説明

切断可能スペーサーを有する融合タンパク質およびその使用

第1のタンパク質ドメイン、第2のタンパク質ドメインおよび少なくとも1つのプロテアーゼ切断サイトを含むジチオシクロペプチドスペーサーを含むポリペプチドであって、前記ジチオシクロペプチドは前記第1または第2のタンパク質ドメインに対して外因性であり、前記第1および第2のタンパク質ドメインは、前記ジチオシクロペプチドによって操作可能に繋がっているポリペプチド。さらに、ポリペプチドを製造する方法および細胞へタンパク質ドメインを送達する方法が示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、融合タンパク質に関する。より具体的には、本発明は、切断可能スペーサーを有する融合タンパク質ならびにそのようなタンパク質の製造および使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願]
本出願は、米国仮特許出願第60/908,910号(2007年3月29日出願)の優先権を主張し、当該出願の内容は、その全てが本願に援用される。
【0003】
[財政的支援]
本発明は、NIH助成金R01GM063647により部分的に支援を受けた。それゆえ、米国政府が一定の権利を有する。
【0004】
[背景技術]
生物工学的産業において、近年、治療的可能性を有する大量な数の組み換えヒトペプチドおよびタンパク質の製造において大きな進展を見せている。成長ホルモンおよびヒト化モノクローナル抗体といった幾つかの組み換えタンパク質が、既に臨床的にヒトの疾病の治療に使用されている[2]。タンパク質療法の市場は、10.5%の複合的年成長率で急速に成長し、市場規模は2010年において2003年の2倍に達すると予想される[3]。タンパク質療法におけるこの増大は、タンパク質と小分子薬剤との間の違いに起因する、剤形および用量設計に関する医薬産業における多くの問題を生じている。これらの新規の薬剤の可能性を開くための最も緊急の問題は、タンパク質薬剤の経口投与の形態を開発することである。これは、この投与経路が、最も便利で経済的であるためである。しかしながら、タンパク質ベースの薬剤の生物物理学的構成、すなわち、それらの大きくかさばるサイズ、電荷および親水性、ならびに消化酵素に対する感受性に起因して、これらの治療的薬剤の選択した組織への経口的送達を達成し、または、これらの治療的薬剤の選択した上皮性関門を介した経口的送達を達成することは困難なままである[4]。
【0005】
糖尿病に対するインスリンのように、今日の大部分のタンパク質およびペプチドの薬剤は、慢性疾患の治療のために使用されているため、頻繁に行われる注射が、患者に対して不自由さ、乏しい服薬遵守および有害な副作用をもたらし得る。それゆえ、タンパク質およびペプチドのための非侵襲性の送達システム、特に最も便利な経口投与経路を使用するものが、医薬産業において長らく求められている。
【0006】
この研究領域に対する多大な努力にもかかわらず、これらの薬剤の経口送達のための確立された方法は存在しない。それゆえ、関連するタンパク質を経口投与によって医薬的に送達するための薬剤送達システムとして役立ち得る、融合タンパク質の設計に対する新規のアプローチについて、急を要する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、タンパク質ドメインを細胞へ送達するために使用できる新規の融合タンパク質に関する。
【0008】
一側面において、本発明は、第1のタンパク質ドメイン、第2のタンパク質ドメインおよび少なくとも1つのプロテアーゼ切断サイトを含むジチオシクロペプチドスペーサーを含むポリペプチドを特徴とする。ジチオシクロペプチドは、第1および第2のタンパク質ドメインに対して外因性であり、第1および第2のタンパク質ドメインは、ジチオシクロペプチドによって操作可能に繋がっている。ある実施態様において、ジチオシクロペプチドは、ジスルフィド結合によって環化される。ある実施態様において、ジチオシクロペプチドは、プロテアーゼ切断サイトにおいて、プロテアーゼによって切断される。
【0009】
本発明のポリペプチドは、組み換えポリペプチドであってよい。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を含む核酸、および本発明の核酸を含む細胞を提供する。
【0010】
別の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを製造する方法を特徴とする。方法は、本発明の細胞を、ポリペプチドの発現が可能な条件の下で培養することを含む。方法は、ポリヌクレオチドの収集またはプロテアーゼによるポリペプチドの切断を更に含んでよい。
【0011】
さらに、本発明は、タンパク質ドメインを細胞に送達する方法を含む。方法は、細胞に本発明のポリペプチドを、前記細胞に前記ポリペプチドが輸送される条件の下で接触させることを含む。ジチオシクロペプチドのジスルフィド結合は、輸送の際にまたは細胞において還元され、これによって、第1のタンパク質ドメインと第2のタンパク質ドメインとが分離する。
【0012】
本発明のポリペプチドにおいて、第1のタンパク質ドメインは顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)ドメインであってよく、第2のタンパク質ドメインはトランスフェリン(Tf)ドメインであってよく、ジチオシクロペプチドはトロンビンまたはトリプシン切断サイトを含んでよく、例えば、ジチオシクロペプチドは、LEAGCKNFFPRSFTSCGSLEまたはLEAGCPRSFWTFPRSCGSLEを含んでよい。第2のタンパク質ドメインがTfドメインである場合、本発明のポリペプチドに接触させる細胞は、トランスフェリン受容体(TfR)を発現する細胞であってよい。
【0013】
特に定義されない限り、ここに使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。矛盾が生じる場合は、定義を含む本願の内容が優先される。ここに記載される全ての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、その全体が本願に援用される。ここに開示される材料、方法および例は例示的にのみ示され、限定を意図しない。本発明のその他の特徴、目的および利点は、明細書および添付の図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ラットの小腸の代表的凍結切片における、抗ラットTfR抗体を使用したTfRの免疫蛍光染色。パネルの上部は漿膜側および陰窩領域である;下部は、内腔側および絨毛である。矢印は絨毛間腔を示し、三角は、内腔側における腸細胞の陽性TfR染色を示し、下部繊毛および陰窩領域で優先的である。A)20x。B)40x(Aの囲んだ領域の拡大)。
【図2】125I−TfのTfR介在細胞取り込み。125I−Tfを、無血清培地中にてCaco−2またはMCF−7細胞に添加し、37℃で15分インキュベートした。非特異的取り込みは、125I−Tfおよび過剰の非標識Tfを含む並行したウェルにて決定した。その後、細胞を1N NaOHで可溶化し、放射能を測定した。それぞれのデータポイントは、3つの測定の平均および標準偏差を示すエラーバーを表す。
【図3】Caco−2およびMCF−7細胞におけるTfのパルス−チェイス研究。1mg/mlのBSAを含む無血清DMEMにて1時間プレインキュベートして内因性Tfを除去した後、細胞を、125I−Tfとともに37℃で15分間インキュベートし(パルスを与え)、徹底的にリンスし、その後、1mg/mlのBSAを含む無血清DMEMにて、非標識Tfとともに4℃で2時間インキュベートした。それぞれのデータポイントは、3つの測定の平均および標準偏差を示すエラーバーを表す。
【図4】ジスルフィドシクロペプチドリンカーのオリゴヌクレオチド挿入物およびその対応するアミノ酸配列。Cys−5とCys−16との間のジスルフィド結合の自発的形成は、ソマトスタチンにおいて観察されるような環状構造を与えるだろう。
【図5】ジスルフィドシクロペプチドリンカーを有する融合タンパク質のウェスタンブロット。(A)抗Tf;(B)抗G−CSF。レーン1:(A)Tfまたは(B)G−CSF、2:融合タンパク質、3:トロンビン消化および続くDTT処理後の融合タンパク質、および4:トロンビン消化後(DTT処理を行わず)の融合タンパク質。
【図6】ジチオシクロペプチドスペーサーを有する融合タンパク質。(A)単一のトロンビン切断サイトを有するジチオシクロペプチドスペーサー、および(B)2つのトロンビン切断サイトを有するジチオシクロペプチド。(A)および(B)の両方において、体内におけるG−CSF−Tf融合タンパク質の還元により、G−CSFおよびTfのドメインが分離するだろう。
【図7】(A)ソマトスタチンの構造;(B)シクロペプチドスペーサーの構造。ソマトスタチンのWKT配列を、トロンビン切断サイトPRSで置換した。末端のLE配列は、組み換えプラスミドのXhoI切断サイトに由来する;(C)2つのトロンビン切断サイトを有したソマトスタチンアナログシクロペプチドの仮定される構造。配列PRS[45]をPRG[34]に置換することができる。(C)におけるアミノ酸配列FWTFは、安定した環構造を得るために、コンピューターモデリングによって変化されるだろう。
【図8】ジスルフィド結合といったインビボ切断可能結合を有したマルチGSF融合タンパク質。このタンパク質は、腸管吸収後、複数のG−CSF分子を放出することができる。この種の融合タンパク質によって、骨髄造血活性の増大が達成できる。
【図9】第1の(捕獲)抗体としてウサギ抗hG−CSF抗体が固定化され、第2の(検出)抗体としてヤギ抗hTf抗体が使用されるだろう。検出抗体を認識する酵素融合第3の抗体は、融合タンパク質の濃度の検出のためのシグナルを与えるだろう。このアッセイによって、血漿サンプル中に過剰な内因性Tfおよび、たとえ可能性が低くても、何れかのG−CSFが存在する場合における、融合タンパク質の定量的な検出が可能となるだろう。
【図10】腸上皮細胞の粘膜側から血液へのTf輸送の調節機構の仮説的スキーム。1.基底エンドソーム(BE)における基底膜のミスソーティングは、少数のTfRがアピカル面に出現することを可能にする。2.経口投与されたTfはアピカルTfRに結合し、アピカルエンドソーム(AE)の内部に取り込まれ、そこで、ジフェリックTfが酸性化によってアポTfに変換される。3.AEにおけるアポTfは、BEにおけるアポTfについて記述されたのと同じプロセスで[66]、共通エンドソーム(CE)に輸送される。アポTfは、CEに長期間蓄積される。4.二価金属トランスポーター1(DMT1)を介した粘膜表面からの鉄取り込みは、DMT1のエンドサイトーシスによってCEに達する[67]。5.CEにおけるアポTfのジフェリックTfへの変換は、エンドサイトーシスを介したCEから基底膜へのジフェリックTfの輸送を加速し、最終的に血液中に放出される[67]。
【図11】トロンビンおよび/またはDTT処理がある場合またはない場合における、G−C−T融合タンパク質についての、抗G−CSFウエスタンブロッティングの結果。レーン1、2、DTT処理がある場合またはない場合のG−C−T;レーン3、4、トロンビンプロセシング後、DTT処理がある場合またはない場合のG−C−T;レーン5、G−CSFコントロール。
【図12】NFS−60細胞における細胞増殖アッセイによる、G−C−T融合タンパク質のG−CSF活性の評価。細胞の生存度は、MTTアッセイによって決定した。サンプルは、このアッセイにおいて生産されるホルマザン結晶の平均吸収±標準偏差で表される(n=3)。
【図13】上部パネル:[左]トロンビン処理G−C−Tまたは[右]G−C−Tを注射したCF1マウスから採取した血液血漿の抗G−CSFウエスタンブロッティング分析。結晶サンプルは、注射後異なる時点で採取した。下部パネル:タンパク質の相対量をQuality Oneソフトウェア(BioRad)を使用して定量した。
【図14】トリプシンおよびジチオスレイトールによる処理後の、G−CSF−シクロ−Tf融合タンパク質からの遊離G−CSFの放出。
【発明の詳細な説明】
【0015】
本発明は、それぞれ個々の構成成分の生物学的活性を達成するために、インビボで分離可能な切断可能スペーサーによって繋がった2以上のドメインを有する組み換え融合タンパク質の設計のためのものである。
【0016】
プロテアーゼ切断可能スペーサーを有する組み換え融合タンパク質は、組み換え生成物のインビトロの製造のために使用されてきた。例えば、トロンビン切断サイトは、親和性クロマトグラフィーを使用して組み換えタンパク質を生成する目的で、グルタチオントランスフェラーゼといった結合部分を組み換えタンパク質につなぐために広く使用されている。しかしながら、この種の切断可能スペーサーは、投与後に2つのタンパク質の部分にインビボで分離する治療的融合タンパク質の設計のために使用できない。なぜならば、(a)融合タンパク質のその他の部分ではなく、スペーサーペプチドのみにおいて高度に特異的なタンパク質分解を達成することが困難であり、および(b)血漿プロテアーゼは高度に特異的であるものの、固有の生理学的または病理学的条件(例えば、血液凝固プロセスにおいてプラスミンおよびトロンビンの存在)の下でのみ活性化するためである。
【0017】
タンパク質複合体におけるジスルフィド結合は、上皮細胞単層を通る輸送の際に(しかし、その前ではない)およびGI上皮において、還元されることが以前に実証されている。それゆえ、2つのタンパク質成分間のジスルフィドスペーサーを有する融合タンパク質は、個々の生物学的活性を達成するため、体内で2つのタンパク質ドメインに分離するために有用であろう。この目的のため、プロテアーゼ特異的な切断サイトを有するジスルフィド含有シクロペプチドスペーサーを挿入することによって、融合タンパク質中の革新的なジスルフィドスペーサーを設計した。その後、ジチオシクロペプチドスペーサーを有する融合タンパク質はインビトロでプロセスされ、スペーサーがジスルフィド結合へと変換される。このアプローチの一般的プロセスは、図6のスキームとして示され、ここでは、例として、組み換え顆粒球コロニー刺激因子およびトランスフェリン融合タンパク質G−CSF−Tfを使用している。
【0018】
発明者等の知る限り、ジスルフィドを有した組み換え融合タンパク質または体内でドメインを分離できる任意のその他の切断可能スペーサーを有した組み換え融合タンパク質は存在しない。
【0019】
たとえ現在の生物工学産業において利用できるインビボ切断可能融合タンパク質が存在しないとしても、非切断可能融合タンパク質は長年研究されてきた。たとえば、様々な抗体に由来する一本鎖Fvタンパク質(sFv)が、単独またはその他の治療的タンパク質との組み合わせにより、抗原陽性細胞に対する標的化送達のために使用されてきた。
【0020】
組み換え融合タンパク質における2つのドメイン間の還元可能なジスルフィドリンカーの製造の可能性を実証するために、スペーサーとしてジスルフィドシクロペプチドを有した融合タンパク質G−CSF−Tfのプラスミドが近年構築された。ジスルフィドシクロペプチドの配列はPRS配列を含む。RSS配列の選択は、トロンビン触媒作用につていの十分研究されたペプチド基質に基づく。融合タンパク質におけるジスルフィドシクロペプチドリンカーは、インビトロでトロンビンによって切断され、スペーサーペプチドにおける2つのシステイン残基間がジスルフィド結合によりつながったG−CSFおよびTfドメインを有する融合ペプチドができる(図6)。この露出したジスルフィド結合は、還元剤ジチオトレイトール(DTT)によって還元することができ、2つのドメインは、還元後に始めて分離するだろう。
【0021】
G−CSFとTfとの間におけるリンカーペプチドの挿入の方法は、標準的組み換え方法によって行った。シクロペプチドスペーサーのDNA配列ならびにその対応するアミノ酸配列は図4に示される。プラスミドをHEK293細胞に形質移入し、条件培地に放出される融合タンパク質を収集した。この融合タンパク質をトロンビン処理に供し、その後DTTによる還元を行った。
【0022】
図5に示されるように、融合タンパク質の約50%のG−CSF(20kDa)およびTf(80kDa)ドメインは、トロンビン処理後においてなお互いにつながっており(100kDa)(図5、レーン4)、スペーサーペプチドの50%が、ジスルフィド結合を形成して環化したことを示唆している。この仮定は、DTTで処理した後における、トロンビン切断融合タンパク質からのTfおよびG−CSFの分離によって確認された(図5、レーン3)。この結果は、組み換え融合タンパク質は、還元後に活性ドメインG−CSFを放出するジスルフィドリンカーを有するよう設計できることを強く実証している。
【0023】
したがって、本発明は、インビボで切断することができる切断可能リンカーを有する組み換え融合タンパク質を設計するための方法を提供する。本発明は、さらに、インビボで切断できる切断可能スペーサーを含む新規の融合タンパク質に関する。
【0024】
[ポリペプチド]
本発明のポリペプチド(すなわち、G−CSF−ジチオシクロペプチド−Tf融合タンパク質)は、第1のタンパク質ドメイン(たとえば、G−CSFドメイン)、第2のタンパク質ドメイン(たとえば、Tfドメイン)および少なくとも1つのプロテアーゼ切断サイトを含むジチオシクロペプチドを含む。ジチオシクロペプチドは、第1または第2のタンパク質ドメインに対して外因性であり、第1および第2のタンパク質ドメインは、ジチオシクロペプチドによって操作可能に繋がっている。
【0025】
ここで使用される「タンパク質ドメイン」とは、関心あるタンパク質の野生型、または、野生型タンパク質の生物学的機能を維持したタンパク質の変種を指す。本発明のタンパク質ドメインのサイズは、10−100、20−90、30−80、40−70または50−60kDaであってよい。関心あるタンパク質の変種は、たとえば、タンパク質の生物学的機能に必要ではない残基の置換または欠失によって、あるいは、タンパク質の生物学的機能に影響しないであろう残基の挿入によって構築してよい。一般に、置換は保存的に行うべきであり、すなわち、最も好ましい置換アミノ酸は、置き換える残基の生理化学的特徴と似た特徴を有するアミノ酸である。保存的置換の例は、1つの脂肪性残基のその他の残基への置換(例えば、Ile、Val、LeuまたはAlaの互いの置換)、または、1つの極性残基のその他の残基への置換(例えば、LysとArgとの間の、GluとAspとの間の、またはGlnとAsnとの間の置換)を含む。例えば、全体の領域を類似した疎水性特性を有する別の領域へとする置換といった、別の保存的置換が当業者に周知である。そのうえ、異なる種(例えば、ヒト、マウスおよびその他の哺乳類)のタンパク質間の特定のアミノ酸の差異は、タンパク質の必須の生物学的特徴を変化させることなく行ってよい付加的な保存的置換を示唆する。タンパク質ドメインの活性は、そのタンパク質に関する分野において既知の何れかの方法を使用して決定してよい。
【0026】
たとえば、「G−CSFドメイン」とは、G−CSFの生物学的機能、すなわち、好中性顆粒球系統由来の細胞の増殖、生存、成熟および機能的活性化を促進する機能を維持するタンパク質ドメインである。ある実施態様において、G−CSFドメインは、G−CSFタンパク質(例えば、ヒトG−CSFタンパク質)の野生型アミノ酸配列を有してよい。別の実施態様において、G−CSFドメインは、野生型G−CSFの変種であってよい。G−CSF変種は、上述した方法を使用して構築してよい。G−CSFドメインの活性は、当該分野で既知の任意の方法を使用して決定してよい。例えば、NFS−60 MTT増殖アッセイを、後述する例に記載するとおりに使用してよい。
【0027】
「Tfドメイン」は、Tfの生物学的機能、すなわち、鉄に結合し輸送する機能を維持するタンパク質ドメインである。ある実施態様において、Tfドメインは、Tfタンパク質(たとえば、ヒトTfタンパク質)の野生型アミノ酸配列を有してよい。別の実施態様において、Tfドメインは、野生型Tfの変種であってよい。Tf変種は、上述の方法を使用して構築してよい。Tfドメインの活性は、当該分野で既知の任意の方法を使用して決定してよい。たとえば、Tfドメインの活性は、TfRに結合する能力を測定することで決定してよい。
【0028】
「ジチオシクロペプチド」は、酸化によって分子内ジスルフィド結合を形成し環状構造を形成できる2つのチオール基を含むペプチドである。ジスルフィド結合は、例えばインビボまたはインビトロの何れかで還元されてよい。ジチオシクロペプチドは、5−50、10−40または20−30のアミノ酸を有してよい。本発明のジチオシクロペプチドは、少なくとも1つのプロテアーゼ切断サイトを含む。プロテアーゼおよびその切断サイトは当該分野で一般に知られている。たとえば、PRSを、トロンビンの切断サイトとして使用してよい。第1および第2のタンパク質ドメインは、ジチオシクロペプチドによって操作可能につながれている。「操作可能に」とは、ジチオシクロペプチドのループが、第1のタンパク質ドメインと第2のタンパク質ドメインとの間に挿入された場合に、露出され、プロテアーゼ消化、分子内ジスルフィド結合形成およびジスルフィド結合の還元を受けやすいことを意味する。本発明のポリペプチドは、ジチオシクロペプチドスペーサーに操作可能につながった、複数のコピー数のタンパク質ドメインを含んでよい。本発明のポリペプチドの設計は、後述する例において詳述する。
【0029】
本発明のポリペプチドは、化学的に合成してよく、または、組み換えタンパク質として製造してよい。組み換えタンパク質の製造のために、ポリペプチドをコードするDNAを構築し、mRNAに転写させる。その後、mRNAは組み換えタンパク質に翻訳される。組み換えタンパク質の製造を促進するために、分泌シグナルをタンパク質のN末端に付加してよい。組み換えタンパク質は、その後、細胞から培養培地に分泌され、これによって収集することができる。本発明のポリペプチドにおけるG−CSFドメインおよびTfドメインの順番は、変えることができる。ある実施態様において、G−CSFドメインは、TfドメインのN末端に位置してよい。別の実施態様において、G−CSFドメインは、TfドメインのC末端に位置してよい。
【0030】
G−CSFドメインは、Tfドメインにつなげられた場合、TfR経路を介して、細胞内におよび細胞を通って輸送される。それは、G−CSFタンパク質自身の輸送よりも効率的である。経細胞輸送は、エンドサイトーシスによる細胞の1側面における物質の取り込み、ベジクルにおける細胞を通ったその輸送、および、エキソサイトーシスによる別の側面からのその放出である(Alberts et. al. (2002) Molecular Biology of the Cell, 4th edition, Garland Science, p. G-35)。本発明のポリペプチドおよびG−CSFドメインの輸送および経細胞輸送は、当該分野で既知の任意の方法を使用して測定し比較してよい。
【0031】
[核酸]
本発明は、さらに、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を含む核酸を提供する。そのような核酸は、当該分野で周知の組み換えDNA技術を使用して構築してよい。
【0032】
例えば、本発明の核酸は、本発明のポリペプチドをコードするDNA配列を含むベクターであってよい。ベクターは、ポリペプチドの製造のために使用することが出来る。ここで使用される「ベクター」という用語は、そこにつなげられた別の核酸を輸送することができる核酸のことを指す。様々な種類のベクターが、当該分野において周知である。例えば米国特許第6,756,196号および第6,787,345号を参照されたい。ベクターの1つの種は「プラスミド」であり、これは、その中に付加的なDNAセグメントを連結することが可能な、環状二本鎖DNAループを指す。ベクターの別の種はウイルスベクターであり、これは、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。特定のベクターは、導入された宿主細胞内において自律的に複製することができる(例えば、細菌性複製起点を有する細菌性ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムとともに複製する。さらに、特定の発現ベクターは、操作可能につながった遺伝子の発現を誘導することができる。
【0033】
組み換え発現ベクターは、宿主細胞において本発明のポリペプチドを発現させることに適している。これらのベクターは、1以上の調節配列を含んでおり、当該配列は、宿主細胞に基づいて選択され、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列に操作可能につながっている。組み換え発現ベクターにおいて、「操作可能につながっている」とは、関心ある核酸配列が、(たとえば、インビトロ転写/翻訳システムにおいて、または、ベクターが宿主細胞に導入された場合に宿主細胞において)核酸配列の発現が可能な様式で調節配列に繋がっていることを意味する。「調節配列」とは、プロモーター、エンハンサーおよびその他の発現制御因子(例えばポリアデニル化シグナル)を指す。そのような調節配列は、例えばGoeddelの文献(上記)に記述されている。調節配列は、多くの種類の宿主細胞における核酸配列の恒常的発現を誘導するもの、および、特定の宿主細胞においてのみ核酸配列の発現を誘導するもの(たとえば、組織特異的調節配列)を含む。当業者は、発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等といった要素に依存することを理解するだろう。発現ベクターは宿主細胞に導入することができ、それによって、本発明のポリペプチドを製造できる。それらは、原核細胞または真核細胞、例えば、E.coliといった細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用して)、酵母細胞または哺乳類細胞におけるポリペプチドの発現のために設計することができる。適した宿主細胞は次の文献においてさらに議論されている:Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif (1990)。あるいは、組み換え発現ベクターは、たとえば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写および複製することができる。
【0034】
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、哺乳類発現ベクターを使用して哺乳類細胞において発現させてよい。哺乳類発現ベクターの例は、pCDM8(Seed (1987) Nature 329:840)、pCI(Promega)、およびpMT2PC(Kaufman et al. (1987) EMBO J. 6:187-195)を含む。哺乳類細胞にて使用される場合、発現ベクターのコントロール機能は、しばしば、ウイルス調節因子によって与えられる。たとえば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来する。原核細胞および真核細胞の両者のためのその他の適した発現システムに関しては、次の文献が参照される:Sambrook et al. eds., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989の第16章および第17章。
【0035】
別の実施態様において、組み換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞種において優先的にポリペプチドの発現を誘導することができる(たとえば、組織特異的調節因子がポリペプチドの発現のために使用される)。組織特異的調節因子が当該分野において既知である。適した組織特異的プロモーターの非限定的例は、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinket et al. (1987) Genes Dev. 1:268-277)、リンパ特異的プロモーター(Calame and Eaton (1988) Adv. Immunol. 43:235-275)、特に、T細胞受容体のプロモーター (Winoto and Bltimore (1989) EMBO J. 8:729-733)および免疫グロブリンのプロモーター (Banerji et al. (1983) Cell 33:729-740 and Queen and Baltimore (1983) Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(たとえば、ニューロフィラメントプロモーター; Byrne and Ruddle (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5473-5477)、膵臓特異的プロモーター (Edlund et al. (1985) Science 230:912-916)、および、乳腺特異的プロモーター(たとえば、ミルクホエープロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州特許出願第264,166号)を含む。発生的に制御されるプロモーターも包含され、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss (1990) Science 249:374-379)およびアルファフェトプロテインプロモーター (Campes and Tilghman (1989) Gnens Dev. 3:537-546)が包含される。
【0036】
[細胞]
本発明の別の側面は、本発明の核酸が導入された宿主細胞に関する。「宿主細胞」という用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または可能性のある子孫を指す。世代の継承の際に、変異または環境的影響によって特定の改変が生じる可能性があるため、そのような子孫は、実際、親細胞とは同一ではない可能性があるが、それでもなお、ここで使用される用語の範囲に含まれる。
【0037】
宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であってよい。たとえば、本発明のポリペプチドは、E.coliといった細菌細胞、昆虫細胞、酵母または哺乳類細胞(たとえば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞)にて発現させることができる。その他の適した宿主細胞が当業者に既知である。
【0038】
核酸は、従来の形質転換または形質移入の技術を使用して、原核細胞または真核細胞に導入することができる。ここで使用される「形質転換」および「形質移入」という用語は、宿主細胞に外来性核酸(たとえばDNA)を導入するための様々な当該分野で既知の技術を指し、リン酸カルシウム共沈殿法若しくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE−デキストラン仲介形質移入、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む。宿主細胞に形質転換または形質移入するための適した方法は、Sambrook等の文献(上述)およびその他の実験マニュアルに見ることができる。
【0039】
哺乳類細胞の安定した形質移入のために、使用する発現ベクターおよび形質移入技術に依存して、わずかな割合の細胞のみが、そのゲノムに外来性DNAを組み込む可能性があることが知られている。これらの組み込み体を同定および選択するために、選択マーカー(例えば抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が、一般に、本発明のポリペプチドをコードするDNAとともに宿主細胞に導入される。好ましい選択マーカーは、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートといった薬剤に対する耐性を与えるものである。選択マーカーをコードする核酸は、本発明のポリペプチドをコードするベクターと同一のベクターで宿主細胞に導入することができ、または、別のベクターで導入することができる。安定的に形質移入した細胞は薬剤選択によって同定することができる(たとえば、選択マーカーを取り込んだ細胞は生存し、その他の細胞は死滅するだろう)。
【0040】
原核宿主または真核宿主といった本発明の宿主細胞は、培養液中において、本発明のポリペプチドを製造(たとえば発現)するために使用できる。したがって、本発明は、本発明の宿主細胞を使用して本発明のポリペプチドを製造する方法を提供する。一実施態様において、方法は、ポリペプチドの製造に適した培地において、本発明の宿主細胞を培養することを含む。別の実施態様において、方法は、さらに、培地または宿主細胞からポリペプチドを単離することを含む。細胞培養およびタンパク質発現および精製の方法は、たとえばSambrook等の文献(上記)およびその他の実験マニュアルに見ることができる。
【0041】
[組成物]
本発明のポリペプチドは、投与に適した医薬組成物に取り込ませることができる。そのような組成物は、典型的に、ポリペプチドおよび医薬的に許容可能な担体を含む。ここにおいて使用される「医薬的に許容可能な担体」という用語は、医薬投与に適合した、任意のおよび全ての溶剤、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。医薬的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物に不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用が意図される。補充的な活性化合物を、さらに、組成物に組み入れることもできる。さらに、組成物は、炭酸水素ナトリウム、BSAおよびカゼインとった安定化剤を含んでよい。
【0042】
本発明の医薬組成物は、意図する投与の経路に適すように処方してよい。投与の経路の例は、非経口経路、たとえば、静脈内、皮内、皮下、口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸の投与を含む。非経口、皮内または皮下の適用に使用される溶剤または懸濁剤は次の成分を含み得る:無菌希釈剤、たとえば、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒;抗菌剤、たとえば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、たとえば、アスコルビン酸または炭酸水素ナトリウム;キレート剤、たとえば、エチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、たとえば、アセテート、クエン酸塩またはリン酸塩および張度の調節のための薬剤、たとえば、塩化ナトリウムまたはフドウ糖。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムといった酸または塩基で調節することができる。非経口調合剤は、アンプル、使い捨て式注射器、または、ガラスまたはプラスティックでできた多数の用量のバイアルに封入することができる。
【0043】
注射の使用に適した医薬組成物は、無菌的水溶液(水溶性である場合)または分散液、および無菌的注射溶液または分散液の即座の処方のための無菌的散剤を含む。静脈内投与のために、適した担体は、生理食塩水、静菌性水、Cremophor EL(BASF;Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は、無菌的でならなければならず、容易な注射器利用性(syringability)を示す程度まで流動的であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌といった微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)およびそれらの適した混合物を含む溶剤または分散媒体であり得る。適した流動性は、たとえば、レシチンといったコーティングを使用して、分散液の場合は要求される粒子サイズの維持によって、および、界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合において、組成物中に、等張剤、たとえば、糖、ポリアルコール(たとえば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムを含むことが好ましいだろう。注射可能組成物の長時間の吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった吸収を遅延させる薬剤を組成物に含めることで達成できる。
【0044】
無菌的注射可能溶液は、適した溶媒中に、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに必要量のポリペプチドを取り込ませ、必要であればその後ろ過滅菌することで、作製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒体および上に列挙した中からの必要なその他の成分を含む無菌ベヒクルにポリペプチドを取り込ませることで作製される。無菌的注射可能溶液の製造のための無菌的散剤の場合、好ましい製造方法は、減圧乾燥および凍結乾燥であり、この方法によって、前もってろ過滅菌した溶液から、活性成分と任意の付加的な所望の成分が得られる。
【0045】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらは、ゼラチンカプセルに封入し、または、圧縮して錠剤にすることができる。経口治療的投与の目的のために、ポリペプチドは、賦形剤と共に組み込むことができ、および、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、さらに、うがい薬としての使用のために液体担体を使用して製造することができ、この場合、液体担体中の化合物は、経口的に投与され、および、口内の洗浄に使用され(swished)、および吐き出されまたは飲み込まれる。医薬的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチ等は、任意の次の成分または類似した性質を有する化合物を含むことができる:結合剤、たとえば微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン;賦形剤、たとえば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤、たとえばアルギン酸、プリモゲル(Primogel)またはコーンスターチ;潤滑剤、たとえばステアリン酸マグネシウムまたはステローツ(Sterotes);グライダント(glidant)、たとえばコロイド状二酸化ケイ素;甘味料、たとえばスクロースまたはサッカリン;または、調味料、たとえばペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバリング。吸入による投与のために、組成物は、加圧した容器または適した噴霧剤(たとえば二酸化炭素といったガス)を含むディスペンサー、または噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0046】
さらに、経粘膜または経皮手段によって、全身投与を行うこともできる。経粘膜または経皮投与のために、障壁の浸透に適した浸透剤を処方において使用される。そのような浸透剤は、当該分野において一般に既知であり、例えば、経粘膜投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩およびシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬または坐薬の使用を通して達成することができる。経皮投与のために、活性化合物は、当該分野で一般に知られるように、軟膏剤、膏薬、ゲルまたはクリームに配合される。
【0047】
組成物は、さらに、直腸投与のために、坐薬の形態(たとえば、カカオ脂およびその他のグリセリドといった従来の坐薬基剤とともに)、または保持浣腸の形態で作製することができる。
【0048】
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、体内からの急速な排出からポリペプチドを保護するであろう担体とともに、移植片およびマイクロカプセル化送達システムを含む徐放剤として作製することができる。生分解性で、生体適合性のポリマー、たとえば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤の製造方法は、当業者にとって明確であるだろう。材料は、さらに、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手できる。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的するリポソームを含む)を医薬的に許容可能な担体として使用することもできる。これらは、当該分野で既知の方法に従って、たとえば米国特許第4,522,811号に記載の通りに製造できる。
【0049】
投与の容易性および用量の均一性のために、用量単位の形態で経口または非経口組成物を製造することが特に有利である。ここにおいて使用される用量単位形態とは、治療する対象にとっての単位的な用量として適した、物理的に分離した単位を指し;それぞれの単位は、要求される医薬的担体と共同して所望の治療効果をもたらすよう計算された、予め決定された量の活性化合物を含む。本発明の用量単位形態の特定は、ポリペプチドの固有の特性および達成すべき特定の治療効果、および人の治療のためのそのようなポリペプチドの配合の分野に固有な制限に要求され且つ依存する。
【0050】
本発明の医薬組成物は、投与のための説明書とともに容器、パックまたはディスペンサーに含めることができる。
【0051】
[使用]
2つのタンパク質の間にジスルフィドスペーサーを有する本発明のポリペプチドは、個々の生物学的活性を達成するために、細胞内または体内における2つのドメインへの分離に有用である。この目的のため、プロテアーゼ特異的切断サイトを有するジスルフィド含有シクロペプチドスペーサーを挿入することにより、ポリペプチドにおける革新的なジスルフィドスペーサーが設計される。ジチオシクロペプチドスペーサーを有するポリペプチドは、インビトロでプロセスされて、スペーサーがジスルフィド結合へと変換される。プロセスされたポリペプチドに細胞または体が接触する場合、ジチオシクロペプチドにおけるジスルフィド結合は、細胞へのポリペプチドの輸送の際に、または、ポリペプチドが細胞内に存在するときに還元される。2つのタンパク質ドメインは分離し、個々に機能する。
【0052】
本発明のポリペプチドは、細胞へと送達するタンパク質ドメインの機能に応じて使用することができる。たとえば、G−CSFは、好中球の増大が利益をもたらすと考えられる症状の治療に有用であることがわかっている。たとえば、米国特許第6,790,628号が参照される。たとえば、癌患者においては、G−CSFは、好中球生産を選択的に刺激し、化学療法または放射線療法に起因する造血の不足を補償する。その他の適用は、典型的に細菌の代謝物によって引き起こされる敗血症といった様々な感染症および関連症状の治療を含む。G−CSFは、さらに、培養物中の細胞の成長または増殖(たとえば、骨髄移植または生体外増殖)にとって、単独で有用であり、または、その他のサイトカインといったその他の化合物との組み合わせにおいて有用である。G−CSFは、感染症の治療の補助として、または、好中球減少の治療のために、患者に移植されて投与された(Diflo et al. (1992) Hepatilogy 16:PA278, Wright et al. (1991) Hepatology 14:PA48, Lachaux et al. (1993) J. Ped. 123:1005-1008, and Colquehoum et al. (1993) Transplantation 56:755-7580)。
【0053】
医薬的な機能を有するタンパク質ドメインのために、本発明は、有効量の本発明の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む治療方法を提供する。治療する対象は、対象またはヘルスケア専門家の判断において同定してよく、主観的(たとえば意見)であってよく、または客観的(たとえば、試験または診断方法によって測定可能)であってよい。「治療する」という用語は、障害、障害の病徴、障害に二次的な疾病状態、または障害になる傾向を、治癒し、緩和し、軽減し、直し、予防し、または回復させる目的の下、対象に物質を投与することとして定義される。「有効量」とは、治療する対象において、ここに記述される医学的に望ましい結果をもたらすことができる物質の量である。医学的に望ましい結果は、客観的(すなわち、ある試験またはマーカーで測定可能)または主観的(すなわち、対象が、効果の徴候または感覚を示す)であってよい。
【0054】
有効量の本発明の組成物は、2週ごとに1−4回で、0.001〜300mg/kg体重である。有効量は、上述の範囲内の任意の特定の量とすることができ、ここにおいて、下の境界は、0.001〜299の間(0.001および299を含む)の任意の数のmg/kg体重であり、上の境界は、0.002〜300の間(0.002および300を含む)の任意の数のmg/kg体重である。有効量は、関連する障害の治療のための、単独療法または併用療法において有用である。特に、5μg/kg体重の用量をヒトの注射のために使用してよく、50μg/kg体重の用量をヒトにおける経口投与のために使用してよい。当業者であれば理解できるように、上述した用量よりも低い用量または高い用量が要求されてよい。任意の特定の対象(たとえば、ヒトといった哺乳類)のための有効量および治療計画は、以下を含む様々な要因に依存するだろう:年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与の時間、排泄の割合、薬剤の組み合わせ、疾病、症状または病徴の重症度および経過、疾病、症状または病徴に対する対象の性質、および、治療する医師または獣医師の判断。
【0055】
以下の例は、例示を意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。そのような例は、使用されるものの典型例であるものの、当業者に既知のその他の手順を代わりに使用してよい。実際、当業者は、過度の実験を行うことなく、ここに記載される技術に基づいて、更なる実施態様を容易に想像し作製することができる。
【実施例】
【0056】
[例I]
標的として受容体を使用し、経細胞輸送のためのベクターとして受容体結合リガンドを使用することは、腸管上皮を通るペプチドおよびタンパク質薬剤の選択的送達の達成の期待できる方法である[7]。受容体介在経細胞輸送と称されるこのプロセスは、受容体結合リガンドに結合した分子の輸送のみを促進するため、高度に特異的である[8]。受容体介在経細胞輸送は、上皮細胞および内皮細胞において固有の細胞内プロセスである[9]。上皮性のインスリン吸収を増大させるために、胆汁酸塩および脂質といった浸透エンハンサーを使用する最も現在使用されているアプローチと異なり[10]、受容体介在経細胞輸送は、細胞膜または細胞内ジャンクションの構造を変化させず、おそらく、望ましくない副作用および安全性の懸念はより少ない。
【0057】
TfRは、以下の理由から、ペプチドおよびタンパク質薬剤のための経口投与される受容体介在送達システムに使用されてきた:a)TfR密度は、ヒト[11]およびラットGI上皮[12]において非常に高いことがわかっている。この受容体プールの画分の使用でさえ、GI粘膜障壁を通るTf融合ペプチドの顕著な送達をもたらす。腸上皮細胞におけるTfRの高い密度は、TfRを、コバラミン内因子受容体[13]といった密度の低いその他の受容体よりも、治療的に有効量のペプチドの薬剤のGI吸収のための優れたベヒクルとする。b)Tfは、鉄の天然の担体タンパク質である[14]。それゆえ、ホルモンまたは成長因子のそれらの受容体への結合とは異なり、TfのTfRへの結合は、細胞内の主要な代謝機能または生理的機能を変化させないと考えられる。c)ジフェリックTfは、GI管において相対的に安定な糖タンパク質であることがわかっている。GI管における大多数のタンパク質およびペプチドの分解の原因である、キモトリプシンといった酵素は、Tf分子に対して低い分解作用を有する[15]。d)Tfが細胞に鉄を蓄積する機構は十分特徴付けられてきた[16]。TfR(TfR1およびTfR2の両方)の組織分布についての免疫組織化学的検出における多くの研究が公開されており、TfR1およびTfR2はそれぞれ、小腸の受容体に存在することが示されている。一般に、TfR染色は、陰窩領域において最も強く、完全絨毛軸(entire villous axis)に沿って移動するに従って減少する[17]。しかしながら、おそらく、組織の単離および固定の方法の違いに起因して、局在はわずかに異なる[16]。腸上皮細胞における局在の領域により、TfRは、食餌からの主要な鉄吸収に直接関与しないと一般に考えられている[18]。しかしながら、最近の知見によれば、分子機構は正確に確立されていないものの、TfRは、TfR介在エンドサイトーシス/経細胞輸送経路を介してGI上皮における鉄吸収の制御因子として役立ち得ることが示されている[19]。そのうえ、腸上皮細胞におけるリサイクリングタンパク質輸送経路に起因した膜ミスソーティングの結果としての内腔側におけるTfRの一過的な出現の可能性[20]もまた、タンパク質薬剤のGI吸収のためのアピカルから基底面へのTfR介在経細胞輸送を誘導し得る。それゆえ、取り込まれたTfの密度を制御する、経口吸収のための、腸管上皮といった標的部位におけるTfRの細胞内プロセシングおよび制御の更なる理解は、薬剤送達のための医薬的に関連するマーカーとしてのTfRの応用の増大をもたらすだろう。
【0058】
近年、TfRは、普通乏しい薬物動態学的特性を欠点とする治療薬剤の薬剤標的化および送達を可能にする可能性のあるリガンドとして開発が進められている[21]。TfRに対する標的化は、治療剤の関心ある部位(中枢神経系[22]および悪性組織[23、24]を含む)への効率的な送達を可能にした。さらに、RabおよびPI(3)K介在プロセス[25、26]を含むTfRの細胞内ソーティングおよびリサイクリング経路の知見を利用することで、ペプチドベースの治療剤の経上皮送達を最大化することが可能となる。所望の結果に依存して、明らかに逆説的な効果を達成できる。例えば、TfRに基づく戦略は、標的組織内における輸送された薬剤の蓄積または関心ある組織を通る治療的実体の送達の何れかを選択的に達成できる[27]。以前の研究において、Tfベースの化学的結合は、表面にTfRを発現する小腸細胞[28]および胞巣状上皮細胞[29]といった吸収性障壁を通る、治療タンパク質の非浸潤性送達に応用できることが明確に実証された。より重要なこととして、ストレプトゾトシン誘導糖尿病ラットにインスリン−Tf結合体を経口投与することで、低血糖効果が観察された[5、30]。同様に、G−CSFのTf結合体をBDF1マウスに経口投与した場合、好中球数の増大が観察された[6、29]。しかしながら、化学的結合体方法論の主要な障壁は、化学的に架橋結合した生成物は、様々なサイズおよび組成の最も不均一な混合物であり[29]、おそらく、治療剤として適していない。さらに、適切な純度のTf化学結合体の製造における高いコストは、それらを市販薬として開発することを妨げる。これらの障壁を克服するために、輸送および生物学的活性のための治療的タンパク質部分とTfとから成る融合タンパク質を製造する組み換えDNA技術の使用に対する可能性が探求された。
【0059】
抗TfR抗体およびタンパク質薬剤から成る融合タンパク質が、血液脳関門内皮細胞を通るTfR介在経細胞輸送のために開発された[22、31]。血液における内因性Tfの濃度が高いため、抗TfR抗体は、Tfよりも、中枢神経系輸送モデルへのこの血液の担体として選択された。消化(GI)管には内因性Tfが非常に少ないため、経口投与のために、抗TfR成分よりもTfとの融合タンパク質の構築のほうが、経口送達におけるタンパク質薬剤の開発に適していると考えられる。経口薬剤投与のためにTf融合タンパク質を使用することの可能性を実証するために、ヒトTfおよびヒトG−CSFの両方由来のcDNAから成る組み換えプラスミドが最近作製された[1]。このプラスミドを培養中のHEK293細胞に形質移入した後、条件培地から分子量が約100kDのタンパク質(ウエスタンブロッティングアッセイにおいて、Tf(MW:80kD)およびG−CSF(MW:19kD)について陽性であった)が単離された。より重要なこととして、この融合タンパク質は、BDF1マウスに経口投与したところ、絶対好中球数(ANC)の増大に顕著な効果を示した[1]。組み換えTf−G−CSF融合タンパク質の経口生物学的利用能における発見は、将来のタンパク質薬剤の開発に対する大きな期待を生んだ[32]。
【0060】
経口薬剤としてのTf融合タンパク質の可能性が実証されたにもかかわらず、Tf融合タンパク質を将来的な臨床利用に適用する前に取り組むべき問題が幾つか存在する。第1に、TfおよびG−CSF成分の両方のインビトロの生物学的活性は、それぞれの本来のタンパク質の10%未満であることがわかった[1]。以前の報告のとおり[6]、このインビトロ活性は未処理の化学的結合体の活性よりも有意に高いものの、Tf融合タンパク質送達システムの経口的有効性は、インビトロ活性が改善されたG−CSF−Tf融合タンパク質が得られればより高いことが示唆される。さらに、多くのタンパク質薬剤が、Tfに共有結合された場合、医薬的に活性でない可能性がある。これらの制限は、Tfおよび治療的タンパク質成分との間に、インビボで切断可能または非切断可能なリンカーペプチドを挿入することで解決できる。リンカーペプチドは、融合タンパク質において2つの成分との間の相互作用を低減するために広く使用されてきた[33]。さらに、特異的トロンビン切断サイトを有するリンカーペプチドは、また、トロンビン処理によって融合タンパク質の2つのドメインを分離するよう設計できる[34]。G−CSF−Tfにおけるらせん状ペプチドスペーサーの挿入における近年公開された結果は、組み換え融合タンパク質のインビトロおよびインビボの両方における生物学的活性の顕著な改善が、2つの機能的ドメインの間の距離を大きくすることで達成できたことを実証している[35]。さらに、以前の研究からのジスルフィド連結融合タンパク質の製造における成功は、担体ドメインTfから活性ドメインG−CSFのインビボの分離を達成する機会を提供する。ジスルフィド連結によるインスリンとのまたは凝集したTfとしての化学的に複合化したTfにおける以前の研究は、腸上皮細胞を通る輸送の際または後におけるジスルフィド還元反応によって、遊離タンパク質薬剤が放出されることを実証した[30、41]。それゆえ、十分に活性化したG−CSFを融合タンパク質から血液循環に放出できる可能性が非常に高い。発明者らの知る限り、ジスルフィド結合は、薬剤送達における化学的複合体の製造に使用される連結の最も一般的な1つであるものの[36]、これが、インビボでジスルフィド還元によって機能的ドメインを放出するよう設計された融合タンパク質の最初の例である。2つのドメインの間にそのようなインビボ切断可能スペーサーを有する融合タンパク質は、多くのその他の応用例がある。その1つは、単一のTf融合タンパク質から多くの活性G−CSF分子を放出するであろう、マルチG−CSF−Tf融合タンパク質といった複数の機能的ドメインを有する融合タンパク質の作製である。おそらく、複数機能的ドメイン融合タンパク質は、用量を大きく減少させ、経口送達における治療的有効性を改善するだろう。
【0061】
インビトロおよびインビボ活性のほかに、その他の化学的、生物化学的および薬物動態学的特性もまた、経口吸収における融合タンパク質の生物学的利用能および治療的特性の決定に重要である。主要な関心事の1つは、GI管におけるタンパク質分解に対する融合タンパク質の安定性である[37]。他者によって報告されるとおり、Tfは、トリプシンおよびキモトリプシン分解に対して耐性である[15]。インスリン−Tf複合体における最近の結果は、Tfがキモトリプシン分解からインスリンを保護することも示した[41]。それゆえ、融合タンパク質におけるG−CSFの安定性は、GI管において、遊離G−CSFの安定性よりも良い可能性が高い。その他の関心事は、局所的または全身的な融合タンパク質の毒性である。ヒト体内におけるTfの量は非常に高く、すなわち、約240mg/kgで、その半分が血中に存在するため[42]、Tfの毒性は考慮されていなかった。それゆえ、融合タンパク質の一部として吸収されるTfの量(おそらくng/mlレベル)は何れの有害効果も示さないと考えられる。同様に、G−CSFは、長年臨床的に使用されてきた天然の造血成長因子である[43]。脾腫大および骨粗鬆症といった、G−CSFのより重大な副作用は、慢性的投与の場合にのみ生じる[43]。融合タンパク質は何れもGI管と関連しないため、これらの副作用が、融合タンパク質の経口投与によって増強されると考える根拠は存在しない[43]。
【0062】
最後に、その他のタンパク質薬剤と同様に、融合タンパク質の免疫原性に取り組むべきである。融合タンパク質G−CSF−TfはヒトTfおよびヒトG−CSFから成るため、ヒトにおける免疫原性は、マウスBDF1モデルでは評価が困難である。免疫系は、抗原への非応答性をもたらす経口寛容を誘導することで、食事性タンパク質に応答すると考えられている[38]。それゆえ、ヒトG−CSFおよびTfの融合タンパク質は、動物モデルまたはヒトの何れかにおいて強力な経口免疫原とならないと考えられる。
【0063】
要約すると、糖尿病ラットにおけるインスリン−TfおよびBDF1マウスにおけるG−CSF−Tfの経口送達における以前の発見に基づいて、Tfは、その他のペプチドおよびタンパク質薬剤のGI吸収を改善する送達ベヒクルとして使用できると信じられる。切断可能または非切断可能ペプチドスペーサーを有する組み換えG−CSF−Tf融合タンパク質における近年の発見は、さらに、経口吸収および治療的有効性の何れかを有する組み換えタンパク質の設計が可能であることを実証する。本出願において、1つの目的は、経口的治療における適用の可能性を十分に研究するために、Tf融合タンパク質の薬理学的活性並びに輸送の機構の最適化を研究することである。Tf融合タンパク質のこの革新的輸送プロセスは、ヒトの疾病の治療のための経口的経路で投与できる新世代のタンパク質薬剤を開発する、固有の機会を提供するだろう。コストの効率性および長期的な医薬的治療における患者の服薬遵守に対する、そのような薬剤送達システムのインパクトは、少なく見積もっても、重大であろう。
【0064】
[ラットの腸におけるTfRの検出]
ラット小腸の凍結切片を作製し、RTで15分間3.7%のホルムアルデヒド中で固定し、PBSですすぎ、その後、50mMのNHClでクエンチングした。10%FBSのブロッキングに続いて、組織サンプルを、RTで1時間、モノクローナル抗TfR抗体(1.5%FBSのPBS中50μg/mLのOX26)とインキュベートし、PBSで洗浄した後、FITC融合ヤギ抗マウス二次抗体(1:100)とRTで1.5時間インキュベートした。スライドをPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡観察のためのプロロング褪色防止剤(prolong antifade)でマウントした。図1は、内腔側の腸細胞において、より低い絨毛および陰窩領域で優先的に、TfR染色陽性を示す未処理の絨毛を示す。このことは、特定のTfRが内腔表面に一過的に存在する可能性があることを実証する。この結果に加えて、TfR(TfR1およびTfR2の両方)の腸の組織分布の免疫組織化学的検出についての公表された多くの研究が存在し、それぞれ、TfR染色は陰窩領域で最も強く、完全絨毛軸に沿って移動して減少することが示されている[17、44]。
【0065】
[Caco−2細胞におけるTf蓄積の証拠]
Tf複合体または融合タンパク質のインビボの薬理学的効果についての最近の研究結果は、TfR介在経細胞輸送を介した経口吸収の後に、血流へのタンパク質薬剤の持続的な放出があることを示す[1]。腸上皮細胞がTf複合体の潜在的な貯蔵所であることを確認するために、取り込まれたTfの細胞内プロセシングを調べるためのモデルとして、腸細胞様Caco−2細胞を使用した。Tfの細胞内取り込みを、Caco−2細胞およびコントロールとしてのMCF−7の乳癌細胞にて比較した。125I−Tfの細胞内取り込みにおける直線的増加が、Caco−2細胞において観察されたが、MCF−7細胞では観察されず、TfRの迅速なリサイクリングが生じる場合に期待されるように1時間以内にプラトーに達した(図2)。さらに、パルス−チェイス研究により、Caco−2細胞においてTfの蓄積があったが、MCF−7細胞ではなかったことが示された(図3)。これらの発見は、アピカルで取り込まれたTfは、Caco−2細胞の細胞内コンパートメントにより長く保持され、この保持はMCF−7細胞では検出されないことを示唆している。Tfの細胞内の保持は、その他の細胞培養研究で報告されておらず、および、鉄の腸吸収の調節機構として最近言及されたのみであるため[18]、経口的に吸収されたTfの持続的放出は、腸上皮細胞におけるTfのためであることが実証される。
【0066】
[ジスルフィドシクロペプチド配列の挿入を有する組み換えG−CSFTf融合タンパク質]
組み換え融合タンパク質における2つのドメイン間の還元可能リンカーをつくる可能性を実証するため、スペーサーとしてジスルフィドシクロペプチドを有するG−CSF−Tfのプラスミドが最近構築された。ジスルフィドシクロペプチドの配列は、ソマトスタチンのそれに基づいており(図7)、8−10のアミノ酸配列WKTをトロンビン特異的配列PRSで置換してある。PRS配列の選択は、トロンビン触媒作用のための十分研究されたペプチド基質に基づいた[45]。ソマトスタチンにおけるLys(8)−Thr(9)のArg−Serによる置換は、正電荷および水酸基の両方が保存されているため、ペプチド立体配座への影響が最小であると考えられている。それ故、配列における唯一の顕著な変化は、トロンビンの特異性に関連する、ソマトスタチンにおけるTrp(7)のプロリンによる置換であった[34、45]。G−CSFとTfとの間のこのソマトスタチン様ペプチド配列は、自発的に環化すると考えられている。融合タンパク質におけるジスルフィドシクロペプチドリンカーは、インビトロでトロンビンによって切断され、スペーサーペプチドにおける2つのシステイン残基の間のジスルフィド結合によって繋がったG−CSFおよびTfドメインを有する融合タンパク質を産生できる(図6)。この露出されたジスルフィド結合は、GI吸収の間またはその後に還元することができ、それゆえ、2つのドメインは血液循環中で分離する。
【0067】
G−CSFとTfとの間のリンカーペプチドの挿入の方法が下記に述べられる。シクロペプチドスペーサーDNA配列ならびにその対応するアミノ酸配列が図4に示される。プラスミドをHEK293細胞に形質移入し、条件培地に放出された融合タンパク質を後述の通りに収集した。この融合タンパク質をトロンビン処理に供し、続いてDTTによって還元した。
【0068】
図5に示されるとおり、融合タンパク質の約50%のG−CSFおよびTfドメインが、トロンビン処理の後に相互につながっており(100kDa)(図5、レーン4)、スペーサーペプチドの50%がジスルフィド結合を形成して環化したことを示している。この推定は、DTTによる処理の後におけるトロンビン切断融合タンパク質からのTfおよびG−CSFの分離によって確認された(図5、レーン3)。この結果は、組み換え融合タンパク質が、還元によって、活性ドメインG−CSFをインビボで放出するジスルフィドリンカーを有するよう設計できることを実証している。
【0069】
生物工学的生成物をヒト疾病の治療のための治療の薬剤として適用することは、粘膜関門(腸上皮細胞で最も顕著)を通るタンパク質およびペプチドの乏しい吸収によって制限されている。したがって、タンパク質およびペプチドの薬剤は、ほとんどもっぱら注射によって投与される。ほとんどのこれらの薬剤は、糖尿病用インスリンといった、慢性的疾病の治療に使用されるため、頻繁な注射は、患者に、不便さ、低い服薬遵守および有害的副作用をもたらし得る。それ故、タンパク質およびペプチドのための非侵入的送達システムを開発するために、特に、最も便利な投与の経口経路が、医薬品産業から長らく求められていた。この領域の研究に対する多大な努力にもかかわらず、これらの薬剤の経口送達のための確立した方法は存在しない。
【0070】
消化(GI)におけるトランスフェリン受容体(TfR)介在性経細胞輸送を研究する継続的な努力として、トランスフェリン(Tf)および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)融合タンパク質(G−CSF−Tf)は、組み換えの技術を使用して近年作製されている[1]。この融合タンパク質は、インビトロでTfR結合活性および細胞増殖活性の両方を有するだけではなく、インビボで経口骨髄造血活性をも有する。これらの発見は、経口的生物学的利用能を有する組み換え治療的タンパク質の開発において、新規のアプローチを提示する。しかしながら、融合タンパク質は、G−CSFまたはTfのいずれかのインビトロ生物学的活性のわずかな割合のみを維持した。それ故、1つの目的は、生物学的活性を最適化するために融合タンパク質におけるG−CSFおよびTf成分の間のスペーサーを研究することである。特に切断可能な連結を有するスペーサーは、Tf融合タンパク質の形態では活性がない可能性があるその他の治療的タンパク質にまで研究結果を拡張するために重要である。更に、別の目的は、治療の効果を改善するための経口投与されるG−CSF−Tfの薬物動態学および体内分布を研究することである。付加的な目的は、経口的に吸収されたG−CSF−Tfの維持された骨髄造血効果のメカニズムを解明し、適用を開発することである。
【0071】
これらの目的を達成するために、下記のことが実行されるだろう:
1. インビトロの生物学的活性を改善するために、異なるスペーサーを有するG−CSF−Tf構築物を作製する。
a. 複数のG−CSFドメインを有する融合タンパク質を含む、還元可能ジスルフィドスペーサーを有する融合タンパク質を設計し製造する;
b. (a)由来の融合タンパク質のインビトロの生物活性を試験する:
i. Caco−2細胞におけるTfR結合アッセイ;
ii. NFS−60細胞における細胞増殖のアッセイ。
2. インビボ骨髄造血活性の比較 − 皮下経路対経口経路:
a. BDF1マウスにおいて、皮下および経口投与により、選択された融合タンパク質をそれらの骨髄造血効果について研究する;
b. GI上皮における融合タンパク質の蓄積および輸送に対する食事性の鉄の効果を研究する。
3. 融合タンパク質の薬物動態学(PK)および体内分布の測定:
a. 経口投与後に、選択された融合タンパク質の血漿濃度を検出する;
b. 経口投与された融合タンパク質の組織分布を検出する;
c. 選択された融合タンパク質の輸送機構、蓄積および生物学的利用能を解明する。
【0072】
G−CSF−Tfの薬物動態学および経口生物学的利用能、ならびに、融合タンパク質からのG−CSFの制御放出の技術は、BDF1マウスにて確立されるだろう。長期目標は、トランスフェリン融合タンパク質を、患者に経口投与できる新規のクラスのタンパク質薬剤に発展させることである。この発明の結果は、さらに、様々なヒト疾病の治療のための、その他の投与経路による治療的組み換えタンパク質の設計に重要な情報を提供するだろう。
【0073】
[インビトロ生物学的活性を改善するための異なるスペーサーを有するG−CSF−Tf構築物の作製]
融合タンパク質G−CSF−Tfは、個々のG−CSFおよびTfと比較して、10%未満のインビトロのTfR結合活性および細胞増殖活性を示した。この融合タンパク質は、切断できない非常に短いスペーサー(すなわちLeu−Glu)を含んでいたため、インビトロの活性は、改良可能なインビボの骨髄造血効果の指標となると考えられる。それ故、Tf結合およびNFS−60細胞増殖アッセイを、活性融合タンパク質の選択のために行なうことができる。
【0074】
生物学的活性を改善するための1つのアプローチは、融合タンパク質においてTfとG−CSFドメインとを分離するためのスペーサーを挿入し、それにより、個々のそれぞれの受容体への結合に対する干渉を低減することである。他方、体内で切断できるスペーサーを挿入し、未改変のタンパク薬剤を放出できるようにし、その結果として、生物学的活性の完全な回復を達成することも可能である。切断可能スペーサーは、薬理作用のために血液から特定の組織まで輸送されることを必要とするタンパク質薬剤の送達にとって重要でありえる。両アプローチは、G−CSF融合タンパク質の効果を改善するために利用されるだろう。融合タンパク質スペーサーから得られた以前の結果は、融合タンパク質のための最適なスペーサーの設計のためのガイドラインとして使用されるだろう。さらに、様々なリンカーの設計および評価を助けるコンピューターモデリング技術の使用は、インビトロ実験のための迅速でコスト的に効率的な選択を可能にするだろう。予測された活性のあるタンパク質構造を有する構築物は、融合タンパク質の生産のためにHEK293細胞において選択され形質移入されるだろう。その後、生成物は、TfR結合およびNFS−60細胞増殖の両アッセイに供され、生物学的活性が確認されるだろう。高い生物学的活性を有する融合タンパク質のみが、マウスにおけるインビボ骨髄造血活性に関してさらに試験されるだろう。
【0075】
[切断可能スペーサーを有するG−CSF−Tfの設計および製造]プロテアーゼ切断可能スペーサーを有する融合タンパク質は、一般に、組み換え生成物のインビトロ生産のために設計される。例えば、アフィニティークロマトグラフィーを使用して組み換え型タンパク質を精製する目的で、トロンビン切断サイトが、グルタチオントランスフェラーゼといった結合成分と組み換えタンパク質とをつなぐために広く使用されている[49]。しかしながら、この種の切断可能スペーサーは、以下の2つの理由のため、経口投与後における2つのタンパク質成分のインビボでの分離において、あまり実用的ではない:(a)融合タンパク質のGI吸収後にのみ非常に特異的なスペーサーのタンパク質分解を達成することは困難である、および、(b)血漿中のプロテアーゼは高度に特異的であるが、それらは、血液凝固プロセスにおけるプラスミンおよびトロンビンの存在といった、ユニークな生理的または病理学的な条件の下でほとんど活性化される。
【0076】
タンパク質複合体におけるジスルフィド連結は、上皮細胞単層を横切る輸送並びにGI上皮における輸送の間に還元されるものの、その前には還元されないことが既に実証されている[29、41]。それ故、融合タンパク質は、化学的ジスルフィド複合体において観察されるように、還元を受け易いジスルフィドスペーサーを2つのタンパク質成分の間に有するように設計されるだろう(図6)。融合タンパク質における革新的なジスルフィドスペーサーは、トロンビン特異的切断サイトを有するジスルフィド含有シクロペプチドスペーサーの挿入により設計されるだろう。その後、ジチオシクロペプチドスペーサーを有する融合タンパク質は、インビトロでプロセシングを受け、スペーサーがジスルフィド連結に変換されるだろう。
【0077】
シクロペプチドスペーサーの選択は3つの基準を満たすべきである。第1に、ペプチド配列は、自発的に環状立体配座を形成するべきである。第2に、ペプチド配列は、高い効率を有するトロンビン特異的切断サイトを含むべきである。第3に、シクロペプチドスペーサーのループは、G−CSFとTfとの間に挿入された場合、暴露され、トロンビン消化およびジスルフィド還元を受けやすいべきである。それ故、ペプチドは、天然のシクロペプチドの配列に基づいて設計されるだろう。例えば、サケカルシトニンは、シクロヘプタペプチドを含み、ソマトスタチンは、シクロドデカペプチドを含み、両者ともジスルフィド連結によって形成される環を有する。14アミノ酸のシクロペプチドであるソマトスタチンは特に興味深く、12アミノ酸環に2つのリシル残基を含み、トロンビンのための非常に選択的な切断サイトの導入が容易である(図7(A))。シクロペプチドスペーサーは、ソマトスタチンの構造に基づいており(図7(B))、(a)融合タンパク質におけるスペーサーの自発的な環化、および、(b)TfおよびG−CSFを分離するトロンビン切断およびジスルフィド還元への接近容易性が実証されている。
【0078】
ジスルフィドスペーサーの設計には、いくつかの潜在的な関心事がある。第1に、たとえアミノ酸配列から非常に反応的なトロンビン切断サイトをスクリーニングすることができても、トロンビン切断に対して低い活性を示す可能性のある多くのリシルおよびアルギニル残基がタンパク質に存在する。それ故、トロンビン切断後の融合タンパク質はSDS−PAGEによって分析され、2つのタンパク質成分が処理されていないことが確認されるだろう。トロンビンが、シクロペプチドスペーサー以外のサイトでタンパク質を消化できる場合、ファクターXa[34]といったその他の特異的なプロテアーゼが、インビトロのプロセシングのために考慮される。更に、組み換えプロテアーゼは、アミノ酸配列に対して非常に高い制限作用を有し得ることが報告されている[50]。異なるプロテアーゼが融合タンパク質をプロセスするために使用される場合、シクロペプチドの配列は、新規の特異的な切断サイトを提示するよう変更されるだろう。しかしながら、シクロペプチドで間隔があけられた融合タンパク質の研究結果は、TfおよびG−CSFの両方はトロンビン消化に感受性でないことを示す。それ故、トロンビンによる非特異的消化は、現在の研究において問題ではない。
【0079】
結果は、融合タンパク質のおよそ50%が、トロンビン処理後に、未処理の100kDaタンパク質として存続したことを示した。この結果は、ジスルフィドスペーサーの還元によるインビボにおける遊離G−CSFの放出のための、環状ペプチドのトロンビン切断によって形成されるジスルフィド連結を有する切断可能スペーサーの設計の可能性を強く示唆する。しかしながら、この結果は、さらに、融合タンパク質の残る50%が、トロンビン消化によって、遊離TfおよびG−CSFに変換されたことを示し、生成物における不完全なジスルフィド環化を示唆する。スペーサーペプチドの2つのシステイニル残基間のジスルフィド結合の不完全な形成には、2つの可能性がある。第1に、HEK295細胞は、融合タンパク質産生のための無タンパク質培地で成長した。細胞の生存可能性を維持するために、いくつかの種の還元剤が培地に含まれている可能性が高い(製造者は、無タンパク質培地における含有量を示そうとしない)。この場合、生成物は、培地から収集された後に温和な条件下で再び酸化する。変性タンパク質が再酸化し、ジスルフィド結合が形成されることは十分研究されており[51]、融合タンパク質におけるスペーサーペプチドの環化を調べる手法がこれに続けられるだろう。その他の可能性は、PRS配列によるWKTの置換が、ソマトスタチン立体配座を変更し、ジスルフィド形成のエネルギーを増大させる可能性があることである。この場合、図7(B)における環状ペプチドスペーサーの立体配座は、後述される更なる構造モデリングに供されるだろう。1つまたは2つのアミノ酸を交換して、トロンビンの特異性を保持しつつ、環状立体配座のためのエネルギーを最小化する試みがなされるであろう。
【0080】
コンピューターモデリングは、図7のペプチドを含む潜在的な切断可能スペーサーの最初の試験として行なわれるだろう。スペーサーの複数の立体配座が構築されるだろう。天然の環状ペプチドでは、これらは、実験的に観察された配座異性体を含むだろう。手法の目的は、線形化されたペプチドのコンフォーメーション的な適応性を検討することであるため、配座異性体はS−Sブリッジを有さずに作られるだろう。同様の手法は、スペーサー立体配座を変えるために使用され、潜在的なスペーサー配列の選択の基準は以下の通りとなるだろう:1)システイン側鎖の近接;2)トロンビン切断サイトの接近容易性、および3)基準1および2を満たす立体配座における、これらの基準を満たさないその他の折り畳みとの比較による、融合タンパク質の関連するエネルギー。潜在的なスペーサーの最初の選択に続き、溶媒和された環境における融合タンパク質の振る舞いを検討するために、分子動力学シミュレーションが行なわれるだろう。
【0081】
ジスルフィドスペーサーに関する別の関心事は、新規の抗原エピトープの生成である。例えば、図7(B)に示されるようなシクロペプチドスペーサーは、トロンビン消化後に2つのペプチドを生成するだろう(融合タンパク質のドメインにそれぞれ配列LEAGCKNFFPRおよびSFTSCGSLEが付される)。これらの2つのペプチドは、非常に特異的な抗ハプテン抗体の形成を誘導するかもしれない。この問題は、摂取されたタンパク質への過敏症を深める可能性は非常に低いものの、薬剤が慢性的に使用される場合に問題となるだろう。この潜在的な問題を回避する1つの方法は、それぞれのシクロペプチドスペーサーに、2つのトロンビン切断サイトを導入することである。図6(B)に示されるように、非常に短いペプチド鎖がスペーサーに存続するように、ジスルフィドシクロペプチドを設計することができる。より短いペプチドは、免疫反応を誘発する可能性を減少させる。図7(C)は、2つのトロンビン切断サイトを有するソマトスタチン構造に由来する仮定上のペプチドを示す。スペーサーペプチドにおけるジスルフィド結合の形成を促進することができる最も安定した環状立体配座を産出するために、FWTF配列の変更による立体配座の広範囲なコンピューターモデリングが行なわれるだろう。
【0082】
[組み換え融合タンパク質の製造]
(i)G−CSF−Tfプラスミドへのリンカー配列の挿入
アニールした合成リン酸化オリゴヌクレオチドは、G−CSFとTfとの間に、二本鎖DNAから成るリンカーを作るために使用されるだろう。リンカーは、xho1切断サイトに相補的な付着末端を有するように設計されるだろう。オリゴヌクレオチドは、TE緩衝剤に溶解され、20pmol/μlの終濃度にされるだろう。1μlのそれぞれのオリゴヌクレオチド溶液(フォワード配列およびリバース配列の両方)は、2μl(10X)アニーリング緩衝液(100mM TrisHCl、pH7.5、1M NaCl、10mM EDTA)と混合され、ddHOが添加され、最終体積20μlとされるだろう。その混合物は95℃で10分間加熱され、室温まで段階的に冷却されることで、xho1切断サイトに相補的な5’−オーバーハングを有した二本鎖DNAが形成される。二本鎖DNAリンカーは、ホスファターゼ(CIP)で処理されたxho1切断G−CSF−Tfプラスミドに連結されるだろう。リンカー−ベクター比率および連結温度は、挿入されたリンカーのコピー数を制御するために調節されるだろう。5μlライゲーション混合物が、JM109コンピテント細胞の形質転換に使用されるだろう。形質転換したクローンは、アンピシリン寒天プレートで選択されるだろう。プラスミドは、単離され、制限酵素消化によって試験され、その後、PCR増幅されるだろう。いくつかのプラスミドが構築され、構築物の配列はDNA配列決定によって確認されるだろう。
【0083】
(ii)異なるリンカーを有する融合タンパク質の発現
単層で成長したHEK293細胞は、Lipofectamine2000(Invitrogen)を使用して、異なるプラスミドを形質移入されるだろう。5時間のインキュベーションの後、無タンパク質培地CD293が交換されるだろう。条件培地は5日間の培養後に収集されるだろう。条件培地が収集され、10%のSDS/PAGEの分析に供されるだろう。タンパク質は硝酸セルロース膜にトランスファーされるだろう。ヤギ抗ヒト血清Tf抗体および抗ヒトG−CSF抗体は、一次抗体として使用されるだろう。ホースラディシュペルオキシダーゼ結合抗ヤギIgG抗体を二次抗体として使用し、ペルオキシダーゼ活性は、増強化学ルミネッセンス(enhanced chemiluminescence)(ECL)法によって検出されるだろう。
【0084】
(iii)分離可能マルチG−CSFドメインを有するTf融合タンパク質の発現
タンパク質薬剤の経口送達のためにTf融合タンパク質を使用する制限の1つは、それぞれの融合タンパク質分子が、Tfおよび薬剤ドメインのそれぞれの1つを含むということである。Tfの分子量(80kDa)は、ほとんどの薬剤タンパク質(〜20kDa)よりも相対的に大きいため、融合タンパク質のための用量サイズは、遊離型薬剤タンパク質の複数倍になるだろう。例えば、G−CSF−Tfには、G−CSF自体より5倍高い用量サイズが使用されるが、これは、これら2つのタンパク質の分子量が、それぞれ100kDおよび20kDであるためである。それ故、複数ドメインG−CSF融合タンパク質を作製した場合(例えば、図8に示されるように、1つのTfに対し2つのG−CSF)、タンパク質薬剤の用量サイズは著しく減少するだろう。
【0085】
複数G−CSF融合タンパク質を作製するためには、融合タンパク質におけるG−CSFドメインは、それらの治療の作用を個々に及ぼすために、互いに分離できることが必要である。この要求は現在、つい最近開発されたジスルフィドシクロペプチドリンカーによって達成可能である。ジスルフィドシクロペプチドスペーサーによって全てタンデムでつなげられ、各々のTfドメインあたり2つのG−CSFドメインから成る融合タンパク質が作製されるだろう。トロンビン切断によるインビトロのプロセシングの後、融合タンパク質は、腸の吸収の後に2つのG−CSF分子を放出するだろう(図8)。インビボの骨髄造血効果の2倍の増加が、2つのG−CSFドメインを有するG−CSF融合タンパク質において観察されると考えられる。
【0086】
[NFS−60細胞増殖アッセイおよびTfR結合における融合タンパク質の試験]
(i)G−CSF依存性NFS−60細胞増殖
融合タンパク質のG−CSF活性は、NFS−60細胞増殖アッセイによって測定されるだろう[1、6、35]。ジチオシクロペプチドスペーサーを有する融合タンパク質は、それらの生物学的活性を試験する前にトロンビン処理によってプロセシングされるだろう。NFS−60細胞は、RPMI−1640/10% FBSで3回洗浄され、1×10細胞/mlの密度で96ウェルマイクロプレートへ等分されるだろう。その結果として、G−CSFおよび融合タンパク質の10倍の階段希釈の10μlが加えられるだろう。プレートは5%のCOインキュベータにて37℃で48時間培養されるだろう。MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2、5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物)アッセイは、本質的に記述されたとおりに行なわれるだろう[52]。簡潔には、細胞は、血清を含まずおよびフェノールレッドを含まないRPMI1640培地中で1mg/mlのMTTで4時間処理されるだろう。形成するホルマザン結晶は、イソプロピルアルコールに溶解され、吸光度が、TECAN GENios Plusマイクロプレートリーダで570nmで測定されるだろう。マルチG−CSFドメインを有するものを含むジスルフィドスペーサーを有する融合タンパク質は、DTTで還元された後、細胞増殖におけるインビトロの効果の評価のためのNFS−60細胞の培地に添加されるだろう。DTT処理融合タンパク質の大規模な希釈は、細胞増殖アッセイに対する高いDTT濃度の効果を無効にするために要求される。
【0087】
(ii)TfR結合活性
ヒトTfは、クロラミンT触媒ヨウ素化によって125I(ICN、Irvine、CA)で放射標識され、その後、セファデックスG−50カラムクロマトグラフィを使用して精製され、次に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.8)で透析した。Caco−2細胞は、完全に分化するまで、12ウェルクラスタプレートに接種されるだろう。Caco−2単層は、冷却したPBSで3回洗浄し、その後、0.1%BSAが補われた無血清D−MEM中で37℃で30分間インキュベートされ、内因性Tfが除去されるだろう。1mg/mlBSAを含むD−MEM中の3μg/mlの125I−Tfと3、10または30倍の非標識融合タンパク質またはTfとの混合物が異なるウェルに添加されるだろう。セクション(i)と同様に、ジスルフィドシクロペプチドスペーサーを有する融合タンパク質は、TfR結合活性を試験する前にトロンビン処理によってプロセシングされるだろう。4℃で30分間のインキュベーションの後、培地は除去され、細胞の単層は冷却したPBSで3回洗浄されるだろう。その後、細胞は1M NaOHに溶解され、ライセートはガンマカウンターで計測されるだろう。(i)に記述される細胞増殖アッセイと異なり、DTT還元を行っていない未処理のジスルフィド隔離融合タンパク質(disulfide−spaced fusion protein)が、TfR結合アッセイに使用されるべきである。
【0088】
[インビボ骨髄造血活性の比較−皮下(sc)経路対経口(po)経路]
[BDF1マウスにおけるscおよびpo投与による、骨髄造血効果に関しての選択された融合タンパク質の研究]G−CSFおよびTfのほとんどの融合タンパク質のインビボ骨髄造血活性は、インビトロの生物学的活性と関連すると考えられている。この推定は、マウスにおける経口投与のための異なる融合タンパク質の選択によって確認されるだろう。最近の発表[35]にて示唆されるように、非切断可能スペーサーを有する融合タンパク質における、インビトロの生物学的活性とインビボ骨髄造血活性との間の優れた相関性が期待される。しかしながら、切断可能スペーサーを有する融合タンパク質の場合、トロンビン処理融合タンパク質が更に処理されて、インビトロアッセイ前に2つの別個のドメインに還元される場合を除き、トロンビン処理の後であっても、インビボ骨髄造血活性は、必ずしもインビトロの生物学的活性に相互に関連するとは限らないかもしれない。皮下注射された場合、切断可能および非切断可能融合タンパク質の両方が血管へ輸送され、タンパク質−タンパク質ジスルフィド結合の血中濃度半減期が約7−8時間であるため[53]、同様の骨髄造血活性が示されるかもしれない。他方で、経口投与された場合、ジスルフィドスペーサーを有する融合タンパク質は、血液循環へ遊離型G−CSFを放出するために、腸または肝臓のいずれかで還元されてよい。この場合、遊離型G−CSFの放出する速度は、腸から血液への未処理融合タンパク質の輸送プロセスより速いかもしれない。G−CSFの血中濃度半減期はTfより相当に短いため、放出されたG−CSFは、未処理融合タンパク質より短い血中濃度半減期を有するだろう。それ故、経口投与されるジスルフィド隔離融合タンパク質では、より高い力価であるものの、より短い持続時間の骨髄造血活性が予想される。
【0089】
ジスルフィド隔離融合タンパク質のインビボ骨髄造血活性は、以前に記述されたように作製される[6]、化学的に連結したジスルフィド複合体の活性と比較されるだろう。架橋試薬による化学的修飾の際にタンパク質構造に生じる可能性がある多くの潜在的な副反応が存在するため、化学的に連結した複合体よりも、融合タンパク質からの高いインビボの効果が期待される。この推定は、融合タンパク質[1]は、BDF−1マウスにおけるANCの増加に関して、化学的に連結するジスルフィド複合体[6]より有効であったという以前の観察に基づく。しかしながら、G−CSFとTfとの間の異なる連結、すなわち、それぞれ、融合タンパク質[1]および化学的複合体[6]のために、非切断可能連結および切断可能連結が、これらの研究で使用された。それ故、ジスルフィド隔離融合タンパク質とジスルフィド連結複合体との間の比較は、インビボ骨髄造血活性の効果のより正確な評価を与える。
【0090】
6−8週齢のオスのBDF1マウス(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)が、この報告書に記述された全ての動物実験において使用されるだろう。以前の実験で、ヒトG−CSF応答の評価のためにこのモデルが使用されているため、BDF1マウスモデルが研究に使用されるだろう[1、6、35]。さらに、その他の市販される化学療法的に誘導されるまたは放射線により誘導される好中球減少マウスモデル(例えばPerry Scientific, Inc., San Diego,CA)と異なり、BDF1マウスは正常動物であり、薬剤または放射線治療と関連する合併症の干渉がない、生理的なGI吸収を研究するための優れたモデルであるだろう。本願は、Tf融合タンパク質のGI吸収の最適化および機構に注目する。しかしながら、G−CSF融合タンパク質の治療の効果が更なる開発のために評価される場合、好中球減少マウスモデルは今後考慮されるだろう。
【0091】
BDF1マウスは、5日間の順応に供されるだろう。動物実験は、「Principles of Laboratory Animal Care」(NIH Publication #85−23)に準拠し、南カリフォルニア大学におけるInstitutional Animal Care and Utilization Committeeに承認された。投薬に先立って、マウスは、12時間絶食されるだろう。処理群は、0日において一回量を受けるだろう。分子量の差(すなわちG−CSFは20kDおよび融合タンパク質は100kD)に起因して、動物は、等価なμモルに基づいた用量を受けるだろう。皮下投与のために、5mg/kg(0.05μmol/kg)の融合タンパク質または1mg/kg(0.05μmol/kg)のG−CSFを注射した。経口投与のために、50mg/kg(0.5μmol/kg)の融合タンパク質または10mg/kg(0.5μmol/kg)のG−CSFが、胃管栄養針を介して与えられるだろう。全てのマウスは、処理から4時間後に食物を与えられた。
【0092】
血液サンプルは、尾静脈から毎日集められ、20倍に希釈され、酸性クリスタルバイオレット溶液(水に0.1%クリスタルバイオレット、1%酢酸を含む)に溶解されるだろう。各々の血液サンプルのサイズは20未満uLになり、各々の収集の間の時間は24時間になると考えられるため、同一のマウスは、なんら問題なく全実験に使用されるだろう。希釈された血液サンプルから、合計白血球(WBC)数が、血球計により手動で決定されるだろう。白血球中の多形核好中球(PMN)のパーセンテージは、Wright染色された血液塗抹標本スライドガラスをオリンパスBH−2顕微鏡で検査することで、手動で決定されるだろう。絶対好中球数(ANC)は、合計WBC数にPMNパーセンテージを掛けることにより決定されるだろう[1、6]。
【0093】
[GI上皮における融合タンパク質の蓄積および輸送に対する食事性鉄の効果の研究]BDF1マウスにおける経口投与されたG−CSF−Tf融合タンパク質の保持された骨髄造血効果が観察された[1]。この観察結果は、GI中に融合タンパク質のための貯蔵部位が恐らく存在することを示す。以前の結果は、さらに、培養されたCaco−2細胞におけるTfの蓄積を示し、それは、その他の細胞株におけるTfRの迅速なリサイクル経路に矛盾する。これらの研究結果は、食事性鉄のGI吸収におけるアポTfの役割における他者の近年の報告とともに[19]、二価金属トランスポーター1(DMT1)を介した粘膜からの鉄の取り込みによって調節できる、腸上皮細胞におけるアポTfのための貯蔵コンパートメントが存在する可能性があることを示唆する。そのような調節性機構は、GI上皮から血液循環へのTf融合タンパク質の制御放出の方法を提供し、それは、恐らく、経口タンパク質薬剤の将来の開発に重要な要素であろう。持続的な放出は、成長ホルモンといったいくつかのタンパク質薬剤には有利である一方、血液循環への迅速な送達は、インスリンといったその他のものに要求される可能性がある。
【0094】
確信を確認するために、G−CSF−Tfは、1g/kgの毒性水準下の用量の鉄と一緒にBDF1マウスに経口で投与されるだろう。マウスへの鉄の経口給餌の主要な関心事は毒性である。しかしながら、動物に経口で投与される場合、カルボニル化鉄は非常に安全である。1ラット当たり2gのカルボニル化鉄の1回量(およそ10〜20g/kg)は、悪影響を示さないと実証されたことが報告されている[55]。さらに、カルボニル化鉄の生物学的利用能は、硫酸鉄に比べて50%以上である[55]。それ故1g/kgのカルボニル化鉄の経口量は、マウスにおける低い毒性を有する鉄の高い腸吸収をもたらすと予想される。あるいは、カルボニル化鉄が何らかの可溶性の問題を示す場合、グルコン酸第一鉄(LD50:マウスに経口的に3.7g/kgMerck Index)といったその他の非常に可溶性鉄化合物を使用することができる。鉄の補給を伴いまたは伴わずに経口投与されたG−CSF−Tfの骨髄造血効果が試験されるだろう。最も高いANCをもたらすであろう投与後の日数ならびにANCの値は、これらの2つの群の間で比較されるであろう。鉄補充投与を受けるマウスにおける、おそらくより高いANCを有する骨髄造血効果の有効時間の短縮が予想される。この結果が確認できた場合、同様の研究は、G−CSF−Tfの経口投与後の異なる日に、鉄補充を与えることにより繰り返されるだろう。鉄補給が与えられる時点(例えば、1日目および2日目)のG−CSF−Tfの骨髄造血効果のブーストが観察されると予想される。そのようなブースター効果は、G−CSF−Tfの薬力学的特性および生物学的利用能を変更し、この情報は、G−CSF−Tfの輸送、蓄積および生物学的利用能を解明するために使用されるだろう。
【0095】
[融合タンパク質の薬物動態学(PK)および体内分布の測定]
G−CSF−Tfの経口投与では、マウスにおけるANCの増加が4〜5日間維持された一方、G−CSFではわずかに1日であったことが近年の報告において実証された[1]。好中球の寿命はわずか約12時間であるため、この知見は、G−CSF−Tfの血中濃度半減期はG−CSFより著しく長いか、腸から血流までのG−CSF−Tf輸送における持続的放出機構が存在するかのいずれかを示唆する。皮下注射されたG−CSFおよびG−CSF−Tfは、好中球数に同様の効果があるという事実は、経口投与されたG−CSF−Tfの長期間の効果は、血中濃度半減期ではなく持続的放出を最も原因とするようであることを示唆する[1]。経口投与されたG−CSF−Tfは、GI上皮を通って輸送され、続いて、門脈を介して肝臓に輸送されると考えられている。G−CSF−Tfは、恐らくアポTfの形態で、腸管上皮または肝臓のいずれかに蓄積し、その後、ジフェリックの形態として血液循環にゆっくりと放出されるだろう[1]。現在、肝臓ではなく腸管上皮が、経口的に吸収されたG−CSF−Tfの持続的放出のための保持部位であると考えられている。この理由は、一旦門脈へ送達されると、融合タンパク質は、肝臓に達する前に血液における高濃度の内因性Tfと混合することである。そのような希釈効果は、G−CSF−Tfを肝臓中に選択的に保持させるようではない。これが真実である場合、腸上皮細胞に関連するG−CSF−Tfの放出は、実験マウスに与えられる食事性鉄の量を変えることで操作できると考えられる。
【0096】
確信を確認するために、経口投与された融合タンパク質の薬物動態学および体内分布が研究されるだろう。非切断可能融合タンパク質G−CSF−Tfは、それが体内で未処理のまま維持されるため、結果の解釈を単純化するために、モデル薬剤として使用されるだろう。経口投与後の腸におけるG−CSF−Tfの最初の蓄積、その後の約3日にわたる血液循環放出が予想される。肝臓がG−CSF−Tfの持続的放出に役立つ可能性を完全に排除できるため、腸および肝臓の保持の両方が、最初の研究において調査されるだろう。
【0097】
[マウスにおける経口投与された融合タンパク質の血中濃度の検出]ヒトG−CSFまたはヒトTfに高度に特異的な、G−CSFおよびTfの両方のための入手可能な商用RIAおよびELISAキットが存在している。それ故、マウスにおける経口投与後のG−CSF−Tfの血漿レベルは、直接検出できるに違いない。しかしながら、血漿における融合タンパク質の濃度は非常に低いと考えられるため、ヒトタンパク質とマウスタンパク質との間の交差反応性は重大な懸念である。それ故、商用免疫測定キットは、ヒトG−CSFおよびTfの検出をマウス血清が存在する状態で実行できることを確実にするためにスクリーニングされるだろう。他方で、融合タンパク質は、G−CSFおよびTfの両方構造から成るユニークな分子であり、融合タンパク質におけるそれぞれの成分は、ウェスタンブロットにおけるその対応する抗体によって認識できることが実証されている[1]。それ故、融合タンパク質にのみ高度に感受性を有し特異的であるが、G−CSFまたはTfに対してはそうではない、単純なELISA方法を開発できるであろう。
【0098】
G−CSF−Tfに特異的なELISAを開発するために、ウサギ抗ヒトG−CSF抗体が一次(捕捉)抗体として固定化され、ヤギ抗hTf抗体が二次(検出)抗体として固定化されるだろう。マウス血清が分析のためのサンプルとして使用されるため、2つの一次抗体のためのマウス抗体は避けられるだろう。ホースラディシュペルオキシダーゼを結合したヒツジ抗ヤギ免疫グロブリン抗体は、シグナル抗体として使用されるだろう。ELISAアッセイに類似するアッセイ方法のための手順方法(図9)は、十分確立されており[56、57]、いくつかの免疫測定法がこれまでに開発されている。抗G−CSFおよび抗Tf抗体の組み合わせが使用されるため、マウス血漿中において内因性G−CSFまたはTfからの干渉を受けることなく、スペーサーにかかわらない、未処理の融合タンパク質の濃度の測定のために、高度に感受性があり特異的であるELISAを開発することができる。切断可能融合タンパク質から放出される遊離型G−CSFの測定のために、ヒトG−CSFのための商用ELISAキットが使用され、それは原則として融合タンパク質を検出する。しかしながら、遊離型G−CSFのレベルは、G−CSFの合計濃度(抗G−CSFアッセイ)からG−CSF−Tfの濃度(抗融合タンパク質アッセイを使用)を引くことで見積もることができる。
【0099】
(i)経口投与されたG−CSF−Tfの薬物動態学
オスのBDF−1マウス(6−8週齢、1群あたり5匹のマウス、体重22−25g)は、用量50mg/kg(10mg/kgのG−CSFに相等)の融合タンパク質を経口投与されるだろう。この用量は、有意で信頼できる測定が得られるだろうことを保証するための薬物動態研究において最初に使用されるだろう。各々の処理群からの5匹のマウスは、投与から4時間、8時間、12時間、24時間および48時間後に犠牲にされるだろう。タンパク質の遅い腸の吸収および48時間後の骨髄造血効果の減少が以前に観察されているため、4時間より短い何れかの時点または48時間より長い何れかの時点は必要ではないかもしれない。しかしながら、最初の研究の結果から、より多くの時点の追加が是認されれば、より短いまたはより長い時点が将来の研究に含まれるだろう。
【0100】
血液サンプル並びに各々のマウスの肝臓および腸が採取されるだろう。肝臓および腸のサンプルは、組織局在性に関するさらなる研究のために保存されるだろう。血漿は各々の血液サンプルから単離され、上述のような未処理の融合タンパク質または遊離型G−CSFのいずれかのELISA分析に供されるだろう。G−CSFの骨髄造血は天井効果を有することが示されているため[58]、用量は線形の応答範囲内であるべきである。単純な非切断可能融合タンパク質G−CSF−Tfが最初に使用されるだろう。最初の結果に依存して、タンパク質の用量および時点を適宜調節することができる。経口量の1/10でG−CSF−Tfが静脈内に注射されたマウスがコントロールとされ、血液が同様のサンプリングスケジュールで採取されるだろう。poおよびiv処理からのG−CSF−Tfの血中濃度半減期が比較され、po投与の血中濃度半減期の増加は、融合タンパク質の経口吸収経路において持続的放出が生じたことを示すだろう。
【0101】
経口投与の繰り返しがG−CSF−TfのGI吸収を変更するかどうかをさらに調査するために、上述のようなG−CSF−Tfの血漿レベルを測定する実験(但し1群あたり10匹のマウスとされるだろう)が計画される。血液サンプルの数は、PK研究にて得られた結果に応じて、2から3の時点のみに減らしてよい。融合タンパク質の経口投与後の各々の時点において、各群からの5匹のマウスが、G−CSF−Tf測定のための血液を集めるために犠牲にされるだろう。各群におけるその他の5匹のマウスは、週に一度、合計4週間、G−CSF−Tfを経口投薬されるだろう。複数回投薬されたマウスは、同じ時点で4週目の投与の後に犠牲にされるだろう。G−CSF−Tfの血漿レベルが測定され、第1週のマウスのそれと比較されるだろう。TfRは、Tfの結合によるアップレギュレートにもダウンレギュレートにも依存しないことが知られているため、一回投与群と複数回投与群との間のG−CSF−Tf血漿レベルになんらかの違いが生じることは期待できない。しかしながら、差異が見つかれば、経口投与されたG−CSF−Tfに対する粘膜の免疫学的または毒物学的な反応の可能性が考慮されるだろう。
【0102】
経口投与されたG−CSF−Tfの毒性を評価するために、コントロール群および複数投薬群における各々のマウスの腸が固定され、顕微鏡検査が行なわれるだろう。Tf、G−CSFまたは融合タンパク質のいずれかの毒性にどんな病徴が関係しているかが既知のため、GI毒性を示す一般的な形態変化は文献[59、60、61]に見ることができるだろう。最初に、毛の長さの減少ならびに陰窩領域における有系分裂の細胞数を、毒性の指標として使用できるだろう。更に、ミエロペルオキシダーゼ活性および/または上皮内リンパ細胞の増加は、粘膜の免疫反応を示唆するだろう。しかしながら、ヒトTfおよびG−CSFの融合タンパク質がマウスモデルにて使用されるため、粘膜の免疫反応についてのいずれかの観察も注意深く解釈されるべきである。
【0103】
この研究の落とし穴の1つは、特に胃における酸性環境の下で、G−CSF−Tfをジフェリック形態に維持することが困難であることである。TfおよびアポTfは、身体において異なって処理される可能性があり、吸収において違いを示す可能性がある。アポTfは、鉄の吸収の機構として、ジフェリックTfよりはるかに長く腸上皮細胞の内部で蓄積される多くの証拠が存在する[62]。そのような選択的保持が、さらに、アポTfがTfに変換され、血液に再利用される肝細胞において生じる可能性がある[63]。それ故、鉄結合状態は、放出に影響し、それによって経口投与された融合タンパク質の効果に影響するかもしれない。変化を避けるために、すべての融合タンパク質は、強力な鉄キレート化剤デスフェロキサミン(desferroxamine)[64]で前培養し、その後透析することで、アポTf形態に維持されるだろう。Apo−G−CSF−Tfはさらにiv注射のためのコントロールになるだろう。
【0104】
(ii)経口投与されたG−CSF−SS−Tfの薬物動態学
同様の研究は、ジスルフィド隔離融合タンパク質G−CSF−SS−Tfを経口投与されたマウスで行なわれるだろう。経口および静脈内の用量は、G−CSF−Tfのそれと同じになるだろう。ジスルフィドスペーサーを有する融合タンパク質は、経上皮輸送の間にまたは肝臓においてG−CSFを放出する可能性があり、および、非切断可能G−CSF−Tfのそれとは異なる薬物動態学の特性を有する可能性がある。G−CSFの血漿レベルが、輸送プロセスの際に、未処理の融合タンパク質の放出ではなくジスルフィドスペーサーの還元に依存する可能性がある。それ故、BDF1マウスに経口投与される場合に、G−CSF−TfよりもG−CSF−SS−Tfのほうが高い効果が示されることが期待され、このことは、これらの2つの融合タンパク質の受容体介在輸送の効率が類似していると想定される。
【0105】
この確信を確認するために、遊離型および融合タンパク質関連G−CSFの血漿レベルは、2種のELISAの使用により測定されるだろう。結果は、研究のための用量および時点においてガイドラインを提供するだろう。この研究からの3つの可能性ある結果が存在する:G−CSFだけが検出できる、G−CSF−SS−Tfだけが検出できる、およびG−CSF−SS−TfおよびG−CSFの両方が検出できる。G−CSFだけが検出できる場合、その血中濃度半減期を推定することは重要である。マウスにおけるG−CSFの血中濃度半減期が約2.5時間であることが知られているので[65]、G−CSF−SS−Tfで処理したマウスにおけるG−CSF血中濃度半減期の延長は、経口吸収経路における持続性放出機構を示唆するだろう。他方、G−CSF−SS−Tfが検出できた場合、融合タンパク質におけるジスルフィドスペーサーが、輸送の際に、還元されやすくないことが示唆され、経口投与に続くG−CSF−TFおよびG−CSF−SS−Tfの血漿レベルは類似すると考えられる。この場合、G−CSF−TfおよびG−CSF−SS−Tfの効果の間に差異があれば、それは、標的組織におけるジスルフィドスペーサーの続く還元を原因とする可能性が高い。しかしながら、G−CSFおよびG−CSF−SS−Tfの両方が検出できた場合、様々な時点およびそれぞれの半減期におけるG−CSFのこれらの2つの形態の濃度の比率が決定されるだろう。融合タンパク質および再生されたG−CSFの血漿半減期は、マウスに直接投与された場合(2.5時間)、G−CSFより著しく長いことが予想される。G−CSF、G−CSF−SS−TfおよびG−CSF−Tfの血漿中の薬物動態学のプロファイルに基づいて、融合タンパク質の輸送および放出の機構を仮定できるだろう。
【0106】
(iii)薬物動態学の測定の分析
濃度曲線下面積(AUC)、見かけの血中濃度半減期(t1/2)、平均滞留時間(MRT)、最大血漿濃度(Cmax)および最大の血漿濃度に達する時間(tmax)といった関連する薬物動態学パラメーターを得るために、コンピュータプログラム(例えばWinNonlin)を使用して、様々なデータセットがあてはめられるだろう。経口投与からの血漿融合タンパク質のAUC値を、静脈注射からのそれにより割り、2つの異なる送達経路における用量によって標準化することで、絶対的な生物学的利用能が計算されるだろう。tmaxにおける差は、持続的放出の機構の証拠を提供するだろう。経口投与または静脈内投与のいずれかによる、処理マウスおよびコントロールマウスにおける、2つの融合タンパク質の血漿濃度の差は、独立したt−検定または分散分析(ANOVA)のいずれかによって評価されるだろう。この比較は各時点で行なわれるだろう。後方の時点の統計的有意性は、持続的放出速度における差を示すために重要である。帰無仮説がANOVAで否定された場合、チューキー法(Tukey’s test)が多重比較に使用されるだろう。値は、p<0.05の場合に統計的に有意であると考えられるだろう。
【0107】
[経口投与された融合タンパク質の組織分布の検出]インスリン[5]およびG−CSF[6]のTf複合体の経口投与に関する以前の研究で観察された、経口投与されたGCSF−Tf[1]の長期間の骨髄造血効果は、輸送プロセスにおいて関与する持続性放出の機構の存在を示唆する。培養されたCaco−2細胞(一般に腸細胞のモデルと見なされている細胞株)においてTfの高い保持が検出された。それ故、経口投与されたG−CSF−Tfの貯蔵部位は、腸上皮細胞に存在する可能性がある。以前の研究により、さらに、経口投与されたTf凝集物の腸における保持が確認された[41]。しかしながら、肝臓におけるTfの保持がさらに報告され[63]、以前の研究で確認されたため[41]、肝臓がG−CSF−Tfの制御放出にさらに役割を果たす可能性を除外することができない。Tfベースの融合タンパク質は、腸上皮細胞に最初に保持され、その後肝臓に保持されると考えられている。しかしながら、腸管上皮または肝臓における保持が、血流へのG−CSF−Tfの放出の律速段階かどうかは明らかではない。制御放出機構は、放射性ヨウ素標識Tf、および、G−CSF−Tf融合タンパク質の検出のために開発される特異的なELISAの両方を使用することで確認されるだろう。
【0108】
(i)腸および肝臓における経口投与された125I−Tfの局在性の動力学
以前の研究において、マウスにおいて経口投与される場合、以前の結果は、腸および肝臓の両方において125I−Tf凝集物の高い局在性が示された[41]。しかしながら、これらの局在性の結果の有意性を評価するために、アポおよびジフェリックの両方の形態において125I−Tfを使用した実験が繰り返され、投与から2、3および4日後の長期的な時点における分布の動力学が研究されるだろう。全ての腸または肝臓ならびに血液サンプルのアリコートがガンマカウンターで計測されるだろう。放射能は、3つのコンパートメントすべてにおいて、時間に対してプロットされ、分布の予備的な動力学が決定されるだろう。この研究の重要なコントロールは、腸および肝臓におけるiv注入された125I−Tfの分布である。このコントロールは、放射能のバックグラウンド測定を提供し、ならびに保持のために提供されるだろう。この実験から、経口投与されたアポTfおよびジフェリック−Tfは腸の局在性および肝臓の局在性において異なるか否かがわかるだろう。更に、腸または肝臓が、経口投与されたTfの保持のための主要な位置かどうかがわかるだろう。より高い局在性が、長期的な時点で、肝臓より腸において観察された場合、腸における保持が、恐らく融合タンパク質の循環への持続的放出のための律速段階であることが示唆されるだろう。他方、肝臓においてさらに放射能がある場合、肝臓における保持は、経口投与された融合タンパク質の貯蔵部位であるだろう。
【0109】
この研究にはいくつかの落とし穴が存在する。第1に、放射能の測定は、125I−Tfの分解生成物に起因して誤解が生じる可能性があることが認識されている。さらに、腸および/または肝臓において、Tfから125Iを除去する可能性のある脱ハロゲン化反応が生じる可能性がある。最後に、遊離型125Iまたは分解生成物は、組織成分に組み込まれ、この研究において偽陽性の結果を与えるかもしれない。それ故、たとえ125I−Tfをトレーサーとして使用することが単純で敏感であっても、この研究から得られたデータは予備的な結果としてのみ見なされるだろう。しかしながら、この研究は、次の2つのセクションに記述される、さらなる研究の設計にガイドラインを供給するだろう。
【0110】
(ii)腸および肝臓における経口投与されたビオチン−Tfの局在の検出
放射能の組織局在性が確かに未処理のTfであることをさらに確認するために、ビオチン化Tf、ビオチン−Tfを使用した研究がなされるだろう。このビオチン化Tf、ビオチン−Tfは、市販的に入手可能なEZ−LinkTMスルホ−NHS−LCビオチン結合キット(Pierce)の使用により準備される
ビオチン−Tfは、マウスに経口投与されるだろう。ビオチン化された血清アルブミン(ビオチン−SA)を経口投与されたマウスは、コントロールとして使用されるだろう。様々な時点においてマウスが犠牲にされ、腸および肝臓が採取されるだろう。腸および肝臓の両方が、cryogenic microtoneでスライスされ、FITCアビディンを使用して蛍光顕微鏡下の試験に供されるだろう。ビオチン−SAが与えられたマウスは、バックグラウンド測定として使用されるだろう。さらに、ビオチン−Tfは、ビオチン−アビディンベースの酵素免疫定量法により定量的に検出することができる。このアッセイは、これまでに、ビオチン−Tfを経口投与されたマウスの血漿におけるビオチン−Tfの量を測定するために使用されている[41]。腸および肝臓におけるビオチン−Tfの検出のために、組織ホモジネート由来の抽出物が、ビオチン−アビディン免疫測定に供されられるだろう。
【0111】
ビオチン−Tfは、GI管におけるG−CSF−Tfと同様に処理されると考えることは合理的である。それ故、融合タンパク質が腸または肝臓において確かに保持されていることを確認できるだろう。しかしながら、ビオチン−Tfは、経口投与されたTfの位置の定性的測定のみを提供することができる。それは、GI管における融合タンパク質の組織局在性の定量的測定または輸送の動的研究のいずれかに使用することができない。腸または肝臓における、G−CSF−Tfの局在性および量に関するより完全な研究のために、開発されるELISA法を使用する必要があるだろう。
【0112】
(iii)腸および肝臓における経口投与されたG−CSF−Tfの蓄積の定量的測定
この実験において、マウスは、G−CSF−Tfを経口投与されるだろう。様々な時点において、マウスは犠牲にされ、腸および肝臓ならびに血液が採取されるだろう。腸および肝臓は重量測定され、PBS中で均質化され、組織抽出物は、遠心分離後に上清画分として集められるだろう。ELISA法は125I−Tfの推定濃度に基づいて行なわれるだろう。G−CSF−Tfの量は、ng/g湿組織として示されるだろう。この研究の結果は上述の研究に由来するものと比較して使用され、量および分布の動力学の両方が決定されるだろう。
【0113】
[G−CSF−Tfの輸送、蓄積および生物学的利用能の解明]上記の研究から、GI管における融合タンパク質の保持の部位を同定できるに違いない。上皮細胞における保持は、鉄のGI吸収のための調節経路として腸上皮細胞にアポTfを貯蔵できるという他者の研究結果と一致するだろう[18]。これが真実であれば、Tf融合タンパク質の吸収の調節が観察されるべきである(図10)。この場合、鉄と同時のまたは鉄との連続的な融合タンパク質の経口投与が、G−CSF−Tfの薬力学特性および生物学的利用能を変えると考えられる。それ故、研究は、カルボニル鉄またはグルコン酸鉄を含む鉄サプリメントにより改変されるだろう。食事性鉄は、細胞内に貯蔵されたアポTfの血液への放出を増加させると考えられるため、短時間の骨髄造血の活性の著しい増大および長期における保持効果の減少が観察されると予想される。さらに、G−CSF−Tfの骨髄造血効果は、融合タンパク質の経口投与後の決められた時点において、マウスに高用量の鉄を与えることで、ブーストできるかもしれない。この発見は、将来、タンパク質薬剤の経口送達のための制御放出システムの設計に情報を提供するだろう。
【0114】
[脊椎動物]
1.BDF1マウスは、(a)腸におけるトランスフェリン受容体介在吸収および(c)骨髄造血活性のためのG−CSFトランスフェリン融合タンパク質複合体の経口吸収を研究するための動物モデルとして使用されるだろう。
【0115】
(a)腸へのトランスフェリン受容体介在吸収の研究のために、BDF1マウスは、12時間絶食され、胃管栄養針によってビオチン−トランスフェリン複合体またはビオチン血清アルブミン複合体(コントロール)(1mg/マウス)が与えられ、次に、二酸化炭素のチャンバーで犠牲にされるだろう。腸および肝臓が除去され、さらに処理されるだろう。各群4匹のマウスが使用され、実験は3回繰り返されるだろう。それ故、合計24匹のマウスがこの研究に使用されるだろう。
【0116】
(b)G−CSF−Tf融合タンパク質の研究のために、BDF1マウスは好中球の効果のアッセイに使用されるだろう。オスのBDF1マウス(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)(6−8週齢)は、全動物実験に使用されるだろう。マウスは、5日間順応されるだろう。動物実験は、「Principles of Laboratory Animal Care」(NIH Publication #85−23)に準拠し、および、南カリフォルニア大学におけるInstitutional Animal Care and Utilization Committeeによって承認されるだろう。投薬に先立って、マウスは、12時間絶食されるだろう。処理群は、0日に一回量を受けるだろう。融合タンパク質の分子量の違い(すなわちG−CSFの20kDおよび100kD)に起因して、動物は、等μモルに基づいた用量を受けるだろう。皮下投与のために、5mg/kg(0.05μmol/kg)の融合タンパク質または1mg/kg(0.05μmol/kg)のG−CSFが注入された。経口投与のために、50mg/kg(0.5μmol/kg)の融合タンパク質または10mg/kg(0.5μmol/kg)のG−CSFが、胃管栄養針を介して与えられるだろう。
【0117】
血液サンプルは、尾静脈から毎日集められ、20倍希釈され、酸性クリスタルバイオレット溶液(水に0.1%クリスタルバイオレット、1%酢酸を含む)に溶解されるだろう。全白血球数(WBC)は、血球計で、手動で決定されるだろう。白血球中の多形核好中球(PMN)のパーセンテージは、Wright染色された血液塗抹標本スライドガラスにおいて、オリンパスBH−2顕微鏡により手動で決定されるだろう。絶対好中球数(ANC)は、全WBC数にPMNパーセンテージを掛けることにより決定されるだろう。
【0118】
(c)薬物動態学および体内分布研究のために、オスBDF−1マウス(6−8週年齢、体重22−25g)は、50mg/kgの用量で(10mg/kgのG−CSF等価物)融合タンパク質が経口投与されるだろう。高用量の融合タンパク質が薬物動態学研究で選択され、有意で信頼できる測定が得られることが保証される。各処理群からの5匹のマウスが、圧縮したCOへの暴露によって、投与後4時間、8時間、12時間、24時間および48時間に犠牲にされるだろう。心臓の穿刺による血液サンプルならびに各々のマウスの肝臓および腸が採取されるだろう。肝臓および腸のサンプルは、組織局在性に関するさらなる研究のために保存されるだろう。血漿は、各々の血液サンプルから単離され、未処理の融合タンパク質または遊離型G−CSFのいずれかのELISA分析に供されるだろう。G−CSFの骨髄造血が天井効果を有すると示されているため[53]、用量は線形の応答範囲内にあるに違いない。単純で非切断可能融合タンパク質G−CSF−Tfが最初に使用されるだろう。最初の結果に応じて、必要であれば、タンパク質の用量および時点が調節されてよい。コントロールとして、経口量の1/10でG−CSF−Tfがマウスに静脈内注射され、血液は同様のサンプリングスケジュールで採取されるだろう。poおよびiv処理からのG−CSF−Tfの血中濃度半減期が比較され、po投与の長期間の血中濃度半減期は、融合タンパク質の経口吸収経路により持続的放出が生じることを示すだろう。
【0119】
2.培養された腸上皮細胞は、GI薬剤吸収に関するインビトロの研究に使用された。しかしながら、細胞培養システムは、上皮細胞における輸送に関する情報だけを提供することができる。インビトロのシステムは、ペプチドの透過性だけでなく、GI分解、粘液相互作用、異なる腸の部分における多様なpH値およびGIの一過的時間にも関与する、経口ペプチド吸収の研究のために確立されていない。それ故、動物モデルにおける経口投与された薬剤の薬理学的活性を測定することは、なお、GI吸収を実証する唯一の決定的な証拠である。
【0120】
240匹のオスのBDF1マウスは、G−CSF−Tf融合タンパク質の経口骨髄造血効果を試験するために、1年ごとに使用されるだろう。この数は、各実験ごとに24匹のマウスが必要となるという見積もりに基づく(コントロール、G−CSF処理および融合タンパク質処理のそれぞれの群において8匹のマウス)。バックグラウンドの好中球数が実験ごとに異なる可能性があり且つ骨髄造血応答がマウスごとにわずかに変動する可能性があるため、8匹マウス/群が統計的に有効数字を得るために処理されるだろう。経口的に吸収されたG−CSF−Tfの持続的放出を制御するために食事性鉄サプリメントを使用する実験を含む、10の実験が1年あたりに行われるだろう。それ故、1年当たり合計240匹のマウスが骨髄造血アッセイに必要とされるだろう。1年当たり150匹のBDF−1マウスが、融合タンパク質に関する薬物動態学の研究に使用されるだろう。この数は、各群当たり5匹のマウス、各実験(ivおよびpo)当たり2つの群および5つの時点に基づく。薬物動態学の研究は、1年当たり3回の結果の平均として行われるだろう。統計的に有意なデータを提供できるサンプルの最小数を得るために、各群当たり5匹のマウスの数が選ばれる。
【0121】
マウスのほとんどの株がヒトG−CSFに非感受性であるため、BDF1マウスは、ヒトG−CSFに対する骨髄造血反応を測定するために使用できる数少ないマウスモデルのうちの1つである。BDF1マウスの齢は、さらに、骨髄造血活性の観察にとって非常に重要であることが強調されるべきである。というのは、老齢のマウスは、バックグラウンドANCを増加させるだけでなく、ヒトG−CSFへの反応性が低下するためである。それ故、たとえ非侵入性の経路(すなわち経口投与)が、マウスを処理するために使用されたとしても、実験は、同様の研究のためにマウスの同じ群で繰り返すことができない。それ故、すべての実験のための新規のマウスを交換することは、矛盾しない結果を維持するのに不可欠である。
【0122】
3.Institutional Animal Care and Use Committeeは、動物の倫理的人道的な処理を保証するためにすべて適用を調査する。動物はすべて、動物施設の管理者、獣医および熟練した援助要員のスタッフの監督の下、USC動物施設によって保守された設備に収容されるだろう。
【0123】
4.骨髄造血のアッセイのために、およそ20μlの血液サンプルが、特異的な実験に依存して、3〜6日まで毎日、尾の先端から集められるだろう。この方法は、少量の血液が尾の先端から集められる場合、些細な不便のみを生じるであろう。G−CSFまたはG−CSF−Tfの投与は、マウスの免疫を増加させるだけでなく、苦痛または悪影響を引き起こさないだろう。
【0124】
5.マウスは各々の実験の後に犠牲にされるだろう。マウスは圧縮したCOへの暴露によって犠牲にされるだろう。この方法は、Panel on Euthanasia of the American Veterinary Medical Associationによって推奨される(J. Amer. Vet. Med. Assoc., 202:229-249, 1993)。
【0125】
[例II]
[シクロジスルフィドペプチドリンカーを有した融合タンパク質のインビトロの特徴づけ]
G−CSF−シクロジスルフィドペプチド−トランスフェリン(G−C−T)をコードするプラスミドを有するHEK293細胞を一時的に形質移入することにより、融合タンパク質が生産された。融合タンパク質におけるジチオシクロペプチドリンカーはトロンビン切断配列(PRS)を含んでおり、トロンビンおよび/またはジチオトレイトール(DTT)による処理を行い、または行わず、その後、抗G−CSFウェスタンブロット分析を行うことで特徴を調べた。トロンビン処理のために、20℃で16時間インキュベートした場合、1gの融合タンパク質を0.25NIHユニットのトロンビンで切断した。DTT処理のために、トロンビンで処理したまたは未処理の融合タンパク質を還元ローディングバッファーに添加し、10分間沸騰させて、ジスルフィド結合を還元させた。トロンビンおよび/またはDTT処理を行ったまたは行わないタンパク質サンプルを、次に、非還元SDS−PAGEにロードし、抗G−CSFウェスタンブロットで分析した。
【0126】
ウェスタンブロットの結果から、リンカーの2つのシステイン残基間でジスルフィド結合が形成され、リンカーのPRS配列はトロンビンによって認識され切断できたことが示された。
【0127】
図11に示されるように、G−CSFは、インビボの還元を模倣するトロンビンおよびDTT処理によってG−C−T融合タンパク質から放出された。増殖活性の測定のために、トロンビンおよびDTT処理G−C−Tまたは未処理G−C−Tを、連続的に希釈し、マウスの骨髄芽球細胞株NFS−60に添加した。その後、細胞を、37℃の5%COインキュベータにて48時間培養した。次に、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイを、細胞増殖の測定のために行った。図12は、遊離型G−CSFがトロンビンおよびDTT処理後に一旦放出されると、融合タンパク質は、未処理G−C−Tと比較して、改善された生物学的活性を有することを示す。
【0128】
[トロンビン処理G−C−T融合タンパク質のインビボ還元]
G−C−T融合タンパク質は、トロンビン(NIHユニットトロンビン当たり4gのタンパク質)によって、20℃で16時間処理し、リンカーシクロペプチドにおけるPRS配列を切断した。トロンビン処理または未処理G−C−T融合タンパク質を、1mg/kgの用量で尾静脈を介してCF1マウスに注射した。注射後、血漿を異なる時点で取得し、非還元SDS−PAGEに供し、抗G−CSFウエスタンブロッティング分析に供した。図13に示されるように、トロンビン処理G−C−Tは、遊離型G−CSFをインビボで放出した。対照的に、未処理G−C−Tは、検知可能な量のG−CSFを放出しなかった。
【0129】
[例III−トリプシンおよびジチオトレイトールによる処理後のG−CSF−シクロ−TF融合タンパク質からの遊離型G−CSFの放出]
方法:0.3μgのG−CSF−シクロ−Tf融合タンパク質を、異なる量のトリプシンとともに37℃で5分間インキュベートした。その後、融合タンパク質をDTTで処理し、還元SDS−PAGEにロードし、抗G−CSFウェスタンブロットで分析した。
【0130】
結果:適切なトリプシン濃度の下(3ユニット/mlまたは10ユニット/ml)、DTT還元後の遊離型G−CSFの外観によって実証されるように、環状リンカーはトリプシンで切断された(図14)。
【参考文献】
【0131】
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上記の記載は十分な詳細としておよび好ましい実施態様の点から記述されているものの、これらは、開示の限定として解釈されるべきではない。当業者の範囲内における修飾および変化は、本発明の範囲以内であると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタンパク質ドメイン;
第2のタンパク質ドメイン;および
少なくとも1つのプロテアーゼ切断サイトを含むジチオシクロペプチドスペーサー
を含むポリペプチドであって、
前記ジチオシクロペプチドは、前記第1および第2のタンパク質ドメインに対して外因性であり、前記第1および第2のタンパク質ドメインは、前記ジチオシクロペプチドによって操作可能に繋がっているポリペプチド。
【請求項2】
前記ジチオシクロペプチドは、ジスルフィド結合によって環化される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記チオシクロペプチドは、前記プロテアーゼ切断サイトにおいて、プロテアーゼによって切断される、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記チオシクロペプチドは、前記プロテアーゼ切断サイトにおいて、プロテアーゼによって切断される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記第1のタンパク質ドメインは、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)ドメインである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記第2のタンパク質ドメインは、トランスフェリン(Tf)ドメインである、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記第2のタンパク質ドメインは、Tfドメインである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記ジチオシクロペプチドは、トロンビンまたはトリプシン切断サイトを含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記ジチオシクロペプチドは、LEAGCKNFFPRSFTSCGSLEまたはLEAGCPRSFWTFPRSCGSLEを含む、請求項8に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記ポリペプチドは、組み換えポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリペプチドをコードするDNA配列を含む核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸を含む細胞。
【請求項13】
ポリペプチドを製造する方法であって、請求項12に記載の細胞を、前記ポリペプチドの発現が可能な条件の下で培養することを含む方法。
【請求項14】
ポリヌクレオチドを収集することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プロテアーゼによってポリペプチドを切断することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
タンパク質ドメインを細胞に送達する方法であって、前記細胞に請求項3に記載のポリペプチドが輸送される条件の下で、前記細胞に前記ポリペプチドを接触させることを含み、前記ジチオシクロペプチドのジスルフィド結合は、輸送の際にまたは細胞において還元され、これによって、前記第1のタンパク質ドメインと前記第2のタンパク質ドメインとが分離する方法。
【請求項17】
前記第1のタンパク質ドメインは、G−CSFドメインである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のタンパク質ドメインは、Tfドメインである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞は、トランスフェリン受容体(TfR)を発現する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のタンパク質ドメインは、Tfドメインである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞は、TfRを発現する、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−522570(P2010−522570A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501270(P2010−501270)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058789
【国際公開番号】WO2008/121898
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(301040556)ユニヴァーシティー オブ サザン カリフォルニア (15)
【Fターム(参考)】