切削インサートクランプ用クサビ部材及び刃先交換式切削工具
【課題】工具本体の構造を複雑にすることなく、切削インサートの切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うこと。
【解決手段】すくい面2の外周縁に切れ刃4を有する切削インサート1を、工具本体31に形成されたインサート取付座32にクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材10であって、工具本体31の凹所37に押し込まれるクサビ本体11には、切削インサート1のすくい面2又は着座面に当接されるクランプ面12と、クサビ本体11の押し込み方向に向かうに従い漸次クランプ面12との間隔が狭くなるように形成されたクサビ面13と、押し込み方向に沿うように延び、クランプネジ5が挿入される貫通孔14と、切削インサート1の側面3に対向配置され、貫通孔14の軸線方向に沿うように形成されるとともに、クランプ面12に対して立ち上がる受け面15と、が設けられる。
【解決手段】すくい面2の外周縁に切れ刃4を有する切削インサート1を、工具本体31に形成されたインサート取付座32にクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材10であって、工具本体31の凹所37に押し込まれるクサビ本体11には、切削インサート1のすくい面2又は着座面に当接されるクランプ面12と、クサビ本体11の押し込み方向に向かうに従い漸次クランプ面12との間隔が狭くなるように形成されたクサビ面13と、押し込み方向に沿うように延び、クランプネジ5が挿入される貫通孔14と、切削インサート1の側面3に対向配置され、貫通孔14の軸線方向に沿うように形成されるとともに、クランプ面12に対して立ち上がる受け面15と、が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートクランプ用クサビ部材及びこれを用いた刃先交換式切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料等からなる被削材にフライス加工を施す刃先交換式切削工具が知られている。この種の刃先交換式切削工具は、円盤状をなし、その先端外周部にインサート取付座が周方向に間隔をあけて複数形成された工具本体と、前記インサート取付座にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサートと、前記インサート取付座に対して前記切削インサートをクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材(以下、クサビ部材)と、を備えている。
【0003】
このようなクサビ式の刃先交換式切削工具は、各インサート取付座に装着した切削インサート同士の切れ刃突出量を調整するための切れ刃振れ調整機構を工具本体に備えており、例えば、仕上げ面精度が要求される切削加工などに用いられる。また、このように切れ刃突出量を調整することによって、仕上げ面精度が向上するだけでなく、切れ刃のチッピングや摩耗量のバラつきが抑制されて、工具寿命を延長する効果が得られる。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、クサビ部材が切削インサートのすくい面側(工具回転方向の前方側)に配置された、所謂フロントウェッジ方式の刃先交換式切削工具が記載されている。また、下記特許文献2には、クサビ部材が切削インサートのすくい面とは反対側(工具回転方向の後方側)に配置された、所謂ビハインドウェッジ方式の刃先交換式切削工具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−501363号公報
【特許文献2】米国特許第7390150号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の切削インサートクランプ用クサビ部材及び刃先交換式切削工具では、下記の課題があった。
すなわち、従来のクサビ式の刃先交換式切削工具では、切削インサートの切れ刃突出量を設定するための切れ刃振れ調整機構が工具本体に設けられており、工具本体に該切れ刃振れ調整機構を設けるためのスペースを確保しなければならず、工具本体の構造が複雑となっていた。また、外形の大きい工具本体に対して切れ刃振れ調整機構を設けるため、加工が困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、工具本体の構造を複雑にすることなく、切削インサートの切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うことができる切削インサートクランプ用クサビ部材及び刃先交換式切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、板状をなし、その厚さ方向を向くすくい面の外周縁に切れ刃を有する切削インサートを、工具本体に形成されたインサート取付座にクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材であって、前記工具本体の凹所に押し込まれるクサビ本体には、前記切削インサートの厚さ方向を向くすくい面又は着座面に当接されるクランプ面と、前記クランプ面に背向するように配置され、前記クサビ本体の押し込み方向に向かうに従い漸次前記クランプ面との間隔が狭くなるように形成されたクサビ面と、前記押し込み方向に沿うように延び、クランプネジが挿入される貫通孔と、前記切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面に対向配置され、前記貫通孔の軸線方向に沿うように形成されるとともに、前記クランプ面に対して立ち上がる受け面と、が設けられることを特徴とする。
また、本発明は、円盤状をなし、その先端外周部にインサート取付座が周方向に間隔をあけて複数形成された工具本体と、前記インサート取付座にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサートと、前記インサート取付座に対して前記切削インサートをクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材と、を備えた刃先交換式切削工具であって、前記切削インサートクランプ用クサビ部材として、前述した切削インサートクランプ用クサビ部材を用いたことを特徴としている。
【0009】
この切削インサートクランプ用クサビ部材を用いて、工具本体のインサート取付座に切削インサートをクランプするには、切削インサートの厚さ方向を向くすくい面及び着座面のうち一方をインサート取付座に当接させ、すくい面及び着座面のうち他方にクサビ本体のクランプ面を当接させた状態で、クサビ本体のクサビ面を工具本体の凹所内に摺接させつつ、貫通孔にクランプネジを挿入しねじ込んでいく。これにより、インサート取付座とクサビ本体のクランプ面との間で切削インサートが厚さ方向にクランプされるとともに、工具本体に固定される。
【0010】
そして、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材においては、クサビ本体には、貫通孔の軸線方向に沿うように形成されるとともに、クランプ面に対して立ち上がる受け面が設けられており、該受け面は、切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面に対向配置されている。つまり、クサビ本体の受け面と、切削インサートの側面との距離を設定することによって、切削インサートの切れ刃の突出量を設定できるようになっている。
【0011】
従って、例えば、受け面を研磨加工して切削インサートの側面に直接当接させることにより、切れ刃突出量を設定するようなことが可能であり、この場合、切削インサート同士の切れ刃振れ精度が高められるとともに、切れ刃突出量を調整する切れ刃振れ調整機構自体を設ける必要がなくなって、工具の構造を簡単にできる。また、外形の大きい工具本体に対し加工を施すことに比べて、切削インサートクランプ用クサビ部材の受け面を研磨することは、取り扱い性がよく加工が容易であり、製造が簡単である。
尚、受け面と切削インサートの側面との距離を調整する調整機構(切れ刃振れ調整機構)を設けた場合においても、当該調整機構をクサビ本体に設けることができるので、工具本体の構造を複雑にするようなことはない。
【0012】
また、受け面は貫通孔の軸線方向に沿うように形成されているので、クランプネジのねじ込み量によって、切削インサートの側面と該受け面との距離が変動するようなことが防止される。よって、切削インサートの切れ刃の突出量を精度よく設定することができる。
【0013】
また、切れ刃突出量を精度よく設定できるから、切削インサート同士の切れ刃振れ精度が向上して被削材の仕上げ面精度が高められるのみならず、切れ刃のチッピングや摩耗量のバラつきが抑制されて、工具寿命を延長する効果が得られる。
【0014】
このように、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材及びこれを用いた刃先交換式切削工具によれば、工具本体の構造を複雑にすることなく、切削インサートの切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うことができるのである。
【0015】
また、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材において、前記クサビ本体には、前記切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面と前記受け面との距離を調整可能な調整機構が設けられることとしてもよい。
【0016】
この場合、クサビ本体の受け面と切削インサートの側面との距離を調整可能であるとともに、切れ刃の突出量を調整でき、切れ刃振れ精度がより向上する。
【0017】
また、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材において、前記調整機構は、前記受け面に開口する孔部と、前記孔部に螺合するとともに、前記受け面から進退可能に突出するピン部材と、を備えることとしてもよい。
【0018】
この場合、切削インサートの側面に当接するピン部材の、孔部に対するねじ込み量を調整することによって、クサビ本体の受け面と切削インサートの側面との距離を簡単に調整できる。
【0019】
また、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材において、前記受け面が、前記貫通孔の軸線方向に平行に形成されていることとしてもよい。
【0020】
この場合、クサビ本体の受け面が貫通孔の軸線方向に平行に形成されているので、クランプネジのねじ込み量によって、切削インサートの側面と該受け面との距離が変動するようなことが確実に防止される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材及び刃先交換式切削工具によれば、工具本体の構造を複雑にすることなく、切削インサートの切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具を示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具の要部を拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具の要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を示す(a)上面図、(b)正面図、(c)下面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を示す(a)左側面図、(b)右側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具を示す側面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具の要部を拡大して示す斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具の要部を拡大して示す斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を示す(a)上面図、(b)正面図、(c)下面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を示す(a)左側面図、(b)右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材(以下、クサビ部材)10及びこれを用いた刃先交換式切削工具30について、図1〜図6を参照して説明する。
本実施形態の刃先交換式切削工具30は、金属材料等からなる被削材にフライス加工を施すものである。
【0024】
図1及び図2に示されるように、刃先交換式切削工具30は、円盤状をなし、その先端外周部にインサート取付座32が周方向に間隔をあけて複数形成された工具本体31と、インサート取付座32にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサート1と、インサート取付座32に対して切削インサート1をクランプして固定するクサビ部材10と、を備えている。
【0025】
工具本体31は、鋼材等からなり、軸線Oを中心とした円盤状をなしている。工具本体31には、軸線Oに沿って延びる工具取付孔33が該工具本体31を貫通して形成されている。また、工具本体31において軸線O方向に沿う基端側(図2における上側)を向く端面34には、工具取付孔33の開口縁部から径方向外方に向かって延びる一対のキー溝35、35が形成されている。工具本体31は、これらキー溝35、35を工作機械(不図示)の主軸先端部に設けられたキーに嵌合させた状態で、工具取付孔33に挿通されるボルト部材によって該主軸先端部に取り付けられ、軸線O回りに工具回転方向Tに回転させられて、被削材の切削加工に供される。
【0026】
また、工具本体31における軸線O方向に沿う先端側(図2における下側)の端部には、該工具本体31の外面が切り欠かれて先端側及び径方向外方に向けて開口するチップポケット36が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、インサート取付座32は、チップポケット36の工具回転方向Tの後方側に隣接して配置されており、切削インサート1の形状に対応するように凹状に切り欠かれて形成されている。本実施形態では、インサート取付座32は、四角形板状をなす切削インサート1の形状に対応して、四角形穴状をなしている。インサート取付座32は、工具回転方向Tの後方側及び工具本体31の先端側に向けて開口されており、その工具回転方向Tの後方側を向く座面32aが、切削インサート1のすくい面2(後述する一方のすくい面2)に当接するようになっている。
【0028】
また、インサート取付座32の工具回転方向Tの後方側には、クサビ部材10を収容するように形成された凹所37が設けられている。凹所37は、前述したチップポケット36及びインサート取付座32に対応して、工具本体31の先端外周部に周方向に間隔をあけて複数形成されている。凹所37は、工具本体31の先端外周部から、基端側かつ径方向内方(以下、基端内周側)へ向けて切り欠かれるように形成されている。
【0029】
凹所37は、工具本体31の基端内周側に位置する底面38と、工具本体31の先端外周面から底面38に向けて基端内周側に延びるとともに、工具回転方向Tの前方側を向く壁面39と、底面38に穿設され、壁面39に対して平行に延びる雌ネジ穴(不図示)と、を備えている。
【0030】
また、壁面39は、基端内周側に向けて延びる凹曲面部39aと、該凹曲面部39aを工具本体31の径方向から挟むように配置され、平面状に形成された一対の平面部39bと、を有している。
【0031】
そして、凹所37の前記雌ネジ穴の軸線方向に沿って工具本体31の内側(基端内周側)に向かう方向が、本実施形態におけるクサビ部材10の押し込み方向となっている。
本実施形態では、工具回転方向Tの後方側へ向かって、チップポケット36、インサート取付座32、凹所37がこの順に配列された組が、工具本体31の先端外周部に周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0032】
また、切削インサート1は、多角形板状をなしており、その厚さ方向を向く多角形面がすくい面2とされている。また、切削インサート1において厚さ方向に垂直な方向を向く側面は、逃げ面3となっている。すくい面2の外周縁には、該すくい面2と逃げ面(側面)3との交差稜線をなすように切れ刃4が形成されている。
【0033】
具体的に、本実施形態の切削インサート1は、四角形板状をなしており、すくい面2は、四角形面状に形成されている。また、切削インサート1は、すくい面2の中心軸を中心とした回転対称形となっている。具体的に、この切削インサート1は、すくい面2の中心軸について4回対称(90°対称)に形成されている。すくい面2の外周をなす各辺には、切れ刃4がそれぞれ形成されている。
【0034】
また、本実施形態の切削インサート1は、その厚さ方向を向く表裏面にすくい面2が一対形成されている。この切削インサート1は、表裏回転対称に形成されており、逃げ面3がネガ逃げ面とされた所謂ネガティブインサートである。
切削インサート1を工具本体31のインサート取付座32に装着した状態で、一対のすくい面2のうち、一方のすくい面2は、工具回転方向Tの前方側を向いて配置されるとともに該インサート取付座32の座面32aに当接され、他方のすくい面2は、工具回転方向Tの後方側を向いて配置されるとともにクサビ部材10の後述するクランプ面12に当接される着座面となる。
【0035】
クサビ部材10は、工具本体31のインサート取付座32に切削インサート1をクランプして固定するものである。クサビ部材10は、板状又は駒状の鋼材等からなり、工具本体31の凹所37に押し込まれるクサビ本体11を有している。
【0036】
図3〜図6に示されるように、クサビ本体11には、切削インサート1の厚さ方向を向く前記着座面に当接されるクランプ面12と、クランプ面12に背向するように配置され、クサビ本体11の押し込み方向に向かうに従い漸次クランプ面12との間隔が狭くなるように形成されたクサビ面13と、前記押し込み方向に沿うように延び、クランプネジ5が挿入される貫通孔14と、切削インサート1の厚さ方向に垂直な方向を向く側面3に対向配置され、貫通孔14の軸線C方向に沿うように形成されるとともに、クランプ面12に対して立ち上がる受け面15と、が設けられている。
そして、クサビ本体11における貫通孔14の軸線C方向のうち一方が、前述した押し込み方向となっている。
【0037】
クランプ面12は、切削インサート1の着座面である前記他方のすくい面2の外周縁(切れ刃4部分)以外の部分に当接するように形成されている。図5(a)において、本実施形態のクランプ面12は、前記着座面の形状に対応するように略四角形面状に形成されている。
【0038】
図6(a)に示されるように、クランプ面12は、クサビ本体11の押し込み方向(図6(a)における左側)に向かうに従い漸次貫通孔14の軸線Cに接近するように傾斜している。また、図3及び図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、クランプ面12は、工具回転方向Tの前方側を向いて配置される。
【0039】
図5(b)、(c)に示されるように、クサビ面13は、貫通孔14の軸線C方向に延びる凸曲面部13aと、該凸曲面部13aをその幅方向(軸線Cに垂直な方向)から挟むように配置され、平面状に形成された一対の平面部13bと、を有している。凸曲面部13aの軸線Cに垂直な断面は、凸円弧状をなしている。クサビ面13は、貫通孔14の軸線C方向に平行に形成されている。
【0040】
図3及び図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、クサビ面13は、工具回転方向Tの後方側を向いて配置される。またこの状態で、クサビ面13の平面部13bと凹所37の平面部39bとが当接される一方、クサビ面13の凸曲面部13aと凹所37の凹曲面部39aとの間には、僅かに隙間が設けられている。
【0041】
貫通孔14の内周面には、雌ネジ加工が施されている。図5(b)に示されるように、貫通孔14は、クサビ本体11を軸線C方向に貫通して形成されている。また、図3及び図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、貫通孔14の軸線Cは、工具本体31の基端内周側(押し込み方向)に向けて延びている。
【0042】
図5(a)、(b)に示されるように、受け面15は、クランプ面12における軸線Cに垂直な方向の端部から該クランプ面12に対して垂直に立ち上がるように形成されている。具体的に、クサビ本体11における軸線Cに垂直な方向の端部には、クランプ面12より突出するように突出部16が形成されており、該突出部16においてクランプ12側を向く面が、前記受け面15となっている。本実施形態では、受け面15は、貫通孔14の軸線C方向に平行に形成されている。
【0043】
図3及び図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、受け面15は、工具本体31の先端側かつ径方向内方(以下、先端内周側)へ向いて配置される。
【0044】
また、クサビ本体11の突出部16には、受け面15と該受け面15に対向配置される切削インサート1の側面3との距離を調整可能な調整機構17が設けられている。調整機構17は、受け面15に開口するとともに内周面に雌ネジ加工が施された孔部18と、該孔部18に螺合するとともに、受け面15から進退可能に突出するピン部材19と、を備えている。そして、ピン部材19において受け面15から突出する端部が、切削インサート1の側面3に当接するようになっている。
【0045】
図6(a)、(b)に示されるように、孔部18は、突出部16を貫通して延びており、受け面15に垂直に開口するように形成されている。また、図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、孔部18内のピン部材19は、工具本体31の径方向外方からそのねじ込み量を調整可能とされている。
【0046】
クランプネジ5は、その延在方向の両端部に一対の雄ネジ部を有しており、押し込み方向の端部に位置する雄ネジ部が凹所37の前記雌ネジ穴に螺合され、押し込み方向とは反対側の端部に位置する雄ネジ部がクサビ部材10の貫通孔14に螺合されるようになっている。クランプネジ5をねじ込んでいくことにより、クサビ部材10は、押し込み方向に向けて凹所37内に押し込まれていくようになっている。
【0047】
このような構成とされた刃先交換式切削工具30は、クサビ部材10が切削インサート1の厚さ方向を向く着座面側(工具回転方向Tの後方側)に配置された、所謂ビハインドウェッジ方式のフライスカッタである。
【0048】
以上説明した本実施形態のクサビ部材10を用いて、工具本体31のインサート取付座32に切削インサート1をクランプするには、切削インサート1の厚さ方向を向く一対のすくい面2のうち、一方のすくい面2をインサート取付座32に当接させ、他方のすくい面2である着座面にクサビ本体11のクランプ面12を当接させた状態で、クサビ本体11のクサビ面13を凹所37の壁面39に摺接させつつ、貫通孔14にクランプネジ5を挿入しねじ込んでいく。これにより、インサート取付座32とクサビ本体11のクランプ面12との間で切削インサート1が厚さ方向にクランプされるとともに、工具本体31に固定される。
【0049】
そして、本実施形態のクサビ部材10においては、クサビ本体11には、貫通孔14の軸線C方向に沿うように形成されるとともに、クランプ面12に対して立ち上がる受け面15が設けられており、該受け面15は、切削インサート1の厚さ方向に垂直な方向を向く側面3に対向配置されている。つまり、クサビ本体11の受け面15と、切削インサート1の側面3との距離を設定することによって、切削インサート1の切れ刃4の突出量(主に工具本体31先端側への突出量)を設定できるようになっている。
【0050】
従って、例えば、受け面15を研磨加工して切削インサート1の側面3に直接当接させることにより、切れ刃突出量を設定するようなことが可能であり、この場合、切削インサート1同士の切れ刃振れ精度(正面振れ精度)が高められるとともに、切れ刃突出量を調整する切れ刃振れ調整機構自体を設ける必要がなくなって、工具の構造を簡単にできる。また、外形の大きい工具本体31に対し加工を施すことに比べて、クサビ部材10の受け面15を研磨することは、取り扱い性がよく加工が容易であり、製造が簡単である。
尚、本実施形態のように、受け面15と切削インサート1の側面3との距離を調整する調整機構(切れ刃振れ調整機構)17を設けた場合においても、当該調整機構17をクサビ本体11に設けることができるので、工具本体31の構造を複雑にするようなことはない。ここで、調整機構17を設ける場合は、クサビ本体11の貫通孔14にクランプネジ5を締め込む前に、該調整機構17のねじ込み量(孔部18の雌ネジ部とピン部材19の雄ネジ部との相対的なねじ込み量)を調整することによって、クサビ本体11の受け面15と、切削インサート1の側面3との距離を調整しておくことが好ましい。すなわち、受け面15と側面3との距離が調整された状態から、クランプネジ5を締め込んでいく。これにより、下記の効果が確実に得られる。
【0051】
すなわち、受け面15は貫通孔14の軸線C方向に沿うように形成されているので、クランプネジ5のねじ込み量によって、切削インサート1の側面3と該受け面15との距離が変動するようなことが防止される。よって、切削インサート1の切れ刃4の突出量を精度よく設定することができる。尚、調整機構17を設けずに、受け面15を研磨加工して切削インサート1の側面3に直接当接させる構成の場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、切れ刃突出量を精度よく設定できるから、切削インサート1同士の切れ刃振れ精度が向上して被削材の仕上げ面精度が高められるだけでなく、切れ刃4のチッピングや摩耗量のバラつきが抑制されて、工具寿命を延長する効果が得られる。
【0053】
このように、本実施形態のクサビ部材10及びこれを用いた刃先交換式切削工具30によれば、工具本体31の構造を複雑にすることなく、切削インサート1の切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うことができるのである。
【0054】
また、本実施形態によれば、クサビ本体11に調整機構17が設けられているので、前述のように、該クサビ本体11の受け面15と切削インサート1の側面3との距離を調整可能であるとともに、切れ刃4の突出量を調整でき、切れ刃振れ精度がより向上する。
【0055】
また、本実施形態の調整機構17によれば、切削インサート1の側面3に当接するピン部材19の、孔部18に対するねじ込み量を調整する単純な操作によって、クサビ本体11の受け面15と切削インサート1の側面3との距離を簡単に調整できる。
【0056】
また、クサビ本体11の受け面15が貫通孔14の軸線C方向に平行に形成されているので、クランプネジ5のねじ込み量によって、切削インサート1の側面3と該受け面15との距離が変動するようなことが確実に防止される。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るクサビ部材20及びこれを用いた刃先交換式切削工具40について、図7〜図12を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図7〜図10に示されるように、本実施形態の刃先交換式切削工具40は、工具本体31におけるチップポケット36の工具回転方向Tの後方側に隣接して凹所37が配置されており、凹所37の工具回転方向Tの後方側に、インサート取付座32が配置されている。すなわち、本実施形態では、工具回転方向Tの後方側へ向かって、チップポケット36、凹所37、インサート取付座32がこの順に配列された組が、工具本体31の先端外周部に周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0059】
図9及び図10において、インサート取付座32は、工具回転方向Tの前方側及び工具本体31の先端側に向けて開口されており、その工具回転方向Tの前方側を向く座面32aが、切削インサート1の着座面(他方のすくい面2)に当接するようになっている。
【0060】
凹所37は、工具本体31の基端内周側に位置する底面38と、工具本体31の先端外周面から底面38に向けて基端内周側に延びるとともに、工具回転方向Tの後方側を向く壁面39と、底面38に穿設され、壁面39に対して平行に延びる雌ネジ穴(不図示)と、を備えている。本実施形態では、壁面39は、矩形状の平面に形成されている。
【0061】
また、切削インサート1がインサート取付座32に装着された状態で、一対のすくい面2のうち、一方のすくい面2は、工具回転方向Tの前方側を向いて配置されるとともにクサビ部材20のクランプ面12に当接され、他方のすくい面2は、工具回転方向Tの後方側を向いて配置されるとともに該インサート取付座32の座面32aに当接される着座面となる。
【0062】
図9〜図12に示されるように、クサビ部材20におけるクサビ本体11のクランプ面12は、切削インサート1の厚さ方向を向くすくい面2(一方のすくい面2)に当接される。
【0063】
クランプ面12は、切削インサート1の前記一方のすくい面2の外周縁(切れ刃4部分)以外の部分に当接するように形成されている。図11(c)において、本実施形態のクランプ面12は、前記一方のすくい面2の形状に対応するように略四角形面状に形成されている。
【0064】
図12(a)に示されるように、クランプ面12は、クサビ本体11の押し込み方向(図12(a)における左側)に向かうに従い漸次貫通孔14の軸線Cに接近するように傾斜している。また、図9及び図10に示されるように、このクサビ部材20が凹所37に装着された状態で、クランプ面12は、工具回転方向Tの後方側を向いて配置される。
【0065】
図11(a)、(b)に示されるように、本実施形態のクサビ面13は、矩形状の平面に形成されている。クサビ面13は、貫通孔14の軸線C方向に平行に形成されている。
【0066】
図9及び図10に示されるように、このクサビ部材20が凹所37に装着された状態で、クサビ面13は、工具回転方向Tの前方側を向いて配置される。またこの状態で、互いに平面状に形成された凹所37の壁面39とクサビ面13とが当接されている。
【0067】
また、本実施形態のクサビ本体11の外面のうち、押し込み方向とは反対側(図12(a)における右側)を向く面は、チップポケット36の内面形状に対応して凹曲面状に形成されている。これにより、クサビ部材20において先端外周側を向く面とチップポケット36の内面とが滑らかに凹状に連なって形成され、切屑排出性が確保されている。
【0068】
このような構成とされた刃先交換式切削工具40は、クサビ部材20が切削インサート1の厚さ方向を向くすくい面2側(工具回転方向Tの前方側)に配置された、所謂フロントウェッジ方式のフライスカッタである。
【0069】
本実施形態のクサビ部材20及びこれを用いた刃先交換式切削工具40においても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0071】
例えば、前述の実施形態では、クサビ本体11には、切削インサート1の側面と受け面15との距離を調整可能な調整機構17が設けられているとしたが、当該調整機構17が設けられていなくてもよい。すなわち、前述したように、受け面15を研磨加工することにより、切削インサート1の側面3に対する押圧量を調整するとともに、切れ刃突出量を設定することとしてもよく、この場合、切れ刃振れ精度を確保しつつも構造が簡単となり、部品点数を削減できることから好ましい。
【0072】
また、切削インサート1は、四角形板状をなしているとしたが、これに限定されるものではなく、四角形板状以外の多角形板状や、円形板状等であってもよい。
【0073】
また、切削インサート1は、その厚さ方向を向く表裏面にすくい面2が一対形成されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、すくい面2は、切削インサート1の厚さ方向を向く表裏面のうち、いずれか一面にのみ形成されていてもよい。この場合、切削インサート1においてすくい面2とは反対側を向く面が着座面となる。
【符号の説明】
【0074】
1 切削インサート
2 すくい面
3 逃げ面(側面)
4 切れ刃
5 クランプネジ
10、20 クサビ部材(切削インサートクランプ用クサビ部材)
11 クサビ本体
12 クランプ面
13 クサビ面
14 貫通孔
15 受け面
17 調整機構
18 孔部
19 ピン部材
30、40 刃先交換式切削工具
31 工具本体
32 インサート取付座
37 凹所
C 貫通孔の軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートクランプ用クサビ部材及びこれを用いた刃先交換式切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料等からなる被削材にフライス加工を施す刃先交換式切削工具が知られている。この種の刃先交換式切削工具は、円盤状をなし、その先端外周部にインサート取付座が周方向に間隔をあけて複数形成された工具本体と、前記インサート取付座にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサートと、前記インサート取付座に対して前記切削インサートをクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材(以下、クサビ部材)と、を備えている。
【0003】
このようなクサビ式の刃先交換式切削工具は、各インサート取付座に装着した切削インサート同士の切れ刃突出量を調整するための切れ刃振れ調整機構を工具本体に備えており、例えば、仕上げ面精度が要求される切削加工などに用いられる。また、このように切れ刃突出量を調整することによって、仕上げ面精度が向上するだけでなく、切れ刃のチッピングや摩耗量のバラつきが抑制されて、工具寿命を延長する効果が得られる。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、クサビ部材が切削インサートのすくい面側(工具回転方向の前方側)に配置された、所謂フロントウェッジ方式の刃先交換式切削工具が記載されている。また、下記特許文献2には、クサビ部材が切削インサートのすくい面とは反対側(工具回転方向の後方側)に配置された、所謂ビハインドウェッジ方式の刃先交換式切削工具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−501363号公報
【特許文献2】米国特許第7390150号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来の切削インサートクランプ用クサビ部材及び刃先交換式切削工具では、下記の課題があった。
すなわち、従来のクサビ式の刃先交換式切削工具では、切削インサートの切れ刃突出量を設定するための切れ刃振れ調整機構が工具本体に設けられており、工具本体に該切れ刃振れ調整機構を設けるためのスペースを確保しなければならず、工具本体の構造が複雑となっていた。また、外形の大きい工具本体に対して切れ刃振れ調整機構を設けるため、加工が困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、工具本体の構造を複雑にすることなく、切削インサートの切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うことができる切削インサートクランプ用クサビ部材及び刃先交換式切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、板状をなし、その厚さ方向を向くすくい面の外周縁に切れ刃を有する切削インサートを、工具本体に形成されたインサート取付座にクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材であって、前記工具本体の凹所に押し込まれるクサビ本体には、前記切削インサートの厚さ方向を向くすくい面又は着座面に当接されるクランプ面と、前記クランプ面に背向するように配置され、前記クサビ本体の押し込み方向に向かうに従い漸次前記クランプ面との間隔が狭くなるように形成されたクサビ面と、前記押し込み方向に沿うように延び、クランプネジが挿入される貫通孔と、前記切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面に対向配置され、前記貫通孔の軸線方向に沿うように形成されるとともに、前記クランプ面に対して立ち上がる受け面と、が設けられることを特徴とする。
また、本発明は、円盤状をなし、その先端外周部にインサート取付座が周方向に間隔をあけて複数形成された工具本体と、前記インサート取付座にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサートと、前記インサート取付座に対して前記切削インサートをクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材と、を備えた刃先交換式切削工具であって、前記切削インサートクランプ用クサビ部材として、前述した切削インサートクランプ用クサビ部材を用いたことを特徴としている。
【0009】
この切削インサートクランプ用クサビ部材を用いて、工具本体のインサート取付座に切削インサートをクランプするには、切削インサートの厚さ方向を向くすくい面及び着座面のうち一方をインサート取付座に当接させ、すくい面及び着座面のうち他方にクサビ本体のクランプ面を当接させた状態で、クサビ本体のクサビ面を工具本体の凹所内に摺接させつつ、貫通孔にクランプネジを挿入しねじ込んでいく。これにより、インサート取付座とクサビ本体のクランプ面との間で切削インサートが厚さ方向にクランプされるとともに、工具本体に固定される。
【0010】
そして、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材においては、クサビ本体には、貫通孔の軸線方向に沿うように形成されるとともに、クランプ面に対して立ち上がる受け面が設けられており、該受け面は、切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面に対向配置されている。つまり、クサビ本体の受け面と、切削インサートの側面との距離を設定することによって、切削インサートの切れ刃の突出量を設定できるようになっている。
【0011】
従って、例えば、受け面を研磨加工して切削インサートの側面に直接当接させることにより、切れ刃突出量を設定するようなことが可能であり、この場合、切削インサート同士の切れ刃振れ精度が高められるとともに、切れ刃突出量を調整する切れ刃振れ調整機構自体を設ける必要がなくなって、工具の構造を簡単にできる。また、外形の大きい工具本体に対し加工を施すことに比べて、切削インサートクランプ用クサビ部材の受け面を研磨することは、取り扱い性がよく加工が容易であり、製造が簡単である。
尚、受け面と切削インサートの側面との距離を調整する調整機構(切れ刃振れ調整機構)を設けた場合においても、当該調整機構をクサビ本体に設けることができるので、工具本体の構造を複雑にするようなことはない。
【0012】
また、受け面は貫通孔の軸線方向に沿うように形成されているので、クランプネジのねじ込み量によって、切削インサートの側面と該受け面との距離が変動するようなことが防止される。よって、切削インサートの切れ刃の突出量を精度よく設定することができる。
【0013】
また、切れ刃突出量を精度よく設定できるから、切削インサート同士の切れ刃振れ精度が向上して被削材の仕上げ面精度が高められるのみならず、切れ刃のチッピングや摩耗量のバラつきが抑制されて、工具寿命を延長する効果が得られる。
【0014】
このように、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材及びこれを用いた刃先交換式切削工具によれば、工具本体の構造を複雑にすることなく、切削インサートの切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うことができるのである。
【0015】
また、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材において、前記クサビ本体には、前記切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面と前記受け面との距離を調整可能な調整機構が設けられることとしてもよい。
【0016】
この場合、クサビ本体の受け面と切削インサートの側面との距離を調整可能であるとともに、切れ刃の突出量を調整でき、切れ刃振れ精度がより向上する。
【0017】
また、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材において、前記調整機構は、前記受け面に開口する孔部と、前記孔部に螺合するとともに、前記受け面から進退可能に突出するピン部材と、を備えることとしてもよい。
【0018】
この場合、切削インサートの側面に当接するピン部材の、孔部に対するねじ込み量を調整することによって、クサビ本体の受け面と切削インサートの側面との距離を簡単に調整できる。
【0019】
また、本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材において、前記受け面が、前記貫通孔の軸線方向に平行に形成されていることとしてもよい。
【0020】
この場合、クサビ本体の受け面が貫通孔の軸線方向に平行に形成されているので、クランプネジのねじ込み量によって、切削インサートの側面と該受け面との距離が変動するようなことが確実に防止される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の切削インサートクランプ用クサビ部材及び刃先交換式切削工具によれば、工具本体の構造を複雑にすることなく、切削インサートの切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具を示す側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具の要部を拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具の要部を拡大して示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を示す(a)上面図、(b)正面図、(c)下面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を示す(a)左側面図、(b)右側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具を示す正面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具を示す側面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具の要部を拡大して示す斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を備えた刃先交換式切削工具の要部を拡大して示す斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を示す(a)上面図、(b)正面図、(c)下面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材を示す(a)左側面図、(b)右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る切削インサートクランプ用クサビ部材(以下、クサビ部材)10及びこれを用いた刃先交換式切削工具30について、図1〜図6を参照して説明する。
本実施形態の刃先交換式切削工具30は、金属材料等からなる被削材にフライス加工を施すものである。
【0024】
図1及び図2に示されるように、刃先交換式切削工具30は、円盤状をなし、その先端外周部にインサート取付座32が周方向に間隔をあけて複数形成された工具本体31と、インサート取付座32にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサート1と、インサート取付座32に対して切削インサート1をクランプして固定するクサビ部材10と、を備えている。
【0025】
工具本体31は、鋼材等からなり、軸線Oを中心とした円盤状をなしている。工具本体31には、軸線Oに沿って延びる工具取付孔33が該工具本体31を貫通して形成されている。また、工具本体31において軸線O方向に沿う基端側(図2における上側)を向く端面34には、工具取付孔33の開口縁部から径方向外方に向かって延びる一対のキー溝35、35が形成されている。工具本体31は、これらキー溝35、35を工作機械(不図示)の主軸先端部に設けられたキーに嵌合させた状態で、工具取付孔33に挿通されるボルト部材によって該主軸先端部に取り付けられ、軸線O回りに工具回転方向Tに回転させられて、被削材の切削加工に供される。
【0026】
また、工具本体31における軸線O方向に沿う先端側(図2における下側)の端部には、該工具本体31の外面が切り欠かれて先端側及び径方向外方に向けて開口するチップポケット36が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、インサート取付座32は、チップポケット36の工具回転方向Tの後方側に隣接して配置されており、切削インサート1の形状に対応するように凹状に切り欠かれて形成されている。本実施形態では、インサート取付座32は、四角形板状をなす切削インサート1の形状に対応して、四角形穴状をなしている。インサート取付座32は、工具回転方向Tの後方側及び工具本体31の先端側に向けて開口されており、その工具回転方向Tの後方側を向く座面32aが、切削インサート1のすくい面2(後述する一方のすくい面2)に当接するようになっている。
【0028】
また、インサート取付座32の工具回転方向Tの後方側には、クサビ部材10を収容するように形成された凹所37が設けられている。凹所37は、前述したチップポケット36及びインサート取付座32に対応して、工具本体31の先端外周部に周方向に間隔をあけて複数形成されている。凹所37は、工具本体31の先端外周部から、基端側かつ径方向内方(以下、基端内周側)へ向けて切り欠かれるように形成されている。
【0029】
凹所37は、工具本体31の基端内周側に位置する底面38と、工具本体31の先端外周面から底面38に向けて基端内周側に延びるとともに、工具回転方向Tの前方側を向く壁面39と、底面38に穿設され、壁面39に対して平行に延びる雌ネジ穴(不図示)と、を備えている。
【0030】
また、壁面39は、基端内周側に向けて延びる凹曲面部39aと、該凹曲面部39aを工具本体31の径方向から挟むように配置され、平面状に形成された一対の平面部39bと、を有している。
【0031】
そして、凹所37の前記雌ネジ穴の軸線方向に沿って工具本体31の内側(基端内周側)に向かう方向が、本実施形態におけるクサビ部材10の押し込み方向となっている。
本実施形態では、工具回転方向Tの後方側へ向かって、チップポケット36、インサート取付座32、凹所37がこの順に配列された組が、工具本体31の先端外周部に周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0032】
また、切削インサート1は、多角形板状をなしており、その厚さ方向を向く多角形面がすくい面2とされている。また、切削インサート1において厚さ方向に垂直な方向を向く側面は、逃げ面3となっている。すくい面2の外周縁には、該すくい面2と逃げ面(側面)3との交差稜線をなすように切れ刃4が形成されている。
【0033】
具体的に、本実施形態の切削インサート1は、四角形板状をなしており、すくい面2は、四角形面状に形成されている。また、切削インサート1は、すくい面2の中心軸を中心とした回転対称形となっている。具体的に、この切削インサート1は、すくい面2の中心軸について4回対称(90°対称)に形成されている。すくい面2の外周をなす各辺には、切れ刃4がそれぞれ形成されている。
【0034】
また、本実施形態の切削インサート1は、その厚さ方向を向く表裏面にすくい面2が一対形成されている。この切削インサート1は、表裏回転対称に形成されており、逃げ面3がネガ逃げ面とされた所謂ネガティブインサートである。
切削インサート1を工具本体31のインサート取付座32に装着した状態で、一対のすくい面2のうち、一方のすくい面2は、工具回転方向Tの前方側を向いて配置されるとともに該インサート取付座32の座面32aに当接され、他方のすくい面2は、工具回転方向Tの後方側を向いて配置されるとともにクサビ部材10の後述するクランプ面12に当接される着座面となる。
【0035】
クサビ部材10は、工具本体31のインサート取付座32に切削インサート1をクランプして固定するものである。クサビ部材10は、板状又は駒状の鋼材等からなり、工具本体31の凹所37に押し込まれるクサビ本体11を有している。
【0036】
図3〜図6に示されるように、クサビ本体11には、切削インサート1の厚さ方向を向く前記着座面に当接されるクランプ面12と、クランプ面12に背向するように配置され、クサビ本体11の押し込み方向に向かうに従い漸次クランプ面12との間隔が狭くなるように形成されたクサビ面13と、前記押し込み方向に沿うように延び、クランプネジ5が挿入される貫通孔14と、切削インサート1の厚さ方向に垂直な方向を向く側面3に対向配置され、貫通孔14の軸線C方向に沿うように形成されるとともに、クランプ面12に対して立ち上がる受け面15と、が設けられている。
そして、クサビ本体11における貫通孔14の軸線C方向のうち一方が、前述した押し込み方向となっている。
【0037】
クランプ面12は、切削インサート1の着座面である前記他方のすくい面2の外周縁(切れ刃4部分)以外の部分に当接するように形成されている。図5(a)において、本実施形態のクランプ面12は、前記着座面の形状に対応するように略四角形面状に形成されている。
【0038】
図6(a)に示されるように、クランプ面12は、クサビ本体11の押し込み方向(図6(a)における左側)に向かうに従い漸次貫通孔14の軸線Cに接近するように傾斜している。また、図3及び図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、クランプ面12は、工具回転方向Tの前方側を向いて配置される。
【0039】
図5(b)、(c)に示されるように、クサビ面13は、貫通孔14の軸線C方向に延びる凸曲面部13aと、該凸曲面部13aをその幅方向(軸線Cに垂直な方向)から挟むように配置され、平面状に形成された一対の平面部13bと、を有している。凸曲面部13aの軸線Cに垂直な断面は、凸円弧状をなしている。クサビ面13は、貫通孔14の軸線C方向に平行に形成されている。
【0040】
図3及び図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、クサビ面13は、工具回転方向Tの後方側を向いて配置される。またこの状態で、クサビ面13の平面部13bと凹所37の平面部39bとが当接される一方、クサビ面13の凸曲面部13aと凹所37の凹曲面部39aとの間には、僅かに隙間が設けられている。
【0041】
貫通孔14の内周面には、雌ネジ加工が施されている。図5(b)に示されるように、貫通孔14は、クサビ本体11を軸線C方向に貫通して形成されている。また、図3及び図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、貫通孔14の軸線Cは、工具本体31の基端内周側(押し込み方向)に向けて延びている。
【0042】
図5(a)、(b)に示されるように、受け面15は、クランプ面12における軸線Cに垂直な方向の端部から該クランプ面12に対して垂直に立ち上がるように形成されている。具体的に、クサビ本体11における軸線Cに垂直な方向の端部には、クランプ面12より突出するように突出部16が形成されており、該突出部16においてクランプ12側を向く面が、前記受け面15となっている。本実施形態では、受け面15は、貫通孔14の軸線C方向に平行に形成されている。
【0043】
図3及び図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、受け面15は、工具本体31の先端側かつ径方向内方(以下、先端内周側)へ向いて配置される。
【0044】
また、クサビ本体11の突出部16には、受け面15と該受け面15に対向配置される切削インサート1の側面3との距離を調整可能な調整機構17が設けられている。調整機構17は、受け面15に開口するとともに内周面に雌ネジ加工が施された孔部18と、該孔部18に螺合するとともに、受け面15から進退可能に突出するピン部材19と、を備えている。そして、ピン部材19において受け面15から突出する端部が、切削インサート1の側面3に当接するようになっている。
【0045】
図6(a)、(b)に示されるように、孔部18は、突出部16を貫通して延びており、受け面15に垂直に開口するように形成されている。また、図4に示されるように、このクサビ部材10が凹所37に装着された状態で、孔部18内のピン部材19は、工具本体31の径方向外方からそのねじ込み量を調整可能とされている。
【0046】
クランプネジ5は、その延在方向の両端部に一対の雄ネジ部を有しており、押し込み方向の端部に位置する雄ネジ部が凹所37の前記雌ネジ穴に螺合され、押し込み方向とは反対側の端部に位置する雄ネジ部がクサビ部材10の貫通孔14に螺合されるようになっている。クランプネジ5をねじ込んでいくことにより、クサビ部材10は、押し込み方向に向けて凹所37内に押し込まれていくようになっている。
【0047】
このような構成とされた刃先交換式切削工具30は、クサビ部材10が切削インサート1の厚さ方向を向く着座面側(工具回転方向Tの後方側)に配置された、所謂ビハインドウェッジ方式のフライスカッタである。
【0048】
以上説明した本実施形態のクサビ部材10を用いて、工具本体31のインサート取付座32に切削インサート1をクランプするには、切削インサート1の厚さ方向を向く一対のすくい面2のうち、一方のすくい面2をインサート取付座32に当接させ、他方のすくい面2である着座面にクサビ本体11のクランプ面12を当接させた状態で、クサビ本体11のクサビ面13を凹所37の壁面39に摺接させつつ、貫通孔14にクランプネジ5を挿入しねじ込んでいく。これにより、インサート取付座32とクサビ本体11のクランプ面12との間で切削インサート1が厚さ方向にクランプされるとともに、工具本体31に固定される。
【0049】
そして、本実施形態のクサビ部材10においては、クサビ本体11には、貫通孔14の軸線C方向に沿うように形成されるとともに、クランプ面12に対して立ち上がる受け面15が設けられており、該受け面15は、切削インサート1の厚さ方向に垂直な方向を向く側面3に対向配置されている。つまり、クサビ本体11の受け面15と、切削インサート1の側面3との距離を設定することによって、切削インサート1の切れ刃4の突出量(主に工具本体31先端側への突出量)を設定できるようになっている。
【0050】
従って、例えば、受け面15を研磨加工して切削インサート1の側面3に直接当接させることにより、切れ刃突出量を設定するようなことが可能であり、この場合、切削インサート1同士の切れ刃振れ精度(正面振れ精度)が高められるとともに、切れ刃突出量を調整する切れ刃振れ調整機構自体を設ける必要がなくなって、工具の構造を簡単にできる。また、外形の大きい工具本体31に対し加工を施すことに比べて、クサビ部材10の受け面15を研磨することは、取り扱い性がよく加工が容易であり、製造が簡単である。
尚、本実施形態のように、受け面15と切削インサート1の側面3との距離を調整する調整機構(切れ刃振れ調整機構)17を設けた場合においても、当該調整機構17をクサビ本体11に設けることができるので、工具本体31の構造を複雑にするようなことはない。ここで、調整機構17を設ける場合は、クサビ本体11の貫通孔14にクランプネジ5を締め込む前に、該調整機構17のねじ込み量(孔部18の雌ネジ部とピン部材19の雄ネジ部との相対的なねじ込み量)を調整することによって、クサビ本体11の受け面15と、切削インサート1の側面3との距離を調整しておくことが好ましい。すなわち、受け面15と側面3との距離が調整された状態から、クランプネジ5を締め込んでいく。これにより、下記の効果が確実に得られる。
【0051】
すなわち、受け面15は貫通孔14の軸線C方向に沿うように形成されているので、クランプネジ5のねじ込み量によって、切削インサート1の側面3と該受け面15との距離が変動するようなことが防止される。よって、切削インサート1の切れ刃4の突出量を精度よく設定することができる。尚、調整機構17を設けずに、受け面15を研磨加工して切削インサート1の側面3に直接当接させる構成の場合においても、同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、切れ刃突出量を精度よく設定できるから、切削インサート1同士の切れ刃振れ精度が向上して被削材の仕上げ面精度が高められるだけでなく、切れ刃4のチッピングや摩耗量のバラつきが抑制されて、工具寿命を延長する効果が得られる。
【0053】
このように、本実施形態のクサビ部材10及びこれを用いた刃先交換式切削工具30によれば、工具本体31の構造を複雑にすることなく、切削インサート1の切れ刃突出量を精度よく設定でき、高精度で安定した切削加工を行うことができるのである。
【0054】
また、本実施形態によれば、クサビ本体11に調整機構17が設けられているので、前述のように、該クサビ本体11の受け面15と切削インサート1の側面3との距離を調整可能であるとともに、切れ刃4の突出量を調整でき、切れ刃振れ精度がより向上する。
【0055】
また、本実施形態の調整機構17によれば、切削インサート1の側面3に当接するピン部材19の、孔部18に対するねじ込み量を調整する単純な操作によって、クサビ本体11の受け面15と切削インサート1の側面3との距離を簡単に調整できる。
【0056】
また、クサビ本体11の受け面15が貫通孔14の軸線C方向に平行に形成されているので、クランプネジ5のねじ込み量によって、切削インサート1の側面3と該受け面15との距離が変動するようなことが確実に防止される。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るクサビ部材20及びこれを用いた刃先交換式切削工具40について、図7〜図12を参照して説明する。尚、前述の実施形態と同一部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図7〜図10に示されるように、本実施形態の刃先交換式切削工具40は、工具本体31におけるチップポケット36の工具回転方向Tの後方側に隣接して凹所37が配置されており、凹所37の工具回転方向Tの後方側に、インサート取付座32が配置されている。すなわち、本実施形態では、工具回転方向Tの後方側へ向かって、チップポケット36、凹所37、インサート取付座32がこの順に配列された組が、工具本体31の先端外周部に周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0059】
図9及び図10において、インサート取付座32は、工具回転方向Tの前方側及び工具本体31の先端側に向けて開口されており、その工具回転方向Tの前方側を向く座面32aが、切削インサート1の着座面(他方のすくい面2)に当接するようになっている。
【0060】
凹所37は、工具本体31の基端内周側に位置する底面38と、工具本体31の先端外周面から底面38に向けて基端内周側に延びるとともに、工具回転方向Tの後方側を向く壁面39と、底面38に穿設され、壁面39に対して平行に延びる雌ネジ穴(不図示)と、を備えている。本実施形態では、壁面39は、矩形状の平面に形成されている。
【0061】
また、切削インサート1がインサート取付座32に装着された状態で、一対のすくい面2のうち、一方のすくい面2は、工具回転方向Tの前方側を向いて配置されるとともにクサビ部材20のクランプ面12に当接され、他方のすくい面2は、工具回転方向Tの後方側を向いて配置されるとともに該インサート取付座32の座面32aに当接される着座面となる。
【0062】
図9〜図12に示されるように、クサビ部材20におけるクサビ本体11のクランプ面12は、切削インサート1の厚さ方向を向くすくい面2(一方のすくい面2)に当接される。
【0063】
クランプ面12は、切削インサート1の前記一方のすくい面2の外周縁(切れ刃4部分)以外の部分に当接するように形成されている。図11(c)において、本実施形態のクランプ面12は、前記一方のすくい面2の形状に対応するように略四角形面状に形成されている。
【0064】
図12(a)に示されるように、クランプ面12は、クサビ本体11の押し込み方向(図12(a)における左側)に向かうに従い漸次貫通孔14の軸線Cに接近するように傾斜している。また、図9及び図10に示されるように、このクサビ部材20が凹所37に装着された状態で、クランプ面12は、工具回転方向Tの後方側を向いて配置される。
【0065】
図11(a)、(b)に示されるように、本実施形態のクサビ面13は、矩形状の平面に形成されている。クサビ面13は、貫通孔14の軸線C方向に平行に形成されている。
【0066】
図9及び図10に示されるように、このクサビ部材20が凹所37に装着された状態で、クサビ面13は、工具回転方向Tの前方側を向いて配置される。またこの状態で、互いに平面状に形成された凹所37の壁面39とクサビ面13とが当接されている。
【0067】
また、本実施形態のクサビ本体11の外面のうち、押し込み方向とは反対側(図12(a)における右側)を向く面は、チップポケット36の内面形状に対応して凹曲面状に形成されている。これにより、クサビ部材20において先端外周側を向く面とチップポケット36の内面とが滑らかに凹状に連なって形成され、切屑排出性が確保されている。
【0068】
このような構成とされた刃先交換式切削工具40は、クサビ部材20が切削インサート1の厚さ方向を向くすくい面2側(工具回転方向Tの前方側)に配置された、所謂フロントウェッジ方式のフライスカッタである。
【0069】
本実施形態のクサビ部材20及びこれを用いた刃先交換式切削工具40においても、前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0071】
例えば、前述の実施形態では、クサビ本体11には、切削インサート1の側面と受け面15との距離を調整可能な調整機構17が設けられているとしたが、当該調整機構17が設けられていなくてもよい。すなわち、前述したように、受け面15を研磨加工することにより、切削インサート1の側面3に対する押圧量を調整するとともに、切れ刃突出量を設定することとしてもよく、この場合、切れ刃振れ精度を確保しつつも構造が簡単となり、部品点数を削減できることから好ましい。
【0072】
また、切削インサート1は、四角形板状をなしているとしたが、これに限定されるものではなく、四角形板状以外の多角形板状や、円形板状等であってもよい。
【0073】
また、切削インサート1は、その厚さ方向を向く表裏面にすくい面2が一対形成されているとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、すくい面2は、切削インサート1の厚さ方向を向く表裏面のうち、いずれか一面にのみ形成されていてもよい。この場合、切削インサート1においてすくい面2とは反対側を向く面が着座面となる。
【符号の説明】
【0074】
1 切削インサート
2 すくい面
3 逃げ面(側面)
4 切れ刃
5 クランプネジ
10、20 クサビ部材(切削インサートクランプ用クサビ部材)
11 クサビ本体
12 クランプ面
13 クサビ面
14 貫通孔
15 受け面
17 調整機構
18 孔部
19 ピン部材
30、40 刃先交換式切削工具
31 工具本体
32 インサート取付座
37 凹所
C 貫通孔の軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなし、その厚さ方向を向くすくい面の外周縁に切れ刃を有する切削インサートを、工具本体に形成されたインサート取付座にクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材であって、
前記工具本体の凹所に押し込まれるクサビ本体には、
前記切削インサートの厚さ方向を向くすくい面又は着座面に当接されるクランプ面と、
前記クランプ面に背向するように配置され、前記クサビ本体の押し込み方向に向かうに従い漸次前記クランプ面との間隔が狭くなるように形成されたクサビ面と、
前記押し込み方向に沿うように延び、クランプネジが挿入される貫通孔と、
前記切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面に対向配置され、前記貫通孔の軸線方向に沿うように形成されるとともに、前記クランプ面に対して立ち上がる受け面と、が設けられることを特徴とする切削インサートクランプ用クサビ部材。
【請求項2】
請求項1に記載の切削インサートクランプ用クサビ部材であって、
前記クサビ本体には、前記切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面と前記受け面との距離を調整可能な調整機構が設けられることを特徴とする切削インサートクランプ用クサビ部材。
【請求項3】
請求項2に記載の切削インサートクランプ用クサビ部材であって、
前記調整機構は、
前記受け面に開口する孔部と、
前記孔部に螺合するとともに、前記受け面から進退可能に突出するピン部材と、を備えることを特徴とする切削インサートクランプ用クサビ部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削インサートクランプ用クサビ部材であって、
前記受け面が、前記貫通孔の軸線方向に平行に形成されていることを特徴とする切削インサートクランプ用クサビ部材。
【請求項5】
円盤状をなし、その先端外周部にインサート取付座が周方向に間隔をあけて複数形成された工具本体と、前記インサート取付座にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサートと、前記インサート取付座に対して前記切削インサートをクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材と、を備えた刃先交換式切削工具であって、
前記切削インサートクランプ用クサビ部材として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の切削インサートクランプ用クサビ部材を用いたことを特徴とする刃先交換式切削工具。
【請求項1】
板状をなし、その厚さ方向を向くすくい面の外周縁に切れ刃を有する切削インサートを、工具本体に形成されたインサート取付座にクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材であって、
前記工具本体の凹所に押し込まれるクサビ本体には、
前記切削インサートの厚さ方向を向くすくい面又は着座面に当接されるクランプ面と、
前記クランプ面に背向するように配置され、前記クサビ本体の押し込み方向に向かうに従い漸次前記クランプ面との間隔が狭くなるように形成されたクサビ面と、
前記押し込み方向に沿うように延び、クランプネジが挿入される貫通孔と、
前記切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面に対向配置され、前記貫通孔の軸線方向に沿うように形成されるとともに、前記クランプ面に対して立ち上がる受け面と、が設けられることを特徴とする切削インサートクランプ用クサビ部材。
【請求項2】
請求項1に記載の切削インサートクランプ用クサビ部材であって、
前記クサビ本体には、前記切削インサートの厚さ方向に垂直な方向を向く側面と前記受け面との距離を調整可能な調整機構が設けられることを特徴とする切削インサートクランプ用クサビ部材。
【請求項3】
請求項2に記載の切削インサートクランプ用クサビ部材であって、
前記調整機構は、
前記受け面に開口する孔部と、
前記孔部に螺合するとともに、前記受け面から進退可能に突出するピン部材と、を備えることを特徴とする切削インサートクランプ用クサビ部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削インサートクランプ用クサビ部材であって、
前記受け面が、前記貫通孔の軸線方向に平行に形成されていることを特徴とする切削インサートクランプ用クサビ部材。
【請求項5】
円盤状をなし、その先端外周部にインサート取付座が周方向に間隔をあけて複数形成された工具本体と、前記インサート取付座にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサートと、前記インサート取付座に対して前記切削インサートをクランプして固定する切削インサートクランプ用クサビ部材と、を備えた刃先交換式切削工具であって、
前記切削インサートクランプ用クサビ部材として、請求項1〜4のいずれか一項に記載の切削インサートクランプ用クサビ部材を用いたことを特徴とする刃先交換式切削工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−82047(P2013−82047A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224929(P2011−224929)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
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