説明

列車制御システムの地上装置

【課題】同一の路線(領域)にそれぞれ異なる方式の列車制御システムの車上装置を搭載した列車が走行する場合であっても、各列車の位置を把握して各列車に対して列車制御信号を送信することのできる地上装置を提供する。
【解決手段】
地上装置1は、ループコイル2〜2を介してATC/TD車上装置が搭載された列車から列車検知信号(TD信号)を入力すると共に沿線無線機6〜6を介してCBTC車上装置が搭載された列車から列車位置信号を入力する。地上装置1は、入力された列車検知信号及び列車位置信号に基づいて走行路Rを走行している各列車の位置を把握し、把握された各列車の位置に基づいて各列車の制御情報を生成してATC信号及びCBTC信号に変換する。ATC信号は情報送信部4を介してループコイル2〜2に送出され、CBTC信号は沿線無線機6〜6を介して送出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車制御システムに関し、特に、列車に搭載された車上装置に当該列車の速度等を制御するための列車制御情報を送信する地上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
列車制御システムは、列車に搭載された車上装置が地上装置から受信した列車制御信号に基づいて当該列車の速度等を制御することにより、列車の安全な走行を確保している。このような列車制御システムとして、従来から様々な方式のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−36803号公報
【特許文献2】特開2008−162548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、一つの路線(領域)には一つの列車制御システムが適用されており、それぞれ異なる方式の列車制御システムの車上装置を搭載した列車が同一路線(領域)内の走行路を走行することはできなかった。これは、列車制御システムの方式等によって列車の位置を検知するための構成や列車位置情報の種類が異なるため、方式の異なる列車制御システム間で列車の位置情報を共有することができず、また、車上装置は同一方式の列車制御システムの地上装置からしか列車制御信号を受信することができないため、路線(領域)内における安全な走行を確保できないからである。
【0005】
ところで、鉄道網が発達してくると、路線の一部又は特定の領域について、それぞれ異なる方式の列車制御システムの車上装置を搭載した列車の乗り入れを許容する必要性が生じる場合がある。しかし、従来技術ではこのような事態に対応することが困難である。
【0006】
また、既存のシステムから新たなシステムへと変更する場合、その移行時においては既存のシステムによる営業運転等の実施と新たなシステムの調整等とを両立させる必要がある。このため、システム変更の際には、新たなシステムの地上装置を設置した上で、既存のシステムの車上装置が搭載された列車に新たなシステムの車上装置を追加し、新たなシステムの調整等を行った後に既存のシステムの車上装置を撤去しなければならない。すなわち、車両の改造を少なくとも2回行う必要があり、システム変更時に多くの手間がかかっていた。
【0007】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであり、同一の路線(領域)に、それぞれ異なる方式の列車制御システムの車上装置を搭載した列車が走行する場合であっても、当該路線(領域)内における各列車の位置を把握し、各列車に対して列車制御信号を送信することのできる地上装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面による地上装置は、列車に搭載された車上装置に当該列車の列車制御信号を送信する。この地上装置は、互いに種類の異なる第1列車位置情報と第2列車位置情報を入力可能な入力部と、入力された前記第1列車位置情報及び前記第2列車位置情報に基づいて走行路を走行する各列車の位置を把握し、把握された前記各列車の位置に基づいて前記各列車の制御情報を生成し、生成された前記制御情報を互いに種類の異なる第1列車制御信号及び第2列車制御信号に変換する処理部と、前記第1列車制御信号及び前記第2列車制御信号を送出する送出部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記地上装置は、互いに種類の異なる第1列車位置情報と第2列車位置情報を入力して特定領域内を走行する各列車の位置を把握し、把握された前記各列車の位置に基づいて前記各列車の制御情報を生成して互いに種類の異なる第1列車制御信号及び第2列車制御信号に変換して送出する。これにより、互いに異なる列車制御システムの車上装置を搭載した列車が前記特定領域内を安全に走行することを可能とする。
【0010】
また、列車制御システムを変更する際に上記地上装置を用いることにより、車両の改造を行う必要がなく又は改造回数が少なくなって、従来に比べてシステム変更時の手間が大幅に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態による地上装置の一例を示す図である。
【図2】上記実施形態による地上装置が適用された走行路を走行する列車及びその車上装置の構成例を示す図である。
【図3】上記実施形態による地上装置が適用された走行路を走行する他の列車及びその車上装置の構成例を示す図である。
【図4】上記実施形態による地上装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】上記制御部によって実行される処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明の概要を説明する。
本発明は、列車制御システムの新たな地上装置を提供する。本発明による地上装置は、互いに異なる方式及び/又はそれぞれ異なる種類の信号を用いる列車制御システムの車上装置を搭載した列車が同一の路線又は領域を安全に走行することを可能にする。
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態による地上装置の一例を示している。この地上装置1は、固定閉塞方式による列車制御を実施するATC/TDシステムの車上装置(以下「ATC/TD車上装置」という)が搭載された列車の走行と、無線を利用した移動閉塞方式による列車制御を実施するCBTCシステムの車上装置(以下「CBTC車上装置」という)が搭載された列車の走行と、を許容する走行路Rに適用される。
【0014】
図1に示すように、地上装置1は、複数のループコイル2〜2と、各ループコイルに接続された列車検知部3及び情報送信部4と、複数の地上子5と、複数の沿線無線機6〜6と、制御部7と、を含む。
【0015】
ループコイル2〜2は、走行路Rを複数の区分した固定区間B1〜Bmのそれぞれに対応するように、走行路Rに沿って設置されている。なお、ここでは、ループコイルを用いているが、ループコイルに代えて軌道回路としてもよい。
【0016】
各列車検知部3は、対応するループコイルに走行路Rを走行する列車から送出された列車検知信号(TD信号)に基づいて対応する固定区間に列車が在線しているか否かを検知する。各列車検知部3の検知結果、すなわち、各固定区間における在線の有無は、制御部7に出力される。
なお、ループコイルに代えて軌道回路を用いた場合には、例えば、列車検知用の信号電流を軌道回路に送信する送信部と前記信号電流を受信する受信部とで列車検知部3を構成し、前記信号電流に基づいて列車の在線を検知する。
【0017】
各情報送信部4は、制御部7によって制御され、列車が停止すべき区間(固定区間B1〜Bnのいずれか)を示す停止区間情報を含む列車制御信号(以下単に「ATC信号」という)を対応するループコイルに送出する。なお、前記停止区間情報及び前記ATC信号については後述する。
【0018】
各地上子5は、走行路Rに沿って、隣り合う前記固定区間(ループコイル)の境界近傍に設置されている。地上子5は、例えばトランスポンダで構成され、走行路Rを走行する列車の車上子と電磁結合して信号の送受信を行う。本実施形態において、地上子5は、走行路Rにおける位置を示す位置情報を含む信号(以下単に「位置信号」という)を列車の車上子に送出する。
【0019】
各沿線無線機6〜6は、走行路Rに沿って所定の間隔をあけて設置されている。地上子5と同様に、隣り合う前記固定区間(ループコイル)の境界近傍に各沿線無線機6〜6を設置してもよい。各沿線無線機6〜6は、アンテナを有し、走行路Rを走行する列車の車上無線機との間で無線信号の送受信を行う。各沿線無線機6〜6は、列車の車上無線機から当該列車の位置を示す列車位置信号(無線信号)を受信し、受信された列車位置信号を制御部7に出力する。また、各沿線無線機6〜6は、制御部7によって制御され、列車が走行できる停止限界情報を含む列車制御信号(以下単に「CBTC信号」という)を車上無線機に送出する。前記停止限界情報は、列車が停止すべき停止位置を示し、例えば先行列車との間に安全な距離(間隔)を確保できる位置を含む。この安全な距離は、走行路Rの状態などに応じて任意に設定できる。なお、前記停止限界情報及び前記CBTC信号については後述する。
【0020】
各沿線無線機6〜6は、隣り合う沿線無線機同士で無線通信を行うことによって、情報を中継しながら伝達することができる。また、沿線無線機の間隔は、互いの信号送信範囲が重複するように設定すればよいが、好ましくは、二つ先の沿線無線機まで信号を送信できるような間隔で配置する。
【0021】
制御部7は、各列車検知部3の検知結果及び各沿線無線機6〜6によって受信された列車位置信号を入力し、入力された情報に基づいて走行路Rを走行している各列車の位置を把握する。そして、制御部7は、把握された各列車の位置に基づいて各列車の制御情報を生成し、生成された制御情報を前記ATC信号に変換して各情報送信部4に出力すると共に生成された制御情報を前記CBTC信号に変換して各沿線無線機6〜6に出力する。なお、制御部7が実行する処理の詳細についは後述する(図4参照)。
【0022】
ここで、走行路Rを走行する列車について説明する。
図2、3は、地上装置1が適用された走行路Rを走行する列車及びその車上装置の構成例を示している。図2はATC/TD車上装置が搭載された列車10を示し、図3はCBTC車上装置が搭載された列車20を示している。
【0023】
図2に示すように、列車10には、ATC/TD車上装置11が搭載されている。このATC/TD車上装置11は、ATC/TDアンテナ12a,12bと、車上子13と、ATC制御部14と、を含む。
【0024】
ATC/TDアンテナ12a,12bは、列車10の前部及び後部の下部に設けられている。ATC/TDアンテナ12a,12bは、地上側のループコイル2〜2と電磁結合して当該ループコイルから前記ATC信号を受信すると共に、例えば列車先頭信号及び列車後尾信号を前記TD信号として当該ループコイルに送出する。ここで、前記ATC信号の受信は、通常、列車10の進行方向の前側に位置するATC/TDアンテナによって行われる。
車上子13は、列車10の下部に設けられており、各地上子5と電磁結合して当該地上子5から前記位置信号を受信する。
【0025】
ATC制御部14には、前記ATC信号及び前記位置信号が入力されると共に、列車10の車輪に取り付けられた速度発電器(速度検出器)15から列車10の速度情報が入力される。ATC制御部14は、前記位置信号に含まれた位置情報及び前記速度情報に基づいて列車10の位置及び速度を把握する。そして、ATC制御部14は、把握された列車10の位置及び速度、前記ATC信号に含まれた停止区間情報、及び列車10のブレーキ性能などに基づいて速度照査パターンを生成し、生成された速度照査パターンに基づいてブレーキ制御を行って列車10の速度を制御する。
【0026】
また、図3に示すように、列車20には、CBTC車上装置21が搭載されている。このCBTC車上装置21は、車上無線機22a,22bと、車上子13と、CBTC制御部23と、を含む。
【0027】
車上無線機22a,22bは、列車20の上部に設けられたアンテナを有しており、各沿線無線機6〜6から前記CBTC信号を受信する。また、車上無線機22a,22bは、CBTC制御部23によって把握された列車20の位置を前記列車位置信号として沿線無線機6〜6に向けて送出する。ここで、列車20の前部に設置された車上無線機22aと列車20の後部に設置された車上無線機22bは、それぞれ異なる沿線無線機との間で無線信号の送受信が可能である。
車上子13は、列車20の下部に設けられており、各地上子5と電磁結合して当該地上子5から前記位置信号を受信する。
【0028】
CBTC制御部23には、前記CBTC信号及び前記位置信号が入力されると共に、列車20の車輪に取り付けられた速度発電器(速度検出器)15から列車20の速度情報が入力される。CBTC制御部23は、前記位置信号に含まれた位置情報及び前記速度情報に基づいて列車20の位置及び速度を把握する。なお、列車20の位置については、車上無線機22a,22bと各沿線無線機6〜6との間の信号伝播時間等に基づいて算出してもよい。そして、CBTC制御部23は、把握された列車20の位置を車上無線機22a,22bに出力する一方、把握された列車20の位置及び速度、前記CBTC信号に含まれた停止限界情報、及び列車20のブレーキ性能などに基づいて速度照査パターンを生成し、生成された速度照査パターンに基づいてブレーキ制御を行って列車20の速度を制御する。
【0029】
次に、地上装置1の制御部7の構成及び制御部7が実行する処理について説明する。
図4は、本実施形態による地上装置1の制御部7の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、地上装置1の制御部7は、在線区間検出部71と、制御情報生成部72と、情報・信号変換部73と、を含む。
【0030】
在線区間検出部71は、各列車検知部3の検知結果及び各沿線無線機6〜6によって受信された列車位置信号に基づいて、走行路Rにおける列車の在線区間を検出する。この在線区間検出部71によって検出される在線区間は、列車(さらに言えば、列車に搭載された車上装置)に応じて、固定区間B1〜Bmのいずれか又は固定区間よりも小さい区間である。
【0031】
例えば、図5(a)に示すように、ATC/TD車上装置を搭載した列車10が固定区間B3に存在する場合には、ループコイル2に接続された列車検知部3によって固定区間B3に列車10が在線することが検知され、その検知結果が制御部7に出力される。この場合、在線区間検出部71は、固定区間B3の全体を在線区間として検出する。
【0032】
一方、図5(b)に示すように、CBTC車上装置を搭載した列車20が固定区間B3に存在する場合には、沿線無線機6及び/又は沿線無線機6によって当該列車20の位置、すなわち、固定区間B3における具体的な列車20の位置を示す列車位置信号が受信され、この列車位置信号が制御部7に出力される。この場合、在線区間検出部71は、固定区間B3の全体ではなく、例えば、列車20の位置、列車20の長さLt、及び予め設定された所定長さ(余裕距離)Lsに基づいて決定される区間S(<固定区間B3)を在線区間として検出する。前記所定長さ(余裕距離)Lsについては、列車20の後方側のみに付加するようにしてもよい。この区間Sは、固定区間B1〜Bmとは異なり、列車20の位置に応じて移動する。
なお、ここでは、在線区間検出部61が車上無線機から送出された列車位置信号に基づいて区間Sを決定しているが、車上無線機が、前記列車位置信号に代えて又は加えて前記区間Sを示す情報を無線送信するようにしてもよい。
【0033】
制御情報生成部72は、在線区間検出部によって検出された在線区間に基づいて二つの列車制御情報を生成する。一つは前記停止区間情報であり、もう一つは前記停止限界情報である。例えば、固定区間B3の全体が列車10の在線区間として検出された場合には(図5(a)参照)、制御情報生成部72は、列車10の後続列車に対する列車制御情報として、列車の進行方向で見て、固定区間B3の後方に位置にする固定区間B2を前記後続列車の停止区間とする前記停止区間情報を生成すると共に、固定区間B3の後端から安全な距離だけ後方の位置を前記後続列車の停止限界(停止位置)とする前記停止限界情報を生成する。
なお、列車10が固定区間B2と固定区間B3の境界を跨いで存在する場合には、制御情報生成部72は、例えば、固定区間B2の後方に位置にする固定区間B1を前記後続列車の停止区間とする前記停止区間情報を生成すると共に、固定区間B2の後端から安全距離だけ後方の位置を前記後続列車の停止限界(停止位置)とする前記停止限界情報を生成する。
【0034】
一方、固定区間B3よりも小さい区間Sが列車20の在線区間として検出された場合には(図5(b)参照)、制御情報生成部72は、列車20の後続列車に対する列車制御情報として、列車の進行方向で見て、区間Sを含む固定区間B3の後方に位置する固定区間B2を前記後続列車の停止区間とする前記停止区間情報を生成すると共に、区間Sの後端Srから安全な距離だけ後方の位置を前記後続列車の停止限界(停止位置)とする前記停止限界情報を生成する。
なお、列車20が固定区間B2と固定区間B3の境界を跨いで存在する場合には、区間Sの後端Srが固定区間B2に位置することになる。この場合には、固定区間B2の後方に位置にする固定区間B1を前記後続列車の停止区間とする前記停止区間情報を生成すると共に、区間Sの後端Srから安全な距離だけ後方の位置を前記後続列車の停止限界(停止位置)とする前記停止限界情報を生成する。
【0035】
情報・信号変換部73は、制御情報生成部72によって生成された列車制御情報、すなわち、前記停止区間情報及び前記停止限界情報をそれぞれ異なる種類の信号に変換する。具体的には、前記停止区間情報については、ループコイル2〜2を介して列車側のATC/TDアンテナ12a、12bが受信できる形態の信号に変換する。一方、前記停止限界情報については、沿線無線機6〜6と車上無線機22a,22bの間で送受信が可能な無線信号に変換する。これらの信号形態は公知であるので説明は省略する。
【0036】
そして、情報・信号変換部73は、前記停止区間情報を変換して得た信号を前記ATC信号とすると共に列車10又は列車20の後続列車の列車制御信号として所定のループコイルに接続された情報送信部に出力し、前記停止限界情報を変換して得た信号を前記CBTC信号とすると共に列車10又は列車20の後続列車の列車制御信号として所定の沿線無線機に出力する。
【0037】
これにより、走行路Rを走行する列車が、ATC/TD車上装置が搭載された列車10及びCBTC車上装置が搭載された列車20のいずれであっても、当該列車のための列車制御信号を当該列車の車上装置が受信して適切な速度制御等が実施される。
【0038】
なお、ここでは、ATC/TD車上装置を搭載した列車10又はCBTC車上装置を搭載した列車20が固定区間B3内に存在する場合及び固定区間B2と固定区間B3の境界を跨いて存在する場合について説明したが、列車10又は列車20が他の固定区間に存在する場合や他の二つの固定区間の境界を跨いで位置する場合についても同様である。
【0039】
本実施形態による地上装置1によると、走行路RにATC/TD車上装置を搭載した列車10とCBTC車上装置を搭載した列車20とが混在する場合であっても、各列車の走行路Rにおける位置を把握することができる。そして、地上装置1は、把握された各列車の位置に基づいて各列車の制御情報を作成し、作成された制御情報をATC/TDアンテナ及び車上無線機がそれぞれ受信できる形態の信号に変換して送出する。これにより、ATC/TD車上装置を搭載した列車10及びCBTC車上装置を搭載した列車20のいずれもが走行路Rを安全に走行することができる。
【0040】
また、例えばATC/TDシステムを採用している路線(領域)について、列車制御システムをCBTCシステムに変更する場合に、本実施形態による地上装置を当該路線(領域)の走行路に適用すれば、ATC/TD車上装置を搭載した列車による営業運転と、CBTC車上装置を搭載した列車によるCBTCシステムの調整等とを両立できる。このため、従来のように車両の改造を二回も行う必要がなく、システム変更時の手間が大幅に低減する。
【0041】
なお、以上説明した実施形態において、前記列車検知信号(TD信号)及び/又は列車検知部3の検知結果と前記列車位置信号が本発明の「列車位置情報」に相当し、前記停止区間情報及び前記停止限界情報が本発明の「列車の制御情報」に相当し、前記ATC信号及び前記CBTC信号が本発明の「列車制御信号」に相当し、固定区間B1〜Bmが本発明の「検知区間」に相当する。また、制御部6が本発明の「処理部」として機能する。
【0042】
ところで、以上では、ATC/TD車上装置を搭載した列車と、CBTC車上装置を搭載した列車と、が走行する走行路に適用される地上装置について説明した。しかし、本発明はこれに限るものではない。
例えば、第1のCBTCシステムの車上装置(以下「第1CBTC車上装置」という)が搭載された列車と、前記第1のCBTCシステムとは異なる無線(例えば、周波数帯域の異なる無線信号)を用いる第2のCBTCシステムの車上装置(以下「第2CBTC車上装置」という)が搭載された列車とが、同一の領域を走行することを許容したい場合もある。このような場合には、当該領域の走行路に沿って第1のCBTSシステム用の沿線無線機及び第2のCBTCシステム用の沿線無線機をそれぞれ設置し、その上で制御部7が例えば次のような処理を実行すればよい。
【0043】
在線区間検出部71は、第1のCBTCシステム用の各沿線無線機によって受信された列車位置信号に基づいて前記第1CBTC車上装置が搭載された列車の在線区間を検出すると共に、第2のCBTCシステム用の各沿線無線機によって受信された列車位置信号に基づいて走行路における前記第2CBTC車上装置が搭載された列車の在線区間を検出する。この場合に検出される在線区間は、前記区間Sに相当する区間である。
【0044】
制御情報生成部72は、在線区間検出部によって検出された在線区間に基づいて各列車の制御情報を生成する。この場合の制御情報は、在線区間検出部71によって検出された在線区間の後端から安全距離だけ後方の位置を、当該在線区間に位置する列車の後続列車の停止限界(停止位置)とする前記停止限界情報を生成する。
【0045】
情報・信号変換部73は、制御情報生成部72によって生成された列車制御情報、すなわち、前記停止限界情報をそれぞれ種類の異なる二つの無線信号に変換する。一つは、前記第1のCBTCシステムで使用している第1の周波数帯域の無線信号であり、もう一つは、前記第2のCBTCシステムで使用している第2の周波数帯域の無線信号である。
【0046】
そして、情報・信号変換部73は、前記在線区間に位置する列車の後続列車の列車制御信号として、前記第1の周波数帯域の無線信号を前記第1のCBTCシステム用の所定の沿線無線機に出力し、前記第2の周波数帯域の無線信号を前記第2のCBTCシステム用の所定の沿線無線機に出力する。
【0047】
これにより、走行路を走行する列車が、第1CBTC車上装置が搭載された列車及び第1CBTC車上装置とは異なる無線を用いる第2CBTC車上装置が搭載された列車のいずれであっても、当該列車のための列車制御信号を当該列車の車上装置が受信して適切な速度制御等が実施される。
【0048】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0049】
R…走行路、2〜2…ループコイル、3…列車検知部、4…情報送信部、5…地上子、6〜6…沿線無線機、7…制御部、10…列車、11…ATC/TD車上装置、12a,12b…ATC/TDアンテナ、13…車上子、14…制御部、20…列車、21…CBTC車上装置、22a,22b…車上無線機、71…在線区間検出部、72…制御情報生成部、73…情報・信号変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に搭載された車上装置に当該列車の列車制御信号を送信する地上装置であって、
互いに種類の異なる第1列車位置情報と第2列車位置情報を入力可能な入力部と、
入力された前記第1列車位置情報及び前記第2列車位置情報に基づいて走行路を走行している各列車の位置を把握し、把握された前記各列車の位置に基づいて前記各列車の制御情報を生成し、生成された前記制御情報を互いに種類の異なる第1列車制御信号及び第2列車制御信号に変換する処理部と、
前記第1列車制御信号及び前記第2列車制御信号を送出する送出部と、
を含む、地上装置。
【請求項2】
前記第1列車位置情報は、前記走行路を複数に分割した各検知区間のそれぞれにおける列車の在線を示す情報であり、
前記第2列車位置情報は、前記走行路における列車の位置を示す情報又は前記検知区間よりも小さい区間における列車の在線を示す情報である、請求項1に記載の地上装置。
【請求項3】
前記第1列車位置情報は、前記走行路に付設されたループコイル又は軌道回路を介して検知された情報であり、
前記第2列車位置情報は、前記車上装置から無線送信された情報である、請求項1又は2に記載の地上装置。
【請求項4】
前記第1列車制御信号は、前記検知区間のいずれかを列車が停止すべき停止区間とする前記制御情報を含むと共に前記ループコイル又は前記軌道回路を介して送出される信号であり、
前記第2列車制御信号は、列車が走行できる停止限界を停止位置とする前記制御情報を含むと共に無線信号として送出される信号である、請求項3に記載の地上装置。
【請求項5】
前記第1列車位置情報は、固定閉塞方式による列車制御を行うための情報であり、
前記第2列車位置情報は、移動閉塞方式による列車制御を行うための情報である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の地上装置。
【請求項6】
前記第1列車位置情報及び前記第2列車位置情報は、異なる周波数帯域で前記車上装置から無線送信された情報であり、
前記第1列車制御信号は、前記送出部から前記第1列車位置情報に対応する周波数帯域の無線信号として送出される信号であり、
前記第2列車制御信号は、前記送出部から前記第2列車位置情報に対応する周波数帯域の無線信号として送出される信号である、請求項1に記載の地上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75625(P2013−75625A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217316(P2011−217316)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】