説明

制振材用水添共重合体及びアスファルト制振材組成物

【課題】成形加工性に優れ、より軽量化を可能にし、且制振・遮音性能にも優れる制振材用水添共重合及びアスファルト制振材組成物の提供。
【解決手段】共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添ランダム共重合体を水添して得られる制振材用水添共重合体(A)であって、該制振材用水添共重合体(A)が次の特性(1)〜(4)を有する:(1)GPCによるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で4万〜40万であり、(2)(A)中に含まれる該ビニル芳香族単量体単位の含有量が20〜80重量%の範囲であり、(3)(A)における該共役ジエン単量体単位からなる該非水添重合体のビニル結合量は40%未満であり、(4)(A)に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて、損失係数(tanδ)のピークが−40℃以上、70℃未満の範囲に少なくとも1つ存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振材用水添共重合体及びアスファルト制振材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動力部を有する産業機器には、動力部から発生する振動、騒音を防止した制振シートや遮音シートが装着されている。例えば、自動車の場合は走行中の振動を防止するために車体底部やエンジンルームから発生するエンジン音や振動を自動車室内に伝えないようにエンジンルームと自動車室内の境界などに、かかる制振シートや遮音シートが装着されている。また、同様に駆動部を有する家電なども動力部から発生する振動や騒音を防止するための制振シートや遮音シートが装着されている。さらに、構造物である鉄筋コンクリート製建築や木造建築のビル、マンション、一般住宅の床は、いずれも床から階下に伝わる床衝撃音が問題となっている。
【0003】
これらの衝撃音を階下に伝えないために、様々な床の構造あるいは様々な床構成材の組み合わせ及び遮音シート等を敷く等により、対策が採られている。制振材、遮音材として、SBS、SIS、SEBS、SEPS等のスチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、天然ゴム、IR、SBR、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等、種々のゴム質重合体をベースとした樹脂組成物やアスファルト組成物等が使用されている。
【0004】
例えば、特開2002−284830(特許文献1)には、芳香族ビニルモノマーからなる重合体ブロックとイソプレンとスチレンの混合物からなる重合体ブロックからなるブロック共重合体が開示されている。また、特開平8−128128には、石油系アスファルト、熱可塑性エラストマー、鉱物粒、鉄粉及び界面活性剤からなる組成物が開示されている。
【特許文献1】特開2002−284830号公報
【特許文献2】特開平8−128128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の制振材、遮音材は特定の温度では性能が優れるものの、その温度以外では必ずしも満足な性能を有していなかった。そのため、構造や構成材の組合せにより対応しているのが現状である。従って、複雑な構造や構成材の組合せすることなく、より簡便で薄いシート状の制振材、遮音材の開発が期待されている。
【0006】
本発明は、このような市場要求に鑑み、従来の制振材、遮音材にない、成形加工性に優れ、より軽量化を可能にし、且つ各温度に優れた制振・遮音性能にも優れる制振材及びアスファルト制振材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、ある特定の共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添ランダム共重合体を水添して得られる水添共重合体及び該水添共重合体を含有するアスファルト制振材組成物によって、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添ランダム共重合体を水添して得られる制振材用水添共重合体(A)であって、該制振材用水添共重合体(A)が、次の特性(1)〜(4)を有する制振材用水添共重合体(A):
(1)該水添共重合体(A)のGPCによるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で4万〜40万であり、
(2)該水添共重合体(A)中に含まれる該ビニル芳香族単量体単位の含有量が20〜80重量%の範囲であり、
(3)該水添共重合体(A)における該共役ジエン単量体単位を含む該非水添重合体のビニル結合量は40%未満であり、
(4)該水添共重合体(A)に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて、損失係数(tanδ)のピークが−40℃以上、70℃未満の範囲に少なくとも1つ存在する、
[2] 前項[1]に記載の該制振材用水添共重合体(A)をブロックとして少なくとも1個含む、制振材用水添ブロック共重合体、
[3] ビニル芳香族単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(B)を、さらに含む、前項[2]に記載の制振材用水添ブロック共重合体、
[4] 該ブロック共重合体中における全ビニル芳香族単量体単位の含有量が40〜80重量%である前項[3]に記載の制振材用水添ブロック共重合体、
[5] 該ブロック共重合体中におけるビニル芳香族単量体単位を含む重合体ブロック(B)の割合が40重量%未満である前項[3]又は[4]に記載の制振材用水添ブロック共重合体、
[6] 前項[2]〜[5]のいずれか一項に記載の水添ブロック共重合体を架橋してなる制振材、
[7] 前項[2]〜[5]のいずれか一項に記載の水添ブロック共重合体と、他のゴム質重合体と、を含む制振材、
[8] 架橋して得られる前項[7]に記載の制振材、
[9] 前項[2]〜[5]のいずれか一項に記載の水添ブロック共重合体と、アスファルトと
を含むアスファルト制振材組成物、
[10] 成分(イ)として、前項[2]〜[5]のいずれか一項に記載の制振材用水添ブロック共重合体、又は該水添ブロック共重合体と他のゴム質重合体との組成物と、成分(ニ)として、アスファルトと、を含むアスファルト制振材組成物、
[11] 成分(ロ)として、粘着付与材樹脂を、さらに含む前項[10]に記載のアスファルト制振材組成物、
[12] 成分(ハ)として、軟化剤を、さらに含む前項[10]または[11]に記載のアスファルト制振材組成物、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形加工性に優れ、より軽量化を可能にし、且つ各温度に優れた制振・遮音性能にも優れる制振材及びアスファルト制振材組成物が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の制振材用水添共重合体は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添ランダム共重合体を水添して得られる水添共重合体(A)である。制振材用水添共重合体(A)をブロックとして少なくとも1個含む、制振材用水添ブロック共重合体とすることもできる。
【0011】
共役ジエン単量体単位とは、単量体である共役ジエンを重合して結果生じる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−ブタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル1,3−ブタジエン等の単量体が挙げられ、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの単量体は、単独でも2種以上の併用でもよい。
【0012】
また、ビニル芳香族単量体単位とは、単量体であるビニル芳香族化合物を重合して結果生じる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。ビニル芳香族としては、例えばスチレン、P−メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等の単量体が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。これらの単量体は、単独でも2種以上の併用でもよい。
【0013】
さらに、水添共重合体(A)中に含まれる該ビニル芳香族単量体単位の含有量は、得られる水添共重合体(A)の制振性能の観点から、20〜80重量%の範囲であり、好ましくは25〜75重量%、より好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは35〜50重量%の範囲である。
【0014】
またさらに、水添共重合体(A)の水添前重合体における共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物の使用により任意に変えることができる。本発明において、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非(水添前)水添ランダム共重合体ブロック中の共役ジエン単量体単位のビニル結合量は得られる水添共重合体の制振性能の観点から、40%未満であり、好ましくは30%未満、より好ましい範囲としては20%未満である。なお、ビニル結合量は水添後においても、NMRを使用することにより測定できる。
【0015】
本発明の水添共重合体(A)のピーク分子量は、4万〜40万である。本発明の水添共重合体(A)は、ピーク分子量が上記範囲にあることにより、機械的強度と成形加工性とのバランスに優れる。機械的強度や衝撃吸収性と成形加工性とのバランスの点からは、本発明の水添共重合体(A)のピーク分子量は、好ましくは6万〜35万、より好ましくは8万〜30万である。
【0016】
本発明の水添共重合体(A)は、該水添共重合体(A)に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが−40℃以上、70℃未満、好ましくは−30℃〜60℃、より好ましくは−20〜50℃、さらに好ましくは0〜50℃の範囲に少なくとも1つ存在する。損失正接のピークが、−40℃以上、70℃未満の範囲に少なくとも1つ存在することは、水添共重合体(A)の低温特性、衝撃吸収性と柔軟性とのバランスの点で必要である。なお、動的粘弾性スペクトルにおける損失正接(tanδ)のピークは、粘弾性測定解析装置を用い、周波数を10Hzとして測定される。
【0017】
本発明の水添共重合体(A)のtanδ値は、1.0以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましい。tanδの値が1.0以上でかつその値が大きいほど制振性能が優れる。
【0018】
本発明の水添ブロック共重合体は、前述の水添共重合体(A)からなるブロックと、ビニル芳香族単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(B)とを含む水添ブロック共重合体である。
【0019】
ここで、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックとは、ビニル芳香族単量体単独重合体ブロックまたはビニル芳香族単量体を50重量%以上含有する実質的にビニル芳香族単量体を主成分とする共重合体ブロックを示す。水添ブロック共重合体中における重合体ブロック(B)の含有量は、得られる水添共重合体の機械的強度と衝撃吸収性とのバランスの点から、好ましくは40〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%である。
【0020】
また、水添ブロック共重合体におけるビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロック(B)の割合は、機械的強度と衝撃吸収性とのバランスの点から好ましくは40重量%未満である。
【0021】
本発明において、水添共重合体(A)とビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロック(B)とを含む水添共重合体の具体的な構造としては、
(A−B)n、 A−(B−A)n、 B−(A−B)n
[(B−A)n]m+1−X、 [(A−B)n]m+1−X
[(B−A)n−B]m+1−X、[(A−B)n−A]m+1−X
(上式において、Aは水添共重合体ブロックであり、Bはビニル芳香族単量体単位を含む重合体ブロックである。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。また、nは1以上の正数、一般に1〜5の整数である。mは1以上の正数、一般に1〜10の整数である。Xは、例えば四塩化ケイ素等の多価ハロゲン化有機ケイ素化合物、四塩化スズ等の多価ハロゲン化有機スズ化合物、エポキシ化大豆油、2〜6官能のエポキシ基含有化合物、ポリハロゲン化炭化水素、カルボン酸エステル、ジビニルベンゼン等のポリビニル化合物、炭酸ジメチル等の炭酸ジアルキル類等のカップリング剤残基又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。)
【0022】
本発明を構成する水添共重合体(A)の水添前共重合体ブロックは、例えば不活性炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を重合開始剤として所定比率のスチレンとブタジエンを同時に仕込み、重合させることにより得られる。その際、分子量は有機リチウム化合物量を制御することにより調整される。
【0023】
本発明で使用される不活性炭化水素溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒が使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
また、本発明で使用される有機リチウム化合物としては、公知の化合物、例えばエチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、プロペニルリチウム、ヘキシルリチウム等があげられる。中でもn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。有機リチウム化合物は1種のみならず、2種以上の混合物としても用いられる。その使用量は、所望のピーク分子量が得られるような範囲で選択される。
【0025】
水添共重合体(A)中の共役ジエン化合物のビニル結合量を調整するために、例えば、エーテル類や第三級アミン類等、具体的には、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、α−メトキシテトラヒドロフラン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等から選ばれる1種または2種以上の混合物が使用される。
【0026】
上記の方法で重合した非水添重合体の共役ジエンに由来する不飽和二重結合の水素化することにより得られる。水素化触媒に特に限定されるものではなく、公知の水素化触媒技術を用いることができる。水添触媒の例として次のものが挙げられる:
(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持した担持型不均一系水添触媒;
(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩を有機アルミニウム等の還元剤とともに用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒;及び
(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒。
【0027】
具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報(米国特許第4,501,857号に対応)、特公平1−37970号公報(米国特許第4,673,714号に対応)、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒の例としては、チタノセン化合物、及びチタノセン化合物と還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
【0028】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できる。具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。また、還元性有機金属化合物の例としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物が挙げられる。
【0029】
上記の水添反応により、水添共重合体の溶液が得られる。水添共重合体(A)の溶液から必要に応じて触媒残査を除去し、水添共重合体(A)を溶液から分離する。溶媒を分離する方法の例としては、水添後の反応液にアセトンまたはアルコール等の水添共重合体(A)に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法;反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法;及び重合体溶液を直接加熱して溶媒を留去する方法、が挙げられる。
【0030】
本発明の水添共重合体(A)の水添率は、特に限定されるものではないが、10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。特に熱安定性が要求される用途では少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。また、加工性が要求される用途では、水添率は10〜90%、好ましくは20〜80%、より好ましくは30〜70%である。
【0031】
水添共重合体(A)からなるブロックとビニル芳香族単量体重合体ブロック(B)とを含む水添ブロック共重合体は、例えば不活性炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を重合開始剤としてスチレンを重合させ、次いで、所定比率のスチレンとブタジエンを同時に仕込み、重合させ、さらに場合によりこれらの操作を繰り返す方法により得られる。
【0032】
本発明の水添ブロック共重合体をカップリング方法により得られる場合、カップリング剤としては、例えば2官能性のエポキシ化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランのようなアルコキシケイ素化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチルのようなエステル化合物、ジビニルベンゼン等のようなビニルアレン類、ジクロルジメチルシラン、フェニルメチルジクロロシランのようなハロゲン化ケイ素化合物、ジクロルジメチルスズ、テトラクロロスズのようなスズ化合物、テトラクロロシランのようなケイ素化合物等が挙げられる。カップリング剤化合物は単独で使用してもよいし、2種以上の混合物で使用してもよい。
【0033】
本発明において、架橋してなる水添ブロック共重合体は、架橋物の状態で耐熱性、耐屈曲性や耐油性を発揮する。架橋剤の種類は特に限定されるものではなく、一般的に使用されるものでよい。架橋剤として具体的なものは、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不活性硫黄等の硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール、ジスルフィド、高分子多硫化物等の硫黄化合物、セレニウム、テリリウム、酸化マグネシウム、リサージ、亜鉛華等の無機加硫剤、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイル・キノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン等のオキシム類、ニトロソ化合物、ヘキサメチレン・ジアミン、トリエチレン・テトラミン、テトラエチレン・ペンタミン、ヘキメチレンジアミン・カルバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメート、4,4’−メチレンビス−(2−クロロアニリン)等のポリアミン、第三ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3,テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン2,5−ジヒドロペルオキシド、ジ−第三ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、第三ブチルクミルペルオキシド、1,1−ビス(第三ブチルペルオキシ)シクロドデカン等の有機ペルオキシド、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物およびトリアジン−ホルムアルデヒド縮合物、オクチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、アリキルフェノール・スルフィド樹脂、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等の樹脂加硫剤等が挙げられる。架橋剤の配合量は、水添ブロック共重合体100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。0.1重量部未満の場合には架橋剤添加効果がなく、5重量部を超えても本発明が目的とする効果を超える効果は発現されない。架橋剤で水添ブロック共重合体を架橋する方法は、通常実施される方法で行うことができる。例えば、120〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で架橋する。
【0034】
本発明の水添ブロック共重合体と他のゴム質重合体とを含む制振材は、柔軟性に富み、耐衝撃性に優れる。ゴム質重合体は、特に限定されるものではないが、具体的なものとしては、天然ゴム、合成ゴム(SBR、IR、NBR、EPDM等)、熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、エステル系、塩ビ系等)等が挙げられる。ゴム質重合体の配合量は、水添共重合体100重量部に対して、200重量部未満、好ましくは100重量部未満である。200重量部以上だと本発明が目的とする効果を超える効果は発現されない。このように水添共重合体にゴム質重合体を配合したものを前述の架橋剤を用いて架橋体として用いることもできる。
【0035】
本発明のアスファルト制振材組成物とは、本発明の水添ブロック共重合体とアスファルトを必須成分とし、溶融粘度が低く加工性、広範な温度領域での制振性、基材との接着力特に低温接着力に優れる性質を示す組成物をいう。具体的には、動的粘弾性スペクトルにおいて、0℃以上70℃以下の範囲では、動的弾性率(G’)が10000Pa以上、損失係数(tanδ)が0.2以上であるアスファルト制振材組成物をいう。
【0036】
本発明のアスファルト制振材組成物では、成分(イ)としては、前記の水添ブロック共重合体、又は該水添ブロック共重合体と他のゴム質重合体との組成物が使用され、他のゴム質重合体としては、天然ゴム、合成ゴム(SBR、IR、NBR、EPDM等)、熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、エステル系、塩ビ系等)等が挙げられる。成分(イ)の配合量は3〜40重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0037】
本発明のアスファルト制振材組成物では、成分(ロ)としては、得られるアスファルト制振材の用途、要求性能によって、多種多様の粘着付与剤樹脂が選択される。例えば、クマロン系樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、水添脂環族系炭化水素樹脂、水添テルペン系樹脂、水添ロジン系樹脂等の公知の粘着付与剤樹脂が挙げられ、これらの粘着付与剤樹脂は2種以上の混合使用も可能である。成分(ロ)を使用する場合は、0〜60重量部、1〜50重量部が好ましい。
【0038】
本発明のアスファルト制振材組成物では、成分(ハ)として軟化剤を使用することができる。軟化剤の種類は制限されるものではなく、公知のパラフィン系やナフテン系、アロマ系のプロセスオイル及びこれらの混合オイルを使用することができる。成分(ハ)を使用する場合は、0〜50重量部、1〜40重量部が好ましい。
【0039】
本発明のアスファルト制振材組成物では、また、成分(ニ)としてアスファルトは、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したものなどを挙げることができ、その主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものである。具体的には、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤等を使用することができる。これらは混合して使用してもよい。本発明においては、針入度が30〜300のストレートアスファルトが好ましい。成分(ニ)の配合量は5〜97重量部、10〜80重量部が好ましい。
【0040】
本発明の水添ブロック共重合体及びアスファルト制振材組成物には、必要により、所定量の酸化防止剤を添加する。また、本発明の制振材組成物のさらなる熱安定性の向上をはかるために制振材組成物配合時に酸化防止剤を添加することも可能である。酸化防止剤は、ブロック共重合体酸化防止剤としては、例えば、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−O−クレゾール、2,4−ビス(n−ドデシルチオメチル)−O−クレゾール、2,4−ビス(フェニルチオメチル)−3−メチル−6−tert−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2‘−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−tert−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)−エチル〕−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等のヒンダードフェノール系化合物、ペンタエリストール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート )、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系化合物、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルフォスファイト)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系化合物等が挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用できる。これらの添加量は用途により任意であるが、好ましくはアスファルト制振材組成物100重量部に対して5重量部以下である。
【0041】
上記の酸化防止剤、光安定剤以外に、本発明の制振材用組成物には、必要により各種添加剤、例えばシリカ、タルク、炭酸カルシウム、鉱物質粉末、ガラス繊維等の充填剤や補強剤、鉱物質の骨材、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類、あるいは、アゾジカルボンアミド等の発泡剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、汎用ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂等の合成樹脂を添加してもよい。
【0042】
本発明の水添ブロック共重合体と架橋剤、ゴム質重合体、アスファルト等を混合する方法は特に限定されるものではなく、所望により前記の各種添加剤を、公知の混合機、熱溶融釜、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等により加熱溶融混練し、均一混合する方法で調製される。また、シート状に成形加工する場合は、カレンダーロール、押出機、プレス等により、加熱溶融させ、成形できる。
【実施例】
【0043】
本発明を更に詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本発明の説明及びそれによって得られる効果などを具体的に示すものであって、本発明の範囲をなんら限定するものではない。なお、各種測定は下記の方法に従った。
【0044】
重合体の特性や物性の測定は次の方法で行った。
I.各種の水添共重合体
I−1)スチレン含有量
スチレン単量体単位の水添共重合体ブロックに対する含有率は、ベース非水添共重合体を検体として、紫外線分光光度計(UV−2450:島津製作所製)を用いて測定した。スチレン単量体単位の水添共重合体ブロックに対する含有率は、スチレン単量体単位のベース非水添共重合体に対する含有率として求めた。
なお、水添共重合体を検体とする場合は、核磁気共鳴装置(ドイツ国BRUKER社製、DPX−400)を用いて測定した。
【0045】
I−2)スチレン重合体ブロック含有量
非水添共重合体のスチレン重合体ブロック含有量は、I.M.Kolthoff, et. ,J.Polym. Sci.1,429(1946)に記載の四酸化オスミウム分解法で測定した。非水添共重合体の分解にはオスミウム酸の0.1g/125ml第3級ブタノール溶液を用いた。ここで得られるスチレン重合体ブロック含有量をOs値とした。
なお、水添共重合体のスチレン重合体ブロック含有量を測定する場合は、核磁気共鳴装置(JMN−270WB;日本電子社製)を使用して、Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法に準じて測定した。具体的には、水添共重合体の30mgを1gの重クロロホルムに溶解したものを試料とし、1H−NMRを測定した。NMR測定によって得られる水添共重合体のスチレン重合体ブロック含有量(Ns値)は、全積算値、化学シフト6.9〜6.3ppmの積算値、及び化学シフト7.5〜6.9ppmの積算値から求め、Ns値をOs値に換算した。計算方法を下記に示す。
【0046】
ブロックスチレン(St)強度
=(6.9〜6.3ppm)積算値/2
ランダムスチレン(St)強度
=(7.5〜6.9ppm)積算値−3(ブロックSt強度)
エチレン・ブチレン(EB)強度
=全積算値−3{(ブロックSt強度)+(ランダムSt強度)}/8
NMR測定によって得られるスチレン重合体ブロック含有量(Ns値)
=104(ブロックSt強度)/[104{(ブロックSt強度)+(ランダムSt強度)}+56(EB強度)]
Os値=−0.012(Ns値)2 +1.8(Ns値)−13.0
【0047】
I−3)ビニル結合量
水添前共重合ブロック中の共役ジエン単量体部分のビニル結合量は、水添前に赤外分光光度計(FT/IR−230;日本分光社製)を用いて測定した。共重合体ブロックである共役ジエン/スチレンランダム共重合体ブロックのビニル結合量はハンプトン法により算出した。
【0048】
I−4)ピーク分子量
水添共重合体のピーク分子量は、GPCにより測定した(米国ウォーターズ社製の装置を用いた)。溶媒としてテトラヒドロフランを用い、温度35℃で測定した。分子量が既知の市販の標準単分散ポリスチレン系ゲルを用いて作成した検量線を使用し、GPCクロマトグラムからピーク分子量を求めた。
【0049】
I−5)共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率
水添率は、核磁気共鳴装置(DPX−400:ドイツ国BRUKER社製)を用いて測定した。
【0050】
I−6)損失正接(tanδ)、損失係数のピーク温度及び動的弾性率(G’)
粘弾性測定解析装置(型式DVE−V4;(株)レオロジ社製)を用い、粘弾性スペクトルを測定することにより求めた。測定周波数は、10Hzであった。
【0051】
実施例及び比較例において共重合体の水添反応に用いる水添触媒は、次のように製造した。
【0052】
参考例1;水添触媒の調製
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジ−(p−トリル)40ミリモルと分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムとを溶解した後、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して、室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加して攪拌することにより、水添触媒を得た。
【0053】
[実施例1]
内容積が10リットルの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用して、非水添共重合体の連続重合を以下の方法で行った。
ブタジエン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を3.48リットル/hr、スチレン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を6.43リットル/hr、モノマー(ブタジエンとスチレン合計)100重量部に対するn−ブチルリチウムの量が0.091重量部となるような濃度に調整したn−ブチルリチウムのシクロヘキサンの2.0リットル/hrで反応器の底部にそれぞれ供給し、90℃で連続重合した。反応温度はジャケット温度で調整し、反応器の底部付近の温度は約88℃、反応器の上部付近の温度は約90℃であった。重合反応器における平均滞留時間は約45分であり、ブタジエンの転化率は、ほぼ100%、スチレンの転化率は99%であった。
連続重合で得られた非水添共重合体を分析したところ、スチレン含有量が67重量%、ポリスチレンブロック含有量が2重量%、ブタジエン部分のビニル結合量が15重量%であった。
次に、連続重合で得られた非水添共重合体に、上記非水添触媒を非水添共重合体100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加してオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加し、水添共重合体(ポリマー1)を得た。
ポリマー1の水添率は98%、ピーク分子量は17万であった。ポリマー1の特性を表1に示した。
【0054】
[実施例2]
実施例1と同じ反応器を2基使用し、非水添共重合体の連続重合を以下の方法で行った。1基目に供給するブタジエン溶液の供給量を4.51リットル/hr、スチレン溶液の供給量を5.97リットル/hr、n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して、0.082重量部となる濃度に変更し、極性化合物としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとする。)を添加して、実施例1と同様の方法で連続重合した。
1基目から出たポリマー溶液を2基目の底部へ供給し、それと同時に、スチレン溶液の供給量を2.38リットル/hrにし、連続重合して、共重合体(非水添共重合体)を得た。2基目の出口におけるスチレンの添加率は98%であった。次に実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー2)を得た。ポリマー2の特性を表1に示した。
【0055】
[実施例3]
供給するブタジエンの溶液の供給量を4.25リットル/hr、スチレン溶液の供給量を4.98リットル/hr、n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して、0.044重量部となる濃度に変え、TMEDAを添加する以外は、実施例1と同様の方法で連続運転を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー3)を得た。ポリマー3の特性を表1に示した。
【0056】
[実施例4]
n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して、0.167重量部となる濃度に変える以外は、実施例2と同様の方法で、反応器を2基使用し、連続運転を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー4)を得た。ポリマー4の特性を表1に示した。
【0057】
[実施例5]
実施例1と同じ反応器を3基使用し、非水添共重合体の連続重合を以下の方法で行った。
1基目に供給するスチレンの供給量を0.77リットル/hr、n―ブチルリチウムの供給量を0.097重量部に変更し、TMEDAを添加して、実施例1と同様の方法でスチレンだけを連続重合した。
1基目から出たポリマー溶液を2基目の底部へ供給し、それと同時に、ブタジエン溶液の供給量を3.18リットル/hr、スチレン溶液の供給量を5.59リットル/hrにし、連続重合した。
さらに、2基目から出たポリマー溶液を3基目の底部へ供給し、それと同時に、スチレン溶液の供給量を0.77リットル/hrにし、連続重合して、共重合体(非水添共重合体)を得た。3基目の出口におけるスチレンの添加率は99%であった。次に実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー5)を得た。ポリマー5の特性を表1に示した。
【0058】
[実施例6]
供給するブタジエンの溶液の供給量を6.24リットル/hr、スチレン溶液の供給量を2.16リットル/hr、n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して、0.052重量部となる濃度に変え、TMEDAを添加する以外は、実施例1と同様の方法で連続運転を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例2と同様に2基目のスチレン溶液の供給量を2.06リットル/hr供給し、連続重合して、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー6)を得た。ポリマー6の特性を表1に示した。
【0059】
[実施例7]
n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して、0.113重量部となる濃度に変える以外は、実施例2と同様の方法で、反応器を2基使用し、連続運転を行い、得られた非水添共重合体をカップリング率が50%なるように安息香酸エチルでカップリングし、カップリングタイプの非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー7)を得た。ポリマー7の特性を表1に示した。
【0060】
[実施例8]
n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して、0.121重量部となる濃度に変える以外は、実施例2と同様の方法で、反応器を2基使用し、連続運転を行い、得られた非水添共重合体をカップリング率が70%なるように安息香酸エチルでカップリングし、カップリングタイプの非水添共重合体を得た。次に、チタンの添加量を30ppmとし、水添率が30%になるように水素を供給する以外は実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー7)を得た。ポリマー7の特性を表1に示した。
【0061】
[比較例1]
供給するブタジエンの溶液の供給量を5.82リットル/hr、スチレン溶液の供給量を1.12リットル/hr、n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して、0.047重量部となる濃度に変え、TMEDAを添加する以外は、実施例1と同様の方法で連続運転を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例2と同様に2基目のスチレン溶液の供給量を1.73リットル/hrに変更し、連続重合して、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー9)を得た。ポリマー9の特性を表1に示した。
【0062】
[比較例2]
実施例5と同様に反応機を3基使用し、1基目に供給するスチレンの供給量を0.97リットル/hr、n―ブチルリチウムの供給量を0.065重量部に変更し、TMEDAを添加し、実施例1と同様の方法でスチレンだけを連続重合した。
1基目から出たポリマー溶液を2基目の底部へ供給し、それと同時に、ブタジエン溶液の供給量を4.32リットル/hr、スチレン溶液の供給量を3.33リットル/hrに変更し、連続重合した。
さらに、2基目から出たポリマー溶液を3基目の底部へ供給し、それと同時に、スチレン溶液の供給量を0.97リットル/hrにし、連続重合して、共重合体(非水添共重合体)を得た。3基目の出口におけるスチレンの添加率は99%であった。次に実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー10)を得た。ポリマー10の特性を表1に示した。
【0063】
[比較例3]
実施例5と同様に反応機を3基使用し、1基目に供給するスチレンの供給量を0.83リットル/hr、n―ブチルリチウムの供給量を0.225重量部に変更し、TMEDAを添加する以外は、実施例1と同様の方法でスチレンだけを連続重合した。
1基目から出たポリマー溶液を2基目の底部へ供給し、それと同時に、ブタジエン溶液の供給量を4.38リットル/hrに変更し、ブタジエンだけを連続重合した。
さらに、2基目から出たポリマー溶液を3基目の底部へ供給し、それと同時に、スチレン溶液の供給量を0.83リットル/hrにし、連続重合して、共重合体(非水添共重合体)を得た。3基目の出口におけるスチレンの添加率は99%であった。次に実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー11)を得た。ポリマー11の特性を表1に示した。
なお、ポリマー2〜ポリマー11に添加するTMEDAの量は、得られる水添前ブロック共重合体の全ブタジエン中のビニル量が表1に示される値になるように調整した。
【0064】
[実施例9〜12]
表2に示した組成のアスファルト組成物を製造した。具体的には、750mlの金属缶にアスファルトを400g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸した。次にアスファルトを完全に溶融し、攪拌されているアスファルトの中に所定量の水添共重合体(ポリマー2)、ゴム質重合体、粘着付与剤樹脂、軟化剤を少量づつ投入した。所定の添加剤を全て投入した後に、6000rpmの回転速度で90分間攪拌して組成物を得た。
得られたアスファルト組成物の特性を表2に示した。本発明のアスファルト組成物は、特に0℃〜70℃の範囲で高いtanδ値を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の水添共重合体及びアスファルト制振材組成物は、自動車、建築物の制振材、遮音材等の分野において好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添ランダム共重合体を水添して得られる制振材用水添共重合体(A)であって、該制振材用水添共重合体(A)が、次の特性(1)〜(4)を有する制振材用水添共重合体(A):
(1)該水添共重合体(A)のGPCによるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で4万〜40万であり、
(2)該水添共重合体(A)中に含まれる該ビニル芳香族単量体単位の含有量が20〜80重量%の範囲であり、
(3)該水添共重合体(A)における該共役ジエン単量体単位を含む該非水添重合体のビニル結合量は40%未満であり、
(4)該水添共重合体(A)に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて、損失係数(tanδ)のピークが−40℃以上、70℃未満の範囲に少なくとも1つ存在する。
【請求項2】
請求項1に記載の該制振材用水添共重合体(A)をブロックとして少なくとも1個含む、制振材用水添ブロック共重合体。
【請求項3】
ビニル芳香族単量体単位を主体とする少なくとも1個の重合体ブロック(B)を、さらに含む、請求項2に記載の制振材用水添ブロック共重合体。
【請求項4】
該ブロック共重合体中における全ビニル芳香族単量体単位の含有量が40〜80重量%である請求項3に記載の制振材用水添ブロック共重合体。
【請求項5】
該ブロック共重合体中におけるビニル芳香族単量体単位を含む重合体ブロック(B)の割合が40重量%未満である請求項3又は4に記載の制振材用水添ブロック共重合体。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の水添ブロック共重合体を架橋してなる制振材。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の水添ブロック共重合体と、他のゴム質重合体と、を含む制振材。
【請求項8】
架橋して得られる請求項7に記載の制振材。
【請求項9】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の水添ブロック共重合体と、
アスファルトと、
を含むアスファルト制振材組成物。
【請求項10】
成分(イ)として、請求項2〜5のいずれか一項に記載の制振材用水添ブロック共重合体、又は該水添ブロック共重合体と他のゴム質重合体との組成物と、
成分(ニ)として、アスファルトと、
を含むアスファルト制振材組成物。
【請求項11】
成分(ロ)として、粘着付与材樹脂を、さらに含む請求項10に記載のアスファルト制振材組成物。
【請求項12】
成分(ハ)として、軟化剤を、さらに含む請求項10または11に記載のアスファルト制振材組成物。

【公開番号】特開2008−208213(P2008−208213A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45900(P2007−45900)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】