説明

利便性に優れたセキュリティ機能を備える携帯端末装置およびアクセスの制御方法

【課題】移動してから使用する際の利便性を確保したセキュリティ機能を備える携帯端末装置を提供する。
【解決手段】時刻tsで使用を終了したことを示す使用終了イベントを生成する。時刻tfで使用を開始することを示す使用開始イベントを生成する。携帯端末装置が時刻tsから時刻tfまで測定した加速度を、静止状態を示す第1の値と移動状態を示す第2の値に2値化する。開始ステージS1では時刻tsと第1の値から第2の値に変化する時刻ta1との間の移動準備時間taを測定する。移動準備時間が閾値t1を超えたときに使用開始イベントに応じてユーザ認証を要求する。ステージS1からステージS3までのすべてにおいて加速度と時間に基づいて本人が支配していると判定したときにはユーザ認証を省略する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯端末装置の利便性を向上したセキュリティ機能に関し、さらに詳細には本人が支配しているか第3者が支配している可能性があるかを判断してアクセスを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータは、第3者による不正なアクセスから情報を保護するためにさまざまなセキュリティ機能を備える。たとえばあるセキュリティ機能は、停止しているコンピュータを起動する際にパスワードや指紋によるユーザ認証が成功しないとブートしないようにする。また、他のセキュリティ機能では動作中のコンピュータから本人が離れている間に第3者によりデータが盗まれたり画面をみられたりすることを防ぐために、一定時間アイドル状態が続くと本人がコンピュータの前にいないと判断して、スクリーン・セーバの画面を表示したりサスペンド状態に遷移したりする。そして、復帰の際にはパスワードや指紋によるユーザ認証を要求する。しかし、パスワードや指紋による認証手続きは、第3者の不正なアクセスを防ぐ効果があると同時に本人がアクセスする際には不便さを与えるという側面がある。
【0003】
特許文献1は、自らがおかれた状態が異常であると判断した場合、外部からの入力を受け付ける入力手段に対する入力を禁止する携帯端末を開示する。ここに、異常状態とは携帯端末のユーザの意思とは関係なく、当該端末のユーザ以外の第3者によって当該端末が利用される可能性がある状態をいい、具体的には加速度センサが検出する加速度で判断する落下または衝撃、および充電していない状態で判断する放置の各状態とすることが記載されている。
【0004】
特許文献2は、机の上などに暫く据え置いて使用する使用法と自在に持ち運んで使用する使用法との双方に適合し、情報盗用の危険性を低減させた可搬型情報処理装置を開示する。同文献には、当該可搬型情報処理装置は移動距離の累積値が所定の基準値に達すると一部の機能を使用不能状態にすることが記載されている。特許文献3は、利便性とセキュリティ保護の両面を実現し、ユーザに煩わしさを感じさせないようにした携帯端末装置を開示する。
【0005】
同文献には、装置内のアプリケーションに対するロック機能を働かせるタイミングを、折りたたみ式携帯電話の場合の折りたたみ時、キーを保護する蓋がある装置の場合はその蓋を閉じた時、数十秒から数分程度のある一定の時間の間に操作がなくユーザが端末装置から離れたとみなした時などとすることが記載されている。また、加速度の大きさにより、端末装置が異常状態にあるか放置されているかなどを判定することが記載されている。
【0006】
具体的には、携帯電話機の状態が「激しく動いている」、「緩やかに動いている」、「静止している」、「落下している」のうちのどれに当てはまるか分類する。そして、「激しく動いている」の場合は「異常な状態にある」と判定し、「緩やかに動いている」の場合は「異常状態ではなく、尚且つ放置状態ではない」と判定し、「落下している」の場合は「異常な状態にある」と判定する。また、「静止している」の場合に蓋開閉センサにより蓋が閉じていると判断される場合は「放置されている」と判定し、蓋が開いていると判断される場合は「異常状態ではなく、尚且つ放置状態ではない」と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−13546号公報
【特許文献2】国際公開WO2002−103497号公報
【特許文献3】特開2008−306412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、ビジネスの場ではユーザがオフィスで使用しているノートブック型携帯式コンピュータ(以下、ノートPCという。)の使用状態を維持しながら、会議室に持ち込んで使用したいという要望が多くなっている。オフィスから会議室などのように短時間の移動において、一旦蓋を閉めると移動先で蓋を開けたときにはパスワードの入力を要求すると、ユーザは煩わしさを回避しようとして蓋を閉めないで持ち運ぼうとする。結果的に、ノートPCを蓋が開いた不安定な状態で保持して筐体にストレスを生じさせたり、落下による危険性を生じさせたりしている。このときオーナーである本人がノートPCを支配していることが明らかなことを確認してパスワードの入力も省くことができれば利便性が向上する。
【0009】
パスワードの入力を省くためには、オフィスで使用してから会議室に移動するまでの間にノートPCが第3者に支配される可能性がないことを認識してアクセスを制御する必要がある。特許文献1および特許文献3の発明では、加速度センサが検出する加速度の大きさに着目して、落下、衝撃および放置の3つの状態で異常状態を検出しているが、ノートPCではポケットなどから滑り落ちるような携帯電話機とは異なり落下や衝撃を伴って第3者の手に渡ったりアクセスできる状態になったりすることは少ない。したがって携帯電話に適用した加速度の大きさを測定する方法では、ノートPCが第3者に支配されたことを効果的に検出することはできない。
【0010】
特許文献3の発明では、加速度センサにより携帯電話機が静止していると分類したときに、蓋開閉センサが閉じていると判断したときは放置されていると判定するため、オフィスから会議室に蓋を閉めてノートPCを持ち運ぶときには蓋を閉めた瞬間にロック機能が働いてしまい、会議室に到着したときにパスワードを入力する必要がでてくる。また、特許文献2の方法では第3者が近くの場所に持ち出した場合には検出できない。
【0011】
そこで本発明の目的は、第3者の支配下に陥る可能性が生じたときに本人が支配していることを判定してユーザ認証を省略する携帯端末装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、移動してから使用する際の利便性を確保したセキュリティ機能を備える携帯端末装置を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのようなコンピュータにおけるアクセスの制御方法およびコンピュータ・プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、使用中は携帯端末装置がオーナーである本人が支配していることを前提にして、使用を終了してからつぎに使用を開始するまでの間の携帯端末装置を保持する人間の行動態様に基づいてセキュリティと利便性の調和を図る。携帯端末装置は使用を終了すると放置されて第3者の支配下に陥る可能性がでてくる。これを防止するために携帯端末装置は、使用を終了するイベントを検出すると、つぎに使用を開始するイベントを検出したときにユーザ認証を要求する。
【0013】
一方、オフィスから会議室に短時間で移動するような場合は、ユーザには会議室に到着したときはただちに携帯端末装置を使用したいという要望がある。このとき、オフィスから会議室までの移動の間に本人が支配していることを携帯端末装置が認識できれば、会議室で使用を開始する際にユーザ認証を要求しないでもセキュリティは確保できる。本発明では、使用を終了してから移動先で使用を開始するまでのユーザの行動態様とそれに応じた携帯端末装置の加速度の発生状況を分析し、加速度データと時間情報に基づいて安全性を検証する。そして、第3者に支配された可能性があると判定したときはユーザ認証を要求し、第3者に支配された可能性を排除できるときは移動の間も本人が継続して支配していると判定してユーザ認証を省略する方法を提供する。
【0014】
本発明は、使用を終了したことを示す使用終了イベントを携帯端末装置が生成する。使用終了イベントが生成されたあとに携帯端末装置は加速度を測定する。携帯端末装置は測定した加速度を、静止状態を示す第1の値と移動状態を示す第2の値に2値化する。移動先で携帯端末装置は使用を開始することを示す使用開始イベントを生成する。2値化するのは、使用開始イベントが生成される前でも後でもよい。開始ステージにおいて携帯端末装置は使用終了イベントが生成された時刻と第1の値から第2の値に変化する時刻との間の移動準備時間を測定する。携帯端末装置は移動準備時間が第1の閾値を超えたときに使用開始イベントに応答してユーザ認証を要求する。
【0015】
開始ステージで移動準備時間が第1の閾値を越える場合は、使用終了イベントが生成されたあとにユーザが携帯端末装置から長い時間離れていたと想定できるため、その間に第3者による支配の可能性があるとして携帯端末装置はユーザ認証を要求する。さらに本発明では、開始ステージにおいて本人が支配していると判定した場合に携帯端末装置はさらに中間ステージの判定をすることができる。中間ステージにおいて携帯端末装置は、第2の値から第1の値に遷移しさらに第2の値に遷移する一時的な静止状態における第1の値に遷移している時間を測定する。
【0016】
そして携帯端末装置は移動準備時間が第1の閾値以下でかつ一時的に第1の値に遷移している時間が第2の閾値を越えたときに使用開始イベントに応答してユーザ認証を要求することができる。その結果開始ステージで本人が支配していると判定した場合でも、中間ステージで一時的に第1の値に遷移している時間が第2の閾値を越えた場合は、移動の途中でユーザが携帯端末装置から長い時間離れたために第3者による支配の可能性があると想定して携帯端末装置はユーザ認証を要求する。
【0017】
さらに本発明では、開始ステージと中間ステージにおいて本人が支配していると判定した場合に携帯端末装置はさらに終了ステージの判定をすることができる。終了ステージにおいて携帯端末装置は、第2の値から第1の値に遷移する時刻と使用開始イベントが生成された時刻の間の使用準備時間を測定する。終了ステージにおいて、使用準備時間が第3の閾値を超えたときに使用開始イベントに応答して携帯端末装置はユーザ認証を要求することができる。
【0018】
その結果、開始ステージおよび中間ステージでいずれも本人が支配していると判定した場合でも、終了ステージで使用準備時間が第3の閾値を超えたときは使用を開始する前にユーザが携帯端末装置から長い時間離れたために第3者による支配の可能性があると想定して携帯端末装置はユーザ認証を要求する。なお、終了ステージとは、中間ステージにおいて一時的に第1の値に遷移している時間が第2の閾値を越えた後に、使用準備時間を経て使用開始イベントが生成された場合と定義できる。
【0019】
本発明では、携帯端末装置が開始ステージ、中間ステージ、および終了ステージのいずれにおいても本人が支配していると判定した場合または第3者が支配した可能性がないと判定した場合には、使用開始イベントに応答してユーザ認証を省略することができる。その結果、本人あるいは本人の委託を受けた者が携帯端末装置を保持してオフィスから会議室まで移動するような場合は、会議室でユーザ認証をしないで携帯端末装置にアクセスできるようになる。
【0020】
しかも、3つのステージの各判定をクリアするのは第3者が支配する状況下では困難なため、ユーザ認証を省略しても安全を確保することができる。また、本人が移動するときの持ち運びの挙動自体がユーザ認証のためのパスワード入力の役割を果たすため、本人は携帯端末装置がパスワード情報を作成できるように各ステージの閾値時間を考慮して会議室まで移動することでユーザ認証を省略することができるようになる。
【0021】
本発明は、開始ステージと終了ステージだけでアクセスを制御することもできる。このとき携帯端末装置は、使用終了イベントが生成された時刻と第1の値から第2の値に変化する時刻との間の移動準備時間を測定し、かつ第2の値から第1の値に遷移する時刻と使用開始イベントが生成された時刻の間の使用準備時間を測定する。携帯端末装置は移動準備時間が第1の閾値以下でかつ使用準備時間が第3の閾値を超えたときに使用開始イベントに応答してユーザ認証を要求することができる。
【0022】
携帯端末装置は使用終了イベントを携帯端末装置のディスプレイ筐体が閉じたことに応答して生成し、使用開始イベントをディスプレイ筐体が開いたことに応答して生成することができる。また携帯端末装置は使用終了イベントを携帯端末装置に対して入力が所定時間ないときに生成し、使用開始イベントを携帯端末装置に対するアクセス・ボタンの押下により生成することができる。携帯端末装置は使用終了イベントから使用開始イベントまでの間プロセッサの動作を継続させると、移動先では短時間でコンピュータの使用を開始することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、第3者の支配下に陥る可能性が生じたときに本人が支配していることを判定してユーザ認証を省略する携帯端末装置を提供することができた。さらに本発明により、移動してから使用する際の利便性を確保したセキュリティ機能を備える携帯端末装置を提供することができた。さらに本発明により、そのようなコンピュータにおけるアクセスの制御方法およびコンピュータ・プログラムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ノートPCの外形を示す斜視図である。
【図2】本発明に関連するノートPCの構成を示す機能ブロック図である。
【図3】使用中のノートPCが移動して移動先で使用が開始されるときの2値化した加速度の様子を示す図である。
【図4】ノートPCに対するアクセスを制御する手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明をタブレット型の携帯端末装置に適用する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[ノートPCの構成]
図1はノートPC10の外形を示す斜視図である。ノートPC10は、ディスプレイ筐体01がシステム筐体03にヒンジ05で結合されて開閉可能なように支持されている。ディスプレイ筐体01は液晶表示装置(LCD)13を収納している。システム筐体03の表面にはキーボード07とポインティング・デバイス(マウス)09が実装されている。また、システム筐体03には、指紋認証をするために指をスワイプするウインドウ08が形成されている。さらにディスプレイ筐体03には、ノートPC10に電源を投入するパワー・ボタン06が設けられている。ディスプレイ筐体01の上縁には、ディスプレイ筐体01の開閉状態を検出するリッド・センサ51が取り付けられている。
【0026】
図2は、本発明に関連するノートPC10の主要な構成を示す機能ブロック図である。入力デバイス11は、キーボード07およびポインティング・デバイス09を含む。ノートPC10がタブレット式コンピュータの場合は、入力デバイスをタッチパッド、デジタイザおよびソフトウエア・キーボードなどで構成することができる。本実施の形態においてはキーボード07によりユーザ認証のためのパスワードを入力する。ディスプレイ13は、アプリケーション実行部19またはアクセス制御部21が生成した画像データを表示する。本実施の形態においては、ディスプレイ13にパスワードまたは指紋によるユーザ認証のためのプロンプトを表示する。
【0027】
指紋認証装置15はウインドウ08に対応する位置に取り付けられたスワイプ式の指紋センサを備え、パスワードに代えてユーザ認証をするためのデバイスである。入出力インターフェース17は、主としてコントローラおよびデバイス・ドライバなどで構成され、入力デバイス11、ディスプレイ13、および指紋認証装置15との間でのデータ転送を制御する。アプリケーション実行部19、アクセス制御部21、判定部59、および加速度データ記録部61は、主としてCPU、メイン・メモリ、アプリケーション・プログラム、オペレーティング・システムなどで構成されている。
【0028】
アプリケーション実行部19は、ユーザまたはシステムが所定の作業をするためのプログラムを実行する。アクセス制御部21は、ユーザがパスワードまたは指紋によるユーザ認証を設定するためのユーザ・インターフェース機能を有する。アクセス制御部21はユーザ認証が設定されたときに、所定のイベントに基づいてアプリケーション実行部19または入出力インターフェース17に対してアクセス禁止の設定をして、認証のためのプロンプトをディスプレイ13に表示する。アクセス制御部21は、プロンプトに対してパスワードまたは指紋が入力されたときにアプリケーション実行部19または入出力インターフェース17に対してアクセス許可の設定をする。
【0029】
アクセス制御部21は、アクセス禁止の設定をしている間はアプリケーション実行部19が生成した画像データとは異なる画像データをあらかじめ用意してディスプレイに表示することができる。アクセス禁止の設定がされた入出力インターフェース17は、アクセス制御部21にパスワードの文字を送る以外は、アクセス許可の設定がされるまでアプリケーション実行部19に入力デバイス11から受け取った入力を送らないように動作する。アクセス禁止の設定がされたアプリケーション実行部19は、ユーザからの入力データを得ることができず、かつアプリケーション自らが出力したグラフィック画像をユーザの目に見える状態にすることができなくなる。
【0030】
アクセス制御部21がユーザ認証の設定をするための認証イベントは、イベント生成部55、アプリケーション実行部19、または入出力インターフェース17から受け取ることができる。たとえば認証イベントはアプリケーション実行部19から受け取るCPUのアイドル時間、入出力インターフェース17から受け取る入力デバイス11からの入力が中断している時間、イベント生成部55から受け取るリッド・センサ51が示すディスプレイ筐体01の開閉状態とすることができる。アクセス制御部21は、ユーザ認証の設定をしたときであっても判定部59からアクセス許可の通知を受け取った場合は、パスワードまたは指紋の入力がない場合でもアプリケーション実行部19または入出力インターフェース17に対してアクセス許可の設定をする。
【0031】
電源制御部23は、ユーザがパワー・ステートを設定するためのインターフェース機能を有する。電源制御部23は、アクセス制御部21、アプリケーション実行部19またはイベント生成部55から受け取ったイベントに基づいてノートPC10のパワー・ステートを制御する。パワー・ステートは、ACPIに規定するS0ステート(パワー・オン状態)、S3ステート(サスペンド状態)、S4ステート(ハイバネーション状態)またはS5ステート(ソフト・オフ状態)とすることができる。
【0032】
アクセス制御部21は、電源制御部23によるパワー・ステートの制御と連動してユーザ認証の設定をすることができる。たとえば、電源制御部23がノートPC10をサスペンド状態からレジュームさせるときは、レジュームの際にパスワード認証または指紋認証が成功しない限りアプリケーション実行部19または入出力インターフェース17をアクセス禁止に設定することができる。ただし、アクセス制御部21は、電源制御部23によるパワー・ステートの制御からは独立してユーザ認証の設定をすることができる。
【0033】
パワー・ボタン06は、ノートPC10のパワー・ステートをパワー・オン状態に遷移させる信号をイベント生成部55に送る。リッド・センサ51は、ディスプレイ筐体01の開閉状態を検出してイベント生成部55に通知する。イベント生成部55は、ディスプレイ筐体01が開かれたときにリッド・センサ51から受け取った信号に基づいて生成した開イベントとディスプレイ筐体01が閉じられたときにリッド・センサ51から受け取った信号に基づいて生成した閉イベントを加速度データ記録部61、判定部59、アクセス制御部21および電源制御部23に送る。
【0034】
加速度センサ53は、ノートPC10に生ずる加速度を直交する3軸で検出する。加速度センサ53は、重力加速度と落下または衝撃による加速度を検出することができるが、本実施の形態ではノートPC10が静止状態にあるか移動状態にあるかを判定するために検出された重力加速度の変化を利用する。加速度センサ53は、各軸が重力加速度に対応する所定のアナログ値を出力する。
【0035】
ノートPC10が持ち上げられて姿勢が変化すると、各軸が検出する重力加速度に対応する出力は静止状態を示す値から移動状態を示す値に変化する。静止状態は、ノートPC10の使用状態にあるか放置状態にあるかのいずれかに対応する。人間に保持されたノートPC10には、揺動が生ずるため各軸の出力には交流成分が重畳する。加速度データ処理部57は、所定の閾値に基づいて各軸のアナログの出力値を2値化する。2値化された各軸の出力は加速度センサ53の出力が閾値よりも大きいときは移動状態を示す1となり、閾値よりも小さいときは静止状態を示す0となる。
【0036】
加速度データ処理部57は、2値化された3つの出力に対して論理和演算を行い、加速度データとして加速度データ記録部61に送る。加速度データ記録部61は、受け取った加速度データをイベント生成部55から閉イベントを受け取ってから開イベントを受け取るまでの間所定のサンプリング周期で記録する。判定部59は、イベント生成部55から開イベントを受け取ったときに、加速度データ記録部61からそれまで記録された加速度データを取得して、アクセス制御部21がユーザ認証を設定したときに、パスワードまたは指紋によるユーザ認証を解除する判定をしてアクセス許可の通知をアクセス制御部21に送る。加速度データ記録部61は、判定部59に加速度データを送ったあとはそれまで記録していた加速度データをリセットして、閉イベントを受け取ったときに新たに加速度データの記録を開始する。
【0037】
[アクセス制御の方法]
つぎに判定部59がユーザ認証を要求するか否かを判定してノートPC10に対するアクセスを制御する方法について説明する。図3は、使用中のノートPC10が移動して移動先で使用が開始されるときの加速度データ記録部61に記録された加速度データを示している。図3(A)は、ノートPC10の正当なオーナーである本人がオフィスでの使用を終了して会議室まで移動して使用を開始するときの加速度データを示している。イベント生成部55は時刻tsで閉イベントを生成し、時刻tfで開イベントを生成している。ここで説明の便宜上時刻tsから時刻tfまでの間に、開始ステージS1、中間ステージS2、および終了ステージS3の3つの時間的なステージを定義する。
【0038】
開始ステージS1は、時刻tsから将来に向かって閾値時間t1で画定される時間範囲で、終了ステージS3は時刻tfから過去に遡って閾値時間t3で画定される時間範囲である。また、中間ステージS2は、時刻tfと時刻tsの間の時間から閾値時間t1時間と閾値時間t3を除いた中間部分の時間範囲である。中間ステージS2には、閾値時間t2の移動式のタイム・ウインドウ80が設定されている。時刻tsと時刻tfの間の時間は一例として10分程度を想定する。
【0039】
閾値時間t1には、オフィスで本人がディスプレイ筐体01を閉じてから移動の準備をしてノートPC10を持ち上げるまでの標準的な時間としてたとえば10秒を設定する。閾値時間t3には、本人がノートPC10を移動先の会議室の机の上においてからディスプレイ筐体01を開くまでの標準的な時間としてたとえば10秒を設定する。タイム・ウインドウ80の閾値時間t2には、ノートPC10を保持した本人が移動の途中でエレベータに乗ったり停止したりしたときに、加速度データが一時的に静止状態を示すことがある標準的な時間としてたとえば2秒を設定する。
【0040】
図3(A)では、時刻tsから移動準備時間taが経過する時刻ta1まで加速度データが0を維持し時刻ta1の後に1に変化している。時刻ta1以後の加速度データは、中間ステージS2の大部分の時間、および終了ステージS3の時刻tc3まで1を維持し、時刻tc3で0に変化してその後は0を維持しながら時刻tfに至っている。中間ステージS2には、加速度データが一時的に0となる一時的な静止状態を示す時間tbが現れている。つぎに、この2値化された加速度データから抽出した移動準備時間ta、一時的な静止状態を示す時間tb、および使用準備時間tcに基づいてノートPC10が第3者に支配された可能性を判定する方法を説明する。
【0041】
ここにノートPC10が第3者に支配されるとは、本人の許可を得ないで第3者がアクセスできる状態に陥ることをいう。第3者がアクセスできる状態とは、パスワードや指紋によるユーザ認証が要求されない場合にノートPC10からデータを取り出したりディスプレイに表示された情報をみたりあるいは何らかのデータを入力したりする状態をいう。第3者に支配される場合には、ノートPC10がそれまで本人が支配していた位置から移動した場合と、継続して同じ位置にある場合のいずれも含む。
【0042】
したがって、ノートPC10が第3者に支配されるとは、本人がノートPC10から第3者がアクセスできる程度の時間離れた状態ということができる。本発明では、2値化した加速度データに加えて時間情報も同時に利用することによりノートPC10が第3者に支配される可能性があったか否かを判定する。本実施の形態では、オフィスでノートPC10が使用されている間は、本人が支配していることを前提にする。
【0043】
判定部59は、イベント生成部55により開イベントが生成されたときに、閉イベントから開イベントまでの間に記録された加速度データを加速度データ記録部61から受け取る。判定部59は移動開始から移動終了までの開始ステージS1、中間ステージS2および終了ステージS3において、本人または第3者がディスプレイ筐体01を持ち運んで使用を開始するまでの行動態様が生成した加速度データと閾値時間t1、t2、t3から第3者支配の可能性を判定する。
【0044】
会議に出席するために離席する直前まで本人はディスプレイ筐体01を開いて入力デバイス11を操作しているかディスプレイ13をみているとする。ノートPC10を使って作業をするユーザにとって、ディスプレイ筐体01を閉じるということはもはやそこで作業をすることはないため、通常はただちに移動体勢に移ってノートPC10を持ち上げる。
【0045】
ここで、時刻tsでは本人がノートPC10を支配していることは確実であるが、時刻tsを過ぎると使用を終了しているため本人がノートPC10を放置して第3者が支配する可能性がでてくる。移動準備時間taが短い場合は、ユーザがノートPC10から離れている時間が短いためノートPC10を本人が支配していると想定する。その前提には第3者は本人が支配していた時点からごく短時間しか経過していない状況でディスプレイ筐体01を持ち運ぶことが困難であるという事情がある。
【0046】
しかし、ディスプレイ筐体01が閉じられてから持ち運びが開始されるまでの時間が長い場合は第3者による支配の可能性が生じたと想定する。ユーザは、ノートPC10を持ち運ぶために時刻tsでディスプレイ筐体01を閉じて時刻ta1で持ち上げる。加速度データ処理部57が生成する加速度データは時刻tsから時刻ta1までは0を示している。
【0047】
判定部59は、ディスプレイ筐体01が閉じており、かつ加速度データが0を示す静止状態である移動準備時間taの間はノートPC10が放置状態にあるとして認識する。加速度データ処理部57は、時刻ta1でノートPC10が持ち上げられたときに1を出力する。図3(A)では移動準備時間taは閾値時間t1よりも短い。判定部59は移動準備時間taが閾値時間t1よりも短いため、本人が持ち上げたと認識して本人が支配しながら中間ステージS2に移ったと判定する。なお、ユーザは、ディスプレイ筐体01を閉じる前に先に持ち上げたり、机上をすべらせてディスプレイ筐体01を閉じやすい位置までノートPC10を移動させたりすることがあるが、その場合に移動準備時間taは0となり、判定部59は開始ステージS1での放置状態は無かったと認識して、同様に本人が支配しながら中間ステージS2に移ったと判定する。
【0048】
中間ステージS2において判定部59は、本人がノートPC10を保持して会議室まで移動する間の第3者支配の可能性を判定する。開始ステージS1で本人が持ち運びを開始したあとに、中間ステージS2で加速度データが連続して移動状態を示す場合は、本人がノートPC10から離れたことはないと想定する。さらに短い時間加速度データが0を示す場合も本人がノートPC10を保持しながら途中で立ち止まった結果だと想定する。その前提には移動の途中で第3者がノートPC10を支配下におくには所定の時間が必要であるという事情がある。しかし、加速度データが長時間0を示すときは、移動の途中で本人がノートPC10から離れて放置状態になり第3者支配の可能性があると想定する。
【0049】
判定部59は、中間ステージS2の全時間範囲に対してタイム・ウインドウ80を適用し、タイム・ウインドウ80の閾値時間t2を越えて加速度データが連続的に0に遷移したことがあったか否かを調べて第3者支配の可能性を判定する。図3(A)では、一時的な静止状態を示す時間tbは閾値時間t2よりも短いため判定部59は本人が支配していると判定する。
【0050】
終了ステージS3では、本人がノートPC10を保持して会議室に到着し机上に置いてからディスプレイ筐体01を開くまでの間の第3者支配の可能性を判定する。中間ステージS2で本人がノートPC10を支配している場合に、会議室に到着してからごく短時間でディスプレイ筐体01を開かれたときは、第3者支配の可能性は低いと想定する。その前提には第3者は会議室の机の上に本人によって置かれたノートPC10のディスプレイ筐体01をごく短時間で開くことは困難であるという事情がある。しかし、一旦会議室の机にノートPC10を置いてから長時間が経過してからディスプレイ筐体01が開かれるときは、本人がノートPC10から離れていたため第3者支配の可能性が生じたと想定する。
【0051】
加速度データ処理部57は、時刻tc3でノートPC10が机上に置かれたときに0を出力する。判定部59は、ディスプレイ筐体01が閉じており、かつ加速度データが0を示す使用準備時間tcの間はノートPC10が放置状態にあると認識する。図3(A)で判定部59は使用準備時間tcが閾値時間t3よりも短いため、本人が机上にノートPC10を置いてディスプレイ筐体01を開いたため本人が支配していると判定する。判定部59は、図3(A)に示すように、開始ステージS1、中間ステージS2および終了ステージで本人が支配すると判定したときに、結論として使用終了イベントから使用開始イベントまでの間に第3者に支配された可能性がないと判定することができる。なお、中間ステージS2でいきなり開イベントが発生する場合、すなわち放置状態なしで使用準備時間tcが0の場合は、終了ステージS3が事実上存在しないため本人が継続して支配していると判定する。
【0052】
図3(B)では、時刻tsから時刻tfまでの間加速度データは0になっており、ノートPC10が放置状態にあることを示している。この場合判定部59は移動準備時間taが時刻tfを越えるためノートPC10から本人が長時間離れており第3者支配の可能性があると判定する。図3(C)では移動準備時間taが閾値時間t1よりも長いため判定部59は、開始ステージS1で第3者支配の可能性があると判定する。判定部59は、開始ステージS1で第3者支配の可能性があると判定したときは、中間ステージS2、および終了ステージの判定をしない。
【0053】
図3(D)では、判定部59は開始ステージS1で本人が支配すると判定したが、中間ステージS2では、一時的な静止状態を示す時間tbがタイム・ウインドウ80閾値時間t2よりも長いため第3者支配の可能性があると判定する。判定部59は、中間ステージS2で第3者支配の可能性があると判定したときは、終了ステージの判定をしない。図3(E)では、判定部59は開始ステージS1と中間ステージS2で本人が支配すると判定したが、終了ステージS3では使用準備時間tcが閾値時間t3よりも長いため第3者支配の可能性があると判定する。
【0054】
本人はアクセス制御部21のインターフェース機能を通じて、閾値時間t1、t2、t3を設定することができる。本発明では、第3者が支配することがあり得ないような行動態様で本人が会議室まで移動しながら使用を開始して3つのステージをクリアすればユーザ認証を省略できる。この場合、本人の行動態様が画定する2値化された加速度データと時間情報は本人しか作成できないためユーザ認証に要求されるパスワード情報に相当するといえる。したがって本人は、閾値時間t1、t2、t3を自らの行動態様に適合するように充分短く設定しておき、ディスプレイ筐体01を閉じたあとは各閾値時間t1、t2、t3を満たすように持ち運んでから移動先でディスプレイ筐体01を開くことで使用時の不便さを解消しながらセキュリティを確保することができる。
【0055】
[アクセス制御の手順]
つぎに、ノートPC10においてアクセスを制御する方法を図4のフローチャートを参照して説明する。ブロック101では、ユーザが電源制御部23に対してパワー・ステートの設定をする。さらにユーザはアクセス制御部21に対して所定の認証イベントに対するユーザ認証の設定をする。ここではユーザは電源制御部23に対して、入力デバイス11から所定の時間入力がないときにサスペンド状態に移行する設定をする。また、ディスプレイ筐体01が閉じられたときにディスプレイの表示を停止したり、ハードディスク・ドライブ(HDD)の回転を停止したりといったような省電力状態に移行するように設定する。ただし省電力状態でも加速度センサ53、加速度データ処理部57、および加速度データ記録部61の動作は維持しておく必要がある。
【0056】
ユーザは、アクセス制御部21に対してディスプレイ筐体01が閉じられてから開かれるときにユーザ認証を要求する設定をする。アクセス制御部21は、アプリケーション実行部19または入出力インターフェース17に、ディスプレイ筐体01が開かれたときにユーザ認証を要求し、パスワードまたは指紋の入力がない限り動作を停止させるための設定をする。ユーザは、アクセス制御部21に対して、閾値時間t1、t2、t3の設定をする。ブロック103では、オフィスでノートPC10を使用していた本人が会議室に移動するためにディスプレイ筐体01を閉じる。ディスプレイ筐体01が閉じられたこと検出したリッド・センサ51から信号を受け取ったイベント生成部55は、電源制御部23、アクセス制御部21および加速度データ記録部61に閉イベントを送る。
【0057】
以後、判定部59がアクセス制御部21にアクセス許可の通知をしない限り、アクセス制御部21はディスプレイ筐体01が開かれたときにユーザ認証を要求する。ブロック105で電源制御部23はノートPC10を省電力状態に移行させる。ここでは短時間のうちにディスプレイ筐体01が開かれることを想定しているので、CPUの動作を停止させない程度の省電力状態とすることができる。ただし、本発明はアクセス制御に連動してノートPC10を省電力状態に遷移させないでも実現できる。
【0058】
ブロック107では、閉イベントを受け取った加速度データ記録部61は、加速度データ処理部57から受け取った加速度データを所定のサンプリング周期でメイン・メモリに記憶する。ブロック109では、電源制御部23は、入力デバイス11から連続して入力がない時間が所定値を越えたか否かを判断する。所定の時間の間入力がないと判断したときは、ブロック123で電源制御部23はノートPC10をサスペンド状態に移行させる。その後は、ユーザがパワー・ボタン06やキーボードのファンクション・キーを押下することでレジュームさせることができるが、その際にアクセス制御部21はディスプレイ13に認証画面を表示してパスワードまたは指紋入力を求める。
【0059】
ブロック111では、ユーザまたは第3者がディスプレイ筐体01を開く。すなわち、ノートPC10が移動の途中で第3者の支配下に陥った可能性があることを想定する。リッド・センサから51から信号を受け取ったイベント生成部55は、電源制御部23、アクセス制御部21、判定部59、および加速度データ記録部61に開イベントを送る。電源制御部23は、開イベントに応じてノートPC10のパワー・ステートをパワー・オン状態に復帰させる。
【0060】
ブロック113で判定部59は、開始ステージS1の判定を行う。判定部59は、移動準備時間taが閾値時間t1よりも短いと判断したときは本人がノートPC10を持ち運び出したと判定してブロック115に移行する。それ以外のときは、第3者が持ち運びだした可能性があると判定してブロック121に移行する。ブロック121では、判定部59がアクセス制御部21にアクセス許可の通知をしないため、ブロック101の手順に基づいてアクセス制御部21は、ディスプレイ筐体01にパスワードまたは指紋によるユーザ認証をするプロンプトを表示する。
【0061】
ブロック121でパスワードまたは指紋によるユーザ認証が成功すると、アクセス制御部21は、アプリケーション実行部19または入出力インターフェース17にアクセス許可の設定をする。ブロック115で判定部59は、中間ステージS2の判定を行う。判定部59は、中間ステージS2の全時間範囲に渡って一時的な静止状態を示す時間tbがタイム・ウインドウ80の閾値時間t2よりも短いと判断したときは本人がノートPC10を継続して運んでいると判定してブロック117に移行する。それ以外のときは、第3者が支配している可能性があると判定してブロック121に移行する。
【0062】
ブロック117で判定部59は、終了ステージS3の判定を行う。判定部59は、使用準備時間tcが閾値時間t2よりも短いと判断したときは会議室で本人がディスプレイ筐体01を開いたと判定してブロック119に移行する。それ以外のときは、会議室で第3者が開いた可能性があると判定してブロック121に移行する。ブロック119で判定部59は、移動開始から移動終了までの間に3つのステージでノートPC10を本人が支配していると判定し、アクセス制御部21にアクセス許可の通知をする。
【0063】
通知を受け取ったアクセス制御部21は、アプリケーション実行部19または入出力インターフェース17にアクセス許可の設定をする。閉イベントが生成されてから開イベントが生成されるまでの間は、CPUが動作を継続している。したがって、判定部59はブロック113からブロック117までの判定を、イベント生成部55から開イベントを受け取ってから極短時間で終了することができるため、ユーザはディスプレイ筐体01を開いたときにブロック119でユーザ認証を要求されることなくただちにノートPC10にアクセスできるようになる。
【0064】
図4の手順ではブロック115とブロック117を省略してブロック113だけで判定することもできる。また、ブロック117を省略してブロック113とブロック115だけで判定することもできる。さらに、ブロック115を省略してブロック113とブロック117だけで判定することもできる。図4のブロック113から117までは、加速度データと時間情報から本人が支配している状態に着目して、その状態を示す加速度データがない場合に第3者が支配している可能性があると判定したが、第3者が支配している状態に着目してその状態を示す加速度データと時間情報がある場合に第3者が支配している可能性があると判定することもできる。
【0065】
たとえば、図4のブロック113で移動準備時間ta、一時的な静止状態を示す時間tb、および使用準備時間tcがそれぞれ閾値時間t1−1、t2−1、t3−1よりも長くなったときにブロック121に移行させ、パスワード要求画面を表示させることができる。その場合は、閾値時間t1−1、t2−1、t3−1をそれぞれ閾値時間t1、t2、t3よりも長く設定することができる。
【0066】
リッド・センサ51が生成する閉イベントは、ノートPC10の使用を終了した使用終了イベントまたはノートPC10が移動を開始するための移動開始イベントとしてとらえることができる。そして、入力デバイス11から入力がない時間が所定時間を経過したとき、または、キーボード07に設けられたファンクション・キーが押下されたときに使用終了イベントまたは移動開始イベントを生成することもできる。
【0067】
リッド・センサ51が生成する開イベントは、ノートPC10の使用を開始する使用開始イベントまたはノートPC10が移動を終了した移動終了イベントとしてとらえることができる。そして、電源を投入するパワー・ボタン06や、キーボード07に設けられたファンクション・キーが押下されたときに使用開始イベントまたは移動終了イベントを生成することもできる。
【0068】
[タブレットPCなどへの適用]
本発明はディスプレイ・カバーが存在せず、ディスプレイが常時露出しているタブレットPC、スマートフォンまたは携帯電話などのような携帯端末装置に適用することができる。図5はスマートフォン200がパスワードを要求するときの様子を示す図である。図5(A)は、ディスプレイ201にデスクトップ画面が表示され、ユーザはアイコンをタップしてアプリケーションを実行することができる。
【0069】
所定の時間ディスプレイ201に対するアクセスがないと、スマートフォン200は図5(B)のように画面が消えて省電力状態に移行する。図5(C)では画面が消えた状態でアクセス・ボタン203を押下すると、ディスプレイ201にデスクトップ画面に復帰するためのスライド・バー205が表示される。スライド・バー201を指でスライドさせると図5(A)のデスクトップ画面に戻ることができるが、パスワードを設定している場合には図5(D)のようにディスプレイ201にパスワード入力画像207が表示される。ユーザが入力画像207上に表示されたシンボルを所定の順番でタップすることによりパスワード情報を入力すると図5(A)のデスクトップ画面が表示される。
【0070】
ノートPC10では、第3者支配の可能性が生ずる時刻tsをリッド・センサ51の信号による閉イベントにより生成した。また、第3者により支配された可能性があるか否かを判定する時刻tfをリッド・センサ51の信号による開イベントにより生成した。リッド・センサが存在しないスマートフォンにおいては、使用終了イベントを図5(B)の状態に移行した時点で生成することができる。また、使用開始イベントを図5(C)でスライド・バー205を操作したときに生成することができる。
【0071】
スマートフォン200に図4の手順を適用すれば、本人が使用中にスマートフォンの状態が図5(B)に移行し、図5(C)の操作が行われたときに判定部59が開始ステージS1から終了ステージS3までの3つのステージで本人が支配していると判定したときは、図5(D)のパスワード要求画面を表示しないで図5(C)の復帰操作画面から直接図5(A)のデスクトップ画面を表示する状態に移行させることができる。また、判定部59がいずれかのステージで第3者支配の可能性があると判定したときは、図5(D)のパスワード要求画面を表示する。
【0072】
さらに、図5(C)でアクセス・ボタン203を操作したときに開始イベントを生成することもできる。その場合は、3つのステージで本人が支配していると判定したときは、図5(C)の復帰操作画面および図5(D)のパスワード入力画面を表示しないで図5(B)の状態から直接図5(A)の状態に復帰させることができる。このとき、判定部59がいずれかのステージで第3者支配の可能性があると判定したときは、図5(C)の復帰操作画面と図5(D)のパスワード入力画面を表示することができる。なお、アクセス・ボタン203に不意に接触した場合と意図的に操作した場合を区分しないと不用意に復帰してしまうため、一定の時間以上継続して押下し続けないと開始イベントの生成を実施しない配慮を加えることもできる。
【0073】
手にもって操作するスマートフォン200の場合は、ノートPCと異なって使用状態のときの姿勢は水平状態ではない。この場合、ユーザが手に持って操作するときの所定の範囲のスマートフォン200の姿勢を使用状態として定義し、それから外れた姿勢を移動状態として定義して2値化した加速度データを生成することができる。
【0074】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0075】
10…ノートPC
80…タイム・ウインドウ
200…スマートフォン
ta…移動準備時間
tb…一時的な静止状態を示す時間
tc…使用準備時間
t1、t2、t3…閾値時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末装置がアクセスを制限する方法であって、
前記携帯端末装置が使用を終了したことを示す使用終了イベントを生成するステップと、
前記使用終了イベントが生成されたあとに前記携帯端末装置が測定した加速度を、静止状態を示す第1の値と移動状態を示す第2の値に2値化するステップと、
前記携帯端末装置が使用を開始することを示す使用開始イベントを生成するステップと、
前記使用終了イベントが生成された時刻と前記第1の値から前記第2の値に変化する時刻との間の移動準備時間を測定するステップと、
前記移動準備時間が第1の閾値を超えたときに前記使用開始イベントに応答してユーザ認証を要求するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記第2の値から前記第1の値に遷移しさらに前記第2の値に遷移する一時的な静止状態における前記第1の値に遷移している時間を測定するステップと、
前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的に第1の値に遷移している時間が第2の閾値を越えたときに前記使用開始イベントに応答してユーザ認証を要求するステップと
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の値から前記第1の値に遷移する時刻と前記使用開始イベントが生成された時刻の間の使用準備時間を測定するステップと、
前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的に第1の値に遷移している時間が前記第2の閾値以下でさらに前記使用準備時間が第3の閾値を超えたときに前記使用開始イベントに応答してユーザ認証を要求するステップと
を有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的に第1の値に遷移している時間が前記第2の閾値以下でさらに前記使用準備時間が前記第3の閾値以下のときに前記使用開始イベントに応答してユーザ認証を省略してアクセスを許可するステップを有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の値から前記第1の値に遷移する時刻と前記使用開始イベントが生成された時刻の間の使用準備時間を測定するステップと、
前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記使用準備時間が第3の閾値を超えたときに前記使用開始イベントに応答してユーザ認証を要求するステップと
を有する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記使用終了イベントが前記携帯端末装置のディスプレイ筐体を閉じたことに応答して生成され、前記使用開始イベントが前記携帯端末装置のディスプレイ筐体を開いたことに応答して生成される請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記使用終了イベントから前記使用開始イベントまでの間プロセッサが動作を継続している請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
携帯端末装置であって、
前記携帯端末装置の加速度を計測する加速度センサと、
前記加速度センサの出力を、静止状態を示す第1の値と移動状態を示す第2の値に2値化した加速度データを生成する加速度データ処理部と、
前記携帯端末装置が使用を終了したことを示す終了イベントが生成されてから前記携帯端末装置が使用を開始することを示す使用開始イベントが生成されるまでの間の前記加速度データを記録する加速度データ記録部と
前記使用開始イベントに応答して前記加速度データから前記使用終了イベントが生成された時刻と前記第1の値から前記第2の値に変化する時刻との間の移動準備時間を測定し、該移動準備時間が第1の閾値を超えたときに前記携帯端末装置に対するアクセス禁止の判定をする判定部と
を有する携帯端末装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記第2の値から前記第1の値に遷移しさらに前記第2の値に遷移する一時的な静止状態における前記第1の値に遷移している時間を測定し、前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的に第1の値に遷移している時間が第2の閾値を越えたときに前記携帯端末装置に対するアクセス禁止の判定をする請求項8に記載の携帯端末装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記第2の値から前記第1の値に遷移する時刻と前記使用開始イベントが生成された時刻の間の使用準備時間を測定し、前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的に第1の値に遷移している時間が前記第2の閾値以下でさらに前記使用準備時間が第3の閾値を超えたときに前記携帯端末装置に対するアクセス禁止の判定をする請求項9に記載の携帯端末装置。
【請求項11】
前記判定部は、前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的に第1の値に遷移している時間が前記第2の閾値以下でさらに前記使用準備時間が前記第3の閾値以下のときに前記携帯端末装置に対するアクセス許可の判定をする請求項10に記載の携帯端末装置。
【請求項12】
前記判定部は、前記第2の値から前記第1の値に遷移する時刻と前記使用開始イベントが生成された時刻の間の使用準備時間を測定し、前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記使用準備時間が第3の閾値を超えたときに前記携帯端末装置に対するアクセス禁止の判定をする請求項8に記載の携帯端末装置。
【請求項13】
前記携帯端末装置がシステム筐体と該システム筐体に開閉可能に取り付けられたディスプレイ筐体を有する携帯式コンピュータで、前記使用終了イベントと前記使用開始イベントが前記ディスプレイ筐体の開閉状態に応じて生成される請求項8から請求項12のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項14】
前記携帯端末装置がタブレット型の電子機器で、前記使用終了イベントが前記電子機器に対して入力が所定時間ないときに生成され、前記使用開始イベントが前記電子機器に対するアクセス・ボタンの押下により生成される請求項8から請求項12のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項15】
携帯式のコンピュータに、
使用を終了したことを示す使用終了イベントを生成するステップと、
前記使用終了イベントが生成されたあとに前記携帯端末装置が計測した加速度が、静止状態を示すか移動状態を示すかを識別するステップと、
使用を開始することを示す使用開始イベントを生成するステップと、
前記使用終了イベントが生成されてから前記静止状態が継続する移動準備時間を測定するステップと、
前記移動準備時間が第1の閾値を超えたときに前記使用開始イベントに応答してコンピュータに対するアクセスを制限するステップと
を有する処理を実現させるためのコンピュータ・プログラム。
【請求項16】
前記処理が、
連続する前記移動状態の間で一時的な前記静止状態を示す時間を測定するステップと、
前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的な静止状態を示す時間が第2の閾値を越えたときに前記使用開始イベントに応答して前記コンピュータに対するアクセスを制限するステップと
を有する請求項15に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項17】
前記処理が、
前記使用開始イベントが生成されるまで前記静止状態が継続する使用準備時間を測定するステップと、
前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的な静止状態を示す時間が前記第2の閾値以下でさらに前記使用準備時間が第3の閾値を超えたときに前記使用開始イベントに応答して前記コンピュータに対するアクセスを制限するステップと
を有する請求項16に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項18】
前記処理が、
前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記一時的な静止状態を示す時間が前記第2の閾値以下でさらに前記使用準備時間が前記第3の閾値以下のときに前記使用開始イベントに応答して前記コンピュータに対するアクセスを許可するステップを有する請求項17に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項19】
前記処理が、
前記使用開始イベントが生成されるまで前記静止状態が継続する使用準備時間を測定するステップと、
前記移動準備時間が前記第1の閾値以下でかつ前記使用準備時間が第3の閾値を超えたときに前記使用開始イベントに応答して前記コンピュータに対するアクセスを制限するステップと
を有する請求項15に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項20】
携帯端末装置がアクセスを制限する方法であって、
前記携帯端末装置が使用を終了したことを示す使用終了イベントを生成するステップと、
前記使用終了イベントが生成されてから前記携帯端末装置が移動を開始するまでの移動準備時間を前記携帯端末装置が測定するステップと、
前記携帯端末装置が使用を開始することを示す使用開始イベントを生成するステップと、
前記移動準備時間が所定の閾値を超えたと判定したときに前記使用開始イベントに応答してユーザ認証を要求するステップと
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−150625(P2012−150625A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8401(P2011−8401)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】