説明

切削工具及び仕上げ刃インサート

【課題】切刃で切削した加工面をさらうように切削する仕上げ刃によるバリの発生を抑制するとともに、仕上げ刃のチッピングを防止できる切削工具及び仕上げ刃インサートを提供する。
【解決手段】軸線O回りに回転される工具本体11の先端側外周に設けられた取付座14に、インサート30が着脱可能に装着された切削工具10であって、工具本体11には、インサート30の外周刃よりも工具本体11径方向内側に、かつ、正面刃よりも工具本体11先端側に位置する仕上げ刃44を備えた仕上げ刃インサート40が配置され、仕上げ刃44は、アキシャルレーキ角αが0°≦α≦30°の範囲内に設定され、仕上げ刃インサート40には、工具回転方向T前方側から見て仕上げ刃44と鈍角で交差するとともに工具本体11先端側から見ても仕上げ刃44と鈍角で交差する面取部が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線回りに回転される工具本体に、正面刃及び外周刃を備えたインサートと、これら正面刃及び外周刃で切削した加工面を仕上げるように切削する仕上げ刃を備えた仕上げ刃インサートとが装着された切削工具及びこの切削工具に装着される仕上げ刃インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被切削材に平面加工を施す切削工具として、円盤状をなす工具本体に複数のインサートが装着されたフライスカッタが使用されている。この種の切削工具においては、円盤状の工具本体の先端側外周に形成された複数の凹部及び取付座に、超硬合金等の硬質材料よりなるインサートが着脱可能に装着されており、前記工具本体をその軸線回りに高速回転するとともに軸線と交差する方向に送ることにより、前記インサートの工具本体径方向外側に向けられた切刃(外周刃)によって被切削材を切り込んでいくとともに、工具本体先端側に向けられた切刃(正面刃)によって被切削材に平面加工を施すものである。
【0003】
このような平面加工を行った場合、インサートの切刃の摩耗に伴って切れ味が劣化して、加工面にバリが発生することが知られている。バリの発生を抑えるフライスカッタとして、例えば特許文献1に開示されているように、通常の切削を行う切刃とは別にバリを除去するための仕上げ刃が設けられたものが提案されている。このフライスカッタにおいては、仕上げ刃による切削でのバリの発生を抑制するために、仕上げ刃に正の逃げ角を与えるとともにホーニングを設けずにシャープエッジとして切れ味を確保している。
【特許文献1】特開平02−116408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたフライスカッタでは、仕上げ刃がシャープエッジとされているので、切削時にチッピングしてしまうおそれがあった。チッピング防止のために仕上げ刃の刃先にホーニング処理を設けると、切削抵抗が増加して仕上げ刃による切削でもバリが発生してしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、切刃で切削した加工面をさらうように切削する仕上げ刃によるバリの発生を抑制するとともに、仕上げ刃のチッピングを防止できる切削工具及び仕上げ刃インサートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の切削工具は、軸線回りに回転される工具本体の先端側外周に設けられた取付座に、正面刃及び外周刃を備えたインサートが着脱可能に装着された切削工具であって、前記工具本体には、前記取付座に装着された前記インサートの前記外周刃よりも径方向内側に位置するとともに、前記正面刃よりも前記工具本体先端側に位置する仕上げ刃を備えた仕上げ刃インサートが配置され、前記仕上げ刃は、アキシャルレーキ角αが0°≦α≦30°の範囲内に設定され、前記仕上げ刃インサートには、工具回転方向前方側から見て前記仕上げ刃と鈍角で交差するとともに、工具本体先端側から見ても前記仕上げ刃と鈍角で交差する面取部が形成されていることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の仕上げ刃インサートは、前述の切削工具に使用される仕上げ刃インサートであって、外形が概略四角形平板状をなして2つの四角形面と4つの側面とを有し、一の四角形面が正面逃げ面とされ、一の側面がすくい面とされ、前記一の側面に連なる他の側面が外周逃げ面とされ、前記すくい面と前記正面逃げ面との交差稜線部に仕上げ刃が設けられ、前記すくい面と前記外周逃げ面と前記正面逃げ面とが交差する角部に、工具回転方向前方側から見て前記仕上げ刃と鈍角で交差するとともに、工具本体先端側から見ても前記仕上げ刃と鈍角で交差する面取部が形成されていることを特徴としている。
【0008】
この構成の切削工具及び仕上げ刃インサートにおいては、工具回転方向前方側から見て仕上げ刃と鈍角で交差するとともに、工具本体先端側から見ても仕上げ刃と鈍角で交差する面取部が形成されているので、仕上げ刃の刃先部分の剛性が確保されて欠損を防止することができる。
さらに、この仕上げ刃のアキシャルレーキ角αを0°以上としているので、仕上げ刃の切れ味を向上させることができ、仕上げ刃によるバリの発生を抑制できる。また、仕上げ刃のアキシャルレーキ角αを30°以下としているので、仕上げ刃の欠損を防止できる。
【0009】
ここで、前記仕上げ刃インサートのすくい面に、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部を形成し、該切刃部に前記仕上げ刃を設けることにより、仕上げ刃の切れ味が向上するとともに刃先の摩耗が防止されるので、仕上げ刃によるバリの発生を確実に防止することができる。
【0010】
また、前記仕上げ刃を、工具回転方向前方側から見て工具本体先端側に向けて凸となる曲線刃とし、該曲線刃の曲率半径Rを50≦R≦500の範囲内に設定してもよい。曲線刃とされた仕上げ刃の曲率半径RがR≧50と大きくされているので、工具本体を軸線に交差する方向に送る際の送り量を大きくしても加工面の面粗度を良好に仕上げることができる。さらに、前記曲率半径RがR≦500とされているので、切削時の切削抵抗を抑えてバリの発生を抑制できる。
【0011】
さらに、前記工具本体に、前記仕上げ刃インサートを少なくとも2以上配置するとともに、これら前記仕上げ刃インサートの正面振れを調整する位置調整機構を設けてもよい。この場合、2以上の仕上げ刃インサートでバリ除去を行うので、一つの仕上げ刃インサートの仕上げ刃での切削量が抑えられ、仕上げ刃の刃先摩耗をさらに防止できる。また、2以上の仕上げ刃インサートの正面振れを調整する位置調整機構を備えているので、加工面を滑らかに仕上げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通常の切刃で切削した加工面をさらうように切削する仕上げ刃によるバリの発生を抑制するとともに、仕上げ刃のチッピングを防止できる切削工具及び仕上げ刃インサートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態である切削工具としてのフライスカッタについて、添付した図面を参照して説明する。
このフライスカッタ10は、図1及び図2に示すように、軸線Oを中心とした概略多段円柱状をなす工具本体11を有しており、工具本体11の中央部には、工具本体11を工作機械の主軸端等(図示なし)に取り付けるための取付孔12が軸線Oに沿うように穿設されている。
【0014】
この工具本体11の先端側外周には、工具本体11径方向外側及び工具本体11先端側に開口する第1チップポケット13が周方向に複数形成されており、これらの第1チップポケット13の工具回転方向T後方側にそれぞれ第1取付座14が設けられている。本実施形態では、図2に示すように6つの第1チップポケット13及び第1取付座14がそれぞれ形成されている。
【0015】
第1取付座14の工具回転方向T後方側には、クサビ溝15が設けられており、このクサビ溝15には、クサビ部材16がクランプネジ17によって工具本体11径方向に出没可能に配置されている。クサビ部材16は、工具本体11に装着された状態で、工具本体11径方向内側に向かうにしたがいその幅が小さくなるように配置されており、クサビ部材16の工具回転方向T後方側を向く面16Aが、クサビ溝15の工具回転方向T前方側を向く側壁15Aに当接されている。
【0016】
また、工具本体11の先端側外周には、工具本体11径方向外側に向けて開口するとともに工具本体11先端側に向けて大きく開口した第2チップポケット23が2つ形成されており、これら第2チップポケット23の工具回転方向T後方側にそれぞれ第2取付座24が設けられている。なお、本実施形態では、図2に示すように2つの第2チップポケット23及び第2取付座24が、軸線Oを中心として180°回転対称に配置されている。
【0017】
第2取付座24の工具本体11先端側を向く壁面24Aは、図3に示すように、工具本体11径方向内側に向かうにしたがい漸次工具本体11後端側に向けて僅かに後退し、軸線Oに対して角度θで交差するように傾斜させられている。また、この壁面24Aは、図4に示すように、工具回転方向T後方側に向かうにしたがい漸次工具本体11後端側に向けて後退するように形成されている。さらに、この壁面24Aには、後述する仕上げ刃インサート40を固定するための固定ネジ25が螺着される固定ネジ孔26が、この壁面24Aに直交するように穿設されている。
【0018】
また、第2取付座24の工具回転方向T前方側を向く壁面24Bは、径方向内側に向かうにしたがい漸次工具回転方向T後方側に後退するように傾斜させられている。
さらに、第2取付座24の工具本体11径方向外側を向く壁面24Cには、後述する仕上げ刃インサート40の軸線O方向位置を調整する調整手段として押圧ネジ27が配置されている。
【0019】
前記第1取付座14に装着される切削インサート30は、図1及び図2に示すように、概略正方形平板状をなしており、一の正方形面31Aがすくい面とされて工具回転方向T前方側に向けられている。切削インサート30の一の正方形面31A(すくい面)の辺稜部には、図5に示すように、主切刃32とこの主切刃32に対して僅かに傾いた副切刃33とが設けられており、切削インサート30の角部にはホーニング部34が形成されている。
また、図2に示すように、一の正方形面31A(すくい面)に連なる側面には、正の逃げ角が付されており、この切削インサート30は、いわゆるポジティブタイプのインサートである。
【0020】
この切削インサート30は、第1取付座14の工具回転方向T後方側を向く壁面14Aに一の正方形面31A(すくい面)の一部が当接されるとともに一の正方形面31A(すくい面)に対向する他の正方形面31Bに前記クサビ部材16が当接されるように載置され、クサビ部材16をクランプネジ17によって工具本体11径方向内側に挿入することで第1取付座14の工具回転方向T後方側を向く壁面14Aとクサビ部材16の工具回転方向T前方側を向く面16Bとによって挟持される。そして、工具本体11径方向外側に向けられた主切刃32Aが外周刃とされるとともに、工具本体11先端側に向けられた主切刃32Bが正面刃とされる。また、工具本体11先端側に向けられた主切刃32B(正面刃)に連なる副切刃33が、軸線Oに直交する仮想平面上に位置させられている。
【0021】
一方、第2取付座24に装着される仕上げ刃インサート40は、図2から図4に示すように、外形が概略四角形平板状をなして2つの四角形面と4つの側面とを有し、一の四角形面41Aが正面逃げ面とされ、一の側面42Aがすくい面とされ、一の側面42Aに連なる他の側面42Bが外周逃げ面とされている。
すくい面とされた一の側面42Aと正面逃げ面とされた一の四角形面41Aとの交差部分には、ダイヤモンド焼結体からなる切刃部43が設けられている。この切刃部43の一の側面42A(すくい面)と一の四角形面41A(正面逃げ面)との交差稜線部に仕上げ刃44が設けられており、この仕上げ刃インサート40はいわゆる縦刃タイプのインサートとされている。
【0022】
この仕上げ刃インサート40の工具本体11先端側及び工具本体11径方向外側に向けられる角部には、第2取付座24に取り付けた状態で、工具回転方向T前方側から見て図6に示すように仕上げ刃44と鈍角で交差するとともに、工具本体11先端側から見て図7に示すように仕上げ刃44と鈍角で交差する面取部45が形成されている。
【0023】
また、図4に示すように、すくい面とされた一の側面42Aと正面逃げ面とされた一の四角形面41Aとは鋭角に交差するように構成され、図2に示すように、すくい面とされた一の側面42Aと外周逃げ面とされた他の側面42Bとも鋭角に交差するように構成されている。
さらに、正面逃げ面とされた一の四角形面41Aには、厚さ方向に貫通した挿通孔46が開口させられている。
【0024】
この仕上げ刃インサート40は、正面逃げ面とされた一の四角形面41Aに対向する他の四角形面41Bが第2取付座24の工具本体11先端側を向く壁面24Aに当接されるとともに、すくい面とされた一の側面42Aに対向する側面42Cが第2取付座24の工具回転方向T前方側を向く壁面24Bに当接される。ここで、第2取付座24の工具本体11先端側を向く壁面24Aに穿設された固定ネジ孔26の中心は、仕上げ刃インサート40の挿通孔46の中心よりも工具本体11径方向内側及び工具回転方向T後方側に僅かに偏心している。この挿通孔46に挿通された固定ネジ25が固定ネジ孔26に螺着されることで、仕上げ刃インサート40は、工具本体11径方向内側及び工具回転方向T後方側に引き込まれるようにして固定される。
【0025】
第2取付座24に装着された仕上げ刃インサート40は、図4に示すようにアキシャルレーキ角αが0°≦α≦30°に設定され、より具体的にはα=20°に設定される。さらに、図4に示すように正面逃げ角γは、γ=10°に設定されている。また、本実施形態では、図2に示すように、仕上げ刃44のラジアルレーキ角βが0°≦β≦45°に設定され、より具体的にはβ=20°に設定される。
さらに、仕上げ刃44は、工具回転方向T前方側から見て図5及び図6に示すように、工具本体11先端側に向けて突出する曲線状をなしており、その曲率半径Rは、工具回転方向T前方から見たときに50≦R≦500の範囲内に設定され、より具体的にはR=250mmとされている。
【0026】
第1取付座14に装着された切削インサート30及び第2取付座24に装着された仕上げ刃インサート40の軸線O回りの回転軌跡を工具回転方向T前方側から見ると、図5に示すように、仕上げ刃インサート40は、切削インサート30の外周刃(主切刃32A)よりも大きく工具本体11径方向内側に位置するとともに、切削インサート30の正面刃(主切刃32B)よりも工具本体11先端側に位置している。
詳述すると、仕上げ刃44は、正面刃(主切刃32B)に連なる副切刃33よりも工具本体11先端側に突出量hだけ突出されている。本実施形態では、突出量hは、0.01≦h≦0.03の範囲内に設定され、より具体的にはh=0.02mmとされている。
【0027】
なお、本実施形態では、軸線Oを中心として180°回転対称に配置された2つの第2取付座24にそれぞれ仕上げ刃インサート40が装着されており、これらの仕上げ刃インサート40の仕上げ刃44の軸線O方向位置を一致させるように、つまり、仕上げ刃44の正面振れを調整する必要がある。ここで、第2取付座24に設けられた押圧ネジ27をねじ込むことで仕上げ刃インサート40は工具本体11径方向外側に向けて押圧され、工具本体11先端側を向く壁面24Aに沿って移動する。この工具本体11先端側を向く壁面24Aが工具本体11径方向内側に向かうにしたがい漸次工具本体11後端側に向けて僅かに後退し、軸線Oに対して角度θで交差するように傾斜させられているので、仕上げ刃44は工具本体11先端側に突出される。したがって、この押圧ネジ27によって仕上げ刃44の正面振れを調整することが可能となる。
【0028】
このように2つの仕上げ刃インサート40の正面振れが調整されたフライスカッタ10は、工具本体11に形成された取付孔12を用いて工作機械の主軸端(図示なし)に取り付けられ、軸線O回りに回転されるとともに軸線Oに交差する方向に送りを与えられ、被切削材の表面を切削インサート30の外周刃(主切刃32A)及び正面切刃(主切刃32B)で切削して平面加工を施すとともに、仕上げ刃インサート40の仕上げ刃44で加工面を仕上げるように切削する。
【0029】
本実施形態であるフライスカッタ10によれば、仕上げ刃インサート40が、工具回転方向T前方側から見て仕上げ刃44と鈍角で交差するとともに、工具本体11先端側から見て仕上げ刃44と鈍角で交差する面取部45を有しているので、仕上げ刃44の刃先部分の剛性が確保され、仕上げ刃インサート40の欠損を防止することができる。
【0030】
また、仕上げ刃44のアキシャルレーキ角αが0°≦α≦30°の範囲内に、より具体的にはα=20°に設定されているので、仕上げ刃44の切れ味を向上させることができ、仕上げ刃44によるバリの発生を抑制できる。
さらに、本実施形態では、ラジアルレーキ角βが0°≦β≦45°の範囲内に、より具体的にはβ=20°に設定されているので、一層、仕上げ刃44の切れ味を向上させることができる。
【0031】
また、仕上げ刃インサート40のすくい面とされた一の側面42Aにダイヤモンド焼結体で構成された切刃部43が形成され、この切刃部43のすくい面とされた一の側面42Aと正面逃げ面とされた一の四角形面41Aとの交差稜線部に仕上げ刃44が設けられているので、仕上げ刃44の切れ味がさらに向上するとともに、仕上げ刃44の摩耗が防止される。したがって、仕上げ刃44によるバリの発生を確実に防止することができる。
【0032】
また、仕上げ刃44が、工具回転方向前方側から見て工具本体11先端側に向けて凸となる曲線状に形成され、その曲率半径Rが50≦R≦500の範囲内に、より具体的にはR=250mmに設定されているので、工具本体11を軸線Oに交差する方向に送る際の送り量を大きくしても加工面の面粗度を良好に仕上げることができる。さらに、加工面と接触する部分が大きくなりすぎないので、切削抵抗を抑えることができ、仕上げ刃44によるバリの発生を抑制できる。
【0033】
また、軸線Oを中心として180°回転対称に配置された2つの第2取付座24にそれぞれ仕上げ刃インサート40が装着されており、第2取付座24には、仕上げ刃44の正面振れを調整する押圧ネジ27が設けられているので、仕上げ刃44の軸線O方向位置を一致させて加工面を滑らかに仕上げることができる。さらに、1つの仕上げ刃インサート40の仕上げ刃44での切削量が少なくなるので、仕上げ刃44の摩耗を確実に防止できる。
【0034】
さらに、仕上げ刃インサート40の仕上げ刃44が、切削インサート30の副切刃33よりも工具本体11先端側に突出量hだけ突出され、本実施形態では、0.01≦h≦0.03の範囲内に設定され、より具体的にはh=0.02mmとされているので、仕上げ刃44によってバリを確実に除去できるとともに、仕上げ刃44の切削量を少なくして仕上げ刃44の摩耗を防止できる。
【0035】
以上、本発明の実施形態であるフライスカッタについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、仕上げ刃インサートを装着する第2取付座を2つ設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、仕上げ刃インサートは1つあるいは3つ以上であってもよい。被切削材の材質や切削条件等を考慮して適宜設定することが好ましい。
【0036】
また、仕上げ刃インサートをいわゆる縦刃タイプのものとして説明したが、これに限定されることはなく、仕上げ刃インサートの形状は任意のものとすることができる。ただし、仕上げ刃インサートには、工具回転方向T前方側から見て仕上げ刃と鈍角で交差するとともに、工具本体先端側から見て仕上げ刃と鈍角で交差する面取部が設けられている必要がある。
【0037】
また、切削インサートを正方形平板状のものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば平行四辺形や三角形平板状をなすものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態であるフライスカッタの説明図である。
【図2】図1に示すフライスカッタの底面図である。
【図3】図1に示すフライスカッタに設けられた第2取付座の詳細図である。
【図4】図3におけるX方向矢視図である。
【図5】図1に示すフライスカッタのインサートと仕上げ刃インサートの配置図である。
【図6】仕上げ刃切削インサートの刃先部を工具回転方向前方から見た図である。
【図7】図6におけるY方向矢視図である。
【図8】図7におけるZ方向矢視図である。
【符号の説明】
【0039】
10 フライスカッタ(切削工具)
11 工具本体
14 第1取付座(取付座)
27 押圧ネジ(位置調整機構)
30 切削インサート(インサート)
32 主切刃(正面刃)
40 仕上げ刃インサート
41A 一の四角形面(正面逃げ面)
41B 他の四角形面
42A 一の側面(すくい面)
42B 他の側面(外周逃げ面)
43 切刃部
44 仕上げ刃
45 面取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転される工具本体の先端側外周に設けられた取付座に、正面刃及び外周刃を備えたインサートが着脱可能に装着された切削工具であって、
前記工具本体には、前記取付座に装着された前記インサートの前記外周刃よりも径方向内側に位置するとともに、前記正面刃よりも前記工具本体先端側に位置する仕上げ刃を備えた仕上げ刃インサートが配置され、
前記仕上げ刃は、アキシャルレーキ角αが0°≦α≦30°の範囲内に設定され、
前記仕上げ刃インサートには、工具回転方向前方側から見て前記仕上げ刃と鈍角で交差するとともに、工具本体先端側から見ても前記仕上げ刃と鈍角で交差する面取部が形成されていることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記仕上げ刃インサートのすくい面には、ダイヤモンド焼結体で構成された切刃部が形成され、該切刃部に前記仕上げ刃が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記仕上げ刃は、工具回転方向前方側から見て、工具本体先端側に向けて凸となる曲線刃とされており、該曲線刃の曲率半径Rが50≦R≦500の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記工具本体には、前記仕上げ刃インサートが少なくとも2以上配置されるとともに、これら前記仕上げ刃インサートの正面振れを調整する位置調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の切削工具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の切削工具に使用される仕上げ刃インサートであって、
外形が概略四角形平板状をなして2つの四角形面と4つの側面とを有し、一の四角形面が正面逃げ面とされ、一の側面がすくい面とされ、前記一の側面に連なる他の側面が外周逃げ面とされ、前記すくい面と前記正面逃げ面との交差稜線部に仕上げ刃が設けられており、
前記すくい面と前記外周逃げ面と前記正面逃げ面とが交差する角部に、工具回転方向前方側から見て前記仕上げ刃と鈍角で交差するとともに、工具本体先端側から見ても前記仕上げ刃と鈍角で交差する面取部が形成されていることを特徴とする仕上げ刃インサート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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