説明

列車検知装置

【課題】コストダウンを図ることができる列車検知装置を提供する。
【解決手段】レール3に沿って所定の距離隔てて設置され、前を通過する物体を検知する複数の非接触センサ1,2と、該複数の非接触センサ1,2の出力の状態により列車の検知を判定する自己診断手段とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の踏切保安設備などに用いられる列車検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、列車検知には踏切制御子が用いられているが、踏切制御子はその設置点を中心とした所定の区間内に列車が存在するか否かを検知するものである(特許文献1)。
【特許文献1】特許第2613582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、踏切制御子は、軌道回路と列車の車輪との接触により検知することから回路システムが複雑になり、コストダウンを図るのが難しかった。また、それ単独で列車の進入方向を検知することができなかった。
【0004】
(発明の目的)
本発明の第1の目的は、コストダウンを図ることができる列車検知装置を提供することである。
【0005】
本発明の第2の目的は、上記第1の目的を達成しつつ、列車の進入方向を検知することができる列車検知装置を提供することである。
【0006】
本発明の第3の目的は、上記第1の目的を達成しつつ、列車検知用の非接触センサの故障を判定することができる列車検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、レールに沿って所定の距離隔てて設置され、前を通過する物体を検知する複数の非接触センサと、該複数の非接触センサの出力の状態により列車の検知を判定する自己診断手段とを有する列車検知装置とするものである。
【0008】
また、上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の本発明は、前記自己診断手段が、前記複数の非接触センサの検知出力の立ち上がりの時間差により列車の進入方向を判定する請求項1に記載の列車検知装置とするものである。
【0009】
また、上記第3の目的を達成するために、請求項3に記載の本発明は、前記自己診断手段が、前記複数の非接触センサの検知出力の組み合わせパターンが異常であるときに、前記非接触センサの故障と判定する請求項1または2に記載の列車検知装置とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コストダウンを図ることができる。また、列車の進入方向を検知することができる。また、列車検知用の非接触センサの故障を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態は、後述する実施例に記載の通りである。
【実施例】
【0012】
図1は本発明の一実施例である列車検知装置の設置状態を示す平面図及び側面図であり、図2は本発明の一実施例である列車検知装置の回路ブロック図である。
【0013】
図1及び図2において、超音波センサ、光センサ、磁気センサなどの非接触センサ1,2は、レール3に沿って所定の距離(例えば2256mm)隔てて支柱4及び支持バー5により地面より所定の高さ(例えば2750mm)に設置され、前を通過する物体すなわち列車を検知するとハイレベルの信号を出力する。図1は列車の先頭車6が非接触センサ1,2の前を通過している状態を示している。制御箱7が支柱4に固定されている。制御箱7の内部には、図2に示されるように非接触センサ1,2からの信号が入力されるフォトカプラ入力回路8、フォトカプラ入力回路8の出力信号の細かい断続(例えばオフの時間が200〜500ms)を連続信号として処理するチャタリングマスク回路9、非接触センサ1,2の出力信号の論理により列車の進入方向や非接触センサ1,2の故障を判定する論理回路10、論理回路10の判定を記録する不揮発性の自己診断メモリ11、論理回路10の判定に応じて上りR12(Rはリレーの意)、下りR13、故障R14、上り出力R15、下り出力R16を選択的に或いは同時に動作させる出力回路17が設けられている。
【0014】
論理回路10は汎用ロジックICによりオールハードウエアで構成される。これはフェールセーフ機能を低コストで持たせるためである。上りR12、下りR13は、その落下により警報を開始させるリレーである。故障R14は、非接触センサ1,2の故障を知らせるリレーである。上り出力R15、下り出力R16は、最後尾車が通過した後、所定の時間(例えば3秒以上の一定時間)動作を継続するリレーである。
【0015】
論理回路10の論理動作例を図3〜図9により以下に説明する。
【0016】
まず、通常の下り列車検知を図3により説明する。下りとは図1における矢印方向である。非接触センサ1が先頭車6を検知してハイレベルの信号を出力し、その後時素(例えば3秒)以内に非接触センサ2が先頭車6(或いは列車)を検知してハイレベルの信号を出力すると、論理回路10は下り列車通過と判定して、下りR13を落下させて、下り警報を行わせる。論理回路10の出力には若干の緩動・緩放時素(例えば500ms)を持たせる。
【0017】
次に、あおり通過時の下り列車検知を図4により説明する。非接触センサ1が先頭車6を検知してハイレベルの信号を出力する。非接触センサ1の信号は細かい断続があるが、チャタリングマスク回路9により連続信号となる。その後時素(例えば3秒)以内に非接触センサ2が先頭車6(或いは列車)を検知してハイレベルの信号を出力すると、論理回路10は下り列車通過と判定して、下りR13を落下させて、下り警報を行わせる。
【0018】
異常時列車検知のうちの非接触センサ2の故障検知を図5により説明する。非接触センサ1が先頭車6を検知してハイレベルの信号を出力する。その後時素(例えば3秒)以内に非接触センサ2が先頭車6(或いは列車)を検知しない場合には、論理回路10は、非接触センサ2を故障と判定して、故障R14を動作させ、非接触センサ2の故障を表示させると共に、自己診断メモリ11に記録させて、電源がオフになっても故障R14を継続動作させる。同時に、上り列車か下り列車かの判断がつかないので、上りR12及び下りR13を落下させて、上り警報と下り警報を行わせる。
【0019】
異常時列車検知のうちの両非接触センサ1,2の同時検知を図6により説明する。非接触センサ1,2が先頭車6を同時に検知してハイレベルの信号を出力すると、論理回路10は正規の列車検知とするが、方向が不明のため、上りR12と下りR13を同時に落下させて、上り警報及び下り警報を行わせる。故障発生とは判定しない。
【0020】
異常時列車検知のうち、両非接触センサ1,2が長時間検知を継続した場合を図7により説明する。非接触センサ1,2が長時間にわたりハイレベルの信号を出力し続ける場合、論理回路10は列車が停まっていると判定し、下りR13を落下させたままとして、下り警報を継続する。故障発生とは判定しない。
【0021】
異常時列車検知のうち、非接触センサ1,2のハイレベルの信号出力の立ち上がりと立ち下がりを監視してその順番が異なる場合を図8により説明する。非接触センサ1,2の信号出力の立ち上がりにより進入方向を判定し、下り警報を行わせる。そして、その後の非接触センサ1,2のハイレベルの信号出力の立ち下がりを監視して、非接触センサ1,2の信号出力の立ち下がりが非接触センサ2→非接触センサ1の順番であると、論理回路10は、非接触センサ2を故障と判定して、故障R14を動作させ、非接触センサ2の故障を表示させる。
【0022】
異常時列車検知のうち、非接触センサ1,2のハイレベルの信号出力の立ち下がりが同時である場合を図9により説明する。非接触センサ1,2の信号出力の立ち上がりにより進入方向を判定し、下り警報を行わせる。そして、その後の非接触センサ1,2のハイレベルの信号出力の立ち下がりを監視して、非接触センサ1,2の信号出力の立ち下がりが同時であると、論理回路10は故障とは判定しない。
【0023】
以上説明したように、本実施例によれば、非接触センサ1,2を用いているので、回路システムが簡単となり、コストダウンを図ることができる。また、非接触センサ1,2の検知出力の時間差により、列車の進入方向を検知することができると共に、列車速度検知が可能である。また、非接触センサ1,2の検知出力の組み合わせパターンが異常であることにより、非接触センサ1,2の故障を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例である列車検知装置を示す平面図及び側面図である。
【図2】本発明の一実施例である列車検知装置の回路構成を示すブロック正面図である。
【図3】図1における論理回路の論理動作の一例を示すタイムチャートである。
【図4】図1における論理回路の論理動作の他の例を示すタイムチャートである。
【図5】図1における論理回路の論理動作の別の例を示すタイムチャートである。
【図6】図1における論理回路の論理動作の別の例を示すタイムチャートである。
【図7】図1における論理回路の論理動作の別の例を示すタイムチャートである。
【図8】図1における論理回路の論理動作の別の例を示すタイムチャートである。
【図9】図1における論理回路の論理動作の別の例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1,2 非接触センサ
3 レール
4 支柱
5 支持バー
6 先頭車
7 制御箱
8 フォトカプラ入力回路
9 チャタリングマスク回路
10 論理回路(自己診断手段)
11 自己診断メモリ
17 出力回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って所定の距離隔てて設置され、前を通過する物体を検知する複数の非接触センサと、該複数の非接触センサの出力の状態により列車の検知を判定する自己診断手段とを有することを特徴とする列車検知装置。
【請求項2】
前記自己診断手段は、前記複数の非接触センサの検知出力の立ち上がりの時間差により列車の進入方向を判定することを特徴とする請求項1に記載の列車検知装置。
【請求項3】
前記自己診断手段は、前記複数の非接触センサの検知出力の組み合わせパターンが異常であるときに、前記非接触センサの故障と判定することを特徴とする請求項1または2に記載の列車検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−15644(P2007−15644A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201539(P2005−201539)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000221904)東邦電機工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】