説明

利得等化装置

【課題】信号帯域内に互いに異なる利得傾斜変化特性を有している場合であっても、確実に、かつ容易に利得傾斜補正を行う。
【解決手段】光伝送路から入力した光信号から光信号を制御する制御信号をBPF105にて抽出し、光信号と光信号を励起する励起光とをWDMカプラ103にて結合して光出力信号として出力し、光伝送路に配置されたEDFと同一の信号帯域で動作するEDF102が伝送した光出力信号の信号レベルを可変減衰器109にて制御信号に基づいて減衰させ、可変減衰器109が信号レベルを減衰させた光出力信号の信号レベルが一定になるような励起光を励起部112からWDMカプラ103へ出力し、光出力信号を分岐カプラ110から光伝送路へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を伝送する光伝送路と接続された利得等化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光信号を増幅する利得デバイスの利得が波長に依存して変化する場合、この利得の波長依存性を補償するために利得等化装置が用いられる。
【0003】
図2は、一般的な利得等化装置(可変型)の一形態を示す図である。
【0004】
図2に示した利得等化装置1000には、分岐カプラ1001と、BPF1005と、PD1006と、制御回路1008と、利得等化デバイス1013とが設けられている。
【0005】
図2に示した利得等化装置1000において、光信号は分岐カプラ1001より入力され、光信号の利得等化を行う利得等化デバイス1013を通過し、ここで利得等化された後、光伝送路へ出力される。
【0006】
また、光信号は分岐カプラ1001で分岐され、BPF(バンドパスフィルタ)1005で特定波長に配置された制御(SV)信号が抽出される。そして、制御(SV)信号がPD(PhotoDetector)1006にて電気信号へ変換された後、制御回路1008に入力する。制御回路1008に入力した制御(SV)信号に基づいて、利得等化デバイス1013が制御される。
【0007】
しかしながら、図2に示すような利得等化装置1000に使用する利得等化デバイス1013においては、次のような課題がある。
【0008】
近年急速に普及しているWDM(Wavelength Division Multiplexing)通信においては、通信容量を大容量化とするために信号帯域の拡大化が進められている。
【0009】
図3は、EDFA利得傾斜利得依存性を示す図である。
【0010】
図3に示すように、光伝送路に挿入されるEDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier:エルビウム元素をコアに添加した光ファイバーによる光増幅器)の帯域特性は、ある波長を境に短波長側と長波長側とで利得変化に対する利得傾斜変化特性が異なる特性を有する。
【0011】
WDM等で帯域が拡大される前の信号帯域では、帯域に対する相対利得の傾斜変化が図3に示すように1種類のみである。しかし、WDM等で帯域が拡大された後の信号帯域では、帯域に対する相対利得の傾斜変化が図3に示すように2種類となる。
【0012】
図4は、利得等化デバイスの帯域特性を示す図である。
【0013】
図4に示すように、全ての信号帯域に対して同じ利得傾斜変化特性を持つ信号帯域においては一般的な利得等化デバイスによって利得等化することができる。しかし、信号帯域拡大により複数の利得傾斜変化特性を持つ場合、一般的な利得等化デバイスでの利得等化は困難である。
【0014】
そこで、WDMカプラやEDFを多段に設けることにより、出力パワー変動特性に応じた利得補正を行うことができる装置が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−295113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載されたような光増幅器(利得等化装置)は、WDMカプラやEDFの接続が多段に必要であり、その装置構成が複雑である。そのため、製造コストが高価になってしまい、また、装置全体の故障率が高くなってしまうという問題点がある。
【0017】
本発明の目的は、上述した課題を解決する利得等化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の利得等化装置は、
光信号を伝送する光伝送路と接続された利得等化装置であって、
当該利得等化装置に入力した光信号から該光信号を制御する制御信号を抽出する帯域フィルタと、
前記光信号と、該光信号を励起する励起光とを結合して光出力信号として出力する結合部と、
前記光伝送路に配置されたEDF(Erbium Doped Fiber)と同一の信号帯域で動作し、前記光出力信号を伝送するEDFと、
前記EDFが伝送した光出力信号の信号レベルを前記制御信号に基づいて減衰させる可変減衰器と、
前記可変減衰器が信号レベルを減衰させた光出力信号の信号レベルが一定になるような前記励起光を前記結合部へ出力する励起部と、
前記光出力信号を前記光伝送路と前記励起部とへ分岐して出力する第1の分岐部とを有する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明においては、光伝送路から入力した光信号から光信号を制御する制御信号を帯域フィルタにて抽出し、光信号と光信号を励起する励起光とを結合部にて結合して光出力信号として出力し、光伝送路に配置されたEDFと同一の信号帯域で動作するEDFが伝送した光出力信号の信号レベルを可変減衰器にて制御信号に基づいて減衰させ、可変減衰器が信号レベルを減衰させた光出力信号の信号レベルが一定になるような励起光を励起部から結合部へ出力し、光出力信号を第1の分岐部から光伝送路へ出力する構成としたため、信号帯域内に互いに異なる利得傾斜変化特性を有している場合であっても、確実に、かつ容易に利得傾斜補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の利得等化装置の実施の一形態を示す図である。
【図2】一般的な利得等化装置(可変型)の一形態を示す図である。
【図3】EDFA利得傾斜利得依存性を示す図である。
【図4】利得等化デバイスの帯域特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の利得等化装置の実施の一形態を示す図である。
【0023】
本形態は図1に示すように、利得等化装置100に、分岐カプラ101,110と、EDF102と、WDMカプラ103と、アイソレータ104と、BPF105と、PD106と、制御回路108と、可変減衰器109と、励起部112とが設けられている。
【0024】
分岐カプラ101は、光伝送路から利得等化装置100に入力した光信号を、WDMカプラ103とBPF105とへ分岐して出力する第2の分岐部である。
【0025】
WDMカプラ103は、分岐カプラ101から出力された光信号と、LD107から出力された励起光とを結合して光出力信号としてEDF102へ出力する結合部である。
【0026】
EDF102は、光伝送路に配置されたEDF(Erbium Doped Fiber)と同一の信号帯域で動作するものであり、WDMカプラ103から出力された光出力信号を伝送する光ファイバーである。
【0027】
可変減衰器109は、EDF102が伝送した光出力信号の信号レベルを、制御回路108から出力された減衰度信号に基づいて減衰させる。また、可変減衰器109は、信号レベルを減衰させた光出力信号をアイソレータ104へ出力する。
【0028】
アイソレータ104は、可変減衰器109から出力された光出力信号を分岐カプラ110へ透過させ、可変減衰器109への反射戻り光を防止する。
【0029】
分岐カプラ110は、アイソレータ104で透過された光出力信号を、光伝送路と励起部112とへ出力する第1の分岐部である。
【0030】
BPF105は、分岐カプラ101から出力された光信号の中から特定の波長に配置された制御(SV)信号を抽出する帯域フィルタ(Band Pass Filter)である。また、BPF105は、光信号から抽出した制御信号をPD106へ出力する。この制御信号は、光信号を制御するための信号である。
【0031】
PD106は、BPF105から出力された制御信号を光信号から電気信号へ変換する光検出器(PhotoDetector)である。また、PD106は、電気信号へ変換した制御信号を制御回路108へ出力する。
【0032】
制御回路108は、PD106から出力された制御信号に基づいて、可変減衰器109が信号レベルを減衰させる減衰度を制御する減衰器制御部である。制御回路108は、PD106から出力された制御信号に基づいて、可変減衰器109が減衰させる減衰度を算出し、算出した減衰度を示す減衰度信号を可変減衰器109へ出力する。
【0033】
励起部112は、可変減衰器109によって信号レベルが減衰された光出力信号の信号レベルが一定になるような励起光をWDMカプラ103へ出力する。
【0034】
さらに、励起部112は、LD107と制御回路111とから構成されている。
【0035】
制御回路111は、光出力信号の信号レベルが一定になるように、LD107へ励起光の出力を指示する励起制御部である。
【0036】
LD107は、制御回路111の指示により励起光をWDMカプラ103へ出力するレーザーダイオード(Laser−Diode)である。
【0037】
以下に、図1に示した形態における動作について説明する。
【0038】
光伝送路から利得等化装置100へ入力された光信号は、分岐カプラ101の入力から分岐カプラ110の出力への経路を通過し、利得等化された後に光伝送路へ光出力信号として出力される。このとき、光信号は、LD107から出力された励起光と結合された光出力信号となり、内蔵されたEDF102を伝送し、可変減衰器109にて信号レベルが減衰されて分岐カプラ110から光伝送路へ出力される。
【0039】
光伝送路へ出力される光出力信号は、分岐カプラ110にて分岐され、光伝送路と励起部112とへ出力される。励起部112へ出力された光出力信号は、WDMカプラ103と励起部112とで構成される励起LDを制御する回路で、利得等化装置100から出力される光出力信号の出力レベルが一定になるように制御される。この制御により、利得等化装置100から出力される信号レベルは一定値となり、利得等化装置100よりも後段の伝送特性に影響を及ぼすことはない。
【0040】
また、光伝送路から利得等化装置100へ入力された光信号は、分岐カプラ101にて分岐され、WDMカプラ103とBPF105とへ出力される。BPF105へ出力された光信号を用いて、BPF105、PD106、制御回路108および可変減衰器109で構成される回路にて可変減衰器109での損失(減衰度)が制御される。具体的には、BPF105にて光信号から制御信号が抽出され、PD106にて制御信号が電気信号へ変換され、制御回路108から可変減衰器109における減衰度が算出される。そして、算出された減衰度を示す減衰度信号が、制御回路108から可変減衰器109へ出力され、減衰度信号に基づいて可変減衰器109にて光出力信号の信号レベルが減衰される。この結果、上述した利得等化装置100の出力を一定にするために、可変減衰器109の損失が変化すると、利得等化装置100の内部利得が変化するため、結果として利得等化装置100の利得傾斜を制御することになる。
【0041】
可変減衰器109の損失(減衰度)制御については、利得等化装置100より前段の光伝送路の伝送特性が図3に示すように利得の大きな側(利得の増加する側)へ変化している場合、利得等化装置100の内部利得を小さくするため、可変減衰器109の損失が小さくなるように制御する。一方、利得等化装置100より前段の伝送特性が図3に示すように利得の小さな側(利得の減少する側)へ変化している場合、利得等化装置100の内部利得を大きくするため、可変減衰器109の損失が大きくなるように制御する。このように、光伝送路と逆の特性を与えることで、利得等化装置100通過後の伝送特性を補償する。
【0042】
このように、利得等化装置100は、光伝送路へ配置されるEDFAと同一の信号帯域で動作するEDFAを搭載しているため、信号帯域内に互いに異なる複数の利得傾斜変化特性を有している場合であっても、確実に利得傾斜補償を行うことができる。また、利得等化装置100にEDFAを内蔵しているため、利得等化器を含む中継スパンを拡大することができる。
【0043】
本発明の利得等化装置100は、長距離海底WDM伝送システムにおいて、伝送路に配置される海底中継器・海底ケーブルの製造ばらつきにより発生する利得傾斜ずれを補償するために配置される利得等化装置として用いられる。
【符号の説明】
【0044】
100 利得等化装置
101,110 分岐カプラ
102 EDF
103 WDMカプラ
104 アイソレータ
105 BPF
106 PD
107 LD
108,111 制御回路
109 可変減衰器
112 励起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝送する光伝送路と接続された利得等化装置であって、
当該利得等化装置に入力した光信号から該光信号を制御する制御信号を抽出する帯域フィルタと、
前記光信号と、該光信号を励起する励起光とを結合して光出力信号として出力する結合部と、
前記光伝送路に配置されたEDF(Erbium Doped Fiber)と同一の信号帯域で動作し、前記光出力信号を伝送するEDFと、
前記EDFが伝送した光出力信号の信号レベルを前記制御信号に基づいて減衰させる可変減衰器と、
前記可変減衰器が信号レベルを減衰させた光出力信号の信号レベルが一定になるような前記励起光を前記結合部へ出力する励起部と、
前記光出力信号を前記光伝送路と前記励起部とへ分岐して出力する第1の分岐部とを有する利得等化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の利得等化装置において、
前記制御信号に基づいて、前記可変減衰器が減衰させる減衰度を算出し、該算出した減衰度を示す減衰度信号を前記可変減衰器へ出力する減衰器制御部を有し、
前記可変減衰器は、前記減衰器制御部が出力した減衰度信号に基づいて、前記光出力信号の信号レベルを減衰させることを特徴とする利得等化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の利得等化装置において、
前記減衰器制御部は、当該利得等化装置に入力した光信号の伝送特性が利得の増加する側へ変化している場合、前記可変減衰器の損失が小さくなるような減衰度を算出し、当該利得等化装置に入力した光信号の伝送特性が利得の減少する側へ変化している場合、前記可変減衰器の損失が大きくなるような減衰度を算出することを特徴とする利得等化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の利得等化装置において、
前記励起部は、
前記励起光を前記結合部へ出力するレーザーダイオードと、
前記光出力信号の信号レベルが一定になるように、前記レーザーダイオードへ前記励起光の出力を指示する励起制御部とを有することを特徴とする利得等化装置。
【請求項5】
請求項1に記載の利得等化装置において、
当該利得等化装置に入力した光信号を前記結合部と前記帯域フィルタとに分岐して出力する第2の分岐部を有し、
前記帯域フィルタは、前記第2の分岐部が出力した光信号から前記制御信号を抽出し、
前記結合部は、前記第2の分岐部が出力した光信号と前記励起光とを結合して光出力信号として出力することを特徴とする利得等化装置。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の利得等化装置において、
WDM(Wavelength Division Multiplexing)伝送システムに用いられることを特徴とする利得等化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−165988(P2010−165988A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8938(P2009−8938)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】