制御弁
【課題】 冷媒の有効利用又は冷媒の温度調節を行うとともに、キャビテーション発生防止及び冷媒の温度調節機能の信頼性向上を図ることができる冷却システムの制御弁を提供する。
【解決手段】 車両に搭載される冷却システムは、エンジンが配置され、冷却液を循環させる冷却回路と、冷却回路に接続されラジエータが配置される排熱系流路と、排熱系流路と冷却回路との合流位置に配置されラジエータへの冷却液の流量を制御するサーモスタットと、サーモスタットの下流に配置され冷却回路に冷却液を圧送するウォーターポンプと冷却回路を流れる冷却液を制御する制御弁10とから構成される。制御弁10は、第1カバー11内に回動可能に軸支された弁体15を備えている。また、弁体15は、回転軸16を中心に形成された第1及び第2弁板17,18を備え、第1及び第2弁板17,18は、冷却液からの圧力を受ける受圧面積が互いに異なるように形成されている。
【解決手段】 車両に搭載される冷却システムは、エンジンが配置され、冷却液を循環させる冷却回路と、冷却回路に接続されラジエータが配置される排熱系流路と、排熱系流路と冷却回路との合流位置に配置されラジエータへの冷却液の流量を制御するサーモスタットと、サーモスタットの下流に配置され冷却回路に冷却液を圧送するウォーターポンプと冷却回路を流れる冷却液を制御する制御弁10とから構成される。制御弁10は、第1カバー11内に回動可能に軸支された弁体15を備えている。また、弁体15は、回転軸16を中心に形成された第1及び第2弁板17,18を備え、第1及び第2弁板17,18は、冷却液からの圧力を受ける受圧面積が互いに異なるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される冷却システムの制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に搭載される冷却システムとして、エンジンの過熱を防止するだけでなく、摩擦低減を図ったり、冷却液の熱を有効利用する機能を備えたシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、エンジン側に設けられた流路の吐出口側にサーモスタットを設け、シリンダヘッド側及びシリンダブロック側の冷却液の液温を制御するシステムが提案されている。このシステムでは、シリンダヘッド側をより冷却することで、ノッキング制御及び吸気の充填効率の向上を図り、シリンダブロック側では、潤滑油温度を適温化させ、フリクション低減及び油劣化防止を図っている。
【0003】
一方、特許文献2には、冷却液と空気との熱交換により、冷却液を空調ヒータの熱源として利用するとともに、冷却液と作動油との熱交換により、変速機の作動油を適正な温度範囲に保持する冷却システムが提案されている。この冷却システムは、冷却回路に、ヒータ用の熱交換器及び作動油と熱交換を行う熱交換器と、各熱交換器への流量を制御する制御弁とを備えている。
【特許文献1】特開平10−184358号公報
【特許文献2】特開2002−364362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、サーモスタットや制御弁等の部品点数が増加すると、冷却回路全体の通水抵抗が増大する。その結果、冷却液を圧送するポンプの吸込口側が減圧され、キャビテーションが発生しやすくなる。また、冷却回路全体の通水抵抗が増大すると、暖機過程で、ラジエータ側の流路を閉鎖したサーモスタットの上下流で発生する差圧が大きくなり、この差圧によりサーモスタットが開弁してしまう可能性がある。差圧開弁が発生すると、暖機過程にも関わらずラジエータ内に冷却液が流れ込み、冷却液の温度調節機能が低下する。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷媒の有効利用又は冷媒の温度調節を行うとともに、キャビテーション発生防止及び冷媒の温度調節機能の信頼性向上を図ることができる冷却システムの制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、熱源と接続され冷媒が循環する第1冷却回路と、該第1冷却回路に接続され、前記冷媒を放熱させる冷却手段を有する第2冷却回路と、前記第1冷却回路と前記第2冷却回路との間に設けられ、前記第1冷却回路から前記第2冷却回路への前記冷媒の流量を制御する流量制御弁と、前記冷媒を前記両冷却回路に圧送する冷媒圧送手段と、前記第1冷却回路内の前記冷媒の流量を制御する制御弁とを有する冷却システムにおいて、前記制御弁は、前記第1冷却回路内の通路内において回動可能に支持される弁体を有し、前記弁体は、回動中心に対して非対称に形成されていることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、熱源と接続され冷媒が循環する第1冷却回路と、該第1冷却回路に接続され、前記冷媒を放熱させる冷却手段を有する第2冷却回路と、前記第1冷却回路と前記第2冷却回路との間に設けられ、前記第1冷却回路から前記第2冷却回路への前記冷媒の流量を制御する流量制御弁と、前記冷媒を前記両冷却回路に圧送する冷媒圧送
手段と、前記第1冷却回路内の前記冷媒の流量を制御する制御弁とを有する冷却システムにおいて、前記制御弁は、前記第1冷却回路の通路内において回動可能に支持される弁体を有し、前記弁体の両端と前記通路との間には、それぞれ隙間が設けられ、該各隙間の間隙面積が互いに異なることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の制御弁において、前記第1冷却回路の前記通路は、前記冷媒が流入する第1流路及び第2流路と、前記冷媒が流出する第3流路とが接続される接続部から構成され、前記接続部において前記第1流路及び前記第2流路から前記第3流路へ流れる前記冷媒の流量を制御することを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の制御弁において、前記制御弁は、前記流量制御弁の上流と下流との圧力差が前記流量制御弁の差圧開弁圧より小さくなるように、又は、前記冷媒圧送手段の吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力より大きくなるように作動することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の制御弁において、前記弁体は、電磁駆動部によって回動することを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の制御弁において、前記電磁駆動部は、通電方向の切換により、前記弁体を正逆方向に回動させ、それぞれの終端位置にて、供給電流が低減又は遮断されることを要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の制御弁において、前記電磁駆動部は、前記流量制御弁の上流と下流との圧力差が、前記流量制御弁の差圧開弁圧より小さい圧力において供給電流が制御されるとともに、車両の作動条件に応じ、供給電流が制御されることを要旨とする。
【0012】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、制御弁は、第1冷却回路の通路内に回動可能に支持される弁体は、回転中心に対して非対称に形成されているので、弁体は、冷媒の流れにより弁体に加わる圧力が所定値以上になったとき等に、力の不釣り合いにより回動して、通路の通水抵抗を減少させる位置に配置する。従って、例えば、流量制御弁の差圧開弁、冷媒圧送手段の吸込側でのキャビテーションの発生圧力と、制御弁の回動条件とを適合させることにより、差圧開弁及びキャビテーションの発生前に、弁体を通水抵抗が低減できる位置に回動させて、冷却システム全体の通水抵抗を低減させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第1冷却回路の通路内に回動可能に支持される弁体と通路との間には隙間がそれぞれ設けられ、各隙間の間隙面積は互いに異なっているので、弁体は、冷媒の流れにより弁体に加わる圧力が所定値以上になったとき等に、力の不釣り合いにより回動して、通路の通水抵抗を減少させる位置に配置する。従って、例えば、流量制御弁の差圧開弁、冷媒圧送手段の吸込側でのキャビテーションの発生圧力と、制御弁の回動条件とを適合させることにより、差圧開弁及びキャビテーションの発生前に、弁体を通水抵抗が低減できる位置に回動させて、冷却システム全体の通水抵抗を低減させることができる。また、制御弁の構造を簡単にすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、制御弁の弁体が支持される通路は、冷却回路に備えられる第1及び第2流路と第3流路とが接続される接続部に設けられているので、第1及び第2流路に分配される流量を制御しながら、冷却回路の通水抵抗を制御できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、制御弁は、流量制御弁の上流と下流との圧力差が、流量制御弁の差圧開弁圧より小さくなるように作動する。又は、制御弁は、冷媒圧送手段の
吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力より大きくなるように作動する。このため、冷却システム内での流量制御弁の差圧開弁、冷媒圧送手段の吸込側でのキャビテーションの発生を防止できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、弁体は電磁駆動部によって回動するため、制御弁の開閉弁等の動作制御の信頼性を向上できる。
請求項6に記載の発明によれば、電磁駆動部は、通電方向の切換えにより、弁体を正逆方向に回転させ、終端位置において供給電流が低減又は遮断されるので、消費電力を低減できる。また、冷媒からの圧力等による弁体の回動を、電流の低減時又は遮断時に行うことができるので、弁体を容易に回動させることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、電磁駆動部は、制御弁の上流と下流との圧力差が流量制御弁の差圧開弁圧より小さい圧力において供給電流が制御される。しかも、電磁駆動部は、車両の作動条件に応じて供給電流が制御されるので、冷却システム内の冷媒の温度を最適化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷媒の有効利用又は冷媒の温度調節を行うとともに、キャビテーション発生防止及び冷媒の温度調節機能の信頼性向上を図ることができる冷却システムの制御弁を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4に従って説明する。図1は、熱源及び内燃機関としてのエンジンの冷却システムの構成を説明する模式図である。図1に示すように、自動車等の車両に搭載される冷却システム1は、エンジン2と、冷却手段としてのラジエータ3との間で冷媒としての冷却液を循環させる冷却回路4を備えている。冷却回路4は、ラジエータ3に冷却液を供給し、ラジエータ3を通過した冷却液を送出する、冷却回路4に接続された第2冷却回路としての排熱系流路4cを備える。ラジエータ3は、内燃機関に一般的に用いられている水冷式の装置であって、冷却液の熱を放出する。また、冷却回路4の途中には、冷媒圧送手段としてのウォーターポンプ5が設けられ、冷却液を冷却回路4内で循環させている。
【0020】
冷却回路4は、エンジン2のシリンダヘッド2a側に配設されたヘッド側流路4a、及びエンジン2のシリンダブロック2b側に配設されたブロック側流路4bを備えている。これらのヘッド側流路4a及びブロック側流路4bは、ウォーターポンプ5の吐出口とシリンダヘッド2a及びシリンダブロック2bの導入口との間で分岐し、シリンダヘッド2a及びシリンダブロック2bの吐出口の下流にて合流する。また、ブロック側流路4bであって、シリンダブロック2bの吐出口と、ヘッド側流路4a及びブロック側流路4bの合流部との間には、ヘッド側流路4a及びブロック側流路4bに分配される冷却液の流量を制御可能な制御弁10が設けられている。
【0021】
また、冷却回路4は、ラジエータ3を迂回するように分岐したバイパス流路6を備えている。バイパス流路6の吐出側と排熱系流路4cとの間には、流量制御弁としてのサーモスタット7が配設されている。サーモスタット7は、冷却液が所定温度よりも低い場合に、第1バルブ7aによってラジエータ3側の流路を閉鎖又は冷却液の流量を低減し、バイパス流路6とエンジン2側の冷却回路4とを連通する。また、サーモスタット7は、冷却液が所定温度以上である場合に、第2バルブ7bによってバイパス流路6を閉鎖又は冷却液の流量を低減し、ラジエータ3に分配される冷却液の流量を多くして、冷却液を放熱させる。
【0022】
また、冷却回路4は、熱交換流路8を備えている。熱交換流路8は、エンジン2の吐出口と、バイパス流路6の導入口との間から分岐し、サーモスタット7の送出口とウォーターポンプ5の導入口との間で冷却回路4に合流している。熱交換流路8は、第1流路としての第1熱交換流路8a及び第2流路としての第2熱交換流路8bを備え、これらの第1及び第2熱交換流路8a,8bの途中には、油水熱交換器9a及びヒータ用熱交換器9bがそれぞれ設けられている。尚、ヘッド側流路4a、ブロック側流路4b、バイパス流路6、第1及び第2熱交換流路8a,8b(熱交換流路8)、第3流路8cは特許請求の範囲に記載の第1冷却回路を構成する。
【0023】
油水熱交換器9aは、第1熱交換流路8aを流れる冷却液と、自動変速機の作動油との間で熱交換を行う。自動変速機の作動油は、温度が低い場合には粘度が増して駆動系の抵抗が増加するために燃費が悪化し、逆に温度が高い場合には劣化が早く進行する。従って、油水熱交換器9aでは、作動油が冷却液よりも高温である場合には、熱交換により作動油の熱を放熱し、作動油が冷却液よりも低温の場合には冷却液の熱を作動油に吸熱させて粘度を低減させ、作動油の温度が常に適正な温度範囲に調節されるようになっている。
【0024】
ヒータ用熱交換器9bは、公知の構成の熱交換器であって、冷却液と、車室内の空気との熱交換を行うことにより、冷却液から放出された熱を暖気に利用する装置である。また、これらの第1及び第2熱交換流路8a,8bは、各熱交換器9a,9bの下流で合流し、第3流路8cに接続する。
【0025】
次に、制御弁10について、図2〜図4に従って説明する。図2及び図3は、制御弁10の軸線方向に直交する方向における断面図である。図4は、制御弁10の軸線方向における要部断面図である。本実施形態では、制御弁10は、ロータリーソレノイドバルブであって、図2及び図4に示すように、合成樹脂等からなる有蓋筒状の第1カバー11を備えている。第1カバー11は、上壁部11a及び周壁部11cを備え、その内側には通路を構成する収容空間12が形成されている。
【0026】
図2に示すように、周壁部11cからは、円筒状に形成された、第1ポート13、第2ポート14が突出形成されている。第1ポート13には、前記ブロック側流路4bに連通する通路を構成する第1連通路13aが形成されている。第2ポート14には、ヘッド側流路4aとブロック側流路4bの合流部に連通する通路を構成する第2連通路14aが形成されている。
【0027】
また、図2及び図4に示すように、収容空間12には、弁体15が、回動可能に軸支されている。弁体15は、回転軸16を備え、その先端部は、図4に示す上壁部11aに凹設された軸受11dに回転可能に支持される。これにより、回転軸16は、図2に示すように、第1カバー11の流路の中心軸線から偏倚した位置に軸支される。また、弁体15は、回転軸16から延出形成された、板状の第1弁板17及び第2弁板18を備えている。第1及び第2弁板17,18は、回転軸16を挟んで離間する方向かつ一直線上に形成されている。また、第1及び第2弁板17,18は、図2に示すように、弁体15が収容空間12内の開口面積が最小となるように位置したとき、そのそれぞれの先端が第1カバー11の内側面と所定の長さだけ離間するようになっている。また、第2弁板18の幅(第1カバー11の中心軸線と直交する方向の長さ)は、第1弁板17の幅よりも長くなるように形成されている。従って、第1及び第2弁板17,18は回転軸16(回動中心)に対して非対称に形成され、第1弁板17の受圧面積より第2弁板18の受圧面積のほうが大きくなっている。
【0028】
図4に示すように、第1カバー11の開口には、扁平状の封止部21が配設される。こ
の封止部21により、第1カバー11の収容空間12が封止される。封止部21の略中央には、回転軸16を回動可能に貫挿する軸孔21aが貫通形成されている。さらに、封止部21の収容空間12と反対側の側面には、掛止突起21bが形成されている。この掛止突起21bには、コイルばね22の一方の巻端が固定されるようになっている。
【0029】
また、封止部21の外側には、有底筒状の第2カバー23が取着されている。第2カバー23には、軸受23aが形成され、回転軸16を回動可能に支持している。また、回転軸16の途中には、嵌合凹部16aが設けられ、その嵌合凹部16aに係合部材25が嵌合固着されている。係合部材25は、嵌合凹部16aに嵌合固着される基端部25aと、基端部25aの一箇所から立設された係合片25bとを備えている。係合片25bには、前記コイルばね22の他方の巻端が固定されている。封止部21と、係合部材25とに掛止されたコイルばね22は、外力が付与されない場合には、係合部材25を介して、弁体15が、図3に2点鎖線で示す、第1終端位置となるように付勢している。
【0030】
また、第2カバー23には、ステータ部を構成する励磁コイル26aが封止部21から突出した回転軸16の基端部と対峙するようにインサート成形されている。また、回転軸16の基端部には、励磁コイル26aと対峙するように、ロータ部を構成する円筒状のマグネット27が固着されている。本実施形態では、この励磁コイル26aとマグネット27とで電磁駆動部としてのロータリーソレノイド26を構成している。そして、励磁コイル26a(ロータリーソレノイド26)を通電すると、マグネット27(回転軸16)は前記コイルばね22の弾性力に抗して回転し、前記弁体15が図2に示す、第2終端位置に配置される。
【0031】
図2に示す第2終端位置では、第1及び第2弁板17,18の先端と第1カバー11の内側面との間に形成される隙間によって連通部C1が設けられる。この連通部C1により、第1及び第2連通路13a,14aが連通され、ブロック側流路4bには、最小流量の冷却液が流れるのを補償している。
【0032】
一方、ロータリーソレノイド26が非通電状態の際には、コイルばね22の付勢力により、弁体15は図3に2点鎖線で示す第1終端位置に配置される。図3に示すように、第1終端位置は、第1及び第2弁板17,18の先端が、周壁部11cと対峙しない状態になり、第1弁板17及び第2弁板18が、第1及び第2連通路13a,14aの軸線方向と略平行になるように配置される。弁体15の第1弁板17及び第2弁板18が、図3中2点鎖線に示すように、第1及び第2連通路13a,14aの軸線方向と平行になると、第1及び第2連通路13a,14aの単位時間当たりの流量が最大になる。従って、弁体15が第1終端位置に配置されると、ブロック側流路4bの流量は増大する。
【0033】
また、この弁体15は、図2に示す第2終端位置に配置された際に、第1連通路13a側から受ける冷却液の圧力と、第2連通路14a側から受ける冷却液の圧力との差圧が、圧力差PG以上になったときに、第1及び第2弁板17,18が図2中時計回り方向に回動するように構成されている。すなわち、第1及び第2弁板17,18は、ロータリーソレノイド26の駆動力に抗して回動する。
【0034】
詳述すると、制御弁10が第2終端位置に配置されたとき、ブロック側流路4bの流量は最小となっているが、ウォーターポンプ5の吐出圧が伝わることにより、制御弁10の第1連通路13a側は比較的高圧になる。このため、図2に示すように第2終端位置に配置された弁体15は、導入口側面15aで受ける圧力が、吐出口側面15bで受ける圧力よりも大きくなっている。このとき、第2弁板18の受圧面積が、第1弁板17の受圧面積よりも大きいため、回転軸16を中心とする力の均衡状態が崩れ、弁体15が図2中時計回り方向に回動する。
【0035】
次に、制御弁10を制御する制御装置Cについて図1に従って説明する。制御装置Cは、少なくとも制御弁10の開閉弁を制御する機能を備える装置であって、冷却システム1のその他の動作制御等を合わせて行う装置でもよい。制御装置Cは、ブロック側流路4bであって、シリンダブロック2bの吐出口よりも下流に設けられた液温センサWSから、ブロック側流路4bを通過する冷却液の温度情報が入力される。
【0036】
また、制御装置Cは、入力された温度情報に従って、制御弁10(ロータリーソレノイド26)を通電又は非通電状態にする。そして、ブロック側流路4bを通過する冷却液が所定温度P1よりも低くなると、制御装置Cはロータリーソレノイド26を通電する。また、ブロック側流路4bを通過する冷却液が所定温度P1以上(車両の作動条件)になると、制御装置Cは、ロータリーソレノイド26への通電を停止(非通電状態)にする。この所定温度P1は、例えば、シリンダブロック2bの冷却に適した温度範囲の下限値である。シリンダブロック2bは、シリンダヘッド2aよりも高い温度に保持されることが要求されるため、所定温度P1は、暖機の目的でラジエータ3側を遮断するサーモスタット7の開弁温度THよりも高くなっている(即ち、所定温度P1>開弁温度TH)。
【0037】
次に、冷却システム1の作用について説明する。サーモスタット7を通過する冷却液の液温が開弁温度TH以上であった場合には、第1バルブ7aが開弁し、ラジエータ3を冷却液が通過する。このとき、ブロック側流路4bを通過する冷却液の水温も、通常、所定温度P1以上であるため、制御弁10も開弁している。
【0038】
ラジエータ3の吐出口側の液温が、開弁温度THよりも低い場合、サーモスタット7の第1バルブ7aが閉弁位置に配置され、第2バルブ7bが開弁する。このため、冷却液はバイパス流路6を流れ、ラジエータ3を迂回するように循環する。
【0039】
このとき、制御装置Cが、シリンダブロック2bの吐出口側の液温が所定温度P1以下であることを検知すると、制御弁10のロータリーソレノイド26を通電する。ロータリーソレノイド26が通電されて、弁体15が第2終端位置に配置されると、ブロック側流路4bの流量が最小流量となり、ブロック側流路4bを流れる冷却液の液温が上昇する。
【0040】
このように、ラジエータ3側の流路だけでなく、ブロック側流路4bがほぼ閉鎖状態になると、冷却回路4全体の通水抵抗が大きくなる。このため、冷却回路4を通過する流量が減少し、局所的に高圧部分又は低圧部分が生じる。具体的には、ウォーターポンプ5の吐出口を上流とすると、最も下流であるウォーターポンプ5の吸引口側(吸込側)の圧力が低下する。また、ウォーターポンプ5の吸引口に連通された、サーモスタット7の送出口側も低圧状態になる。一方、ヘッド側流路4aは比較的高圧になる。このため、このヘッド側流路4aと連通した排熱系流路4cは、圧力が伝わって比較的高圧になる。従って、サーモスタット7では、ラジエータ3側に設けられた導入口が高圧になり、送出口側が低圧になるため、サーモスタット7の上下流に発生する差圧が増大する。このとき、サーモスタット7の導入口側と送出口側の差圧が所定圧以上になると、第1バルブ7aが差圧により開弁してしまう。また、ウォーターポンプ5の吸引口側の圧力が、所定圧以下になると、キャビテーションが発生しやすくなる。
【0041】
一方、制御弁10は、ウォーターポンプ5の吐出口側の圧力が伝わって、第1連通路13a側が高圧状態になっている。そして、弁体15の両側の差圧が、圧力差PG以上になると、第2終端位置にある弁体15が、ロータリーソレノイド26の駆動力に抗して第1終端位置まで移動する。ここで、回動圧力条件である圧力差PGは、差圧開弁及びキャビテーションの発生を防止できる圧力差に設定されている。つまり、差圧開弁及びキャビテーションが発生する前の時点と、発生時及び発生後に制御弁10に加わる差圧を予め実験
等で求め、差圧開弁及びキャビテーションの発生前の圧力差を、弁体15が開弁する圧力差PGとして設定する。
【0042】
弁体15が第1終端位置に配置されると、冷却回路4全体の通水抵抗が小さくなる。すると、冷却回路4全体の圧力の偏りが解消され、ウォーターポンプ5の吸引口側の圧力が適度な範囲内で上昇する。このため、サーモスタット7の上下流における過大な差圧、ウォーターポンプ5の吸引口付近の圧力低下が解消され、差圧開弁及びキャビテーションの発生が防止される。
【0043】
第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1の実施形態では、ブロック側流路4bの流量を制御する制御弁10は、第1カバー11等に回転可能に軸支された弁体15を備えるようにした。また、弁体15は、受圧面積が異なる第1及び第2弁板17,18を備えるようにした。そして、第2終端位置にある弁体15が、第1連通路13a側及び第2連通路14a側が圧力差PG以上になった際に、不均衡状態になり、開弁位置に向かって自ずから回動するようにした。
【0044】
また、サーモスタット7の差圧開弁を発生させる前に弁体15が第1終端位置に移動するように第1及び第2弁板17,18の受圧面積比(圧力差PG)を設定した。また、ウォーターポンプ5の吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力よりも大きくなるように第1及び第2弁板17,18の受圧面積比(圧力差PG)を設定した。このため、制御弁10は、差圧開弁及びキャビテーションの発生前に開弁し、冷却回路4全体の通水抵抗を小さくすることができる。このため、差圧開弁による温度調節機能の低下、キャビテーションにより発生する騒音、冷却管及びウォーターポンプ5の損傷を防止できる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図5〜図7に従って説明する。尚、第2の実施形態は、第1の実施形態の制御弁10を変更したのみの構成であるため、同様の部分については、符号を同じにしてその詳細な説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本実施形態の制御弁30は、第1熱交換流路8a及び第2熱交換流路8bと、第3流路8cとの接続部に設けられ、各熱交換器9a,9bに対する冷却液の分配流量を制御する弁装置として使用されている。
【0047】
図6に示すように、制御弁30は、第1カバー31を備え、第1カバー31内には通路を構成する収容空間31aが形成されている。また、第1カバー31には、第1及び第2ポート32,33とポンプ側ポート34とが形成されている。第1ポート32には、第1熱交換流路8aに連通する通路を構成する第1連通路32aが形成されている。第2ポート33には、第2熱交換流路8bに連通する通路を構成する第2連通路33aが形成されている。ポンプ側ポート34には、ウォーターポンプ5側に連通する通路を構成するポンプ側連通路34aが形成されている。
【0048】
第1カバー31と封止部21とには、弁体35が所定角度範囲だけ回動可能に軸支されている。弁体35は、第1の実施形態の弁体15と同じ構成になっており、回動部としての第1及び第2弁板37,38は、第1カバー31の内側面と、連通部C2分だけ隔てた状態で回動するように構成されている。
【0049】
また、制御弁30の駆動機構は、第1の実施形態の制御弁10のコイルばね22及び係合部材25を省略した構成であり、電磁駆動部としてのロータリーソレノイド26(励磁コイル26a)を正方向に通電すると、図6中2点鎖線に示す、第1終端位置に配置され
る。弁体35が第1終端位置に配置されると、第1連通路32aの開口面積が最大になり、第1熱交換流路8aの通水抵抗が最小となる。また、第2連通路33aの吐出口は、弁体35によって閉塞されるが、連通部C2により、第2連通路33aとポンプ側連通路34aとが連通される。従って、第2熱交換流路8bの通水抵抗は大きくなるものの、少量の冷却液が流れる。このため、油水熱交換器9aに対する冷却液の流量は最大になり、ヒータ用熱交換器9bに対する流量は最小になる。
【0050】
また、ロータリーソレノイド26は、弁体35が第1終端位置に配置されると、供給電流が遮断された状態になる。弁体35は、回転軸36と第1カバー31及び封止部21との摩擦力と、冷却液からの圧力により、図6中反時計回り方向への回動が規制されている。
【0051】
ロータリーソレノイド26を逆方向に通電すると、弁体35は図6中実線で示す、第2終端位置まで回動する。弁体35が第2終端位置に配置されると、第2連通路33aの開口面積が最大になり、第2熱交換流路8bの流量が最大になる。また、第1連通路32aは、連通部C2を介してポンプ側連通路34aと連通され、第1熱交換流路8aには、必要最小限の流量が確保される。また、ロータリーソレノイド26は、弁体35が第2終端位置に配置されると、非通電状態になる。
【0052】
この弁体35は、前記したように、ラジエータ3側の流路が閉鎖され、冷却回路4全体の通水抵抗が大きくなった際に、その両側に発生する差圧と、第1及び第2弁板37,38に加わる圧力差との合力が圧力差PGになると図7に示す中間位置付近に配置されるようになっている。つまり、第1及び第2弁板37,38の幅が異なるように形成されているため、連通部C2を通過しようとする冷却液が、第1及び第2弁板37,38の先端を加圧した際に、第2弁板38に発生する回転モーメントの方が大きくなる。また、第1及び第2弁板37,38の各受圧面積が異なるように形成されているため、弁体35の両側の差圧が大きくなると、均衡状態が崩れ、第2弁板38が高圧側から低圧側に向かって回動する。例えば、図6中実線に示すように、弁体35が第2終端位置に配置された際に、流量の小さい第1連通路32a側が高圧になり、弁体35の両側の差圧が過大になる。第2弁板38は第1弁板37よりも受圧面積が大きいため、第2弁板38で受ける圧力の方が大きくなり、第1連通路32a側から第2連通路33a側に時計回り方向に回動する。そして、弁体35は、図8に示すように、第2弁板38の先端が第1カバー31内側面と対峙しない位置であって、圧力の均衡がとれる中間位置に配置される。
【0053】
この弁体35の回動圧力条件である圧力差PGは、サーモスタット7の差圧開弁及びウォーターポンプ5のキャビテーションの発生が防止される圧力差になっている。つまり、制御弁30は、ポンプ側連通路34aを介してウォーターポンプ5の吸引口と連通し、導入口側は、ラジエータ3側の流路と連通しているため、圧力差PGは、差圧開弁の発生圧力条件及びキャビテーションの発生圧力条件に基づいて実験等により算出できる。
【0054】
弁体35が中間位置に配置されると、第1熱交換流路8a及び第2熱交換流路8bの各通水抵抗がともに最小になり、冷却回路4全体の通水抵抗が小さくなる。すると、熱交換流路8の流量が増加し、ウォーターポンプ5の吸引口側の低圧状態が解消される。このため、サーモスタット7の上下流に発生する差圧が小さくなるとともに、ウォーターポンプ5の吸引口側で発生するキャビテーションが防止される。
【0055】
第2の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(2)第2の実施形態では、各熱交換器9a,9bへの流量を制御する制御弁30は、第1カバー31等に回転可能に軸支された弁体35を備えた。また、弁体35に、受圧面積が異なる第1及び第2弁板37,38を設けた。そして、第1及び第2終端位置にある
弁体35が、第1連通路32a側及び第2連通路33a側から受ける圧力の差が、圧力差PG以上になった際に、不均衡状態になり、中間位置に向かって自ずから回動するようにした。
【0056】
また、サーモスタット7の差圧開弁を発生させる前に弁体35が中間位置に移動するように第1及び第2弁板37,38の受圧面積比(圧力差PG)を設定した。また、ウォーターポンプ5の吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力よりも大きくなるように第1及び第2弁板37,38の受圧面積比(圧力差PG)を設定した。このため、制御弁30は、差圧開弁及びキャビテーションの発生前に開弁し、冷却回路4全体の通水抵抗を小さくすることができる。このため、差圧開弁による温度調節機能の低下、及びキャビテーションによる騒音、冷却管及びウォーターポンプ5の損傷を防止できる。
【0057】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・第1の実施形態では、制御弁10に設けられた弁体15が、第1カバー11の内側面を摺動して、連通部C1を設けない構成にしてもよい。
【0058】
・冷却システム1は、図8に示すような構成にしてもよい。図8に示す冷却システム40は、第1及び第2熱交換流路40a,40bを備え、第1熱交換流路40aは、その導入口側が、ウォーターポンプ5の吐出口とエンジン2の導入口とを連通する連通路41から分岐している。第2熱交換流路40bは、導入口側が、エンジン2からラジエータ3に向かって冷却液を送出する冷却回路4から直接分岐している。第1及び第2熱交換流路40a,40bは、各熱交換器9a,9bの下流で合流し第3流路40cになっている。制御弁10は、第1熱交換流路40aの途中であって、油水熱交換器9aよりも上流に設けられている。そして、制御弁10は、第1熱交換流路40aの流量を低減、又は閉鎖するようになっている。さらに、制御弁10は、差圧開弁及びキャビテーションが発生する前の圧力で自ずから開弁するように構成されている。
【0059】
・制御弁10は、シリンダブロック2bへの冷却液の供給量を制御できる位置であれば、冷却回路4のどの位置に配置してもよい。また、制御弁10は、シリンダブロック2bへの冷却液の供給量を制御する以外の目的で配設されてもよく、エンジン2に配設されたウォータジャケット内の流路、エンジン2を迂回する迂回流路の途中等に設けられてもよい。
【0060】
・第1の実施形態では、図9に示す制御弁50のような構成にしてもよい。制御弁50は、第1の実施形態と同様な構成の第1カバー11内に、収容空間12を備え、弁体54を所定角度だけ回動可能に軸支している。第1カバー11と、第1弁板55及び第2弁板56との間に設けられた、隙間としての連通部C3,C4は、第2弁板56が第1弁板55よりも短く形成されることで、その間隙面積が異なるように形成されている。または、第1カバー11に図示しない拡開部を一部設け、第1及び第2弁板55,56を同じ長さに形成することで、開口面積が異なるようにしてもよい。このため、間隙面積が大きい連通部C4を通過する流量は、間隙面積が小さい連通部C3を通過する流量よりも大きくなる。従って、第2弁板56は、第1弁板55よりも冷却液から受ける圧力が大きくなる。この弁体54は、第1及び第2弁板55,56に加わる回転力の差が所定値未満のとき、ロータリーソレノイド26の駆動力や、弁体54と第1カバー11等との摩擦力等により回動しない。回転力の差が所定値以上になると、第2弁板56が受ける圧力が、ロータリーソレノイド26の駆動力等を上回り、図9中2点鎖線に示す終端位置に配置される。
【0061】
また、制御弁は、図10に示す制御弁60のような構成にしてもよい。制御弁60は、第1カバー61を備え、第1カバー61には、収容空間61a(通路)と、ブロック側流路4bに連通する第1連通路62a(通路)を備えた第1ポート62と、ヘッド側流路4
a及びブロック側流路4bの合流部に連通する第2連通路63a(通路)を備えた第2ポート63が突出形成されている。また、第1カバー61には、弁体64を軸支する軸受65が形成されている。弁体64は、回転軸66と、回転軸66から延出形成された弁板67とを備えている。弁板67は、回転軸66を中心に、図10中実線に示す第1終端位置と、2点鎖線で示す、第2終端位置との間を回動する。第1終端位置に配置された弁体64は、第1熱交換流路8aに連通した第1連通路62a側と、第2熱交換流路8bに連通した第2連通路63a側との間の差圧が、圧力差PGになると、第2終端位置に回動するようになっている。
【0062】
・第2の実施形態では、制御弁30は図11に示す制御弁70のような構成にしてもよい。制御弁70は、第1カバー71内に、収容空間71a(通路)を備え、弁体75を所定角度だけ回動可能に軸支している。第1カバー71は、第1熱交換流路8aに連通された第1連通路72a(通路)を備える第1ポート72と、第2熱交換流路8bに連通された第2連通路73a(通路)を備える第2ポート73と、ウォーターポンプ5側に連通されたポンプ側連通路74a(通路)を備えたポンプ側ポート74とを備える。第1カバー71及び弁体75は、第1カバー71と、第1弁板76及び第2弁板77との間に設けられた隙間としての連通部C5,C6の間隙面積が異なるように形成されている。
【0063】
このため、連通部C6を通過した流量は、連通部C5を通過する流量よりも大きくなり、第2弁板77が冷却液から受ける圧力は、第1弁板76よりも大きくなる。第1弁板76及び第2弁板77に加わる回転力の差が所定値未満の場合には、ロータリーソレノイド26の駆動力や、弁体75と第1カバー71等との摩擦力により回動しない。第1弁板76及び第2弁板77に加わる回転力の差が所定値以上の場合には、第2弁板77が高圧側から低圧側に向かって回動し、図11中実線に示す第2終端位置と、図11中2点鎖線に示す、第1終端位置との間の中間位置に配置される。
【0064】
また、制御弁は、図12に示す制御弁80のような構成にしてもよい。制御弁80は、第1カバー81を備え、第1カバー81には、収容空間81a(通路)と、第1熱交換流路8aに連通された第1連通路82a(通路)を備える第1ポート82と第2熱交換流路8bに連通された第2連通路83a(通路)を備える第2ポート83とが設けられている。また、第1カバー81には、ウォーターポンプ5側に連通されたポンプ側連通路84a(通路)を備えたポンプ側ポート84が設けられている。また、第1カバー81には、弁体85を軸支する軸受86が形成されている。弁体85は、回転軸87と、回転軸87から延出形成された弁板88とを備えている。弁板88は、回転軸87を中心に、図12中実線に示す第2終端位置と、2点鎖線で示す第1終端位置との間を回動する。弁体85は、第1熱交換流路8aに連通した第1連通路82a側と、第2熱交換流路8bに連通した第2連通路83a側との間の差圧が、圧力差PGになると、低圧側に回動するようになっている。
【0065】
・第1の実施形態では、制御弁10からコイルばね22を省略し、ロータリーソレノイド26の制御のみにより、弁体15を第1及び第2終端位置に配置してもよい。
・第1の実施形態では、液温センサWSから入力された温度情報に基づいて、制御弁10を通電又は非通電にしたが、エンジン2の回転数が所定値以上(車両の作動条件)であるときに、非通電にするようにしてもよい。
【0066】
・第2の実施形態では、弁体35が第1及び第2終端位置に配置された際に、通電を停止したが、供給電流を低減させるようにしてもよい。また、弁体35を、付勢ばねによって第1又は第2終端位置のいずれかに付勢するようにしてもよい。また、エンジン2の回転数が所定値以上(車両の作動条件)であるときに、非通電にするようにしてもよい。
【0067】
・上記各実施形態では、油水熱交換器9aは、エンジンオイル等、他のオイルの温度調節を行うものであってもよい。また、ヒータ用熱交換器9bは、空調装置以外の装置に用いられるものであってもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、冷却システム1は、その他の熱源又は駆動装置を冷却する装置であってもよい。例えば、冷却システム1は、蓄電器(燃料電池)を用いた車両に搭載され、該蓄電器等の熱源を冷却するシステムであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態の冷却システムの模式図。
【図2】同冷却システムの制御弁の断面図。
【図3】同制御弁の断面図。
【図4】同制御弁の要部断面図。
【図5】本発明の第2実施形態の冷却システムの模式図。
【図6】同冷却システムの制御弁の断面図。
【図7】同制御弁の断面図。
【図8】本発明の別例の冷却システムの模式図。
【図9】本発明の別例の制御弁の断面図。
【図10】本発明の別例の制御弁の断面図。
【図11】本発明の別例の制御弁の断面図。
【図12】本発明の別例の制御弁の断面図。
【符号の説明】
【0070】
1,40…冷却システム、2…熱源としてのエンジン、3…冷却手段としてのラジエータ、4…冷却回路、4a…第1冷却回路を構成するヘッド側流路、4b…第1冷却回路を構成するブロック側流路、4c…第2冷却回路としての排熱系流路、5…冷媒圧送手段としてのウォーターポンプ、6…第1冷却回路を構成するバイパス流路、7…流量制御弁としてのサーモスタット、8…第1冷却回路を構成する熱交換流路、8a,40a…第1冷却回路及び第1流路を構成する第1熱交換流路、8b,40b…第1冷却回路及び第2流路を構成する第2熱交換流路、8c,40c…第1冷却回路を構成する第3流路、10,30,50,60,70,80…制御弁、12,31a,61a,71a,81a…通路を構成する収容空間、13a,32a,62a,72a,82a…通路を構成する第1連通路、14a,33a,63a,73a,83a…通路を構成する第2連通路、15,35,54,64,75,85…弁体、16,36,66,87…回転軸、26…電磁駆動部としてのロータリーソレノイド、34a,74a,84a…通路を構成するポンプ側連通路、C3〜C6…隙間としての連通部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される冷却システムの制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に搭載される冷却システムとして、エンジンの過熱を防止するだけでなく、摩擦低減を図ったり、冷却液の熱を有効利用する機能を備えたシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、エンジン側に設けられた流路の吐出口側にサーモスタットを設け、シリンダヘッド側及びシリンダブロック側の冷却液の液温を制御するシステムが提案されている。このシステムでは、シリンダヘッド側をより冷却することで、ノッキング制御及び吸気の充填効率の向上を図り、シリンダブロック側では、潤滑油温度を適温化させ、フリクション低減及び油劣化防止を図っている。
【0003】
一方、特許文献2には、冷却液と空気との熱交換により、冷却液を空調ヒータの熱源として利用するとともに、冷却液と作動油との熱交換により、変速機の作動油を適正な温度範囲に保持する冷却システムが提案されている。この冷却システムは、冷却回路に、ヒータ用の熱交換器及び作動油と熱交換を行う熱交換器と、各熱交換器への流量を制御する制御弁とを備えている。
【特許文献1】特開平10−184358号公報
【特許文献2】特開2002−364362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、サーモスタットや制御弁等の部品点数が増加すると、冷却回路全体の通水抵抗が増大する。その結果、冷却液を圧送するポンプの吸込口側が減圧され、キャビテーションが発生しやすくなる。また、冷却回路全体の通水抵抗が増大すると、暖機過程で、ラジエータ側の流路を閉鎖したサーモスタットの上下流で発生する差圧が大きくなり、この差圧によりサーモスタットが開弁してしまう可能性がある。差圧開弁が発生すると、暖機過程にも関わらずラジエータ内に冷却液が流れ込み、冷却液の温度調節機能が低下する。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷媒の有効利用又は冷媒の温度調節を行うとともに、キャビテーション発生防止及び冷媒の温度調節機能の信頼性向上を図ることができる冷却システムの制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、熱源と接続され冷媒が循環する第1冷却回路と、該第1冷却回路に接続され、前記冷媒を放熱させる冷却手段を有する第2冷却回路と、前記第1冷却回路と前記第2冷却回路との間に設けられ、前記第1冷却回路から前記第2冷却回路への前記冷媒の流量を制御する流量制御弁と、前記冷媒を前記両冷却回路に圧送する冷媒圧送手段と、前記第1冷却回路内の前記冷媒の流量を制御する制御弁とを有する冷却システムにおいて、前記制御弁は、前記第1冷却回路内の通路内において回動可能に支持される弁体を有し、前記弁体は、回動中心に対して非対称に形成されていることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、熱源と接続され冷媒が循環する第1冷却回路と、該第1冷却回路に接続され、前記冷媒を放熱させる冷却手段を有する第2冷却回路と、前記第1冷却回路と前記第2冷却回路との間に設けられ、前記第1冷却回路から前記第2冷却回路への前記冷媒の流量を制御する流量制御弁と、前記冷媒を前記両冷却回路に圧送する冷媒圧送
手段と、前記第1冷却回路内の前記冷媒の流量を制御する制御弁とを有する冷却システムにおいて、前記制御弁は、前記第1冷却回路の通路内において回動可能に支持される弁体を有し、前記弁体の両端と前記通路との間には、それぞれ隙間が設けられ、該各隙間の間隙面積が互いに異なることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の制御弁において、前記第1冷却回路の前記通路は、前記冷媒が流入する第1流路及び第2流路と、前記冷媒が流出する第3流路とが接続される接続部から構成され、前記接続部において前記第1流路及び前記第2流路から前記第3流路へ流れる前記冷媒の流量を制御することを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の制御弁において、前記制御弁は、前記流量制御弁の上流と下流との圧力差が前記流量制御弁の差圧開弁圧より小さくなるように、又は、前記冷媒圧送手段の吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力より大きくなるように作動することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の制御弁において、前記弁体は、電磁駆動部によって回動することを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の制御弁において、前記電磁駆動部は、通電方向の切換により、前記弁体を正逆方向に回動させ、それぞれの終端位置にて、供給電流が低減又は遮断されることを要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の制御弁において、前記電磁駆動部は、前記流量制御弁の上流と下流との圧力差が、前記流量制御弁の差圧開弁圧より小さい圧力において供給電流が制御されるとともに、車両の作動条件に応じ、供給電流が制御されることを要旨とする。
【0012】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、制御弁は、第1冷却回路の通路内に回動可能に支持される弁体は、回転中心に対して非対称に形成されているので、弁体は、冷媒の流れにより弁体に加わる圧力が所定値以上になったとき等に、力の不釣り合いにより回動して、通路の通水抵抗を減少させる位置に配置する。従って、例えば、流量制御弁の差圧開弁、冷媒圧送手段の吸込側でのキャビテーションの発生圧力と、制御弁の回動条件とを適合させることにより、差圧開弁及びキャビテーションの発生前に、弁体を通水抵抗が低減できる位置に回動させて、冷却システム全体の通水抵抗を低減させることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第1冷却回路の通路内に回動可能に支持される弁体と通路との間には隙間がそれぞれ設けられ、各隙間の間隙面積は互いに異なっているので、弁体は、冷媒の流れにより弁体に加わる圧力が所定値以上になったとき等に、力の不釣り合いにより回動して、通路の通水抵抗を減少させる位置に配置する。従って、例えば、流量制御弁の差圧開弁、冷媒圧送手段の吸込側でのキャビテーションの発生圧力と、制御弁の回動条件とを適合させることにより、差圧開弁及びキャビテーションの発生前に、弁体を通水抵抗が低減できる位置に回動させて、冷却システム全体の通水抵抗を低減させることができる。また、制御弁の構造を簡単にすることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、制御弁の弁体が支持される通路は、冷却回路に備えられる第1及び第2流路と第3流路とが接続される接続部に設けられているので、第1及び第2流路に分配される流量を制御しながら、冷却回路の通水抵抗を制御できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、制御弁は、流量制御弁の上流と下流との圧力差が、流量制御弁の差圧開弁圧より小さくなるように作動する。又は、制御弁は、冷媒圧送手段の
吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力より大きくなるように作動する。このため、冷却システム内での流量制御弁の差圧開弁、冷媒圧送手段の吸込側でのキャビテーションの発生を防止できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、弁体は電磁駆動部によって回動するため、制御弁の開閉弁等の動作制御の信頼性を向上できる。
請求項6に記載の発明によれば、電磁駆動部は、通電方向の切換えにより、弁体を正逆方向に回転させ、終端位置において供給電流が低減又は遮断されるので、消費電力を低減できる。また、冷媒からの圧力等による弁体の回動を、電流の低減時又は遮断時に行うことができるので、弁体を容易に回動させることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、電磁駆動部は、制御弁の上流と下流との圧力差が流量制御弁の差圧開弁圧より小さい圧力において供給電流が制御される。しかも、電磁駆動部は、車両の作動条件に応じて供給電流が制御されるので、冷却システム内の冷媒の温度を最適化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷媒の有効利用又は冷媒の温度調節を行うとともに、キャビテーション発生防止及び冷媒の温度調節機能の信頼性向上を図ることができる冷却システムの制御弁を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図4に従って説明する。図1は、熱源及び内燃機関としてのエンジンの冷却システムの構成を説明する模式図である。図1に示すように、自動車等の車両に搭載される冷却システム1は、エンジン2と、冷却手段としてのラジエータ3との間で冷媒としての冷却液を循環させる冷却回路4を備えている。冷却回路4は、ラジエータ3に冷却液を供給し、ラジエータ3を通過した冷却液を送出する、冷却回路4に接続された第2冷却回路としての排熱系流路4cを備える。ラジエータ3は、内燃機関に一般的に用いられている水冷式の装置であって、冷却液の熱を放出する。また、冷却回路4の途中には、冷媒圧送手段としてのウォーターポンプ5が設けられ、冷却液を冷却回路4内で循環させている。
【0020】
冷却回路4は、エンジン2のシリンダヘッド2a側に配設されたヘッド側流路4a、及びエンジン2のシリンダブロック2b側に配設されたブロック側流路4bを備えている。これらのヘッド側流路4a及びブロック側流路4bは、ウォーターポンプ5の吐出口とシリンダヘッド2a及びシリンダブロック2bの導入口との間で分岐し、シリンダヘッド2a及びシリンダブロック2bの吐出口の下流にて合流する。また、ブロック側流路4bであって、シリンダブロック2bの吐出口と、ヘッド側流路4a及びブロック側流路4bの合流部との間には、ヘッド側流路4a及びブロック側流路4bに分配される冷却液の流量を制御可能な制御弁10が設けられている。
【0021】
また、冷却回路4は、ラジエータ3を迂回するように分岐したバイパス流路6を備えている。バイパス流路6の吐出側と排熱系流路4cとの間には、流量制御弁としてのサーモスタット7が配設されている。サーモスタット7は、冷却液が所定温度よりも低い場合に、第1バルブ7aによってラジエータ3側の流路を閉鎖又は冷却液の流量を低減し、バイパス流路6とエンジン2側の冷却回路4とを連通する。また、サーモスタット7は、冷却液が所定温度以上である場合に、第2バルブ7bによってバイパス流路6を閉鎖又は冷却液の流量を低減し、ラジエータ3に分配される冷却液の流量を多くして、冷却液を放熱させる。
【0022】
また、冷却回路4は、熱交換流路8を備えている。熱交換流路8は、エンジン2の吐出口と、バイパス流路6の導入口との間から分岐し、サーモスタット7の送出口とウォーターポンプ5の導入口との間で冷却回路4に合流している。熱交換流路8は、第1流路としての第1熱交換流路8a及び第2流路としての第2熱交換流路8bを備え、これらの第1及び第2熱交換流路8a,8bの途中には、油水熱交換器9a及びヒータ用熱交換器9bがそれぞれ設けられている。尚、ヘッド側流路4a、ブロック側流路4b、バイパス流路6、第1及び第2熱交換流路8a,8b(熱交換流路8)、第3流路8cは特許請求の範囲に記載の第1冷却回路を構成する。
【0023】
油水熱交換器9aは、第1熱交換流路8aを流れる冷却液と、自動変速機の作動油との間で熱交換を行う。自動変速機の作動油は、温度が低い場合には粘度が増して駆動系の抵抗が増加するために燃費が悪化し、逆に温度が高い場合には劣化が早く進行する。従って、油水熱交換器9aでは、作動油が冷却液よりも高温である場合には、熱交換により作動油の熱を放熱し、作動油が冷却液よりも低温の場合には冷却液の熱を作動油に吸熱させて粘度を低減させ、作動油の温度が常に適正な温度範囲に調節されるようになっている。
【0024】
ヒータ用熱交換器9bは、公知の構成の熱交換器であって、冷却液と、車室内の空気との熱交換を行うことにより、冷却液から放出された熱を暖気に利用する装置である。また、これらの第1及び第2熱交換流路8a,8bは、各熱交換器9a,9bの下流で合流し、第3流路8cに接続する。
【0025】
次に、制御弁10について、図2〜図4に従って説明する。図2及び図3は、制御弁10の軸線方向に直交する方向における断面図である。図4は、制御弁10の軸線方向における要部断面図である。本実施形態では、制御弁10は、ロータリーソレノイドバルブであって、図2及び図4に示すように、合成樹脂等からなる有蓋筒状の第1カバー11を備えている。第1カバー11は、上壁部11a及び周壁部11cを備え、その内側には通路を構成する収容空間12が形成されている。
【0026】
図2に示すように、周壁部11cからは、円筒状に形成された、第1ポート13、第2ポート14が突出形成されている。第1ポート13には、前記ブロック側流路4bに連通する通路を構成する第1連通路13aが形成されている。第2ポート14には、ヘッド側流路4aとブロック側流路4bの合流部に連通する通路を構成する第2連通路14aが形成されている。
【0027】
また、図2及び図4に示すように、収容空間12には、弁体15が、回動可能に軸支されている。弁体15は、回転軸16を備え、その先端部は、図4に示す上壁部11aに凹設された軸受11dに回転可能に支持される。これにより、回転軸16は、図2に示すように、第1カバー11の流路の中心軸線から偏倚した位置に軸支される。また、弁体15は、回転軸16から延出形成された、板状の第1弁板17及び第2弁板18を備えている。第1及び第2弁板17,18は、回転軸16を挟んで離間する方向かつ一直線上に形成されている。また、第1及び第2弁板17,18は、図2に示すように、弁体15が収容空間12内の開口面積が最小となるように位置したとき、そのそれぞれの先端が第1カバー11の内側面と所定の長さだけ離間するようになっている。また、第2弁板18の幅(第1カバー11の中心軸線と直交する方向の長さ)は、第1弁板17の幅よりも長くなるように形成されている。従って、第1及び第2弁板17,18は回転軸16(回動中心)に対して非対称に形成され、第1弁板17の受圧面積より第2弁板18の受圧面積のほうが大きくなっている。
【0028】
図4に示すように、第1カバー11の開口には、扁平状の封止部21が配設される。こ
の封止部21により、第1カバー11の収容空間12が封止される。封止部21の略中央には、回転軸16を回動可能に貫挿する軸孔21aが貫通形成されている。さらに、封止部21の収容空間12と反対側の側面には、掛止突起21bが形成されている。この掛止突起21bには、コイルばね22の一方の巻端が固定されるようになっている。
【0029】
また、封止部21の外側には、有底筒状の第2カバー23が取着されている。第2カバー23には、軸受23aが形成され、回転軸16を回動可能に支持している。また、回転軸16の途中には、嵌合凹部16aが設けられ、その嵌合凹部16aに係合部材25が嵌合固着されている。係合部材25は、嵌合凹部16aに嵌合固着される基端部25aと、基端部25aの一箇所から立設された係合片25bとを備えている。係合片25bには、前記コイルばね22の他方の巻端が固定されている。封止部21と、係合部材25とに掛止されたコイルばね22は、外力が付与されない場合には、係合部材25を介して、弁体15が、図3に2点鎖線で示す、第1終端位置となるように付勢している。
【0030】
また、第2カバー23には、ステータ部を構成する励磁コイル26aが封止部21から突出した回転軸16の基端部と対峙するようにインサート成形されている。また、回転軸16の基端部には、励磁コイル26aと対峙するように、ロータ部を構成する円筒状のマグネット27が固着されている。本実施形態では、この励磁コイル26aとマグネット27とで電磁駆動部としてのロータリーソレノイド26を構成している。そして、励磁コイル26a(ロータリーソレノイド26)を通電すると、マグネット27(回転軸16)は前記コイルばね22の弾性力に抗して回転し、前記弁体15が図2に示す、第2終端位置に配置される。
【0031】
図2に示す第2終端位置では、第1及び第2弁板17,18の先端と第1カバー11の内側面との間に形成される隙間によって連通部C1が設けられる。この連通部C1により、第1及び第2連通路13a,14aが連通され、ブロック側流路4bには、最小流量の冷却液が流れるのを補償している。
【0032】
一方、ロータリーソレノイド26が非通電状態の際には、コイルばね22の付勢力により、弁体15は図3に2点鎖線で示す第1終端位置に配置される。図3に示すように、第1終端位置は、第1及び第2弁板17,18の先端が、周壁部11cと対峙しない状態になり、第1弁板17及び第2弁板18が、第1及び第2連通路13a,14aの軸線方向と略平行になるように配置される。弁体15の第1弁板17及び第2弁板18が、図3中2点鎖線に示すように、第1及び第2連通路13a,14aの軸線方向と平行になると、第1及び第2連通路13a,14aの単位時間当たりの流量が最大になる。従って、弁体15が第1終端位置に配置されると、ブロック側流路4bの流量は増大する。
【0033】
また、この弁体15は、図2に示す第2終端位置に配置された際に、第1連通路13a側から受ける冷却液の圧力と、第2連通路14a側から受ける冷却液の圧力との差圧が、圧力差PG以上になったときに、第1及び第2弁板17,18が図2中時計回り方向に回動するように構成されている。すなわち、第1及び第2弁板17,18は、ロータリーソレノイド26の駆動力に抗して回動する。
【0034】
詳述すると、制御弁10が第2終端位置に配置されたとき、ブロック側流路4bの流量は最小となっているが、ウォーターポンプ5の吐出圧が伝わることにより、制御弁10の第1連通路13a側は比較的高圧になる。このため、図2に示すように第2終端位置に配置された弁体15は、導入口側面15aで受ける圧力が、吐出口側面15bで受ける圧力よりも大きくなっている。このとき、第2弁板18の受圧面積が、第1弁板17の受圧面積よりも大きいため、回転軸16を中心とする力の均衡状態が崩れ、弁体15が図2中時計回り方向に回動する。
【0035】
次に、制御弁10を制御する制御装置Cについて図1に従って説明する。制御装置Cは、少なくとも制御弁10の開閉弁を制御する機能を備える装置であって、冷却システム1のその他の動作制御等を合わせて行う装置でもよい。制御装置Cは、ブロック側流路4bであって、シリンダブロック2bの吐出口よりも下流に設けられた液温センサWSから、ブロック側流路4bを通過する冷却液の温度情報が入力される。
【0036】
また、制御装置Cは、入力された温度情報に従って、制御弁10(ロータリーソレノイド26)を通電又は非通電状態にする。そして、ブロック側流路4bを通過する冷却液が所定温度P1よりも低くなると、制御装置Cはロータリーソレノイド26を通電する。また、ブロック側流路4bを通過する冷却液が所定温度P1以上(車両の作動条件)になると、制御装置Cは、ロータリーソレノイド26への通電を停止(非通電状態)にする。この所定温度P1は、例えば、シリンダブロック2bの冷却に適した温度範囲の下限値である。シリンダブロック2bは、シリンダヘッド2aよりも高い温度に保持されることが要求されるため、所定温度P1は、暖機の目的でラジエータ3側を遮断するサーモスタット7の開弁温度THよりも高くなっている(即ち、所定温度P1>開弁温度TH)。
【0037】
次に、冷却システム1の作用について説明する。サーモスタット7を通過する冷却液の液温が開弁温度TH以上であった場合には、第1バルブ7aが開弁し、ラジエータ3を冷却液が通過する。このとき、ブロック側流路4bを通過する冷却液の水温も、通常、所定温度P1以上であるため、制御弁10も開弁している。
【0038】
ラジエータ3の吐出口側の液温が、開弁温度THよりも低い場合、サーモスタット7の第1バルブ7aが閉弁位置に配置され、第2バルブ7bが開弁する。このため、冷却液はバイパス流路6を流れ、ラジエータ3を迂回するように循環する。
【0039】
このとき、制御装置Cが、シリンダブロック2bの吐出口側の液温が所定温度P1以下であることを検知すると、制御弁10のロータリーソレノイド26を通電する。ロータリーソレノイド26が通電されて、弁体15が第2終端位置に配置されると、ブロック側流路4bの流量が最小流量となり、ブロック側流路4bを流れる冷却液の液温が上昇する。
【0040】
このように、ラジエータ3側の流路だけでなく、ブロック側流路4bがほぼ閉鎖状態になると、冷却回路4全体の通水抵抗が大きくなる。このため、冷却回路4を通過する流量が減少し、局所的に高圧部分又は低圧部分が生じる。具体的には、ウォーターポンプ5の吐出口を上流とすると、最も下流であるウォーターポンプ5の吸引口側(吸込側)の圧力が低下する。また、ウォーターポンプ5の吸引口に連通された、サーモスタット7の送出口側も低圧状態になる。一方、ヘッド側流路4aは比較的高圧になる。このため、このヘッド側流路4aと連通した排熱系流路4cは、圧力が伝わって比較的高圧になる。従って、サーモスタット7では、ラジエータ3側に設けられた導入口が高圧になり、送出口側が低圧になるため、サーモスタット7の上下流に発生する差圧が増大する。このとき、サーモスタット7の導入口側と送出口側の差圧が所定圧以上になると、第1バルブ7aが差圧により開弁してしまう。また、ウォーターポンプ5の吸引口側の圧力が、所定圧以下になると、キャビテーションが発生しやすくなる。
【0041】
一方、制御弁10は、ウォーターポンプ5の吐出口側の圧力が伝わって、第1連通路13a側が高圧状態になっている。そして、弁体15の両側の差圧が、圧力差PG以上になると、第2終端位置にある弁体15が、ロータリーソレノイド26の駆動力に抗して第1終端位置まで移動する。ここで、回動圧力条件である圧力差PGは、差圧開弁及びキャビテーションの発生を防止できる圧力差に設定されている。つまり、差圧開弁及びキャビテーションが発生する前の時点と、発生時及び発生後に制御弁10に加わる差圧を予め実験
等で求め、差圧開弁及びキャビテーションの発生前の圧力差を、弁体15が開弁する圧力差PGとして設定する。
【0042】
弁体15が第1終端位置に配置されると、冷却回路4全体の通水抵抗が小さくなる。すると、冷却回路4全体の圧力の偏りが解消され、ウォーターポンプ5の吸引口側の圧力が適度な範囲内で上昇する。このため、サーモスタット7の上下流における過大な差圧、ウォーターポンプ5の吸引口付近の圧力低下が解消され、差圧開弁及びキャビテーションの発生が防止される。
【0043】
第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1の実施形態では、ブロック側流路4bの流量を制御する制御弁10は、第1カバー11等に回転可能に軸支された弁体15を備えるようにした。また、弁体15は、受圧面積が異なる第1及び第2弁板17,18を備えるようにした。そして、第2終端位置にある弁体15が、第1連通路13a側及び第2連通路14a側が圧力差PG以上になった際に、不均衡状態になり、開弁位置に向かって自ずから回動するようにした。
【0044】
また、サーモスタット7の差圧開弁を発生させる前に弁体15が第1終端位置に移動するように第1及び第2弁板17,18の受圧面積比(圧力差PG)を設定した。また、ウォーターポンプ5の吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力よりも大きくなるように第1及び第2弁板17,18の受圧面積比(圧力差PG)を設定した。このため、制御弁10は、差圧開弁及びキャビテーションの発生前に開弁し、冷却回路4全体の通水抵抗を小さくすることができる。このため、差圧開弁による温度調節機能の低下、キャビテーションにより発生する騒音、冷却管及びウォーターポンプ5の損傷を防止できる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図5〜図7に従って説明する。尚、第2の実施形態は、第1の実施形態の制御弁10を変更したのみの構成であるため、同様の部分については、符号を同じにしてその詳細な説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本実施形態の制御弁30は、第1熱交換流路8a及び第2熱交換流路8bと、第3流路8cとの接続部に設けられ、各熱交換器9a,9bに対する冷却液の分配流量を制御する弁装置として使用されている。
【0047】
図6に示すように、制御弁30は、第1カバー31を備え、第1カバー31内には通路を構成する収容空間31aが形成されている。また、第1カバー31には、第1及び第2ポート32,33とポンプ側ポート34とが形成されている。第1ポート32には、第1熱交換流路8aに連通する通路を構成する第1連通路32aが形成されている。第2ポート33には、第2熱交換流路8bに連通する通路を構成する第2連通路33aが形成されている。ポンプ側ポート34には、ウォーターポンプ5側に連通する通路を構成するポンプ側連通路34aが形成されている。
【0048】
第1カバー31と封止部21とには、弁体35が所定角度範囲だけ回動可能に軸支されている。弁体35は、第1の実施形態の弁体15と同じ構成になっており、回動部としての第1及び第2弁板37,38は、第1カバー31の内側面と、連通部C2分だけ隔てた状態で回動するように構成されている。
【0049】
また、制御弁30の駆動機構は、第1の実施形態の制御弁10のコイルばね22及び係合部材25を省略した構成であり、電磁駆動部としてのロータリーソレノイド26(励磁コイル26a)を正方向に通電すると、図6中2点鎖線に示す、第1終端位置に配置され
る。弁体35が第1終端位置に配置されると、第1連通路32aの開口面積が最大になり、第1熱交換流路8aの通水抵抗が最小となる。また、第2連通路33aの吐出口は、弁体35によって閉塞されるが、連通部C2により、第2連通路33aとポンプ側連通路34aとが連通される。従って、第2熱交換流路8bの通水抵抗は大きくなるものの、少量の冷却液が流れる。このため、油水熱交換器9aに対する冷却液の流量は最大になり、ヒータ用熱交換器9bに対する流量は最小になる。
【0050】
また、ロータリーソレノイド26は、弁体35が第1終端位置に配置されると、供給電流が遮断された状態になる。弁体35は、回転軸36と第1カバー31及び封止部21との摩擦力と、冷却液からの圧力により、図6中反時計回り方向への回動が規制されている。
【0051】
ロータリーソレノイド26を逆方向に通電すると、弁体35は図6中実線で示す、第2終端位置まで回動する。弁体35が第2終端位置に配置されると、第2連通路33aの開口面積が最大になり、第2熱交換流路8bの流量が最大になる。また、第1連通路32aは、連通部C2を介してポンプ側連通路34aと連通され、第1熱交換流路8aには、必要最小限の流量が確保される。また、ロータリーソレノイド26は、弁体35が第2終端位置に配置されると、非通電状態になる。
【0052】
この弁体35は、前記したように、ラジエータ3側の流路が閉鎖され、冷却回路4全体の通水抵抗が大きくなった際に、その両側に発生する差圧と、第1及び第2弁板37,38に加わる圧力差との合力が圧力差PGになると図7に示す中間位置付近に配置されるようになっている。つまり、第1及び第2弁板37,38の幅が異なるように形成されているため、連通部C2を通過しようとする冷却液が、第1及び第2弁板37,38の先端を加圧した際に、第2弁板38に発生する回転モーメントの方が大きくなる。また、第1及び第2弁板37,38の各受圧面積が異なるように形成されているため、弁体35の両側の差圧が大きくなると、均衡状態が崩れ、第2弁板38が高圧側から低圧側に向かって回動する。例えば、図6中実線に示すように、弁体35が第2終端位置に配置された際に、流量の小さい第1連通路32a側が高圧になり、弁体35の両側の差圧が過大になる。第2弁板38は第1弁板37よりも受圧面積が大きいため、第2弁板38で受ける圧力の方が大きくなり、第1連通路32a側から第2連通路33a側に時計回り方向に回動する。そして、弁体35は、図8に示すように、第2弁板38の先端が第1カバー31内側面と対峙しない位置であって、圧力の均衡がとれる中間位置に配置される。
【0053】
この弁体35の回動圧力条件である圧力差PGは、サーモスタット7の差圧開弁及びウォーターポンプ5のキャビテーションの発生が防止される圧力差になっている。つまり、制御弁30は、ポンプ側連通路34aを介してウォーターポンプ5の吸引口と連通し、導入口側は、ラジエータ3側の流路と連通しているため、圧力差PGは、差圧開弁の発生圧力条件及びキャビテーションの発生圧力条件に基づいて実験等により算出できる。
【0054】
弁体35が中間位置に配置されると、第1熱交換流路8a及び第2熱交換流路8bの各通水抵抗がともに最小になり、冷却回路4全体の通水抵抗が小さくなる。すると、熱交換流路8の流量が増加し、ウォーターポンプ5の吸引口側の低圧状態が解消される。このため、サーモスタット7の上下流に発生する差圧が小さくなるとともに、ウォーターポンプ5の吸引口側で発生するキャビテーションが防止される。
【0055】
第2の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(2)第2の実施形態では、各熱交換器9a,9bへの流量を制御する制御弁30は、第1カバー31等に回転可能に軸支された弁体35を備えた。また、弁体35に、受圧面積が異なる第1及び第2弁板37,38を設けた。そして、第1及び第2終端位置にある
弁体35が、第1連通路32a側及び第2連通路33a側から受ける圧力の差が、圧力差PG以上になった際に、不均衡状態になり、中間位置に向かって自ずから回動するようにした。
【0056】
また、サーモスタット7の差圧開弁を発生させる前に弁体35が中間位置に移動するように第1及び第2弁板37,38の受圧面積比(圧力差PG)を設定した。また、ウォーターポンプ5の吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力よりも大きくなるように第1及び第2弁板37,38の受圧面積比(圧力差PG)を設定した。このため、制御弁30は、差圧開弁及びキャビテーションの発生前に開弁し、冷却回路4全体の通水抵抗を小さくすることができる。このため、差圧開弁による温度調節機能の低下、及びキャビテーションによる騒音、冷却管及びウォーターポンプ5の損傷を防止できる。
【0057】
尚、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・第1の実施形態では、制御弁10に設けられた弁体15が、第1カバー11の内側面を摺動して、連通部C1を設けない構成にしてもよい。
【0058】
・冷却システム1は、図8に示すような構成にしてもよい。図8に示す冷却システム40は、第1及び第2熱交換流路40a,40bを備え、第1熱交換流路40aは、その導入口側が、ウォーターポンプ5の吐出口とエンジン2の導入口とを連通する連通路41から分岐している。第2熱交換流路40bは、導入口側が、エンジン2からラジエータ3に向かって冷却液を送出する冷却回路4から直接分岐している。第1及び第2熱交換流路40a,40bは、各熱交換器9a,9bの下流で合流し第3流路40cになっている。制御弁10は、第1熱交換流路40aの途中であって、油水熱交換器9aよりも上流に設けられている。そして、制御弁10は、第1熱交換流路40aの流量を低減、又は閉鎖するようになっている。さらに、制御弁10は、差圧開弁及びキャビテーションが発生する前の圧力で自ずから開弁するように構成されている。
【0059】
・制御弁10は、シリンダブロック2bへの冷却液の供給量を制御できる位置であれば、冷却回路4のどの位置に配置してもよい。また、制御弁10は、シリンダブロック2bへの冷却液の供給量を制御する以外の目的で配設されてもよく、エンジン2に配設されたウォータジャケット内の流路、エンジン2を迂回する迂回流路の途中等に設けられてもよい。
【0060】
・第1の実施形態では、図9に示す制御弁50のような構成にしてもよい。制御弁50は、第1の実施形態と同様な構成の第1カバー11内に、収容空間12を備え、弁体54を所定角度だけ回動可能に軸支している。第1カバー11と、第1弁板55及び第2弁板56との間に設けられた、隙間としての連通部C3,C4は、第2弁板56が第1弁板55よりも短く形成されることで、その間隙面積が異なるように形成されている。または、第1カバー11に図示しない拡開部を一部設け、第1及び第2弁板55,56を同じ長さに形成することで、開口面積が異なるようにしてもよい。このため、間隙面積が大きい連通部C4を通過する流量は、間隙面積が小さい連通部C3を通過する流量よりも大きくなる。従って、第2弁板56は、第1弁板55よりも冷却液から受ける圧力が大きくなる。この弁体54は、第1及び第2弁板55,56に加わる回転力の差が所定値未満のとき、ロータリーソレノイド26の駆動力や、弁体54と第1カバー11等との摩擦力等により回動しない。回転力の差が所定値以上になると、第2弁板56が受ける圧力が、ロータリーソレノイド26の駆動力等を上回り、図9中2点鎖線に示す終端位置に配置される。
【0061】
また、制御弁は、図10に示す制御弁60のような構成にしてもよい。制御弁60は、第1カバー61を備え、第1カバー61には、収容空間61a(通路)と、ブロック側流路4bに連通する第1連通路62a(通路)を備えた第1ポート62と、ヘッド側流路4
a及びブロック側流路4bの合流部に連通する第2連通路63a(通路)を備えた第2ポート63が突出形成されている。また、第1カバー61には、弁体64を軸支する軸受65が形成されている。弁体64は、回転軸66と、回転軸66から延出形成された弁板67とを備えている。弁板67は、回転軸66を中心に、図10中実線に示す第1終端位置と、2点鎖線で示す、第2終端位置との間を回動する。第1終端位置に配置された弁体64は、第1熱交換流路8aに連通した第1連通路62a側と、第2熱交換流路8bに連通した第2連通路63a側との間の差圧が、圧力差PGになると、第2終端位置に回動するようになっている。
【0062】
・第2の実施形態では、制御弁30は図11に示す制御弁70のような構成にしてもよい。制御弁70は、第1カバー71内に、収容空間71a(通路)を備え、弁体75を所定角度だけ回動可能に軸支している。第1カバー71は、第1熱交換流路8aに連通された第1連通路72a(通路)を備える第1ポート72と、第2熱交換流路8bに連通された第2連通路73a(通路)を備える第2ポート73と、ウォーターポンプ5側に連通されたポンプ側連通路74a(通路)を備えたポンプ側ポート74とを備える。第1カバー71及び弁体75は、第1カバー71と、第1弁板76及び第2弁板77との間に設けられた隙間としての連通部C5,C6の間隙面積が異なるように形成されている。
【0063】
このため、連通部C6を通過した流量は、連通部C5を通過する流量よりも大きくなり、第2弁板77が冷却液から受ける圧力は、第1弁板76よりも大きくなる。第1弁板76及び第2弁板77に加わる回転力の差が所定値未満の場合には、ロータリーソレノイド26の駆動力や、弁体75と第1カバー71等との摩擦力により回動しない。第1弁板76及び第2弁板77に加わる回転力の差が所定値以上の場合には、第2弁板77が高圧側から低圧側に向かって回動し、図11中実線に示す第2終端位置と、図11中2点鎖線に示す、第1終端位置との間の中間位置に配置される。
【0064】
また、制御弁は、図12に示す制御弁80のような構成にしてもよい。制御弁80は、第1カバー81を備え、第1カバー81には、収容空間81a(通路)と、第1熱交換流路8aに連通された第1連通路82a(通路)を備える第1ポート82と第2熱交換流路8bに連通された第2連通路83a(通路)を備える第2ポート83とが設けられている。また、第1カバー81には、ウォーターポンプ5側に連通されたポンプ側連通路84a(通路)を備えたポンプ側ポート84が設けられている。また、第1カバー81には、弁体85を軸支する軸受86が形成されている。弁体85は、回転軸87と、回転軸87から延出形成された弁板88とを備えている。弁板88は、回転軸87を中心に、図12中実線に示す第2終端位置と、2点鎖線で示す第1終端位置との間を回動する。弁体85は、第1熱交換流路8aに連通した第1連通路82a側と、第2熱交換流路8bに連通した第2連通路83a側との間の差圧が、圧力差PGになると、低圧側に回動するようになっている。
【0065】
・第1の実施形態では、制御弁10からコイルばね22を省略し、ロータリーソレノイド26の制御のみにより、弁体15を第1及び第2終端位置に配置してもよい。
・第1の実施形態では、液温センサWSから入力された温度情報に基づいて、制御弁10を通電又は非通電にしたが、エンジン2の回転数が所定値以上(車両の作動条件)であるときに、非通電にするようにしてもよい。
【0066】
・第2の実施形態では、弁体35が第1及び第2終端位置に配置された際に、通電を停止したが、供給電流を低減させるようにしてもよい。また、弁体35を、付勢ばねによって第1又は第2終端位置のいずれかに付勢するようにしてもよい。また、エンジン2の回転数が所定値以上(車両の作動条件)であるときに、非通電にするようにしてもよい。
【0067】
・上記各実施形態では、油水熱交換器9aは、エンジンオイル等、他のオイルの温度調節を行うものであってもよい。また、ヒータ用熱交換器9bは、空調装置以外の装置に用いられるものであってもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、冷却システム1は、その他の熱源又は駆動装置を冷却する装置であってもよい。例えば、冷却システム1は、蓄電器(燃料電池)を用いた車両に搭載され、該蓄電器等の熱源を冷却するシステムであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態の冷却システムの模式図。
【図2】同冷却システムの制御弁の断面図。
【図3】同制御弁の断面図。
【図4】同制御弁の要部断面図。
【図5】本発明の第2実施形態の冷却システムの模式図。
【図6】同冷却システムの制御弁の断面図。
【図7】同制御弁の断面図。
【図8】本発明の別例の冷却システムの模式図。
【図9】本発明の別例の制御弁の断面図。
【図10】本発明の別例の制御弁の断面図。
【図11】本発明の別例の制御弁の断面図。
【図12】本発明の別例の制御弁の断面図。
【符号の説明】
【0070】
1,40…冷却システム、2…熱源としてのエンジン、3…冷却手段としてのラジエータ、4…冷却回路、4a…第1冷却回路を構成するヘッド側流路、4b…第1冷却回路を構成するブロック側流路、4c…第2冷却回路としての排熱系流路、5…冷媒圧送手段としてのウォーターポンプ、6…第1冷却回路を構成するバイパス流路、7…流量制御弁としてのサーモスタット、8…第1冷却回路を構成する熱交換流路、8a,40a…第1冷却回路及び第1流路を構成する第1熱交換流路、8b,40b…第1冷却回路及び第2流路を構成する第2熱交換流路、8c,40c…第1冷却回路を構成する第3流路、10,30,50,60,70,80…制御弁、12,31a,61a,71a,81a…通路を構成する収容空間、13a,32a,62a,72a,82a…通路を構成する第1連通路、14a,33a,63a,73a,83a…通路を構成する第2連通路、15,35,54,64,75,85…弁体、16,36,66,87…回転軸、26…電磁駆動部としてのロータリーソレノイド、34a,74a,84a…通路を構成するポンプ側連通路、C3〜C6…隙間としての連通部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と接続され冷媒が循環する第1冷却回路と、
該第1冷却回路に接続され、前記冷媒を放熱させる冷却手段を有する第2冷却回路と、
前記第1冷却回路と前記第2冷却回路との間に設けられ、前記第1冷却回路から前記第2冷却回路への前記冷媒の流量を制御する流量制御弁と、
前記冷媒を前記両冷却回路に圧送する冷媒圧送手段と、
前記第1冷却回路内の前記冷媒の流量を制御する制御弁とを有する冷却システムにおいて、
前記制御弁は、前記第1冷却回路内の通路内において回動可能に支持される弁体を有し、前記弁体は、回動中心に対して非対称に形成されていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
熱源と接続され冷媒が循環する第1冷却回路と、
該第1冷却回路に接続され、前記冷媒を放熱させる冷却手段を有する第2冷却回路と、
前記第1冷却回路と前記第2冷却回路との間に設けられ、前記第1冷却回路から前記第2冷却回路への前記冷媒の流量を制御する流量制御弁と、
前記冷媒を前記両冷却回路に圧送する冷媒圧送手段と、
前記第1冷却回路内の前記冷媒の流量を制御する制御弁とを有する冷却システムにおいて、
前記制御弁は、前記第1冷却回路の通路内において回動可能に支持される弁体を有し、前記弁体の両端と前記通路との間には、それぞれ隙間が設けられ、該各隙間の間隙面積が互いに異なることを特徴とする制御弁。
【請求項3】
前記第1冷却回路の前記通路は、前記冷媒が流入する第1流路及び第2流路と、前記冷媒が流出する第3流路とが接続される接続部から構成され、前記接続部において前記第1流路及び前記第2流路から前記第3流路へ流れる前記冷媒の流量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記制御弁は、前記流量制御弁の上流と下流との圧力差が前記流量制御弁の差圧開弁圧より小さくなるように、又は、前記冷媒圧送手段の吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力より大きくなるように作動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の制御弁。
【請求項5】
前記弁体は、電磁駆動部によって回動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の制御弁。
【請求項6】
前記電磁駆動部は、通電方向の切換により、前記弁体を正逆方向に回動させ、それぞれの終端位置にて、供給電流が低減又は遮断されることを特徴とする請求項5に記載の制御弁。
【請求項7】
前記電磁駆動部は、前記流量制御弁の上流と下流との圧力差が、前記流量制御弁の差圧開弁圧より小さい圧力において供給電流が制御されるとともに、車両の作動条件に応じ、供給電流が制御されることを特徴とする請求項5又は6に記載の制御弁。
【請求項1】
熱源と接続され冷媒が循環する第1冷却回路と、
該第1冷却回路に接続され、前記冷媒を放熱させる冷却手段を有する第2冷却回路と、
前記第1冷却回路と前記第2冷却回路との間に設けられ、前記第1冷却回路から前記第2冷却回路への前記冷媒の流量を制御する流量制御弁と、
前記冷媒を前記両冷却回路に圧送する冷媒圧送手段と、
前記第1冷却回路内の前記冷媒の流量を制御する制御弁とを有する冷却システムにおいて、
前記制御弁は、前記第1冷却回路内の通路内において回動可能に支持される弁体を有し、前記弁体は、回動中心に対して非対称に形成されていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
熱源と接続され冷媒が循環する第1冷却回路と、
該第1冷却回路に接続され、前記冷媒を放熱させる冷却手段を有する第2冷却回路と、
前記第1冷却回路と前記第2冷却回路との間に設けられ、前記第1冷却回路から前記第2冷却回路への前記冷媒の流量を制御する流量制御弁と、
前記冷媒を前記両冷却回路に圧送する冷媒圧送手段と、
前記第1冷却回路内の前記冷媒の流量を制御する制御弁とを有する冷却システムにおいて、
前記制御弁は、前記第1冷却回路の通路内において回動可能に支持される弁体を有し、前記弁体の両端と前記通路との間には、それぞれ隙間が設けられ、該各隙間の間隙面積が互いに異なることを特徴とする制御弁。
【請求項3】
前記第1冷却回路の前記通路は、前記冷媒が流入する第1流路及び第2流路と、前記冷媒が流出する第3流路とが接続される接続部から構成され、前記接続部において前記第1流路及び前記第2流路から前記第3流路へ流れる前記冷媒の流量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記制御弁は、前記流量制御弁の上流と下流との圧力差が前記流量制御弁の差圧開弁圧より小さくなるように、又は、前記冷媒圧送手段の吸込側で発生する圧力がキャビテーションの発生する圧力より大きくなるように作動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の制御弁。
【請求項5】
前記弁体は、電磁駆動部によって回動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の制御弁。
【請求項6】
前記電磁駆動部は、通電方向の切換により、前記弁体を正逆方向に回動させ、それぞれの終端位置にて、供給電流が低減又は遮断されることを特徴とする請求項5に記載の制御弁。
【請求項7】
前記電磁駆動部は、前記流量制御弁の上流と下流との圧力差が、前記流量制御弁の差圧開弁圧より小さい圧力において供給電流が制御されるとともに、車両の作動条件に応じ、供給電流が制御されることを特徴とする請求項5又は6に記載の制御弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−90226(P2006−90226A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277514(P2004−277514)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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