説明

列車事故検知システム

【課題】 無線装置が故障の場合や、無線通信が困難または不可能な区間でも、中央指令所で迅速に事故の発生を検知する列車事故検知システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 列車現在走行情報1040を受信する地上無線装置1002と、予め入力される路線関連情報としての列車ダイヤ1091、車両性能データ1092と路線データ1093、及び列車現在走行情報1040を記憶するデータ記憶装置1021と、路線関連情報及び列車現在走行情報1040から、列車1001が走行する軌道1060の各区間での進入及び進出時刻を予測する軌道区間進入・進出予測装置1050と、予測された進入及び進出時刻に基づいて、軌道1060の所定の区間における列車1001の進入又は進出を検知する警報発生装置1051とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道列車等の事故が発生した場合に、その列車事故を迅速に、かつ安定して検知することを可能とする列車事故検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の列車事故検知システムでは、列車事故を検知するために、列車に事故検知装置を搭載し、その検知装置が事故を検知した時、列車に備え付けられている防護無線等の無線装置を起動し、かつ列車に備え付けられている列車無線を用いて検知装置による測定値、現在位置を列車番号と共に中央指令所に送信する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−271604号公報(0016〜0021段、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の列車事故検知システムにあっては、列車事故の衝撃等により無線装置が故障した場合、中央指令所に列車事故の情報は送信されない。このため、列車事故の発生状況によっては、中央指令所での事故の把握ができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、事故の衝撃等により無線装置が故障した場合や、無線通信が困難または不可能な区間においても、中央指令所で迅速に、かつ安定して事故の発生を検知する列車事故検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る列車事故検知システムは、列車走行情報を受信する無線部と、予め入力される路線関連情報及び無線部で受信する列車走行情報を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された路線関連情報及び列車走行情報に基づいて、列車が走行する軌道の各区間での進入及び進出する時刻を予測する予測手段と、予測手段により予測された軌道の各区間における進入及び進出する時刻に応じて、軌道の所定の区間における列車の進入又は進出を検知する検知手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、列車事故検知システムは、予測手段により、予め入力される 路線関連情報及び無線部で受信する列車走行情報から予測される各軌道区間での進入及び進出時刻に基づき、列車の所定の軌道区間への進入・進出を監視するようにしたので、事故が発生し列車の無線装置等が故障した場合においても、列車に何らかの異常が発生したことを中央指令所で検知することができ、迅速に警報情報を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る列車事故検知システムの各種実施の形態について、図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1における列車事故検知システムの構成を示す模式図である。
【0009】
図1において、列車1001は、無線部としての地上無線装置1002を介して地上に配置された中央指令所装置1003と通信し情報の送信を行う車上無線装置1004と、中央指令所装置1003に送信する列車走行情報としての列車現在走行状態情報1040を作成・送信する車上情報制御装置1020とを有している。また、列車1001は、列車現在走行状態を計測するために、車上計時装置1030、位置計測装置1031、速度検知装置1032を有している。
【0010】
なお、列車現在走行状態情報1040の中央指令所装置1003への送信周期は、時間的に一定間隔とする方法がある。あるいは走行距離毎に一定間隔とする方法がある。あるいは予め定められた位置で送信する方法もある。あるいはこれらの組み合わせとする場合もある。
【0011】
軌道1060は、軌道区間A1060a、軌道区間B1060b、軌道区間C1060c、・・・に区分されており、各軌道区間では、列車在線検知装置1005a、1005b、1005c、・・・を用いて、各軌道区間に列車が在線しているか非在線かを検知する。
【0012】
なお、列車在線検知装置1005a、1005b、1005c、・・・としては、例えば、軌道回路と呼ばれる電磁リレー回路を用いる方法がある。列車在線検知装置1005a、1005b、1005c、・・・から得られる列車在線情報は、中央指令所装置1003にある在線情報収集装置1006に収集される。
【0013】
中央指令所装置1003は、線区内を走行する複数の列車1001と通信し、情報の受信を行う地上無線装置1002をもつ。地上情報制御装置1023は、地上無線装置1002で受信した各列車からの列車現在走行状態情報1040を、軌道区間進入・進出予測装置1050を介してデータ記憶装置1021に最新列車現在走行状態記録データ1094として記憶する。
【0014】
図2は、列車現在走行状態情報1040の一例である。列車番号2001は、この情報を発信した列車1001を特定するための番号である。現在時刻2002、現在速度2003、現在位置2004は、列車1001が車上計時装置1030、速度検知装置1032、位置計測装置1031で取得した値である。
【0015】
予測手段としての軌道区間進入・進出予測装置1050は、記憶部としてのデータ記憶装置1021に記憶された 路線関連情報としての列車のダイヤグラム(以下、ダイヤと略す)1091、車両性能データ1092、及び路線データ1093と、最新列車現在走行状態記録データ1094を用いて列車走行予測を実施し、列車走行予測結果として各列車の軌道区間進入予測時刻情報1054、軌道区間進出予測時刻情報1053を計算する。これらの計算結果は、線区内列車予測時刻記憶装置1052に記録される。
【0016】
ここで、車両性能データ1092は列車の加速性能や減速性能等の車両性能の値を記録したものであり、車両性能データ1092は路線の制限速度や線路勾配による抵抗値、カーブでの曲率による抵抗値、トンネル区間・トンネル外区間での走行抵抗値等を記録したものである。また、最新列車現在走行状態記録データ1094は各列車から受信した列車現在走行状態情報1040を記録した最新のものである。
【0017】
また、列車走行予測とは、複数の駅が設けられた線区を列車のダイヤに基づく進路設定と信号現示に従って複数の列車が運行される鉄道で、各列車の最新の位置、速度および時刻により更新される運行実績から将来の上記各列車の運行を予測する列車運行予測であり、公知例としては、例えば特許第3359440号がある。
【0018】
線区内列車予測時刻記憶装置1052では、入力された各前方の軌道区間進入予測時刻情報1054と現在または前方の軌道区間進出時刻情報1053について、同一の列車番号の情報が記録済みの場合はこれを、新たな各前方の軌道区間進入予測時刻情報1053と現在または前方の軌道区間進出時刻情報1054で更新し、同一の列車番号の情報がない場合には、新たに追加する。
【0019】
図3に、軌道区間進入予測時刻と軌道区間進出時刻の説明図を示す。図3(a)が、列車現在走行状態情報1040での、現在時刻における列車1001の現在列車位置(軌道区間A1060a)である。次に、図3(b)は、列車1001が前方に走行し、前方の軌道区間B1060bに先頭部が進入した状態であり、この時刻を予測したものが、前方の軌道区間B1060bへの軌道区間進入予測時刻である。
【0020】
続いて、図3(c)は、列車1001が更に前方に走行し、列車後尾部が現在時刻における在線軌道区間(現在軌道区間A1060a)から完全に進出した状態であり、この時刻を予測したものが、現在軌道区間A1060aからの軌道区間進出予測時刻である。更に、図3(d)、図3(e)に示すように、前方の軌道区間C1060cへの軌道区間進入予測時刻や前方の軌道区間B1060bからの軌道区間進出時刻も得ることができる。
【0021】
図4に、本実施の形態1における軌道区間進入予測時刻情報1054と軌道区間進出時刻情報1053の一例を示す。列車番号4001は、上記記載と同様のものである。進入・進出フラグ4002には、軌道区間進入予測時刻情報1054の場合は進入フラグ、軌道区間進出時刻情報1053の場合は進出フラグが設定される。
【0022】
後方軌道区間番号4003は、軌道区間進入予測時刻情報1054の場合は列車後尾在線中の軌道区間を特定するための番号であり、軌道区間進出時刻情報1053の場合は列車が進出する軌道区間を特定するための番号である。
【0023】
前方軌道区間番号4004は、軌道区間進入予測時刻情報の場合1054は、列車が進入する軌道区間を特定するための番号であり、軌道区間進出時刻情報1053の場合は列車先頭在線中である軌道区間を特定するための番号である。
【0024】
予測時刻4005は、軌道区間進入・進出予測装置1050により列車走行予測結果として算出された軌道区間進入予測時刻と軌道区間進出時刻である。監視完了フラグ4006は、警報発生装置1051が、該当予測時刻に基づく監視が完了した場合に設定する。
【0025】
本実施の形態1において、無線通信の状況が良好な区間においては、軌道区間進入予測時刻情報1054と軌道区間進出時刻情報1053としては、図3(b)に示した前方の軌道区間B1060bへの軌道区間進入予測時刻や図3(c)に示した現在の軌道区間A1060aからの軌道区間進出時刻があればよい。
【0026】
一方、トンネル区間や、山間部のように無線通信ができないまたは困難な区間においては、その区間手前から区間を出るまでの軌道区間の軌道区間進入予測時刻情報1054や軌道区間進出予測時刻情報1053を作成する。
【0027】
例えば、図5に示すように、軌道区間A1060aから軌道区間E1060eへ向かって列車が走行し、軌道区間B1060bから軌道区間D1060dまでが無線通信が不可能(無線通信不能領域Y)である場合には、無線通信が可能な軌道区間A1060aの領域(無線通信可能領域X)で受信した列車現在走行状態情報1040を用いて、無線通信が不可能な軌道区間D1060dまでの軌道区間進入予測時刻情報1054や軌道区間進出予測時刻情報1053を作成する。
【0028】
検知手段及び警報手段としての警報発生装置1051は、各列車の軌道区間進入予測時刻情報1054、軌道区間進出予測時刻情報1053、及び計時装置1095から入力される現在時刻に基づいて、在線情報収集装置1006を介して列車在線検知装置1005a、1005b、1005c、・・・により、軌道区間A1060a、軌道区間B1060b、軌道区間C1060c、・・・での列車在線状態を監視する。
【0029】
軌道区間進出予測時刻から所定時分経過しても該当軌道区間が非在線とならない場合、または軌道区間進入予測時刻から所定時分経過しても該当軌道区間が在線とならない場合には、警報発生装置1051は中央指令所装置1003から外部へ警報情報を出力し、司令員等に通報する。
【0030】
次に、図6乃至図8のフローチャートに従い、本実施の形態1における列車事故検知システムの動作について説明する。図6は、本実施の形態1の列車事故検知システムにおける軌道区間進入・進出予測装置1050での処理の一例を示すフローチャートである。
【0031】
まず、中央指令所装置1003において、地上無線装置1002により列車1001からの列車現在走行情報1040が受信され、軌道区間進入・進出予測装置1050は、地上情報制御装置1023を介して列車現在走行状態情報1040の入力を受け付ける(S6001)。
【0032】
続いて、軌道区間進入・進出予測装置1050は、今回入力した列車現在走行状態情報1040と、以前に入力済みの列車現在走行状態情報(最新列車現在走行記録データ1094)を比較し、最新化処理を行う(S6002、最新化処理については後で詳述する)。
【0033】
次いで、軌道区間進入・進出予測装置1050は、最新化処理により最新列車現在走行状態記録データ1094に変更が生じた場合(S6003)、列車走行予測を実施する(S6004)。続いて、軌道区間進入・進出予測装置1050は、上記列車走行予測結果から、各列車1001の軌道区間進入予測時刻情報1054と軌道区間進出時刻情報1053を線区内列車予測時刻記憶装置1052に出力する(S6005)。
【0034】
図7は、本実施の形態1の列車事故検知システムにおける軌道区間進入・進出予測装置1050の最新化処理の一例を示す。最新化処理では、軌道区間進入・進出予測装置1050は、まず今周期で入力を受け付けた列車現在走行状態情報1040の列車番号2001を確認する(S7001)。
【0035】
続いて、軌道区間進入・進出予測装置1050は、この列車番号2001と最新列車現在走行状態記録データ1094に記録されている列車番号の照合を行う(S7002)。最新列車現在走行状態記録データ1094に該当する列車番号2001がなければ、軌道区間進入・進出予測装置1050は、今周期で入力を受け付けた列車現在走行状態情報1040を最新列車現在走行状態記録データ1094に新たに登録する(S7003)。
【0036】
照合(S7002)により同一の列車番号2001の列車現在走行状態情報1040が既に記録済みの場合、列車番号2001以外の情報が同一か確認し(S7004)、相違がある場合は、入力を受け付けた列車現在走行状態情報1040で最新列車現在走行状態記録データ1094の同一列車番号2001の情報を更新する(S7005)。
【0037】
次いで、今周期で入力を受け付けた全ての列車現在走行状態情報1040に対して上記の処理を行ったかをチェックし(S7006)、全て処理を行っていれば、最新化の処理を終了する(S7007)。そうでない場合は他の情報のチェックを実施する(S7008)。
【0038】
図8は、本実施の形態1の列車事故検知システムにおける警報発生装置1051での処理の一例を示す。まず、警報発生装置1051は、中央指令所装置1003にある計時装置1095から現在時刻を得る(S8001)。
【0039】
続いて、警報発生装置1051は、線区内列車予測時刻記憶装置1052に記録された軌道区間進入予測時刻情報1054と軌道区間進出時刻情報1053を検索し、チェック対象となる列車1001の情報を選択する(S8002)。
【0040】
次いで、警報発生装置1051は、列車1001の情報が監視完了フラグ設定4006済みかチェックする(S8003)。列車1001の情報に監視完了フラグ4006が未設定の場合、警報発生装置1051は、計時装置1095より得た現在時刻が、列車1001の情報に設定された予測時刻以後かチェックする(S8004)。
【0041】
現在時刻が予測時刻以後であり、かつ列車1001の情報に進入フラグ4002が設定されている場合、警報発生装置1051は、在線情報収集装置1006を介して列車在線検知装置1005により、列車1001の前方軌道区間と後方軌道区間がともに在線状態かチェックする(S8005)。
【0042】
ともに在線状態であれば、警報発生装置1051は、予測通り列車1001が図3(b)や図3(d)の状態になったと判断し、監視完了フラグ4006を設定する(S8006)。
【0043】
S8004において、現在時刻が予測時刻以後であり、かつ列車1001の情報の進出フラグが設定されている場合は、警報発生装置1051は、在線情報収集装置1006を介して列車在線検知装置1005により、列車1001の前方軌道区間が在線で、後方軌道区間が非在線状態となっているかチェックする(S8007)。
【0044】
前方軌道区間が在線で、後方軌道区間が非在線状態となっていれば、警報発生装置1051は、予測通り列車が図3(c)や図3(e)の状態になったと判断し、監視完了フラグ4006を設定する(S8006)。
【0045】
監視完了フラグ4006を設定した後、警報発生装置1051は、同一の列車1001の他の情報を検索し監視完了フラグ4006の状態を調べ、同一の列車1001の全ての軌道区間進入予測時刻情報1054と軌道区間進出時刻情報1053が監視完了となっているかチェックする(S8008)。
【0046】
全て監視完了となっている場合は、警報発生装置1051は、線区内列車予測時刻記憶装置1052に記録された、列車1001の列車番号4001の軌道区間進入予測時刻情報1054と軌道区間進出時刻情報1053を削除する(S8009)。また、最新列車現在走行状態記録データ1094に記録された同一の列車1001の列車番号4001の軌道区間進入予測時刻情報1054と軌道区間進出時刻情報1053も削除する(S8010)。
【0047】
一方、S8005またはS8007でのチェックの結果、警報発生装置1051は、現在時刻が予測時刻を越えていても、列車1001の在線状態が所定の状態になっていないと判断すれば、現在時刻と予測時刻の差が監視所定時間内かチェックする(S8011)。ここで、監視所定時間とは、予測結果の誤差時間を考慮したパラメータである。
【0048】
現在時刻と予測時刻の差が監視所定時間を超えている場合は、警報発生装置1051は、列車1001が最後に列車現在走行状態情報1040を送信してから、何らかの障害が発生したと判断し、中央指令所装置1003から外部へ警報出力を行う(S8012)。
【0049】
次いで、警報発生装置1051は、線区内列車予測時刻記憶装置1052に記録されている全ての軌道区間進入予測時刻情報1054と軌道区間進出時刻情報1053をチェックしたか確認し(S8013)、チェックが完了してない場合は、他の情報のチェックを行い(S8014)、S8002へ戻って処理を繰り返す。全ての情報のチェックが完了している場合には、S8001へ戻って処理を繰り返す。
【0050】
以上のように、本実施の形態1では、中央指令所装置1003は、軌道区間進入・進出予測装置1050により、予め列車から受信した列車現在走行状態情報1040を用いて作成しておいた軌道区間進出予測時刻情報1053と軌道区間進入予測時刻情報1054に基づき、列車1001の所定の軌道区間への進入・進出を監視するようにしたので、事故が発生し列車の無線装置等が故障した場合においても、列車に何らかの異常が発生したことを中央指令所装置で検知することができ、迅速に警報情報を出力することができる。また、列車への事故検知装置の搭載を不要とすることができる。
【0051】
また、山間部やトンネル内等、無線通信が困難または不可能な区間においても、予め無線通信が可能な区間で列車から受信した情報を用いて、列車の無線通信が困難または不可能な区間での列車進入や列車進出を監視することができ、列車の無線通信が困難または不可能な区間で事故が発生した場合においても、列車に何らかの異常が発生したことを中央指令所装置で検知し、警報を出力することができる。
【0052】
実施の形態2.
実施の形態1の列車事故検知システムにおいては、予め作成しておいた軌道区間進出予測時刻情報1053と軌道区間進入予測時刻情報1054に基づき、列車1001を監視する場合について示した。実施の形態2では、さらに列車状態の確認信号により監視する場合について示す。
【0053】
図9は、本発明に係る実施の形態2における列車事故検知システムの構成を示す模式図である。図9において、列車9001は、中央指令所装置9003から受信した列車状態の確認信号9041を処理し、列車状態の確認信号9041に応答する車上情報制御装置9020を有している。
【0054】
また、列車9001は、列車9001に障害が発生していないことを監視する列車状態監視装置9033を有している。ここで、列車状態監視装置9033としては、例えば特許文献1の事故検知装置を用いてもよい。あるいは、列車9001の主回路電源状態の計測装置を用いてもよい。あるいは、乗務員による非常ボタンの出力を用いてもよい。あるいは他に事故や障害発生を検知する装置があればこれを用いてもよい。あるいはこれらを組み合わせた装置でもよい。
【0055】
中央指令所装置9003の地上情報制御装置9023は、警報発生装置9051からの列車状態確認信号9041を列車9001へ送信し、列車9001からの応答情報9042を警報発生装置へ入力する。
【0056】
警報発生装置9051は、実施の形態1で監視所定時間をチェックする代わりに、列車9001への列車状態確認信号9041を作成し、地上情報制御装置9023に入力する。地上情報制御装置9023は、列車状態確認信号9041を地上無線装置1002と車上無線装置1004を介して、車上情報制御装置9020に送信する。
【0057】
車上情報制御装置9020は、列車状態監視装置9033により、列車9001に障害がないことを確認し、問題がなければ「良好」、問題があれば「不良」の応答情報9042を、車上無線装置1004と地上無線装置1002を介して地上情報制御装置9023へ応答する。
【0058】
地上情報制御装置9023は、列車9001からの応答情報9042を警報発生装置9051に入力する。応答情報9042を入力された警報発生装置9051は、応答情報9042に基づいて警報情報を出力するか否かを決める。また、警報発生装置9051は、所定時分経過しても列車9001から応答を受信しなかった場合も、警戒情報を出力する。
【0059】
図10に、本実施の形態2における軌道区間進入予測時刻情報9054と軌道区間進出時刻情報9053の一例を示す。図10に示すように、軌道区間進出予測時刻情報9053と軌道区間進入予測時刻情報9054には、確認信号送信済フラグ10007が追加される。これは、警報発生装置9051が列車状態確認信号9041を作成し、地上情報制御装置9023に入力した時に設定される。
【0060】
その他の構成に関しては、実施の形態1と同様であり、相当部分には図1と同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
次に、図11のフローチャートに従い、本実施の形態2における列車事故検知システムの動作について説明する。まず、実施の形態1と同様に、図11は、本実施の形態2の列車事故検知システムにおける警報発生装置9051での処理の一例を示す。
【0062】
S8005およびS8007(図8参照)で「NO」となった場合に、警報発生装置9051は、確認信号送信済フラグ10007が設定済みかチェックする(S11001)。確認信号送信済フラグ10007が設定済みの場合、列車9001からの応答情報9042を受信しているかをチェックする(S11002)。
【0063】
設定済みでない場合は、列車9001への列車状態確認信号9041を作成し、地上情報制御装置9020を介して、列車9001へ送信する(S11003)。列車状態確認信号9041を送信後、警報発生装置9051は、確認信号送信済フラグを設定し(S11004)、列車9001からの応答情報9042を受信しているかをチェックする(S11002)。列車9001からの応答情報9042を受信済みの場合、応答結果の内容が「良好」側かをチェックする(S11005)。
【0064】
ここで、図12に列車9001からの応答情報9042の一例を示す。応答情報9042は列車9001が作成するものであり、良好フラグ12002は、列車9001に問題ないことを検知した場合に設定される。不良要因12003は、良好を検知しなかった場合の不良要因であり、これは列車9001に搭載した列車状態監視装置9033による監視項目により、その内容が決まる。
【0065】
S11005で列車9001からの応答情報9042の応答結果が良好側である場合、警報出力は不要であり、S8006(図8)へ戻る。応答結果が良好側でない場合は、警報発生装置9051は、列車9001に何らかの障害が発生していると判断し、中央指令所装置9003から外部への警報出力を行う(S11007)。なお、警報出力を行う際、列車9001からの応答情報9042の不良要因を共に出力し、障害の程度を詳細に示すこともできる。
【0066】
S11002で、列車9001からの応答情報9042を未受信の場合、警報発生装置9051は、予測時刻と現在時刻の差が監視所定時間内かチェックする(S11006)。監視所定時間を超えている場合は、何らかの障害により、列車9001が応答できないと判断し、中央指令所装置9003から外部への警報出力を行う(S11007)。監視所定時間以内であれば、S8013(図8)へ戻る。
【0067】
以上のように、本実施の形態2では、中央指令所装置9003は、列車9001への列車状態確認信号9041に対する列車9001からの応答情報9042に基づき、直接、列車9001から不良情報を得られるようにしたので、事故が発生し列車の無線装置等が故障した場合においては、列車状態の確認信号への応答がないことから、中央指令所装置は、列車事故を検知することができる。
【0068】
また、事故が発生し車上無線装置が故障していない場合においては、監視時間を待つことなく、車上制御装置からの「不良」応答情報より直ちに列車事故を検知することができる。
【0069】
さらに、一旦列車に列車状態の確認信号を送信し、列車からの「良好」応答情報を受信することにより、列車に障害がないのに誤って警報情報を出力することを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態1の構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態1の列車現在走行状態情報の一例を示す図である。
【図3】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態1の軌道区間進入予測時刻と軌道区間進出時刻を説明する図である。
【図4】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態1の軌道区間進入予測時刻情報と軌道区間進出時刻情報の一例を示す図である。
【図5】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態1の無線通信が不可能である場合の説明をする図である。
【図6】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態1の軌道区間進入・進出予測装置での処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態1の軌道区間進入・進出予測装置での最新化処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態1の警報発生装置での処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態2の構成を示す模式図である。
【図10】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態2の軌道区間進入予測時刻情報と軌道区間進出時刻情報の一例を示す図である。
【図11】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態2の警報発生装置での処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る列車事故検知システムの実施の形態2の列車からの応答情報の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1001、9001 列車
1002 地上無線装置
1021 データ記憶装置
1040 列車現在走行状態情報
1050 軌道区間進入・進出予測装置
1051、9051 警報発生装置
1053、9053 軌道区間進出予測時刻情報
1054、9054 軌道区間進入予測時刻情報
1060 軌道
1060a 軌道区間A、1060b 軌道区間B、1060c 軌道区間C、・・・
1091 列車ダイヤ
1092 車両性能データ
1093 路線データ
1094 最新列車現在走行状態記録データ
9041 列車状態確認信号
9042 列車からの応答情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車走行情報を受信する無線部と、
予め入力される路線関連情報及び前記無線部で受信する前記列車走行情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記路線関連情報及び前記列車走行情報に基づいて、前記列車が走行する軌道の各区間での進入及び進出する時刻を予測する予測手段と、
この予測手段により予測された前記軌道の各区間における進入及び進出する時刻に応じて、前記軌道の所定の区間における前記列車の進入又は進出を検知する検知手段とを備える列車事故検知システム。
【請求項2】
警報手段をさらに備え、予測された軌道の各区間における進入及び進出する時刻から所定時間を越えても検知手段が列車の進入又は進出を検知しない場合には警報を出力することを特徴とする請求項1に記載の列車事故検知システム。
【請求項3】
警報手段をさらに備え、予測された軌道の各区間における進入及び進出する時刻から所定時間を越えても検知手段が列車の進入又は進出を検知しない場合には、前記警報手段が無線部を介して前記列車に確認信号を送信し、前記確認信号に対する応答信号として前記列車から異常を知らせる通知を受けたとき、又は所定時間を経過しても前記列車からの前記応答信号がないときに警報を出力することを特徴とする請求項1に記載の列車事故検知システム。
【請求項4】
路線関連情報は、列車のダイヤグラム、車両性能、及び路線の情報を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の列車事故検知システム。
【請求項5】
列車走行情報は、列車の現在時刻、現在速度、及び現在位置の情報を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の列車事故検知システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−126386(P2009−126386A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304278(P2007−304278)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】