説明

切削加工用工具の敷板及び切削工具

【課題】本発明は、回転して切り屑を除去する加工用の切削工具に装着される敷板及びそれを備えた切削工具を提供する。
【解決手段】切削工具は回転軸Cを有する基体と、回転軸と同心の外周包絡面(5)と、前端面(6)と、座面(10)を有する少なくとも一つのインサート座(9)と、を備える。基体は回転方向Rに回転可能であり、個々のインサート座の座面において、敷板と敷板に接する切削インサートを受承する。敷板は、基体の座面に接する底面(4a)と、底面とは半側に位置し、切削インサートに接する接触面と、底面と接触面との間を延びる少なくとも一つの側面と、を備える。本発明によると、回転軸に直交し、敷板を横断する半径方向の断面(X)において、敷板の底面上の仮想直線(a)と敷板の接触面上の仮想直線(b)とが基体の包絡面の方に向かって分岐し、互いに対して角度αを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転して切り屑を除去する加工に使用される交換可能なインサートを有する転削工具及び穴明け工具などの切削工具に使用される敷板に関する。敷板は、切削インサートの底面と切削工具の基体との間に配置され、インサートが破損した際に基体を保護する。
また、本発明は、回転して切り屑を除去する加工用の切削工具に関し、切削工具は本発明による一つ以上の敷板を備える。
【背景技術】
【0002】
被削材を切削加工する切削工具は、基体と、複数の切削インサートと、基体と切削インサートとの間に装着されて基体を保護する敷板とを備える。基体は、中心軸、すなわち、回転軸と、外周の包絡面と、前端面及び後端面と、インサート座が備わる複数の切り屑ポケットとを備える。個々のインサート座には、切削インサート及び敷板が装着される。切り屑ポケットは、加工時に切り屑が問題なく排出されるように形成されている。
【0003】
敷板は、切削工具に使用され、基体の摩耗を減らし、基体の寿命を延長する。更に、敷板は、起こり得るインサートの破損によって基体が損傷する危険を減らす。インサートの破損は、ほとんどが主切刃、すなわち、基体の包絡面上にある作用切刃で生じる。切削インサートと基体との間に配置された敷板は、加工を中断する時までは、被削材から切り屑を除去し続けることができる。敷板なしでは、被削材に基体が噛み込み危険があり、基体や、切削工具を回転するスピンドルや、切削工具が含まれる工作機械の他の協働する部品が損傷する心配がある。したがって、敷板を使用することが望まれる。敷板は、基体と切削インサートとの間に装着され、切削インサートの底面が敷板に支持され、切削インサートの他の支持面が切削工具の基体に対して当接する。基体に敷板を固定する方法はいろいろあり、例えば、敷板はねじによって切削インサートと共に固定されたり、又は内側にねじを有する管ねじが敷板を固定するために使用され、切削インサートは、管ねじに容易に固定され、敷板を取り外すことをなく交換されることができる。転削工具用の通常は平坦な敷板は、例えば、特許文献1で開示されている。開示された敷板は係合手段を備え、敷板が基体に対して滑ることを防止する。
【0004】
敷板の不利な点は、切り屑ポケットが影響を受けない大きさで、敷板のスペースを作るために、インサート座がより深く形成されなければならないため、基体の強度を低下させることである。切り屑ポケットの大きさは、切り屑を排出するために最適化されるため、それを小さくすることは望ましくない。加工中に切削工具に作用する切削力は、切り込みや、加工形態、被削材の種類に応じて変化する。しかしながら、転削においては、切削力が重要であり、敷板のスペースを作るためにインサート座を深くすることは強度に影響する。柄付きエンドミルなどの小さな切削工具や、多くの切削インサートを有する工具に関して、このことは特に問題となる。切り屑ポケットが基体の大部分を占めるために特に問題となる。基体の強度は、インサート座の深さによって影響を受けると共に、大きな負荷がかかる場合において、加工中にクラックが基体に生ずる危険性が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006130073号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、回転して切り屑を除去する加工用の切削工具の寿命を延長し、切削工具の基体の強度を保持することを目的とする。このことは、特に、小さい切削工具、例えば、柄付きエンドミルや、多くの切削インサートを有する切削工具に好適する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上述した目的は、独立請求項1及び7でそれぞれ規定された敷板と切削工具により達成される。本発明による敷板は、回転して切り屑を除去する加工用の切削工具に装着され、切削工具は、回転軸を有する基体と、回転軸と同心の外周包絡面と、前端面と、座面を有する少なくとも一つのインサート座を備える。基体は、回転方向Rに回転可能であり、個々のインサート座において座面に当接する敷板と敷板に支持される切削インサートとを受承する。敷板は、基体の座面に当接する底面と、底面の反対側にあって切削インサートに当接する接触面と、底面と接触面との間を延びる側面とを備える。敷板は、回転軸に直交し、敷板を横断する半径方向の断面において、底面が基体の包絡面に最も接近する断面内の点と底面が基体の回転軸に最も接近する断面内の点に交差する底面内の仮想直線と、接触面が基体の包絡面に最も接近する断面内の点と接触面が基体の回転軸に最も接近する断面内の点に交差する接触面内の仮想直線とが、基体の包絡面の方に分岐し、底面内の仮想直線と接触面内の仮想直線とが互いに角度αを形成する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の目的は、回転して切り屑を除去する加工用の切削工具によって達成される。切削工具は、回転軸を有する基体と、回転軸と同心の外周包絡面と、座面を有する少なくとも一つのインサート座とを備える。切削工具は回転方向Rに回転可能である。少なくとも一つのインサート座において、切削工具は、座面に着脱可能に装着される敷板を備え、少なくとも一つのインサート座において、切削工具は、敷板に当接する交換可能に装着される切削インサートを備える。敷板は、基体の座面に当接する底面と、底面の反対側にあり切削インサートに当接する接触面と、底面と接触面との間を延びる側面とを備える。切削工具は、回転軸に直交し、敷板を横断する半径方向の断面において、座面が包絡面に最も接近する断面内の点と座面が基体の回転軸に最も接近する断面内の点に交差する底面内の仮想直線と、接触面が基体の包絡面に最も接近する断面内の点と接触面が基体の回転軸に最も接近する断面内の点に交差する接触面内の仮想直線とが、基体の包絡面の方に分岐し、底面内の仮想直線と接触面内の仮想直線とが互いに角度αを形成する、ことを特徴とする。
【0009】
したがって、本発明によれば、敷板は、半径方向で見て楔形状をなし、敷板の底面と切削インサートに対向する敷板の接触面との間の距離が基体の回転軸から半径方向に向かって増加する。これによって、敷板は回転軸側よりも基体の包絡面側でより厚くなる。
【0010】
本発明による敷板と切削工具の利点は、敷板が、小さい切削工具、例えば、柄付きエンドミルや、多数の切削インサートを有する切削工具において、基体の強度が影響を受けることなく、使用されるということである。これにより、基体の維持された強度と、敷板による基体の減少する摩耗と、起こり得るインサートの破損による損傷のリスクの低下の複合的効果によって、切削工具の寿命が増加する。
【0011】
好ましい実施形態によると、角度αは5〜35゜、より好ましく10〜25゜である。この実施形態の利点は、敷板の内側と外側との間の厚みの差が基体の強度を十分に強くすると共に、包絡面において保護効果を提供することである。同時に、加工中に所定の位置で保持される敷板の能力は制限されない。
【0012】
第2の実施形態によると、敷板の底面と基体の当接する座面は、係合手段、例えば、セレーションの形態、又は雌部分と係合する雄部分を有する他の接続面を備える。この実施形態の利点は、敷板が、基体に対して所定の位置で固定され、位置が変わることが防止される。
【0013】
追加の実施形態によれば、敷板は、軸方向で見たときに楔形状を成しており、敷板の厚みが前端面の方に向かって増加することが好ましい。この実施形態の利点は、ポジのアキシャルレーキを有する転削工具に関し、前端面から最も離れているインサート座が深くなることを避けることができ、基体の強度を高めることができる。
【0014】
更なる実施形態によれば、敷板は超硬合金から作ることができ、起こり得るインサートの破損によって、加工が中断する際に、敷板は切れ刃として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】装着された敷板と切削インサートを有する転削工具の斜視図である。
【図2】敷板と切削インサートの詳細図である。
【図3】前端面から見た平面図である。
【図4】図3の矢印Yに沿って切断した断面図である。
【図5】転削工具の側面図である。
【図6】図5の矢印Xに沿って切断した断面図である。
【図7】敷板の斜視図である。
【図8】同じく敷板の斜視図である。
【図9】前端面からみたときの敷板の図である。
【図10】敷板の斜視図である。
【図11】半径方向及び軸方向の両方向で楔形状をなす敷板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここの説明では、少なくとも切削インサート及び敷板が基体に装着されるということが記載されている。
【0017】
図1〜9において、本発明の第1の実施形態が示されている。図1は、切削工具の組み立てた状態を示す。切削工具は、基体(2)と、一つ以上の切削インサート(3)とを備え、個々の切削インサートは敷板(4)と協働する。基体は、以下において基体の回転軸又は単に回転軸と呼ばれる回転軸Cの回りで回転方向Rに回転可能である。基体は、回転軸と同心であるが、必ずしも回転対称である必要はない外周包絡面(5)と、前端面(6)及び後端面(7)を有する。更に、基体は、包絡面内の凹所と前端面とを形成する複数の切り屑ポケット(8)を備える。インサート座(9)は、切り屑ポケットに設けられている。個々のインサート座は、敷板と切削インサートとが装着される座面(10)を備える。個々の切削インサートは、底面(3a)と、主切刃(3b)とを備える。切削インサートの底面は敷板に当接し、切削インサートの他の支持面は、図2〜3に示されるように、基体に対して当接する。
【0018】
本発明による敷板(4)は、装着した状態で基体の座面(10)に接している底面(4a)と、切削インサートの底面(3a)に接する接触面(4b)とを備える。これは、図4において断面図で示されている。底面と接触面との間には、少なくとも一つの側面が延びる。側面の数は敷板の幾何学形状に応じて変化する。切削インサート及び敷板が四角形状である場合において、少なくとも4つの側面と、内面(4c)と、外面(4d)とがあり、図7及び8において、基体の回転軸Cから半径方向に見えている。したがって、外面は、基体の外周包絡面(5)に配置され、内面は基体(2)に対して当接する。それによって、内面は基体に対して支持面として作用する。この場合において、敷板は、基体の前端面に配置された少なくとも一つの前面(4e)と、軸方向で基体に隣接する支持面として寄与する少なくとも一つの後面(4f)とを備える。図9は、前面からみたときの敷板の平面図を示す。切削インサート及び敷板が丸い場合において、部分的に基体に接する一つの側面がある。敷板は、他の面として、例えば前述した面の間に配置された面取り面を含むこともできる。
【0019】
本発明による敷板(4)の特徴は、基体の回転軸Cからの半径方向において楔形状であるということにある。基体の回転軸に対して直交して切断された切削工具の任意の断面は、図5及び6で示されるように、敷板及び切削インサート(3)を備え、以下において半径方向の断面(X)で示される。敷板の底面(4a)と接触面(4b)とは、面の詳細な形状に関して、半径方向の断面で二つの直線で表される。敷板の底面を表す一つの直線(a)は、包絡面(5)に最も接近する接触面の点(b1)と、基体の回転軸に最も接近する接触面の点(b2)に交わる。接触面を表す他の直線(b)は、基体の包絡面(5)に最も接近する底面の点(a1)と、基体の回転軸に最も接近する底面の点(a2)に交わる。本発明によると、これらの二つの線は、基体の包絡面の方に分岐し、互いに対して角度αを形成する。これは、図10で示されている。
【0020】
図1〜9で示される本発明の第1の実施形態において、敷板(4)は、交換可能な三角形状のインサート(3)を有するエンドミルに対して90゜のセット角度に調整される。この実施形態において、基体は二つの回転対称体であり、二つの切り屑ポケット(8)と、二つの切削インサートと、二つの敷板とを備えている。この実施形態において、敷板は、基体(2)に装着され、より詳細には、敷板の接触面(4b)と底面(4a)とを貫通して延びるねじ(11)によって、切削インサートと共に、インサート座(9)において基体の座面(10)に装着される。ここで、敷板及び座面は、交換可能な三角形状の切削インサートに適合するが、円形インサート、四角インサート、二つの切れ刃を有するインサート又は他の切削インサートに適合することも可能である。
【0021】
敷板の底面(4a)と接触面(4b)を表す線(a,b)が分岐する角度αの選択は、切削工具の種類、切削工具の寸法や幾何学形状を含むいくつかの因子に依存する。角度αは、基体の強度を十分に大きくすべきであり、同時に敷板の保護効果が維持される。角度αが十分に大きい場合は、敷板は基体の回転軸Cにおいて薄く作られ、基体の強度が増加する。同時に、敷板は、起こり得るインサートの破損により基体を保護するように包絡面(5)で十分に厚く作られる。加工中に所定の位置に敷板を保持するためには、角度αはあまり大きくすべきでない。これは、敷板が包絡面に対して外側へ押される危険があるためである。好ましい実施形態では、角度αは少なくとも5゜である。より好ましくは、角度αは少なくとも10゜である。角度αは大きくても30゜である。より好ましくは、角度αは大きくても25゜である。
【0022】
敷板の底面(4a)と接触面(4b)、切削インサートの底面(3a)及び基体の座面(10)の詳細は、変更可能である。敷板の底面と接触面は、例えば、平面としてもよい。この実施形態では、製造が低コストで行われるという利点を有し、加工中に所定の位置で敷板を保持するのに問題を生じない小さい角度が適する。敷板の底面は、平面である必要はないが、例えば、基体に敷板を装着するための締結部材を備える。底面は、段差を有する支持点と共に形成されることも可能であり、少なくとも3点が基体の座面に対して当接する。このような実施形態は非常に良い安定性を提供する。
【0023】
第2の実施形態によれば、敷板の底面(4a)は、敷板を基体(2)の所定位置に固定する係合手段を備える。この第2の実施形態は、角度αが相対的に大きいことが好ましいが、係合手段は角度αが相対的に小さい角度のときにも適用できる。係合手段は、例えば、楔形状のいわゆるセレーション面又は基体の座面(10)において雌部分と係合する雄部分を有する他の接続面から構成され又はそれらを備える敷板の底面によって作られる。また、基体に対する敷板の軸方向の支持面(4f)と基体上の接する面(P)は係合手段を備えることもできる。しかしながら、達成された安定性は、基体の製造をより複雑化することによりもたらされる。
【0024】
切削インサートの底面(3a)に面する敷板の接触面(4b)が平面である必要はないが、切削インサート(3)を敷板(4)に固定するための係合手段を備えることができる。本発明によれば、切削インサートに面する敷板の接触面は、セレーション面又は上述した係合手段の係合面とすることができ、敷板に接する切削インサートの底面は。敷板の接触面と協働する。切削インサートの底面は対応する係合手段を備える。
【0025】
図11で示された本発明の追加の実施形態によると、敷板(4)は軸方向で楔形状であり、敷板の厚みは前端面の方に向かって増加することが好ましい。この実施形態において、半径方向の断面(X)に直交する任意の断面は、基体の回転軸Cに平行であり、回転方向Rに平行であり、敷板を横断する。以下、この断面は、軸方向の断面(Y)として示す。敷板の底面(4a)上の仮想直線(c)は、底面が基体の前端面(6)に最も接近する軸方向の断面内の点(c1)と、底面が基体の前端面から最も離れた軸方向の断面内の点(c2)とに交差する。敷板の接触面(4b)上の仮想直線(d)は、接触面が基体の前端面に最も接近する軸方向の断面内の点(d1)と、接触面が基体の前端面から最も離れた軸方向の断面内の点(d2)とに交差する。この実施形態による敷板は、二つの仮想直線(c、d)が基体の前端面の方に向かって分岐し、底面(4a)上の仮想直線(c)と接触面(4b)上の仮想直線(d)とが互いに対して角度βを形成する。この実施形態はポジティブのアキシャルレーキを有する転削工具に適する。これは、すくい角と同じなるように軸方向における敷板の傾斜を許容し、前端面から最も離れたインサートが深くなること回避する。
【0026】
敷板(4)は、異なる方法で基体(2)に固定される。本発明の一実施形態によると、切削インサート(3)と敷板は、図面に示されるように共通のねじ(11)によって基体に固定される。他の可能な実施形態は、敷板が内側にねじ山を有する管ねじよって基体に装着されることであり、切削インサートは分離したねじによって装着される。切削インサートは、敷板を緩めることなく交換されることができる。
【0027】
本発明による敷板は、焼結金属、高強度鋼、超硬合金から製造することができる。高強度鋼や超硬金属は、加工によって所望の形状にして硬くする利点がある。これらの材料は延性を有している。超硬合金は、粉末冶金方法によって予め定めた形状に製造することができる。これらは、高い圧縮強度を有し、切れ刃として使用されるインサートの破損を生じることがある。好ましい実施形態によると、敷板は超硬合金で製造される。
【0028】
本発明による組み立てられた切削工具(1)は、上述したように、基体(2)と、少なくとも一つの敷板(4)と、少なくとも一つの切削インサート(3)を備える。半径方向の断面(X)が回転軸Cに対して直交し、敷板及び切削インサートを横断するとき、基体の座面(10)と切削インサートに対向する敷板の接触面(4b)上の二つの直線(s、r)が描かれる。基体の座面を表す直線は、座面が基体の回転軸に最も接近する断面の点(a2)と、座面が包絡面(5)に最も接近した半径方向の断面の点(a1)とに交差するように描かれる。切削インサートに対向する敷板の接触面を表す直線は、接触面が基体の回転軸に最も接近する断面内の点(b2)と、接触面が基体の包絡面に最も接近する断面内の点(b1)とに交差するように、描かれる。切削工具は、これらの二つの仮想直線が包絡面の方に向かって分岐し、互いに対して角度αを形成する。
【0029】
本発明の一実施形態によると、切削工具は、軸方向で楔形状を有する敷板(4)を備える。軸方向の断面(Y)が回転方向Rに平行で、基体の回転軸Cに平行で、敷板(4)を横断するとき、敷板の底面(4a)と切削インサートに対向する接触面(4b)上の二つの直線を描くことができる。敷板の底面を表す直線(c)は、底面が基体の前端面(6)に最も接近する軸方向の断面内の点(c1)と、底面が基体の前端面から最も離れた断面内の点(c2)とに交差するように描かれる。切削インサートに対向する敷板の接触面(4b)を表す直線(d)は、接触面が基体の前端面に最も接近する軸方向の断面内の点(d1)と、接触面が基体の前端面から最も離れた軸方向の断面内の点(d2)とに交差するように、描かれる。この実施形態によると、切削工具は、これらの二つの仮想直線が前端面の方に向かって分岐し、互いに対して角度βを形成する。この実施形態では、基体がより強くなる。
【0030】
基体の座面(10)と敷板の底面(4a)との間の境界面は、上述したように、種々の方法で形成される。
【0031】
一実施形態によると、基体の座面と敷板の底面は係合手段を備える。敷板の接触面(4b)と切削インサートの底面(3a)との間の境界面は、種々の方法で形成される。例えば、セレーション面の形態で係合面を備えることに加え、それぞれの境界面は凸部の形態又は敷板を装着するためと基体に切削インサートを装着するための締結部分の形態で支持点を備えることができる。
【0032】
本発明による組み立てられた切削工具(1)は、上述したように、基体(2)と、少なくとも一つの切削インサート(3)と、少なくとも一つの敷板(4)とを備える。基体は、鋼又はアルミニウム合金などの金属材料から製造することが好ましい。切削インサートは、超硬合金、又はセラミック材料から製造することができる。
【0033】
記載された実施形態は、組み合わせることができ、例えば、丸い切削インサート用の敷板と、四角又は三角形状の切削インサート用の敷板が、半径方向と軸方向の両方向において楔形状にすることができ、一つ以上の係合手段を備えることもできる。
【0034】
本発明による組み立てられた切削工具は、好ましくは、エンドミル、フェイスミル又は丸い切削インサートを有するミルなどの転削工具である。本発明は、柄付きエンドミルや多数の切削インサートを有する転削工具に適し、基体の強度が低下するため、通常の敷板は使用できない。しかしながら、本発明による切削工具は、転削工具に制限されないが、ドリル工具などの回転して切り屑を除去する加工用の他の切削工具とすることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 切削工具
2 基体
3 切削インサート
3a,4a 底面
3b 主切刃
4 敷板
4b 接触面
4c 内面
4d 外面
4e 前面
4f 後面
5 包絡面
6 前端面
7 後端面
8 切り屑ポケット
9 インサート座
10 座面
11 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転削工具のような回転して切り屑を除去する加工用の切削工具に装着される敷板(4)であって、
切削工具は、回転軸Cを有する基体(2)と、回転軸と同心である外周包絡面(5)と、前端面(6)と、座面(10)を有する少なくとも一つインサート座(9)とを備え、
基体は、回転方向Rに回転可能であり、個々のインサート座の座面上に、敷板(4)及び敷板に接する切削インサートを受承するために配置され、
敷板は、基体の座面に接する底面(4a)と、底面の反対側にあり、切削インサートに接する接触面(4b)と、底面と接触面との間に延びる少なくとも一つの側面とを備えた、敷板において、
回転軸に直交し、敷板を横断する半径方向の断面(X)において、
底面上にある仮想直線(a)は、底面が基体の包絡面に最も接近している断面内の点(a1)と、底面が基体の回転軸に最も接近している断面内の点(a2)とに交差し、
接触面上の仮想直線(b)は、接触面が基体の包絡面に最も接近している断面内の点(b1)と、接触面が基体の回転軸に最も接近している断面内の点(b2)とに交差し、基体の包絡面の方に向かって分岐し、仮想直線(a)と仮想直線(b)とが互いに対して角度αを形成する、ことを特徴とする敷板。
【請求項2】
角度αが5〜30゜である、ことを特徴とする請求項1に記載の敷板。
【請求項3】
角度αが10〜25゜である、ことを特徴とする請求項1に記載の敷板。
【請求項4】
底面(4a)が、セレーション面又は基体の座面(10)において雌部分と係合する雄部分を有する他の係合面などの係合手段を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の敷板。
【請求項5】
回転方向Rに平行であり、基体の回転軸Cに平行であり、且つ敷板を横断する軸方向の断面において、
敷板の底面(4a)上の仮想直線(c)が、底面が基体の前端面(6)に最も接近している軸方向の断面内の点(c1)と、底面が基体の前端面から最も離れた断面内の点(c2)とに交差し、
敷板の接触面(4b)上の仮想直線(d)が、接触面が基体の前端面に最も接近している軸方向の断面内の点(d1)と、接触面が基体の前端面から最も離れている軸方向の断面内の点(d2)と交差し、基体の前端面の方に向かって分岐し、仮想直線(c)と仮想直線(d)とが互いに対して角度βを形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の敷板。
【請求項6】
敷板が超硬合金で作られている、ことを特徴とする請求項1に記載の敷板。
【請求項7】
転削工具のような回転して切り屑を除去する加工用の切削工具(1)であって、
切削工具が、回転軸Cを有する基体(2)と、回転軸に対して同心の外周包絡面(5)と、座面(10)を有する少なくとも一つのインサート座(9)と、を備え、
切削工具は回転方向Rに回転可能であり、
切削工具は少なくとも一つのインサート座において座面に着脱可能に装着される敷板(4)を備え、
また、切削工具は少なくとも一つのインサート座において敷板に接する着脱可能な切削インサートを備え、
敷板は、基体の座面に接する底面(4a)と、底面の反対側にあり、切削インサートに接する接触面(4b)と、底面と接触面との間に延びる少なくとも一つの側面とを備えた、切削工具において、
回転軸に直交し、敷板を横断する半径方向の断面(X)において、
基体の底面上にある仮想直線(a)は、底面が包絡面に最も接近している断面内の点(a1)と、座面が回転軸に最も接近している断面内の点(a2)とに交差し、
敷板の接触面の仮想直線(b)は、接触面が包絡面に最も接近している断面内の点(b1)と、接触面が回転軸に最も接近している断面内の点(b2)とに交差し、基体の包絡面の方に向かって分岐し、仮想直線(a)と仮想直線(b)とが互いに対して角度αを形成する、ことを特徴とする切削工具。
【請求項8】
敷板の底面(4a)と基体の座面(10)とが、セレーション面又は雌部分と係合する雄部分を有する他の係合面などの係合手段を備える、ことを特徴とする請求項7に記載の切削工具。
【請求項9】
回転方向Rに平行であり、基体の回転軸Cに平行であり、且つ敷板を横断する軸方向の断面において、
敷板の底面(4a)上の仮想直線(c)が、底面が基体の前端面(6)に最も接近している軸方向の断面内の点(c1)と、底面が基体の前端面から最も離れた断面内の点(c2)とに交差し、
敷板の接触面(4b)上の仮想直線(d)が、接触面が基体の前端面に最も接近している軸方向の断面内の点(d1)と、接触面が基体の前端面から最も離れている軸方向の断面内の点(d2)とに交差し、基体の前端面の方に向かって分岐し、仮想直線(c)と仮想直線(d)とが互いに対して角度βを形成する、ことを特徴とする請求項7に記載の切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−6139(P2012−6139A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138723(P2011−138723)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】