化合物を担体に結合させた後に、晶析又は抽出を行う分離方法である。(5)の化合物の分離方法は、一相の液相において、化合物が結合した状態の担体を固体化(結晶化)して晶析させる場合と、複相の液相において、化合物が結合した状態の担体を特定の相に選択的に抽出(液体のまま)及び/又は晶析させる場合と、の両者を含む。
【0038】
(5)の化合物の分離方法によれば、特定物質を選択的に晶析又は抽出することが可能となる。したがって、目的の化合物以外の液相に可溶な成分は、液相に残したままで、目的の特定の化合物のみを分離することができ、これにより、切出工程の複雑化を回避することができる。
【0039】
また、(5)の分離方法によって、目的の化合物を伴った状態で担体が晶析(結晶化)分離される場合には、目的の化合物を担体から分離することなく、そのまま構造解析等を実施することができる。したがって、晶析後に化合物を分離するための工程を経ることなく、得られた化合物の確認等を実施することができ、研究開発等の場面において、要する時間を短縮し、研究の促進化を実現することができる。
【0040】
したがって、(5)の化合物の分離方法は、生化学物質の分離・精製、医薬品候補物質の探索、新規化学合成反応法やペプチド連続合成法等の構築等において、革新的な技術となりうる。
【0041】
(6) 化合物の分離方法であって、(1)記載の分離用担体を融点以上に暖めて、分離用担体を液相化させる融解工程と、融解した前記分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を反応結合させる反応工程と、前記他の化合物が結合した状態で、前記分離用担体を固相化させる凝固工程と、を含む化合物の分離方法。
【0042】
(6)の化合物の分離方法は、溶媒を用いることなく、本発明の分離用担体自身を液化させ、液化させた分離用担体に目的の化合物を結合させた後に、凝固させる分離方法である。
【0043】
(6)の化合物の分離方法によれば、特定物質を選択的に結合分離することが可能となる。また、(6)の化合物の分離方法によれば、分離用担体は固相化(固体化)しているため、目的の特定の化合物のみを容易に分離することができ、これにより、切出工程の複雑化を回避することができる。更に、(6)の化合物の分離方法によれば、目的の化合物を担体から分離することなく、そのまま構造解析等を実施することができる。
【0044】
(7) 前記凝固工程の後に、前記他の化合物が結合した状態で、固相化した前記分離用担体の溶解度が低い貧溶媒により、前記分離用担体を洗浄する洗浄工程、及び/又は、前記他の化合物が結合した状態で、前記分離用担体を特定の溶媒に選択的に抽出する抽出工程を更に含む(6)記載の化合物の分離方法。
【0045】
(7)の化合物の分離方法は、固相化した、本発明の分離用担体と目的の特定の化合物とが結合した複合化合物を、貧溶媒により洗浄、及び/又は、特定の溶媒に選択的に抽出する工程を含むものである。その後の工程で得られる、分離用担体と特定の化合物との複合化合物の純度を上げることができる。
【0046】
(8) 前記第一結合工程、又は、前記反応工程の後に、前記分離用担体の反応部位Aに結合した前記他の化合物と、更に別の化合物と、を結合させる第二結合工程を含む(5)から(7)いずれか記載の化合物の分離方法。
【0047】
(8)の化合物の分離方法は、分離用担体の反応部位Aに結合した他の化合物と、更に別の化合物とを反応結合させる工程を含むものである。本発明の分離用担体は、逐次化学反応によって、結合した他の化合物の化学構造が変化した場合であっても、ほぼ同一の条件により、溶解状態と不溶化(結晶化)状態を可逆的に繰り返したり、あるいは、複相に分離した液体の特定の相に、選択的に高濃度に溶解(選択的な分配)することができる。このため、本発明の分離用担体の反応部位Aを始点として、複数の他の化合物を逐次化学結合させることが可能である。
【0048】
(9) 化合物の分離方法であって、(1)記載の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する溶解工程と、前記分離用担体を結晶化させる結晶化工程と、結晶化した前記分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を結合して捕捉する捕捉工程と、を含む化合物の分離方法。
【0049】
(9)の化合物の分離方法は、本発明の分離用担体を用いて、先ず分離用担体を結晶化(固相化)させた後に、目的の化合物を担体に結合捕捉させる分離方法である。したがって、(9)の化合物の分離方法は、一相の液相において、担体を固体化(結晶化)して晶析させる場合が主となる。
【0050】
(9)の化合物の分離方法によれば、目的の特定の化合物を選択的に固相に捕捉することが可能となる。したがって、目的の化合物以外の液相に可溶な成分は、液相に残したままで、目的の特定の化合物のみを分離することができ、これにより、切出工程の複雑化を回避することができる。
【0051】
また、(9)の分離方法によれば、目的の化合物を担体から分離することなく、そのまま構造解析等を実施することができる。したがって、化合物を分離するための工程を経ることなく、得られた化合物の確認等を実施することができ、研究開発等の場面において、要する時間を短縮し、研究の促進化を実現することができる。
【0052】
したがって、(9)の化合物の分離方法は、生化学物質の分離・精製、医薬品候補物質の探索、新規化学合成反応法やペプチド連続合成法等の構築等において、革新的な技術となりうる。
【0053】
(10) 前記晶析工程、前記選択工程、前記凝固工程、前記抽出工程、又は、前記捕捉工程の後に、前記他の化合物が結合した前記分離用担体から、他の化合物を分離する切出工程を更に含む(5)から(9)いずれか記載の化合物の分離方法。
【0054】
(10)の化合物の分離方法は、本発明の分離用担体に伴われた化合物を、担体から分離する工程を含むものである。担体から化合物を分離することにより、合成等により得られた目的の化合物を、単一化合物として得ることができる。また、分離した後の分離用担体を、その後、再利用することもできる。
【0055】
(11) 前記晶析工程、前記選択工程、前記凝固工程、前記抽出工程、又は、前記捕捉工程の前に、前記分離用担体が溶解している溶液又は前記分離用担体が融解している液相から不純物を除去する不純物除去工程を更に含む(5)から(10)いずれか記載の化合物の分離方法。
【0056】
(11)の化合物の分離方法は、本発明の分離用担体と目的の特定の化合物が結合する前に、目的の特定の化合物が溶解している溶液から、不純物を除去する工程を含むものである。これにより、その後の工程で得られる、分離用担体と特定の化合物との複合化合物の純度を上げることができる。
【0057】
(12) 前記晶析工程、前記選択工程、又は、前記結晶化工程は、前記分離用担体が溶解している溶液の組成を変化させる組成変化手段及び/又は前記分離用担体が溶解している溶液の温度を変化させる温度変化手段によりなされる(5)、又は、(8)から(11)いずれか記載の化合物の分離方法。
【0058】
(12)の化合物の分離方法は、前記分離用担体が溶解している溶液の組成及び/又は温度を変化させることにより、特定の化合物が結合した担体を晶析、特定の化合物が結合した担体を抽出、あるいは、担体自身を結晶化(固相化)させるものである。
【0059】
本発明の分離用担体は、溶解している溶液の組成及び/又は温度の変化に鋭敏に反応する。このため、溶液の組成及び/又は温度を変化させる手段を用いることにより、化合物を伴った分離用担体を晶析又は抽出し、あるいは、担体自身を結晶化(固相化)させることができる。また、このとき、分離用担体と結合していない他の可溶性の物質は、溶液に残したままの状態を維持することができる。
【0060】
(13) 前記組成変化手段は、前記可溶性溶媒への親和性の高い溶媒を添加するものである(12)記載の化合物の分離方法。
【0061】
(13)の化合物の分離方法は、分離用担体自身、あるいは化合物と結合した分離用担体が溶解している溶液に、当該溶液と親和性の高い溶媒を添加するものである。親和性の高い溶媒を添加することにより、溶液組成を変化させることができるため、担体自身又は化合物と結合した分離用担体を、晶析又は抽出させることができる。
【0062】
(14) 前記組成変化手段は、前記可溶性溶媒への親和性の低い溶媒を添加することにより、溶液を複相に分液するものである(12)記載の化合物の分離方法。
【0063】
(14)の化合物の分離方法は、分離用担体自身、あるいは化合物と結合した分離用担体が溶解している溶液に、当該溶液と親和性の低い溶媒を添加することにより、溶液を複相に分液するものである。親和性の低い溶媒を添加することにより、溶液組成を変化させ、複相に分液するとともに、分離用担体自身、あるいは化合物と結合した分離用担体を特定の相に選択的に移動させることができる。
【0064】
(15) 前記組成変化手段は、前記可溶性溶媒を濃縮するものである(12)記載の化合物の分離方法。
【0065】
(15)の化合物の分離方法は、分離用担体と特定の化合物との複合化合物が溶解している溶液を、濃縮するものである。溶液を濃縮することにより、溶液中に存在する、分離用担体と特定の化合物との複合化合物の濃度が高くなる。このため、溶液組成を変化させることができ、化合物を伴った分離用担体を晶析させることが可能となる。
【0066】
(16) 前記温度変化手段は、溶液を冷却するものである(12)記載の化合物の分離方法。
【0067】
(16)の化合物の分離方法は、溶液を冷却することにより、温度変化を実現するものである。溶液を冷却することにより、溶液温度を変化させることができ、分離用担体自身、あるいは化合物と結合した分離用担体を晶析又は抽出することができる。
【0068】
(17) 前記凝固工程は、前記他の化合物が結合した前記分離用担体に、前記分離用担体の溶解度の低い貧溶媒を添加する貧溶媒添加手段によりなされる(6)から(8)、又は、(10)から(11)いずれか記載の化合物の分離方法。
【0069】
(18) 前記抽出工程は、前記他の化合物が結合した前記分離用担体が溶解する溶媒を添加する溶媒添加手段によりなされる(7)から(8)、又は、(10)から(11)いずれか記載の化合物の分離方法。
【0070】
(19) 前記他の化合物はアミノ酸であり、前記反応部位Aは、アミノ酸と結合する原子団であり、前記R、Rは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有してもよい炭素数14以上30以下の炭化水素基、又は、置換基を有してもよい炭素数14以上30以下のアシル基のいずれかを1以上含む基である(1)記載の分離用担体。
【0071】
(20) 前記反応部位Aは、アミノ酸と結合するヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基を有する原子団である(19)記載の分離用担体。
【0072】
(21) (19)、又は、(20)記載の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する溶解工程と、前記分離用担体の前記反応部位Aにアミノ酸を結合させ、前記分離用担体に結合したアミノ酸に他のアミノ酸を逐次結合させることにより、オリゴペプチドが結合した前記分離用担体を得る結合工程と、前記オリゴペプチドが結合した状態で、前記分離用担体を晶析させる晶析工程、又は、前記オリゴペプチドが結合した状態で、前記分離用担体を特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析させる選択工程と、前記晶析工程又は前記選択工程の後に、前記オリゴペプチドが結合した前記分離用担体から前記オリゴペプチドを切り出す切出工程と、を含むオリゴペプチド合成方法。
【0073】
(21)のオリゴペプチド合成方法によれば、合成反応を液相にて行うことができるため、反応効率及び容積効率が極めて高く、固相反応法での合成が困難なオリゴペプチドであっても合成することができる。また、反応終了後の液相に含まれるオリゴペプチドが結合した状態の分離用担体を高い純度で効率よく分離することができる。更に、オリゴペプチドが結合した分離用担体からオリゴペプチドを切り出す際には固相試薬を用いることができるため、溶解性試薬によって切り出す場合と異なり、その除去が容易である。
【0074】
したがって、(21)のオリゴペプチド合成方法によれば、種々のオリゴペプチドを簡便且つ迅速に合成し、提供することができる。このオリゴペプチドは、既存のペプチド合成の材料としても用いることができ、これにより、ペプチド合成の工程数を大幅に削減することができる。
【0075】
ここで、(21)のオリゴペプチド合成方法に用いられる分離用担体は、化学式(1)に示されるように、Aとして、アミノ酸と結合するヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基を有する原子団を有している。このため、この分離用担体は、原子団Aを介して複数のアミノ酸を逐次結合し、オリゴペプチドを合成することができる。また、この原子団Aとオリゴペプチドとの間の結合は比較的切断され易いため、分離用担体からオリゴペプチドを切り出す際に固相試薬を用いることができる。
【0076】
このアミノ酸は、保護基を有さないアミノ酸であってもよく、例えばFmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)基やCbz(ベンジルオキシカルボニル)基といった保護基を有する保護アミノ酸であってもよい。したがって、合成されるオリゴペプチドには、未修飾のオリゴペプチド以外にも、アミノ酸側鎖残基の保護基、末端アミノ酸のアミノ保護基、カルボキシル保護基を有する修飾オリゴペプチドが含まれる。
【0077】
(22) 前記晶析工程又は前記選択工程は、前記分離用担体が溶解している溶液の組成を変化させる組成変化手段及び/又は前記分離用担体が溶解している溶液の温度を変化させる温度変化手段によりなされる(21)記載のオリゴペプチド合成方法。
【0078】
(22)のオリゴペプチド合成方法は、分離用担体が溶解している溶液の組成及び/又は温度を変化させることにより、オリゴペプチドが結合した分離用担体を晶析させ、又はオリゴペプチドが結合した分離用担体を抽出するものである。
【0079】
(23) 前記切出工程は、前記分離用担体が溶解している溶液に固相試薬を加えることによりなされる(21)又は(22)記載のオリゴペプチド合成方法。
【0080】
(24) 前記固相試薬が固体酸試薬である(23)記載のオリゴペプチド合成方法。
【0081】
(23)のオリゴペプチド合成方法は、分離用担体が溶解している溶液に固相試薬、例えば固体の酸、塩基、還元剤を加えることにより、分離用担体からオリゴペプチドを切り出すものであり、(24)のオリゴペプチド合成方法は、固相試薬として特に固体酸試薬を用いるものである。切り出されたオリゴペプチドと切り出しに用いられた固相試薬とは、濾過によって容易に分離することができる。
【発明の効果】
【0082】
本発明の分離用担体によれば、化学反応は液相にて行うことができ、反応終了後の液相に含まれる特定の化合物を、反応部位Aにおいて反応結合させ、液相から他の化合物を選択的に分離することができる。このため、目的の化合物を高い純度で効率よく分離することができる。
【0083】
また、本発明の分離用担体は、担体が高分子でなく単一化合物であるので、分離した化合物が担体に結合したままの状態で、構造解析等による化合物の評価を容易に行うことができる。このため、分離操作を実施することなく、化合物の同定等を行うことができるため、研究開発等の場面において、要する時間を短縮し、研究の促進化を実現することができる。
【0084】
更に、本発明の分離用担体によれば、反応部位Aにおいて反応結合された化合物を、担体から容易に分離することができる。このため、従来なされてきた、化学処理、生化学処理、光照射、電気刺激付与等の複雑な操作を行う場合と比較して、短時間に効率よく、目的の化合物を入手することができる。
【0085】
更に、本発明の分離用担体は、逐次化学反応によって、結合した他の化合物の化学構造が変化した場合であっても、ほぼ同一の条件により、溶解状態と不溶化(結晶化)状態を可逆的に繰り返したり、あるいは、複相に分離した液体の特定の相に、選択的に高濃度に溶解(選択的な分配)することができる。このため、それぞれの化合物に特有の性質等に基づいた分離の条件を検討する必要がない。
【0086】
また、本発明の分離用担体は、多くの有機溶媒に対して優れた溶解性を示すため、目的の化合物が溶解している液体の種類を選ぶことなく、幅広く適用することができる。
【0087】
したがって、本発明の分離用担体によれば、上記の効果を有していることから、それぞれの化合物に特有の性質等に基づく結晶化条件あるいは分配条件を検討する必要がなく、プロセス開発を容易とするばかりでなく、例えば、化合物ライブラリー合成等による医薬品等の研究開発を促進することが可能となり、ひいては生化学工業や化学工業における技術革新に寄与することができる。
【0088】
また、本発明の化合物の分離方法によれば、特定の物質を選択的に分離することが可能となる。すなわち、液相に可溶性の成分は残したままで、目的の特定物質のみを分離することができ、これにより、切出工程の複雑化を回避することができる。
【0089】
更に、本発明の化合物の分離方法は、用いられる分離用担体が多くの有機溶媒に対して優れた溶解性を示すことから、有機溶媒の種類を選ぶことなく、幅広く適用することができる。
【0090】
したがって、本発明の化合物の分離方法は、生化学物質の分離・精製、医薬品候補物質の探索、新規化学合成反応法やペプチド連続合成法等の構築等において、革新的な技術となりうる。
【0091】
更に、本発明によれば、ベンゼン環上にアミノ酸と結合する反応部位となる原子団を1箇所有し、この原子団のオルト位及びパラ位に、それぞれ特定の炭素数以上の長鎖の基を、酸素原子を介して有する構造の分離用担体を用いることにより、種々のオリゴペプチドを簡便且つ迅速に合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】分離用担体を用いた分離方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0094】
<分離用担体>
本発明の分離用担体は、他の化合物と結合する反応部位Aを有し、この反応部位Aが、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は、窒素原子のいずれかを介して前記他の化合物と結合することにより、他の化合物を分離するものである、下記化学式(1)で示されるものである。
【化2】

(式中、
Aは、炭素、酸素、硫黄、及び、窒素原子から選ばれる1以上の原子を有する反応部位であり、
X、Y、及び、Zは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下のアシル基、ベンジル基、及び、フェニル基からなる群より選ばれるいずれかであり、
、Rは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有してもよい炭素数14以上60以下の炭化水素基、又は、置換基を有してもよい炭素数14以上60以下のアシル基のいずれかを1以上含む基である。)
【0095】
[反応部位A]
本発明の分離用担体が有する他の化合物と結合するための反応部位Aは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、及び、窒素原子から選ばれる1以上の原子を有し、同種の原子が複数含まれていてもよい。
【0096】
また、反応部位Aの大きさは、特に限定されるものではなく、反応部位Aの一部に、他の化合物と結合するための反応箇所となる部分を有するものであればよい。また、反応部位Aにおける、他の化合物と結合するための反応箇所が存在する位置は、特に限定されるものではないが、反応を容易とする目的で、反応部位Aの末端に存在していることが好ましい。
【0097】
反応部位Aにおいては、炭素原子、窒素原子、硫黄原子、及び、窒素原子のいずれかを介して他の化合物と結合する。反応部位Aにおいて、他の化合物と結合する炭素原子、窒素原子、硫黄原子、及び、窒素原子のいずれかを有する反応箇所の構造は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等を挙げることができる。
【0098】
本発明の分離担体は、アミノ酸と結合するための反応部位となる原子団Aを有するものであってもよい。原子団Aとしては特に限定されない。
【0099】
本発明の分離用担体は、アミノ酸と結合するヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基を有し、アミノ酸と結合するための反応部位となる原子団Aを有するものであってもよい。
【0100】
上記の場合、原子団Aの大きさは、特に限定されるものではなく、原子団Aの一部に、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基を有するものであればよい。また、原子団Aにおける、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基が存在する位置は、特に限定されるものではないが、反応を容易とする目的で、原子団Aの末端に存在していることが好ましい。
【0101】
また、本発明の分離用担体における反応部位Aの数は、ベンゼン環上における唯一箇所である。本発明の分離用担体においては、反応部位Aを一箇所しか有さないことから、反応部位Aと結合する反応箇所が1箇所の化合物を分離する場合には、分離用担体と当該化合物との反応割合が1:1となる。したがって、この場合には、その後の構造解析等が容易となる。
【0102】
本発明の分離用担体は、反応部位Aのオルト位及びパラ位に、それぞれ、特定の炭素数以上の長鎖の基R、Rを、酸素原子を介して有する構造である。
【0103】
ここで、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数14以上60以下の炭化水素基、又は、炭素数14以上60以下のアシル基のいずれかを1以上含む基である。炭化水素基の炭素数は14以上50以下が好ましく、16以上40以下が更に好ましく、18以上30以下が特に好ましい。また、アシル基の炭素数は、14以上50以下が好ましく、16以上40以下が更に好ましく、18以上30以下が特に好ましい。具体的には、オクタデシル、イコシル、ドコシル等の炭素数18〜22のアルキル基や、ステアロイル、イコサノイル、ドコサノイル等の炭素数18〜22のアシル基を挙げることができる。
【0104】
また、原子団Aがアミノ酸と結合するための反応部位を有する場合には、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数14以上30以下の炭化水素基、又は炭素数14以上30以下のアシル基のいずれかを1以上含む基である。炭化水素基の炭素数は、18以上22以下がより好ましい。また、アシル基の炭素数は、18以上22以下がより好ましい。具体的には、オクタデシル、イコシル、ドコシル等の炭素数18〜22のアルキル基や、ステアロイル、イコサノイル、ドコサノイル等の炭素数18〜22のアシル基を挙げることができる。
【0105】
また、本発明の分離用担体は、ベンゼン環上のX、Y、及び、Zを、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下のアシル基、ベンジル基、及び、フェニル基からなる群より選ばれるいずれかとするものである。置換基を有してもよい炭化水素基の場合には、炭素数1以上8以下が好ましく、1以上6以下が更に好ましい。また、置換基を有してもよいアシル基の場合には、炭素数2以上8以下が好ましく、2以上6以下が更に好ましい。
【0106】
本発明の分離用担体を製造する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、2、4−ジヒドロキシベンズアルデヒド誘導体とアルキルブロマイドとを炭酸カリウム等の塩基性触媒存在下で加熱して、アルキルエーテル化されたベンズアルデヒド誘導体を得た後に、適当な溶媒に溶解させて、炭酸水素ナトリウム等の還元剤を用いてアルデヒドを還元し、ベンジルアルコールとして分離用担体を得る方法が挙げられる。
【0107】
<分離用担体の性質>
本発明の分離用担体は、溶解している溶液又は融解している液相の組成及び/又は温度の変化に伴い、液相状態から固相状態に可逆的に変化し、他の化合物と結合した状態で、晶析又は凝固する性質を有する。
【0108】
また、本発明の分離用担体は、溶解している溶液の組成及び/又は温度の変化に伴い、他の化合物と結合した状態で、特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析される性質を併せ持つ。これにより、相分離した複相以上の液相において、特定の相に、選択的に抽出及び/又は晶析させることができる。
【0109】
また、本発明の分離用担体は、溶解している溶液又は融解している液相の組成及び/又は温度の変化に伴い、液相状態から固相状態に可逆的に変化するものであり、固相状態となった後に、他の化合物と結合する性質を更に併せ持つ。
【0110】
<化合物の分離方法>
本発明の化合物の分離方法は、(1)本発明の分離用担体を可溶性溶媒に溶解し、目的の特定の化合物を分離用担体に結合した後に、晶析及び/又は抽出を行う方法と、(2)本発明の分離用担体自身を融解して液相化し、液相中で目的の特定の化合物を分離用担体に結合した後に、凝固させる方法と、(3)本発明の分離用担体を可溶性溶媒に溶解し、引き続き、本発明の分離用担体を結晶化(固相化)した後に、目的の特定の化合物を結合捕捉する方法との3種類が存在する。以下、それぞれの方法に分けて説明する。
【0111】
[(1)(i)本発明の分離用担体を可溶性溶媒に溶解し、目的の特定の化合物を分離用担体に結合した後に、晶析及び/又は抽出を行う方法]
本発明の分離用担体を可溶性溶媒に溶解し、先に目的の化合物を分離用担体に結合させる化合物の分離方法は、本発明の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する溶解工程と、分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を結合させる第一結合工程と、他の化合物が結合した担体を晶析させる晶析工程、又は、他の化合物が結合した状態で、分離用担体を特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析させる選択工程と、を含むものである。
【0112】
〔溶解工程〕
本分離方法における溶解工程は、本発明の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する工程である。溶解工程に用いられる可溶性溶媒は、本発明の分離用担体を溶解できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ハロゲン化炭化水素、鎖状エーテル、環状エーテル、炭素原子数4〜40の環状炭化水素又は鎖状炭化水素等を挙げることができる。より具体的には、例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等を挙げることができる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0113】
可溶性溶媒に本発明の分離用担体を溶解させるときの濃度は、用いる溶媒、分離用担体、晶析分離担体と結合させる化合物の性質等に応じて適宜選択することが可能であるが、通常0.01〜0.5g/mLである。
【0114】
〔第一結合工程〕
本分離方法における結合工程は、分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を結合させて、他の化合物と分離用担体との複合化合物を得る工程である。結合工程における結合方法としては、前工程で可溶性溶媒に溶解させた分離用担体の反応部位Aに、反応部位Aと反応する部分を有する他の化合物を結合させる方法であれば、特に限定されるものではなく、液相における各種の化学反応を用いることができる。例えば、エステル結合やアミド結合を形成することにより、結合する方法を挙げることができる。
【0115】
〔第二結合工程〕
本分離方法においては、上記の第一結合工程の後に、分離用担体の反応部位Aに結合した他の化合物と、更に別の化合物と、を結合させる第二結合工程を含むものであってもよい。本分離方法においては、本発明の分離用担体の反応部位Aを始点として、複数の他の化合物を逐次化学結合させることが可能である。
【0116】
逐次化学反応を行う場合の化合物としては、分離用担体の反応部位Aを始点として既に結合している化合物と、反応結合する化合物であれば、特に制限されるものではない。また、逐次化学反応は、既に他の化合物との複合化合物となっている分離用担体が含まれている液相と、同一の液相中にて行ってもよいし、一度、複合化合物となっている分離用担体を固体化(結晶化)して分離した後に、別の液相にて行うものであってもよい。
【0117】
〔不純物除去工程〕
本分離方法においては、下記の晶析工程又は選択工程を実施する前に、不純物を除去するための不純物除去工程を含めることが好ましい。下記の晶析工程又は選択工程においては、溶液に含まれている不純物が一緒に晶析又は抽出されてしまう場合がありうる。特に、晶析工程として、溶媒の全てを留去する手段を用いる場合には、晶析対象となる化合物が結合した分離用担体の結晶とともに、不純物が析出してしまう。したがって、晶析工程又は選択工程を実施する前に、予め不純物を除去しておくことにより、その後得られる分離対象の化合物が結合した分離用担体の結晶の純度を、上昇させることができる。
【0118】
不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物が溶解している溶液の全体を、溶媒で洗浄する方法等を挙げることができる。
【0119】
〔晶析工程〕
本分離方法における晶析工程は、前工程である第一結合工程あるいは更に第二結合工程において、分離用担体に結合させた化合物を、担体に伴わせた状態のままで晶析させる工程である。本分離方法における晶析工程は、分離用担体に晶析対象となる化合物を結合させた状態を維持したままで晶析させることができれば、特に限定されるものではないが、例えば、溶液組成を変化させる手段及び/又は溶液温度を変化させる手段を、好ましく用いることができる。
【0120】
〔選択工程〕
本分離方法における選択工程は、前工程である第一結合工程あるいは更に第二結合工程において、分離用担体に結合させた化合物を、担体に伴わせた状態のままで、特定の液相に選択的に抽出(液体のまま)及び/又は選択的に晶析させる工程である。すなわち、選択工程が存在する分離方法においては、液相は二相以上の複相となっている状態であり、化合物を伴った分離用担体は、複相の中の特定の液相に、選択的に抽出(液体のまま)及び/又は晶析される。
【0121】
本分離方法における選択工程は、分離用担体に分離対象となる特定の化合物の結合を維持したままで、抽出及び/又は晶析させることができれば、特に限定されるものではないが、例えば、溶液組成を変化させる手段及び/又は溶液温度を変化させる手段を、好ましく用いることができる。
【0122】
〔組成変化手段〕
本分離方法の晶析工程又は選択工程において好ましく用いられる、溶液組成を変化させる手段としては、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物が溶解している、溶液の組成を変化させることのできる手段であれば、特に制限されるものではない。
【0123】
本分離方法において、溶液組成を変化させる好ましい手段としては、例えば、溶解工程において分離用担体を溶解するために用いられた可溶性溶媒への親和性の高い溶媒を、更に添加する手段が挙げられる。可溶性溶媒への親和性の高い溶媒を添加する場合には、液相は相分離することなく、一相のみで維持される。
【0124】
親和性の高い溶媒としては、可溶性溶媒として用いられた溶媒と同一の溶媒でも、異なった溶媒であってもよい。例えば、可溶性溶媒として、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン等を用いた場合には、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、メタノール等を用いることができる。
【0125】
本分離方法において、溶液組成を変化させる別の好ましい手段としては、例えば、溶解工程において分離用担体を溶解するために用いられた可溶性溶媒への親和性の低い溶媒を、更に添加する手段が挙げられる。可溶性溶媒への親和性の低い溶媒を添加する場合には、液相は相分離し、複相に分液される。これにより、特定の相に選択的に、分離用担体自身、あるいは化合物と結合した分離用担体を移動させる。
【0126】
例えば、分離用担体をシクロヘキサンに溶解させ、他の化合物とその他の任意の反応試薬等とをジメチルホルムアミドに溶解させて混合し、その後、第一結合工程あるいは更に第二結合工程を経た後に、親和性の低い溶媒に相当するプロピレンカーボネートやアンモニウム塩の溶けた水を少量添加することで、他の化合物の結合した分離用担体を、選択的にシクロヘキサン相へ溶解させる事ができる。
【0127】
また、溶液組成を変化させる更に別の好ましい手段としては、例えば、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物が溶解している、溶液の溶媒を濃縮する手段が挙げられる。ここで、濃縮とは、溶媒の一部又は全部を留去することをいう。尚、全部を留去することにより、化合物が結合した分離用担体を結晶化する場合には、溶液に含まれる不純物等が一緒に析出してしまうことがありうるため、晶析工程を実施する前に、不純物を除去する工程を含めることが好ましい。
【0128】
〔温度変化手段〕
本分離方法の晶析工程又は選択工程において好ましく用いられる、溶液温度を変化させる手段としては、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物が溶解した、溶液の温度を変化させることのできる手段であれば、特に制限されるものではない。本分離方法においては、例えば、溶液を冷却する手段を挙げることができる。例えば、分離用担体を溶解させる可溶性溶媒としてシクロヘキサンを用いた場合には、5℃まで冷却することにより、晶析させることが可能となる。また、溶液温度を変化させる手段として溶媒を冷却する手段を用いる場合には、ODS粒子(オクタデシル基を表面に結合したシリカゲル)、カラズビース等の結晶化の核となるものを添加することにより、結晶成長を容易とすることが可能となる。
【0129】
[切出工程]
本発明の化合物の分離方法においては、晶析工程又は選択工程にて得られた、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物に対して、化合物と、分離用担体と、に分離する工程を含むことが好ましい。
【0130】
化合物と、分離用担体と、に分離する方法としては、特に限定されるものではなく、化合物と分離用担体の結合を切断できるものであればよい。例えば、パラアルコキシベンジル結合が形成されている場合には、酸処理することにより、結合解離させることが可能である。
【0131】
[(1)(ii)本発明の分離用担体を可溶性溶媒に溶解し、アミノ酸を分離用担体に逐次結合した後に、晶析及び/又は抽出を行う方法]
本発明の化合物の分離方法は、他の化合物をアミノ酸として、ペプチドの合成方法に利用することができる。
【0132】
本発明のオリゴペプチド合成方法は、本発明の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する溶解工程と、分離用担体の原子団Aにアミノ酸を結合させ、分離用担体に結合したアミノ酸に他のアミノ酸を逐次結合させることにより、オリゴペプチドが結合した分離用担体を得る結合工程と、オリゴペプチドが結合した状態で、分離用担体を晶析させる晶析工程、又は、オリゴペプチドが結合した状態で、分離用担体を特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析させる選択工程と、晶析工程又は選択工程の後に、前記オリゴペプチドが結合した前記分離用担体から前記オリゴペプチドを切り出す切出工程と、を含むものである。
【0133】
なお、本方法は、他の化合物をアミノ酸として、分離用担体に逐次結合させ、分離用担体にペプチドを保持させた点以外は、溶解工程、不純物除去工程、選択工程(組成変化手段、温度変化手段)において、前記[(1)(i)本発明の分離用担体を可溶性溶媒に溶解し、目的の特定の化合物を分離用担体に結合した後に、晶析及び/又は抽出を行う方法]と共通するものである。当該工程については、前記記載を参照されたい。
【0134】
〔結合工程〕
結合工程では、分離用担体の反応部位である原子団Aにアミノ酸を結合させて、アミノ酸と分離用担体との複合化合物を得た後、原子団Aに結合したアミノ酸に他のアミノ酸を逐次結合させて、オリゴペプチドと分離用担体との複合化合物を得る。つまり、結合工程では、原子団Aを始点として複数のアミノ酸を所望の順序で逐次結合させ、オリゴペプチドと分離用担体との複合化合物を得る。逐次結合は、既にアミノ酸又はオリゴペプチドとの複合化合物となっている分離用担体が含まれている液相と、同一の液相中にて行うものであってもよく、一度、複合化合物となっている分離用担体を固体化(結晶化)して分離した後に、別の液相にて行うものであってもよい。
【0135】
この結合工程で結合させるアミノ酸は、特に限定されるものではないが、従来の固相反応法で用いられる保護アミノ酸、例えばFmoc−アミノ酸、Cbz−アミノ酸等を用いることができる。また、分離用担体に結合させるアミノ酸の数は、特に限定されるものではないが、2以上5以下が好ましい。
【0136】
〔晶析工程〕
晶析工程では、前工程である結合工程において分離用担体に結合させたオリゴペプチドを、分離用担体に伴わせた状態のままで晶析させる。この晶析工程では、分離用担体にオリゴペプチドを結合させた状態を維持したままで晶析させることができれば、いかなる手段を用いてもよく、例えば、溶液組成を変化させる手段及び/又は溶液温度を変化させる手段を好ましく用いることができる。また、アミノ酸を脱保護した後に晶析を行う場合、ギ酸等の弱酸を添加することによって塩を形成させ、晶析し易くすることも可能である。
【0137】
〔切出工程〕
切出工程では、晶析工程又は選択工程にて得られたオリゴペプチドと分離用担体との複合化合物からオリゴペプチドを切り出す。切出工程では、トリフルオロ酢酸のような溶解性試薬を用いることも可能であるが、切り出されたオリゴペプチドとの分離が容易でないため、固相試薬を用いることが好ましい。切出工程で用いられる固相試薬は、複合化合物からオリゴペプチドを切り出せるものであれば特に限定されるものではなく、例えば固体の酸、塩基、還元剤を用いることができる。このうち、固体酸試薬としては、例えば、酸性イオン交換樹脂、酸性金属酸化物、酸性複合金属酸化物、金属硫酸塩、金属リン酸塩、結晶性メタロシリケート、ゼオライト、シリカアルミナ等を挙げることができる。より具体的には、例えば、ゼオライト触媒、モンモリロナイトを挙げることができる。
【0138】
[(2)本発明の分離用担体自身を融解して液相化し、液相中で目的の特定の化合物を分離用担体に結合した後に、凝固させる方法]
本発明の分離用担体自身を溶解して液相化して、当該液相にて特定の化合物と反応させる分離方法は、本発明の分離用担体を融点以上に暖めて、分離用担体を液相化させる融解工程と、融解した前記分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を反応結合させる反応工程と、前記他の化合物が結合した状態で、前記分離用担体を固相化させる凝固工程と、を含むものである。
【0139】
〔融解工程〕
本分離方法における融解工程は、分離用担体を融点以上に暖めて、分離用担体自身を融解させて液相化させるものであれば、特に限定されるものではない。
【0140】
〔反応工程〕
本分離方法における反応工程は、分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を結合させて、分離用担体と他の化合物との複合化合物を得る工程である。反応工程における結合方法としては、前工程で液相化させた分離用担体の反応部位Aに、反応部位Aと反応する部分を有する他の化合物を反応結合させる方法であれば、特に限定されるものではなく、上記の第一結合工程と同様に、液相における各種の化学反応を用いることができる。例えば、エステル結合やアミド結合を形成することにより、結合する方法を挙げることができる。尚、反応工程においては、液相化を維持させる目的で、分離用担体の融点以上の温度を維持することが好ましい。
【0141】
〔第二結合工程〕
本分離方法においては、上記の反応工程の後に、分離用担体の反応部位Aに結合した他の化合物と、更に別の化合物と、を結合させる第二結合工程を含むものであってもよい。第二結合工程は、上記の第二結合工程と同様の内容にて実施できる。
【0142】
〔不純物除去工程〕
また、本分離方法においては、上記の分離方法と同様に、下記の凝固工程を実施する前に、不純物を除去するための不純物除去工程を含めることが好ましい。
【0143】
〔凝固工程〕
本分離方法における凝固工程は、融解して液化した分離用担体に、前記の反応工程あるいは更に第二結合工程を実施して、他の化合物等を結合した後に、これらの化合物を伴った状態で、分離用担体を凝固させて固相化させる工程である。凝固工程における固相化の方法は、特に限定されるものではないが、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物に、当該複合化合物の溶解度の低い貧溶媒を添加する貧溶媒添加手段によりなされることが、操作が容易である点から好ましい。
【0144】
〔洗浄工程〕
本分離方法においては、上記の凝固工程により得られる固相により、目的の特定の化合物の分離は完了しているものの、任意に、洗浄工程を施してもよい。洗浄工程とは、他の化合物が結合した分離用担体の固体を、この固体の溶解度が低い貧溶媒により洗浄する工程である。
【0145】
〔不純物除去工程〕
本分離方法においては、上記の分離方法と同様に、下記の抽出工程を実施する前に、不純物を除去するための不純物除去工程を更に含めることが好ましい。
【0146】
〔抽出工程〕
本分離方法においては、上記の凝固工程又は洗浄工程の後に、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物を、特定の溶媒に選択的に抽出する抽出工程を含めることが好ましい。抽出工程は、特に限定されるものではないが、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物が溶解する溶媒を添加する溶媒添加手段によりなされることが好ましい。
【0147】
〔切出工程〕
尚、本分離方法においては、上記の凝固工程又は抽出工程の後に、上記の分離方法と同様に、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物に対して、化合物と、分離用担体と、に分離する工程を含むことが好ましい。凝固工程で操作を終了する場合には、凝固工程の後に切出工程を含めることが可能であり、抽出工程までを実施する場合には、抽出工程の後に切出工程を含めてもよい。
【0148】
[(3)本発明の分離用担体を可溶性溶媒に溶解し、引き続き、本発明の分離用担体を結晶化(固相化)した後に、目的の特定の化合物を結合捕捉する方法]
本発明の分離用担体を可溶性溶媒に溶解し、引き続き、目的の化合物を分離用担体に結合させる前に、分離用担体の結晶化(固相化)行う化合物の分離方法は、本発明の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する溶解工程と、前記分離用担体を結晶化させる結晶化工程と、結晶化した前記分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を結合して捕捉する捕捉工程と、を含むものである。
【0149】
〔溶解工程〕
本分離方法における溶解工程は、上記の溶解工程と同一の内容で実施できる。
【0150】
〔結晶化工程〕
本分離方法における結晶化工程は、分離用担体自身を結晶化(固相化)させる工程である。本分離方法における結晶化工程は、分離用担体を結晶化(固相化)させることができれば、特に限定されるものではないが、例えば、分離用担体自身が溶解している溶液の組成を変化させる手段及び/又は分離用担体自身が溶解している溶液の温度を変化させる手段を、好ましく用いることができる。
【0151】
〔不純物除去工程〕
また、本分離方法においては、上記の分離方法と同様に、下記の捕捉工程を実施する前に、不純物を除去するための不純物除去工程を含めることが好ましい。
【0152】
〔捕捉工程〕
本分離方法における捕捉工程としては、前工程で結晶化(固相化)させた分離用担体の反応部位Aに、反応部位Aと反応する部分を有する特定の他の化合物を結合させて、分離用担体と他の化合物との複合化合物を得る工程である。本分離方法における捕捉工程は、反応部位Aと特定の他の化合物が結合する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、アミド結合、エステル結合を挙げることができる。
【0153】
〔切出工程〕
尚、本分離方法においては、上記の分離方法と同様に、捕捉工程にて得られた、分離対象となる化合物と分離用担体との複合化合物に対して、化合物と、分離用担体と、に分離する工程を含むことが好ましい。
【実施例】
【0154】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0155】
<実施例1>
[分離用担体の合成]
以下に、本発明の分離用担体(図中の化合物2及び化合物5)の合成工程図を示す。尚、図中の番号は、化合物番号を示す。
【化3】

【0156】
〔2,4−ビスオクタデシロキシフェニルメタノール(化合物2)の合成〕
2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(化合物1)1g(0.0072mol)、オクタデシルブロマイド4.82g(0.0145mol)をジメチルホルムアミド(DMF)20mLに溶解させ、炭酸カリウム5g(0.0372mol)を投入して、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。得られた反応液をヘキサン100mLで3回抽出し、引き続き、このヘキサン溶液を減圧濃縮した。これにメタノール(MeOH)200mLを加えて結晶化させ、生成した結晶を濾別した。得られた結晶を、テトラヒドロフラン(THF)80mL、メタノール(MeOH)30mLに溶解させ、氷浴下で攪拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム0.7g(0.0184mol)を添加し、更に1時間の攪拌を実施した後、アセトン20mLを加えて反応を終結させた。引き続き、減圧濃縮した後、水50mLを加えた。得られた反応液を、ヘキサン100mLで3回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去した。更に、メタノール(MeOH)200mLを加えて結晶化させ、生成した結晶を濾別し、目的の化合物2(2,4−ビスオクタデシロキシフェニルメタノール)を得た。収率は71%であった。
【0157】
H−NMR(400MHz,CDCl
δ7.12(d,J=8.05,1H), 6.45(d,J=2.20,1H), 6.41(dd,J=8.05,2.20,1H), 4.60(d,J=6.59,2H), 3.97(t,J=6.59,2H),3.93(t,J=6.59,2H), 1.86−1.69(m,4H), 1.52−1.15(m,60H), 0.93−0.83(m,6H)
13C−NMR(75MHz,CDCl
δ160.1, 158.1, 129.5, 121.7, 104.4, 99.8, 68.1, 68.0, 61.9, 31.9, 29.7, 29.6, 29.4, 29.3, 29.2, 26.1, 26.0, 22.7, 14.1
【0158】
[溶解度の評価]
得られた化合物2(2,4−ビスオクタデシロキシフェニルメタノール)につき、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、テトラヒドロフランを溶媒としたそれぞれの場合について、25℃における溶解度の測定を実施した。結果を表1に示す。
【表1】

【0159】
<比較例1>
下記の化学式を有する3,4,5−トリス−オクタデシロキシベンジルアルコール(化合物6)につき、実施例1と同様に、各種溶媒についての25℃における溶解度を測定した。結果を表1に示す。
【化4】

【0160】
表1に示されるように、本発明の分離用担体のひとつである化合物2(2,4−ビスオクタデシロキシフェニルメタノール)は、従来品である化合物6(3,4,5−トリス−オクタデシロキシベンジルアルコール)よりも、汎用反応溶媒への溶解度が高い。このため本発明の分離用担体によれば、生産性の向上を図ることができる。
【0161】
<実施例2>
〔2,4−ビス−(2−デシル−テトラデシロキシ)−フェニルメタノール(化合物5)の合成〕
2−デシル−1テトラデカノール(化合物3)9.7g(0.0274mol)、ピリジン10.6g(0.1340mol)を、ジクロロメタン100mLに溶解させ、氷浴下で攪拌しながら、トシルクロライド15.5g(0.0813mol)を添加した。室温で3時間攪拌した後、氷水20mLを加えて反応を終結した。得られた反応液にヘキサン200mLを加え、1N塩酸100mLで3回洗浄した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLで3回、更に、飽和食塩水で3回洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して化合物4(トルエン−4−スルホン酸−2−デシル−1テトラデシルエステル)を得た。収率は88%であった。
【0162】
H−NMR(300MHz,CDCl
δ7.78(d,J=8.25,2H), 7.33(d,J=8.44,2H), 3.91(d,J=5.14,2H), 2.44(s,3H), 1.65−1.51(m,1H), 1.38−1.02(m,40H), 0.90−0.78(m,6H)
【0163】
2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド293mg(0.0021mol)、上記で得られた化合物4(トルエン−4−スルホン酸−2−デシル−1テトラデシルエステル)2.8g(0.0055mol)を、ジメチルホルムアミド(DMF)20mLに溶解させ、これに炭酸カリウム1.5g(0.0109mol)を投入し、窒素雰囲気下、100℃で16時間の攪拌を実施した。得られた反応液をヘキサン100mLで3回抽出し、得られたヘキサン溶液を飽和食塩水100mLで3回洗浄した。引き続き、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮した後に、テトラヒドロフラン(THF)100mL、メタノール(MeOH)40mLを加えて溶解させ、氷浴下で攪拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム240mg(0.0063mol)を添加し、更に1時間攪拌した後、アセトン20mLを加えて反応を終結させた。減圧濃縮した後、水50mLを加え、反応液を、ヘキサン100mLで3回抽出した。更に、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶液ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で分離精製することにより、目的の化合物5(2,4−ビス−(2−デシル−テトラデシロキシ)−フェニルメタノール)を得た。収率は70%であった。
【0164】
H−NMR(300MHz,CDCl
δ7.13(d,J=8.07,1H), 6.47−6.38(m,2H), 4.61(d,J=6.42,2H), 3.84(dd,J=17.87,6.42,4H), 1.86−1.63(m,2H),1.52−1.13(m,80H), 0.97−0.75(m,12H)
【0165】
<実施例3>
[分離用担体を用いた分離方法]
以下に、実施例1で得られた分離用担体(化合物2)を用いた分離方法の工程図を示す。尚、図中の番号は、化合物番号を示す。
【化5】

【0166】
〔第一結合工程〕
実施例1で得られた本発明の分離用担体である化合物2(2,4−ビスオクタデシロキシフェニルメタノール)1g(1.5502mmol)、4−ヨードベンゾイックアシッド0.77g(3.1046mmol)、ジメチルアミノピリジン100mg(0.8195mmol)を、ジクロロメタン50mLに溶解させ、更に、ジイソプロピルカルボジイミド0.98g(7.7778mmol)を加えて、室温で2時間の攪拌を実施した。引き続き、減圧下で溶媒を留去した後、メタノール(MeOH)200mLを加えて結晶をろ過し、4−ヨード−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル(化合物7)を得た。収率は81%であった。
【0167】
H−NMR(300MHz,CDCl
δ7.78−7.71(m,4H), 7.27(d,J=8.4,1H), 6.48−6.42(m,2H), 5.32(s,2H), 4.02−3.87(m,4H),1.86−1.65(m,4H), 1.51−1.13(m,64H), 0.95−0.80(m,6H)
【0168】
〔第二結合工程(担体に結合した化合物への他の化合物のカップリング工程)〕
上記で得られた化合物7(4−ヨード−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)251mg(0.2868mol)、酢酸パラジウム(II)3.2mg(0.0151mmol)、トリ−o−トルイルホスフィン8.7mg(0.0286mmol)に、ジメチルホルムアミド(DMF)20mLを添加し、10分間攪拌した。得られた混合液に、リン酸カリウム183mg(0.8632mmol)、2−ナフタレンボロン酸148mg(0.8605mmol)、シクロヘキサン20mLを加えて、80℃で20時間の攪拌を実施した。反応液を室温まで冷却したところ、二層溶液となった。上層のみを回収し、減圧下で濃縮した後、メタノール(MeOH)200mLを加えて結晶をろ過することにより、分離用担体に結合した化合物へのカップリングが行われた化合物8(4−ナフタレン−2−イル−ベンゾイックアシッド2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)を得た。収率は80%であった。
【0169】
H−NMR(300MHz,CDCl
δ8.16(d,J=8.3,2H), 8.06(s,1H), 7.97−7.82(m,3H), 7.80−7.69(m,3H), 7.57−7.44(m,2H),7.33(d,J=8.8,1H), 6.53−6.41(m,2H), 5.38(s,2H), 4.04−3.88(m,4H), 1.86−1.69(m,4H), 1.51−1.12(m,64H), 0.95−0.79(m,6H)
【0170】
〔切出工程〕
上記で得られた化合物8(4−ナフタレン−2−イル−ベンゾイックアシッド2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)100mgを、ジクロロメタン30mLに溶解し、トリフルオロ酢酸0.3mLを加えて、室温で30分攪拌した。引き続き、溶媒を減圧留去した後、メタノール(MeOH)100mLを加えた後にろ過し、結晶を取り除いた。ろ液を減圧留去することにより、4−ナフタレン−2−イル−ベンゾイックアシッドを得た。収率は95%であった。
【0171】
[分離効率の評価]
得られた化合物7(4−ヨード−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)につき、表2に示される溶媒中で、表2に示される時間攪拌することにより、担体から化合物の分離を行い、その反応率を求めた。尚、反応率は、HPLC測定による原料消失を評価した。結果を表2に示す。
【表2】

【0172】
<比較例2>
下記の化学式を有する、化合物6(3,4,5−トリス−オクタデシロキシベンジルアルコール)に4−ヨードベンゾイックアシッドを縮合させた化合物9(4−ヨード−ベンゾイックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシロキシベンジルエステル)につき、実施例2と同様に、各種条件においての分離反応率を求めた。結果を表2に示す。
【化6】

【0173】
表2に示されるように、本発明の分離用担体と他の化合物との複合化合物のひとつである化合物7(4−ヨード−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)は、従来品との縮合物のひとつである化合物9(4−ヨード−ベンゾイックアシッド3,4,5−トリス−オクタデシロキシベンジルエステル)よりも、温和な条件で短時間に切出工程を終えることができる。したがって、酸に不安定な化合物であっても、本発明の分離用担体を適用することができる。
【0174】
<実施例4>
実施例1においてオクタデシロキシブロマイドに代えて1−ブロモドコサン5.64g(0.0145mol)を用いた他は実施例1と同様にして、目的の化合物(2,4−ビスドコサノキシフェニルメタノール)を得た。収率は72%であった。
【0175】
NMR測定結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl
δ7.12(d,J=8.29,1H), 6.45(d,J=2.20,1H), 6.41(dd,J=8.29,2.20,1H), 4.60(d,J=6.59,2H), 3.97(t,J=6.59,2H),3.93(t,J=6.59,2H),2.26(t,J=6.59,1H), 1.78(m,4H), 1.44(m,72H), 0.88(t,J=6.83,6H)
【0176】
得られた化合物につき、実施例1と同様にしてテトラヒドロフランに対する溶解性を測定した結果、25℃における溶解度は236mg/mlであった。
【0177】
実施例3において(2,4−ビスオクタデシロキシフェニルメタノール)に代えて上記化合物1.17gを用いた他は実施例3の第一結合工程と同様にして、4−ヨード−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−ドコサノキシベンジルエステルを得た。収率は80%であった。
【0178】
H−NMR(300MHz,CDCl
δ7.78−7.71(m,4H), 7.27(d,J=8.4,1H), 6.48−6.42(m,2H), 5.32(s,2H), 4.02−3.87(m,4H),1.86−1.65(m,4H), 1.51−1.13(m,76H), 0.95−0.80(m,6H)
【0179】
得られた化合物について実施例3と同様にして、ジクロロメタン中1%トリフルオロ酢酸で30分攪拌した時の分離効率の評価を行なった。結果は反応率100%であった。
【0180】
<実施例5>
[分離用担体を用いた分離方法(マイクロ波を用いた反応)]
以下に、実施例1で得られた分離用担体(化合物2)を用いた分離方法の工程図を示す。尚、図中の番号は、化合物番号を示す。
【化7】

【0181】
〔第一結合工程〕
実施例1で得られた本発明の分離用担体である化合物2(2,4−ビスオクタデシロキシフェニルメタノール)1g(1.5502mmol)、4−ブロモベンゾイックアシッド0.62g(3.1046mmol)、ジメチルアミノピリジン100mg(0.8195mmol)を、ジクロロメタン50mLに溶解させ、更に、ジイソプロピルカルボジイミド0.98g(7.7778mmol)を加えて、室温で2時間の攪拌を実施した。引き続き、減圧下で溶媒を留去した後、メタノール(MeOH)200mLを加えて結晶をろ過し、化合物10(4−ブロモ−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)を得た。収率は84%であった。
【0182】
〔第二結合工程(担体に結合した化合物への他の化合物のカップリング工程)〕
上記で得られた化合物10(4−ブロモ−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)24.8mg(0.03mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)クロライド1.1mg(0.0015mmol)に、ジメチルホルムアミド(DMF)5mLを添加し、10分間攪拌した。リン酸カリウム19.0mg(0.09mmol)、3−メトキシカルボニルボロン酸13.5mg(0.075mmol)、シクロヘキサン5mLを加えて、50W、10分間マイクロ波を照射した。照射後、室温に戻して二相分離させた後、上層を分取して溶媒を減圧留去した。メタノール30mLを加え、結晶をろ過し、化合物11(ビフェニル−3,4’−ジカルボキシリックアシッド 4’−(2,4−ビス−オクタデシロキシ−ベンジル)エステル 3−メチルエステル)を得た。収率は99%であった。
【0183】
<実施例6>
[分離用担体を用いた分離方法(マイクロ波を用いたフロー合成反応)]
図1に、実施例1で得られた分離用担体(化合物2)を用いた分離方法の工程図を示す。尚、図中の番号は、化合物番号を示す。
【0184】
〔第一結合工程〕
実施例1で得られた本発明の分離用担体である化合物2(2,4−ビスオクタデシロキシフェニルメタノール)1g(1.5502mmol)、2−ヨードベンゾイックアシッド0.77g(3.1046mmol)、ジメチルアミノピリジン100mg(0.8195mmol)を、ジクロロメタン50mLに溶解させ、更に、ジイソプロピルカルボジイミド0.98g(7.7778mmol)を加えて、室温で2時間の攪拌を実施した。引き続き、減圧下で溶媒を留去した後、メタノール(MeOH)200mLを加えて結晶をろ過し、化合物12(2−ヨード−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)を得た。収率は79%であった。
【0185】
〔第二結合工程(担体に結合した化合物への他の化合物のカップリング工程)〕
上記で得られた化合物12(2−ヨード−ベンゾイックアシッド−2,4−ビス−オクタデシロキシベンジルエステル)26.2mg(0.03mmol)をシクロヘキサン4mLに溶解させた。別途ジメチルホルムアミド4mLに、エチニルベンゼン30.6mg(0.3mmol)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)4.2mg(0.006mmol)、トリエチルアミン30.3mg(0.3mmol)、ヨウ化銅0.5mg(0.003mmol)を加えて攪拌した。ここに、上記で得られた化合物12のシクロヘキサン溶液を加え、窒素ガスで置換した後、図1に示すような方法でフロー合成を行った。この時、チューブは直径1mmのテフロン(登録商標)製であり、マイクロ波照射ユニット中には、170cmのチューブが埋設されている。供給ユニットを強攪拌しながら、マイクロ波照射条件150W、流速3mL/分で供給ユニットから回収ユニットに向け、溶液を流した。全量流した後、回収ユニットの上層から、化合物13(2−スチルベンゾイックアシッド2,4−ビス−オクタデシロキベンジルエステル)を得た。収率は90%であった。
【0186】
<実施例7>
[本発明の分離用担体を用いたFmocジペプチド合成]
〔分離用担体の溶解〕
下記化学式(2)で示される2,4−ビス−ドコシロキシベンジルアルコール(JITSUBO株式会社製、商品名:Hiver−Kb−OH)(以下、「Kb」と記す。)を分離用担体とし、その3800mg(5mmol)をジクロロメタン200mLに溶解して担体溶液を調製した。
【化8】

【0187】
〔分離用担体への第1のアミノ酸の結合〕
上記で得られた担体溶液に、Fmoc−グリシン(Gly)−OH 2300mg(7.5mmol)、ジメチルアミノピリジン120mg(1mmol)、ジイソプロピルカルボジイミド1.5mL(10mmol)をそれぞれ添加し、室温で30分間攪拌して反応させた。反応の終了は薄層クロマトグラフィにて確認した。反応後、アセトニトリル200mLを添加し、溶媒を少しずつ減圧留去した。得られた結晶を桐山ロートで濾過し、目的化合物であるKb−Gly−Fmocを回収した。収率は92%であった。更に、この化合物3640mg(3.5mmol)をジクロロメタン200mLに溶解し、DBU(1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7)を580μL添加し、室温で1時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶液にギ酸580μL、アセトニトリル200mLをそれぞれ添加し、溶媒を少しずつ減圧留去した。得られた結晶を桐山ロートで濾過し、目的化合物であるKb−Gly−Hを回収した。
【0188】
〔分離用担体への第2のアミノ酸の結合〕
上記で得られたKb−Gly−Hの結晶2100mg(2.6mmol)をジクロロメタン100mLに溶解し、この溶液に、Fmoc−アラニン(Ala)−OH・HO 1000mg(3mmol)、HBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)1140mg(3mmol)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)400mg(3mmol)、ジメチルホルムアミド20mL、ジイソプロピルエチルアミン550μL(3mmol)をそれぞれ添加し、室温で1時間攪拌して反応させた。反応後、アセトニトリル200mLを添加し、溶媒を少しずつ減圧留去した。得られた結晶を桐山ロートで濾過し、目的化合物であるKb−Gly−Ala−Fmocを回収した。収率は93%であった。
【0189】
H−NMR(300MHz,CDCl
δ7.76(2H,d,J=7.2Hz), 7.58(2H,d,J=7.2Hz), 7.40(2H,t,J=7.2Hz), 7.31(2H,t,J=7.2Hz), 7.18(1H,d,J=7.9Hz), 6.47−6.40(3H,m), 5.32(1H,br), 5.17(2H,s), 4.51−4.16(4H,m), 4.09−3.99(2H,m), 3.98−3.87(4H,m), 1.84−1.53(7H,m), 1.47−1.19(76H,m), 0.88(6H,m)
【0190】
〔本発明の分離用担体に結合したFmocジペプチドの固相試薬による切り出し〕
上記で得られたKb−Gly−Ala−Fmoc 1000mg(0.90mmol)をジクロロメタン25mLに溶解し、この溶液に固体酸試薬(Sigma−Aldrich社製、商品名:モンモリロナイトK10)1000mgを添加し、室温で3.5時間攪拌して反応させた。反応の終了は薄層クロマトグラフィにて確認した。反応後、メタノール60mLを添加し、溶媒を少しずつ減圧留去した。得られたKbの結晶と固体酸試薬とを桐山ロートで濾過し、濾液を回収した。この濾液の溶媒を減圧留去し、減圧乾燥することで、目的化合物であるFmoc−Ala−Gly−OHを回収した。収率は69%であった。
【0191】
実施例7から分かるように、上記化学式(2)で示される分離用担体を用いることにより、分離用担体上で効率よくFmocジペプチドを合成することができ、このFmocジペプチドが結合した分離用担体を分離することができる。また、固体酸試薬で処理することにより、分離用担体からFmocジペプチドを切り出すことができる。
【0192】
<実施例8>
[本発明の分離用担体を用いたFmocトリペプチド合成]
〔分離用担体の溶解〕
実施例1と同様にKbを分離用担体とし、その3800mg(5mmol)をシクロヘキサン100mLに溶解して担体溶液を調製した。
【0193】
〔分離用担体への第1のアミノ酸の結合〕
上記で得られた担体溶液に、ジメチルホルムアミド100mLにFmoc−Leu−OH 2640mg(7.5mmol)、ジメチルアミノピリジン120mg(1mmol)、ジイソプロピルカルボジイミド1.5mL(10mmol)をそれぞれ添加した溶液を添加し、55℃で1時間攪拌して反応させた。反応の終了は薄層クロマトグラフィにて確認した。反応後、室温に冷却すると二層溶液となるため、Kb−Leu−Fmocを含む上層溶液を回収した。この上層溶液に、1%DBU含有ジメチルホルムアミド70mLを添加して二層溶液とし、室温で30分間攪拌して反応させた。反応の終了は薄層クロマトグラフィにて確認した。反応後、Kb−Leu−Hを含む上層溶液を回収した。
【0194】
〔分離用担体への第2のアミノ酸の結合〕
上記で得られた上層溶液に、ジメチルホルムアミド70mLにFmoc−Leu−OH 2640mg(7.5mmol)、HBTU2850mg(7.5mmol)、HOBt1000mg(7.5mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1375μL(7.5mmol)をそれぞれ添加した溶液を添加し、55℃で1時間攪拌して反応させた。反応の終了は薄層クロマトグラフィにて確認した。反応後、室温に冷却すると二層溶液となるため、Kb−Leu−Leu−Fmocを含む上層溶液を回収した。この上層溶液に、1%DBU含有ジメチルホルムアミド70mLを添加して二層溶液とし、室温で30分間攪拌して反応させた。反応の終了は薄層クロマトグラフィにて確認した。反応後、Kb−Leu−Leu−Hを含む上層溶液を回収した。
【0195】
〔分離用担体への第3のアミノ酸の結合〕
上記で得られた上層溶液に、ジメチルホルムアミド70mLにFmoc−Gly−OH 2230mg(7.5mmol)、HBTU2850mg(7.5mmol)、HOBt1000mg(7.5mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1375μL(7.5mmol)をそれぞれ添加した溶液を添加し、55℃で1時間攪拌して反応させた。反応の終了は薄層クロマトグラフィにて確認した。反応後、室温に冷却すると二層溶液となるため、Kb−Leu−Leu−Gly−Fmocを含む上層溶液を回収した。この上層溶液の溶媒を少しずつ減圧留去した後、メタノール300mLを添加した。得られた結晶を桐山ロートで濾過し、目的化合物であるKb−Leu−Leu−Gly−Fmocを回収した。収率は48%であった。
【0196】
H−NMR(300MHz,CDCl
δ7.74(2H,d,J=7.5Hz), 7.58(2H,d,J=7.5Hz), 7.38(2H,dt,J=0.6,7.5Hz), 7.29(2H,dt,J=0.9,7.5Hz), 7.14(1H,d,J=8.7Hz), 6.43−6.31(3H,m), 6.28−6.21(1H,m), 5.37(1H,br), 5.15(1H,d,J=11.7Hz), 5.06(1H,d,J=11.7Hz) 4.62−4.55(1H,m), 4.49−3.34(3H,m), 4.20(1H,t,J=6.8Hz), 3.95−3.81(6H,m), 1.81−1.36(10H,m), 1.34−1.14(76H,m),0.92−0.80(18H,m)
【0197】
実施例8から分かるように、上記化学式(2)で示される分離用担体を用いることにより、分離用担体上で効率よくFmocトリペプチドを合成することができ、このFmocトリペプチドが結合した分離用担体を分離することができる。特にこのFmocトリペプチドはLeu−Leuの結合を含み、固相反応法では合成が困難なものである。なお、固相試薬で処理することにより、分離用担体からFmocトリペプチドを切り出すことも可能である。
【0198】
<比較例3>
[別の分離用担体に結合したFmocジペプチドの固相試薬による切り出し]
下記化学式(3)で示される3,4,5−トリス−オクタデシロキシベンジルアルコール(以下、「Ka」と記す。)を分離用担体として実施例1と同様にKa−Gly−Ala−Fmocを回収した。そして、Ka−Gly−Ala−Fmoc 1160mg(0.92mmol)をジクロロメタン25mLに溶解し、この溶液に固体酸試薬(Sigma−Aldrich社製、商品名:モンモリロナイトK10)1000mgを添加し、室温で3.5時間攪拌して反応させた。反応後、メタノール60mLを添加し、溶媒を少しずつ減圧留去した。得られた結晶と固体酸試薬とを桐山ロートで濾過し、濾液を回収した。この濾液の溶媒を減圧留去し、減圧乾燥したが、目的化合物であるFmoc−Ala−Gly−OHを得ることはできなかった。
【化9】

【0199】
比較例3から分かるように、上記化学式(3)で示される分離用担体を用いた場合、Fmocジペプチドを得ることができなかった。これは、分離用担体であるKaとジペプチドとの間の結合が比較的切断され難く、固体酸試薬では切断されなかったためと考えられる。
【0200】
<比較例4>
[固相担体に結合したFmocジペプチドの固相試薬による切り出し]
クロロ−トリチル(2−クロロ)樹脂(渡辺化学工業株式会社製)(1.45mmol/g)(以下、「CTC」と記す。)を固相担体として、固相反応法によりCTC−Gly−Ala−Fmocを合成した。そして、CTC−Gly−Ala−Fmoc 580mg(担持量0.84mmol)をジクロロメタン25mLに溶解し、この溶液に固体酸試薬(Sigma−Aldrich社製、商品名:モンモリロナイトK10)1000mgを添加し、室温で3.5時間攪拌して反応させた。反応後、メタノール60mLを添加し、溶媒を少しずつ減圧留去した。得られた結晶と固体酸試薬とを桐山ロートで濾過し、濾液を回収した。この濾液の溶媒を減圧留去し、減圧乾燥したが、目的化合物であるFmoc−Ala−Gly−OHを得ることはできなかった。
【0201】
比較例4から分かるように、固相担体を用いた場合、Fmocジペプチドを得ることができなかった。これは、固相担体と固体酸試薬とが共に不溶物であるため互いに反応することがなく、その結果切断が起こらなかったためと考えられる。
【0202】
<実施例9>
[Fmocジペプチドを用いた固相反応法によるトリペプチド合成]
〔固相担体上でのトリペプチド合成〕
比較例4と同様にCTCを固相担体として、固相反応法によりCTC−フェニルアラニン(Phe)−Hを合成した。また、実施例7と同様にFmoc−Ala−Gly−OHを合成した。そして、ジクロロメタン2mLに、CTC−Phe−H 110mg(0.145mmol)、Fmoc−Ala−Gly−OH 160mg(0.4mmol)、HBTU165mg(0.4mmol)、HOBt60mg(0.4mmol)、ジメチルホルムアミド1mL、ジイソプロピルエチルアミン75μL(0.4mmol)をそれぞれ添加し、室温で2時間攪拌して反応させた。反応後、固相をジメチルホルムアミド2mLで3回、メタノール2mLで3回、ジクロロメタン2mLで3回、それぞれ洗浄した。その後、予め調製したFmoc脱保護溶液(ジメチルホルムアミド:ピペリジン:DBU=96:2:2)2mLを添加し、室温で1時間攪拌して反応させることにより、CTC−Phe−Gly−Ala−Hを得た。
【0203】
〔固相担体に結合したトリペプチドの切り出し〕
上記で得られたCTC−Phe−Gly−Ala−Hをジメチルホルムアミド2mLで3回、メタノール2mLで3回、ジクロロメタン2mLで3回、それぞれ洗浄した。その後、予め調製した切り出し溶液(1%トリクロロ酢酸含有ジクロロメタン)20mLを添加し、室温で30分間攪拌して反応させた。反応後、溶液を桐山ロートで濾過し、濾液を回収した。この濾液の溶媒を減圧留去し、減圧乾燥することにより、目的化合物であるH−Ala−Gly−Phe−OHを得た。高速液体クロマトグラフィによる分析の結果、純度は94%であった。
【0204】
実施例9から分かるように、上記化学式(2)で示される分離用担体を用いて合成したFmocジペプチドを固相反応法の材料として用いることにより、トリペプチドを少ない工程数で迅速且つ高純度に合成することができる。
【0205】
<比較例5>
[固相反応法によるトリペプチド合成]
〔固相担体上でのトリペプチド合成〕
比較例4と同様にCTCを固相担体として、固相反応法によりCTC−Phe−Hを合成した。そして、ジクロロメタン2mLに、CTC−Phe−H 110mg(0.145mmol)、Fmoc−Gly−OH 120mg(0.4mmol)、HBTU165mg(0.4mmol)、HOBt60mg(0.4mmol)、ジメチルホルムアミド1mL、ジイソプロピルエチルアミン75μL(0.4mmol)をそれぞれ添加し、室温で2時間攪拌して反応させた。反応後、固相をジメチルホルムアミド2mLで3回、メタノール2mLで3回、ジクロロメタン2mLで3回、それぞれ洗浄した。その後、予め調製したFmoc脱保護溶液(ジメチルホルムアミド:ピペリジン:DBU=96:2:2)2mLを添加し、室温で1時間攪拌して反応させることにより、CTC−Phe−Gly−Hを得た。このCTC−Phe−Gly−Hをジクロロメタン2mLに溶解し、Fmoc−Ala−OH・HO 130mg(0.4mmol)、HBTU165mg(0.4mmol)、HOBt60mg(0.4mmol)、ジメチルホルムアミド1mL、ジイソプロピルエチルアミン75μL(0.4mmol)をそれぞれ添加し、室温で2時間攪拌して反応させた。反応後、固相をジメチルホルムアミド2mLで3回、メタノール2mLで3回、ジクロロメタン2mLで3回、それぞれ洗浄した。その後、予め調製したFmoc脱保護溶液(ジメチルホルムアミド:ピペリジン:DBU=96:2:2)2mLを添加し、室温で1時間攪拌して反応させることにより、CTC−Phe−Gly−Ala−Hを得た。
【0206】
〔固相担体に結合したトリペプチドの切り出し〕
上記で得られたCTC−Phe−Gly−Ala−Hをジメチルホルムアミド2mLで3回、メタノール2mLで3回、ジクロロメタン2mLで3回、それぞれ洗浄した。その後、予め調製した切り出し溶液(1%トリクロロ酢酸含有ジクロロメタン)20mLを添加し、室温で30分間攪拌して反応させた。反応後、溶液を桐山ロートで濾過し、濾液を回収した。この濾液の溶媒を減圧留去し、減圧乾燥することにより、目的化合物であるH−Ala−Gly−Phe−OHを得た。高速液体クロマトグラフィによる分析の結果、純度は88%であった。
【0207】
比較例5から分かるように、従来通りの固相反応法でもトリペプチドを合成することはできたが、実施例9と比較して純度が低かった。これは、例えばCTC−Phe−HとFmoc−Gly−OHとが一部で反応せず、次に添加したFmoc−Ala−OH・HOと反応した結果、H−Ala−Phe−OHというジペプチドが合成されたり、あるいはCTC−Phe−Gly−HとFmoc−Ala−OH・HOとが一部で反応しなかった結果、H−Gly−Phe−OHというジペプチドが合成されたりしたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明の分離用担体及び化合物の分離方法は、化合物ライブラリー合成等による医薬品等の研究開発を促進することが可能となり、ひいては生化学工業や化学工業における技術革新に寄与することができる。また、生化学物質の分離・精製、医薬品候補物質の探索、新規化学合成反応法やペプチド連続合成法等の構築等において、革新的な技術となりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の化合物と結合する反応部位Aを有し、
前記反応部位Aが、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、又は、窒素原子のいずれかを介して前記他の化合物と結合することにより、前記他の化合物を分離するものである、下記化学式(1)で示される分離用担体。
【化1】

(式中、
Aは、炭素、酸素、硫黄、及び、窒素原子から選ばれる1以上の原子を有する反応部位であり、
X、Y、及び、Zは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1以上10以下のアシル基、ベンジル基、及び、フェニル基からなる群より選ばれるいずれかであり、
、Rは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有してもよい炭素数14以上60以下の炭化水素基、又は、置換基を有してもよい炭素数14以上60以下のアシル基のいずれか1以上を含む基である。)
【請求項2】
前記分離用担体は、溶解している溶液の組成及び/又は温度の変化に伴い、前記他の化合物と結合した状態で、特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析されるものである請求項1記載の分離用担体。
【請求項3】
前記他の化合物はアミノ酸であり、前記反応部位Aは、アミノ酸と結合する原子団であり、前記R、Rは、同一でも異なっていてもよく、置換基を有してもよい炭素数14以上30以下の炭化水素基、又は、置換基を有してもよい炭素数14以上30以下のアシル基のいずれか1以上を含む基である請求項1記載の分離用担体。
【請求項4】
前記反応部位Aは、アミノ酸と結合するヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基を有する原子団である請求項3記載の分離用担体。
【請求項5】
請求項1記載の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する溶解工程と、
前記分離用担体の反応部位Aに、他の化合物を結合させる第一結合工程と、
前記他の化合物が結合した状態で、前記分離用担体を晶析させる晶析工程、又は、前記他の化合物が結合した状態で、前記分離用担体を特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析させる選択工程と、を含む化合物の分離方法。
【請求項6】
前記第一結合工程の後に、前記分離用担体の反応部位Aに結合した前記他の化合物と、更に別の化合物と、を結合させる第二結合工程を含む請求項5記載の化合物の分離方法。
【請求項7】
前記晶析工程、又は、前記選択工程の後に、前記他の化合物が結合した前記分離用担体から、他の化合物を切り出す切出工程を更に含む請求項5又は6記載の化合物の分離方法。
【請求項8】
前記晶析工程、又は、前記選択工程の前に、前記分離用担体が溶解している溶液又は前記分離用担体が融解している液相から不純物を除去する不純物除去工程を更に含む請求項5から7いずれか記載の化合物の分離方法。
【請求項9】
前記晶析工程、又は、前記選択工程は、前記分離用担体が溶解している溶液の組成を変化させる組成変化手段及び/又は前記分離用担体が溶解している溶液の温度を変化させる温度変化手段によりなされる請求項5から8いずれか記載の化合物の分離方法。
【請求項10】
請求項3又は4記載の分離用担体を、可溶性溶媒に溶解して担体溶液を調製する溶解工程と、
前記分離用担体の前記反応部位Aにアミノ酸を結合させ、前記分離用担体に結合したアミノ酸に他のアミノ酸を逐次結合させることにより、オリゴペプチドが結合した前記分離用担体を得る結合工程と、
前記オリゴペプチドが結合した状態で、前記分離用担体を晶析させる晶析工程、又は、前記オリゴペプチドが結合した状態で、前記分離用担体を特定の相に選択的に抽出及び/又は選択的に晶析させる選択工程と、
前記晶析工程又は前記選択工程の後に、前記オリゴペプチドが結合した前記分離用担体から前記オリゴペプチドを切り出す切出工程と、を含むオリゴペプチド合成方法。
【請求項11】
前記晶析工程又は前記選択工程は、前記分離用担体が溶解している溶液の組成を変化させる組成変化手段及び/又は前記分離用担体が溶解している溶液の温度を変化させる温度変化手段によりなされる請求項10記載のオリゴペプチド合成方法。
【請求項12】
前記切出工程は、前記分離用担体が溶解している溶液に固相試薬を加えることによりなされる請求項10又は11記載のオリゴペプチド合成方法。
【請求項13】
前記固相試薬が固体酸試薬である請求項12記載のオリゴペプチド合成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−116418(P2010−116418A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30601(P2010−30601)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願2007−536510(P2007−536510)の分割
【原出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(505354464)JITSUBO株式会社 (4)
【Fターム(参考)】