説明

制御装置、及び当該制御装置を備えたX線撮影装置

【課題】併設する口内法X線撮影装置と他のX線撮影装置のうち、選択したX線撮影装置に対するX線照射操作を、共通する操作スイッチで行うことのできる制御装置を提供する。
【解決手段】口内法X線撮影装置1、及びパノラマX線撮影装置2の制御を行う制御装置であって、口内法X線撮影装置1の情報を表示する表示部31、口内法X線撮影装置1におけるX線撮影の設定条件を設定する口内法撮影用表示操作部30a、口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2を切り替えるパノラマ選択ボタン37、X線照射を操作するエミッションボタン39、及びコントローラ30を備え、エミッションボタン39の操作によって、パノラマ選択ボタン37により口内法X線撮影装置1に切り替えられた状態において、口内法X線撮影装置1のX線照射操作を行い、パノラマX線撮影装置2に切り替えられた状態において、パノラマX線撮影装置2のX線照射操作を行う構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、歯科診療において口腔内を撮影するための口内法X線撮影装置等のX線撮影装置を制御する制御装置、及び当該制御装置を備えたX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科診療において、口腔内をX線で撮影した画像を確認し、疾患の程度や、治療の結果を判断することが重要である。例えば、そのためのX線撮影装置として、パノラマX線撮影装置、X線CT撮影装置、セファロX線撮影装置、断層撮影装置、あるいはデンタルX線撮影装置といわれる口内法X線撮影装置等がある。
なお、上述の診療は、診断、診察及び治療を含む概念である。
【0003】
これらのX線撮影装置のうち口内法X線撮影装置は、口腔内にデンタルX線フィルム等のX線検出器を挿入し、X線発生装置を患部に対して位置調整する。そして、X線発生装置からX線を照射し、口腔内に挿入したX線検出器で撮影する。
【0004】
これらのX線撮影装置は、撮影範囲や撮影方法が異なり、診療に応じたX線撮影装置を用いるため、特許文献1に記載されているように、口内法X線撮影装置と、その他のX線撮影装置を並設する医療機関が増えている。
【0005】
しかし、X線照射量を厳しく管理する必要のあるX線撮影装置には、安全に使用するための様々な規制があり、それらの規制を満足するための制御装置や設備が必要であり、例えば、X線撮影装置は照射するX線の漏出を防止するX線室内に配置し、X線撮影装置を制御する制御装置を室外に配置する必要があった。
【0006】
特許文献1では、X線室内に配置された口内法X線撮影装置及びその他のX線撮影装置のそれぞれを操作するフートペダル式の操作スイッチ等の制御装置をそれぞれ備えている。
【0007】
これにより、確実に、X線室内に配置したX線撮影装置で撮影することができるとされている。しかし、上述したように、口内法X線撮影装置及びその他のX線撮影装置は、同じX線室内に配置しているにもかかわらず、それぞれを操作する制御装置を別々に備えており、X線室の周辺が煩雑になるとともに、例えば、2つある制御装置を取り間違え、誤操作する惧れもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3023700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、併設する口内法X線撮影装置とその他のX線撮影装置とのうち、選択したX線撮影装置に対するX線照射操作を、共通する操作スイッチで確実に行うことのできる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、複数の歯科用のX線撮影装置の制御を行う制御装置であって、制御対象となる前記X線撮影装置を、口内法X線撮影装置、及び口内法X線撮影装置と種類の異なる歯科用異種X線撮影装置とし、前記X線撮影装置に関する情報を表示する情報表示部、前記X線撮影装置におけるX線撮影に関する設定条件を設定操作する設定操作部、機能させる前記X線撮影装置の選択を切り替えるX線撮影切替部、前記X線撮影装置のX線照射を操作する照射スイッチ、及び制御装置本体を備え、前記X線撮影切替部により前記口内法X線撮影装置に切り替えられた状態における前記口内法X線撮影装置のX線照射操作と、前記歯科用異種X線撮影装置に切り替えられた状態における前記歯科用異種X線撮影装置のX線照射操作を前記照射スイッチを共通に用いて行う構成としたことを特徴とする。
【0011】
上述の制御対象となる口内法X線撮影装置、及び歯科用異種X線撮影装置は、例えば、口内法X線撮影装置とパノラマX線撮影装置等の2種類のX線撮影装置を制御対象とする場合のみならず、例えば、口内法X線撮影装置とパノラマX線撮影装置に加えてX線CT撮影装置等の3種類以上のX線撮影装置を制御対象とすることができる。
【0012】
また、上述の情報表示部、あるいは設定操作部は、口内法X線撮影装置、及び歯科用異種X線撮影装置のうちいずれか一方のX線撮影装置についての情報表示部や設定操作部、あるいは全てのX線撮影装置に対応するが、X線撮影切替部で選択されたX線撮影装置についての情報表示部や設定操作部とすることができる。
【0013】
この発明により、併設する口内法X線撮影装置とその他のX線撮影装置とのうち、選択したX線撮影装置に対するX線照射操作を、共通する操作スイッチで確実に行うことができる。
【0014】
詳しくは、制御対象を口内法X線撮影装置、及び口内法X線撮影装置と種類の異なる歯科用異種X線撮影装置とするとともに、情報表示部でX線撮影装置に関する情報を表示し、設定操作部で前記X線撮影装置におけるX線撮影に関する設定条件を設定操作することができる。
【0015】
また、X線撮影切替部で機能させる前記X線撮影装置の選択を切り替えるとともに、前記照射スイッチのスイッチ操作によって、前記X線撮影切替部により切り替えられて機能するX線撮影装置のX線照射操作を、前記照射スイッチを共通に用いて行うことができる。つまり、照射スイッチは、口内法X線撮影装置と歯科用異種X線撮影装置の両方の照射スイッチとして機能し、X線撮影切替部の切り替えによって、所望のX線撮影装置のX線照射操作を択一的に行うことができる。したがって、照射スイッチの数を制御対象であるX線撮影装置の数よりも少なく構成することができる。よって、部品点数を低減でき、コスト増加を抑制することができる。
【0016】
この発明の態様として、前記歯科用異種X線撮影装置を、パノラマX線撮影装置、X線CT撮影装置、セファロX線撮影装置、断層撮影装置、及びこれらの機能を組み合わせた複合X線撮影装置のいずれかとすることができる。
【0017】
この発明により、パノラマX線撮影装置、X線CT撮影装置、セファロX線撮影装置、断層撮影装置、及びこれらの機能を組み合わせた複合X線撮影装置と、口内法X線撮影装置とを併設させ、X線撮影切替部の切り替えによって、例えば診療内容に応じて所望のX線撮影装置のX線照射操作を択一的に行うことができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記照射スイッチを、デッドマンスイッチで構成することができる。
上記デッドマンスイッチは、例えば、押下式のボタンスイッチであり、ボタンを押下した状態においてONとなり、離すとOFFになるスイッチである。
この発明により、不用意にX線が照射されず、確実にX線照射を制御することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記情報表示部、前記設定操作部、及び前記X線撮影切替部をひとつの制御装置ハウジングに収容することができる。
この発明により、複数の制御装置ハウジングに、前記情報表示部、前記設定操作部、及び前記X線撮影切替部が配置された制御装置と比べ、操作性が向上する。
【0020】
またこの発明の態様として、前記情報表示部を、前記X線撮影切替部によって前記口内法X線撮影装置に切り替えられた状態において、前記口内法X線撮影装置に関する情報を表示し、前記歯科用異種X線撮影装置に切り替えられた状態において、前記歯科用異種X線撮影装置に関する情報を表示する構成とすることができる。
【0021】
上述の口内法X線撮影装置に関する情報や、歯科用異種X線撮影装置に関する情報は、各X線撮影装置において設定する管電圧や管電流、X線照射後の照射時間やX線照射量であるグレイ値、あるいは各X線撮影装置における状態情報とすることができる。
【0022】
この発明により、X線撮影切替部で選択したX線撮影装置に関する情報を直接、情報表示部で表示させて確認することができる。したがって、より、安全且つ確実に、選択したX線撮影装置で患部をX線撮影することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記情報表示部に、前記口内法X線撮影装置または前記歯科用異種X線撮影装置で照射するX線または照射したX線の照射線量を表示することができる。
この発明により、X線撮影の間、前または後に、患者のX線被曝線量を確認することができる。したがって、適切なX線の照射量を確認しつつ、確認した上で、または事後に確認でき、X線撮影装置で安心してX線撮影することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記X線撮影切替部の切り替え操作により、前記口内法X線撮影装置と前記歯科用異種X線撮影装置との選択を切り替えるとともに、前記X線撮影切替部の点灯と消灯と切り替えて、選択されたX線撮影装置を表示することができる。
【0025】
この発明により、X線撮影切替部の点灯状況を確認することで、所望するX線撮影装置を確実に選択することができる。例えば、X線撮影切替部が点灯している場合は歯科用異種X線撮影装置を選択し、消灯している場合は口内法X線撮影装置を選択していると設定し、歯科用異種X線撮影装置を選択する場合において、X線撮影切替部が点灯していれば既に歯科用異種X線撮影装置が選択されている。
【0026】
逆に、X線撮影切替部が消灯していれば、X線撮影切替部を操作して点灯させることで歯科用異種X線撮影装置を選択することができる。このように、X線撮影装置を選択操作するX線撮影切替部自体が点灯と消灯とを切替えるため、間違って他方のX線撮影装置を選択することを防止できる。
【0027】
なお、X線撮影切替部の点灯によって選択されるX線撮影装置をイメージする図柄(アイコン)をX線撮影切替部に表示し、選択されたことによる点灯に伴ってその図柄(アイコン)が明示できれば、誤操作をより確実に防止することができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記口内法X線撮影装置の電気回路、及び前記歯科用異種X線撮影装置の電気回路を絶縁することができる。
この発明により、ショート等の電気回路的不具合により、選択されていないX線撮影装置が誤作動することを防止できる。詳しくは、X線撮影切替部で選択することによって機能するX線撮影装置を切替えているが、口内法X線撮影装置とその他のX線撮影装置とのX線照射操作において照射スイッチを共用している。しかし、制御装置におけるショート等の電気回路的不具合が生じた場合においても、口内法X線撮影の電気回路、及び前記歯科用異種X線撮影装置の電気回路を絶縁しているため、選択されたX線撮影装置に対するX線照射操作によって、他方のX線撮影装置が意図せず、X線照射することを確実に防止できる。
【0029】
またこの発明は、上述の制御装置を備えたX線撮影装置であることを特徴とする。
この発明により、口内法X線撮影装置とその他のX線撮影装置とを併設する場合であっても、共通する操作スイッチで、選択したX線撮影装置に対するX線照射操作を確実に行うことができ、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0030】
この発明により、併設する口内法X線撮影装置とその他のX線撮影装置とのうち、選択したX線撮影装置に対するX線照射操作を、共通する操作スイッチで確実に行う制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】口内法X線撮影装置とパノラマX線撮影装置とを併設した場合の概略配置図。
【図2】口内法X線撮影装置の斜視図。
【図3】パノラマX線撮影装置の斜視図。
【図4】コントローラについての説明図。
【図5】別の表示態様のコントローラについての説明図。
【図6】口内法X線撮影装置とパノラマX線撮影装置との回路構成図。
【図7】口内法/パノラマ切替回路による回路の切替構成例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1は口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2とを併設した場合の概略配置図を示し、図2は口内法X線撮影装置1の斜視図を示し、図3はパノラマX線撮影装置2の斜視図を示している。
【0033】
また、図4,5は口内法X線撮影装置1、パノラマX線撮影装置2に備えるコントローラ30についての説明図を示し、図6は口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2との回路構成図を示している。なお、図5は、図4とは異なる表示態様のコントローラ30について図示している。
【0034】
図1に示すように、口内法X線撮影装置1及び口内法X線撮影装置1と種類の異なる歯科用異種X線撮影装置に対応するパノラマX線撮影装置2は、X線室(防X線室)100内に配置される。
なお、本願実施例では、口内法X線撮影装置1と歯科用異種X線撮影装置は撮影方法の種類が異なる。また、X線室100内は、患者等の出入りを許容する開閉扉101を有し、開閉扉101が閉じられた状態では、照射するX線が外部に漏出しない構造である。
【0035】
デンタルX線撮影装置といわれる口内法X線撮影装置1は、図2に示すように、例えば、床面に載置される基台12と、基台12の上面12aに配置され、被写体となる患者が着座するシート13と、基台12の上面12aに植設され、支柱として機能するスタンドポール14と、スタンドポール14の上端に回動可能に接続されたアーム15と、アーム15の先端において後述するX線ヘッド11を吊り下げ支持するヘッドサポート16と、ヘッドサポート16に対して回動可能に接続されたX線ヘッド11と、スタンドポール14のシート13側に固定されたバックレスト17と、スタンドポール14におけるシート13と反対側に固定されたインバータボックス18とで構成している。
【0036】
シート13は、平面視円形の座面クッション部13aを、基台12に対して高さ調整可能に構成している。スタンドポール14は四角柱状であり、シート13の座面クッション部13aに着座した普通人の頭部より高くなる高さで形成している。したがって、スタンドポール14のシート13側に固定されたバックレスト17は、シート13に着座した患者の背もたれとして機能する。なお、シート13とバックレスト17は患者の腰や背中を支持する被写体支持手段の構成例であるが、他に、背もたれと座部を一体にした椅子を用いてもよい。
【0037】
アーム15は、スタンドポール14の上端部14aに対して、鉛直方向の回動軸を中心として回動する水平方向の第1アーム15aと、第1アーム15aの先端部15aaに対して、鉛直方向の回動軸を中心として回動する斜め下向きの第2アーム15bとで構成している。
【0038】
ヘッドサポート16は、第2アーム15bの先端部15baに対して、鉛直方向の回動軸を中心として回動する下向き逆L字型に形成し、下端部16aでX線発生器からなるX線ヘッド11の側面11bに対して水平方向の回動軸16axを中心として回転支持する構成であり、X線ヘッド11が回動軸16axを中心に回動し、X線ヘッド11の前面11aに装着される照射筒19が上下方向に揺動可能である。なお、アーム15とヘッドサポート16は、X線発生装置であるX線ヘッド11を支持するX線発生装置支持手段の構成例である。
【0039】
なお、スタンドポール14において、シート13と反対側に固定されたインバータボックス18の内部には、X線ヘッド11から照射するX線を照射制御する主制御部1a(図6)を内蔵している。
【0040】
このように構成された口内法X線撮影装置1では、X線ヘッド11からX線を照射し、患者の口腔内にセットしたCCDセンサやMOSセンサ、CMOSセンサ、その他の固体撮像素子やイメージングプレートを用いたX線撮像手段やX線フィルム等のX線検出器(図示省略)で患部のX線写真を撮影することができる。
【0041】
また、その撮影のため、X線ヘッド11は、アーム15及びヘッドサポート16により、シート13に着座した患者の患部に対して、水平方向に移動可能であるとともに向きを調整することができる。
【0042】
また、ヘッドサポート16は、第2アーム15bの先端部15baに対して、鉛直方向の回動軸を中心として回動するとともに、ヘッドサポート16の下端部16aでX線ヘッド11の側面11bに対して水平方向の回動軸16axを中心として上下方向に回転支持することができる。したがって、アーム15やヘッドサポート16によって、X線ヘッド11の位置や向きを調整することができる。
【0043】
なお、上述の口内法X線撮影装置1では、スタンドポール14を基台12に立設し、基台12に患者が着座するシート13を備えたが、スタンドポール14が直接床や壁に固定されるような形態であってもよい。また、X線ヘッド11を天井や壁からアーム機構を介して移動自在に配置したり、スタンドポール14を立設した基台12の下にキャスターを付けて移動自在とする構成等の従来の口内法X線撮影装置の構成のいずれも採用することができる。
【0044】
パノラマX線撮影装置2は、図3に示すように、床面に載置されるベース21と、ベース21の上面21aに植設された支柱22と、支柱22に対して上下方向に移動可能に設けられた側面視略逆L型の昇降本体24と、昇降本体24に固定され、昇降本体24とともに上下に移動する患者フレーム23と、該昇降本体24の上部24aの底面から旋回可能に吊り下げ支持される略逆U型の旋回アーム25とで構成している。
【0045】
患者フレーム23には、下方に向かって突出し、患者が握持する2本のハンドル23aを底面側に備え、上面側には患者が顎を載せるチンレスト23bを備えている。なお、患者フレーム23、ハンドル23a、チンレスト23bは、被写体となる患者、具体的には患者の頭部を支持する被写体支持手段として機能する。
【0046】
昇降本体24は、図示しない駆動手段によって、撮影する患者の背丈に合わせ、支柱22に対して上下方向に移動可能に構成している。
【0047】
旋回アーム25は、昇降本体24に吊り下げ支持され、昇降本体24の上部24aの底面に対して、鉛直方向の回転軸を中心として回転可能に構成している。なお、旋回アーム25は、一方にX線発生器26を装備したX線発生部26Aが垂下し、他方にX線フィルム、CCDセンサやMOSセンサ、CMOSセンサ、その他の固体撮像素子やイメージングプレートを電気的X線検出器等のX線検出器の装着を許容するカセッテホルダー27を備えたX線検出部27Aが垂下した略逆U型の形状となっている。
【0048】
X線検出器を電気的X線検出器で構成する場合は、必ずしもカセッテホルダー27にX線検出器が着脱自在になっている構成でなくとも、電気的X線検出器をX線検出部に固設してよい。
【0049】
X線発生部26AとX線検出部27Aは、患者の頭部を間にして対向できるように配置されている。
なお、旋回アーム25の全体の形状は略逆U型に限らず、逆U型や逆C型等の適宜の形状で形成することができる。
【0050】
このように構成したパノラマX線撮影装置2は、略逆U型の旋回アーム25の間に患者を立たせ、ハンドル23aを握らせるとともに、顎をチンレスト23bに載せた状態の患者の頭部の周りを旋回アーム25が回転する。
【0051】
そして、パノラマX線撮影装置2は、あらかじめ設定した角度範囲に基づく撮影範囲において、X線発生器26からカセッテホルダー27に向かってX線を照射し、患者の頭部における患部をX線撮影する。
【0052】
なお、このパノラマX線撮影装置2における撮影条件等の各種設定については、図1に示すように、X線検出部27AのX線発生部26Aに対向する側の背後に設けた操作パネル28によって設定操作を行う。
【0053】
操作パネル28の詳細については図示省略するが、X線発生器26からX線照射する際の管電圧、X線検出器の選択、患者が大人か子供かの設定、撮影対象部位の種類、旋回アーム25が回転する平面周方向における撮影範囲等を設定操作する設定操作部を備えている。
【0054】
X線室100内の内側壁103に、パノラマX線撮影装置2の本体から独立した操作パネル28aを設け、設定操作部の一部または全部を操作パネル28aに配備してもよい。
【0055】
続いて、X線室100の外側壁102に配置したコントローラ30について、図4とともに説明する。
制御装置に対応するコントローラ30の本体は、ひとつのハウジングすなわち制御装置ハウジング30hにおいて上から順に、表示部31、表示部31の右隣の微調整ボタン32、検出器種別選択ボタン33、管電圧選択ボタン34、対象患者選択ボタン35、撮影種別選択ボタン36、パノラマ選択ボタン37、状態表示部38及びエミッションボタン39を備えている。エミッションボタン39は、X線照射を指令操作するためのエミッションスイッチ、つまり照射スイッチである。
【0056】
情報表示部に対応する表示部31は、管電圧選択ボタン34で選択された管電圧を表示する管電圧表示部31aと、数値表示部31bと、単位表示部31cとを備えている。
管電圧選択ボタン34は、管電圧60kVと70kVの選択切換操作を受け付ける構成であり、管電圧選択ボタン34で選択された管電圧を表示する管電圧表示部31aは、図4においては“60kV”を表示しているが、管電圧選択ボタン34で“70kV”が選択されると、図5に示すように、“60kV”表示の右隣に“70kV”表示が出現し、“60kV”表示が消える構成である。なお、電流値も可変として、電圧値と同様に表示できるようにしてもよく、あるいは電圧値を固定とし、電流値のみを可変としてもよい。
【0057】
数値表示部31bは、X線照射時間やX線の照射線量であるグレイ値等を数値で表示することができる。
単位表示部31cは、数値表示部31bに表示する数値の単位を表示する。図4においては“sec”を表示しているが、これは数値表示部31bに表示する数値が照射時間を表していることを示している。図示の例では秒数を“sec”で表示している。
これに対し、数値表示部31bがグレイ値を表示する場合は、図5に示すように、“sec”表示の上に“Gy”表示が出現し、“sec”表示が消える構成である。図示の例ではグレイ値、具体的にはミリグレイの値を“Gy”で表示している。
【0058】
なお、操作者に対してより正確に単位を認識させるために、“mGy”と表示してもよい。また、ミリグレイの値は、例えば1〜280の間で適宜に設定することができる。さらには、あらかじめ設定したデフォルトの値に対して調整可能としてもよいし、設定したX線照射時間をに応じた照射線量をデフォルトとし、さらに調整可能に構成してもよい。
【0059】
なお、表示部31に、X線照射前またはX線照射後に、X線の照射線量であるグレイ値や照射時間を表示することにより、X線照射前またはX線撮影後のいずれかに、患者のX線被曝線量を確認することができ、安心してX線撮影することができる。
【0060】
もちろん、X線の照射線量はX線撮影中に表示してもよく、X線撮影前、X線撮影中、X線撮影後の少なくともいずれかのタイミングで表示することができ、患者のX線被曝線量を確認でき、安心してX線撮影することができる。
【0061】
設定操作部に対応する微調整ボタン32は、Upボタン32aとDownボタン32bで構成され、数値表示部31bに表示された数値を見ながら、設定数値を微調整するための操作部である。例えば、管電圧選択ボタン34、対象患者選択ボタン35及び撮影種別選択ボタン36によって設定される撮影条件に応じてプリセットされた照射時間が数値表示部31bに表示されるが、数値表示部31bに表示された設定照射時間を、Upボタン32aを押下して長くしたり、Downボタン32bを押下して短くすることができる。
【0062】
設定操作部に対応する検出器種別選択ボタン33は、口内法X線撮影装置1において、患者の口腔内にセットし、X線写真を撮影するX線検出器の種別を選択するボタンであり、押下されると、ボタンに示したモニタのアイコン表示またはボタン全体が点灯され、X線検出器としてCCDセンサやMOSセンサ、CMOSセンサ、その他の固体撮像素子またはイメージングプレートを用いたX線撮像手段が選択されたことを表示する。これに対し、検出器種別選択ボタン33のアイコン表示またはボタン全体が消灯している場合は、X線検出器としてX線フィルムが選択されたことを表している。
【0063】
さらに細かく表示するために、選択したX線検出器にしたがって“CCD”、“MOS”、“フィルム”などの字がボタンに浮き出るように表示してもよいし、これらの別に個別のアイコンを切替表示するようにしてもよい。
【0064】
設定操作部に対応する管電圧選択ボタン34は、あらかじめ設定された2種類の管電圧を選択するボタンであり、本実施例では、図4に示すように、“60kV”と“70kV”とが選択可能に構成している。
【0065】
設定操作部に対応する対象患者選択ボタン35は、X線の照射時間に影響するため、撮影対象である患者が大人か子供かを選択するボタンである。
設定操作部に対応する撮影種別選択ボタン36は、7つの選択ボタンで構成している。詳しくは、上段と中段には幅方向にそれぞれ3つのボタンが配置され、下段は幅方向中央に一つのボタンを備え、7つのボタンの配列として全体が逆凸状の配置になっている。図示の例では、撮影種別は撮影対象部位の別によって区別されている。
【0066】
なお、上段は撮影対象を上顎として設定するボタンが配置され、中段は撮影対象を下顎として設定するボタンが配置されている。
また、幅方向右側の列は臼歯に対応し、幅方向中央の列は犬歯に対応し、幅方向左側の列は前歯に対応している。そして、下段のボタンは、咬合法と呼ばれるX線撮影用のボタンである。
【0067】
なお、咬合法は“オクルーザル”と呼ばれることもあり、咬合法においては、X線検出器を被撮影者に咬ませ、なるべく歯の長手軸の軸方向と平行な方向又は咬合面と直交する方向から照射したX線を検出する。
【0068】
各ボタンに記してある“+55°”などの数字は、X線の照射角度を定める際に、なるべく照射X線を対象歯牙に垂直に入射させるための目安となる、咬合平面に対する照射X線の傾斜角度を示す。
【0069】
被撮影者が、撮影対象歯牙における咬合平面が床面に平行となる姿勢をとっているとして、撮影者は、歯列弓の湾曲に対して法線方向からX線が入射するようにX線ヘッド11の水平方向の回動角度すなわち咬合平面に垂直な垂直軸の軸周りの回動角度を調整し、X線ヘッド11の上下方向の揺動角度すなわち照射筒19の上下方向の揺動角度については、各ボタンに記した角度を目安にX線ヘッド11の回動軸16axの軸周りの揺動角度を定める。
【0070】
なお、回動軸16ax近傍に図示しない角度ゲージを設けておいて、X線ヘッド11が何度傾斜しているか表示するように構成してもよいし、傾斜角度を電気的に検出、表示するように構成してもよい。
【0071】
X線撮影装置の選択を切り替えるX線撮影切替部に対応するパノラマ選択ボタン37は、パノラマX線撮影装置2でX線撮影をする際に押下する面発光スイッチであり、押下されると、パノラマX線撮影装置2のアイコン表示が点灯され、X線撮影するためのX線撮影装置としてパノラマX線撮影装置2が選択されたことを表示する。これに対し、パノラマ選択ボタン37のアイコン表示が点灯している場合においてパノラマ選択ボタン37を押下すると、パノラマX線撮影装置2のアイコン表示が消灯され、口内法X線撮影装置1が選択されていることを表す。
【0072】
なお、パノラマ選択ボタン37は、X線撮影装置の選択によってX線撮影の選択又は撮影モードの選択のための操作部として機能するとともに、パノラマ選択ボタン37は、選択したX線撮影装置、選択したX線撮影又は選択したX線撮影モードを示すX線撮影選択状態表示部として機能する表示部を兼ねている。
【0073】
このように、口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2とを選択操作するパノラマ選択ボタン37を面発光スイッチで構成し、パノラマ選択ボタン37自体が点灯と消灯とを切替えるため、パノラマ選択ボタン37の点灯状況を確認することで、口内法X線撮影装置1及びパノラマX線撮影装置2のうち所望するX線撮影装置を、間違えることなく確実に選択することができる。また、図4に示すように、パノラマ選択ボタン37に表示されたパノラマX線撮影装置2をイメージするアイコン表示がパノラマ選択ボタン37の点灯によって明示できるため、誤操作をより確実に防止することができる。
【0074】
情報表示部に対応する状態表示部38は、エミッションボタン39が操作され、X線を照射できる準備状態であることを示す撮影準備状態表示部38aと、エミッションボタン39が操作されてX線を照射していることを示す照射表示部38bとで構成している。
【0075】
X線撮影装置のX線照射を操作する照射スイッチに対応するエミッションボタン39は、撮影準備状態表示部38aが点灯する準備状態においてX線の照射操作を行うボタンである。なお、エミッションボタン39は、1回操作で撮影準備処理を行い、2回操作でX線照射される。このときの1回操作による撮影準備処理が完了後、上述の撮影準備状態表示部38aが点灯する構成である。なお、撮影準備指令を出したにも関わらず撮影準備が整わない場合は、例えば光の点滅等で示すようにしてもよい。
【0076】
なお、エミッションボタン39は、ボタンを押下した状態においてONとなり、離すとOFFになるデッドマンスイッチとして構成している。そのため、不用意にX線が照射されず、確実にX線照射を制御することができる。
【0077】
このように構成されたコントローラ30は、パノラマ選択ボタン37を押下することで、X線撮影するために口内法X線撮影装置1かパノラマX線撮影装置2を選択することができるが、口内法X線撮影装置1が選択されたデンタルモードDでは、コントローラ30におけるすべての操作表示部(31〜39)を使用してX線撮影する。これに対し、パノラマX線撮影装置2が選択されたパノラマモードPでは、コントローラ30におけるパノラマ選択ボタン37、状態表示部38及びエミッションボタン39を使用してX線撮影する。
【0078】
このように、コントローラ30では、すべての操作表示部(31〜39)のうち、パノラマ選択ボタン37、状態表示部38、エミッションボタン39を、両モードで使用する。つまり、パノラマ選択ボタン37、状態表示部38、エミッションボタン39は、両モードの操作において共通に使用され、口内法X線撮影装置1、パノラマX線撮影装置2のいずれに対してもX線照射の指令を出す操作を受け付け、またはいずれについても状態を表示する。
【0079】
したがって、単一のエミッションボタン39により、口内法X線撮影装置1、パノラマX線撮影装置2のいずれに対してもX線照射の指令を出すことができ、さらには口内法X線撮影装置1、パノラマX線撮影装置2のいずれに対しても撮影準備の指令を出すことも可能であり、エミッションボタン39の数を制御対象であるX線撮影装置の数よりも少なく構成することができる。よって、部品点数を低減でき、コスト増加を抑制することができる。
【0080】
また、すべての操作表示部(31〜39)をひとつのコントローラ30に収容しているため、表示部31、数値表示部31bの右隣の微調整ボタン32、検出器種別選択ボタン33、管電圧選択ボタン34、対象患者選択ボタン35、撮影種別選択ボタン36などを複数のコントローラに分けて配置する場合と比較して、操作性が向上する。
【0081】
続いて、口内法X線撮影装置1、パノラマX線撮影装置2及びコントローラ30における回路構成について図6とともに説明する。
上述したように、口内法X線撮影装置1及びパノラマX線撮影装置2はX線室100内に配置され、コントローラ30はX線室100内の室外に配置されている。
【0082】
コントローラ30は、上述の操作表示部(31〜39)以外に、口内法/パノラマ切替回路30b及びパノラマメイン電源ON/OFF用リレー30cを備えている。なお、操作表示部(31〜39)のうち、表示部31、微調整ボタン32、検出器種別選択ボタン33、管電圧選択ボタン34、対象患者選択ボタン35、撮影種別選択ボタン36について副制御部1aaと信号を送受信する口内法撮影用表示操作部30aとする。
【0083】
また、操作表示部(31〜39)及び口内法/パノラマ切替回路30bと、パノラマメイン電源ON/OFF用リレー30cとは異なる基板(D1,D2)に載置している、つまりデュアル基板構造で構成し、適宜の間隔を隔てて上下方向に重ねるように配置している。
【0084】
そして、口内法/パノラマ切替回路30bと、口内法X線撮影装置1の主制御部1a及びパノラマX線撮影装置2の主制御部2aがバスラインBLで接続されている。なお、口内法X線撮影装置1の主制御部1aはインバータボックス18に収容され、パノラマX線撮影装置2の主制御部2aはパノラマX線撮影装置2の本体や操作パネル28に収容されている。
【0085】
まず、パノラマ選択ボタン37が操作されて口内法X線撮影装置1が選択されると、口内法撮影用表示操作部30aで設定された撮影条件とともに、口内法/パノラマ切替回路30bを口内法X線撮影装置1側にスイッチし、副制御部1aa及びバスラインBLを介して口内法X線撮影装置1の主制御部1aとの間で信号が送受信される。
【0086】
そして、エミッションボタン39が1回押下されると、口内法X線撮影装置1は撮影準備指令信号を受けて撮影準備処理を行い、準備ができると準備完了信号を送出して撮影準備状態表示部38aを点灯制御する。撮影準備状態表示部38aの点灯後のエミッションボタン39の2回目の押下操作によって、口内法X線撮影装置1はX線照射指令信号を受けてX線照射するとともに、X線照射状態伝達信号を送出して照射表示部38bを点灯制御する。なお、撮影準備完了を示すときとX線照射を示すときとで発光色を変える、発光パターンを変えるなどしてもよい。
【0087】
これに対し、パノラマ選択ボタン37が操作されてパノラマX線撮影装置2が選択されると、口内法/パノラマ切替回路30bをパノラマX線撮影装置2側にスイッチするとともに、パノラマメイン電源ON/OFF用リレー30cをONに切り替え、バスラインBLを介してパノラマX線撮影装置2の主制御部2aとの間で信号が送受信される。また、パノラマ選択ボタン37を点灯制御する。
【0088】
そして、エミッションボタン39が1回押下されると、パノラマX線撮影装置2は撮影準備指令信号を受けて撮影準備処理を行い、準備ができると準備完了信号を送出して撮影準備状態表示部38aを点灯制御する。撮影準備状態表示部38aの点灯後のエミッションボタン39の2回目の押下操作によって、パノラマX線撮影装置2はX線照射指令信号を受けて操作パネル28で設定された撮影条件でX線照射するとともに、X線照射状態伝達信号を送出して照射表示部38bを点灯制御する。
【0089】
エミッションボタン39は、口内法X線撮影装置1選択時に1回目の操作で撮影準備指令の発信操作に用いられるので、口内法X線撮影装置1への指令用の撮影準備指令スイッチ39A2であるとともに、2回目の操作でX線照射指令の発信操作に用いられるので、口内法X線撮影装置1への指令用の照射スイッチ39A1である。
【0090】
エミッションボタン39は、パノラマX線撮影装置2選択時に1回目の操作で撮影準備指令の発信操作に用いられるので、パノラマX線撮影装置2への指令用の撮影準備指令スイッチ39B2であるとともに、2回目の操作でX線照射指令の発信操作に用いられるので、パノラマX線撮影装置1への指令用の照射スイッチ39B1である。
【0091】
エミッションボタン39は、口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2とで共用されており、口内法/パノラマ切替回路30bによる口内法X線撮影装置1の選択によって、口内法X線撮影装置1の回路に属する照射スイッチ39A1、撮影準備指令スイッチ39A2となり、口内法/パノラマ切替回路30bによるパノラマX線撮影装置2の選択によって、パノラマX線撮影装置2の回路に属する照射スイッチ39B1、撮影準備指令スイッチ39B2となる。
【0092】
パノラマ選択ボタン37は、口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2とで共用され、点灯によってパノラマX線撮影装置2が選択されたことを、消灯によって口内法X線撮影装置1が選択されたことを表示する。
【0093】
X線撮影装置の選択状態、X線撮影の選択状態又は選択X線撮影モードを示すためのX線撮影選択状態表示部371として機能するパノラマ選択ボタン37の構成としては、口内法X線撮影装置1が選択されたときに消灯で示してもよいのであるが、口内法X線撮影装置1が選択されたときに、その選択状態を点灯で示すようにして、パノラマX線撮影装置2の選択時と口内法X線撮影装置1の選択時とで表示を変えるようにしてもよい。
【0094】
この場合、パノラマ選択ボタン37は、口内法X線撮影装置1の回路に属するX線撮影選択状態表示部37Aと、パノラマX線撮影装置2の回路に属するX線撮影選択状態表示部37Bからなる。
【0095】
同様に、撮影準備状態表示部38aは、口内法X線撮影装置1の回路に属する撮影準備状態表示部38aA、パノラマX線撮影装置2の回路に属する撮影準備状態表示部38aBからなる。
【0096】
同様に、照射表示部38bは、口内法X線撮影装置1の回路に属する照射表示部38bAと、パノラマX線撮影装置2の回路に属する照射表示部38bBからなる。
【0097】
口内法X線撮影装置1が選択されたときにその選択状態を点灯で示すようにした場合のパノラマ選択ボタン37、撮影準備状態表示部38a、照射表示部38bの機械的構成例としては、次のようなものが考えられる。
【0098】
図4、図5のように、制御装置ハウジング30hの表面に配置したパノラマ選択ボタン37、撮影準備状態表示部38a、照射表示部38bをメンブレンスイッチで構成する。
【0099】
表層であるメンブレン材の裏面に図示しない面発光部材の表面を対向配置する。
面発光部材の裏面に図示しない複数の可視光光源を対向配置する。この複数の可視光光源を面発光光源とする。
【0100】
複数の面発光光源の一方は口内法X線撮影装置1の回路側に属し、他方はパノラマX線撮影装置2の回路側に属するようにする。
口内法/パノラマ切替回路30bにより、口内法X線撮影装置1が選択された状態では口内法X線撮影装置1の回路側の面発光光源が点灯し、パノラマX線撮影装置2が選択された状態ではパノラマX線撮影装置1の回路側の面発光光源が点灯する。
【0101】
メンブレン材は前述の図柄部分など、可視光を透過する部分を有するので、面発光光源からの可視光は、面発光部材を通してメンブレン材に達し、メンブレン材の可視光を透過する部分から外部に発光され、操作者に認識できるようになっている。
【0102】
面発光部材としては、側面からの光を前方に向けて発光するタイプのものを用いてもよい。この場合、当該面発光部材の側面に前記口内法X線撮影装置1の回路用と前記パノラマX線撮影装置2の回路用の各々の可視光光源を対向配置する。可視光光源からの可視光を面発光部材の側面に照射すると、面発光部材は側面からの可視光を当該面発光部材前方からメンブレン材の裏面に向けて照射する。
【0103】
いずれにしても、前述のとおり、口内法X線撮影装置1の回路とパノラマX線撮影装置1の回路は絶縁されているので、外見は同じ表示部でありながら、口内法X線撮影装置1の回路側に属する光源とパノラマX線撮影装置2の回路側に属する光源とで絶縁状態を確保することができる。
【0104】
口内法X線撮影装置1の回路とパノラマX線撮影装置2の回路の少なくとも一方において、エミッションボタン39の1回押下によって撮影準備がなされ、X線照射が行われるようにしてもよい。
【0105】
また、口内法X線撮影装置1はパノラマX線撮影装置2のように旋回アーム25が旋回開始位置に無い場合に旋回アームを撮影開始位置に来させる必要はないので、口内法X線撮影装置1の回路については撮影準備指令信号の発信がなくともエミッションボタン39の1回押下によって直接X線照射指令信号の発信が行われるようにしてもよい。
【0106】
このように、図6において状態表示部38及びエミッションボタン39は口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2とで共用するとともに、パノラマ選択ボタン37で状態表示部38及びエミッションボタン39の機能を切り替えているが、口内法X線撮影装置1の回路とパノラマX線撮影装置2の回路とは、回路構成上絶縁されており、図示においては仮想の絶縁ラインZLで絶縁されている。また、口内法X線撮影装置1が選択された状態では、パノラマメイン電源ON/OFF用リレー30cによって、パノラマX線撮影装置2はメイン電源がOFFに制御されている。
【0107】
したがって、ショート等の電気回路的不具合により、選択されていないX線撮影装置が誤作動することを防止できる。詳しくは、コントローラ30におけるショート等の電気回路的不具合が生じた場合においても、口内法X線撮影装置1の電気回路と、パノラマX線撮影装置2の電気回路とが、仮想の絶縁ラインZLで絶縁されているため、例えば、選択されたパノラマX線撮影装置2に対するX線照射操作によって、口内法X線撮影装置1が意図せず、X線照射することを確実に防止することができる。
【0108】
パノラマ選択ボタン37も各モードにおいて他のモードへの切替に用いられるので、その意味で口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2とで共用されている。
【0109】
また、操作表示部(31〜39)及び口内法/パノラマ切替回路30bと、パノラマメイン電源ON/OFF用リレー30cとは異なる基板(D1,D2)に載置するデュアル基板構造で構成しているため、口内法X線撮影装置1の電気回路と、パノラマX線撮影装置2の電気回路とを電気的に絶縁することができる。
【0110】
さらには、それぞれの基板(D1,D2)を、適宜の間隔を隔てて上下方向に重ねるように配置しているため、ひとつの基板に両電気回路を配置する場合と比較して、絶縁性を向上するとともに、省スペース化を図ることができる。
【0111】
パノラマ選択ボタン37と口内法/パノラマ切替回路30bは、口内法X線撮影装置1の回路とパノラマX線撮影装置2の回路のいずれを選択するかを切替するものであり、どちらにも属さない要素であり、両回路と絶縁関係にあると考えてよいので、このことを図示において仮想の絶縁ラインALで示す。ただし、観念的理解を促すため、両回路のいずれかに切替えるという口内法/パノラマ切替回路30bの機能的側面に注目し、口内法X線撮影装置1が選択された場合を想定して口内法/パノラマ切替回路30bの一部が口内法X線撮影装置1の回路側にあるように、また、パノラマX線撮影装置2が選択された場合を想定して別の一部がパノラマX線撮影装置2の回路側にあるように図示する。
【0112】
なお、上述の説明では、エミッションボタン39の押下操作によってX線照射制御する構成であったが、エミッションボタン39に加えてグリップタイプのデッドマンスイッチ40を別付けで接続し、エミッションボタン39とデッドマンスイッチ40のうち先に押下した方を優先する構成であってもよい。
【0113】
また、口内法X線撮影装置1及びパノラマX線撮影装置2の回路上にブザー(41,42)を設け、口内法X線撮影装置1あるいはパノラマX線撮影装置2の稼働時やトラブル発生時にブザーを鳴らす構成であってもよい。
【0114】
また、パノラマX線撮影装置2の主制御部2aと、口内法撮影用表示操作部30aの表示部31とを接続し、口内法撮影用表示操作部30aのうち表示部31に、パノラマX線撮影装置2の操作パネル28で設定された撮影条件や、X線撮影後に、パノラマX線撮影装置2におけるX線の照射時間やグレイ値を表示してもよい。
【0115】
さらにまた、X線撮影後の照射時間やグレイ値を表示する場合において、X線撮影後にX線の照射時間とグレイ値とを所定時間ずつ切り替えて自動的に表示してもよいし、例えば、グレイ値を表示させるための表示スイッチを設け、デフォルトでは照射時間を表示し、表示スイッチを操作する間グレイ値を表示させる構成であってもよい。もちろん、グレイ値の表示をデフォルトとして、スイッチ操作で照射時間を表示させてもよい。
【0116】
ここで、図7を用いて口内法/パノラマ切替回路30bによる口内法X線撮影装置1の回路とパノラマX線撮影装置2の回路の切替構成の例を示す。
口内法X線撮影装置1側の回路を回路DNCとし、パノラマX線撮影装置2側の回路を回路PNCとする。
【0117】
口内法/パノラマ切替回路30bにより、リレーRL1が作動し、回路DNCと回路PNCの一方が作動、通電又は活性化し、他方が停止、遮断又は非活性化する。
【0118】
リレーRL1が回路DNCを閉じれば口内法X線撮影装置1側の回路DNCが通電し、回路PNCを閉じればパノラマX線撮影装置1側の回路PNCが通電する。
【0119】
図7(a)はリレーRL1が口内法X線撮影装置1側の回路DNCを閉じ、パノラマX線撮影装置1側の回路PNCを開いた状態を示している。
エミッションボタン39は口内法X線撮影装置1に対して指令をするための照射スイッチ39A1、撮影準備指令スイッチ39A2となる。
【0120】
図7(b)はリレーRL1が口内法X線撮影装置1側の回路DNCを開き、パノラマX線撮影装置1側の回路PNCを閉じた状態を示している。
エミッションボタン39はパノラマX線撮影装置2に対して指令をするための照射スイッチ39B1、撮影準備指令スイッチ39B2となる。
【0121】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の制御装置は、コントローラ30に対応し、
以下同様に、
歯科用異種X線撮影装置は、パノラマX線撮影装置2に対応し、
情報表示部は、表示部31、状態表示部38、撮影準備状態表示部38aあるいは照射表示部38bに対応し、
設定操作部は、微調整ボタン32,検出器種別選択ボタン33,管電圧選択ボタン34,対象患者選択ボタン35,及び撮影種別選択ボタン36に対応し、
X線撮影切替部は、パノラマ選択ボタン37に対応し、
照射スイッチは、エミッションボタン39に対応し、
X線の照射線量は、グレイ値や照射時間に対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではない。
【0122】
例えば、本実施形態では、口内法X線撮影装置1と歯科用異種X線撮影装置の併設例として、口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2とを併設してコントローラ30で制御する例について述べたが、口内法X線撮影装置1と歯科用異種X線撮影装置の組合せの例は様々に考えることができる。
【0123】
ここで、口内法X線撮影を行う機能を口内法X線撮影機能と呼び、口内法X線撮影と種類の異なる歯科の撮影を歯科用異種X線撮影と呼び、歯科用異種X線撮影を行う機能を歯科用異種X線撮影機能と呼び、少なくとも口内法X線撮影機能を有し、他のX線撮影装置と組合わされるX線撮影装置を本X線撮影装置と呼ぶこととして、以下のように例示する。
【0124】
1つの組合せ例として、口内法X線撮影装置と、別体の歯科用異種X線撮影装置を1台のコントローラ30で制御できる。
口内法X線撮影装置は単数でも複数でもよいし、歯科用異種X線撮影装置の有する歯科用異種X線撮影機能は単数でも複数でもよい。別体の歯科用異種X線撮影装置は単数でも複数でもよい。
【0125】
別の組合せ例として、口内法X線撮影装置と歯科用異種X線撮影装置が1体の装置に組み込まれたX線撮影装置を1台のコントローラ30で制御できる。
歯科用異種X線撮影装置の有する歯科用異種X線撮影機能は、単数でも複数であってもよい。
【0126】
別の組合せ例として、口内法X線撮影装置と歯科用異種X線撮影装置が1体の装置に組み込まれたX線撮影装置と、別体の他のX線撮影装置を1台のコントローラ30で制御できる。
他のX線撮影装置は、他の口内法X線撮影機能を有するX線撮影装置でも、歯科用異種X線撮影機能を有するX線撮影装置であっても、口内法X線撮影機能と歯科用異種X線撮影機能を共に有するX線撮影装置であっても、いずれでも構わない。
【0127】
本X線撮影装置も、他のX線撮影装置も単数であっても複数であってもよい。
本X線撮影装置、他のX線撮影装置の有する歯科用異種X線撮影機能は、単数でも複数であってもよい。
【0128】
1つのX線撮影装置が複数のX線撮影機能を組み合わせて備える場合、そのX線撮影装置は複合X線撮影装置である。
【0129】
本X線撮影装置と別体の他のX線撮影装置を1台のコントローラ30で制御する場合、双方のX線撮影装置それぞれに個別のコントローラを設ける必要がなく、1箇所で集中制御できるという利点が大きい。
【0130】
以上より、詳述した口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2を1台のコントローラ30で制御する例のみならず、口内法X線撮影装置1とX線CT撮影装置、口内法X線撮影装置1とセファロX線撮影装置、口内法X線撮影装置1と断層撮影装置、及び口内法X線撮影装置1とこれらの機能を組み合わせた複合X線撮影装置を用いてもよい。
【0131】
したがって、口内法X線撮影装置1と、パノラマX線機能とCT撮影機能を備えたパノラマCT兼用の歯科用異種X線撮影装置2とを1台の1台のコントローラ30で制御するようにできる。
【0132】
また、本実施形態では、口内法X線撮影装置1とパノラマX線撮影装置2との2台のX線撮影装置を併設してコントローラ30で制御したが、例えば口内法X線撮影装置を含むその他の上記記載のX線撮影装置を加えて併設しても良いし、口内法X線撮影装置を含む3台以上のX線撮影装置を1台のコントローラ30で制御する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…口内法X線撮影装置
2…パノラマX線撮影装置(歯科用異種X線撮影装置)
30…コントローラ(制御装置)
30h…制御装置ハウジング
31…表示部(情報表示部)
32…微調整ボタン(設定操作部)
33…検出器種別選択ボタン(設定操作部)
34…管電圧選択ボタン(設定操作部)
35…対象患者選択ボタン(設定操作部)
36…撮影種別選択ボタン(設定操作部)
37…パノラマ選択ボタン(X線撮影切替部)
38…状態表示部(情報表示部)
38a…撮影準備状態表示部(情報表示部)
38b…照射表示部(情報表示部)
39…エミッションボタン(照射スイッチ)
40…デッドマンスイッチ(照射スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯科用のX線撮影装置の制御を行う制御装置であって、
制御対象となる前記X線撮影装置を、口内法X線撮影装置、及び口内法X線撮影装置と種類の異なる歯科用異種X線撮影装置とし、
前記X線撮影装置に関する情報を表示する情報表示部、前記X線撮影装置におけるX線撮影に関する設定条件を設定操作する設定操作部、機能させる前記X線撮影装置の選択を切り替えるX線撮影切替部、前記X線撮影装置のX線照射を操作する照射スイッチ、及び制御装置本体を備え、
前記X線撮影切替部により前記口内法X線撮影装置に切り替えられた状態における前記口内法X線撮影装置のX線照射操作と、前記歯科用異種X線撮影装置に切り替えられた状態における前記歯科用異種X線撮影装置のX線照射操作を前記照射スイッチを共通に用いて行う構成とした
制御装置。
【請求項2】
前記歯科用異種X線撮影装置を、
パノラマX線撮影装置、X線CT撮影装置、セファロX線撮影装置、断層撮影装置、及びこれらの機能を組み合わせた複合X線撮影装置のいずれかとした
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記照射スイッチを、デッドマンスイッチで構成した
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記情報表示部、前記設定操作部、及び前記X線撮影切替部をひとつの制御装置ハウジングに収容した
請求項1乃至3のうちいずれかひとつに記載の制御装置。
【請求項5】
前記情報表示部を、
前記X線撮影切替部によって前記口内法X線撮影装置に切り替えられた状態において、前記口内法X線撮影装置に関する情報を表示し、前記歯科用異種X線撮影装置に切り替えられた状態において、前記歯科用異種X線撮影装置に関する情報を表示する構成とした
請求項1乃至4のうちいずれかひとつに記載の制御装置。
【請求項6】
前記情報表示部に、前記口内法X線撮影装置または前記歯科用異種X線撮影装置で照射するX線または照射したX線の照射線量を表示する
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記X線撮影切替部の切り替え操作により、
前記口内法X線撮影装置と前記歯科用異種X線撮影装置との選択を切り替えるとともに、前記X線撮影切替部の点灯と消灯と切り替えて、選択されたX線撮影装置を表示する請求項1乃至6のうちいずれかひとつに記載の制御装置。
【請求項8】
前記口内法X線撮影装置の電気回路、及び前記歯科用異種X線撮影装置の電気回路が絶縁されている
請求項1乃至7のうちいずれかひとつに記載の制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれかに記載の制御装置を備えた
X線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−217572(P2012−217572A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85278(P2011−85278)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】