説明

切削装置の切削ブレード検出機構

【課題】発光体および受光体を段階的に切削ブレードの径方向に調節することなく、切削ブレードの環状の切れ刃の使用範囲を検出することができる切削ブレード検出機構を提供する。
【解決手段】環状の切れ刃を備えた切削ブレードの回転軸方向の一方の側に配設された発光手段と、切削ブレードの回転軸方向の他方の側に発光手段と対向して配設され照射された光を受光する受光手段と、受光手段が受光した光量に基いて環状の切れ刃の状態を検出する制御手段とを具備する切削装置の切削ブレード検出機構であって、発光手段は円形の発光面を有する複数の発光体とそれぞれ光を発する発光源とを備え、発光面が直径を超えない範囲で該切削ブレードの径方向に変位して配設されており、受光手段は円形の受光面を有する複数の受光体と光の光量に対応する電圧を出力する光電変換器とを備え、受光面がそれぞれ対向して配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等のウエーハを切削する切削装置に装備される切削ブレードの状態を検出するための切削ブレード検出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれる切削装置によって行われている。この切削装置は、磨耗して直径が減少した切削ブレードの環状の切れ刃の交換時期および環状の切れ刃の欠けを検出するための切削ブレード検出機構を備えている。
【0004】
上記切削ブレードの検出機構は、切削ブレードの環状の切れ刃が侵入するブレード侵入部と、該ブレード侵入部に対向して配設される発光体および受光体とを備えている。この切削ブレード検出機構は、発光体が発する光を受光体が受光し、受光体が受光した光の光量に対応した電圧に変換することにより、発光体と受光体との間のブレード侵入部に位置する切削ブレードの環状の切れ刃の状態を検出する。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】実用新案登録第511370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記発光体および受光体は細い光ファイバーを複数束ねて構成されている。このように細い光ファイバーを複数束ねて構成された発光体は、直径が略1mmの円形の光を発光する。一方、切削ブレードの環状の切れ刃は1〜2mm突出しており、その50〜70%程度磨耗すると交換時期となる。しかるに、円形の光を発する発光体を用いて切削ブレードの環状の切れ刃の磨耗を正確に検出するためには、発光体の直径を中心として60%(例えば0.6mm)の範囲を用いる。従って、切削ブレードの環状の切れ刃の使用範囲(例えば0.5〜1mm)を検出するには、発光体および受光体を段階的に切削ブレードの径方向に調節する必要がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、発光体および受光体を段階的に切削ブレードの径方向に調節することなく、切削ブレードの環状の切れ刃の使用範囲を検出することができる切削ブレード検出機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルに保持された被加工物を切削する環状の切れ刃を備えた切削ブレードの回転軸方向の一方の側に配設された発光手段と、該切削ブレードの回転軸方向の他方の側に該発光手段と対向して配設され該発光手段によって照射された光を受光する受光手段と、該発光手段から照射された光を該受光手段が受光した光量に基いて該環状の切れ刃の状態を検出する制御手段と、を具備する切削装置の切削ブレード検出機構において、
該発光手段は、円形の発光面を有する複数の発光体と該複数の発光体にそれぞれ光を発する発光源とを備え、該複数の発光体の発光面が直径を超えない範囲で該切削ブレードの径方向に変位して配設されており、
該受光手段は、円形の受光面を有する複数の受光体と該複数の受光体とそれぞれ接続され該受光体の受光面が受光した光の光量に対応する電圧を出力する光電変換器とを備え、該複数の受光体の受光面が該複数の発光体の発光面とそれぞれ対向して配設されている、
ことを特徴とする切削装置の切削ブレード検出機構が提供される。
【0008】
上記制御手段は、切削ブレードの径方向最外側の発光体に光を発する発光源および切削ブレードの径方向最外側の受光体と接続した光電変換器を作動して環状の切れ刃の磨耗量を検出し、環状の切れ刃の磨耗量が発光体の発光面と受光体の受光面の検出許容範囲を超えたならば、順次切削ブレードの径方向内側の発光体に光を発する発光源および受光体に接続した光電変換器に切り換えて環状の切れ刃の状態を検出する。
上記検出許容範囲は、発光体の発光面から照射される光の光量の20〜80%を受光体の受光面によって受光される範囲に設定されている。
また、上記複数の発光体の発光面および複数の受光体の受光面の切削ブレードの径方向への変位量は、それぞれ発光体および受光体の半径に相当する量に設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明による切削装置の切削ブレード検出機構によれば、切削ブレードの径方向最外側の発光体に光を発する発光源および切削ブレードの径方向最外側の受光体と接続した光電変換器を作動して環状の切れ刃の磨耗量を検出し、環状の切れ刃の磨耗量が発光体発光面と受光体の受光面の検出許容範囲を超えたならば、順次該切削ブレードの径方向内側の該発光体に光を発する該発光源および該受光体に接続した該光電変換器に切り換えて該環状の切れ刃の磨耗量を検出するので、切削ブレードの円環状の切れ刃の使用可能範囲の検出が可能となる。従って、切削ブレードを交換した際に、複数の発光体および複数の受光体の位置を調整すれば、切削ブレードの円環状の切れ刃が使用限界に達するまで、複数の発光体および複数の受光体の位置を調整する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された切削装置の切削ブレード検出機構の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0011】
図1には、本発明に従って構成された切削ブレード検出機構を装備した切削装置の斜視図が示されている。図1に示す切削装置1は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。この装置ハウジング2内には、被加工物を保持するチャックテーブル3が切削送り方向である矢印Xで示す方向に移動可能に配設されている。チャックテーブル3は、吸着チャック支持台31と、該吸着チャック支持台31上に配設された吸着チャック32を具備しており、該吸着チャック32の上面である保持面上に被加工物を図示しない吸引手段を作動することによって吸引保持するようになっている。また、チャックテーブル3は、図示しない回転機構によって回転可能に構成されている。なお、チャックテーブル31には、被加工物として後述するウエーハをダイシングテープを介して支持する環状のフレームを固定するためのクランプ33が配設されている。このように構成されたチャックテーブル3は、図示しない切削送り手段によって、矢印Xで示す切削送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0012】
図1に示す切削装置1は、切削手段としてのスピンドルユニット4を具備している。スピンドルユニット4は、図示しない割り出し送り手段によって図1において矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない切り込み送り手段によって図1において矢印Zで示す切り込み送り方向に移動せしめられるようになっている。このスピンドルユニット4は、図示しない移動基台に装着され割り出し方向である矢印Yで示す方向および切り込み方向である矢印Zで示す方向に移動調整されるスピンドルハウジング41と、該スピンドルハウジング41に回転自在に支持された回転スピンドル42と、該回転スピンドル42の前端部に装着された切削ブレード43とを具備している。切削ブレード43は、例えば図2に示すようにアルミニウムによって形成された円盤状の基台431と、該基台431の外周部側面にダイヤモンド砥粒をニッケルメッキで固めて厚さが15〜30μmに形成された円環状の切れ刃432からなっている。
【0013】
図2を参照して説明を続けると、上記スピンドルハウジング41の前端部には、切削ブレード43の上半部を覆うブレードカバー44が取り付けられている。ブレードカバー44は、図示の実施形態においてはスピンドルハウジング41に装着された第1のカバー部材441と、該第1のカバー部材441に装着される第2のカバー部材442とからなっている。第1のカバー部材441の側面には雌ネジ穴441aと2個の位置決めピン441bが設けられており、第2のカバー部材442には上記雌ネジ穴441aと対応する位置に挿通穴442aが設けられている。また、第2のカバー部材442の第1のカバー部材441と対向する面には、上記2個の位置決めピン441bが嵌合する図示しない2個の凹部が形成されている。このように構成された第1のカバー部材441と第2のカバー部材442は、第2のカバー部材442に形成された図示しない2個の凹部を第1のカバー部材441に設けられた2個の位置決めピン441bに嵌合することによって位置決めする。そして、締結ボルト443を第2のカバー部材442の挿通穴442aに挿通し、第1のカバー部材441に設けられた雌ネジ穴441aと螺合することにより、第2のカバー部材442を第1のカバー部材441に装着する。
【0014】
上記ブレードカバー44を構成する第1のカバー部材441と第2のカバー部材442には、それぞれ切削水供給管451、452が配設されている。この切削水供給管451、452の下端には、それぞれ切削ブレード43の円環状の切れ刃432の両側にそれぞれ配設され円環状の切れ刃432の両側面に向けて切削水を噴射する切削水供給ノズル461、462が接続されている。なお、上記切削水供給管451、452は、図示しない切削水供給手段に接続されている。
【0015】
図示の実施形態におけるスピンドルユニット4のブレードカバー44を構成する第1のカバー部材441には、上記切削ブレード43の円環状の切れ刃432の磨耗や欠けを検出するための切削ブレード検出機構5が配設されている。この切削ブレード検出機構5について図2乃至図4を参照して説明する。図示の実施形態における切削ブレード検出機構5は、上記第1のカバー部材441に締結ボルト51によって取り付けられる取付け部材52と、図3に示すように該取付け部材52に上下方向摺動可能に配設される支持部材53と、該支持部材53の下端部に互いに対向して配設された発光手段6および受光手段7を具備している。取付け部材52には、第3図に示すように上記支持部材53の厚みに対応する溝幅を有し下方が開放され上下方向に形成された案内溝521が形成されている。この案内溝521に支持部材53が上下方向に摺動可能に配設される。
【0016】
上記支持部材53は、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属材によって上記案内溝521の溝幅と対応する厚みを有する板状に形成され、その下部には上記切削ブレード43の環状の切れ刃422が侵入するブレード侵入凹部531が形成されており、該ブレード侵入凹部531の両側に発光体取り付け部532と受光体取り付け部533が設けられている。このように構成された支持部材53は、取付け部材52に形成された案内溝521に上下方向に摺動可能に配設され、取付け部材52に装着された調整ネジ54によって上下方向に移動調節されるようになっている。
【0017】
上記発光手段6は、図4に示すように支持部材53の発光体取り付け部532に発光面601を上記ブレード侵入凹部531に向けて配設された第1の発光体60aおよび第2の発光体60bと、該第1の発光体60aおよび第2の発光体60bにそれぞれ光を発する第1の光源61a(LED-1)および第2の光源61b(LED-2)とからなっている。第1の発光体60aと第2の発光体60bは、断面が円形の複数の光ファイバーを束ねて直径が1mm程度の円形に形成されており、発光面601と601が直径を超えない範囲で切削ブレード43の径方向に変位して配設されている。この第1の発光体60aの発光面601と第2の発光体60bの発光面601との切削ブレード43の径方向への変位量は、第1の発光体60aおよび第2の発光体60bの半径に相当する量に設定されていることが望ましい。このように構成された第1の発光体60aと第2の発光体60bは、支持部材53の発光体取り付け部532に装着される。上記第1の光源61a(LED-1)および第2の光源61b(LED-2)は、例えばレーザー発光ダイオード(LED)からなり、制御手段8によって制御される。
【0018】
次に、上記受光手段7について、図4を参照して説明する。
受光手段7は、支持部材53の受光体取り付け部533に受光面701を上記ブレード侵入凹部531に向けて配設された第1の受光体70aおよび第2の受光体70bと、該第1の受光体70aおよび第2の受光体70bによって受光された光の光量に対応した電圧に変換する第1の光電変換器71a(PET-1)および第2の光電変換器71b(PET-2)とからなっている。第1の受光体70aと第2の受光体70bは、上記第1の発光体60aと第2の発光体60bと同様に断面が円形の複数の光ファイバーを束ねて直径が1mm程度の円形に形成されており、受光面701と701が直径を超えない範囲で切削ブレード43の径方向に変位して配設されている。この第1の受光体70aの受光面701と第2の受光体70bの受光面701との切削ブレード43の径方向への変位量は、第1の受光体70aおよび第2の受光体70bの半径に相当する量に設定されていることが望ましい。このように構成された第1の受光体70aと第2の受光体70bは、支持部材53の受光体取り付け部533に装着され、第1の受光体70aの受光面701と第2の受光体70bの受光面701がそれぞれ上記発光手段6の第1の発光体60aの発光面601と第2の発光体60bの発光面601と対向して配設される。上記第1の光電変換器71a(PET-1)および第2の光電変換器71b(PET-2)は、それぞれ第1の受光体70aおよび第2の受光体70bによって受光された光の光量に対応した電圧値に変換し、制御手段8に送る。
【0019】
以上のように構成された切削ブレード検出機構5の発光手段6を構成する第1の発光体60aと第2の発光体60bおよび受光手段7を構成する第1の受光体70aと第2の受光体70bは、図3に示すように切削ブレード43の円環状の切れ刃432の両側に位置付けられる。そして、図4に示すように発光手段6の上側(切削ブレード43の径方向最外側)に位置する第1の発光体60aの発光面601および受光手段7の上側(切削ブレード43の径方向最外側)に位置する第1の受光体70aの受光面701の中心から例えば半径の2分の1上側の位置が切削ブレード43の円環状の切れ刃432の外周縁に位置付けられるように上記調整ネジ54によって第1の発光体60aと第2の発光体60bおよび第1の受光体70aと第2の受光体70bを支持する支持部材53の上下方向位置を調整する。このように位置付けられた第1の発光体60aと第2の発光体60bおよび第1の受光体70aと第2の受光体70bは、切削ブレード43の円環状の切れ刃432における少なくとも使用可能範囲をカバーするようになっている。従って、切削ブレード43を交換した際に、上述したように調整ネジ54によって第1の発光体60aと第2の発光体60bおよび第1の受光体70aと第2の受光体70bを支持する支持部材53の上下方向位置を調整すれば、切削ブレード43の円環状の切れ刃432が使用限界に達するまで、第1の発光体60aと第2の発光体60bおよび第1の受光体70aと第2の受光体70bの位置を調整する必要がない。なお、図示の実施形態においては発光手段6および受光手段7はそれぞれ2個の発光体(第1の発光体60aおよび第2の発光体60b)と2個の受光体(第1の受光体70aおよび第2の受光体70b)を用いた例を示したが、切削ブレード43の円環状の切れ刃432の使用範囲によってはそれぞれ3個以上使用してもよい。
【0020】
図示の実施形態における切削ブレード検出機構5は以上のように構成されており、以下その作用について図5に示すフローチャートも参照して説明する。
切削ブレード43が回転している状態において制御手段8は、ステップS1において発光手段6の第1の光源61a(LED-1)を附勢(ON)するとともに受光手段7の第1の光電変換器71a(PET-1)を附勢(ON)する。この結果、発光手段6を構成する第1の発光体60aの発光面601から受光手段7を構成する第1の受光体70aの受光面701に向けて光が照射される。そして、第1の受光体70aの受光面701が受光した光が第1の光電変換器71a(PET-1)に伝送され、第1の光電変換器71a(PET-1)は第1の受光体70aの受光面701が受光した光の光量に対応した電圧信号を制御手段8に出力する。第1の受光体70aの受光面701が受光する光の光量は、切削ブレード43の円環状の切れ刃432が磨耗していない状態では少なく、磨耗するに従って増大する。従って、切削ブレード43によって切削が行われている際には、時間の経過に従って第1の光電変換器71a(PET-1)は図6に示すような電圧信号を出力する。
【0021】
ステップS1において発光手段6の第1の光源61a(LED-1)を附勢(ON)するとともに受光手段7の第1の光電変換器71a(PET-1)を附勢(ON)したならば、制御手段8はステップS2に進んで、第1の光電変換器71a(PET-1)の出力値が所定の電圧値V2に達したか否かをチェックする。なお、所定の電圧値V2は、例えば第1の受光体70aの中心から半径の2分の1下側の位置まで切削ブレード43の円環状の切れ刃432が磨耗した状態で第1の受光体70aの受光面701が受光する光の光量に対応して第1の光電変換器71a(PET-1)が出力する電圧値に設定されている。ステップS2において第1の光電変換器71a(PET-1)の出力値が所定の電圧値V2に達しないならば、制御手段8は第1の発光体60aおよび第1の受光体70aの受光面701による検出許容範囲内であると判断し、ステップS1に戻ってステップS1およびステップS2を繰り返し実行する。なお、図示の実施形態においては第1の発光体60aの発光面601および第1の受光体70aの受光面701による検出許容範囲内は、第1の受光体70aの受光面701の中心から上下に半径の2分の1づつの範囲に設定した例を示したが、検出許容範囲内は第1の発光体60a発光面601から照射される光の光量の20〜80%を第1の受光体70aの受光面701によって受光される範囲でよい。ステップS2において第1の光電変換器71a(PET-1)の出力値が所定の電圧値V2に達したならば、制御手段8は第1の発光体60aおよび第1の受光体70aの受光面701による検出許容範囲を超えたと判断し、ステップS3に進んで第1の光源61a(LED-1)を除勢(OFF)するとともに第1の光電変換器71a(PET-1)を除勢(OFF)する。そして、制御手段8はステップS4に進んで第2の光源61b(LED-2)を附勢(ON)するとともに第2の光電変換器71b(PET-2)を附勢(ON)する。この結果、発光手段6を構成する第2の発光体60b発光面601から受光手段7を構成する第2の受光体70bの受光面701に向けて光が照射される。そして、第2の受光体70bの受光面701が受光した光が第2の光電変換器71b(PET-2)に伝送され、第2の光電変換器71b(PET-2)は第2の受光体70bの受光面701が受光した光の光量に対応した電圧信号を制御手段8に出力する。第2の受光体70bの受光面701が受光する光の光量は、上記第1の受光体70aの受光面701と同様に切削ブレード43の円環状の切れ刃432が磨耗するに従って増大する。従って、切削ブレード43によって切削が行われている際には、時間の経過に従って第2の光電変換器71b(PET-2)は図6に示すような電圧信号を出力する。なお、図6に示す第1の光電変換器71a(PET-1)および第2の光電変換器71b(PET-2)の出力値である電圧値は表示手段12に表示される。
【0022】
ステップS4において第2の光源(LED-2)を附勢(ON)するとともに第2の光電変換器71b(PET-2)を附勢(ON)したならば、制御手段8はステップS5に進んで、第2の光電変換器71b(PET-2)の出力値が所定の電圧値V1に達したか否かをチェックする。なお、所定の電圧値V1は、第2の発光体60bと第2の受光体70bによって検出された円環状の切れ刃432の磨耗量が所定の値に達した状態で、第2の受光体70bの受光面701が受光する光の光量に対応して第2の光電変換器71b(PET-2)が出力する電圧値に設定されている。即ち、図示の実施形態においては、上記第1の発光体60aの発光面601と第1の受光体70aの受光面701によって検出された円環状の切れ刃432の磨耗量と第2の発光体60bの発光面601と第2の受光体70bの受光面701によって検出された円環状の切れ刃432の磨耗量を加算した値が円環状の切れ刃432の使用限界となる。ステップS5において第2の光電変換器71b(PET-2)の出力値が所定の電圧値V1に達しないならば、制御手段8は円環状の切れ刃432の磨耗量が使用限界に達していないと判断し、ステップS4に戻ってステップS4およびステップS5を繰り返し実行する。ステップS5において第2の光電変換器71b(PET-2)の出力値が所定の電圧値V1に達したならば、制御手段8は円環状の切れ刃432の磨耗量が使用限界に達したと判断し、ステップS6に進んで表示手段12に円環状の切れ刃432の磨耗量が使用限界に達したことを警報する。なお、第1の光電変換器71a(PET-1)および第2の光電変換器71b(PET-2)の出力値は図6に示す通りであるが、制御手段8は図7に示すように第1の光電変換器71a(PET-1)の出力値(電圧値)と第2の光電変換器71b(PET-2)の出力値(電圧値)を加算して使用限界とともに表示手段12に表示することが望ましい。
【0023】
以上のように、第1の光源61a(LED-1)と第1の発光体60aおよび第1の受光体70aと第2の光電変換器71a(PET-2)によって切削ブレード43の円環状の切れ刃432の磨耗量を検出し、第1の光源61a(LED-1)と第1の発光体60aおよび第1の受光体70aと第1の光電変換器71a(PET-1)による検出許容範囲を超えたならば、第2の光源61b(LED-2)と第2の発光体60bおよび第2の受光体70bと第2の光電変換器71b(PET-2)によって円環状の切れ刃432の磨耗量を検出するので、切削ブレード43の円環状の切れ刃432における使用可能範囲をカバーすることができる。従って、切削ブレード43を交換した際に、上述したように調整ネジ54によって第1の発光体60aと第2の発光体60bおよび第1の受光体70aと第2の受光体70bを支持する支持部材53の上下方向位置を調整すれば、切削ブレード43の円環状の切れ刃432が使用限界に達するまで、第1の発光体群61および第2の発光体群62と第1の受光体群71および第2の受光体群72の位置を調整する必要がない。
【0024】
次に、切削ブレード43によって切削が行われている際に図8に示すように切削ブレード43の円環状の切れ刃432の一部に欠け432aが発生した場合について説明する。即ち、切削ブレード43の円環状の切れ刃432の一部に欠け432aが発生すると、欠け432aの領域を通過して第1の受光体70aの受光面701または第2の受光体70bの受光面701によって受光される光の量が増加する。従って、第1の受光体70aの受光面701または第2の受光体70bの受光面701に受光された光の光量に対応した電圧信号を出力する第1の光電変換器71a(PET-1)または第2の光電変換器71b(PET-2)は、図9に示すように間欠的にピーク値を有する電圧信号を出力する。この電圧信号を入力した制御手段8は、表示手段12に表示する。従って、オペレータは切削ブレード43の円環状の切れ刃432に欠けが発生したことを確認することができる。
【0025】
図1に戻って説明を続けると、切削装置1は、上記チャックテーブル3上に保持された被加工物の表面を撮像し、上記切削ブレード43によって切削すべき領域を検出するための撮像手段11を具備している。この撮像手段11は、顕微鏡やCCDカメラ等の光学手段からなっている。また、切削装置1は、撮像手段11によって撮像された画像や上記制御手段8による判定結果等を表示する表示手段12を具備している。
【0026】
上記装置ハウジング2におけるカセット載置領域13aには、被加工物を収容するカセットを載置するカセット載置テーブル13が配設されている。このカセット載置テーブル13は、図示しない昇降手段によって上下方向に移動可能に構成されている。カセット載置テーブル13上には、被加工物としての半導体ウエーハ10を収容するカセット14が載置される。カセット14に収容される半導体ウエーハ10は、表面に格子状のストリートが形成されており、この格子状のストリートによって区画された複数の矩形領域にIC、LSI等のデバイスが形成されている。このように形成された半導体ウエーハ10は、環状の支持フレームFに装着されたダイシングテープTの表面に裏面が貼着された状態でカセット14に収容される。
【0027】
また、図示の実施形態における切削装置は、カセット載置テーブル13上に載置されたカセット14に収容されている半導体ウエーハ10(環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持されている状態)を仮置きテーブル15に搬出する搬出・搬入手段16と、仮置きテーブル15に搬出された半導体ウエーハ10を上記チャックテーブル3上に搬送する第1の搬送手段17と、チャックテーブル3上で切削加工された半導体ウエーハ10を洗浄する洗浄手段18と、チャックテーブル3上で切削加工された半導体ウエーハ10を洗浄手段18へ搬送する第2の搬送手段19を具備している。
【0028】
次に、上述した切削装置1を用いて半導体ウエーハ10を所定のストリートに沿って切断する切削作業について説明する。
カセット載置テーブル13上に載置されたカセット14の所定位置に収容されている半導体ウエーハ10(環状のフレームFにダイシングテープTを介して支持されている状態)は、図示しない昇降手段によってカセット載置テーブル13が上下動することにより搬出位置に位置付けられる。次に、搬出・搬入手段16が進退作動して搬出位置に位置付けられた半導体ウエーハ10を仮置きテーブル15上に搬出する。仮置きテーブル15に搬出された半導体ウエーハ10は、第1の搬送手段17の旋回動作によって上記チャックテーブル3上に搬送される。
【0029】
チャックテーブル3上に半導体ウエーハ10が載置されたならば、図示しない吸引手段が作動して半導体ウエーハ10をチャックテーブル3上に吸引保持する。また、半導体ウエーハ10をダイシングテープTを介して支持する環状のフレームFは、上記クランプ33によって固定される。このようにして半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル3は、撮像手段11の直下まで移動せしめられる。チャックテーブル3が撮像手段11の直下に位置付けられると、撮像手段11によって半導体ウエーハ10に形成されているストリートが検出され、スピンドルユニット4を割り出し方向である矢印Y方向に移動調節してストリートと切削ブレード43との精密位置合わせ作業が行われる。
【0030】
その後、チャックテーブル3を切削ブレード43の下方である切削加工領域に移動し、切削ブレード43を所定方向に回転せしめるとともに、矢印Zで示す方向に所定量切り込み送りし、切削ブレード43の最下端がダイシングテープTに達する位置に位置付ける。そして、半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル3を切削送り方向である矢印Xで示す方向に所定の切削送り速度で移動する。この結果、チャックテーブル3上に保持された半導体ウエーハ10は、切削ブレード43により所定のストリートに沿って切断される(切削工程)。この切削工程を実施する際には、切削水供給ノズル462から切削水が切削ブレード43の側面に向けて噴射される。
【0031】
以上のようにして、半導体ウエーハ10を所定のストリートに沿って切断したら、チャックテーブル3を図1において矢印Yで示す方向にストリートの間隔だけ割り出し送りし、上記切削工程を実施する。そして、半導体ウエーハ10の所定方向に延在するストリートの全てに沿って切削工程を実施したならば、チャックテーブル3を90度回転させて、半導体ウエーハ10の所定方向と直交する方向に延在するストリートに沿って切削工程を実行することにより、半導体ウエーハ10に格子状に形成された全てのストリートが切削されて個々のデバイスに分割される。なお、分割された個々のデバイスは、ダイシングテープTの作用によってバラバラにはならず、環状のフレームFに支持されたウエーハの状態が維持されている。
【0032】
上述したように半導体ウエーハ10のストリートに沿って切削工程が終了したら、半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル3は最初に半導体ウエーハ10を吸引保持した位置に戻される。そして、半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。次に、半導体ウエーハ10は第2の搬送手段19によって洗浄手段18に搬送される。洗浄手段18に搬送された半導体ウエーハ10は、ここで洗浄される。このようにして洗浄された半導体ウエーハ10は、乾燥後に第1の搬送手段17によって仮置きテーブル15に搬送される。そして、半導体ウエーハ10は、搬出・搬入手段16によってカセット9の所定位置に収納される。
【0033】
上述した切削工程を実施している際に上記切削ブレード検出機構5も作動しており、上述したように切削ブレード43の円環状の切れ刃432の磨耗状況や円環状の切れ刃432の欠けが発生したことを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に本発明に従って構成された切削ブレード検出機構が装備された切削装置の斜視図。
【図2】図1に示す切削装置に装備されるスピンドルユニットの要部斜視図。
【図3】図1に示す切削装置に装備される切削ブレードと本発明に従って構成された切削ブレード検出機構との関係を示す説明図。
【図4】図3に示す切削ブレード検出機構を構成する発光手段の第1の受光体および第2の発光体と切削ブレードの円環状の切れ刃との関係および第1の受光体および第2の受光体と切削ブレードの円環状の切れ刃との関係を示す説明図。
【図5】図3に示す切削ブレード検出機構を構成する制御手段の動作手順を示すフローチャート。
【図6】図3に示す切削ブレード検出機構を構成する第1の光電変換器および第2の光電変換器が出力する電圧信号の説明図。
【図7】図3に示す切削ブレード検出機構を構成する第1の光電変換器および第2の光電変換器が出力する電圧信号を加算して表示する例を示す説明図。
【図8】切削ブレードの円環状の切れ刃に欠けが発生した状態を示す説明図。
【図9】図8に示す切削ブレードの円環状の切れ刃に欠けが発生した場合において切削ブレード検出機構を構成する第1の光電変換器または第2の光電変換器が出力する電圧信号の説明図。
【符号の説明】
【0035】
1:切削装置
2:装置ハウジング
3:チャックテーブ
4:スピンドルユニット
41:回転スピンドル
43:切削ブレード
44:ブレードカバー
461,462:切削水供給ノズル
5:切削ブレード検出機構
52:取付け部材
53:支持部材
6:発光手段
60a:第1の発光体
60b:第2の発光体
61a:第1の光源(LED-1)
61b:第2の光源(LED-2)
7:受光手段
70a:第1の受光体
70b:第2の受光体
71a:第1の光電変換器(PET-1)
71b:第2の光電変換器(PET-2)
8:制御手段
10:半導体ウエーハ
11:撮像手段
12:表示手段
13:カセット載置テーブル
14:カセット
15:仮置きテーブル
16:搬出・搬入手段
17:第1の搬送手段
18:洗浄手段
19:第2の搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルに保持された被加工物を切削する環状の切れ刃を備えた切削ブレードの回転軸方向の一方の側に配設された発光手段と、該切削ブレードの回転軸方向の他方の側に該発光手段と対向して配設され該発光手段によって照射された光を受光する受光手段と、該発光手段から照射された光を該受光手段が受光した光量に基いて該環状の切れ刃の状態を検出する制御手段と、を具備する切削装置の切削ブレード検出機構において、
該発光手段は、円形の発光面を有する複数の発光体と該複数の発光体にそれぞれ光を発する発光源とを備え、該複数の発光体の発光面が直径を超えない範囲で該切削ブレードの径方向に変位して配設されており、
該受光手段は、円形の受光面を有する複数の受光体と該複数の受光体とそれぞれ接続され該受光体の受光面が受光した光の光量に対応する電圧を出力する光電変換器とを備え、該複数の受光体の受光面が該複数の発光体の発光面とそれぞれ対向して配設されている、
ことを特徴とする切削装置の切削ブレード検出機構。
【請求項2】
該制御手段は、該切削ブレードの径方向最外側の該発光体に光を発する該発光源および該切削ブレードの径方向最外側の該受光体と接続した該光電変換器を作動して該環状の切れ刃の状態を検出し、該環状の切れ刃の磨耗量が該発光体の発光面と該受光体の受光面の検出許容範囲を超えたならば、順次該切削ブレードの径方向内側の該発光体に光を発する該発光源および該受光体に接続した該光電変換器に切り換えて該環状の切れ刃の状態を検出する、請求項1記載の切削装置の切削ブレード検出機構。
【請求項3】
該検出許容範囲は、該発光体の発光面から照射される光の光量の20〜80%を該受光体の受光面によって受光される範囲に設定されている、請求項1又は2記載の切削装置の切削ブレード検出機構。
【請求項4】
該複数の発光体の発光面および該複数の受光体の受光面の該切削ブレードの径方向への変位量は、それぞれ該発光体の発光面および該受光体の受光面の半径に相当する量に設定されている、請求項1から3のいずれかに記載の切削装置の切削ブレード検出機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−83010(P2009−83010A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253244(P2007−253244)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】