説明

制御回路簡略化ロボット

【課題】制御回路、アクチュエータ、把握機構を軽減し、きめ細かいロボット製作やメンテナンスを可能にする。
【解決手段】制御装置の解決手段についてはプログラムを収めるメモリのアドレスを指定する装置として二つ以上の加算または減算のみを行うカウンタと、そのどちらを加算または減算するかを切り替える装置を取り付ける事により、メモリアドレスのジャンプを行う回路を廃し回路の複雑化を防ぐ。アクチュエータの機構に関する解決手段としては一本の出力軸を複数のモーターが共有し、そのモーターの中のひとつだけを正転用、残りのモーターを逆転用として取り付ける事でモータードライブ回路の単純化を実現する。物体の把握機構におけるアクチュエータ過負荷対策として複雑化してしまう傾向に対しては、錘を用いて地球の重力を利用した把握機構を製作することにより、アクチュエータへ直接過負荷が加わる事を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットの制御回路及びそれを用いた際のアクチュエータ、把握機構の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
産業上利用される機械は、使用者によって操作やメンテナンスが行いやすいように、また低コスト化のために、構造や制御システムから過剰な機能を省くための取り組みが行われる事がある。
具体的にはこれらの事を機械に関連する著名なメーカーが行っている事が特許文献1や特許文献2等に記されており、これが産業上重要な考えである事が分かると言える。
本発明においてもこのような考えを持ちつつ、ロボットの構造や制御についての簡略化の取り組みを行った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特許公開2005−1036
【特許文献2】 特許公開平7−314361
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットと呼ばれるものは機械の中でも特に複雑なものであり、具体的には多数のアクチュエータを搭載し、そしてこれに対してプログラムを用いた制御回路によって短時間に大量の命令を送り制御を行う事で動作を実現するものであった。
このため制御回路が非常に複雑になる傾向にあり、ロボットの物理的な不具合の問題に比べた場合に制御回路は「何故正しく動かないのかが目で見て分からない」と言う形での不具合が発生する可能性が高く、このため従来の技術を用いた場合、特にロボットに発生した不具合について緊急な問題解決が必要である場合に個人の手による制御回路の製作や整備をして運用を行う事は非常に困難である。
また従来はこの問題について、上述のような複雑な回路を企業が設計し、機能ICや組み込み用OSを搭載した装置として販売し、これを不具合の発生した部品と交換して利用する事で解決しているが、これはすなわち技術が「ブラックボックス化」してしまう事を意味し、個人の手でのロボットのきめ細かなメンテナンスを行いにくくするばかりか、設計した側が見落とした設計ミスやソフトウェアのバグに使用者の側が悩まされると言った事態に陥ってしまう。
その一方でロボットの物理的な構造についても、特にロボットが物を掴む時には避けて通れない問題となるのであるが、アクチュエータに過負荷がかかった時にアクチュエータや制御回路の破損を未然に防ぐための配慮が必要であり、そのためのセンサーを加えて制御回路を複雑化させるか、あるいはアクチュエータにクラッチ機構や過負荷吸収のためのバネを加えるなど物理的な面で複雑な設計や重量増加を承知で対策を行う必要があり、この点でも個人の手で製作や整備を行う事には限界があった。
そこで本発明では、ロボット製作にかかるコストよりも制御回路を製作・整備する負担を軽減する事に重点を置きつつも、そのような制御回路で運用する事の出来る構造を持ったアクチュエータと、加えて過負荷対策が不要である物体の把握機構を提供し、個人でもきめ細かいロボット製作やメンテナンスを可能とする事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、第一発明は、プログラムを収めるメモリのアドレス入力部に、二つ以上の加算または減算のみを行うカウンタの出力が接続され、このカウンタのどちらを加算するかをプログラムにより切り替える事が出来る機能を持たせる事で、メモリアドレスのジャンプ機能を廃した制御回路である。
次に第二発明は、一個の正転用モーターと、一個以上の逆転用モーターが一本の出力軸を共有している構造をしたアクチュエータである。
さらに第三発明は、固定爪として爪と錘が付いた部分があり、その爪から離れたところに可動爪を取り付ける穴があり、さらに爪から離れたところに吊り下げ用のフックまたは穴が開き、また可動爪として爪から離れたところに固定爪を取り付ける穴があり、さらに固定爪を取り付ける穴から離れたところに吊り下げ用のフックまたは穴が空いており、またその付近に錘が付き、固定爪と可動爪が自由に動く形で取り付けられている、物体の把握機構である。
【発明の効果】
【0006】
第一発明によれば、プログラムを呼び出すメモリアドレスを指示する装置が、単一の種類のカウンタとそのカウンタを切り替えるための回路だけで済むため、現在プログラムを実行している行から別の行へジャンプする命令を実行する回路を製作せずともそれと同等の機能を提供でき、ジャンプする命令を実行する回路に起因する問題点を解消する事で回路製作や整備にかかる負担を軽減する事が出来る。
第二発明によれば、アクチュエータを構成する各モーターへ正転・逆転の命令を行う必要がなくなるためにモータードライブ回路が簡略化され製作しやすくなり、また片方向への回転を前提として製作されたモーターを用いつつも正転・逆転を行うアクチュエータを製作する事が出来る。
第三発明によれば、地球の重力の力を使って物体を掴む構造となるためにアクチュエータへ直接過負荷が伝わらず、結果として把握機構自体に過負荷対策をする必要がなくなり、構造が非常に単純になるために故障が少なくメンテナンスが簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第一発明における制御回路の、一実施形態の処理の流れを現す模式図である。
【図2】従来技術における制御回路の、一実施形態の処理の流れを現す模式図である。
【図3】第一発明におけるプログラム処理手順の概念を表す模式図である。
【図4】第一発明における、図1の中の「切り替え回路6」の一実施例を示した回路図である。
【図5】第二発明の一実施形態を表す斜視図である。
【図6】図5と同等の機能を従来技術により実施した場合の構造を表す斜視図である。
【図7】第二発明を用いた場合に、モーター一個に繋ぐ必要のあるモータードライブ回路の回路図である。
【図8】従来技術を用いた場合に、モーター一個に繋ぐ必要のあるモータードライブ回路の回路図である。
【図9】第三発明において爪を閉じた状態を表す側面図である。
【図10】第三発明において爪を開いた状態を表す側面図である。
【図11】第二発明および第三発明を組み合わせた一実施形態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第一発明について説明する。
まず、第一発明の一実施形態における処理の流れが図1に示されており、これを文章で説明してゆく。
クロック発生回路3のクロックパルスがプログラム格納メモリ2の内容呼び出し処理とそのタイミングの制御を行うと同時に切り替え回路6にも同様のクロックパルスが送られ、処理が進む事になる。
ここで切り替え回路6の一実施例について図4を用いて説明すると、この図おいてはフリップフロップ32の状態がクロック切り替え用ゲート33へ伝達され、クロックパルスが出力Aと出力Bのいずれかに出力されるようになる。
説明に用いる図を図1に戻すが、こうしてアドレス出力用カウンタ4又はアドレス出力用カウンタ5のいずれかへクロックパルスが伝えられてカウンタの値が加算され、プログラム格納メモリ2が呼び出すべきアドレスを変化させてゆくようにする。
プログラム格納メモリ2では、アドレス出力用カウンタ4から出力される上位アドレスとアドレス出力用カウンタ5から出力される下位アドレスと、さらに外部センサーや外部記憶装置の値による条件分岐処理が可能であるようにメモリアドレス外部入力としてこれを加え、外部のセンサーのHまたはLの信号を含めたうえで作成されたアドレスを受け取り、さらにクロック発生回路3のクロックパルスによる呼び出し処理により指定された内容を出力し、デコーダ1へその値を送る。
デコーダ1では切り替え回路6の状態を変更する命令を出すほか、この図に記されていない部分での処理、すなわち制御すべきモーターの選択や使用するセンサーの選択などを回路へ必要な命令を送る事になる。
これを図2における従来技術と比較すると、プログラム格納メモリ2で受け取るアドレスを出力する回路がアドレス出力用カウンタ7の一個だけであり、またデコーダ1の命令によりアドレス出力用カウンタ7へ、ジャンプ先アドレス生成レジスタ8の内容が書き込みされるようになっている。
すなわち従来技術においては、プログラム制御は命令文を上から下まで逐次実行し、必要な場合には指定したメモリアドレスへジャンプと言う方式を採っているのであるが、第一発明においてはこの方式を用いずに制御を可能とするものである。
これについて図3を用い、第一発明におけるプログラムの処理手順の概念を説明すると、四角いマス目の中の一つ一つに命令が入っており、プログラムを開始する時は左上のマス目を始点として右方向に向かって処理が進み、右端まで来ると左端から右へ向かって処理を行ってゆく。
そしてそのマス目の中に、処理する方向を下向きに変更する命令が入っていると、今まで右に向かって行っていた処理が、下方向へ向かって処理をするようになり、下の端まで処理をすると一番上から再び処理を開始する。
再びマス目の中に、処理する方向を右向きに変更する命令が入っていると、再び右に向かって処理をするようになると言う形で、すなわち従来の技術ではプログラムの指定場所へ「ジャンプ」していたものを、第一発明においては「回り道をする」と言う形で同等の機能を実現する事が出来るようになっている。
【0009】
第二発明について説明する。
なお、本実施形態における「モーター」は、電気によって駆動するギヤードモーターの事であるとして、またこれがロボットの関節等に用いる「アクチュエータの中の部品のひとつ」であるとして説明する。
第二発明の一実施形態としては図5に示したとおり、台座9の上に支柱10が取り付けられており、支柱10の上にモーター15が取り付けられている。
そしてモーター15には出力軸16が接続されているが、これはモーター13およびモーター14の出力軸と共有している。
そしてモーター13にはアーム11が、モーター14にはアーム12が取り付けられている。
この状態でモーター15はアーム11とアーム12が下がる方向に回転するようにして、その一方でモーター13はアーム11が持ち上がる方向に、モーター14はアーム12が持ち上がる方向に回転する、すなわちこれを言い換えるとモーター15は正転、モーター13及びモーター14は逆転する事により、アーム11とアーム12を個別に上下させる事を実現する。
そしてこのモーター13、モーター14、モーター15を駆動するためのモータードライブ回路は図7に示した回路3つが必要となる。
これを図6において示した従来技術と比較すると、従来技術では出力軸17と出力軸18がそれぞれ独立しており、なおかつ支柱10に固定されており、モーター13とモーター14へ別個に出力軸の正逆転の命令を出す事で、図5における第二発明の一実施例と同等の機能を提供しており、この場合のモーター13とモーター14を駆動するための制御回路は図8に示したモータードライブ回路が二つ必要となる。
すなわち、第二発明はアームを個別に動かすために従来技術に比べモーター15が必要である分、モーター一個分のコストと重量が増加するという欠点があるが、その代わりに制御回路から正逆転の出力機能を省く事が出来るため、正逆転が不可能なモーターを使用したアクチュエータが製作でき、また簡素なモータードライブ回路を用いる事が可能になるのである。
モータードライブ回路の簡素化について図7と図8を用いてさらに詳述する。
なお、図7及び図8の中の、丸の中に「M」と書いてあるものは電気モーターの記号である。
図7及び図8における電源26とグランド28はいずれの回路でも必要であるが、図8のように従来技術における制御が入力A29と入力B30の二本の信号線を用いないと行えないのに対し、図7のように第二発明では入力27の一本だけで済み、すなわち図5のアームを個別に操作するために必要な信号線も図6のそれに比べて一本減じる事が出来る。
【0010】
第三発明について説明する。
第三発明の一実施形態の詳細を示したのが図9及び図10であり、この実施形態のために必要な機構を説明する。
この機構は大きく分けて固定爪と可動爪の二つの部品からなり、固定爪本体19の先端に固定爪先20と錘21があり、固定爪本体19の反対側にはロープ22が取り付けられている。
そして爪結合部31で固定爪と可動爪が自由に動けるような形で結合されており、可動爪本体23には、その爪先と反対側にロープ25と錘24が取り付けられている。
この状態で、ロープ22を垂れ下がる形にしてロープ25を上に引っ張り錘24を持ち上げた状態にすると図9のように爪が閉じた状態になり、この状態でさらにロープ25を上に引っ張ると爪が閉じた状態でこの把握機構を上昇させる事が出来る。
またロープ25を垂れ下がる形にしてロープ22を張った状態にすると錘24が下がるために図10のように爪が開き、ロープ22をこのまま持ち上げると爪を開いたままこの把握機構を上昇させる事が出来る。
また、物体を把握する時の力は、錘21を重くする事で強く、軽くする事で弱くするように調整が可能である。
すなわち、アクチュエータの力で直接物体を把握するのではなく、地球の重力の力を利用して物体を把握するのである。
【実施例】
【0011】
第二発明及び第三発明の一実施形態を組み合わせたものが図11である。
なお、組み合わせた図を表示するために、アーム11及びアーム12、支柱10の形状は変更して表示しており、また本来は第一発明を含めた制御回路との接続も必須であるが、内容が煩雑になるため省略する。
さらにこの実施形態によれば、把握機構下部に置かれた物体を掴む・持ち上げる・離すという動作をするだけであるため、そのまま何かの役に立つものではなく、ここで示した一実施例を組み合わせて様々な形態のロボットを作る事により、本発明の利用価値が発揮される事になる。
【0012】
「第一発明における実施形態の効果」
第一発明を用いる事で、図2における従来技術のようにジャンプ先アドレス生成レジスタ8の内容を変更する命令や、そこから出力されるジャンプ先アドレスの内容を伝達する多数のアドレス伝達用配線が省略でき、製作にかかる手間やコストを省く事が出来る。
またアドレス出力用カウンタ7において必須であった出力内容の書き換え機能を省き、出力のみを行うカウンタを使用する事ができるようになり、すなわち低機能のカウンタICを使えるようになり、コストダウンや省スペース化、製作の手間を省く、整備をしやすくすると言った効果を期待できる。
さらに第一発明は「メモリアドレス」を変更するのではなく「メモリアドレスの変化の仕方」を変更するものであるため、従来技術においてメモリアドレスを変更した際に動作が不安定になり誤動作する可能性への配慮をする必要が無くなるため、この点でもコストダウンや部品点数の削減を期待できる。
【0013】
「第二発明における実施形態の効果」
この実施形態による第二発明の効果として、前述の通り制御回路の簡略化が可能となるため、結果として「見えない場所で起こる不具合」の発生する可能性を減らす事ができ、不具合発生時の原因究明がしやすくなり、その結果として異常の処置がしやすくなる。
また図11における実施形態では制御回路のコスト低減以上に、従来技術よりもひとつ余分に付いたモーター15のコストの方が大きいと考えられるが、同軸で個別にアームを動かすのであれば正転用のモーターは一個だけで済むため、出力軸を共有するモーターをさらに増やす事により、理論上は従来技術に比べた欠点を減らし、その一方で利点が大きく上回る場面を実現する事が出来る。
「第二発明における他の実施形態」
本実施形態においては直流電気モーターとそれを制御する電気回路を例にとって説明したが、軸を回転させる装置であれば交流モーターや油圧モーター、エンジンを用いても良い。
【0014】
「第三発明における実施形態の効果」
第三発明は、このように、鋏やニッパのように、少数の部品からなる単純な構造であるため、製作も容易で整備性も非常に高く、長寿命のものを作ることも出来る。
そして前述の通り、地球の重力の力を利用して物体を把握する事により、把握時のアクチュエータへの過負荷が伝わらないため、アクチュエータへの過負荷対策の回路や機構をこの部分へ組み込む必要がなくなり、把握機構の簡略化を実現する事が出来るのである。
「第三発明における他の実施形態」
本実施形態においては、把握機構を上下させる・爪の開閉をするために「ロープ」を用いているが、これは紐状の物体、例えばワイヤー、チェーン、糸等を用いても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを収めるメモリのアドレス入力部に、二つ以上の加算または減算のみを行うカウンタの出力が接続され、このカウンタのどちらを加算するかをプログラムにより切り替える事が出来る機能を持たせる事で、メモリアドレスのジャンプ機能を廃した制御回路。
【請求項2】
一個の正転用モーターと、一個以上の逆転用モーターが一本の出力軸を共有している構造をしたアクチュエータ。
【請求項3】
固定爪として爪と錘が付いた部分があり、その爪から離れたところに可動爪を取り付ける穴があり、さらに爪から離れたところに吊り下げ用のフックまたは穴が開き、また可動爪として爪から離れたところに固定爪を取り付ける穴があり、さらに固定爪を取り付ける穴から離れたところに吊り下げ用のフックまたは穴が空いており、またその付近に錘が付き、固定爪と可動爪が自由に動く形で取り付けられている、物体の把握機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−159266(P2011−159266A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35375(P2010−35375)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(509113575)
【Fターム(参考)】