列車検知装置及び列車検知システム
【課題】パルス軌道回路110及び直流軌道回路において、厚い錆や、大量の降灰、黄砂、落葉等がレール10上に堆積した状態でも、列車の検知をより確実に行うバックアップ装置120を付加した列車検知装置100を、現状の軌道回路を極力そのまま使用し、シンプルな構成で、より低コストに実現させる。
【解決手段】バックアップ装置120の電源を、軌道回路の信号伝送用のケーブル34を利用することで新規ケーブルを敷設することなく伝送し、かつ、バックアップ装置120で列車を検知した際に、軌道回路の信号を遮断することで踏切を作動させる。
【解決手段】バックアップ装置120の電源を、軌道回路の信号伝送用のケーブル34を利用することで新規ケーブルを敷設することなく伝送し、かつ、バックアップ装置120で列車を検知した際に、軌道回路の信号を遮断することで踏切を作動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道回路による踏切の列車検知をより確実に行う装置、特に、新規ケーブルを敷設することなしに実現可能な列車検知装置及び列車検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道の踏切において警報機や遮断機等を制御するために、列車の接近を検知する手段として様々な方法が用いられているが、レール間を列車の車軸で短絡することによって列車を検知する方法が、シンプルな構成であり、もっとも信頼性の高い方法であるとして古くから世界各国で広く用いられている。
【0003】
この方法において、レール及び車軸を含めて構成される列車を検知するための回路が軌道回路と呼ばれており、その内、軌道回路の電源として、例えば5ボルトないし7ボルトの直流の定電圧を用いる旧来からの方式は直流軌道回路(方式)と呼ばれている。また、列車本数が少ない閑散線区や海岸沿いの線路では、レール表面に錆が発生し、列車の検知ができなくなる事象が発生するため、その対策として軌道回路の電源として電圧の高い、例えば30ボルトないし100ボルトのパルス電圧を用いて錆などによる絶縁を破壊するパルス軌道回路(方式)も用いられている。
【0004】
しかし、直流軌道回路は勿論、パルス軌道回路においても、さらに厚い錆や、大量の降灰、黄砂、落葉がレール上に堆積した状態では列車の検知に支障が出る恐れがある。そのため、レール間を列車の車軸で短絡することに依存せず非接触で列車との情報の受渡しが可能なATS装置を列車検知装置として利用して列車を検知する方式も導入されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記列車検知装置は、踏切から数百m手前の地点に地上子を設置し、地上子を通過する列車を軌道回路とは別に検出し、踏切において警報機や遮断機等を制御する方法であり、以前から用いられており信頼性も確認されている。
【特許文献1】特開2002−104192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来から警報機や遮断機等に供給される電源は踏切の近傍に設置されており、電源の供給対象を一箇所に集めて配置する必要上、軌道回路に対する電源も同じものを使用するか、同じ場所に設置されていた。
【0007】
しかしながら、上述の列車検知装置を軌道回路のバックアップ装置として新たに追加配備すると、地上子を踏切から数百m程度離れた地点に設置しなければならず、その地点まで電源を供給し、かつ検知した情報を踏切の制御装置(踏切保安装置)側で受け取る必要があり、ケーブルの敷設等、工事の施工が大規模になり工期や費用が掛かりすぎるという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、より確実に列車を検知しする軌道回路のバックアップ装置を、現状の軌道回路を極力そのまま使用し、シンプルな構成で、より低コストに実現させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
踏切手前の列車検知区間で、各々が列車検知を行う軌道回路及びそのバックアップ装置を備える列車検知装置であって、
前記軌道回路は、
一対のレールと、
前記列車検知区間内に渡って設置され、前記列車検知区間における踏切遠方区間端部で前記各レールに接続されたケーブルと、
前記列車検知区間における踏切近傍区間端部に設置され、前記ケーブルを介して前記各レールに電圧を印加する検知信号出力手段と、
前記列車検知区間における踏切近傍区間端部に設置され、前記各レールを通じて通電を検知すると共に前記踏切近傍区間端部に設置された踏切制御手段に対し検知結果を入力する検知信号受信手段と、を備え、
前記バックアップ装置は、
前記列車検知区間における踏切遠方区間端部で列車の通過を検知する列車通過検知手段を備え、
前記バックアップ装置は、前記列車通過検知手段の電源の供給を、前記軌道回路のケーブルの一部を利用して行うことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、バックアップ装置の電源ケーブルを軌道回路のケーブルと併用することで、より確実に列車を検知して踏切無遮断を防止する軌道回路のバックアップ装置を、現状の軌道回路を極力そのまま使用し、シンプルな構成で、より低コストに実現できる
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の列車検知装置であって、
前記軌道回路の前記検知信号出力手段は、パルス電圧を出力し、
前記軌道回路は、前記パルス電圧を変圧するトランスを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、検知信号にパルス電圧を使用し、パルス電圧を変圧するトランスを備えることで、軌道回路のケーブルにバックアップ装置の直流電圧を印加しても軌道回路のトランスよりも先には伝わらないため、軌道回路のケーブルにバックアップ装置の直流電源を重畳することが容易となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の列車検知装置であって、
前記バックアップ装置は、前記列車通過検知手段への電源の供給を前記ケーブルの一部と前記レールとを用いて行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、電源の供給にレールを用いることにより、軌道回路のケーブルにバックアップ装置の直流電源を重畳することが容易となる。また、レールを用いる代わりにアースを用いることも可能ではあるが、レールを用いることによって、周辺の機器が電蝕される等の影響を防ぐことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の列車検知装置であって、
前記軌道回路の前記検知信号出力手段は、直流電圧を出力し、
前記軌道回路は、前記直流電圧を変圧する変圧手段を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、検知信号としての直流電圧をバックアップ装置の電源として利用することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載の列車検知装置であって、
前記列車通過検知手段として、
列車の緊急停止装置として用いられているATS装置を利用することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、列車通過検知手段としてATS装置を利用することで、従来からの装置が利用できるためコスト削減が可能である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか一項に記載の列車検知装置であって、
前記バックアップ装置は、前記軌道回路の列車検知信号としての通電を遮断可能な検知信号遮断手段を備え、
前記列車通過検知手段は、列車を検知した際に前記検知信号遮断手段を動作させて前記検知信号受信手段への列車検知信号を遮断する機能を有することを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、列車通過検知手段で検知した情報を踏切制御手段へ伝送するケーブルを敷設することなく軌道回路にバックアップ装置を付加することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、列車検知システムであって、
二つの踏切の間の区間内に、互いに逆に進行する列車の検知を行う請求項1から6の何れか一項に記載の列車検知装置を二つ備え、
二つの前記列車検知装置は、前記二つの踏切の中間に設けられた一つの列車通過検知手段を共用すると共に、当該列車通過検知手段の列車検知により前記各列車検知装置に対応する踏切制御手段にそれぞれの踏切に対して列車検知時対応の制御を行わせることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、二つの踏切に挟まれた軌道回路を一つのバックアップ装置でバックアップすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、バックアップ装置の電源ケーブルを軌道回路のケーブルと併用することで、厚い錆や、大量の降灰、黄砂、落葉等がレール上に堆積した状態でも、列車の検知をより確実に行うバックアップ装置を付加した列車検知装置を、現状の軌道回路を極力そのまま使用し、シンプルな構成で、より低コストに実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
最初に、図1から図5を用いて、本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置100の構成について説明する。
【0026】
第1の実施の形態に係る列車検知装置100は、図1に示すように、踏切21の手前の列車検知区間Lにおいて、各々が列車検知を行う軌道回路としてのパルス軌道回路110及びバックアップ装置120を備えている。
【0027】
列車検知区間Lとは、図1に示すように、踏切21の手前の所定距離(例えば600m)について設定される区間であって、当該列車検知区間L内に敷設されたレール10上を踏切に向かって列車が進入した時に踏切21を作動させるものである。
なお、列車検知区間Lの一方に踏切21が位置し、以下の説明において、当該踏切21が位置する列車検知区間Lの端部を「踏切近傍区間端部」、踏切21が位置しない方の列車検知区間Lの端部を「踏切遠方区間端部」とする。
【0028】
図2は本実施の形態に係る列車検知装置100からパルス軌道回路110、踏切21及び踏切制御装置22を抽出した構成図である。
【0029】
図2は、一対のレール10と、踏切遠方区間端部側で各レール10に接続されたトランスとしてのパルストランス33と、列車検知区間Lの全長に渡って敷設され、パルストランス33を介して前記各レール10に接続されたケーブル34と、踏切近傍区間端部側に設置され、ケーブル34及びパルストランス33を通して各レール10に対してパルス電圧を印加して検知信号を送信する検知信号出力手段としてのパルス送信機器31と、踏切近傍区間端部側で各レール10にそれぞれの端子が接続され、パルス送信機器31からの検知信号を受信する検知信号受信手段としてのパルス受信機器32と、を備えるパルス軌道回路110と、踏切近傍区間端部側に設置され、パルス受信機器32からの情報に基づき踏切21が備える警報機21aや遮断機21b等を制御する踏切制御手段としての踏切制御装置22と、を図示している。
【0030】
一対のレール10は、図2に示すように、列車検知区間Lの全長に渡って敷設されており、列車検知区間Lの両端からさらに続くレールを含めて「線路」を構成している。レール10は、正確には列車検知区間Lよりも短い複数のレールからなり、列車検知区間Lの範囲内で列車の検知を行うためにそれぞれが電気的に接続され、列車検知区間Lの両端では列車検知区間Lの両端からさらに続くレールとは電気的に絶縁されており、また、左右のレールも電気的に絶縁されている。左右の各レールは、パルストランス33からのパルス電圧の印加により列車検知区間Lの範囲内で通電が行われる。
【0031】
パルス送信機器31は、図2に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、図示しない交流電源に接続されている。また、当該交流電源は踏切21及び踏切制御装置22も共通に用いる電源であり、交流電源の供給対象を踏切21の近傍に集めて配置することで、電線を引くなどの外部からの電源供給を容易としている。パルス送信機器31は、例えば、300ボルト、5Hzのパルス電圧で検知信号を出力する。
【0032】
ケーブル34は、図2に示すように、列車検知区間Lの全長に渡ってレール10に沿って敷設されており、踏切近傍区間端部側ではパルス送信機器31と、踏切遠方区間端部側ではパルストランス33を介して各レール10とを接続する。
【0033】
パルストランス33は、図2に示すように、踏切遠方区間端部側に設置されており、パルス送信機器31が電圧の安定化のため列車検知に要する電圧よりも高電圧で印加する電圧を、列車検知に好適な電圧に調節する。例えば、300ボルトを100ボルトに変圧する。
【0034】
パルス受信機器32は、図2に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、パルス送信機器31から送信された検知信号を、ケーブル34、パルストランス33、レール10を介して受信する。即ち、パルス電圧の印加により一対のレール10の一方と他方とで電位差が生じ、その間に接続されたパルス受信機器32は電流が流れる。その時、パルス受信機器32は、通電状態(レール間で電位差を生じた状態)と非通電状態(レール間で電位差を生じていない状態)とを検出し、その検出信号を踏切制御装置22に出力する。
【0035】
踏切制御装置22は、図2に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、パルス受信機器32により、非通電状態(レール間で電位差を生じていない状態)の検出信号を受信すると、踏切21の警報機21aを鳴らし、遮断機21bが有する遮断竿を下降させる動作制御を行う。
【0036】
上記構成からなるパルス軌道回路110において、列車が列車検知区間L内のレール上に存在しない時は、図3に示すような信号の流れとなる。まず、パルス送信機器31から送信された検知信号は、ケーブル34を通してパルストランス33に到達する。本実施の形態では、パルス送信機器31から送信される検知信号は、300ボルト、5Hzのインパルス状の信号を用いており、また、パルストランス33として変成比3:1の変成器を用いているため、パルストランス33からレール10に送出される検知信号は、100ボルト、5Hzのインパルス信号となっている。そして、パルストランス33から送出された信号は、レール10を通ってパルス受信機器32に受信される。
【0037】
次に、列車がレール上に進入してきた場合、図4に示すように、列車の車輪及び車軸が左右のレール10を電気的に短絡し、パルストランス33から送出された信号はパルス受信機器32で受信することができなくなる。つまり、信号を受信できなくなった時点で、レール10上には列車が存在すると判断でき、踏切制御装置22は警報機21aの鳴動や遮断機21bの遮断竿の降下など所定の動作を行う。
【0038】
しかしこの時、レール上に大量の落葉等が堆積し、車輪とレールの間が絶縁状態になると、列車がレール上に進入したにも拘わらず左右のレールが電気的に短絡しなくなり、パルス受信機器32は検知信号を受信し続けてしまう可能性がある。その場合、踏切制御装置22は踏切21を作動させないままで列車が踏切21を通過してしまうこととなる。そのような事態を回避するために、列車検知装置100は、パルス軌道回路110による列車検知に加えてバックアップ装置120により列車検知を行うように構成されている。
【0039】
バックアップ装置120は、列車に搭載された車上子(図示略)と、図1に示すように、踏切遠方区間端部側でレールの間に設置され、車上子の通過を検知する地上子52と、列車が地上子52の上を通過したときにその情報を受けるATS受信器51と、ATS受信器51の受信情報に基づいてパルス軌道回路110の列車検知信号としての通電を遮断する検知信号遮断手段としての軌道回路開閉スイッチ53と、踏切近傍区間端部側に設置されたバックアップ装置120の電源43と、その電源電圧を昇圧させるため踏切近傍区間端部側に設置されたDC/DCコンバータ41と、踏切遠方区間端部側に設置された前記電源43の電圧を降圧させてATS受信器51に供給するDC/DCコンバータ42とを備える構成となっている。ATS受信器51、地上子52及び車上子は本発明における列車通過検知手段として、機能する。
【0040】
ATS受信器51及び地上子52は、図1に示すように、踏切遠方区間端部側に設置されており、後述の機能により地上子52上を列車が通過したことを検知する。本実施の形態において、ATS受信器51は直流24ボルト電源で動作し、踏切21のある踏切近傍区間端部側には同様の電源43が存在するが、踏切近傍区間端部側からケーブル34とレール10を使って伝送すると電圧が降下する割合が高いため、踏切近傍区間端部側にDC/DCコンバータ41を設置して昇圧し、踏切遠方区間端部側にDC/DCコンバータ42を設置して降圧することで、必要な電圧を確保している。
【0041】
図1に示すように、昇圧を行うDC/DCコンバータ41の二つの出力端子の一方はケーブル34の一方の導線に、もう一方の出力端子はレール10の一方のレールに接続され、同様に、降圧を行うDC/DCコンバータ42の二つの入力端子の一方はケーブル34のDC/DCコンバータ41とは異なる導線に、もう一方の入力端子は同じレール10の一方のレールに接続されている。つまり、踏切近傍区間端部側に設置されたバックアップ装置120の電源43は、ケーブル34の一部と、レール10の一方のレールとを介してATS受信器51に対して電源の供給を行っている。
【0042】
なお、軌道回路110のケーブル34にはパルス電圧も印加されているが、DC/DCコンバータ41とDC/DCコンバータ42の間のケーブル34を流れる電流は直流のため、パルストランス33を介して接続されているパルス軌道回路110には影響を与えない。
【0043】
軌道回路開閉スイッチ53は、図1に示すように、踏切遠方区間端部側で、パルス軌道回路110を構成するパルストランス33とレール10の接続を開閉できるように設置されている。列車が地上子52上を通過したことを検知すると、ATS受信器51はその情報を軌道回路開閉スイッチ53に送り、軌道回路開閉スイッチ53により軌道回路が一定時間遮断される。従って、パルス送信機器31から送信された信号はパルス受信機器32まで到達せず、パルス軌道回路110にとってはレール上に列車が存在する場合と実質的に同じ状態になるため、踏切制御装置22は警報機21aの鳴動や遮断機21bの降下など所定の動作を行う。
【0044】
ATS受信器51、地上子52及び列車に搭載された車上子は、従来から「自動列車停止装置」と呼ばれる列車の緊急停止装置として使用されているもので、通常は信号機の手前にATS受信器及び地上子が設置されている。地上子及び車上子は巻線(コイル)を主要な構成要素として含み、車上子は常時一定の周波数(例えば105kHz)で通電されており、地上子は当該信号機の信号に応じて規格化された周波数(信号が赤なら、例えば123kHz)で通電される。ここでATS装置は、列車が当該地上子の上を通過し、電磁誘導により車上子側が地上子の周波数の影響を受けた時、影響を受けた地上子の周波数に応じて、列車に非常ブレーキをかけるなどの制御を行う。
【0045】
本発明におけるバックアップ装置も上記のATS装置を利用したものであり、車上子は列車に搭載されている既設の装置をそのまま用い、ATS受信器51及び地上子52は、車上子から常時発している周波数を受信するための受信専用の装置を列車通過検知手段として新たに設置する。
【0046】
ここで比較例として、一つの列車検知区間内に軌道回路110とバックアップ装置130を個別に設けた列車検知装置100Aの構成を図5に図示する。なお、この比較例では前述した列車検知装置100と同一の構成については同じ符号を付するものとする。
【0047】
列車検知装置100Aを構成する軌道回路110とバックアップ装置130の各要素について、電源の供給対象を踏切21の周囲に集めて配置させる要請を満たそうとする場合、図5に示すように、ATS受信器51に対する電源の供給は、踏切21付近に設置されている直流24ボルトの電源43から新たに敷設したケーブル131により供給する必要がある。また、地上子52上を列車が通過した場合、その検出信号は、同様に新たに設置したケーブル132により、ATS受信器51から踏切制御装置22へと送られ、警報機21aや遮断機21bなどの制御が行なわれることになる。
【0048】
列車検知区間Lの長さを例えば600mとした場合、上記比較例ではこれと同じ長さの長大なケーブルが二本必要となり、さらに、それらケーブルの設置コストも必要となる。
【0049】
これに対して列車検知装置100では、軌道回路110として既に設置されている既存のケーブル34とレール10とを利用して、バックアップ装置120の電源を供給するため、バックアップ装置120における電源供給用のケーブルの設置コストをほとんど不要とすることが可能となる。さらに、バックアップ装置120では、軌道回路開閉スイッチ53を設け、軌道回路110のパルス受信機器32の検知信号を一定時間遮断することで、当該パルス受信機器32を介して踏切制御装置22に踏切の作動を行わせるため、ATS受信器51からの検出信号を踏切制御装置22に送るためのケーブルも不要とすることが可能となる。
【0050】
以上説明した実施の形態に係る列車検知装置100においては、バックアップ装置120を備えるので、レール10上に大量の落葉等の堆積物が発生した場合などパルス軌道回路が列車の検知不良を生じ得る場合であっても、これを補完してより確実に列車検知を行うことができる。
【0051】
また、以上説明した実施の形態においては、新たに電源ケーブルを敷設することなくパルス軌道回路110にバックアップ装置120を付加することができる。
【0052】
さらに、以上説明した実施の形態においては、ATS受信器51で検知した情報を踏切制御装置22へ伝送するケーブルも敷設することなくパルス軌道回路110にバックアップ装置120を付加することができる。
【0053】
また、以上説明した実施の形態に係るバックアップ装置120においては、列車通過検知手段として、「自動列車停止装置」と呼ばれる列車の緊急停止装置として以前から使用されているATS装置を利用しているため、信頼性も高く、装置も従来のものが利用できるためコスト削減が可能で、また、列車検知が非接触で行えるため、堆積物の影響を受けにくいバックアップ装置を構成することができる。
【0054】
なお、以上説明した実施の形態においては、バックアップ装置120の電源の供給にレールを用いる代わりにアースを用いても良い。ただし、レールを用いることによって、周辺の機器が電蝕される等の影響を防ぐことができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
次に、図6から図10を用いて、本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置200の構成について説明する。なお、本実施の形態に係る列車検知装置200は、第1の実施の形態に係る列車検知装置100の構成を一部変更したものであり、その他の構成については第1の実施の形態と実質的に同一である。このため、変更した構成を中心に説明することとし、第1の実施の形態と重複する構成については同じ符号を付し、説明を省略するものとする。
【0056】
第2の実施の形態に係る列車検知装置200は、図6に示すように、踏切21の手前の列車検知区間Lにおいて、各々が列車検知を行う軌道回路としての直流軌道回路210及びそのバックアップ装置220を備えている。
【0057】
図7は本実施の形態に係る列車検知装置200から直流軌道回路210、踏切21及び踏切制御装置22を抽出した構成図である。
【0058】
図7は、一対のレール10と、踏切遠方区間端部側で各レール10に接続され、列車検知区間Lの全長に渡って敷設されたケーブル34と、踏切近傍区間端部側に設置され、ケーブル34を通して各レール10に対して直流電圧を印加して検知信号を送信する検知信号出力手段としての(実際には直流電圧源により構成される)送信機器61と、踏切近傍区間端部側で各レール10にそれぞれの端子が接続され、送信機器61からの検知信号を受信する検知信号受信手段としての受信機器62と、を備える直流軌道回路210と、踏切近傍区間端部側に設置され、受信機器62からの情報に基づき踏切21が備える警報機21aや遮断機21b等を制御する踏切制御手段としての踏切制御装置22と、を図示している。
【0059】
一対のレール10は、図7に示すように、送信機器61からの直流電圧の印加により列車検知区間Lの範囲内で通電が行われる以外は、前述した第1の実施の形態と同様である。
【0060】
送信機器61は、図7に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、図示しない交流電源に接続されている。また、当該交流電源は踏切21及び踏切制御装置22も共通に用いる電源であり、交流電源の供給対象を踏切21の近傍に集めて配置することで、電線を引くなどの外部からの電源供給を容易としている。
なお、送信機器61は、図7に示す一般的な直流軌道回路においてはケーブル34を介して例えば5ボルトないし7ボルトの直流電圧をレール10に対して印加しているが、後述の図6においては、ATS受信器51に電源を供給するために24ボルトの直流電圧を出力するよう変更しており、同じく図6に示す変圧手段としてのDC/DCコンバータ71により例えば5ボルトないし7ボルトの直流電圧に降圧してレール10に印加している。
【0061】
ケーブル34は、図7に示すように、列車検知区間Lの全長に渡ってレール10に沿って敷設されており、踏切近傍区間端部側では送信機器61と、踏切遠方区間端部側では各レール10とを接続する。
【0062】
受信機器62は、図7に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、送信機器61から送信された検知信号を、ケーブル34、レール10を介して受信する。即ち、直流電圧の印加により一対のレール10の一方と他方とで電位差が生じ、その間に接続された受信機器62は電流が流れる。その時、受信機器62は、通電状態(レール間で電位差を生じた状態)と非通電状態(レール間で電位差を生じていない状態)とを検出し、その検出信号を踏切制御装置22に出力する。
【0063】
踏切制御装置22は、図7に示すように、受信機器62により検出信号を受信する以外は、前述した第1の実施の形態と同様である。
【0064】
上記構成からなる直流軌道回路210において、列車が列車検知区間L内のレール上に存在しない時は、図8に示すような信号の流れとなる。まず、送信機器61から送信された検知信号は、ケーブル34及びレール10を通って受信機器62に受信される。
【0065】
次に、列車がレール上に進入してきた場合、図9に示すように、列車の車輪及び車軸が左右のレール10を電気的に短絡し、送信機器61から送信された信号は受信機器62で受信することができなくなる。つまり、信号を受信できなくなった時点で、レール10上には列車が存在すると判断でき、踏切制御装置22は警報機21aの鳴動や遮断機21bの遮断竿の降下など所定の動作を行う。
【0066】
しかしこの時、レール上に大量の落葉等が堆積し、車輪とレールの間が絶縁状態になると、列車がレール上に進入したにも拘わらず左右のレールが電気的に短絡しなくなり、受信機器62は検知信号を受信し続けてしまう可能性がある。その場合、踏切制御装置22は踏切21を作動させないままで列車が踏切21を通過してしまうこととなる。そのような事態を回避するために、列車検知装置200は、直流軌道回路210による列車検知に加えてバックアップ装置220により列車検知を行うように構成されている。
【0067】
バックアップ装置220は、列車に搭載された車上子(図示略)と、図6に示すように、踏切遠方区間端部側でレールの間に設置され、車上子の通過を検知する地上子52と、列車が地上子52の上を通過したときにその情報を受けるATS受信器51と、ATS受信器51の受信情報に基づいて直流軌道回路210の列車検知信号としての通電を遮断する検知信号遮断手段としての軌道回路開閉スイッチ53と、送信機器61から印加される直流電圧を降圧させるため踏切遠方区間端部側に設置されたDC/DCコンバータ71とを備える構成となっている。
【0068】
ATS受信器51及び地上子52は、図6に示すように、踏切遠方区間端部側に設置されており、前述の機能により地上子52上を列車が通過したことを検知する。本実施の形態において、ATS受信器51は直流24ボルト電源で動作するが、ATS受信器51専用の電源は用意せず、前述のようにケーブル34を通して送られる24ボルトの直流電圧を利用することで、ATS受信器51の電源を確保することを可能とした。
【0069】
DC/DCコンバータ71は、図6に示すように、踏切遠方区間端部側に設置されており、ATS受信器に電源を供給する目的で24ボルトに変更した直流電圧を、レール10に対しては一般的な直流軌道回路の検知信号電圧である例えば5ボルトないし7ボルトで送信するために降圧する。DC/DCコンバータ71で、検知信号を従来通りの電圧に降圧することで、それ以降の受信機器62等を変更することなく、従来通りの装置を使用することができる。
【0070】
軌道回路開閉スイッチ53は、図6に示すように、踏切遠方区間端部側で、DC/DCコンバータ71とレール10の接続を開閉できるように設置されている。列車が地上子52上を通過したことを検知すると、ATS受信器51はその情報を軌道回路開閉スイッチ53に送り、軌道回路開閉スイッチ53により軌道回路が一定時間遮断される。従って、送信機器61から送信された信号は受信機器62まで到達せず、パルス軌道回路210にとってはレール上に列車が存在する場合と実質的に同じ状態になるため、踏切制御装置22は警報機21aの鳴動や遮断機21bの降下など所定の動作を行う。
【0071】
ここで比較例として、一つの列車検知区間内に軌道回路210とバックアップ装置230を個別に設けた列車検知装置200Aの構成を図10に図示する。なお、この比較例では前述した列車検知装置200と同一の構成については同じ符号を付するものとする。
【0072】
列車検知装置200Aを構成する、軌道回路210とバックアップ装置230の各要素について、電源の供給対象を踏切21の周囲に集めて配置させる要請を満たそうとする場合、図10に示すように、ATS受信器51に対する電源の供給は、踏切21付近に設置されている直流24ボルトの電源233から新たに敷設したケーブル231により供給する必要がある。また、地上子52上を列車が通過した場合、その検出信号は、同様に新たに設置したケーブル232により、ATS受信器51から踏切制御装置22へと送られ、警報機21aや遮断機21bなどの制御が行なわれることになる。
【0073】
列車検知区間Lの長さを例えば600mとした場合、上記比較例ではこれと同じ長さの長大なケーブルが二本必要となり、さらに、それらケーブルの設置コストも必要となる。
【0074】
これに対して列車検知装置200では、軌道回路210として既に設置されている既存のケーブル34を利用して、バックアップ装置220の電源を供給するため、バックアップ装置220における電源供給用のケーブルの設置コストをほとんど不要とすることが可能となる。さらに、バックアップ装置220では、軌道回路開閉スイッチ53を設け、軌道回路210の受信機器62の検知信号を一定時間遮断することで、当該受信機器62を介して踏切制御装置22に踏切の作動を行わせるため、ATS受信器51からの検出信号を踏切制御装置22に送るためのケーブルも不要とすることが可能となる。
【0075】
以上説明した実施の形態に係る列車検知装置200においては、バックアップ装置220を備えるので、レール10上に大量の落葉等の堆積物が発生した場合などパルス軌道回路が列車の検知不良を生じ得る場合であっても、これを補完してより確実に列車検知を行うことができる。
【0076】
また、以上説明した実施の形態においては、新たに電源ケーブルを敷設することなく直流軌道回路210にバックアップ装置220を付加することができる。
【0077】
さらに、以上説明した実施の形態においては、ATS受信器51で検知した情報を踏切制御装置22へ伝送するケーブルも敷設することなく直流軌道回路210にバックアップ装置220を付加することができる。
【0078】
また、以上説明した実施の形態に係るバックアップ装置220においては、列車通過検知手段として、「自動列車停止装置」と呼ばれる列車の緊急停止装置として以前から使用されているATS装置を利用しているため、信頼性も高く、装置も従来のものが利用できるためコスト削減が可能で、また、列車検知が非接触で行えるため、堆積物の影響を受けにくいバックアップ装置を構成することができる。
【0079】
なお、以上の各実施の形態に係る列車検知装置100又は200において、列車が当該レール上を双方向に走行する単線区間で、二つの踏切が数百メートル程度と近接している場合には、図11に示すように、当該二つの踏切の間の区間内に、互いに逆に進行する列車の検知を行う二つの列車検知装置200及び200Bからなる列車検知システム300を配置し、当該二つの踏切の中間に設けられた一つのATS受信器51及び地上子52を共用し、それが列車を検知した際に双方の軌道回路開閉スイッチ53及び53Bを動作させるよう構成しても良い。
【0080】
この時、列車検知装置200Bにおける踏切21B及び軌道回路開閉スイッチ53Bは、列車検知装置200における踏切21及び軌道回路開閉スイッチ53と同等のものであるが、送信機器61Bは送信機器61とは異なりATS受信器に電源を供給する必要がないため、出力電圧は例えば直流5ボルトないし7ボルトであるという違いがある。
【0081】
また、上述の列車検知システム300においては、列車の運行上、さらに左方向と右方向にそれぞれ図示していない列車検知装置を備えており、例えば、左方向から列車が進入してきた場合、左方向の図示していない列車検知装置が列車の接近を検知して踏切21Bを作動させる。通常であれば列車が踏切21Bを通過して一定時間後に踏切21Bは所定の動作を終了するが、この場合はATS受信器51及び地上子52を列車検知装置200と共用しているため、軌道回路開閉スイッチ53Bが列車検知装置200Bの軌道回路を遮断し、引き続き踏切21Bを一定時間動作させ続けることとなる。
【0082】
このように構成することで、踏切21Bの動作時間は多少延長されることとなるが、ATS受信器51及び地上子52を一箇所省略することができ、また、電源の供給に係る装置も一箇所省略することができるため、さらに低コストにバックアップ装置を構成することができる。なお、図11では列車検知装置200を二つ設けた列車検知システムを例示したが、列車検知装置100を二つ設けても良いことは言うまでもない。
【0083】
なお、以上の各実施の形態において、列車通過検知手段として機能するATS装置は前述のタイプに限らず、列車の通過を検出可能なものであればいかなるタイプのものでも良い。
【0084】
なお、以上の各実施の形態において、軌道回路開閉スイッチ53は軌道回路の信号を遮断する機能を有するとしたが、ケーブルの線間を短絡させる機能を有するものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置の構成図である。
【図2】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置のうち、パルス軌道回路に関する部分を抽出した構成図である。
【図3】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置のパルス軌道回路部分の信号の流れを表す説明図である。
【図4】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置に列車が進入した際のパルス軌道回路部分の信号の流れを表す説明図である。
【図5】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置との比較例の構成図である。
【図6】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置の構成図である。
【図7】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置のうち、直流軌道回路に関する部分を抽出した構成図である。
【図8】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置の直流軌道回路部分の信号の流れを表す説明図である。
【図9】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置に列車が進入した際の直流軌道回路部分の信号の流れを表す説明図である。
【図10】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置との比較例の構成図である。
【図11】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置を、近接した二つの踏切の間に二つ配備してなる列車検知システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0086】
10 レール
21、21B 踏切
22 踏切制御装置(踏切制御手段)
31 パルス送信機器(検知信号出力手段)
32 パルス受信機器(検知信号受信手段)
33 パルストランス(トランス)
34 ケーブル
51 ATS受信器(列車通過検知手段)
52 地上子(列車通過検知手段)
53、53B 軌道回路開閉スイッチ(検知信号遮断手段)
61、61B 送信機器(検知信号出力手段)
62 受信機器(検知信号受信手段)
71 DC/DCコンバータ(変圧手段)
100、100A、200、200A、200B 列車検知装置
110 パルス軌道回路(軌道回路)
120、220 バックアップ装置
210 直流軌道回路(軌道回路)
300 列車検知システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道回路による踏切の列車検知をより確実に行う装置、特に、新規ケーブルを敷設することなしに実現可能な列車検知装置及び列車検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道の踏切において警報機や遮断機等を制御するために、列車の接近を検知する手段として様々な方法が用いられているが、レール間を列車の車軸で短絡することによって列車を検知する方法が、シンプルな構成であり、もっとも信頼性の高い方法であるとして古くから世界各国で広く用いられている。
【0003】
この方法において、レール及び車軸を含めて構成される列車を検知するための回路が軌道回路と呼ばれており、その内、軌道回路の電源として、例えば5ボルトないし7ボルトの直流の定電圧を用いる旧来からの方式は直流軌道回路(方式)と呼ばれている。また、列車本数が少ない閑散線区や海岸沿いの線路では、レール表面に錆が発生し、列車の検知ができなくなる事象が発生するため、その対策として軌道回路の電源として電圧の高い、例えば30ボルトないし100ボルトのパルス電圧を用いて錆などによる絶縁を破壊するパルス軌道回路(方式)も用いられている。
【0004】
しかし、直流軌道回路は勿論、パルス軌道回路においても、さらに厚い錆や、大量の降灰、黄砂、落葉がレール上に堆積した状態では列車の検知に支障が出る恐れがある。そのため、レール間を列車の車軸で短絡することに依存せず非接触で列車との情報の受渡しが可能なATS装置を列車検知装置として利用して列車を検知する方式も導入されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記列車検知装置は、踏切から数百m手前の地点に地上子を設置し、地上子を通過する列車を軌道回路とは別に検出し、踏切において警報機や遮断機等を制御する方法であり、以前から用いられており信頼性も確認されている。
【特許文献1】特開2002−104192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来から警報機や遮断機等に供給される電源は踏切の近傍に設置されており、電源の供給対象を一箇所に集めて配置する必要上、軌道回路に対する電源も同じものを使用するか、同じ場所に設置されていた。
【0007】
しかしながら、上述の列車検知装置を軌道回路のバックアップ装置として新たに追加配備すると、地上子を踏切から数百m程度離れた地点に設置しなければならず、その地点まで電源を供給し、かつ検知した情報を踏切の制御装置(踏切保安装置)側で受け取る必要があり、ケーブルの敷設等、工事の施工が大規模になり工期や費用が掛かりすぎるという問題があった。
【0008】
本発明の課題は、より確実に列車を検知しする軌道回路のバックアップ装置を、現状の軌道回路を極力そのまま使用し、シンプルな構成で、より低コストに実現させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
踏切手前の列車検知区間で、各々が列車検知を行う軌道回路及びそのバックアップ装置を備える列車検知装置であって、
前記軌道回路は、
一対のレールと、
前記列車検知区間内に渡って設置され、前記列車検知区間における踏切遠方区間端部で前記各レールに接続されたケーブルと、
前記列車検知区間における踏切近傍区間端部に設置され、前記ケーブルを介して前記各レールに電圧を印加する検知信号出力手段と、
前記列車検知区間における踏切近傍区間端部に設置され、前記各レールを通じて通電を検知すると共に前記踏切近傍区間端部に設置された踏切制御手段に対し検知結果を入力する検知信号受信手段と、を備え、
前記バックアップ装置は、
前記列車検知区間における踏切遠方区間端部で列車の通過を検知する列車通過検知手段を備え、
前記バックアップ装置は、前記列車通過検知手段の電源の供給を、前記軌道回路のケーブルの一部を利用して行うことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、バックアップ装置の電源ケーブルを軌道回路のケーブルと併用することで、より確実に列車を検知して踏切無遮断を防止する軌道回路のバックアップ装置を、現状の軌道回路を極力そのまま使用し、シンプルな構成で、より低コストに実現できる
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の列車検知装置であって、
前記軌道回路の前記検知信号出力手段は、パルス電圧を出力し、
前記軌道回路は、前記パルス電圧を変圧するトランスを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、検知信号にパルス電圧を使用し、パルス電圧を変圧するトランスを備えることで、軌道回路のケーブルにバックアップ装置の直流電圧を印加しても軌道回路のトランスよりも先には伝わらないため、軌道回路のケーブルにバックアップ装置の直流電源を重畳することが容易となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の列車検知装置であって、
前記バックアップ装置は、前記列車通過検知手段への電源の供給を前記ケーブルの一部と前記レールとを用いて行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、電源の供給にレールを用いることにより、軌道回路のケーブルにバックアップ装置の直流電源を重畳することが容易となる。また、レールを用いる代わりにアースを用いることも可能ではあるが、レールを用いることによって、周辺の機器が電蝕される等の影響を防ぐことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の列車検知装置であって、
前記軌道回路の前記検知信号出力手段は、直流電圧を出力し、
前記軌道回路は、前記直流電圧を変圧する変圧手段を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、検知信号としての直流電圧をバックアップ装置の電源として利用することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載の列車検知装置であって、
前記列車通過検知手段として、
列車の緊急停止装置として用いられているATS装置を利用することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、列車通過検知手段としてATS装置を利用することで、従来からの装置が利用できるためコスト削減が可能である。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか一項に記載の列車検知装置であって、
前記バックアップ装置は、前記軌道回路の列車検知信号としての通電を遮断可能な検知信号遮断手段を備え、
前記列車通過検知手段は、列車を検知した際に前記検知信号遮断手段を動作させて前記検知信号受信手段への列車検知信号を遮断する機能を有することを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、列車通過検知手段で検知した情報を踏切制御手段へ伝送するケーブルを敷設することなく軌道回路にバックアップ装置を付加することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、列車検知システムであって、
二つの踏切の間の区間内に、互いに逆に進行する列車の検知を行う請求項1から6の何れか一項に記載の列車検知装置を二つ備え、
二つの前記列車検知装置は、前記二つの踏切の中間に設けられた一つの列車通過検知手段を共用すると共に、当該列車通過検知手段の列車検知により前記各列車検知装置に対応する踏切制御手段にそれぞれの踏切に対して列車検知時対応の制御を行わせることを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、二つの踏切に挟まれた軌道回路を一つのバックアップ装置でバックアップすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、バックアップ装置の電源ケーブルを軌道回路のケーブルと併用することで、厚い錆や、大量の降灰、黄砂、落葉等がレール上に堆積した状態でも、列車の検知をより確実に行うバックアップ装置を付加した列車検知装置を、現状の軌道回路を極力そのまま使用し、シンプルな構成で、より低コストに実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
最初に、図1から図5を用いて、本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置100の構成について説明する。
【0026】
第1の実施の形態に係る列車検知装置100は、図1に示すように、踏切21の手前の列車検知区間Lにおいて、各々が列車検知を行う軌道回路としてのパルス軌道回路110及びバックアップ装置120を備えている。
【0027】
列車検知区間Lとは、図1に示すように、踏切21の手前の所定距離(例えば600m)について設定される区間であって、当該列車検知区間L内に敷設されたレール10上を踏切に向かって列車が進入した時に踏切21を作動させるものである。
なお、列車検知区間Lの一方に踏切21が位置し、以下の説明において、当該踏切21が位置する列車検知区間Lの端部を「踏切近傍区間端部」、踏切21が位置しない方の列車検知区間Lの端部を「踏切遠方区間端部」とする。
【0028】
図2は本実施の形態に係る列車検知装置100からパルス軌道回路110、踏切21及び踏切制御装置22を抽出した構成図である。
【0029】
図2は、一対のレール10と、踏切遠方区間端部側で各レール10に接続されたトランスとしてのパルストランス33と、列車検知区間Lの全長に渡って敷設され、パルストランス33を介して前記各レール10に接続されたケーブル34と、踏切近傍区間端部側に設置され、ケーブル34及びパルストランス33を通して各レール10に対してパルス電圧を印加して検知信号を送信する検知信号出力手段としてのパルス送信機器31と、踏切近傍区間端部側で各レール10にそれぞれの端子が接続され、パルス送信機器31からの検知信号を受信する検知信号受信手段としてのパルス受信機器32と、を備えるパルス軌道回路110と、踏切近傍区間端部側に設置され、パルス受信機器32からの情報に基づき踏切21が備える警報機21aや遮断機21b等を制御する踏切制御手段としての踏切制御装置22と、を図示している。
【0030】
一対のレール10は、図2に示すように、列車検知区間Lの全長に渡って敷設されており、列車検知区間Lの両端からさらに続くレールを含めて「線路」を構成している。レール10は、正確には列車検知区間Lよりも短い複数のレールからなり、列車検知区間Lの範囲内で列車の検知を行うためにそれぞれが電気的に接続され、列車検知区間Lの両端では列車検知区間Lの両端からさらに続くレールとは電気的に絶縁されており、また、左右のレールも電気的に絶縁されている。左右の各レールは、パルストランス33からのパルス電圧の印加により列車検知区間Lの範囲内で通電が行われる。
【0031】
パルス送信機器31は、図2に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、図示しない交流電源に接続されている。また、当該交流電源は踏切21及び踏切制御装置22も共通に用いる電源であり、交流電源の供給対象を踏切21の近傍に集めて配置することで、電線を引くなどの外部からの電源供給を容易としている。パルス送信機器31は、例えば、300ボルト、5Hzのパルス電圧で検知信号を出力する。
【0032】
ケーブル34は、図2に示すように、列車検知区間Lの全長に渡ってレール10に沿って敷設されており、踏切近傍区間端部側ではパルス送信機器31と、踏切遠方区間端部側ではパルストランス33を介して各レール10とを接続する。
【0033】
パルストランス33は、図2に示すように、踏切遠方区間端部側に設置されており、パルス送信機器31が電圧の安定化のため列車検知に要する電圧よりも高電圧で印加する電圧を、列車検知に好適な電圧に調節する。例えば、300ボルトを100ボルトに変圧する。
【0034】
パルス受信機器32は、図2に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、パルス送信機器31から送信された検知信号を、ケーブル34、パルストランス33、レール10を介して受信する。即ち、パルス電圧の印加により一対のレール10の一方と他方とで電位差が生じ、その間に接続されたパルス受信機器32は電流が流れる。その時、パルス受信機器32は、通電状態(レール間で電位差を生じた状態)と非通電状態(レール間で電位差を生じていない状態)とを検出し、その検出信号を踏切制御装置22に出力する。
【0035】
踏切制御装置22は、図2に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、パルス受信機器32により、非通電状態(レール間で電位差を生じていない状態)の検出信号を受信すると、踏切21の警報機21aを鳴らし、遮断機21bが有する遮断竿を下降させる動作制御を行う。
【0036】
上記構成からなるパルス軌道回路110において、列車が列車検知区間L内のレール上に存在しない時は、図3に示すような信号の流れとなる。まず、パルス送信機器31から送信された検知信号は、ケーブル34を通してパルストランス33に到達する。本実施の形態では、パルス送信機器31から送信される検知信号は、300ボルト、5Hzのインパルス状の信号を用いており、また、パルストランス33として変成比3:1の変成器を用いているため、パルストランス33からレール10に送出される検知信号は、100ボルト、5Hzのインパルス信号となっている。そして、パルストランス33から送出された信号は、レール10を通ってパルス受信機器32に受信される。
【0037】
次に、列車がレール上に進入してきた場合、図4に示すように、列車の車輪及び車軸が左右のレール10を電気的に短絡し、パルストランス33から送出された信号はパルス受信機器32で受信することができなくなる。つまり、信号を受信できなくなった時点で、レール10上には列車が存在すると判断でき、踏切制御装置22は警報機21aの鳴動や遮断機21bの遮断竿の降下など所定の動作を行う。
【0038】
しかしこの時、レール上に大量の落葉等が堆積し、車輪とレールの間が絶縁状態になると、列車がレール上に進入したにも拘わらず左右のレールが電気的に短絡しなくなり、パルス受信機器32は検知信号を受信し続けてしまう可能性がある。その場合、踏切制御装置22は踏切21を作動させないままで列車が踏切21を通過してしまうこととなる。そのような事態を回避するために、列車検知装置100は、パルス軌道回路110による列車検知に加えてバックアップ装置120により列車検知を行うように構成されている。
【0039】
バックアップ装置120は、列車に搭載された車上子(図示略)と、図1に示すように、踏切遠方区間端部側でレールの間に設置され、車上子の通過を検知する地上子52と、列車が地上子52の上を通過したときにその情報を受けるATS受信器51と、ATS受信器51の受信情報に基づいてパルス軌道回路110の列車検知信号としての通電を遮断する検知信号遮断手段としての軌道回路開閉スイッチ53と、踏切近傍区間端部側に設置されたバックアップ装置120の電源43と、その電源電圧を昇圧させるため踏切近傍区間端部側に設置されたDC/DCコンバータ41と、踏切遠方区間端部側に設置された前記電源43の電圧を降圧させてATS受信器51に供給するDC/DCコンバータ42とを備える構成となっている。ATS受信器51、地上子52及び車上子は本発明における列車通過検知手段として、機能する。
【0040】
ATS受信器51及び地上子52は、図1に示すように、踏切遠方区間端部側に設置されており、後述の機能により地上子52上を列車が通過したことを検知する。本実施の形態において、ATS受信器51は直流24ボルト電源で動作し、踏切21のある踏切近傍区間端部側には同様の電源43が存在するが、踏切近傍区間端部側からケーブル34とレール10を使って伝送すると電圧が降下する割合が高いため、踏切近傍区間端部側にDC/DCコンバータ41を設置して昇圧し、踏切遠方区間端部側にDC/DCコンバータ42を設置して降圧することで、必要な電圧を確保している。
【0041】
図1に示すように、昇圧を行うDC/DCコンバータ41の二つの出力端子の一方はケーブル34の一方の導線に、もう一方の出力端子はレール10の一方のレールに接続され、同様に、降圧を行うDC/DCコンバータ42の二つの入力端子の一方はケーブル34のDC/DCコンバータ41とは異なる導線に、もう一方の入力端子は同じレール10の一方のレールに接続されている。つまり、踏切近傍区間端部側に設置されたバックアップ装置120の電源43は、ケーブル34の一部と、レール10の一方のレールとを介してATS受信器51に対して電源の供給を行っている。
【0042】
なお、軌道回路110のケーブル34にはパルス電圧も印加されているが、DC/DCコンバータ41とDC/DCコンバータ42の間のケーブル34を流れる電流は直流のため、パルストランス33を介して接続されているパルス軌道回路110には影響を与えない。
【0043】
軌道回路開閉スイッチ53は、図1に示すように、踏切遠方区間端部側で、パルス軌道回路110を構成するパルストランス33とレール10の接続を開閉できるように設置されている。列車が地上子52上を通過したことを検知すると、ATS受信器51はその情報を軌道回路開閉スイッチ53に送り、軌道回路開閉スイッチ53により軌道回路が一定時間遮断される。従って、パルス送信機器31から送信された信号はパルス受信機器32まで到達せず、パルス軌道回路110にとってはレール上に列車が存在する場合と実質的に同じ状態になるため、踏切制御装置22は警報機21aの鳴動や遮断機21bの降下など所定の動作を行う。
【0044】
ATS受信器51、地上子52及び列車に搭載された車上子は、従来から「自動列車停止装置」と呼ばれる列車の緊急停止装置として使用されているもので、通常は信号機の手前にATS受信器及び地上子が設置されている。地上子及び車上子は巻線(コイル)を主要な構成要素として含み、車上子は常時一定の周波数(例えば105kHz)で通電されており、地上子は当該信号機の信号に応じて規格化された周波数(信号が赤なら、例えば123kHz)で通電される。ここでATS装置は、列車が当該地上子の上を通過し、電磁誘導により車上子側が地上子の周波数の影響を受けた時、影響を受けた地上子の周波数に応じて、列車に非常ブレーキをかけるなどの制御を行う。
【0045】
本発明におけるバックアップ装置も上記のATS装置を利用したものであり、車上子は列車に搭載されている既設の装置をそのまま用い、ATS受信器51及び地上子52は、車上子から常時発している周波数を受信するための受信専用の装置を列車通過検知手段として新たに設置する。
【0046】
ここで比較例として、一つの列車検知区間内に軌道回路110とバックアップ装置130を個別に設けた列車検知装置100Aの構成を図5に図示する。なお、この比較例では前述した列車検知装置100と同一の構成については同じ符号を付するものとする。
【0047】
列車検知装置100Aを構成する軌道回路110とバックアップ装置130の各要素について、電源の供給対象を踏切21の周囲に集めて配置させる要請を満たそうとする場合、図5に示すように、ATS受信器51に対する電源の供給は、踏切21付近に設置されている直流24ボルトの電源43から新たに敷設したケーブル131により供給する必要がある。また、地上子52上を列車が通過した場合、その検出信号は、同様に新たに設置したケーブル132により、ATS受信器51から踏切制御装置22へと送られ、警報機21aや遮断機21bなどの制御が行なわれることになる。
【0048】
列車検知区間Lの長さを例えば600mとした場合、上記比較例ではこれと同じ長さの長大なケーブルが二本必要となり、さらに、それらケーブルの設置コストも必要となる。
【0049】
これに対して列車検知装置100では、軌道回路110として既に設置されている既存のケーブル34とレール10とを利用して、バックアップ装置120の電源を供給するため、バックアップ装置120における電源供給用のケーブルの設置コストをほとんど不要とすることが可能となる。さらに、バックアップ装置120では、軌道回路開閉スイッチ53を設け、軌道回路110のパルス受信機器32の検知信号を一定時間遮断することで、当該パルス受信機器32を介して踏切制御装置22に踏切の作動を行わせるため、ATS受信器51からの検出信号を踏切制御装置22に送るためのケーブルも不要とすることが可能となる。
【0050】
以上説明した実施の形態に係る列車検知装置100においては、バックアップ装置120を備えるので、レール10上に大量の落葉等の堆積物が発生した場合などパルス軌道回路が列車の検知不良を生じ得る場合であっても、これを補完してより確実に列車検知を行うことができる。
【0051】
また、以上説明した実施の形態においては、新たに電源ケーブルを敷設することなくパルス軌道回路110にバックアップ装置120を付加することができる。
【0052】
さらに、以上説明した実施の形態においては、ATS受信器51で検知した情報を踏切制御装置22へ伝送するケーブルも敷設することなくパルス軌道回路110にバックアップ装置120を付加することができる。
【0053】
また、以上説明した実施の形態に係るバックアップ装置120においては、列車通過検知手段として、「自動列車停止装置」と呼ばれる列車の緊急停止装置として以前から使用されているATS装置を利用しているため、信頼性も高く、装置も従来のものが利用できるためコスト削減が可能で、また、列車検知が非接触で行えるため、堆積物の影響を受けにくいバックアップ装置を構成することができる。
【0054】
なお、以上説明した実施の形態においては、バックアップ装置120の電源の供給にレールを用いる代わりにアースを用いても良い。ただし、レールを用いることによって、周辺の機器が電蝕される等の影響を防ぐことができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
次に、図6から図10を用いて、本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置200の構成について説明する。なお、本実施の形態に係る列車検知装置200は、第1の実施の形態に係る列車検知装置100の構成を一部変更したものであり、その他の構成については第1の実施の形態と実質的に同一である。このため、変更した構成を中心に説明することとし、第1の実施の形態と重複する構成については同じ符号を付し、説明を省略するものとする。
【0056】
第2の実施の形態に係る列車検知装置200は、図6に示すように、踏切21の手前の列車検知区間Lにおいて、各々が列車検知を行う軌道回路としての直流軌道回路210及びそのバックアップ装置220を備えている。
【0057】
図7は本実施の形態に係る列車検知装置200から直流軌道回路210、踏切21及び踏切制御装置22を抽出した構成図である。
【0058】
図7は、一対のレール10と、踏切遠方区間端部側で各レール10に接続され、列車検知区間Lの全長に渡って敷設されたケーブル34と、踏切近傍区間端部側に設置され、ケーブル34を通して各レール10に対して直流電圧を印加して検知信号を送信する検知信号出力手段としての(実際には直流電圧源により構成される)送信機器61と、踏切近傍区間端部側で各レール10にそれぞれの端子が接続され、送信機器61からの検知信号を受信する検知信号受信手段としての受信機器62と、を備える直流軌道回路210と、踏切近傍区間端部側に設置され、受信機器62からの情報に基づき踏切21が備える警報機21aや遮断機21b等を制御する踏切制御手段としての踏切制御装置22と、を図示している。
【0059】
一対のレール10は、図7に示すように、送信機器61からの直流電圧の印加により列車検知区間Lの範囲内で通電が行われる以外は、前述した第1の実施の形態と同様である。
【0060】
送信機器61は、図7に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、図示しない交流電源に接続されている。また、当該交流電源は踏切21及び踏切制御装置22も共通に用いる電源であり、交流電源の供給対象を踏切21の近傍に集めて配置することで、電線を引くなどの外部からの電源供給を容易としている。
なお、送信機器61は、図7に示す一般的な直流軌道回路においてはケーブル34を介して例えば5ボルトないし7ボルトの直流電圧をレール10に対して印加しているが、後述の図6においては、ATS受信器51に電源を供給するために24ボルトの直流電圧を出力するよう変更しており、同じく図6に示す変圧手段としてのDC/DCコンバータ71により例えば5ボルトないし7ボルトの直流電圧に降圧してレール10に印加している。
【0061】
ケーブル34は、図7に示すように、列車検知区間Lの全長に渡ってレール10に沿って敷設されており、踏切近傍区間端部側では送信機器61と、踏切遠方区間端部側では各レール10とを接続する。
【0062】
受信機器62は、図7に示すように、踏切近傍区間端部側に設置されており、送信機器61から送信された検知信号を、ケーブル34、レール10を介して受信する。即ち、直流電圧の印加により一対のレール10の一方と他方とで電位差が生じ、その間に接続された受信機器62は電流が流れる。その時、受信機器62は、通電状態(レール間で電位差を生じた状態)と非通電状態(レール間で電位差を生じていない状態)とを検出し、その検出信号を踏切制御装置22に出力する。
【0063】
踏切制御装置22は、図7に示すように、受信機器62により検出信号を受信する以外は、前述した第1の実施の形態と同様である。
【0064】
上記構成からなる直流軌道回路210において、列車が列車検知区間L内のレール上に存在しない時は、図8に示すような信号の流れとなる。まず、送信機器61から送信された検知信号は、ケーブル34及びレール10を通って受信機器62に受信される。
【0065】
次に、列車がレール上に進入してきた場合、図9に示すように、列車の車輪及び車軸が左右のレール10を電気的に短絡し、送信機器61から送信された信号は受信機器62で受信することができなくなる。つまり、信号を受信できなくなった時点で、レール10上には列車が存在すると判断でき、踏切制御装置22は警報機21aの鳴動や遮断機21bの遮断竿の降下など所定の動作を行う。
【0066】
しかしこの時、レール上に大量の落葉等が堆積し、車輪とレールの間が絶縁状態になると、列車がレール上に進入したにも拘わらず左右のレールが電気的に短絡しなくなり、受信機器62は検知信号を受信し続けてしまう可能性がある。その場合、踏切制御装置22は踏切21を作動させないままで列車が踏切21を通過してしまうこととなる。そのような事態を回避するために、列車検知装置200は、直流軌道回路210による列車検知に加えてバックアップ装置220により列車検知を行うように構成されている。
【0067】
バックアップ装置220は、列車に搭載された車上子(図示略)と、図6に示すように、踏切遠方区間端部側でレールの間に設置され、車上子の通過を検知する地上子52と、列車が地上子52の上を通過したときにその情報を受けるATS受信器51と、ATS受信器51の受信情報に基づいて直流軌道回路210の列車検知信号としての通電を遮断する検知信号遮断手段としての軌道回路開閉スイッチ53と、送信機器61から印加される直流電圧を降圧させるため踏切遠方区間端部側に設置されたDC/DCコンバータ71とを備える構成となっている。
【0068】
ATS受信器51及び地上子52は、図6に示すように、踏切遠方区間端部側に設置されており、前述の機能により地上子52上を列車が通過したことを検知する。本実施の形態において、ATS受信器51は直流24ボルト電源で動作するが、ATS受信器51専用の電源は用意せず、前述のようにケーブル34を通して送られる24ボルトの直流電圧を利用することで、ATS受信器51の電源を確保することを可能とした。
【0069】
DC/DCコンバータ71は、図6に示すように、踏切遠方区間端部側に設置されており、ATS受信器に電源を供給する目的で24ボルトに変更した直流電圧を、レール10に対しては一般的な直流軌道回路の検知信号電圧である例えば5ボルトないし7ボルトで送信するために降圧する。DC/DCコンバータ71で、検知信号を従来通りの電圧に降圧することで、それ以降の受信機器62等を変更することなく、従来通りの装置を使用することができる。
【0070】
軌道回路開閉スイッチ53は、図6に示すように、踏切遠方区間端部側で、DC/DCコンバータ71とレール10の接続を開閉できるように設置されている。列車が地上子52上を通過したことを検知すると、ATS受信器51はその情報を軌道回路開閉スイッチ53に送り、軌道回路開閉スイッチ53により軌道回路が一定時間遮断される。従って、送信機器61から送信された信号は受信機器62まで到達せず、パルス軌道回路210にとってはレール上に列車が存在する場合と実質的に同じ状態になるため、踏切制御装置22は警報機21aの鳴動や遮断機21bの降下など所定の動作を行う。
【0071】
ここで比較例として、一つの列車検知区間内に軌道回路210とバックアップ装置230を個別に設けた列車検知装置200Aの構成を図10に図示する。なお、この比較例では前述した列車検知装置200と同一の構成については同じ符号を付するものとする。
【0072】
列車検知装置200Aを構成する、軌道回路210とバックアップ装置230の各要素について、電源の供給対象を踏切21の周囲に集めて配置させる要請を満たそうとする場合、図10に示すように、ATS受信器51に対する電源の供給は、踏切21付近に設置されている直流24ボルトの電源233から新たに敷設したケーブル231により供給する必要がある。また、地上子52上を列車が通過した場合、その検出信号は、同様に新たに設置したケーブル232により、ATS受信器51から踏切制御装置22へと送られ、警報機21aや遮断機21bなどの制御が行なわれることになる。
【0073】
列車検知区間Lの長さを例えば600mとした場合、上記比較例ではこれと同じ長さの長大なケーブルが二本必要となり、さらに、それらケーブルの設置コストも必要となる。
【0074】
これに対して列車検知装置200では、軌道回路210として既に設置されている既存のケーブル34を利用して、バックアップ装置220の電源を供給するため、バックアップ装置220における電源供給用のケーブルの設置コストをほとんど不要とすることが可能となる。さらに、バックアップ装置220では、軌道回路開閉スイッチ53を設け、軌道回路210の受信機器62の検知信号を一定時間遮断することで、当該受信機器62を介して踏切制御装置22に踏切の作動を行わせるため、ATS受信器51からの検出信号を踏切制御装置22に送るためのケーブルも不要とすることが可能となる。
【0075】
以上説明した実施の形態に係る列車検知装置200においては、バックアップ装置220を備えるので、レール10上に大量の落葉等の堆積物が発生した場合などパルス軌道回路が列車の検知不良を生じ得る場合であっても、これを補完してより確実に列車検知を行うことができる。
【0076】
また、以上説明した実施の形態においては、新たに電源ケーブルを敷設することなく直流軌道回路210にバックアップ装置220を付加することができる。
【0077】
さらに、以上説明した実施の形態においては、ATS受信器51で検知した情報を踏切制御装置22へ伝送するケーブルも敷設することなく直流軌道回路210にバックアップ装置220を付加することができる。
【0078】
また、以上説明した実施の形態に係るバックアップ装置220においては、列車通過検知手段として、「自動列車停止装置」と呼ばれる列車の緊急停止装置として以前から使用されているATS装置を利用しているため、信頼性も高く、装置も従来のものが利用できるためコスト削減が可能で、また、列車検知が非接触で行えるため、堆積物の影響を受けにくいバックアップ装置を構成することができる。
【0079】
なお、以上の各実施の形態に係る列車検知装置100又は200において、列車が当該レール上を双方向に走行する単線区間で、二つの踏切が数百メートル程度と近接している場合には、図11に示すように、当該二つの踏切の間の区間内に、互いに逆に進行する列車の検知を行う二つの列車検知装置200及び200Bからなる列車検知システム300を配置し、当該二つの踏切の中間に設けられた一つのATS受信器51及び地上子52を共用し、それが列車を検知した際に双方の軌道回路開閉スイッチ53及び53Bを動作させるよう構成しても良い。
【0080】
この時、列車検知装置200Bにおける踏切21B及び軌道回路開閉スイッチ53Bは、列車検知装置200における踏切21及び軌道回路開閉スイッチ53と同等のものであるが、送信機器61Bは送信機器61とは異なりATS受信器に電源を供給する必要がないため、出力電圧は例えば直流5ボルトないし7ボルトであるという違いがある。
【0081】
また、上述の列車検知システム300においては、列車の運行上、さらに左方向と右方向にそれぞれ図示していない列車検知装置を備えており、例えば、左方向から列車が進入してきた場合、左方向の図示していない列車検知装置が列車の接近を検知して踏切21Bを作動させる。通常であれば列車が踏切21Bを通過して一定時間後に踏切21Bは所定の動作を終了するが、この場合はATS受信器51及び地上子52を列車検知装置200と共用しているため、軌道回路開閉スイッチ53Bが列車検知装置200Bの軌道回路を遮断し、引き続き踏切21Bを一定時間動作させ続けることとなる。
【0082】
このように構成することで、踏切21Bの動作時間は多少延長されることとなるが、ATS受信器51及び地上子52を一箇所省略することができ、また、電源の供給に係る装置も一箇所省略することができるため、さらに低コストにバックアップ装置を構成することができる。なお、図11では列車検知装置200を二つ設けた列車検知システムを例示したが、列車検知装置100を二つ設けても良いことは言うまでもない。
【0083】
なお、以上の各実施の形態において、列車通過検知手段として機能するATS装置は前述のタイプに限らず、列車の通過を検出可能なものであればいかなるタイプのものでも良い。
【0084】
なお、以上の各実施の形態において、軌道回路開閉スイッチ53は軌道回路の信号を遮断する機能を有するとしたが、ケーブルの線間を短絡させる機能を有するものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置の構成図である。
【図2】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置のうち、パルス軌道回路に関する部分を抽出した構成図である。
【図3】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置のパルス軌道回路部分の信号の流れを表す説明図である。
【図4】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置に列車が進入した際のパルス軌道回路部分の信号の流れを表す説明図である。
【図5】本発明における第1の実施の形態に係る列車検知装置との比較例の構成図である。
【図6】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置の構成図である。
【図7】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置のうち、直流軌道回路に関する部分を抽出した構成図である。
【図8】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置の直流軌道回路部分の信号の流れを表す説明図である。
【図9】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置に列車が進入した際の直流軌道回路部分の信号の流れを表す説明図である。
【図10】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置との比較例の構成図である。
【図11】本発明における第2の実施の形態に係る列車検知装置を、近接した二つの踏切の間に二つ配備してなる列車検知システムを示す構成図である。
【符号の説明】
【0086】
10 レール
21、21B 踏切
22 踏切制御装置(踏切制御手段)
31 パルス送信機器(検知信号出力手段)
32 パルス受信機器(検知信号受信手段)
33 パルストランス(トランス)
34 ケーブル
51 ATS受信器(列車通過検知手段)
52 地上子(列車通過検知手段)
53、53B 軌道回路開閉スイッチ(検知信号遮断手段)
61、61B 送信機器(検知信号出力手段)
62 受信機器(検知信号受信手段)
71 DC/DCコンバータ(変圧手段)
100、100A、200、200A、200B 列車検知装置
110 パルス軌道回路(軌道回路)
120、220 バックアップ装置
210 直流軌道回路(軌道回路)
300 列車検知システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切手前の列車検知区間で、各々が列車検知を行う軌道回路及びそのバックアップ装置を備える列車検知装置であって、
前記軌道回路は、
一対のレールと、
前記列車検知区間内に渡って設置され、前記列車検知区間における踏切遠方区間端部で前記各レールに接続されたケーブルと、
前記列車検知区間における踏切近傍区間端部に設置され、前記ケーブルを介して前記各レールに電圧を印加する検知信号出力手段と、
前記列車検知区間における踏切近傍区間端部に設置され、前記各レールを通じて通電を検知すると共に前記踏切近傍区間端部に設置された踏切制御手段に対し検知結果を入力する検知信号受信手段と、を備え、
前記バックアップ装置は、
前記列車検知区間における踏切遠方区間端部で列車の通過を検知する列車通過検知手段を備え、
前記バックアップ装置は、前記列車通過検知手段の電源の供給を、前記軌道回路のケーブルの一部を利用して行うことを特徴とする列車検知装置。
【請求項2】
前記軌道回路の前記検知信号出力手段は、パルス電圧を出力し、
前記軌道回路は、前記パルス電圧を変圧するトランスを備えることを特徴とする請求項1に記載の列車検知装置。
【請求項3】
前記バックアップ装置は、前記列車通過検知手段への電源の供給を前記ケーブルの一部と前記レールとを用いて行うことを特徴とする請求項2に記載の列車検知装置。
【請求項4】
前記軌道回路の前記検知信号出力手段は、直流電圧を出力し、
前記軌道回路は、前記直流電圧を変圧する変圧手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の列車検知装置。
【請求項5】
前記列車通過検知手段として、
列車の緊急停止装置として用いられているATS装置を利用することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の列車検知装置。
【請求項6】
前記バックアップ装置は、前記軌道回路の列車検知信号としての通電を遮断可能な検知信号遮断手段を備え、
前記列車通過検知手段は、列車を検知した際に前記検知信号遮断手段を動作させて前記検知信号受信手段への列車検知信号を遮断する機能を有することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の列車検知装置。
【請求項7】
二つの踏切の間の区間内に、互いに逆に進行する列車の検知を行う請求項1から6の何れか一項に記載の列車検知装置を二つ備え、
二つの前記列車検知装置は、前記二つの踏切の中間に設けられた一つの列車通過検知手段を共用すると共に、当該列車通過検知手段の列車検知により前記各列車検知装置に対応する踏切制御手段にそれぞれの踏切に対して列車検知時対応の制御を行わせることを特徴とする列車検知システム。
【請求項1】
踏切手前の列車検知区間で、各々が列車検知を行う軌道回路及びそのバックアップ装置を備える列車検知装置であって、
前記軌道回路は、
一対のレールと、
前記列車検知区間内に渡って設置され、前記列車検知区間における踏切遠方区間端部で前記各レールに接続されたケーブルと、
前記列車検知区間における踏切近傍区間端部に設置され、前記ケーブルを介して前記各レールに電圧を印加する検知信号出力手段と、
前記列車検知区間における踏切近傍区間端部に設置され、前記各レールを通じて通電を検知すると共に前記踏切近傍区間端部に設置された踏切制御手段に対し検知結果を入力する検知信号受信手段と、を備え、
前記バックアップ装置は、
前記列車検知区間における踏切遠方区間端部で列車の通過を検知する列車通過検知手段を備え、
前記バックアップ装置は、前記列車通過検知手段の電源の供給を、前記軌道回路のケーブルの一部を利用して行うことを特徴とする列車検知装置。
【請求項2】
前記軌道回路の前記検知信号出力手段は、パルス電圧を出力し、
前記軌道回路は、前記パルス電圧を変圧するトランスを備えることを特徴とする請求項1に記載の列車検知装置。
【請求項3】
前記バックアップ装置は、前記列車通過検知手段への電源の供給を前記ケーブルの一部と前記レールとを用いて行うことを特徴とする請求項2に記載の列車検知装置。
【請求項4】
前記軌道回路の前記検知信号出力手段は、直流電圧を出力し、
前記軌道回路は、前記直流電圧を変圧する変圧手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の列車検知装置。
【請求項5】
前記列車通過検知手段として、
列車の緊急停止装置として用いられているATS装置を利用することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の列車検知装置。
【請求項6】
前記バックアップ装置は、前記軌道回路の列車検知信号としての通電を遮断可能な検知信号遮断手段を備え、
前記列車通過検知手段は、列車を検知した際に前記検知信号遮断手段を動作させて前記検知信号受信手段への列車検知信号を遮断する機能を有することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の列車検知装置。
【請求項7】
二つの踏切の間の区間内に、互いに逆に進行する列車の検知を行う請求項1から6の何れか一項に記載の列車検知装置を二つ備え、
二つの前記列車検知装置は、前記二つの踏切の中間に設けられた一つの列車通過検知手段を共用すると共に、当該列車通過検知手段の列車検知により前記各列車検知装置に対応する踏切制御手段にそれぞれの踏切に対して列車検知時対応の制御を行わせることを特徴とする列車検知システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−223465(P2007−223465A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46979(P2006−46979)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]