説明

制御装置、ロボット、制御方法、ならびに、プログラム

【課題】複数の関節を有する制御対象の表面に対するユーザの操作によって制御対象の形状を適切に変化させる制御装置等を提供する。
【解決手段】制御装置101において、回転角取得部102は、操作対象が有する棒状体の関節の回転角qを取得する。接触角取得部103は、棒状体の周囲に設置された接触位置センサの出力から接触角sを取得する。和計算部104は、回転角qと接触角sの和(q+s)を計算する。出力部105は、和(q+s)がいずれの角度範囲に属するか、に応じて、棒状体の関節の屈曲角や振上角を増減させる制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の関節を有する制御対象の表面に対するユーザの操作によって制御対象の形状を適切に変化させるのに好適な制御装置、ロボット、制御方法、ならびに、当該入力装置をコンピュータにより制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タッチパネルなどを用いた接触検出型センサによって、位置を選択したり、各種の指示を行う入力技術が提案されている。
【0003】
例えば、以下に掲げる特許文献1においては、ユーザが押圧操作によって正負の値や方向を直観的に入力できるようにする入力装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−142901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、ロボットの腕等、複数の関節を有する物の表面をユーザが押したり撫でたりすることで、ロボットに対してユーザの指示を適切に伝達したい、という要望は強い。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためのもので、複数の関節を有する制御対象の表面に対するユーザの操作によって制御対象の形状を適切に変化させるのに好適な制御装置、ロボット、制御方法、ならびに、当該入力装置をコンピュータにより制御するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る制御装置は、基体と、基体に対する回転ならびに屈曲が可能な関節を介して一端が接続された棒状体と、関節の屈曲角を変化させることが可能なアクチュエータと、関節の回転角を検知する回転角センサと、当該棒状体の周囲表面の接触位置を検知する接触位置センサと、を備える制御対象を制御し、回転角取得部、接触角取得部、和計算部、出力部を備え、以下のように構成する。
【0008】
すなわち、回転角取得部は、回転角センサから出力される回転角を取得する。
【0009】
一方、接触角取得部は、接触位置センサから出力される接触位置から、当該棒状体の長手方向の中心軸周りに垂らした垂線の方向ベクトルと、当該棒状体の周囲表面の所定位置から当該中心軸に垂らした垂線の方向ベクトルと、がなす接触角を取得する。
【0010】
さらに、和計算部は、取得された回転角と、取得された接触角と、の和を計算する。
【0011】
そして、出力部は、計算された和の値が、
(1)第1の角度範囲に含まれる場合、関節の屈曲角を増加させ、
(2)第2の角度範囲に含まれる場合、関節の屈曲角を減少させる
制御信号を、制御対象に出力する。
【0012】
また、本発明の制御装置は、以下のように構成することができる。
【0013】
すなわち、関節は基体に対して棒状体の振上が可能である。
【0014】
一方、アクチュエータは、関節の振上角を変化させることが可能である。
【0015】
さらに、出力部は、計算された和の値が、
(3)第3の角度範囲に含まれる場合、関節の振上角を増加させ、
(4)第4の角度範囲に含まれる場合、関節の振上角を減少させる
制御信号を、制御対象に出力する。
【0016】
また、本発明制御装置は、以下のように構成することができる。
【0017】
すなわち、第1の角度範囲と、第2の角度範囲と、は、角度の中心に対して点対称の関係にある。
【0018】
一方、第3の角度範囲と、第4の角度範囲と、は、当該角度の中心に対して点対称の関係にある。
【0019】
さらに、第1の角度範囲と、第3の角度範囲と、は、所定の離間角度だけ離間している。
【0020】
また、本発明の制御装置は、以下のように構成することができる。
【0021】
すなわち、出力部は、検知された接触位置が所定の範囲の速度で棒状体の中心軸周りに移動した場合、関節の回転角を、当該移動の方向に沿って変化させる制御信号を、制御対象に出力する。
【0022】
本発明の第2の観点に係るロボットは、上記の制御対象ならびに制御装置を一体に構成する。
【0023】
また、本発明のロボットにおいて、制御対象は、胴体、上腕、前腕を有し、基体は、当該胴体であり、棒状体は当該上腕であるように構成することができる。
【0024】
また、本発明のロボットにおいて、制御対象は、胴体、上腕、前腕を有し、基体は、当該上腕であり、棒状体は当該前腕であるように構成することができる。
【0025】
本発明の第3の観点に係る制御方法は、基体と、基体に対する回転ならびに屈曲が可能な関節を介して一端が接続された棒状体と、関節の屈曲角を変化させることが可能なアクチュエータと、関節の回転角を検知する回転角センサと、当該棒状体の周囲表面の接触位置を検知する接触位置センサと、を備える制御対象を制御する制御方法であって、回転角取得部、接触角取得部、和計算部、出力部を有する制御装置が実行し、以下のように構成する。
【0026】
すなわち、回転角取得工程では、回転角取得部が、回転角センサから出力される回転角を取得する。
【0027】
一方、接触角取得工程では、接触角取得部が、接触位置センサから出力される接触位置から、当該棒状体の長手方向の中心軸周りに垂らした垂線の方向ベクトルと、当該棒状体の周囲表面の所定位置から当該中心軸に垂らした垂線の方向ベクトルと、がなす接触角を取得する。
【0028】
さらに、和計算工程では、和計算部が、取得された回転角と、取得された接触角と、の和を計算する。
【0029】
そして、出力工程では、出力部が、
(1)計算された和の値が、第1の角度範囲に含まれる場合、関節の屈曲角を増加させ、
(2)計算された和の値が、第2の角度範囲に含まれる場合、関節の屈曲角を減少させる
制御信号を、制御対象に出力する。
【0030】
本発明の第4の観点に係るプログラムは、上記の制御対象を制御するコンピュータを、上記の制御装置の各部として機能させ、上記の制御方法の各工程を実行させるように構成する。
【0031】
また、本発明のプログラムは、コンパクトディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、ディジタルビデオディスク、磁気テープ、半導体メモリ等のコンピュータ読取可能な情報記憶媒体に記録することができる。
【0032】
上記プログラムは、プログラムが実行されるコンピュータとは独立して、コンピュータ通信網を介して配布・販売することができる。また、上記情報記憶媒体は、コンピュータやディジタル信号プロセッサとは独立して配布・販売することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、複数の関節を有する制御対象の表面に対するユーザの操作によって制御対象の形状を適切に変化させるのに好適な制御装置、ロボット、制御方法、ならびに、当該入力装置をコンピュータにより制御するためのプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係る制御装置の概要構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る制御装置により制御される制御対象の概要を示す説明図である。
【図3】本実施形態に係る制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】上腕の制御における、角度範囲を表す説明図である。
【図5】前腕の制御における、角度範囲を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0036】
図1は、本実施形態に係る制御装置の概要構成を示す模式図である。以下、本図を参照して説明する。
【0037】
本図に示すように、制御装置101は、回転角取得部102、接触角取得部103、和計算部104、出力部105を有する。これら各部は、ロボットの腕等の制御対象の形状の変化を制御する。
【0038】
制御装置101は、制御対象と有線もしくは無線で接続され、各種の情報をやりとりする。
【0039】
図2は、本実施形態に係る制御装置により制御される制御対象の概要を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0040】
本図に示すように、制御対象201は、以下のような部材を有する。
(1)基体202。
(2)基体202に回転ならびに屈曲が可能な関節203を介して一端が接続された棒状体204。関節203においてさらに振上を可能とする場合もある。
(3)関節203の屈曲角を変化させることが可能なアクチュエータ(図示せず)。関節203の回転角や振上角を変化させることを可能とする場合もある。
(4)関節203の回転角を検知する回転角センサ(図示せず)。このほか、アクチュエータの動作等を監視するために、関節203の屈曲角や振上角を検知する屈曲角センサや振上角センサを検知する設けることもある。
(5)棒状体204の周囲表面の接触位置を検知する接触位置センサ205。
【0041】
制御対象201は、ロボットの一部をなすもので、基体202と、関節203と、棒状体204としては、以下のような組み合わせがありうる。
(a)ロボットの胴体が基体202、ロボットの肩関節が関節203、ロボットの上腕が棒状体204。すなわち、ロボットの肩ならびにその先を制御する場合である。
(b)ロボットの上腕が基体202、ロボットの肘関節が関節203、ロボットの前腕が棒状体204。すなわち、ロボットの肘ならびにその先を制御する場合である。
【0042】
以下、屈曲角p、回転角q、振上角rの関係について、上記(a)(b)の場合に合わせて説明する。以下では、腕を下に伸ばし、掌を胴体に向けた状態を基準姿勢とする。
【0043】
まず、上記(a)の場合を考える。肩関節においては、本実施形態に係るロボットは3自由度を有し、屈曲角p、回転角q、振上角rを変化させることが可能である。
【0044】
肩から左右に伸びるような回転軸周りに腕を回転させる角度が、振上角rに相当する。基準姿勢では、振上角rは0であり、基準姿勢から振上角rを正に増加させると、腕が前方に上がり、基準姿勢から振上角rを負に減少させると、腕が背面に動くことになる。
【0045】
ロボットが人間の体をほぼ忠実に模した場合には、振上角rは、0〜360度の任意の角度をとることができる。
【0046】
屈曲角pは、脇の下の角度に相当する。基準姿勢では、屈曲角pは0であり、基準姿勢から屈曲角pを増加していくと、腕は左右に広がることになる。
【0047】
ロボットが人間の体をほぼ忠実に模した場合には、屈曲角pは、0〜180度の任意の角度をとることができる。
【0048】
回転角qは、上腕を内転もしくは外転させる角度である。基準姿勢では、回転角qは0であり、基準姿勢において掌を背面に向ける方向に上腕を回転させる内転では、回転角qは増加し、基準姿勢において掌を正面に向ける方向に上腕を回転させる外転では、回転角qは減少する。
【0049】
ロボットが人間の体をほぼ忠実に模した場合には、回転角qは、−90度〜90度程度の角度をとることができる。
【0050】
以下では、上記(b)の場合を考える。肘関節においては、本実施形態に係るロボットは2自由度を有し、屈曲角p、回転角qを変化させることが可能である。
【0051】
屈曲角pは、上腕に対して肘関節で前腕を曲げる角度である。基準姿勢では、屈曲角pは0であり、肘を曲げると屈曲角pは増加していく。
【0052】
ロボットが人間の体をほぼ忠実に模した場合には、屈曲角pは、0度〜170度程度の角度をとることができる。
【0053】
回転角qは、前腕を内転もしくは外転させる角度である。基準姿勢では、基準姿勢において掌を背面に向ける方向に前腕を回転させる内転では、回転角qは増加し、基準姿勢において掌を正面に向ける方向に前腕を回転させる外転では、回転角qは減少する。
【0054】
ロボットが人間の体をほぼ忠実に模した場合には、回転角qは、−135度〜+135度程度の角度をとることができる。
【0055】
上記のように、人間の体を模した場合には、各角度に可動範囲を設けることとなるが、これらの可動範囲は、ロボットのハードウェア的な制約によって、適宜定めることとしても良い。
【0056】
上記のように、棒状体204の周囲表面、すなわち、棒状体204の長手方向に対する側面全周には、ユーザが触れた接触位置を検知する接触位置センサ205が配置されている。
【0057】
本実施形態では、接触位置を長手方向の中心軸211周りの角度によって表すために、接触角sという概念を導入する。
【0058】
接触角sとは、
(1)接触位置センサ205によって感知された接触位置221から中心軸211へ垂らした垂線222の方向ベクトル223と、
(2)棒状体204の周囲表面の所定の基準位置215から中心軸211へ垂らした垂線224の方向ベクトル225と、
がなす角度である。
【0059】
上記(a)(b)の両方の場合において、基準位置215は、腕が基準姿勢にあるときに、腕の背中側の表面に設定されており、腕の内転の方向を正の向きとする。すなわち、回転角qの正の向きと同じ回転方向が、接触角sの正の向きである。
【0060】
たとえば、腕が基準姿勢にあるときに、腕を真横外側から押された場合には、接触角sは約90度、ということになる。
【0061】
接触位置センサ205は、2次元的な広がりを持つシート状の形状をしており、棒状体204の表面に貼り付けられて、当該シートのいずれの場所がユーザに押圧されているかを感知する。したがって、接触位置センサ205の各位置と、「当該各位置から中心軸211へ垂らした垂線の方向ベクトルと、基準位置215から中心軸211へ垂らした垂線の方向ベクトルと、がなす角度」とを、あらかじめ実測等により対応付けておけば、感知された接触位置から接触角sを求めることができる。
【0062】
本実施形態では、接触位置から接触角sを求める処理は、後述する通り、制御装置101において行われる。
【0063】
本実施形態では、ロボット全体の姿勢情報を利用するのではなく、ロボットの局所的な姿勢情報として回転角qと接触角sとを採用し、これらに基づいて、ロボットの局所的な姿勢、屈曲角pや振上角rを簡易に制御する点に特徴の一つがある。
【0064】
また、制御装置101を複数用意し、ロボットの各関節203の角度を変化させるアクチュエータを駆動して、その屈曲や回転、振上の角度を変化させることで、ロボットの姿勢を変化させることができる。これらの制御装置101と制御対象201とが一体に構成されることで、自律型ロボットを構成することができる。
【0065】
この際に、各制御装置101において実行される制御処理は、ロボットを制御するコンピュータ上で所定のプログラムを動作させることにより、並列にもしくは逐次的に実行することが可能である。
【0066】
図3は、本実施形態に係る制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、本図ならびに図1を参照して説明する。本処理は、ロボットの各関節203について繰り返し実行される処理の一単位を表すものである。したがって、本処理が一旦終了したとしても、また本処理が開始されるように構成し、本処理の終了と開始の間に、適宜他の処理や他の関節203に対する処理を実行するのが一般的である。
【0067】
さて、本処理が開始されると、回転角取得部102は、測定対象201の回転角センサから出力される回転角qを取得する(ステップS301)。
【0068】
基準位置や回転方向の正負などが上記の設定に適合するように、回転角センサから取得された値が適宜変換されることによって、回転角qが取得される。
【0069】
ついで、接触角取得部103は、測定対象201の接触位置センサ205から、接触がされているか否か、ならびに、接触されていればその種類を判定する(ステップS302)。接触していなければ(ステップS302;No)、本処理を終了する。
【0070】
撫でるように接触されていれば(ステップS302;撫で)、その撫で方向に合わせて、棒状体204の回転角qを所定の角度だけ変化させる制御信号を出力して(ステップS303)、本処理を終了する。
【0071】
撫でるように接触とは、接触位置センサ205の表面を、接触位置が所定の速度範囲で移動したことを意味する。
【0072】
本実施形態においては、回転角qを変化させて中心軸211周りに棒状体204の向きを変化させるのは、中心軸211と捻れの関係にある方向に棒状体204の表面を撫でた場合に限られる。
【0073】
また、撫で方向と中心軸211との角度の相違に応じて、回転角qを変化させる量を調整しても良いし、撫で方向と中心軸211との角度が、所定の誤差範囲内で直角に近い場合のみ、回転角qを変化させ、それ以外の場合には、単に本処理を終了することとしても良い。
【0074】
一方、押圧するように接触されていれば(ステップS302;押圧)、接触位置センサ205から出力された接触位置から、接触角sを取得する(ステップS312)。
【0075】
押圧するように接触とは、接触位置センサ205の表面の法線方向に単に押圧する接触を意味する。すなわち、接触位置センサ205の表面の接触位置が変化したとしても、その速度が、上記の所定の速度範囲(あるいは、当該所定の速度よりも小さい閾値)未満である場合に、押圧されている、と判断されることになる。
【0076】
回転角取得部102ならびに接触角取得部103は、コンピュータが有するCPU(Central Processing Unit)が、外部のセンサとの通信を行うI/Oポート(Input/Outputポート)などを監視することによって実現される。
【0077】
また、接触位置と接触角sとの対応付けは、コンピュータが有するハードディスク等に記憶された表を参照したり、接触位置センサ205の出力に対して所定の演算を施すことによって得られる。
【0078】
さらに、和計算部104は、取得された回転角qと、取得された接触角sと、の和(q+s)を計算する(ステップS313)。本実施形態では、回転角qと接触角sの和(q+s)という局所的な情報に基づいてアクチュエータを制御して、ロボットの関節203の角度を変化させるのである。また、和の計算は、CPUが実行する。
【0079】
そして、出力部105は、計算された和(q+s)の値が、第1の角度範囲、第2の角度範囲、第3の角度範囲、第4の角度範囲のいずれに属するかを調べる(ステップS314)。
【0080】
第1の角度範囲に属する場合は(ステップS314;第1)、出力部105は、関節203の屈曲角pを所定の角度だけ増加させる制御信号を出力して(ステップS315)、本処理を終了する。
【0081】
第2の角度範囲に属する場合は(ステップS314;第2)、関節203の屈曲角pを所定の角度だけ減少させる制御信号を出力して(ステップS316)、本処理を終了する。
【0082】
第3の角度範囲に属する場合は(ステップS314;第3)、関節203の振上角rを所定の角度だけ増加させる制御信号を出力して(ステップS317)、本処理を終了する。
【0083】
第4の角度範囲に属する場合は(ステップS314;第4)、関節203の振上角rを所定の角度だけ減少させる制御信号を出力して(ステップS318)、本処理を終了する。
【0084】
第1〜第4のいずれの角度範囲に属しない場合は(ステップS314;その他)、本処理を終了する。
【0085】
図4は、上記(a)の上腕の制御における、角度範囲を表す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0086】
本図右方は、(q+s) = 0度を、本図上方は、(q+s) = 90度を、本図左方は、(q+s) = 180度を、本図下方は、(q+s) = 270度を、それぞれ表す。
【0087】
さて、ロボットが基本姿勢をとっている場合には、回転角qは0であるが、ロボットが姿勢を変化させると、回転角qも変化する。
【0088】
ロボットが基本姿勢をとっている場合に、(q+s)が270度付近である、ということは、ロボットの上腕を胴体との間から押し広げたことを意味する。したがって、屈曲角pを増加させて、ロボットの上腕を側方に上げることになる。このため、(q+s)の270度付近には、第1の角度範囲401が配置されている。
【0089】
このようにして上腕が側方に広げられた場合に、(q+s)が90度付近である、ということは、「気を付け」の姿勢に戻すように上腕を側方から押したことを意味する。したがって、屈曲角pを減少させて、ロボットの上腕を側方から下げることになる。このため、(q+s)の90度付近には、第2の角度範囲402が配置されている。
【0090】
本図に示すように、第1の角度範囲401と、第2の角度範囲402と、は、中心411に対して点対称の関係にある。
【0091】
ロボットが基本姿勢をとっている場合に、(q+s)が0度付近である、ということは、ロボットの上腕を背中側から押したことを意味する。したがって、振上角rを増加させてロボットの上腕を振り上げることになる。したがって、(q+s)の0度付近には、第3の角度範囲403が配置されている。
【0092】
一方、ロボットが基本姿勢をとっている場合に、(q+s)が180度付近である、ということは、ロボットの上腕を腹側(正面側)から押したことを意味する。したがって、振上角rを減少させてロボットの上腕を振り下げることになる。したがって、(q+s)の180度付近には、第4の角度範囲404が配置されている。
【0093】
本実施形態では、第3の角度範囲403と、第4の角度範囲404と、は、中心411に対して点対称の関係にある。
【0094】
さらに、第1の角度範囲401、第2の角度範囲402、第3の角度範囲403、第4の角度範囲404の隣り合うもの同士は、所定の離間角度405だけ離間している。
【0095】
この離間角度405は、不感区間を設けるもので、微小な接触位置の差によってロボットの動作が劇的に変化してしまうことを防止するものである。
【0096】
離間角度405は、本図に示すように、10度程度で十分であるが、上腕の直径サイズやユーザの能力等に応じて適宜変更が可能である。
【0097】
図5は、上記(b)の前腕の制御における、角度範囲を表す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
【0098】
本図に示す方向は図4と同様であるが、本図においては、第1の角度範囲401ならびに第2の角度範囲402のみが配置されており、第3の角度範囲403ならびに第4の角度範囲404は用意されていない。これは、前腕の制御においては、肘関節に振上角rの変化が用意されていないからである。
【0099】
さて、基本姿勢から上腕を操作して、上腕(ならびに前腕)が側方に単純に広げられている場合を考える。このとき、掌は地面の方向を向くことになる。したがって、前腕の(q+s)=90度付近を押圧されると、肘を折り曲げることになり、屈曲角pが増加することになるから、この範囲に、第1の角度範囲401が配置される。
【0100】
第2の角度範囲401は、これとは中心411に対して点対称の関係にあるように配置するのが一般的である。
【0101】
なお、屈曲角p、回転角q、振上角rについて、いずれの方向を基準方向とし、いずれの方向を正の回転とするか、に応じて、これらの角度範囲は適宜変更が可能である。
【0102】
このように、第1乃至第4の角度範囲401、402、403、404ならびに離間角度405を、各制御対象201に設定された基準位置や基準方向に応じて、適宜設定することで、ロボットの上腕や前腕に限らず、その他の部材、たとえば、頭部や脚部等においても、ユーザが部材表面を押圧した場合に、ユーザに直観的な方向に部材の向きが変化するような制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、複数の関節を有する制御対象の表面に対するユーザの操作によって制御対象の形状を適切に変化させるのに好適な制御装置、ロボット、制御方法、ならびに、当該入力装置をコンピュータにより制御するためのプログラムを提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
101 制御装置
102 回転角取得部
103 接触角取得部
104 和計算部
105 出力部
201 制御対象
202 基体
203 関節
204 棒状体
205 接触位置センサ
211 中心軸
215 基準位置
221 接触位置
222 垂線
223 方向ベクトル
224 垂線
225 方向ベクトル
401 第1の角度範囲
402 第2の角度範囲
403 第3の角度範囲
404 第4の角度範囲
405 離間角度
411 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体に対する回転ならびに屈曲が可能な関節を介して一端が接続された棒状体と、前記関節の屈曲角を変化させることが可能なアクチュエータと、前記関節の回転角を検知する回転角センサと、当該棒状体の周囲表面の接触位置を検知する接触位置センサと、を備える制御対象を制御する制御装置であって、
前記回転角センサから出力される回転角を取得する回転角取得部、
前記接触位置センサから出力される接触位置から、当該棒状体の長手方向の中心軸周りに垂らした垂線の方向ベクトルと、当該棒状体の周囲表面の所定位置から当該中心軸に垂らした垂線の方向ベクトルと、がなす接触角を取得する接触角取得部、
前記取得された回転角と、前記取得された接触角と、の和を計算する和計算部、
前記計算された和の値が、
(1)第1の角度範囲に含まれる場合、前記関節の屈曲角を増加させ、
(2)第2の角度範囲に含まれる場合、前記関節の屈曲角を減少させる
制御信号を、前記制御対象に出力する出力部
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記関節は前記基体に対して前記棒状体の振上が可能であり、
前記アクチュエータは、前記関節の振上角を変化させることが可能であり、
前記出力部は、前記計算された和の値が、
(3)第3の角度範囲に含まれる場合、前記関節の振上角を増加させ、
(4)第4の角度範囲に含まれる場合、前記関節の振上角を減少させる
制御信号を、前記制御対象に出力する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記第1の角度範囲と、前記第2の角度範囲と、は、角度の中心に対して点対称の関係にあり、
前記第3の角度範囲と、前記第4の角度範囲と、は、当該角度の中心に対して点対称の関係にあり、
前記第1の角度範囲と、前記第3の角度範囲と、は、所定の離間角度だけ離間している
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記出力部は、前記検知された接触位置が所定の範囲の速度で前記棒状体の中心軸周りに移動した場合、
前記関節の回転角を、当該移動の方向に沿って変化させる
制御信号を、前記制御対象に出力する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御対象ならびに制御装置を一体に構成することを特徴とするロボット。
【請求項6】
請求項5に記載のロボットであって、
前記制御対象は、胴体、上腕、前腕を有し、前記基体は、当該胴体であり、前記棒状体は当該上腕である
ことを特徴とするロボット。
【請求項7】
請求項5に記載のロボットであって、
前記制御対象は、胴体、上腕、前腕を有し、前記基体は、当該上腕であり、前記棒状体は当該前腕である
ことを特徴とするロボット。
【請求項8】
基体と、前記基体に対する回転ならびに屈曲が可能な関節を介して一端が接続された棒状体と、前記関節の屈曲角を変化させることが可能なアクチュエータと、前記関節の回転角を検知する回転角センサと、当該棒状体の周囲表面の接触位置を検知する接触位置センサと、を備える制御対象を制御する制御装置が実行する制御方法であって、当該制御装置は、回転角取得部、接触角取得部、和計算部、出力部を有し、
前記回転角取得部が、前記回転角センサから出力される回転角を取得する回転角取得工程、
前記接触角取得部が、前記接触位置センサから出力される接触位置から、当該棒状体の長手方向の中心軸周りに垂らした垂線の方向ベクトルと、当該棒状体の周囲表面の所定位置から当該中心軸に垂らした垂線の方向ベクトルと、がなす接触角を取得する接触角取得工程、
前記和計算部が、前記取得された回転角と、前記取得された接触角と、の和を計算する和計算工程、
前記出力部が、
(1)前記計算された和の値が、第1の角度範囲に含まれる場合、前記関節の屈曲角を増加させ、
(2)前記計算された和の値が、第2の角度範囲に含まれる場合、前記関節の屈曲角を減少させる
制御信号を、前記制御対象に出力する出力工程
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項9】
基体と、前記基体に対する回転ならびに屈曲が可能な関節を介して一端が接続された棒状体と、前記関節の屈曲角を変化させることが可能なアクチュエータと、前記関節の回転角を検知する回転角センサと、当該棒状体の周囲表面の接触位置を検知する接触位置センサと、を備える制御対象を制御するコンピュータを、
前記回転角センサから出力される回転角を取得する回転角取得部、
前記接触位置センサから出力される接触位置から、当該棒状体の長手方向の中心軸周りに垂らした垂線の方向ベクトルと、当該棒状体の周囲表面の所定位置から当該中心軸に垂らした垂線の方向ベクトルと、がなす接触角を取得する接触角取得部、
前記取得された回転角と、前記取得された接触角と、の和を計算する和計算部、
前記計算された和の値が、
(1)第1の角度範囲に含まれる場合、前記関節の屈曲角を増加させ、
(2)第2の角度範囲に含まれる場合、前記関節の屈曲角を減少させる
制御信号を、前記制御対象に出力する出力部
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81541(P2012−81541A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228377(P2010−228377)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】