制動時の運転支援方法及び運転支援装置
【課題】車両を減速させたとき予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間のうち少なくともいずれか1つを、運転操作に支障が生じないタイミングで表示するようにした車両の運転支援方法及び運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転支援装置1のCPU2は、ブレーキペダルが操作されると、その時々のブレーキ操作量θnの実変化量Δθnを求める。CPU2は実変化量Δθnの絶対値|Δθn|が基準変化量Δθkより小さくなったとき、ブレーキ操作が落ち着いた操作状態になったとして、車両Cの停止位置と制動距離を支援用ディスプレイ6に表示する。従って、運転者のブレーキ操作が、運転操作に支障が生じない落ち着いた状態になったタイミングで、停止位置及び制動距離が表示されることから、それらを余裕をもって運転者は視認できる。
【解決手段】運転支援装置1のCPU2は、ブレーキペダルが操作されると、その時々のブレーキ操作量θnの実変化量Δθnを求める。CPU2は実変化量Δθnの絶対値|Δθn|が基準変化量Δθkより小さくなったとき、ブレーキ操作が落ち着いた操作状態になったとして、車両Cの停止位置と制動距離を支援用ディスプレイ6に表示する。従って、運転者のブレーキ操作が、運転操作に支障が生じない落ち着いた状態になったタイミングで、停止位置及び制動距離が表示されることから、それらを余裕をもって運転者は視認できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動時の運転支援方法及び運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転操作を支援する装置として、車両の制動距離を予測し前方の障害物に衝突しないように、運転者に障害物情報や操作支援を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、前方の障害物を検出し、その障害物までの距離を測定するとともに制動距離を算出し、衝突のおそれがある場合に警告するといった装置も提案されている。
【特許文献1】特開2002−163795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記装置においては、単に、運転者に、障害物の存在を知らせブレーキ操作を促すものであった。従って、運転者は、実際にブレーキ操作したとき、制動距離又は実際の停止する位置を予測することはできない。その結果、運転者は、ブレーキ操作量とその時の減速度を感じてブレーキ操作を行うのが現実であった。そこで、ブレーキ操作をしたとき、そのブレーキ操作に基づく制動距離を報知することが好ましい。特に、制動距離をディスプレイに表示することができれば、運転者は制動距離を視覚により実感でき最適な運転操作が可能になる。
【0004】
しかしながら、ブレーキ操作をして制動距離をディスプレイに表示しても、運転者は、ブレーキ操作に集中している時にはディスプレイに表示した制動距離を視認することはできない。かえって、気が散って運転操作に集中できない虞がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両を減速させたとき予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間のうち少なくともいずれか1つを、運転操作に支障が生じないタイミングで表示するようにした車両の運転支援方法及び運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ブレーキ操作手段の操作量の変化量が予め定めた変化量になった時、その時の減速度に基づいて、車両が予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを表示手段に表示するようにした制動時の運転支援方法である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の制動時の運転支援方法において、前記予め定めた車速は、時速0キロメートルである。
請求項3の発明は、請求項1に記載の制動時の運転支援方法において、前記予め定めた車速は複数設けられ、それらの車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つが、それぞれ車速毎に識別できるように、それぞれ表示手段に表示する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の制動時の運転支援方法において、前記予め定めた車速に到達する位置の表示は、前記表示手段に表示された道路地図上に到達する位置を示す指標を表示するようにした。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の制動時の運転支援方法におい
て、その時々で前方位置の相対距離が変動する目標物を求めその目標物の位置を特定し、その目標物の位置を、前記予め定めた車速に到達する位置とともに前記表示手段に表示する。
【0010】
請求項6の発明は、車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と道路地図を表示する表示手段とを備え、前記表示手段に表示された道路地図上に、前記自車位置検出手段が検出した現在位置を表示する運転支援装置において、ブレーキセンサからの検出信号に基づいて、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量に基づいて、ブレーキ操作量の変化量を算出する変化量算出手段と、前記変化量算出手段が算出した操作量が予め定めた変化量になった時、その時の車両の減速度を算出し、予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを算出する到達指標算出手段と、前記到達指標算出手段が算出した到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを、前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えた。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載の運転支援装置において、車両の前方位置の相対距離が変動する目標物を検出する目標物検出手段と、目標物検出手段が検出した前記目標物の位置を算出する目標物位置算出手段とを備え、前記表示制御手段は、前記目標物の位置を、前記到達する位置、距離及び時間の少なくともいずれか1つとともに前記表示手段に表示するようにした。
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載の運転支援装置において、前記到達指標算出手段は、複数の予め定めた車速毎に、それらの車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくとも1つをそれぞれ車速毎に算出するものであり、前記表示制御手段は、前記到達指標算出手段が算出した位置、到達するまでの距離及び時間の少なくとも1つを示す到達指標を、それぞれ車速毎に識別できるように表示手段に表示された道路地図上に表示させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、その時のブレーキ操作量の変化量が予め定めた変化量になったとき、つまり、ブレーキ操作が例えば落ち着いたブレーキ操作状態になったとき、予め定めた車速に到達する位置、距離及び時間の少なくとも1つを示す指標を表示手段に表示する。従って、運転者のブレーキ操作が、例えば運転操作に支障が生じない落ち着いた状態になったタイミングで、予め定めた車速に到達する位置、予め定めた車速に到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つが表示されることから、それらを余裕をもって視認できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、余裕をもって、車両が停止する位置、停止するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1を視認することができる。
請求項3に記載の発明によれば、余裕をもって、車両が予め定めた複数の車速について、それぞれの車速に対する到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1をそれぞれ車速毎に視認することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、余裕をもって、車両が到達する位置を実感することができる。
請求項5に記載の発明によれば、その時のブレーキ操作量での予め定めた車速に到達する位置が、目標物とともに表示手段に表示されるため、ブレーキ操作による予め定めた車速に到達する位置と目標物の位置が視認でき、初期段階での制動のためのブレーキ操作が容易となる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、変化量算出手段が算出したその時のブレーキ操作量の
変化量が予め定めた変化量になったとき、つまり、ブレーキ操作が例えば落ち着いたブレーキ操作状態になったとき、表示制御手段は、到達指標算出手段が算出した予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくとも1つを示す指標を表示手段に表示する。従って、運転者のブレーキ操作が、例えば運転操作に支障が生じない落ち着いた状態になったタイミングで、予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つが表示されることから、それらを余裕をもって視認できる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、余裕をもって、予め定めた車速に到達する位置と目標物の位置との位置関係、距離、時間があわせて視認できる。
請求項8に記載の発明によれば、その時の車両の減速度で車両が予め定めたそれぞれの車速になって通過する各位置、各距離及び各時間の少なくとも1つを示す到達指標が、表示手段に表示された走行中の道路地図上に表示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の運転支援装置を具体化した実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1は、自動車(車両)に搭載された運転支援装置の構成を説明するブロック図である。
図1に示す運転支援装置1は、自車位置検出手段、ブレーキ操作量検出手段、目標物検出手段、変化量算出手段、到達指標算出手段、表示制御手段、目標物位置算出手段としてのCPU2、CPU2の演算結果等を一時記憶するRAM3、制動時運転支援プログラム等、各種の運転支援プログラムを記憶するROM4、入出力インターフェイス5及び支援用ディスプレイ6を備えている。
【0018】
CPU2は、入出力インターフェイス5を介して前方検出レーダ装置11と接続されている。前方検出レーダ装置11は、本実施形態では、ミリ波レーダであって、図2に示すように、車両Cのフロントグリルに設けられ、前方にミリ波を出射しその反射波を受信することによって、前方の車両Cx、落下物等の目標物Pを検出し、目標物Pまでの距離Ln及び相対速度等を演算する。CPU2は、この前方検出レーダ装置11に対して、その時々の前方検出レーダ装置11が演算した目標物Pまでの距離Ln及び相対速度を要求し取得するようになっている。
【0019】
CPU2は、入出力インターフェイス5を介して車両用電子制御装置(車両用ECU)12と接続されている。車両用ECU12は、車両Cの走行に関する駆動系を制御する制御装置であって、イグニッションスイッチ、ステアリングセンサ、車速センサ、アクセル操作量センサ、ブレーキペダルのブレーキ操作量センサ等、各種センサからの信号を入力する。車両用ECU12は、これら各センサからの信号に基づいて、その時々の車両Cの車速Vn、アクセル開度量、操舵角、ブレーキペダルのブレーキ操作量θn等を算出する。そして、CPU2は、車両用ECU12に対して、その時々の車速Vn、ブレーキ操作量θn、イグニッションスイッチのオン・オフ信号等、を要求し取得するようになっている。
【0020】
又、CPU2は、その時々のブレーキ操作量θnから、実変化量Δθnを求め、その実変化量Δθnの絶対値|Δθn|から、操作変曲点、即ち、ブレーキ操作量が一定の状態に保持された状態かどうかを判断するようになっている。因みに、本実施形態では、実変化量Δθnは最新のn個の移動平均操作量θa v(t)と一つ前のn個の移動平均操作量
θav(t−1)との差分から求める。なお、ブレーキ操作量θnを検出するブレーキ操作量センサは、本実施形態では、ブレーキペダルの操作量を検出するポテンショメータにて形成されている。
【0021】
CPU2は、入出力インターフェイス5を介してナビゲーション装置(以下、ナビ装置
という)13に接続されている。ナビ装置13は、車両Cの自車位置DPを算出しその自車位置DPをナビ装置13に備えたディスプレイ(図示しない)に地図とともに表示したり、目的地までの経路を探索しその探索した経路を地図上に表示して運転者に対して経路案内を行う。そして、CPU2は、ナビ装置13に対して、その時々にナビ装置13が算出する車両Cの自車位置DPの情報や、ナビ装置13に備えた経路及び地図データを要求し取得するようになっている。また、CPU2は、車両Cの前方にある地物の地物情報(交差点座標、一時停止線座標、横断歩道座標、コーナ入り口座標等)をナビ装置13に要求しその地物情報を経路データ又は道路データから取得するようになっている。CPU2は、ナビ装置13からの情報に基づいて車両Cの前方にある目標物P(地物であって、交差点、一時停止線、横断歩道、コーナ入り口等)を検出する。
【0022】
CPU2は、ナビ装置13及び前方検出レーダ装置11からの情報に基づいて検出された目標物Pの中から、その時点において運転操作に何らかの影響を与える目標物Pであるかどうかを判断し確定するようになっている。本実施形態では、予め定めた距離Lk以内であって、最も車両Cに近い目標物Pを確定目標物Pxとしている。
【0023】
CPU2は、確定目標物Pxが確定すると、その時の運転状態でブレーキ操作をした場合に、その時の車速Vn、目標物Pまでの距離Ln、ブレーキペダルの操作の有無に基づいて、「制動時運転支援モード」にするかどうか、即ち、運転者に対して運転支援のための案内をする必要があるかどうかを判断する。詳述すると、本実施形態では、前方に確定目標物Pxがない場合又は車両Cが即座に停止できるほどの車速Vnで走行している場合等、制動をかけても運転支援する必要性がない走行状態や、ブレーキ操作したら即座に停止できる走行状態の場合は、運転者に対して運転支援のための案内をする必要がないと判断するようになっている。
【0024】
CPU2は、表示手段としての支援用ディスプレイ6と接続されている。支援用ディスプレイ6はフルカラーの液晶表示装置であって、CPU2が「制動時運転支援モード」になると、図3及び図4に示すように、同CPU2にて制動運転支援画像BGを表示する。制動運転支援画像BGは、その時点でのブレーキ操作に基づく減速度で、車両Cが停止する位置(停止位置SP)及び制動距離Saを表示する画像である。制動運転支援画像BGは、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rを含む地図31を表示するとともに、その地図31上に現在の車両Cを示す自車位置指標32と、停止位置SPを示す停止位置指標33、確定目標物Pxの位置を示す目標物指標34を重ね合わせてなる画像である。また、制動運転支援画像BGは、制動距離Saを示す距離指標33aを表示する。
【0025】
また、CPU2は停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合と、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合とで、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rの色表示を変えるようにしている。すなわち、図3に示すように、停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合には、自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを示す色を青色で表示する。一方、図4に示すように、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合には、自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを示す色を赤色で表示する。
【0026】
次に、本実施形態の運転支援装置1の作用を、図5に示すCPU2の処理手順を示すフローチャートに従って説明する。
今、イグニッションスイッチからのオン信号に応答して運転支援装置1が立ち上がると、CPU2は、前方検出レーダ装置11、車両用ECU12及びナビ装置13からの各種信号及び情報を取得する(ステップS1)。CPU2は、前方検出レーダ装置11から目標物Pまでの距離Ln及び相対速度を取得する。また、CPU2は、車両用ECU12から車両Cの車速Vnを取得するとともに、ブレーキペダルの操作量θnを取得する。さら
にまた、CPU2は、ナビ装置13から車両Cの自車位置DPを取得する。
【0027】
尚、この時点では、ナビ装置13では、同ナビ装置13に備えたディスプレイに自車位置DPに基づいた道路地図と自車位置DPを示す指標を重ね合わせた公知の道路案内画像を表示しているが、支援用ディスプレイ6には何も表示されていない。
【0028】
続いて、CPU2は、目標物確定処理を実行する(ステップS2)。CPU2は、算出した自車位置DPと地図データに基づいて前方の予め定めた距離内の道路上に停止線、交差点、カーブ入り口等の目標物P(地物)を検出し、目標物Pがあるとき、自車位置DPから目標物Pまでの距離Lnを演算する。そして、本実施形態では、CPU2はこれら目標物Pと、前方検出レーダ装置11にて取得した目標物Pのなかで自車位置DPからの距離Lnが最も短い目標物(即ち、車両Cから最も近い目標物)を確定目標物Pxとし、その確定目標物Pxまでの距離Lnを確定目標物距離としてRAM3に一時記憶する。
【0029】
次に、CPU2は、「制動時運転支援モード」を実行するかどうか判断する(ステップS3)。CPU2は、その時のブレーキ操作量θn、車速Vn、確定目標物距離Lnに基づいて「制動時運転支援モード」にするかどうかを決めている。本実施形態では、CPU2は、車速Vnが予め定めた車速Vk(例えば、時速5キロメートル)以上であって、目標物距離Lnが予め定めた距離Lk(例えば、200メートル)以下であり、ブレーキ操作量θnが予め定めた操作量θk(=0)を超えた時(ブレーキが操作された時)に、「制動時運転支援モード」となり、それ以外は「制動時運転支援モード」とならないようにしている。
【0030】
「制動時運転支援モード」とならない場合(ステップS3でNO)、CPU2はステップS1に戻り、前方検出レーダ装置11、車両用ECU12及びナビ装置13からの各信号及び各種情報を新たに取得し、自車位置DP、車速Vn、ブレーキ操作量θn、確定目標物距離Ln等を更新する。
【0031】
一方、「制動時運転支援モード」となると(ステップS3でYES)、CPU2は、運転者のブレーキ操作手段のブレーキ操作が一旦落ち着いた状態に入ったかどうかチェックする(ステップS4〜S6)。ここで、ブレーキ操作が一旦落ち着いた状態について説明する。ブレーキペダルの操作量θnが、図6に示すように、時間の経過とともに変化するとき、破線で囲まれた時間帯が、ブレーキ操作が一旦落ち着いた状態となる。つまり、破線で囲まれた時間帯は、ブレーキペダルの操作量θnの変化量Δθnが小さい時間帯を示す。そして、操作量の変化量が小さいことは、ブレーキ操作が一旦落ち着いた状態になるときに生じる。従って、操作量の変化量を知ることによって、ブレーキ操作が一旦落ち着いた状態かどうか知ることができる。つまり、運転者はこの時点で運転操作に余裕がでてきたことを意味する。
【0032】
そして、まず、CPU2は、車両用ECU12からその時のブレーキ操作量θnの情報を取得して、ブレーキ操作手段の操作量の実変化量Δθnを下記の式(1)から求める(ステップS4)。
【0033】
実変化量Δθnは、最新のn個の移動平均操作量θav(t)と一つ前のn個の移動平均操作量θav(t−1)との差分から求める。
Δθn=θav(t)−θav(t−1) …(1)
ただし、
θav(t)=(θ1+θ2+……+θn−1+θn)/n
θav(t−1)=(θ0+θ1+……+θn−2+θn−1)/n
続いて、CPU2は、RAM3の所定の記憶領域に設けたタイマカウンタ3aのカウン
ト値Tを「1」加算した後(ステップS5)、求めた実変化量Δθnの絶対値|Δθn|と予め定めた基準変化量Δθkと比較する(ステップS6)。
【0034】
この時、実変化量Δθnの絶対値|Δθn|が基準変化量Δθk以上のとき(ステップS6でNO)、CPU2は、タイマカウンタ3aのカウント値Tが予め定めた基準時間Tkを経過したかどうかチェックする(ステップS7)。つまり、運転者のブレーキ操作が、基準時間Tk以上、その操作量を保持しないでブレーキ操作が続けられているかどうか判断する。そして、カウント値Tが基準時間Tk未満の時(ステップS7でNO)、CPU2は、ステップ4に戻り、新たなブレーキ操作手段の操作量の実変化量Δθnの絶対値|Δθn|を求める。
【0035】
やがて、実変化量Δθnの絶対値|Δθn|が基準変化量Δθkより小さくなると(ステップS6でYES)、CPU2は、タイマカウンタ3aのカウント値Tをリセット(=0)しカウント動作を停止させた後(ステップS8)、制動距離Sa及び停止位置SPの算出を行う(ステップS9)。つまり、運転者のブレーキ操作量が一定状態に保持されブレーキ操作が一旦落ち着き運転者に余裕がでてきた状態になったとして、制動距離Sa及び停止位置SPの算出を行う。
【0036】
一方、ステップS7において、カウント値Tが基準時間Tk以上になった時(ステップS7でYES)、CPU2は、基準時間Tk以上ブレーキ操作が続けられていると判断して、タイマカウンタ3aのカウント値Tをリセット(=0)しカウント動作を停止させた後(ステップS8)、制動距離Sa及び停止位置SPの算出を行う(ステップS9)。
【0037】
ステップS9において、CPU2は、まず、単位時間あたりの減速度aを求める。減速度aは、以下の式(2)を使って算出する。
a=(Vb−Va)/(tb−ta) …(2)
Vbは時間tbの時の車速、Vaは時間ta(時間tbよりも前の時間)の時の車速である。
【0038】
そして、CPU2は、この単位時間の減速度aを、連続してn個(a1,a2,・・・,an)求めた後、n個の移動平均減速度Aavを求める。移動平均減速度Aavは、下記の式(3)を使って算出する。
【0039】
Aav=(a1+a2+・・・+an)/n …(3)
CPU2は、移動平均減速度Aavが求まると、制動距離Saを求める。制動距離Saは下記の式(4)を使って算出する。
【0040】
Sa=(Ve2−V02)/(2Aav) …(4)
V0は、初速であってブレーキ操作された時の車速Vnであり、本実施形態では「制動時運転支援モード」になったときの車速Vnである。Veは、終速であって本実施形態では車両Cが停止した時の車速Vn(=0)、即ち、車速「0」である。
【0041】
CPU2は、制動距離Saを求めると、車両Cの停止位置SPを求める。車両Cが停止する位置(停止位置SP)は、その時の自車位置DP及び地図データを使って求めることができる。CPU2は、制動距離Sa及び停止位置SPを求めると一時RAM3に記憶する。
【0042】
制動距離Sa及び停止位置SPを求めると、CPU2は、支援用ディスプレイ6に、制動距離Saを表示するとともに、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rを含む地図31を表示するとともに、その地図31上に現在の車両Cを示す自車位置指標32と、停止
位置SPを示す停止位置指標33を重ね合わせた制動運転支援画像BGを表示する(ステップS10)。この時、CPU2は、前記RAM3に記憶した確定目標物距離Lnを読み出し、確定目標物の位置を求める。そして、CPU2は、支援用ディスプレイ6に表示された地図31上に確定目標物の位置を示す目標物指標34を合わせて表示するとともに、前記算出した制動距離Saを示す距離指標33aを表示する。
【0043】
このとき、停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合には、図3に示すように、CPU2は自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを青色で表示する。また、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合には、図4に示すように、CPU2は自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを赤色で表示する。この時、距離指標33aも色を変えて表示するようにしてもよい。
【0044】
従って、運転者は、支援用ディスプレイ6に表示された地図31上の停止位置指標33を見ることによって停止位置SPを確認することができる。しかも、目標物指標34を表示したので、停止位置指標33と目標物指標34との相対位置関係から、この表示された時点でのブレーキ操作では、車両Cが確定目標物Pxをオーバーランするか、確定目標物Pxの手前で停止させることができるか視認することができる。
【0045】
続いて、CPU2は、前方検出レーダ装置11、車両用ECU12及びナビ装置13からの各信号及び各種情報を新たに取得し、「制動時運転支援モード」が終了かどうか判別する(ステップS11)。つまり、CPU2は、ブレーキ操作量θn、車速Vn、確定目標物距離Lnを新たな値に更新し、その更新したブレーキ操作量θn、車速Vn、確定目標物距離Lnに基づいて「制動時運転支援モード」を継続するか終了するかを決めている。本実施形態では、CPU2は、車速Vnが予め定めた車速Vk以上であって、目標物距離Lnが予め定めた距離Lk以下の時に、ブレーキ操作量θnが予め定めた操作量θk(=0)を超えた時(ブレーキが操作された時)に、「制動時運転支援モード」となり、それ以外は「制動時運転支援モード」とならないようにしている。
【0046】
そして、いまだブレーキが操作されている時(ステップS11でNO)、CPU2は、ステップ4に戻り、新たなブレーキペダルの操作量θnの実変化量Δθnの絶対値|Δθn|を求める。即ち、CPU2は、新たな制動運転支援画像BGの更新を行う。
【0047】
一方、ブレーキ操作が解除されて「制動時運転支援モード」を終了すると(ステップS11でYES)、CPU2は制動運転支援画像BGの表示を終了させた後(ステップS12)、イグニッションスイッチからのオン・オフ信号がオフかどうかチェックする(ステップS13)。そして、イグニッションスイッチからのオン・オフ信号がオンの場合(ステップS13でNO)、CPU2は新たな制動運転支援処理を再び開始するためにステップS1に戻る。
【0048】
一方、イグニッションスイッチからのオン・オフ信号がオフの場合(ステップS13でYES)、CPU2は運転を終了したとして、制動運転支援処理動作を終了する。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
(1)上記実施形態では、その時のブレーキ操作量θnの実変化量Δθnの絶対値|Δθn|が基準変化量Δθkより小さくなったとき、つまり、ブレーキ操作が落ち着いた操作状態になったとき、車両Cの停止位置SPと制動距離Saを支援用ディスプレイ6に表示した。従って、運転者のブレーキ操作が、運転操作に支障が生じない落ち着いた状態になったタイミングで、停止位置SP及び制動距離Saが表示されることから、それらを余裕をもって運転者は視認できる。
【0050】
しかも、支援用ディスプレイ6に、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rを含む地図31を表示するとともに、その地図31上に停止位置SPを示す停止位置指標33を重ね合わせて表示した。従って、その時の減速度による停止位置SPが支援用ディスプレイ6にて視認し実感でき、次に行う運転操作が迅速に対応できる。
【0051】
(2)上記実施形態では、あわせて、支援用ディスプレイ6に自車位置指標32と目標物指標34を表示したので、停止位置指標33と目標物指標34との相対位置関係及び自車位置指標32と目標物指標34との相対関係が視認しより実感でき、次に行う運転操作がより迅速に対応できる。
【0052】
(3)上記実施形態では、制動運転支援画像BGを、専用の支援用ディスプレイ6を用いて表示した。従って、他の案内を兼用して表示するようにした表示方法にくらべ、専用の表示装置(支援用ディスプレイ6)で確認することから運転者にとって、表示されている内容を即座に理解できる。その結果、とっさの判断が要求される事態に、迅速に対応することができる。
【0053】
(4)上記実施形態では、停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合と、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合とで、制動運転支援画像BGの表示方法を変えた。すなわち、停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合には、自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを示す色を青色に、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合には、自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを示す色を赤色に表示した。従って、運転者は、現在の状況をよりリアルに視認しより実感でき、次に行う運転操作がより迅速に対応できる。
【0054】
(5)上記実施形態では車速Vnが予め定めた車速Vk以上かつ目標物距離Lnが予め定めた距離Lk以下であって、ブレーキペダルが操作された時に、「制動時運転支援モード」にした。つまり、前方に確定目標物Pxがない場合、車両Cが即座に停止できるほどの車速Vnで走行している場合等、制動をかけても運転支援をする必要性がない走行状態、または、ブレーキ操作したら即座に停止できる走行状態の場合は、制動運転支援画像BGを支援用ディスプレイ6に表示しないようにした。従って、ブレーキ操作するごとに、必要のない制動運転支援画像BGが表示されることはない。
【0055】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、支援用ディスプレイ6に、停止位置SP、制動距離Saを表示するようにしたが、いずれか一方を表示するようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、支援用ディスプレイ6に、停止位置SP、制動距離Saを表示するようにしたが、停止する時間を支援用ディスプレイ6に、停止位置SP、制動距離Saと合わせてまたは単独で表示するようにして実施してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、制動運転支援画像BGを専用の支援用ディスプレイ6に表示するようにした。これを、例えば、ナビ装置13に備えられたディスプレイ、又は、運転室に設けられたその他の目的で設置されたディスプレイと兼用し表示させるようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、車速Vnが予め定めた車速Vk以上かつ目標物距離Lnが予め定めた距離Lk以下であって、ブレーキペダルが操作された時に、「制動時運転支援モード」にした。これを、ブレーキ操作だけ、すなわち、単にブレーキ操作がなされただけで、他の条件に関係なく「制動時運転支援モード」になるようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、「制動時運転支援モード」になって、減速度aを連続してn個(a1,a2,・・・,an)求めた後、移動平均減速度Aavを求めるようにした。これを、「制動時運転支援モード」に関係なく、常時、更新しながらn個の減速度(a1,a2,・・・,an)を求めておいてもよい。そして、「制動時運転支援モード」になったら、直ちに、移動平均減速度Aavを求めるようにしてもよい。さらに、常時、移動平均減速度Aavを求めておいてもよい。そして、「制動時運転支援モード」になったら、直ちに、制動距離Saを求めるようにしてもよい。また、移動平均減速度Aavではなく、1つの減速度aから制動距離Saを算出するようにしてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、運転支援装置1(CPU2)が減速度a又は移動平均減速度Aavを求めるようにした。これを、車両用ECU12が減速度a又は移動平均減速度Aavを求め、CPU2は車両用ECU12から求められた減速度a又は移動平均減速度Aavを取得し、車両用ECU12から取得した減速度a又は移動平均減速度Aavから制動距離Saを求めるようにしてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、図3及び図4で示す支援用ディスプレイ16に表示する制動運転支援画像BGには、実際に走行している道路形状の地図31に経路R、停止位置指標33が表示されるようにした。これを、図7及び図8に示すように、実際の走行道路の形状を直線上に簡略した地図31を表示し、その地図31上に経路R、停止位置指標33、目標物指標34を表示するようにしてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、制動運転支援画像BGに表示される停止位置指標33は、車両Cが停止する停止位置SPを表示した。これを、例えば時速5キロメートル、時速10キロメートルといった、特定の車速になる位置を到達位置指標として表示してもよい。
【0063】
また、例えば時速15キロメートル、時速10キロメートル、時速5キロメートル、時速0キロメートルと言ったように、予め定めた複数の車速になる位置(到達位置)を図9示すようにそれぞれ互いに識別できる到達位置指標35,36,37,38で表示するようにしてもよい。また、図10に示す制動運転支援画像BGは、確定目標物Pxがカーブの入り口であって、車両Cの予め定めた車速となる位置(到達位置)を示す到達指標39が表示された画像となっている。この場合、カーブの入り口ではどのくらいの車速Vnに減速して進入しなければならないかが、視認することができる。
【0064】
・上記実施形態では、制動運転支援画像BGは、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rを含む地図31を表示するとともに、その地図31上に停止位置SPを示す停止位置指標33を重ね合わせた画像であった。これを、図11及び図12示すように、停止位置SPが、確定目標物Pxの位置を基準にどれだけ手前の距離または、オーバーランした距離にあるか、CPU2に変換機能を持たせて演算させ、それら距離を示す指標41,42を示すようにした制動運転支援画像BGを支援用ディスプレイ6に表示するようにしてもよい。この場合、CPU2は、確定目標物Pxまでの距離Lnと制動距離Saを比較する。そして、制動距離Saが距離Lnより長い場合、図11示すように、その差分(=Sa−Ln)に応じた長さの指標41を、目標物指標40を基準に上方に表示する。反対に、制動距離Saが距離Lnより短い場合、図12示すように、その差分(=Ln−Sa)に応じた長さの指標42を、目標物指標40を基準に下方に表示する。この場合にも、停止位置が目標物指標40を基準にどのくらいかが、視認し実感できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の運転支援装置の構成を説明するブロック図。
【図2】前方検出レーダ装置を説明するための説明図。
【図3】制動運転支援画像を説明するための図。
【図4】制動運転支援画像を説明するための図。
【図5】運転支援装置の作用を説明するためのフローチャート。
【図6】ブレーキペダルのブレーキ操作量の推移を示す図。
【図7】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図8】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図9】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図10】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図11】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図12】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【符号の説明】
【0066】
1…運転支援装置、2…自車位置検出手段、ブレーキ操作量検出手段、目標物検出手段、変化量算出手段、到達指標算出手段、表示制御手段、目標物位置算出手段としてのCPU、3…RAM、3a…タイマカウンタ、4…ROM、5…入出力インターフェイス、6…表示手段としての支援用ディスプレイ、11…前方検出レーダ装置、12…車両用電子制御装置(車両用ECU)、13…ナビゲーション装置(ナビ装置)、31…地図、32…自車位置指標、33…到達指標としての停止位置指標、33a…距離指標、34…目標物指標、C…車両、BG…制動支援画像、P…目標物、Px…確定目標物、DP…自車位置、SP…停止位置、a…減速度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、制動時の運転支援方法及び運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転操作を支援する装置として、車両の制動距離を予測し前方の障害物に衝突しないように、運転者に障害物情報や操作支援を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、前方の障害物を検出し、その障害物までの距離を測定するとともに制動距離を算出し、衝突のおそれがある場合に警告するといった装置も提案されている。
【特許文献1】特開2002−163795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記装置においては、単に、運転者に、障害物の存在を知らせブレーキ操作を促すものであった。従って、運転者は、実際にブレーキ操作したとき、制動距離又は実際の停止する位置を予測することはできない。その結果、運転者は、ブレーキ操作量とその時の減速度を感じてブレーキ操作を行うのが現実であった。そこで、ブレーキ操作をしたとき、そのブレーキ操作に基づく制動距離を報知することが好ましい。特に、制動距離をディスプレイに表示することができれば、運転者は制動距離を視覚により実感でき最適な運転操作が可能になる。
【0004】
しかしながら、ブレーキ操作をして制動距離をディスプレイに表示しても、運転者は、ブレーキ操作に集中している時にはディスプレイに表示した制動距離を視認することはできない。かえって、気が散って運転操作に集中できない虞がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車両を減速させたとき予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間のうち少なくともいずれか1つを、運転操作に支障が生じないタイミングで表示するようにした車両の運転支援方法及び運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ブレーキ操作手段の操作量の変化量が予め定めた変化量になった時、その時の減速度に基づいて、車両が予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを表示手段に表示するようにした制動時の運転支援方法である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の制動時の運転支援方法において、前記予め定めた車速は、時速0キロメートルである。
請求項3の発明は、請求項1に記載の制動時の運転支援方法において、前記予め定めた車速は複数設けられ、それらの車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つが、それぞれ車速毎に識別できるように、それぞれ表示手段に表示する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の制動時の運転支援方法において、前記予め定めた車速に到達する位置の表示は、前記表示手段に表示された道路地図上に到達する位置を示す指標を表示するようにした。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の制動時の運転支援方法におい
て、その時々で前方位置の相対距離が変動する目標物を求めその目標物の位置を特定し、その目標物の位置を、前記予め定めた車速に到達する位置とともに前記表示手段に表示する。
【0010】
請求項6の発明は、車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と道路地図を表示する表示手段とを備え、前記表示手段に表示された道路地図上に、前記自車位置検出手段が検出した現在位置を表示する運転支援装置において、ブレーキセンサからの検出信号に基づいて、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、前記ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量に基づいて、ブレーキ操作量の変化量を算出する変化量算出手段と、前記変化量算出手段が算出した操作量が予め定めた変化量になった時、その時の車両の減速度を算出し、予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを算出する到達指標算出手段と、前記到達指標算出手段が算出した到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを、前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えた。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載の運転支援装置において、車両の前方位置の相対距離が変動する目標物を検出する目標物検出手段と、目標物検出手段が検出した前記目標物の位置を算出する目標物位置算出手段とを備え、前記表示制御手段は、前記目標物の位置を、前記到達する位置、距離及び時間の少なくともいずれか1つとともに前記表示手段に表示するようにした。
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載の運転支援装置において、前記到達指標算出手段は、複数の予め定めた車速毎に、それらの車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくとも1つをそれぞれ車速毎に算出するものであり、前記表示制御手段は、前記到達指標算出手段が算出した位置、到達するまでの距離及び時間の少なくとも1つを示す到達指標を、それぞれ車速毎に識別できるように表示手段に表示された道路地図上に表示させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、その時のブレーキ操作量の変化量が予め定めた変化量になったとき、つまり、ブレーキ操作が例えば落ち着いたブレーキ操作状態になったとき、予め定めた車速に到達する位置、距離及び時間の少なくとも1つを示す指標を表示手段に表示する。従って、運転者のブレーキ操作が、例えば運転操作に支障が生じない落ち着いた状態になったタイミングで、予め定めた車速に到達する位置、予め定めた車速に到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つが表示されることから、それらを余裕をもって視認できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、余裕をもって、車両が停止する位置、停止するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1を視認することができる。
請求項3に記載の発明によれば、余裕をもって、車両が予め定めた複数の車速について、それぞれの車速に対する到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1をそれぞれ車速毎に視認することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、余裕をもって、車両が到達する位置を実感することができる。
請求項5に記載の発明によれば、その時のブレーキ操作量での予め定めた車速に到達する位置が、目標物とともに表示手段に表示されるため、ブレーキ操作による予め定めた車速に到達する位置と目標物の位置が視認でき、初期段階での制動のためのブレーキ操作が容易となる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、変化量算出手段が算出したその時のブレーキ操作量の
変化量が予め定めた変化量になったとき、つまり、ブレーキ操作が例えば落ち着いたブレーキ操作状態になったとき、表示制御手段は、到達指標算出手段が算出した予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくとも1つを示す指標を表示手段に表示する。従って、運転者のブレーキ操作が、例えば運転操作に支障が生じない落ち着いた状態になったタイミングで、予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つが表示されることから、それらを余裕をもって視認できる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、余裕をもって、予め定めた車速に到達する位置と目標物の位置との位置関係、距離、時間があわせて視認できる。
請求項8に記載の発明によれば、その時の車両の減速度で車両が予め定めたそれぞれの車速になって通過する各位置、各距離及び各時間の少なくとも1つを示す到達指標が、表示手段に表示された走行中の道路地図上に表示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の運転支援装置を具体化した実施形態を図1〜図6に従って説明する。図1は、自動車(車両)に搭載された運転支援装置の構成を説明するブロック図である。
図1に示す運転支援装置1は、自車位置検出手段、ブレーキ操作量検出手段、目標物検出手段、変化量算出手段、到達指標算出手段、表示制御手段、目標物位置算出手段としてのCPU2、CPU2の演算結果等を一時記憶するRAM3、制動時運転支援プログラム等、各種の運転支援プログラムを記憶するROM4、入出力インターフェイス5及び支援用ディスプレイ6を備えている。
【0018】
CPU2は、入出力インターフェイス5を介して前方検出レーダ装置11と接続されている。前方検出レーダ装置11は、本実施形態では、ミリ波レーダであって、図2に示すように、車両Cのフロントグリルに設けられ、前方にミリ波を出射しその反射波を受信することによって、前方の車両Cx、落下物等の目標物Pを検出し、目標物Pまでの距離Ln及び相対速度等を演算する。CPU2は、この前方検出レーダ装置11に対して、その時々の前方検出レーダ装置11が演算した目標物Pまでの距離Ln及び相対速度を要求し取得するようになっている。
【0019】
CPU2は、入出力インターフェイス5を介して車両用電子制御装置(車両用ECU)12と接続されている。車両用ECU12は、車両Cの走行に関する駆動系を制御する制御装置であって、イグニッションスイッチ、ステアリングセンサ、車速センサ、アクセル操作量センサ、ブレーキペダルのブレーキ操作量センサ等、各種センサからの信号を入力する。車両用ECU12は、これら各センサからの信号に基づいて、その時々の車両Cの車速Vn、アクセル開度量、操舵角、ブレーキペダルのブレーキ操作量θn等を算出する。そして、CPU2は、車両用ECU12に対して、その時々の車速Vn、ブレーキ操作量θn、イグニッションスイッチのオン・オフ信号等、を要求し取得するようになっている。
【0020】
又、CPU2は、その時々のブレーキ操作量θnから、実変化量Δθnを求め、その実変化量Δθnの絶対値|Δθn|から、操作変曲点、即ち、ブレーキ操作量が一定の状態に保持された状態かどうかを判断するようになっている。因みに、本実施形態では、実変化量Δθnは最新のn個の移動平均操作量θa v(t)と一つ前のn個の移動平均操作量
θav(t−1)との差分から求める。なお、ブレーキ操作量θnを検出するブレーキ操作量センサは、本実施形態では、ブレーキペダルの操作量を検出するポテンショメータにて形成されている。
【0021】
CPU2は、入出力インターフェイス5を介してナビゲーション装置(以下、ナビ装置
という)13に接続されている。ナビ装置13は、車両Cの自車位置DPを算出しその自車位置DPをナビ装置13に備えたディスプレイ(図示しない)に地図とともに表示したり、目的地までの経路を探索しその探索した経路を地図上に表示して運転者に対して経路案内を行う。そして、CPU2は、ナビ装置13に対して、その時々にナビ装置13が算出する車両Cの自車位置DPの情報や、ナビ装置13に備えた経路及び地図データを要求し取得するようになっている。また、CPU2は、車両Cの前方にある地物の地物情報(交差点座標、一時停止線座標、横断歩道座標、コーナ入り口座標等)をナビ装置13に要求しその地物情報を経路データ又は道路データから取得するようになっている。CPU2は、ナビ装置13からの情報に基づいて車両Cの前方にある目標物P(地物であって、交差点、一時停止線、横断歩道、コーナ入り口等)を検出する。
【0022】
CPU2は、ナビ装置13及び前方検出レーダ装置11からの情報に基づいて検出された目標物Pの中から、その時点において運転操作に何らかの影響を与える目標物Pであるかどうかを判断し確定するようになっている。本実施形態では、予め定めた距離Lk以内であって、最も車両Cに近い目標物Pを確定目標物Pxとしている。
【0023】
CPU2は、確定目標物Pxが確定すると、その時の運転状態でブレーキ操作をした場合に、その時の車速Vn、目標物Pまでの距離Ln、ブレーキペダルの操作の有無に基づいて、「制動時運転支援モード」にするかどうか、即ち、運転者に対して運転支援のための案内をする必要があるかどうかを判断する。詳述すると、本実施形態では、前方に確定目標物Pxがない場合又は車両Cが即座に停止できるほどの車速Vnで走行している場合等、制動をかけても運転支援する必要性がない走行状態や、ブレーキ操作したら即座に停止できる走行状態の場合は、運転者に対して運転支援のための案内をする必要がないと判断するようになっている。
【0024】
CPU2は、表示手段としての支援用ディスプレイ6と接続されている。支援用ディスプレイ6はフルカラーの液晶表示装置であって、CPU2が「制動時運転支援モード」になると、図3及び図4に示すように、同CPU2にて制動運転支援画像BGを表示する。制動運転支援画像BGは、その時点でのブレーキ操作に基づく減速度で、車両Cが停止する位置(停止位置SP)及び制動距離Saを表示する画像である。制動運転支援画像BGは、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rを含む地図31を表示するとともに、その地図31上に現在の車両Cを示す自車位置指標32と、停止位置SPを示す停止位置指標33、確定目標物Pxの位置を示す目標物指標34を重ね合わせてなる画像である。また、制動運転支援画像BGは、制動距離Saを示す距離指標33aを表示する。
【0025】
また、CPU2は停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合と、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合とで、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rの色表示を変えるようにしている。すなわち、図3に示すように、停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合には、自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを示す色を青色で表示する。一方、図4に示すように、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合には、自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを示す色を赤色で表示する。
【0026】
次に、本実施形態の運転支援装置1の作用を、図5に示すCPU2の処理手順を示すフローチャートに従って説明する。
今、イグニッションスイッチからのオン信号に応答して運転支援装置1が立ち上がると、CPU2は、前方検出レーダ装置11、車両用ECU12及びナビ装置13からの各種信号及び情報を取得する(ステップS1)。CPU2は、前方検出レーダ装置11から目標物Pまでの距離Ln及び相対速度を取得する。また、CPU2は、車両用ECU12から車両Cの車速Vnを取得するとともに、ブレーキペダルの操作量θnを取得する。さら
にまた、CPU2は、ナビ装置13から車両Cの自車位置DPを取得する。
【0027】
尚、この時点では、ナビ装置13では、同ナビ装置13に備えたディスプレイに自車位置DPに基づいた道路地図と自車位置DPを示す指標を重ね合わせた公知の道路案内画像を表示しているが、支援用ディスプレイ6には何も表示されていない。
【0028】
続いて、CPU2は、目標物確定処理を実行する(ステップS2)。CPU2は、算出した自車位置DPと地図データに基づいて前方の予め定めた距離内の道路上に停止線、交差点、カーブ入り口等の目標物P(地物)を検出し、目標物Pがあるとき、自車位置DPから目標物Pまでの距離Lnを演算する。そして、本実施形態では、CPU2はこれら目標物Pと、前方検出レーダ装置11にて取得した目標物Pのなかで自車位置DPからの距離Lnが最も短い目標物(即ち、車両Cから最も近い目標物)を確定目標物Pxとし、その確定目標物Pxまでの距離Lnを確定目標物距離としてRAM3に一時記憶する。
【0029】
次に、CPU2は、「制動時運転支援モード」を実行するかどうか判断する(ステップS3)。CPU2は、その時のブレーキ操作量θn、車速Vn、確定目標物距離Lnに基づいて「制動時運転支援モード」にするかどうかを決めている。本実施形態では、CPU2は、車速Vnが予め定めた車速Vk(例えば、時速5キロメートル)以上であって、目標物距離Lnが予め定めた距離Lk(例えば、200メートル)以下であり、ブレーキ操作量θnが予め定めた操作量θk(=0)を超えた時(ブレーキが操作された時)に、「制動時運転支援モード」となり、それ以外は「制動時運転支援モード」とならないようにしている。
【0030】
「制動時運転支援モード」とならない場合(ステップS3でNO)、CPU2はステップS1に戻り、前方検出レーダ装置11、車両用ECU12及びナビ装置13からの各信号及び各種情報を新たに取得し、自車位置DP、車速Vn、ブレーキ操作量θn、確定目標物距離Ln等を更新する。
【0031】
一方、「制動時運転支援モード」となると(ステップS3でYES)、CPU2は、運転者のブレーキ操作手段のブレーキ操作が一旦落ち着いた状態に入ったかどうかチェックする(ステップS4〜S6)。ここで、ブレーキ操作が一旦落ち着いた状態について説明する。ブレーキペダルの操作量θnが、図6に示すように、時間の経過とともに変化するとき、破線で囲まれた時間帯が、ブレーキ操作が一旦落ち着いた状態となる。つまり、破線で囲まれた時間帯は、ブレーキペダルの操作量θnの変化量Δθnが小さい時間帯を示す。そして、操作量の変化量が小さいことは、ブレーキ操作が一旦落ち着いた状態になるときに生じる。従って、操作量の変化量を知ることによって、ブレーキ操作が一旦落ち着いた状態かどうか知ることができる。つまり、運転者はこの時点で運転操作に余裕がでてきたことを意味する。
【0032】
そして、まず、CPU2は、車両用ECU12からその時のブレーキ操作量θnの情報を取得して、ブレーキ操作手段の操作量の実変化量Δθnを下記の式(1)から求める(ステップS4)。
【0033】
実変化量Δθnは、最新のn個の移動平均操作量θav(t)と一つ前のn個の移動平均操作量θav(t−1)との差分から求める。
Δθn=θav(t)−θav(t−1) …(1)
ただし、
θav(t)=(θ1+θ2+……+θn−1+θn)/n
θav(t−1)=(θ0+θ1+……+θn−2+θn−1)/n
続いて、CPU2は、RAM3の所定の記憶領域に設けたタイマカウンタ3aのカウン
ト値Tを「1」加算した後(ステップS5)、求めた実変化量Δθnの絶対値|Δθn|と予め定めた基準変化量Δθkと比較する(ステップS6)。
【0034】
この時、実変化量Δθnの絶対値|Δθn|が基準変化量Δθk以上のとき(ステップS6でNO)、CPU2は、タイマカウンタ3aのカウント値Tが予め定めた基準時間Tkを経過したかどうかチェックする(ステップS7)。つまり、運転者のブレーキ操作が、基準時間Tk以上、その操作量を保持しないでブレーキ操作が続けられているかどうか判断する。そして、カウント値Tが基準時間Tk未満の時(ステップS7でNO)、CPU2は、ステップ4に戻り、新たなブレーキ操作手段の操作量の実変化量Δθnの絶対値|Δθn|を求める。
【0035】
やがて、実変化量Δθnの絶対値|Δθn|が基準変化量Δθkより小さくなると(ステップS6でYES)、CPU2は、タイマカウンタ3aのカウント値Tをリセット(=0)しカウント動作を停止させた後(ステップS8)、制動距離Sa及び停止位置SPの算出を行う(ステップS9)。つまり、運転者のブレーキ操作量が一定状態に保持されブレーキ操作が一旦落ち着き運転者に余裕がでてきた状態になったとして、制動距離Sa及び停止位置SPの算出を行う。
【0036】
一方、ステップS7において、カウント値Tが基準時間Tk以上になった時(ステップS7でYES)、CPU2は、基準時間Tk以上ブレーキ操作が続けられていると判断して、タイマカウンタ3aのカウント値Tをリセット(=0)しカウント動作を停止させた後(ステップS8)、制動距離Sa及び停止位置SPの算出を行う(ステップS9)。
【0037】
ステップS9において、CPU2は、まず、単位時間あたりの減速度aを求める。減速度aは、以下の式(2)を使って算出する。
a=(Vb−Va)/(tb−ta) …(2)
Vbは時間tbの時の車速、Vaは時間ta(時間tbよりも前の時間)の時の車速である。
【0038】
そして、CPU2は、この単位時間の減速度aを、連続してn個(a1,a2,・・・,an)求めた後、n個の移動平均減速度Aavを求める。移動平均減速度Aavは、下記の式(3)を使って算出する。
【0039】
Aav=(a1+a2+・・・+an)/n …(3)
CPU2は、移動平均減速度Aavが求まると、制動距離Saを求める。制動距離Saは下記の式(4)を使って算出する。
【0040】
Sa=(Ve2−V02)/(2Aav) …(4)
V0は、初速であってブレーキ操作された時の車速Vnであり、本実施形態では「制動時運転支援モード」になったときの車速Vnである。Veは、終速であって本実施形態では車両Cが停止した時の車速Vn(=0)、即ち、車速「0」である。
【0041】
CPU2は、制動距離Saを求めると、車両Cの停止位置SPを求める。車両Cが停止する位置(停止位置SP)は、その時の自車位置DP及び地図データを使って求めることができる。CPU2は、制動距離Sa及び停止位置SPを求めると一時RAM3に記憶する。
【0042】
制動距離Sa及び停止位置SPを求めると、CPU2は、支援用ディスプレイ6に、制動距離Saを表示するとともに、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rを含む地図31を表示するとともに、その地図31上に現在の車両Cを示す自車位置指標32と、停止
位置SPを示す停止位置指標33を重ね合わせた制動運転支援画像BGを表示する(ステップS10)。この時、CPU2は、前記RAM3に記憶した確定目標物距離Lnを読み出し、確定目標物の位置を求める。そして、CPU2は、支援用ディスプレイ6に表示された地図31上に確定目標物の位置を示す目標物指標34を合わせて表示するとともに、前記算出した制動距離Saを示す距離指標33aを表示する。
【0043】
このとき、停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合には、図3に示すように、CPU2は自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを青色で表示する。また、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合には、図4に示すように、CPU2は自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを赤色で表示する。この時、距離指標33aも色を変えて表示するようにしてもよい。
【0044】
従って、運転者は、支援用ディスプレイ6に表示された地図31上の停止位置指標33を見ることによって停止位置SPを確認することができる。しかも、目標物指標34を表示したので、停止位置指標33と目標物指標34との相対位置関係から、この表示された時点でのブレーキ操作では、車両Cが確定目標物Pxをオーバーランするか、確定目標物Pxの手前で停止させることができるか視認することができる。
【0045】
続いて、CPU2は、前方検出レーダ装置11、車両用ECU12及びナビ装置13からの各信号及び各種情報を新たに取得し、「制動時運転支援モード」が終了かどうか判別する(ステップS11)。つまり、CPU2は、ブレーキ操作量θn、車速Vn、確定目標物距離Lnを新たな値に更新し、その更新したブレーキ操作量θn、車速Vn、確定目標物距離Lnに基づいて「制動時運転支援モード」を継続するか終了するかを決めている。本実施形態では、CPU2は、車速Vnが予め定めた車速Vk以上であって、目標物距離Lnが予め定めた距離Lk以下の時に、ブレーキ操作量θnが予め定めた操作量θk(=0)を超えた時(ブレーキが操作された時)に、「制動時運転支援モード」となり、それ以外は「制動時運転支援モード」とならないようにしている。
【0046】
そして、いまだブレーキが操作されている時(ステップS11でNO)、CPU2は、ステップ4に戻り、新たなブレーキペダルの操作量θnの実変化量Δθnの絶対値|Δθn|を求める。即ち、CPU2は、新たな制動運転支援画像BGの更新を行う。
【0047】
一方、ブレーキ操作が解除されて「制動時運転支援モード」を終了すると(ステップS11でYES)、CPU2は制動運転支援画像BGの表示を終了させた後(ステップS12)、イグニッションスイッチからのオン・オフ信号がオフかどうかチェックする(ステップS13)。そして、イグニッションスイッチからのオン・オフ信号がオンの場合(ステップS13でNO)、CPU2は新たな制動運転支援処理を再び開始するためにステップS1に戻る。
【0048】
一方、イグニッションスイッチからのオン・オフ信号がオフの場合(ステップS13でYES)、CPU2は運転を終了したとして、制動運転支援処理動作を終了する。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
(1)上記実施形態では、その時のブレーキ操作量θnの実変化量Δθnの絶対値|Δθn|が基準変化量Δθkより小さくなったとき、つまり、ブレーキ操作が落ち着いた操作状態になったとき、車両Cの停止位置SPと制動距離Saを支援用ディスプレイ6に表示した。従って、運転者のブレーキ操作が、運転操作に支障が生じない落ち着いた状態になったタイミングで、停止位置SP及び制動距離Saが表示されることから、それらを余裕をもって運転者は視認できる。
【0050】
しかも、支援用ディスプレイ6に、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rを含む地図31を表示するとともに、その地図31上に停止位置SPを示す停止位置指標33を重ね合わせて表示した。従って、その時の減速度による停止位置SPが支援用ディスプレイ6にて視認し実感でき、次に行う運転操作が迅速に対応できる。
【0051】
(2)上記実施形態では、あわせて、支援用ディスプレイ6に自車位置指標32と目標物指標34を表示したので、停止位置指標33と目標物指標34との相対位置関係及び自車位置指標32と目標物指標34との相対関係が視認しより実感でき、次に行う運転操作がより迅速に対応できる。
【0052】
(3)上記実施形態では、制動運転支援画像BGを、専用の支援用ディスプレイ6を用いて表示した。従って、他の案内を兼用して表示するようにした表示方法にくらべ、専用の表示装置(支援用ディスプレイ6)で確認することから運転者にとって、表示されている内容を即座に理解できる。その結果、とっさの判断が要求される事態に、迅速に対応することができる。
【0053】
(4)上記実施形態では、停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合と、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合とで、制動運転支援画像BGの表示方法を変えた。すなわち、停止位置SPが確定目標物Pxの手前となる場合には、自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを示す色を青色に、停止位置SPが確定目標物Pxをオーバーランする場合には、自車位置指標32から停止位置指標33までの経路Rを示す色を赤色に表示した。従って、運転者は、現在の状況をよりリアルに視認しより実感でき、次に行う運転操作がより迅速に対応できる。
【0054】
(5)上記実施形態では車速Vnが予め定めた車速Vk以上かつ目標物距離Lnが予め定めた距離Lk以下であって、ブレーキペダルが操作された時に、「制動時運転支援モード」にした。つまり、前方に確定目標物Pxがない場合、車両Cが即座に停止できるほどの車速Vnで走行している場合等、制動をかけても運転支援をする必要性がない走行状態、または、ブレーキ操作したら即座に停止できる走行状態の場合は、制動運転支援画像BGを支援用ディスプレイ6に表示しないようにした。従って、ブレーキ操作するごとに、必要のない制動運転支援画像BGが表示されることはない。
【0055】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、支援用ディスプレイ6に、停止位置SP、制動距離Saを表示するようにしたが、いずれか一方を表示するようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、支援用ディスプレイ6に、停止位置SP、制動距離Saを表示するようにしたが、停止する時間を支援用ディスプレイ6に、停止位置SP、制動距離Saと合わせてまたは単独で表示するようにして実施してもよい。
【0057】
・上記実施形態では、制動運転支援画像BGを専用の支援用ディスプレイ6に表示するようにした。これを、例えば、ナビ装置13に備えられたディスプレイ、又は、運転室に設けられたその他の目的で設置されたディスプレイと兼用し表示させるようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、車速Vnが予め定めた車速Vk以上かつ目標物距離Lnが予め定めた距離Lk以下であって、ブレーキペダルが操作された時に、「制動時運転支援モード」にした。これを、ブレーキ操作だけ、すなわち、単にブレーキ操作がなされただけで、他の条件に関係なく「制動時運転支援モード」になるようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、「制動時運転支援モード」になって、減速度aを連続してn個(a1,a2,・・・,an)求めた後、移動平均減速度Aavを求めるようにした。これを、「制動時運転支援モード」に関係なく、常時、更新しながらn個の減速度(a1,a2,・・・,an)を求めておいてもよい。そして、「制動時運転支援モード」になったら、直ちに、移動平均減速度Aavを求めるようにしてもよい。さらに、常時、移動平均減速度Aavを求めておいてもよい。そして、「制動時運転支援モード」になったら、直ちに、制動距離Saを求めるようにしてもよい。また、移動平均減速度Aavではなく、1つの減速度aから制動距離Saを算出するようにしてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、運転支援装置1(CPU2)が減速度a又は移動平均減速度Aavを求めるようにした。これを、車両用ECU12が減速度a又は移動平均減速度Aavを求め、CPU2は車両用ECU12から求められた減速度a又は移動平均減速度Aavを取得し、車両用ECU12から取得した減速度a又は移動平均減速度Aavから制動距離Saを求めるようにしてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、図3及び図4で示す支援用ディスプレイ16に表示する制動運転支援画像BGには、実際に走行している道路形状の地図31に経路R、停止位置指標33が表示されるようにした。これを、図7及び図8に示すように、実際の走行道路の形状を直線上に簡略した地図31を表示し、その地図31上に経路R、停止位置指標33、目標物指標34を表示するようにしてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、制動運転支援画像BGに表示される停止位置指標33は、車両Cが停止する停止位置SPを表示した。これを、例えば時速5キロメートル、時速10キロメートルといった、特定の車速になる位置を到達位置指標として表示してもよい。
【0063】
また、例えば時速15キロメートル、時速10キロメートル、時速5キロメートル、時速0キロメートルと言ったように、予め定めた複数の車速になる位置(到達位置)を図9示すようにそれぞれ互いに識別できる到達位置指標35,36,37,38で表示するようにしてもよい。また、図10に示す制動運転支援画像BGは、確定目標物Pxがカーブの入り口であって、車両Cの予め定めた車速となる位置(到達位置)を示す到達指標39が表示された画像となっている。この場合、カーブの入り口ではどのくらいの車速Vnに減速して進入しなければならないかが、視認することができる。
【0064】
・上記実施形態では、制動運転支援画像BGは、車両Cが停止位置SPまで走行する経路Rを含む地図31を表示するとともに、その地図31上に停止位置SPを示す停止位置指標33を重ね合わせた画像であった。これを、図11及び図12示すように、停止位置SPが、確定目標物Pxの位置を基準にどれだけ手前の距離または、オーバーランした距離にあるか、CPU2に変換機能を持たせて演算させ、それら距離を示す指標41,42を示すようにした制動運転支援画像BGを支援用ディスプレイ6に表示するようにしてもよい。この場合、CPU2は、確定目標物Pxまでの距離Lnと制動距離Saを比較する。そして、制動距離Saが距離Lnより長い場合、図11示すように、その差分(=Sa−Ln)に応じた長さの指標41を、目標物指標40を基準に上方に表示する。反対に、制動距離Saが距離Lnより短い場合、図12示すように、その差分(=Ln−Sa)に応じた長さの指標42を、目標物指標40を基準に下方に表示する。この場合にも、停止位置が目標物指標40を基準にどのくらいかが、視認し実感できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の運転支援装置の構成を説明するブロック図。
【図2】前方検出レーダ装置を説明するための説明図。
【図3】制動運転支援画像を説明するための図。
【図4】制動運転支援画像を説明するための図。
【図5】運転支援装置の作用を説明するためのフローチャート。
【図6】ブレーキペダルのブレーキ操作量の推移を示す図。
【図7】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図8】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図9】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図10】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図11】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【図12】その他の制動運転支援画像を説明するための図。
【符号の説明】
【0066】
1…運転支援装置、2…自車位置検出手段、ブレーキ操作量検出手段、目標物検出手段、変化量算出手段、到達指標算出手段、表示制御手段、目標物位置算出手段としてのCPU、3…RAM、3a…タイマカウンタ、4…ROM、5…入出力インターフェイス、6…表示手段としての支援用ディスプレイ、11…前方検出レーダ装置、12…車両用電子制御装置(車両用ECU)、13…ナビゲーション装置(ナビ装置)、31…地図、32…自車位置指標、33…到達指標としての停止位置指標、33a…距離指標、34…目標物指標、C…車両、BG…制動支援画像、P…目標物、Px…確定目標物、DP…自車位置、SP…停止位置、a…減速度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作手段の操作量の変化量が予め定めた変化量になった時、その時の減速度に基づいて、車両が予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを表示手段に表示するようにしたことを特徴とする制動時の運転支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制動時の運転支援方法において、
前記予め定めた車速は、時速0キロメートルであることを特徴する制動時の運転支援方法。
【請求項3】
請求項1に記載の制動時の運転支援方法において、
前記予め定めた車速は複数設けられ、それらの車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つが、それぞれ車速毎に識別できるように、それぞれ表示手段に表示することを特徴とする制動時の運転支援方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の制動時の運転支援方法において、
前記予め定めた車速に到達する位置の表示は、前記表示手段に表示された道路地図上に到達する位置を示す指標を表示するようにしたことを特徴とする制動時の運転支援方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の制動時の運転支援方法において、
その時々で前方位置の相対距離が変動する目標物を求めその目標物の位置を特定し、その目標物の位置を、前記予め定めた車速に到達する位置とともに前記表示手段に表示することを特徴とする制動時の運転支援方法。
【請求項6】
車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と道路地図を表示する表示手段とを備え、前記表示手段に表示された道路地図上に、前記自車位置検出手段が検出した現在位置を表示する運転支援装置において、
ブレーキセンサからの検出信号に基づいて、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、
前記ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量に基づいて、ブレーキ操作量の変化量を算出する変化量算出手段と、
前記変化量算出手段が算出した操作量が予め定めた変化量になった時、その時の車両の減速度を算出し、予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを算出する到達指標算出手段と、
前記到達指標算出手段が算出した到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを、前記表示手段に表示させる表示制御手段と
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の運転支援装置において、
車両の前方位置の相対距離が変動する目標物を検出する目標物検出手段と、
目標物検出手段が検出した前記目標物の位置を算出する目標物位置算出手段と
を備え、
前記表示制御手段は、前記目標物の位置を、前記到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つとともに前記表示手段に表示するようにしたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の運転支援装置において、
前記到達指標算出手段は、複数の予め定めた車速毎に、それらの車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくとも1つをそれぞれ車速毎に算出するものであり、
前記表示制御手段は、前記到達指標算出手段が算出した位置、距離及び時間の少なくとも1つを示す到達指標を、それぞれ車速毎に識別できるように表示手段に表示された道路地図上に表示させることを特徴とする運転支援装置。
【請求項1】
ブレーキ操作手段の操作量の変化量が予め定めた変化量になった時、その時の減速度に基づいて、車両が予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを表示手段に表示するようにしたことを特徴とする制動時の運転支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制動時の運転支援方法において、
前記予め定めた車速は、時速0キロメートルであることを特徴する制動時の運転支援方法。
【請求項3】
請求項1に記載の制動時の運転支援方法において、
前記予め定めた車速は複数設けられ、それらの車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つが、それぞれ車速毎に識別できるように、それぞれ表示手段に表示することを特徴とする制動時の運転支援方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の制動時の運転支援方法において、
前記予め定めた車速に到達する位置の表示は、前記表示手段に表示された道路地図上に到達する位置を示す指標を表示するようにしたことを特徴とする制動時の運転支援方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の制動時の運転支援方法において、
その時々で前方位置の相対距離が変動する目標物を求めその目標物の位置を特定し、その目標物の位置を、前記予め定めた車速に到達する位置とともに前記表示手段に表示することを特徴とする制動時の運転支援方法。
【請求項6】
車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と道路地図を表示する表示手段とを備え、前記表示手段に表示された道路地図上に、前記自車位置検出手段が検出した現在位置を表示する運転支援装置において、
ブレーキセンサからの検出信号に基づいて、ブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、
前記ブレーキ操作量検出手段が検出したブレーキ操作量に基づいて、ブレーキ操作量の変化量を算出する変化量算出手段と、
前記変化量算出手段が算出した操作量が予め定めた変化量になった時、その時の車両の減速度を算出し、予め定めた車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを算出する到達指標算出手段と、
前記到達指標算出手段が算出した到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つを、前記表示手段に表示させる表示制御手段と
を備えたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の運転支援装置において、
車両の前方位置の相対距離が変動する目標物を検出する目標物検出手段と、
目標物検出手段が検出した前記目標物の位置を算出する目標物位置算出手段と
を備え、
前記表示制御手段は、前記目標物の位置を、前記到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくともいずれか1つとともに前記表示手段に表示するようにしたことを特徴とする運転支援装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の運転支援装置において、
前記到達指標算出手段は、複数の予め定めた車速毎に、それらの車速に到達する位置、到達するまでの距離及び時間の少なくとも1つをそれぞれ車速毎に算出するものであり、
前記表示制御手段は、前記到達指標算出手段が算出した位置、距離及び時間の少なくとも1つを示す到達指標を、それぞれ車速毎に識別できるように表示手段に表示された道路地図上に表示させることを特徴とする運転支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−141178(P2007−141178A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337679(P2005−337679)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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