制御装置および温度調節器
【課題】制御対象の非線形特性を線形化できるようにする。
【解決手段】制御対象2と外界との熱伝達の影響を打ち消す線形化器4を設け、制御対象2の検出温度y1,y2と外界の温度θ∞との温度差を、熱伝達項10−1’,10−2’を介して制御対象2の入力側である操作量側にフィードバックし、制御対象2と外界との間の非線形な熱伝達の影響を打ち消すようにしている。
【解決手段】制御対象2と外界との熱伝達の影響を打ち消す線形化器4を設け、制御対象2の検出温度y1,y2と外界の温度θ∞との温度差を、熱伝達項10−1’,10−2’を介して制御対象2の入力側である操作量側にフィードバックし、制御対象2と外界との間の非線形な熱伝達の影響を打ち消すようにしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象を制御する制御装置および温度調節器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、制御対象は、非線形特性を有し、かかる非線形特性に対応するために、従来のPID制御装置には、複数の温度領域の各領域毎に予めPID制御パラメータを求めておき、温度領域に応じて、PID制御パラメータを切り替えるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭62−070904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように、各温度領域毎に、PID制御パラメータを切り替える従来例では、予め各温度領域毎に、PID制御パラメータを調整して求めておく必要があるが、かかるPID制御パラメータの調整は容易でない。
【0004】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、非線形な制御対象にも容易に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の制御装置は、制御対象の非線形特性を線形化する線形化手段を備え、前記線形化手段は、前記制御対象と外界との熱移動の影響を打ち消して線形化するものである。
【0006】
熱移動とは、熱伝達や熱放射を含むものである。
【0007】
外界とは、制御対象の周囲をいう。
【0008】
線形化手段では、熱移動の影響を完全に打ち消すのが好ましいが、少なくとも熱移動の影響を低減できればよい。
【0009】
本発明によると、制御対象と外界との熱伝達などの非線形な現象の影響を打ち消して線形化するので、制御性能が向上する。
【0010】
(2)本発明の温度調節器は、前記制御対象の温度を検出する温度検出手段からの検出温度および目標温度に基づいて、前記制御対象に対する操作量を出力する温度制御手段と、前記制御対象の非線形特性を線形化する線形化手段とを備え、前記線形化手段は、前記制御対象と外界との熱伝達を打ち消して線形化するものである。
【0011】
本発明によると、制御対象と外界との熱伝達などの非線形な現象の影響を打ち消して線形化するので、制御性能が向上する。
【0012】
(3)好ましい実施形態では、前記線形化手段は、前記検出温度と前記外界の温度との温度差を、熱伝達項を介して操作量側にフィードバックするものである。
【0013】
熱伝達項は、制御対象の表面積と熱伝達率との積に対応するのが好ましい。
【0014】
外界との温度差に起因して熱伝達による熱量の移動が生じるのであるが、 この実施形態によると、制御対象の検出温度と外界の温度との温度差を、熱伝達項を介して制御対象の入力側である操作量側にフィードバックするので、非線形な熱伝達の影響を打ち消して線形化することができる。
【0015】
(4)上記(3)の実施形態では、前記熱伝達項は、前記制御対象のモデルの構造に基づくものであって、該モデルの構造が、前記制御対象を複数の部分に仮想的に分割したときの各部分の熱容量に対応する熱容量項、各部分間の熱伝導に対応する熱伝導項、および、各部分と外界との間の熱伝達に対応する前記熱伝達項を含むようにしてもよい。
【0016】
ここで、項とは、当該モデルを構成する単位をいい、数学における数式(等号や不等号などの関係記号は含まない)に相当するものをいう。
【0017】
このモデルの構造は、前記各部分に個別的に対応する複数入力および複数出力を備えるのが好ましい。入力とは、当該モデルに対する入力をいい、制御対象に対して与えられる入力、例えば、操作量をいう。また、出力とは、当該モデルの出力をいい、制御対象の出力、例えば、検出温度をいう。
【0018】
熱容量項を複数備え、前記複数入力および前記複数出力の各入力および各出力を、各熱容量項に個別的にそれぞれ対応させてもよい。
【0019】
熱容量項の出力側の差を、前記熱伝導項を介して前記熱容量項の入力側にフィードバックするようにしてもよい。
【0020】
熱容量項の出力側の差とは、当該モデルの出力側の差をいい、例えば、温度差をいう。
【0021】
この実施形態によると、制御対象のモデルの構造に含まれる熱伝達項を用いて線形化することができる。
【0022】
(5)上記(3)の実施形態では、前記熱伝達項のパラメータが、前記制御対象を、第1,第2の目標温度にそれぞれ制御して整定させて状態において、前記目標温度または前記操作量を変化させたときの前記検出温度の変化に基づいて決定されるようにしてもよい。
【0023】
第1,第2の目標温度は、使用する温度範囲の高温側および低温側の目標温度であるのが好ましい。
【0024】
この実施形態によると、第1の目標温度に整定させた状態で、前記目標温度または前記操作量を変化させたときの前記検出温度の変化に基づいて、例えば、高温側における熱伝達項のパラメータを決定し、第2の目標温度に整定させた状態で、前記目標温度または前記操作量を変化させたときの前記検出温度の変化に基づいて、低温側における熱伝達項のパラメータを決定し、最終的に温度の関数である熱伝達項のパラメータを決定することができる。
【0025】
(6)上記(4)の実施形態では、前記温度制御手段を複数備え、各温度制御手段は、複数の前記温度検出手段からの各検出温度および目標温度に基づいて、前記制御対象に対する操作量をそれぞれ出力するものであり、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は低減する非干渉化手段を備え、前記非干渉化手段は、各検出温度の差を、前記熱伝導項を介して操作量側にフィードバックするようにしてもよい。
【0026】
干渉による熱量の移動に基づく制御対象の温度変化は、制御対象の温度差に起因するのであるが、この実施形態によると、制御対象の各検出温度の差(温度座)を、熱伝導項を介して干渉を打ち消すように操作量側にフィードバックすることができ、高精度の非干渉化が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、制御対象と外界との熱伝達などの非線形な現象の影響を打ち消して線形化することができ、制御性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一つの実施形態に係る温度調節器を用いた温度制御システムの構成図である。
【0030】
この実施の形態の温度調節器1は、制御対象2の後述のモデルの構造を用いて線形化を行なうものであり、制御対象2からの二つの検出温度y1,y2と各目標温度SP1,SP2との偏差に基づいて、操作量u1’,u2’をそれぞ演算出力する温度制御手段としての二つのPID制御手段31,32と、両PID制御手段31,32からの操作量u1’,u2’を、線形化するように処理して制御対象2に対して出力する線形化器4とを備えている。
【0031】
両PID制御手段31,32および線形化器4などは、マイクロコンピュータによって構成されている。
【0032】
図2は、この線形化器4および制御対象2のモデルの構造のブロック線図である。
【0033】
ここで、線形化器4の説明に先立って、この線形化に利用する制御対象2のモデルの構造についての理論的説明を行なう。
【0034】
ここで扱う制御対象は、物体の温度分布を無視して熱容量だけを集中系として取り扱う集中熱容量モデルとする。議論を簡単にするため、図3に示すように、制御対象が2つのセル7−1,7−2に分割され、それぞれ集中熱容量モデルで表現できるものとする。
【0035】
先ず、1つのセルを支配する物理法則について考える。
【0036】
セルのダイミックスは、内部エネルギーの変化、セル間の熱伝導、セルと外界との熱伝達で決定される。まず、セルの内部エネルギーの変化は、セルが体積Vの均質物質で構成されるとき、熱力学第1法則のエネルギー保存の法則から以下の式が導かれる。
【0037】
cρV(dθ/dt)=Qin−Qout+Vqv …(1)
ここで、cとρはそれぞれセルの比熱[J/(kg・K)]と密度[kg/m3]であり、qv[W/m3]は単位体積当たりの発熱量である。なお、2つのセルの体積が同じ場合を考えて定圧比熱と定積比熱は等しくcで表している。
【0038】
次に、セルの表面から物体周りの空気との関係は、空気が流体であるため、熱伝達である。セルに流れ込む方向をプラスに考え、θ∞をセルから十分離れた場所の周囲温度とすると、ニュートンの冷却法則より、
Q=−Ash(θ1−θ∞) …(2)
となる。ここで、h[W/(m2・K)]は熱伝達率である。なお、熱伝達率は、熱伝導率のような物質固有の値ではなく、流体の流れの状態によって変化する。厳密には、流れの状態は物体の各表面で異なるので、熱伝達率も局所的に異なった値となる。
【0039】
最後に2つのセル間の熱伝導(干渉)を考える。断面積A[m2]、セル間距離d[m]の平板において、2つのセルの温度をそれぞれθ1,θ2[K]とすると、熱伝導で左側から右側へ通過する伝熱量は、フーリエの法則より、次式で表される。
【0040】
Q=−Aλ{(θ2−θ1)/d} …(3)
ここで、λ[W/(m・K)]は熱伝導率である。
【0041】
次に、2つセルの結合による物理モデルを考える。
【0042】
上述の3つの物理法則を組み合わせて、2分割セルの場合の物理モデルを導く。便宜上、左側のセル7−1をセル1とし、右側のセル7−2をセル2とする。それぞれのセルに対する熱エネルギー保存則(熱力学第1法則)の式は、次のようになる。
【0043】
セル1: cρV1(dθ1/dt)=−Q1−Q12+H1u1 …(4)
セル2: cρV2(dθ2/dt)=−Q2−Q12+H2u2 …(5)
となる。ただし、Q12はセル1からセル2への熱流を正としている。ただし、Q12はセル1からセル2への熱流を正としている。H1とH2とはヒータの伝達特性を表す。
【0044】
また、セル1とセル2の間の熱伝導は、セル1と2の間の断面積をA12として、
Q12=−A12λ{(θ2−θ1)/d} …(6)
であり、それぞれのセル表面から周囲への放熱である熱伝達は、θ∞をセルから十分に離れた場所の周囲温度として、
セル1: Q1=−A1h1(θ1−θ∞) …(7)
セル2: Q2=−A2h2(θ2−θ∞) …(8)
となる。これらの式から制御対象のブロック線図を構成すると、図4となる。ただし、A1とA2はセル1と2の表面積である。
【0045】
ただし、E1=cρV1、E2=cρV2、β=A12λ/dであり、βは、セル1と2の間の干渉による熱抵抗の逆数を意味する。また、α1=A1h1、α2=A2h2であり、それぞれセルから周囲温度への熱抵抗の逆数を表す。
【0046】
この図4のモデルの構造は、1/E1または1/E2を含む熱容量項8−1,8−2と、βからなる熱伝導項9と、α1またはα2からなる熱伝達項10−1,10−2とを含んでいる。なお、20はヒータブロックである。
【0047】
熱容量項8−1のE1またはE2は、それぞれE1=cρV1、E2=cρV2であり、各セル7−1,7−2の熱容量に対応し、熱伝導項9のβは、β=A12λ/dであり、上述のフーリエの法則による熱伝導に対応し、熱伝達項10−1,10−2のα1またはα2は、それぞれα1=A1h1、α2=A2h2であり、上述のニュートンの冷却の法則による熱伝達に対応するものである。
【0048】
再び、図2を参照して、この実施形態では、制御対象2のモデルの構造として、上述のようにして導出される図4の物理モデルを用いるものであり、図4に対応する部分には、同一の参照符号を付している。
【0049】
一般に、制御対象の非線形特性は、熱伝達という非線形な現象によるところが大きく、したがって、この非線形な熱伝達という現象の影響を打ち消すことにより、線形化できることになる。
【0050】
そこで、この実施形態では、線形化器4によって、熱伝達の影響を打ち消して線形化するものであり、制御対象2の各出力y1,y2と外界の温度θ∞との温度差をそれぞれ算出する減算器5,6と、各減算器5,6からの出力を、制御対象2のモデル構造の熱伝達項10−1,10−2にそれぞれ対応する補償用の熱伝達項10−1’,10−2’と、ヒータの伝達特性H1,H2をそれぞれ補償する補償項11,12と、この補償項11,12の出力を、入力される操作量u1’,u2’からそれぞれ減算する減算器13,14とを備えている。
【0051】
制御対象2の各出力y1,y2と外界の温度θ∞との温度差をそれぞれ算出する各減算器5,6では、制御対象2のモデル構造とは逆向きに、すなわち、外界の温度θ∞から制御対象2の出力y1,y2をそれぞれ減算する。
【0052】
次に、線形化器4の補償用の熱伝達項10−1’,10−2’、したがって、制御対象2のモデルの構造の熱伝達項10−1,10−2のパラメータの同定の手法について説明する。
【0053】
ここで、2点の制御対象の等価回路は、図5に示すように表すことができる。
但し、C1:1chの容量成分、C2:2chの容量成分、Z1:1chの熱抵抗[℃/W]、Z2:2chの熱抵抗[℃/W]Z12:1chと2ch間の熱抵抗[℃/W]、θ1:1chの温度[℃]、θ2:2chの温度[℃]、Q1:1chに入力した熱量[W]、Q2:2chに入力した熱量[W]である。
【0054】
容量成分C1,C2が入っている状態では、パラメータの同定が複雑になるため、容量成分C1,C2が飽和した状態、すなわち、制御対象にある入力を与え、定常状態になった場合における熱抵抗の同定について考える。定常状態を考慮すると、容量成分C1,C2を取り除いた図6の等価回路に置き換えることができる。
【0055】
この図6よりキルヒホッフの電流則を利用すると、次式が得られる。
【0056】
Q1=(θ1/Z1)+(θ1−θ2)/Z12
Q2=(θ2/Z2)+(θ2−θ1)/Z12
行列式に書き直すと、次式の通りとなる。
【0057】
Q=θ・Z
したがって、熱抵抗Zは、
Z=θ−1・Q
となる。
【0058】
したがって、各chの入力Qを、例えば、ステップ状に変化させたときに、出力θの変化を計測することによって、熱抵抗Zを求めることができ、この熱抵抗Zの逆数として熱伝達項のαを算出できることになる。
【0059】
なお、正方行列にできない場合には、擬似逆行列を用いて熱抵抗Zを算出すればよい。
【0060】
また、3点の制御対象においても、2点のときと同様に、3点のときの等価回路において、キルヒホッフの電流則を利用し、熱流に関する式を求め、行列式に書き直し、温度の行列の擬似逆行列を利用することにより、熱抵抗を求めることができる。
【0061】
図7は、熱伝達項のパラメータの決定の手順を説明するためのフローチャートである。
【0062】
熱伝達項のαは、温度θの関数α(θ)であり、このため、この実施形態では、当該温度調節器1を使用する温度範囲の高温側と低温側とで熱伝達項のαをそれぞれ同定し、直線近似して温度に対する熱伝達項のα(θ)を決定するものである。
【0063】
先ず、例えば、低温側の設定温度(目標温度)θLに設定して制御対象2を制御し(ステップn1)、低温側のパラメータを同定する(ステップn2)。
【0064】
図8は、このパラメータの同定を説明するための設定温度SP、操作量MVおよび検出温度PVの変化を示す図であり、実線が1chを、破線が2chをそれぞれ示している。
このパラメータの同定は、設定温度θLに整定した定常状態において、先ず、実線で示される1chの設定温度を、図8(a)に示すように、例えば、1℃下げ、安定した状態における図8(b)に示す各chの操作量の変化Q1,Q2を計測するとともに、図8(c)に示す制御対象2の検出温度PVの変化θ1,θ2を計測する。この図8(c)では、破線で示される2chの検出温度PVは変化していない例を示している。
【0065】
次に、図8(a)の破線に示すように、同様に2chの設定温度を、1℃下げ、安定した状態における図8(b)に示す各chの操作量の変化Q3,Q4を計測するとともに、図8(c)に示す制御対象2の検出温度PVの変化θ3,θ4を計測する。この図8(c)では、実線で示される1chの検出温度PVは変化していない例を示している。
【0066】
かかるQおよびθの計測結果と上述の行列式から熱抵抗Zを算出し、その逆数として低温側における熱伝達項のパラメータを算出する。
【0067】
次、図7に示すように、高温側の設定温度θHに設定して制御対象2を制御し(ステップn3)、低温側と同様にして高温側の熱伝達項のパラメータを同定する(ステップn4)。
【0068】
次に、図9に示すように、低温側θLのパラメータと高温側θHのパラメータから温度に対する熱伝達項のパラメータα(θ)を決定するものである(ステップn5)。
【0069】
以上のような熱伝達項のパラメータの決定は、予めパソコンおよびデータロガー等の上位装置を用いて行い、決定した熱伝達項のパラメータを温度調節器1の線形化器4に設定してもよいし、あるいは、図10に示すように、温度調節器1にパラメータ決定器31を内蔵させ、上述のように目標温度を変化させ、そのときの検出温度の変化を計測して熱伝達項のパラメータを決定し、線形器4に設定するようにしてもよい。
【0070】
(実施形態2)
上述の実施形態では、モデル構造の熱伝達項を用いて線形化したけれども、本発明は、モデル構造の熱伝導項を用いて非干渉化を図るようにしてもよい。
【0071】
図11は、上述の線形化器4に加えて、非干渉化器25を追加した温度調節器の図2に対応する図であり、対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0072】
非干渉化器25は、制御対象2のモデル構造の二つの出力y1,y2の差を算出する減算器26と、この減算器26からの出力を、制御対象2の熱伝導項9に対応する補償用の熱伝導項9’と、この熱伝導項9’の出力を、ヒータの伝達特性H1,H2をそれぞれ補償する補償項27,28を介して入力される操作量u1’,u2’に、加算または減算する加算器29および減算器30を備えており、熱伝導項9’の出力を、制御対象2のモデルの構造の熱伝導項9の出力とは、正負を逆にしてフィードバックしている。
【0073】
この実施形態によれば、線形化器4によって線形化を図ることができるとともに、非干渉化器25によって非干渉化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、温度調節器などの制御装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る温度調節器を用いた温度制御システムの構成図である。
【図2】図1の制御対象のモデル構造および線形化器のブロック線図である。
【図3】モデルの構造についての理論的な説明に供する図である。
【図4】モデルの構造を示す図である。
【図5】2点の制御対象の等価回路図である。
【図6】容量成分を除いた等価回路図である。
【図7】熱伝達項のパラメータの同定手順を示すフローチャートである。
【図8】熱伝達項のパラメータの同定手順の説明に供する波形図である。
【図9】熱伝達項のパラメータの決定を説明するための図である。
【図10】本発明の他の実施形態の図1に対応する構成図である。
【図11】本発明の他の実施の形態の図2に対応するブロック線図である。
【符号の説明】
【0076】
1 温度調節器 2 制御対象
4 線形化器 25 非干渉化器
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象を制御する制御装置および温度調節器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、制御対象は、非線形特性を有し、かかる非線形特性に対応するために、従来のPID制御装置には、複数の温度領域の各領域毎に予めPID制御パラメータを求めておき、温度領域に応じて、PID制御パラメータを切り替えるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭62−070904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように、各温度領域毎に、PID制御パラメータを切り替える従来例では、予め各温度領域毎に、PID制御パラメータを調整して求めておく必要があるが、かかるPID制御パラメータの調整は容易でない。
【0004】
本発明は、上述のような点に鑑みてなされたものであって、非線形な制御対象にも容易に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の制御装置は、制御対象の非線形特性を線形化する線形化手段を備え、前記線形化手段は、前記制御対象と外界との熱移動の影響を打ち消して線形化するものである。
【0006】
熱移動とは、熱伝達や熱放射を含むものである。
【0007】
外界とは、制御対象の周囲をいう。
【0008】
線形化手段では、熱移動の影響を完全に打ち消すのが好ましいが、少なくとも熱移動の影響を低減できればよい。
【0009】
本発明によると、制御対象と外界との熱伝達などの非線形な現象の影響を打ち消して線形化するので、制御性能が向上する。
【0010】
(2)本発明の温度調節器は、前記制御対象の温度を検出する温度検出手段からの検出温度および目標温度に基づいて、前記制御対象に対する操作量を出力する温度制御手段と、前記制御対象の非線形特性を線形化する線形化手段とを備え、前記線形化手段は、前記制御対象と外界との熱伝達を打ち消して線形化するものである。
【0011】
本発明によると、制御対象と外界との熱伝達などの非線形な現象の影響を打ち消して線形化するので、制御性能が向上する。
【0012】
(3)好ましい実施形態では、前記線形化手段は、前記検出温度と前記外界の温度との温度差を、熱伝達項を介して操作量側にフィードバックするものである。
【0013】
熱伝達項は、制御対象の表面積と熱伝達率との積に対応するのが好ましい。
【0014】
外界との温度差に起因して熱伝達による熱量の移動が生じるのであるが、 この実施形態によると、制御対象の検出温度と外界の温度との温度差を、熱伝達項を介して制御対象の入力側である操作量側にフィードバックするので、非線形な熱伝達の影響を打ち消して線形化することができる。
【0015】
(4)上記(3)の実施形態では、前記熱伝達項は、前記制御対象のモデルの構造に基づくものであって、該モデルの構造が、前記制御対象を複数の部分に仮想的に分割したときの各部分の熱容量に対応する熱容量項、各部分間の熱伝導に対応する熱伝導項、および、各部分と外界との間の熱伝達に対応する前記熱伝達項を含むようにしてもよい。
【0016】
ここで、項とは、当該モデルを構成する単位をいい、数学における数式(等号や不等号などの関係記号は含まない)に相当するものをいう。
【0017】
このモデルの構造は、前記各部分に個別的に対応する複数入力および複数出力を備えるのが好ましい。入力とは、当該モデルに対する入力をいい、制御対象に対して与えられる入力、例えば、操作量をいう。また、出力とは、当該モデルの出力をいい、制御対象の出力、例えば、検出温度をいう。
【0018】
熱容量項を複数備え、前記複数入力および前記複数出力の各入力および各出力を、各熱容量項に個別的にそれぞれ対応させてもよい。
【0019】
熱容量項の出力側の差を、前記熱伝導項を介して前記熱容量項の入力側にフィードバックするようにしてもよい。
【0020】
熱容量項の出力側の差とは、当該モデルの出力側の差をいい、例えば、温度差をいう。
【0021】
この実施形態によると、制御対象のモデルの構造に含まれる熱伝達項を用いて線形化することができる。
【0022】
(5)上記(3)の実施形態では、前記熱伝達項のパラメータが、前記制御対象を、第1,第2の目標温度にそれぞれ制御して整定させて状態において、前記目標温度または前記操作量を変化させたときの前記検出温度の変化に基づいて決定されるようにしてもよい。
【0023】
第1,第2の目標温度は、使用する温度範囲の高温側および低温側の目標温度であるのが好ましい。
【0024】
この実施形態によると、第1の目標温度に整定させた状態で、前記目標温度または前記操作量を変化させたときの前記検出温度の変化に基づいて、例えば、高温側における熱伝達項のパラメータを決定し、第2の目標温度に整定させた状態で、前記目標温度または前記操作量を変化させたときの前記検出温度の変化に基づいて、低温側における熱伝達項のパラメータを決定し、最終的に温度の関数である熱伝達項のパラメータを決定することができる。
【0025】
(6)上記(4)の実施形態では、前記温度制御手段を複数備え、各温度制御手段は、複数の前記温度検出手段からの各検出温度および目標温度に基づいて、前記制御対象に対する操作量をそれぞれ出力するものであり、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は低減する非干渉化手段を備え、前記非干渉化手段は、各検出温度の差を、前記熱伝導項を介して操作量側にフィードバックするようにしてもよい。
【0026】
干渉による熱量の移動に基づく制御対象の温度変化は、制御対象の温度差に起因するのであるが、この実施形態によると、制御対象の各検出温度の差(温度座)を、熱伝導項を介して干渉を打ち消すように操作量側にフィードバックすることができ、高精度の非干渉化が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、制御対象と外界との熱伝達などの非線形な現象の影響を打ち消して線形化することができ、制御性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の一つの実施形態に係る温度調節器を用いた温度制御システムの構成図である。
【0030】
この実施の形態の温度調節器1は、制御対象2の後述のモデルの構造を用いて線形化を行なうものであり、制御対象2からの二つの検出温度y1,y2と各目標温度SP1,SP2との偏差に基づいて、操作量u1’,u2’をそれぞ演算出力する温度制御手段としての二つのPID制御手段31,32と、両PID制御手段31,32からの操作量u1’,u2’を、線形化するように処理して制御対象2に対して出力する線形化器4とを備えている。
【0031】
両PID制御手段31,32および線形化器4などは、マイクロコンピュータによって構成されている。
【0032】
図2は、この線形化器4および制御対象2のモデルの構造のブロック線図である。
【0033】
ここで、線形化器4の説明に先立って、この線形化に利用する制御対象2のモデルの構造についての理論的説明を行なう。
【0034】
ここで扱う制御対象は、物体の温度分布を無視して熱容量だけを集中系として取り扱う集中熱容量モデルとする。議論を簡単にするため、図3に示すように、制御対象が2つのセル7−1,7−2に分割され、それぞれ集中熱容量モデルで表現できるものとする。
【0035】
先ず、1つのセルを支配する物理法則について考える。
【0036】
セルのダイミックスは、内部エネルギーの変化、セル間の熱伝導、セルと外界との熱伝達で決定される。まず、セルの内部エネルギーの変化は、セルが体積Vの均質物質で構成されるとき、熱力学第1法則のエネルギー保存の法則から以下の式が導かれる。
【0037】
cρV(dθ/dt)=Qin−Qout+Vqv …(1)
ここで、cとρはそれぞれセルの比熱[J/(kg・K)]と密度[kg/m3]であり、qv[W/m3]は単位体積当たりの発熱量である。なお、2つのセルの体積が同じ場合を考えて定圧比熱と定積比熱は等しくcで表している。
【0038】
次に、セルの表面から物体周りの空気との関係は、空気が流体であるため、熱伝達である。セルに流れ込む方向をプラスに考え、θ∞をセルから十分離れた場所の周囲温度とすると、ニュートンの冷却法則より、
Q=−Ash(θ1−θ∞) …(2)
となる。ここで、h[W/(m2・K)]は熱伝達率である。なお、熱伝達率は、熱伝導率のような物質固有の値ではなく、流体の流れの状態によって変化する。厳密には、流れの状態は物体の各表面で異なるので、熱伝達率も局所的に異なった値となる。
【0039】
最後に2つのセル間の熱伝導(干渉)を考える。断面積A[m2]、セル間距離d[m]の平板において、2つのセルの温度をそれぞれθ1,θ2[K]とすると、熱伝導で左側から右側へ通過する伝熱量は、フーリエの法則より、次式で表される。
【0040】
Q=−Aλ{(θ2−θ1)/d} …(3)
ここで、λ[W/(m・K)]は熱伝導率である。
【0041】
次に、2つセルの結合による物理モデルを考える。
【0042】
上述の3つの物理法則を組み合わせて、2分割セルの場合の物理モデルを導く。便宜上、左側のセル7−1をセル1とし、右側のセル7−2をセル2とする。それぞれのセルに対する熱エネルギー保存則(熱力学第1法則)の式は、次のようになる。
【0043】
セル1: cρV1(dθ1/dt)=−Q1−Q12+H1u1 …(4)
セル2: cρV2(dθ2/dt)=−Q2−Q12+H2u2 …(5)
となる。ただし、Q12はセル1からセル2への熱流を正としている。ただし、Q12はセル1からセル2への熱流を正としている。H1とH2とはヒータの伝達特性を表す。
【0044】
また、セル1とセル2の間の熱伝導は、セル1と2の間の断面積をA12として、
Q12=−A12λ{(θ2−θ1)/d} …(6)
であり、それぞれのセル表面から周囲への放熱である熱伝達は、θ∞をセルから十分に離れた場所の周囲温度として、
セル1: Q1=−A1h1(θ1−θ∞) …(7)
セル2: Q2=−A2h2(θ2−θ∞) …(8)
となる。これらの式から制御対象のブロック線図を構成すると、図4となる。ただし、A1とA2はセル1と2の表面積である。
【0045】
ただし、E1=cρV1、E2=cρV2、β=A12λ/dであり、βは、セル1と2の間の干渉による熱抵抗の逆数を意味する。また、α1=A1h1、α2=A2h2であり、それぞれセルから周囲温度への熱抵抗の逆数を表す。
【0046】
この図4のモデルの構造は、1/E1または1/E2を含む熱容量項8−1,8−2と、βからなる熱伝導項9と、α1またはα2からなる熱伝達項10−1,10−2とを含んでいる。なお、20はヒータブロックである。
【0047】
熱容量項8−1のE1またはE2は、それぞれE1=cρV1、E2=cρV2であり、各セル7−1,7−2の熱容量に対応し、熱伝導項9のβは、β=A12λ/dであり、上述のフーリエの法則による熱伝導に対応し、熱伝達項10−1,10−2のα1またはα2は、それぞれα1=A1h1、α2=A2h2であり、上述のニュートンの冷却の法則による熱伝達に対応するものである。
【0048】
再び、図2を参照して、この実施形態では、制御対象2のモデルの構造として、上述のようにして導出される図4の物理モデルを用いるものであり、図4に対応する部分には、同一の参照符号を付している。
【0049】
一般に、制御対象の非線形特性は、熱伝達という非線形な現象によるところが大きく、したがって、この非線形な熱伝達という現象の影響を打ち消すことにより、線形化できることになる。
【0050】
そこで、この実施形態では、線形化器4によって、熱伝達の影響を打ち消して線形化するものであり、制御対象2の各出力y1,y2と外界の温度θ∞との温度差をそれぞれ算出する減算器5,6と、各減算器5,6からの出力を、制御対象2のモデル構造の熱伝達項10−1,10−2にそれぞれ対応する補償用の熱伝達項10−1’,10−2’と、ヒータの伝達特性H1,H2をそれぞれ補償する補償項11,12と、この補償項11,12の出力を、入力される操作量u1’,u2’からそれぞれ減算する減算器13,14とを備えている。
【0051】
制御対象2の各出力y1,y2と外界の温度θ∞との温度差をそれぞれ算出する各減算器5,6では、制御対象2のモデル構造とは逆向きに、すなわち、外界の温度θ∞から制御対象2の出力y1,y2をそれぞれ減算する。
【0052】
次に、線形化器4の補償用の熱伝達項10−1’,10−2’、したがって、制御対象2のモデルの構造の熱伝達項10−1,10−2のパラメータの同定の手法について説明する。
【0053】
ここで、2点の制御対象の等価回路は、図5に示すように表すことができる。
但し、C1:1chの容量成分、C2:2chの容量成分、Z1:1chの熱抵抗[℃/W]、Z2:2chの熱抵抗[℃/W]Z12:1chと2ch間の熱抵抗[℃/W]、θ1:1chの温度[℃]、θ2:2chの温度[℃]、Q1:1chに入力した熱量[W]、Q2:2chに入力した熱量[W]である。
【0054】
容量成分C1,C2が入っている状態では、パラメータの同定が複雑になるため、容量成分C1,C2が飽和した状態、すなわち、制御対象にある入力を与え、定常状態になった場合における熱抵抗の同定について考える。定常状態を考慮すると、容量成分C1,C2を取り除いた図6の等価回路に置き換えることができる。
【0055】
この図6よりキルヒホッフの電流則を利用すると、次式が得られる。
【0056】
Q1=(θ1/Z1)+(θ1−θ2)/Z12
Q2=(θ2/Z2)+(θ2−θ1)/Z12
行列式に書き直すと、次式の通りとなる。
【0057】
Q=θ・Z
したがって、熱抵抗Zは、
Z=θ−1・Q
となる。
【0058】
したがって、各chの入力Qを、例えば、ステップ状に変化させたときに、出力θの変化を計測することによって、熱抵抗Zを求めることができ、この熱抵抗Zの逆数として熱伝達項のαを算出できることになる。
【0059】
なお、正方行列にできない場合には、擬似逆行列を用いて熱抵抗Zを算出すればよい。
【0060】
また、3点の制御対象においても、2点のときと同様に、3点のときの等価回路において、キルヒホッフの電流則を利用し、熱流に関する式を求め、行列式に書き直し、温度の行列の擬似逆行列を利用することにより、熱抵抗を求めることができる。
【0061】
図7は、熱伝達項のパラメータの決定の手順を説明するためのフローチャートである。
【0062】
熱伝達項のαは、温度θの関数α(θ)であり、このため、この実施形態では、当該温度調節器1を使用する温度範囲の高温側と低温側とで熱伝達項のαをそれぞれ同定し、直線近似して温度に対する熱伝達項のα(θ)を決定するものである。
【0063】
先ず、例えば、低温側の設定温度(目標温度)θLに設定して制御対象2を制御し(ステップn1)、低温側のパラメータを同定する(ステップn2)。
【0064】
図8は、このパラメータの同定を説明するための設定温度SP、操作量MVおよび検出温度PVの変化を示す図であり、実線が1chを、破線が2chをそれぞれ示している。
このパラメータの同定は、設定温度θLに整定した定常状態において、先ず、実線で示される1chの設定温度を、図8(a)に示すように、例えば、1℃下げ、安定した状態における図8(b)に示す各chの操作量の変化Q1,Q2を計測するとともに、図8(c)に示す制御対象2の検出温度PVの変化θ1,θ2を計測する。この図8(c)では、破線で示される2chの検出温度PVは変化していない例を示している。
【0065】
次に、図8(a)の破線に示すように、同様に2chの設定温度を、1℃下げ、安定した状態における図8(b)に示す各chの操作量の変化Q3,Q4を計測するとともに、図8(c)に示す制御対象2の検出温度PVの変化θ3,θ4を計測する。この図8(c)では、実線で示される1chの検出温度PVは変化していない例を示している。
【0066】
かかるQおよびθの計測結果と上述の行列式から熱抵抗Zを算出し、その逆数として低温側における熱伝達項のパラメータを算出する。
【0067】
次、図7に示すように、高温側の設定温度θHに設定して制御対象2を制御し(ステップn3)、低温側と同様にして高温側の熱伝達項のパラメータを同定する(ステップn4)。
【0068】
次に、図9に示すように、低温側θLのパラメータと高温側θHのパラメータから温度に対する熱伝達項のパラメータα(θ)を決定するものである(ステップn5)。
【0069】
以上のような熱伝達項のパラメータの決定は、予めパソコンおよびデータロガー等の上位装置を用いて行い、決定した熱伝達項のパラメータを温度調節器1の線形化器4に設定してもよいし、あるいは、図10に示すように、温度調節器1にパラメータ決定器31を内蔵させ、上述のように目標温度を変化させ、そのときの検出温度の変化を計測して熱伝達項のパラメータを決定し、線形器4に設定するようにしてもよい。
【0070】
(実施形態2)
上述の実施形態では、モデル構造の熱伝達項を用いて線形化したけれども、本発明は、モデル構造の熱伝導項を用いて非干渉化を図るようにしてもよい。
【0071】
図11は、上述の線形化器4に加えて、非干渉化器25を追加した温度調節器の図2に対応する図であり、対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0072】
非干渉化器25は、制御対象2のモデル構造の二つの出力y1,y2の差を算出する減算器26と、この減算器26からの出力を、制御対象2の熱伝導項9に対応する補償用の熱伝導項9’と、この熱伝導項9’の出力を、ヒータの伝達特性H1,H2をそれぞれ補償する補償項27,28を介して入力される操作量u1’,u2’に、加算または減算する加算器29および減算器30を備えており、熱伝導項9’の出力を、制御対象2のモデルの構造の熱伝導項9の出力とは、正負を逆にしてフィードバックしている。
【0073】
この実施形態によれば、線形化器4によって線形化を図ることができるとともに、非干渉化器25によって非干渉化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、温度調節器などの制御装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る温度調節器を用いた温度制御システムの構成図である。
【図2】図1の制御対象のモデル構造および線形化器のブロック線図である。
【図3】モデルの構造についての理論的な説明に供する図である。
【図4】モデルの構造を示す図である。
【図5】2点の制御対象の等価回路図である。
【図6】容量成分を除いた等価回路図である。
【図7】熱伝達項のパラメータの同定手順を示すフローチャートである。
【図8】熱伝達項のパラメータの同定手順の説明に供する波形図である。
【図9】熱伝達項のパラメータの決定を説明するための図である。
【図10】本発明の他の実施形態の図1に対応する構成図である。
【図11】本発明の他の実施の形態の図2に対応するブロック線図である。
【符号の説明】
【0076】
1 温度調節器 2 制御対象
4 線形化器 25 非干渉化器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の非線形特性を線形化する線形化手段を備え、
前記線形化手段は、前記制御対象と外界との熱移動の影響を打ち消して線形化することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御対象の温度を検出する温度検出手段からの検出温度および目標温度に基づいて、前記制御対象に対する操作量を出力する温度制御手段と、
前記制御対象の非線形特性を線形化する線形化手段とを備え、
前記線形化手段は、前記制御対象と外界との熱伝達を打ち消して線形化することを特徴とする温度調節器。
【請求項3】
前記線形化手段は、前記検出温度と前記外界の温度との温度差を、熱伝達項を介して操作量側にフィードバックする請求項2に記載の温度調節器。
【請求項4】
前記熱伝達項は、前記制御対象のモデルの構造に基づくものであって、該モデルの構造が、前記制御対象を複数の部分に仮想的に分割したときの各部分の熱容量に対応する熱容量項、各部分間の熱伝導に対応する熱伝導項、および、各部分と外界との間の熱伝達に対応する前記熱伝達項を含む請求項3に記載の温度調節器。
【請求項5】
前記熱伝達項のパラメータが、前記制御対象を、第1,第2の目標温度にそれぞれ制御して整定させた状態において、前記目標温度または前記操作量を変化させたときの前記検出温度の変化に基づいて決定される請求項3または4に記載の温度調節器。
【請求項6】
前記温度制御手段を複数備え、各温度制御手段は、複数の前記温度検出手段からの各検出温度および目標温度に基づいて、前記制御対象に対する操作量をそれぞれ出力するものであり、
各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は低減する非干渉化手段を備え、
前記非干渉化手段は、各検出温度の差を、前記熱伝導項を介して操作量側にフィードバックする請求項4に記載の温度調節器。
【請求項1】
制御対象の非線形特性を線形化する線形化手段を備え、
前記線形化手段は、前記制御対象と外界との熱移動の影響を打ち消して線形化することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御対象の温度を検出する温度検出手段からの検出温度および目標温度に基づいて、前記制御対象に対する操作量を出力する温度制御手段と、
前記制御対象の非線形特性を線形化する線形化手段とを備え、
前記線形化手段は、前記制御対象と外界との熱伝達を打ち消して線形化することを特徴とする温度調節器。
【請求項3】
前記線形化手段は、前記検出温度と前記外界の温度との温度差を、熱伝達項を介して操作量側にフィードバックする請求項2に記載の温度調節器。
【請求項4】
前記熱伝達項は、前記制御対象のモデルの構造に基づくものであって、該モデルの構造が、前記制御対象を複数の部分に仮想的に分割したときの各部分の熱容量に対応する熱容量項、各部分間の熱伝導に対応する熱伝導項、および、各部分と外界との間の熱伝達に対応する前記熱伝達項を含む請求項3に記載の温度調節器。
【請求項5】
前記熱伝達項のパラメータが、前記制御対象を、第1,第2の目標温度にそれぞれ制御して整定させた状態において、前記目標温度または前記操作量を変化させたときの前記検出温度の変化に基づいて決定される請求項3または4に記載の温度調節器。
【請求項6】
前記温度制御手段を複数備え、各温度制御手段は、複数の前記温度検出手段からの各検出温度および目標温度に基づいて、前記制御対象に対する操作量をそれぞれ出力するものであり、
各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をなくす又は低減する非干渉化手段を備え、
前記非干渉化手段は、各検出温度の差を、前記熱伝導項を介して操作量側にフィードバックする請求項4に記載の温度調節器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−40530(P2008−40530A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209762(P2006−209762)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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