説明

制御装置におけるエラー検出

本発明は、電気的コンポーネント(1)におけるエラーを検出するためのエラー検出装置に関しており、該エラー検出装置は、電流に関する情報を検出するための第1の検出器(12)および第2の検出器(13)とトリガユニット(10)が設けられており、該トリガユニット(10)は、検出された電流に関する情報に応じて、スイッチ(S2)を用いて前記電気的コンポーネント(1)を流れる電流を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および負荷を備えた電気的コンポーネントにおけるエラー検出に関する。この場合、制御装置と同様負荷においてもエラーを検出することができる。
【背景技術】
【0002】
短絡が起こるか、許容できない大電流が流れるか、および/または相応のコンポーネントの周辺温度が限界温度以上に上昇する場合、過熱から電気的システムを保護するためには通常、電流供給線路内の電流を遮断するヒューズが使用される。さらに、発生する可能性のあるエラーケースによれば、電気的コンポーネントの制御装置内を漏れ電流またはほかの電流が流れる。この漏れ電流とは、制御装置に接続された負荷を通って流れない電流のことである。この種の制御装置内部のエラー電流によっても、場合によってはヒューズのトリガには至らないが、制御装置を過熱させるか、ほかのかたちで制御装置、電気的コンポーネントまたは電気的コンポーネントに組み込まれている最終用途形態において、損傷を引き起こすおそれがある。
【0003】
それ故に必要不可欠であるのは、必ずしも供給線路に電流を流さない電気的コンポーネントにおけるエラーも検出することであり、この電流は例えば最大許容電流を越えており、それに伴い本来はヒューズをただちにトリガするに至るものである。
【0004】
動作電流最大値を著しく下回っていても、熱が制御装置において自由に生じる場合には、コンポーネントの過熱がすでに生じてしまう可能性がある。しかしながらこのことは、殊にヒューズが制御装置外部に配置されている場合は、このヒューズによっても遅れて認識されるだけである。それ故に損傷を回避するために合理的であるのは、生じ得るエラーをより迅速に検出することである。
【0005】
本発明の課題は、供給された電流が許容最大電流以上に上昇しなくとも過熱が現れてしまう電気的コンポーネントにおけるエラーケースを確実に検出するためのエラー検出装置を提供することである。さらにこの装置は過熱、殊に制御装置の過熱が発生する前に、エラーケースを検出すべきである。加えて大電流につながるエラーケースも検出するべきであるが、しかし結果としてコンポーネントにおける過熱、例えば制御装置または負荷における強烈な短絡のような過熱を伴うことはない。
【0006】
前記課題は、請求項1記載の電気的コンポーネントにおけるエラーを検出するためのエラー検出装置と、請求項5記載のこの種のエラー検出装置と制御装置と負荷とを備えた電気的システムと、請求項8記載の電気的コンポーネントにおけるエラー検出装置の使用とによって解決される。
【0007】
本発明による別の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0008】
第1の着想によれば、エラー検出装置は電気的コンポーネントにおけるエラーを検出するために設けられている。このエラー検出装置は、電流に関する情報を検出するための第1の検出器および第2の検出器とトリガユニットを含んでいる。これによって、検出された電流に関する情報に応じて、スイッチを用いて前記電気的コンポーネントを流れる電流を遮断することができる。
【0009】
エラー検出装置は、殊に制御装置および負荷を備えたコンポーネントを監視するための使用に適している。この負荷は制御装置によって駆動制御され、例えば出力に関して、またはスイッチのオン動作ないしオフ動作およびこの種のエラーに応じて駆動制御される。
【0010】
また、トリガユニットにコンパレータを設けることができる。これによって、トリガユニットは検出された電流に関する情報を相互に比較し、検出された電流の差に応じて、電気的コンポーネントを流れる電流を遮断することができる。さらにトリガユニットには、比較の結果を積分するための積分器を設けることができ、これによってローパスフィルタでフィルタリングされた制御量を用いてスイッチを駆動制御することができる。
【0011】
1つの実施形態によれば、第1の検出器および/または第2の検出器は測定されるべき電流が案内されるシャントを有しており、その結果として電流に応じた測定電圧を供給することができる。この場合、その都度の測定電圧がトリガユニットに供給される。
【0012】
さらに、第1の検出器および/または第2の検出器をトリガユニットに配置することができる。
【0013】
別の着想によれば、負荷と該負荷を駆動制御するための制御装置とを備えた電気的コンポーネントおよび前述のエラー検出装置を設けることができる。第1の検出器は、制御装置から負荷に向かう第1の電流路において該制御装置の前に配置されており、第2の検出器は、負荷から制御装置に向かう第2の電流路において、該負荷と該制御装置の間に配置されている。
【0014】
第1の検出器と第2の検出器とトリガユニットとのうち少なくとも1つの素子は、制御装置において設けられており、このことによって、一体型の構造形式を実現することができる。
【0015】
さらに制御装置は、第1の端子線路を介して第1の直流電圧電位点と、第2の端子線路を介して第2の直流電圧電位点とに接続することができる。負荷は、第1の接続線路および第2の接続線路を介して制御装置と接続されている。制御モジュールは電力を負荷に印加するために設けられている。第1の端子線路と第1の接続線路は、制御装置を介して直接相互に接続されている。第1の検出器は、第2の端子線路に配置され、第2の検出器は、第1の接続線路に配置されている。
【0016】
別の着想によれば、電気的コンポーネントにおいて前述のエラー検出装置を使用することができ、この電気的コンポーネントは、負荷および該負荷を駆動制御するための制御装置を含んでいる。第1の検出器は、制御装置から負荷に向かう第1の電流路において該制御装置の前に配置され、第2の検出器は、負荷から制御装置に向かう第2の電流路において、該負荷と該制御装置の間に配置される。
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の有利な実施形態について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態による電気的コンポーネントにおけるエラーを検出するためのエラー検出装置を備えた電気的システムの概略図
【図2】本発明の別の実施形態による電気的コンポーネントにおけるエラーを検出するためのエラー検出装置を備えた電気的システムの概略図
【図3】本発明の第1の実施形態による電気的コンポーネントにおけるエラーを検出するためのエラー検出装置を備えた電気的システムの概略図
【0019】
図面において、同じ参照符号は同じまたは相当する機能を備えた要素を示している。
【0020】
図1には負荷2、例えばファンモータと制御装置3を備えた電気的コンポーネント1が示されている。この制御装置3には第1の端子線路4と第2の端子線路5を介して電気的エネルギ、例えば直流電流が供給されており、調整値Sに依存して負荷2に所定の電力を使用させるために、供給された調整値Sに応じて負荷2を駆動制御している。例えば制御装置3は、調整値Sに応じて制御モジュール6を用いることでパルス幅変調信号を形成することができ、このパルス幅変調信号によって第1のスイッチS1が駆動制御、例えば開閉される。この調整値Sは制御装置3内のスイッチS1のオン状態とオフ状態の間のオンオフ比を定めており、すなわち調整値Sに応じて、スイッチS1が閉じている時間およびスイッチS1が開いている時間が、規定のサイクルタイムにわたって定められるということである。制御装置3内の第1のスイッチS1は有利には電力用トランジスタとして形成されている。代替的には制御装置は、例えば調整値Sに応じた別の手段で負荷を駆動制御することもでき、例として予め定められた機能によるスイッチの開閉動作が挙げられる。
【0021】
制御装置3は、電気的エネルギを供給するために第1の接続線路7および第2の接続線路8を介して負荷2と接続されている。図示の実施例では、第1の端子線路4は制御装置3を通って直接第1の接続線路7と接続されており、第2の端子線路5は第1のスイッチS1を介して第2の接続線路8と接続されている。当然スイッチS1は第1の端子線路4と第1の接続線路7の間の接続部に配置されていてもよい。
【0022】
エラーケースを電気的コンポーネント1におけるエラー電流に基づいて検出するために、さらにトリガユニット10が設けられており、エラーケースの検出に応じて第2のスイッチS2によってコンポーネントを流れる電流を遮断している。この第2のスイッチS2は端子線路のうち1つ、例えば図1に示されているような第2の端子線路において接続されており、第2のスイッチS2をトリガケースにおいて開くために、制御線路11を通るトリガユニット10からの制御信号によって駆動制御される。このことによってエラーケースにおいては、電気的エネルギの制御装置3内への供給および負荷2への供給が遮断される。正常なケース、すなわちエラーが現れない場合には、第2のスイッチS2は閉じられている。
【0023】
第1の検出器12は第2の供給線路5に配置され、第2の検出器13は制御装置3と負荷2の間の第1の接続線路7に配置されており、これら検出器を用いて電流がそれぞれの線路において検出され、トリガユニット10において評価される。この第1の検出器12および第2の検出器13は、次のように配置されている。すなわち、これら検出器の間に負荷2、例えばモータおよび制御装置3の電流路が配置されるようにである。したがって、正常なケースでは両検出器12と13の間の電流路を流れる電流によって、トリガユニット10において電流の差が検出されることになる。この電流の差の検出は、トリガユニット10内のコンパレータ15によって行われ、このコンパレータ15の出力側から第2のスイッチS2に対する制御信号が生じる。このトリガユニット10は、電流の差の検出によって規定されているエラーケースにおいて、第2のスイッチS2を駆動制御して、第2のスイッチS2を開くのである。
【0024】
このように検出される可能性があるのは、第1の検出器12から第2の検出器13までの間の電流路の電流が、適切な端子線路ないし接続線路を介さずに流れる場合、すなわち負荷2における電流ないし制御装置3から別の電位、例えばアース電位に向かう電流が、適切な端子線路ないし接続線路を介さずに流れる場合である。例えば、自動車において端子線路を介して直流電圧が印加されており、負荷2においては、負電位(または相対的に負となる電位)にある接続線路に加えて、負電位におかれているほかの導電性領域(ケーシング等)も存在する可能性がある。このことは、第1の端子線路4と負荷2の間の破線で描いたアース線路14によって示されている。第2の接続線路を介する電流(正電位(相対的に正の電位))がアース線路14(負荷におけるアース分路に相当する)を介して流出してしまう場合には、検出器12,13を流れる電流は不均等であり、エラーが検出される。
【0025】
制御装置3は用途に応じて、非導電性ケーシング内に組み込まれているため、その中にある電気的素子ないし電子素子は通常フローティング状態にある。すなわち内部線路が、端子線路4,5を介して電流供給されなければ、他の電位(例として負電位のような電位)とは通常接触することはあり得ない。しかしながらあり得るのは、制御装置3にとって別のエラーケースが検出されることであり、このエラーの際には、短絡ないし橋絡が端子線路4,5の両電位の間でエラー電流を引き起こす。このことは検出器12,13の個別の配置によって容易に突きとめることができる。この場合制御装置3と負荷2の配置構成に関しては、第1の検出器12は制御装置3の前で、第2の検出器13は制御装置3の後ろで検出する。
【0026】
検出器12,13は適切な線路に配置され、信号線路を介してトリガユニット10と接続することができる。代替的には、相応の電流供給線路が、エラーケースを突きとめるために、図2に示したようなトリガユニット10を通って案内され、ここで測定されそして比較されてもよい。さらに第2のスイッチS2はトリガユニット10に配置され、相応してコンパレータ15と接続されていてもよい。
【0027】
例えば検出器12,13は、電流に比例する電圧が測定されるシャント、すなわち較正された測定抵抗として形成されており、この電圧はコンパレータ15を介して互いに比較される。これは電圧が互いに異なる場合にエラーケースを突きとめるためである。この場合、エラーケースに該当する偏差は検出された差の値が差の閾値を超過した後にはじめて検出することができる。したがって換言すれば、電流を比較するときにトレランスを考慮することができ、このため電流の差が所定の絶対値を超過したときにのみ、トリガが行われるのである。これは、測定抵抗であるシャントを使用する際には電圧の差に対する相応の閾値とすることができる。差の閾値を設けることによって有用であるのは、トリガユニット10によって突きとめられる電流の差の原因となり得る所定の電流消費を、制御モジュールが考慮すべき場合である。
【0028】
コンパレータ15において検出された(該当の)電圧差によって、第2のスイッチS2が開かれるトリガを直ちに生じさせることができる。代替的には、この電圧差は、例えば積分器として形成され得るローパスフィルタ16を介してフィルタリングされる。その結果として、所定時間にわたる電圧差の積分値が所定の閾値を超えてはじめて、トリガが行われるのである。
【0029】
図3には、別の実施形態が示されており、トリガユニット10が制御装置3内に組み込まれている。それに加えて、検出器12,13、第2のスイッチS2並びにトリガユニット10も制御装置3内に設けられている。第1の検出器12は、第2の端子線路5が接続されている端子に近接して制御装置3に配置されており、この制御装置3に第2の端子線路5(ないしは第1の端子線路4)が接続されている。第2の検出器13は、制御装置3の第1の接続線路7(ないしは第2の接続線路8)が接続されている端子に近接して配置されている。
【0030】
制御装置3は、遮断されたシステム全体において制御装置を電流節約モードに移行させるスリープスイッチ(Schlaf-Schaltung)(図示せず)を備えることができる。制御装置3の起動は、第1の検出器12において電圧を検出することによって行われる。
【0031】
本発明のスイッチング装置は次のとおりの利点を有している。すなわち、別の電位に向かう負荷2内の電流の流れによっても制御装置3における内部の短絡によってもトリガケースを生じさせるという利点である。この内部の短絡とは、電流の一部が負荷2を流れず、内部の供給線路の間を流れてしまうことである。
【0032】
検出器として、前述の実施形態において測定抵抗(シャント)が設けられており、電流の差を求めるためにコンパレータ15が使用される。このことは、殊に供給電流として直流電流を供給する場合に有用である。流れる電流の検出および比較を、ほかの測定方法によって行ってもよい。例えば供給電流として交流電流を使用する場合には、リングコイルが設けられる。この場合、リングコアを介して、電流測定が行われるべき両電流供給線路が案内される。リングコイルにおいては差電流が誘導され、この差電流から制御信号が定められる。また、電流センサとしてホールセンサ、巨大磁気抵抗センサ等も使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的コンポーネント(1)におけるエラーを検出するためのエラー検出装置において、
電流に関する情報を検出するための第1の検出器(12)および第2の検出器(13)とトリガユニット(10)が設けられており、
前記トリガユニット(10)は、検出された電流に関する情報に応じて、スイッチ(S2)を用いて前記電気的コンポーネント(1)を流れる電流を遮断することを特徴とするエラー検出装置。
【請求項2】
前記トリガユニット(10)はコンパレータ(15)を含み、検出された電流に関する情報が相互に比較され、検出された電流の差に応じて前記電気的コンポーネント(1)を流れる電流が遮断され、
さらに前記トリガユニット(10)は、比較結果を積分するための積分器(16)を含んでおり、前記スイッチ(S2)は、ローパスフィルタでフィルタリングされた制御量を用いて駆動制御される、請求項1記載のエラー検出装置。
【請求項3】
前記第1の検出器(12)および/または第2の検出器(13)は、測定されるべき電流が案内されるシャントを有し、電流に応じた測定電圧を供給し、前記トリガユニット(10)に測定電圧が供給される、請求項1または2記載のエラー検出装置。
【請求項4】
前記第1の検出器(12)および/または第2の検出器(13)が、前記トリガユニット(10)に配置されている、請求項1から3のいずれか1項記載のエラー検出装置。
【請求項5】
電気的システムにおいて、
負荷(2)および該負荷(2)を駆動制御するための制御装置(3)を備えた電気的コンポーネント(1)と請求項1から4のいずれか1項記載のエラー検出装置が設けられており、
前記第1の検出器(12)は、前記制御装置(3)から前記負荷(2)に向かう第1の電流路において前記制御装置(3)の前に配置されており、
前記第2の検出器(13)は、前記負荷(2)から前記制御装置(3)に向かう第2の電流路において、前記負荷(2)と前記制御装置(3)の間に配置されていることを特徴とする電気的システム。
【請求項6】
前記第1の検出器(12)と前記第2の検出器(13)と前記トリガユニット(10)とのうち少なくとも1つの素子が、前記制御装置(3)において設けられている、請求項5記載の電気的システム。
【請求項7】
前記制御装置(3)は、第1の端子線路(4)を介して第1の直流電圧電位点と、第2の端子線路(5)を介して第2の直流電圧電位点とに接続されており、
前記負荷(2)は、第1の接続線路(7)および第2の接続線路(8)を介して前記制御装置(3)と接続されており、
電力を前記負荷(2)に印加するために制御モジュール(6)が設けられており、
前記第1の端子線路(4)と前記第1の接続線路(7)は、前記制御装置(3)を介して直接接続されており、
前記第1の検出器(12)は、前記第2の端子線路(5)に配置されており、
前記第2の検出器(13)は、前記第1の接続線路(7)に配置されている、請求項5または6記載の電気的システム。
【請求項8】
電気的コンポーネント(1)における請求項1から4のいずれか1項記載のエラー検出装置の使用方法において、
前記電気的コンポーネント(1)は、負荷(2)と該負荷(2)を駆動制御するための制御装置(3)とを含んでおり、
前記第1の検出器(12)は、前記制御装置(3)から前記負荷(2)に向かう第1の電流路において前記制御装置(3)の前に配置され、
前記第2の検出器(13)は、前記負荷(2)から前記制御装置(3)に向かう第2の電流路において、前記負荷(2)と前記制御装置(3)の間に配置されることを特徴とする使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−522531(P2010−522531A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500154(P2010−500154)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050931
【国際公開番号】WO2008/116676
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】