説明

制御弁

【課題】車両用冷暖房装置において蒸発器において過熱度が発生する領域を抑制して良好な作動を確保するために好適に用いられる制御弁を提供する。
【解決手段】ある態様の過熱度制御弁は、上流側から冷媒を導入する入口ポート56と、下流側へ冷媒を導出する出口ポート58と、その入口ポート56と出口ポート58とを連通する主弁孔66とが設けられたボディ50と、主弁孔66に接離して弁開度を調整する主弁体71を含む弁駆動体70と、入口ポート56から導入された冷媒の温度と圧力を感知し、その冷媒の過熱度が設定過熱度となるよう主弁体71を開閉駆動するパワーエレメント80と、を備える。パワーエレメント80は、入口ポート56から導入される冷媒に晒されるように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置に好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両用冷暖房装置において、蒸発器に十分な冷媒が供給されず、その出口側の過熱度(スパーヒート)が過大となるようなことがあると、その蒸発器に温度ムラが生じてしまう。車両用冷暖房装置の冷媒循環回路には一般に潤滑用のオイルが循環されるが、蒸発器において過熱度の発生領域が大きくなってしまうと、蒸発器に温度ムラが生じるとともにその内部にオイルが滞留してしまうことも想定される。そうなると、圧縮機にも十分なオイルが供給されなくなり、その作動に支障をきたす可能性もある。
【0006】
本発明の目的の一つは、車両用冷暖房装置において蒸発器において過熱度が発生する領域を抑制して良好な作動を確保するために好適に用いられる制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、その入口ポートと出口ポートとを連通する主弁孔とが設けられたボディと、主弁孔に接離して弁開度を調整する主弁体を含む弁駆動体と、入口ポートから導入された冷媒の温度と圧力を感知し、その冷媒の過熱度が設定過熱度となるよう主弁体を開閉駆動する感温部と、を備える。そして、感温部が、入口ポートから導入される冷媒に晒されるように設けられている。
【0008】
この態様の制御弁を冷凍サイクルにおける蒸発器の下流側に設けることにより、その蒸発器内の出口側に過熱度が発生したときには感温部がその過熱度を直接感知し、その過熱度を設定値に近づけるように動作する。このため、蒸発器の出口側の過熱度を適正に制御することができ、蒸発器内において過熱度が発生する領域を抑制してその良好な作動を確保できるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両用冷暖房装置において蒸発器において過熱度が発生する領域を抑制して良好な作動を確保するために好適に用いられる制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】過熱度制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【図4】過熱度制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。
【図5】第2実施形態に係る制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【図6】制御弁ユニットの動作過程を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0013】
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。冷媒循環回路には、冷暖房を適切に制御するための各種制御弁が配設されている。
【0014】
車両用冷暖房装置1は、また、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。そして、この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。冷房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、暖房運転中の除湿時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0015】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路が開放された場合と第2冷媒循環通路が開放された場合とで逆転する。つまり、室外熱交換器5における冷媒の入口と出口は、第1冷媒循環通路が開放された場合と第2冷媒循環通路が開放された場合とで切り替わる。
【0016】
具体的には、圧縮機2の吐出室は第1通路21を介して室内凝縮器3の入口に接続され、室内凝縮器3の出口は第2通路22を介して室外熱交換器5の一方の出入口に接続されている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第4通路24(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。そして、第2通路22が室内凝縮器3寄りの分岐点と室外熱交換器5寄りの分岐点の2箇所においてそれぞれバイパス通路25、バイパス通路26に分岐されている。第2通路22におけるその2箇所の分岐点の間には差圧弁30が配設されている。
【0017】
また、バイパス通路25には過冷却度制御弁32が設けられ、その下流側が第1分岐通路27と第2分岐通路28とに分岐している。第1分岐通路27は蒸発器7につながり、第2分岐通路28は室外熱交換器5につながっている。第1分岐通路27と第2分岐通路28との間には、過冷却度制御弁36および差圧弁38が配設されている。第4通路24には過熱度制御弁40が設けられている。バイパス通路26には、開閉弁42および過熱度制御弁44が設けられている。
【0018】
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
【0019】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0020】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
【0021】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
【0022】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、各制御弁(後述する)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
【0023】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
【0024】
差圧弁30は、その前後差圧(室内凝縮器3の出口側圧力と室外熱交換器5の入口側圧力との差圧)が供給電流値に応じた設定差圧となるよう自律的に動作する定差圧弁(電磁弁)である。本実施形態では、差圧弁30の弁部を駆動するアクチュエータとしてソレノイドを用いるが、ステッピングモータ等の電動機を用いてもよい。差圧弁30は冷房運転時に駆動されて差圧制御を実行し、室内凝縮器3における凝縮圧力を室外熱交換器5における凝縮圧力よりも設定差圧分高く維持し、それにより室内凝縮器3における冷媒温度が過度に低下するのを防止する。具体的には、ドライバの足元を適度に暖められる程度の凝縮圧力(温度)が得られるようにするものである。
【0025】
過冷却度制御弁32は、室内凝縮器3からバイパス通路25を介して導入された冷媒を絞り膨張させて下流側に導出する「膨張装置」として機能するとともに、後述する特定暖房運転時においては室内凝縮器3から蒸発器7および室外熱交換器5へ供給される冷媒の総流量を調整する「総流量弁」としても機能する。なお、図示を省略するが、過冷却度制御弁32は、上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、その入口ポートと出口ポートとを連通する弁孔とが設けられたボディと、弁孔に接離して弁開度を調整する弁体と、入口ポートから導入された冷媒の温度と圧力を感知し、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値となるよう弁体を開閉駆動する感温部とを備えるものでもよい。
【0026】
過冷却度制御弁32は、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCよりも大きくなると開弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。逆に、室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、過冷却度制御弁32は、閉弁方向に動作し、室内凝縮器3を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室内凝縮器3における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。このように、過冷却度制御弁32は、その入口(室内凝縮器3の出口側)の過冷却度が設定値SCとなるよう自律的に動作する。
【0027】
比例弁34は、三方向比例弁として構成され、バイパス通路25から第1分岐通路27と第2分岐通路28とに分岐する分岐点に設けられている。すなわち、比例弁34は、第1分岐通路27の開度を制御する第1比例弁と、第2分岐通路28の開度を制御する第2比例弁とを含む「複合弁」として構成されている。
【0028】
第1比例弁は、その弁部の開度が制御されることにより第3冷媒循環通路の開度を調整する。第2比例弁は、その弁部の開度が制御されることにより第2冷媒循環通路の開度を調整する。第1比例弁と第2比例弁は、各弁部を構成する弁体が一体に設けられ、一つのアクチュエータにて同時にリニア制御される。それにより、各弁部の開度の比率が制御される。すなわち、後述する特定暖房運転時においては、過冷却度制御弁32により蒸発器7および室外熱交換器5へ供給される冷媒の総流量が調整され、その総流量が比例弁34によって設定された比率に振り分けられる。つまり、比例弁34は、アクチュエータの駆動量に応じて冷媒の流量を振り分ける「振分弁」として機能する。比例弁34のアクチュエータはソレノイドであってもよいし、ステッピングモータであってもよい。
【0029】
過冷却度制御弁36は、室外熱交換器5から導出された冷媒や、バイパス通路25を介して供給された冷媒を絞り膨張させて蒸発器7側に導出する「膨張装置」として機能する。過冷却度制御弁36は、冷房運転時において室外熱交換器5の出口側の過冷却度が予め設定された一定の過冷却度(設定値SC)に近づくよう冷媒の流れを制御する。本実施形態では、過冷却度制御弁36として、その上流側の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。
【0030】
過冷却度制御弁36は、冷房運転時において室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値SCよりも大きくなると開弁方向に動作し、室外熱交換器5を流れる冷媒の流量を増加させる。このように冷媒の流量が増加すると、室外熱交換器5における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が小さくなるため、その過冷却度は小さくなる方向に変化する。逆に、室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値SCよりも小さくなると、過冷却度制御弁36は閉弁方向に動作し、室外熱交換器5を流れる冷媒の流量を減少させる。このように冷媒の流量が減少すると、室外熱交換器5における冷媒の単位流量あたりの凝縮能力が大きくなるため、その過冷却度は大きくなる方向に変化する。過冷却度制御弁36は、その入口(室外熱交換器5の出口側)の過冷却度が設定値SCとなるよう自律的に動作する。なお、本実施形態では過冷却度制御弁36と過冷却度制御弁32の過冷却度の設定値を等しくしたが、異なる設定値を設定してもよい。
【0031】
なお、図示を省略するが、過冷却度制御弁36は、上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、その入口ポートと出口ポートとを連通する弁孔とが設けられたボディと、弁孔に接離して弁開度を調整する弁体と、入口ポートから導入された冷媒の温度と圧力を感知し、室外熱交換器5の出口側の過冷却度が設定値となるよう弁体を開閉駆動する感温部とを備えるものでもよい。
【0032】
差圧弁38は、過冷却度制御弁36の下流側に設けられている。差圧弁38は、第3通路23において過冷却度制御弁36側への冷媒の逆流を防止する機械式の弁として構成され、その前後差圧が設定された開弁差圧以上となったときに開弁する。
【0033】
過熱度制御弁40は、蒸発器7の蒸発圧力を調整する「蒸発圧力調整弁」として機能し、蒸発器7の出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、その過熱度が予め設定された一定の過熱度(設定過熱度SH)に近づくよう冷媒の流れを制御する。本実施形態では、過熱度制御弁40として、蒸発器7の出口側の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。過熱度制御弁40は、感知した過熱度が設定過熱度SHよりも大きければ弁開度を絞り、蒸発器7の蒸発圧力を上昇させることにより、蒸発器7を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を小さくし、それにより過熱度を小さくして設定過熱度SHに近づける。逆に、感知された過熱度が設定過熱度SHよりも小さければ、過熱度制御弁40は、弁開度を大きくし、蒸発器7の蒸発圧力を低下させることにより、蒸発器7を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を大きくし、それにより過熱度を大きくして設定過熱度SHに近づける。このように、過熱度制御弁40は、蒸発器7の出口側の過熱度が設定過熱度SHに近づくよう自律的に動作する。なお、過熱度制御弁40の具体的構成については後述する。
【0034】
開閉弁42は、バイパス通路26における過熱度制御弁44の上流側に設けられている。開閉弁42は、バイパス通路26を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドとを備える二方向電磁弁からなる。開閉弁42の開弁によりバイパス通路26を介したアキュムレータ8への冷媒の流れが許容される。本実施形態では、開閉弁42として、ソレノイドへの通電有無によって弁部を開閉させる開閉弁(オン/オフ弁)が用いられる。なお、開閉弁42の弁部を駆動するアクチュエータはソレノイドでなくてもよく、ステッピングモータ等の電動機であってもよい。また、本実施形態では、開閉弁42をバイパス通路26の中間部に設けているが、例えば第3通路23におけるバイパス通路26への分岐点に三方向切替弁として配設してもよい。
【0035】
過熱度制御弁44は、室外熱交換器5が室外蒸発器として機能するときにその蒸発圧力を調整する「蒸発圧力調整弁」として機能する。過熱度制御弁44は、室外熱交換器5の出口側の過熱度が発生している場合に、その過熱度が予め設定された一定の過熱度(設定過熱度SH)に近づくよう冷媒の流れを制御する。本実施形態では、過熱度制御弁44として、室外熱交換器5の出口側の冷媒の温度と圧力を感知して弁部を駆動する感温部を有する機械式の制御弁が用いられる。過熱度制御弁44は、感知した過熱度が設定過熱度SHよりも大きければ弁開度を絞り、室外熱交換器5の蒸発圧力を上昇させることにより、室外熱交換器5を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を小さくし、それにより過熱度を小さくして設定過熱度SHに近づける。逆に、感知された過熱度が設定過熱度SHよりも小さければ、過熱度制御弁44は、弁開度を大きくし、室外熱交換器5の蒸発圧力を低下させることにより、室外熱交換器5を通過する冷媒と外部の空気との熱交換量を大きくし、それにより過熱度を大きくして設定過熱度SHに近づける。このように、過熱度制御弁44は、室外熱交換器5の出口側の過熱度が設定過熱度SHに近づくよう自律的に動作する。なお、本実施形態では、過熱度制御弁44の設定過熱度と過熱度制御弁40の設定過熱度とを等しく設定しているが、両者を異なるように設定してもよい。
【0036】
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部100は、差圧弁30、比例弁34および開閉弁42の開閉制御のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
【0037】
制御部100は、差圧弁30や比例弁34の駆動回路に設定したパルス信号を出力する駆動信号出力部を有する。具体的には、制御部100にて演算され、設定されたデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部が設けられるが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部100は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて差圧弁30の設定差圧を決定し、差圧弁30の前後差圧がその設定差圧となるよう各ソレノイドに電流を供給する。なお、変形例として差圧弁30のアクチュエータをステッピングモータにより構成する場合には、その差圧が設定差圧となるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。制御部100はまた、所定の外部情報に基づいて比例弁34の第1比例弁と第2比例弁との開度比率を決定し、各比例弁の開度がその設定開度となるようソレノイドに電流を供給する。なお、変形例として比例弁34のアクチュエータをステッピングモータにより構成する場合には、その開度がその設定開度となるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。
【0038】
このような制御により、図示のように、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。このとき、過冷却度制御弁32の上流側は高圧の上流側圧力P1となり、比例弁34における第1比例弁の下流側は低圧の下流側圧力P3となる。また、比例弁34における第2比例弁の下流側で過冷却度制御弁36の上流側は中間圧力P2となる。
【0039】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は除湿運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は暖房運転時の状態を示している。ここでいう「除湿運転」は、車室内の除湿をメインとして運転状態であり、「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。
【0040】
各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜gはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
【0041】
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、差圧弁30が開弁され、開閉弁42が閉弁される。差圧弁30は差圧制御を行わず全開状態とされる。開閉弁42の閉弁によりバイパス通路26が遮断されているため、圧縮機2から吐出冷媒は室外熱交換器5に導かれるようになる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、差圧弁30、室外熱交換器5、過冷却度制御弁36、蒸発器7、過熱度制御弁40、アキュムレータ8を経由するように第1冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。なお、この場合は室内凝縮器3の下流側の圧力が高いため、過冷却度制御弁32の弁構造によってはバイパス通路25を介して冷媒が多少漏れる可能性はあるが、その場合には、その冷媒は、比例弁34の第2比例弁および過冷却度制御弁36を経由して蒸発器7に供給される。
【0042】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、過冷却度制御弁36の上流側に供給される。そして、過冷却度制御弁36にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。このとき、過冷却度制御弁36は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。
【0043】
図2(B)に示すように、除湿運転時においては差圧弁30が差圧制御を実行する。このため、差圧弁30の前後差圧が設定差圧ΔPとなるように制御され。その結果、室内凝縮器3の凝縮圧力(凝縮温度)が、室外熱交換器5の凝縮圧力(凝縮温度)よりも高く維持され、車室内の温度が必要以上に低下することが抑制される。この場合も、過冷却度制御弁36は、室外熱交換器5の出口側(e点)の過冷却度が設定値SCとなるように弁部の開度を自律的に調整する。
【0044】
図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては差圧弁30が閉弁されて開閉弁42が開弁される一方、比例弁34の開度が制御される。すなわち、比例弁34の第1比例弁と第2比例弁の開度比率が調整されることで、蒸発器7および室外熱交換器5に向かう冷媒の流量が振り分けられる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、過冷却度制御弁32、比例弁34の第2比例弁、室外熱交換器5、開閉弁42、過熱度制御弁44、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、過冷却度制御弁32、比例弁34の第1比例弁、蒸発器7、過熱度制御弁40、アキュムレータ8を経由するように第3冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
【0045】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され。そして、過冷却度制御弁32にて断熱膨張された冷温・低圧の気液二相冷媒が比例弁34にて振り分けられる。振り分けられた冷媒の一方は、室外熱交換器5に供給されて蒸発し、他方は蒸発器7に供給されて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、比例弁34の開度(つまり第1比例弁と第2比例弁の開度の比率)により制御される。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保でき、除湿機能を確保することができる。すなわち、比例弁34の開度調整により蒸発器7へ供給される冷媒の総流量が調整され、過冷却度制御弁32により室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCとなるように調整される。
【0046】
この特定暖房運転においては除湿運転が良好に行われるが、その除湿制御の概要については以下のとおりである。すなわち、図2(C)に示すように、過冷却度制御弁32により室内凝縮器3の出口における所定の過冷却度SCが維持されることで(c点)、室内凝縮器3における凝縮能力が適正に維持され、室外熱交換器5(室外蒸発器)および蒸発器7(室内蒸発器)のそれぞれにおいて効率の良い熱交換が行われる。このとき、アキュムレータ8によって圧縮機2の入口の冷媒の状態が常に飽和蒸気圧曲線上に保持されるため(a点)、蒸発器7の出口の冷媒の状態(g点)は、室外熱交換器5の出口の冷媒の状態(d点)とバランスするように変化する。すなわち、図示のように室外熱交換器5の出口側にて過熱度が発生している場合、蒸発器7の出口における冷媒の湿り度(g点)は、室外熱交換器5の出口における冷媒の過熱度(d点)とバランスする。また、逆に蒸発器7の出口側にて過熱度が発生している場合には、室外熱交換器5の出口における湿り度((d)点)が蒸発器7の出口のおける過熱度((g)点)とバランスするようになる。
【0047】
図2(D)に示すように、暖房運転時においては比例弁34の第1比例弁が閉弁され、第2比例弁が全開状態とされる。このため、冷媒は蒸発器7を通過せず、蒸発器7は実質的に機能しなくなる。つまり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、過冷却度制御弁32、比例弁34、室外熱交換器5、開閉弁42、過熱度制御弁44、アキュムレータ8を経由するように第2冷媒循環通路を循環して圧縮機2に戻る。
【0048】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、過冷却度制御弁32にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、比例弁34の第2比例弁を通過し、室外熱交換器5を通過して蒸発される。室外熱交換器5を通過した冷媒は、開閉弁42、過熱度制御弁44およびアキュムレータ8を経て圧縮機2に戻る。すなわち、冷温・低圧の冷媒が蒸発器7にて熱交換されないため、車室内に導入された空気は室内凝縮器3により加熱されるのみとなる。このように、一時的に蒸発器7に低温・低圧の液冷媒が供給されなくなるため、ダクト10を通過する空気により蒸発器7が温められる。
【0049】
次に、本実施形態における過熱度制御弁の具体的構成および動作について説明する。図3および図4は、過熱度制御弁の具体的構成および動作を表す断面図である。図3は、過熱度制御弁の閉弁状態を示し、図4は過熱度制御弁の開弁状態を示している。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
【0050】
図3に示すように、本実施形態の過熱度制御弁40,44は、有底円筒状のボディ50に主弁52とパイロット弁54とを同軸状に収容して構成される。ボディ50の一方の側部には高圧の冷媒を導入する入口ポート56が設けられ、他方の側部には低圧の冷媒を導出する出口ポート58が設けられている。
【0051】
ボディ50の下半部には、有底円筒状の弁座形成部材60が圧入されている。弁座形成部材60の底部が、ボディ50内を高圧側の圧力室62と低圧側の圧力室64とに区画している。弁座形成部材60の底部中央には主弁孔66が形成され、その上流側開口端部により主弁座68が形成されている。圧力室62には段付円筒状の弁駆動体70が配設されている。弁駆動体70の下部には主弁体71が一体に設けられている。主弁体71が主弁座68に着脱することにより主弁52を開閉する。弁座形成部材60の出口ポート58との対向面には内外を連通する連通孔が形成されている。
【0052】
弁座形成部材60とボディ50との間にはシール用のOリングが嵌着されているため、圧力室62の冷媒が弁座形成部材60とボディ50との間隙を介して出口ポート58に漏洩することは防止されている。ただし、弁座形成部材60の底部には小断面のオリフィス69(「リーク通路」として機能する)が設けられており、主弁52の閉弁時においても圧力室62から圧力室64への所定流量の冷媒の流れが許容されている。
【0053】
弁駆動体70の下端部には、段付円筒状の区画部材72が連設されている。区画部材72は、圧力室62と圧力室64とを跨ぐように配設されている。区画部材72は、その上端部が拡径して弁駆動体70の下端開口部に圧入され、弁駆動体70と一体に動作する。区画部材72の下端部には半径方向外向きに延出するフランジ部74が設けられ、ボディ50の内周面に摺動可能に支持されている。フランジ部74の外周面にはシール用のOリングが嵌着されている。フランジ部74と弁座形成部材60との間には、区画部材72を介して弁駆動体70を主弁52の閉弁方向に付勢するスプリング101(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0054】
ボディ50の底部とフランジ部74との間には背圧室75が形成される。フランジ部74には、背圧室75と圧力室64とを連通する小断面のオリフィス76(「リーク通路」として機能する)が設けられている。弁駆動体70は、フランジ部74がボディ50に摺動可能に支持されることで、主弁52の開閉方向に安定に動作することができる。
【0055】
ボディ50の上半部には有底円筒状の封止部材78が圧入され、ボディ50の上端開口部は封止部材78の底部により封止されている。封止部材78は、シール用のOリングを介装させた状態でボディ50に圧入されており、封止部材78とボディ50との間隙を介した冷媒の漏洩が確実に防止されている。封止部材78の入口ポート56との対向面には内外を連通する連通孔が形成されている。
【0056】
弁駆動体70の上端部開口部を封止するようにパワーエレメント80が設けられている。パワーエレメント80は、入口ポート56から導入される冷媒に晒されるよう圧力室62に配設されており、その冷媒の温度と圧力を直接感知して動作し、パイロット弁54ひいては主弁52を開閉駆動するものである。なお、圧力室62と圧力室64とを主弁52を介してつなぐ通路が「主通路」を構成し、圧力室62と圧力室64とをパイロット弁54を介してつなぐ通路が「副通路」を構成する。
【0057】
弁駆動体70の内部には、半径方向内向きに延出した区画壁82が設けられている。区画壁82は圧力室62と背圧室75とを区画し、その環状の内周部によりパイロット弁孔84が形成されている。そして、パイロット弁孔84の圧力室62側の開口端部によりパイロット弁座86が形成されている。圧力室62にはパイロット弁体88が配設され、そのパイロット弁体88がパイロット弁座86に着脱してパイロット弁54を開閉する。
【0058】
弁駆動体70の内方の区画壁82と区画部材72とに囲まれた空間が中間圧力室90を形成している。パイロット弁孔84を介して中間圧力室90に導入された冷媒は、区画部材72の内部に形成されたパイロット通路92を介して背圧室75に導入される。中間圧力室90においては、弁駆動体70にリング状のアジャスト部材96が圧入されている。
【0059】
中間圧力室90には、有底円柱状の作動ロッド98が設けられている。作動ロッド98は、その一端側がパイロット弁孔84を貫通してパイロット弁体88に接続されている。すなわち、パイロット弁体88の下半部には軸線方向に沿って挿通孔99が形成され、作動ロッド98の上半部が内挿されるように接続されている。作動ロッド98の底部には、中間圧力室90において冷媒を流通させるための連通孔97が形成されている。作動ロッド98の底部とアジャスト部材96との間には、作動ロッド98を介してパイロット弁体88を開弁方向に付勢するスプリング102が介装されている。アジャスト部材96の圧入量によりスプリング102の荷重が調整されている。
【0060】
パイロット弁体88は、下方に向かって段階的に縮径する段付円柱状をなし、その下端部がテーパ状に形成されてパイロット弁座86に着脱する。パイロット弁体88の軸線方向中間部は弁駆動体70の上端部内周面に摺動可能に支持され、その外周面に形成された複数の連通溝104(同図には1つのみ表示)によってパイロット弁孔84と圧力室62とが連通されている。パイロット弁体88は、円板状の底部にてパワーエレメント80に接続されている。
【0061】
パワーエレメント80は、中空のハウジング106と、ハウジング106内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設されたダイアフラム108(「感圧部材」に該当する)とを含んで構成されている。ハウジング106は、アッパーハウジング110およびロアハウジング112からなる。ダイアフラム108は、ステンレス等の金属薄板からなる。パワーエレメント80は、アッパーハウジング110とロアハウジング112との間にダイアフラム108を挟んだ状態でその接合部の外周に沿ってTIG溶接等が施されることにより形成される。パワーエレメント80は、ロアハウジング112が弁駆動体70の上端部に圧入されるようにして固定されている。
【0062】
密閉空間S1は感温室を構成し、アッパーハウジング110内に基準圧力を保持するための基準ガスなどが充填された後、その上面中央に設けられた孔をボール状の封体114にて封止することにより密閉されている。本実施形態においては、基準ガスとして、冷凍サイクルを循環する冷媒ガス(HFC−134a)と窒素ガスとの混合ガスが用いられる。なお、変形例においては、基準ガスとして、冷凍サイクルを循環する冷媒ガスと同種類のガスを用いてもよい。ダイアフラム108の下面にはパイロット弁体88の上端面が当接する。ロアハウジング112の側部には開口部85が設けられており、圧力室62と開放空間S2とを連通させている。このため、ダイアフラム108の下面には、入口ポート56を介して導入された上流側圧力Pinが付与されるようになる。
【0063】
このような構成において、入口ポート56を介して導入された上流側圧力Pinの冷媒は、一方で主弁52を経て減圧膨張されて下流側圧力Poutとなり、他方でパイロット弁54を経て中間圧力室90にて中間圧力Ppとなり、パイロット通路92を経て背圧室75に導入される。そして、オリフィス76を経て下流側圧力Poutとなる。中間圧力Ppは、パイロット弁54の開閉状態によって変化する。
【0064】
ここで、パワーエレメント80は、圧力室62の冷媒の温度と圧力を感知し、入口ポート56を介して導入される冷媒の過熱度が設定値(例えば5deg)に近づくように動作し、弁部の開度を調整する。すなわち、過熱度制御弁40のパワーエレメント80は、その入口側(蒸発器7の出口側)に過熱度が生じている場合、その過熱度が設定過熱度SHとなるように動作し、主弁52の開度を調整する。また、過熱度制御弁44のパワーエレメント80は、その入口側(暖房運転時のおける室外熱交換器5の出口側)に過熱度が生じている場合、その過熱度が設定過熱度SHとなるように動作し、主弁52の開度を調整する。
【0065】
弁駆動体70は、区画部材72と一体に動作し、上流側圧力Pinと中間圧力Ppとの差圧(Pin−Pp)による閉弁方向の力、中間圧力Ppと下流側圧力Poutとの差圧(Pp−Pout)による開弁方向の力、スプリング101による閉弁方向の付勢力とが釣り合う位置にて静止する。その力の釣り合いに際し、中間圧力Ppは、パワーエレメント80の動作によるパイロット弁54の開閉状態に応じて変化する。パワーエレメント80の基準圧力室の圧力は、入口ポート56から導入される冷媒の過熱度に対応して変化する。それにより、入口ポート56から導入される冷媒の過熱度が設定過熱度SHに近づくようパイロット弁54の開度が変化し、主弁52の開度が調整される。
【0066】
すなわち、図4に示すような過熱度の制御状態において、上流側の過熱度が設定過熱度SHよりも大きくなると、パワーエレメント80が高温を感知してパイロット弁54の閉弁方向に動作する。その結果、パイロット弁54の弁開度が小さくなるため中間圧力Ppが減少し、弁駆動体70が閉弁方向に動作する。その結果、上流側圧力Pinが上昇するため、その上流側での熱交換量が少なくなり、過熱度が小さくなる方向に変化する。
【0067】
逆に、過熱度が設定過熱度SHよりも小さくなると、パワーエレメント80が低温を感知してパイロット弁54の開弁方向に動作する。その結果、パイロット弁54の弁開度が大きくなるため中間圧力Ppが上昇し、弁駆動体70が開弁方向に動作する。その結果、上流側圧力Pinが低下するため、その上流側での熱交換量が増加し、過熱度が大きくなる方向に変化する。このようにして過熱度が設定過熱度SHに保たれるようになる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、開閉弁と過熱度制御弁とが制御弁ユニットとして一体に構成された点を除き、第1実施形態と同様である。このため、第1実施形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図5は、第2実施形態に係る制御弁ユニットの具体的構成を表す断面図である。
【0069】
本実施形態の制御弁ユニットは、共用のボディ250に、開閉弁42および過熱度制御弁244(第1実施形態の過熱度制御弁44に対応)が組み付けられて構成される。ボディ250の側部には、入口ポート256および出口ポート58が設けられている。入口ポート256には室外熱交換器5につながる配管が接続され、出口ポート58にはアキュムレータ8につながる配管が接続される。
【0070】
開閉弁42は、通電の有無により開閉するパイロット作動式の制御弁として構成されている。開閉弁42は、主弁115とパイロット弁116とを有する。パイロット弁116の開閉によって背圧室118の圧力が変化することにより、主弁115が開弁方向または閉弁方向に駆動される。パイロット弁116は、ソレノイド111により開閉駆動される。開閉弁42は、ソレノイド111がオフの状態では閉弁状態となる。一方、ソレノイド111がオンにされると、パイロット弁116が開弁されて背圧室118の冷媒が圧力室64に導出されるため、主弁115が開弁方向に駆動される。なお、この開閉弁42が開閉する弁孔210が過熱度制御弁244の入口ポート56として機能することになる。
【0071】
一方、本実施形態の過熱度制御弁244は、第1実施形態の過熱度制御弁44と異なる構成部分を有する。すなわち、過熱度制御弁244は、弁座形成部材60に固定されたボディ260を有し、パワーエレメント80がボディ260に固定されている。したがって、パワーエレメント80は、主弁252の開閉動作に伴って動作することはない。本実施形態においても、パワーエレメント80が入口ポート56から導入される冷媒に晒されるよう圧力室62に配設されており、その冷媒の温度と圧力を直接感知して動作する。
【0072】
弁駆動体270は、ボディ260に対して近接または離間する方向に動作し、区画部材としても機能する。弁駆動体270は、その上端部に設けられたフランジ部74が弁座形成部材60に摺動することで主弁252の開閉方向に動作する。弁駆動体270の上端部とボディ260との間に背圧室75が形成される。主弁体71は、弁駆動体270の下端部に設けられ、主弁孔66に挿抜されることにより主弁252を開閉するスプール弁として機能する。
【0073】
主弁体71と主弁孔66との間には主弁252の閉弁時においても所定のクリアランスが形成され、そのクリアランスが圧力室62から圧力室64への所定流量の冷媒の漏洩を許容するリーク通路として機能する。主弁体71には、また、パイロット通路92と圧力室64とを連通させるオリフィス76が形成されている。弁駆動体270と弁座形成部材60との間には、弁駆動体270を主弁252の閉弁方向に付勢するスプリング101が介装されている。
【0074】
次に、本実施形態の制御弁ユニットの主要な動作について説明する。図5および図6は、制御弁ユニットの動作過程を例示する断面図である。図5は、開閉弁42が開弁する一方、過熱度制御弁244が閉弁した状態を示している。図6は、開閉弁42が開弁する一方、過熱度制御弁244が開弁した状態を示している。
【0075】
室外熱交換器5を室外蒸発器として機能させるために開閉弁42を開弁させたときに室外熱交換器5の出口側に過熱度が生じている場合、その過熱度が設定過熱度SHよりも相当大きければ、図5に示すように、過熱度制御弁244は閉弁状態となる。ただし、主弁体71と主弁孔66とのクリアランスを介して所定流量の冷媒の漏洩は許容される。
【0076】
一方、室外熱交換器5の出口側の過熱度が設定過熱度SH付近にある場合、図6に示すように、過熱度制御弁244は開弁状態となり、その過熱度が設定過熱度SHとなるよう自律的に動作する。すなわち、過熱度が設定過熱度SHよりも大きくなると、パワーエレメント80が高温を感知してパイロット弁54の閉弁方向に動作する。一方、背圧室75の冷媒はオリフィス76を介して導出されるため、中間圧力Ppが減少する。その結果、スプリング101の付勢力によって弁駆動体270が閉弁方向に動作する。その結果、上流側圧力Pinが上昇するため、その上流側での熱交換量が少なくなり、過熱度が小さくなる方向に変化する。
【0077】
逆に、過熱度が設定過熱度SHよりも小さくなると、パワーエレメント80が低温を感知してパイロット弁54の開弁方向に動作し、パイロット弁54の弁開度が大きくなる。そのパイロット弁54の弁開度はオリフィス76の流路断面よりも相当大きくなるため、中間圧力Ppが速やかに上昇し、弁駆動体270が開弁方向に動作する。その結果、上流側圧力Pinが低下するため、その上流側での熱交換量が増加し、過熱度が大きくなる方向に変化する。このようにして過熱度が設定過熱度SHに保たれるようになる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0079】
上記第1実施形態においては、過熱度制御弁244の構造を第1実施形態の過熱度制御弁44に代えて適用する例を示したが、過熱度制御弁40に代えて適用してもよい。
【0080】
上記実施形態では、冷凍サイクルとして、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成される例を示した。変形例においては、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として直列に動作可能に構成される冷凍サイクルに対して上記実施形態の過熱度制御弁を適用してもよい。あるいは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成される冷凍サイクルに対して上記実施形態の過熱度制御弁を適用してもよい。
【0081】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【0082】
上記実施形態の過熱度制御弁40,44においては、冷媒の圧力と温度を感知する感圧部材としてダイアフラムを用いる例を示した。感圧部材としてはこのほか、ベローズ等のように圧力を感知して伸縮するものを採用することもできる。しかし、過冷却度制御弁のコンパクト化を実現するうえでは薄膜状の感圧部材であるダイアフラムを採用するほうが好ましい。
【符号の説明】
【0083】
1 車両用冷暖房装置、 2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 5 室外熱交換器、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 21 第1通路、 22 第2通路、 23 第3通路、 24 第4通路、 25,26 バイパス通路、 27 第1分岐通路、 28 第2分岐通路、 30 差圧弁、 32 過冷却度制御弁、 34 比例弁、 36 過冷却度制御弁、 38 差圧弁、 40 過熱度制御弁、 42 開閉弁、 44 過熱度制御弁、 50 ボディ、 52 主弁、 54 パイロット弁、 56 入口ポート、 58 出口ポート、 60 弁座形成部材、 62,64 圧力室、 66 主弁孔、 68 主弁座、 69 オリフィス、 70 弁駆動体、 71 主弁体、 72 区画部材、 74 フランジ部、 75 背圧室、 76 オリフィス、 80 パワーエレメント、 84 パイロット弁孔、 86 パイロット弁座、 88 パイロット弁体、 90 中間圧力室、 92 パイロット通路、 98 作動ロッド、 100 制御部、 108 ダイアフラム、 111 ソレノイド、 115 主弁、 116 パイロット弁、 118 背圧室、 210 弁孔、 244 過熱度制御弁、 250 ボディ、 252 主弁、 256 入口ポート、 260 ボディ、 270 弁駆動体、 S1 密閉空間、 S2 開放空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から冷媒を導入する入口ポートと、下流側へ冷媒を導出する出口ポートと、その入口ポートと出口ポートとを連通する主弁孔とが設けられたボディと、
前記主弁孔に接離して弁開度を調整する主弁体を含む弁駆動体と、
前記入口ポートから導入された冷媒の温度と圧力を感知し、その冷媒の過熱度が設定過熱度となるよう前記主弁体を開閉駆動する感温部と、
を備え、
前記感温部が、前記入口ポートから導入される冷媒に晒されるように設けられていることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記入口ポートと前記出口ポートとを直接つなぐ主通路を、前記主弁孔に接離して開閉する前記主弁体を有し、前記弁駆動体が前記主通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、
前記入口ポートと前記出口ポートとを前記背圧室を介してつなぐ副通路の開度を、副弁孔に接離して調整可能なパイロット弁体を有し、そのパイロット弁体が前記感温部に作動連結されることにより前記主弁体の開閉駆動力を生成するパイロット弁と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記主弁の閉弁時においても前記入口ポートから前記出口ポートへの冷媒の漏洩を許容するリーク通路が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35733(P2012−35733A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177245(P2010−177245)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】