説明

刈取装置

【課題】刈刃の分割部周辺の空間を拡大することによって藁屑等の掃き出し効果を高め、藁溜りを防止する。
【解決手段】刈取装置を支持する縦伝動フレーム(13)の先端部に左右方向の刈取横伝動フレーム(14)を取り付け、刈取横伝動フレーム(14)の前方に設けた刈刃装置(10)の可動刃(16)を可動刃分割部(Y)において左右に分割し、刈取横伝動フレームから前方に延出する複数の分草フレーム(18)を互いに間隔をおいて設け、各分草フレーム(18a〜18e)のうち、最も可動刃分割部(Y)に近い分草フレーム(18c)の基端側の部位を、可動刃分割部(Y)から離れる方向に偏倚させて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインなどにおける刈取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているように、刈取横伝動フレームの前側に設けられたバリカン式刈刃装置の可動刃を左右に2分割し、互いに反対方向に往復移動させて切断処理する構成のものが示され、しかも、その可動刃の分割部近くには穀稈を分草案内する分草フレームが配備されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−330611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雑草や藁屑の多い圃場で作業を行うと、刈取横伝動フレームの上面部、刈刃上部及びその周辺に雑草や藁屑類が堆積し、作物の搬送姿勢を乱し、刈取装置や脱穀入口部での詰まりの発生要因となっていた。特に刈刃を左右に2分割した構成のものでは、分割部での藁溜りが著しく、また、分割部近くに分草フレームが配備されていると、これが藁屑類を強引に引き込み、藁溜りが増長して刈残しや刈跡の不揃いを誘発する問題があった。
【0005】
この発明の課題は、刈刃の分割部周辺の空間を大きくとることによって藁屑等の掃き出し効果を高め、上記問題点を解消せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、刈取装置を支持する縦伝動フレーム(13)の先端部に左右方向の刈取横伝動フレーム(14)を取り付け、該刈取横伝動フレーム(14)の前方に設けた刈刃装置(10)の可動刃(16)を可動刃分割部(Y)において左右に分割し、前記刈取横伝動フレームから前方に延出する複数の分草フレーム(18)を互いに間隔をおいて設け、各分草フレーム(18a〜18e)のうち、最も可動刃分割部(Y)に近い分草フレーム(18c)の基端側の部位を、該可動刃分割部(Y)から離れる方向に偏倚させて配置したことを特徴とする刈取装置とする。
【0007】
各分草フレーム(18a〜18e)間に導入される穀稈は、これらの各分草フレームによって後方に向けて案内されながら刈刃装置(10)の刈取作用圏内に導かれ、左右方向で互いに反対方向に往復移動する可動刃(16)によって根元から切断処理される。
【0008】
可動刃分割部(Y)に最も近い分草フレーム(18c)の基端側が、この可動刃分割部(Y)から離間する方向に偏倚しているため、雑草や藁屑類が穀稈に追従して可動刃分割部(Y)に引き込まれることがなく、開放空間を通じて後方へ速やかに押し流され、極度の藁溜りが防止される。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記最も可動刃分割部(Y)に近い分草フレーム(18c)の基部を左右方向に屈曲させることで、該分草フレーム(18c)の基端側の部位を可動刃分割部(Y)から離れる方向に偏倚させたことを特徴とする請求項1記載の刈取装置とする。
【0010】
最も可動刃分割部(Y)に近い分草フレーム(18c)の基部が左右方向に屈曲しているので、この分草フレーム(18c)に穀稈が引っ掛かりにくくなる。
請求項3記載の発明は、前記刈刃装置(10)を刈取横伝動フレーム(14)に保持する保持具(17)を、前記可動刃分割部(Y)を挟んで隣接する2つの分草フレーム(18c,18d)よりも左右方向外側の部位に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の刈取装置とする。
【0011】
可動刃分割部(Y)を挟む左右の分草フレーム(18c,18d)間には、刈刃伝動フレーム(14)と刈刃装置(10)とを結ぶ保持具が存在しないため、刈取横伝動フレーム(14)と刈刃装置(10)との間には藁屑を落下させるに足る所定の隙間を確保することができ、藁溜りが抑制される。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記可動刃分割部(Y)における左右の可動刃(16)の各対向端部は、上部側ほど互いに離間する傾斜縁(T1,T2)に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の刈取装置とする。
【0013】
互いに反対方向に往復移動する可動刃(16)の相接近する方向への移動時には、挟まった状態にある藁屑にあってもその傾斜縁(T1,T2)に沿って上方に押し出され、ここで浮上した藁屑類はそのまま後方に押し流されることになり、藁溜りが抑制される。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記刈刃装置(10)の上方に掻込装置(11)を設け、可動刃分割部(Y)に最も近い分草フレーム(18c)の基端部を該掻込装置(11)のスターホイル(20)と平面視で重なる位置に配置したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の刈取装置とする。
【0015】
長藁などが引き込まれても、スターホイル(20)によって刈刃装置(10)の上面から後方へ掻込排除されることになり、藁溜り防止効果が高まる。
請求項6記載の発明は、前記スターホイル(20)の下部にスクレーパ(21)を一体的に設け、最も可動刃分割部(Y)に近い分草フレーム(18c)をスクレーパ(21)の作用部に近接させて配置したことを特徴とする請求項5記載の刈取装置とする。
【0016】
藁屑が分草フレーム(18c)の基部に絡み付く前にスクレーパ(21)によって取り除かれ、藁溜りの増長が防がれる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、可動刃分割部(Y)に最も近い分草フレーム(18c)の基端側がこの可動刃分割部(Y)から離間する方向に偏倚しているため、雑草や藁屑類が可動刃分割部(Y)に引き込まれることがなく、後方に大きく開放された空間を通じて速やかに後方へ掃き出すことができ、藁溜りの防止効果を高めることができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえで、分草フレーム(18c)の基部を左右方向に屈曲させることによって穀稈の引っ掛かりを少なくすることができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2記載の発明の効果を奏するものでありながら、可動刃分割部(Y)をんで隣接する左右の分草フレーム(18c,18d)間には、刈刃横伝動フレーム(14)と刈刃装置(10)を結ぶ固定部材が存在しないため、刈刃横伝動フレーム(14)と刈刃装置(10)との隙間から藁屑を容易に落下させることができ、藁溜りを抑制することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3記載の効果を奏するものでありがら、左右の可動刃(16)の接近方向への移動時には、挟まった状態にある藁屑にあってもその昇り傾斜面に沿って上方に押し出すことができ、浮上した藁屑をそのまま後方に掃き出すことができる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項記載の効果を奏するものでありがら、分草フレーム(18)に沿って押し流されてくる長藁などがあっても、スターホイル(20)によって刈刃装置(10)上より後方へ掻込排除することができ、藁溜りの防止効果を高めることができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、請求項5の効果に加えて、藁屑が分草フレーム(18)の基部に絡み付く前にスクレーパ(21)によって確実に取り除くことができ、藁溜りの増長を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの正面図
【図3】刈取装置の要部の平面図
【図4】同上要部の平面
【図5】図3のS−S線断面図
【図6】刈取装置の要部の側面図
【図7】引起し装置の着脱構成を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、コンバインの側面図を示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀フィードチェン3付き脱穀装置(脱穀部)4の前方部に刈取装置5を設置し、刈取装置5の横側部には運転席6や操作ボックス7等の運転操作部を備え、更に、その運転操作部後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0025】
刈取装置5は、立毛する穀稈を左右に分草する分草体8と、分草後の穀稈を引き起す穀稈引起し装置9と、引起し後の穀稈を切断するバリカン式の刈刃装置10と、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込装置11と、掻込搬送後の穀稈を引き継いで後方の脱穀部4に向けて揚上搬送する刈取穀稈搬送装置12等からなり、車体に対して上下に昇降可能で前後方向に沿わせて設けた縦伝動フレーム13及び該縦伝動フレームの先端に左右横方向に沿わせて設けた横伝動フレーム14に装備している。
【0026】
刈刃装置10は、下側の固定受刃15と上側の可動刃16とからなり、可動刃16は、左右に分割されていて互いに左右方向へ往復移動する構成になっている。 また、刈刃装置10は、横伝動フレーム14の前側で所定の隙間をあけて設置してあり、係合部材17aと係止フック17bからなる保持具17を介して着脱自在に保持させた構成としている。
【0027】
刈取横伝動フレーム14から前方に向けて延出する先端に分草体9を備えた複数の分草フレーム18(18a,18b,18c,18d,18e)が左右方向所定間隔おきに配備されている。各分草フレーム18a〜18eのうち、最も可動刃16の分割部(可動刃分割部)Yに近い分草フレーム18cの基端側は、その可動刃分割部Yから離れる方向に偏倚させた構成としている。
【0028】
また、前記可動刃16の分割部Yは、図5に示すように、対向面側が左右への移動方向側ほど上方に高く傾斜する昇り傾斜縁(傾斜縁)T1,T2となるよう形成されている。
刈刃装置10の上方に配設した掻込装置11のスターホイル20は、前記可動刃16の分割部Yに最も近い分草フレーム18cの基端部と平面視で重なる状態に配置され、また、このスターホイル20に設けられたスクレーパ21が分草フレーム18cの基端部に近接して作用するように設けられている。
【0029】
引起し装置9は、図2に示すように、4条分の引起し装置9L,9C1,9C2,9Rが配置されてあり、これらの内、左右の引起し装置9L,9Rは、上部が刈取横伝動フレーム14から立設する引起し縦伝動パイプや各引起し装置上部に横架する引起し横伝動ケース22から動力伝達可能に装着支持されている。
【0030】
そして、中央側の引起し装置9C1,9C2は、前記引起し横伝動ケース22の中間部から下方に延出する中伝動パイプ23、これより左右に分岐する分岐伝動パイプ24、分岐伝動パイプの左右側から下方に延出された引起し支持フレーム25等によって動力伝達可能に、且つ着脱自在に装着支持されるようになっている。また、この引起し装置9C1,9C2の下部側は、前記分草体8の分草支持フレーム18から上方に突設する支持スー26によって左右横方向に横架された支持パイプ27に係合保持されるようになっている。引起し装置9C1,9C2の上下位置には、支持パイプ27及び引起し支持フレーム25に対して簡単に係止固定することができる係止固定具28,28が設けられている
また、図7に示すように、引起し装置9は、前後の引起しケース9a,9bと、該ケース内に内装軸架される引起しラグ9c付き無端チェン9dと、該無端チェンを巻回する駆動スプロケット9e及び従動輪体等からなり、前記分岐伝動パイプ24から前方に向けて突設する引起し駆動軸29によって回転駆動すべく連動構成している。そして、前記引起し駆動軸29は、駆動側の刈取装置側29aと被駆動側の引起し側29bとに分離して、動力伝達可能で且つ嵌脱自在に構成している。実施例では駆動側の軸を角軸30aとし、被駆動側の軸を角穴(カップリング)30bとし、互いにドッキング可能に構成している。角軸部30aと角穴部30bのドッキング状態では、駆動側の軸受体31と被駆動側の軸受体32との対向面が密に接合されるようになっている。
【0031】
取外し側の引起し装置9C1,9C2の背面側には、折畳み収納可能な吊下げ用係止フック33(図7参照)が設けられている。
取外した引起し装置は、上記の係止フック33を用いることにより、コンバインの適所に引っ掛けて吊下げることができるものである。例えば、脱穀部4の扱胴カバーのオープンレバー34に係止フック33を引っ掛けて引起し装置を吊下げたり、また、脱穀フィードチェン3や挟持レール等、既存の露出部品に引っ掛けて吊下げることができる。従って、取外した引起し装置を地面に直接置いたりする場合のように引起し駆動軸のカップリング部への泥土などの付着を防止できて、以後の取付け作業が容易に行えるものとなる。
【0032】
なお、取外した引起し装置を横にした状態で吊下げることのできる二つのフックを引起しケースの非引起し経路側に設け、刈取装置のナローガイドや走行フレームなど比較的低い位置にでも吊下げることができる。
【符号の説明】
【0033】
5 刈取装置
10 刈刃装置
11 掻込装置
14 刈取横伝動フレーム
16 可動刃
17 保持具
18 分草フレーム
18a 分草フレーム
18b 分草フレーム
18c 最も可動刃分割部に近い分草フレーム
18d 分草フレーム
18e 分草フレーム
20 スターホイル
21 スクレーパ
Y 可動刃の分割部(可動刃分割部)
T1 昇り傾斜縁(傾斜縁)
T2 昇り傾斜縁(傾斜縁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取装置を支持する縦伝動フレーム(13)の先端部に左右方向の刈取横伝動フレーム(14)を取り付け、該刈取横伝動フレーム(14)の前方に設けた刈刃装置(10)の可動刃(16)を可動刃分割部(Y)において左右に分割し、前記刈取横伝動フレームから前方に延出する複数の分草フレーム(18)を互いに間隔をおいて設け、各分草フレーム(18a〜18e)のうち、最も可動刃分割部(Y)に近い分草フレーム(18c)の基端側の部位を、該可動刃分割部(Y)から離れる方向に偏倚させて配置したことを特徴とする刈取装置。
【請求項2】
前記最も可動刃分割部(Y)に近い分草フレーム(18c)の基部を左右方向に屈曲させることで、該分草フレーム(18c)の基端側の部位を可動刃分割部(Y)から離れる方向に偏倚させたことを特徴とする請求項1記載の刈取装置。
【請求項3】
前記刈刃装置(10)を刈取横伝動フレーム(14)に保持する保持具(17)を、前記可動刃分割部(Y)を挟んで隣接する2つの分草フレーム(18c,18d)よりも左右方向外側の部位に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の刈取装置。
【請求項4】
前記可動刃分割部(Y)における左右の可動刃(16)の各対向端部は、上部側ほど互いに離間する傾斜縁(T1,T2)に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の刈取装置。
【請求項5】
前記刈刃装置(10)の上方に掻込装置(11)を設け、可動刃分割部(Y)に最も近い分草フレーム(18c)の基端部を該掻込装置(11)のスターホイル(20)と平面視で重なる位置に配置したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載の刈取装置。
【請求項6】
前記スターホイル(20)の下部にスクレーパ(21)を一体的に設け、最も可動刃分割部(Y)に近い分草フレーム(18c)をスクレーパ(21)の作用部に近接させて配置したことを特徴とする請求項5記載の刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−175942(P2012−175942A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41461(P2011−41461)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】